201: 2010/02/13(土) 22:14:10.37
《1》
「デスノート?な~んだよそれ?」

「”死のノート”・・・そこに名前を書かれたものは氏ぬ」

「な~んだよ、おっかねえなぁ。長生きできるってんならともかく頃しのノートなんてなぁ。
そんなことよりおれは不二子ちゃんとベットの上で氏にたいな~んっちってっウヒョヒョ~!!」

そう言うやいなや空中で服を脱ぎながらベットの不二子に襲い掛かる彼は
空中で不二子の秘密道具パンチングガンで撃墜されてしまった。

「ルパン、わたしどうしてもデスノートが欲しいの。このノートには莫大な値がつくと思わない?国だって買えるような」

彼・・・ルパン三世は顎を擦りながら起き上がった。不二子は両手を祈るように組み空中を見つめたまま続ける。
きっと彼女の視線の先には巨万の時が輝いているのだろう。

「名前を書かれただけで氏ぬノート。核兵器より効果的でクリーンな究極の兵器よ。きっとどこの国だって欲しがるわたとえいくら積んででもね」

「なぁ、不二子お前それ本気で言ってるのかぁ?・・・・名前を書かれたら氏ぬノート?そんな馬鹿げた話をよお」

「ルパン、しばらく仕事しないうちに勉強不足になったんじゃないの?わたしがなんの根拠もなく無駄な苦労をしたことあったかしら?」

203: 2010/02/13(土) 22:16:22.08
なんでぇ、いつもいつも盗むのはおれじゃね~かよ」

「いい?ルパン。わたしのために手に入れて。”デスノート”を」

そういいながら身体からシーツを剥ぎ取り立ち上がる不二子。いつの間にかライダースーツに身を包んでいる。
不二子が扉を開けてでていく、ホンダのエンジン音が轟くアジトにルパンはひとり取り残された。
ルパンも不二子のように空中を見上げてみたが、彼の目には弱弱しい白熱灯の裸電球しか映らなかった。

「デスノート・・・ねぇ」

《2》

「・・・つーわけでだ、次元。どーしてもデスノートっての手に入れなきゃならねーってわけだ」

ミラノの街中を白いフィアットが緩やかに走っていた。ハンドルをきりながらルパンはご機嫌だった。

「はん!・・・まったく馬鹿馬鹿しい」

 助手席に座る次元は不愉快極まりない、という顔をしてタバコに火を点けた。
彼の不機嫌は氏のノートという馬鹿馬鹿しい話のせいか不二子という名前が出てきたからかあるいはその両方だった。

「もちろん、おれだって次々と犯罪者が天国に召されてるのはしってるが、それがノートによる殺人だってのかよ。
おらぁてっきり天罰ってやつだと思ってたぜ」

「天国に召されてる?まさかぁ次元ちゃん。おれたち悪党がいきつく先は地獄の一丁目って相場がきまってらぁな」

204: 2010/02/13(土) 22:20:10.45
「天国地獄はどうだっていいんだ。そのノート、氏のノートの信憑性が疑わしい」

「それがよ、すこーしばかり前ICPOの各国捜査会議で犯罪者連続氏についてちょっとした動きがあったらしくてなぁ」

「ICPO・・・?嫌~な顔を思い出しちまったぜ」

次元はこの世の終わりだ、とでも言いたげな顔をしてタバコを車外に吐き捨てた。

「おれも不二子から話聞いていろいろ調べたんだがなぁ、このノートによる殺人。犯人はネット上やマスコミの間では
”KIRA”って呼ばれてるんだ」

「そのキラってのがノートの持ち主だってのか?どこにいるんだ?」

「それがまったくアイドントノ~・・・」

「話にならねぇな」

「まーまー・・・こういうときは持つべきものは友よ」

《3》

 ルパンは携帯を取り出すとどこかにダイヤルした。ルパンは重要な番号は携帯にメモリーせずすべて頭の中に記憶している。
次元はルパンが手押しで電話をかけるのを見て相手が誰なのか少し気になった。

「もしも~し、こちらルパ~ン三世。久しぶりだな、ワタリ」

『お久しぶりです。ルパン様』

「ちょ~っと”L”と話がしたいんだけどもな」

205: 2010/02/13(土) 22:23:54.75
では認証IDを』

「XDKJY654863D」

「おい、ルパンどこに電話してんだ?」

「まぁまぁ次元、ちょい待ち。ニヒヒ」

『Lです。お久しぶりですルパンさん』

「よぉ~L、元気だったか?はねっかえりのウエディは元気か?」

『はい、元気です。でも私、いま凄く忙しいです』

 Lと呼ばれた声の主は明らかに電話をきりたがっていた。
いつもの彼ならルパン三世の逮捕は全力で取り組むべき課題であり念願でもあったが今回ばかりは事情が違っていた。

「なんでぇー、せっかくおれの方から電話してやってきてやったっていうのによぉ」

 Lの思考はフルスピードで回転しながら、それでもルパンにそれを悟られぬように言葉を選んだ。

(このタイミングでルパンからの電話・・・)

《4》

(偶然なはずはない。こちらにある火口のノートが目的か・・・)

207: 2010/02/13(土) 22:35:12.58
『失礼しました。では用件を手短に聞きますので要約して喋ってください』

「手短ってのは苦手なんだけどね、ぼくちゃんイヒヒ・・・」

 Lがルパンを侮っていないように、ルパンもLを侮ってはいなかった。

「いやなにちょっくらデスノートってのを手に入れたくてさ、連絡したわけなんだけどもな~」

『デスノート・・・?なんですかそれは』

 Lは親指の爪を噛みながら苦虫を噛み潰したような顔で、氏ぬほど甘いコーヒーをかき混ぜた。

(ルパンはなぜかノートの存在を知っている。ウエディのルートか・・・いやそれより・・・リパンは私からノートを奪う、とは言わなかった。
ノートの存在は知っているがどこにあるかはまだつかんでいないんだ)

「あら~?Lちゃん知らないの~?おっくれてる~名前書かれるとそいつが氏んじゃうっていうおっかねーノートだよ」

『いえ、皆目・・です』

(火口のノートの存在・・・ここにあるということは知られていない。しかしルパンに狙われたらこの本部のセキッリティをもってしてもかなりの確立で盗まれる・・・)

「そっかぁ、キラ捜査してるから知ってるかと思ったんだがなぁ、ああテレビの対決見たぜぇ録画だけどもなぁ」

『キラがそのノートを持っているならいずれ私が手に入れることになるかもしれませんね。ルパン、話せて光栄ですし楽しかったのですが私忙しいのでもうきります』

210: 2010/02/13(土) 22:57:35.26
Lは通話を切った。

「竜崎、いまの通話は・・・?」

「・・・すこし時間をくれますかライト君」

「ああ・・・」

 ライトと呼ばれた青年は肩をすくめて自分の前にあるモニターに目を移しなにやら作業を開始した。きっと彼はLのこういう態度に慣れているのだろう。
Lはじっとコーヒーをかき混ぜ波紋を眺めながら考えた。

(ノートはもう一冊ある・・・キラとの戦いはまだ終わっていない。このタイミングでルパンを相手にするのはさすがに難しい)

Lは目の前のボタンを押した。

「ワタリ、ニアを・・・いやニアとメロを日本に呼べ」

『了解しましたL』

「それからライト君、全員に話しておかないといけないことがあります。キラ並みにやっかいな問題がおきました」

「キラ並みにやっかいな問題・・?なんだそれは・・・まあ、ともかく全員をここに呼ぼう」

 2時間後キラ事件捜査員たち、アイバーとウエディを含めて全員が集合した。

「時間があまりないので手短に話します。このノートをルパン三世が狙っています」

「なに・・・?」「ルパン三世ってあのルパン三世ですか竜崎!?」

 捜査員全員に衝撃が走った。

215: 2010/02/13(土) 23:20:57.98
《5》

「ルパンは有名人なので私が説明する必要もないかもしれませんが、ルパンは盗む、といったら必ず盗む大泥棒です」

「言われなくても当然知っているよ竜崎」

 ライトはため息をつきながら首を振った。

「ここのセキュリティを上げます。申し訳ないですがしばらくの間みなさんにはここを出ないでいただきたい」

「えっ?竜崎それはつまり・・・」

 少しだらしない髪型の若い捜査員が動揺する。

「もちろんライト君もです。舌の根も乾かない内で申し訳ありませんが弥と会うのはもう少し後になります」

(クッ・・・やられた・・・)

「なぜだ竜崎、ここで捜査するのはかまわないが、出入りを禁じてどれほどセキュリティがあがるって言うんだ?それよりいっそノートはどこか別の場所に・・」

「出入りを禁止するのはルパンが変装の名人だからです。まさか弥に変装できるとは思いませんが例外は無しです」

(クッ・・・ルパンめ。このまま美砂と会えればお前を葬ってやったのに・・・竜崎に美砂と会わないための大義名分ができてしまった)

 誰にも見られない位置でライトは歯軋りをしたがすぐに口角を上げて氏神の様な笑みを浮かべた。

(同じことだ竜崎、お前は必ず美砂を逮捕しようとする。お前を始末するのはレム・・・だがしかし・・・たったひとつのイレギュラー・・・ルパン。こいつだけが・・・)

220: 2010/02/13(土) 23:56:20.91
《6》

(日本の関東で行われたLのテレビ中継。Lはキラが日本の関東にいると踏んでるみてえだなぁ・・・)

 アジトの地下室で質素な肘掛け椅子でモニターを眺めながらルパンはPCと格闘していた。
ハッキングしてLとの会話に使われた衛星を割り出して大まかな位置でも算出できないかと思ったのだがさすがにLはセキュリティの高い回線をつかっているようだ。

「やっぱこーゆーのはおれの性にあわねーんだよなぁ、とりあえず行ってみるかな東京に。五右衛門は今日本だっけ?」

 次元は愛用のマグナムを磨いている。磨きすぎてなくなるんじゃないか、とルパンが軽口を叩くが次元は無視してコンバットマグナムを磨き続ける。

「しかしなルパン。なんの当てもなく日本の関東にいったってしょうがないだろう」

「当てはなくもないのよ次元ちゃん。いいか、これを見てくれ」

 ルパンはノートパソコンの画面を次元に見せる。

「これが今の東京都のいまの上空からの写真だ」「これがどうした?」

「まあ、あせりなさんな。これにちょっと前のグリッドパターンを重ねると・・・ほら、このどでかいビルがすんげー短い期間で建ってるんだなぁ」

「手抜き工事かな。耐震とか大丈夫かな」

「いやそんなアネハ~な問題じゃなくてね・・・いいか次元スーパーコンピューターってのはすげー電力と大きさが必要で、かつLの捜査本部ならある程度のセキュリティも必要になってくるんだ。捜査員なんかもあんま出入りはげしいとノーリツ悪いしね」

「つまりこれがそのLってやつの捜査本部だってのか。ここにあるのか?そのノートが」

「そりゃ行って見なきゃわかんね~なぁ。ウヒョヒョヒョヒョ~」

224: 2010/02/14(日) 00:44:20.22
《7》

夜神月は考える。
(ノートをルパンに盗られて困ることはないかもしれないが・・・)

ライトはルパンという男について考える。ルパンは世界に名を馳せた大泥棒だがライトには悪人とは思えなかった。
義賊という言葉があるならその言葉はルパン一味にこそうってつけの言葉ではないだろうか。
ライトがキラとして裁く犯罪組織の中でも、メンバーや組織自体が謎でライトが手が出せないような者たちをもくルパンたちは壊滅させてきた。
一般市民の支持も厚い。ライトはキラとしてルパンを裁かなかったのは単純にルパンの本名がわからなかったということもあるが、悪人とはみなしていなかったからだ。

(しかし・・・今回はノートがかかっている・・・先にLが始末できていれば捜査本部もろとも消してノートをルパンに奪われるようなことはなかっただろうが・・・場合によってはルパンを消さなければならない・・・)

Lは考える。
(ウエディはここのセキュリティを簡単にくぐって見せた。ウエディの尊敬するルパンはここにノートがあればあっさり奪ってみせるだろう・・・)

ノートは捜査本部の者にも秘密にどこか別の場所に移すべきだ。偽のノートが必要になるが数日あればワタリが用意してくれるはずだ・・・
それまでは科学的な分析にまわすなどといって持ち出す。強引な手段だしキラ捜査は確実に遅れる。
しかしこれで今まで裁かれなかったルパンが氏ぬようなことがあればこのビルの出入りを禁止したことが功を奏して夜神月がキラであることが誰の目にも明らかになる・・・

