10: 2011/06/01(水) 22:31:18.54 ID:tiZMSqIi0

--・・・・・・え?
気づいたのは起きてから、数分たってからのことだった。

G「・・・・・・ゴキブリになってる?」

昨日までは絶対にカブトムシだったはずなのに。
あの栄光のある・・・・・・そう、虫世界の王者のカブトムシ。
そもそもカブトムシがゴキブリというのはどうだろう。
普通なら、クワガタがゴキブリになるべきじゃないだろうか?

G「なった理由より、戻る方法・・・・・・」

15: 2011/06/01(水) 22:34:41.06 ID:tiZMSqIi0

そうだ、それが大切だ。
しかし、この姿のまま仲間と会うわけにはいかない。
どうにかしないと・・・・・・。

そうだ、人間の使っていたあの紐で頭部に枝を付ければいい。
われながら最高のアイデアだった。
これで、どこからどうみてもカブトムシになれるはずだ。

昔、俺も一回騙された事があった。
そのときは本当に悔しかったが、今は緊急事態だ。
仕方があるまい。

G「とりあえず、このくらい場所から・・・・・・」

18: 2011/06/01(水) 22:36:48.48 ID:tiZMSqIi0

ヒト「キャー!ゴキブリ!!」


暗い場所から逃げると、人間が驚き叫んだ。
俺は悪いゴキブリじゃない。
本当はカブトムシなんだ、そう言ったものの効果はないようだ。
どうしようかと思い、その場に踏みとどまっていると後ろからなにやら缶を持ったニンゲンが現れた。


ヒト「氏ね!」


俺は咄嗟の判断で走り出した。
その缶から勢いよく煙が噴出したからだ。
何か危ない雰囲気を感じ取った。


ヒト「逃げるなあああああああああ!!!」

19: 2011/06/01(水) 22:38:54.41 ID:tiZMSqIi0

ニンゲンは必氏に俺に煙を当てようとした。
だが、相手が悪い。俺は元カブトムシだ。
虫世界の王者なのだ。
俺はひょいひょいと体を走らせそのニンゲンの攻撃から逃れ暗闇へと逃れた。



G「どうにかなったな・・・・・・」


俺はそう、呟いた。
これではカブトムシに扮装どころではない。
どうにかこの家から出なくては・・・・・・。

それにしても、ゴキブリとはどいつもこんな扱いなのだろうか?
我等カブトムシにしてみれば哀れなものだ。
・・・・・・まあ、今はゴキブリだけども。


・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・

22: 2011/06/01(水) 22:40:57.01 ID:tiZMSqIi0

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


とりあえず、夜まで様子を見た。
どうやらニンゲンは寝静まったようだ。
これなら外に出れるだろう。
俺は夜行性だし、あの時間に起きたこと事態が稀だ。
これならそんな心配もいらず外出できるだろう。

そう思い、この暗闇から出ようとすると後ろから声がした。


長老G「・・・・・・どこに行くのじゃ」

25: 2011/06/01(水) 22:43:00.81 ID:tiZMSqIi0

年老いたゴキブリが影から出てきた。
俺は咄嗟に嘘をついてしまった。
なぜだか、このゴキブリにだけは言ってはいけないことだと思えた。


G「あ・・・・・・いえ、散歩に」

長老G「ほう・・・・・・わしは嘘がきらいじゃ」

G「・・・・・・」


ゴキブリの癖に、俺の全てを見据えているかのようだった。
俺は元カブトムシで、こいつから逃げようと思えば逃げれただろう。
ただ、このゴキブリだけはそれが出来ない、そんな気がした。
仕方なく、真実の話をすることにした。
俺は少し小さな声で口から真実を語り始めた。

29: 2011/06/01(水) 22:45:03.05 ID:tiZMSqIi0

G「俺は元カブトムシなんです」

長老G「カブトムシ・・・・・・?」

G「俄かには信じられないかもしれませんが、元の姿に戻るためにここを出ないといけないんです」

長老G「・・・・・・」


年老いたゴキブリはすぐには返答しなかった。
俺にその見え透いたような目を向け、間を置いた。

何秒も何十秒も俺の目をじっくりと見た。
俺がそれに耐えれなくなり、何か言おう、
そう思う瞬間まで年老いたゴキブリは何も言わなかった。

33: 2011/06/01(水) 22:47:05.10 ID:tiZMSqIi0

長老G「・・・・・・いいじゃろう。 行ってきなされ」


年老いたゴキブリが突如として言った。
まさか信じてくれたのだろうか?
正直に話したものの、絶対に信じてはくれまいと俺は思った。
少なくとも、俺ならこんな馬鹿げた話を信じないだろう。
俺はこの年老いたゴキブリにお礼言いながら、暗闇から駆け出した。


