雪の女王の世界 女王の宮殿 エントランス

ドンドンッ ドンドンッ

カイ「あーうっせぇな…わかってる!んなノックしなくても今開けるから待ってろ!ったく…女王が余計な事に首突っ込んでから客が来すぎなんだよ。毎度毎度俺が客の案内しなきゃなんねぇし…」スタスタ

カイ「何で俺の読書時間が奪われなきゃならねぇんだクソッ。せめて書庫をエントランス近くに移設するとかそういう配慮あるだろうがよぉ…」ブツブツ

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ

カイ「うるせぇ!待てって言ってんだろうが!一体誰だっt」ガチャッ

キモオタ「ぶひいぃぃーっ!!やっと開いたでござるぅ!外寒すぎでござるぅぅ!!」ズサーゴロゴロゴロ

ティンカーベル「いやー、宮殿まであと一歩!ってところ急に吹雪いて来ちゃったもんねぇ、まいったまいった!…あっ、おじゃましまーす」ヒラヒラ

カイ「お、おう…お前等か」ヒキッ

キモオタ「おおっと、挨拶が遅れましたなwwwお久しぶりでござるカイ殿www扉開けていただいて助かりましたぞwww我輩、危うく冷やしラードになるとこでござったwww」コポォ

カイ「さほど久しくもねぇだろ。名前、覚えてるぜ。ヘンゼル達の連れ合いのティンカーベルと…キモオタだろ。しかしまた随分と軽装だな、追い剥ぎにでもあったのか?」

キモオタ「いやいやwwwそう言うわけではなくwwwちょっと自然をなめておりましてなwwwもっと厚着すべきでしたなwww」

カイ「まぁどうだっていいが…んなことより女王に用事があって来たんだろ?あいつなら自室だ、呼んできてやるからお前等は応接室に…」

カイ「いや、その様子じゃあ体を温めるのが先か。ついて来な、先に暖かい茶を淹れてやる、その方がいいだろ」スタスタ

キモオタ「おおおwwwそれは嬉しい気遣いですなwww我輩、サトウマシマシミルクオオメで頼みますぞwww」コポォ

ティンカーベル「あっ!じゃあ私はサトウマシマシマシマシ…」

カイ「増しすぎだろ。今は砂糖の備蓄がそんなにねぇんだ、グレーテルがいねぇからな。ちょい増しで我慢しろ」スタスタ

408: 2016/06/13(月)00:21:13 ID:xVI
女王の宮殿 ダイニング

キモオタ「くぅ~www吹雪で冷え切った体に温かい紅茶が染みますなぁwwwあっ、カイ殿www紅茶のおかわりを頂けますかなwww」コポォ

ティンカーベル「あっ、私もおかわり!あと何かお茶菓子があったら嬉しいよ!」

カイ「何しれっと要求してんだ。ったく、お前等みたいな図々しい客初めてだぜ…あいつらがいねぇから菓子っつってもラスクくらいしかねぇぞ」コトッ

キモオタ「かたじけないwwwしかし申し訳ありませんでしたなwww急に押し掛けた上にお茶までごちそうになってしまいwww」コポォ

カイ「まったくだ。お前等の相手をしなけりゃ俺はもっと読書に没頭できたはずなんだがなぁ…」

ティンカーベル「まぁまぁそう言わないでよー、今はこの広い宮殿にカイと女王の二人で住んでるんでしょ?たまにはお客さんが来た方が寂しくなくていいじゃん!」

カイ「必要ねぇな、俺は本さえありゃあそれで良い。しいていうなら…数学でも文学でも何でも構わねぇから心躍るような難題に挑戦出来りゃあ上々だな。一人が静かで良い、客だの家族など煩わしいだけだ」

キモオタ「ほうwwwそうは言いつつもお千代殿やヘンゼル殿にグレーテル殿達www家族が次々家を出て行ってしまって寂しいのではないですかなwww」コポォ

カイ「無いな。そもそもあいつらの居場所はここじゃねぇんだ、いつまでもこの宮殿にいる方が間違ってんだろ。所詮あいつらは余所者だからな」

ティンカーベル「ちょっと!家族なんでしょ?そんなひどい言い方しなくていいじゃん!」プリプリ

カイ「事実だろ、余所の世界のあいつらが目的も無くこの宮殿に残っても良いことなんざねぇよ。というかお前おとなしく待ってろ、もうじき女王も来るだろうしよ」ズズー

ティンカーベル「むむぅ…カイは薄情者だよ。ヘンゼルやグレーテルはカイの事ちゃんち家族だと思ってるみたいなのに。やっぱり悪魔の鏡の破片のせいで心が冷たくなっちゃってるのかな?」ヒソヒソ

キモオタ「だとしたら我々に茶を振る舞ったりせんでござろうwwwそれに口は悪いでござるが、ヘンゼル殿や女王殿と家族だということを否定しない辺り…まぁそう言うことでござろうなwww」ムシャムシャ

ティンカーベル「あー確かにそっか。こないだも急に戻ってきたヘンゼルに色々世話焼いてたしね」モグモグ

キモオタ「今だって我々をほったらかしにする事も出来るはずなのにこの場に残ってくれておりますしなwww素直になれないだけの思春期ボーイでござるよwww」コポォ

カイ「チッ…お前等聞こえてんだぞ、黙って待てねぇのか」

409: 2016/06/13(月)00:24:07 ID:xVI
ガチャッ

雪の女王「やぁ、キモオタにティンカーベル。待たせてしまってすまない、ようこそ私の宮殿へ。そんな軽装じゃあ外は寒かっただろう遠慮なくくつろいでくれ」フフッ

キモオタ「これはこれは女王殿www申し訳ありませんな忙しいときにアポ無しで押し掛けてしまってwww」コポォ

ティンカーベル「ごめんね!でも女王にお願いとか報告とか色々あってねー…あっ!キモオタ、例の物を渡すの忘れちゃ駄目だよ!」

キモオタ「もちろんですぞwww女王殿、これ冷えてしまいましたが手土産でござるwww現実世界のうまいものを色々と持ってきたのでカイ殿と食べてくだされwww」スッ

雪の女王「あぁ、ありがとう。そんな気を使わなくて良かったんだぞ?だがせっかくの好意だ、頂くよ。ほう、これは高島屋の地下の…なんとも美味しそうな物が揃っている」

キモオタ「ちょwwwなんで高島屋だってわかったでござるかwww」コポォ

ティンカーベル「まさかこの世界にも高島屋が……!?」

カイ「何言ってんだお前。そんなわけねぇだろ、お千代がこの宮殿に帰って来るときなんかによく手土産にしてんだよ」

雪の女王「実家に帰るのに手土産なんか必要ないというのに、律儀な娘だよ。しかしキモオタ、この料理は私とカイの分にしては多すぎるように思えるが…さては二人ともこの宮殿に滞在しようと言う考えだな?」フフッ