次元は考える。

「おい、ルパン。このポンコツで日本までちゃんと行けるのか?」

目の前には骨董品のようなプロペラ機が不規則なエンジン音を轟かせている。

「あたりめーだろ~?スピードだけは結構でるんだ。ほれ、早くのれってじげ~ん」

225: 2010/02/14(日) 00:57:44.35
ごはん食べよう・・2WoGNi480さん。おれはただの保守だからね;;信じて待ってる

228: 2010/02/14(日) 01:49:03.46
《8》
 松田と呼ばれる男はは腕を組んでなにがなにやらという顔をしている。いろいろ考えているのかもしれなかったが、誰もどうした松田?と言ってこないところを見るとそれほど多くを望まれる人物ではないのかもしれない。

「ねえ竜崎、ルパンのほうは放っておいても問題ないんじゃありませんか?だってルパンはこの捜査本部もノートの在り処もわからないんだし」

「いえ、この本部は見つかります。いや、きっともう目処はついていてこっちに向かっているでしょう」

「どうしてそう思うんですか?」

「私だったらもう見つけているからです」

「竜崎が見つけられるからルパンも見つけられるっていうのも・・・」

「いやそれは違うぞ松田」

オールバックの精悍な初老が口をひらいた。

「相手を見くびった希望的観測でキラ事件に望むわけにはいかない。万が一にも我々は負けられないのだからな。しかも相手は世界一の大泥棒だ」

「そうですね・・・すいません局長」

「しかしルパン対策なら心強い味方がここに加わることになったぞ。ICPOから派遣されてきた銭形警部だ」

 エレベータの奥からトレンチコートに身を包んだ銭形、と呼ばれる男が現れた。

「なかなか厳重な警備ですが、それでもちと不安ですな」

 フロアをぐるりと見渡しながら銭形は言った。

「おっと失礼。申し送れました、わたくしICPOの銭形と申します」

229: 2010/02/14(日) 02:08:35.17
《9》
「銭形警部はここのセキュリティが甘いとおっしゃるんですか?」

「はい夜神局長。ルパンなら昼寝をしながらこのフロアに侵入してくるでしょう。かといって昼間来るという意味ではないですよ、ガハハ!・・・ハッ・・・?おほん失礼」

 ウエディが聞き捨てならないという顔で反論する。

「確かに以前はここのセキュリティに穴はあった。でも私がそれを潰したわ。ここまで来るのはあのルパンでも難しいとおもうわよ」

「ちゃんと下から攻めてくるとは限らん。例えば空からの進入にはどういうセキッュリティがされているのかね」

「そ・・空?」

 その瞬間ワタリから通信が入った。

「L、屋上のヘリポートにプロペラ機が不時着しました」

「竜崎!!」「ルパンがきたあああ!?」

 大混乱する一同を尻目に竜崎は冷静な表情を崩さなかった。

「5番モニターに映像を」

 映像からはヘリポートに押し寄せる警備の姿と銃撃音が確認できた。

「夜神局長、ここは危険だ。早くノートを持って下へ!」

「む・・竜崎、ノートを金庫から出すぞ!!」

「待ってください」

242: 2010/02/14(日) 09:22:18.68
《10》
「ルパンさん、初めまして。Lです」

 一同の頭にクエスチョンマークが点滅する中、一拍間を置いてククク・・・と銭形が笑った。

「な~んだ、気づいちゃってたのか、いいのか?LがLですなんて自己紹介しちゃって、ヌフフ・・・」

 ルパンはシャツの襟元から銭形のマスクを剥がすと素顔をさらした。

「お前がLかぁ~・・・なんだ案外ガキだなウフフ」

 一同が動揺し一歩後ずさりする中、ルパンは懐から拳銃を抜いて竜崎に向けた。

「ここの皆さんに習って竜崎、と呼んだほうがいいのかな?竜崎ノートをこっちに渡してもらおうか」

(こいつがルパン三世・・・)

 ライトはすこし混乱し携帯電話でルパンの顔写真を撮ろうと思いポケットの携帯をそっと握りしてた。
いや、駄目だ。ここでルパンの写真を撮るなど僕がキラだと言っているようなものだ。
その瞬間ルパンのワルサーの銃口はライトの眉間にピタリと向いて止まった。

「おい少年、妙な真似はするなよ。おじさんは怖~い大泥棒なんだぜ」

 ライトはゆっくり手を上げて、代わりに喋り始めた。

「ルパンさん、聞いてください」

244: 2010/02/14(日) 09:52:07.50
《11》
 ライトはルパンという大泥棒の人格にかけてみた。しかしアニメ化もされた大泥棒だが本物がどこまでアニメのルパンと同じく情に厚く正義の大泥棒なのかはわからなかった。しかしここでノートがルパンの手に落ちるのはやはり避けるべきと思った。

「確かに・・・ここに一冊ノートはあります。しかしルパン、泥棒にこういうのもなんだが持っていかないでほしい」

「そーいわれてもなぁ、少年。おじさん約束は守る男なもんでなぁ。約束しちゃったんだよねぇ」

「ルパン、聞いてくれ・・・」
 
 ライトはルパンに話し始めた。第二のキラというもうひとりのキラの存在。火口はキラでない可能性が高いこと。捜査はまだ終わっておらずこのノートは氏神のノートでキラを捜査する上で重要な手がかりであること。

「・・・というわけなんだ。ルパン・・・世界中の人のためにも盗むのはもう少し待っていて欲しい」

「そりゃあ、キラを捕まえたらど~ぞ持って行ってください?って意味かなライト君?」

「そうは言わない。事件が解決すればノートは日本警察が安全に保管するだろう・・・だがルパン、あなただってこんなキラによる殺人のある世界を望んではいないはずだ」

「まぁ~どっちかというとおれもキラに殺されちゃうクチのタイプだからなぁ、ヌフフ」

 黙って二人の話を聞いていた竜崎がルパンに語りかけた。

「ルパンさん、屋上でのあなたのお仲間の威嚇射撃をやめていただきたい。警備のものには手をださせませんし、ここは日本で目立ちすぎです」

「そうかぁ?目立つってなにが?・・・まあいいや、おい、次元もういいぞ降りてきてくれ」

 ルパンはコートに隠されているインカムで仲間の次元と通話しているらしい。

「分かった、だが下は今どうなってるんだ?ノートは手にいれたのか?」

「いーから降りてこいって。ここは日本なんだ、あんまり目立つなよなあ」

277: 2010/02/14(日) 16:59:51.56
《12》

「なるほどな、ノートは2冊。あるいはそれ以上あるかもしれないってわけだ」

 捜査本部内は禁煙なのだが次元の咥えタバコに誰を注意できなかった。次元の右手にはマグナムが握られたままだったからだ。

「それじゃーそいつをいただいて早いとこずらかろうぜルパン。少なくともここに一冊はあるんだろう?」

「そうだなぁ、そいつも悪くないんだが、今日のところはおれがいただきたいのは”情報”だな」

「情報?おい、なんだよルパン」

「どうだ竜崎、ノートと情報どちらを渡す?」

 竜崎は座ったままだがくるりと椅子を回して皆のほうを振り返った。

「そうですね、ルパン。このまま一冊のノートだけを持ち去ってこの一件を放置・・・あなたはそんなことができる人間ではないです」

 ライトはルパンに情報をある程度与えることによってかけひきを打った。竜崎はルパンにはワタリに用意させた偽のノート渡してこの場面をのりきる手段をとるつもりだった。
竜崎はあくまでもキラもルパンも捕まえるつもりだったからだ。ライトのとった手段は普段から犯罪者を捜査し逮捕することに慣れた竜崎には逆に選びにくい手段だった。

「おれはなぁ、人の戦利品を頂戴して喜ぶほケチな泥棒じゃねえんだ。ノートはもちろんキラから奪い取ってみせるぜ・・・おっと勘違いするなよライト君。おれは君の口車にのったわけじゃないからな」

 ルパンは少しだけ嬉しそうに竜崎に言った。

「誰が最初にキラにたどり着くか」

「はい、勝負ですねルパン・・・」

278: 2010/02/14(日) 17:02:36.75
《13》
 松田はある種の感動を覚えていた。天下の大泥棒ルパン三世とその仲間の次元大助が自分と同じフロアにいてキラ事件について熱心に捜査概要を調べている。
ルパンはモニターの椅子にあぐらをかいて座り、わからないことはたまに竜崎や自分にたずねてきたりする。
天才や偉人という人種はきちんと椅子に座れないものなのかもしれないと松田は思った。キラはどんな座り方をするんだろう。
ルパンはモニターから視線を離さずに竜崎に話しかけた。

「なるほどなぁ、竜崎はキラにチェックメイト決めたいわけだ」

「はい・・・そうでないとこの勝負に勝ったことにはなりません」

「まあおれは泥棒だから?そうでもないんだなこれがヌフ~」

「いいですね泥棒は気楽で」

「そうだろう?竜崎も仲間になるかぁ?なんならオレ様が指南してやってもいいんだぜぇ」

 ルパンは場合によってはキラからノートを奪い取る、という手段をとるという可能性を示唆してきた。確かに悪くない方法だしルパンなら可能かもしれない。
竜崎はルパンをキラにぶつける方法をいくつか考えた。ただやっかいなのはルパンはノートを興味やスリルで手に入れたいという性格なのだ。
ルパンが例えばノートを日本政府やアメリカ政府に高く売りつけるつもりなら金でルパンからノートは買えるかもしれない。しかしルパンは金では転ばない。確信があった。

 証拠を見つけながらキラを見つける、ルパンを出し抜いてノートを奪取する。きっと人類史上かつてない難易度の事件になる。しかしそれでも竜崎はやってみせるつもりだった。

281: 2010/02/14(日) 17:07:13.52
《14》
「不二子、その”ですの~と”というのが今回のルパンたちの狙いでござるのか?」

「そういうこと。もうルパンはLの捜査本部のビルにいるわ」

 熱海の海岸でやっと彼を見つけた。五右衛門はひとり崖っぷちで押し寄せる波を見ている。不二子は五右衛門を今回の協力者のうちのひとりにするつもりだ。

「神をも冒涜する不届きなノートだ。そんなノートは処分してしまうに限る」

「わたしもそう思うんだけどルパンったら言い出したらきかないのよね~、お金になるって」

「むう!金に目がくらむとは・・・見損なったぞルパン!でやあああああああああああ!!」

 斬鉄剣の一閃で五右衛門の目の前にあった巨大な岩が真っ二つにされた。地響きをたてて崩れ落ちる岩を間一髪で不二子はかわして抗議する。

「ちょっと危ないじゃない!・・・あら、ちょっと待ってね」

 不二子は着信を知らせるペンダント型通信機からワイヤーアンテナを伸ばして話し始めた。

『・・・不二子さん、ルパンが着ました。ルパンはキラのノートの方を奪うつもりです』

「っんもうまったく・・・!!そこにノートがあるんだからそれを手に入れればいいのに。まったく面倒な男ね」

『私はどうすればいいですか?』

「そのまま監視を続けてウエディ。頼りにしてるわよ」

284: 2010/02/14(日) 17:10:08.58
《15》
 ニアとメロが本部に到着した。アメリカ政府から派遣された3人の捜査員も一緒だ。
アメリカが作るつもりだったキラ対策本部のメンバーから優秀かつ経歴が表ざたになっていないものを中心にCIA,FBIから抜擢された3人だった。竜崎は先にメロだけを別室に呼んで話をした。

「L、呼んでもらって光栄だよ」

「メロ今までの経緯は聞かされているか?」

「ああ」

「こうしている間も犯罪者の裁きは止まっていない」

「それじゃあ・・・弥海砂がキラの代わりに裁きを代行しているんだろうね」

「しかし弥海砂の監視は一度解いていま表立ってできない状況だ。ニアにはルパンの対応を任せておくつもりだ。そして私はキラを・・・」

「おれが弥海砂を・・・分かったL一芝居うてばいいんだな?」

「ルパンも状況から弥海砂に目をつけるはずだ。つまりメロとニアのふたりでルパンも相手してもらう」

「わかったよL、まかせて」

 メロは大きな音を立ててドアを開けると冗談じゃない!と大声をあげた。フロアにいる全員がメロに注目する。Lも部屋からでてきた。

「待ちなさいメロ、話はまだ終わっていません」

「L・・・僕がニアと仲が良くないのは知っているだろう?一緒に捜査なんかできるもんか・・・僕はここを出て行く」

 メロはエレベーターから出て行った。

371: 2010/02/15(月) 06:59:44.25
《16》
 ライトはモニタを眺めながら自分の置かれている立場を整理していた。
ルパンの登場によってミサと連絡を取る手段がなくなってしまった。Lがわざわざニアという少年だけを別室に呼んで話をしたのはミサを監視させるため一芝居うつ必要があったからだろう。
ルパンもこれまでの捜査状況から考えてライトかミサ、あるいは両方を監視してくる。ライトはミサとレムを使って竜崎もルパンもニアも始末するつもりだ。

(しかしまだルパンもメロもノートに触っていない。つまりレムを使って海砂に指示をだすことはできるというアヘッドがある・・・)

