3: 2022/03/19(土) 18:21:06.86 ID:H6sxnndo.net
すみれ「…………」ペラッ

すみれ「……………」ペラッ

すみれ(やっぱり練習前の部室は良いわね。読書が進むわ)

すみれ「…………」ペラッ

かのん「おはよー!」ガチャ

恋「おはようございます」

かのん「すみれちゃんもう居たんだ! 今日早いんだね」

すみれ「ええ、ちょっと本を読みたくて。家だと妹も居て中々ねー…」ペラッ

かのん「そっかぁ」

4: 2022/03/19(土) 18:22:50.46 ID:H6sxnndo.net
恋「それでは、お茶を用意しますね」

かのん「ねぇ恋、今日は私がお茶淹れてもいいかな?」

恋「かのんが……? あぁ、もしかして」

かのん「そう! 昨日買った紅茶を試してみたくて!」

恋「ふふっ。ではおまかせしますね」

すみれ「…………」ペラッ

すみれ「……!?」ギャラッ

5: 2022/03/19(土) 18:24:37.81 ID:H6sxnndo.net
すみれ(今この二人、お互いの事を、よ、呼び捨てしてなかった…?)

すみれ「…………」

すみれ(き、気のせいよね)

かのん「恋~、紅茶って熱々のお湯で良いんだっけ?」

すみれ(気のせいじゃないったら気のせいじゃないわ!!)

すみれ(どういう事よ? 二人とも、そんなに仲良かったっけ?)

すみれ「…………」

すみれ「………………………」

すみれ(本の内容が全く頭に入ってこないわ…)

6: 2022/03/19(土) 18:25:51.04 ID:H6sxnndo.net
すみれ「……」チラッ

すみれ(恋…何よその暖かい微笑みは。なんて穏やかな目でかのんを見ているの…!)

すみれ「……」チラッ

すみれ(かのんはかのんで、なんで紅茶を淹れているだけなのにそんなに嬉しそうなのよ)

すみれ(……でも、よく考えたら私だって二人を呼び捨てにしてるし)

すみれ(そこまで大したことでもないわよね……)

すみれ「…………」

すみれ(ダメ、頭に入ってこないわ…)

可可「オッハヨーゴザイマース!」ガチャ

すみれ(あぁ…また厄介な奴が……)

7: 2022/03/19(土) 18:27:22.84 ID:H6sxnndo.net
可可「オォ、今日ハみんな早い集合デスね! 関心関心!」

可可「すみれは読書デスか、珍しすぎます。明日は霰デス」

すみれ「うるさいわねぇ、私だって本くらい読むわよ」

恋「でもすみれさん、先程から手が止まっているようですが…」

すみれ「誰のせいよ誰の!!」ギャラッ

恋「?」

すみれ(変なところちゃんと見てるんだから…)

かのん「可可ちゃん、今紅茶淹れてるから楽しみにしててね!」

可可「アリガトゴザイマス。かのんがお茶担当なのも珍しいデスね」

かのん「うん、恋に言って代わってもらったんだぁ」

可可「ソデスか」

可可「…………」

可可「……?!?」

9: 2022/03/19(土) 18:33:00.83 ID:H6sxnndo.net
可可「」シュバッ

すみれ(何でこっちを見るのよ!私だって何も知らないわよ!)

恋「かのん、そろそろ蒸らしも十分な頃合いじゃないですか?」

可可「!?」ガタンッ

可可「」シュババッ

すみれ(だから何も知らないってば!)

すみれ(……とりあえず頷いておこうかしら)コクリ

可可「!!」ガーン

すみれ(なんだか凄くショックを受けてるわね……私が言えたことでもないけど)

10: 2022/03/19(土) 18:35:38.11 ID:H6sxnndo.net
可可「しゅみ、しゅみれぇ…」ヨロヨロ

すみれ「ちょっと! 私の膝の上で蹲るんじゃないわよ!」

可可「どういう事デスか! 説明を求めマス!」コソコソ

すみれ「そんなの私が聞きたいわよ。今日になったら“こう”なってたんだから」コソコソ

可可「違いマス。何かがおかしいデス」コソコソ

すみれ「そんな事ないんじゃない? 私やアンタもみんなの事呼び捨てしてるじゃない」コソコソ

可可「ハッ! 確かに。でも……何か……ありぇ?」

すみれ「ほら立ちなさいよ。アンタらしくも無い……ってちょっと、なんで泣いてるのよ」

可可「はぇ? ナンで? わからないデスけど、何だか胸が締めつけられて……」ウルウル

すみれ「もう、シャンとしなさいよ。みんなが心配するでしょ」ナミダフキフキ

11: 2022/03/19(土) 18:37:20.70 ID:H6sxnndo.net
かのん「お待たせー! 紅茶できたよー!」

かのん「って可可ちゃん!? 大丈夫? 眼が赤いけど……」

すみれ「あ、アハハ! 私のデコピンが聞きすぎたみたいね! コイツが生意気なこと言うからつい~」

すみれ(なんで私が苦しい言い訳しなきゃいけないのよぉ!)

