1: ◆bfNwuk7fw. 2014/07/02(水) 00:45:38.02
 

本放送の後に、第一話から第六話までの再放送を行います。

チャンネルはそのまま。
アイドルマスター ワンフォーオール 765プロFight!!(1) (ファミ通Books)

2: 2014/07/02(水) 00:47:34.97
~水瀬家~

レポーター『美しい花壇、素晴らしい噴水、そして豪華なお屋敷!今日はあの水瀬グループの会長さんのお宅へお邪魔し・・・ん?』

伊織『あははっ、こらジャンバルジャン待ちなさーい、あははっ』ドスドスガシッ

犬『ワンワンッ!ワンッ!キャインキャイン・・・』

レポーター『おっと、何だか凄いことになってますね?ちょっとお話を聞いてみましょう。すいませーん』

伊織『あら、放送中だったんですか?ごめんなさーい』ムキキッ

レポーター『おお、凄い筋肉・・・このおうちの方ですか?』

伊織『はい、水瀬伊織15歳、竜宮小町というユニットでアイドルやってまーす!』

レポーター『アイドル・・・?ああ、筋肉系アイドルってやつですか。まあそれはともかく、伊織ちゃんは水瀬財閥のお嬢様なんですね。いやー立派なお父さんやお兄さんがいて幸せですねー。お父さんは普段どんな・・・』

3: 2014/07/02(水) 00:48:39.30
伊織『ともかくって・・・そ、そんなことより!今日はスーパーマッスルアイドル伊織ちゃんのプライベートライフをご紹介しちゃいまーす!』ググッ

犬『ワグッ』

レポーター『あの、片手に抱えた大きなワンちゃんが苦しそうですけど・・・』

伊織『いいからほら、ついてきて下さい!まずは専用トレーニングルームから・・・』

新堂『お嬢様!』キュラキュラキュラキュラガスッ!

伊織『ちょ、ちょっと新堂何するのよM47パットンなんか持ち出して!今本番中なんだからやめっ、んぎぎぎぎぎ』ズザザザザザ

レポーター『・・・なんだかよくわかりませんが、とりあえずお宅へお邪魔しましょう!』

4: 2014/07/02(水) 00:49:38.98
~事務所~

俺たちは伊織が出ている番組を見ていた。出ているといってもアイドルとしてではなく、水瀬家の特集番組としてである。だが、

響「押し負けてるとはいえ戦車と力比べするとは、やるなぁ伊織・・・」

やよい「でも、いつになったら伊織ちゃんのおうちにいくのかなー・・・博物館よりそっちが見たいかも・・・」

響「違うぞやよい、今映ってる豪邸のが伊織の家だぞ」

やよい「ええー!うわー、お掃除大変そうですー!」

響「しかしこのレポーター、アイドルを『それはともかく』ってちょっとひどいぞ、ねえプロデューサー?」

伊織『さあみんな、伊織ちゃんのファンになろー!』

新堂『お嬢様!』キュラキュラズドンッ!

伊織『へぶっ』ガスッ!

俺はこの執事のほうがいろいろひどいと思う。

5: 2014/07/02(水) 00:50:40.54
 

この番組は

P「今日は0時00分からTHE iDOLM@SCLETERか・・・」

から始まる一連の話の続きとなっていますが

とりあえず筋肉だということだけわかっておけばなんとかなるかもしれません


 

6: 2014/07/02(水) 00:51:59.55
~CM~

PlayStation3専用ソフト THE IDOLM@STER ONE FOR ALL

好評発売中!

~CM~

8: 2014/07/02(水) 00:53:18.35
 





大好きな技、大切な力


 

9: 2014/07/02(水) 00:55:08.61
~応接室~

伊織「どこが問題だっていうのよ!」

先程見ていた番組について一対一で緊急ミーティング。俺の目からはそれはそれは問題があったのだが本人の見解としては問題無しらしい。

伊織「営業努力を誉めるのがプロデューサーってもんでしょ」

P「その前に聞きたいんだが、戦車が家の中走っていいのか?」

伊織「私有地だから問題ないでしょ!」

P「弾撃ってたぞ?」

伊織「ゴム弾だから平気よ」

M47パットン戦車の弾薬直径は90mmらしいが、砲弾と同レベルで撃ち出される硬質なゴム弾は確実に人を葬れると思う。

10: 2014/07/02(水) 00:56:09.63
P「ま、まあ執事さんの奇行についてはひとまずおいておくとしてだな、ああいう公共の電波で宣伝するならせめて前もって一言相談してほしかったな。俺もプロデューサーとしてアドバイスぐらいできたから・・・」