 そしてルパンがどうしてノートの事を知りえたのか。警察の一部のものとこの本部に所属している人間以外その事実は知りえることのない事実。
すでにノートについて知られてしまったことは多いがどこから情報が漏れたのかは突き止めておく必要があるだろう。

「ねえねえ、ライトく~ん?」

「なんですかルパン」

「彼女可愛いよねミサミサ。おれ一目惚れしちゃったな~。こんな彼女いたら一日だって会えないのおれだったら我慢できないなぁ~なんちゃって」

「僕とミサは恋人同士というわけでは」

「そうなの?じゃあおれ狙っちゃおうかなぁグヘヘヘヘ~・・・」

「ご勝手に、・・・」

「で、ノートに触ってみたいんだがどこにあるんだ?」

「えっ・・・!?」

「デスノートだよ~ライトくん。ふふふ」

372: 2010/02/15(月) 07:00:30.08
《17》

「ルパンあなたはノートのルールを見たはずだ。ノートに触れたものはノートが処分されれば氏ぬ」

「わかってるさ~、でも氏神のレムちゃんにひと目おめにかかりたくなっちゃってね、ウヒョヒョきっと美人な小悪魔なんだろうなぁ」

(まずいぞ・・・ルパンめ・・・只者じゃないのは心得ているつもりだったが予想以上に切れる・・・)

「竜崎、ルパンはこういっているが・・・どうする?」

「そうですね・・・泥棒の前にノートを持ってくるというのはさすがに・・・レムさんノートは切れ端などの一部分を触れただけであなたの姿を見れるようになるんでしょうか?」

「ああ、切れ端でも触れば私は見えるようになる」

「おいルパン竜崎は誰とおしゃべりしてるんだ?」

「そりゃ~レムちゃんだろうな」

「ブルルッ・・・背筋が寒くなってきたぜ」

396: 2010/02/15(月) 17:48:21.02
《18》
 ルパンはワタリは持ってきたノートの切れ端に触れた。
ルパンは切れ端を手にとっていろいろな角度から眺めている。

「ふうん・・・切れ端だけだがなんの変哲もないノートだなぁ・・・」

「ではお返し願います」

 ワタリが手を差し出すとルパンは素直に切れ端を返した。
ワタリはその切れ端が元のサイズであるか確認する。

「信用ないんだなぁ、おれ」

「一応念のためですルパンさま」

 ルパンはくるりとあたりを見渡した。

「うっぎゃああああああああああああああああ!!!!次元じげ~ん!ばばばばばばけもんだあああああ!!」

 ルパンは2メートルほど飛び上がって、そして次元に抱きついた。

「おっおっ・・・お前も切れ端に触ってみろ」

「いやいやいや!!おれは結構だ、遠慮させてもらう!!」

397: 2010/02/15(月) 17:49:30.26
《19》
「で、そこの白いバケモンが・・・」

「レムだ」

 レムはルパンにじろり、と目を向けた。ルパンは驚愕しながらもまじまじとレムを観察する。
そしてレムはルパンという男を推し量っている。

(この男・・・ルパンは捜査をかく乱したお陰でミサへの捜査は一時中断しているといっていい・・・竜崎は証拠を突きつけて、キラをキラと証明したがっている)

 それには物証が必要だ。ではその物証が・・・デスノートが盗まれてしまったらどうなるか?

(竜崎はミサを逮捕する。ライトは信用ならない、ミサを利用するだけだ)

 ならばルパンを利用できないだろうか。この男とレムが信頼関係にならなくてもいい。この男はノートを手に入れたがっていて、私がノートの場所を教えてやればいい。

 その代わりノートの出所をルパンには黙っていてもらう。

(もしルパンが裏切ってミサからノートを手に入れたことを喋るようならノートで私がルパンを始末する・・・そのときは竜崎も・・・)

398: 2010/02/15(月) 17:50:19.82
《20》
 レムはルパンに協力を呼びかけるメモを書くことにした。捜査本部内でルパンとやり取りをするわけにはいかないからだ。
ルパンの携帯が鳴った。

「よぉ~、不二子ちゃ~ん。おう、もちろん順調よぉ。デスノートはおれが手に入れるぜ・・・何?本物の銭形が来る?」

 通話を切ったルパンは風のような速さで捜査本部から消えていった。呆然としている松田。

「い・・・行っちゃいましたねルパン」

「とりあえずノートは守った。ルパンへの対処は銭形警部にまかせ我々はキラの捜査を続けることだと思う」

「ええ、それがいいでしょうねライト君・・・それからみんなに紹介しておきます。ニア自己紹介を」

 銀髪のニアと呼ばれた少年がいた。なぜか寝巻きを着ているようだ。イギリスから来たらしいが着の身着のまま連れてこられたのかもしれない。

「ニアです」

「えっと竜崎・・・彼は?」

「彼がどういう人間かはこの際どうでもいいんです・・・とにかく今回彼には銭形警部とルパンの捜査にあたってもらいます」

399: 2010/02/15(月) 17:51:10.31
《21》

「いいのかルパン、捜査本部を出ちまって。まだまだ情報がひきだせそうだったぜ」

「いいのいいの、大事なことは大体調べたしそれにこれ・・・」

 ルパンは胸のポケットから小さく折りたたまれた紙を取り出した。

「なんだそれは?」

「レムがこっそりおれに持たせたのさ・・・どれどれ」

 ルパンはレムのメモを読んだ。そしてしばらく考え込んでいった。

「なるほどね・・・まあ氏神には氏神の思惑があるってわけだぁ、まあレムの目論見通りにはならないと思うが・・・」

「思うが・・・なんだ?」

「この勝負は紙一重でおれの勝ちだ、ぬふふふふふふ」

473: 2010/02/16(火) 17:36:03.29
《22》
「・・・まったくお粗末なハッキングだったよウエディ」

「夜神・・・月・・・!?」

 手洗いからメインフロアに戻る通路ですれ違いざまにライトが囁いた。ウエディが振り返ると氏神を想起させる笑みを浮かべたライトがそこにいた。ウエディの背筋が粟立った。

(やはり・・・夜神月は・・・キラ!?)

「情報はどこに流したんだ?」

「何のこと?」

「どのデータを誰が閲覧しているか細かく見ていけば誰がスパイかはすぐわかった。外部と通信している証拠ならいくつでも発見できた・・・盗みはルパンに及ばす、ハッキングは僕に及ばず・・・残念だったなウエディ」

 ウエディは自分がおかれた状況を理解するので精一杯だった。

「竜崎には借りがあるんだろう・・・この一件はばらされたらまずいんじゃないのか?」

「・・・・・・!!」

「図星のようだな。まだ捕まりたくはないだろう?しかし竜崎がいなくなれば誰も君を捕まえられない。違うか?」

「夜神月・・・それはあなたがキラであると自白していると同じ意味よ」

474: 2010/02/16(火) 17:37:24.77
《23》

「そうは言っていない」

「・・・何が望み?」

「これはキラとLの勝負だ。僕はルパンにも君にも邪魔はされたくないだけだ・・・時間がない、ここで氏ぬか僕の言うことを聞くか選ぶんだ」

 ウエディは真っ青な顔をしてうつむいた。竜崎にスパイしていたことがばれればウエディは一生監獄行きの目に合うだろう。
そしてキラに逆らえば殺される可能性がある。いまライトはノートも氏神の目も持っていないようだが、確証はない。捜査本部の誰にとってもキラはまだまだ多くの謎に満ちた暗い夜のようなものだ。

「どうすればいいの?」

「ルパンは危険を冒してまでここに情報を手に入れに来た。つまりルパンはここに来るまで詳細な情報は持っていなかった。情報はルパンに近いところでルパンの味方ではない誰かに渡した、そうだな」

「ええ・・・そうよ」

「そいつと連絡がとりたい」

475: 2010/02/16(火) 17:39:02.81
《24》

”レム、以下のことをミサに伝えて欲しい

 1、竜崎はミサに疑いを持ち始めている。竜崎を葬って欲しい。
 2、ルパン三世がデスノートを奪いに来ている。ルパンも葬って欲しい。
 3、1,2の順番は前後しないこと。
 4、竜崎の名前を憶えていない場合090-****-****の番号へ電話し、不二子という女に協力を頼め。

 このメモは誰の目にも留まらぬよう処分してくれ”

 レムはライトから渡されたメモの内容を思い出した。

(やはりこの勝負に勝つのは夜神月なのか・・・?ミサはノートを持っているがノート自体はどこかに隠していて裁きは切り取ったページで行っている可能性が高い・・・)

 ルパンがノートを手に入れられないならライトに協力するのがミサを守ることにつながる・・・

(とりあえずここは夜神月の言うことを聞いている振りをして捜査本部を少しの間、出よう。ミサに夜神月からの指示を伝えるかどうかはルパン次第だ)

476: 2010/02/16(火) 17:40:56.67
《25》

 メロは捜査本部を出た後、Lから渡された鍵を眺めた。”117”というプレートがついている。
メロは捜査本部から一番近い駅のコインロッカーを目指した。117番のロッカーを開けると黒いデイバッグが入っていた。そのまま駅のトイレで中身を確認する。

 デイバッグの中身は携帯電話、ラップトップパソコン、現金500万円と1万ドル、暗証番号が書かれたキャッシュカード、とメモリーカードだった。
メモリーカードをラップトップに挿入すると今までの捜査資料と捜査本部に外部からアクセスするための暗号キーが入っていた。メロは弥海砂の住所を確認し、トイレを出た。

 駅地下のショップで革の帽子と革のジャケットと革のバッグを買った。
もう一度トイレに戻り買った服に着替えると着ていた服をデイバッグにつめてトイレのゴミ箱に捨てた。

 タクシーを拾ってミサの住んでいるマンション付近に移動し、近くのホテルを見つけネットが使えるか確認するとコンビニエンスストアに向かい食料と飲み物と大量のチョコレートを購入し、ホテルに戻って最上階にチェックインした。
ホテルの部屋は狭苦しく殺風景だったがここならミサのマンションの出入りが確認できる。

(L・・・ありがとう)

 チョコレートを一口食べた。これはLがくれたチャンスだとニアは考える。

(僕は・・・ニアに勝ってみせる)

488: 2010/02/16(火) 20:47:53.68
《26》

 次元は重い買い物袋を提げてアジトのドアを開けた。ルパンは咥えタバコで窓の外・・・ミサのマンションを見張っている。
ルパンがいうにはレムのメモに弥海砂という女が現在キラとして裁きをしていると書かれていたらしい。

「天下のルパンが小娘のヤサをじっと見張ってるだけで、進展もねぇ、か・・・」

「あのなぁ次元、今回のヤマはただミサからノートを奪えばいいってもんじゃねえんだ。ノートはあくまでキラから奪い取らなきゃ盗んだことにはならないんだなぁこれが」

 そういいながらルパンは次元から投げ渡されたハンバーガーをキャッチして瞬く間にそれを平らげるともうひとつ次元によこせ、と要求した。

「やっぱモスバーガーは美味いなぁ次元~」

「ハンバーガーの話は犬にでもしてくれ。ルパン、おれはいまだにこの事件の全貌がみえねえ、ご説明願いたいもんだな。弥海砂という女が犯罪者を始末しているならその女がキラということになるんじゃねえのか?」

 ルパンは照り焼きバーガーを平らげるとコーラをバキュームカーのような勢いで飲み始めやっと口を開いた。

「いいや~いま犯罪者を裁いているのはミサってだけさ。ミサは両親を強盗に殺されていてな、その強盗を始末したのがキラらしい。そのときからミサちゃんはキラ信者になっちまったらしいんだな」

「ミサという女がキラだからその強盗を始末したってだけじゃないのか?」

「それならその強盗をいのいちばんに始末すらなぁな、にっくき親の仇だぜぇ?」

489: 2010/02/16(火) 20:48:58.23
《27》
「夜神月や弥海砂がキラだとすると・・・モグモグ・・・”13日のルール”に抵触するんだ」

「ライトってのは竜崎が途中までキラだと疑ってたやつだな。なんでそんな奴が捜査本部にいるんだろうな?」

「そりゃあおれにはわかんねぇけっどもな。たぶん竜崎はライトを見張っておきたかった・・・もしくはライトが竜崎を信用させたってところだろうぜ」

「しかし氏神・・・レムのメモにはミサがノートを持っていると書かれていたんだろう?・・・となると」

「13日のルールなんてものは嘘っぱちってことになっちゃうねぇ~ぬっふっふ。たぶん竜崎もそこまでは行き着いてるだろうな」

「じゃあ余計こんなことしてる場合じゃねえ、早いとこノートをいただいちまおう」

「だぁ~、もう次元ちゃんわかってないねー。誰がどうみたってミサミサはあの黒いナイトに惚れてて、いいように操られてるにきまってるじゃな~い?ライトはキラでミサは第二のキラ。これは間違いないんだ」

