2: 2011/01/04(火) 20:07:29.33
ガチャ

魔王「来たな、勇者…」

勇者「待たせたようだなぁ、魔王…」

魔王「ふ、お前は楽そうな人間だな」

勇者「ああ、せいぜい楽しませてやるよ、魔王」

魔王「では」

勇者「いざ」

魔王、勇者「決着をつけてやる!!」

3: 2011/01/04(火) 20:11:31.74
カキン キィン

勇者「なかなか決まらない…おっと」

シャキン ガキン

魔王「ああ、正直疲れてきた」

勇者「お互い疲れてきたんじゃ埒があかないな」

勇者「いったん休むか」

魔王「そうだな」

5: 2011/01/04(火) 20:18:33.15
勇者「なあ魔王、ひとついいか」

魔王「ひとつだけだぞ」

勇者「ぶっちゃけさ、剣とか魔術での闘いは古くないか?」

魔王「歴代の勇者が卒倒しそうなことを。まあ私も何度か思ったが」

勇者「で、本題なんだけどさ、それ以外で決着つけないか?」

魔王「それ以外?例えば?」

勇者「例えばだな―」

6: 2011/01/04(火) 20:22:10.40
>>4
はいauです


勇者「ドッジとかさ!」ドーン

魔王「子供だなぁ、勇者も」

勇者「うるさい。ノリノリでボール用意したあんたに言われたくない」

魔王「あれか、投げて当てればいいんだな?」

勇者「ああ。で、外野は―…」

魔王「…」

勇者「二人しかいないから、外野もへったくれもないじゃん…」

魔王「お前あんがい馬鹿だろ」

7: 2011/01/04(火) 20:27:22.50
勇者「さあ仕切り直して…ここはテニスかな?」

魔王「てにす?」

勇者「ボールとラケットつかって点を取りあうんだよ」

魔王「なるほど」

勇者「これなら一対一で出来るだろ?」

魔王「ああ。えーと、こんなのか?」ボワン

勇者「そうそう、これ」

魔王「行くぞ、勇者!」

勇者「こい!」

8: 2011/01/04(火) 20:34:06.27
勇者「…」

魔王「…」

勇者「疲れるな…これ」

魔王「同じく…魔王の名が泣くわ…」

勇者「ちょっと腰、痛めたかも…」

魔王「奇遇だな、私もだ」

勇者「上流貴族はなんでこんなの出来るんだ?」

魔王「なんだ、お前もはじめてなのか」

勇者「ああ。だけど地元じゃ一番の遊びマスターだったんだぜ」

魔王「ほう。なら遊びマスター、他にはないのか?」

勇者「あるさ。頭脳戦と洒落込むか」


9: 2011/01/04(火) 20:47:34.35
魔王「ほう、頭脳戦?」

勇者「テーブルの上でやる遊びだ。なんかないか?」

魔王「残念ながら頭脳戦の遊びはしたことがなくてな。分からないんだ」

勇者「じゃあ簡単なやつ…白黒の駒ひっくり返すやつやるか」

魔王「どんなものだ?」

勇者「床借りるな。…こんな線があってだな、で片方が白、片方が黒で一つの駒があって」カキカキ

魔王「ふむ。…白黒ということは、どちらかの色をもう片方の色で埋めるのか?」

勇者「おお、その通りだ」

魔王「よしきた」ボワン


10: 2011/01/04(火) 21:37:43.74
勇者「じゃあお前白な」パチン

魔王「ああ」パチン

勇者「…」パチン

魔王「…」パチン

(中略)

勇者「…真っ白」

魔王「私の勝ちだな」

勇者「こんなことっ…!」

魔王「事実だ、諦めろ」

勇者「もういっかい!もういっかいだ!」

魔王「お前何しに来たんだっけ」

勇者「魔王討伐」

魔王「あ、ちゃんと覚えてはいるんだ」

11: 2011/01/04(火) 21:44:20.88
勇者「お腹空いた」グー

魔王「ほんと自由奔放だな」

勇者「なんかご飯ない?」

魔王「あることはある」

魔王「あーもう、待ってろ。今作るから」

勇者「わーい魔王さますてきーきゃー」

魔王「はは、国王が泣くぞ」

勇者「いいよ、あんな奴」

魔王「……?」

13: 2011/01/04(火) 22:08:20.48
勇者「うまーー!」ガツガツ

魔王「落ち着いて食えよ」モグモグ

勇者「うまうま」ガツガツ

魔王「普通毒入ってないか警戒するだろ…」

勇者「ムカつく程の美味しさだな!」ムシャムシャ

魔王「褒められた気がしない」モグモグ

勇者「みてください、この卵のとろとろ加減!」モショモショ

魔王「実況せんでいい」モグモグ

勇者「なあ、これ誰が作ったんだ?」ムシャムシャ

魔王「私だ」モグモグ

勇者「料理長とかは?メイドもいないし」

魔王「ん?つい50年ほど前に来た別の勇者にみーんな殺られたよ」

勇者「…じゃあ、今はひとり?」

魔王「ああ、ひとりだよ」

14: 2011/01/04(火) 22:14:19.54
魔王「ここまで来たごほうびだ。話してやる」

魔王「ありがたく思え」

勇者「おお、口調が戻ったな」

魔王「ちょっとさっき楽しかったから口調が素になってたんだ」

勇者「マジでか」

魔王「さて、何から話そうか?私が生まれたときからか?」

勇者「そうだな、お前が幸せだったときの話を聞かせてよ」

魔王「いいとも。私の…もっとも幸せな時をな」

15: 2011/01/04(火) 22:26:23.67
お前にとっての昔話をしよう。
私はだいたい200年前に生まれた。
そんな顔するなよ勇者。
魔族は成長が遅いからこれぐらい当たり前だ。
あと1000年ぐらい立てば立派な大人に見えるそうなんだけどな。

母は知らない。
でも母代わりのメイドがよく世話をしてくれたから寂しくはなかったよ。
父―前代魔王も、忙しいはずなのに私を育ててくれた。
そういえば時折甘やかしすぎだとメイドに怒られてたな。

父は歴代の魔王に恥じない魔王だった。
勇者や魔法使い、その他もろもろを蹴散らす父は見ていて誇らしかったな。
それに魔物をしばしば人里へ入らせた。もしかしたらそこはお前の国かもな。
魔物のストレス発散はもちろん、人が人と戦わないようにだ。
びっくりするなよ、勇者。
人がいなければこの世界の均等は破れる。
人どおしが戦うのはどうでもいいけど全滅されると困るんだよ、けっこう。

16: 2011/01/04(火) 22:38:06.67
お前らがいなくなるとちっと大変な事が起こるんだ。自覚してなくてもな
人間は自分の立場が分からなすぎる。
父がよく漏らしてたよ。
魔族としては異常なぐらい人間のことを考えていた。
彼は、皆が憎む魔王像としては最も適合してて、最も不適合者だったんだ。

勇者、この城へ入りこの部屋に来るまで、いくつの魔物と会った?
だろうな。
ああ。
誰もいない。正解だ。
勇者、信じられるか?
全盛期は廊下が狭いと感じるぐらいうじゃうじゃいたんだ。
それがどうだ。今はこの城には魔王ひとりしかいない。
森にはたくさんいた?
まあな。あんな広い森にはまだたくさんいるよ。
ただ城にくるのがめんどくさいだけだろう。
さて、話を戻そう。
あの男…つまり別の勇者が来てからだ。
私たち魔族の運命が狂ったのは。

17: 2011/01/04(火) 22:38:17.34
お前らがいなくなるとちっと大変な事が起こるんだ。自覚してなくてもな
人間は自分の立場が分からなすぎる。
父がよく漏らしてたよ。
魔族としては異常なぐらい人間のことを考えていた。
彼は、皆が憎む魔王像としては最も適合してて、最も不適合者だったんだ。

勇者、この城へ入りこの部屋に来るまで、いくつの魔物と会った?
だろうな。
ああ。
誰もいない。正解だ。
勇者、信じられるか?
全盛期は廊下が狭いと感じるぐらいうじゃうじゃいたんだ。
それがどうだ。今はこの城には魔王ひとりしかいない。
森にはたくさんいた?
まあな。あんな広い森にはまだたくさんいるよ。
ただ城にくるのがめんどくさいだけだろう。
さて、話を戻そう。
あの男…つまり別の勇者が来てからだ。
私たち魔族の運命が狂ったのは。