伊織「竜宮小町の担当は律子でしょ、あんたなんて関係ないじゃない!」

P「そんなことないさ!同じ765プロの仲間なんだから、俺はみんなの力になりたいと思ってるし、みんなにもいろいろ助けてもらいたいと思ってる」

P「悩みとか困ったことがあったら相談にのりたい。俺はみんなのプロデューサーのつもりだよ」

伊織「・・・あ、あんたみたいなヒョロヒョロのアドバイスなんていらないわよ、頼りにして欲しかったらもっと筋肉つけなさいよね!」ムキンッ

そんな人類を超越したような筋肉つけたやつに頼りにしてもらうためには、俺はどこまで鍛えればいいのだろうか。

11: 2014/07/02(水) 00:57:52.15
~給湯室~

伊織「だいたいあの番組もふざけてるのよ!何が『立派なお父さんやお兄さんがいて幸せですねー』よ!ね、アーノルド?」

やよい「伊織ちゃん、お父さんやお兄さんとケンカしてるの?」

伊織「別に。ただこっちの体が大きいからあっちが勝手に怖がってるだけよ」

響「おおわかるぞ、力加減が合わなくなるからいろいろ大変だよな」

伊織「ちょっと力が強いからってビビりすぎなのよ」

響「うんうん、ところでやよいの家はどうなんだ?みんな変にビビって戸惑ってたりしないのか?」

やよい「ううん、うちはみんなムキムキだから家が壊れる程度のケンカは毎日だけど、仲よしですよ?」

伊織「はぁ、気晴らしに何か美味しいものでも食べたいなぁ・・・響、やよい、一緒にどう?おごるわよ?」

やよい「ほんと!?・・・あ、うー、行きたいけど、帰って夕ご飯作らないと・・・」

響「そっか、弟たちの面倒をかわりに見てるんだっけ・・・そしたら忙しくてどこかに食べに行くのは難しいよなぁ」

やよい「そうだ、よかったらうちでご飯食べようよ!」

12: 2014/07/02(水) 00:59:55.86
~スーパー~

店長「今朝玄関を開けると雨が降ってたんだ。だけど俺は傘を差さなかった。・・・なぜかって?昨日、シャワーを浴びてなかったんでね!」

HAHAHAHAHAHA!!!

店員A「HAHAHA、まったく奴のジョークは最高だぜ、なあ?」

店員B「まったくだ、あいつがいればジャパンのコミックでさえいらねえや!」

店長「おいおいそんなに褒めるなよ、じゃあとっておきのを聞かせてやろう」

店員A「ほどほどのやつを頼むぜ?なんてったって休憩時間があと5分しかないのに笑いころげてたら仕事にならねえからな!」

HAHAHAHAHAHA!!!

13: 2014/07/02(水) 01:02:39.54
店長「先週のことだ、俺が道を歩いていると向こうから赤い洗面器を頭に乗せたナイスガイが歩いてきた。俺はたまらず『ヘイヘイ、なんでそんなもん乗せてんだ?』って聞いちまった!そしたらその男、なんと・・・」

店員A「なんと・・・?」

店長「・・・・・・」

店員B「・・・なんだよ焦らすなよ・・・おいどこ見てんだ、そっちは窓の外だぞ」

店長「・・・た・・・」

店員A「た?」

店長「高槻が来たぞぉ!!!」

店員A「ホーリーシット!総員緊急配備!ベル鳴らせぇ!」

店員B「ちくしょうなんてこった!今日はワイフとの結婚記念日だってのについてねえぜ!」


『業務連絡ー業務連絡ー各部署の店員は至急特売コーナーまで来られたしー業務連絡以上』

14: 2014/07/02(水) 01:05:58.31
店長「敵影確認、人数!」

店員A「高槻は長女だけだが新顔が二人・・・どっちも筋肉もりもりのマッチョガールだ」

店員B「ジーザス・・・」

店長「早志は右舷、布施川は左舷を守れ。決してお客様に被害を与えるなよ・・・俺は正面に行く」

店員A「ああ、右舷は任せろ・・・氏ぬなよ」

店長「なぁに、この特売が終わったら明後日息子とヤキンニクマンショーを見に行く約束をしてるんだ」


やよい「今からもやしのタイムセールですー」ズンズン

伊織「持てるだけ持てばいいのね」ズンズン

響「もやしは柔らかいんだから握りつぶさないように気をつけろよ、伊織」ズンズン

伊織「わ、わかってるわよ」ズンズン

やよい「じゃあ私は他のもの買ってくるからお願いねー」ズンズン


店員s「いらっしゃいませー!」

15: 2014/07/02(水) 01:07:34.45
店長「あ・・・ありがとうござ・・・ごふっ」

店員A「て、てんちょーーーー!!」

店員B「なんということだ、色白でヒョロ長の典型的もやし人間かつ筋肉恐怖症の店長が、筋肉の塊に買われたもやしに自己投影をして勝手にダメージを受けているとは・・・!」