キモオタ「ドゥフフwwwバレてしまいましたなwww実は我々もご相伴に預かろうかと思っておりましてなwww」

ティンカーベル「実はね、私達は女王に特訓して貰いたいなって思ってるの!アリスとの戦いが近いからもっと強くなりたいんだ!」

キモオタ「魔力も豊富でこんな立派な宮殿を作り出してしまうほどの女王殿ならばなんかこう…いい感じの特訓をしてくれるのではないかと期待しておりましてwww」

ティンカーベル「他にも色々と用事はあるんだけどね、そういうことだからなんかいい感じの特訓して欲しいの!それでちょっとの間だけこの宮殿に泊めてくれるともっと助かるんだけど…」

カイ「いい感じってなんだよ、雑すぎんだろこいつら」

雪の女王「フフッ、随分と買いかぶられているようだ。そういうことならば協力しよう、私はこの世界から離れられないから特訓の相手をする時間も取れるだろう。部屋も貸そう、後で案内するよ」フフッ

410: 2016/06/13(月)00:27:19 ID:xVI
雪の女王「だが単なる思いつきや気まぐれで私の所へ来たわけではないんだろう?何か理由があって…近々アリスとの戦いを予感している、だからこそ急にやってきて私に協力を求めた。そうだろう?」

キモオタ「いやはや、まったくその通りでござるよwww我々には時間があまり無いのでござる、故に特訓するならば濃密な物にしたいのですぞ。そこで強力な魔力を持つ女王殿を頼ったわけでござる」

ティンカーベル「あのね、実は三日後に私達はみんなと一緒にアリスの世界に乗り込むことになってるんだ」

雪の女王「三日後とは随分と急だな」

カイ「アリスは今回の騒ぎの元凶なんだろ?【不思議の国のアリス】はアリスの領域、乗り込んでいくなんてのは危険過ぎやしねぇか?」

キモオタ「それは百も承知なのでござるが…我々にとっては避けられない戦いなのでござるよ」

雪の女王「何か事情があるというのだな。聞かせて貰おう、何故こうも急にアリスの世界への突入を決断したのかを。他にも私に用があると言うのならばそれも併せて聞いておこう」

ティンカーベル「うん、でもどっから話そうかな…ねぇキモオタ?」

キモオタ「女王殿もご存じの通り、我々はおとぎ話の世界に起きた異変をなんとかするべく…そして世界の消滅を防ぐべく様々な世界を旅しているでござる」

女王「あぁ、そしてその異変の元凶がアリスだと判明した今、彼女を止める事を目標にして動いている。君も、そして私もな」

キモオタ「そうですな、そして我々はその旅の途中で多くの人々と出会い、アリス殿の企みを阻止するという同じ目的を掲げる仲間と出会うことが出来たのでござる」

ティンカーベル「シンデレラの事は知ってるよね?シンデレラも私達の友達で一緒に戦ってくれるはずだったんだけど…今はアリスに連れ去られちゃって、あいつらの世界にいるんだ」

雪の女王「つまり人質ということか?」

キモオタ「なんと言えばいいのか…我々が得た情報によるとシンデレラ殿は以前とは別人のようだったらしいでござる。アリス殿の元で戦っている姿が確認されてましてな…それが強要されたのものなのか、あるいは」

キモオタ「何らかの魔法具による洗脳や精神操作…シンデレラ殿はそういった類の魔法の被害にあっていると我々は考えているのでござる」

411: 2016/06/13(月)00:29:29 ID:xVI
女王「……精神に干渉する魔法具、か」スッ

キモオタ「女王殿…?何か心当たりがあるのですかな?」

カイ「心当たりも何も…アリスに連れ去られたシンデレラが別人のようになっちまったってなら、間違いなく……」

女王「キモオタ、ティンカーベル。どうやら私は、君達に謝罪をしなければならないようだ」

ティンカーベル「えっ?女王が私達に?なんで?別に何もされてないよね?」

キモオタ「どう言うことですかな女王殿?理由を話していただきたいのでござるが…」

雪の女王「君達も存在は知っているはずだ。この【雪の女王】の世界にはある一つの魔法具が存在する。悪魔が作り出した鏡…砕け散って破片になった今でも魔法の力は失われていない、悪魔の鏡の破片だ」

ティンカーベル「あっ!そうそう思い出した!前に白鳥にも言ったけどさ、私ね魔法具の材料にするためにその悪魔の鏡の破片が欲しいの!なんか催促するみたいになっちゃうけど…それって今すぐ手には入らないかな?」

雪の女王「あぁ聞いている、そのことも君に言わなければいけないと思っていた。だが…今、この世界に悪魔の鏡の破片は存在しない。君に譲ることも当然出来ない」

ティンカーベル「えぇっ!?それって前はあったってことだよね!?」

雪の女王「あぁ、以前は存在した。悪魔とは言うが彼等はおとぎ話の事情を知る味方、強い力を持つ連中だから鏡に破片の保管も彼らに任していたが……私が留守にしている間アリスの襲撃にあった悪魔達は鏡の破片を奪われた」

キモオタ「なん…ですと…!悪魔の鏡の破片を奪われたですと…!」

412: 2016/06/13(月)00:33:20 ID:xVI
雪の女王「本来アリスは私を消すためにこの世界へ来たのだろう、だが不在だったため侵入者に気がついた悪魔達がアリスを迎え撃ったが……返り討ちにされてしまった」

雪の女王「何匹もの悪魔がやられ、一部の土地は彼女の攻撃の爪痕を残したままになっている。だが幸いなことに物語の筋に影響は無く、悪魔達の奮闘のおかげで物語が消滅することなく彼女を追い返した。だが…」

