1: 2013/12/23(月) 21:45:26.72 ID:nncBsC0K0
【12/20(金) 学校】

ガラガラッ


女「あ、お雪おはよー!」

雪歩「おはよう」

女「ねえお雪! 冬休みだよ! 冬休み!!」

雪歩「て、テンション高いね……」

女「だって冬休みだよ!? クリスマスにお正月だよ!? イルミネーションとか」


ガラガラッ


先生「ほら、お前ら席につけ」

女「げ……」

アイドルマスター 萩原雪歩 1/8スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

2: 2013/12/23(月) 21:48:14.36 ID:nncBsC0K0
先生「冬休みだからといって、羽目を外すことのないよう……」ペラペラ


女「宿題だ、宿題……すっかり忘れてた……」

雪歩「あはは、大変だよね……」


先生「また、休み明けには進路希望調査も行う。 冬休み中に考えてくるように」

雪歩「……」

女「進路ぉ? うわー、どうしよ」

雪歩「そうだね……」

女「お雪は良いじゃん、アイドルなんだし」

雪歩「……」

女「お雪ー?」



雪歩(進路…………かぁ)

4: 2013/12/23(月) 21:51:12.20 ID:nncBsC0K0
【事務所】

ガチャッ


雪歩「こんにちはー……」

小鳥「あら、雪歩ちゃ……え、雪歩ちゃん?」

雪歩「え?」

小鳥「今日、確か雪歩ちゃんは……」

雪歩「あ、えっと……オフなんですけど、ちょっと用事があって……」

小鳥「そうなの? てっきり私が間違えてたのかと……」


ガチャッ


真「こんにちはー、っと」

雪歩「あ、真ちゃん」

5: 2013/12/23(月) 21:54:08.57 ID:nncBsC0K0
小鳥「2人は今日から冬休み?」

真「ハイ、そうです!」

小鳥「冬休み……イイ響きねぇ」

真「ホントですね、クリスマスにお正月、イルミネーションとか」

雪歩(さっきも聞いたような……)

