1: ◆/BueNLs5lw 2015/12/18(金) 22:49:47.64 ID:zuscwPdJ0
前回 悠と神奈
【総合タワーリシチ】キス、とかそれ以上がしたい?

今回 都とちはや



「ちーちゃん、寝ないの?」

「先、寝ていいよ」

「明日、休みだからって夜更かしはよくないよー?」

わかってるちゅーに。心配性だな、みゃあは。
ほとんど閉じられた瞼で、みゃあは布団の中であたしを手招きする。

「このボス、この時間帯しか出てこねえんですの。今、村人達がボスのせいで働き口が無くなって、ボスの配下の高利貸しに追いかけまわされて、困ってるの。ここで行かなきゃ女じゃないっしょ」

「そっかあ、人助けのためかー……じゃあ、しょうがないねえ」

でしょでしょ。
あ、なんか遠くの方で神奈様の怒声が聞こえたような気がするけど、気のせいかな。

「都さん」

「んー……」

なかなか、このボス手ごわいなあ。
回復薬足りるかな。

「あたしが困ったら、場所とか時間とか関係なく助けにきてくれるかい?」

自分の行為を正当化するために、
純粋培養のみゃあにそう問いかけた。

総合タワーリシチ 完全版(上) (ヤングキングコミックス)

2: 2015/12/18(金) 23:03:53.51 ID:zuscwPdJ0
「ちーちゃん~……」

「うん……ッ!?」

あ、相棒がやられた!
やべえ!
どうする? どうすんの、これ?!
スイッチ切っちゃう?! 
でも、セーブポイントから離れ過ぎてるしッ!!
でも氏んじゃったら、相棒に経験値はいんないしッ!

「私、ちーちゃんがいる所になら、どこにだって飛んで行くよ……」

「そっか、ありがと」

「ふふ……呼ばれなくても、走っていくから」

「宇宙とかどうすんのそれ」

あ、黄泉返り薬あったわ。

「行くよ」

「うっそでー……ん?」

おおおお!
イベント始まった!
胸熱じゃん。今まで助けてやった村人たちからのメッセージが届いてる!

――サンキュー、ちっは!
――がんばれ、ちっは!
――見守ってるぜ、ちっは!

