1: 2020/12/28(月) 22:53:45.60 ID:tFYQg2QY.net
璃奈「相談を色々したくて」

しずく「『Solitude Rain』の?」

璃奈「録画した公演の映像を提供してもらって、それを基に演出を加えたものをスクールアイドルのPVとしてアップしようと思ってる、って話はしたよね」

しずく「演劇に関してならともかく、スクールアイドルとしての演出込みなら、これまで皆さんのPVを作ってきた璃奈さんにお任せしようと思ってたけど…」

2: 2020/12/28(月) 22:56:55.06 ID:tFYQg2QY.net
璃奈「うん。私も一通り仕上げてからしずくちゃんに持っていって確認をしてもらうようにすればいいと思ったんだけど、先に色々聞きたい事が多くなっちゃって」

璃奈「それにしても、舞台に立ってるしずくちゃん、格好良かった。りなちゃんボード『感激!』」

しずく「嬉しいけど大袈裟だよ、そんなに口をおっきく開けてなんて」

璃奈「これは一緒に観てたかすみちゃんの再現」

しずく「フフッ…かすみさん、そんな顔で拍手してくれてたんだ…」

4: 2020/12/28(月) 23:04:46.80 ID:tFYQg2QY.net
しずく「(それから私たちは、PVの演出についてしばらく話し込みました。演劇『荒野の雨』の登場人物の設定や心情、作中における演出の意図などです。)」

しずく「(他の皆さんはそれぞれ今日は放課後に予定があるらしく、同好会は開店休業状態。途中から部室にあったお菓子を食べつつ、脱線してあんまり関係のない演劇の蘊蓄やオススメのアプリゲームの話をしていたらいつの間にか夕方になってしまいました。)」

5: 2020/12/28(月) 23:12:25.79 ID:tFYQg2QY.net
璃奈「あ、もうこんな時間。そろそろ帰りの支度をしないと」

しずく「ついつい話し込んじゃった…途中から脱線しちゃったけど、PV作りの手助けにはなりそうかな?」

璃奈「うん、ありがとう。とっても参考になったから、近いうちに仕上げられると思う」

しずく「本当に?それなら良かった」

璃奈「そうだ、ひとつ聞き忘れてたことがあった」

しずく「ん?なんでしょう」

7: 2020/12/28(月) 23:27:00.99 ID:tFYQg2QY.net
璃奈「しずくちゃん、演じる事は、好き?」

しずく「……」

しずく「(璃奈さんは、いきなりどうしてこんな事を聞くのだろう)」

しずく「(…私を励まそうと二人が遊びに連れて行ってくれた時の話かな)」
ーーーーーーーーーーーーーー----

璃奈「好きなの?昔の映画。もしかしてしずくちゃんが演技を始めたのって、こういう映画を観てたから?」

ーーーーーーーーーーーーーー----

しずく「(璃奈さんが今聞いてきた理由は、表情からは読めない…なんてダメダメ、こんな事を思うのは失礼だよね)」

8: 2020/12/28(月) 23:38:26.27 ID:tFYQg2QY.net
璃奈「『Solitude Rain』、公演で使われてたのはショートバージョンで、今回PVにするのはもちろんそれをベースにしたものなんだけど」

璃奈「参考にしようと思って、フルバージョンの方も聴いたの」

しずく「……”私じゃない完璧な誰かにはもう なれなくたっていい偽るのはおしまい” 」

璃奈「さすが、察しが早い」

しずく「当然、私があの子を演じたんですから」

9: 2020/12/28(月) 23:55:34.06 ID:tFYQg2QY.net
璃奈「しずくちゃん、前に言ってくれた事があったよね。演じている時が一番堂々としていられて、誰の眼も気にならなくなる、自分が桜坂しずくである事を忘れられるって」

しずく「……ええ」

璃奈「それで、さっきの歌詞を聴いた時にこのしずくちゃんの言葉を思い出して」

しずく「……」

10: 2020/12/29(火) 00:14:46.64 ID:q6dL84YB.net
しずく「『Solitude Rain』はあくまでも『荒野の雨』の劇中歌であって、私が演じたあの子の歌、だけど」

