1: HAM ◆HAM/FeZ/c2 2009/12/20(日) 10:22:01.24
?「こんばんは、お嬢さん」

女「??」

女「こんばんは、どうしたの??あなたもここの患者さん??」

?「僕は、神です」

女「はえ??」

神「僕は、神です」

2: 2009/12/20(日) 10:25:25.14
女「あっれー飲みすぎちゃったかな…神様でてきちゃった…」ブツブツ

神「お酒の飲みすぎは良くないよ」

神「というか、ここ病室だよね??没収」ヒョイ

女「え、君、誰だって??」

神「だから、神だよ。はじめまして」

女「あっれーおかしいな…幻覚かな」ブツブツ

神「ちゃんといるよ、ここに」

女「いや…仮に神様だとしてもさ、普通おじいさんでしょ」

女「君まだ中学生くらいでしょ」

神「あーこれは人の体を借りてるからね」

神「一から自分の体作るのはちょっと面倒くさいんだよ」

3: 2009/12/20(日) 10:28:13.65
女「だからってねー君みたいな子どもが神様だとか言ってもねー」

女「なんか証拠ないのー証拠」

神「んー証拠ねえ」

女「あ、神様ってさ、この世界を全部作ったんだよねえ」

神「そうだよ」

女「じゃーさ、その辺の話聞かせてよー」

神「いいよ」

神「でもちょっとその話し方やめてくれないかな」

女「酔ってんだもん。しょうがないでしょーう」


5: 2009/12/20(日) 10:33:04.62
女「あ、でもその前にさ」

神「うん??」

女「なんでここに現れたのよう」

女「普通神様って空の上にいるんじゃないの」

神「あー」

神「僕はね、本当は空にもいないんだよ」

女「そうなの??」

神「ふわふわと意識だけがあるんだよ。だからもともと体もないの」

女「へえ」

女「幽霊みたいなもの??」

神「そうそう」

神「まあ幽霊なんて本当はいないんだけどね」

女「まじで!!」


6: 2009/12/20(日) 10:37:08.60
神「信じてたの??」

女「見たことあるもん!!」

神「あーそれ幽霊じゃないね。バグだよ」

女「バグ??虫??」

神「じゃなくって、プログラムのバグ」

女「意味分かんなーい」

神「この世界はさ、僕が作ったゲームみたいなものなんだよ」

女「ゲーム??」

神「ちょっとくらいやったことあるでしょう」

7: 2009/12/20(日) 10:41:06.91
女「まあちょっとくらいならね」

神「ゲームやってるときってさ、ゲームの世界の運命は自分が握ってるよね」

女「まあコントローラー握ってるもんね」

神「君が好き勝手にその世界を動かすわけじゃない」

女「まあそういう感じよね」

神「それと、同じようなものだよ」

女「じゃあ私は登場キャラ??」

神「そうそう」

女「一応意志あるわよう」

神「本気出したら操れるけどね」

女「まじで!!」

8: 2009/12/20(日) 10:45:41.11
神「例えば、ちょっといじれば君を淫乱にもできるし殺人狂にもできるよ」

女「ちょ、やめてやめて!!」

神「しないって」

女「…」ホッ

神「普段もほとんど眺めてるだけだよ」

女「ふーん」

神「でも時々バグが起こる。完璧じゃないからね」

女「それが幽霊なの??」

神「そうそう。人間未満の物体の登場」

女「人間未満…なにその単語、怖い」


9: 2009/12/20(日) 10:50:06.99
神「大体はオートで処理してくれるんだけど、稀に人間が出会っちゃったりするから困ったもんだ」

女「へえーそういう仕組みなの」

神「で、えーと話を戻すと…」

女「なんで現れたか??ってこと」

神「あ、そうそう」

神「まあ単純にね、君に興味を持ったからだよ」

女「…」

女「へ??」


10: 2009/12/20(日) 10:56:53.97
神「だからちょっと会いに来たってわけ」

女「はあ…」

女「え、なに、究極の選択とか迫られちゃうの!?」

