1: 2011/10/03(月) 22:58:51.55

 火。火。火。燃え盛る炎の海。立ち込める煙幕。ゴウゴウと鈍く重い音をたて、
あたかも調理でもするかのように、形あるものは燃やし尽くされ焦げ屑へと姿を変えていく。
人類の文明の象徴ともいえるそれは、時に狂気を孕んだ災過と化し、問答無用に生命を奪っていく。

 -逃げなければ。

頭では分かっていも身体が動かない。どうやら倒れたタンスか何かの下敷きになっているようだ。
「参ったな。これじゃ脱出できないじゃないか」なんて余裕を持ってみても、
腰ほどまで浸かった地獄の沼から逃れることはできない。
煙幕はいっそう立ち込め、燃焼により室内の酸素は減少。もはや呼吸すらままならない。
ぜぇーぜぇーと息遣いが荒くなり、いよいよを持って意識が遠のき始める。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい・・・

 -ああそうだ、蒸し暑い夜は決まってこれだ。
幾度となく苛まされた悪夢の再演にため息を漏らしながら、男はのそりと起き上がる。
明け方の薄空はどんよりと沈んでいた。



--

6: 2011/10/03(月) 23:01:30.99
女「起きろ、こら。遅れるわよ学校」

男「んん~・・おおーん・・・あと・・5分」

女「・・・フンッ」デュクシ

男「おぶ!?ッゲホッ 」

男「・・・お前なぁ。優しく起こすとかないの?」

女「冗談。二度寝なんてするからよ」

男「なんで二度寝ってわかったんだ」

女「何言ってんの。迎えに来る前に電話したでしょ。ほら、さっさと支度してよ」

男「おおーん」

女「なにそれ」

男「いやわからん」

女「・・・おーん」

男「え?頭大丈夫?」

女「・・・フンッ」デュクシ

男「ピ」

9: 2011/10/03(月) 23:03:01.95
男「そういえば今日から学校だった」

女「まだ夏休みボケしてる?昨日から始まってるじゃないの」

男「おん」

女(おん・・・って何)

女「もう。来月は学園祭なんだから。しっかりしてよね」

男「何を言う俺はいつでもしっかり」

女「してないよね」

男「ていうかさ」

女「・・・何」

男「今日からうちのクラスに転校生が来るって話、確か昨日してたじゃん」

男「皆盛り上がってるけど、ぶっちゃけ俺どうでもいいんだよね」

10: 2011/10/03(月) 23:03:22.22
女「なんで?」

男「いやなんでって・・・なんでだろ?なんとなく?」

女「はぁ・・・」

男「そんな悲しいものを見るような目つきはやめてくれませんか」

女「考えとく」

男「頼むでほんま」

女「うっさい」




・・・
・・

12: 2011/10/03(月) 23:03:55.38
担任「はーい、それじゃHRはじめるぞー。」

学級委員「きりーつ。れーい。ちゃくせーき」

担任「はい皆さん、昨日も話したとおり、今日からうちのクラスに新しい仲間が増えます。」

担任「こんな時期に、と思うかもしれませんが、そこは事情を察してあげてくだださい。
それじゃ職員室まで呼んでるくるから待ってて~」ガララッ

13: 2011/10/03(月) 23:04:28.97
ざわっ わいわい がやがや



男「おーおー、みんな浮き足立っちゃってさ」

女「まぁ仕方ないでしょ。うちは小中高と一貫式の学園なんだから。新顔が珍しいのよ」

男「まあな」

男「超絶絶世の美少女なら許してやるか」

女「度胸もないくせに」

男「まあな」

女「だよね・・・」

男「何だよ」

女「別に」


ガララッ

15: 2011/10/03(月) 23:05:20.22
ごめん初心者だからサルって何かわからない教えてください先輩・・・

転校生「・・・」

女(わー、きれいな子)ボソボソ

男(おーん・・・)ボソボソ

担任「皆さんお待たせしました。っと、自己紹介できる?」

転「はい」スタスタ

転「・・・」

皆「・・・」

転「転校生です。(中略)よろしくお願いします」

パチパチパチパチ

担任「それじゃあ席だけど・・・」




・・・
・・

16: 2011/10/03(月) 23:06:05.78
*「ねぇねぇ聞いた!?七不思議のアレ!!」

*「聞いた聞いた!毎月4のつく日の放課後にどこかの教室で・・・ってやつでしょ!」

*「そうそう!C組の子が見たんだって!!」

*「へぇー!あっそれよりさ!」

*「何々~?」

*「高等部に転校生が来たらしいよ~!」

*「へぇー、珍しいね!!」

*「季節はずれの転校生・・・これはもしや新七不思議!?」

*「はいりませぇーん!残念!」

*[ちぇー・・・中等部にもこないかな、転校生」

*「まあ可能性はゼロじゃないでしょうけどねー」




・・・
・・

17: 2011/10/03(月) 23:07:21.67
男「に、しても」

男「あの転校生・・・クールだ」

女「ん、確かに。知的美人って感じ」

男「あれだ」

男「俺とキャラが被って」

女「毛ほども被ってないから困る必要はないよ」

男「そう思うか?」

女「うん」

男「おん」

女「・・・」

男「しかし見たまえよ」

男「みんな興味津々らしい」

男「あんなに大勢に質問攻めにされて嫌じゃないのかね」

女「そんなの知らないわよ」

18: 2011/10/03(月) 23:08:11.00
男「お前ならどうなん?」

女「うーん。転校生っていう立場を考えたら」

女「まぁしかたないかって割り切るかな」

男「おーん。そんなもんか」

女「あんたなら?」

男「俺か。俺なら・・・」

男「・・・嫌だな」

女「・・・」

転「・・・チラ」ガヤガヤ

女「んっ」

男「おん」

男「見られた。超見られた。あれだ、男!貴様見てい」

女「黙って」

20: 2011/10/03(月) 23:08:39.10
男(おん)

男(しかし・・・今のは・・・あいつ)

