1: 2019/04/24(水) 22:53:46.628
キャル「……暇ね~」

ペコリーヌ「お腹空きましたぁ……」

コッコロ「主さま、よだれが垂れてしまっていますよ。ふふ♪」

キャル「ねえ、ペコリーヌ」

ペコリーヌ「はい? なんでしょう? あっ、ご飯でも食べに行きます?」

キャル「ご飯はあとにしなさい。そんなことより、ちょっとおもしろいウワサを聞いたんだけど、暇つぶしにどうかしら?」

ペコリーヌ「ウワサ、ですか。森の珍味でしょうか? それとも山の幸?」

キャル「食べ物ばっかじゃない! 違うわよ! どんな願いも叶えてくれる魔法の宝石の話!」

ペコリーヌ「へぇ~、どんなお願いでも叶うんですか~。……どんなお願いでも!?」

キャル「興味のあるなしがはっきり分かるわね……。ええそうよ、美味しいご飯の山だってきっと叶うわ♪」

ペコリーヌ「じゅるり♪ やばいですね☆」

キャル「どう? 行ってみない?」

ペコリーヌ「何してるんですか、キャルちゃん! 早く行きましょうよ! ほら、早く早く!」

キャル「はいはい。目的地は洞窟だし、ちゃんと準備してからね」

2: 2019/04/24(水) 22:55:19.013
ペコリーヌ「コッコロちゃんも来ればよかったのに~……」

キャル「願いはもう叶ったっていうんだからしょうがないわよ。それにしたって、あんな赤ちゃんみたいなやつの世話なんてよくやりたがるわよね」

ペコリーヌ「かわいいですよね♪ あの人も、コッコロちゃんも♪」

キャル「あんたに美味しいか美味しくないか以外の感性なんてあったの?」

ペコリーヌ「キャルちゃんは美味しそうですよね☆」

キャル「ほらみなさい……。食い意地オバケなんかと一緒にいたってロクなことないわ……」

ペコリーヌ「またまた~! 今日だってわたしのこと誘ってくれたじゃないですかぁ~♪」

キャル「それはっ……! ど、洞窟には魔物が出るから! そう、それよ! 楽に進むために誘っただけなんだから!」

ペコリーヌ「素直じゃないんですから~! このこの~♪」

キャル「くっつくなぁ~! まったく、鬱陶しいったらないわ!」

ペコリーヌ「……っと。この洞窟でしょうか?」

キャル「えーっと……ええ、そうね! 地図で確認したけど、ここで間違いないわ!」

ペコリーヌ「いざ! 冒険スタートです! ……の前に、お弁当にしましょう♪」

キャル「ぐっ……。キレイに出鼻を挫くわね……」

3: 2019/04/24(水) 22:57:18.308
ペコリーヌ「んふぅ~☆ おいひぃ~♪」

キャル「あははっ! あんたの食べる姿ってほんと見てて飽きないわ♪ とっても幸せそうに食べるんだもの!」

ペコリーヌ「キャルちゃんと一緒だから、ますます幸せなんですよ? ありがとうございます、キャルちゃん♪」

キャル「……なーに気色悪いこと言っちゃってんだか」

キャル「あ、ほらペコリーヌ。ちょっとジッとしてなさいよ」

ペコリーヌ「えっと……?」

キャル「……はい取れた。ご飯粒くっ付いてたわよ。こんなにたくさん」

ペコリーヌ「じー……」

キャル「ばっちぃわねぇ~。もっとお上品に──」

ペコリーヌ「あむっ」

キャル「ちょっ……!? なんであたしの指ごと食べてんのよ!?」

ペコリーヌ「はむはむ。ちゅぷちゅぷ」

キャル「ぎゃーっ!? 吸うなーっ!」

4: 2019/04/24(水) 22:59:04.683