キモオタ「その時、いくつかに破片を奪われてしまったという事ですな…?」

雪の女王「その通りだ。アリスは去り際に彼等から悪魔の鏡の破片を奪っていった。それは決して…奪われても良いものではなかった」

雪の女王「同じ過ちを繰り返さないため、残った破片は私が処分した。同時に破片の奪還のために白鳥や親指姫に【不思議の国のアリス】の偵察を命じたが…それを取り返すことは適わなかった。予想以上に強固な守りだったからだ」

ティンカーベル「じゃあアリスは悪魔の鏡の破片を持っているって事だよね?あいつが強い魔力を持ってる破片を手放すわけ無いもん…」

雪の女王「…すまない、君たちには一番に伝えるべきだった。だが…余計な不安を与えることも避けたかった、だから私は君たちには伝えずこちらで解決しようと思っていたが…」

カイ「アリスにさらわれたシンデレラがどうやら精神に干渉されてるってなると…もうそんな事も言っていられないがな」

雪の女王「あぁ、悪魔の鏡の破片は…人間に使えば対象の精神に干渉し…性格をねじ曲げることが出来る恐ろしい魔法具だ。そしてシンデレラは恐らくその鏡の破片によって…性格を変化させられている。好戦的な性格にな」

キモオタ「なんという…!」

雪の女王「本当にすまない。全てに責任は私にある、鏡の破片の管理が行き届いていなかったこと…そしてあろうことかそれをアリスに奪われてしまったこと」

雪の女王「そしてその破片によって君たちの大切な仲間を危険にさらしてしまった事…悔やんでも悔やみきれない。私は許されざるミスを犯してしまった」

413: 2016/06/13(月)00:37:11 ID:xVI
雪の女王「実に情けない話だ。アリスの企みを阻止するなどと言っておきながら、隙をつかれて魔法具を奪われてしまうなど…」

ティンカーベル「確かにやばいしシンデレラが鏡の破片を使われちゃってるならすごく心配だけど…でも悪いのはアリスで女王は悪くないよ!気にすることないって!」

キモオタ「そうですな、それに済んだことですぞ。起きてしまった以上責任の所在などどうだっていいでござる、むしろシンデレラ殿の精神に干渉している魔法具が悪魔の鏡の破片だと断定できるのだとすれば対策も立てやすいでござるよ!」

ティンカーベル「確かにそだね!どうやったらシンデレラを元に戻せるのか分かるわけだし、ポジティブに行くしかないよ!気持ちで負けてたら勝てないし!」

キモオタ「そうですなwww対策さえ分かっていれば魔法具だろうがなんだろうがなんとでもなりますぞwww」コポォ

雪の女王「…君達は随分と前向きだな、悩んでいた私がバカバカしく思える程にな」フフッ

キモオタ「ドゥフフwwwトラブルと遊ぶヤンチャボーイですからな我々www悩んでも仕方ないことは悩まないwww」コポォ

カイ「ただ脳天気なだけだろお前等は」

ティンカーベル「私は違うよ、私はね!まぁキモオタは何にも考えてない脳天気マンだけど」

キモオタ「ちょwww自分ばっかりずるいですぞお主www」コポォ

雪の女王「フフッ、少々胸が軽くなった。だが不甲斐ない姿をさらした事へのケジメはつけるつもりだ、当然君たちへの協力は惜しまない。何でも言うといい」

キモオタ「そいつは助かりますなwwwでは早速シンデレラ殿を脅かしている悪魔の鏡の破片について詳しく聞きたいでござるwww」コポォ

雪の女王「あぁ、シンデレラを救う上で重要になってくるものな。そうだな、丁度ここに悪魔の鏡の破片の影響を受けている少年がいるわけだが…」

カイ「…んだよ俺を説明に使うんじゃねぇよ。ったく、俺も好きで魔法具の影響受けてる訳じゃねぇんだぞ」

414: 2016/06/13(月)00:42:22 ID:xVI
雪の女王「先ほど少し話したが悪魔の鏡の破片は対象の性格を変化させる魔法具だ」

キモオタ「ふむ、優しいシンデレラ殿が好戦的になってしまったように…でござるな」

ティンカーベル「じゃあ今は口が悪くてちょっと感じも悪いカイは元々は優しくて可愛らしい少年だったって事だね?」

カイ「感じ悪いとか言ってくるお前の方が感じ悪いけどな」

雪の女王「本質は歪んでモノを写す鏡だ。カイは頭が良いうえに控えめで優しく、他人を思いやれる少年だったからこそ、今はこんなに口が悪い」

カイ「テメェ…俺がキレねぇとでも思ってんのか」

雪の女王「だがカイに場合は元々持っていた知識も得る事への探求心も失っていないし思いやりの心も失っちゃいない、相当感じは悪いがな?」クスクス

カイ「面倒くせぇ…もう諦めた、好きにしやがれ」プイッ

雪の女王「鏡に破片がシンデレラにどこまでの影響を与えたのかは分からない。君達を今も仲間だと思っているかもしれないし思っていないかもしれない、優しい心が残っているかもしれないし完全に失われているのかもしれない。そのあたりは今は何とも言えない」

雪の女王「ただ一つだけ確実なのは鏡の破片は対象の肉体に残留する、という点だ」

ティンカーベル「破片がザンリューする…?それってつまり…どゆこと?」

キモオタ「シンデレラ殿の肉体のどこかに鏡の破片が埋まっている、ということでござるかね?」

雪の女王「あぁ、そう解釈してくれて構わない」

415: 2016/06/13(月)00:46:47 ID:xVI
雪の女王「カイの場合…突き刺さった鏡の破片は胸に残留している。彼を悪魔の鏡の魔法から解放するには胸にある破片を取り除く必要がある」

キモオタ「言うには簡単でござるが難しそうでござるな…破片ってごくごく小さな物でござろう?」

雪の女王「そうだな、視認できる大きさではあるが…肉体の中に潜り込んだそれを取り除くのは容易くはない」

キモオタ「ちなみにカイ殿に埋め込まれた鏡の破片は物語的にはどうなるのでござる?」

ティンカーベル「はいはい!私知ってるよ!カイは物語の最後で鏡の破片を取り除かれて元の性格に戻れるんだよね!」

カイ「そうみてぇだな、一応俺がこの先どうなるかは聞いてる」

キモオタ「ほうwwwちなみにどうやってカイ殿は破片を取り除いたのですかな?」

雪の女王「彼には幼なじみのゲルダという少女がいる。ゲルダは村を出て行ったカイを連れ戻すために旅をしているんだが…やがてこの宮殿にたどり着いたゲルダはカイの為に涙を流す」