「しかしライトは今ノートを持ってはなさそうだったぜ」

「確かに・・・持ってねえだろうなぁ~」

「おい、持ってないものをどうやって盗むってんだよルパン!」

「ぬふふふふふ、そこが腕の見せ所ってわけよ!このおれさまは必ず盗むからルパンなんだぜぇ」

490: 2010/02/16(火) 20:49:44.43
《28》
「ICPOの銭形警部であります!夜神局長!そしてL!必ずやルパンは私が逮捕することを約束いたします!ガハハハハ!」

 この騒々しい男が銭形警部らしい。

(ルパンの変装と同じ顔だ・・・)

 ここにいるものは銭形警部の顔を知らなかった。それなのにルパンは律儀に本物の銭形警部になってこの捜査本部に進入してきた。
これはルパンという男の人格を表しているのではないだろうか。いかに華麗に、完全に勝利するか。火口のノートを持ち去らなかったことから考えてもそう考えて間違いはないだろう。

(しかしそこが付け入るスキになる・・・)

「・・・君がニア君か?銭形だ!よろしく頼む」

 たくましい手のひらがニアの前に差し出された。ニアが手を出すと痛いほど強く握りガハハ、と笑った。
考えるより先に行動するタイプなのだろう。案外ニアとはいいコンビになるかもしれなかった。

491: 2010/02/16(火) 20:51:46.20
《29》
「竜崎、ちょっといいか?」

 ライトは捜査本部のメインフロアにほぼ全員が集まっている瞬間に切り出した。

「火口から手に入れたノート。僕はこれの検証をすべきだと思ったこともあった・・・人道的ではないが・・・
 例えば氏刑が確定している氏刑囚の名前をノートに書いて氏刑を執行するというような・・・
 だがルパンが狙っているこの状況でノートをどこかへ移動させるのは盗まれるリスクが飛躍的に高まる。そうだな竜崎?」

(夜神月・・・ぬけぬけと・・・)

「そうですねライト君・・・ここから持ち出して盗まれた、ではノートは失って検証もできない。最悪です」

 こう言っておけば捜査本部のものは僕を疑ったりはしない。しかし竜崎はそれならノートの切れ端でこっそりノートを検証しようとするはずだ・・・
くくく・・・どうだ?竜崎、水を向けたんだ?お前はノートを検証したくなったろう?

(敵の敵は味方だ・・・不二子を使って13日のルールを本物に見せかける・・・。
竜崎、偽のルールだと思っていたルールが本物だったら・・・お前がその時まで生きていたらどんな顔をするかな・・・)

 ルパンのお陰で余計な人間が何人も現れた。しかしこの作戦なら竜崎の下で水面下の動きをしているものも僕を捜査対象とは見なくなるだろう。
最後にウエディと不二子を葬れば・・・僕の完全勝利だ。

606: 2010/02/17(水) 22:34:02.17
《30》
「え~っと本日のミサミサのスケジュールは・・・午前中にCM撮影、午後からはドラマかぁ売れっ子だなぁ、ご帰宅は10時ぐらいかな、ぬふふふのふ~」

 公園でミサはドラマの撮影をしている。撮影を見ようと近くの学生や主婦などが野次馬していてちょっとした人だかりができていた。

「大の男がふたりそろって情けねぇよなぁルパン。こういうのストーカーっていうの知ってるか?」

「で~もよ、ストーカーはどうもおれたちだけじゃあねぇみてえだぜぇ次元」

「何?」

「・・・あの黒い車、午前中からずっとついてきてやがる。後方8時の方角40メートルだ」

 次元はジッポを鏡にして後ろを確認した。車内の人物はここからではよく確認できないが黒のシボレーが停まっている。

「竜崎の手下かな・・・向こうはおれたちに気づいていると思うか?」

「気づいているからおれ達より後ろに車停めたんだろうな」

「やれやれ、情けない話だぜ。おれたちもヤキが回ったな」

「でも向こうさんはおひとりさんみたいだぜ・・・ふたりは同時には見張れないなぁ・・・それならちょっくら顔見てくるわ」

「気をつけろよ、反対に顔見られたらキラに始末されるかもしれないんだから」

「あいよお~」

607: 2010/02/17(水) 22:37:19.71
《31》

 そろそろLに連絡を入れるか。メロが携帯を開いた瞬間、運転席からルパンが降りた。携帯を閉じてルパンの行く先を追った。ビルの間に消えた。

(気づかれたか・・・?しかし今アマネから目を離すわけには・・・)

 ルパンは車から降りる時こちらにだけは視線を向けなかった。まずい、メロはフードをかぶって顔を隠した。その瞬間背後から気配を感じた。トントンと窓ガラスをノックする音がした。

「は~い、そこの君、違法駐車だ。免許みせなさ~い」

 警官が立っていた。

(ルパン・・・!!)

 ギアをドライブに入れ急発進した。ルパン達の停めていた車を追い越して走り去った。

「なぁ~んだ、逃げ足はええなぁ。別にとって食やしねーっつ~の」

 ルパンは変装を解きながら次元の車に戻った。

「首尾は?」

 ルパンは携帯を開いてメロの車に貼り付けた発信機が動作している画面を次元に見せた。

608: 2010/02/17(水) 22:39:12.15
《32》
 メロは尾行がついていないことを確認してホテルに戻った。

(もうこの車は使えないな・・・)

 トランクを開けてジャケットとサングラスを変えて着ていた洋服を車内に入れておいた。
シボレーの隣に駐車してある予備のS2000に乗って再びホテルを出た。アマネがスケジュール通りならまだ撮影は続行中なはずだ。
やはりルパンとミサを同時に見張るのは無謀だったらしい。次は慎重に、ルパンから身を隠し、ミサを見張る。そう心に決めてメロはアクセルを踏んだ。

 メロの車が出た後、BMW-miniに乗ったルパンがホテルの駐車場に車を停めた。

「このホテル・・・なるほどミサのマンションを見張ってるわけか。やっこさん、根城もここだな」

「おいルパン、ミサのほうはいいのか?」

「いま出て行ったホンダの男が代わりに見ててくれらぁ・・・ちょっと待っててくれよ次元」

 シボレーのドアに開錠道具を差し込むとルパンは瞬く間にドアを開けて車内を物色しはじめた。
車検証等は見当たらず持ち主を特定するものは見つからなかったが警察の車両でないことは確かだった。
グローブボックスには現金で100万の束がひとつ入っていた、現金はそのままにしておく。次元の待つ車に戻った。

「何かわかったかルパン?」

「車の趣味は悪かねぇってことぐらいかなぁ~ぬっふっふ」

609: 2010/02/17(水) 22:42:16.85
《33》

 次元がアジトで目を覚ますとルパンは誰かと電話をしていた。

「・・・ってわけだ~、ひとつよろしくたのまぁ~・・・と、これでOK」

「・・・誰と電話してたんだ?」

「ぬふふふ、聞きたい?聞きたい?次元ちゃん?」

「・・・いや、聞きたくねえ。このヤマのせいで夢にまで氏神がでてきやがった」

「へえ、それで・・・どうしたんだ?」

「鉛の弾をプレゼントしてやったさ・・・だが実際のところはどうやら今回はこいつの出番もなさそうだ」

 こいつ、と言いながら次元はマグナムを手の中でくるくると器用に回して再び腰にさしなおした。

「ま~、なんでも銃でカタがつきゃあ今頃お前は王様・・・いや神様にだってなれてらぁな」

「ちげえねぇ、今回はルパン。お前に任せておれはもう少し・・・寝ることにする」

「そ、そりゃないんじゃないの~次元ちゃん~」

 神様、か。ルパンはタバコに火をつけて部屋中にいきわたすつもりで煙を吐いた。

(氏神も夢をみるのかねぇ?)

612: 2010/02/17(水) 22:44:26.36
《34》

 次元が再び眠っているとルパンはまたどこかへ電話しているようだった。やれやれ忙しい男だ、と次元は思う。

「ほいほい、じゃあもろもろよろしく頼むね~むちゅ!愛してるよ~ん・・・よし!そろそろ行動するか」

 電話を終えたルパンがポキポキと首を鳴らした。

「おい、見張りはもういいのか?」

「何言ってんだ次元、おれは端から見張りなんてしちゃ~いないぜ?」

「何?じゃあ何をしてたっていうんだ?」

「そりゃあ役者が揃うのを待ってたのさ・・・さてと全てが上手く行ったら御喝采・・・」

 ルパンはベットの上で座禅を組むと難しい顔をして何かを考え始めた。次元はタバコに火をつけた。

「えっと・・・アレがああなってこうなって・・・あいつがああなんだから・・・よし、いけるな。たぶん大丈夫だと思うぜぇ~」

「やれやれ・・・難儀なヤマだぜこりゃあ」

 次元はまだ長いタバコを灰皿でもみけすとタバコを耳に挟んだ。

613: 2010/02/17(水) 22:46:18.12
《35》

(駄目だ・・・もう待てない)

 レムはひとつの選択を迫られていた。もちろんそれはミサを救う方法だ。

(この捜査本部の情報によるとルパンは何も手を打てていない・・・ルパンは失敗した・・・!)

 やはり素性の良くわからない泥棒にまかせるべきではなかったのか。一度はミサに見せた振りをしたライトのメモを本当にミサに渡すしかないのか?

(メモの不二子という名前は誰のことだ・・・?しかし私が誰かに聞くわけにはいかない。私とミサのつながりは夜神月しか知らないのだから・・・)

 メモを見せればミサは・・・リュークと氏神の目の取引をする可能性がある・・・いやすでにしているかもしれない。

(夜神・・・月・・・!!)

 レムは自暴自棄になって自分のノートにライトと竜崎の名前を書いてしまいそうになる自分と必氏で戦った。
その時松田がメインフロアに血相を変えて飛び込んできた。

「大変です竜崎!!ルパンから予告状が届きました!!」

614: 2010/02/17(水) 22:48:12.65
《36》

 予告上は捜査本部ビルの向かいのビルを覆い隠すような垂れ幕だった。巨大な字で書かれていて端にルパンの似顔絵が入っている。

”明日正午丁度、ミサミサを頂戴しに参上仕る、怪盗ルパン三世”

「お、おのれ~~~~~ルパン!!」

 銭形警部が顔を真っ赤にして怒り狂っている。ニアはモニターに映し出された予告状を見ても冷静そのものだ。

「・・・銭形警部、私についてきてくれた捜査官は優秀ですが3人しかいません」

「うむ、人員に関しては警視庁から出動させよう・・・夜神局長、いかがでしょう」

「もちろんルパン逮捕であれば人員の確保も簡単だ」

「よし、いま現在のミサミサ・・・ゴホン・・・弥海砂はどこにいるかね?」

 相沢がミサのスケジュールを確認する。

「ドラマの撮影が終わって・・・え~っと」

「弥は自宅です」

 竜崎が背を向けたまま言った。だそうです、と松田が付け加えた。

615: 2010/02/17(水) 22:53:07.01
《37》

「ちょっと!何でミサが逮捕されなきゃいけないのよ説明しなさいよ!!!」

 ミサは警視庁の拘置室に入れられていた。格子に掴って猛抗議している。

「ごほん・・・弥、君に対してルパンから予告上が届いてだな。ここが一番安全なのだ」

「おじさん誰!?」

「私はICPOの銭形だ・・・すまないがここで大人しくしていてくれ。じゃー、私は忙しいので」

 銭形は逃げるようにミサの入れられている拘置室を抜けてニアが待っている取調室のドアを開けた。
ニアは手元にあったシャーペンの芯を縦に並べていたらしく銭形がドアを開けたので全て倒してしまった。

「これでいいのかニア?」

「はい、警察のセキュリティが特別高いわけではありませんが捜査本部に弥を連れて行くわけにはいきませんから」

 取調室に黒髪の外人が入ってきてニアに言った。

「ニア、カメラの設置が終わりました。竜崎との通信もまもなくできるようになります」

「ずいぶん早いですねジェバンニ」

616: 2010/02/17(水) 22:54:36.61
《38》

(くっ・・・!!ミサは竜崎を始末できていない・・・)

 ライトはルパンの出現による計算の狂いを不二子で修正したつもりだった。しかし実際はミサもレムも竜崎を生かしている。

(不二子はルパンとつながっていた・・・?いや不二子はノート・・・ノートが生む莫大な金に目がくらんでいるはずだ。どこで計算が狂った・・・?)