小鳥「ここらへんだと駅前とか…………ああ、心が痛いわ……」

真「わあ、すいません! そういうつもりじゃ」

雪歩「……ねぇ、真ちゃん」

真「え?」



雪歩「レッスン……見学しても、いいかな?」

6: 2013/12/23(月) 21:57:40.57 ID:nncBsC0K0
【レッスン場】

トレーナー「はーい、1、2、1、2」パンパン


春香「1、2、1……わわわっ!」

伊織「ちょっと春香、しっかりしなさいよね!」

春香「えへへ、ごめんごめん」

やよい「伊織ちゃん、そんなに怒らなくても……」

伊織「う……ドジった春香が悪いのよ!」

真「そんなこと言って……伊織、少し遅れてたよ?」

伊織「ウソっ!?」

律子「真はちょっと走ってたわね」

真「ウソっ!?」


トレーナー「疲れが見えるわね……よし、休憩にしましょうか」

7: 2013/12/23(月) 22:00:16.05 ID:nncBsC0K0
雪歩「これ……買ってきましたぁ」

春香「おおー!」

やよい「ありがとうございますーっ!」


伊織「…………ぷはぁ」

律子「ふー……」


真「雪歩、足の調子はどう?」

雪歩「……大丈夫、かな」

真「そっか」

雪歩「……」

8: 2013/12/23(月) 22:03:25.14 ID:nncBsC0K0
真「……ねぇ、雪歩」

雪歩「え?」

真「オフなのに、わざわざ見学に来るなんて……何かあったの?」

雪歩「……」

真「……」

雪歩「……冬休みの、宿題にね」

真「うん」

雪歩「進路を考えてこい、っていうのがあって……それで」

真「進路?」

雪歩「真ちゃんは……みんなは、どうするのかな……って」

9: 2013/12/23(月) 22:06:22.58 ID:nncBsC0K0
真「進路……うーん、アイドルだからその場合……就職?」

雪歩「やっぱり、そうなるのかな……」

律子「アイドルします、って言えばいいんじゃないの?」

雪歩「わっ!?」

律子「何も、後ろめたいことじゃないんだから。 ビシッと宣言すりゃいいのよ」

真「律子……経験者は語る、だね」

律子「大抵、応援してくれるんじゃないかしら……あ」

雪歩「え?」

律子「もしかして、何か学びたい分野でもあるの? それなら、進学しても……」

雪歩「……」

10: 2013/12/23(月) 22:09:17.97 ID:nncBsC0K0
春香「大学かー、もう勉強はしたくないなぁ……」

やよい「私はまず、高校受験頑張らなきゃかなーって」

伊織「大学受験……私には無縁ね」

真「なんで?」

伊織「だって、その頃にはトップアイドルになってるんだから……そんな時間は無いでしょ?」

律子「なるほど、伊織らしいわね」

雪歩「……」


トレーナー「千里の道も一歩から。 トップアイドルになるんなら、レッスン再開しますよ!」パンパン

「「はーい!」」

11: 2013/12/23(月) 22:12:24.71 ID:nncBsC0K0
【事務所】

P「千早、今日の収録だけど」

千早「はい」

P「すごい良かったよ、でも少しトークが無愛想だったかな」

千早「無愛想……ですか?」

P「ああ。 はしゃげとは言わないけど、もっと……」


ガチャッ


雪歩「ただいま戻りましたー……」

P「おう……あれ、雪歩?」

雪歩「あ、プロデューサー」

P「ちょうど良かった、ちょっと時間いいか?」

雪歩「……え?」

12: 2013/12/23(月) 22:15:09.24 ID:nncBsC0K0
【事務所・屋上】

P「うひー、やっぱ寒いなぁ。 ごめんな、こんなところで」

雪歩「……あ、あの」

P「ん?」

雪歩「よかったんですか? まだ、話の途中だったんじゃ……」

P「いや、大丈夫だよ」

雪歩「……」

P「千早はあれでよく考えてる。 あれこれ言わなくたって、自分でどうにかできるさ」

雪歩「そう、ですか」

14: 2013/12/23(月) 22:18:14.24 ID:nncBsC0K0
P「雪歩の方はどうだ? 足の具合は」

雪歩「あ、えっと……大丈夫ですぅ」

P「そうか……しっかり歩けてるし、明日からレッスン再開だな」

雪歩「はい……」

P「まぁ、気にしなくてもいいさ。 足を挫くことだってある」

雪歩「……」

P「……そういえば、今日はまたどうして来たんだ? 家で休んでたっていいのに」

雪歩「……その、えっと、宿題で…………」

P「宿題?」

15: 2013/12/23(月) 22:21:12.87 ID:nncBsC0K0
P「なるほどなぁ、進路か」

雪歩「はい……」

P「わざわざ他の皆に聞きに来るってことは、迷ってるのか?」

雪歩「……」

P「確かに、高校を卒業してアイドルに専念……っていうのが全てじゃない」

雪歩「……そうなんですか?」

P「ああ。 例えば、ウチのあずささんだって短大出てるしな」

雪歩「あぁ……」

P「雪歩がやりたいことがあるって言うなら、俺はそれを応援するよ」

雪歩「……」

16: 2013/12/23(月) 22:24:32.12 ID:nncBsC0K0
P「……まぁ、冬休みの間にゆっくり考えればいいさ」

雪歩「……はい」

P「それはそうとして、いきなり仕事の話で悪いんだけど」

雪歩「は、はいっ!」

P「24日、オーディションが決まった。 961プロから誘いがあったんだ」

雪歩「961プロ……ですか?」

P「向こうは、四条貴音を参加させるそうだ」

雪歩「四条さん……」

P「24日だと、雪歩は2日連続でオーディションになるし……出来れば、無理はさせたくない」

雪歩「……」

P「でもな」

17: 2013/12/23(月) 22:27:20.43 ID:nncBsC0K0
P「ここで勝利したときのリターンが大きいんだ。 ファンがグッと増えるし、次のランクも狙える」

