1: ◆49.TJH/nk6 2016/02/18(木) 16:49:33.60 ID:CfBhdwaio
このSSは
千早「ここがギャラリーフェイク……」
の続編です (ナレーション 石坂浩○)

2: 2016/02/18(木) 16:50:25.03 ID:CfBhdwaio
ギャラリーフェイク……
フェイクだけを扱う画廊として若者のデートスポットとして定着している画廊である。
だが、この画廊には黒い噂が絶えない。
盗品や、表に出せない真作をブラックマーケットに流している、そういう噂である。
今日もこの画廊のオーナー、藤田玲司の所には、表の世界では解決できない話が転がり込ん
で来る……。

3: 2016/02/18(木) 16:51:25.23 ID:CfBhdwaio
藤田「はい、もしもし、藤田です」

三田村『Mr.藤田、貴方の力を借りなければならなくなったかもしれないの、一度、高田美
    術館へ来ていただけるかしら?』

藤田「三田村さん? 何か厄介事ですかい?」

サラ「ムッ……」

三田村『厄介といえば厄介ね……とにかく、時間の空いた時でいいからいらしてくださいな』

藤田「はぁ……別に構いませんが……」

三田村『よろしくお願いするわ』プッ ツーツー

藤田「……どうも要領を得ん電話だな……三田村さんらしくもない」

サラ「ミタムラの所に行くの!? ワタシも行くからね!」

藤田「ハイハイ……」

4: 2016/02/18(木) 16:52:10.45 ID:CfBhdwaio
~翌日、高田美術館館長室~

藤田「要件は何ですかな? あまり面倒な事はゴメンですぜ」

三田村「そうね……何から話したものかしら……貴方、765プロって知ってる?」

藤田「……まあ、顧客が一人いらっしゃいますよ」

サラ「如月千早ちゃんにフェイクを一つ売ったヨ!」

三田村「それならば話は早いわ、話というのは、その765プロの四条貴音さんに関する事
    なのよ」

藤田「ほう?」

5: 2016/02/18(木) 16:53:13.86 ID:CfBhdwaio
三田村「今、当美術館は映画『かぐや姫』の時代考証と美術を担当しているの」

藤田「相変わらずメディアを使うのがお得意のようですな」

三田村「茶化さないで。
    それで、監督が主演のかぐや姫のイメージにピタリと合うと見染めて、765プロ
    の四条さんに出演を依頼したのだけれど……きっぱりと断られてしまったの」

藤田「ほう?」

サラ「何でダロ?」

三田村「それは分からないわ……でも、諦められなかった監督がしつこく食い下がると、四
    条さんは一つの条件を出したの」

藤田「条件?」

6: 2016/02/18(木) 16:53:59.14 ID:CfBhdwaio
三田村「そう……『かぐや姫の五つの難題』を一つでも解き、自分の元へ持って来たら出
    演を考えてもいいと……」

藤田「!」

サラ「ナンダイ?」

7: 2016/02/18(木) 16:55:02.65 ID:CfBhdwaio
藤田「ふむ……なかなか面白い……。
   サラ、かぐや姫の物語は知っているな?」

サラ「ウ、ウン、日本語ベンキョーしている時に絵本読んだコトあるよ」

藤田「じゃあ、ざっとでいいからあらすじを喋ってみな」

サラ「エーッと……確か……おじいさんが山に竹を取りに行ったら光る竹があって、その中
   から小さな女の子が出てきて、女の子はぐんぐん成長してスゴイ美人になったけど、
   キゾクの求婚も全部断って、ミカドの求婚も断って、月に帰る時にミカドに不氏の薬
   を贈ったけど、ミカドはそれを日本で一番高い山の上で焼かせたから、その山が不氏
   の山……つまりフジサンになった……だいたいこんな話ダヨネ?」

三田村「凄いわ、サラちゃん、外国人でなかなかそこまで知っている人はいないわよ?」

サラ「そ、そう? エヘヘ……」

藤田「そのかぐや姫が、貴族の男達の求婚を断る為に突きつけたのが、有名な『五つの難題』
   だ。
   全部言えるか?」

サラ「え? エーッと……忘れたヨ……」

8: 2016/02/18(木) 16:56:15.61 ID:CfBhdwaio
藤田「仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、龍の首の珠、燕の子安貝だ。
   これを五人の貴族にそれぞれ課し、持ってきたなら求婚を受け入れてもいいという、
   いわゆる無理難題の類いだな」

