1: 2022/03/27(日) 09:37:26.327 ID:AOkqeULh0
世界は変わり果ててしまった

花が咲き乱れ、人々は楽しく歌い、踊り
平和な日々がこれからも続いていく、それが当たり前だとみんな思っていた

あの日がくるまでは

2: 2022/03/27(日) 09:38:43.210 ID:AOkqeULh0
アンパンマンもばいきんまんも
もういない

あいつが消した
あの化け物が

3: 2022/03/27(日) 09:41:25.011 ID:AOkqeULh0
あの日、
ばいきんまんが特製のばいきん草のエキスをロールパンナに注ぎ込み
ロールパンナはブラックロールパンナとなってしまった

しかし、いつもとは訳が違ったらしい

そのばいきん草は強大な力を持ち、優しい彼女の心は本当に跡形もなく無くなってしまった

4: 2022/03/27(日) 09:42:49.766 ID:AOkqeULh0
今この場所は灰色の大地でばいきん草が大量に生えうごめいている
人が暮らせるような所ではなくなった

5: 2022/03/27(日) 09:44:07.469 ID:AOkqeULh0
俺は街の方へ行き、まだ生き残ってる人がいるか探しに行った

6: 2022/03/27(日) 09:45:35.987 ID:AOkqeULh0
ここは確か街だったはず
瓦礫だらけの中

ロールパンナがそこにいた

7: 2022/03/27(日) 09:46:30.460 ID:AOkqeULh0
いや、今はブラックロールパンナというべきか

赤い冷たい眼をギラギラ光らせこちらを睨み付けてる

8: 2022/03/27(日) 09:48:27.133 ID:AOkqeULh0
パン工場のみんなを消した悪魔
許すことはできない

9: 2022/03/27(日) 09:49:17.313 ID:AOkqeULh0
…みんな、みんな、いなくなった
ジャムおじさん、アンパンマンですら

彼女は妹にも弟にも手をかけるほど豹変してしまった
無慈悲な凍りついた心で
みんなを消した

10: 2022/03/27(日) 09:50:18.340 ID:AOkqeULh0
「よぉ、ロールパンナちゃん、そんな怖い顔してどうした?」

白い息を吐いて赤い眼を光らせる彼女は本当に恐ろしい

「コ…ロ……ス」

11: 2022/03/27(日) 09:50:44.406 ID:AOkqeULh0
傷つけては罪悪感に苦しみ一人で泣いていた君はもういない

今ここにいるのは、憎しみと恨みで出来た悪魔そのものだ

12: 2022/03/27(日) 09:51:51.619 ID:AOkqeULh0
アンパンマンは優しすぎたんだ
どんなになっても優しい心は残ってる
そう信じ願っていた

しかし、その思いも虚しく
アンパンマンは…

13: 2022/03/27(日) 09:53:36.893 ID:AOkqeULh0
カレーパンマン「街のみんなは地下に避難させた。だからさ暴れ放題だぜ、よかったな」
俺はおどけたように言ってやった
どうせ何も届いてないだろうがな

「タ…タ…カ…エ…」

青いハートがギラリと光る

「…ああ、付き合ってやるよ…」

俺はなにもかもがどうでもいいんだ

14: 2022/03/27(日) 09:54:29.885 ID:AOkqeULh0
ゴオオオオッ

「ッ…!」

少しは脅かしてやった

「どうした、何を驚いてんだ?」

俺は特製のばいきん草の入った超激辛カレーを顔に入れていた

カレーの代わりに炎を吐くことができるが
しかし毒だ
徐々に俺の身体を蝕んで命を削っていく

15: 2022/03/27(日) 09:55:42.622 ID:AOkqeULh0
「お前は優しさなんてなくなってしまったんだろ?…俺もだよ」

俺は絶対に許さないと睨み付ける

「…」

冷たい眼でにらみ返される

「カレーパンチ!!」

俺は情けなんてかけやしない

16: 2022/03/27(日) 09:56:34.725 ID:AOkqeULh0
やはり、彼女の方が一枚上手だ。
とてもすばやい動きでかわしながらこちらに迫ってくる

「ロォォォルァァァ!!!!」
シュルルルル
ロールリボンで攻撃してくる
岩をも破壊する威力だ

ならば

ゴオオオオッ

「!!」

17: 2022/03/27(日) 09:57:06.461 ID:AOkqeULh0
二本のロールリボンを炎で燃やし使えなくしてやった

ここからは長期戦になりそうだ…

18: 2022/03/27(日) 09:58:07.151 ID:AOkqeULh0
 ̄ ̄ ̄ ̄

ブラックロールパンナは強い
俺の攻撃をかわし、武器を持たずとも攻撃してくる

俺の方はカレーのお陰で力がついたが、代わりに身体を蝕んでゆき限界だった

19: 2022/03/27(日) 09:59:12.458 ID:AOkqeULh0
ならば仕方ない

ブラックロールパンナもろとも炎で焼き付くした

手加減なんかしない

20: 2022/03/27(日) 10:01:13.254 ID:AOkqeULh0
「ハァ…ハァ…ッ…俺はな…アンパンマンを…パン工場のみんなを守るために生まれたんだ…」