18: 2011/01/04(火) 22:50:22.20
魔王「パーティーで来てたが、そいつは中でもひどく強かった」

魔王「魔族を容易くばったばった切るんだ」

勇者「そんなに…か?」

魔王「さすがにびびったぞ、あの強さは」

勇者「…で?」

魔王「父は私を隠した。危険だと悟ったんだろうな」

魔王「それは当たりだった。入ってそんなに経たずして、パーティーはこの魔王の間に来た」

勇者「魔王の間…なんかネーミングが残念だな」

魔王「うるさい。…まず戦士はメイドを裂いた」

魔王「僧侶、魔法使い、騎士は三柱に少々手こずったが、切り伏せた」

魔王「そして戦士は側近の心臓を抉った」

魔王「最後に、勇者が父と勝負をした」

魔王「決着がつくまで長い長い時間、暗がりから父達を眺めていたよ」

魔王「なにも出来なかった」ギリ…

勇者「……」

魔王「勇者はいくら強くとも魔王には勝てなかった」

魔王「だから、勇者は禁断術を使った」

魔王「仲間の命を使うんだよ」

20: 2011/01/04(火) 23:02:04.68
勇者「はぁ?!まて、そいつは魔法使いだったってオチか?」

魔王「いいや、勇者だ。ただ、どこかでそんな術を覚えたらしい」

勇者「…。仲間の命を使うなんて…」

魔王「まあ単独で来てたお前の方が驚きだがな」

魔王「続けるか。そいつは仲間の命を全て使ったんだよ」

魔王「もちろん仲間はみんな生け贄にされると知らなかったらしいがな」

魔王「四つの魂を力に変えた勇者に負ける要素はなかった」

魔王「勇者は、あっさり父の首を切ったよ。魔王とはいえ、不氏ではないからな」

勇者「……」

魔王「そして力が有り余ったんだろうな。城の中にいる魔物を虐頃して回った」

魔王「私だけが残された」

魔王「皆を葬るのに一年かかった。…私達にとっては一年なんてあっというまだがな」

勇者「……寂しくなかったのかよ…今まで」

魔王「別にお前の同情なんか欲しくない」

魔王「だから、泣くなよ。勇者」

21: 2011/01/04(火) 23:12:33.23
勇者「だって…ずっと…ひとりなんて…」ヒック

魔王「やけにひとりにこだわるな。何があったんだ?」

魔王「……いや」

魔王「お前がここに来たことからしておかしいんだよな」

勇者「いちいち遊びばかり提案することか?」

魔王「それもある。楽しかったから良しとするが」

魔王「まず、こんなとこへひとりで来る馬鹿はいない」

勇者「……」

魔王「装備もよくここまでこれたなって思うぐらい貧相」

勇者「……」

魔王「年もまだ若いように見える」

勇者「……18だ」

魔王「若いな。普通20歳は越えてるはずだが」

勇者「あんたも外見そんぐらいだよ」

魔王「そうか。成長遅いしな」

魔王「極めつけは」



魔王「どうして女が魔王討伐に来たのかってことだ」




22: 2011/01/04(火) 23:21:18.27
勇者「…バレてたか。自信はあったのに」

魔王「残念だが初めからな」

勇者「あはは…そうか」

魔王「問おう。お前は誰だ?」

勇者「南の果てにある国にすむ、農民の娘だよ」

魔王「ふむ。特に私はお前の国に危害を与えていないはずだが」

勇者「別に、危害与えたから勇者を送り込んだ訳じゃない」

勇者「わたしに氏んで欲しいんだ、国王は」

魔王「…今度は私が聞き役だな。話してくれ、お前の半生を」

勇者「ああ、話そう」

23: 2011/01/04(火) 23:29:00.55
勇者「生まれた国は農作物も豊富にとれ、水不足も少ない理想的な国だった」

勇者「気候も安定してるし、流行病もめったにおこらない」

勇者「ああ、あと別の国から物を売りに来る人もいた」

勇者「よくそういう子と近所の子とで遊んだよ」

魔王「だから遊びに詳しかったのか」


勇者「そう。色々教えてもらったものだ」

勇者「国は平和だった」

勇者「なのに、国王は陣地をもっと広げようと目論んだんだ」

魔王「戦争か」

勇者「そう、戦争だ」

魔王「…魔物を送り込んで置けばよかったな」

勇者「終わったことは仕方ないよ。…きっと国王はそれでも戦争をしていただろうし」

25: 2011/01/04(火) 23:46:27.89
勇者「戦争が始まった」

勇者「父と兄は帰らなかった」

勇者「母と妹は戦火に焼かれた」

勇者「残ったのはわたしひとりだった」

魔王「だからか」

勇者「ああ。そして、わたしは生きていく気力をなくしたんだ」

魔王「で、ここに?」

勇者「ううん。国王の元へ向かったよ、氏ぬつもりで」

魔王「…つまり、国王を倒そうとしていたのか?」

勇者「うん。平和を壊され家庭を壊された小娘にはこれしか出来なかった」

勇者「まああっけなく捕まったけどな」

魔王「だろうな」

勇者「即座に判決が言い渡された。不敬罪だった」

魔王「重罰…か?」

勇者「ああ。氏刑だ」

勇者「ただうちの氏刑は特殊なんだ」

魔王「つまりそれは」

勇者「魔王討伐。魔王の首を持って帰れば、罪は許される」

魔王「…首か。面白い」

魔王「大人数は行き倒れか魔物に襲われるかで氏ぬからな。しかもありがたいことに外で」

魔王「で、お前は執念の末に私の首を狙いに来たわけか」

勇者「最初はな」

27: 2011/01/04(火) 23:55:51.67
魔王「最初?」

勇者「この城に入り、ここの扉を開けるまでは」

魔王「私の姿を見るまでか」

勇者「ああ。開いて驚いたよ」

魔王「自分の事ながら分からなくもない。めったにこんな魔王いないしな」

勇者「…まさか魔王が女なんてな」

魔王「ふ、お互い女なんて。滑稽だな」

勇者「本当だよ。相場は男なのにさ」

勇者「だからなのかは分かんないが、あんたに情が移っちまった」

魔王「ん?私が妹に似てたか?」

勇者「いや、そんな出来すぎたことはない」

勇者「ただ…友達になれそうなのに首を切るのはなって」

魔王「純粋だな。純粋すぎて引くぐらいだ」

勇者「うるさい」

28: 2011/01/05(水) 00:15:50.25

魔王「魔王に情を移すなんてなぁ。勇者失格だろ」

勇者「いいだろ別に。こっちは人間なんだから」

魔王「人間は本当に変な奴だな」

魔王「かなり脱線したが、私の首を持っていってどうするつもりだったんだ?」

勇者「国王に献上する」

魔王「なるほど」

勇者「国王がこっちに油断する。もしかしたら近寄るかもしれない」

魔王「で?」

勇者「その隙に暗殺…というのか分からないが、息の根を止める」

魔王「どちらにしろ頃すのか。国王だけが悪いって訳じゃないと思うんだが」

勇者「政治を握るのはあいつだけだ。大臣とかはまるで能無しだから」

魔王「なるほどなるほど。だがな、勇者」

魔王「お前も氏ぬこと確定だぞ」

勇者「そんなの分かってる」

魔王「もしかしたら願いを達成できず氏ぬぞ」

勇者「……それは」

29: 2011/01/05(水) 00:28:59.35
勇者「それは……どうしよう」

魔王「やっぱり馬鹿だなお前」

勇者「うるさい」

魔王「倒すにしても謁見までこぎ着けなきゃな。でもそうすると私が…」

勇者「…何だかんだで考えてくれてるんだな」

勇者「つか、勇者と魔王が国王を倒すのを考えるとかシュールだな」

魔王「南の果ての国…か」

魔王「……ん?」

勇者「どうした?」

魔王「国王、歳いくつだ」

勇者「は? 70ぐらいいってんじゃね?」

魔王「そんな老体でよくもまあ政治を…」

魔王「あ、そうか」

魔王「…ははっ」

勇者「魔王?なんか不気味だが」

魔王「いいや、なんでもない。合点しただけだ」

魔王「こちらも国王への用事が出来たよ」

34: 2011/01/05(水) 01:05:42.75
勇者「どういうことだ?国王へ用事なんて」

魔王「今は疲れた。道中説明してやる」

勇者「…待て。来るのか?国へ」

魔王「私も首が惜しくてな。ならばくっつたままいけば良い」

勇者「おいあのなあ…」

魔王「長旅ご苦労だな、勇者。夜も遅い」

魔王「寝首はかかない。安心して休め」

勇者「え?つまりどういうことだよ」

魔王「私の以外いらないと思ってベッド全部燃やしてしまった。あとは分かるな?」

勇者「」

魔王「あ、大きいベッドだから安心しろ」

勇者「ちょ、魔王さん…」

魔王「寝間着いるか?私は常にはだかなんだが」

勇者「お泊まり会とか好きなんだな…」


38: 2011/01/05(水) 01:22:03.25
魔王自室

勇者「なんでこんなことに!」

勇者「さっきまでシリアスな事を話し合ってたのに!」

勇者「朝は敵だった魔王と寝ることに!」

勇者「男だったらビッグイベントだったのに!」

魔王「なにをさっきからぶつぶつと…」ゴソゴソ

勇者「はだかだな」

魔王「はだかだが」

勇者「…まあいいけどさ…」

魔王「…温い」

勇者「こんなに離れているのにか?広すぎだこのベッド」

魔王「誰かと寝るのは久びさだからな」

魔王「…おやすみ」

勇者「おい」

魔王「…すぅ」

勇者「……」

勇者「…こっちだって久びさだよ」

39: 2011/01/05(水) 01:32:51.47
勇者「…」

魔王「…ん」パチ

勇者「……ぁさん…」

勇者「…めだよ…」

勇者「…ひとりに…しないで」グス

魔王「……寝言か」

ゴロゴロ ピトッ

魔王「大丈夫だぞ。お前はひとりじゃない」

魔王「母親代わりはできないが…」

ナデナデ

勇者「」スースー

魔王「…なあ勇者」

魔王「今日…色々あったが、何度も言うが、楽しかったぞ」

魔王「お前と…世界を見たいと思った」

魔王「なんてな。おやすみ」

40: 2011/01/05(水) 01:38:53.73
チュンチュン

勇者「なんたるハプニング」

勇者「奥さん見ました?魔王さんが抱きついて寝てますよ?全裸で」

勇者「って、誰にいってんだよ…」

魔王「」クー

勇者「…油断しすぎだろ」

勇者「魔王さーん。魔王さん?」

魔王「ん」ギュ

勇者「」

勇者「あかん、意識が吹っ飛ぶかと」

勇者「よく考えればベッドで寝たの久びさだなぁ」

勇者「…魔王、そろそろ起きませんか」

魔王「」クークー

勇者「…いいよ、特別に寝坊を許してやる」ナデナデ

41: 2011/01/05(水) 01:45:40.58
勇者「ああ、やっとお目覚めか。おはよう」

魔王「…おはよう」

勇者「なんだ?どうした?」

魔王「おはよういうのも久びさすぎて…」

勇者「長生きって疲れるんだな…」

魔王「さて、これからの事について話そう」

勇者「ふむ。まず服着ようね」

魔王「私もお前と同行して城へいく」

勇者「この城は?」

魔王「なに、壊れたらそれまでだ。作り直せばいい」

勇者「魔王すげー」

魔王「そして国王と謁見して…あとは、その場まかせだ」

勇者「なぁ、なんだよ。どうしてあんたまで国王に拘るんだ?腹いせ?」

魔王「似てるが違う。直に分かるさ」

勇者「そうか」

42: 2011/01/05(水) 01:50:20.64
魔王「ここに来るまで何ヶ月だ?」

勇者「二ヶ月ちょいだな」

魔王「分かった」

勇者「移動呪文とか使うのか?」

魔王「私は攻撃呪文以外できないんだよ」

勇者「えええー、歩きかよ」

魔王「仕方ないだろ」

勇者「防御呪文は使えるのか?」

魔王「攻撃は最大の防御だ」

勇者「なんか不安になってきたこの魔王」


43: 2011/01/05(水) 01:56:02.58
テクテク

魔王「外は気持ちいいな」

勇者「確かにな」

魔王「いい気分だ」

勇者「確かにな。周りがこうでもなければ、いい気分だった」

魔王「なんだ、魔物に囲まれてるだけだろう?」

勇者「さすが王。あんたスゲーよ」

魔王「褒められた気がしない」

勇者「どーすんだこれ」

魔王「こうするんだ」

魔王「お前たち、森へ帰りなさい」

ズズーン ズドーン

勇者「帰ったよ…王ってすげー…って魔王?」

魔王「すごく緊張しすぎてお腹痛いんだ」

勇者「こんな魔王で大丈夫か」

魔王「大丈夫だ問題ない」

勇者「あるだろ」

44: 2011/01/05(水) 02:00:15.07
テクテク

魔王「町か」

店員「そこの旅人さーん!食べていかない?」

魔王「勇者、あれはなんだ」

勇者「りんごパイだが」

魔王「おいしそう。シナモンも含まれてるみたいだな」フンフン

勇者「食べるか」

魔王「ああ」

勇者「おやじ、これ」

店員「さんを付けろよデコスケ野郎!」

魔王「おいしい」モグモグ

勇者「よかったな」モグモグ

45: 2011/01/05(水) 02:07:06.30
テクテク

ムカシムカシ マオーガイマシタ!
ジャーンジャーンジャーン

勇者「なんだあれ」

魔王「人形劇みたいだな」

ワルモノマオーハ、ユウシャニタオサレマシタ!

勇者「……」

魔王「……」

勇者「気まずい。とても、気まずい」

ユウシャハ、ハタチノセイネンデシタ!
ソシテアイテハスウヒャクネンヲイキタ...


魔王「二十歳か」

勇者「なにがだ?」

魔王「いや何でもない」

勇者「なんだよ」


46: 2011/01/05(水) 02:14:03.65
テクテク

魔王「勇者」

勇者「なんだ、魔王」

魔王「ここどこだろうな」

勇者「町ってことには違いないな」

魔王「では詳しく聞こう。ここは…町のどこだ?」

勇者「分からない」

魔王「迷ったな。恥ずかしいぞ、方向音痴の魔王など」

勇者「こっちも恥ずかしいぞ」

魔王「壁を伝ってけば出れるはずだ」

勇者「それ迷路限定だ」

魔王「ええい、ここらに穴を開ければ」

勇者「止めなさい止めてくれ止めてください」

53: 2011/01/05(水) 10:38:34.03
テクテク

村人「号外だよー!号外だー!」

ザワザワ

魔王「なんだあれは」

勇者「緊急の時に配布する紙だ」

魔王「わらわら人が集まってきたな」

勇者「ああ、大事な事が書いてある場合があるからな」

勇者「にーさんこっちも一枚」

村人「はいよぉ」

魔王「どれどれ、私の事は乗ってるかな」ピラッ

勇者「色々問題だろ。えっと…」

勇者「読めないんだよなぁ…文字」

魔王「何で貰ったんだよ。よこせ、読むから」

54: 2011/01/05(水) 10:47:32.48
魔王「隣国で戦争の恐れ…だとさ」

勇者「隣国って…故郷だ!」

魔王「なに?また戦をするのか?」

村人「ついこのまえ、隣国は別の戦争終わったらしいんだけど」

村人「今度は反対側の国へ攻めるらしいんだ」

勇者「事実か?」

村人「事実しか話さねぇよ。あと狙った獲物も離さねぇ」

魔王「いこう勇者」

勇者「ああま…まーちゃん」

トコトコ

村人「あのー…」

55: 2011/01/05(水) 11:08:08.19
勇者「……くっそ…あの国王め…」

魔王「勇者」

勇者「なんだ」

魔王「国王を本当に討つ気か?」

勇者「何を今更」

勇者「魔王より国王のほうが民を苦しめている」

魔王「おかしな話だよな」

勇者「勇者が民の味方ならば、例え国王でも倒すよ」

勇者「って言ってもわたしはただの復讐なんだが」

勇者「なんであれ国王は討つ」

魔王「ふ、ならいい。行こう」

勇者「なんだよー」

56: 2011/01/05(水) 11:27:24.89
テクテク

勇者「数ヶ月ぶりの懐かしき我が故郷」

魔王「焼け野原だな。遠くまで見える」

勇者「戦のなごりだ。全部燃えたんだよ」

勇者「あれだ城だ。立派だろ」

魔王「おお」

勇者「ここから二時間ぐらいだ」

魔王「城に入るのは明日だな」

勇者「なんで?まだ夕方だし、謁見できるぞ」

魔王「暗くなると警戒される。荷物検査も厳しくなるだろう」

勇者「そんなもんかね」

魔王「だから明日の朝だ。…すべて終わらせよう」

勇者「…ああ」

57: 2011/01/05(水) 12:44:45.49
魔王「お前の家はどこだったんだ?」

勇者「えーとだなぁ…ここら辺だった」

魔王「めちゃくちゃだな。これは燃えたのか」

勇者「この下に母と妹がまだ居るんだ」

魔王「えっ」

勇者「瓦礫は重くてどかせないし、どうせならこのまま土に帰したほうがいいと思ってさ」

魔王「…」

勇者「ここだけじゃない。ここら辺は押し潰されたり焼けたりした人が多いよ」

魔王「そんなに規模の大きい戦争だったのか」

勇者「そんなでもない。ただ、ここだけガードが甘かった。だから攻められた」

勇者「それだけだ」

魔王「…そうか。勇者」

勇者「ん?」

魔王「お前には私がいるぞ。だって私達、…」

勇者「なんだよ、告白か?」

魔王「いやなんでもない。ちょっとイラッてきた」

勇者「えー」

58: 2011/01/05(水) 14:19:34.27
魔王「勇者」

勇者「……」スー

魔王「寝たのか」

勇者「……」スースー

魔王「もしかしたら、お前の邪魔をするかもしれない」

魔王「恨むなよ」

勇者「……」スースー

魔王「あれから、悪夢みなくなったんだな」

魔王「良い夢を」

59: 2011/01/05(水) 15:12:07.19
――----

父様、どうしたの?
なんでみんな慌てているの?

「誰か、この子を安全な場所へ」

どうして?
勇者なんかいつも倒してたでしょ?

「今度の奴は強いんだ」

じゃああたしも頑張るよ。
頑張って勉強も鍛錬もしたんだから。
ね、あたしもいいでしょ?

「…私の次はお前が魔王だからな」

どうして、そんなに優しい顔をするの?
どうして、そんなに悲しい顔をするの?

「さよならだ、我が娘」

「行きましょう、姫様」

待ってよ、メイド。
父様。
どうしてさよならなの?
また会えるでしょ?

「いいですか、姫様。ここから動いてはなりませんよ」

いつまで?

「周りが静かになるまでです。騒がしい時は出てはなりませんよ」

分かった。
迎えに来てね。
絶対だよ。

「……はい」

パタン。

暗闇の中は少し怖い。魔物なのにね。

また町に行きたいな。
たくさんともだち作るの。

父様と一緒に行きたいなぁ―

60: 2011/01/05(水) 16:20:24.15
とても静か。
静かだから出てもいいよね。
あちこち血の匂い。
なんでみんな動かないの?

ここも血生臭い。
見知らない人が倒れてた。
倒したのかな、父様が。

父様。
あれ?首から上がないよ?
そんなんじゃ喋れないじゃない。
こもりうたっていうの歌えないじゃない。

「姫様」

メイド。
どうしたの?なにがあったの?

「あなた様なら、分かりますよ。相手が何したか」

すごい血。
いま止血するから。ああ、溢れてくる。
メイド、冷たくなってくよ?
寒くない?

