6: 2013/02/26(火) 01:15:55.29
某日。居酒屋「大惨減」

咲「こんばんはー、おじさん」

店主「いらっしゃい。久しぶりだねぇ、咲ちゃん」

咲「はい、最近大会とか続いて中々帰ってこれなくて……あ、まだボトルってありますか?」

店主「もちろんだとも。いつものように、魔王のお湯割りでいいのかい?」

咲「はい。それと、砂肝塩とモツ煮で」

店主「はいよ、先に焼酎ね。料理、少々お待ち」

7: 2013/02/26(火) 01:17:35.85
咲「(ゴクッ)ふう、やっぱりこの時期のこれは体が温まるなぁ」

??「見た目に似合わず、随分と渋い呑み方をするんだな」

咲「え?……て、あ!!加治木さん!!」

ゆみ「久しぶりだな。宮永」

モモ「私もいるっすよー」

咲「わわ、東横さんも!!お二人とも、お久しぶりです」

ゆみ「本当にな。まさかこんな所で会うなんて思わなかったぞ」

8: 2013/02/26(火) 01:18:10.77
モモ「この間の大会、お疲れ様っす。このところ連戦連勝じゃないっすか」

咲「ううん、周りの人も強い人ばっかりで、正直いっぱいいっぱいです。やっぱりプロの世界は違いますね。加治木さん達は、今は何を?」

ゆみ「私は一線を退いたよ。今は麻雀教室の雇われ講師だ」

モモ「実業団とかからのお誘いもあったんすけどねぇ……どうも、次世代を育てることの魅力にとり憑かれちゃったらしくて……」

咲「そうなんですか………東横さんは?」

モモ「ふふふー。宮永さん、私は今、『東横』桃子じゃないっすよ?」ニヤニヤ

咲「え?……あ、もしかして!!」

ゆみ「………////」

9: 2013/02/26(火) 01:19:29.86
スッ(左手薬指の指輪を見せつける)

モモ「そうっす。去年の秋に、『加治木』桃子になりましたー!」

咲「うわぁ!!おめでとうございます!!」

ゆみ「その前から交際は続けていたんだがな……」

咲「いつ頃からなんですか?」

ゆみ「お前たちの世代が、まだ高校生だったころからだよ」

モモ「詳しく言うと2年生になった冬っすねー」

咲「全然知らなかった……」

ゆみ「そういうお前はどうなんだ?」

12: 2013/02/26(火) 01:21:32.32
咲「わ、私はまだ全然ですよー。出会いも無いし……」

モモ(……おっOいさん。お気の毒に……)