P「まぁ、大学云々もあるし、変に焦らなくてもいいけどさ」

雪歩「……」

P「雪歩、いけるか?」

雪歩「……」

P「……」


雪歩「……その、私……正直、不安です……」

P「不安、か」

雪歩「四条さんみたいな、すごい人と戦っても、私なんかじゃ勝てないかも……」

18: 2013/12/23(月) 22:30:20.40 ID:nncBsC0K0
雪歩「私、皆のレッスンを見て思ったんです。 ……すごいなぁ、って」

P「すごい?」

雪歩「皆すごく前向きで、夢があって……あんな人たちがトップアイドルになるんだろうなぁ、って」

P「……」

雪歩「私なんか、鈍くさくて、ノロマで……」

P「雪歩」

雪歩「え?」

P「そう卑下するなよ。 俺は……いや、雪歩」



P「本当はもう……分かってるんじゃないのか?」

19: 2013/12/23(月) 22:33:14.96 ID:nncBsC0K0
【12/21(土) 事務所】

ガチャッ


雪歩「おはようございます……」

小鳥「おはよう雪歩ちゃん、今日はレッスンよね?」

雪歩「あ、はい……?」

P「悪いな雪歩、音無さんが物忘れ激しいみたいで」

小鳥「いやいや! 流石に物忘れって年じゃないですよ!?」


ガチャッ


真「おはようございまーすっ」

P「おっ、真」

20: 2013/12/23(月) 22:36:21.69 ID:nncBsC0K0
P「知ってると思うが、2人は明後日にオーディションがある」

真「ハイ」

P「雪歩は、24日もだな」

雪歩「はい」

P「雪歩は一応怪我明けだし、大事なレッスンだから俺もついて行きたいんだけど……」

雪歩「……?」


ガチャッ


亜美「にゃんぱす→!」

真美「やっはろ→兄ちゃん!」

P「おはよう、パクリはやめろパクリは」

真美「リス&ペストだYO!」

P「リスペクトって言いたいのか?」


真「ああ、なるほどね……」

21: 2013/12/23(月) 22:39:08.44 ID:nncBsC0K0
【レッスン場】

トレーナー「はーい、1、2、1、2」パンパン


真「1、2、1、2……」

雪歩「1、2、1、2……っととっ」


トレーナー「ストップストップ! ちょっと萩原さん?」

雪歩「は、はいっ」

トレーナー「あなた、足はもう大丈夫なのよね?」

雪歩「はい……」

トレーナー「それなら、もっと思い切ってやってちょうだい」

雪歩「はい……すいません……」

22: 2013/12/23(月) 22:42:17.79 ID:nncBsC0K0
真「はい雪歩、これ」

雪歩「あ、ありがとう……」


雪歩「……っぷはぁ」

真「しっかし、トレーナーさんもきっついよなぁ……雪歩、怪我明けなのに」

雪歩「真ちゃん」

真「うん?」

雪歩「真ちゃんは……」

真「うん」


雪歩「………………何でもない」

真「? 変なの」

23: 2013/12/23(月) 22:45:17.15 ID:nncBsC0K0
【12/22(日) 駅前】

P「あずささーん! あずささん聞こえますかーっ!!」


P「電話は……くそっ、出ないか」

P「全くもう、あの人は……短大で何を学んだんだよ……」


P「あずささーん! あずささんいらっしゃいませんかーっ!!」


P「ここじゃないのか……うーん、もっと範囲を広く探した方がいいか」

P「一刻も早くGPSを……ん? あれは……」



貴音「……」

24: 2013/12/23(月) 22:48:19.14 ID:nncBsC0K0
P「何やってるんだ、銀髪の王女様?」

貴音「……あなた様」

P「見たとこ、仕事じゃなさそうだけど」

貴音「はい、少々野鳥の観察をと思いまして」

P「はい?」

貴音「この度、わたくしが主演するドラマの役作りですよ。 またぎ役ですから」

P「そ、そうか……961プロも仕事選ばないな……」