長老G「・・・・・・頑張るのじゃぞ」


後ろで小さく年老いたゴキブリが応援してくれた気がした。


・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・

37: 2011/06/01(水) 22:49:12.47 ID:tiZMSqIi0

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・



まず、初めに何をしよう。
外には出れ、場所も分かるが、この姿ではカブトムシの群れに戻れるとは思えない。
さすがに年老いたゴキブリのように、理解してくれるのはほんの一部だろう。

それよりは原因を探すため、昨日の寝る前の一連の行動を思い出す方が有意義だろう。
俺は昨日の一日のことを振り返るため頭を捻った。
そして、おぼろげながらも昨日の行動を搾り出す。

夜いつも通り起きて、いつもの場所に蜜を吸いに行った。
そのときは仲間と少し談笑したが、特に何もしなかったはずだ。
適当に食べて、少し持ち帰ったが結局蜜を食べなかったことくらいだ。

まさか、それが原因か?
嫌、まさか・・・・・・。
そんなことで、ゴキブリにされてはたまったものではない。

38: 2011/06/01(水) 22:51:13.80 ID:tiZMSqIi0

他はなんだろう、ニンゲンに捕まりそうになったりもしたな。
よくあることだが。
そのとき仲間を一人見捨てた・・・・・・。
しかし、俺だって危なかった。
この世界は弱肉強食なのだ。

・・・・・・。
そう思うと、カブトムシも大して強くない気がしてきた。
ニンゲンは世界最強とも詠われているし、よくある話ではある。
それでも、少し悔しい思いをするのは事実だった。

他はそうだな・・・・・・ゴキブリを少しからかった。あれは面白かった。
相変わらず、ニンゲンの食べ物を漁る事しか考えていない。

40: 2011/06/01(水) 22:53:14.91 ID:tiZMSqIi0

この3つくらいだろう。
思い当たるといえば、思い当たる節は。
とりあえず、最初の蜜を捨てた場所に行ってみようか。



・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・

41: 2011/06/01(水) 22:55:16.47 ID:tiZMSqIi0

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


G「・・・・・・」

たどり着くと、そこには多くの蟻が群がっていた。
これでは様子が見れないではないか。
しかし、蟻といえど束になればかなり強い。

普段はゴキブリ以下の生活をしているが、本気を出せばやられかねない。
特に今はゴキブリの姿なのだ、用心せねば。

42: 2011/06/01(水) 22:57:17.90 ID:tiZMSqIi0

だが、このまま何も見ずに帰るわけにはいかない。
それではここに来た意味がなくなってしまう。
仕方なく、蟻達に話を聞くことにした。

G「蟻よ」

蟻A「なんだい」
蟻B「なんだい」
蟻C「なんだい」


三匹の蟻が同時にこちらを向いた。
気持ち悪いやつらめ・・・・・・。
・・・・・・俺もゴキブリだけども。
俺は言葉を続ける。

43: 2011/06/01(水) 22:59:19.03 ID:tiZMSqIi0

G「・・・・・・ここで変わったことはなかったか?」

蟻A「うるさい」
蟻B「黙れ」
蟻C「ゴキブリが!」


これはひどい。
いくらゴキブリだってその扱いはないだろう。
それにこっちは質問してるだけだ。
取って、食おうなどとは考えていない。

・・・・・・しかし、ここでいつもの用に熱くなってはいけない。
この状況の今、俺は常に冷静でいなくてはいけないのだ。

44: 2011/06/01(水) 23:01:20.13 ID:tiZMSqIi0

G「・・・・・・忙しいのはわかるが、答えてくれないか」

蟻A「えー」
蟻B「うーん」
蟻C「ゴキブリが!」


・・・・・・三匹目だけ捻りつぶしたい。
しかし、ゴキブリの姿だ、やめておこう。
飛んで逃げるのも苦手だし、なによりここで氏んでは意味がない。


G「お願いだ、この通り・・・・・・」


俺は頭を下げた。
首の辺りが気持ち悪いが仕方ない。

45: 2011/06/01(水) 23:03:22.34 ID:tiZMSqIi0

蟻A「わ、わかったよ、気持ち悪いから頭上げろ」
蟻B「うわー・・・・・・」
蟻C「ゴキブリが!」

G「有難う・・・・・・」


・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・

47: 2011/06/01(水) 23:05:23.98 ID:tiZMSqIi0
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


