1: 2013/01/15(火) 01:02:12.88
~14ばんどうろ途中~
ザー
N「ブラックシティを出たときは星も見えていたのに」

N「ひどい雨だ・・・」

N「海の近くは天気が変わりやすいと言うけど、こんなにすぐ悪くなるなんて――」

N(こんな時間では宿もポケモンセンターも閉まっている・・う~ん、どうしたものか)
ザー
N(冷たい・・冬の雨は本当に応えるな)

レパルダス「ナーォ」カタカタプルプル

N「ごめんね、すっかり濡れてしまったね。もう少し我慢してくれるかい?」

レパルダス「ナー」フリフリ

https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1358179332/

2: 2013/01/15(火) 01:05:55.46
N「ふふ、ありがとう。明かりが付いている家があればいいけど」
ピカッ!
レパルダス「ナ゙ー!」シャー!

N「大丈夫だよ、あれはポケモンの技じゃない。よし急ごう、さあレパルダス走るよ」

レパルダス「ナーオ」シュタッ

~サザナミタウン、押しては返す波の音~
ザザーン
N「どの家も真っ暗・・・まぁ、当たり前か。」

レパルダス「ナーォ」フリフリ

N「え?あ、本当だ。あの家、明かりがカーテンから微かに漏れてる」

N「助かったよ。お手柄だねレパルダス」

3: 2013/01/15(火) 01:10:44.69
レパルダス「ナオーン」

N「そっか、やっぱり君も野宿は嫌なんだね。いつお我慢してもらってすまないね」

レパルダス「ナーオ」フリフリ

N「ありがとう。さあ、見ず知らずの僕らをあの家の人は泊めてくれるかな?」

レパルダス「ナーォ」タッタッ

~サザナミタウン外れの民家~
N「すみません・・」トントン

・・・・

N(反応がない。警戒されているんだろう。ゴーストポケモンと勘違いされているかも)

N(これはまた野宿決定だな。サザナミ湾の方に洞窟でも探しに行くか・・・)

ガチャッ
女性「どなた?」

4: 2013/01/15(火) 01:14:09.28
N(ドアが開いた。ゆるくカールのかかった長髪の若い女性・・・杖をついている、盲目なのか・・?)

N「急な雨に襲われてしまいました。もしよろしければ雨宿りをさせていただけないでしょうか」

レパルダス「・・・」クシクシ

女性「もちろん。狭い部屋ですがよろしければどうぞ。そのレパルダスも一緒に入って。身体を拭くタオルを持って来ますから玄関で待っていてくださいね」ニコリ

N「ありがとうございます。とても助かります」

N(助かった・・・でもなぜレパルダスがいると分かったのだろう?)ガチャッ


5: 2013/01/15(火) 01:18:26.20
~サザナミタウン 外れの民家~
N(身体もすっかり乾いた。風邪をひかずに済んだし本当に助かった)
パチパチ
レパルダス「ファ~」ゴロゴロ

N(小さな暖炉の中で木が燃えている。部屋には小さな丸い机、ホエルコの模様が彫ってある椅子が二つ、あとはベットが一つ・・・)

N(とてもシンプルな家だ、彼女は一人で暮らしているのだろうか)

女性「はい、これ。ホットモモンココア」コトッ

N「あ、ありがとうございます。申し訳ありません、急にやって来てこんなにお世話になって」

女性「良いんです。久しぶりの来客だったのでこの子も喜んでるみたい」

ノコッチ「ピロロロ」ポヨンポヨン

6: 2013/01/15(火) 01:21:44.65
N「ノコッチなんて珍しいポケモンをお持ちですね」

女性「皆驚くの。この子は特に色違いだから譲ってほしいってよく言われるわ」

N(ノコッチは希少性の高いポケモン。色違いともなるととんでもない値が付くんだろう)

N(プラズマ団に見つかったならばまず無理やりにでも奪われてしまっていただろう。この人にそんなことがなくて良かった)