店長「わけわかんねえ解説ありがとよ・・・後は任せた・・・」ガクッ

店員B「無茶しやがって・・・」


やよい「今日は一杯買えましたー!大漁ですー!」ズンズン

伊織「袋がパンパンだけど、体積の割に軽いわねもやしって」ズンズン

響「自分の持ってる牛乳より軽いと思うぞ」ズンズン

16: 2014/07/02(水) 01:09:57.25
伊織「で、こんなにもやし買ってどうするつもりなわけ?」

やよい「今日は木曜日恒例もやし祭だよー!」

伊織「何か盛り上がらなさそうなお祭りね・・・」

伊織「そんなことないよ、すっごい激しいんだからー!」

響「いつもやよいが夕ご飯作ってるのか?」

やよい「お父さんとお母さんいつも仕事で遅いから、食事の支度とか弟たちの世話は私の仕事なんです!」

響「そうか、やよいはえらいな、今日は自分も伊織もいっぱい手伝うぞ!」

17: 2014/07/02(水) 01:11:18.19
ガチャバキッゴゴゴゴゴゴ

やよい「じゃーん、我が家へようこそー!ただいまー!みんないいこにしてたー?」

やよい妹弟「お帰りー!」ドスドスドスッ

やよい「アイドルのお友達連れてきたよー!」

伊織「おじゃましまーす」ムキッ

響「よろしくな!」ムキキッ

やよい妹弟「いらっしゃーい!」ムキンッ

19: 2014/07/02(水) 01:13:02.52
長介「やよい姉ちゃん、浩三のミルクは?」

浩三「Ah、Ah」

やよい「ちゃんとアメリカ産ミルク買ってきたでちゅよー、もやしもいっぱいでちゅよー!えへへ、響さんと伊織ちゃんに手伝ってもらったからいっぱい買えたんだー!」

浩三「Thank you」

長介「じゃあ俺、ミルク入れてくるよ」

やよい「ありがと、長介!じゃあ私はお夕飯の支度するね、今日はもやし祭だから!」

21: 2014/07/02(水) 01:15:10.46
~夜、やよい家居間~

長介「ほらミルクだぞー」

浩三「very good」ゴキュゴキュ

伊織「あんたは遊ばないの?」ドスドス

長介「え?あ・・・えーっと」

伊織「水瀬伊織よ。伊織でいいわ」

長介「伊織さん・・・んと、そんなことはないけど、できることはちょっとずつ手伝うようにしてるんだ。やよい姉ちゃん仕事で忙しいし」

伊織「偉いのね、まだいっぱい友達と遊びたい歳でしょうに」

長介「そりゃまあもっと遊んでたいと思うけど、やよい姉ちゃんが頑張ってるの知ってるし、なによりやよい姉ちゃん強いし・・・」

長介「凄いんだよ、俺たちが三対一でかかってもみんな倒しちゃうんだ!そんなやよい姉ちゃんに近付くためには、遊んでばかりはいられないかなって・・・直接いうのは恥ずかしいけど」

やよい「ごはんできたよー!」ヒョコッ

長介「わっ!い、今いくー!」

やよい「?伊織ちゃん、長介と何話してたの?」

伊織「ただの世間話よ・・・いい弟さんね」

やよい「えへへ、技はまだ未熟だけど自慢の弟ですよ!」

22: 2014/07/02(水) 01:18:16.17
やよい「ではもやし祭開催しまーす!」

伊織「本当にもやしばっかりね・・・」

やよい「この我が家の秘伝のソースがあるから、すっごい美味しいし栄養があるんだよ!」

長介「元気が出てくるんだ!」ムキッ

かすみ「そのまま一戦したくなるよね」ムキッ

浩司「つよくなれるんだぜ!」ムキッ

伊織「怪しいものが入ってるんじゃないでしょうね・・・」

やよい「ではもやしに続いてソース投入ー!」ドバァ

ジュウウウウウウ

響「んー、ソースが鉄板で焼けるのはやっぱりいい匂いだぞ」

やよい「軽く混ぜてできあがり!いただきまーす!」

皆「いただきまーす!」

響「もぐもぐ・・・ん!美味いぞこれ!」

伊織「本当に?・・・どれどれ・・・」パクッ

やよい「どうかな伊織ちゃん?」

伊織「・・・んー!美味しい!すごいわこのソース!あとでレシピ教えて!」

やよい「あう・・・門外不出だからちょっと難しいかなーって」

伊織「そ、そうなの・・・残念だわ・・・」

23: 2014/07/02(水) 01:19:31.72
響「伊織、喋ってると無くなるぞ」モグモグ

伊織「無くなるぞっていうか無くなってるじゃない!」

やよい「大丈夫ですよ、おかわりたーっくさんありますから!じゃあ第二弾開始しますね」ドバァジュッ!