男「やっぱり俺、あれには関わらない方向で」

女「え?どういうこと?」

男「そういうこと」




・・・
・・

21: 2011/10/03(月) 23:09:19.72


学級委員「-では、学園祭の競技部門の出場者を決めたいと思います」

学級委員「種目は例年通りです。クラス別競争種目は、男子100m走、400mリレー、1500m走」

学級委員「女子については60m走と240mリレーのみです」

学級委員「障害物走は尺の関係で中止となりました」

学級委員「なお、本学園恒例の綱引き大会には、男女問わず合計20名の参加者が必要となります」

学級委員「それでは参加希望者は来週末までに学級委員まで連絡を-」




・・・
・・

22: 2011/10/03(月) 23:10:07.40
女「あんた、走るの速かったよね」

男「まあな」

女「去年は100mで一位だったよね」

男「まあな」

女「出るの?」

男「いや、今年はいいや」

女「なんで」

男「ほれ、陸上部のあいつ。なんかすげえ気合い入ってるし」

女「あぁ」

23: 2011/10/03(月) 23:10:29.34
男「400mも陸上部君が部活メンツで固めるでしょ」

男「なので今年はのらりくらりと見物決め込みます」

女「ふうん。まああんたがそうしたいんならそれでいいけど」

男「おーん」

男「それに・・・なんか嫌な予感がするんだよなー」

女「え、どういうこと」

男「いや、なんでもないんだけどな」




・・・
・・

25: 2011/10/03(月) 23:10:59.14
キーンコーンカーンコーン


担任「おーし気つけて帰れよー」ガララ

男「おーん、終わったー」

女「今日はどうするの?」

男「そうだな。特にすることもないし」

転「・・・ねぇ」

男「・・・おん?」

女「あら、転校生さん。学校は慣れた?」

転「なんとなく慣れた。それより聞きたいことがあるの」

女「あら、何?」

転「『学園七不思議』」

26: 2011/10/03(月) 23:11:36.27
男(・・・おん)

女「あら・・・もしかしてオカルトに興味があるの?」

転「別に。ただ気になっただけだけど。知らないならいいの」

女「待って待って。知ってるよ。でも深いところまではわからないけどね」

転「・・・教えて」

女「うーん・・・じゃあどれから話そうかな」

男(・・・おん)




・・・
・・

27: 2011/10/03(月) 23:12:04.19
女「・・・で、次が最後ね」

女「『学園に潜む影』っていう不思議なんだけど」

転「・・・」コク

女「これは最近になって中等部で本当に目撃情報があったってすごい盛り上がってて」

女「毎月、4のつく日― 例えば4日とか14日とかね、放課後で誰~もいない教室を覗くと、この世のものとは
思えない黒い影が蠢いているって不思議」

転「ふぅん。でもそれ、本当に目撃ってされたの?」

女「らしいんだけどね。結局は噂話だから」

転「・・・うん。ありがとう、よくわかったわ」

転「ところで最後に一つ聞きたいんだけど」

28: 2011/10/03(月) 23:12:36.82


女「何?」

転「七不思議の一つに『生徒連続失踪事件』っていうのはない?」

女「・・・?ごめん、わからない」

転「そう。ならいい」

転「貴重な時間をありがとう。それじゃ」

女「あっ、七不思議の詳しい話なら聞けるところあるよーって・・・行っちゃった」

男「おおーん・・・」

女「・・・あんたはさっきから何してんの?」

男「・・・特にないです」

女「はぁ?」




・・・
・・

29: 2011/10/03(月) 23:13:18.37
1週間後


女「起きなさいこら。遅れるわよ、学校」

男「んん~・・おおーん・・・あと・・5分」

女「・・・フンッ」デュクシ

男「おぶ!?ッゲホッ 」

男「・・・お前なぁ。仏の男様と崇められるほどの俺でもついに」

女「仏なら3回までは大丈夫よね?」

男「・・・おおん」

女「さっさと支度してよ」

男「へいへい」




・・・
・・

31: 2011/10/03(月) 23:14:37.12


担任教師「であるからして、三平方の定理を用いることにより-」カリカリ
(担任は数学教師)

・・


国語教師「いいですか、古文はこの5段活用を-」カリカリ

・・・
・・


英語教師「次の構文ですが、Haveから始まる疑問文なので過去分詞を-」カリカリ

・・・
・・


37: 2011/10/03(月) 23:23:05.02
ナイスありがとう神

ちょっと時間おきつつ投下していきます
もしよかったらポチポチ読んでいってくださいな


歴史教師「このとき秀吉率いる倭軍への対抗手段として-」カリカリ

・・・
・・


生物教師「染色体の数が半減するこの特殊な分裂を減数分裂といい-」カリカリ

・・・
・・


社会教師「特に中国においては一党制が採られており、特徴としては-」カリカリ

・・・
・・


43: 2011/10/03(月) 23:30:38.18


キーンコーンカーンコーン

男「よし、終わった」

女「今日はどうするの?」

男「今日は叔父さんのとこに行こうと思う」

女「そっか。じゃあ私帰るね。また明日」

男「おう、またな」




・・・
・・


44: 2011/10/03(月) 23:37:08.47

男「・・・というわけなんです」

叔父「ふうむ。それはもしかしたら、君の考えるとおりかもしれないね」

男「ただ、今のところ何か害悪があるようには見えません」

男「しかし実際に被害が起きてからでは遅いというのも懸念材料です」

男「なので、できる限り注意を怠らないように過ごす、というのが結論なのですが」

叔父「そうだね。今の段階で何か手をうつというのは早計だろう」

叔父「堪えるだろうが、無理を頼んでもかまわんかね」

男「はい、任せてください」

叔父「すまんな。いつも君ばかりに」

男「・・・いえ。これが俺の使命ですから」




・・・
・・

46: 2011/10/03(月) 23:45:45.24


キーンコーンカーンコーン



学級委員「はい、それでは学園祭競技部門への参加者が決定しましたので通知します」

学級委員「男子100mは陸上部君」

学級委員「男子400mリレーは陸上部君、MOB1君、MOB2君、MOB3君です」

学級委員「男子1500mは同じく陸上部君です」

男(気合はいってんなあ・・・)

学級委員「続いて女子ですが」

学級委員「60mは女さん、240mリレーは女さん、転校生さん、MOB4さん、MOB5さんになりました」

男「お前でるんかい」

女「当然よ。これでも私、あんたの幼馴染だもの」

男「その理屈はよーわからん」

48: 2011/10/03(月) 23:53:59.12



MOB達「転校生さんがんばってね!!」

MOB達「応援してるよー!!」

転「・・・うん」

男「・・・おん」

男(危ねぇ・・・自分で被せといてウケるところだった・・・ッフ)