「致命傷を負いましたので。長くは持ちません」

待って。
置いていかないで。
ちゃんとお洗濯物畳む手伝いするから。
そうだ、今度ケーキつくってあげる。

「姫様、あなたが今から、魔王…です」

やめてよ。
ねぇ、あたし、いい子になるから。
ワガママ言わないから。

「どうか幸せに…魔王様」

め、命令だよ。
いかないで。

「………」

いかないで…。


---――――

61: 2011/01/05(水) 16:37:36.82
……

勇者「おい起きろ魔王!」ブンッ

ガバッ キィンッ

魔王「うぉわ!?…いきなり剣を投げるな馬鹿!」

勇者「馬鹿はどっちだ馬鹿!」

魔王「寝起きの奴に物投げる方が馬鹿だ馬鹿!弾き返したけど!」

勇者「まったく…凄いうなされてたぞ?」

魔王「え」

勇者「ケーキケーキって…どんだけ食べたいんだよ」

魔王「おかしいな、直接ケーキは出てないんだが」

勇者「あと大丈夫かよ…寝汗ひどいぞ」

魔王「これは…」

勇者「無理するなよ?疲れてんじゃないか?」

魔王「こ、これは勇者にムラムラする気持ちを押さえつけたあげくの汗だ…!」

勇者「もっとまともな嘘つけ馬鹿!」

62: 2011/01/05(水) 19:26:39.81
魔王「なんだかんだ行ってるうちにもう少しだな」

魔王「いいか、作戦通りだぞ」

勇者「分かってる。しかしこんな偽物で大丈夫かよ…中身何なの?」

勇者「つかなに染みでてんのこれ。血?血なの?」

魔王「安心しろ、人間のではない」

勇者「安心できねぇ!生き物なんだな?!」

魔王「いいじゃないか。油断させるエサだ」

勇者「もっとさぁ、魔王なんだから爆発仕掛けるとかしないのかよ」

魔王「アホ言え。爆発に気づいて兵士が増えたらどうするんだ」

勇者「へーへー。…じゃ、フードしっかり被れよ魔王」

魔王「ああ」パサッ

勇者「国王以外の前で角はみせらんねぇからな」

勇者「さ、行くぞ」

魔王「行こう」


64: 2011/01/05(水) 20:01:02.11
ドンドン

兵士「誰だ!」

勇者「国王様の命により魔王討伐つかまつった勇者です!国王様との謁見を希望します!」

魔王「……」

兵士「今開ける」

ギギィ…

勇者「門を開けていただきありがとうございます。これはわたくしの連れでございます」

魔王「」ペコリ

兵士「分かった。入れ」

魔王「あのさ、お前文法間違えてる気がするんだが」ヒソヒソ

勇者「うるせぇ」ヒソヒソ

兵士「何をしている?」

勇者「いいえ。では参りましょう、国王様のもとへ」

魔王「そうですね」

スタスタ

兵士b「おい…いいのかよ」

兵士「なにがだ?」

兵士b「この国の“勇者”は反逆者だぞ?それを国王様に会わすなんて…」

兵士「なあに、あんな小娘二人じゃ太刀打ちできないさ」

兵士「なにをしても瞬殺だろう」

兵士b「俺たち氏体処理任されんのかなぁ…やだなぁ」

65: 2011/01/05(水) 21:23:33.93
魔王「ここは中庭か」トコトコ

勇者「まだ謁見室は奥だ」トコトコ

魔王「さすがに私の住む城とは違うな」トコトコ

勇者「そうか?結構きれいに保たれていた気がするが」トコトコ

魔王「暇だから毎日掃除してた」トコトコ

勇者「珍しいタイプの魔王だよなあ」トコトコ

魔王「なあ勇者、もし無事成功したらどうするんだ?」トコトコ

勇者「うーん、玉砕覚悟だから考えてないな…」トコトコ

魔王「そうか」トコトコ

勇者「ああ」トコトコ

勇者「次は右な」トコトコ

69: 2011/01/06(木) 09:38:53.49
魔王「さすがにこう広いとうんざりしてくる」

勇者「廊下なんて歩く以外特に用途ないのにな」

スッ

執事「勇者様でございますね」

勇者「ああ…はい」

魔王「(びびった…)」ドキドキ

勇者「では、この奥に?」

執事「はい。王の準備が出来るまでしばしこちらの部屋でお待ちくださいませ」

勇者「分かりました」

魔王「」ペコリ




メイド「誰ですか」

執事「客人です」

メイド「つまり」

執事「盛りなさい」

70: 2011/01/06(木) 09:43:08.15
勇者「フルーツに…ケーキに…クッキー…」ゴクリ

魔王「……」

勇者「すげーな、こんなの普通に出てくるのか…」

魔王「……勇者」

勇者「なんだよ」

魔王「これは食うな。薬が混じってる」

勇者「!」

魔王「痺れ薬か何かだろう」

勇者「え、惚れ薬?」

魔王「お前の脳みそは薬を飲むまでもないようだがな」

勇者「何それ失礼」

71: 2011/01/06(木) 09:53:02.53
勇者「でも何かしら飲んだり食べたりしないと怪しまれるな」

魔王「案ずるな」

魔王「消滅」

ボワン

勇者「………消えた」

魔王「触れた物なら消滅できるんだ」

勇者「やべーよ一歩間違えればこっちも消されるとこだったよ」

魔王「何個か消しとくか」

ボワンボワン

勇者「もったいねぇ」

魔王「仕方がない」

勇者「しかし…薬が混じってるってことはさ」

魔王「そうだな、お前嫌がられてるみたいだ」

勇者「止めて、泣くから」

73: 2011/01/06(木) 11:31:59.40
魔王「さて、そろそろか?」

コンコン

勇者「おおジャスト」

魔王「ちょっと具合悪そうな顔で行けよ?」ヒソヒソ

勇者「分かってるって。早々とバレちゃやばいし」ヒソヒソ

魔王「ならいい。行くぞ」ヒソヒソ

ガチャリ

勇者「どうも…ごちそうさまでした」フラフラ

魔王「…(演技すげぇ)」

執事「いえいえ。…おや、お体は大丈夫でしょうか」

魔王「……(素晴らしく棒読みだな)」コクリ

勇者「ええ、大丈夫ですよ」フラフラ

執事「こちらです」スタスタ

勇者「こんなもんか?」ヒソヒソ

魔王「上出来」ヒソヒソ

執事「国王様がいらっしゃいます。どうぞ」

キィ

魔王、勇者「……」

74: 2011/01/06(木) 12:22:59.93
国王「よくぞ帰った」

勇者「…お久しぶりです、国王様」

国王「調子はどうだ」

勇者「旅疲れでしょうか、少しふらつきます」ニコ

国王「そうかそうか」ニヤ

魔王「……(こいつ…)」

国王「して、そちらの者は?」

勇者「旅の途中に出会った者でございます」

魔王「」ペコッ

国王「ふむ、ご苦労であった」

勇者「勿体なきお言葉でございます」

魔王「……(…やっぱり…)」

国王「して、首は?」

勇者「これでございます」

スッ トコトコ

魔王「気をつけろよ」ボソッ

勇者「ああ」ボソッ

75: 2011/01/06(木) 13:18:07.32
勇者「―ほらよ、受けとれよ国王様!」

ブンッ

国王「!」

兵士c「国王様!」

勇者「隙あり!」ダダッ

執事「なんだと…!薬が効かなかったのか!?」

勇者「たぁ!」

カキィン

国王「甘い!…やはり反逆者は反逆者だったか!」

勇者「ああそうだよ老いぼれ!」

国王「だが小娘が何をできるというのだ!」

兵士d「おのれ、覚悟しろ勇者!」

ガキンッ

魔王「おっと…国王と勇者でしばらく勝負させてやれよ」

ザシュッ

兵士d「ぐわぁ!」バタッ

国王「…誰だお主は」

魔王「そこの『首』を入れた包みを見てみろよ。勇者、いったん下がれ」
勇者「でも」

魔王「いいから」

76: 2011/01/06(木) 13:27:33.85
国王「包みじゃと?」

ハラリ

勇者「うっ!?」

国王「…これは」

魔王「そう。お前の討った魔王だ」

魔王「勿論、それの元は別の首だ。幻覚魔法で似せてるだけだからな」

勇者「(だから何の首なんだよ!)」

国王「なぜ…これを、これの顔を知っておる?」

魔王「……」

魔王「そりゃ分からないよな」

勇者「……(あれ?わたし、空気になってないか?)」

77: 2011/01/06(木) 14:28:42.78
魔王「一度町娘としてあった気がしたんだがなぁ」

国王「まて、それは50年も前だぞ?」

魔王「だから、」パサリ

勇者「……」

国王「角だと!?」

執事「まさかお前は!」

魔王「お前の討ち落とした魔王の、娘だよ」

勇者「なあ、今さらだが国王が先代魔王を倒したってことでいいのか?」

魔王「ああ。確証が得られなかったから言えなかったんだが」

魔王「あの時来た勇者、あれはお前だろ?国王」
ザワッ

兵士e「国王様が勇者だったのか?」

兵士f「じゃあ国王様は…」

国王「……」

勇者「…どうなんだ、国王さん」

78: 2011/01/06(木) 15:23:04.36
国王「そうだ…儂は“勇者”だった」

勇者「なんか昔がたり始めたぞ」

魔王「黙って聞いてやれ」

執事「反逆者だったのですか…?」

国王「ああ。しかも前国王の孫を刺したこともあった」

勇者「わたしより柄わりぃじゃねえか…」

魔王「呆れた。自分が体験してるのにこの風習は続けるのか」

国王「このほうが後腐れもないからの」

魔王「手短に終わらせよう。魔王の首を切ったあと、城へ帰り何をした?」

国王「お前らと同じことさ」

国王「そしてこの同じことはさせない」

勇者「まさか…前国王を倒したのか?」

国王「その通りだ」

全員「!」



79: 2011/01/06(木) 18:19:20.36
魔王「相手が国王でなくてもそれは許されないぞ」

勇者「じゃあもう決まりだな」

勇者「わたしはあんたを倒す」

魔王「それか国民の前で罪を告白しろ。氏ぬか言うかどちらかだ」

国王「く…くくく」

執事「国王さ、!?」ズバッ

勇者「いきなり人を斬った!?」

魔王「気でも狂ったか」

国王「取り逃した魔王」

国王「儂に逆らう勇者」

国王「生まれてきたことを後悔させてやる!」

ズォォォォォォォ

魔王「まさか?!」

勇者「言ってることが魔王より魔王らしい!」

魔王「お前ちょっと空気読め!」

80: 2011/01/06(木) 19:55:27.26
魔王「くそっ!今すぐそれを止めろ!」

国王「止める馬鹿はどこにいるというのだ!」

こくおうは じゅもんを となえた!

勇者「何の呪文だ!?」

魔王「あれだよ!他人の魂を犠牲にして力を得るやつだ!」

勇者「なっ!?」

兵士達「うわぁぁぁ!!」

メイド達「ひぃぃぃぃ!!」

側近「ぐがぁぁぁぁぁ!!こ、こくおうさまぁ!」

「「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」」


シ‐ン…

勇者「静かに…なった…?」

魔王「ここからが…始まりだぞ、勇者…!」

82: 2011/01/06(木) 20:11:35.10
勇者「周り、みんな氏んでるのか?」

魔王「ああ、漏れがなければ確実にな」

勇者「そういや国王は?」

魔王「そこだ。…力が貯まるのを待っているみたいだ」

カァァ

勇者「国王の剣が、光ってる」

魔王「あれに周りの人間の魂が宿りはじめてるようだな」

勇者「じゃあ、無防備な今なら倒せるよな!」

魔王「待て早まるな馬鹿!」

キィンッ

勇者「わぁ!」ズシャ

魔王「力が貯まるまで使う本人すらも護るのかこの術…」

勇者「チート過ぎるだろ!」

勇者「どうやってあいつ倒すんだよ!」

魔王「ああ、良く聞けゆう―!」

勇者「魔王!」

ザンッ

83: 2011/01/06(木) 20:32:36.55
勇者「ま、魔王!」

魔王「大丈夫だ、ギリギリでよけたから服しか裂けてない」

勇者「そうかよかった…。おい国王!」

国王「…………」ブツブツ

魔王「ダメだ、力に意識を乗っ取られたらしい。こんな人数を犠牲にすればな…」

勇者「馬鹿が無茶しやがった結末だ」

魔王「破壊!」スッ

ドゴォン

勇者「屋根が落ちてきた!?」

魔王「この際仕方あるまい」

魔王「国王に少しでもダメージを食らわせないと、後々響く」

勇者「でもこれじゃ普通に氏ぬんじゃ…」

パラパラ

魔王「いいや。力が宿る限りあいつは生き、暴走し続ける」

勇者「そんな…あっ…」

パラパラ

国王「………」ブツブツ

84: 2011/01/06(木) 21:25:57.29
魔王「砂煙で見えないな。勇者、分かるか?」

勇者「片腕…どうも利き腕じゃないほうがもげたみたいだ」

魔王「そうか…まあいくらかダメージは与えたか」

勇者「そうだな」

魔王「…ふ」

勇者「どうした?」

魔王「私達は本来敵同士なはずなのにな。こうして協力してるのがおかしくなった」

勇者「あー、まあいいじゃねえか。種族なんて今は関係ない」

魔王「ふふ。そうだな、勇者」

勇者「さ、パパっと終わらせるぞ魔王!」

魔王「ああ!聞こえたか、国王!」

国王「……」ユラリ

85: 2011/01/06(木) 21:48:06.93
ダン!!
メキャメキャメキャア!

勇者「床が割れた!?」

魔王「嘘だろ、剣の先端を刺しただけなのに!」

勇者「くそ、こんなんじゃ近づけないじゃねえか…」

魔王「勇者、今しか言えないから言っとく」

勇者「告白か?」

魔王「馬鹿かお前。いいか、あの剣を叩き壊せば国王も止められるはずだ」

勇者「叩き壊すにしても、何で叩くんだよ」

魔王「そこの兵士の一人がでかいハンマーを持ってる。それを使え」

勇者「分かった」

魔王「早く取ってこい、足止めしてるからな!」ダッ

勇者「任せろ!」

86: 2011/01/06(木) 22:09:48.49
魔王「父様のかたきだ!はぁぁぁっ!!」

ガキィン

魔王「防御も特化してるのか…って、ああ?!」

ブンッ

魔王「うぉわぁっ!」ドシャン

勇者「魔王!壁にめり込んでるぞ!」

魔王「知ってる。ちぃ…やりにくいな…」

勇者「ゆうしゃはハンマーをてにいれた!」

魔王「少しは勝ち目見えてきたな」

国王「……」ユラリユラリ

勇者「国王…すぐ止めてやるからな。代金はてめぇの命だ!うぉぉぉぉ」

国王「……!」ユラリ、スッ

勇者「消えた!?」

魔王「後ろだ!危ない勇者っ!」

勇者「あ……」

ザクッ

90: 2011/01/06(木) 22:32:03.34
勇者「…あ、ま、まおう?…」

ポタポタ

魔王「大丈夫か勇者」

勇者「大丈夫、だけど」

ポタポタ

勇者「魔王が大丈夫なのかよ…」

魔王「たかが脇腹だ」ポタポタ

勇者「たかがって…」

魔王「私は魔物だぞ」

魔王「それよりも、今がまたとないチャンスだぞ」

国王「……ヌケナイ…」グイグイ

勇者「でも、今この剣を叩き壊したら!」

勇者「魔王!お前の脇腹も千切れるかもしれないぞ!」

魔王「何度言わせる、勇者!」

魔王「私は魔物だ!それに、もし私が氏んでも困る奴はおるまい!」

91: 2011/01/06(木) 22:36:52.78
勇者「魔物だからって言っても氏ぬことは氏ぬだろ!」

勇者「それに、なんだよその言い種!」

勇者「じゃあお前は誰のために生きてるんだよ!」

魔王「馬鹿が…時間が無いと言うのに」ポタポタ

魔王「数ヶ月前までは、復讐のために」

魔王「今は…お前のためだ」

勇者「は?」

魔王「勘違いするな。やましい意味ではない」

魔王「なあ、もしかしたら私が勘違いしてるのかもしれん」

勇者「勘違い?」

魔王「…なんでお前のために生きてるのか?だって、私達は、」

92: 2011/01/06(木) 22:41:37.92


「だって友達だろ」



93: 2011/01/06(木) 22:50:03.43
勇者「……馬鹿か!」

ブンッ

国王「!」グイグイッ

魔王「は、離すか…!」

ガキィン!
ピシリ

勇者「普通、友達のためにこんなもんの犠牲にならねえよ!」

勇者「根っこから間違えてるよ、魔王!」

魔王「……」ボタボタ

勇者「一緒に戦って、一緒に逃げる、それが友達だよ」

ガキィン!
ピシリピシリ

勇者「犠牲になったほうはともかく、」

勇者「残された方が辛いんだ!」

ガキィン!
ピシリピシピシ

勇者「魔王、残される痛みはわかってんだろ?」

魔王「…ああ…」ボタボタ

勇者「なら!友達なら!どんなときも何があっても、」

ガキィン!!

勇者「一緒にいてくれよ!!」

パキィン

94: 2011/01/06(木) 22:56:05.18
魔王「割れた…な」バタッ

国王「うぎゃあぃぃぃぃ!」

勇者「あ、待て国王!そっちはバルコニーだ!」

魔王「奴め、自身を喪失したか…」

勇者「あっ」

ヒュウッ
ドスン
キャーコクオウサマー!!