恋「可可さんは椅子から立ち上がったと思ったらすみれさんへ倒れていきました。膝を打ったの間違いでは?」

すみれ(トンチンカンな推察を立ててるんじゃないわよ!)

可可「ナンでもありましぇ…ククはも…大丈夫デス」ズビィーー!!

すみれ「ああっ! 私のハンカチぃ!!!」

千砂都「ウィッスー! みんな今日は早いねぇ」ガチャ

すみれ「ギャラクシィィイイィイイィィィーーーーーー!!!!!!!」

14: 2022/03/19(土) 18:41:35.85 ID:H6sxnndo.net
夕食につきちょい休憩

17: 2022/03/19(土) 18:52:07.67 ID:H6sxnndo.net
ピーンポーンパーンポーン

《各部活の代表者は、部会を持ちますので、視聴覚室へ集まってください。繰り返しお伝えしますーー》

かのん「そうだった! 今日は部会のために早く来たんだったね!」

恋「部費の割り振りを決める大切な会です。生徒会が主催なので私も参加してきますね」

千砂都「そうなんだ。頑張ってね二人とも」

かのん「じゃあ行こ!恋」ガシッ

千砂都「は?」

すみれ(落ち着けすみれ、落ち着いて本に目を落とすのよ……)

恋「ちょっとかのん、あまり引っ張らないでください!」ドタバタ

ガチャン

千砂都「恋、かのん」

千砂都「……………」ジロリッ

すみれ(だからなんでこっちを見るのよ~~)ダラダラ

千砂都「すみれちゃん」

すみれ「ヒイッ!」

千砂都「コレはどういうことなの?」

18: 2022/03/19(土) 18:55:33.44 ID:H6sxnndo.net
すみれ「し、知らないわよ! 今日! 気付いたらこうなってたんだから」

可可「んっ……ふっ…く」ゴシゴシ

千砂都「可可ちゃん、泣いてるけど?」

すみれ「ちょっと驚いただけよ。ねぇ?」

可可「ソ、ソですね。呼び捨ては可可もすみれもやってます。特別なことではないデス。すみれがそう言ってマシた」

すみれ「そうよ、千砂都も少し落ち着いて」

千砂都「違うよ。全然違う」

すみれ「え?」

19: 2022/03/19(土) 18:57:38.55 ID:H6sxnndo.net
千砂都「すみれちゃん、みんなの名前を言ってみて」

すみれ「えっ…可可、かのん、千砂都、恋…言ったけど?」

千砂都「可可ちゃんも言ってみて」

可可「ハイデス。クク、かのん、すみれ、千砂都、レンレンデス」

すみれ「自分も含めるのがアンタらしいわね」

千砂都「じゃあかのんちゃんは皆のこと、どう呼ぶかな?」

すみれ「えっと…すみれちゃん、ちぃちゃん、クゥクゥちゃん、れ、“恋”…」

千砂都「恋ちゃんはこう呼ぶよね。千砂都さん、すみれさん、可可さん、“かのん”」

千砂都「重要なのはキミたち二人がみんなをどう呼ぶかじゃないの。かのんちゃんが…恋ちゃんがお互いを“特別に”呼び合ってることなんだよ……ッッ!!」バーン

すみれ「!」

可可「!!」

20: 2022/03/19(土) 18:59:23.08 ID:H6sxnndo.net
可可「しょんな、しょんなぁ…」ヘナヘナ

千砂都「さぁすみれちゃん、吐いてもらうよ! あの二人に何があったのか」

すみれ「だから知らないったら知らないってば! さっきまで冴えてた頭はどこに行ったのよ!」

千砂都「じゃあ誰に聞けば良いの……」

すみれ「本人達に聞けばいいじゃない」

千砂都「っ! そ、れは、そうだけど」

すみれ「大体どうしたのよ二人とも。かのんと恋が仲良くなって困ることある? いい事じゃないの」

すみれ(……多分、ね)ズキン

可可「グソクムシは他人事だからそんな事言えるんデス」

すみれ「ちょっとどういう意味よ!」

千砂都「……すみれちゃんの言うとおりかも」

可可「千砂都!?」

千砂都「このまま何もわからないままなんて、嫌だもんね」