女「人類を滅ぼすか、自分が氏ぬか、みたいな」

神「いやいや、そんなことしないって」

女「まあどうせ、あとほんの少しの命だけどね」

神「だから、お酒を??」

女「そうよ。飲まなきゃ、やってらんない」


11: 2009/12/20(日) 10:59:31.85
女「ちょっと体調が悪かったから病院に来ただけなのに」

女「『明日から入院してください』だって」

女「それでなんやかんや調べられた揚句に『快方に向かってます』って」

女「じゃあこのチューブの束はなんなのよって」

女「ベッドに縛り付けてなにが快方なのよ」

女「もうきれいな景色も見れやしない」

神「…そっか」


12: 2009/12/20(日) 11:05:18.03
女「なに、奇跡でも起こして、病気を治してくれたりするの??」

神「いや、残念だけど、人の氏だけは僕にも操れないんだ」

女「なーんだ。まあ、期待してなかったけどねえ」

女「じゃあ、私なんかに会ってどうすんのよう??」

神「んー言葉の意味そのままなんだけどなあ…」

女「興味を持ったって??」

神「そうそう」

女「え…つまり、私に惚れたの??」

神「まあそれに近い」


14: 2009/12/20(日) 11:09:03.45
女「…いやいやいやいや」

神「…」

女「ない、ないない」

神「…」

女「やっぱ飲みすぎたあ。神様が私に惚れたってさ、あはは」

神「いや、別に君に会ってどうこうしようってんじゃないよ」

神「『好き』って気持ちもよくわからないし」

女「そうなの??」

神「いまだによくわかんないよ」

15: 2009/12/20(日) 11:15:10.76
神「よく人間は『好き』っていうけどさ、実際のところどういう気持ちなの??」

女「…」

女「えーとね…楽しくってウキウキするっていうか」

女「胸のあたりがきゅっとなるっていうか」

女「熱いっていうか、なんかそういう感じ」

神「…わかんないw」

女「私にもよくわかんないわよ!!」


16: 2009/12/20(日) 11:21:18.81
神「恋したことあるの??」

女「あるわよ、人並みにね」

神「どんな??」

女「相手は会社の先輩よ。ちょっと優しくしてもらってね、ふらふら~って」

神「ふらふらしたの??」

女「なびいちゃったの」

神「そんなもんなの??」

女「一回好きになったら大変よー」

女「ずっと目の端っこで追いかけてるんだから」

神「へえー」

女「見てるだけで楽しいっていうか…」


18: 2009/12/20(日) 11:31:03.45
女「あ…」

神「??」

女「…」

神「どうしたの??」

女「…あのさ」

神「ん??」

女「私のこと、好きなんだよね??」

神「まあ、そうなんだろうね」

女「じゃあ私のことどんだけ覗いたの??」

神「ぶふぉあ!!」


19: 2009/12/20(日) 11:37:13.69
女「どんだけ??」

神「いや、ちょ、そんなことしてないk」

女「嘘!!絶対覗いてる!!絶対絶対いろんなところ見てる!!」

神「声大きいって!!」

女「やー!!もー!!変態!!変態!!」

神「あーもう、うるさい!!」

女「…」

神「…急に黙って、どうしたの」

女「うおえろろろろろろろろ」ビチャビチャ

神「うおおおおい!!」


20: 2009/12/20(日) 11:42:44.75
女「ごめん」フキフキ

神「びっくりしたー」

女「ちょっとスッキリ」

神「そりゃあ良かった」

女「…」

神「覗いてないからね」

女「本当でしょうね」

神「そういう、あの、危ないところは」

女「危ないってどこよ!!」


21: 2009/12/20(日) 11:49:17.10
神「いやあの、お風呂とか、トイレとか、一人で…とかそういうのは絶対に」

神「うん、大丈夫」

女「…『一人で』??」

神「う、あ」

女「一人で!!何よお!!」

神「いやいや、あのね」

