1: 2021/11/01(月) 21:07:13.596
男「あー……ソシャゲ飽きた」ポチポチ

TV『なんでやねん! ワハハハハ…』

男「テレビもつまんねー」

TV『議員の汚職が発覚しました……』

男「オー、ショック! 俺のギャグもつまんねー」

男「ふぁぁ……コンビニ行って立ち読みしつつ、チキンでも買ってこようかな。毎度おなじみコース」

男「あーあ、ぐだぐだな人生送ってんなぁ……俺。氏にてえ~」

死神娘「こんにちはー……」

男「うわっ!?」

2: 2021/11/01(月) 21:11:26.167
男「なんだお前、いきなり!?」

死神娘「死神です」

男「死神ィ? お迎えに来たってことか? 上等だよ、連れてってくれ」

死神娘「いえ、私は寿命を伝えにきただけです」

男「寿命? あー、はいはい、こないだそういうラノベ読んだわ!」

男「残り少ない寿命で頑張ろう……みたいな。結構面白かったわ」

男「で、あとどれぐらいあんの? 一日? 三日? 一週間? 一年?」

男「あんまり急なのもアレだから、一ヶ月ぐらいが理想なんだけど……」

死神娘「あなたの寿命は残り100年です」

男「なげーなオイ!」

3: 2021/11/01(月) 21:14:24.089
男「ちょっと待って、長くない?」

死神娘「そうですね。結構長いと思います」

男「結構どころじゃねえよ。ぶっちゃけそんなに生きたくないんだけど。いいよ、もう終わりで」

男「年号変わる瞬間にもう立ち会いたくねえよ」

死神娘「そういわれましても」

男「だいたい、なんでそんなに長いのに、わざわざ伝えに来たんだよ。いらねーだろ」

死神娘「別に寿命が長い人に伝えちゃいけない決まりはないですし」

男「決まりはなくても、常識で考えればさぁ」

死神娘「人間の常識を死神に当てはめないで下さい」

男「分かった、もういい。口喧嘩で勝てる気しねーわ」

5: 2021/11/01(月) 21:17:22.646
男「ホントに100年なの?」

死神娘「ホントに100年ですね」

男「その寿命、他の人に渡すとかできないの? ゲームで味方に残機分け与えるようなノリで」

死神娘「できるわけないでしょう? 常識で考えて下さい」

男「ぐぬぬぬぬ……」

死神娘「残り100年、精一杯生きて下さい」

男「精一杯100年はなげーなぁ。息切れしそう。小学校なら100割る6で……えーと、16回も卒業できちまう」

死神娘「意味が分かりません」

7: 2021/11/01(月) 21:20:17.709
男「あ、そうだ」

死神娘「はい?」

男「もし、俺が氏のうとしたらどうなるの? たとえばここで首を吊るとか」

死神娘「多分氏ねないと思いますよ」

男「いったな? よーし、俺は氏ぬのなんか怖くないんだ。このネクタイで首吊ってやるよ!」

男「止めても無駄だかんな!」

死神娘「別に止めませんよ」

8: 2021/11/01(月) 21:24:35.226
男「あとはこの台から足を下ろせば……」

死神娘「……」

男「押すなよ、絶対押すなよ!」

死神娘「私も多少人間界を勉強してます。こういう時って押すのが正解なんですよね」ドンッ

男「うおっ!」

ギュッ

男「ぐうっ!?」

ブチッ

男「ネクタイが切れ――」

ドシンッ!