可可「デモ…でももし……」

恋「ただ今戻りました」ガチャ

21: 2022/03/19(土) 19:01:10.84 ID:H6sxnndo.net
すみれ「来たわね」

恋「はい?」

可可「レンレン! こっち来やがれです!」グイッ

恋「ちょちょっと! 何なんですか?」

千砂都「全て吐いてもらうよ」

恋「ヒィ、こ、怖いです千砂都さん。何を吐けば良いんですか~!」

すみれ「アンタが、かのんを呼び捨てにしてる理由よ」

恋「そ、それはっ…その」

可可「ネタは上がってるデス。吐くまでカツ丼は無しデスよ」

恋「わ、私がお願いをしたのです」

すみれ「お願い?」

恋「かのんさんに…その…『恋』と呼んでくれないか、と」

千砂都「それはどうして?」

恋「呼んで欲しかったのです。かのんにはそう……」

恋「私、かのんのような友達は初めてで、昨日一緒に一日を過ごして、その気持ちが凄く大きく強くなって…気付いたらお願いをしていました」

恋「憧れだったのです。親しい人に恋、と呼ばれるのが……」

可可「ナンですかその乙女の顔はぁ~!?」ワナワナ

千砂都「昨日? 一体何が」

かのん「ただいまー!」ガチャ

かのん「恋! 生徒会の皆が呼んでたよ! 少し話し合いたい事ができたんだって」

恋「はい……皆さん、一旦失礼しますね」ガチャ

22: 2022/03/19(土) 19:04:31.60 ID:H6sxnndo.net
すみれ「……かのん、ここから先はあなたね」

かのん「へ?」

千砂都「かのんちゃん、ここ座って」

かのん「? う、うん…」

可可「もう嫌デス! 嫌な予感しかシマせん!可可は反対デス~!」

すみれ「可可、アンタも覚悟決めなさい」

千砂都「かのんちゃん、単刀直入に聞くね?」

千砂都「…昨日、恋ちゃんと何かあったの? 二人とも妙に親しげだけど」

かのん「あぁ、うん…ちょっとね」

すみれ(………聞きたいような聞きたくないような…可可が移ったのかしら)ソワソワ

かのん「街に一人で出掛けたんだけど、そこで偶然“恋”に合ったんだ」

可可「はぐぅ!」グサッ

すみれ「耐えなさい可可、そんなんじゃこの先持たないわよ!」

千砂都「その、“恋”って言うのは…」

かのん「あー、みんなその事を気にしてたんだね。うーん、どこから話したら良いんだろ」

すみれ「最初からよ」

すみれ(中途半端に話されて、またこの二人に絡まれたらたまらないもの)

23: 2022/03/19(土) 19:07:36.57 ID:H6sxnndo.net
かのん「えっと昨日ね、街に買い物に行きたかったんだけど、ちーちゃんやありあを誘ったんだけど捕まらなくて…」

千砂都「昨日はダンス仲間の大会を見にいく約束があったから……」

かのん「久しぶりに一人で出掛けたんだ。そこでさっき言ったように恋とばったり会って、一緒にお買い物したの」

かのん「洋服や雑貨屋さんを見て回ってて、改めて思ったんだけどね、恋って所作が綺麗なんだぁ。おしとやかって言うのかな? 
あと、私が何気なく話す事にもしっかり考えて答えてくれるんだ」

かのん「私の友達って、活発で、ノリで会話して楽しい子が多かったから、私の事を真剣に考えてくれてるのが…なんかこそばゆくって、少し嬉しかったの」

かのん「あとね、すっごくお洒落なレストランに連れて行ってくれたの! よくサヤさんと外食するらしくて、お気に入りの店なんだって」

かのん「そこで音楽や作曲もしたんだ。他の人とこんな話したことなかったからとっても新鮮だったな! ピアノってズルいよね。コードとメロディ一緒に弾けるんだよ」

かのん「それとね、私が見たい映画があるって話をしてたのを覚えてくれていて、お昼のあと、丁度良い時間に映画館に連れて行ってくれたの! しかもチケットも予約されてて」