女「うわああああああああああああああん。もうお嫁にいけないー」

女「一人でして何が悪いってのよー!!」

神「ちょ、だから声大きいって」

女「私だって寂しいってのよー!!」

女「…」

神「…あ、やばい??」

女「う、やばうおえろろろろろろろろ」ビチャビチャ

神「うおおおおい!!」


22: 2009/12/20(日) 11:54:57.89
女「ふうふう」

神「落ち着いた??」

女「うん」

神「まあ冗談は置いといて」

女「うん」

神「君に興味を持って、ここに来たからにはちょっと話が聞きたいな、と」

女「うん」

神「いいかな??」

女「うん」

神「聞いてる??」

女「うん??」

神「…」

女「水が欲しい」



日曜の昼間でもやっぱ過疎か…

24: 2009/12/20(日) 12:00:09.38
神「はい」

女「ペットボトルか」

女「神様だったら何もないところからじゃーって出すかと思ったのに」

神「なにか作るのってエネルギーかなりかかるんだよ??割に合わない」

女「お金は??」

神「この少年のポケットから借りた」

女「悪魔じゃん」

神「違う、神です」

女「でも中身は悪魔じゃん」


26: 2009/12/20(日) 12:08:09.91
女「ていうか、今更だけどその少年っぽい姿が違和感バリバリなんだけど」

神「まあそうでしょうね」

女「他になかったの??」

神「入院患者さんの老人はほとんどもう寝てたから…」

女「起きてないと乗っ取れないの??」

神「そういうこと」

女「まあいいや、神様っぽい話してよ。SFみたいなさ」

神「うーん」


27: 2009/12/20(日) 12:11:20.72
女「結局世界はどうやって作ったの??」

神「君はどういう風に認識してるの??」

女「なんか、7日で世界を作ったって話、あるよね」

神「ああ」

女「1日目はなにを作って、2日目はなにを作って…みたいな」

神「はいはい」

神「ま、僕からしたらふざけんじゃないよって話」

女「そうなの??」

神「そうなの」

28: 2009/12/20(日) 12:15:20.26
神「星ひとつ作るのってめちゃめちゃ大変なんだから」

女「周りの星も作ったの??」

神「いや、もうめんどくさかったからデフォルト」

女「デフォルト??」

神「基本の枠組みで済ませたってこと」

女「基本なんてあるの」

神「言ったでしょう、ゲームみたいなもんだって」

神「僕以外にも、世界を作ってる神様はたくさんいるんだよ」

女「…わけわかんない」

30: 2009/12/20(日) 12:25:13.46
神「一昔前に、RPGを作るゲームが流行ったじゃん」

女「ああ、はいはい」

神「あれを君がやってるとこ想像して」

女「うんうん」

神「でね、隣の家でも同じゲームをやってる人がいるのね」

女「うんうん」

神「そういう感じ」

女「はあ…わかったようなわからんような」

31: 2009/12/20(日) 12:29:04.72
神「君のやってるゲームの世界の神様は、君だよね」

女「うん」

神「君が自由にキャラを作って動かしている」

女「うん」

神「隣のゲームの世界の神様は、隣の家の人だよね」

女「うん」

神「その二つの世界は交わることなく、同時に進行している」

神「だから、今も別の世界がどこかにあるし、そこでの神もいるわけ」

女「で、この世界では、神様はあんたってわけ」

神「そういうこと」

33: 2009/12/20(日) 12:37:51.24
神「この日本という国には、八百万の神っていう考え方があるけど」

神「実際それに近いのかもしれないね」

神「でもまあ、神同士が関わったりすることはないけれど」

女「別の世界と交わることは絶対にないの??」

神「今のところそういうバグは聞いてないなあ」

女「ふーん」

神「でも実際あのゲームを見た時は、人間も同じこと考えるんだなーって思ったよ」

女「へえー」