咲「それに……」

ゆみ「?」

咲「……『お姉ちゃんは許しませーん!』って……」

ゆみモモ「「………………」」

咲「そ、それより!他の人たちとは会ったりしてるんですか?」

ゆみ「あ、ああ。丁度今人を待って……」

ガラガラッ

店主「いらっしゃい!」

??「ワハハ、お待たせ……って、清澄の宮永じゃないか」

14: 2013/02/26(火) 01:23:37.60
咲「蒲原さん!と、それに……」

??「なんだ?宮永もいたのか」

??「これまた、奇妙なメンバーだね」

咲「龍門渕の……井上さんに、国広さん!」

ゆみ「遅かったな蒲原。というか、後ろの二人も一緒だったのか」

智美「ワハハ。実は途中で会って、あんまりにも懐かしい顔ぶれだったから話しこんじゃってなー」

純「そのまま一緒に就いて来ちまったんだが、迷惑じゃなきゃ一緒していいか?」

ゆみ「無論だ。歓迎するよ」

モモ「あの時の県予選の、プチ同窓会みたいっすねー」

咲「ほんとですねー。あ、席どうぞ」

一「ありがと」

16: 2013/02/26(火) 01:25:23.61
店主「ご注文は?」

一「僕はハイボール。それと唐揚げ」

智美「生中とホッケの開きで」

純「俺も生中。それと、ロースカツ」

店主「あいよ少々お待ち。いいねえ兄さん、両手に花どころか周りに花畑ってか?」

純「……俺は女だ」

店主「こ、こりゃあすまねえ……」

一「いや、悪いけど……スーツ姿だし余計に……」

ゆみ「まあまあ。随分珍しい顔ぶれにはなったが、久々の再会なんだ。楽しく呑もう。店主、私も焼酎もうひとつ」

モモ「私も熱燗おかわりっす」

18: 2013/02/26(火) 01:26:30.32
咲「あれ?東よ……じゃなかった。えっと……」

モモ「モモでいいっすよ。加治木だとかぶりますし」

純「え!?お前ら結婚してたのか!?」

一「ひゃー……流石にびっくりだよ。おめでとう」

咲「えと、モモさんは日本酒なんですか?」

モモ「そうっすよ。よく意外って言われるっすけど」

店主「咲ちゃん、その子すげえぜ?さっきから熱燗5合目だ」

純「うえ!?呑み過ぎじゃないのか?」

智美「モモはこう見えて、私たちの中で一番酒が強いんだよ。ちなみに、最弱は佳織な」

ゆみ「というかザル、だな。モモがはっきりと酔ったところを見たことが無い」

22: 2013/02/26(火) 01:28:06.11
一「純君も結構呑むよね」

純「まあ、ビールばっかしだけどなー。宮永は……焼酎か?」

咲「おかしいですか?」

純「いや、いいと思うぜ」

智美「ワハハ。あ、ちょっとそれもらっていいかな?」

咲「どれですか?」

智美「あー、いや。料理じゃなくて、それ」

咲「灰皿……って、煙草吸われるんですか?」

智美「まあ、ちょっとなー。といっても一日に数本くらいだけど」

純「あ、俺も使うわ」

一「純君は吸い過ぎなんだよ……この間も透華に注意されてたでしょ?」

ゆみ「だが、蒲原より数段様になっているな」




(数分空けます。支援心より感謝です)

23: 2013/02/26(火) 01:31:59.32
モモ「井上さんは実業団で名前を見かけますけど……国広さんはなにをされてるんっすか?」

一「僕は昔と変わらず、透華付きのメイドだよ。今日は休み、というか『たまには自由に過ごしてきなさい』って怒られてね」

純「国広君は働きすぎなんだよ……俺は近々プロ転向も考えちゃいるが……というか、誘いもらってるからな。透華が運営してるチームに」

咲「それじゃあ、近々大会でお会いするかもしれませんね」

純「おう、その時はよろしくな」

ゆみ「そういえば、天江は?」

一「消息不明」

24: 2013/02/26(火) 01:37:04.18
モモ「……は?」

純「国広君、その言い方は激しく誤解を招くぞ……あー、衣は今、世界中を飛び回ってる。仕事とかじゃなくて、執事もつけずに一人で」

咲「な、なんでそんなこと……」

純「見聞を広めたいんだと。元々幽閉同然に育った衣だ、好奇心は並のそれじゃないからな」

一「そうそう、こう言ってた」

『閉じた世界にいた時間を取り戻す。透華や咲に再び相見えたその時、己が脚で立つ姿を見せられるように』

咲「……そっかぁ」

一「透華も寂しそうではあったけど……どこか嬉しそうだった」

ゆみ「ならば、私たちも負けてはいられないな。無為な時間を過ごし、何の成長もしていないようでは天江に笑われてしまう」

26: 2013/02/26(火) 01:40:37.90
智美「………ワハハ。そーだなー」

智美(衣……今頃どこにいるんだろうな。たまには手紙の一枚でもよこしてくれればいいのに……ワハハ)

純「まあ、それでいい相手の一人でも連れて来られたら、もうお手上げだけどな」

智美(ピクッ)

ゆみ「蒲原?」

智美「あ、ああ。なんでもない。ワハハ………」

ゆみ「そ、そうか」

ゆみ(今……蒲原らしからぬ、鋭い眼をしていたような……)

28: 2013/02/26(火) 01:45:33.72
モモ「他の皆さんではそう言うお話はないんすか?」

咲「あ、部長がそういえば」

ゆみ「ああ、そういえば久は福路とだったか?」

咲「はい。そろそろ入籍を視野に入れてるって言ってました」

純「おいおいマジか……国広君、こりゃボヤボヤしてると本当においてきぼりくらうぞ」

一「ぼ、ぼぼぼ、僕は、その、透華がいるし……!」

モモ「え?国広さんと龍門渕さんの二人って付き合って……」

一「え!?い、いやいやいや!!何言ってるのさ!!」

咲「……そういえば。あの、井上さん」

純「?」

咲「……優希ちゃん」

32: 2013/02/26(火) 01:52:41.23
純(ピクッ)

咲「あ、やっぱり覚えてるみたいですね」ニコニコ

ゆみ(こ、この感覚は……!!)

モモ(ま、魔王は健在っすか!?)