サラ「そのシジョーさんはそれを持ってくれば映画に出ると言っているんダネ?
   ギャラリーの在庫に……」

藤田「ある訳ないだろ」

サラ「アウウ……」

三田村「私も、そんな伝説上の宝物を持って来いだなんて無理は言いません。
    この際、四条さんを納得させられるようなフェイクをMr.藤田に用意して頂ければ
    と思って……」

藤田「フェイクねぇ……それじゃあ姫君を余計に怒らせる事になりませんかね?」

三田村「その可能性は……否定できませんけど……それ以外にどうしようもないじゃあり
    ませんか?」

藤田「ともかく会ってみようじゃありませんか、その無理難題を言う姫君に」

9: 2016/02/18(木) 16:57:36.62 ID:CfBhdwaio
~765プロ~

藤田達が扉を開けようとした時、丁度外に出ようとした如月千早と鉢合わせた。

千早「きゃっ……! す、すみません……あら? 藤田さんとサラさん?」

藤田「これは失礼……如月さん、その後も順調なようで何よりです」

千早「はい……あの『月光』が部屋にあると、どんどんインスピレーションが湧いてくるん
   です! その節は本当にありがとうございました!」

サラ「お客様に喜んでいただいて何よりネー。
   温度管理と湿度管理はちゃんとしてクダサイネ?」

千早「はい、気を付けています。
   今日は765プロに御用ですか?」

藤田「今日は四条さんに用があってね……アポは取っている筈だが」

千早「ああ、四条さんなら談話室に居ますよ。
   それじゃ、私はレコーディングがあるのでこれで失礼しますね」

サラ「千早ちゃん、ガンバッテネー!」

10: 2016/02/18(木) 16:58:47.76 ID:CfBhdwaio
~談話室~

藤田達が談話室に入ると、その銀髪の女性はソファから立ち上がって優雅にお辞儀をした。

貴音「初めまして……わたくしは四条貴音と申します」

三田村「初めまして、私は映画『かぐや姫』の時代考証と美術を担当させていただいている
    高田美術館の館長、三田村小夜子と申します」

藤田「藤田玲司です……しがない画商をやっております、お見知りおきを」

サラ「助手のサラ=ハリファです、ヨロシク」

貴音「藤田さん……ああ、貴方でしたか、千早に『ふぇいく』を売ったのは……わたくしも眼福に
預からせていただきましたが、あれはなかなかに良い『ふぇいく』ですね」

藤田「……それはどうも」

11: 2016/02/18(木) 16:59:58.84 ID:CfBhdwaio
三田村「ズバリ言いますわ、四条さん、貴女はこの映画に不満があるのではなくて?」

貴音「いいえ、脚本を読ませていただきましたが、大変優れた構成だと思っております。
   この映画に関われたなら、どんなに素晴らしい事でしょうか……」

三田村「ならば、何故あのような難題を……!」

貴音「……『竹取物語』は、わたくしにとって特別な物なのです」

三田村「特別?」

貴音「それをわたくしの拙い演技で汚してしまう事は、古典に対する冒涜であると思ってお
   ります」

三田村「しかし、監督は貴女でなくてはメガホンを取らないとまで言っています」

貴音「わたくしは何も『出ない』とは言っておりません。
   指定した品物を持ってきていただければ、出演を了承いたします」

12: 2016/02/18(木) 17:01:12.85 ID:CfBhdwaio
三田村「五つの難題ですか……しかし、それは無理な相談だと貴女も分かっているでしょ
    う?
    こちらの藤田氏に協力してもらえば、本物と見まがうような『フェイク』を作って
    くださいます。
    それで満足してはいただけませんでしょうか?」

しかし、貴音は首を横に振った。

貴音「いくら精巧に出来ていても、所詮『ふぇいく』は『ふぇいく』です。
   まがい物では人の心を動かす事は出来ません……」

藤田「聞き捨てなりませんな」

藤田はソファから立ち上がった。

藤田「ニセモノ屋にはニセモノ屋のプライドがあります。
   そうまで言われては引き下がれません。
   私が『本物のかぐや姫の求めた宝物』を持ってきて差し上げましょう」

三田村「Mr.藤田!? 本物って……本気!?」

藤田「フッ……『かぐや姫の難題』、解いてみせますよ」

貴音「……」

13: 2016/02/18(木) 17:02:10.50 ID:CfBhdwaio
765プロを出ると、藤田は目的を持って歩き出した。

サラ「フジタ! 宝物を探すって本気カ!?
   海外に行くノ?」

藤田「いや……」

藤田はニヤリと笑った。

藤田「まずはホームレスに会いに行くのさ」

サラ「ホームレスぅ!?」

14: 2016/02/18(木) 17:03:05.83 ID:CfBhdwaio
~河川敷~

藤田「よう、源内先生、元気にしてるかい?」

源内「藤田さんじゃありませんか、またホームレスになりに来たんですか?」

藤田「ちゃうわっ!!
   ……本名は知らんが、現代の平賀源内を名乗るアンタの事だ、多少なりとも平賀源内
   の事には詳しいと思ってな」

源内「ほう……何が知りたいので?」

藤田「率直に聞く、平賀源内は『火浣布』の再現に成功したと思うかい?」

源内「ふむ……火浣布ですか」

サラ(か、カカンプ? 何のコトネ?)