魔王「あいつ…らしい最期だな」

勇者「おい、おいしっかりしろよ」

魔王「勇者、これ…抜いてくれないか」

勇者「血が溢れるだろ!」

魔王「大丈夫だ。大丈夫…」

勇者「そういうなら、引っこ抜くからな…」

グッ
ズイッ

魔王「…っ」

勇者「魔王!」

95: 2011/01/06(木) 23:01:57.40
魔王「いちいち騒ぐなよ…頭に響く」

勇者「でも」

魔王「どっか移動しよう。見つかったら面倒くさい」ヨロ

勇者「血が止まってないぞ」

魔王「……」

勇者「…分かったよ。外に出るか?」

魔王「そうだな。今は、警備も薄くなるだろうし」

勇者「あんま喋るな。行こう」

トコトコ

勇者「門まで手薄だな」

魔王「野次馬でもしにいったんだろう…」

魔王「もう少し歩こう」

96: 2011/01/06(木) 23:06:53.40
トコトコ

魔王「ここらでいい」

勇者「…いいのか?」

魔王「なんだかな。お前の住んでた土地は落ちつくんだよ」

勇者「…そうかな?」

魔王「ああ」

魔王「もう夕方か、時は早いな」

勇者「止血しないと」ギュッ

魔王「そして夜が来て朝が来て、一日は始まり必ず終わるんだ」

勇者「血の抜けすぎで頭おかしくなったか?」

魔王「ふふふ、かも知れないな」

勇者「なにか…いるか?毛布とか」

魔王「いいや。ただ、手を握っててくれないか」

勇者「おやすいごよ…冷たいぞ」

魔王「低体温症だからな」

勇者「嘘つけ」

97: 2011/01/06(木) 23:15:18.86
勇者「あんたはいつも温かいはずなのに」

魔王「いつのまにチェックしている。変態め」

勇者「なぁ、氏ぬなよ?」

魔王「……」

魔王「終わりはあるんだ」

勇者「おい」

魔王「あの時生き残って良かった」

勇者「おい!」

魔王「お前と、たくさんのものと会えたからな」

勇者「おい、しっかりしろよ!」


魔王「感謝してる」

勇者「なんで手が冷たくなってくんだよ!」

魔王「…泣くなよ。涙で回復はしないんだから」

勇者「おい、しっかりしろって!」ペチペチ

魔王「…ありが…と…」

魔王「……」

勇者「なぁ、もっかい馬鹿とか言えよ。おい」

勇者「友達なら、置いてくなよ!」

勇者「やだぁぁぁぁぁぁっ!!」

98: 2011/01/06(木) 23:19:25.91
勇者「…星が綺麗だ」

勇者「あのなかに母さんとかいるのかな」

勇者「いや、そこにいるのか…」

勇者「わたしは星になれるのかな」

勇者「悪いこと、いっぱいしたからな…」

勇者「…おやすみ、みんな」

勇者「どうか、願わくば…」

勇者「………」

99: 2011/01/06(木) 23:27:56.18
村人「号外だよー!」

村人「隣国の国王が謎の事故氏!」

村人「しかも謁見室は傷のない遺体たち!」

村人「なのに血が辺り一面に撒き散らされてたとか!」

村人「噂によると生き残ったのは勇者とか旅人とか?」

村人「さあ、気になる人は貰った貰った!」



村人「…ふぅ」

村人「大丈夫なのかねえ、あの二人は」


100: 2011/01/06(木) 23:35:48.90
国王の氏から二ヶ月―


少女「ふー…。よし、ここでいいか?…ですか?」

老婆「どうもありがとうねえ、助かったわ」

少女「いえいえ」

男「やあ。また君か」

少女「あ、こんにちは」

男「数日以内にここを出てくって本当かい?」

少女「はい。ちょっと、ここには住めないので」

男「どうしてだい?昔追放された者達も帰ってきたというのに」

男「家も、あんな掘っ立て小屋じゃなくて言われれば良いの立てられるぞ?」

少女「えへ…。行く場所があるんです」

男「そうか…また戻りたくなったら戻ってこいよ?」

少女「はい、ありがとうございます」

101: 2011/01/06(木) 23:41:15.88
ギィィィ

少女「ただいま」

少女「あ、おかえり」

少女「元気そうだな。傷はどうだ?」

少女「だいぶ塞がったな。後は残るかもしれんが」

少女「それは良かった。しかし…傷が回復するなら早く言えよ」ブツブツ

少女「ふふ、あの泣き顔」

少女「う、うるさい!あんたが直前にあんなまどろっこしい事言うからだろ!」

少女「ふふふふ、すまないすまない。ついテンション上がってなぁ」

少女「上がんなよ…。ああくそ、恥ずかしい」

少女「私が起きたときのあのびっくり顔」

少女「言うな!」

102: 2011/01/06(木) 23:47:02.34
少女「しかし、本当にいいのか?」

少女「何が?」

少女「国を離れて私の城へ行くとか」

少女「…この国にいても辛いだけだからな」

少女「そうか。一応言っとくが、私は魔物だ。魔王だ」

少女「そして、わたしは人間」

少女「お前が先にしわくちゃになって氏ぬぞ?」

少女「…はは、いいよ。歳だけはなんともできないし」

少女「ならいい。ああ、旅にもう一回でるのもいいな。婿探しとか」

少女「男が自分から寄るわけないだろ」

少女「だな」

少女「そこは否定しろよ!」

103: 2011/01/06(木) 23:53:07.78
数日後―

男「行くのかい?」

少女「はい、お世話になりました」

少女「」ペコリ

男「気を付けてな」

少女「ありがとうございました」

トコトコ
トコトコ
トコトコ

少女「…国はもう見えないな」

少女「さて…」カシッシャキッ

勇者「勇者さまの完成っと。かなり鎧持つの重かったな」

少女「このフード、よく脱げなかったよ」パサッ

魔王「そうだ。着いたらケーキ作ってやる」

勇者「ほんとに?やった!」

魔王「じゃ、行くか」

勇者「ああ」





おわり。


116: 2011/01/07(金) 13:31:28.94
アンケートーパフパフ

1、初めからの話をこのレスで書き直す
2、>>20ぐらいを分岐点に書き直す
3、いっそ新しくレス立てて新しく書け
4、こんなところにいれるか!俺は帰る!