N「あの、怖いと思わなかったのですか?」

女性「なにを?」

N「僕のことをです。こんなに遅い時間に訪ねてきた素性も分からない男です。自分で言うのもなんですが・・・」

7: 2013/01/15(火) 01:26:39.41
女性「平気ですよ。あなたの声が優しくて温かかったから。悪い人ではないってすぐに分かりました。私は耳が良いんです、ふふ」ニッコリ

N(歳は僕のいくつか上か。素敵な笑顔だ、不思議とあの子を思い出す)

女性「そういえばまだ名前を言ってませんでした。チサトといいます。よろしくね」

N「僕は・・・」

N「・・僕はNと言います」

チサト「エヌ・・くんというのね。少し変わった名前ね」

N(僕には本当の名前がある)

N(でも、もう必要ない。意味のないものになってしまった)

10: 2013/01/15(火) 01:33:03.20
N(こんなことを今思っても仕方がないのに。でも、あの苦い記憶はいつでも思い出す・・・)

N(またつまらないことを・・話を変えよう)

N「僕がレパルダスを連れていることをすぐに分かったのはどうして?」

チサト「あの子ちょっとのどを鳴らしたからそれが聞こえて」

N「なるほど」ズズ・・

N(ココアが温かい・・・体に染み渡っていくようだ)

N「これ、すごく美味しいです」

チサト「そうでしょう、私の実家がある方では有名なやつなの。遠くから父がたまにここに送ってくれるわ」

N(――父、か・・)

13: 2013/01/15(火) 01:36:06.92
パチパチ

レパルダス「zzz」

ノコッチ「ピロ?」マジマジ

チサト「長旅で疲れているのでしょう。そっとしててあげて」

ノコッチ「ピロロ」ポエンポエン

N「随分と遅くまで起きていらっしゃるんですね」

チサト「今日は不思議と眠れなかったの。それでこの子とゆっくりしながら『誰か来ないかな』って思ってた」

チサト「そしたらあなたが訪ねてきて、まさか本当に誰か来ると思わなかったから嬉しかった。最初はゴースかなにかかと思ったけど」

N「どうしようかと途方に暮れていたところです。助かりました。お蔭で僕のトモダチが風邪を引かずにすみました」ナデナデ

14: 2013/01/15(火) 01:38:21.44
レパルダス「ファ~・・・ナゥ・・ZZZ」

チサト「友達ってそのレパルダスのこと?」

N「そうです。この子は僕の初めてのトモダチで、僕のパートナーです」

チサト「ポケモンのことを友達って言う人と初めて会ったわ。その子のことを大切に思っているのね」ニコリ

N「この子は僕が嬉しい時も悲しい時も一緒にいました。バトルには不慣れだったので殆ど出しませんでしたが、僕にとってトモダチ、いやそれ以上。家族のようなものです」

チサト「そうなのね。ポケモンをそんなに想っている人久しぶりに見たわ」ニコニコ

チサト「あなたの姿が見られれば良かったなぁ」

15: 2013/01/15(火) 01:42:11.34
N「眼を・・」

チサト「昔は見えていたんだけどね。病気にかかっちゃって、それで見えなくなっちゃった」

N「それは・・」

チサト「良いの、今では身の回りのことも一人で出来るし。眼が見えない分微かな音も分かるようになったわ」

N(苦労しただろう。一人で生活できるまで随分と時間が掛かったに違いない)

N(彼女のまぶたは閉じられたまま・・・チサトさんは何色の眼をしていたんだろう)


ゲーチス『この薄汚れた眼をした化け物めっ!』


N「っ!」

レパルダス「ナォ?」

N(また思い出してしまった)