あれだけの屈辱を浴びたのに結局、何もなかった。
ただ蜜があったから運んでいただけのようだ。
とんだ損をした。

次の目的地へ行こう。
ニンゲンに襲われた場所だ。
確か、この森を抜けた先だったはずでそろそろ着くはずだ。
あいつは捕まっただけだから、恐らく何もないがどんな小さな事柄でも今はほしい。
俺は思いつつ、辺りを見回した。
何もなさそうだ・・・・・・そう思った瞬間背後から葉の擦れる音がした。

48: 2011/06/01(水) 23:07:25.42 ID:tiZMSqIi0

弱ったカブトムシ「くそ・・・・・・。なんてこと・・・・・・だ」

G「おい、どうした」


顔を覗き込むと、そいつは捕まったはずのカブトムシだった。
あいつはニンゲンによって捕らわれたはずだ。
どうしてここに・・・・・・。


弱ったカブトムシ「っく・・・・・・。ゴキブリか、お前に話す価値などない」


弱ったカブトムシは掠れるような声で言った。
確かにゴキブリになんかやられた理由を話すのは屈辱だろう。
しかし、どうにかして俺はこいつの話を聞かなければならない。

50: 2011/06/01(水) 23:09:26.95 ID:tiZMSqIi0

G「お願いだ、教えてくれ。 俺には必要な情報なんだ」

弱ったカブトムシ「何言ってやがる。 嫌だと言ってるだろう・・・・・・」

G「・・・・・・頼む」


俺はなるべく誠実に聞こえる用懇願した。
ゴキブリにこんな頼みごとをされたのは初めてだろう。
弱ったカブトムシもその態度に少し好感を持てたのだろうか?
嫌々ながらも事情を話してくれた。

52: 2011/06/01(水) 23:11:28.07 ID:tiZMSqIi0

弱ったカブトムシ「・・・・・・ニンゲンの振った網の鉄の枠の部分に当たったんだ。そして木に叩き付けられて、この様だ」

G「・・・・・・」

弱ったカブトムシ「くそ!ゴキブリに見取られるとはとんだ人生だ。 あいつが少しでも助けてくれれば・・・・・・」


カブトムシはそう言うと、息を引き取った。
俺はその場からすぐには離れられなかった。
カブトムシの最後の言葉の『あいつ』とは俺のことだろう。
こいつは俺のせいで氏んだのだろうか?

54: 2011/06/01(水) 23:13:30.97 ID:tiZMSqIi0

違う。
・・・・・・俺が飛び込んだって何も変わらなかった、そうに決まってる。


G「・・・・・・くそ!」


俺は弱ったカブトムシと同じ用に悪態を付いた。


・・
・・・・・
・・・・・・・・

56: 2011/06/01(水) 23:15:31.82 ID:tiZMSqIi0

・・・・・・・・
・・・・・
・・


・・・・・・ここで最後だ。
あるゴキブリをからかった場所だ。
どうせここも誰もいないだろう、そう思ってここに来たのが間違いだった。


強気なカブトムシ「おうおう、きたな」


そこには昨日、俺と一緒にゴキブリをからかったカブトムシがいた。
そうだった、いつもこれくらいの時間になるといつもこいつはここにいるんだった。
・・・・・・俺と一緒に。

57: 2011/06/01(水) 23:17:32.53 ID:tiZMSqIi0

強気なカブトムシ「おい、なんだよその目は。 気持ち悪さがましてるぞ?」


ふざけやがって。
俺は昨日、お前の隣にいたんだぞ?


G「うるさい、俺は昨日までカブトムシだったんだ」

強気なカブトムシ「・・・・・・は?」


・・・・・・しまった。
カブトムシにとって、ゴキブリにこんなことを言われるのは屈辱的だろう。
馬鹿にされると思うのがいいとこだ。
このゴキブリの姿のままこいつと戦ったら、身が持たない。
さすがに強気なカブトムシも、頃しはしないだろう。
しかし、早く元に戻りたい状況でこいつと戦っても何の得もない。

58: 2011/06/01(水) 23:19:34.15 ID:tiZMSqIi0

強気なカブトムシ「お前今、なんていった?」

G「い、いや・・・・・・」


予想通り、強気なカブトムシはからかうだけで返すつもりはなくなったようだ。
背中に悪寒が走り、早く逃げろと俺の頭が命令してくる。
これはやばい、そう直感して俺は走りだそうと強気なカブトムシに背を向けた。