やよい「わっ、ソースが焼けてはねてきちゃった、拭かないと」

長介「ちょうど浩三の手のところにも飛んだみたいだよ・・・あ、舐めた。おいしいかー?」

浩三「Ah,Ha?Ah!A・・・a・・・aaa・・・」

長介「?・・・やよい姉ちゃん、なんか浩三の様子が」

浩三「Ahhhhhhhhhhhhhh!!!!!」ベキバキボキバキッ!

25: 2014/07/02(水) 01:21:49.98
伊織「な、何よ一体!?」

やよい「浩三がベビーベッドを壊して降りてきました!」

浩三「Ohhhhhhhhhhhhhhh!!!!!」ブンッバキッ

響「なんだこれ、普通じゃないぞ・・・!」

ハム蔵「ジュイッジュジュイッ」

響「なんだって!?浩三にあげてたアメリカ産ミルクと高槻家秘伝のソースが奇跡的な分量配合によって特殊な反応を示して浩三の力を暴走させてるだって!?」

伊織「なんでそんなに詳しいのよ!」

響「ハム蔵はペットフードの関係で食材が生物に及ぼす影響の研究をやってるからな!医学的見地から食べ合わせの真偽を暴いてるんだぞ!」

伊織「ハム蔵、アイドルのペットより他に天職あるでしょ絶対!」

26: 2014/07/02(水) 01:23:57.49
やよい「と、とにかく浩三をなんとかしないと・・・」

伊織「見たところまだ赤ん坊じゃない、そのうち疲れて勝手に止まるんじゃないの?」

響「ダメだぞ伊織、興奮作用が出てるから一晩ぐらい動けるみたいだ」

響「それにそもそも、まだ成熟しきってない体であの力は過剰なんだ。あんな状態で動き続けたら骨がバラバラになっちゃうんだぞ」

伊織「じゃあ私が羽交い絞めにして、効果が切れるまでそのままならいいでしょ?組みは専門じゃないけど、子供相手なら・・・」

響「・・・伊織は、暴れてる状態の幼児から一撃も食らうことなく背後に回って絞めることができる?」

伊織「ど、どういうことよ、『耐えられるか』じゃなくて『食らわないか』なんて」

響「自分たちの体は、筋肉系だから”硬すぎる”んだ。普通の人なら殴り掛かってきた方が手を痛めるほどに・・・それが赤ん坊なら尚更」

やよい「じゃ、じゃあどうすればいいんですか響さん、この部屋の中なら平気だけど、隣の部屋にはタンスとか大きな柱があるからどうにかして止めないと浩三が、浩三が・・・!」

響「自分の思いつく限り、これをなんとかできるのは美希、貴音、そしてやよいだけだ」

やよい「私・・・?」

27: 2014/07/02(水) 01:26:03.45
響「美希なら避けながら、貴音ならテクニックで浩三に負担を与えないように絞められる・・・けど」

伊織「今日は二人とも別の県まで泊まりで仕事よ」

響「だから別の手段、一度完全に動きを止めて、それから絞める。それが出来るのはここにいる中じゃやよいだけだぞ」

やよい「そんなこと言われても、私どうしていいかなんて全然・・・」

響「前に自分たちが出たゲロゲロキッチン、覚えてる?あの時自分が千早に対して使った技を」

伊織「・・・!顎先へのピンポイント打撃ね!脳を揺らされた千早は数秒間立てなくなったわ!」

やよい「だ、だったら響さんが浩三を止めてくれたら」

響「・・・自分じゃ無理だぞ。ほら、浩三を見て」

28: 2014/07/02(水) 01:27:39.57
浩三「UhhhhhhhHaaaaaaa!!!」ズシンブンッ

長介「うおっ危ねっ!ほら急げ、当たったら危なそうなものを二階へ持っていくんだ!」

浩太郎「にーちゃんテレビ重いー」

長介「いいよテレビは後で!壊れたらまた拾ってくるしタンスより柔らかいから置いてけ!」

浩司「『お前は最後に運ぶと約束したな・・・』」

長介「うるさい!」

29: 2014/07/02(水) 01:29:31.96
響「あんな感じで暴れてる上に、そもそも狙うべきアゴが小さすぎる。千早は隙だらけだったから出来たけど、あれが相手じゃ無理だ」