女「え、世の中の全部、あんたが作ったんじゃないの??」

神「違うよ。人間が自由に作ってるものだっていっぱいあるんだよ」

女「そうなの??」

神「そうなの」

34: 2009/12/20(日) 12:44:03.27
女「え、山とか海とかは??」

神「あれは僕が作った」

女「滝とか湖とかは??」

神「あれも僕が作った」

女「火は??雷は??雲は??雨は??」

神「僕が作った」

女「じゃあ人間は??」

神「僕が作った」


35: 2009/12/20(日) 12:51:21.62
女「猿から進化したんじゃないの??」

神「それは人間の妄想だよ」

女「え…でもそういう化石とか証拠とかさ」

神「それらしい証拠となるものは僕がばらまいておいたけどね」

神「ビッグバンも恐竜も実際はなかったんだよ」

神「人間はまず、自分たちのルーツを探った。興味深かったよ」

女「へえー」

女「…でもさ、私なんかがこの話知っちゃっていいの??」

神「いいのいいの」

38: 2009/12/20(日) 12:55:56.16
女「記憶消されたりするの??」

神「いや」

女「じゃあ私自身が消されたり…」

神「いや」

女「じゃあなんで??」

神「どうせ、誰かに話したところで信じる人はいないでしょ」

女「そっか」

40: 2009/12/20(日) 13:00:46.52
女「記憶消されたりするの??」

神「いや」

女「じゃあ私自身が消されたり…」

神「いや」

女「じゃあなんで??」

神「どうせ、誰かに話したところで信じる人はいないでしょ」

女「そっか」

43: 2009/12/20(日) 13:06:28.84
女「あ、モアイ像は??」

神「あれは僕が作った」

女「あれもなの」

神「あの時の人間の驚きったら、面白かったなあw」

女「いきなり出現させたの??」

神「そう。朝起きたら島中に顔がごろごろって」

女「そりゃあ驚くわあ」

45: 2009/12/20(日) 13:13:07.16
女「あれ、物を作るのは大変なんじなかったの??」

神「そうだよ。だから、コツコツ作って隠しておいて、完成してからどーんって」

女「そんなこともできるの」

神「でもこの世界にあるだいたいの文明は、人間が独自に作ったものなんだよ」

女「すごいね、人間って」

神「僕にも思いもよらないものを作るんだから」

女「たとえば??」

神「ピラミッドとか」

女「あー」

47: 2009/12/20(日) 13:18:30.19
女「厳密には人間の歴史はどこから始まったの??」

神「原始人って呼ばれてるのが、一応最初かな」

女「じゃあマンモスは存在したんだ」

神「そうそう」

神「あの時もし原始人がマンモスに勝てなかったら、この世界に人間はいなかったかもね」

女「…確かに」

神「火を教えてあげたら、すぐにマスターしたけど」

女「あんたが教えてあげたの??」

神「そう」


48: 2009/12/20(日) 13:34:40.63
神「それに、人間が思ってるよりも原始人は賢かったんだよ」

女「へえー」

神「今と大して変わらない。身の回りのものが少なかっただけで」

女「そうなの」

神「火を教えてあげたら、あとはもうほとんど見てるだけだったなー」

神「どんどん発展させていっちゃって」

女「…」

女「…あのね、私ね、今はカメラマンの仕事をしてるんだけど」

女「まあ、もう仕事はできないんだけど」

神「うん…知ってる」

女「風景専門なのね」

神「知ってるよ」


49: 2009/12/20(日) 13:40:11.29
女「私が美しいと思って撮ってる風景は、全部あんたが作ったものなの??」

神「まあ、そうだね」

女「じゃああなたのおかげで、私は仕事があるし美しい風景に出会えるのね」

女「感謝しなくちゃね、あなたに」

神「いいよ、別に」

女「それに私が氏んでも、私が撮った美しい風景はずっと後世に残すことができるものね」

女「ありがとうね」