強気なカブトムシ「おい、待てよ」


しかし、すぐに腹の下に強気なカブトムシの角が入り込んできた。
やはり、ゴキブリがカブトムシから逃げるなんて無理な話。

59: 2011/06/01(水) 23:21:36.17 ID:tiZMSqIi0

G「ぐぁ・・・・・・」

強気なカブトムシ「お前、馬鹿にしてるのか?」


強気なカブトムシが俺を持ち上げながら言た。
物凄く深いそうな、高圧的な声。


G「うぐ・・・・・・そんな気は・・・・・・」

強気なカブトムシ「ほう、冗談であんなことを言ったのか?」

60: 2011/06/01(水) 23:23:49.95 ID:tiZMSqIi0

G「・・・・・・」


本気で言ってるが、それを言ってもどうしようもないだろう。
俺は必氏に逃げ出す方法を考えた。
しかし、そのかいもむなしく、強気なカブトムシは攻撃を開始した。

俺はただただ、その攻撃を耐えるしかなかった。


・・
・・・・・
・・・・・・・・

62: 2011/06/01(水) 23:25:56.23 ID:tiZMSqIi0

・・・・・・・・
・・・・・
・・


・・・・・・体中が痛い。
殺さないまでも、強気なカブトムシは俺のいたるところに攻撃した。
これでは元の体に戻るどころではない。
まず、体を直さないとまともに動くことさえままならないだろう。


G「うう・・・・・・」


しかし、体を直すにも行く当てがない。
俺は今、独りぼっちなのだ。

63: 2011/06/01(水) 23:27:59.07 ID:tiZMSqIi0

どうしようもないこの状況。
誰でもいいから救ってほしかった。
そんなときに頭上から俺に声がかかった。


ゴキ神様「ゴキブリよ」

G「だ、誰だ・・・・・・」


驚いた。
急に頭上から声がするのだ。
上を向いたものの、飛んでいる者はおらず、姿かたちもない。


ゴキ神様「我はゴキブリ界の神だ」

64: 2011/06/01(水) 23:30:00.78 ID:tiZMSqIi0

何を阿呆なことを言ってるいるのだろう。
姿かたちが見えないだけでそんなことを言って、俺をからかおうとしているのだろうか?
こんなときに助けもしないで、からかうことしか考えられないやつだと思い、声を荒げながら言った。


G「何が神だ! ふざけるな」

ゴキ神様「ほう、そんな言葉遣いをするでない。 そんなだから、ゴキブリにされてしまうのだ」

G「・・・・・・」


一瞬俺の思考が止まった。
こいつは本当に神なのかと、信じてしまいそうになった。
なぜ、俺がゴキブリの姿に変わったとわかるのだろう。
そう思い、聞こうとするとまたも先手を取られた。

66: 2011/06/01(水) 23:32:05.99 ID:tiZMSqIi0

ゴキ神様「お前の今の姿は罪だ」

G「何が・・・・・・」

ゴキ神様「お前は昨日、一日何をした?」


神が俺の言葉を覆うように言った。
何って・・・・・・何もしていないだろう。
少し非日常的なことが少しばかり起こったくらいだ。


ゴキ神様「自らの罪にさえ気づけないのか・・・・・・」

67: 2011/06/01(水) 23:34:08.13 ID:tiZMSqIi0

呆れたものだ。
そう神は呟き、少し間を置いて言葉を続けた。
俺が何を言おうと無視されそうなので、俺は黙ってその言葉を聴いた。
否、体が動かない今、聞くしかなかった。


ゴキ神様「お前は食べ物を粗末に扱い、仲間を見捨て、罪のない者を侮辱した」


それがどうした。
そう口答えしそうになってやめた。
この辺りで俺は本当に神ではないのかと、思い始めていたからだ。
俺が無言のままでいると、それを確認して神は言葉を続ける。

68: 2011/06/01(水) 23:36:09.86 ID:tiZMSqIi0

ゴキ神様「理解したか? お前がゴキブリになるに十分な理由だ」


まさか、それだけで・・・・・・。
思いかけたが、ここと俺はようやく悟った。
自分が何をしたのか。
俺が今日一日受けてきたことは、自分でやっていたことではなかろうか?