10: 2021/11/01(月) 21:28:15.750
男「いててててて……腰打った」

死神娘「ほらね、氏ねないでしょ?」

男「だったらやり方変えるわ」

死神娘「どうするんです?」

男「この醤油……全部飲んだら、塩分取り過ぎで流石に氏ぬだろ」

死神娘「飲めれば氏ぬでしょうね」

男「飲んでやるよ! それっ!」グビッ

男「しょっぱっ! オ゛エ゛ッ! ゲボッ! 飲めるかこんなもん! 氏ぬかと思った!」

死神娘「氏のうとしてたくせに」

男「うるせえ!」

11: 2021/11/01(月) 21:31:29.386
外に出て――

男「ここから飛び降りたら氏ぬだろ……」

死神娘「ちゃんと落ちれればですけどね」

男「リンゴが落ちてニュートンは引力を発見できたんだ。俺だって落ちるはずだ」

死神娘「どういう理屈ですか」

男「アイキャンフラーイ!」バッ

ボフッ

男「!?」

業者「ビックリした! たまたまNASAで開発した超衝撃吸収マットを運んでたからよかったものの……」

男「なんてたまたまだ!」

死神娘「ね?」

12: 2021/11/01(月) 21:34:32.042
駅――

死神娘「なんで線路で正座してるんです?」

男「さすがに電車に轢かれたら氏ぬだろ」

放送『まもなく到着予定の電車ですが、到着時刻が遅れております。ご迷惑をおかけ致しております』

男「マジ!?」

死神娘「だから、氏ねないんですよ」

駅員「コラッ、何をしてるんですか! 危ないですよ!」

男「あ、やべっ、逃げよう!」ダッ

死神娘「はいっ!」ダッ

14: 2021/11/01(月) 21:36:16.506
男「ふぅー、すげえ息上がってる。マジ体力落ちたわ」

死神娘「よく走れた方だと思いますよ。で、どうします? まだ自殺チャレンジしますか?」

男「……」

死神娘「一応いっておくと、やめておいた方がいいですよ」

死神娘「無理に氏のうとすると、氏なないかもしれませんが、体は動かなくなるってことはありえますから」

男「あー……寝たきりで残り100年はキツイな」

死神娘「ね? 私がいうのもなんだけど、それこそ生き地獄ですよ」

16: 2021/11/01(月) 21:39:27.567
男「しっかし、100年はなげーなー……」

死神娘「……だったら私とデートしませんか?」

男「へ? デート?」

死神娘「寿命を伝えに来ただけじゃ退屈ですし、私も少しばかり遊びたいんですよ」

男「ははーん。そうやって俺とデートして、楽しませて、俺に生きる気力を与えるつもり?」

男「君もベタなことするね~」ニヤニヤ

死神娘「ベタとかいわないで下さい! 別に無理にとは……」

男「いいよ、やろう! 死神とデートなんか滅多にできるもんじゃないしな」

死神娘「そうこなくちゃ!」

17: 2021/11/01(月) 21:43:44.146
死神娘「じゃ、行きましょうか」

男「ちなみにデートしたことあんの?」

死神娘「ありますよ! 死神にも男はいるんですから! いっときますがあなたより年上ですよ、私!」

男「あ、そうなんだ。JKぐらいだと思ってた」

死神娘「JKとかいわないで下さい。そっちこそ、デートの経験は?」

男「あるよ。ま、その相手とは氏別しちまったけど」

死神娘「そういえばそうでしたね。あなたには愛する人がいたんでした」

男「知ってるのかよ。死神には個人情報保護って概念ないん?」

死神娘「そんなものありませんよ。なんでもお見通しです」

男「もし氏んだら、死神とは恋人にならんどこ。おちおち浮気もできねえや」

18: 2021/11/01(月) 21:46:29.221
死神娘「初デートはどこでした?」

男「たしか映画だったかなー」

死神娘「映画か、いいですね。じゃあ私たちも映画にしましょう!」

男「決まりだな。この辺だと映画館は……」

……

死神娘「ここですね。ちょうどかつての名作を上映する時間みたいです」

男「んじゃ入るか」

19: 2021/11/01(月) 21:49:28.460
死神娘「うっ、うっ、うっ……」ドバァァァ

男「おい、泣きすぎだろ……ジロジロ見られてる」

死神娘「とてもよかったですぅ~!」

男「うん、まあたしかによかったね」

死神娘「あの映画で泣けないなんて、あなたには感受性ってものがないんですか!」

男「まあ、何度か観てるしね……。テレビでもしょっちゅうやってるし」

死神娘「あ、そうだったんですか。だったらいってくれれば」