チサト「エヌ・・くん?大丈夫?」

N「いや、大丈夫、大丈夫です」

16: 2013/01/15(火) 01:44:31.37
N「ごめんよ、せっかく寝ていたのに驚かせたね」ナデナデ

レパルダス「ナーオ」フリフリ

N「そう、それよりチサトさんの話を聞かせていただけませんか」

チサト「私の?」

N「あなたは本当に穏やかな顔をしている。なぜそんな素敵な表情が出来るんだろうと。チサトさんの事を知りたい、そう思って」

チサト「そ、そんな、素敵だなんて恥ずかしい///」

チサト「・・・そうね、せっかく来てくれたんだもの。私の話でよければ・・・」

17: 2013/01/15(火) 01:47:23.82
ノコッチ「ピロロロ♪」

レパルダス「ナーオ」

チサト「ふふふ、あなた達も遊んでおきなさい」ニコニコ
パチパチ
チサト「さて、何から話し始めようかしら・・」

チサト「私は元々イッシュの人間じゃないの。ここは父が持ってた別荘の1つ。私の家はジョウトにあったの」

チサト「小さい頃は当時コガネシティのジムリーダーだったアカネちゃんや四天王のワタルさんみたいな強くてかっこいいトレーナーになりたくてね」

チサト「ピクニックガールとしてあっちこっちポケモンと旅をする元気な少女だった」


18: 2013/01/15(火) 01:49:18.40
チサト「そこでは色んな出会いがあったわ。嫌いな虫ポケモンに追いかけられたり、自分のポケモンが迷子になったり、
    泊まるためのお金がなって野宿しそうになりそうになったり・・・全て私の良い思い出」

チサト「バトルは上手くなかったけど、ポケモンたちと力を合わせてバトルするのが楽しかった」

チサト「昔ジョウトのチャンピオンと戦ったこともあるのよ。その時は彼もまだバッチを集めている時だったけど」

N(ジョウトのチャンピオン?たしか隣のカント―地方のジムもすべて制覇した強いチャンピオンだと聞いたことがある)

N(あの子とどちらが強いのだろうか?)

19: 2013/01/15(火) 01:53:15.66
チサト「父が結構大きな実業家でね、いわゆるお嬢様だった私はかなり自由にあっちこっち旅していたわ。
    当時はとにかく元気に歩き回れるのが楽しくてあっちこっち歩いてた」

チサト「こんな楽しい日々がいつまでも続いてほしい、そう思っていたわ」

チサト「でも、ある時父は悪い団体に嵌められてしまった。事業で大きく失敗してお金も騙し取られてしまったの」

N(悪い団体、ね・・・あと数年もしたらプラズマ団もイッシュの人達にそう言われるのだろうな)

N(当然だ・・どんな大義名分があろうとも僕たちがやったことは許されることじゃない)

N(でも僕の今までの人生を使った計画は、トモダチへの想いは・・・)

チサト「それからはもう旅どころじゃなかった。親からお金をもらって旅をするような余裕はもうなかった

チサト「あっちこっちにあった別荘もタンバにあった家も殆ど売り払って夜逃げ同然でジョウトを出たわ」

21: 2013/01/15(火) 01:56:16.68
チサト「それからはカントーやホウエンやシンオウやあっちこっちに逃げ回った。景色を見ている暇なんて全くなかったわ。あんなに苦しい旅はもう2度としたくない」

チサト「持っていたポケモンたちも、もと捕まえた場所に逃がしちゃった。昔はピッピやコンパンやホーホーも持っていたのよ」

チサト「悲しかった。でもこのまま外に出してあげることすらままならず、逃げ回っているだけじゃこの子達が可哀想だと思ったの」

チサト「せめて次に出会うトレーナーはこの子たちを幸せにできるような人であって欲しい。そう願いながら1匹、また1匹と逃がしていった」

N(可哀想な思いをさせたくない・・・)


N『ごめんね、君たちを戦わしてしまって。もう僕の元から去ってもいいよ』

ガントル『ガロッガロッ』

ギアル『ギギギギ』

シンボラー『ピュルロロロ』

N『ありがとう、でもこれ以上いたら君たちを傷つけることになってしまう。だからここでバイバイだ。じゃあね』タタタッ

3匹『・・・・』

24: 2013/01/15(火) 02:02:53.15
N(今となってはあの子たちの気持ちも少しは分かるようになった)

N(あの時の僕は何も見えちゃいなかった。あの子たちは僕を必要としてくれていた。それなのに僕は・・・)