「…でも、みんなはもういない…守るものも、自分の生きる意味も…何もない…」

炎の向こうからブラックロールパンナが現れた

21: 2022/03/27(日) 10:01:49.364 ID:AOkqeULh0
服は焦げ、覆面は焼け落ち、
素顔がみえる
以前、彼女の素顔を見たことがあったがとても美しく愛らしかった
しかし今は憎しみと焦げで顔が歪み
化け物のようでありながら妖しい美しさがあった

22: 2022/03/27(日) 10:03:36.873 ID:AOkqeULh0
「…俺にはもうお前への復讐心だけしか残ってない」

ああ、きっと今の俺もお前も正義なんて微塵もない獣なんだろうな

23: 2022/03/27(日) 10:05:12.678 ID:AOkqeULh0
「ハァ…俺も…体が持たねえ…だが」

これでけりをつけるしかない

「ウオオオオ!!!」

ブラックロールパンナが獣のような雄叫びをあげる

「これで……最後だあああ!!!」

俺の拳がロールパンナの胸を貫いた

24: 2022/03/27(日) 10:06:57.588 ID:AOkqeULh0
あの時

アンパンマンは最期に言っていた

ロールパンナちゃんはまだ優しい心が残ってるはず、きっと戻ってくれる。だから、ロールパンナちゃんの優しい心を呼び覚まして欲しい と

アンパンマン、俺はどうやら約束を守れなかったみたいだ

25: 2022/03/27(日) 10:08:52.248 ID:AOkqeULh0
「…ハァ…ッハァッ…ゲホッゲホッ」
力を使いすぎたようだ…


「…」

ロールパンナは目を閉じ横たわっていた

「…ロールパンナちゃん………ごめんよ…」

26: 2022/03/27(日) 10:09:43.957 ID:AOkqeULh0
俺は…
許さないと思っていながらやはり、ロールパンナのことは同情だろうか、とてもやるせない気持ちになった
俺はロールパンナを抱き寄せた
俺としたことが…涙が溢れて止まらない

27: 2022/03/27(日) 10:10:17.465 ID:AOkqeULh0
「…気に…するな…」

ロールパンナの手が俺の頬に触れた

28: 2022/03/27(日) 10:11:37.745 ID:AOkqeULh0
「ロールパンナちゃん…!」

ロールパンナは優しい心を取り戻したようだった
だが…

29: 2022/03/27(日) 10:12:38.002 ID:AOkqeULh0
「…私は…失敗作だ…カレー…パンマン…メロンパ…ンナ…アンパンマン…みんな…すまない…」

ロールパンナの瞳から光が消えてゆく

30: 2022/03/27(日) 10:13:25.837 ID:AOkqeULh0
「…私なんか…生まれてこなければ…よか…った…」

そんな悲しいことを言わないでくれ

31: 2022/03/27(日) 10:14:09.198 ID:AOkqeULh0
「ロールパンナ…」

ロールパンナは息をひきとった

32: 2022/03/27(日) 10:15:22.143 ID:AOkqeULh0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

カレーパンマン「なんのためにうまれて なにをして生きるのか 答えられないなんて そんなのはいやだ…」

俺は岩山に登って、ぼんやりとあいつの歌を口ずさんでいた

33: 2022/03/27(日) 10:16:33.611 ID:AOkqeULh0
もうすぐ俺の命も尽きてしまうが
もういい
何もかもがなくなってしまったから
もういいんだ

34: 2022/03/27(日) 10:17:31.168 ID:AOkqeULh0
涙も心もすでに枯れ果てた

あるのは思い出だけ
みんなが楽しく話をし、しょくぱんまんと喧嘩して仲直りして、みんなで美味しいものを食べたり、協力したり…

35: 2022/03/27(日) 10:18:22.784 ID:AOkqeULh0
カレーパンマン「風が気持ちいい…」

俺は目を閉じた

36: 2022/03/27(日) 10:19:29.523 ID:AOkqeULh0
目を覚ますと
俺は野原にいた

そうだ!今日はみんなとピクニックに行くんだっけ
早くいかないとしょくぱんまんにグチグチ言われるな!

その前にカレーを作ってもっていかなきゃな!

37: 2022/03/27(日) 10:20:15.339 ID:AOkqeULh0
明るい空を見上げると
見慣れたシルエットが見える

あれは…!

38: 2022/03/27(日) 10:21:03.553 ID:AOkqeULh0
俺はそいつに呼びかけた



「おーい、アンパンマン!」

39: 2022/03/27(日) 10:21:40.527 ID:AOkqeULh0


読んでくださりありがとうございました

引用元: カレーパンマン「おーい、アンパンマン!」