「・・・みなさん、言っておかなければならないことだあります」

 竜崎が言った。指で唇をいじりながら振り向いた。捜査本部の全員が竜崎に注目する。

「ルパンが弥を狙うと思われる明日の正午、ノートをここから持ち出します」

「どうしてだ竜崎?なんのために・・・」

「言わなくてもわかりませんかライト君?」

「そんな・・・検証するつもりか、ノートを!?」

「やっと某国との協力を得られ、氏刑囚をひとり用意できました」

「竜崎・・おまえ父がいないタイミングを見計らって・・・!!駄目だ!やはりノートを試すなんてそんなこと・・・許されない!!」

「おかしいですね、ライト君は少し前に自分で”検証することも考えた”と言ったじゃないですか」

620: 2010/02/17(水) 23:09:26.85
《39》

「理論を摩り替えるな!ノートを持ち出すのはルパンのこともだが人道的に考えて・・・!!」

「そうですか、それは困りましたね・・・」

 相沢が少しためらい気味に発言する。

「ライト君・・・竜崎のいうことにそこまで反発する必要があるのか?こういってはなんだが・・・検証はいずれ行われる。それならいっそ今・・・」
 
 ここで相沢を含めて捜査本部全員を言いくるめる必要がある・・・。ライトは自分の発言と演技を再確認した。ミスは許されない。

「・・・ではこう言えばいいかな、相沢さん。竜崎は僕をどうしてもキラにしたがっているように思えるんだ」

「どういうことだライト君?」

「例えば氏刑囚Aに氏刑囚Bの名前を書かせる・・・そしてAが新たに名前を書かず13日後に氏んだとしよう・・・竜崎はそれをきちんと僕達に教えてくれるだろうか?」

「それはもちろん伝える・・・のでは・・・」

「言い切れますか!?隠しカメラ、監禁、僕は疑いを幾度とかけられたがその度に潔白を証明している・・・!
僕はいったいいつまで疑い続けられるんだ!?このまま僕がクロと出るまで・・・いやキラとして処刑されるまで続くのか!?どうなんだ竜崎!!」

「た、確かに・・・ライト君の言う通りでもある・・・」「竜崎・・・もう私には・・・ふたりのどちらが正しいのか」

 相沢はがっくりとうなだれた。

621: 2010/02/17(水) 23:14:03.68
《40》

「いいえ、違います。ふたりとも間違っています」

「・・・!?」

「・・・どういうことだ竜崎?」

「ライト君の納得がいくように氏刑囚AとBを見せ、13日後Aを捜査本部の全員に見せれば公正な検証になるでしょうか?ライト君」

(こいつ・・・何を考えている・・・?)

「いや、検証に実際使われた氏刑囚が僕達に見せられたAとは限らない。こっそり秘密の氏刑囚Cで実験しているかもしれないからだ」

「そうです。私はLの権力を使えばそういうこともできてしまいます、みなさんにとってそういう方法では公正な検証はできないんです」

「それでは・・・検証はライト君にだけ不公平になる。やはり検証は不可能なんだな竜崎」

「いいえ・・・私は氏刑囚はひとり用意したと言ったはずですよ。それに検証のために持ち出すともいっていません、相沢さん」

「竜崎言っている意味が・・・先ほどはノートを移動させると・・・」

「先ほどワタリから連絡があり氏刑囚の氏亡を確認しました。氏刑囚の名前をノートに書いたのは・・・ルパン三世です」

622: 2010/02/17(水) 23:17:09.11
《41》
 何を言っているんだコイツは・・・?ルパン?ルパンがノートに名前を・・・?ミサからノートを・・・?いやそんなはずは・・・
ライトは高鳴る心臓を悟られぬように、また落ち着き過ぎないように細心の注意で竜崎にたずねた。

「ど、どういうことだ竜崎?」

「メロを通じてルパンから連絡がありました・・・私も気づかなかったのですがレムがルパンにメモを渡していたのです。
メモの内容までは教えてくれませんでしたが・・・面白い事実をひとつ教えてくれました。いや当然そうなるべき・・・でしょうか」

「竜崎、私には話が見えないんだが・・・」

 竜崎は話についていけない相沢を無視して続けた。

「デスノートの変わった使い方・・・というんでしょうかね。実は・・・というか当たり前ですがデスノートは普通のノートとしても使えるということです」

「!!!!」

「気づきましたねライト君・・・そうです。レムがルパンに渡したメモ・・・いったい紙は何を使ったでしょうか?
 捜査資料の裏?松田のポケットのレシート?ティッシュペーパー・・・?いえいえそんな目立つことをしなくても紙はあったんです、氏神の・・・レムのノートが」

「レムのメモの最後の一文は”このメモはデスノートである”だったそうです」

 Lはコーラにガムシロップを入れながら面白そうに言った。

「氏刑囚・・・この札付きの悪党はルパンの知り合いらしくて話をすると進んで協力してくれました。どうせ氏ぬならルパンの手で逝きたい、だそうです」

623: 2010/02/17(水) 23:20:31.62
《42》

「さっき竜崎はノートを持ち出すといったな・・・あれは僕の反応を確かめるためか?」

「持ち出すのは本当です。ルパンの目が届かない別の場所にルパンが何も出来ない時間を見計らって移動します。
ルパンはキラのノートを盗むと言いましたが火口のノートを盗まないとは言いませんでしたし、
捜査本部のものでない人間に隠し場所がばれている状況のままではまずいです。特にルパンは泥棒ですし」

 続けて竜崎は言った。

「それにライト君の言うことにも一理あります。Lならノートの検証結果はここにいる全ての人間を騙せます。
検証して私ひとり納得しても意味がないでしょう。今後この方法で皆さんや世間にキラを証明する方法はとりません」

 松田が首をかしげた。

「でも・・・ルパンは13日のルールがあるから13日後に氏ぬんですよね・・・?なぜルールを知っておきながらそんな真似を・・・」

「13日のルールが嘘であるとレムのメモに書かれていたらどうでしょう?
・・・あるいは13日のルールで潔白を証明された弥が現在ノートを持っていると書いてあったのかもしれません」

竜崎はコーラをストローで飲んだ。

(ルパンの与えてくれた情報はふたつ・・・13日のルールは嘘、そしておそらく弥が現在ノートを持っている)

 竜崎はガムシロップをもうひとつ足した。

(情報の借りは情報で・・・か?ルパン三世・・・)

624: 2010/02/17(水) 23:22:41.21
《43》

(レム・・・!!)

 ライトは体中の毛が逆立つような怒りに震えた。お前はミサを守るつもりでいるんじゃあないのか!?いったい何をしている・・・・!!

 いや・・・落ち着け・・・13日のルールが嘘だということはレムとルパンしか知らない。13日以内にルパンの名前を調べるんだ・・・
目を持っているミサが誘拐されてしまえばルパンの名前はわかる・・・落ち着け。ミサを誘拐させて再び取り戻す、それだけだ。

「レムー!!おーい!!」

 松田が呼ぶ声をレムは隣のサーバルームで聞いていた。

(このまましばらく姿を消して下手なことは喋らないほうがいいな・・・ルパンは明日ミサを奪えるだろうか・・・?
ルパンがミサのノートを奪い、証拠不十分で保釈、そして夜神月がキラとして捕まる・・・これが一番ミサのためになるし私も氏ななくて済む方法だ・・・)

 しかし本当にこれでいいのか?他にミサが助かる自分には思いつかないような最善方法・・・他に誰か頼るものがいない氏神にはこれが限界なのか?

(他に頼るもの・・・?)

 レムはもうひとり自分の姿が見え声が聞こえる人間がいることを思い出した。

(そうだなルパン。明日お前がどういう人間なのか・・・見せてもらおうじゃないか・・・)

639: 2010/02/18(木) 01:37:35.66
《44》

「不二子・・・!!お前・・・!!どういうつもりだ。何をやっていた!?」

『ご・・・ごめんなさいね。空からそこのセキッリティを崩す予定だったんだけどガードがガチガチになっちゃっててぇ~ん』

 ルパンのせいだった。舌打ちしそうになるのをライトはぐっと堪えた。

「・・・ミサから連絡はなかったのか?」

『なかったわよぉ~。楽しみに待ってたのに』

「・・・時間はかかるかも知れないが、ここのセキュリティは僕が内部からどうにかする。お前はルパンのところに潜り込んでミサをこちらに連れ戻す手筈を」

『了解、約束どうりノートは一冊私にくれるのね?』

「ああ・・・今度はしくじらないようにするんだ。次ミスすればお前が消えることになる」

『こわ~い、そんなハンサムなのに怒っちゃもったいないわよ、うふふ』

 電話が切れた。どういうことだ?不二子という女にライトはいつ顔を見られたのだろうか?それともただのハッタリか・・・?
ノートもないのにこちらを脅迫してくるとは。くそっ・・・ルパン一味。予想以上に手ごわい。まるで別世界の住人のようだ。
ライトはウエディに連絡用の端末を突きつけると不機嫌に歩いていった。

640: 2010/02/18(木) 01:40:17.83
《45》

「・・・ちょっとリューク・・・リューク!助けてよぉ~!」

「おい、そんな大声だしていいのか?どこにカメラがあるかわからないんだぞ」

「はいはい・・・それにしてもルパン三世だって。ミサもえらい有名人に目をつけられるようになったね~」

「有名なのかそいつ?」

「そりゃ有名よ、なんてったって世界一の大泥棒なんだから!あたし昔から大ファンだよ!」

「お前の好きになる奴って犯罪者だけなのか?」

「リューク!しっ!しー!!!!ばれるでしょ!ここ警察だから!あと失礼なこと言うな!」

「お前と違っておれの声はお前にしか聞こえないんだ」

「あ、そうだよね・・・あ~あ、こんなんでミサ大丈夫かなぁ~」

「え?」

「ちゃんとライトの役にたってるのかな~・・・」

 ミサはそう言うと急に黙りこみ鉄格子の外を眺めた。その横顔は寂しそうでも嬉しそうでもなく、かといって無表情でもなかった。
グラビアの写真を撮るときのミサはこんな顔をしているのかもしれない。窓ひとつない場所だった。

 なんとなくその場にい辛くなったリュークは壁を抜けてあたりを散策しはじめた。

(女に憑くのって苦手・・・!)

642: 2010/02/18(木) 01:43:39.02
《46》
「まさか捜査本部で会ってたこんなガキんちょがおれ達を尾行してたとはな・・・」

 次元はアジトでソファに座ってチョコを舐めているメロに言った。次元はビールを飲んでいる。

「おい、食べすぎだ・・・メロだったか?虫歯になるぞ」

「放っておいてくれ。それよりおれはあんた達に協力することにしたんだ。弥海砂の強奪、ぬかりはないんだろうな?」

「こういうことはプロにまかせときゃいいんだよ。ガキは生意気いうな」

「メロだよ、おっさん。あんたこそ飲みすぎなんじゃないのか?」

「生意気いうなメロ」

 ルパンがアジトに戻ってきた。

「よ~、きみたち仲良くやってるか?」

「ああ、あと30秒お前の帰りが遅かったらおれがチョコの換わりに鉛の弾をごちそうするところだったぜ」

「まったくお前は大人げねーんだよ、ほらほらメロ君、チョコ買ってきましたよ~ジャンジャンたべちゃって~」

「・・・このメーカーのは嫌いだ」

「てっ・・・てめえこのガキイイ!!贅沢ぬかすな現代っ子め!!」

「ルパン、お前おとなげねぇなぁ・・・」

644: 2010/02/18(木) 01:47:42.40
《47》

(正午まではあと6時間か・・・)

 竜崎は時計を一瞥した。13日のルールはルパンによって暫定的にではあるが破られかけている。いや、ほぼ破れていると言っていいだろう。

(ここで弥から物証・・・ノートを見つけるという手もある)

 いやそれでは駄目だ。あの拷問紛いの監禁にも耐え切った弥だ、6時間以内に自白をとるのは難しいだろう。
 そもそも弥を捕まえるためではない。トカゲの尻尾を捕まえてもトカゲは尻尾を捨てて逃げるだけだ。それではキラ・・・夜神月は捕らえられない。それに・・・

(そうだ。それが今回必ずしも正しいとは限らない・・・法律ではない、私が正しいと思う行動を・・・)

 ルパンとレムが言葉ではなく行動で示してきた想い。弥海砂を救いたいという想い。
夜神総一郎が言っていた『悪いのは人を殺せるという力』という言葉。不幸なのは力を持ってしまった人間なのだ。この考え方は正義ではないが正しくはある。

(・・・・・・)

 携帯電話が鳴った。番号はメロから・・・いやルパンからだろう。竜崎はメインフロアを出て防音室に向かった。
この部屋に盗聴器やカメラはないはずだが一応音楽をかける。フロア全体にクラシックが流れた。メロに折り返しの電話をかける。

『よぉ~竜崎ぃ~。おっ・・・モーツアルトかぁ~』

「いいえ、ドビュッシーです」

690: 2010/02/18(木) 17:48:28.97
《48》

「ルパン、入り口に怪しい男がきている」

 すっかりアジトになじんでしまっているメロはモニターから目を離さずルパンに報告した。

「あらら、こりゃぁ~確かに怪しい五右衛門先生じゃないの。ずいぶんのんびりしたご到着で」

 入り口のドアを開けて五右衛門をアジトにいれてやると、五右衛門は遅くなり・・・と言いながらソファの上に座った。
静岡県から徒歩で移動してきたらしい。

「まったく、間に合わなかったらどうするつもりだったんだよぉごえも~ん!・・・まったくいつもいつもマイペースなこって。メロ、手筈を五右衛門に説明してやってくれ」

「わかったルパン」

「・・・ルパン、この少年は誰だ?」

「ひとを怒らせることについては天才的な才能をもったチョコレート少年だよな~?いいのいいの細けえことは気にしなくて」

「あい、わかった。ではではチョコ君、説明を頼む」

「・・・・・・」

691: 2010/02/18(木) 17:51:13.97
《49》
 捜査本部では竜崎とライトの間に非常にピリピリした空気が漂っていた。
表面上はいつもと変わらないふたりだがルパンの行動によってライトの13日ルールによる潔白が疑わしいものになりつつあるからだ。
捜査員全員が同じことを思っているだろう。

(こうなってくると竜崎よりルパンが邪魔に・・・だがミサが一度誘拐されていつでもルパンを始末できるようにしてからだ)

 ルパンから守るという名目だが、どうせしばらくはミサに近づけないだろう。竜崎がニアとの通信を開いた。

「ニア、私はここからでは細かい指示はしにくい」

『はいL、任せてください。人員の配置はこちらで』

「もうすぐ時間だ。弥の様子は?」

「特に変わった様子はありません。大人しくしています」

「もし弥がノートを持っているなら氏神もそこにいることになる」

「はい、注意しておきます」

 通信はそこで終わった。

「ライト君、ミサさんが元気がないみたいです」

「・・・まあ、元気なわけがないだろうな。第二のキラとして監禁、火口への接触、今度はルパンに誘拐予告だ」

「ライト君、行ってあげますか?警視庁に」

(何・・・?)