雪の女王「その涙は冷え切った彼の心を溶かし、胸に残留していた悪魔の鏡の破片を洗い流すんだ。カイは優しくも勇敢なゲルダの愛によって魔法から解き放たれるんだ」

ティンカーベル「くぅ~!知ってたけど改めて聞くとすんごくロマンチックだよねぇ!私そう言うの大好きだよー!カイも隅に置けないよね!」

カイ「茶化すな。俺のことなんかほっときゃいいのにゲルダの奴無茶しやがって」

キモオタ「しかしおとぎ話に主人公はリア充が多いでござるなぁwww可愛い幼なじみがいる時点で勝ち組なのにしかも好かれているとかwwwカイ殿爆発しろwww」

カイ「しねぇよ。お前が爆散しろ」

416: 2016/06/13(月)00:53:32 ID:xVI
雪の女王「だがカイの場合、鏡の破片が洗い流されたのはゲルダに流した涙だったからだと考えるべきだ。シンデレラ同じ方法が通用するとは限らない」

キモオタ「むむう…しかし方法は問わずシンデレラ殿の肉体から破片を取り除けばいいのでござるよね?」

雪の女王「そうだ。だから今その方法を考えても実際の彼女の状況によってはその方法が使えなくなるかもしれない…闇雲に考えるよりも実際の状況を見て適切な手段を選ぶべきだな」

ティンカーベル「そっかぁ…まぁでもとにかく体のどっかにある破片を探して取り除く!これ分かってるだけでも違うよね!」

キモオタ「そうですなwwwこの情報は後ほど皆に伝えておくべきですなwww」

雪の女王「他のおとぎ話を読んでヒントになりそうな物を探すというのも手だな、書庫も自由に出入りしてくれ。役立つ本も多くおいてあるはずだ」

カイ「チッ…俺の安住の地にまた邪魔者が来るって事かよ…」

キモオタ「いやはやwww何から何まですいませんなぁwww助かりますぞwww」

雪の女王「だが折角だ、君達は私に特訓をして貰いたいと言っていたな?ならばまず君たちの力量を見ておきたい」

ティンカーベル「あっ、早速特訓開始!?よっし、頑張るぞ!」

キモオタ「我輩も気合い満タンですぞwwwでは早速頼みますぞwww」

雪の女王「あぁ、時間がないのなら少しでも早く取りかかった方がいいからな、今から特訓を開始する。カイ、すまないがその間に皆の食事の準備をしておいてくれるか?それと客間のベッドメイクもだ」

カイ「面倒だがまぁそれくらいはやってやるよ。つーか特訓するのは良いがよぉ…こいつらの事うっかり頃しちまうなよ?」

雪の女王「フフッ、それは彼ら次第だな。訓練ごときで私に殺されるようならそのときは……その程度だって事だ」

キモティン「えっ」

429: 2016/06/20(月)00:20:08 ID:bJm
ティンカーベル「あ、あはは!もーっ!二人してそんな物騒なこと言って、私達をビビらせようたってそうはいかないよ!」

キモオタ「まったくですぞwwwこんな場面でジョークをぶっこんでくるとは、女王殿はクールな外見に似合わず相当なジョーク好きのようですなwwwしかしジョークのクオリティにおいてはどうやら我々に分があるようですぞwww」コポォ

ティンカーベル「そうだよね!いくら女王がすんごい魔力持ってるからって特訓でうっかり私達を頃しちゃうなんて、ある訳ないじゃん!嘘っぽすぎてバレバレの冗談だよー!」

キモオタ「もっとリアリティのあるジョークでないと我々をビビらせることなど出来ませんぞwww」コポォ

雪の女王「…なぁカイ、私は今、何か冗談を口にしたか?」

カイ「いいや、冗談を言っているようには聞こえなかったが?」

雪の女王「あぁ、その通りだ。だが彼らの反応を見るにまさかとは思うが…『特訓なのだから命に危険が及ぶはず無い』などと考えているのではないだろうか?」

カイ「いくらなんでもそこまで浅はかじゃないだろう。実戦でないとはいえ『雪の女王』の名を冠するお前を相手に戦うということがどういうことか理解していると思うぞ?」

雪の女王「フフッ、そうだよな。自画自賛になってしまうが私の魔力はおとぎ話の世界でも屈指のものだ、相応の覚悟を持って挑んできていると考えるのは当然だ」フフッ

カイ「あぁ、こいつらも生半可な覚悟で挑んできてるわけねぇだろうぜ。『雪の女王』に挑むということは例えるならば冬を強引に夏に変えようとするようなもんだしな、それこそ命を失う覚悟なんざとっくに済ませてるはずだ」

ティンカーベル「…キモオタ、これ多分ガチの奴だよ!うっかりすると氏ぬ奴だよ!?」ヒソヒソ

キモオタ「確かにこれはやばいでござるな…ある程度の覚悟はしていたでござるが、まさかこれほどとは…」

ティンカーベル「怖いけどこうなったらやるしかないよね!でもさ特訓だといっても二人対一人なんて卑怯だからまずはキモオタが犠牲n…じゃなかったキモオタが先陣を切っていく感じでいこう」ヒソヒソ

キモオタ「ずるいですぞwwwここはもう覚悟決めてお互いが氏なないように立ち回るしかありますまいwww」ヒソヒソ

430: 2016/06/20(月)00:22:00 ID:bJm
雪の女王「…何かヒソヒソと相談しているようだが、どうする?やはり特訓は中止にするか?」

キモオタ「いやいやwww我々は力を付けねばならぬ理由があるのでwww故に特訓お願いしますぞwww」

雪の女王「氏を覚悟しての選択、そう判断して構わないな?」

キモオタ「それは正直微妙なところでござるなwwwとはいえここで氏を回避しても、弱いままならアリス殿に殺されるでござろうしなwwwまぁ氏に物狂いでやれば大丈夫でござろうwww」

ティンカーベル「まぁぶっちゃけあんな言い方されたらすんごい怖いけどね!」

キモオタ「ちょwww直球wwwティンカーベル殿の魂の叫びがwww」

ティンカーベル「でも口ばっかりでいざ戦うとなったら怖いから止めますー、なんて言ってたらマッチ売りちゃんも草葉の陰で苦笑いだよ!っていうかいっとくけど私だってそう簡単にはやられないよ!」フンス