チサト「でも、この子だけはどうしても逃がすことが出来なかった」

ノコッチ「ピロロ」

チサト「あの子は昔父がくれた初めてのポケモンで、ずっと私と一緒に旅をした。あなたのレパルダスと同じでバトルは苦手だから殆ど出さなかったけどね」

チサト「だからどうしても捨てれなかった。この子を捨てると私の今までの体験や思い出もすべてなくしてしまうような気がして」

チサト「それにこの子は珍しいから、もし逃がしたら絶対に悪い人に連れ去らわれるって、そう思ったの」

N(その通りだろう。トモダチを商売の道具のように使っている人も稀にいる)


25: 2013/01/15(火) 02:04:38.15
チサト「しばらくすると思ったより状態が良くなって、両親も前よりビクビクすることが少なくなった」

チサト「私はこの子とずっと遊んでたわ。外に出て友達を作りたかったけど、作ってもすぐにまた次の街に行かなきゃいけなかったから」

チサト「逃げ続けてもう3年が経とうとしていた。私たちはホウエンに4回目の長期滞在をしていて、遂にハジツケタウンという小さな村に住もうかという話になった」

チサト「私は反対した。元々住んでいたタンバの町が好きだったから。押しては返す穏やかな波音に人もポケモンも思わず眠ってしまいそうな、そんなあの町が好きだった」

N(タンバシティ・・・昔ロットが話しているのを聞いたことがある)

N(最初は船の中継地として降り立っただけだったが、あまりに居心地がよく一時はそこに永住しようと考えていたと言っていたな。良い所なんだろう)

チサト「今となっては我儘だったと思う。でも当時の私は自分が住んでいたあの頃に戻りたかった」


26: 2013/01/15(火) 02:08:10.05
チサト「もしかしたら逃がしたあの子達ともう一度会えるかもしれない、そんな思いもあった。意地でもジョウトに戻りたかった」

チサト「でも、まだ父の事を追っている人がカントーやジョウトにいるかもしれなくて結局ダメだった。その時私はもう16歳。普通ならもう自分の将来について考えている頃」

チサト「でも私は全くそんなこと考えていなかった、考えれなかった。旅をしたい、早くここを抜け出したい、その気持ちがいつまでも抜けなかった。私はいつまでも子供のままだった」

N(逃げ回り始めて以来、まともに過ごせなかったんだ。無理もない)

チサト「そんなある日私は熱を出した、当時流行った風邪で当時はかなりの犠牲者がでていた。私もかなり危ない所まで行ってね」

チサト「一命は取り留めたけど意識を取り戻した時には私の眼は何も映さなくなっていたわ」

N「・・・・」

チサト「本当の絶望だった。杖を使った病院のトレーニングも全くやる気が起こらなかった」

チサト「もうあの子達にも会えなければ、旅をすることもできない。空も、海も、虹も、大好きなこの子もこの眼で見ることはもうできない」
    
チサト「私は冷たい人形のように、喋りもせず、笑いもせず、虚ろにベットにずうっと横たわっていた。あんなに1日が長いと思わなかった」

27: 2013/01/15(火) 02:11:54.00
チサト「全てが憎くて、めちゃくちゃにしてしまいたかった。でも、その空っぽの私の心を少しずつ埋めていってくれる存在、それがこの子だった」

ノコッチ「ZZZ」
レパルダス「zzz」

チサト「この子は自暴自棄になった私がどんなに怒鳴っても、当り散らして喚いても、泣き叫んでも、虚ろにベットに横たわっていても、どんな時も私の傍に居続けてくれた」

チサト「眼が見えなくてもこの子のすべすべした肌と可愛い声を私はずっと感じていた。次第に現実と向き合い始めて、再び旅に出たいと思うようになった」

チサト「していなかったトレーニングも始めて、杖を使って歩けるようになった。またこの子と旅をしたい、ただその一心だった」

チサト「そして2年前にやっとの思いで、一人で身の回りのことが出来るくらいにまでなってね、父にお願いをしたの。波の音の聴こえる町に一人で住みたいって」

チサト「必氏に父も探してくれて、どうにか古い知人のツテでここを紹介してもらって来たのが1年半前」

N「・・・・・・・」

28: 2013/01/15(火) 02:14:33.78
チサト「もう20歳も超えてしまって、トレーナーとして一から旅をする年齢でもなくなってしまった。でも私はまだ夢を見ているの、色んな街や山や海をこの子と旅する夢を。」