転「・・・ジーッ」

男「ン?ナニカヨウカ」

転「・・・別に」




・・・

49: 2011/10/03(月) 23:55:26.96

キーンコーンカーンコーン


男「おん、帰るか」

女「あんたは寮だから学園内でしょ」

男「あのね、これくらいは風情なんだからのってくれないと」

女「意味が分かりません」

男「ハッ、これだから女はいつまでたっても女なんだ」

女「もっとわからないけど馬鹿にされてると感じたのでとりあえず殴っとく?」

男「却下だ」

女「却下だぁ?」

50: 2011/10/03(月) 23:55:57.93

男「ごめんなさい調子こきました私めが悪うございました」

女「よろしい」

男「・・・bitch!」ボソ

転「・・・クスッ」

女「え?」

男「おん?」

転「いえ・・・なんでもない。ごめんなさい、それじゃ」

女「・・・変な子」

男「・・・おん」




・・・

51: 2011/10/03(月) 23:56:38.00

キーンコーンカーンコーン



担任「さて、いよいよ3日後には学園祭です」

担任「クラス別競技部門ではおそらくうちが優勝するでしょうが」ニタァ

担任「陸上部君は・・休みかな?風邪でも引いたのしょうか」

担任「まぁ彼なら無理をしてでも本番には出場するでしょう」

担任「皆さん身体には気をつけてくださいね。それでは本日の授業がんばってください-」




・・・
・・

52: 2011/10/03(月) 23:57:31.65


男「陸上部君は欠席か」

女「風邪、って言ってたね、先生」

男「珍しいな、あいつが風邪なんて」

女「まぁただの体力馬鹿じゃなかったってことだよ」

男「なにげにひどいこと言ってませんか?」

女「そう?」

男「おおーん・・・」




・・・
・・

54: 2011/10/03(月) 23:58:35.66
・・・
・・





MOB1「なぁ、陸上部のことなんだけどよ・・・」ヒソヒソ

MOB2「なんだ?風邪じゃないのか?」ヒソヒソ

MOB1「・・・行方不明なんだ」ヒソヒソ

MOB2「はぁ?なわけねえだろ」ヒソヒソ

MOB1「昨晩は・・・部活の後に教室に忘れ物とりにいくって・・・それきり寮に帰ってこなかった」ヒソヒソ

MOB2「・・・・・」

MOB3「・・・もしかしたら実家に帰ってるかもよ?放課後に様子見にいってみよう」ヒソヒソ

男(おぉーん・・・)

55: 2011/10/04(火) 00:00:02.26
放課後


男「一人目の犠牲者が出ました。失踪です」

叔父「もうか。対策はとれそうかね」

男「今のところは・・・何しろ一人目です。法則と方法が判りません」

叔父「そうか・・・ちなみに犠牲者は」

男「クラスの陸上部君です」

叔父「あぁそうか・・・確か昨日は競技場で陸上部が練習をしていたはずだ」

叔父「顧問の先生に聞き込みしてみてはどうだろう」

男「そのつもりです」

男「それと・・・接触を試みようと思います」

男「そんな顔をしないでください。大丈夫ですから」

叔父「・・・くれぐれも気をつけてな」

57: 2011/10/04(火) 00:03:34.55

*「ねぇねぇ、部活の先輩から聞いたんだけどさ、高等部の陸上部先輩が行方不明になったんだってさ!」

*「えぇー!まじで!?」

*「うん、昨日先輩たちが実家のほうに様子を見に行ったらしいけど、親御さんたちは何にも知らなかったみたいだったよ!」

*「これが寮暮らしの怖いところだよねー」

*「だよねー・・・じゃなくて!実は陸上部先輩が失踪するときに・・・」

*「前に?」

*「例の黒い影と遭遇したんじゃないかって言われてるの!!」

*「えぇっ、それって七不思議の??」

*「そう!」

*「部活が終わった後に、教室に忘れ物とりにいくって言ったきり・・・」

*「その後の姿を見たものはいない・・・って?」

*「・・・」

*「・・・」

60: 2011/10/04(火) 00:09:46.67

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌
だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい
力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい
力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい
力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい
力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい力が欲しい
消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくな
い消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたく
ない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えた
くない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消え
たくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたくない消えたたくない

・・・
・・


62: 2011/10/04(火) 00:14:49.27
キーンコーンカーンコーン



担任「えー・・・非常に申し上げづらいのですが」

担任「陸上部君が行方不明になりました」


ざわっ・・・!


担任「昨晩、ご両親から警察のほうに正式な届出が出されたようです」

担任「おそらく事故か事件に巻き込まれたのでは、という警察の見識ですが」

担任「皆さん、何かすこしでもわかることがあれば情報の提供をお願いします」

担任「なお、本日は学園集会を開き、授業は中止で皆さんは帰宅するようになって-」




・・・
・・

63: 2011/10/04(火) 00:20:29.99

・・・
・・





女「ねぇねぇ!これって、信じられる?」

男「おーん、どうだろなー」

男「自殺なんかするやつじゃないし」

男「事件に巻き込まれたってのは、的を得ているかもな」

女「ううーん。怖い」

男「お前は大丈夫だよ」

女「えっ」

65: 2011/10/04(火) 00:25:08.45


男「俺が絶対守るから」

女「えっ、えっ、なに急に」

男「それはそうと」スクッ

男「転校生さん」

転「・・・何」

男「話がある。放課後付き合ってくれないかな」

女「えっ」

転「・・・わかった」

男「お前は帰っていいぞ」

女「えっ」

女「えっ?」

66: 2011/10/04(火) 00:29:57.61
・・・
・・





男「さて・・・どこから聴こうか」

転「どこからでも」

男「おーん・・・じゃあ単刀直入に」

男「陸上部をやったのはお前だな?」

転「・・・」

男「答えろよ化け物。お前からは人間の匂いがしねえんだよ」

転「・・・!」

転「これは驚いた」

転「まさか見抜かれるとは思ってもなかった。評価する」

男「・・・」

転「・・・そう、陸上部君を隠したのは私。それは揺るぎようのない事実」

転「彼は力と生気に満ち溢れていた」

69: 2011/10/04(火) 00:35:38.18

男「目的は何だ?」

転「私が私であるために」

男「いや・・?わからないな」

転「そう・・・」

転「前言撤回。評価はしない」

転「貴方程度じゃ私は止められない」

男「・・・お前は何者だ」

転「教えない」

男「だめか」

転「うん」

男「どうしてもだめか」

転「・・・」

男「・・・」

転「貴方って変な人間」

男「お前も変な化物だ」

71: 2011/10/04(火) 00:41:27.42

転「・・・」

男「・・・」

転「『学園七不思議』」

男「・・・?」

転「その中でも、今一番噂されているのが『学園に潜む黒い影』」
                    ・・
男「それは誰でも知ってる。だけど、お前はそれじゃないだろ」