キモオタ「そうですなwwwと言うわけで女王殿、改めてよろしく頼むでござるwww」

雪の女王「いいだろう、とはいえこの宮殿には特訓に耐えうるような場所が存在しない。少し時間を貰おうか、今から戦いに相応しい場を生成しよう」

キモオタ「なんとwww専用の空間を造るとはwwwなんだか手を煩わせてしまって申し訳ないですなwww」

雪の女王「構わないよ、私も君たちの覚悟に応えねばな。そうだな…二十分後に宮殿の前に来てくれ、もちろん戦いの準備を済ませておくように。行くぞ、カイ」

カイ「あぁ。ティーセットはあとで片すからそのままにしておいて構わないぜ、せいぜい氏なない準備をしておくんだな」フフッ

キモオタ「また不穏なことを言い残しておきましたなwwwとりあえず準備して行きますかなwww」コポォ

ティンカーベル「そだね、それに前向きに考えたらこれはむしろラッキーだよ!女王を相手に善戦できたらアリス相手でもそんなに苦戦しないって事の証明にもなるしさ!そう思うことにした!」

キモオタ「ほうwwwそれは確かにwwwならばここは是が非でも善戦して、アリス殿との決戦の前に箔をつけておきたいですなwww」

431: 2016/06/20(月)00:24:56 ID:bJm
女王の宮殿 宮殿前の雪原

雪の女王「この辺りにしよう。建造物クラスの大物を生成するのは久しぶりだ、シンプルで強度を重視したいところだが…さてどんなデザインにするかな」フフッ

パキパキ…ズゴゴゴゴ

カイ「良かったのか?あいつ等に本当のことを言わなくても」

女王「あぁ、別になんの問題もないだろう。嘘をついているわけでも騙しているわけでもないのだから」

カイ「まぁそうだけどよ…俺は解ってるんだぜ?さっきのはあいつ等を鼓舞するための虚言。俺もそれを察したからあいつ等をちょっとビビらせてやろうと口裏を合わせたんだしな」

雪の女王「まぁそうだな。甘えさせるつもりなど毛頭ないが私が本気を出せば…いや、半分の力でさえ二人とも一瞬で氷の欠片になる。あくまで特訓なんだから彼等を頃してしまっては何にもならない」

雪の女王「私は当然、適度に力のセーブをする。だがそれを前もって言ってしまうと…彼等に体は意識的にしろ無意識にしろ自分はどうせ氏なないと慢心した動きになってしまう」

カイ「まぁ、そうかもな。んなことじゃあいくら特訓しても実戦で役に立てるとは思えねぇ」

雪の女王「だから少し、容赦のない女王を演じてみたのさ。彼等はブラフや話術に長けていると聞いていたから見破られるかとも思ったが私の演技もなかなかということだな」フフッ

カイ「調子に乗るんじゃねぇよ。でもよ…その、なんだ…」

雪の女王「どうした?何か気になることでもあるのか?」

カイ「それであいつ等は強くなれるかもしれねぇけど、お前の評判は悪くなるんじゃねぇか?少なくともあいつ等には容赦のない厳しい女だって思われるかもしれないんだぜ?」

雪の女王「なんだなんだ?私のことを心配してくれるのか?可愛い奴め、抱きしめてやるから近くに来なさい」フフッ

カイ「断る。デカい建物造るのは久しぶりなんだろ、集中しろ。それに心配なんかしてねぇよ、俺はヘンゼル達と違ってお前に懐いてるわけじゃねぇからな」

雪の女王「それは寂しいな。だが安心すると良い、君をさらったのは私なんだ。君に気苦労をかけるようなことはしないさ」

カイ「そうかよ。まぁお前のせいで俺が割を食う事になっても俺はどうとも思わねぇけどな。だからお前の好きにしろ」フイッ スタスタ

雪の女王「フフッ、まったく素直じゃないなカイは」クスクス

432: 2016/06/20(月)00:27:06 ID:bJm
二十分後
雪の女王の宮殿前

ドーンッ

キモオタ「ちょwww先程までだだっ広い雪原だったはずの空間にwww巨大な建物がwww」コポォ

ティンカーベル「わーっ…これはすごい。あれだね、現実世界の体育館?あんな感じだね、規模はこっちの方が全然おっきいけど」

キモオタ「これはもはや東京ドーム一個分ですぞwww我輩、スポーツ興味ない故に実物見たことも大きさも知らないでござるけどwww」コポォ

雪の女王「フフッ、お気に召したか?もう少し時間があれば装飾にもこだわりたかったがな。だが強度には自信がある、広さも十分だろう?」

キモオタ「十分すぎますなwwwこれだけ広ければコミケとか開催できますぞwww」コポォ

ティンカーベル「こんな凄い氷の建物、私達の特訓のためだけに造ってもらって悪いなぁ…」

雪の女王「君達が有効に活用してくれることが何よりの労いだ。くれぐれも私に瞬殺されないようにな?」ニコッ

キモオタ「ここまでしてくれる優しさを持ちつつも容赦ないwww女王殿はこういう場面だとスパルタでござるなぁwww」ヒソヒソ

ティンカーベル「優しいけど厳しいってヘンゼル達口を揃えて言ってたしね」ヒソヒソ

キモオタ「そう言えばそうでしたなwwwアメとムチというやつですなwww我輩としてはアメよりポテチがいいのでござるがwww」

雪の女王「さぁ、無駄口を叩いていないで始めるぞ。時間が惜しいんだろう?」

433: 2016/06/20(月)00:30:32 ID:bJm
女王の氷ドーム(仮称)内部

ティンカーベル「おぉーっ!中はあんまり寒くないね!」

キモオタ「というか外が寒すぎなのでござるよwww吹雪とかやばいでござるからなwww」

ティンカーベル「それにしても天井は高いしとにかく広いし…これが氷だけで出来ててしかも二十分くらいで造っちゃったとか圧巻だねぇ…」

キモオタ「宅配ピザが家に届くより早いですからなwww」コポォ

雪の女王「まずは君達の力量を計りたい。だから今回は遮蔽物を一切造っていない、今後必要ならば追加で設置していこう」スタスタ

キモオタ「力量を計るといっても…いったい何をするのでござるかな?」

雪の女王「難しいことじゃない。君たち二人で私を倒すつもりでかかってくればいいだけだ。どんな手段を使っても構わない」スタスタ

ティンカーベル「魔法具とか妖精の粉とか…なんでも?どうなったら終わりになるの?」

雪の女王「基本的には降参をするか意識を失ったらそこで終了だ。私に遠慮はいらないから全力出来てくれ。…っと、最初はこれくらい距離をとって対峙しようか」スタスタ

ティンカーベル「結構距離とったね…まぁ私はスリングショット使いだから距離はあった方がいいけど!」

キモオタ「ルールは分かりましたぞwwwとはいえ…本当に全力でもいいのでござるか?我輩のおはなしサイリウムの能力は攻撃特化も多いでござるし、女王殿を怪我させてしまう可能性もありますぞ?」