ペコリーヌ「んもう、本気で叩かなくたっていいじゃないですかぁ……」

キャル「あんたが変なことするからでしょ! 自業自得よ! ふんっ!」

ペコリーヌ「美味しかったですよ♪」

キャル「……次やったらマジで頃すから」

ペコリーヌ「はーい……次からは許可を取ってからにしますね……」

キャル「まるで反省してないじゃない……!」

ペコリーヌ「あれ? キャルちゃん全然食べてませんね。今食べておかないと、洞窟の中で倒れちゃいますよ?」

キャル「あんたじゃないんだから少しくらい食べなくたって倒れないわよ。あたしのことはいいからもっと食べなさい」

ペコリーヌ「ダメですよ! 食事は幸せパワーを生み出す大切なことなんですから! ほらほら~、キャルちゃん、あーん♪」

キャル「ちょ、いらないって……もぅ~……!」

ペコリーヌ「あーん♪」

キャル「あ、あーん……」

5: 2019/04/24(水) 23:01:29.201
キャル「氏ぬほど食べさせられたぁ……。うぅ……お腹が苦しい……」

ペコリーヌ「ごちそうさまでした☆」

キャル「ごちそうさま……。少し休憩しないと動けないわ……」

ペコリーヌ「あらら……。楽しくてつい食べ過ぎちゃったんですね……分かりますよ、その気持ち……」

キャル「あんたが無理やり詰め込んだのよ! うぐぐ……苦しいんだからふざけたこと言うんじゃないわよ……」

ペコリーヌ「ごめんなさい……」

キャル「反省するなんて珍しいわね。いいわ、そのまま少し反省してなさい」

ペコリーヌ「しゅん……」

キャル「……」

ペコリーヌ「ぐるるる~……」

キャル「もうお腹鳴ってるじゃない……」

ペコリーヌ「ごはんごはん……。もぐもぐ……」

キャル「はぁ……」

キャル「反省はもういいから楽しそうに食べなさいよ。いつもみたいにバカみたいな顔してさ」

ペコリーヌ「……はいっ♪」

7: 2019/04/24(水) 23:04:04.541
キャル「さってと! それじゃあ行きましょうか! トレジャーハンティングの始まりよ!」

ペコリーヌ「了解です、キャル隊長!」

キャル「隊長……ふふん! いいじゃない! 前衛は任せるわよ、ペコリーヌ隊員!」

ペコリーヌ「こういうのって隊長が先頭じゃないんですか?」

キャル「あたしは後ろでどっしり構えるタイプの隊長なの。いいから早く先に行きなさいよ」

ペコリーヌ「キャルちゃんはしょうがないですねぇ~。こわいならこわいって言えばいいのに~」

キャル「はぁ!? こわくなんてないわよ! たかが洞窟に入る程度でこわがったりなんてするもんですか!」

ペコリーヌ「んふふ♪ なら横に並んで進みましょう! それならキャルちゃんがビクーッてなるところが見えますし☆」

キャル「……いいわ。望むところよ! あんたがプルプル震えてる姿をしっかり見てやるんだから、覚悟しなさい!」

ペコリーヌ「それじゃあ、はい! 手を繋ぎましょう!」

キャル「ええ! しっかり握りなさいよね!」

キャル「……」

ペコリーヌ「えへへ♪」

キャル「離しなさいよ! 勢いでうっかり手なんか繋いじゃったじゃない! いたたたた! 握力っ! あたしの手が粉々になっちゃうからぁ~! ぎゃあぁぁぁ!?」

8: 2019/04/24(水) 23:07:25.662
ペコリーヌ「ふぅ~。思ってたよりも中は魔物でいっぱいですね。これはお宝も期待できるかもしれませんよ!」