しずく「…私があの役を演じるにあたって求められたのは、本当の自分を曝け出すこと。でもあの時言った通り、演じる事を通じて私は桜坂しずくである事を忘れられると思っていて」

しずく「もっと言えば、嫌われる事を怖がって周りが理想とする私を演じてきたから、『本当の自分』を曝け出すなんて出来ない、って」

11: 2020/12/29(火) 00:30:09.36 ID:q6dL84YB.net
しずく「でもね、嫌われるかもしれないけど、それでも自分を出してみなよ、って全身で私にぶつかって、引っ張り上げてくれた友達がいて」

璃奈「…うん」

しずく「その時に気づいたの、私がそもそも演じるという事に触れたのは、映画や小説が大好きだから。その心はきっと、この街で一番の歌手になりたい、って言うあの子が劇中で手に入れるものと同じ種類の感情だって」

璃奈「自分の大好きに対して、素直になれる事」

12: 2020/12/29(火) 00:44:41.28 ID:q6dL84YB.net
しずく「だからこそ、今まで失っていた本来の私を曝け出す事によって、逆に私はあの子を演じる事が出来た。私の中にある沢山の側面の内から、『本当の私』と言う一つを取り戻し、使うことで」

しずく「……最初の質問の答えに戻るね」

しずく「私は、演じる事が大好き」

18: 2020/12/29(火) 01:10:46.17 ID:q6dL84YB.net
すみません、ルール知らなかったんでもう少し続き書きます

20: 2020/12/29(火) 01:12:08.51 ID:q6dL84YB.net
璃奈「……」

璃奈「(しずくちゃんの自信と凛々しさに溢れた瞳は、私が求めている理想の答えを演じているのかもしれない。そうだとしても、それもしずくちゃんなんだ。あの子が、白い自分と黒い自分の両方を併せ持ったように)」

璃奈「(だから、私の返す言葉はー)」

22: 2020/12/29(火) 01:19:17.17 ID:q6dL84YB.net
璃奈「しずくちゃんは、本当に女優さんなんだね」

しずく「…ありがとう、最高の褒め言葉です」

璃奈「それと、ごめんなさい」

しずく「えっ、どうして?」

璃奈「PVの参考になんて言って、踏み込むような事を聞いたから」

しずく「ううん、そんなことは…」

25: 2020/12/29(火) 01:30:56.20 ID:q6dL84YB.net
璃奈「参考にしたい、っていうのも半分くらいは本当だけど、それ以上にしずくちゃんとの事をもっと知って、今以上に友達になりたかった」

しずく「璃奈さん…」

璃奈「しずくちゃんが悩んでいる時に、引っ張り上げられる人は一人しかいないと思って、私はその人の背中を押したの」

26: 2020/12/29(火) 01:38:50.78 ID:q6dL84YB.net
璃奈「でも、舞台の上で活き活きしたたくさんの表情を出しているしずくちゃんを見て、私もそれを支えられる親友になりたいって、そう思った」

璃奈「舞台の上で演技をしてるしずくちゃんも、普段の優しくしてくれるしずくちゃんも全部含めて素敵だと思う。だから、私のワガママかもしれないけど、演じる事を嫌いにならないで欲しいなって」

35: 2020/12/29(火) 19:23:40.02 ID:q6dL84YB.net
璃奈「ええっと…上手く言えているか分からないけど」

しずく「…璃奈さん」

しずく「もう大丈夫、璃奈さんの気持ち、伝わったから。でも」

璃奈「…あっ」

璃奈「(手、握られちゃった…暖かい)」

しずく「もう璃奈さんとお互いとっくに親友のつもりでいたのは…私だけ?」

36: 2020/12/29(火) 19:32:10.66 ID:q6dL84YB.net
璃奈「うっ、そういうことでは」

しずく「…なーんて、冗談です。ごめんなさい、ついこうしてみたくなっちゃって」

璃奈「…そんな泣きそうな顔を見せるなんてズルい」

しずく「でも、こういう演技が出来る私の事も大好きなんですよね?」

璃奈「…りなちゃんボード『むー』」

37: 2020/12/29(火) 19:40:18.45 ID:q6dL84YB.net
しずく「それはさておき、親友だと思ってるのはほんとですからね?そうじゃなきゃこんなに長い時間、二人っきりでお喋りしないよ?」