19時ぐらいまで。
書き溜めておきます。
あ、勇者の設定はかなり変わります。パラレルな感じ

119: 2011/01/07(金) 19:09:49.74
確かに新スレはない。馬鹿だ自分
初めから書かせて頂きます。

勇者の性別が変わったことによりストーリーとか勇者魔王の事情はかなり変わります。
マジで新しい話ですのでご注意を。

120: 2011/01/07(金) 19:10:31.48

魔王「だって××だろ」

121: 2011/01/07(金) 19:11:39.95
ギギィ

勇者「ついに来たぜ、魔王城」

勇者「で、肝心の魔王はどこかなっと…」

シ-ン

勇者「…ここまで静かだと変に気味悪いな」

勇者「……」

勇者「やい!魔王はどこだ!」ウォォ

魔王「ずいぶんうるさい勇者だな」フキフキ

勇者「うお!?」

魔王「ふ、その活きはいつまで持つか」フキフキ

勇者「あー、えっと」

魔王「なんだ」

勇者「とりあえず、床掃除やめてくださいませんか?」

122: 2011/01/07(金) 19:12:50.80
魔王「この魔王に行動を禁止させるなど。身の程しらずだな」

勇者「誰でも思うんじゃないでしょうか」

魔王「さて…勇者よ。我が城に何しに来た?」

勇者「あ。…人里に現れ侵略し荒らす魔物!その頭の首を取りに来た!」

魔王「ふむ」

勇者「な、なんだよ」

魔王「これは少し話し合いが必要だな。付いてこい」クルッ スタスタ

勇者「あ、おい!」

勇者「べ、別にのこのこついてくんじゃないからな!ただ何するか見るだけだからな!」スタスタ

魔王「誰に言ってるんだ」

123: 2011/01/07(金) 19:13:50.42
スィッ

勇者「ここ、ドアの軋みないんだな」

魔王「数日前に蝶番へ油を注したからな」

勇者「あ、そうなんだ」

勇者「って…ここは」

魔王「勇者達の憧れかは分からんが、魔王の間だ」

勇者「かっけー!魔王の間とか!」

魔王「え、あ、まぁ…かっこいいのか…?」

勇者「ハッ、興奮しすぎた…。それで、何を話し合うつもりだ魔王!」

魔王「今更その口調はなぁ」

勇者「うるせぃやい」

124: 2011/01/07(金) 19:15:26.12
魔王「少し待て。椅子持ってくるから」スタスタ

勇者「あ、ああ…」

勇者「……」キョロキョロ


勇者「でかいテーブルだな。ここでご飯食べるのか?」

勇者「なのに一つしか椅子ない」

勇者「…つまりどういうことだ?」

125: 2011/01/07(金) 19:20:51.75
魔王「よっと…」

勇者「…でっけぇ椅子」

魔王「客人を迎えるのに安っぽい椅子でどうする」

勇者「誰が客人?」

魔王「お前しかおるまい」

勇者「そうだな……ああっ!ペースに飲み込まれていく!」

魔王「お茶入れてくる。座ってろ」トコトコ

勇者「えーと…」

トントン

勇者「(椅子には特に罠とかかけられてないな)」

勇者「なんなんだ?あの魔王」

127: 2011/01/07(金) 20:26:41.75
勇者「」フワフワ

勇者「椅子がフワフワ過ぎて落ち着けねぇ」

フワーン

勇者「なんかいい匂い」

勇者「この匂いは、まさか…!」

勇者「ケーキ!!」

勇者「いや落ち着け勇者」

勇者「毒いりの場合も…」

フワーン

勇者「………」グー

128: 2011/01/07(金) 20:45:12.50
魔王「丁度ケーキを作ってたからお茶と一緒に…何してるんだ?」

勇者「食欲と使命、どちらを取るべきか迷ってるんだ」ゴンゴン

魔王「迷うのはいいが、テーブルに頭を叩きつけるなよ」

勇者「あうあう」ゴンゴン

魔王「はぁ…」コポコポ

勇者「ここで負けたら男が…」ゴンゴン

魔王「やはりダージリンが一番だな」ズズッ

勇者「」ピキ-ン

魔王「おお、決まったか」

勇者「腹が減っては戦はできぬっていうよね!」

魔王「昔の人間はいい言葉を残したな」ゴクゴク

129: 2011/01/07(金) 20:49:52.04
勇者「うま!なんだこのケーキ!」モグモグ

魔王「作った側として嬉しい言葉だ」ズズ-

魔王「さてと…何から話すか」カチャリ

勇者「ひゃぁひょうひゃったひゃ」モグモグ

魔王「飲み込んでから喋れ」

勇者「」ゴクン

勇者「ああそうだったな」

魔王「口にクリームついてる」

130: 2011/01/07(金) 20:56:02.80
魔王「まず勇者、お前はどこに向かっているつもりだ?」

勇者「南東の果てだが」

魔王「…馬鹿だな」

勇者「なっ、なにがだよ!」

魔王「ここは人間達で言う北の果てだ」

勇者「…えっ?」

魔王「だから、道というか方向間違えてるんだよ」

勇者「なん…だと…」

魔王「地上で使う羅針盤は渡されなかったのか?勇者のくせに」

勇者「あーまぁ…そうだな」

魔王「ふむ」

131: 2011/01/07(金) 22:57:32.78
魔王「普通勇者は名誉高いもののはずだが」

勇者「名誉なわけない。少なくとも、俺の国ではな」

魔王「だろうな。ならばそんな貧相な鎧を国が間違っても渡すわけがない」

勇者「貧相いうな貧相」

魔王「あと、悪いがお前の力は荒削りだ。我流で剣を振り回してる感がある」

勇者「へ?いつのまに見てたんだ?」

魔王「ここの窓からお前が見えてた。魔物相手によくやってたなぁ」

勇者「ズルい…」

132: 2011/01/07(金) 23:08:03.82
勇者「魔王にこう、素を暴かれるのはいい気分じゃないな」モシャモシャ

魔王「そういいながら魔王のケーキを食らうお前は何かずれてる」

勇者「俺の出身は南の果ての王国だよ。分かるだろ?」モシャモシャ

魔王「すまないが箱入り魔王なものでな」

勇者「……。俺の国では罪人、主に政治犯が“勇者”にされてほっぽり出されんだ」

魔王「ほう。また何故政治犯を勇者に?」

勇者「そんな奴、国にとって邪魔だろ?じゃあ国が嫌なら出してやるって感じじゃねぇの」

魔王「なるほど、実に面白いシステムだ。弱い奴は野垂れるしな」

魔王「で?」

133: 2011/01/07(金) 23:08:13.40
勇者「魔王にこう、素を暴かれるのはいい気分じゃないな」モシャモシャ

魔王「そういいながら魔王のケーキを食らうお前は何かずれてる」

勇者「俺の出身は南の果ての王国だよ。分かるだろ?」モシャモシャ

魔王「すまないが箱入り魔王なものでな」

勇者「……。俺の国では罪人、主に政治犯が“勇者”にされてほっぽり出されんだ」

魔王「ほう。また何故政治犯を勇者に?」

勇者「そんな奴、国にとって邪魔だろ?じゃあ国が嫌なら出してやるって感じじゃねぇの」

魔王「なるほど、実に面白いシステムだ。弱い奴は野垂れるしな」

魔王「で?」

134: 2011/01/07(金) 23:16:54.01
魔王「勇者となった奴は魔王討伐したら許して貰えるってわけか?」

勇者「な、なんで分かるんだよ」

魔王「お前の話をまとめれば分かるさ」

勇者「うう…だから頭のいいやつは嫌いなんだ」

魔王「さてと。お前はどんなことをやらかしたんだ?」

勇者「……」モグモグ

魔王「お前もまた“勇者”、つまり魔王討伐しにきたってことは政治犯だろ?」

勇者「……別に?面白みのない理由だよ」

勇者「戦争は止めろって城に怒鳴り込みにいっただけだ」

135: 2011/01/07(金) 23:28:04.77
魔王「馬鹿だなぁ。無鉄砲にも程がある」

勇者「う、うるさいな!その時はその…必氏だったんだよ」

魔王「怒鳴り込みなぁ…。何かそうしないといけない理由でもあったのか?」

勇者「……家族が、氏んだんだ。戦争で」

魔王「…」

勇者「父さんは戦にいって戻らなくて、母さんと妹は戦火に焼かれて灰になった」

魔王「なぜお前は駆り出されなかったんだ?」

勇者「その時は丁度骨折しててな…退院前日に、全て失った」

魔王「そうだったのか。そして怒って…今に至ると」

勇者「ああ、今に至る」

136: 2011/01/07(金) 23:36:03.82
魔王「はぁ…そしてお前は行く場所を間違えお茶を飲んでるわけだが」

勇者「わけだが?」

魔王「南東の果ての魔王は正直かなり強いぞ。本気出せば国ひとつ滅ぶ」

勇者「うげ」

魔王「そこで聞きたいわけだが、お前は生きたいのか?」

勇者「…そりゃ、生きたいさ」

魔王「国に帰れたら何をするつもりなんだ?」

勇者「あー、ひっそり細々と暮らすさ」

魔王「意外だな。国王を討つとかいうかと思ったんだが」

勇者「無茶だろ。国王討っても別の奴が国王になるだけだ」

魔王「ドライだな。まあいい」

勇者「は?何が?」

137: 2011/01/07(金) 23:41:49.34
魔王「私も南東の魔王にちょいと恨みがあってな。丁度いいチャンスだ」

勇者「おい、じゃあなんだ?俺に付いてくのか?」

魔王「迷惑か」

勇者「いや別に迷惑じゃないけどよ…魔王連れてくとか…変な気分」

魔王「私も城警備員に飽きたとこだしな」

勇者「城警備員て…。じゃあ誰かここに留守番させるのか」

魔王「なあ」

勇者「は、はい!」

魔王「ここに来るまで、私以外に誰かとあったか?」

勇者「そういや…まさか、お前以外この城は誰もいない?」

魔王「その通りだ」

138: 2011/01/07(金) 23:47:31.38
勇者「でも森にはいたぞ?ごちゃごちゃ」

魔王「あいつらは外が好きなタイプなんだよ」

勇者「というか、なんで誰もいないんだよ…」

魔王「皆頃しだよ、私を除いた。相手は―」

勇者「南東の魔王か!なるほど、だから」

魔王「違う。あいつは領地に入り込むほうだ」

勇者「…あ、そう…」

魔王「かなり昔だが、勇者にな。禁断術を使われたらしくて」

勇者「……一度討伐されたわけですか、この城」

魔王「まあな」

勇者「何年ぐらい一人なんだ?」

魔王「50年ちょいかな」

勇者「うえ!?」

140: 2011/01/08(土) 00:21:58.94
勇者「ででででもお前、お婆さんじゃないし!」

魔王「…どこまで馬鹿なんだ。私は魔物だぞ?」

勇者「あ」

魔王「氏ぬときは氏ぬが、人間よりは長生きだ」

勇者「ち、チートなんだなお前ら…」

魔王「チートだからこそ討たれるんだよ」

勇者「あれ?お前、つまり50年も前から…」

魔王「……もうこの話は終わろう。日も傾いてきた。夕飯作ってくるよ」

勇者「あ、ちょ」

魔王「ここから右いってまっすぐいって左に風呂。沸いているはずだから」

勇者「…分かった。お風呂借ります」

魔王「ああ」

141: 2011/01/08(土) 00:25:14.41
カポーン

勇者「ひろっ…」

勇者「風呂掃除たいへんそうだな」バシャン

勇者「久びさの風呂ー…」

勇者「……」

勇者「……こんな広くっちゃひとりは辛いんじゃないのか?」

142: 2011/01/08(土) 00:31:44.05
勇者「風呂あがった」

魔王「ん、丁度ご飯だ」

ホカホカ

勇者「うわーお」

魔王「ちょっと張り切ってみた」

勇者「お前なんなの?魔王が料理うまいなんて聞いたことないよ?」

魔王「いいだろ別に。好きなんだから」

勇者「好きこそ物の上手なれ、だったかなんだったか」

魔王「そんな感じだ。ほら食え」

勇者「わーい!」

魔王「本当にご飯で打ち解ける奴だな」

勇者「三大欲求には勝てません」モグモグ

魔王「ついでに言うが私に変なことしたら、それがお前の命の終わりだからな」

勇者「しませんやるつもりありません。だからその目は止めて下さい」

143: 2011/01/08(土) 00:38:30.84
魔王「寝場所なんだが」

勇者「ああ」

魔王「大掃除で私のベッド以外全部捨ててしまってな」

勇者「資源が無駄すぎる」

魔王「だから私と同じベッドで」

勇者「怪しい!そうではないと分かってはいるが怪しすぎるわ!」

魔王「かなり広いベッドだから安心しろ」

勇者「は、はぁ…」

魔王「お前は寝間着とか着るのか?」

勇者「ああ。ゆるい生地の服があるし」

魔王「分かった。何か必要だったら言えよ。私ははだかで寝るからいいが―」

勇者「いやいやいや、着ようぜそこは!」

144: 2011/01/08(土) 00:42:27.53
寝室

勇者「でかすぎる!部屋もそうだが!ベッドが!」

魔王「な、無駄すぎて引くだろ?」

勇者「人何人寝れんだよ…10人は余裕だな」

魔王「私はすぐ眠るタイプだから、話しかけても返事ないと思う」ゴソゴソ

勇者「やっぱ脱ぐのか。もういいけど」

魔王「じゃ、おやすみ」

勇者「ああ、おやすみ」

勇者「(おやすみっていうの久しぶりだな)」

145: 2011/01/08(土) 00:44:00.79
つーわけでこちらも寝ます
明日からしばらく忙しくなるので亀更新になると思います
おやすみなさい

148: 2011/01/08(土) 10:17:46.52
チュンチュン

勇者「おぉ…朝か」ムクリ

勇者「あれ。魔王が居ないよ?」

勇者「は!これはまさか!あれか!」ピキーン

勇者「洗面所に『感染症の世界へようこそ』とか口紅で書いてあるパターンか!」

勇者「つ、つまりは!俺は気づかぬまま魔王と」

魔王「妄想中失礼だがとりあえずぶん殴っていいか?」ゴンッ

勇者「いって!」

魔王「朝御飯できたから叩き起こしに来たら工口トークの真っ最中で気まずい私の気持ちになれ馬鹿」

勇者「冗談だよ…細腕のわりに力はあんのな」

魔王「魔王だからな」

勇者「思わず納得してしまった」

149: 2011/01/08(土) 11:54:24.00
勇者「パン柔らかい」モシャモシャ

魔王「焼きたてだからな」

魔王「まあご飯中悪いんだが」スッ

勇者「地図か」モシャモシャ

魔王「そうだ。この城を中心に周りの国とかが描いてある」

勇者「俺の国は描かれてないな」モシャモシャ

魔王「南の果てだろう?ここからかなり遠いはずから載ってないんだろうな」

勇者「なるへそ」

魔王「ここが南東の果ての国だ」トン

勇者「…南東の果て、か?」

魔王「あそこの魔王は侵略に侵略重ねてるからな。ここや人間の国より広大な土地を持っている」

勇者「どれだけ恐ろしい奴なんだよ…」モシャモシャ

魔王「本当に怖がってるのか分からないな、お前」

150: 2011/01/08(土) 13:35:45.82
魔王「ここから少なくとも一ヶ月はかかるんだ」

勇者「徒歩でか?」

魔王「ああ、徒歩でだ」

勇者「うーん…移動魔法使えないのかよ」

魔王「私は生まれつき攻撃魔法しかできないんだよ」

勇者「なんと。じゃあ仕方ないな、地道に…」

魔王「はぁ…。お前は魔王が自身の治める地で、徒歩で移動すると思っているのか?」

勇者「え?じゃあどう移動するんだよ」

魔王「決まってる」

魔王「魔物しかあるまい」

151: 2011/01/08(土) 13:57:43.17
勇者「…色々と疑問を感じるが、そうすると何日ぐらいだ?」

魔王「だいたい…二日三日だな」

勇者「速すぎるだろ!どれだけ快速なんだよ!」

魔王「そりゃ飛ぶからな」

勇者「飛ぶのかよ!?」

魔王「しかしまた、バレる確率も高くなるんだ」

魔王「だから降りた瞬間から戦うはめになる可能性もある」

勇者「……」

魔王「それでもいいならいいが。止めるなら今のうちだぞ?」

勇者「やってやらぁ!俺は首をとってやるからな!」

魔王「ふ、その心意気だ。さて出かける準備するぞ」

勇者「あ、待ってまだパン残ってる」モシャモシャ

魔王「なんだか言い様の知れない不安を感じた」

152: 2011/01/08(土) 14:02:57.67
ガタガタ

勇者「なにしてんだ?」

ゴソゴソ ガタッ

魔王「しばらく空けるから少し整理しないとな」

勇者「それ以上整理すんのかよ…」

魔王「これでいい。後はこれを着て」フワッ

勇者「フード付きマント?」

魔王「相手に早々と分かられると初っぱなから本気出されるからな」

勇者「初っぱなから本気とか…手加減する気とか相手には一切ないんだな」

魔王「会えば分かるが、話し合いより殴り合い主義だからな」

勇者「ここに最初に迷って良かったと心から思った」

156: 2011/01/08(土) 19:17:34.17
魔王「さてと…あいつはどこかな」キョロキョロ

勇者「例の飛ぶやつか?あ、魔物なんだよな?」

魔王「例の飛ぶ魔物だ」

ガサ

勇者「ひぃ!?」

魔物「キュイキュイ」

勇者「ち、ちっちゃい…。ネズミみたいだな」

魔王「ん、お前か。すまないがしばらく城を空けるぞ。皆に伝えてくれないか」

魔物「キュイ。キューイ?キュイキュイ」

魔王「そう、南東の魔王の場所に。ありがとう、気を付けるよ」

魔物「キュキュ」

魔王「ああ、気が利くな。あいつ呼んでくれ」

勇者「何言ってるかさっぱりわかんねえな…」

魔物「キュイ?」

魔王「こいつは勇者。こっち側だから安心しろ」

魔物「キュイキュイキーュイ」

魔王「ふふ、それはいってはダメだろ」

勇者「なんか俺馬鹿にされた?」

157: 2011/01/08(土) 19:18:53.04
バサ

勇者「ひぃ!?なんか来た!」

魔王「例の飛ぶ魔物だよ。おーいここだここ」

魔物「グギャリアゲハァ!」バサバサ

勇者「なんか外見と鳴き声共々めちゃくちゃ怖いんですけど!」

魔王「よーしよし。紹介しよう、こいつはプラちゃんだ」ナデナデ

プラちゃん「グギャリア!」

勇者「可愛らしい名前と何一つとて一致してないよ」

魔王「話は聞いてるな?」

プラちゃん「ギャギャキャア!」

魔王「良かった。ありがとうな」

魔王「おい勇者、背中に乗ってもいいぞ」ヒョイ

勇者「魔王すげー!!」

158: 2011/01/08(土) 19:20:43.13
魔王「腰に掴まれ。下手すると振り落とされるからな」

勇者「おお神よなんたる試練を……。せいや!」ガシ

勇者「(腰ほっそ!)」

魔王「さ、行こう」ペシペシ

プラちゃん「ウギャラオス!」

フワリ
バサバサ

勇者「飛んだぁぁぁ!皆様ご覧ください、飛びましたよぉぉ!?」

魔王「そりゃ飛ぶだろ。翼生えてるんだから」

勇者「ま、まあそうだけどさ」

魔王「そうだ。勇者、何か下で異常があったら教えてくれ」

勇者「お安いご用だ。任せとけ」

プラちゃん「ギャラエオス!」

勇者「お前じゃねえ!そしてもう少しまともに鳴けないのか!」

159: 2011/01/08(土) 19:30:03.04
バサバサ

勇者「すごい、ぐんぐん進んでいく。景色があっというまに後ろに行くよ」

魔王「こいつはここらで一番速いからな。まだ若いから体力もある」

勇者「へぇ」

魔王「夜になるまで飛ぼう。夜は別のやつらがぶんぶん飛んでるからトラブルが起きやすい」

勇者「ぶんぶん飛んでいるのか」

魔王「そう、ぶんぶんだ」

プラちゃん「グェギョリアス!」

勇者「ねえこいつの鳴き声どうにかならない!?」

魔王「残念ながら生まれつきだからな。命令しても直せないのは仕方がない」

魔物「グギョギョギョ!」

勇者「おいなんか笑ったぞ!理由は分かんないけどすげームカつくんだけど!」

魔王「…仲良いじゃないかお前たち」

160: 2011/01/08(土) 19:36:17.49
なんか魔物とプラちゃんがごっちゃだな。すまん


バサバサ

魔王「……」

勇者「……」

プラちゃん「……」

バサバサ

魔王「……」

勇者「……」

勇者「おい、ぷ、プラちゃん」

バサバサ

プラちゃん「……」

勇者「尻尾で俺の頭叩いてんじゃねえよ」

プラちゃん「……」

魔王「……川だ」

勇者「いてっ!こら止めろって!」バシバシ

魔王「もう少しだな」

プラちゃん「……」

勇者「おい聞いてんのかプラぁ!」

魔王「夕日が沈んでる」

プラちゃん「……」

魔王「今日はそこで休もう」

プラちゃん「ギョリアリマナス!」

勇者「てめぇ!」

161: 2011/01/08(土) 21:37:01.97
魔王「この調子だと明日の昼には着きそうだ」

勇者「そうか」

魔王「怖いか?」

勇者「ああ、怖いよ」

魔王「素直なんだな。ちょっとおちょくろうと企んだのに」

勇者「悪趣味だな。別に、見栄なんて張る必要ないし」

魔王「その通りだな。私も正直、勝てるか不安だ」

魔王「恐らく私たちが移動してることも薄々わかってると思う」

勇者「そうなんだ。どうするんだ?」

魔王「警備の穴を攻めるしかないだろう」

魔王「でも、今は寝よう。分かってるのは、明日起きれるということだけだ」

勇者「…うん。おやすみ」

魔王「おやすみ」

プラちゃん「クラァゥ」

勇者「鳴き声変わった!?」

162: 2011/01/08(土) 21:44:56.08
勇者「……眠れない」

魔王「」スースー

勇者「気持ち良さそうに寝やがって…」

勇者「こんな若い顔して、国を治めるんだよな」

魔王「…ま」ボソ

勇者「」ビックゥ!

魔王「…とうさま…やだよぅ…おいてかないで……」

勇者「…夢?」

魔王「へんじしてよ…」ポロポロ

勇者「ど、どうすれば…」

勇者「ええい」ナデナデ

勇者「俺がそばにいる。仲間だろ、俺らは」ナデナデ

魔王「……う」モゾ

勇者「!?」ビクッ!