貴音「選ばない……ですか。 いい役ですよ?」

P「うん……まぁ、似合うとは思う」

25: 2013/12/23(月) 22:51:21.35 ID:nncBsC0K0
P「あ、そういえば貴音」

貴音「はい?」

P「961プロとのオーディション……受けることにしたよ」

貴音「……萩原雪歩、ですか」

P「ああ。 そろそろお前を追い越す頃さ」

貴音「……」

P「それで、勝ってあいつの誕生日に華を」

貴音「あなた様」

P「うん?」


貴音「何か……隠し事をなさっていませんか?」

26: 2013/12/23(月) 22:54:25.83 ID:nncBsC0K0
P「隠し事……? 何をだ?」

貴音「今のあなた様からは……覇気が感じられません。 自信に漲った、あの気が」

P「……」

貴音「何か不安なことでも?」

P「……まったく、恐ろしい子だな」

貴音「……」

P「貴音だから、正直に言うけど。 ……最近、雪歩が自信を失くしてるんだ」

貴音「萩原雪歩が……」

P「あいつには、ポテンシャルはあると思ってる。 後は……メンタル次第、なんだけど」

27: 2013/12/23(月) 22:57:22.31 ID:nncBsC0K0
貴音「……ふふっ」

P「え?」

貴音「まこと、あなた様は気にかけているのですね……萩原雪歩を」

P「ウチのアイドルだからな」

貴音「きっと、杞憂に終わると思いますよ」

P「そうだといいんだけど……っと、電話だ」



P「もしもし? ……あ、あずささん!?」

P「今どこですか? 動かないで!! そこから動かないで下さい!」

P「はい……はい、八百屋ですね、分かりました今行きます!」



P「ありがとう貴音……って、居ないし」

28: 2013/12/23(月) 23:00:15.93 ID:nncBsC0K0
【萩原家】

雪歩「……」


――『後ろめたいことじゃないんだから』――

――『その頃にはトップアイドルに』――


雪歩「……」

雪歩(私は…………)


――『本当はもう……』――



「雪歩ー! ご飯よー!」

雪歩「あ、はーい!」

29: 2013/12/23(月) 23:04:18.22 ID:nncBsC0K0
【12/23(月) オーディション会場】

P「来たな、2人とも」

真「ハイ!」

雪歩「……はい」

P「一応、今日の流れを確認しとくか?」

真「ボクが5階、雪歩は3階ですよね!」

P「よし、それだけ分かってれば大丈夫だ」


P「じゃあ頼んだぞ! 行ってこい!」ポン

真「ハイ! 行ってきます!」


P「……それじゃ、俺たちも行こうか」

雪歩「……はい」

30: 2013/12/23(月) 23:07:12.22 ID:nncBsC0K0
P「あのさ、雪歩」

雪歩「はい」

P「俺は……ネガティブっていうのも悪くないと思ってる」

雪歩「悪くない……ですか?」

P「一歩止まって、自分を見つめられるってことだからな」

雪歩「……」

P「熱くなって自分を見失う……雪歩には、それがないんだ」

雪歩「自分を……見つめる……」

P「さぁ、頑張ってこい!」ポン


雪歩「……はいっ」

31: 2013/12/23(月) 23:10:20.28 ID:nncBsC0K0
雪歩「言いたいことさえ 言えない私だけれど」


雪歩(私は……)


雪歩「もし恋愛するなら 第一候補はいるの」


雪歩(私は、いつか…………)


雪歩「あと少しだけ前に出て 言葉掛けられたならば・・・」

雪歩「手を伸ばしたら届くほど 近い存在なだけに・・・」


雪歩(いつか……トップアイドルに……)


雪歩「It's my first sta……っ!」ガッ

33: 2013/12/23(月) 23:13:17.54 ID:nncBsC0K0



雪歩(トップアイドルに……なれるの?)