咲「最近、電話するとよく井上さんのお名前が出るんですが……というか、優希ちゃんったらそればっかりで……ふふ」

純「……」ダラダラダラダラ

咲「いえ、他意はないんです。ただ、とーっても仲がいいんだなぁと。暇さえあれば顔を合わせてるとかで」

一「……純君?まさか……」

モモ(そわそわ)

ゆみ「ほう、これは……」

純「……えっと、その、だな……」

純(俺はしくったのか―――!?い、いや、ここで勝手に自白なんてしようものなら後でなんて言われるか……!!)

ガラッ

35: 2013/02/26(火) 01:56:39.37
店主「いらっしゃい!!」

優希「オヤジ、タコス一つ!それと生中……て、咲ちゃん!!それに他にもみんな!ひさしぶりだ………じぇ………」

純(アホ――――――!!!!)

優希「じゅ、純!?それにこの空気は……」

智美「ワハハ……御愁傷様ってことで……」

モモ「お久しぶりっすね」ガシッ

優希「ひ!!い、いつのまに背後を!!」

ゆみ「下世話なことかもしれないが……これも縁だ。せっかくの酒の席、是非いろいろ話を聞きたいものだな」

一「飛んで火に入る夏の虫ってね。冬だけど」

優希「ひ……」

咲「さ、優希ちゃん……」


『お話しようか』



じぇえええええええぇぇぇぇぇぇぇ………

37: 2013/02/26(火) 02:02:49.70
店主「ありがとうございましたー!」

優希「酷い目にあったじぇ……純のアホー……」

純「無茶言うな。魔王様の、しかも酒入った状態での詰問だ。逃げられるかよ」

咲「あはは、二人ともお幸せにねー」

優希純「「………//////」」

ゆみ「しかし、随分話しこんでしまったな」

モモ「こんなメンバー集まるなんてそうそう無いっすからねー」

智美「ワハハ。そうだなぁ、本当に楽しかった」

一「そうだね。またヒマだったら呼んでよ。今度は透華たちも呼びたい」

純「そうだな。智紀の奴も呼ぼうぜ」

優希「部長たちにも声をかけてみるじぇ」

咲「うん。不思議なメンバーだったけど、すっごく楽しかった。飲み会って、楽しいね」

39: 2013/02/26(火) 02:07:41.49
………………………………――――――


咲「ねえ、ちょっと提案なんだけど……」

ゆみ「奇遇だな。私も、提案があったんだ」

純「面白いな。どっかあいてる店あるか?」

モモ「それなら、ちょっと行ったところに惨漢津っていう焼鳥屋さんがあるっす。味は私と先輩のお墨付きっすよ」

一「じゃあ、タクシー止めようか」

優希「よーし、今日は呑み明かすじぇ!!二次会の後はカラオケへGO!!」

智美「ワハハ、こりゃ大変だ。けどまあ、たまにはいいかー」

40: 2013/02/26(火) 02:10:12.87
モモ「先輩、寒いっすから手つなぐっすよ!!」

ゆみ「あ、ああ……///」

咲「あはは、私は見てるだけで熱くなっちゃうよ」

優希「そりゃ!!」

純「うわ!!いきなり飛び付くな!!わかった、これでいいんだろ?」

一「うわ、肩車手慣れてる……こりゃ、二次会で第二次尋問会かな?」

智美「タクシーとまったぞー」

咲「はい、今行きます」

42: 2013/02/26(火) 02:10:40.11
咲(………たまにはいいよね、こんな一日も)

咲(まだ、夜は長いんだし)

咲(それにしても……)

咲(私も早く、いい人見つけないとなぁー……)




カン!!

45: 2013/02/26(火) 02:12:42.36
多くの支援、誠にありがとうございました。
やはり短すぎたかもしれないのと、中身がスカスカになってしまったかも………
ええ、飲み屋で妙な組み合わせの連中が呑んでるところを書きたかっただけなんです。

この後、2編ほどこのスレにて蛇足染みたおまけを掲載しようと思います。
もしよろしければ、しばしお付き合いください。

46: 2013/02/26(火) 02:15:51.74
おまけ

同日。時は少しばかり戻って、東京

照「……」

菫「どうした照。さっきから携帯の画面を睨みつけて……」

照「……咲からの電話返信が来ない。大会終わった筈なのに……」

菫「忙しいんじゃないのか?大会は今日でひと段落でも、彼女もプロで活躍してる人間だ。それなりに用事もあるだろう」

照「さっきから電話も24回かけたし、メールも52通も送ったのに……」

菫「……悪いことは言わん。着信拒否される前に自重しておけ。それじゃ、私は行くぞ。宥さんが待ってるからな。お前も、淡をあまり待たせるなよ」

照「ここで待ち合わせだから待たせてない。淡なら、もうすぐつくって言ってるから」

48: 2013/02/26(火) 02:17:04.84
菫「そうか。まあ、あまり夜更かしするなよ?」

照「その発言、ブーメラン……」

菫「ぐ……まあいい。では、また」

バタンッ

照「……」

照「いいもん。咲が冷たい分、淡にいつもの15倍甘えてやる」

コンコンッ

照「はーい……」

淡「テルー!!テルテルテルー!!」

照「……」

49: 2013/02/26(火) 02:18:14.28
ギューーーーーー

淡「ふぇ?ええ!?て、テルー!!なんかいつもより積極的だよーー!?」

照(……咲にも、いい人見つかる日が来るのかな)