転「そう」

転「私は違う」

転「だから私は・・・」

男「・・・」

転「私に近づきたければ、影について調べてみるといい」

男「お前、やっぱり変だよ。なんで教えるんだ」

転「別に。暇つぶし」

72: 2011/10/04(火) 00:45:32.10


男「・・・次はいつ喰うんだ」

転「さぁ。お腹が減れば食べると思うけれど」

転「安心して。学園祭が終わるまではきっとだれも食べないから」

転「今ね。久しぶりに満たされてるの」

男「・・・お前は」

転「男君。貴方がどうやって私を人外だと見破ったのか」

転「貴方がどういう存在なのかナノメートル単位の興味が沸いたわ」

男「そりゃ光栄なことで」

転「またいずれお話しましょう」スタスタ

男「・・・」

73: 2011/10/04(火) 00:49:31.47

・・・
・・





キーンコーンカーンコーン


担任「職員会議の結果、今年の学園祭は決行することとなりました」

担任「陸上部君は・・・目下警察の方々が捜査を続けてくれています」

担任「皆さんも、何かほんの少しでもいいんです。知っていることがあれば-」

男(・・・チラッ)

転(・・・ニコッ)

男(・・・オオン)

74: 2011/10/04(火) 00:54:06.52

担任「男君、ちょっといいかな」

男「あ、はい」ガタッ

転「・・・チラ」

男「・・・」

女「え、どうしたの、何々」

男「あとで話す」




・・・
・・

75: 2011/10/04(火) 00:54:56.41

担任「実は・・陸上部君のことなんだけど」

男(昨日の話・・・まさか・・?)

担任「実は、学園祭なんだけど。こんな状況だから、彼の代わりに走ってくれないか」

男「・・・へ?」

担任「君しか適任がいないんだ。頼む、な?」

男「あ、あぁ・・・わかりました」

担任「ほ、本当かね!?あぁ、助かるよ それじゃ明日は本番よろしく!!」スタスタ

男「・・・」




・・・

76: 2011/10/04(火) 00:55:36.42


男「・・・というやり取りがあった」

女「あぁ、そうなんだ」

女「まぁがんばってね」

男「お前もな」

転「へぇ・・・男くんも走るんだ」

男「!・・・あ、あぁ」

女「あっ転校生さん。リレーはよろしくね~」

転「こちらこそ」

転「じゃ・・・男君、さようなら」ニコッ

男「お、おおん・・・」

女「えっ」

女「仲良くなってんじゃないの」

男「これには海よりも深い理由がありましてな」

女「はいはい」

77: 2011/10/04(火) 00:56:06.08

・・・
・・





男「さて放課後ですが」

女「うん」

男「今日は行くところがあります。なのでお前は帰れ」

女「はぁ?なにその言い草」

男「明日はほら、えーと・・・あれだ、学園祭だろ?」

女「・・・素直じゃないやつ」

男「・・・分かったらさっさと帰れ。いいな」

女「ばーか。じゃまた明日ね」

男「おん」

女(素直じゃないのは・・・私もかな)

78: 2011/10/04(火) 00:56:47.76
・・・
・・




男「どういうご用件でしょうか」

叔父「で、接触はどうだった」
                       プレッシャー
男「・・・はい。印象ですが、憎しみや怨念の類の気圧は感じられませんでした」

男「どちらかというと・・・悲観だとか逃避だとかの類ですね。あるいは願望の」

叔父「ふぅむ。口ぶりからするに、悪霊や悪鬼というわけでもなさそうだね」

叔父「それと、『学園七不思議』について・・・と言ったそうだね」

男「えぇ。これについては叔父さんの意見を頂こうかと」

叔父「・・・なるほど、なるほど」

叔父「・・・ふむ」

叔父「七不思議・・・失踪・・・黒い影・・・」

79: 2011/10/04(火) 00:57:52.84


叔父「・・・なるほど概ね判った」

男「流石は叔父さんです。それで」

叔父「待ちなさい。まだ確証のない推論にしか過ぎん。」

叔父「帰ったら古い資料を整理してみるよ」

男「・・・はい」

叔父「君はそうだね・・・『学園不思議クラブ』は知ってるね?」

男「えぇ、学園七不思議について研究しているとかいう、怪しげな非公認の部活グループ」

叔父「話が早い。あそこを訪ねてみるといい」

叔父「連中、学園祭など他人行事だ。今日も部室にこもってるだろうよ」

叔父「そこで君も調べてみるといい」

80: 2011/10/04(火) 00:58:19.54


男「・・・わかりました」

叔父「なに、難しい話ではないはずだ。すぐに答えも見つかるだろう」

男「・・・叔父さんは底意地が悪い」ニヤ

男「本当はもうわかっているのでしょう?」

叔父「・・・どうかな」ニヤ

83: 2011/10/04(火) 00:58:43.65
・・・
・・





男(ここがそうか・・・図書館棟の3階なんて初めて来たぞ)

男「コンコン 失礼します」ガララ

眼鏡「・・・ジロッ」

男「お、ん、お、お前」

眼鏡「男君か。入ってどうぞ」

男「お、おん・・・」

男(こいつオタクくさいと思ってたらマジでやばいオタクだったぜ!)

眼鏡「で、何。君が来るなんて珍しすぎるんだけど」

眼鏡「どういう風の吹き回しなんだい?」

男「いや、俺もまさかクラスメートがここにいるとは思わなんだ」

84: 2011/10/04(火) 00:59:58.21

眼鏡「ふうん」

男「ま、ちょっと調べ物にな。ついでいうと色々教えてもらえると有難い」

眼鏡「・・・いいけど。何?」

男「『学園七不思議』」

眼鏡「・・・ピクッ」

男「・・・え?俺、何かした?」

眼鏡「・・・まさか、君も感づいたの?」

男「え・・・?何が?」

眼鏡「ごめん・・・何でもない。何が聞きたい?」

男「えーっとだな-」

85: 2011/10/04(火) 01:01:09.26
・・・
・・





眼鏡「・・・で、話がそれたけど」

眼鏡「影の正体についてはさっきの説明の通り。僕達のクラブの推論だけどね」

眼鏡「怪談話の真相なんてのは、こんなくだらないオチだったりする場合もあるってこと」

眼鏡「資料には、一番新しい七不思議、って書かれてるけど」

眼鏡「まぁそのままの意味であってるんだと思う」

男「・・・」コク

眼鏡「まぁ学園にはいろんな怪談があるからね。七不思議も入れ替わりしていくってことじゃないかな」

眼鏡「あと、君の言ってる、生徒が失踪するっていう類の怪異については」

眼鏡「絞るのが難しいけど・・・『生徒連続失踪事件』が一番恐ろしいんじゃないかな」

86: 2011/10/04(火) 01:04:15.87

男「・・・連続・・・失踪」

眼鏡「残念だけどこれについては残ってる資料が本当に少ないんだ」

眼鏡「それと、これが僕もおかしいと思ってる写真。地下の書庫に保管してある部の資料なんだけど」

眼鏡「僕の気のせいかも知れないけど・・・これ。似すぎてやいないかい?」

男「・・・なるほどな」

眼鏡「何か知ってるの?」

男(・・・ハァン。なるほど)