響「それが出来るのは、765プロで一番のカウンターの名手で技巧派なやよいだけだ」

やよい「で、でもそれって失敗したら・・・」

伊織「浩三の顔面にスピードの乗った一撃が当たることに・・・」

やよい「・・・私には・・・私にはそんなことできな」

響「やよい!」

やよい「っ!」ビクッ

30: 2014/07/02(水) 01:31:25.95
響「放っておいたら浩三が危ないんだぞ!これはやよいにしか出来ないんだ!・・・それともう一つ」

響「本当は自分、『やよいにしか出来ない』じゃなく、自信を持って『やよいなら出来る』って思ってるんだぞ」

やよい「ひ、響さぁん・・・」

伊織「ごめんねやよい、私じゃ上手なカウンターは打てない・・・けど、上手く行ったら私が絶対にあの子に怪我させないように、力尽きるまで絞めるから」

やよい「伊織ちゃん・・・うん・・・わかった、やってみる・・・」




伊織「それにしても響ってばすごい知識と説得力ね、少し見直したわ」ボソボソ

響「まあ最後の自分のセリフ以外は全部ハム蔵の受け売りだけどな」ボソボソ

伊織「ええそうよね、薄々気づいてたわよ」ボソボソ

31: 2014/07/02(水) 01:33:28.71
伊織「・・・はぁ、まさかこんなことになるとはね・・・」

伊織「『悩みとか困ったことがあったら相談にのりたい。俺はみんなのプロデューサーのつもりだよ』・・・か」

伊織「どれだけ役に立つかわからないけど、いないよりマシよね、きっと・・・」ポパピプペ

prrrrr

P『どうした?』

32: 2014/07/02(水) 01:35:23.83
~事務所~

P「え、やよいの弟がソースで暴走?カウンターが決まらないと家庭の危機?どゆこと?あ、ちょ」ガチャッツーツーツー

小鳥「どうしたんですかプロデューサーさん?」

P「ええと、伊織からなんですけど、なんかよくわからないというか」

とりあえず俺は聞いたままを音無さんに伝えてみた。

小鳥「なるほど、聞いた感じではなんだかややこしいことになってるみたいですね」

P「ええ、わざわざ連絡してくれたのはありがたいんですけど、俺が行ったところで何かの助けになるかというと・・・はは、まだまだ非力ですんで、役には立たなそうですね」

小鳥「いいえ、例えプロデューサーさんが顔を見せただけでも、すごい助けにはなりますよ」

小鳥「だって伊織ちゃんが電話したのは家でも事務所でも律子さんでも、ましてや私でもなく・・・プロデューサーさんなんですもの」

小鳥「そばにいてほしいと思った人がそばにいるなんて、これ以上の助けありませんよ」

33: 2014/07/02(水) 01:37:20.01
P「・・・そうですね・・・うん、そうだな、よし!音無さん、ちょっと行ってきますね!」

小鳥「あ、えっと、私もついていってもいいですか?」

P「別にかまわないと思いますけど・・・?」

小鳥「なんというか、私も行ったほうがいいような気がしまして・・・女の勘、ですかね?」

P「じゃあ車回してきますんで下で待っててください」

小鳥「あ、プロデューサーさんを担いで走っていきましょうか?そっちのほうが速いかも」

P「ノーサンキューです」

34: 2014/07/02(水) 01:39:56.22
~やよい家前~

P「事務所の書類にあった住所によるとここらへんですね」

小鳥「30分ぐらいかかりましたが、やよいちゃんたちどうなってるんでしょうか・・・」

P「案外すんなり解決してたり・・・」

Foooooo!!!!バキッメキッ

P「・・・してないようですね」

小鳥「急ぎましょう!」

35: 2014/07/02(水) 01:42:20.96
小鳥「やよいちゃん!」ガチャバキッ

P「今の状況は・・・」

やよい家に入った俺たちが見たものは、半壊した居間、アメリカン口調で叫びながら恐ろしいほどの力で暴れる幼児、

そして膝をつくやよいと、それを心配そうに眺める伊織と響の姿だった。

浩三「WYYYYYYYYYYY!!!!!」

P「うおうるせえっ・・・じゃなくて、だ、大丈夫かやよい!」

小鳥「やよいちゃん、どこか怪我を・・・」

伊織「・・・怪我なんてしてないわ」

P「じゃあ、なんで・・・?」

やよい「・・・・・・り・・・・・・です・・・」

P「え?」

やよい「むりです・・・私には・・・できないんです・・・!」

36: 2014/07/02(水) 01:44:27.73
やよい「何度も何度もチャンスはありました!でもいざ打とうとすると怖くなるんです!」

やよい「手元が狂ったらどうしよう、顔を、いいえ、たとえ身体でも殴っちゃったら」

やよい「自分の弟を自分の手でまともじゃない身体にしちゃったら・・・そんなことしたら私は・・・私は・・・!」

そういって静かに泣きはじめるやよい。俺でもわかる、戦意喪失というやつだ。

隣の二人も俺たちが来るまで散々なだめたり励ましたりしたのだろう、今では憔悴した顔でただ眺めている。

37: 2014/07/02(水) 01:47:28.76
P「・・・やよ」

い、と言い切る前に音無さんが前に出てくる。一瞬こちらに向けた視線は『私に任せてください』と言っていた。

P(ああ、音無さんなら安心だな。俺よりずっと彼女たちについて詳しいだろうし、きっと優しくやよいを立ち上がらせてくれるだろう)

小鳥「やよいちゃん、こっち向いて?」

優しく語りかける音無さん。

やよい「小鳥さん・・・」

小鳥「あのね、やよいちゃん・・・」







小鳥「歯を食いしばりなさい」



ズゴンッ!!