キャル「冒険者が来てたらこうはならないものね。願いが叶う宝石……本当に見つけられたら……うふふふふ……」

ペコリーヌ「ところでキャルちゃん。キャルちゃんはどんなお願いをするつもりなんですか?」

キャル「……ナイショ」

ペコリーヌ「えぇ~! いいじゃないですか~! 教えてくださいよ! キャルちゃんのお願い知りたいです~!」

キャル「ナイショったらナイショなの! あんたのお願いと違ってあたしのは繊細なんだから!」

ペコリーヌ「むぅ~……。キャルちゃんのケチんぼ」

キャル「うっさい。食いしんぼ」

ペコリーヌ「……あれ? 何か踏んだような」

キャル「ね、ねぇ? 何か嫌ぁな音が聞こえてこない? 硬くて重たいものが転がるみたいな……ほら……どんどん近づいて──」

ペコリーヌ「キャルちゃんっ! あれを見てください! 大きな岩がゴロゴロ~って転がって来てます!」

キャル「あーっ! やっぱりーっ!? 走るわよ、ペコリーヌ!」

ペコリーヌ「は、はいっ! えーん! ごめんなさ~い!」

9: 2019/04/24(水) 23:09:43.363
キャル「ぜぇーっ……ぜぇーっ……。し、氏ぬかと思ったわ……」

ペコリーヌ「横道があって助かりましたね……」

ペコリーヌ「ふぅ……まさかあんな罠が仕掛けてあるなんて……。ただの洞窟だと思って油断しちゃってました……。本当にごめんなさい……」

キャル「あはは、ヘコむなんてあんたらしくもないわね。転がってくる岩の罠なんて、いい話のネタになるじゃない」

キャル「帰ったらコロ助にでも話してみなさい? きっと目をキラッキラさせて食いつくわよ♪」

ペコリーヌ「キャルちゃん……」

ペコリーヌ「はいっ! せっかくの大冒険なんです! 迫り来る罠をくぐり抜け、幾多の氏線を乗り越えて……最後には宝物を手に入れる……! これぞロマンです! やばいですね☆」