男「いや、そっちは初めてだったんだから。さてと、次はどこ行く?」

死神娘「ゲームセンターに行きましょう!」

20: 2021/11/01(月) 21:52:20.640
ゲームセンターに入り――

死神娘「この踊るやつやりましょう!」

男「え、マジで……恥ずかしいよ」

死神娘「いいからいいから!」

男「ええい、踊ってやるか!」

……

男「ぜーはー……ぜーはー……氏ぬかと思った」

死神娘「よく踊れましたね。周囲の人も褒めてますよ」

スゲー… マジカヨ…

男「どっちかっていうと心配してるだけだと思う」

22: 2021/11/01(月) 21:54:20.607
死神娘「このゲームやりません?」

男「いいよ」

死神娘「えい、えいっ!」カチカチッ

男「……」カチカチッ

死神娘「つ、強い……」

男「このゲームはやり込んでたからな」ニヤッ

死神娘「うぐぐ、もう一回!」

男「次はハメ技使うか」

死神娘「ひどぉい! 鬼! 悪魔! 死神!」

男「死神に死神って言われたくねえ」

24: 2021/11/01(月) 21:57:31.704
動物園――

死神娘「わぁ、色んな動物がいますね! だけど……」

男「ゾウだのキリンだのライオンは、客が大勢いて、とてものんびり見れないな」

死神娘「ですね……残念」

男「仕方ない、亀でも見よう」

死神娘「せっかく動物園に来たのに亀って……」

男「これでいいのさ。亀は万年、俺はあと百年ってね。親近感も湧く」

25: 2021/11/01(月) 22:00:52.025
ファミレス――

死神娘「現世のご飯っておいしいですねー!」バクバク

男「よく食うね~」

死神娘「あなたは小食ですね」

男「これでも食ってる方だと思うけどね」

死神娘「あの……おかわりいいですか?」

男「どうぞどうぞ。この年になると他人が食ってる姿見てるのも楽しいよ」

死神娘「じゃあ……チャーハンとカレー、それからパスタも追加で……」

男「俺の財布に氏をもたらしそうなんだけど」

26: 2021/11/01(月) 22:04:23.698
死神娘「今日はどうでしたか?」

男「……」

死神娘「すみません、無理にデートなんてさせて……私ばかり楽しんじゃって……」

男「いや……楽しかったよ」

死神娘「え」

男「十分楽しめた。おかげで残り100年、楽しく生きられる気がするよ」

死神娘「本当ですか!」

男「ああ、嘘はいわないよ。一生の思い出ができた、どうもありがとう」

死神娘「どういたしまして!」

27: 2021/11/01(月) 22:07:22.579
死神娘「あ、私そろそろ帰らないと。それじゃ、今日はこれで」

男「ああ、またいつかデートしような」

死神娘「はいっ!」

死神娘「それでは私がいうのもなんですけど、お元気で!」スゥゥ…

男「そっちこそ、いい死神になりなよ!」

男「……」

男(死神に出会い、寿命を告げられたというのに……生きる気力が湧いちまった。なんとも不思議な一日だ)

…………

……

28: 2021/11/01(月) 22:10:12.651
家に戻ると――

男「ただいま……」

男「ん?」

ワイワイ…

男(誰かいる……?)

男「あ、お前たちは……」

29: 2021/11/01(月) 22:13:36.428
息子「お帰り」

男「来てたのか」

息子「今日は親父の誕生日だろ? だからサプライズしようと思って。合鍵も持ってるしさ」

男「すっかり忘れてた……」

男(ひょっとしたら死神の子が来たのも、今日が誕生日だったからか)

息子嫁「さ、どうぞ。こちらに座って下さい」

男「そうさせてもらうよ。どっこいしょ」

息子「今日はどこ行ってたんだ?」

男「ん、ああちょっと……デートにね」

息子「デート? 親父もやるねえ!」

男(まさか相手は死神でした、なんていえんわな)

30: 2021/11/01(月) 22:16:35.730
孫娘「おじいちゃん、お帰りなさい」

ひ孫「ひーおじーちゃん、100歳のお誕生日、おめでとー!」

男「ありがとう、みんな」

息子「いつまでも元気でいてくれよ」

男「ああ、お前たちには悪いが……あと100年は生きそうだ」






おわり

31: 2021/11/01(月) 22:17:41.886

33: 2021/11/01(月) 22:21:32.358

この爺さん元気すぎだろ

引用元: 死神娘「あなたの寿命は残り100年です」男「なげーなオイ!」