音無さんがやよいを思いっきり殴った。

38: 2014/07/02(水) 01:50:20.91
P「えっ」

吹き飛んだやよいは壁を一枚ぶち抜いて台所に転がり込んだ。

P「えっ・・・えっ?」

ところでこの中で一番困惑しているのは俺だ。伊織や響も驚いているようだが、俺ほど取り乱していない。何故だ。


小鳥「やよいちゃん、あなたは大きな勘違いをしているわ」

やよい「かん・・・ちがい・・・?」ムクリッ

砕けた壁の向こうからたいしたことなかったというように立ち上がるやよい。

小鳥「ええ、見失っているといってもいい。ねえやよいちゃん、あなたは何のためにアイドルになろうと思ったの?」

やよい「それは・・・お金を稼いで、家族が楽になれるように・・・」

やよい「それで、弟たちも筋肉つけて元気に育ってくれればいいなって・・・」

小鳥「そうよ、家族を守るために得た力じゃない。今、ここで、弟さんを守るために使わなくて一体いつ使うっていうの?」

やよい「!」

39: 2014/07/02(水) 01:52:40.29
やよい「そう・・・私は失敗することばかり考えて・・・力を恐れてました・・・」

やよい「そして・・・何のための力かもわからなくなって・・・!怖くなっちゃって・・・!」

小鳥「自信を持ってやよいちゃん、『家族を守る』、その目的のために鍛えた技が家族を傷つけるはずがないんだって・・・!」

やよい「・・・はい・・・!私、絶対に浩三を助けます!」

やよい「私の、技と力で!」

響「タイミングは任せろやよい!ハム蔵の野生の勘で助けるぞ!」

ハム蔵「ジュイッ」

伊織「やよいは一撃に集中しなさい!後は私が確実に押さえるから!」

やよい「響さん・・・伊織ちゃん・・・はい!お願いします!」




P(・・・あー、さっきのは気合い入れの張り手みたいなものだったのか)

スケールがでかすぎて気づかなかった。マッスルギャップってやつだなこれが。

40: 2014/07/02(水) 01:55:01.64
そうして三人がそれぞれの位置に陣取った。

伊織は浩三君の背後へ、響は浩三君の注意を引き、タイミングを計るため正面へ。

同じく正面に、少しずつ間合いを狭めていくやよい。その目には先程までの迷いはなく、ただ浩三君の顔、そして打ち抜く目標である顎を見つめていた。

そして中央の浩三君は、囲まれていることと周囲の家具はあらかた破壊し終えたことからか、比較的落ち着いて立っていた。

だがその足元は幼児ゆえにおぼつかず、不規則に揺れる上体が的を絞らせない動きを呼んでいる。

おまけに時々ボソリとファッキューとか聞こえるのがまた別の意味で不安だ。

この感じではまさか浩三君から襲い掛かってくることはないだろうが、

P(どうするつもりだろうか・・・そもそも、どうやって響は隙を作り出すつもりだ?)

41: 2014/07/02(水) 01:57:26.54
そして、間もなく夜中の八時を迎えようとしたときであった。

響「・・・・・・」ピッ

響がおもむろにテレビのスイッチを入れた。

『ヤキンニクマン参上!』

流れ出すアニメのOP。軽快な音楽とムキムキのアニメキャラが映し出される。

おそらく普段からよくアニメを見ているのだろう、浩三君もそちらに一瞬気を取られ、結局響お前それ他力じゃねえかと俺が突っ込む間もなく、



--やよいが、動いた--


 

43: 2014/07/02(水) 02:01:45.20
素早い踏み込みで、一瞬でミドルレンジまで持ち込んだやよいは、その勢いのまま右拳を振った。

だが角度がおかしい。あの振りでは当たるのは拳ではなく腕。腕の角度こそ90度近いとはいえあれではブローではなくほとんどラリアットだ。

もちろんラリアットなど首の座らない幼児に当てればまさに首を刈り取るように粉砕してしまうだろう。

P(まさか・・・やはり緊張で腕が伸びなかったのか!)

だがもはや腕を止める余裕はない。軌道が逸れるか浩三君が避けてくれることを祈るのみだ。

バカな。避けられるわけがない。健康な成人でもやっと避けれる程度のスピードなのだ。普通の幼児では精々反射的に頭を振るぐらいしかできまい。

浩三「Ahh!!」ブンッ

しかし流石というべきか、驚くことに浩三君は頭を振り、なおかつ膝も落として回避行動をとってきた。

P(よし、これなら最悪の直撃だけはなんとか回避できる・・・!?)