かのん「『ネットのやり方を勉強した甲斐がありました!』って、凄く嬉しそうな顔してるのがなんかおかしくって……私のほうがおもてなしされてるのにね」

すみれ(めっちゃ語るわねこのかのん……)

24: 2022/03/19(土) 19:13:07.10 ID:H6sxnndo.net
かのん「その後ね、恋の家のコーヒーが切れてるって話だったから、オススメの豆を選んであげたの。私は恋ちゃんにオススメの紅茶を教えてもらっちゃった! あ、今日みんなに淹れたのはその紅茶なんだ!」

かのん「こんな風にエスコートされるのは初めてで……何だか大人の人とデートしてるみたいだったよ。こんなタイプの友達、今まで居なかったからすごく嬉しいって思ったんだ」

かのん「それでね、帰り道に恋が『私の事を、呼び捨てしてもらえませんか……?』って言うから、“恋”って呼ぶ事になったんだよ」

かのん「それで、私のことも“かのん”って呼んでほしいなってお願いしたんだ」

かのん「これで良いのかな? でも、ただ一緒に遊んだ話をしただけだけど…」

すみれ「……十分よ。可可をこの膝の上で頃すには、ね」ポンポン

可可「はへぁ」ポヤァ

千砂都「おしとやか…お洒落な店…音楽…エスコート…」ブツブツ

かのん「ちょっとみんなどうしたの!?」

すみれ「かのん、悪いけど少し席を外してくれないかしら。そうね、恋を連れてきてくれない?」

かのん「う、うん。じゃあ…言ってくるね」ガチャ

25: 2022/03/19(土) 19:14:32.30 ID:H6sxnndo.net
すみれ(さて……練習前にこの二人を復活させないと)

可可「ノロケられまシタ。完全にノロケられまシタ……」

千砂都「フフッフフフ」

すみれ「ほら、しっかりしなさい二人とも。ただ一日遊んで、仲良くなって、呼び方が変わった。それでおしまいよ」

可可「グソクムシのせいデスー!!」

すみれ「なんでったらなんでよ!」

可可「ククはかのんと一緒にスクールアイドル始めて、レンレンに邪魔されて」

可可「ソレでもフェスで結果を出すためにイッパイ練習して、歌えないかのんを励まして」

可可「ククの夢のために泣いて濡れたかのんを抱きしめて……」

可可「そんな展開から『かのんって呼んでよ』って言われるエモエモなストーリーがあったのデス!」

可可「それなのに、次のメンバーがグソクムシのせいで、呼び捨てするのになんの躊躇もアリませんデシた!」

可可「ククの呼び捨ては特別だったハズなのに…!」

可可「かのんだけの特別をすみれには自然にあげちゃってまシた!」

可可「全てグソクムシのせいです!!」

すみれ「そんなの知ったこっちゃないわよ!」

可可「返品デス!リコールを要求しマス!」

28: 2022/03/19(土) 19:17:06.71 ID:H6sxnndo.net
千砂都「落ち着きなよ可可ちゃん。かのんちゃんに素敵な友達が出来るのは良い事だよ」タラー

すみれ「ち、千砂都……アンタ……」

可可「口から血ガ……」

千砂都「え? おかしいな…」ゴシゴシ

千砂都「確かに私にはおしとやかさも、音楽の知識も、エスコートする様な大人余裕もないよね」

千砂都「かのんちゃんの横に立つにはまだまだ不足だって、良くわかったよ」

千砂都「大丈夫。弱い自分を変えるのは今までもずっとやってきたことだからね」

千砂都「私、修行の旅に出るね。全てが○になるまでは帰ってこないよ」

すみれ「アンタが一番落ち着きなさいよ! 意味わかんないから!」

千砂都「大丈夫。心のリミッターを外せばできないことは無いんだよ」

すみれ「ストイックに夢見過ぎよ!」

かのん「ただいまー……」ガチャ

恋「戻りましたー……」

可可「すみれ“サン”、この紅茶美味しいデスね」

千砂都「大丈夫。すぐに会えるよ。地球は○いからね」タラー

かの恋「……!?」

かの恋「」ババッ

すみれ「だから何でみんな私を見るのよーー!!!!」

29: 2022/03/19(土) 19:17:44.37 ID:H6sxnndo.net
終わり

引用元: かのん「ねぇ恋、今日は私がお茶淹れてもいいかな?」