雪の女王「聞いていたとおり、君はキモいが優しい男だな。だが、手の内を晒すのは頂けない。私が全力で来いと言ったんだ、君は自分の持てる力を余すことなく使えばいい」

雪の女王「さぁ…それじゃあ特訓開始だ」スッ

キティンカーベル「ちょっと待って…!自惚れてもないし女王の凄さも分かってるけどさ、でもそれで女王に怪我なんかさせたら…」

雪の女王「私は『開始』だと言ったんだぞ。既に戦闘は始まっている」ヒュッ

ビュッ

キモオタ「ファッ!?…女王殿が一気に距離を詰めてきましたぞ!?」ブヒッ

雪の女王の声「さぁすぐに敵を見据えろ。相手の心配をしているほど、君達に余裕はないはずだぞ?」

435: 2016/06/20(月)00:32:31 ID:bJm
ティンカーベル「うわー!マズいよキモオタ!結構距離あったから安心してたけど、あのスピードだと一瞬で距離詰められちゃう!」

キモオタ「初っ端から距離を詰められるのは避けたいですな…。ここはシンデレラ殿との絆の力で一旦離れて距離を取り直しますぞ!」フリフリフリ

おはなしサイリウム「コード認識完了『シンデレラ』 魔法発現状態へ移行……モード『step』」

キモオタ「ここはガラスの靴の如き瞬足で一気に距離を取るでごz…ぶひぃぃぃっ!」ビターンッ!

ティンカーベル「あっ!キモオタが盛大に転んだ!もう!普段運動しないからこうなるんだよ!」プンスカ

キモオタ「いや、運動不足が原因ではないですぞ!?我輩の靴が…床に縫いつけられてるでござる!」パキパキパキ

ティンカーベル「本当だ!いつの間に…っていうかこんなに距離があるのに!」

雪の女王「状況分析も良いが打開策を生み出せなければ無駄に終わってしまうぞ?」パキパキパキ…スラッ

キモオタ「女王殿が氷の槍を生成しましたぞ…!あんなもので貫かれては一溜まりもありませんぞ!」

ティンカーベル「急いで氷を床ごと壊そう!赤鬼の金棒なら出来るでしょ!?」

キモオタ「しかし、破壊したところで床を移動していてはまた張り付けられてしまうのでは…んっ?これは…」

ティンカーベル「ぶつぶつ言ってないで早くなんとかしよ!じゃなきゃ動けないキモオタとかただの気持ち悪い的だよ!」

キモオタ「ティンカーベル殿!我輩に妖精の粉を!」

ティンカーベル「!? わかった!でも妖精の粉じゃ氷を壊せないよ!?」

ファサー

キモオタ「問題ありませんぞ!凍りつけられていたのは靴の部分のみ!靴を脱げばこの通り脱出可能ですぞぉぉ!」バッ

436: 2016/06/20(月)00:34:02 ID:bJm

雪の女王「危ないところだったなキモオタ。二人が随分と慌てているから私が凍らせているのが靴の部分だけだという事に気がつかないと思ったぞ」フフッ

キモオタ「間一髪でござったけどね、思ったより我輩の脳味噌は冷静だったでござる」フワフワ

ティンカーベル「でもラッキーだったね!女王がうっかりしてて!足ごと凍り付かせてたら完全にアウトだったもんね!」

キモオタ「いや…女王殿がそんなミスをしますかな?これはおそらく敢えて靴だけ凍らせたでござる、我々に対抗手段を残すために」ヒソヒソ

ティンカーベル「そっか、私達の力量を計るって言ってたし…冷静に対処できるかどうか見てたんだね!」ヒソヒソ

キモオタ「恐らく。あのまま氷を壊して逃げても床に面している以上同じ事の繰り返しでござるしな」ヒソヒソ

雪の女王「冷静でいたことは誉めてやろう。だが反撃の好機をお喋りで無為にするのは愚策だな。お前たちが空中に逃げることを私が予測していたとしたらどうする?」パキパキパキ

ティンカーベル「氷柱だ!女王の周りに氷柱!あれこっちに飛ばしてくる奴だよ!どうする!?」

キモオタ「回避か防御…ですぞ!しかし回避するにしてもあれがホーミングしてこないという確証はないでござるし、防御も方法を間違えれば不利に…なんとか戦いの流れを掴まねば…」

雪の女王「考えていても流れなど掴めないぞ?とにかく行動しなければな。さぁ…こっちは射出準備完了したことだし、アドバイスはここまでだ」スッ

ティンカーベル「キモオタ!どうすんの!?もっと高く飛んで届かないとこまで行く!?」

キモオタ「射程距離が分からない以上…ここは防御アンド作戦タイムですぞ!ティンカーベル殿、我輩の側へ!」フリフリフリ

雪の女王「回避は諦めて防御に徹するか?だがこの氷柱は生半可なものではないぞ?」フフッ

ビュビュビュビュッ

437: 2016/06/20(月)00:36:31 ID:bJm
おはなしサイリウム「コード認識完了『ラプンツェル』 魔法発現状態へ移行……モード『tower』」ドォォォォォッ

ガキガキガキィィンッ

雪の女王「【ラプンツェル】の塔か…護るべき者を覆う強固な壁、あの氷柱で打ち破れないところを見るに相当な強度のようだ」スッ

雪の女王「天井…全ての方向の壁どこをとっても隙がない。大方時間稼ぎをして作戦をたてようという算段だろうが…そうはさせない」

雪の女王「塔が一切の攻撃を寄せ付けないのなら…狙うべきは塔の根元、地面を抉ってやればいい」スッ

パキパキパキ…ズゴォッ!!