瞬間、

やよいの腕橈骨筋が隆起した。

44: 2014/07/02(水) 02:04:18.59
カスンッ


と乾いた音を一つ立て、やよいの拳は振りぬかれた。





誰も動かぬ、永遠とも思える一瞬。

そして、そんな緊張で張りつめた静寂を破ったのは



浩三「Jesus・・・」ドサッ

浩三君の地に倒れ伏す音であった。

45: 2014/07/02(水) 02:05:11.91
響「か、確保ぉ!」

伊織「もうやってるわ、よ!」ガシッ

ギチッと背後から浩三君を捕獲する伊織。

響「よし、これでひとまず大丈夫だな!じゃあ自分は上の階の弟たちを呼んでくるぞ!」ドスドス

P「・・・まあよくわかんないけど、とりあえずお疲れ様、やよい・・・やよい?」

声をかけても返事がない。軽く手を伸ばして肩を叩いてみると、

やよい「・・・・・・」グラァッ

ドサッ

46: 2014/07/02(水) 02:06:04.71
P「やよい!?大丈夫か!お、音無さん、救急車を・・・!」

小鳥「大丈夫、慌てないでくださいプロデューサーさん。やよいちゃんはちょっと疲れちゃっただけです。すぐに気を取り戻しますよ」

やよい「・・・・・・う、うぅん・・・」

音無さんの言うとおり、やよいはすぐにうっすらと目を開け、

やよい「・・・あ、あれ、ええと・・・あっ、浩三!浩三は!?」ガバッ

小鳥「大丈夫よやよいちゃん、何処にも怪我はないし、ちゃんと伊織ちゃんが絞めてるわ」

やよい「よ・・・よかったぁぁぁぁぁぁ・・・あうっ」クラッ

P「ああほら、一瞬でも気を失ってたんだから無理するな。汗もすごいし、今タオルと水持ってくるから少し寝とけ」

やよい「すいませんプロデューサー・・・」


弟に拳を打ち込む重圧、タイミング、悪い予感を振り払う意志。

あの一瞬にどれだけ精神をすり減らしたのだろうか、やよいの顔は玉のような汗でびっしょりだった。

47: 2014/07/02(水) 02:07:39.24
小一時間後、とりあえずの介抱と最低限の家の処置を終えた俺は、音無さんと事務所への帰路についていた。

伊織はあのまま一晩中浩三君を絞めているし、響も疲れ果てたやよいの代わりに弟たちの面倒を見ると張り切っていた。予期せぬお泊り会ということだ。

小鳥「今日はお疲れ様でしたね、プロデューサーさん」

P「いやあ、俺は結局後片付けぐらいしかできませんでしたけど・・・それにしても、浩三君が無事でよかったです。彼が避けようとしてくれたおかげで顎に当たるなんて、すごい偶然でしたね」

小鳥「え?・・・ああ、あはは、違いますよプロデューサーさん。あれは偶然じゃなくて狙い通り、やよいちゃんの新技です」

P「え?だってやよいはただ殴っただけ・・・じゃないんですか?」

小鳥「ええとですね・・・普通のブローはこう、腰をひねって肩を入れて、肘を伸ばしながら打ち出すじゃないですか。理想的な打点は肘を伸ばしきった時で、一番加速したときです」

といいながら軽く素振りしてくれる音無巨鳥さん。拳圧が涼しい。

48: 2014/07/02(水) 02:09:56.36
小鳥「ストレートで打つ場合は目標は点になって、不規則に動く相手には当たりにくいんです。かといってフック気味に打つと軌道上の別のところに当たるかもしれません」

小鳥「確実に当てるために、しかしスピードをのせて打ち込むために彼女が考えたのが、『肘の角度をギリギリまで固定しないこと』だったんです」

肘の角度を広めに取り、スピードは腰と肩を入れて生み出す。

目標に近付きながら肘を動かして狙いを微調整し、当たる寸前で角度を固めてねじ込む。

やよいが弟の身を守るため、顎だけを打ち抜くために己に眠る技術をかき集めて生み出したのがこの技であった。

小鳥「当然普段よりも力を入れて軌道を変えないといけないから、腕にかかる負担や狙い続ける集中力は普通の一打とは比べ物になりません」

小鳥「・・・とはいえこの技、理論上は必中ですよ。手の届く範囲に避ける相手であれば追えるわけですから、極めたら美希ちゃんにすら当たるかも・・・」

今日の音無さんはいささか興奮気味なようで、いつもより言葉にも熱がこもっている。多分独りで格闘技の解説とか独りで家で独りでやってるタイプだろう独りで。

小鳥「今何か失礼な邪念が」

P「気のせいじゃないですか?」

49: 2014/07/02(水) 02:12:01.71
小鳥「そうだわ、せっかく久しぶりのオリジナル技だから名前を付けちゃいましょう、えーっと・・・なんかいい案ありませんかプロデューサーさん?」