キャル「その意気よ! 氏ななきゃなんでもいいわ! さあ踏み出しなさいペコリーヌ! あんたの冒険は始まったばかりよ!」

ペコリーヌ「気を取り直して冒険再開です♪ 行きますよ~! ……あ」

キャル「……」

ペコリーヌ「あ~っ! 落とし穴のスイッチが作動してしまいましたぁぁぁぁ……」

キャル「やっぱりあんたは少し反省しなさぁぁぁぁ……」

10: 2019/04/24(水) 23:12:12.661
キャル「う……ん……」

ペコリーヌ「きゅ~……」

キャル「うわっ、ペコリーヌが下敷きに……! ご、ごめんペコリーヌ! でもこれは事故で──」

キャル「……こいつ、あたしを受け止めようとしたのね」

ペコリーヌ「うーん……うーん……」

キャル「と、当然よ! ペコリーヌのせいで落ちちゃったんだから! だからあたしを庇うのは当然で……」

キャル「ありがと、ペコリーヌ……」

ペコリーヌ「はっ……!」

ペコリーヌ「キャルちゃんは……ほっ、無事みたいですね♪」

キャル「おかげさまでね。ねえ、どこもケガなんかしてないわよね?」

ペコリーヌ「えっと……はい! 大丈夫そうです! 結構落ちてきた感じがしましたけど、案外なんとかなるもんですね♪」

キャル「あんたが規格外だからでしょ。普通ならぺちゃんこよ」

キャル「落とし穴の下はまた別の通路だったみたいね。どっちが先に進む道かは分からないけど、閉じ込められちゃったってことはなくて安心したわ」

ペコリーヌ「む。キャルちゃんキャルちゃん! 向こうから魔物がやってきます! 大群さんのお出ましですよ!」

キャル「ふんっ、ちょうどいいじゃない。魔物が湧く方向が進路だって相場は決まってるわ! 道を切り開くわよ、ペコリーヌ!」

12: 2019/04/24(水) 23:15:17.573
ペコリーヌ「これで……最後ですっ! てやぁぁぁっ!」

キャル「よっし! ナイスよペコリーヌ!」

ペコリーヌ「こっちは食べられない……こっちは……あっ! 美味しそうです~♪」

キャル「品定めすんな! どれも食べられないわよ! 捨てちゃいなさいそんなの!」

ペコリーヌ「ラットンとゼラチナだけ持っていきましょう……」

キャル「捨・て・ろ!」

ペコリーヌ「うぅ……もったいないです……。ごめんなさい、食材さんたち……」

キャル「食材じゃないっての……。ただの氏骸じゃない……しかも魔物の……」

ペコリーヌ「キャルちゃんもおいしそうに食べてたじゃないですかぁ~! ほら、このバットケイブを使った味噌煮込みバットとか──」

キャル「思い出させんなバカ! まともな料理ヅラして並んでたから、うっかり食べちゃっただけじゃない!」

ペコリーヌ「けどおいしかったでしょ~?」

キャル「……味はね」

ペコリーヌ「味がおいしいのに食べたくないだなんて、キャルちゃんって変わってますよね。どうして食べたくないのか分かりませんよ」

キャル「魔物だからよ……」

14: 2019/04/24(水) 23:18:02.095
ペコリーヌ「はぁ~……。ふぉーるすらーっしゅ」

キャル「目に見えてやる気なくなってるわね~。ちゃんと魔物を倒してくれてるから別にいいんだけど」

ペコリーヌ「ごはん……ごはん……」

キャル「もうおにぎりも残ってないものね。……ペコリーヌ! こいつら蹴散らしたらいいものをあげるわ! だからもうひと頑張りお願い!」

ペコリーヌ「食べ物ですか……?」

キャル「ふふ~ん♪ 食べ物よ!」

ペコリーヌ「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」

キャル「うっわ、どれだけ食い意地張ってんのよ。……まぁいっか。お疲れ様、ペコリーヌ」

ペコリーヌ「キャルちゃん♪ キャルちゃんキャルちゃん♪」

キャル「あはっ、まるで子犬ね? 待ってなさい、今とっておきの──」

キャル「じゃーん! チョコレートよ! オヤツに食べようと思ってこっそり持ってきてたの! 特別にあんたにあげるわ!」

ペコリーヌ「んぅ~っ……♪ チョコレート……♪ いいんですか? いいんですか~っ!? うわーい♪」

15: 2019/04/24(水) 23:21:38.498
キャル「そのチョコレートが正真正銘、最後の食料だからね。大事に食べなさいよ?」

ペコリーヌ「キャルちゃん、半分こしましょう♪ こっちの大きい方……大きい方を……わた……キャルちゃんに……」

キャル「……話聞いてた? あんたが全部食べなさい、お腹ぺこぺこのペコリーヌ。そのために持ってきた──こほん! あたしは別にいらないし!」

ペコリーヌ「でもぉ……」

キャル「ったく、変なとこ頑固なのよね~。分かった分かった、ひと口だけもらうから。それでいいでしょ?」

ペコリーヌ「そ、そういうことなら……じゅるる♪」

キャル「元気取り戻してあたしのためにビシバシ働きなさいよね。倒れたりしたらお尻ひっぱたいてやるんだから」

ペコリーヌ「今日のキャルちゃんはなんだかお姉ちゃんみたいですね! 普段も優しいですけど♪」

キャル「な、なにバカなこと言ってるのよ! あんたの方が歳上じゃない!」

ペコリーヌ「細かいことはいいじゃないですかぁ~♪ わたしとキャルちゃんの仲なんですから!」

キャル「そもそもあたしとあんたは仲良くなんてないし! ただ同じギルドにいるだけなんだから!」

キャル「お姉さんになんてなれないわよ……。そんな資格、あたしには……」

ペコリーヌ「キャルちゃん……?」

キャル「なんでもないわっ! 食べ終わったら出発するわよ!」

16: 2019/04/24(水) 23:24:49.082
キャル「分かってると思うけど、もう罠なんて踏むんじゃないわよ? 今までのパターンからして足元にスイッチがあるんだから、注意していれば──」