男(だからあの感覚ってわけか・・・)

眼鏡「・・・引っかかることがあるの?」

男「いや、大丈夫バッチリだ。わざわざサンキュな」

眼鏡「・・・?」

男「じゃあな。あ、明日は学園祭の応援きてくれよ。俺、走るんだぜ」

眼鏡「あぁ・・・陸上部君の代走ってわけね」

眼鏡「分かった。気が向いたら応援に行ってみるよ」

87: 2011/10/04(火) 01:08:59.36


男「お前、案外いいやつだな」

眼鏡「え?そうかい?」

男「あぁ。違いない」

男「んじゃ、また明日な。今日はサンキュ」

眼鏡「うん、また明日」


眼鏡「あっ 最後にもうひとつだけ」

男「うん?」

眼鏡「もし・・・『生徒連続失踪事件』について詳しく知りたいなら」

眼鏡「担任先生に聞いてみると何か知ってるかも」

男「・・・あの人がか?」

眼鏡「うん。だってあの人は」

眼鏡「うちの部のOBだから」

89: 2011/10/04(火) 01:14:06.02
・・・
・・




わいわい がやがや

男子100m走 予選


・・・パァン!!


男「オオンンンンン!!!」ドドドドド

実況「あぁー速いっ!2年D組の男選手!!速い!速すぎる!!そのまま後続に大差をつけて余裕のゴールイン!続いて-」

90: 2011/10/04(火) 01:20:24.47
・・・
・・





女「お疲れ様」

男「おん」

女「あんたなんでそんな運動神経あるのに帰宅部なのよ」

男「ッフ・・・男の事情だ」

男「お前も余裕のぶっちぎりで一位通過だったじゃんか」

女「そりゃね。あんたの幼馴染なんだから」

男「やっぱりそれはわからん」

女「ばーか。あ、もうすぐ決勝じゃない?コールかかってるよ」

男「おー。もうか。じゃあちょっくら走ってくる」

91: 2011/10/04(火) 01:24:07.78
・・・
・・



わいわい がやがや

男子100m走 決勝


・・・パァン!!


男「オオンンンンン!!!」ドドドドド

実況「スタートからやはりこの男!!2年D組男選手!!この選手は本当に素晴らしい!!」

実況「決勝とは思えぬこの大差!!圧倒的速力!そして今堂々のゴールイイィン!!!」



92: 2011/10/04(火) 01:29:10.65
・・・
・・





男「おん・・・疲れた」

転「・・クスッ。お疲れ様」

男「お前か・・・何だよ」

転「貴方本当に人間?」

男「正真正銘生粋の人間だ舐めるなバカヤロウコノヤロウ」

転「・・フフ。次は私も走る」

男「あぁ、そういやそうだな」

転「頑張って」

男「・・・は?」

93: 2011/10/04(火) 01:36:05.29

転「ほら、言ってよ」ニコニコ

男「・・・お前も底意地が悪い」

転「何の話」

男「さあな」

転「ふうん」

転「よくわからないけど」

転「私は化物だもの。悪いに決まってるじゃない」

男「あぁ・・・そのことだけどな」

男「お前の正体がわかった」

転「・・・ピクッ」

男「今日の日程が終わったら教室で待ってる」

転「・・・あら。愛の告白でもされるのかしら」

男「馬鹿言え」

95: 2011/10/04(火) 01:41:24.10


男「ほら、女が呼んでるぞ。早く行けよ」

転「・・・面白くない」

男「あぁ、それとだ」

男「・・・頑張れよ」

転「・・・」

転「・・・うん!」ニコッ

男(・・・!)

男「ほ、ほら、早く行けよ。コールでてんぞ・・・」

転「はーい」スタスタ

男(ば、化物相手に・・・俺はあほか)

96: 2011/10/04(火) 01:44:58.36
・・


担任「いやー、はっは、いや、はっはまったく、ハッハッハ!!」

担任「皆さん本日はお疲れ様でした」

担任「特に男君、急遽代走してもらったにも関わらずあの貫禄!」

担任「思わずほぼいきかけました!」

担任「転校生さんも素晴らしい!!」

担任「しなやかな身体、美しいランフォーム!そして控えめながらも揺れる乳!!」

担任「私はもう氏んでもいいとさえ思えました!!」

担任「モブキャラの皆さんも大変お疲れ様でした!!」

担任「綱引きも堂々の一位で、総合優勝も我ら2-D組がい・た・だ・き・ました!」

担任「いやー、ハッハ。本当お疲れ様でしたッハッハッハ!!」

担任「さて、明日からは文化部門が開催されますがッハハ」

担任「競技部門で優勝したからといって、ハッしゃぎすぎないよう」

担任「明日からも学園祭を謳歌してくださいッハハ!!」

担任「それでは解散としますッハハ!!」

98: 2011/10/04(火) 01:48:36.48
・・・
・・





男「陸上部君が失踪したってのに・・・」

男「・・・あの先生は将来大物になるよ」

女「あ、それ思う」

男「あんなでも、不思議と力添えしたくなるんだよな」

女「カリスマってやつね」

男「違いない」


MOB「キャーセンセーセクハラヨー!!」

MOB「デモ転校生サンスゴカッタネー!!」

MOB「アタシトケッコンシテー!!」

MOB「パンツミセテイタダケマセンカ?」

転「え、えぇ、ありがとう・・・」 ワイワイ ガヤガヤ

100: 2011/10/04(火) 01:52:50.59


男(・・・おーん)