チサト「今でも一応ポケモンを捕まえる練習をしているわ。でもやっぱり耳だけじゃ正確なポケモンの位置を確かめることすら難しい。
    
    一人で旅をするには、まだ私にはいろんなものが足りないの。ポケモンの心を知ることが出来たら良いのに、ってよく思うわ」

N「・・・・」

チサト「でも最近は、もうずっとここで暮らしてもいいかなって思うようにもなってきた」

チサト「サザナミタウンは本当に良い所よ。夏は騒がしいけど、それ以外の時はタンバみたいに穏やかな波音だけが響いている」

チサト「私はこの音を聴いていたら吸い込まれそうになるの。嬉しいことも、辛いことも、悲しいことも、すべて吸い込んで溶けていく」

チサト「そこにはきめ細やかな砂と、青い海があるだけ」

チサト「ここにいてこの子と一緒に歳をとるのも素敵よ。こういう諦めが大人になるという事なのかもしれないわね」

29: 2013/01/15(火) 02:16:44.87
N(嘘だ、チサトさんは嘘をついている)

N(もし本当にそう思っているのなら、あなたはどうしてそんなに寂しそうな顔をしているんだ)

チサト「・・はい、ごめんね。私の話はここで終わり。聞いてくれてありがとう。」

N「いえ・・・」

チサト「そうだな・・今度はエヌくんの話を聞きたいな」

N「僕・・・ですか?」

ノコッチ「ZZZ」
レパルダス「zzz」

チサト「そう、エヌくんの話。エヌくんはトレーナーなの?」

N(何と答えよう・・)

N(何故だかこの人には隠し事をしたくなくなる。本当に不思議な人だ)

N(この人は眼が見えないということが僕をそういう気持ちにさせるのかもしれない)

N「・・・・・・いいえ」

チサト「あら、そうなのね。こんな遅くに歩いていたからてっきりトレーナーかと」

N「・・僕はトレーナーが嫌いでした」

チサト「どうして?」

30: 2013/01/15(火) 02:18:56.00
N「彼・彼女らはトモダチを闘いの道具としてしか見ていない、トモダチが虐げられている・・・そう思ったからです」

チサト「なるほどね・・・でもここの人達はそんなことは決して思っていないよ」

N「そうです。全ては僕の思い違いでした」

N「幼い頃、僕の周りにいるトモダチは皆酷い扱いを受けていました。だからこの子達が悲しい思いをしないように、ずっと笑顔でいられるように・・・そう思ってたんです」

チサト「・・・・」

N「でも、イッシュのどんな街でもそんなことはなかった。実は良く分かっていなかったのは僕の方だった」

N[自分が正しいと勘違いして行ってきたことは、悲しみや憎しみを広げるだけの愚かな行為だった」

N「自分を正しい方向へ導いてくれると思っていた父は、私を息子だと、いや、人だとも思っていなかった」

N「周りから浴びる大きな信頼や信用、それは単に僕の地位や名誉や力に対する畏怖の心の現れだった」


31: 2013/01/15(火) 02:21:25.32
N「それに気づかせてくれたのは一人の少女でした。彼女は不思議な子だった」

N「彼女はどんな時でも純粋で、彼女と関わるトモダチも人も皆心から笑ってた。僕に対しても澄んだ水のような綺麗で輝く心でまっすぐに見つめてきました」

N「その子は、バトルが絆を強くするのだと言っていました。そしてそれを彼女のトモダチも望んでいた。あんなに強くて、そして温かい人とトモダチを僕は見たことがなかった」