食べ物を粗末に扱い、仲間を見捨て、罪のない者を侮辱した。
俺はことの重さに気づいたのだ。
馬鹿なものだ、こんな姿になってもわからず、ようやく今理解したのだ。

69: 2011/06/01(水) 23:38:11.82 ID:tiZMSqIi0

ゴキ神様「ようやく気づいたか。 だが、もう遅い。 せいぜい頑張るのだ・・・・・・」


そう言った神はこの場から去るように感じ取れた。
どうにか呼び止めなければ。
これでは一生ゴキブリの姿のままだ。
俺は確かに罪を犯した。
しかし、償うことはできないのだろうか?


G「ま、待ってくれ!」

ゴキ神様「・・・・・・」

G「お、俺に償うチャンスを与えてくれ! 最初で最後でいい、お願いだ」

71: 2011/06/01(水) 23:40:12.86 ID:tiZMSqIi0

俺は今の体のまま声の限りを尽くし、神に語りかけた。
神はその場にいたのか、もう帰ったのかそれすらもわからないまま、返事を待つ。
これでもし、否と答えられれば俺は一生この姿のまま。
下手をすると、この場で肉片になり朽ち果てるのかもしれない。


ゴキ神様「・・・・・・良いだろう」


神が先ほどのように不意に言った。
良いだろう、それは償いのチャンスを与えてくれる、そういう意味の言葉だった。
どうやら俺は首の皮一枚だけ、繋がっていた様だ。


ゴキ神様「ゴキブリの長老に会いに行くのだ。 そして、全てを話せ」

73: 2011/06/01(水) 23:42:14.51 ID:tiZMSqIi0

それだけ言うと、神はどこかに消え去ったようだった。
俺の体はいつの間にか動けるまでに、回復していた。
神がやったのだろうか?

この時点で完全に俺は神だと信じきっていた。
そして、言われた通り、ゴキブリの長老に会いに行くことにした。
もうあそこにいる、ニンゲンには会いたくはないのだが、神の言葉なら仕方ない。

恐らく長老とはあの最初の暗闇の中にいた、あの老いたゴキブリのことだろう。
俺はそう確信して、あの場所に戻るために走り出した。


・・
・・・・・
・・・・・・・・

75: 2011/06/01(水) 23:44:16.02 ID:tiZMSqIi0

・・・・・・・・
・・・・・
・・


長老G「・・・・・・戻ったか」


俺の姿を見て、老いたゴキブリはあの見え透いた目をして呟いた。
帰ってくるのさえ分かっていたのだろうか。


G「・・・・・・長老」


俺は何を言っていいかも分からず、そうとだけ言った。
長老は良いのだ、とだけ言い言葉を続ける。

76: 2011/06/01(水) 23:46:18.64 ID:tiZMSqIi0

長老G「ゴキ神様から・・・・・・じゃな?」


真剣な眼差しで長老は言った。


G「・・・・・・はい」

長老「自分が何をしたか分かったかのう?」

G「はい・・・・・・」


すると、長老はほっほっほと笑いながら、それならば良いと言った。
長老はどこかで、神と認識があるような雰囲気だった。
俺はどうすることもできず、ただ次の言葉を待った。

78: 2011/06/01(水) 23:48:20.89 ID:tiZMSqIi0

長老G「そうすると、ゴキ神様から何か言葉を授かったのかのう?」

G「・・・・・・長老の元に行けと、言われました」

長老G「ほう・・・・・・」


そう言うと、老いたゴキブリは少し考える素振りを見せた。
するとまた、笑いながら言う。


長老G「本当に自分の罪を理解したかの?」

79: 2011/06/01(水) 23:50:21.81 ID:tiZMSqIi0

G「それは本当です。 もう・・・・・・理解しました」


老いたゴキブリの言葉に対し、誠心誠意を込めて俺は言った。
これが最初で最後のチャンスだ。
・・・・・・しかし、俺はそれ以上に自分の罪を重く感じられた。
そんなことよりも、償いをしないといけない。
そう思い始めていた。


長老G「ほっほっほ。 ならば、ここで一ヶ月生活してみなさい」

G「・・・・・・え?」

82: 2011/06/01(水) 23:53:32.65 ID:tiZMSqIi0

老いたゴキブリの言葉は予想外のものだった。
ただここで、一ヶ月間生活をする。
そんな簡単な償いがあるのだろうか。


長老G「安心しなされ。 お前さんは一ヵ月後、変われるじゃろう」


老いたゴキブリはやさしく俺に言った。
それでいいのだろうか、そう思った。

しかし、これでいいのかもしれない。
償いは元の姿に戻ってから、いくらでも出来る。
そう思い、俺はその言葉に頷いた--・・・・・・。

83: 2011/06/01(水) 23:55:33.83 ID:tiZMSqIi0

・・・・・・・・
・・・・・
・・

その後、俺は一ヶ月間そこでゴキブリとして暮らした。
ゴキブリの仲間はこんな俺を受け入れてくれたのか?
その話も本当してあげたいんだけど・・・・・・。

一ヵ月後俺が無事、カブトムシに戻れたのだろうか?
俺は結局、どうなったのだろうか?