照(……つい許さないなんて言っちゃうけど……私も淡がいるわけだし……)

照(もしそういう相手ができたら、うん………相手にコークスクリュー12,3発で許してやろう。うん、私、優しいお姉ちゃん)

淡「て、テルー?////」

51: 2013/02/26(火) 02:22:45.10
同日。ニュージーランド某所

注【以下、英語の会話です。】

エイスリン「ヘイ、コロモ!ここにいたんだねー」

衣「ああ、すまないな。風光明媚極まれりといったところか……衣は、この国の風景が大好きだ」

エイスリン「そう言ってもらえるとうれしいよ。突然ウェリントン市内で見つけた時はビックリしたけど……今じゃ英語でずっと会話できるようになったもんね」

衣「もともと、英語はあちこち渡り歩く中で身に着けていたからな。だが、この国のマオリ語はまだまだだ。もっとしっかり学ばないと……」

52: 2013/02/26(火) 02:29:55.32
エイスリン「………前にも聞いたけど、衣はニュージーランドにずっといるつもりはないの?」

衣「すまない。それはとても魅力的だと思うし、何カ国か渡った中でもこの国は、風土も文化もとても気に入ってる。
  エイスリンの言う通り、この地に骨を埋めることもやぶさかではない。だが……」

エイスリン「けど?」

衣「それを決めるのは、もう少し先の事だ。まだ、歩いていない世界が多すぎる。見てみたい場所が、触れてみたいものが多すぎる」

衣「そして、その全てを、この身に……衣自身に刻みつけて、その後、一度故国たる日本へ帰ろうと思う」

衣「愛する者へ、そして莫逆の友へ、この身に刻みつけた知識と経験と、それらに裏付けられた矜持を示す。
  あのときとは違う、自分自身で立つ天江衣を見せられるように」

衣「この国へ舞い戻るか、故国にて安寧を求めるか、はたまた別の国か……」

衣「………―――決めるのは、それからでも遅くはない」

53: 2013/02/26(火) 02:30:42.33
エイスリン「………―――やっぱり変わったね。ただ身長が伸びて大人びただけじゃない。今のコロモが、とても……眩しいよ」

衣「ありがとう。まあ、もう少しこの国には滞在するつもりだ。そうだな……最低でも、マオリ語を淀みなく発せるくらいには。だから、もう少し世話になる」

エイスリン「大歓迎だよー!もしこの国で暮らすって言うなら、もっといろいろ手伝うし!!」

衣「ありがとう。でも………」


衣「そうなると、智美を連れて来ないと……智美、キーウイバーガー好きかなぁ……」







今度こそ………カン!!

57: 2013/02/26(火) 02:38:53.62
あとがき

支援していただいた皆様方、こんな時間にも関わらずの御厚意、誠にありがとうございます。おかげでヘルニアの痛みもしばし忘れられました。
おまけに関しては、テルーをちょっと挟みたかったのと、成長した衣という妄想を具現化したかったために製作しました。
衣はあのまま不変の方がいい、という方にはイメージがずれていたかもしれません。失礼しました。

今回のこのSSは、元々飲み会ネタ自体は考案してあったのですがキャラをどうするかに悩みました。
結果、フルメンバーでは無いにしろかつてシノギを削ったメンバー達が小さな同窓会のような形で、という事に落ち付きました。
どうせ絡ませるなら中々無いような組み合わせにしたいと思ってこのメンバーになりました。

また、CPに関しては完全に趣味です。
それなりの時の流れで、それぞれの関係がどう変化したのか、というのはある種青春時代を共有した人間の特権だと思ったので。

長々とあとがきまで失礼しました。

繰り返しになりますが、当SSを支援していただいた皆様に、心より感謝申し上げます。
それでは、また機会あれば。    乱文失礼いたしました。

66: 2013/02/26(火) 05:44:30.92
くぅ~乙でした

引用元: 咲「奇妙な同窓会」