魔王「……」スースー

勇者「…はぁ。頑張って寝るか」

164: 2011/01/08(土) 21:52:52.49
翌朝

バサバサ

魔王「風が冷たいな」

勇者「うー、風邪を引きそうだ」

魔王「馬鹿でも引くのか?」

勇者「失礼な!色々と失礼な!」

バサバサ

魔王「ふ、勇者はからかいがいがあるな」

勇者「ワザとからかわれてるんだし。勘違いしないでほしいし」

魔王「そうむくれるな」

バサバサ

勇者「お前、細いな。ちゃんと食ってるのか?」

魔王「大きなお世話だ。どうも日々の掃除が功をなしているらしい」

勇者「マメだな」

魔王「中でも風呂とトイレ掃除は大切だしな」

勇者「トイレはピカピカにすると女神が出てくるらしいぞ」

魔王「なにそれ怖い。そもそも魔王のとこなんでくるか?」

勇者「はは、それもそうか」

バサバサ

165: 2011/01/08(土) 22:18:50.58
バサバサ

魔王「!」

勇者「?」

魔王「左に向かいつつ降下!」

プラちゃん「!」グイッ

勇者「え、なにわあああああ!」

ドパパパパパパ

勇者「なんだこれ!花火か!?」

魔王「違う、攻撃だ!くそ、もう少しなのに!」

勇者「どうする?!」


魔王「降りる!」

勇者「はぁ?!こんな上空から降りるのかよ!」

魔王「プラちゃん、お前は帰れ!そして魔物を戦闘体制に!攻めてくるかは分からないが一応だ!!」

プラちゃん「ギュルリヂリ!」

魔王「行くぞ、勇者!」グイッ

勇者「やけっぱちじゃあ!」バッ

ヒュウウ

166: 2011/01/08(土) 22:29:31.68
ビュウウウウ

魔王「専門じゃないが…」

魔王「浮翌遊!」

フワッ

勇者「止まった…と言うより浮いた…?」

魔王「長くは持たない。早く地上に降りよう」

フワフワ

魔王「剣…出しとけよ?何が起こるか分からない」

勇者「ああ。この異様な雰囲気、気分のいいもんじゃないな…」

魔王「あ、やばい。慣れないことしたから限界だ」

勇者「え?もう?」

グラ

勇者「ぎゃあああああ!!」

ドシャッ

167: 2011/01/08(土) 22:37:29.89
勇者「あいてて…尻打ったな」

魔王「…いる…」

勇者「なんで平然と着地しているんだよお前」

魔王「空気読め馬鹿」

ガサガサ

魔王勇者「!」

魔物「! くぎゃ―」

勇者「はぁ!」ザク

魔物「ぐぉぉぉぉ!…」バタ

魔王「容赦ないな、お前」

勇者「仲間を呼ばれると困る。それに、今は魔王、お前以外は敵だからな」

魔王「…ふ。じゃあ私も、お前以外は全員敵だ」

勇者「じゃ、行きますか」

魔王「行こう」

172: 2011/01/09(日) 09:05:41.58
魔物「きゃきゃきゃ!」バッ

勇者「おらぁ!」ザンッ

魔王「気づかれたか…。勇者、気をつけろよ。どこから出てくるか分からない」

勇者「了解。勝算は?」

魔王「お前の能力と体力次第だな」

勇者「じゃあ勝てるな!」

魔王「……。人間は面白いな」

魔王「今の目標はあの城までたどり着くことだ。いいか?」

勇者「ああ!力を振り絞って頑張るからな!」

魔王「うん、でもまだ振り絞っちゃダメだからな」

173: 2011/01/09(日) 09:06:34.50
魔王「破壊!」ズドン

勇者「うら!」ザンッ

魔王「粉塵爆発!」ドドドドーン

勇者「くぉら!」バシュ

魔王「…敵が、多い、な」ハァハァ

勇者「なんだもう息切れか?」

魔王「ふ、引きこもりだったのでな」

勇者「しかしまあ城まで何とか来たな…お、渡り橋かこれ。ボロいなぁ」

魔王「ああ。これからが本当の始まりだ。覚悟は?」

勇者「そんなもん、とっくの昔に出来てる」

魔王「ふふふ、頼もしいな」

スタスタ ギィ バタン

勇者「城への渡り橋が…閉じた!?」

魔王「なるほど。逃げられないな、これで」

魔王「(これは…言いたくはないが…嵌められたか)」

魔王「(だいぶ苦戦しそうだ)」

174: 2011/01/09(日) 09:07:10.95
勇者「大理石の床…」

魔王「これでもかとばかりに贅沢しているな」

コツコツ

魔王「…やけに静かだ」

勇者「不気味だな」

魔王「これは罠がかけられてると考えた方がいいな」

勇者「多分そうだろうな」

コツコツ

魔王「!」

魔王「いや、罠じゃない。罠なんて仕掛けてない」

勇者「え?」

魔王「完璧に騙せるとは思わなかったが、私の正体はとうにバレているみたいだ」

勇者「な!?」

魔王「ここの魔王さまから直直に招待されているんだよ、私達は…」

勇者「つまりどういう意味だ?」

魔王「なんとなく歩いていたんだが、意識を操作されたかしたらしいな。勇者、私達は今はどこにいる?」

勇者「どこって…でかい扉の前だが。……あ!?」

魔王「そうだよ」

魔王「…南東の魔王の部屋だ」

175: 2011/01/09(日) 09:08:27.23
勇者「……」ゴクリ

魔王「あの魔王もずいぶん余裕ではないか…」

勇者「どうするんだ?」

魔王「ああ、開けるよ。止まってても何も解決しないからな」

魔王勇者「せーの、」

グッ ギギギィ

魔王「……」

勇者「な、なんてオーラだ…」

???「勇者よ、よくぞ参られました」

???「そして、悲運の姫君も」

魔王「私はもう姫ではない。分かっているだろう」

??「これはこれは失礼。さて、お察しと思いますが自己紹介をさせて頂きます」

??「南東の果てを治める、飽くなき欲を持て余す者―」

魔王「わたくしが、魔王でございます」ニコ

勇者「…じゃなかったらどうこのオーラ説明するんだよ…」

魔王「……」

176: 2011/01/09(日) 09:20:01.41
側近「いかがなさいます、魔王様」

魔王「ええ、戦いますよ。ただ」

ズブッ

勇者魔王「!?」

側近「ぐはぁ!ま、まおうさま!?」

魔王「おまえの力を頂いてからにします」

側近「まお…助け!助けて!…」ガク

勇者「な…あいつ、味方を頃したぞ!?」

魔王「残虐非道…噂通りじゃないか」

魔王「さて…勇者と魔王。あり得ない組み合わせの二人がどのような戦いを見せてくれるか」

魔王「とくと見せてもらいましょう」ニコ

勇者「……」

魔王「……」ギリ

177: 2011/01/09(日) 09:21:23.69
初詣いってきます。
更新はまた夜頃になります。
バトルシーンどうしよ本当に

184: 2011/01/09(日) 19:23:16.45
勇者「あいつもの凄くヤバイ奴なんじゃ…」ボソボソ

魔王「だから言っただろう?」ヒソヒソ

勇者「あと魔王って女しかなれないの?」ヒソヒソ

魔王「あいつと私は色々特殊なんだよ―っ!?」

ドンガラガッシャン

勇者「まおーー!?いきなり吹っ飛ばされませんでした!?」

南魔王「ああ、つい手が出てしまいました」

南魔王「焦らされるのは苦手でして。そろそろ殺ってもよろしいですよね?」ペキポキ

勇者「(やばい、洒落になんないほどやばい!)」

185: 2011/01/09(日) 19:26:38.55
魔王「くそ…ずいぶんとまた強い力だな」トコトコ

魔王「そうか、さっきのあれで力を強くしたのか。厄介だ」トコトコ

勇者「あ、戻ってきた。何でもなかったかのように」

魔王「フードは意味をなさなかったな」パサッ

勇者「大丈夫か?」

魔王「大丈夫だ、問題ない」

南魔王「さて、貧弱国の箱入り姫様はどう戦うのですか?」

魔王「…こうだよ」

魔王「裂けろ!」

186: 2011/01/09(日) 20:26:22.20
ゴゴゴゴゴ
メシャア

勇者「うお、床にでかいヒビが!?」

南魔王「おっと」グラッ

南魔王「こんなのでわたくしがやられるとでも?」

魔王「さっさと堕ちろよ、魔王」

南魔王「お断りしますよ、魔王」

魔王「おい勇者」

勇者「はい!」

魔王「私が攻撃をしたらすぐに斬り込みに行け。いいか?」

勇者「お、おう」

魔王「行くぞ―はぁぁぁ!」ゴウッ

勇者「うりゃぁぁぁぁ!」ダッ

南魔王「あはははは!わたくしに効くと思いますか!」

187: 2011/01/09(日) 20:58:31.58
勇者「…やった」

魔王「やれたと自信をもって思えるか?」

勇者「えっ」

ドゥン

魔王「な?」

南魔王「ふむ。なかなかのものですね」

勇者「傷一つついていないんですが…」

南魔王「これは面白いですね。こんな刺激、何十年ぶりでしょう」

勇者「魔王」

魔王「なんだ」

勇者「説得はもうやめることにした。してる間に吹っ飛ばされそう」

魔王「ああ、いい判断だ。あいつ話聞かないから」

勇者「というわけで、もう一度だぁ!」ウワァァァ

魔王「おいちょっと色々待て馬鹿野郎!」

188: 2011/01/09(日) 21:06:33.23
勇者「だりゃあああ!」

南魔王「これっぽっちですか」

勇者「!? 素手で止めた!」

南魔王「単体ではつまらないですね。ここお留守ですよ」ドスン

勇者「!」ヒュウウ...ドサ

魔王「勇者!お前何をした!」

南魔王「軽く腹を殴っただけですが?ああ人間には強いんでしたね」

魔王「このっ…おのれ!破壊!」

グシャン

189: 2011/01/09(日) 21:14:11.37
魔王「はぁっ…、しばらくは奴も動けないだろう」

魔王「勇者?しっかりしてくれ」パシパシ

勇者「……」

魔王「…心臓と肺が停止している」

魔王「たしか人間でこうなったときは息を吹き込んで胸を押すんだったな」

魔王「いち、に、さん、し、ご、ろく、なな…何回までだ?」

魔王「すぅっ、ぷーっぷーっ」

魔王「いち、に、さん、し、ご、頼む、あいつを倒すのはお前しかいないんだ」

魔王「すーっ、ぷーっ、ぷーっ」

……

勇者「」ピク

魔王「! 勇者?」

勇者「…ん?俺は…なにしてんだ、ここで?」

魔王「大丈」

ボゴォォン

191: 2011/01/09(日) 21:44:42.84
勇者「魔王!?また吹っ飛ばされたのか!?」ガバ

南魔王「ただの足止めかと思いきや…ずいぶん思いきったことを」

勇者「は?」

南魔王「稀にいるんですよね。“心”を持ってしまう魔物が」

勇者「何をいってんだ?」

南魔王「それが悲劇を起こすのに。まったく、いらない物をどうして人間は持つのでしょう」

勇者「(完全に自分の世界だ)」

魔王「違う…心を持つのは、私たちも同じなんだよ…」ヨロ

勇者「魔王!」

魔王「私たちは、長く生きてしまったから、こんなことしてるから忘れてしまっただけだ」

南魔王「では、元はあったと?」

魔王「そうだよ…」

192: 2011/01/09(日) 21:52:26.83
南魔王「やれやれ。あなたは帝王学とか習わなかったのですか?」

魔王「習ったよ、みっちりとな」

南魔王「ならば。心―いえ、自己の感情などいらないと思わなかったのですか?」

魔王「思った。でも、おかしくないか?」

魔王「無表情に自分の力と権力で皆を従わす。…こんなの、表面上でしか皆はついてきてくれない」

勇者「(なんか空気になってしまった…)」

南魔王「あなたは異端ですね。心などわたくし達には存在しない」

南魔王「従わないのなら消してしまえばいい」

魔王「だから、それがおかしいんだ」

193: 2011/01/09(日) 21:59:52.12
魔王「違う意見の者も、逆らう者もいる。でもそういうやつらこそ居なくてはいけないんだ」

魔王「どうしてお前はそれを認めない」

南魔王「さて、一体何の話からこうなったのやら」

勇者「(俺はもはやついていけない)」

南魔王「心など不要。あなたは異端。少なくともわたくしはそう知りましたが他は分かりませんね」

魔王「…ああ、私も何言ってるか分からなくなった」

勇者「ダメじゃん」

南魔王「話を聞きすぎて頭がクラクラします」

南魔王「改めていいますと、わたくしには心などありません。だからあなた達に慈悲など感じません」

南魔王「だから」

南魔王「ここでお氏になさい」スッ

魔王「!」

バシュン

194: 2011/01/09(日) 22:10:47.29
魔王「くっ」シュウウ

南魔王「受け止めましたか」

南魔王「あなたが人間の国へ攻め入らないのが分かりません」

南魔王「あんな貧民たちはわたくし達の支配下で生きていけばいいのです」

勇者「いわせておけばペラペラと!」

魔王「勇者」

勇者「お前のせいで俺の国が大変なんだよ!」

勇者「平和に暮らしていたのに、勝手に攻めやがって!おかげで国は戦争だらけだ!」

勇者「ここは勇者らしくてめーの首を持ち帰ってやる!」

魔王「……ていうかお前の目的は魔王討伐だったもんな」

勇者「うん、さっきから言い出せなかった」

195: 2011/01/09(日) 22:26:49.28
南魔王「ああそれで来たんですね。国王も無駄駒使いますね」

勇者「あの野郎が無駄なことするのはいつもだ。それに俺は無駄駒じゃねえ」


南魔王「ひとりじゃ満足に攻撃もできないのに?」

勇者「ああ。ひとりじゃあな」

勇者「でも俺にはこいつがいる」グイ

魔王「おいおい…」

南魔王「あは、あはははは!これは面白いですね!」

南魔王「魔王を使う勇者!今までに聞いたことありません」

勇者「だろう?」

勇者「そしてお前は俺を怒らせた。さっきまでとは違うぞ。な?魔王」

魔王「違うんだ」

勇者「ちょっと合わせて欲しかった」

199: 2011/01/10(月) 15:25:01.42
勇者「意気込んだはいいものの…どうすりゃ勝てるんだよ」

魔王「あ、良いこと思いついた」チョイチョイ

勇者「なんだ」

魔王「耳貸せ」

勇者「後で返してイデデデデデ」ギュウウウウ

30秒後

勇者「まだ打撃は与えてないがフィナーレと行こうか!」

南魔王「あなたたちの生のフィナーレですね。分かります」

魔王「あんまりかっ飛ばすなよ」

勇者「わーってるよ。さあ、もう一度だ」

魔王「ああ」

魔王勇者「でぃやああああああ!!」

201: 2011/01/10(月) 15:46:23.90
勇者「」

202: 2011/01/10(月) 15:52:50.85
誤爆した!