神「感謝なんかいらないよ。僕は『美しい』っていう感情もよくわからないんだ」

女「あら、もったいない」

50: 2009/12/20(日) 13:44:13.33
神「適当に作ったんだ」

女「でも美しいわよ、自然の風景って」

神「人間がそれを好きなのはわかるよ。でも僕とは違う感覚なんだよ」

女「もったいないわねえ」

神「人間独自のものなんだろうね。僕は感情までは作ってないから」

女「私のことは、美しいとは思ってくれないの??」

神「うーん、どうだろう。とても惹かれるけれど」

女「普通好きな人のことは美しいとか可愛いとか格好良いとか…」

神「わかんないなー」

51: 2009/12/20(日) 13:47:43.36
神「あ、でも君の名前はいいと思う」

女「そう??」

神「うん、美しい、と表現していいのかな」

女「自分ではあんまり好きな名前じゃないんだけど」

女「あなたには名前はないの??」

神「ないねえ。必要ないというか」

女「そっか。そうだよね」

神「この少年の名前は…というらしいけれど」

女「へえ」

神「この名前には別に何も感じないな」

女「まあ一般的ね」

53: 2009/12/20(日) 13:52:32.94
女「ねえ、言葉はあなたが作ったの??」

神「言葉ね…。声を発する器官は僕が作ったと言えるけれど」

神「実際に言葉でコミュニケーションし始めたのは人間自身かな」

女「そうなんだ」

神「人種によって使う言葉が違うのは面倒だと思ったんだけど」

神「まあそれも面白いかと思ってそのままほっておいた」

女「もし言葉を統一しちゃっていれば、英語教師が職を失うわ」

神「そうだね」

女「危ないところだったな」

神「どういう意味??」

女「お父さんがね、英語教師なの」

神「そっか。そりゃ危ないところだったな」

54: 2009/12/20(日) 13:58:07.89
女「ねえ」

神「ん??」

女「実際私のことどれだけ知っているの??」

神「そんなに知ってることはないよ」

女「神様なのに??」

神「神様なのに」

女「でもふわふわと見てるわけでしょう」

神「まあそれで目について、気になったわけだからね」

女「プライバシーもくそもないわねえ」

神「そうだね。ごめん」

女「まあ、あんまり恥ずかしいとも思わないかな…」

神「さっきは叫んでたくせに」

女「落ち着いたらなんか平気に思えたの」

57: 2009/12/20(日) 14:05:46.67
女「あ、でも、入院してからは一人で…とかそんなことしてないからね??」

神「うん、知ってるよ」

女「え??」

神「あ、いや、うん、大丈夫」

女「なにが大丈夫よ、ばか」

神「入院は、いつから??」

女「一か月くらい前から、よ」

神「病名は??」

女「知らない。でも、あとちょっとで氏ぬんだって」

59: 2009/12/20(日) 14:12:24.89
神「誰が、そんなことを??」

女「みんなひそひそ、言ってるわ」

神「お医者さんに言われたわけじゃないんだろ??」

女「わかるわよ。みんな余所余所しいんだもの」

神「後悔は、ない??」

女「あるわよ、たくさん」

女「神様を呪ったことも、あるわ」

神「…ごめんね」

60: 2009/12/20(日) 14:17:36.53
女「いいの、あなたが悪いんじゃないのはわかったし」

女「運命なのよ、仕方ないわ」

神「それにしても、お酒なんてどこから…」

女「お父さんがね、こっそりと」

神「それは父親としてどうかと思うけれど…」

女「残り少ない人生だもの」

女「娘の言うことは何でも聞いてあげようって思ってるんじゃないかしら」

神「そっか。じゃあお父さんは正しいんだろうね」

女「楽観的なのねえ、神様なのに」

神「いいんだよ、神様は楽観的じゃなきゃあ」

女「そうね」

61: 2009/12/20(日) 14:22:46.66
神「ちなみにね」

女「うん??」