N「僕は目の前の景色が音を立てて崩れ落ちるような気持ちでした」

チサト「・・・」

N「トモダチを守る、そのためだけに生きてきた。でも今自分に残っているのは、育ての親から浴びせられた汚い言葉と憎悪、周りからの冷たい眼、そして間違いだと知った自分の20年間」

N「彼女に正しく生きる道を教えてもらった。それなのに僕は今までの間違った人生を間違いだったと言うことがまだできない。まだあの頃の嘘の自分に戻ろうとする心が捨てきれない」

N「実は僕もチサトさんと同じでトモダチはもうこの子しかいないんです。あとの子は皆逃がしてしまった。バトルで傷つく彼らを見たくなかったから」

N「でもこの子はどんなに言って聞かせても僕の元から去らなかった」ナデ

レパルダス「ニャーン・・・zzz」

32: 2013/01/15(火) 02:23:50.39
N「今僕はあちこちを回りながら今までの自分が行った罪の償いをしています。取り返すことのできない過ちなのは承知の上です」

N「この子にも随分と迷惑をかけた。自分の罪を償い終えたとき、この子ももう逃がすつもりです。そうして一人になってから、自分のこれからを考えていこうと思っています」

N「・・・すみません、喋りすぎました。僕は何を良く分からないことを」

チサト「いいや、そんなことないわ。ありがとう、見ず知らずの私に教えてくれて」

N「自分でも驚きました。今までこんなこと滅多に話したりしなかったから。チサトさんには不思議な力がありますね」

チサト「そう?そういってくれると嬉しいわ、ふふ」

チサト「でも良いの?その子を逃がしてしまって。あなたは本当の一人になってしまうわ」

チサト「私はこの子がいたから頑張ることが出来た。この子がいるから今の私は生きる意味がある。人は一人で生きれるほど強くはないわ、私も、そしてあなたも」

N「・・・」

33: 2013/01/15(火) 02:25:37.14
チサト「もし、昔の辛い思い出が蘇った時、それをエヌくんは一人でずっと抱えて生きていくの?」

チサト「あなたと共に歩いてきたその子を失くしちゃったら、あなたの今まで残したものはさらに減ってしまうわ。その子がいる限り、エヌくんの歩んできたこれまでの道のりは決して無駄ではないはずよ」

N「・・・・・・・」

チサト「この先エヌくんが歳を重ねていって、色んな経験をするでしょう、色んな景色を見るでしょう?」

チサト「その時、あなたと共に歩んできたトモダチが隣にいる、それって素晴らしいことじゃない?」

N「すごく・・・すごく、素敵な事ですね」

チサトさん「そうでしょう?ならその子と一緒にいてあげるのよ。その子もまた、あなたと共に歩くことを望んでいるんだから」

N「はい、ありがとうございます」

N「心のわだかまりが、すっと溶けたような気がします」

チサト「それならよかった」ニコ

34: 2013/01/15(火) 02:28:27.51
ピヨピヨピヨ・・・
ノコッチ「ZZZ」
レパルダス「ニュァ~~」ファ~

N「・・・朝だ」

チサト「あら本当ね。お互い良く喋ったね、雨も止んだみたい」

N「ありがとうございます、なんだか今日の夜はこの先忘れられない思い出になりそうです」

チサト「私もよ。訪ねてきてくれてありがとう」

チサト「その、も、もしよかったら、また会いに来て欲しいな・・・」

チサト「こんなに長く誰かと話をしたのは久しぶりで本当に嬉しかったの//」

チサト「あ、あの本当によかったらでいいから・・・」ニコ

N(本当に綺麗な笑顔だ)

N(僕は、僕はこの人のために何が出来るだろうか・・・)

N「もちろんです。また遊びに来ますよ」

チサト「本当に!?嬉しい!できれば今度は旅の話も聞きたいな・・・」

N(旅?・・・・そうだ!)