ペコリーヌ「キャルちゃん? 顔色が悪いですけど……どうかしたんですか? お腹壊しちゃいました?」

キャル「……踏んだ。なんか踏んじゃった! しかも片足ずつ!」

ペコリーヌ「えぇ~? あれだけ自信満々だったのに踏んじゃったんですかぁ~? うっかりさんですね!」

キャル「わわわわ! 足元からツタが……きゃあっ!?」

ペコリーヌ「あ~あ、見事に吊られちゃいましたね。今降ろしてあげますから待っていてください」

キャル「クソっ……。誰よこんな悪趣味なトラップ仕掛けたヤツは……。見つけたらただじゃおかないんだから……!」

キャル「──ペコリーヌっ! あんたの後ろから魔物が来てるわ! 気をつけて!」

ペコリーヌ「なんとっ!? しかたありません! キャルちゃん、救助は少しお預けです! 先に魔物を片付けちゃいますから!」

キャル「え、ええ、お願い! 一人なんだから無茶するんじゃないわよ? でもあたしを置いて逃げたりなんてしないでよね!」

ペコリーヌ「もちろんです♪ 氏ぬときは一緒ですよ☆」

17: 2019/04/24(水) 23:27:07.557
ペコリーヌ「はぁっ! そりゃーっ!」

キャル「ちょっとぉ! まだ倒しきれないの!?」

ペコリーヌ「それが……倒しても倒してもどんどん湧いてくるんですよ~……。キャルちゃんが魔物を呼び寄せる罠も踏んじゃったんでしょうか?」

キャル「うぐ……」

ペコリーヌ「それに……カチカチなゴーレムも混ざっててですねっ、わたしの攻撃だと……あぅっ!」

キャル「チィッ……! あたしの魔法なら瞬頃してやれるのに……!」

ペコリーヌ「キャルちゃんっ、援護もできそうにありません? ちょっとピンチです……」

キャル「そんなこと言ったって、指の先しか動かせないし……。魔導書も落としちゃったから、応援くらいしかできないわよ……!」

キャル「あんたの剣でこのツタを切れないの!? 自由になれば形勢逆転なんだけど!」

ペコリーヌ「無理ですよぉ~! ギチギチに巻きついちゃってるんです、キャルちゃんの体までスパッといっちゃいますって!」

キャル「この際、足の一本や二本くれてやるわよ! ペコリーヌ! やってちょうだい!」

ペコリーヌ「分かりました! キャルちゃんの足はわたしの血肉となって生き続けるでしょう! それではひと思いにスパッと──」

キャル「わーっ!? やっぱナシ! やめて! こわいこわいこわい!」

18: 2019/04/24(水) 23:30:15.470
キャル「ぐぬぬぬぬぬ~……! こうなったら魔物を操れるあの力を使うしか……」

キャル「でももしあたしの正体がバレちゃったら……うぅ……」

ペコリーヌ「はぁ……はぁ……! キャルちゃんには指一本触れさせませんっ! このーっ!」

キャル「迷ってる場合じゃないわよ、キャル……! このままじゃあたしだけじゃなくてペコリーヌまで……!」

キャル「……よしっ。ペコリーヌ! あたしがそいつら全員の動きを一瞬だけ止めるわ! その隙にあんたの全力を叩き込みなさい!」

ペコリーヌ「と、止めるって……キャルちゃん、一体何を──」

キャル「いいから信じなさいよ! 本当に一瞬だけだから、ボーッとしてたらチャンスを失っちゃうんだからね!」

ペコリーヌ「分かりました! キャルちゃんを信じます!」

キャル「それでいいわ……! 行くわよ!」

ペコリーヌ「はいっ! 力を溜めて……全力全開っ!」

キャル「魔物共ぉ! 止まれぇぇぇぇっ!」

ペコリーヌ「──とおぉぉぉりゃぁぁぁっ!」

19: 2019/04/24(水) 23:32:27.824
キャル「くぅっ……! 衝撃で何も見えない……!」

ペコリーヌ「やった~♪ やりましたよ、キャルちゃん! 通路の先ごと吹き飛ばしました☆」

キャル「けほっ! けほっ! や、やり過ぎよ……! 洞窟が崩れたらどうすんの!?」

ペコリーヌ「だってキャルちゃんが全力でやれって……」

キャル「限度ってもんがあるでしょーが!? ……ま、助かったのは事実だし? いちおうお礼を言っておくわね♪」