女「・・・転校生さんが気になるの?」

女「もうすっかり人気者よね。これも学園祭パワーかしら」

男「さぁね。しーらねー」

転「・・・男君」

男「オンっ!?」

女「あ、転校生さん。今日はお疲れ様。もうすっかりクラスに馴染んだみたいねー」

転「そう」

男「・・・あっ!じつは今日転校生さんの人生相談を受ける約束しちゃっててよー!
  ちょっと放課後二人でお話するんだー悪いね先帰っててくれねえ?」

女「えっ」

女「えっ」

男「大丈夫だって。とって食いやしねえよ。知ってるだろ」

女「ま、まぁそうだけど」

102: 2011/10/04(火) 01:54:32.34
女「うーん」

女「・・・転校生さん。何か変なことされそうになったら大声だして抵抗してね」

女「氏なない程度ならペンで目とか突いて脳髄ひっかきまわしても大丈夫だから」

男「あ、あの」

転「ありがとう、実践する」

男「さっさと帰れよばーかばーか!」

女「うっさいわね冗談よ馬鹿!」

女「・・・転校生さん。なんだか私たち気が合う気がするの」

女「よかったら、これからもいろいろ話とかしていい?」

転「うん、構わない」

女「本当!良かった、じゃあ今日から私たち友達ね♪」

転「友達・・・」

女「そ、友達。じゃ私先に帰るけど。私の友達に変なことするんじゃないわよ」

男「ハッ、重々承知しておりますゆえ」

女「よろしい!じゃまたねー」

104: 2011/10/04(火) 01:56:14.88
・・・
・・



男「さて・・・ここの教室なら話を聞かれる心配もない」

転「優しいのね」

男「何がだ」

転「私が、何かするかわからないから恋人を逃がした」

男「そういうつもりじゃない」

男「あとあれは、ただの幼馴染だ。そこは徹底するように」

転「ふぅん」

男「それに・・・お前についても概ね把握したつもりだ」

転「そう」

男「今のお前が、本当に危害を加えるつもりなら俺もとうにやられてる」

転「・・・」

男「お前の」

男「お前の正体は-」

107: 2011/10/04(火) 01:58:58.41


 怪異の発端はどこにでもあるような誘拐事件のはずだった。
己の行く末を案じて狂った男が、身代金を目的に少女を誘拐する。
しかし我が国の警察は腐っても優秀である。
さらなる行く末を案じた男は、事の露呈を恐れて少女を頃してしまう。
「大丈夫だ、浚う瞬間さえ目撃されていなければ-」

 完全犯罪が成立した瞬間である。

事件発生以降、何の手がかりも見つけられずに捜査が早期で打ち切られたことから、
少女の通っていた学園では「少女は幽霊に浚われた」「神隠しにあった」
などの噂が広がり始めた。
 『噂』は波紋を広がらせるに連れ、様々な想いや畏れを吸収し、「少女の呪い」という
力を持った『名前』を手にする。ここに怪異が誕生する条件は整った。

この世の万物には、ただ一つの例外なく相応すべき名前が存在する。逆説的に唱えると、
全ての名前には実体や現象が伴うということだ。
『名前』はカラダを求め、波長の合った肉体を吸収しはじめる。幸か不幸か、そこは小中高と
一貫式の学園であり、媒体となり得る感受性の強い素体はあらゆる場面においてそこにあった。

一人。二人。三人。『名前』は肉体を吸収する度にその畏れを助長させ、力を増した。
そして終いには、六人目を吸収した時点で完全な『カラダ』を持った。
その時『名前』は満たされた。「このカラダには力が満ちている―」そして怪異は長い長い、眠りに就く。




109: 2011/10/04(火) 02:00:04.95
叔父「・・・というのが、この学園創設以来初の不思議『生徒連続失踪事件』とその真相である」

叔父「その後も次々と怪異が生まれ不思議話として名を連ねるようになり」

叔父「そして、最初の『学園七不思議』が誕生した」

男「でもそれ、おかしいですよ。俺が初等部の頃から『生徒連続失踪事件』なんて話は聞いたこともありませんでした」

叔父「そこだよ。この学園の歴史は古い。年月を経るに連れ、七不思議の内容も変わっていったのだろう」

叔父「証拠に、現在の七不思議には中身のまったく伴ってないものも連なっているはずだよ」

男「・・・えぇ、『体育館裏の鬼婆』なんてのは全くもって子供だましですし」

叔父「それを断言できる君のその能力が私にも備わっていれば、と心底思うよ」

男「一度氏ねば身につきますよ」

叔父「冗談だから真顔はよせ」

男「冗談です。俺にとって叔父さんは命の恩人ですから」

男「あの時、叔父さんがいなければ・・・俺も両親と一緒に焼け氏んでいました」

叔父「この話はよそう」

男「・・・はい」

111: 2011/10/04(火) 02:02:45.38
・・・
・・





男「・・・これがお前の正体だ」

転「よくできました」

転「大変だったでしょ。調べるの」

男「・・・まぁな。当時の学園を知る人物なんて居っこないし」

男「資料もほとんど空襲の時に焼失してる」

男「それでも・・・いつの時代にもいるもんだな」

転「あぁ」

転「あの趣味の悪い連中ね」

男「おーん。学園創設期から現在に至るまでに起こった怪異・・・」

男「その全てを代々に渡り記録していたとなると・・・そうだな、趣味が悪い クスッ」

114: 2011/10/04(火) 02:05:36.83
男「・・・だけど、その記録だけじゃ確信が持てなかった」

男「クラスに眼鏡君って居るだろ?あいつがその『学園不思議クラブ』の部員なんだけど」

男「あいつの協力あって、一番最初に失踪した少女のクラス写真を見ることができたんだ」

男「『少女の呪い』だなんて呪いのモデルになってしまった少女。最初の犠牲者・・・」

転「・・・」

男「確かに、あれは紛れもなくお前だったよ」

115: 2011/10/04(火) 02:07:57.75
・・・
・・

転「他人の空似とは考えなかったの」

男「ないね」

男「俺には物事を直感的に判断する第六感が備わっている」

転「それ本当?」

男「本当」

転「嘘」

男「嘘じゃない」

転「証拠は」

男「四年前に俺は一度氏んだ」

男「まぁ実際には氏の淵からギリギリ生還したんだけど」

男「そのときにこの力が備わった」

転「・・・嘘みたいな話」

男「お前も存在自体が嘘みたいなもんでしょ」

転「それもそう」クスッ

120: 2011/10/04(火) 02:14:47.67

・・・
・・





転「まぁそう」

転「貴方の推測通り」

転「私が『生徒連続失踪事件』そのもの」

転「それ以上でも以下でもない」

男「おん」

121: 2011/10/04(火) 02:15:07.91

男「そしてここから先はさらに俺の推測になるんだが」

男(正確には俺と叔父さんの、だな)