神「今、ここら一帯の人間は、全員眠ってるんだけど」

女「うん」

神「決して起きないようにしてある。いわゆる、仮氏状態に」

女「え??」

神「君以外には、この姿を見られたくなかったからね」

女「へえ…大丈夫なの、そんなことして」

神「どうかな。こんなことするの、初めてだからさ」

62: 2009/12/20(日) 14:28:18.11
女「…どういうリアクションを取ればいいかわからないわ」

神「まあね。僕も言ってみて、だからどうだっていう話だけど」

女「あなたとのお話が終わったら、元に戻るの??」

神「戻るはずだよ」

女「あなたに会う直前に、徘徊してる人がいたようだけれど」

神「すぐに自分の部屋に向かわせて、眠らせれたと思うよ」

女「廊下で寝るわけじゃないのね。ちょっと安心したわ」

神「そんなことになって君をびっくりさせたくもないしね」

63: 2009/12/20(日) 14:36:07.74
神「つまり、ここら一帯で生きているのは、僕と君だけなんだ」

神「鼓動が、呼吸が繰り返されているのは、僕と君だけなんだ」

女「ふうん」

神「僕と君だけのために、世界は回り続けているんだよ」

女「安い口説き文句のようねw」

神「でも真実だよ」

女「ふふ、あなたが言うとなんだか信じてしまいそう」

神「でしょう」

64: 2009/12/20(日) 14:40:26.22
神「人間はロマンチックなことが好きだろう??」

女「そうね。私も、嫌いじゃないわ」

神「本気を出せば、ここら一帯を廃墟にも宇宙にもできる」

女「廃墟はいやよ」

神「冗談だよ。もちろん、僕だっていやだよw」

女「…」

女「…ねえ」

65: 2009/12/20(日) 14:45:00.12
神「ん??」

女「誰かが、歩いてる音がしない??」

神「…本当だ。失敗したかな」

女「警備員さんかしら」

神「シッ静かに」

ペタ、ペタ、ペタ…

女「行っちゃったわね」

神「うまくいかなかったかなあ」

女「まあ、見つからなかったし、いいんじゃない」

66: 2009/12/20(日) 14:49:49.81
女「ねえ」

神「うん??」

女「夜景を見て、美しいと感じる??」

神「別に、思わないね」

女「家族愛を、美しいと感じる??」

神「どうかな、特に何も感じない」

女「勝利を渇望し、全力でプレーするスポーツ選手を、美しいと感じる??」

神「わからないよ」

68: 2009/12/20(日) 14:54:48.49
女「世の中には、美しいものがたくさんあふれているわ」

神「うん」

女「もちろん、感じ方は人それぞれだけれど」

女「でも、たくさんあることには違いないわ」

神「そうだね」

女「あなたが作ったのよ」

神「…いや、でも僕は」

女「あなたが作った、人間が作りだしたのよ」

女「奇跡ね、それも」

神「うん、ありがとう」

女「お礼を言うのはこっちの方だわ」

神「そんなことないさ。僕も、最後に君に出会えて、良かったよ」

女「最後??」

神「あ、いや、こっちの話」

69: 2009/12/20(日) 15:00:36.14
女「もう少し、お話できないの」

神「もう少しだけなら、大丈夫だよ」

神「でもあまり長くこの体でいると、元に戻れなくなっちゃう」

女「魔法が解けちゃうのね」

神「解けちゃうというか…」

神「解けなくなっちゃうというか…」

女「シンデレラみたいね」

神「はは」

女「私が、王子さまで」

70: 2009/12/20(日) 15:08:40.98
神「君の病気は、僕には治せないけれど」

女「うん」

神「君が来世で素敵な人生を送れるようには、できるよ」

女「本当!?」

神「うん、本当」

女「どんな??どんな人生が送れる??」

神「そうだね…」

神「優しいお父さんと、お母さん」

女「うん」

神「裕福で、庭は大きくて、白い大きな犬がいて…」

女「いいわね」

71: 2009/12/20(日) 15:15:32.42