34: 2013/12/23(月) 23:16:21.09 ID:nncBsC0K0
「それ以外の方はお帰り下さい――」


雪歩「…………」

P「……この前、挫いたところだな。 大丈夫か?」

雪歩「……はい」

P「そうか、良かった」

雪歩「…………」

P「まぁ、そう落ち込むことはないさ。 これも貴重な経験だ」

雪歩「…………」

P「今日の反省は、明日に生かそう。 ……勝つぞ」


P「じゃ……真を連れてくるから、ちょっと待っててくれ」

雪歩「…………」

35: 2013/12/23(月) 23:19:17.74 ID:nncBsC0K0
真「もう、遅いですよプロデューサー!」

P「いや、悪い悪い。 どうだった?」

真「……へへっ」ビシッ

P「おお! やったな、おめでとう!」

真「収録、明日だそうです」

P「ん。 空けてあるぞ」

真「おお! たまにはやるじゃないですか!」

P「たまにはは余計だ」

36: 2013/12/23(月) 23:22:07.36 ID:nncBsC0K0
真「……でも、パーティに間に合うかな……」

P「それなら車出すぞ?」

真「おお! たまにはやr」

P「うっせ!」


真「ゆーきほっ! どうだったー?」

P「あ、真……雪歩は」

真「…………え?」

P「ん?」



P「雪歩が…………いない?」

37: 2013/12/23(月) 23:25:26.95 ID:nncBsC0K0
真「プロデューサー……雪歩は」

P「負けた。 ……転んだんだ」

真「それで……?」

P「……」

真「それで雪歩は、どこに行ったって言うんですか!!」バン

P「落ち着け、真」


P「多分、どこかに埋まってるんだ……二手に分かれよう」

真「……ハイ」

38: 2013/12/23(月) 23:28:42.16 ID:nncBsC0K0
P「雪歩ー! 雪歩いるかー!?」

P「くそっ……なんで、ウチの人は皆どっか行っちゃうんだ……」

P「雪歩ー! 雪歩聞こえるかー!?」



真「雪歩ー! ゆきほー!!」

真(どこに行ったんだ……そう遠くないはずなんだけど)

真「……」

真(駅前……あっ)