璃奈「それは…うん」

しずく「だから…これからは、今以上に遠慮しません!」

璃奈「…望むところ」

38: 2020/12/29(火) 20:03:44.23 ID:q6dL84YB.net
ガラガラ

かすみ「あー!しず子もりな子もまだ残ってた!」

しずく「かすみさん?確か今日は小テストの不合格点で居残りって言ってたっけ」

璃奈「その調子で夏休み前の期末試験、大丈夫なの?」

しずく「今回の小テストは確か20点中の11点だったよね…ワンワン、お犬さんでかわいいじゃん!」

39: 2020/12/29(火) 20:12:11.24 ID:q6dL84YB.net
かすみ「全然かわいくないっ!…はぁー、今日は疲れたからもう一緒に帰ろ?」

璃奈「私たちも、ちょうど帰ろうと思ってたところ」

かすみ「そうだ、頭使ってお腹も減っちゃったし、またマウンテンパンケーキ行こうよ!」

しずく「それはちょっと…私たちおしゃべりしながらお菓子食べてたから正直もうお腹に入らないよ」

40: 2020/12/29(火) 20:22:36.60 ID:q6dL84YB.net
かすみ「え!?かすみんが机に倒れそうになりながら補習をしている間に二人で楽しくティータイム!?羨ましすぎる…やっぱりなおさら行くよ、かすみんだって甘いもの食べながらお喋りしたいもん!」

しずく「これ以上食べたら明日からたくさんランニングしなきゃいけなくなりそうだし」

璃奈「私も体がようやく柔らかくなってきたし、コンディションが悪くなるような暴食は」

41: 2020/12/29(火) 20:30:28.70 ID:q6dL84YB.net
かすみ「ぐぬぬ…一人ぐらいかすみんの味方をしてくれても…というか二人ともそんなにくっついちゃって仲良すぎじゃない?」

しずく「あっ」

璃奈「ん」

しずく「(勢いで手を握った流れのままの距離感でいたの、忘れてた…)」

42: 2020/12/29(火) 20:44:10.96 ID:q6dL84YB.net
璃奈「うん、そうだよ。知らなかった?」

かすみ「えっ」

璃奈「ちなみに今日はしずくちゃんからかすみちゃんの秘密、色々聞いちゃった」

かすみ「えっ!?」

しずく「(…思いっきり嘘だけど、乗っかりましょう)」

しずく「かすみさんがこの後も補習を受けるような事があれば、その度に璃奈さんにかすみさんの面白い話を教えちゃおうかなー?」

43: 2020/12/29(火) 20:55:03.39 ID:q6dL84YB.net
かすみ「ぬあー!なんなの今日は二人とも!!無理矢理でもマウンテンに連れて行って今日何の話をしてたか吐かせる!!」

璃奈「なんど言ってもダメ。りなちゃんボード…」

しずく「(璃奈さんがこちらに視線を送ってくる。なるほど…それなら私もさっきの宣言通り遠慮なく、頬っぺたがくっつくぐらい顔を寄せてその表情に便乗させてもらいましょう)」

璃奈しずく「『お腹パンパン』!」

44: 2020/12/29(火) 20:56:59.29 ID:q6dL84YB.net
おしまいです
途中の保守と支援ありがとうございました

45: 2020/12/29(火) 20:58:23.33 ID:7dfd7Rdk.net

46: 2020/12/29(火) 22:00:29.17 ID:NqY+KIIy.net
乙でした
しずりなは良い(再認識)

引用元: しずく「璃奈さん?」璃奈「PVの編集にあたってちょっと」