819: 05/02/14 02:44:34 ID:???

家事も一段落しS-DATを聞きながら雑誌(主夫の友)をめくる。ささやかな休息の時間だ。
だが、安らぎの時間に終わりを告げるシ者のように誰かが前に立ち、雑誌に影が差す。顔を上げると同居人の少女が腰に手を当てて見下ろしていた。

「…なに?」

「アンタ。何やってんの?」

「何って…休憩、かな?」

「そんな暇あんの? もう明日なのよ?」

「?何が?」

「何って…バレンタインに決まってるじゃないの」

「バレ…そうだっけ? でもそれとボクの暇に何の関係が…」
内心、目の前の少女から貰えるかな?と微かな期待。

「何よアンタ。プレゼントしないつもり?」

「は?…プレゼントって…その、ボクは男だよ?」

「はぁ~…全くコレだから日本人は…いい?バレンタインは女から男に、なんて日本だけよ。それにチョコである必要も無いし」
「要は『普段世話になっている人に感謝を込めて』カードと何か贈物をする。というのが本来の姿なのよ」

「え?そうなの?それ本当?」

「…ドイツ出身のアタシの言葉を、日本人のアンタが疑う気?」

「い、いやそう言う訳じゃ…でもさ…」

「お黙り。アタシが言ってんだから間違いは無いのよ!!解った!?」


「う…わかったよ。それで、ボクに何をしろと?」

「アンタねぇ…人の話聞いてた? それともアンタには世話になっている人がいないとでも言うの?いるでしょ?」(主に目の前に)

「え…あっ。そうか、そういう事か」

「解ったよ…そうだね、普段お世話になってるしね。じゃあちょっと材料買ってくるよ」

「ええ、ええ。いってらっしゃい」

(100%の嘘はばれやすい…でも真実に織り交ぜられた嘘はその限りでは無いわ)ニヤソ
夕飯後、作業に取り掛かる姿を尻目に、彼女は早々に床に就いた。

820: 05/02/14 02:52:06 ID:???

翌日――

「おはよー…」
「あ、お早う。今朝は早いね?」
「んー、ちょっとね。って、…何よ、それ?」
「何って…チョコレートだよ。贈物っていっても他に思いつかなかったからさ、チョコを…」

「そうじゃなくて! 何でそんな大量にあんのよ!?」
「へ? そりゃあ作ったからだけど……こうして見ると、普段お世話になっている人って沢山いるんだねぇ」

(し、しまったぁ~!!)
どうやら自分だけに作ってくれるものだと思い込んでいたようだ。ちょっと考えればこうなる事も容易に予測可能であろうがどこか抜けている。


「あ、もうこんな時間か。じゃあボク今日はちょっと早めに行くから」
「え!? ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「朝ごはんは作ってあるから~…」 行ってきま~す。と玄関の方から聞えた。

「あ………な、何よあのバカ!!察しなさいよ全く!!」
伸ばした右手が空しい。
「お世話になっている人っていったらまずはアタシでしょお!? なのにチョコも渡さずに行くってどういうことよ!!」

テーブルに着き、とりあえず醤油を手にしてハムエッグにかける。
「全く! あれじゃあクラス中に配るつもりね…そんな事したら訳を聞かれるじゃないの…って、あれ?…」

醤油は注がれるままに、皿を黒に染めてゆく。


「…訳を聞かれたらあのバカは、アタシに教えてもらったって言うわねきっと…ま、マズイ!!」

目の前の(しょっぱい)朝食を急いで詰め込み、家を飛び出し学校へと向かう。
通学路を走りぬけ、自己ベストを大幅に縮めるも…教室に着いたときには、もう既に遅かった…

シンジの机に群がる生徒達。そして既に貰った者のうち、早々にチョコを口にしているもの、出来栄えにショックを受けている者、大事そうに鞄にしまう者等々…異様な光景だった。
その光景に数瞬我を奪われるアスカ。気がついたときには数人の生徒に無言のまま囲まれている。

「「「………」」」 「な、何よ…!」

その声に反応するかのように彼女らは一斉に右手を挙げ…
「GJ!!」

皆でサムズアップ。

「へ?」

823: 05/02/14 03:00:15 ID:???
「いや~! アスカいい事言ったわね~!みんな大喜びよ!!」

「まさかシンジ君の手作りがいただけるとは思いませんでした」

「私、嬉しいのね…ポッ…」

とりあえず目の前の三人は怒っていないようだ。ならば問題ない。

(こいつらアホなんじゃないの? まあこのまま誤魔化せれば…)

そんな甘~い希望的観測を抱く。とりあえずこのまま流すという事に…

「まあ、抜け駆けしようとした事は変わらないですけどね?」

「へ?」

「このチョコに免じて、奢り一回で許してあげるわ」

「えっと…」

「…命拾いしたわね…」

「あ、その…ワカリマシタ…」

そんなに甘くは無かった。

・・・・・
「はぁ…ただいま~…」
「あ、お帰りアスカ。もうすぐ御飯だよ」
「ん~…」
思わぬ出費とストレスに疲労困憊。とぼとぼと自室へ向かう。

(あの馬鹿…なんで他のヤツにはあげてアタシには渡さないのよ!!…)
(……嫌いなの? アタシの事…だから…)
思わず涙が零れそうなったその時に、タイミングよく夕飯を告げる声が届く。
「!!…すぐ行くわよ!!」

824: 05/02/14 03:01:03 ID:???

気分が落ち込んでいると、いつもの美味しい食事も味気ないものに感じる。口数少なく早めに食事を終えるとアスカは無言のまま部屋に戻ろうとした。

「あっちょ、ちょっと待ってよアスカ!!」

慌てたように投げかけられる声。立ち止まりノロノロと振り返ると目の前にいきなり何かが突き出された。

「な、何?」
「えっと…その、バレンタインのプレゼント…なん、だけど…」
「…あ、アタシに? な、何で?」
「何でって・・・お世話になっている人にあげるって言ったのはアスカじゃないか」

「そ、そうだけど…これ、大きくない?」

「あ、それはアスカには一番世話になっているから…その分の感謝も込めて、ね?」
「!!そ、そう…じゃ、じゃあ頂いていいかしら?」
「う、うん!! 食べてみてよ!!」

825: 05/02/14 03:02:12 ID:???
・・・・・
「そういえば、あんなに沢山チョコ作ったら材料費も掛かったんじゃない?」

チョコを頬張りつつ、ふと湧いた疑問を投げかける。

「ん? ああそれは大丈夫だったんだ」

「あのレジに並んでいた時に、何故か父さん前にいてさ。ボクのも一緒に払ってくれたんだ」
いかにも嬉しそうに語る。

「それで今日、ネルフに行って皆に渡してきたよ。…父さん、喜んでくれてたのかな?」
中空を見つめて、ほうっと息を吐きつつ呟く。

(もしかして、一番の強敵は碇司令なんじゃ…?)
チョコと一緒に息をゴクリと飲み込んだ。




(注意)当初の予定より、LAS分は低くなりました。

引用元: 【LAS人】こんなアスカは大好きだ!5【専用】