真「……イルミネーション?」

39: 2013/12/23(月) 23:31:38.47 ID:nncBsC0K0
【駅前】

真「……ここにいたんだ、雪歩」

雪歩「……」

真「イルミネーションのすぐ近くだなんて……灯台下暗し、だったっけ?」

雪歩「……」

真「プロデューサーも心配してる。 帰ろう、雪歩」

雪歩「……ねぇ、真ちゃん」

真「え?」

雪歩「真ちゃんは……オーディション、どうだった?」

真「……勝った、よ」

雪歩「そっか……」

40: 2013/12/23(月) 23:34:27.39 ID:nncBsC0K0
雪歩「私ね、また転んじゃったんだ。 この前と同じところ」

雪歩「ダメ……だよね、トレーナーさんにも、言われてたのに」

真「……」

雪歩「私……ダメダメで、ドジで、ノロマで、ひんそーでひんにゅーでちんちくりんで」

雪歩「アイドルになんて向いてない……トップアイドルになんて、なれないよ」

真「そんなこと……ないよ」

雪歩「何が?」

真「……えっ」

雪歩「何が分かるの? ……真ちゃんに私の、私の何が分かるっていうの? ねぇ、真ちゃん」

真「雪歩……」

41: 2013/12/23(月) 23:37:16.74 ID:nncBsC0K0
雪歩「レッスンも上手くできて、オーディションにも勝てて」

雪歩「夢を……夢を見てる、そんな真ちゃんに」

真「……」

雪歩「そんな真ちゃんに、私の気持ちなんて……分かんないよ」

真「雪歩……ボクは」

「待ちなさい」

真「えっ?」



貴音「そこで何をしているのです…………萩原雪歩」

42: 2013/12/23(月) 23:41:45.11 ID:nncBsC0K0
真「キミは……確か」

雪歩「四条さん……」

貴音「……どうやら、あの方の言う通りのようですね」

雪歩「……何しに来たんですか」

貴音「いえ、偶々通りすがったのです。 萩原雪歩、あなたの声が聞こえたので」


貴音「あなたは言っていましたね。 ……私の気持ちなんて分からない、と」

雪歩「それは……四条さんだって、同じです」

貴音「そうでしょうか?」

雪歩「……」

43: 2013/12/23(月) 23:44:44.12 ID:nncBsC0K0
貴音「人は弱いものです。 わたくしも、菊地真も」

真「……」

貴音「人は皆平等です。 ……萩原雪歩、あなたも夢を追っていいのですよ」

雪歩「そんなの、嘘です」

貴音「……」

雪歩「夢を追って……その先は? 皆がトップアイドルになれるんですか……?」

真「……雪歩」

貴音「そうですね、語弊がありました」

貴音「人は皆夢を見る……ですが、その夢が叶うのかは、分かりません」

44: 2013/12/23(月) 23:47:42.97 ID:nncBsC0K0
雪歩「それじゃ」

貴音「ですが。 わたくしは、トップアイドルになります」

雪歩「……え?」

貴音「菊地真も、そう思っていることでしょう」

雪歩「でも……叶うのかは、分からないって……」

貴音「分かりません。 ……それでも、叶うと信じています」


貴音「一途に信じて行動する……それが、努力というものです」


雪歩「……四条、さん」

45: 2013/12/23(月) 23:50:24.05 ID:nncBsC0K0
貴音「萩原雪歩」

雪歩「……」


――『本当は……』――



貴音「あなたも本当は……分かっているのではありませんか?」



46: 2013/12/23(月) 23:53:10.27 ID:nncBsC0K0
P「おーい! 雪歩ーーー!!」

雪歩「……プロデューサー」

P「はぁっ、はぁっ……こんなとこにいたのか……」

雪歩「ごめんなさい、プロデューサー。 迷惑かけちゃって……」

P「いや、いいんだ、雪歩が無事なら……真」

真「え?」

P「電話、ありがとう。 助かった」

真「あ、お礼なら……貴音さんに……」

P「貴音ぇ?」

48: 2013/12/23(月) 23:56:22.25 ID:nncBsC0K0
響「探したぞ、貴音ー。 何やってたんだ?」

貴音「いえ……いるみねーしょんなる物を、少々」

響「イルミネーション? 駅前の?」

貴音「はい、鹿狩りの参考にと思いまして」

響「……それ、もしかしてトナカイのこと言ってるのか……?」

美希「ねぇ、貴音?」

貴音「はい」

美希「なんか貴音、嬉しそうなの。 ウソついてない?」

貴音「……ふふっ、そんなことはございませんよ」

美希「ますます怪しいの……」

49: 2013/12/24(火) 00:01:12.52 ID:fY3vpmNW0
【12/24(火) オーディション会場】

P「よし、来たな、2人とも」

真「ハイ!」

P「一応、今日の流れを確認しとくか?」

真「ボクは収録、雪歩はオーディションですよね!」

P「ああ……雪歩、そっちは1人で大丈夫か?」

雪歩「はい、大丈夫ですっ!」

P「……よし、頼んだぞ!」ポン


雪歩「…………はいっ!」

50: 2013/12/24(火) 00:04:20.78 ID:fY3vpmNW0
雪歩「四条さん」

貴音「……萩原雪歩」

雪歩「昨日は……ありがとうございました」

貴音「いえ、わたくしは……当然のことをしたまでですよ」

雪歩「四条さん……」

貴音「まこと、良い顔をしていますね、萩原雪歩。 オーディションが楽しみです」

雪歩「あ、あの……それから」

貴音「何でしょうか?」



雪歩「今日は……勝ってみせます」

51: 2013/12/24(火) 00:07:22.51 ID:fY3vpmNW0
雪歩「言いたいことさえ 言えない私だけれど」


雪歩(私、本当は……)


雪歩「もし恋愛するなら 第一候補はいるの」


雪歩(本当は……分かってた)


雪歩「あと少しだけ前に出て 言葉掛けられたならば・・・」

雪歩「手を伸ばしたら届くほど 近い存在なだけに・・・」


雪歩(分かってたんだ……逃げてるだけだって)


雪歩「It's my first stage」



雪歩(辛いこととか、嫌なことから……逃げてるだけだったんだって――――)