15: 2016/02/18(木) 17:04:30.84 ID:CfBhdwaio
源内「成功したとも、失敗したとも言えるでしょうな」

藤田「ほう……」

源内「源内は『火浣布略説』などのパンフレットを作ってアピールしたようですが、実際に
   作れたのは折りたたむ事も出来ない小さな物……オランダ人はそれでも驚いたよう
   ですが、まあ、かぐや姫の基準で言えば失敗でしょうな」

藤田「ふーむ……」

源内「しかしまた、なんであんな危険な物の事について知りたがるんです?」

サラ(危険!?)

藤田「訳アリでね、どうしてもかぐや姫の難題を解かにゃならないのさ」

源内「ほう……それなら、昔の知り合いの紡績工場を紹介しますよ。
   医者時代から源内には興味があって、火浣布を再現しようと試みた事があるんです。
   今ならずっといい物が出来るかもしれませんよ」

藤田「本当か!? 手間が省けたぜ! 感謝するぞ、源内先生よ!」

サラ「フジター! カカンプってなんなノー? 危ない物ナノ?」

藤田「自分で調べてみるんだな、これは宿題だ。
   ただしネットで調べるのは禁止だ。
   すぐに答えが出るのはつまらないからな……」

サラ「ケチー!」

16: 2016/02/18(木) 17:05:26.88 ID:CfBhdwaio
~翌日、車内~

藤田「どうだ、サラ、火浣布については調べてみたか?」

サラ「百科事典と首ったけで調べたヨ……眼が疲れた~」

藤田「フフ……それで、解答は?」

サラ「ズバリ、火浣布って、『火鼠の皮衣』のコトでショ?」

藤田「正解だ……調べた事を喋ってみな」

サラ「えーっとネ……」

17: 2016/02/18(木) 17:06:35.59 ID:CfBhdwaio
サラ「火鼠は、中国の崑崙山に居たと言われるモンスターネー、火の中に住んでる大きな
   鼠で、火から出た時に水をかけられると氏んでしまうと言われているネ。
   この鼠の毛で作られた布は、汚れたら火の中に入れれば、汚れだけ燃えて、布は燃え
   ずに新品同様に白くなるネ。
   つまり、火で浣う布、火浣布ネ。
   これが竹取物語に出てくる火鼠の皮衣と特徴が一致するネー」

藤田「まあ、そういう事だ。
   他の宝物でなく、何故俺が火鼠の皮衣に目を付けたか分かるか?」

サラ「それも調べたヨ、日本人の大好きな『三国志』に話が移るヨ」

藤田「フフ……続けてみろ」

18: 2016/02/18(木) 17:08:40.96 ID:CfBhdwaio
サラ「そもそも火浣布は、古代から西域より中国に献上されてたネ。
   デモ、後漢末の混乱で朝貢が途絶えて、魏の時代になると、その存在さえ疑われる
   ようになったネ。
   それで魏の文帝、曹丕が、「火は激烈な性質を持つからその中で燃えない布などあり
   えない」って自分の著書「典論」で述べたネ。
   次の皇帝、明帝の曹叡が、先代の著書は名著だから石に刻んで永遠に残せって命令し
   て、実際に石に掘らせたヨ。
   でも魏に西域から火浣布が献上されちゃったからサア大変。
   結局その箇所は間違いだって事で、石から削って、天下の物笑いにナッタネ」