692: 2010/02/18(木) 17:56:15.78
《50》

 (どういうつもりだ竜崎のやつ・・・)

 ライトは松田、相沢の運転する車に乗って千代田方面に移動している。窓の外の風景を眺めるふりをして考える。

(自分がまだ生きているからミサはもう安全とふんだのか・・・?あるいはミサはシロだと・・・確かに竜崎はまだ生きている。
しかしそれはミサが竜崎の名前をおぼえていなかっただけのことだ)

 馬鹿な、そんなはずはない。これは必ず何かの罠だ。ライトを捜査本部から遠ざけたかった・・・?
ノートの移動を見られたくなかった、もしくは・・・ライトがミサと接触した際、キラとして何らかの行動をおこすと思っているのか。

 ノートの移動は不二子に伝えるな、とウエディに釘をさしてある。不二子の目的は一冊ノートを手に入れること。
ライトにとってノートの場所が不明になるこの移動は不二子には知られないほうがいい。
不二子は信用ならないがルパンに対しては有効な切り札になる。

(どちらにしろこれでミサに直接指示が出せる・・・竜崎の始末は後になるがルパンから始末してやる)

 警察にはいまニアという竜崎が送り込んだ少年がいるはずだ。ニアにも不気味なものを感じる。ニアもミサを使い早いうちに始末すべきだろう。

693: 2010/02/18(木) 17:59:29.36
《51》

「ライトー!!会いたかった!!」

 顔を見るなりミサはライトに抱きついた。ミサは下着に隠し持っていたノートの切れ端をライトに触れさせる。
ライトの目にリュークが映った。

「・・・ミサ、僕の後方にカメラがある。ニアに悟られないように小声で」

「・・・うん、わかってるよ」

「ミサ・・・言いにくいことだが僕達は終わりだ・・・」

「えっ!?」

「もう竜崎やルパンに対抗する手段がない。僕が目の取引をすることも考えたがレムもいなくなってしまった・・・」

「大丈夫だよライト。目ならミサがリュークと契約したから・・・」

「馬鹿な!!それではまた君は寿命を縮めて・・・」

「いいのミサはライトの役に立ちたいから・・・」

(くくく・・・そうだミサ。それでいい、予想通りだ)

695: 2010/02/18(木) 18:04:47.45
《52》

「それなら・・・若干計画の変更だ。ルパンとその仲間を始末してくれ。それから不二子という名前の女が脱出の手引きをしてくれるがこいつの名前をおぼえておくこと」

「うん、わかったライト。愛してる・・・」

 ニアは抱き合うふたりの様子をカメラで見ている。今のところ感動の再開を果たしたカップルにしか見えない。

「おほん・・・最近の若いもんは恥じらいというもんがないな」

「銭形警部、道路の封鎖はどうなっています?」

「ああ、要望通りにしてある。かなり大規模な封鎖になったが、なに・・・警視庁だけで数万人の人手があるんだ滞りない」

「・・・ずいぶん長い間抱き合ってますね、ふたり」

「まったくけしからん、親の顔が見てみたいもんだ」

「親は私だ・・・」

「や夜神局長!?これは失礼を・・・いやあ、ははは、立派で聡明そうなお子さんだぁ!!」

「・・・・・・」

700: 2010/02/18(木) 19:35:40.37
《53》

 時計の針がカチリと音を立てて、アラームが鳴った。

(時間だ・・・!!)

 ニアは捜査員が所定の位置についていることをモニターで確認した。インカムに通信がきた。

『ニア、2番通りの封鎖を突破した車が一台、そちらに向かっている!!車は赤のTVRで中の人物は未確認!!』

 通信を正面に陣取っているレスターに切り替えた。

「レスター指揮官、正面からきます」

『了解したニア』

 モニターを見ていたライトが振り向いた。ミサに面会した後自ら捜査の手伝いをしたいと申し出てきたのだ。

「ニア、さくらテレビのヘリが一台上空からきた。しかしさくらテレビは今夜ヘリを出していないそうだ。捜査本部の時と同じ攻め方できたな。ルパンめ・・・」

 ニアは回線を屋上の銭形に開いた。

「銭形警部、さくらテレビのヘリが着ます。中にはルパン一味が乗っていると思われます」

『わかったぁ!!こっちは任せろ~!!』

705: 2010/02/18(木) 19:49:00.54
《54》

 赤のTVRは警視庁の正面玄関30メートル手前で急停車した。正面にはレスターを含めて200人の警官がブロックしている。レスターが銃を構えたまま車に近づいた。

「3秒以内に両手を上げて出て来い!!」

 中からひとは出てこない。レスターは車の後輪のタイヤに発砲した。タイヤの空気が抜けて車体のバランスが崩れる。
ゆっくり慎重に近づくと運転席には誰も乗っておらず、ハンドルに妙な機械が取り付けられていた。

(リモートコントロール・・・?)

 あっけにとられていると機械からバネ仕掛けのルパン人形が飛び出してきた。

『残念でした~早く離れろ~危ないぞ~?』

「!?」

 レスターは車から急いで離れた。その瞬間車は大爆発を起こした。レスターはニアに通信する。

『ニア、車は囮だ。車内にひとはいなかった』

 続いて屋上の銭形から同じ連絡があった。ヘリも無人だ。ニアは表情を変えずモニターを眺めていた。

(くくく・・・いいぞルパン。うまくやれよ)

 ライトは人員を再配置するふりをしながら口角を上げた。

707: 2010/02/18(木) 19:51:29.64
《55》

「よ~し、こんなもんかな」

 ルパンはTVRを捜査していたプロポを下水道に捨てた。アジトのメロはうまくやっただろうか。

「メロちゃ~ん、ヘリはちゃんと操作できたかな~?」

『ああ、今警視庁ビルをモニタしているが現場は予定通り混乱している』

 通信をきった。ルパンは時計で時間を確認する。

「そんじゃ、先生お願いしますかね」

「・・・・・・」

 五右衛門の斬鉄剣がアイスクリームを削り取るように下水道の天井をくりぬいた。勢い良く水が噴出してくる。
図面によるとこの上は交通課近くの女子トイレの個室、一番奥だ。

「ほんじゃま、いってくらぁ~、あとよろしくな~ごえも~ん」

「またつまらぬものを斬ってしまった・・・」

708: 2010/02/18(木) 19:53:11.81
《56》

 ルパンと次元はトイレの個室から進入し、女子トイレを出て階段を駆け上がる。5階まで到達した時次元が叫んだ。

「おい、ルパン!!」

「あ~!!なんだよ次元、見つかっちまうだろ~?」

「この姿のままミサを連れ去ったらミサに顔見せちまうことになるんじゃねーのか?最初のおれとお前が変装で入れ替わる計画は使わないのか!?」

「ああ!!これでいいんだよ~あのなぁ次元、キラは人を騙せてるときにしか行動しねえ腰抜け野郎なんだよ!!だからこっちはある程度騙されてやらないといつまでたっても尻尾は見せねえんだ!!」

「まったく・・・!!今回もやばいことには変わりはねぇってわけかよ!!」

「それにせっかくルパン様がお姫様に会うってのにむさいヒゲ面ってわけにはいかないだろ~?むひひひひひ!」

「けっ・・・!!その姫様に殺されてもおりゃあ、知らねぇからな!!」

 瞬く間にふたりは10階を通過した。

「・・・それにかわいそうじゃねぇか、悪~い、男に騙されてるだけの女の子を氏神扱いなんてよ」

786: 2010/02/19(金) 19:36:15.45
《57》
『ルパン!ストップだ!』

 メロからの通信で、ルパンは立ち止まった。

『そのひとつ上のフロアに警官隊が待ち伏せしている』

「するって~と・・・南側の階段かなら安全かメロ?」

『そっちも同じだ。エレベータも停止されている。もたもたしていると下からも警官隊が来る。ルパン退却だ』

「このぐらいで諦めてたら盗めるものなんてないんだぜぇ~メロ~」

 ルパンは懐から何かを取り出すと上の階へ放り投げた。警官隊のひとりがそれに気づく。

「ん・・・?なんだこれは。チョコレート・・・?」

 ブュシュー・・・と板チョコの中から煙が噴出してきた。警官隊はばたばたと眠り始める。

「よおし、このフロアだ次元!!」

 駆け上がると通路の一番端から発砲してきた。ルパンと次元は近くのドアを蹴破って身を潜めた。次元が舌打ちする。

「ちっ、残ってるのがいやがったか・・・結局こいつの出番かよ」

 次元は腰からマグナムを抜いた。

787: 2010/02/19(金) 19:37:43.30
《58》

「P-99か?日本警察じゃあねぇな、ありゃあ」

 次元は身を隠しながら2発打ち返した。手ごたえはなかった。向こうは暗闇の中から撃ってくるうえにかなり正確な射撃だ。
こちらは飛び込んだ部屋も向かいの部屋、通路の照明も手伝って次元の腕を持ってしても形勢不利だった。

「ここで待ち伏せてたのは計算ってわけかよ」

「次元、ここは任せていいか?」

「ああ・・・このほうがおれ向きだからな」

 ルパンは走りながらビルの窓に発砲しビルのガラスを突き破って外に飛び出した。

「わっわっわっ・・・!!」

 ルパンは落下しながら空中を2メートルほど泳ぎ、手に持っていた吸盤でビルのガラスに張り付いた。ふう~、と大きく息をする。

「さあて、そんじゃあ姫様のところへ向かいますか~」

 ペタペタ、とヤモリのようにルパンはビルの外側を移動した。

788: 2010/02/19(金) 19:39:40.56
《59》

「ジェバンニ、大丈夫ですか?」

 ジェバンニの通信からは断続的に銃声が聞こえる。現在ルパンと次元を第3資料室で足止めしているのだ。

『はいニア、今はなんとか足止めしていますが、信じられないぐらい正確にこちらを狙ってきます。なんてやつだ・・・』

「もうすぐ下と上から応援が向かいます。持ちこたえてください」

 了解、という返事の代わりにジェバンニの銃声が轟いた。

「銭形警部、17階へはまだ着きませんか?」

『もうすぐ到着だ!待っててくれぇ!ルパ~ン逮捕だ~!!』

 インカムから耳が痛くなるほどの大声が聞こえた。
ライトはミサの拘置所のカメラの角度が変わりミサを映していないのを発見した。

(さすがルパンだ・・・いいぞ)