52: 2013/12/24(火) 00:10:35.50 ID:fY3vpmNW0
「では、発表します。 合格者は……」


雪歩「……」

貴音「……」


「①番の方! おめでとうございます!」


貴音「……」


「それ以外の方は、お帰り下さい――」


雪歩「…………」

貴音「萩原雪歩」

雪歩「えっ?」

貴音「駅前で、待っていて下さい」

53: 2013/12/24(火) 00:13:18.66 ID:fY3vpmNW0
【駅前】

雪歩「……あ、四条さん」

貴音「申し訳ありません、打ち合わせが長引いてしまったので……」

雪歩「あ、いえ、そんな」

貴音「……やはり、良い顔をしていますね」

雪歩「え?」

貴音「敗北した後だというのに……昨日のような、落ち込んだ雰囲気がありませんから」

雪歩「えと、それは……昨日の今日じゃ、多分、勝てないだろうなって思ってて……」

貴音「はい」

雪歩「それで……思ったより平気、なのかもです」

54: 2013/12/24(火) 00:16:44.07 ID:fY3vpmNW0
貴音「萩原雪歩、やはりあなたは……」

雪歩「あ、あの!」

貴音「はい?」

雪歩「あの……そのっ、えと」

貴音「……どうしたのです?」

雪歩「えっと…………雪歩、って呼んで下さい……」

貴音「……面妖な」

雪歩「イヤですか? すいません、私なんかが」

貴音「いえ、大丈夫ですよ……雪歩」

雪歩「……えへへ」

55: 2013/12/24(火) 00:19:32.16 ID:fY3vpmNW0
貴音「あのお方から、本日は雪歩の誕生日であると伺いました」

雪歩(プ、プロデューサーかな……)

貴音「おめでとうございます。 そこで、わたくしからこれを……受け取って下さい」

雪歩「あ、ありがとうございます……あの、開けてもいいですか?」

貴音「構いませんよ」

雪歩「それじゃ……」ビリビリッ

貴音「……どうでしたか?」

雪歩「………………えっと、その、これは」

貴音「ちゃんちゃんこです」

雪歩(どうしよう……喜んでいいのかな……)

56: 2013/12/24(火) 00:22:16.33 ID:fY3vpmNW0
雪歩「えっと、その……使いますねっ」

貴音「そうですか……まこと、ありがとうございます」

雪歩「……あの」

貴音「何でしょう?」

雪歩「私、これから……頑張ってレッスンします。 もう、逃げません」

貴音「……」

雪歩「それで……えっと、四条さん」

貴音「はい」



雪歩「次は、勝ちます」

57: 2013/12/24(火) 00:25:47.50 ID:fY3vpmNW0
P「おーい! 雪歩ー!」

雪歩「あ、プロデュ」

真「ゆーきほっ!」ガバッ

雪歩「真ちゃん……」

P「悪いな、待たせちゃって。 そっちはどうだった?」

雪歩「あの……負けちゃいました」

P「……そっか」

真「アレ、雪歩……これ何?」

雪歩「ちゃんちゃんこ」

真「えっ?」

58: 2013/12/24(火) 00:28:50.50 ID:fY3vpmNW0
ブロロロ…


P「いやー、しかし、パーティには間に合いそうでよかったなぁ」

真「ホントですねー、主役が遅刻なんてしたら大変ですし」

P「真なんか、めっちゃ頑張ってプレゼント選んだのになぁ」

真「わあ、ちょっと! 何言ってんですかプロデューサー!」

雪歩「……ふふっ」

P「……雪歩、何かいいことでもあったか?」

真「そりゃ今日が誕生日なんですから、いいことに決まってますよ」

P「それもそうか」

60: 2013/12/24(火) 00:31:16.52 ID:fY3vpmNW0
雪歩「あの……プロデューサー、真ちゃん」

P「ん?」

真「なに?」


雪歩「私の進路……決めました。 私――」





雪歩「――――トップアイドルになります」





61: 2013/12/24(火) 00:32:10.25 ID:fY3vpmNW0
以上です。読んで下さった方、ありがとうございました。


雪歩、誕生日おめでとう!!ついでに俺!

引用元: 雪歩「私の進む路」