ペコリーヌ「えへへへ~♪ 降ろしたら、ぎゅ~っ☆ ってさせてくださいね♪」

キャル「え……嫌……」

ペコリーヌ「じゃあ降ろしてあげません」

キャル「なんでよ! 早く降ろしなさいよ! この体勢結構ツラいんだから!」

ペコリーヌ「降ろしたら、ぎゅ~っ☆ ってさせてくださいね♪」

キャル「嫌よ!」

ペコリーヌ「じゃあ降ろしてあげません」

キャル「ふざっけんな! 実質一択しかないじゃない! いいから降ろしなさいよぉ!」

ペコリーヌ「ぎゅ~っ?」

キャル「い~や~よ~!」

20: 2019/04/24(水) 23:35:33.161
キャル「はぁ~……やっと自由になった……。身体中がミシミシ鳴ってるわ……」

ペコリーヌ「ぎゅ~っ☆」

キャル「クソがぁ……」

ペコリーヌ「ところでキャルちゃん、さっきの魔物の動きを止めたあれって……?」

キャル「う……。あれは~……そのぉ……え~っと……」

ペコリーヌ「いえ、やっぱりいいです。助けられちゃいましたからね! 言いたくないのなら聞きません♪」

キャル「そ、そう……? あ~、よかった……」

ペコリーヌ「それよりキャルちゃん、先に進めなくなっちゃいましたけど、どうしましょうか?」

キャル「あんたが吹き飛ばしちゃうから……。しょうがない……帰りましょうか……」

キャル「……あら? ねえ、見てペコリーヌ。あそこよ、あそこ。ほら!」

ペコリーヌ「あそこ……あれあれ? 崩れた瓦礫の横に細い通路がありますね? 隠し通路でしょうか?」

キャル「隠し通路……! あの先にお宝があるんじゃない!? きっとそうよ! 行ってみましょ♪」

ペコリーヌ「ついにお願いが叶うかもしれません! 無限おにぎりが手に入りますよ! やばいですね☆」

キャル「早く来なさいペコリーヌ! 通路の先は広くなってるわ! 奥に巨大な扉もある! あははっ! これは決まりね!」

ペコリーヌ「また罠があるかもですし、慎重に行った方がいいですよ。こういうときこそ冷静に、です」

キャル「そ、そうね……。ペコリーヌにしてはマトモなこと言うじゃない。浮かれてる内にあっさり氏ぬなんて真っ平だわ!」

21: 2019/04/24(水) 23:38:05.513
キャル「せーので扉を押すわよ! せーのっ!」

ペコリーヌ「ふぬぬぬぬぬ!」

キャル「うぎぎぎぎぎ!」

ペコリーヌ「ふぅっ♪ わたしの方だけ開きましたね!」

キャル「ぜぇっ、ぜぇっ……! 最初からあんたに任せておけばよかったわ……」

ペコリーヌ「中は……わぁ~! とんでもなく広いです! ギルドハウスが何軒も建てられちゃうくらい!」

キャル「ふわぁ~……ほんとね~……。ん? 燭台に、装飾された柱……どうやら神殿かなにかみたいね」

ペコリーヌ「こんな洞窟の奥に神殿が? どんな人が住んでるんでしょう? 食べ物に困っちゃいそうなのに……」

キャル「いるとしても魔物とか精霊じゃないかしら。もし住んでるヤツがいたら頭おかしすぎるわよ」

ペコリーヌ「とりあえず進んでみましょうか。願いの叶う宝石も見つかるかもしれません!」

キャル「黄金とか宝冠とか、宝物でいっぱいの部屋も見つかるかも♪」

ペコリーヌ「キッチンもあるといいですね☆」

キャル「ないっての」

22: 2019/04/24(水) 23:40:11.892
キャル「……一番奥の壁まで着いちゃったわね。にしても、真っ赤な壁なんて趣味悪いわねぇ」

キャル「あれ? これで終わり? もしかして期待外れ? 何もナシ?」

「よくぞ辿り着いた。勇気ある者たちよ」

ペコリーヌ「……キャルちゃん、今何か言いました?」

キャル「え? あんたが喋ったんでしょ?」

「汝らの願い、叶えたければ力を示すが良い」

キャル「……」

ペコリーヌ「……」

キャル「あ~……これはアレじゃない? とんでもないヤツが来ちゃうやつじゃない? 来てるわよね、とんでもないヤツ。ドスンドスン足音がするもの! ヤバイのが来てるわよね!?」