35: 2013/01/15(火) 02:30:22.63
N「チサトさん、僕と旅に出ませんか?」

チサト「えっ?」

N「旅をしてみたかったんです。僕の眼を覚ましてくれたあの子がトモダチと旅をしていたように」

N「ここでチサトさんと出会ったのも何かの運命だと、そう思います」

N「そして何より、ここでチサトさんの事を知って、あなたのお話を聞いて、あなたと旅に出たいと思って・・ダメですか?」

チサト「わ、私は眼が見えないし、きっと邪魔になるわ。まして旅なんて・・・」

N「僕があなたの眼の代わりになります」

チサト「そ、それに私はこの町にいることに満足してるから・・・」

N「今すぐにとは言いません。僕は自分の償いをしながらたまにここに帰って来ます」

N「全てが終わるのに1か月、いや、1年2年とかかるかもしれません」

N「でもすべてを終えた後、僕はこの子と、そしてあなたと旅をしたいです」

レパルダス「ナォ~ン」フリフリ

チサト「・・・・」

36: 2013/01/15(火) 02:32:47.86
N「僕はトモダチの心を読むことが出来ます」

ノコッチ「ピロロロ」ピョンピョン

N「その子はこう言っていました『あの人の寂しそうな笑顔じゃなくて、心からの笑顔が見たい』って」

チサト「・・・・・・」


チサト「もう・・もうね、諦めてたの」

チサト「『自分には運がなかった、しょうがなかった。この子ともうゆっくり過ごすんだ』って言い聞かせて」

チサト「でもエヌくん、あなたと話をしているとき、私には幼い頃の旅の映像がはっきり見えていたわ。恐らく本当の眼で見るよりもはっきりと」

チサト「もうこの眼で何かを見ることは叶わないけど」ポロ

チサト「それでも・・・昔の夢って・・捨てきれないものね」ポロポロ

チサト「ぐすっ・・うっ・・」

ノコッチ「ピロロ」スリスリ

チサト「分かってるよ、見えなくてもはっきりと分かるわ。あなたのことが・・・ありがとう」ギューッ

ノコッチ「ピロ」ニコニコ

37: 2013/01/15(火) 02:36:40.98
~民家入口~
チサト「ごめんね、取り乱しちゃって」

N「いえ」

チサト「練習しておくわ、モンスターボールで捕まえるのだって、バトルだって」

N「はい」ニコッ

チサト「待ってる。もう自分に言い訳したりしないから。次こそ世界の隅から隅まで歩き回って、いっぱいポケモンも捕まえて、強いトレーナーになるわ」

チサト「色んな街や色んな景色を見たい。その時はエヌくん、私の眼になって。お願いね」ニコリ

N「はい!行こう、レパルダス」

レパルダス「ナオ~ン!」シュタッ!

チサト「行っちゃった・・・本当に、夢じゃないのよね?」

ノコッチ「ピロロロ!」

チサト「エヌくん、か・・・・優しい声だったなぁ」

チサト「眼が、見えたらなぁ・・・」

ザザーン ザザーン ザザーン

チサト「・・・・よしっ!いつまでも惚けてちゃいけないっ!早速練習ね」

ノコッチ「ピロ!」

38: 2013/01/15(火) 02:39:49.92
1年後

ソルロック「ゾゴココ!」ボシュウン

チサト「やった!遂にソルロック捕まえれたわ!」

ノコッチ「ピ・・ピロ」ヨロヨロ

チサト「ノコッチ、大丈夫?すぐにきずぐすりしてあげるから」ゴソゴソ

ノコッチ「ピロピロ!」

チサト「ん?なあに?待ってねすぐ出すから」ガサゴソ

ノコッチ「ピロピロピロ!」

チサト「なあに、もう?ちょっと待ってって言って・・・あ!」

シンボラー「ピルロロロ!」バサッバサッ

N「ありがとう、シンボラー」バシュウ!