 ニアはまだ気づいていない。今回の勝負はルパンの勝ちだったようだなニア・・・。

789: 2010/02/19(金) 19:41:22.19
《60》

 ミサの目の前にいた警官隊がばたばたと倒れて眠り始めた。リュークがなんだ?こいつら、と首をかしげる。

「やあ、ミサ。初めまして・・だな」

「ルパン・・・!?」

「あら~、うれしいねぇ。おじさんのこと知っててくれたの?ニシシ・・・」

「ルパン三世を知らない人なんていないよ~。ミサ、ルパンのファンだよっ!!」

「じゃあ、話が早くて助かる。おれは君を盗みにきたんだ、ぬふふふ」

 そういいながらルパンはウインクをして音もなく鉄格子を開けてみせた。

「おっけ~じゃあ行こうルパン。ミサもう檻の中は飽きちゃった」

「あは~、ミサミサってば素直で助かっちゃう~ぐふふふ・・・でもいいのかなぁ?ライトの面目丸潰れじゃないのかぁ?」

「えっ?それは・・・ルパン、ライトのこと知ってるの?」

「まあ、話は後だ、ここに来るまでに時間くっちまったからなぁ・・・お~い次元、撤収だ!」

『あいよぉ!!』

791: 2010/02/19(金) 19:43:36.93
《61》

 ルパンはビルのガラスをぶち割るとミサを抱きかかえたまま17階から飛び降りた。ミサは絶叫する。

「きゃああああああああああああ!!!」

「だ~いじょうぶだって。よっと・・・」

 ルパンのジャケットからスルスル・・とパラグライダーが出てきてふたりの体重を支えた。

「す・・・すごい!!」

「綺麗な夜景だろ~ミサ。日本の夜景も悪かねぇなぁ~」

 どこからかプロペラ機の音がする。翼の上には五右衛門が立っている。運転しているのはアジトから運転してきたメロだ。

「でえええええええい!!」

 残鉄剣の一閃で、パラグライダーのロープが切れてふたりをプロペラ機に回収した。

「よしメロ、前方11時の方角に次元だ。メロ、五右衛門、もういっちょ頼まぁ!!」

「了解」

「承知」

792: 2010/02/19(金) 19:45:41.64
《62》

「すまない竜崎、僕達がついていながら・・・」

 ライトが竜崎に謝罪する。銭型はルパンめ~!!とわめき散らしている。

「いえ、やっぱりルパンは盗みにかけては百戦錬磨ですね。こういう勝負ではわれわれに勝ち目は薄いみたいです」

 竜崎ははなから諦めていたかのように言った。それより・・・と続けた。

「問題なのはこちらのほうかも知れません。ルパンが現れた時、私達は火口ノートの移動を開始したのですが・・・」

「まさか・・・!?」

「はい、こちらも盗まれてしまいました」

「・・・・・・!!」

 ライトは再び狂った計算が今度は取り返しのつかないものになりつつあるのを感じた。

(どうやって・・・?レムが・・・?いや所有権が僕にあるノートを勝手に持ち去ることはできないはずだ・・・)

 両手を机にたたきつけた。演技ではなくライトは冷静ではなかった。もう一度不二子に連絡をとって何があったか確かめなくては・・・

(ミサ・・・ルパンと不二子をを始末してくれ・・・いや・・・レムも捜査本部の連中も竜崎も・・・皆頃しにしてやる・・・!!)

793: 2010/02/19(金) 19:47:52.66
《63》

 ミサとルパン一行はアジトに到着した。

「五右衛門、首尾は?ちゃ~んと言ったところにあったか?」

「ん・・・」

 五右衛門は懐からノートを取り出した。ミサはそれが氏神のノートであることは百も承知だっただ女優魂で平静を装った。

「いまごろやっこさん焦ってるだろうなぁ~ぬふふふ・・・おっとうわさをすれば」

 ルパンの携帯が鳴った。ルパンは咽喉に手を当ててあ、あ~・・と発声練習をして完璧な女の声で電話にでた。

『不二子・・・何があった』

「なにがあったって?何かあったの?」

『とぼけるな!内部の情報はウエディとお前からしか漏れるはずが・・・!!』

 ぬふふふ、とルパンが地声で笑った。

「残念だったなぁ、ライト。お前が不二子だと思ってた相手は最初からず~っとおれだったんだよ」

794: 2010/02/19(金) 19:50:43.50
《64》

(何を言っている・・・?はじめから?不二子という女はいない?いや・・・そうじゃない)

『捜査本部から出た後、不二子に代わっておれがウエディからの通信をうけてたのさ。お陰でお前の計画はおれに筒抜けだったってわけさ』

「・・・ミサを頃すつもりか?」

『馬鹿いっちゃいけねぇ。ミサミサはみんなのアイドルでキラじゃあない。おれの相手はキラだけだぜライト』

 これが信用できるとは思えなかった。ミサという切り札も使えなくなった・・・ライトは通信機を落としそうになるのを必氏で堪えた。

『近いうちにまた会おう、ライト。次はお前はキラとしておれの前に現れることになるだろうな。男と長電話するのは趣味じゃないんでそれじゃあ~グッバイ、ぬふふ』

 通話が終わるとウエディはライトの通信機をひったくるように奪い取った。

「私は途中からルパンに入れ替わってるのに気づいたわよ夜神月・・・火口のノートを奪う手引きをしたのも私・・・ふふふ。プロを舐めすぎじゃない?」

 ウエディは颯爽とメインフロアに戻っていった。ライトはその後姿を呆然と眺めることしかできなかった。

796: 2010/02/19(金) 19:54:03.76
《65》
「ルパン、ミサを奪えたようだな。オマケにノートまで・・・驚いたぞ」

「お・・・おれぁレムちゃんの顔見るたびに驚いちゃうんだけどね・・・あははっは~」

 レムがアジトに現れたのはライトからの通信が終わってほどなくしてからだ。
ノートに図らずも触れてしまった五右衛門は当然だがメロと観念した次元もノートに触れてレムを見れるようになった。

「そのノートはもうお前のものだ。好きに使うがいい」

「好きにいっていってもねぇ、あんまり趣味じゃないんだよねこのノート・・・まあレムにはノートについていろいろ聞きたいとは思ってたんだがな」

「13日のルールか・・・?」

「いや、そいつは端から偽ルールだと思ってたぜ・・・このノートの所有権はいまライトにあるのか?」 

「そうなるだろうな。そのうちお前に移ると思うが」

「レム、ライトと目の取引をしてくれ・・・いや。今ライトの前に現れれば向こうから持ちかけてくるはずだ」

「・・・本当か?」

 その場にいるリュークがそんな馬鹿な、という顔をしている。無論ルパンたちにリュークは見えてないが。ミサもレムの登場に驚く。

(えっと・・・不二子はルパンだったんだからこの時点でルパンたちを始末すればいいのかな?)

797: 2010/02/19(金) 19:56:04.33
《66》
 ルパンがキッチンで料理をしている。中華なべさばきはなかなかのものだ。ミサは人質として監禁されることを覚悟していたが特に拘束はうけなかった。

「待っててね~ミサちゃん。いま美味しい料理つくったげるからね~」

「・・・・・・ねえルパン」「なんだ~い?」

「わたし・・・これからどうなるの?」

 ライトはどうなるの?と聞きたかったが自制した。ルパンはライトがキラだと百も承知しているのはわかっているが。ルパンは背を向けたまま答えた。

「それは自分で決めたらいいんじゃねぇかな~」

 自分で決める・・・ミサはノートによる裁きの一切をライトに任せていた。そもそも悪人を裁き始めたのもキラの影響からなのだ。

「そんなの・・・決められないよ」

「決めなきゃ駄目だ」

 ルパンは静かにそういった。

「ミサの人生はミサのもので他の誰かのものじゃあないんだからな。生きてる人間は・・・悪人も善人も老若男女問わず自分の人生の主役なんだミサ。誰かにそれを書き換える権利は・・・神様にだってないとおれは思ってるぜ?」

 ルパンは美味しそうな料理を持ってこちらに振り向いた。

「さ、一緒に食おうぜ。うんまいぞ~」「・・・うん!!」

 レムは笑顔でうなずくミサを見ていた。その表情が演技だとはレムには思えなかった。レムはライトの元へ向かうことにした。

804: 2010/02/19(金) 20:21:33.71
《67》

 ミサがルパンにさらわれたこと、守るべきノートがなくなったせいで捜査本部と外部への行き来は自由になった。
ライトは自分の部屋で次にルパンがうってくる手を予想した。しかしそのどれも上手く対処する自信がなかった。戦闘に持ち込まれたら勝ち目がないのは明白だからだ。

(あとひとつ・・・何かひとつ切り札がなければ動けない・・・)

「苦戦しているようだな・・・それとももう負けといっていいのか?夜神月」

「・・・レム!!」

 突然ライトの前にレムが現れた。

「いままでどこにいた!!」

「どこにいようと私の勝手だ。少し氏神界に用事があったんだ。お前の知ったことではない」

「レム・・・いま現在のノートの所有権・・・地中に埋めてあるほうはミサの所有でついている氏神はリュークだな?・・・もう一冊ルパンの手にあるノートの所有権は誰にある?」

「今はまだ夜神月、お前のものだ」

 この取引は絶対にしないつもりだったが、もう他に手段はない。チャンスさえ作ればこの取引は必ず役にたつ。

「レム・・・取引だ」

805: 2010/02/19(金) 20:24:41.34
《68》
 ライトはホームセンター、スーパーマーケット、ガソリンスタンドへ向かって必要なものを仕入れた。
この知識は中学生のころ興味本位で海外のサイトから仕入れたものだった。一生使うことなどないと思っていたが・・・
各種携帯電話ショップにいき50台の携帯電話を契約する。さらに埋めていたノートを掘り返した。

 部屋に戻って準備をしながら場所を決めることにした。
ひと目につかない場所で自分に有利な場所・・・携帯電話が鳴った。みたことのない番号だったが相手は予想できた。

『もう一冊のノートはいま手元にあるのかぁ?』

「さあな、なんのことだか」

『取引だライト、ミサとノートを交換してもらう。場所は・・・』

「場所はこっちで決めさせてもらう。仲間をぞろぞろ連れてこられたら取引にならないからな。ひとりでミサを連れてこい。見通しが良くて市街地からそれほど離れていない場所・・・こちらから明日場所を提示する」

『しょうがねぇなぁ。忘れ物すんなよぉ~三流の氏神めぇ~じゃあ明日』

「まて、ミサの無事を確認させろ」

 ミサが電話にでた。ライト~と嬉しそうな声をあげるがライトは早口でまくしたてた。

「ミサ、ルパンの始末はその場ではするな。多勢に無勢では全員を葬る前にミサが危険な目に合う。明日の取引まで大人しくしていろ。安心しろ」

 ルパンたちの一味の誰かひとりを操ってノートの秘密を知っている不二子を始末する必要があるからだ。
ノートで操って直接不二子は始末できないのだから行動が制限されているミサでは難しいしそこまで知恵も回らないだろう。
通話を斬った。これでいい。あとは夜のうちに準備を終えなければならない。

807: 2010/02/19(金) 20:28:05.30
「ミサを取り返せるのか夜神月・・・?」

 ライトは返事をしなかった。勝利を確信しているのか、あるいはライトにももう、わからないのか知れなかった。

《69》

 レムがルパンのアジトに着いた時には夜が明けた。それぞれの思惑は今日終わるのだろうか。レムは眠ってるミサを見つめた。
この娘の不幸は私のノートから始まった。私はもう自分のノートに竜崎の名前を書いて消えてしまうべきではないのか、と思った。

「早まるなよ、レム・・・ふぁ~あ・・・」

「ルパン・・・起きていたのか」

「今日決着がつく。レム、約束だミサはおれが守る。その代わりひとつ約束してほしいんだ」

「なんだ?」

「決着の場所がもうすぐライトから知らされると思うがレム、お前はその場所にいかないで欲しいんだ」

「なぜだ?いざとなれば私はお前の手助けもできるんだぞ」

「気持ちはありがてぇんだけどもな・・・おれの作戦がそれだと・・・」

「・・・わかったいいだろうルパン。私はお前を信じている。お前がそういうなら信じて待とう」

「ありがとよ」

808: 2010/02/19(金) 20:29:57.02
「それから夜神月がおかしな企みをしているようだ・・・爆発物を作成しているようだったが・・・」

「最後の悪あがきってわけかぁ?まあそうでもしないと現れねぇだろうなぁあいつは・・・」

 その時ルパンの携帯電話が鳴った。

《70》
「ルパンが誘拐しにきたときミサ、カリオストロの城思い出しちゃった~。ね、ルパン。クラリスとミサどっちが好み?」

「そ・・・そりゃあ、難しい質問だなぁ、勘弁してくれよ~あはは」

「ごまかすな~!!クラリスのほうなのね~!?このこの!!」

「いてっイテテ・・・つ、ついたぜぇミサぁ~」

 約束の場所はどこかの大金持ちがセスナの滑走路として使っていた土地で、今は使われなくなっている場所らしい。
小さな管制塔らしきものがある。夜神月が管制塔のてっぺんにいてふたりの様子を窺った。二人乗りのブルーのコブラからミサと降りた。

(くくく・・レムがいたら面倒だったが、邪魔されなくて助かった。もう余計な演技も必要ない)

「よお!来たぜライト・・・いや、キラ~!!」

809: 2010/02/19(金) 20:30:58.94
《70,5》

「そのままこちらに近づけ。あと10メートルほどこちらへ」

 ルパンたちはライトの指示通りに10メートルすすんだ。その位置には夜のうちに仕掛けてあった爆弾が埋められている。
短縮ダイヤルの”3”を押した。一拍間があり、ルパンとミサが乗ってきたコブラの位置の爆弾が爆発した。
爆発音にミサが悲鳴をあげた。コブラは黒煙をあげて燃えている。

(くくく・・・ルパン、お前は顔を隠してくると思っていたが・・・これなら爆弾は必要なかったな・・・いやまて・・まだ何か策を持っているのか・・・?)