藤田「つまり?」

サラ「火浣布、つまり火鼠の皮衣は、他の宝物と違って、中国の史書にハッキリ実在すると
   証明されてる、実在の宝物だってコト」

藤田「良くできました」

サラ「エヘヘ……デモ、何で紡績工場に行くノ?
   火浣布を世界中で探すんじゃナイノ?」

藤田「そこまで調べておいて、火浣布の正体には辿りつかなかったのか……それじゃ、合格
   点はやれんな」

サラ「ブー……」

藤田「そろそろ着くぞ、これを着けておけ」

藤田はそう言って高機能マスクをサラに渡した。

19: 2016/02/18(木) 17:10:08.58 ID:CfBhdwaio
~後日、映画スタジオ~

映画スタッフと三田村、四条貴音とプロデューサー、それに藤田達が一堂に会していた。

藤田「約束通り、本物のかぐや姫の求めた宝物、『火鼠の皮衣』をお持ちいたしましたぜ」

監督「ほ、本当かね!?」

貴音「……」

藤田「どうぞ、改めてみてください」

藤田は一枚の厚手の白い着物を差し出した。

貴音「……」

貴音は無言でその着物に持っていたジュースを振りかけた。

P「貴音! 何を……!?」

貴音「これが本物の火鼠の皮衣なら、火にかければ汚れが落ちる筈。
   検証、お願いします」

20: 2016/02/18(木) 17:11:23.56 ID:CfBhdwaio
藤田は無言で缶にくべられた薪に火を点け、着物をその中に投じた。

監督「おお……!」

P「汚れだけが……消えていく……!」

三田村「まさか……これは火浣布!?」

藤田は火の中から着物を取り出し、貴音に差し出した。
貴音がその着物に袖を通そうとすると、三田村が待ったをかけた。

三田村「ま、待って! その着物に触れてはいけません!!」

貴音「……それは、この着物がアスベスト製だからですか?」

P「アスベストだって!?」

三田村「知っていたの……?」

藤田「……そう、これが火鼠の皮衣の正体、東洋で言う火浣布、西洋で言うサラマンドラの
   繭、その実態は石綿、つまりアスベストの織物ですよ」

21: 2016/02/18(木) 17:12:30.71 ID:CfBhdwaio
P「貴音! その着物から離れるんだ!! 早く口を押えて、肺に入れないように!!」

貴音「ふふ……心配御無用です、プロデューサー殿、江戸期の女性は毒である鉛を含んだ
   白粉を塗って美しさを保っていたといいます……たかがアスベストに少し触れるの
   を恐れているようでは、とてもアイドルなど務まりません」

そう言って貴音は着物を羽織り、まるで昔を懐かしむかのように我が身を抱いた。

藤田(……なるほど……監督が惚れ込むのも分かる気がするぜ……まるで本物の姫君の様
   だ)

22: 2016/02/18(木) 17:13:20.60 ID:CfBhdwaio
貴音「本当のことを言うと、わたくしは恐れていたのです……」

P「何をだ……?」

貴音「……いえ、言えませぬ。
   それでも、これだけの熱意を向けられれば、断る事など出来ません。
   わたくし、映画の主演を受けようと思います」

監督「い……いやったあああぁぁぁっ!! インスピレーションがどんどん湧いてくるぞ
   おおおぉぉっ!!」

23: 2016/02/18(木) 17:14:25.21 ID:CfBhdwaio
貴音はスタジオの空から見える月を眺めながら呟いた。

貴音「かぐや姫は、月の都で罪を犯したせいで地上に堕とされたそうですね……。
   果たして、その罪とはどのような物だったのでしょうね……?」

藤田「……それは、かぐや姫本人しか知り得ない秘密ですな」

貴音「……つれづれと……空ぞ見らるる……思ふ人……」

藤田「……天降り来む……ものならなくに……」

サラ「……? どういう意味?」

藤田「……さあな……」

藤田は煙草を咥えて火を点け、スタジオを後にした。

24: 2016/02/18(木) 17:15:35.83 ID:CfBhdwaio
~ギャラリーフェイク、玄関前~

藤田とサラはテーブルを出し、月見酒を楽しんでいた。

サラ「シジョーサンの映画、大ヒットみたいネー」

藤田「そりゃ、あれだけ優秀な人材が揃ってりゃ成功するだろ、三田村さんの時代考証も
   正確だったみたいだしな」

サラ「フジタも協力したんだから、クレジットに名前載せてもらえば良かったのに」

藤田「馬鹿言え、柄じゃない……いや、そうだな」

サラ「?」

藤田「千年の後に、かぐや姫の難題を解いた男が居たと語られるのも悪くないかもな」

藤田はそう言って盃を掲げ、月に乾杯した。

月の姫君が、その時笑いかけてくれたような、そんな気がした。


                         (終)

25: 2016/02/18(木) 17:16:43.46 ID:CfBhdwaio
終わりです
HTML化依頼出してきます

28: 2016/02/18(木) 18:57:43.98 ID:u5O8UqBho

脳内で貴音が細野絵で再生されたわ

引用元: 【アイマス】かぐや姫の難題【ギャラリーフェイク】