チサト「おかえりなさい!」

N「ただいま。もうすべて終わったよ」

レパルダス「ナ~オ」ニマニマ
ノコッチ「ピロロロ」ニコニコ

N「チサトさん」

N「僕と旅にでませんか?」



39: 2013/01/15(火) 02:44:33.47
見て頂いた方ありがとうございました!
初めてのSSだったので緊張しましたが無事終えることが出来て良かったです

サザナミタウンのBGMを聴いてたらいてもたってもいられなくなって作りました
短いエピローグがあるのでよろしければそれも楽しんでいただけたらと思います

今後またなにかSSを書くこともあるのでその時はお目にかかることがあるやもしれません
ではでは・・・

40: 2013/01/15(火) 02:45:36.01
更新早いし内容もよくてとても読みやすかった、乙でした

エピローグ楽しみに舞ってる

41: 2013/01/15(火) 02:46:14.68
7年後・・・

~イッシュ地方 ポケモンリーグ 四天王中央の間~
ピクニックガール「うぅ、緊張するなあ」プルプル

ムクホーク「ファーファ!」バッサバッサ

ピクニックガール「分かってる、分かってるよ!しっかり私達のバトルが出来れば勝てる!絶対に!

         十中八九!きっと!いやたぶん!恐らく!うまくいけば!いやひょっとすると勝てる、はず・・・」

デンチュラ「シシ・・・」バチバチ

ピクニックガール「いえ!勝てます!絶対に勝てます!自信あります!だからでんげきはだけは止めて下さい!」

ゲンガ―「ゲラゲラゲラm9(^^)!」

ピクニックガール「こら、ゲンちゃん笑わない!よし!まずは「光と波の部屋」から行こう!ここの人達かなり強いって聞くけどまあいいや。

         チャンピオンになるためにはどっちにしろ皆倒さないといけないんだから!よし、ドアを開くぞぅ・・・」ギイ

42: 2013/01/15(火) 02:49:05.19
~四天王、光と波の部屋~
ピクニックガール「あのう・・失礼します」
ササー
ピクニックガール(うわ!すごい!部屋全体が砂浜になってて左から波が打ち寄せてる!どうやって作っているんだろうこの仕掛け?)

???「珍しい、ピクニックガールの挑戦者だ。あなたの小さい頃の写真に良く似ている」

???「ならきっと強いわよ。用心してかからなくちゃ」

???「そうだね」ニコリ

ピクニックガール「あの、その、こ、こんにちは!」カチカチ

ピクニックガール(テレビで見たことがある!初めてのペアの四天王・・盲目のキレイな女の人と緑色の髪のカッコいい男の人だ。確か名前は・・・)

???「ふふふ、面白い子ね。元気な声。でもあなた声が震えてる。随分と緊張してるね」ニコリ

ピクニックガール「す、すみません!」

???「良いのよ、誰でも最初は緊張するわ。実はね、私も小さい頃はピクニックガールだったのよ。ポケモンと旅をするのって素敵ね」

ピクニックガール「は、はい!この子達も旅の途中で出会った子達です」

ピクニックガール(お嬢様っぽいのにこの人もピクニックガールだったんだ。なんか嬉しいな。でも眼が見えないと大変だろうな・・この男の人と旅したのかな?)

43: 2013/01/15(火) 02:51:43.16
???「良い旅をしたんだね。君のこれからの旅でも沢山の素敵なトモダチとの出会いがありますように。 

  それではルールの説明をしようかな。分かっていると思うけど僕達は四天王の中では特殊でダブルバトルになるよ、大丈夫かな?」

ピクニックガール「はい!」

???「あ、それと君に一つ聞きたいことがあるんだ、教えてくれるかな?君にとってバトルとはどんなものかい?」

ピクニックガール「だ、大好きなこの子達と、こ、心を1つにして戦って、絆を強くするためにあるんだって思ってます!」

ムクホーク「ファー!」バサバサッ

デンチュラ「シ」バチバチバチ

ゲンガ―「ゲラゲラ!」グワ

???「・・・フフ、あなたの言うとおりだ、この子は手強いぞ」ニコリ

???「ほら、言った通りでしょう」ニコニコ

ピクニックガール「?」

???「いや大丈夫、こっちの話だ。それでは始めよう。君とトモダチの絆、どれほど強いものなのか確かめさせてもらうよ!」




44: 2013/01/15(火) 02:52:57.57
今度こそ本当に終わりです。ありがとうございました!
またどこかで・・・

引用元: N「旅に出ませんか?」