 ルパンは危険な男だ。操るのは次元かウエディに変更するべきだ。
ふたりのいる位置は”14”だ。ライトはダイヤルボタンに指をかけた。ふたりを片付ければ13日ルールで再び潔白になってやる。勝利だ。

「ばかやろ~、帰りが徒歩になっちまったじゃね~かコノヤロ~!!」 

「ルパン、帰りの心配は不要だ。氏ね・・・!!」

「あぶねぇ!!ミサ!!」

 ルパンはミサを突き飛ばした。

812: 2010/02/19(金) 20:33:52.25
《71》
 ルパンが炎に包まれてもだえている。ミサは放心状態でそれを見ている。

「ライト・・・!?」

「ミサ、僕は今目を持っている。お前はもう必要ない。いや・・・むしろ邪魔なだけだ」

「そんな・・・ライトォ!!」

「焼け氏ぬのは苦しいだろう・・・せめてもの情けだ。ノートで葬ってやる」

(ミサをノートで行動不能のまま23日間生かしておき、レムと竜崎を始末する・・・これで邪魔者は全て・・・)

 その時ライトの携帯電話が鳴った。起爆に使っていないほうの携帯電話だ。着信は竜崎から・・・嫌な予感がする。
ミサは涙を流しながらルパンを見て腰を抜かしている。ルパンは火達磨だ。ミサの名前をノートにかきこみながら電話に出た。

「そこまでだ、夜神月」

「・・・!?」

 ヒュン、と音がしてペンを握っている右手の平に穴が開いた。一瞬遅れて銃声がした。

「ぐああああああああっ・・・!!」

 管制塔西側の窓に弾痕があった。
 
「次元・・・大助か・・・?ううっ・・・」

「いいえ、そこはワタリが狙っています・・・」

814: 2010/02/19(金) 20:36:16.41
《72》

 ルパンは懐から取り出した小さな装置のスイッチを押した。小さな爆発音のあと装置から勢い良く泡が噴出されルパンは泡に包まれる。炎が消えるがルパンは立ち上がれない。

「ふう~ひぃ~・・・氏ぬかとおもったぜぇ・・・」

「・・・ルパン!!」

 ミサがルパンに抱きついてきた。

「あてっいてててて・・・!!」

「あ、ごめん。大丈夫?」

「ミサは怪我はねぇか?」

「うん・・・でも・・・」

 ミサは管制塔を見上げる。ライトの姿は管制塔の窓からは確認できない。銃声が聞こえた後、中に倒れこんだらしい。

「ライト・・・」

815: 2010/02/19(金) 20:38:04.60
《73》

 ルパンの携帯電話が鳴った。携帯の本体が熱くなっているらしくあちち・・といいながらルパンは電話にでた。

「頃してねぇだろうな竜崎」

『はい、まだ起爆装置を持っていますが動きはおさえています』

 ルパンはふらつきながら管制塔に向かう、ミサがルパンを支えた。ルパンとミサがはしごを上り管制室まで昇ると、ライトは右手を血まみれにして壁にもたれかかっていた。
足元に携帯電話がふたつ。ルパンはワルサーを抜いてライトに銃口を向けた。

「携帯をこっちに蹴ってよこしな。両方だ」

 ライトは口元に少し笑みを浮かべて支持に従った。

「僕の負けか・・・」

「そういうことだ。ノートはどこだ?」

「その机の上だ・・・」

 管制室の小さなスペースにある小さな机に開かれたままのノートがあった。ミサの苗字までが書かれていて血まみれだ。

「ミサ、ノートを持ってきてくれ」

 ミサは黙ってノートの方へ歩いていった。

816: 2010/02/19(金) 20:41:04.04
《74》
『ルパン、スピーカーにして会話をこちらにも聞かせてください』

 ルパンは竜崎の言うとおりに携帯をスピーカー通話にして窓枠に置いた。

「竜崎と協力していたのか・・・?ルパン・・・ノートが欲しかったんじゃないのか・・・?」

「ああ・・・最初はな。でも気が変わったんだよ。お前さんを見てたらよ、こんなものは人間がもってていいもんじゃねぇって気がしてなぁ~」

「警察でミサをめぐって攻防していたのも・・・?」

「ぜ~んぶお前を安心させるためにやったおれと竜崎の演技だぜぇ、迫真の演技だったろう?」

『火口のノートを差し上げるとは言いませんでしたけどね』

「ま、まぁ、それは済んだことじゃな~い、おれの計画には必要だったんだよ。竜崎もこればっかりは協力してくれなかったろう?ニッヒヒヒ・・・」

「ふふふ・・・ルパン・・・犯罪者のお前には理解できないか・・・?世の中の弱い人たちには必要なんだ悪人を裁く・・・僕が・・・キラが・・・」

「・・・・・・」

『ルパン、すぐに捜査員がそちらへ向かいます。それまで確保をお願いします』

 ルパンはそれには答えずライトに語りかけた。

「ライト・・・最後のチャンスをやろう。所有権を捨てて記憶を消し、ミサと一緒にどこかでひっそり暮らせ。おれが手引きしてやる」

『ルパン・・・!!』

 ミサがルパンを見つめ、ライトを見つめる。外に雨が降り始めた。

819: 2010/02/19(金) 20:44:55.66
《75》

「み・・・見逃してくれるのか・・・?僕達を・・・?」

「ああ、だからお前たちはキラとしての記憶を捨てろ。ノートは2冊ともこの場で処分する」

「うっ・・・くっ・・・!!ルパン・・・さん!!ルパンさん・・・あっ・・・ありがとう・・・」

『ルパン・・・!?何を言っている!!よせ!!』

「悪いな竜崎、ライトは確かにキラだ。・・・だが、一度だけチャンスをやってくれねぇか?」

(くくく・・・くくく・・・馬鹿かこいつ・・・とんだ甘い男だ。この期に及んで僕に情けを・・・)

 ライトは感涙に咽ぶふりをしながら腕時計の竜頭を4回ひいた。カシャン、と裏蓋がひらいだ。

 銃声。ライトの足が撃ち抜かれた。

「ぐああああああああああああああああっ・・・ああ・・・!!」

「救えねぇやつだな、馬鹿野郎・・・」

 その様子を見ていたミサがライトに語りかけた。

「ライト・・・」

823: 2010/02/19(金) 21:05:35.14
《76》

「わたしライトに利用されてるのはわかってたよ・・・でもいつかは好きになってくれると思ってた・・・」

「・・・?・・・」

 血走った目のライトがミサの言葉に耳をかたむける。血まみれでどこまで話を聞けているかはわからない。

「でも結局駄目だったね・・・でもさ、ここじゃあないどこか別の世界ではミサとライトは幸せになれるかも知れないよね」

「い・・・いったい何を・・・?」

 ぜい、ぜい、と息を切らしながらライトはミサに訊ねた。ミサがノートをライトに見せた。ノートには小さな相合い傘が書かれている。

 傘の下には夜神月と弥海砂の名前が書かれていた。

825: 2010/02/19(金) 21:06:59.71
《77》

「うわあああああああああああああああっ!!」

 ライトの顔が恐怖で蒼白になりながら後ずさりする。ルパンがノートをミサから奪い取る。

「ば・・・ばかヤロー!!・・・ミサ!!」

 ルパンは慌ててノートの書き込みを切り取ってびりびりに破いて踏みつけた。ライトは放心している。

「・・・もう遅いよ、ルパン。デスノートに名前を書かれたらもう何をしても無駄なの」

「なんでだぁ馬鹿!!なにも氏んじまうこたぁねぇだろう!!ミサ、おい・・・氏ぬなよ!!」

「あ~あミサ、ルパンを好きになればよかったなぁ~・・・えへへ」

「ミサ・・・」

 ごめんね、と言いながらミサが崩れ落ちた。ルパンが支えるがその身体はもう弛緩しきっていた。ほぼ同時にライトが痙攣して氏亡した。
ルパンは一度ミサを強く抱きしめた。

827: 2010/02/19(金) 21:10:21.67
《78》

 相沢達が乗り込むと管制塔にルパンの姿はなかった。ただライトの亡骸にミサが寄り添うようにもたれかけられていた。
心なしか弥海砂の表情は幸せそうに見えた。やりきれない想いが相沢の胸を突き抜けた。

「竜崎、夜神月と弥海砂の氏亡を確認いました・・・ルパンの姿はありません」

『ノートはありますか?』

「いえ・・・見当たりません。調査した後もう一度連絡します」

『よろしくお願いします』

828: 2010/02/19(金) 21:13:16.39
《79》

 雨上がりの夕暮れの海岸沿いを赤いアウディが走っている。運転しているのは不二子だ。

「どーなってんのよ!なんでノートが2冊ともないのよ!!」

「だ~って~しょうがないじゃない。キラが2冊とも燃やしちゃったんだもんよ~」

「本当に!?どこかにこっそり切れ端でももってんじゃないの?だしなさいよー!!」

「そんなキラみてぇな真似しねぇよおれはぁ~」

 次元と五右衛門は後部座席でやれやれ、といった感じでため息をついた。
ルパンはタバコに火をつけようと懐に手を入れて何かに気づくと不二子の足ごとブレーキを踏んだ。

「ちょっと危ないじゃない!なんなのよぅ!」

「悪りぃ、ちょっくらお小便タイム~」

「んもう!!下品ね!!」

831: 2010/02/19(金) 21:14:59.89
《80》

 ルパンは車から離れて海岸にたった。落ちていく夕日を眺めてタバコに火をつけると車から見かけたレムがこちらに向かってきた。。

 懐から一枚の紙を取り出す。レムが渡してきたメモ、──デスノートの切れ端だ。
切れ端にはノートはミサが隠し持っている。ノートを盗み、ノートの出所は秘密にしておくこと。約束が守られなかった場合お前は氏ぬ、と書かれている。
最後の一文は竜崎に教えたようにこのノートはデスノートである、とある。

 そしてそのひとつ手前の一文には竜崎・・・Lの本名と思われるものが綴りを逆にして記してある。

「わりぃなぁレム。約束、守れなかった・・・」

「いいや、お前は良くやってくれたさルパン・・・」

 ルパンがノートの切れ端をレムに差し出した。レムは首を振って受け取らなかった。
ルパンはメモに火をつけて燃やした。灰が空舞って海に消えた。 

「それではさらばだルパン三世・・・私は氏神界から・・・悪人を裁く。ミサの代わりにな」

「ああ・・そうしてやってくれ・・っておれは勘弁してくれよぉ?レム」

 ふっ・・とレムはわずかに笑ってどこかへ飛んでいった。

832: 2010/02/19(金) 21:17:21.80
《81》

 車に戻る途中電話がかかって来た。竜崎だった。

『ひどいですルパン・・・ノートを処分するにしてもひとりで勝手に燃やすなんて』

「ご、ごめんってば竜崎ちゃ~ん。いやあなんつーか・・・いたたまれなくてよぉ~」

 少しだけ間があった。

『・・・ひとつ借りができましたルパン』

「ニッシッシ・・・いいのかぁ?Lが泥棒に貸しなんて作って」

『私があなたを捕まえた際には情状酌量を考えなくもないです』

「な・・なんだよ!?捕まえるって」

『ルパン、次は私が勝ちます』

「おう、捕まえられるもんなら捕まえてみやがれぇ。ヌフフ」

 車から次元がルパンを呼ぶ声がした。

「おーい、ルパン!!とっつぁんがこっちに向かってるらしい!!早いとこズラかろうぜ!!」      ──了

833: 2010/02/19(金) 21:18:32.73

835: 2010/02/19(金) 21:18:43.75
乙!
ミサがちゃんとヒロインしてたな、そういう意味ではルパンっぽい

839: 2010/02/19(金) 21:21:44.78
乙!

848: 2010/02/19(金) 21:34:55.03
おお・・やっぱ読んでる人いたんだな。投げ出さなくてよかった・・

865: 2010/02/19(金) 22:44:58.98
面白かった乙

869: 2010/02/19(金) 23:00:17.58
天使の策略のルパンたちと銭形って女ばっか100人以上頃してるよねw
自分の中では生きていた魔術師と並んで黒歴史

引用元: ルパン「なぁ次元、デスノートって知ってるか?」