男「お前は再び自分の居場所を、自分で取り戻そうとした。違うか?」

転「・・・正解」

男「現在の七不思議には出鱈目な子供だましまで入ってる」

男「本物の怪異としての力を持つお前が忘れ去られていい気分なわけがない」

男「ましてや、人の噂話から生まれたお前らにとってそれは氏活問題だ」

男「最悪の場合、本当に消滅してしまうかもしれない」

男「存在の危機を感じたお前は、再び『生徒連続失踪事件』を起こして」

男「己のアイデンティティを取り戻そうとした」

男「それが今回の陸上部君事件の発端だ」

123: 2011/10/04(火) 02:21:08.70
・・・
・・



転「・・・フフフ」

転「フフフッ・・アハハハ!!」

転「それで、それでそれでどうするの」

転「私は目覚めてしまった。もう止まらない」

転「この学園が私を思い出すまで・・・私は止まれない」

男「・・・あぁ」

男「そのことなんだけどな」

男「もういっそのこと」

男「うちのクラスメート、全員喰っちまえ」

転「え」

124: 2011/10/04(火) 02:26:35.32
・・・
・・





転「えっ?」

男「いやさぁ、ちまちま失踪したところでなかなかインパクトに欠けんだわ」

男「ここは一発、ドーンとクラス全員分くらい」

男「どないや?」

転「・・・何が狙い」

男「いや、狙いというか」

男「うまくいけばお前は永代存在し続けられる」

転「・・・」

125: 2011/10/04(火) 02:31:08.34


転「裏があるんでしょ」

男「まぁな。こっちは誰一人氏者を出さずに済む」

転「馬鹿ね。陸上部君はもう」

男「生きてる。俺の力をなめるな」

転「・・・面倒」

男「お前に喰われた人間は、仮氏状態になって徐々に生気を吸い取られる」

男「過去に比べて衰えた今のお前には栄養補給ドリンクが必要だからな」

男「完全に氏亡するまで半年程度は持つでしょ」

転「・・・正解」

男「で、だ」

男「明日は何の日でしょう」

転「・・・学園祭文化部門」

130: 2011/10/04(火) 03:01:19.14
男「そ。各クラスがステージ上で歌やら劇やらするもんなんだけど」

男「流れとしては、クラスの全員が壇上に上がった後で簡単な舞台挨拶がある。
  そして舞台幕が一度下りて、再び開幕で演技開始-」

男「ってな流れが各クラス分続くわけなんだけどさ」

転「・・・まさか」

男「そのまさか。俺たちのクラスの演技の時。幕が下りきった十数秒間の刹那・・・」

男「学園中の生徒の目の前で」

男「クラスの生徒が丸々消え去った!なんてなったら」

男「学園中がその出来事を一生心に刻み込むだろうよ」

男「畏れや恐怖心がでかければでかいほど、お前にとっては極上の料理になるんだろ」

転「・・・呆れた。クラスメートを犠牲にするってわけ?」

男「犠牲じゃないよ。協力だ」

男「なんせ、お前は、俺たちはもう-」

男「仲間だからな」

転「」

131: 2011/10/04(火) 03:06:52.56
・・・
・・





男「今日の競技部門を終えた後の、担任のあの言葉聞いただろ?」

男「詰め寄って賞賛してくれる周りのモブキャラもいただろ?」

男「みんな、お前のことを大切なクラスメートだって」

男「友達だって思ってるんだよ」

転「・・・」

男「あいつも・・・女もそう言ってただろ?」

転「友達・・・」

男「まぁ、何日か経ったら全員無事に返してもらうってのが前提なんだけど」

132: 2011/10/04(火) 03:15:16.87

男「どうせ、対象が失踪してる間の記憶は操作できるんでしょ」

転「・・・」

男「なら全然問題ないな」

転「・・・貴方って、本当に変な人」

男「おーん・・・よく言われる」

転「・・・ねえ私」

転「やっぱり貴方に興味が沸いたわ」

転「それはもうナノメートル単位とかじゃないぐらいに」

男「そりゃ光栄なことで」

転「だから・・・」スッ

男「お・・・おい、待て、何す-」

転「ん・・・」チュム

男「・・・っ!!」

133: 2011/10/04(火) 03:21:24.66


転「ん・・・これに免じてその提案呑んであげる」

男「おっ、お前・・・」

男「・・・ってえええ!いやいや待て待てここれはどどういういやいやそもそも免じてっていうか
  俺は得しかしてないような!?そもそも怪異とのキスってカウントされるのかとかそういう問題
  じゃねえんだよって馬鹿か!俺は!!」

転「・・・さっきから貴方のドヤ顔推理がうざかった」

転「今の貴方みたいにアタフタしてるほうが似合ってる」クスッ

男「純情な青少年をからかいやがって・・・いけない人だ・・・クッ」

転「あら、化物は人を誑かすものじゃない?」

男「・・・参りました」

転「フフッ、よろしい」

男(どうしてこうなった・・・どうして・・・どうして)