ペコリーヌ「も、もう戦う力なんて全然残っていませんよ~……。ヘトヘトのペコペコです……」

魔神「……」

キャル「ひぃぃっ……!? なんかめっちゃ強そうなのが出たわよ!? ねぇペコリーヌってば!」

ペコリーヌ「み、見えてますよぉ~! あわわ……! どうしましょうキャルちゃん!?」

キャル「どうするって、決まってんでしょ!? 逃げんのよ!」

魔神「背を向けると氏ぬ呪いを掛けた」

キャル「……は?」

キャル「はぁぁぁ!? なんてことしてんのよあんた!? 普通宝物を置いて逃げる選択肢くらい用意しとくもんでしょー!?」

23: 2019/04/24(水) 23:43:01.131
魔神「力を示せ。さもなくば氏ね。さあ、どうする」

キャル「くっ……」

ペコリーヌ「あ、あの~……。確認なんですけど……」

ペコリーヌ「ここには『なんでもお願いが叶う魔法の宝石』があるって聞いたんですけど……本当にあるんでしょうか?」

キャル「そ、そうよそうよ! 宝石なんてどこにもないじゃない! 働かせるだけ働かせて、実は何もありませんでした~じゃ堪ったもんじゃないわ!」

魔神「ふふふ……ふはははは!」

魔神「その宝石なら、そら! 汝らの目の前にあるではないか!」

キャル「目の前……? そんなものどこにも──」

ペコリーヌ「キャルちゃん……キャルちゃんっ!」

キャル「なによ、うっさいわね。宝石見つけたの?」

ペコリーヌ「アレですよ……アレ……! 目の前の……壁ですっ! ううん、壁じゃなくてアレが全て──」

キャル「ほ、宝石だっていうの……? こんな……巨大な……?」

魔神「理解出来たか? これが汝らの求めし宝石だ」

25: 2019/04/24(水) 23:45:20.077
キャル「あたしの……叶うはずのないあたしの願いも……叶うの……?」

魔神「どのような願いも一つだけ叶う。世界の理すら超えてな」

ペコリーヌ「ひとつ? わたしと、キャルちゃん……ひとつずつじゃないんですか?」

魔神「一つの願いを叶えれば、この宝石は力を失う。故に、叶うのはたった一つの願いのみである」

キャル「はぁ? こんなバカでかいのに一個だけなの? それじゃあ、あたしかこいつ……どっちかが諦めないといけないってこと……?」

魔神「ふふふ、気が早いのではないか? 願いを叶えるために、まずは──」

ペコリーヌ「やりましょうキャルちゃん! キャルちゃんのお願い、絶体に叶えてもらいましょうね!」

キャル「ペコリーヌ……」

魔神「来るがいい! ふはははは! その力がどれ程のものか! 見極めさせてもらおう!」

26: 2019/04/24(水) 23:48:15.747
魔神「ぐわぁぁぁっ!」

キャル「……」

ペコリーヌ「……」

魔神「見事だ……勇気ある者たちよ……」

キャル「メチャメチャ弱いじゃない!」

ペコリーヌ「長い間眠っていて弱っちゃったんでしょうか? やばいですね☆」

魔神「その宝石に触れ、願いを述べよ。さすればその願いは必ずや叶うであろう……ぐふっ……」

ペコリーヌ「この魔物も食べられそうですね。肉付きもしっかりしてますし、期待できるかもしれませんよ♪ やりましたね、キャルちゃん!」

キャル「あー、はいはい……。知ってたわよ、あんたの見る目がムネとかモモに向いてたの……」

ペコリーヌ「わたしはこの通り、おいしそうな魔物をゲットしましたから♪ キャルちゃんは遠慮せずお願いを叶えちゃってください! ほらほら~♪」

キャル「あんたの願いはいいの……? せっかく苦労してここまで来たのに……」

ペコリーヌ「わたしのお願いは、こんなものに頼らなくても叶えられるお願いなんです♪ キャルちゃんや、コッコロちゃん。それにあの人と……」

ペコリーヌ「ずぅ~~っと仲良しでいられますように、って♪」

キャル「そ、それ……あたしとおんなじ──」

ペコリーヌ「え? なんですか?」

キャル「うぅ~っ……! なんでもないわよ! バカっ! 食いしんぼ! アホリーヌ!」

27: 2019/04/24(水) 23:51:25.376
キャル「……じゃあ、願いを叶えるわよ」

ペコリーヌ「ごくり……」

キャル「……」

ペコリーヌ「キャルちゃん?」

キャル「ね、ねぇペコリーヌ? ここでお願いを叶えたとしてよ? あたしたち、無事に帰れると思う?」