P「え?ええと、そうですね、印象としてはなんか腕がラリアットっぽいなーぐらいで・・・」

小鳥「ラリアット・・・・・・キル・・・・・・」

いきなり物騒な単語が付け足された。

小鳥「そうだわ、Kill like making Lariat(ラリアットを打つ時のように放つ必殺技)で、略して”キラメキラリ”にしましょう!」





こうして、後に彼女の代名詞ともなる必殺技『キラメキラリ』が誕生したのであった。

50: 2014/07/02(水) 02:14:02.72
~事務所~

P「それでは、お先に失礼します」

小鳥「はーい、お疲れ様でした。暗いから石掴み損ねないように気を付けてくださいね」

P「窓からは出ませんから。お疲れ様でした」

ちなみにここは9階であり、ボルタリング用の足場が取り付けてあるため彼女たちには安全かもしれないが命綱すらないため俺には安全ではない。

俺はもう慣れてしまった9階からの階段を軽やかに降りて帰るのであった。

51: 2014/07/02(水) 02:17:07.71
―――――――――――――――

小鳥「・・・ふぅ・・・」

少し疲れた気がする。といっても肉体的なものではなく、それはもちろんまだまだ若いから平気なのであって、まあそれはとにかく精神的な疲れである。だがこの疲れは心地よいものだった。

久しぶりに心臓が高鳴った。やよいちゃんの卓越した技、まだまだ未熟なものであったが、確かに彼女に近いものを感じ取ることが出来た。

そしてあの集中力と闘気・・・

小鳥「確実に、次代の芽が育ち始めたのね・・・」

だがその溢れる期待と同時に、抱いたのは一抹の不安と焦燥。

小鳥「思ったよりも早かったわ・・・」

瞬間的とはいえあれだけの闘気だ。近隣に居れば恐らく感じ取られて・・・


そのとき、

52: 2014/07/02(水) 02:18:30.41
 

カシャーン!!!!


激しく叩いたウィンドベルのような音を立て、蛍光灯が一つ砕けた。同時に事務所の一角が暗くなるが、そのことは全く意に介さない。

中から何かをぶつけたのではない。明らかに外から、しかも閉じている窓ガラスにはヒビ一つ与えずに中の蛍光灯だけを破壊したのだ。

こんな芸当ができるのは、私の知る限りただ一人。

小鳥「・・・・・・・・・ええ、そうね」

心によぎるのはただ一つ。予感が確信に変わったという事実のみ。

小鳥「また、騒がしくなるわね」


―――――――――――――――




刻が近づいていた。

 

53: 2014/07/02(水) 02:19:55.57
次回のTHE iDOLM@SCLETERはー?

秋月律子です!

はっきり言って次回は全国の殿方必見の癒し回ですよ!

最近の筋トレサボり気味のそこのあなたも、まだ鍛えぬあなたも

次回、『まっするへの回り道』を

お楽しみにー!

54: 2014/07/02(水) 02:20:47.90
☆NOMAKE

~用語集5~

・キラメキラリ

高槻やよいの技の一つにしてカウンターを得意とする彼女の代名詞
キルライクメイキングラリアット
Kill like making Lariat(ラリアットを打つ時のように放つ必殺技)を略してキラメキラリと名付けられた
ピンポイントで弱点を打ち抜くために開発された技なので、アームブロックや胸部といった硬い部分に当てると逆に使用者がダメージを受けてしまう
角度の変化に耐えうる柔軟で強靭な肘と微調整を可能とする動体視力及び反射神経、そして失敗を恐れず打ち抜く度胸が求められる高度な技

55: 2014/07/02(水) 02:22:11.05
~アイドル名鑑No.3~

高槻やよい

技巧派
得意技はカウンター
また、家庭環境により一対多の戦いに慣れている
そのしなやかな肉体から技のタイムセールスの異名を持つほど多彩な高等技術を使いこなす

大家族の食糧事情を勝ち抜いた結果手に入れた戦闘スタイルは”伝説”に通じるものがあった
基本的に金目当てで働いているが、正当な報酬のみを受け取ることを信条としている
稼ぎたいというのは弟たちにも十分な食料を与えて十分な成長をしてもらいたいと思う姉心

56: 2014/07/02(水) 02:23:13.79
という感じで七話おしまいです
なお正確には腕を曲げるのはアックスボンバーでラリアットとはちょっと違います
店員大爆笑
小鳥さんはいい先生になれる

59: 2014/07/02(水) 08:40:44.46
おつおつ



引用元: P「今日は3時00分からTHE iDOLM@SCLETERか・・・」