神「きょうだいは欲しい??」

女「お兄ちゃんが欲しかったなあ」

神「じゃあお兄さんのいる家に生まれて」

女「でもね、別にお金持ちじゃなくても、賢くなくても、きれいじゃなくてもいいの」

女「やさしい心の持ち主に囲まれていたら、それだけで幸せでしょうね」

神「そっか」

女「だから私は今、幸せよ」

72: 2009/12/20(日) 15:22:27.65
神「…そっか」

女「もうすぐ氏んじゃうけど」

女「お父さんもお母さんも、優しいわ」

女「お兄ちゃんはいないけれど、周りの人はみんなやさしい心の持ち主だったな」

神「…」

女「神様にも出会えたしね」

73: 2009/12/20(日) 15:30:39.82
神「え…??」

女「すっごく面白い話が聞けたわ」

神「…」

女「私が私じゃなかったら、あなたは来てくれなかったでしょう??」

神「そうだね」

女「いい人生だったわ。たくさんのきれいな風景にも出会えたし」

神「…」

女「まだ若いうちに氏ねるし」

女「美人薄命ってね、あはは」

77: 2009/12/20(日) 15:37:38.15
神「きっと、来世は美人長命、にするからね」

女「うん」

神「もっともっときれいなものに出会えるようにするからね」

女「うん」

神「ごめんね、もうそろそろ行かなきゃ」

女「うん、私も、もう寝ることにするわ」

神「もうお酒はだめだよ」

女「今日はもう飲まない!!」

神「今日はって…」

女「えへへ」

79: 2009/12/20(日) 15:46:53.22
神「あ、もし明日から病院内でこの姿を見ても、この少年は何も覚えてないからね」

女「うん」

神「この話は、内緒ね」

女「ポケットからお金が減ってることも…内緒ね」

神「うん」

女「神様がネコババした、なんて知ったらびっくりするでしょうねえ」

神「あはは、それはシャレにならないなあ」

80: 2009/12/20(日) 15:51:52.70
女「じゃあ、おやすみなさい」

女「あなたと、こんな時間にまだ起きてくれていたその少年に感謝するわ」

女「体を神様に貸してくれて、ありがとうってね」

神「うん」

神「じゃあ…ね」

女「うん、来世でまた、会ってね」

神「うん、きっと」

神「おやすみ」

83: 2009/12/20(日) 15:58:31.90
―1ヶ月後 ナースステーションにて―

「ねえ、聞いた??」

「なにを??」

「特別管理棟の505号室の女の人、昨日亡くなったんだって」

「ああ、あの…。やっぱりウイルスには勝てなかったのかしら」

「ええ。最後まで治療法が見つからなかったそうよ」

「まだ若いのに…この世に神様なんて、いないのね」

「ええ、本当にね」

「本人には知らされてなかったの??」

「ええ。ご家族にも堅く口止めをしてたみたい」

「そう…」

「でもね、顔はとても安らかで、晴れやかだったそうよ」

84: 2009/12/20(日) 16:02:31.03
「昨日といえば、501号室の男の子、わかる??」

「ああ、あのゲームの好きな男の子ね」

「あの子も昨日、同じ頃に亡くなったそうよ」

「あの子も…!?まだ若いのに…心が痛むわね」

「彼も同じ病気だったわよね」

「ええ。この病院に2例だなんて、とても珍しいってドクターが言ってたわ」

「彼の方はまだ軽いと言っていたのに…」

「同じ日に亡くなるなんてね…」

「彼もね…」

「え??」

「彼もとても安らかで、晴れやかな顔で亡くなったそうよ」



★おしまい

85: 2009/12/20(日) 16:07:45.49


この話のシチュと美しい名前のシチュがところどころ被ってて
先入観入ってしまったけどよかったよ

87: 2009/12/20(日) 16:08:39.45

きゅんってした

92: 2009/12/20(日) 17:12:06.82
こういうの大好き

引用元: 神「世界は二人のために回り続けている」