色々なことが俺の周りで起こったけど、それはまた別のお話。

    -おわり-

86: 2011/06/01(水) 23:59:13.19 ID:AI/Yl3Mc0
さ~て、次回のゴキ神さまは?♪

89: 2011/06/01(水) 23:59:26.34 ID:R7jcxKFh0
もう終わりかよっ!

90: 2011/06/01(水) 23:59:45.55 ID:3GPzvmti0
続きは・・・ないのか・・・
というよりまさかGのSSをここまでまともに読むとは思わなかった

96: 2011/06/02(木) 00:13:04.45 ID:oVjQDtU10

・・・・・・・・
・・・・・
・・


中二病G「頷いた・・・・・・っと!」


やっと完成した。
僕の<※パンドラノート>だ。
この中には僕が<※絶対神>になるまでの<ストーリー>が書かれている。
※パンドラノート:中二病の物語
※絶対神:カブトムシ


中二病「これで僕は・・・・・・」


そう僕はこのノートと同じように事を動かそうとしていた。
僕は笑った。

97: 2011/06/02(木) 00:15:06.18 ID:oVjQDtU10


中二病G「ふははははは! これでこの生活ともおさらばだっ・・・・・・!」


後ろで俺の<※守護霊>が睨んで来たが気にしないことにした。
クククッこれで僕は・・・・・・僕は!!
※守護霊:母親


まず何から事を始めるべきか。
そう、まずはこのノートの最初のページ。
この暗く薄汚れた<※暗黒界>から逃れなければならない。
※暗黒界:ただの暗闇

98: 2011/06/02(木) 00:17:08.02 ID:oVjQDtU10

中二病G「<絶対神>に俺はなる!」


そう叫び、<守護霊>さえ恐れ逃げたところで俺は<暗黒界>の外へと歩を進めた。
出たところで最初の僕の<ステージ>だ。
これを決めれば、<絶対神>になったも同然だろう。


ヒト「あ! ゴキブリ!」


いつ見ても哀れな生き物よ。
僕の姿を見て、恐れおののくが良い!
本来ならば、ここで背後から誰かが来るはずだ。

99: 2011/06/02(木) 00:19:10.46 ID:oVjQDtU10

中二病G「--・・・・・・え?」


しかし、それは僕の思い違いだった。
哀れな生き物は冷静な判断して、手元にあった缶で僕を攻撃した。

視界が眩み、世界が暗転した。
僕はどうなったのだろう。
言葉がでない。
・・・・・・・。



・・
・・・・・
・・・・・・・・

100: 2011/06/02(木) 00:21:12.72 ID:oVjQDtU10

・・・・・・・・
・・・・・
・・



ヒト「はあ・・・・・・。ゴキブリの出る季節になったね」

ヒト「そうだね。 まあ、季節が季節だから仕方ないよ」

ヒト「うーん・・・・・・?」

ヒト「それに、女はあんまりそういうの気にしないでしょ」

ヒト「そうだけど」

ヒト「じゃあ、ゴキブリ捨ててくるよ」

ヒト「うん」

中二病G「・・・・・・」

二種類のニンゲンの話す足元には、
哀れなゴキブリの氏体がぽつりと落ちていた。


       -END-

101: 2011/06/02(木) 00:23:33.18 ID:upwb0V8F0
切ないな

102: 2011/06/02(木) 00:23:41.68 ID:oVjQDtU10

というわけで、僕の評価がだだ下がりしたであろう
終わり方で無事終えられたので、お終いです。

支援、書き込み、もしいたとしたらROM専の人
さらに今回は代理の含めて有難う。
じゃあ、またどこかで会う日まで、ばいばい。

103: 2011/06/02(木) 01:02:34.80 ID:XTxvTzp70
乙!

引用元: カブトムシ「ゴキブリになってる・・・・・・だと?」