適当だなおうおう。
他人事かよ。

「……ちーちゃんは、来てくれる? 私に何かあったら」

目を擦りながら、みゃあが言った。

「何かって、例えばどんなことー?」



6: 2015/12/19(土) 23:04:48.30 ID:bWcGzYIp0
「それはねー」

みゃあは布団に顔を半分入れながら、

「……あ、私が結婚するってなった時とか」

あまりの衝撃に、ゲーム機を取り落としてしまった。
そして、それが足の小指に当たった。

「あいた!? いた! めっちゃ痛い!」

「だ、大丈夫!?」

「都さん、あなた! 結婚すんの!?」

「ぶっ……驚き過ぎだよっ……ぷくく……もお、例えばだって。それより、足、大丈夫?」

都はベッドから出て、しゃがみ込んで私の足をなでる。

「わ、赤くなってる。冷やしたほうが……」

「そっか、例えばか……」

「ちーちゃ……」

ひどい冗談だ。まったくもーだよ。まったくもー。

「良かった……」

そりゃ、相手がいるのは、いいことだし、祝福しなくちゃいけないんだろうけど。
今じゃなくてもええやんけ。
いやあ、なんだこの気持ちは。
ほっとしちゃったわ。

9: 2015/12/19(土) 23:14:12.64 ID:bWcGzYIp0
「ちーちゃんはさ、私が誰かと結婚したらいや?」

「え、人類の平和と繁栄のために、おおいに奨励するけど」

「それどこのゲームの台詞なの?」

「今、やってる奴」

みゃあの肩がずっこける。

「みやこ君は、もしかして私に餅を焼かせるつもりなのかね?」

「?」

「だから、私に嫉妬して欲しいのかってこと」

「え え え!?」

なんじゃその驚き方は。

「違うの?」

「……そんな風に思ってたわけじゃ。でも」

「でも?」

「そうなのかな……そうなのかも」

真っ赤になって、私を見上げて、
みゃあは照れくさそうに笑った。

10: 2015/12/19(土) 23:33:34.37 ID:bWcGzYIp0
「ほお、お主誘っておるのかな。可愛い顔をしておるじゃないか」

いつも青臭いことを言って、
私を辱しめるから良い機会ですな。
ここいらで、こらしめてやるわい。
なあ、介さん、角さんや。

「もおやだなあ。可愛いのは私じゃなくて、ちーちゃんだよ」

「ぐっはあ!?」

寝る寸前で朦朧としているのにも関わらず、
この破壊力。
心に入ってくる。
ぴょんぴょんして持っていかれるううう。

「う……」

私は頭を垂れた。

「おじょうさん、どうしたん?」

「精神攻撃を受けた」

「おおげさだなあ」

仕返ししてやるわい。

「みやこって、誰にでも可愛いって言ってるの?」

「え」

「まさか、天然タラシ系暁君と同じ属性?」

「ち、違う! 私、ちーちゃん以外にそんな風に思ったことない!」

「へ、へえそうなんすか」

「そうっす!」

「じゃあ、私が一番可愛いってこと?」

「そう!」

自爆した。

11: 2015/12/19(土) 23:49:59.62 ID:bWcGzYIp0
「だって、私小さい頃は、ちーちゃんの子ども産みたいって思ってたもん」

「うっひょおお?! それ、なに、プロポーズ!? すげえ!!」

「む、昔のことだからね!」

みゃあってば大胆なんだから。
おかんに聞かれてたらどうすんの。
卒倒しちゃうよ。
私も、今、倒れそうになったけどね!
でも、スルーするからね!

「僕のために、毎日お味噌汁を作ってくれ! あさりの赤だしの味噌汁を!」

私は小声で言った。

「喜んで」

みゃあは頷く。
いや、待てよ。
台所に立たせるのはまずい。

「ごめん、やっぱり今のナシ」

「しょんなー」

「そんなしょぼんせんでもええんやで。私が変わりに作るから。海よりも濃く深みのある味噌汁を作ったる」

「血圧上がりそうだねー」

「たしかにねー」

12: 2015/12/19(土) 23:54:26.06 ID:bWcGzYIp0
あー、朝の弱いみやこをこんなに遅くまで引っ張っていいのかな。
ちょっと心配になってきた。
てか、私なんで起きてたんだっけ。
と、視界の隅に全滅した仲間達が映った。

「ああ!?」

「ど、どうしたの!?」

「希望の光が……失われた……」

「わ、私のせいだ

13: 2015/12/20(日) 00:00:20.05 ID:TtakAw770
「みゃあのせいじゃないよ……」

ぐすん。
もう、明日再挑戦しよ。

「もう寝よっか、みゃあ」

「い、いいの?」

「いいの。私がいる限り、希望は生まれ続けるから」

「くすくす……ゲームし過ぎだよっ」

「えーから、布団入るぜー」

みゃあを蹴り入れながら、
私もごろんと隣に並んだ。
いつからだったかな。
こうやって寝るようになったの。
昔は、みゃあが私よりも泣き虫で、
そばにいて欲しいって泣きついてたのにな。

14: 2015/12/20(日) 00:26:00.62 ID:TtakAw770
なのに、今はウサギと亀みたい。
みゃあの気持ち、知ってるのにさ。
知らないフリして、いつまでも甘えてるの。
ひっでえ話だ。
可愛そうな亀を待っていたら、
いつの間にか追い越されてるのな。
こっちは何にも成長してないのに。
可愛そうなのはウサギだったって話。

「ちーちゃん、電気消してー」

「ほいほい」

部屋は一瞬で真っ暗になった。
みやこの穏やかな息遣いに、
耳を傾ける。
いつもなら、瞬寝するのに。

「ちーちゃん、私ね」

背中を向けて、そう言ってきて、

「子どもが無理なのは分かってるからね。さっきのは冗談。ちーちゃんみたいな可愛い子が産みたいなって話」

笑って、こちらを振り向いた。
あたぼーよ。
どっかの国ではそういうのも可能になってるみたいだけどさ。

「本気ならびっくりです」

私も笑いながら答えた。
みやこの腕が、すっと私の体を抱きしめた。

「でも、私の気持ち……気づいてるよね?」

耳元で言われて、
太ももの近くがひゅんとなった。

15: 2015/12/20(日) 00:44:35.99 ID:TtakAw770
「みゃあって、ほんとに私のこと好きな」

「うん、大好きだよー。ちーちゃんといると、お日様みたいにぽかぽかする」

「ありがと」

まーた、性懲りもなく言っちゃうのねこの子は。
ありがと。
いつも一生懸命で、
触れたものはなんでも破壊しちゃうくらい、
遠慮なくぶつかっていくくせに、
人の気持ちは繊細に扱ってくれちゃうんだから。
冗談で済まなくなっちゃうんだよ?

みやこの手が、私の頬に触れた。
熱いって?
知ってるよ。

「おやすみ」

私は言った。

「おやすみー」

みゃあの手のひらの温もりが離れていく。
こりゃ、明日の朝は知らんで。
私はやれやれと瞼を閉じた。



おわり

16: 2015/12/20(日) 00:45:44.60 ID:TtakAw770
この二人も暁とりかちゃんも好きだけど書くとなると難しい
お粗末さまでした

17: 2015/12/20(日) 14:31:18.70 ID:xEJlqaIRo
おつ

引用元: 【総合タワーリシチ】 君が朝に弱いのは