勇者「うらぁ!」

魔王「大地よひび割れろ!」ゴゴゴ

南魔王「次はあなたが先に来ましたか」

勇者「なんてな!」スッ

南魔王「え?」

ドシャン

南魔王「かはっ…な、何が」

魔王「簡単な戦略だよ。勇者に注目させて本命を撃ち込む」

勇者「運の尽きってわけかな」シャキン

ザグン

203: 2011/01/10(月) 16:11:58.00
ポタポタ

魔王「弱点は頭と心臓なんだよな、私たち」

魔王「あとは聖職者の持ち物とか」

勇者「(心臓貫通して背中までいってる…)」

南魔王「ちょっと…油断こいてしまいましたね」

南魔王「我ながらあっけなく。しかし」ガシッ

勇者「!?」

南魔王「道連れは連れていきますよ!」

魔王「勇者!」

勇者「がっちり掴みやがってる…ちょ、離せ!」

南魔王「一緒に、焼け氏んで下さい」

204: 2011/01/10(月) 16:45:38.75
南魔王「後悔と共に生きていきなさい、魔王!」ゴォッ

勇者「発火した!?」

魔王「勇者、手を振りほどけ!」

勇者「無理だっ…ギチギチに握られてる!どうしよう!」

魔王「落ち着け、剣で手を切り落とすんだ」

勇者「くそ…抜けろ…抜けた!」

勇者「よし、てちょっと待て!俺手首生えないよ!?」

魔王「落ち着けよ!相手のだよ!ちょっと貸せ!」スッ

勇者「うおおう」

スパッ

勇者「……危なかった…」ヘタリ

グラグラ

勇者「な、なんだ?」

魔王「主が氏んだから倒壊するのか…なんてアフターサービスのいい」

勇者「ほんとだな」

魔王「ああ」

勇者「んな暢気なこと言ってる場合じゃないよ!」

205: 2011/01/10(月) 18:06:07.32
勇者「ぜーはー」

魔王「どうにか逃げ切れたな…」

ガラガラガラ

勇者「城が瓦礫の山になった」

勇者「なぁ、これからここらはどうなるんだ?膨大な土地なんだろ?」

魔王「さあな…しばらくは混乱するだろうよ。私はきっちり土地を返してもらうが」

勇者「しっかりしてやがるぜ」

魔王「しかし、土産が首は首でも手首だとはな」

勇者「そういや、まだ手にへばりついてた!は、外れてくれ…」ヒィィ

魔王「信用度がかなり下がるが、いいのかそんなもので」

勇者「いいよ別に。仕方なかったし、無理矢理にでも認めさせる」

魔王「容赦ない勇者だな」

206: 2011/01/10(月) 18:39:04.98
勇者「することはしたし、これで国へ帰れる」

魔王「よかったな」

勇者「もしよかったら俺の国見に来ないか?無理だったらいいんだが」

魔王「そう…だな。……、行こうかな」

勇者「よし!そうと来たら行こうぜ!」

魔王「待て。この森だけだが移動にプラちゃん使おう。今は一応安全だし」

勇者「またあいつかよ!」

プラちゃん「ゲギャリスヤス!」バサバサ

勇者「なんで来るの速いんだよ!」

207: 2011/01/10(月) 20:17:34.68
バサバサ

勇者「国…どうなってんだろうなぁ」

魔王「何かあるのか」

勇者「俺が出たときにはまた戦争おっぱしめたからさ」

魔王「大変だな。なぜそこまでして国に帰りたいのかいまいち分からない」

勇者「帰る場所はそこしかないからな」

魔王「そうか」

勇者「ああ」

プラちゃん「グギャリア!グギャリア!」

勇者「何なんだよお前はぁぁぁぁ!!」

208: 2011/01/10(月) 20:22:40.86
トコトコ

魔王「さすが人間の里。賑わっているな」

勇者「あまり魔物に侵略されてない地域だからな。あ、団子発見」

魔王「へぇ。たくましいんだな」

勇者「ああ。お、パイだ」

魔王「これからもっと発展してくんだろうな」

勇者「あそこの屋台のまんじゅう旨そう」

魔王「さっきから食い物の話しかしてないよなお前」

勇者「お腹空いてるんだもん」

魔王「もんをつけるなもんを」


209: 2011/01/10(月) 20:28:03.47
トコトコ

勇者「なあ」

魔王「なんだ」

勇者「お前は俺のことどう思う」

魔王「大食い。たまに間抜け」

勇者「はい氏んだ!今ので俺の心氏んだよ!」

魔王「何故だ。ありのまま言っただけだろう」

勇者「さすが魔王、微塵の慈悲もない」

魔王「逆にお前はどうなんだ。私の事どう思う」

勇者「………」

勇者「クールビューティーでツッコミ性格もろもろが厳しいがたまにデレッと優しく」

魔王「…もういい。あと私がデレた覚えはない」

魔王「変態も追加な」

勇者「ええー」

212: 2011/01/10(月) 22:06:49.84
トコトコ

勇者「お?」

魔王「ん?」

勇者「新聞が落ちてる。ご…うかい?」

魔王「号外だな。豪快になにするんだ」

勇者「まあいいじゃねえか。読んでくれないか?」

魔王「ああ。……。………え?」

勇者「どうしたんだよ。珍しく固まっちまって」

魔王「勇者……何があっても狼狽えるなよ?」

勇者「? 一体なんなんだよ…早く言ってくれ」

魔王「お前の国、壊滅したらしい」

勇者「は?」

213: 2011/01/10(月) 22:11:55.73
魔王「お前の国は戦争に負けたらしいな。そして国の長は取っ捕まったと」

勇者「国の長?…ああ、国王のことか」

魔王「この新聞に書いてあることを信じると、ほぼ瓦礫だらけらしい」

勇者「それでも」

魔王「……」

勇者「それでも行くよ。俺はあの国で生まれたんだ。ずっとあの国の国民なんだ」

魔王「もし行ったとして、お前が苦しむだけだぞ」

勇者「それでもいいよ」

214: 2011/01/10(月) 22:23:24.34
勇者「また一からやり直せば良いんだよ、あの国は。その方が丁度良い」

魔王「そうか」

勇者「ボロボロでも、俺は復興に協力していくよ」

勇者「それが勇者だからな!」

魔王「そうか」

勇者「魔王も一緒に協力してくれないか?魔女で通せば―」

魔王「だめだ」

勇者「そう言うと―え?」

魔王「私をみんな待ってるだろうし…それに私は物を壊すことしかできない」

勇者「あ、そうか…」


215: 2011/01/10(月) 22:36:49.74
魔王「勇者、聞いてくれるか?」

勇者「う、うん」

魔王「私は寂しかったんだ、ずっと。城の皆が居なくなって」

魔王「でもお前が来てくれた。そして南東の魔王も倒せた」

魔王「感謝してるよ、ありがとう」

魔王「出来ればずっと一緒にいたいんだが、私には帰る場所がある」

魔王「それに…あまり大勢の人間とは関われないんだ」

魔王「私は曲がりなりにも魔王だからな」

魔王「だから、すまない」

勇者「いやいいんだけどさ……ずっと一緒にいたいって、え?」

魔王「でも離れていても私たちは大丈夫だよな?だって」

勇者「だって?」

魔王「だって仲間だろ」

216: 2011/01/10(月) 22:39:49.44
勇者「仲間……」

魔王「ああ、そうだろ?」

勇者「う、うん!そうだね、うん」

魔王「?」

勇者「あ、国が見えてきた」

魔王「おお…」

勇者「……。見事に、建物がない」

魔王「潰されたな、あれは」

勇者「全く…あの魔王よりも、人間のほうが容赦がなくて怖かったオチか」

魔王「どっこいどっこいだな」

勇者「そうだな」

217: 2011/01/10(月) 22:42:45.93
勇者「…ここで別れるか」

魔王「そう、だな」

勇者「数年後にはすっげー国にしてお前の耳にまで噂を流してやるからな」

魔王「ふ、意気込みがあってよろしい限りだ」

勇者「また国に平穏が戻ったらっつーか落ち着いたら、またお前のとこにいくよ」

魔王「待ってるぞ。ケーキを用意してな」

勇者「…あ」

魔王「どうした?」

218: 2011/01/10(月) 22:46:23.06
勇者「あいつの手首だ…」

魔王「…もういらないな、それ」

勇者「国がああなればな。これどうしよう」

魔王「貸してくれ」

勇者「ん」スッ

魔王「消滅―…さよなら南東の果ての魔王」

勇者「消えた…」

魔王「さて。長い立ち話はよそう」

勇者「そうだな」

219: 2011/01/10(月) 22:54:37.34
勇者「じゃあな、魔王」

魔王「あ、そうだ。少し」

勇者「なんだよ」

魔王「屈んでくれないか?」

勇者「こうか?」

魔王「」チュ

勇者「」

魔王「やはりお前の唇は温かいな。不快じゃない」

勇者「え?え?やはり?てか今、え?」

魔王「ふふ、またな勇者」ヒラヒラ

勇者「……は、反則だろ…っ!」カァッ


220: 2011/01/10(月) 23:03:01.78
―--
―――----
―――――------

爺「めでたしめでたし」

少年「えー」

少女「それだけ?勇者さまと魔王の間は」

爺「それだけじゃよ」

少年「そのあと勇者さまは魔王の所へいったりしたの?」

少女「いったの?」

爺「何回か行ったそうな。ほら、国が平和になったからの」

少年「そっかぁ、よかったね」

少女「よかったね」

??「こんにちはー」

少女「あ、誰か来たよ!」

少年「女の人だー」

爺「おおそうか。すまないが遊んでおいで」

二人「はーい」

パタパタ

221: 2011/01/10(月) 23:05:59.60
爺「……お前はさっぱり変わらんな」

女性「成長が遅いからな。まだ外見は20そこらだよ」

爺「わしはもう80歳だ。いつお迎え来てもおかしくはない」

女性「ふ、やめてくれよ。お前はまだまだ元気なんだから」

女性「しかし、この国も平和になったな…」

爺「皆が戦争を起こさないおかげだよ。やったことは無駄じゃなかった」

女性「そうだな。おめでとう」

爺「さて、今日は何を話そうか?」

女性「そうだな、初めて会った時から思い出してみるか?」

爺「そうしようか、魔王」

魔王「ああ。さて、どこからだ?勇者」





222: 2011/01/10(月) 23:10:34.06
終わりました。
皆様ありがとうございました。
超グダグダエンド\(^p^)/

223: 2011/01/10(月) 23:18:09.92
乙でした

234: 2011/01/11(火) 19:04:06.91
始めます。
女勇者と女魔王の後日談的なアレ。
基本ほのぼの?