ペコリーヌ「え? 帰りは不思議な力でピューンって戻ったりできないんですか?」

キャル「できないでしょ……魔神氏んじゃったし……。あたし帰りのことなんて何も考えてなかったのよ……。食料もないし、体力だって……」

ペコリーヌ「魔物も出るし、罠だってたくさんあるんですよ……? わ、わたしたち、このまま遭難して魔物たちの食料になっちゃうんでしょうか……」

キャル「……」

キャル「もしかして……ペコリーヌと一生仲良しでいられますように、って願ってもあっという間に一生が終わっちゃうんじゃ……」

ペコリーヌ「えーん! お腹が空いたよぅ~! 飢え氏にしちゃいますよぅ~! えーん! えーん!」

キャル「……はぁ」

キャル「『あたしとペコリーヌ、それからそこで倒れてる珍味を洞窟の入り口まで運んでちょうだい!』それがあたしの願いよ!」

ペコリーヌ「はっ……! その手が……ってそれだとキャルちゃんのお願いが~!?」

キャル「もういいのよ。ほら、願いが叶うわ。ペコリーヌ、あたしから離れないでね」

28: 2019/04/24(水) 23:53:51.425
キャル「うっ……日の光が……」

ペコリーヌ「眩しい……! けど、あったかいです♪」

キャル「はぁ~……もう夕暮れね……。二度とこの夕日が見られなくなるところだったと思うと寒気がするわ……」

ペコリーヌ「キャルちゃん……その……」

キャル「は~あ! 骨折り損とはこのことね! やけ食いでもしないとやってられないわ! そいつ、ギルドハウスで調理して食べてみましょ!」

ペコリーヌ「打ち上げパーティーですねっ☆ コッコロちゃんたちも混ぜて、一晩中食べ明かしましょう♪」

キャル「……ねぇ、ペコリーヌ」

ペコリーヌ「はい? どうかしました?」

キャル「楽しかった? 今日、二人で一緒に冒険して」

ペコリーヌ「はい、楽しかったですよ? キャルちゃんとのお出かけはいつだって楽しいです。だけど──」

ペコリーヌ「今日は特別な思い出になりました♪ キャルちゃんのお願いは叶えられませんでしたけど、わたしは今日、ここに来られてよかったって思います♪」

キャル「……そっか。なら、ええ、よかったわ♪」

ペコリーヌ「帰りましょう、キャルちゃん! わたしたちのお家に! ねっ♪」

キャル「そうね。もうクッタクタよ。あ~疲れた~」

キャル「……未知の食材に、ステキな思い出かぁ。宝物には程遠いけど、まあ上々よね♪」

30: 2019/04/24(水) 23:56:57.143
コッコロ「なんと、大きな岩が……!? そ、それでお二人はどのように……」

ペコリーヌ「それがですね~、必氏に走って逃げた先に──」

キャル「……ふぅ。やっぱ落ち着くわね~。で? あんたは何やってんの? あっちで盛り上がってくればいいじゃない」

キャル「あたしがひとりで寂しくならないように? あはは、バカねぇ~。あんたがいたってなんも変わらないわよ」

キャル「それでもそばにいてくれるの? ふーん。どこにいようとあんたの勝手だけどさ」

キャル「ペコリーヌって不思議よね。え? あんたも分かる?」

キャル「そうそう、そうなのよ。一緒にいると安心するっていうか、幸せな気分に……って、これナイショだからね?」

キャル「喋ったら頃すから。ううん、喋ろうとした時点でぶっ頃すから。つーかもう頃しといた方がいいか」

コッコロ「主さま~! キャルさま~! お肉が焼けましたよ~! とても香ばしく、食欲をそそる香りに、わたくしよだれが垂れてしまいそうです……!」

キャル「ほら、行ってきなさいよ。あたしはもう少し休んでから行くわ」

キャル「……」

キャル「……ペコリーヌと。ギルドのみんなと、いつまでも仲間でいられますように」

キャル「案外もう叶ってるのかもね。この先、何があっても……最後にはきっと──」

ペコリーヌ「キャルちゃーん! 早く来ないとなくなっちゃいますよ~! すっごくおいしくて手が止まりませ~ん♪」

キャル「……ふふっ♪」

キャル「ちょっと! あたしの分まで食べるんじゃないわよ! この食い意地お化けっ!」



おしまい

31: 2019/04/24(水) 23:57:51.728
キャルちゃん優しくて好き

引用元: キャル「二人で宝探しに行くわよ!」 ペコリーヌ「やばいですね☆」