雪の女王「どの様な強固な建造物も崩れた地面に建ち続けることは出来ない。そして崩れゆく建物周辺で一番危険なのは…その内部だ」

パキパキパキズゴォッ! ゴゴゴゴゴ

雪の女王「塔が崩れるとなれば君達も逃げ出すしかない。そう、私の目の前にな」

ゴゴゴゴゴ ズゥゥゥン

雪の女王(容易く崩せた…?何か策があると考えたが買いかぶりだったか…?あるいは瓦礫に紛れて攻撃するつもりか?)

雪の女王「まぁ良い、まずは私の吹雪で瓦礫を一掃して……」

キモオタ「そおおぉぉい!ティンカーベル殿!今ですぞぉ!塔の崩壊に乗じた奇襲を受けて見ろでござるぅー!」シュッ

ティンカーベル「まっかせてぇぇー!奇襲からのゼロ距離射撃だよぉぉ!!」ピューン

雪の女王「やはり瓦礫の陰からの奇襲か。だがなティンカーベル、近距離から私を撃つというのは良い作戦だが…それをバラしてしまっては意味がない、君の動きを注視すれば容易く避けられるのだから」スッ

ティンカーベル「そうだよね!私のことをしっかり見てればいいと思うよ!」ニヤニヤ

シュッ

雪の女王「マッチ…!あぁやられたな、大声で作戦をバラしていたのは陽動。本命はマッチ売りの魔法具か」フフッ

ティンカーベル「私の動きを注意して見てたんなら絶対にマッチの炎が視界に入るもんね!これで戦いの流れを掴み取るよー!」

438: 2016/06/20(月)00:39:42 ID:bJm
キモオタ「ティンカーベル殿!グッジョブですぞwwwここまでは作戦通り、ブラフに煽りに嘘八百!それが我々のバトルスタイルですぞ!女王殿!」

ティンカーベル「きっとこの幻見たら女王は降参するよ!とんでもない地獄絵図だからね!」フンスッ

雪の女王「戦いの最中に勝利を確信する輩というのはほとんどの場合敗北するものだぞ?まぁ、良い…君私が見る幻覚は一体何なんだろうな、少々楽しみだ」クスクス

キモオタ「ドゥフフwwwこれは以前の戦いの場で失策だったものの再利用でござるが…今回はうまくいくでござろうなwww」コポォ

ワラワラワラワラワラワラ

キモオタ2「そうですなwww我々の渾身の策を受けてみよですぞwww」コポォ

キモオタ39「しかしこの人数www幻覚見せるってレベルじゃねぇぞwww」コポォ

キモオタ273「いやいやwww我輩はオタクじゃありませんぞwwwただのアニメファンでしてwww」

キモオタ485「貴様は~wwwだから2ちゃんねるでwwwバカにされるというのだwww」ドゥフコポォ

キモオタ873「ぐえぇぇwww悪霊退散www悪霊退散www」シュシュッ

コポォコポォドゥフドゥフ

雪の女王「キモオタ、ティンカーベル…これは何事だ?」

ティンカーベル「戦闘で適わないなら精神攻撃!マッチ売りちゃんのマッチのおかげで今ここは考え得る限り最悪な空間と化したんだからね!」フンスッ

キモオタ本体「ドゥフフwwwこれぞ雪の女王殿を打ち破る必殺の策略!約千人の我輩が溢れかえるキモい空間に耐えられますかなwww」コポォ

分身キモオタ(およそ1000人)「ちょwww自分でキモイとかwwwクッソワロタwww」ドゥフコポォ

439: 2016/06/20(月)00:41:16 ID:bJm
キモオタ本体「分身して攪乱というのは以前、対悟空殿戦でグレーテル殿が使った策略でござるwww幻覚といえど圧倒的な数の暴力は精神に圧迫感を与えると同時に本体がどれだか分からないという一度で二度おいしい策略www」

キモオタ本体「惜しくもグレーテル殿の時は相手の悟空殿がリアルな分身を出せてしまったため無効化されてしまいましたがな…しかし女王殿に分身能力はないですぞ!これでかつる!しかも失策の再利用でエコロジーwww」

キモオタ本体「一人でさえキモい我輩が千人居るとなればキモさは千倍!密集することでおよそ三千倍のキモさ!このえげつない精神攻撃に耐えられますかな!?…ところでティンカーベル殿はどうしてだまっているのですかな?www」

ティンカーベル「ごめん…思ったより気持ち悪くて吐きそう」ウゥー

キモオタ本体「なん…ですと…!まさか味方のティンカーベル殿に被害が及ぶとは大誤算ですぞ!し、しかしこの様子ならば雪の女王殿も相当な精神ダメージを受けているはず…!」チラッ