姫「拐ってください!」魔王「はい?」

235: 2011/01/11(火) 19:04:48.04
ポカポカ

勇者「あー…なんかさ」

魔王「ああ」

勇者「こんな良い日なのに、とんでもなく嫌な予感がするんだ」

魔王「なんだ、お前もか。私もなんだ」

勇者「あれ、そうなんだ。なんだろうなこれ」

勇者「洗った洗濯物を泥の中に落とすとかか?」

魔王「またはお前がまた料理するとか騒ぎだすとか」

勇者「え。わたしの料理に何か文句でもある?」

魔王「おおありだ。過去に一度ぐらいは料理で人頃したことなかったか?」

勇者「ひどい。みんな笑顔で倒れていったよ、バタバタと」

魔王「…だめじゃないかそれ」

勇者「それにしても、何なんだろうなぁこの予感」

魔王「なんだろうな」

勇者「わたしは実はニュータイプなのだろうか」

魔王「それはないと思う」

236: 2011/01/11(火) 19:08:10.64
勇者「やな予感といえば…『新たなる勇者、見参!』とか?」

魔王「倒されるようなことはしてないはずだが」

勇者「でも来たとしたらどうする?」

魔王「返り討ちで終わるな。むしろただの暇つぶしになりそうだ」

勇者「さすが言うことが魔物の王だ」

魔王「侵略も周りにはする奴ないし」

勇者「じゃあ洗濯物が飛ばされるとか?」

魔王「ああ、ちょっとそれはやだな。でも今日は風が弱いぞ」

勇者「洗濯物を干してたら雨が振ってきたとか」

魔王「…洗濯物関係で何かあったのかお前」

237: 2011/01/11(火) 19:19:15.73
勇者「事実、誰か来たとして、平和ボケした魔王はちゃんと返り討ちできんの?」

魔王「平和ボケとは失礼だな。でも分からない、手加減しきれなくて消しちゃうかも」

勇者「うん、それはやめてね」

魔王「勇者こそ、性格がかなり丸くなったが。剣はまだ振れるのか?」

勇者「それなりに鍛錬してるよ。何が起こるか分かんないしな」

魔王「そうか」

勇者「ま、嫌な予感しても案外何も起こらなかったりするし」

魔王「そうだな。ただの思いすぎだったりするだろうし」

キャァァァァァァァ

魔王「……」

勇者「…なあ。今、森の方で何か…」

魔王「訂正。とんでもなく嫌な予感がする…」ハァ

勇者「奇遇だな、わたしもだ」

238: 2011/01/11(火) 19:19:45.18
魔王「悲鳴は森からか」

勇者「しかしなんでまた魔物のいる森に入るんだか」

魔王「迷い人という線もあり得る。というか大方それだろ」

勇者「そうだな。おーい、誰かいませんかー」

勇者「……」

勇者「返事がない。ただの屍のようだ」

魔王「いくらなんでもすぐ氏なないだろ。元気に悲鳴あげてたんだから」

勇者「魔物に襲われたとかいう可能性は考えないのか?」

魔王「いや、武器持ってる奴以外は襲わないことにさせてる」

勇者「そうか。じゃあどっかにまだいるかもなぁ」

カサ

魔王「ん?」

勇者「どうした」

魔王「こっちから音がした」

239: 2011/01/11(火) 19:23:02.62
魔王「んー…こっちからだと思ったんだよな」ガサガサ

勇者「おいおい大丈夫なのかよ。魔物いるかもしれないのに」ガサガサ

魔王「馬鹿か。私は魔王だぞ」

勇者「そうだった」

魔王「あ。……うん、誰かいる」

勇者「ん?どこどこ…本当だ。女の子?」

魔王「どうしよう、気絶してるみたいだ」

勇者「これは走ってきたのかな。足に無数の切傷」

魔王「綺麗な服来てるってことは旅人の類いではないな」

勇者「こんなとこで寝てると風邪引くよな。起きろー」ペチペチ

魔王「起きないな。仕方がない、連れ帰るか」

勇者「どうしてあんたが言うと誘拐するような響きになるんだろう」

魔王「…うるさい馬鹿」

240: 2011/01/11(火) 19:29:08.59
魔王「さて、ベッドに寝かせたは良いとして」

勇者「この子が起きた後のことだな」

魔王「絶対に起きたら『やばい拐われた!』とか言いいそうだな」

勇者「うーん、道端で倒れてたんだしそれはないだろう」

魔王「そうか?言わないにしても私見たらパニックになるかと思うんだが」

勇者「じゃあ角隠しとけばいいじゃん」

魔王「いずれバレるだろ…そして一番の問題なのはお前だ」

勇者「わたしか」

魔王「勇者が魔王と戦わずにむしろ仲良くいたら何も知らない奴からはどう映る?」

勇者「あー、なるほど。わたしが人間側を裏切ったとか考えられちゃうな」

勇者「しかも同居みたいなもんだしな。いや同居だもんな」

魔王「だろ?だから、どう説明すべきか…」

241: 2011/01/11(火) 19:31:43.82
魔王「さて、ベッドに寝かせたは良いとして」

勇者「起きた後どうするかだな」

魔王「絶対に起きたら『やばい拐われた!』とか言うよな」

勇者「うーん、道端に倒れてたんだしそれはないだろう」

魔王「そうか?言わないにしても私見たらパニックになるかと思うんだが」

勇者「じゃあ角隠しとけばいいじゃん」

魔王「いずれバレるだろ…そして一番の問題なのはお前だ」

勇者「わたしか」

魔王「勇者が魔王と戦わずにむしろ仲良くいたら何も知らない奴からはどう映る?」

勇者「あー、なるほど。わたしが人間側を裏切ったとか考えられちゃうな」

勇者「しかも同居みたいなもんだしな。いや同居だもんな」

魔王「だろ?だから、どう説明すべきか…」

243: 2011/01/11(火) 19:33:45.26
勇者「でもまだ顔からして幼そうだし、色々誤魔化せると思うんだけど」

魔王「子供侮るなよ。大人に比べて嘘には敏感だからな」

勇者「そんなもんか」

魔王「……」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「で、この子誰なんだろう」

魔王「さあ…着ている服からして上流貴族だな」

勇者「ふむ。そんな子が逃げてくるとは不思議なことだな」

魔王「政略結婚から逃げ出したって線も考えられるな」

勇者「謎はつきない」

魔王「ほんとに」

244: 2011/01/11(火) 19:36:11.93
勇者「ちょっと剣持ってくる。多分椅子のそばに起きっぱなしだ」

魔王「分かった」

ガチャッ

魔王「……」

少女「……ん」ゴロン

魔王「うおっ!?」ビク

少女「……」スー

魔王「びびった…な、なんだ寝返りか…」ドキドキ

魔王「全く驚かせるなよ…」ドキドキ

少女「……」

魔王「(あいつ遅いな)」

魔王「(まさか剣置いた場所が分からなくなったとか)」

魔王「(早く戻らないかな。気まずい)」

少女「あれ」パチ

魔王「(うわぁぁ前置き無しで起きたーー!!)」

245: 2011/01/11(火) 19:38:15.50
少女「んぅー、ここはどこですか?」

魔王「あ、えっと、うんとね、あははどこかな!」

少女「?」

魔王「(キャラがぶれまくってる!ええい落ち着け!)」

魔王「えっと…お城?」

少女「! ま、まさかまさか東国のお城なわけないですよね!?」

魔王「え、いや全く違う場所ですが…」

魔王「(東国…て勇者の故郷の近くだったか?)」

少女「よかったぁ…」ホッ

魔王「…もし良かったら行き倒れていた理由を」

勇者「魔王、ついでにお茶入れてきたぞー」

魔王、少女「!!」

246: 2011/01/11(火) 19:40:32.68
魔王「ちょ、ゆ、ゆ…」

勇者「あれ?起きたのかその子」

少女「あ、はい…」

勇者「え、なにこの冷えきった空気。何があったんだよ魔王」

魔王「ちょっと空気読め馬鹿!」

勇者「え?あ!!」

少女「もしかして…あなたが魔王さんなんですか?」

魔王「」ダラダラ

勇者「」ダラダラ

少女「あの!」

勇者、魔王「は、はい!」

少女「私を拐ってください!」

勇者「……」

魔王「はい?」

247: 2011/01/11(火) 20:10:51.27
魔王「えっと…そんな衝撃的なこと急に言われても」

勇者「どうするアイフル」

魔王「落ち着け。口半開きだ」

勇者「あらやだ恥ずかしい」

魔王「…色々言いたいが、まずお前は誰だ?」

少女「私は、東の国の…姫です」

勇者「…なん、だと…。お姫様ってお姫様だよな?」

魔王「それ以外になにがあるんだ」

魔王「で、そんなお前が何故森の中へ?かなり遠いはずなんだが」

勇者「政略結婚から逃げ出してきたとか?」

姫「いいえ。政略結婚ならまだしも…」

姫「私の命が危ないのです」

250: 2011/01/11(火) 21:20:01.70
魔王「詳しく頼む」

姫「はい。私の国は基本的に国王の息子が次期当主になるんです」

勇者「息子って、一般的な意味でか?」

魔王「一般的な意味だ。あと殴らせろ」ゴツン

姫「あ…あの、つづけますね。でも娘しか産まれなかった場合は長女が次期当主なんです」

魔王「そしてお前は次期当主だと?」

姫「話が早くて助かります。でも、私のママ…国王の妃には、今お腹に赤ちゃんがいるんです」

勇者「つまり…その子が男の子だったらその子が次期当主?」

魔王「なんだ。お前は女王になりたいのか?」

姫「いいえ。進んでなりたいとは思いません」

勇者「じゃあ何で?」

姫「私…私、もし産まれるのが弟だったら殺されちゃうんです」


251: 2011/01/11(火) 21:31:31.26
勇者「…なんで?」

姫「用済みになるんです。殺されなかったとしても、ずっと軟禁とか」

魔王「ああ…国としては男子のほうがいいと」

勇者「ひどい話だな…」

魔王「それで、何で拐ってほしいんだ?」

姫「国民に、私の存在を分からせるためです」

勇者「ああ、あんたは隠されて産まれたとか?」

姫「いいえ、私の誕生は公に公表されました。ついこの前は町見学にも」

魔王「じゃあ国民は一応知ってるんだな?お前の事を」

姫「はい。でも大臣達は…私を消したがってる。だから」

魔王「もし弟が産まれて自分が消されたら、国民は訝るだろうと。上手くいったら暴動も起こるだろうと」

姫「ええ。それが知れたら男女差別に厳しい国民のことです。クーデターやら起こすでしょう」

姫「…あんな国、なくなっちゃえばいいんです」

勇者「…境遇理由はともあれ国から使い捨て扱いされてんのは一緒だな…」

252: 2011/01/11(火) 21:36:31.64
魔王「それがお前の思い通りにはならないと思うぞ?」

姫「え?」

魔王「訝ることは訝るだろうが、どうせ国がもみ消すだろうし」

勇者「もし大臣云々が本当ならあんたを取り戻すことに消極的だろうな」

姫「……」

魔王「お前は今何歳だ?」

姫「じゅうさん…」

魔王勇者「若っ」

魔王「どうりで詰めが甘いわけだ」

勇者「いやまてこんな幼い子がそんなこと考えたのが凄いだろ」

魔王「…そんだけ折半詰まってたんだよな?」

姫「…はい」グス

魔王勇者「(泣かせちまった!)」

253: 2011/01/11(火) 21:47:19.54
魔王「あわわわ、な、泣くなよ」

勇者「ほ、ほら世間の波は強いのさ!それを乗り越えれば未来は明るい!」

魔王「ズバズバ言って正直すまんかった」

勇者「大変だったね?ここは安全…安全だよな?」

魔王「自分が生きてるってことはどういうことか考えろ勇者」

勇者「ほら安全だから!ね?」

姫「」エグエグ

勇者「(魔王!)」ピキーン

魔王「(勇者!)」ピキーン

魔王「一時間待ってろ!」ダッ

姫「…え?え?」

勇者「ドッジしようドッジ!」

姫「ドッジ?」

勇者「そう、内野と外野に分かれ…人数足りない!デジャヴ!」

姫「……(変な人…)」

255: 2011/01/12(水) 21:25:24.25
姫「そういえばあなたは女の人なんですか?」

勇者「そうだよ」

姫「なのになんでズボン履いてるんですか?」

勇者「勇者だから」

姫「なんであなたは勇者なんでしょう?」

勇者「運命がそう決めたんじゃないかな」

姫「運命ですか」

勇者「そう運命。デステニー」

姫「ディスティニー…。運命は…変えられますかね…」グス

勇者「あいつは変えられたよ。氏ぬしか道がなかった私を生かした」

姫「魔王さんが?」

勇者「そう」

姫「変えられますかね?」

勇者「変えられるよ」




魔王「なんだあのホワホワした会話」

256: 2011/01/12(水) 21:31:13.84
姫「勇者さんは許嫁はいましたか?」

勇者「そういやいなかったな。男っ気がすごくてみんな逃げちゃった」

姫「そんなですか?」

勇者「そんなでした。あんたは?」

姫「いますがかなりヘタレです。フクロウが首回すのをみて気絶しました」

勇者「……。男としてどうなんだ?」

姫「その後許嫁の妹さんが撃って焼いて食べてましたけど」

勇者「色々間違えたんだな、遺伝子」

姫「でも妹さんは破滅的に料理が下手なんです。氏にかけました」

勇者「へー、それはそれは。大変だな」




魔王「人事じゃねーぞ勇者!」

257: 2011/01/12(水) 22:14:22.71
姫「例えばの話、誰か私を助けに来るでしょうか」

勇者「あのヘタレ許嫁が来るんじゃないのか?」

姫「ヘタレは逃げることしか考えてませんので却下です」

勇者「世の中って厳しくなったよな」

姫「白馬にのった王子に来て欲しかったりします」

勇者「おおメルヘンすぎるな。まさかあんたに存在しないはずの粒子で出来た羽根とかついてないよな?」

姫「?」

勇者「いやなんでもない」




魔王「…だーくまたーのことか?」

魔王「お、もう焼き上がる」

265: 2011/01/14(金) 22:31:51.45
魔王「ケーキ出来たぞ」

勇者「待ってました」

姫「わあ、良い匂い」

勇者「城でもケーキぐらい出てたろ?」

姫「はい、まあ。でもこんな美味しそうなのは初めてです」

魔王「照れるな」

勇者「あんた照れると異常に無表情になるよな」

魔王「…表情筋が有給休暇使ってんだよ」

勇者「はいはい。こいつのおいしいんだよ」モグモグ

魔王「まだ切り分けてないぞ馬鹿」

勇者「固いこと言うなよ馬鹿」

魔王「そこに直れ。切り捨ててやる」

勇者「よっしゃぁ挑むとこだ!」

姫「えっと…」

266: 2011/01/14(金) 22:37:11.25
ひと悶着後

姫「仲良くやりましょうよ…」

魔王「いやこれでも仲は良い方なんだ」モグモグ

勇者「親友以上百合以下ってな!いたっ!」モグモグゴツン

姫「百合?お花ですか?」モグモグ

魔王「うーん、これから先も知らない方が良い」

姫「は、はぁ…」

勇者「しかしこいつ、男にめちゃくちゃモテるんだよ。特に筋肉バカとか」

姫「筋肉バカ?」

魔王「…まあ戦士だな。一度旅に出たときに絡んできたんだ」

勇者「すごいプッシュかけられてたんだよな」

魔王「押し倒されたときにはどうしようかと思った」

姫「…どうなったんですか?」

魔王「私が殴り飛ばした後メンバーにフルボッコされてた」

姫「……」

267: 2011/01/14(金) 22:43:24.92
姫「いいなぁ…自由に外出れて」

勇者「なんで?」

姫「私はずっと鳥籠の鳥ですから」

魔王「それでも良いかもしれないけどな。自由には責任と危険が付きまとうぞ」

勇者「氏と自由は仲良しだからな」

魔王「でもまあ…気持ちは分かるよ。キツいコルセットは嫌だよな」

姫「はい」

勇者「なんだ、コルセットってことはドレス着てたのか」

魔王「一応私もお姫さんだったからな」

勇者「わたしはただの農家の長女だったからなぁ」

268: 2011/01/14(金) 23:06:06.30
姫「そういえば」

勇者「ん?」

姫「最近とある王国が崩壊したのをご存じですか?なんでも国王が不慮の氏とか」

勇者「ふーんそうなんだ。って、ええええええ!?」

姫「ひぅ?!」

魔王「おい、落ち着け勇者」

勇者「あ、ああ。聞いたことないなぁ。攻めこまれたのかな?あは、ははは」

魔王「(情報が伝わるのは当たり前か。いわば伝言ゲームだからどこまで正確かは不明だが)」

姫「? なんでも二人の剣士と術師にやられたとかなんとかという噂です」

魔王「正確に伝わりすぎだ…」

勇者「なんでこんなときだけ伝わるんだよ…」

姫「?」

269: 2011/01/14(金) 23:13:34.38
姫「あ、もしかしてその二人とお知り合いなんですか?」

勇者「…ううん。もう氏んでんじゃないのかなその人たち」

魔王「どうせ野垂れてるパターンだろ」

姫「ず、ずいぶん酷いですね…」

姫「でも、私達はその二人を英雄と言って良いんでしょうかね?ほら国王はすごい悪い人だったそうですし」

勇者「いいや、反逆者だろうね。悪い人とはいえ国の王を殺ったもんだろうし」

魔王「勇者…」

姫「そう…ですかね?」

勇者「うん」

272: 2011/01/15(土) 10:59:41.40
魔王「(直接ではないとはいえ…やはり罪悪感はあるんだな)」

魔王「(人間だな、こいつも)」

ゥギャアアアアアアア!!

魔王「ぶっ!?」

勇者「なっ!?」

姫「えっ!?」

勇者「なんか来た!?いや誰か来た!」

魔王「断末魔みたいな悲鳴だったな。おそろしや」

勇者「なんで落ち着いてられんだよあんたは!」

姫「今の悲鳴…」

勇者「なんか心当たりあったりするのか?」

姫「私の許嫁かと」

魔王「」

勇者「」

273: 2011/01/15(土) 11:55:10.11
勇者「許嫁?」

魔王「許嫁?」

姫「許嫁です」

魔王「いくらなんでも早いな」

姫「あの人の鼻は犬レベルですから」

勇者「生活がつらそうだな」

魔王「…それで場所を特定できて、早く救いに来たわけか」

勇者「愛って怖い」

魔王「さあどうしようか」

魔王「久々に魔王となり勇者と戦うか」

勇者「元々魔王じゃん」

魔王「大人しく姫を引き渡すべきか」

姫「………」

勇者「ちょっと戦ってみたらどうだ?思わぬ言葉が出るかもよ」

魔王「ほう」

姫「思わぬ言葉?」

勇者「姫への溢れんばかりの愛の告白とか。ああいうのって男がかっこ良く見えるらしいぞ」

姫「…ちょっと聞きたいかもしれません」

274: 2011/01/15(土) 12:07:37.49
勇者「よーしそういうわけで!準備しようぜ!」

魔王「恋愛沙汰とか好きだなお前…」

勇者「わたしと姫で影からこっそり見てるから適当に戦っといて」

魔王「私と許嫁に果てしなく失礼だな!」

魔王「で、なんだ。愛の告白やらが終わったら出てくるのか」

勇者「うん」

姫「でも」

魔王「?」

姫「あ、愛の告白無しで事が進んだら…どうしましょう」

魔王「許嫁だからそれはないかと。まあ言わなかったらボコすが」

勇者「魔王すぎる」

ウオオオオオオオヒメェェェェ

全員「早っ」

275: 2011/01/15(土) 13:00:26.04
数十分後。

許嫁「うおおおおお!」ドカーン

魔王「もうちょい静かに入るとか出来ないのか」
魔王「まあいい。よくぞ来た、」

許嫁「まおぉぉぉぉぉ!姫は返して貰う!」

魔王「いや話聞けよ」

許嫁「姫はどぉぉぉこじゃぁぁぁぁぁ!」

魔王「話聞けよ」

許嫁「はっ、まさかかくれんぼ?かくれんぼなのか?」

魔王「何でかくれんぼなんだよ」

許嫁「もう十秒数えたよな!?」

魔王「だぁぁぁぁ!話聞けやぁぁぁ!!」



物陰

勇者「魔王をキレさすとはすごい奴だな」

姫「困ったことにあれで素なんですよ」

276: 2011/01/15(土) 23:08:30.43
許嫁「姫を出さないなら言語道断!オマエを倒してくれる!」

魔王「ああもうツッコミが追いつかない」

許嫁「十秒以内なら許してやる!」

許嫁「いーち」

許嫁「にーい」

許嫁「さーん」

許嫁「しーい」

許嫁「ご、ろく、なな、はち、きゅうじゅう!やーい十秒たった!」

魔王「」イラッ



物陰

勇者「…ガキだな」

姫「困ったことにあれで素なんです」

277: 2011/01/15(土) 23:17:17.19
許嫁「いっくぞぉ!まおー!」

魔王「炭になってもしらねーからなもう」

ガッキィィィィィン

ワーワー


物陰

魔王「あちゃー、完全にキレてるよあの子」

姫「いっそ炭にされたほうが幸せかもしれないですね」

勇者「なんか言い方キツいな…」

姫「あんなのと長年付き合ってる私の身にもなって下さい」

勇者「心労お察しします」

姫「……でも、彼のこと…見捨てられないんです」

勇者「へぇ…」

勇者「(だめんずうぉーかーってやつか…)」

278: 2011/01/15(土) 23:24:26.03
ワーワー

キィン カキン



物陰

勇者「関係ない話だけど、帰るところがあるのはいいなぁ」

姫「そうですかね?」

勇者「自業自得とは言え、国すらも帰れないから。わたしは」

姫「…?」

勇者「もし殺されると分かってもさ、あの許嫁ならあんたを守ってくれそうじゃない」

姫「…そう、ですかね」

勇者「きっとそう。命がけで守るよ、ああいうタイプは」

姫「……あんなバカでも?」

勇者「あ、あんなバカでも」

279: 2011/01/15(土) 23:34:21.68
キィン...

許嫁「くっ」ガクッ

魔王「どうする?私の次の攻撃でお前は氏ぬが」

許嫁「それでも僕は…彼女と帰るんだ!」

魔王「分からぬ。何故そこまで彼女に執着するんだ?」

許嫁「守りたいからだ!」

魔王「例え彼女が国に帰っても、王位云々でポイ捨てされる可能性があってもか?」

許嫁「え、なんで知ってるの!?」

魔王「あっ…ま、魔王だから?」



物陰

勇者「調子崩れたな…いい魔王っぷりだったのに」

姫「調子崩れさせるのが彼ですから」

勇者「さあ…どんな告白が出てくるかな?」ワクワク

姫「楽しんでますね…」

280: 2011/01/15(土) 23:44:05.26
許嫁「僕は許嫁であろうと何であろうと姫が好きだ!」

魔王「お、おお。ストレートだな」

許嫁「将来的に国から白い目で見られる日が来てしまうかもしれない」

許嫁「邪魔者あつかいされるかもしれない」

許嫁「でも僕は彼女が好きなんだ!」

許嫁「彼女だけが好きなんだ!!」

許嫁「彼女を守りとおしてこその、僕だ!!」ドドーン

魔王「(やばい私だけじゃ収拾がつかない)」



物陰

勇者「ものすんごい直球だな…」

姫「…」プルプル

勇者「どうした?」

姫「恥ずかしい…です。ほんと…あいつは、バカでアホで…」ポロポロ

勇者「そうだな。…そろそろ出てってやろう、あいつも困ってるし」

281: 2011/01/15(土) 23:50:51.16
姫「しかと聞きましたよ、許嫁」

許嫁「!! ひめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

魔王「ほっ…」

勇者「大変な役回りだったな」

魔王「ああ。もうごめんだからなこういうの」

許嫁「ご無事ですかひめぇぇぇぇ!!」

姫「ええ、貴方のせいで鼓膜が無事じゃなくなりそうです」

許嫁「それは大変ですね!!!」

姫「自覚、というものは存じてますか?」


勇者「苦労すんだな…あの子」

魔王「しっかり攻略できてるけどな」

282: 2011/01/16(日) 00:12:41.69
姫「……あの」

許嫁「はい!!!!」

魔王勇者「」キーン

姫「私と、生きてくれますか?」

許嫁「それはもう喜んで!」

許嫁「僕から永遠に逃れられるとは思わないでくださいね!」

姫「…うん、ありがとう」



魔王「一件落着、ってわけか?」

勇者「結局わたし達邪魔者だったのかな」

魔王「舞台作りだよ。こんなイベントなけりゃ本音なんて言い出せないだろ?」

勇者「はー、魔王さんは大人な意見ですねぇ」

魔王「まあ長く生きてるしね」

283: 2011/01/16(日) 00:26:26.78
翌日



魔王「行くのか」

勇者「気を付けてね」

姫「はい、色々お世話になりました」

勇者「そいつが馬の手綱引くことがとても不安なんだが大丈夫か?」

許嫁「大丈夫だ問題ない!!」

魔王「ありまくりだ」


パッカパッカ


姫「さようならー」ノシ

魔王「元気でなー」ノシ

勇者「またこいよー」ノシ

魔王「大丈夫なのかね、あの二人は。現実は厳しいぞ」

勇者「大丈夫だよ。わたし信じてる」


284: 2011/01/16(日) 00:36:57.79
数ヶ月後

村人「号外だよー!」

村人「東の国で第二子の子が誕生したんだってー!」

村人「生まれたのはかわいい女の子!さあ貰った貰った!」

ワイワイ
メデタイワネェ

勇者「だってよ、まお…魔女」

魔女「つまりは杞憂だったわけだな」

勇者「ああ。まあいいじゃねえか、ハッピーエンドで」

魔女「そうだな。さて、久々にギルドで依頼でも探しにいってみるか」

勇者「前回は竜退治だったな。今回は…魔王討伐、とか?」

魔女「ふふ、冗談はやめてくれよ」

勇者「行くか」

魔女「ああ」



おわり

285: 2011/01/16(日) 00:40:44.48
あきらかに蛇足な魔王勇者話終了ー
みなさんありがとうございました。
だらだら具合が半端なくてすいませんでした


ところでHTML化ってそのままアドレス張るだけでいいのでしょうか?
どこか削るべきですか?

引用元: 魔王「だって××だろ」