134: 2011/10/04(火) 03:28:34.65


叔父「なるほど。妙な記憶の欠如というか、空白部分があるのはそのせいだね」

男「えぇ。叔父さんには黙って事を進めてしまって申し訳ありませんでした」

叔父「いやいや、構わんよ。君のすることに私は口出しできやしないからね」

男「そんな。もっと遠慮なくズカズカ言ってくれてもいいのに」

男「いつも教室でやってるみたいにさ?」

叔父「はぁー。あのキャラで通すの、けっこう参ってたりするんだよ?」

男「その割には乳だのイきかけましただのセクハラ発言はするんですよね」

叔父「・・・君も底意地が悪い」ニヤ

男「お互い様です」ニヤ



135: 2011/10/04(火) 03:36:39.02

叔父「ゴホン・・・で、だ。陸上部君も無事に還してもらえたし」

叔父「『生徒連続失踪事件』の再現は回避できたわけだが」

叔父「そもそも彼女は、己のアイデンティティを危惧して顕現したわけだろう」

叔父「その危惧が無くなった今、どうしてまだ存在して普通に登校しているのかね」

男「それは・・・」

男「それはおそらく、半永久的に近い力を手に入れたからでしょう」

男「もう自分は消える心配はなくなった・・・」

男「なにしろ、あの一件で学園中の畏れを平らげたも同然ですからね」

136: 2011/10/04(火) 03:43:17.31

男「もとより『学園七不思議』の原典とも言える存在ですから」

男「姿・肉体を保ったまま現実世界に干渉する程度、今の彼女にはどうということはないでしょう」

叔父「なるほど・・・そして、それだけではないね?」

男「アー・・・いえ、知りません」

叔父「・・・言わないつもりかね」

男「シラナイモノハシリマセン」

叔父「・・・君は嘘をつくときにカタカナ言葉になる。知っていたかね」

男「えっ!?」

叔父「気づいてなかったのかね・・・」

男「おおーん・・・」




・・・
・・

138: 2011/10/04(火) 03:51:26.24
 そして秋も暮れ、冬が近づく頃には失踪騒動も鎮まりを見せた。
散々騒がれた挙句にこうも沈静化してしまうと、彼女がまた暴走を起こしてしまうのではないかと
冷や汗を流したものだが、彼女が言うには「膨大すぎる力を受け取ったからもはやそんな心配はない」というのだ。
全くもって頼もしい限りである。


 そしてなぜ、古くから眠っていた彼女があの時になって目覚めて暴走を起こしたのかというと、きっかけは、ほんの
微力ながらも怪異として産声を上げようとしている『黒い影』の影響によるものだったという。
また『黒い影』も、実のところによると、「学園祭の出し物の準備をしていたとある生徒を、遠目から見たときに
たまたまそう見えた」というのが不思議話としての起源らしく、それが何年か経って後、たまたまこの時期に
同じように放課後の教室で、学園祭の準備をしている生徒を『黒い影』のように見えてしまった勘違いから、
噂話が再燃し、怪異としての胎動が始まったらしい。


また、彼女からクラスの皆が(もちろん俺も)解放された後に、『黒い影』が怪異として育ちきってしまう
ことを危惧した俺が、黒カーテンを羽織って放課後の教室という教室を徘徊して回ったのはここだけの話に
しておいてほしい。怖いもの見たさに肝試しをしにきた生徒たちのキョトンとした顔と、悲しいものをみるような
目つきは思い出したくもない。

それから・・・

139: 2011/10/04(火) 03:54:44.70


男「そういえばさ」

転「うん」

男「お前、なんであのときあんなことしたわけ?」

転「あんなこと?」

男「そ、その・・キ、キーキキ、キスだよ」

転「あぁ」

転「得意の第六感とやらで分かってるものだと思ってた」

転「意外とトロイのね、貴方って」

男「うるせーうるせー赤ちゃんみたいな噂話にジェラシー妬いてた原典様に言われたくないですよーだ」

140: 2011/10/04(火) 04:00:08.34


転「・・・いくら私が『学園七不思議』の原典で、百数年を生きた怪異だとして」

転「いくら私が膨大なまでの力と知識を持った怪異だとして・・・」

転「その性格や思考は、あくまでもモデルとなった身体のそれが基本だから」

転「・・・だから今ここにいる怪異は、うら若きいち乙女と何ら変わりはない」

男「・・・は?」

転「男君」

転「私が君に興味を持ったというのは」

転「つまりはそういうことだよ」ニコ

男「お、お・・・」

転「・・?」



男「おーん」



END

142: 2011/10/04(火) 04:03:47.95
あぁやっと終わりました くそSS見てくれてありがとう
SS投下は初めてなので至らない点が多くグダグダになってしまって申し訳なかったですしゃぶります

あと設定紹介して私は寝るのでみなさんも寝ましょう


登場人物


男 主人公  高等部二年生。中等部の時にとある事件に巻き込まれ両親が他界。自身
       も氏の淵に立たされるが生還。その際に第六感を身につける。事件以降は
       学園寮で暮らしている。

転校生ヒロイン(? 転校生として男のクラスに編入してくるが・・・

女 幼馴染  男とはご近所さんということで幼稚園以来の幼馴染。男が寮生活をするよ
       うになってからは何かと気をかけるようになる。少なからず男に好意を抱
       いている。

叔父(担任) かつて男の命を救った張本人。男には命の恩人といわれているが、実
       の本人は彼の両親をも救えなかったことに自責の念を抱いており、そのこ
       とに負い目を感じている。職業は教師で、学園で数学教師を務めている。
       お気づきいただけただろうか?担任教師とは彼のことである

眼鏡 クラスメート 初等部からの同級生。自他共に認めるオタクであり、オカルト関係の話が
       特に好き。学園内の不思議を研究する「学園不思議クラブ」に所属。

143: 2011/10/04(火) 04:05:01.79
裏筋

じゃないあらすじね



 はるか昔・・・学園が設立して間もないころ生徒が次々に失踪する事件が起きた「生徒連続失踪事件」。
警察の捜査も難航し、犯人はおろか事件の全貌すら不明だったため、幽霊の仕業だ、失踪した生徒たちの
幽霊がでるぞなどと囃し立てられ、当時の生徒たちの間で「学園七不思議」の一つとして認定される。
 しかし月日は流れ、事件は人々の記憶から忘れ去られ、怪談話としても新鮮さを失うようになる。
そんな中、ある日の放課後に教室で蠢く黒い影が目撃され、生徒の間で飛ぶように噂されるようになり、
「学園に潜む黒い影」という新しい七不思議が誕生するが・・・


一番最初の誘拐事件の十数年後に、とある精神の錯乱した男が起こした強盗殺人事件について警察が捜査を進めた際、
最初に失踪した少女が誘拐されて殺されていたというのが判明します。同一犯による犯行ってことね

冒頭の炎のシーンは、主人公が中学生の時におこったある事件の時の夢ね


144: 2011/10/04(火) 04:08:33.05
いま達成感に満たされて頭の中ではワンオクの完全感覚DREAMERが流れています


なんか当初予定してた登場人物が結局でてこないまま終わってしまったという悲しみの
結末が微粒子レベルで存在していますけどもそしてそして
処O作なんで至らない点、読みづらい点、わからねえよいい加減にしろホ〇野郎が的ななんたらは数多くあると思います
何しろ半時間たらずしかストーリー練れてないので上等なお話もかけず
そして作者自身実はよくわかってないのでおおーんしてあげてください!

こんなくそSSよんでくれてありがとう!

じゃあなおやすみ!

引用元: 男「おーん」