雪の女王「……」ビュンッビュオンビュオン

キモオタ46「ぶひいぃぃっ!」ボウンッ
キモオタ673「ちょwww美女の足蹴で消えるとかwww」ボウンッ
キモオタ912「むしろご褒美(キリッ」ボウンッ

キモオタ本体「ぶひいぃぃっ!無言で分身を殴るアンド蹴るしてらっしゃる!」

雪の女王「確かにキモいが幻覚ならこうすれば消滅すると相場が決まっている、千人は面倒だがな」ドゴッ

キモオタ本体「や、やめるですぞぉ!これ結構精神にクルものありますぞぉぉ!」

440: 2016/06/20(月)00:43:14 ID:bJm
雪の女王「ほぅ…ならばこういうのはどうだ?」ドゴォ

キモオタ235「ちょぶっwww顔面は無いですぞwww」ボウンッ

キモオタ本体「あああっ!我輩(分身)の顔面がさらに見るに耐えない姿にぃ!」

雪の女王「しかし一体ずつ消すのも面倒だな。凍りつけ、見るに耐えない分身共」フッ

パキパキパキパキパキィ

キモオタ本体「ぶひぃっ!?床の上に立っていた分身が動きを止められましたぞ!?ま、まさか女王殿…!」

女王殿「幻覚とはいえ醜い姿に生まれ無念だろう、最期くらいは美しく砕け散るが良い」ビュオッ パリーン

キモオタ本体「ぬああぁ!凍った我輩(分身)が砕けていくでござるぅー!」

雪の女王「……」ドゴォ パリーン ドゴォ パリーン

キモオタ本体「こ、股間とか顔面を重点的に蹴るのは止めてあげてほしいでござるぅ!」ウワアアア

ティンカーベル「うげー…げほげほっ」ゲロー

雪の女王「まったく…後先考えないからこうなるんだ、自分達が出した幻覚でダメージを受けるとは情けない、もう続行は不可能だな」フゥ

雪の女王「キモオタ、ティンカーベル。十五分休憩だ、その間に精神を落ち着けて…時間が来たら二戦目だ。次はしっかりとな」

キモオタ「うぅ…分かりましたぞ…」

ティンカーベル「わかった…それより冷たいお水ください…」

・・・

441: 2016/06/20(月)00:45:11 ID:bJm
その夜
雪の女王の宮殿 客間

ティンカーベル「……あー、氏んじゃうと思った、女王スパルタすぎるよぉ」パサッ

キモオタ「ティンカーベル殿が速攻でベッドに墜落とは珍しいですな…そして我輩もダメでござるー」ドサァ

ティンカーベル「今日は疲れた…心身ともにね…」

キモオタ「食事もまだだというのにもう眠りたい勢いですなぁ…」

ティンカーベル「お腹すんごく空いてるのに食べる気にならない…」

キモオタ「ガッツリ泳いだり全力で走りまくったりすると逆に食べられなくなったりするらしいですぞ…まぁどうでもいい情報ですな」

ティンカーベル「みんなも頑張ってるんだし、もっとキリッとしなきゃなんだろうけどとにかく疲れた…」

キモオタ「赤ずきん殿赤鬼殿は別のおとぎ話へ、桃太郎殿も新たな地で修行、ヘンゼル殿ドロシー殿は裸王殿のとこ、ラプンツェル殿はシェヘラザード殿の所…おそらくそれぞれ頑張ってるのでござろう、我々だけ弱音を吐くわけにもいきますまい」

ティンカーベル「まぁね…それに大変だっただけあっていろいろ分かったこともあるし、女王との戦いも最期の方ではうまい具合に連携取れたと思うよ私達」

キモオタ「それでも一度も女王殿を倒せず降参もさせられずでしたがな…」

ティンカーベル「まぁそれは…うん、勝つことが目的じゃないからね。あした頑張ろ、うん、明日また頑張ろう」

キモオタ「そうですな…食事をいただいて早めに休むとするでござる。こんな情けない姿を女王殿に見せるわけにもいきませんからな、切り替えていかねばwww」

・・・

442: 2016/06/20(月)00:49:12 ID:bJm
同じ頃
アラビアンナイトの世界 王宮

ラプンツェル「ねーねー、シェヘラザード!お願いだってば~!私も皆みたいにしゅぎょーがしたいんだよぉー!」

シェヘラザード「ダメです。ラプンツェルさんは勉学の為にこの場に居るのでしょう?戦いを教えるために招いたのではありません」

ラプンツェル「そんな事言わないでさー、今日だって一日中大変なお勉強頑張ったんだからご褒美として!ねっ?」

シェヘラザード「だからダメです。数字の勉強や物理の勉強だってあなたに必要なものですよ。あなたの髪の毛は自在に操れますがあくまでそれはあなたの意志で動く、あなた自身が賢くなれば今よりも効率的に髪の毛を操れるのですよ。だから…」

ラプンツェル「えーっ!?絶対に実戦っぽくしたほうがいいってば!こう、悪いとーぞくとかをぐるぐるっと一網打尽にするとか!」ワクワク

シェヘラザード「絶対にダメです、私はあなたのお母様と約束しているのです。危険な目に遭わせない、無茶をさせないと、ですからあなたは三日間勉強付けです」

ラプンツェル「えーっ!?実戦の方がいい!体動かしてる方が楽しいもん!だから実戦実戦!とーぞくとか退治しーたーいー!」ジタバタ

シェヘラザード「駄々っ子ですかあなたは…何をしてもダメです。賢くなれば効率的な支援や援護を見極められます、あなたの特性はサポートで真価を発揮すると私は考えてます。戦陣切って戦うのはもっと適した方に…」

ラプンツェル「やだー!私もたたかいたいんだよ!仲間外れっぽいじゃんー!」

シェヘラザード「そんな事はありません。ですから明日も私と勉強です」

ラプンツェル「ぐぬぬ…シェヘラザードの馬鹿!けちんぼ!」

シェヘラザード「また子供のように…でも好きに言いなさい、私はそんな挑発には乗りません」

ラプンツェル「シェヘラザードのいじっぱり!おたんこなす!」

シェヘラザード「はいはい、そうですね。明日も早いのですから今日はもう休んd」

ラプンツェル「シェヘラザードのちび!ぺたんこおっOい!」

シェヘラザード「……ラプンツェルさん、こっちに来てください」

ラプンツェル「あっ、やっとお願い聞いてくれる気になった!?えへへっ、やったぁー…痛いっ!」ベチッ

シェヘラザード「他人の外見を蔑むなど最も卑劣な好意ですよ。明日、同じ時間から勉強の続きですからね」フイッ

ラプンツェル「むーっ…シェヘラザードのわからずや!もー私勝手にするからいいもんっ!」プンプン

443: 2016/06/20(月)00:52:50 ID:bJm
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます

読んでくれてる人本当にありがとう!遅い時間なのにつきあってくれて感謝

外見的特徴を蔑むのは卑劣な好意!口にしてはいけません!byシェヘラザード

次回、ラプンツェルのやらかしタイム?
お楽しみに!

465: 2016/06/27(月)00:31:07 ID:fWS
翌朝…キモオタ達の作戦決行まであと2日
アラビアンナイトの世界 王宮 

給仕「失礼いたします。国王様、食後のお茶はいかがなさいますか?」スッ

国王「貰おう。今日は特に濃いめの茶を頼む、眠気が覚めるようなものをな」

給仕「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」ペコリ スタスタ

国王「さて、茶を済ませたら大臣と会談の打ち合わせだ。数年ぶりに設けられた隣国の王との会談…私自身の行動が招いた結果とはいえ、ほぼ断絶状態にある国交を回復させるまたとない好機だ」

国王「隣国との関係を以前のように良好なものにできれば物資の流通も人の行き来も盛んになる、そうすれば市場は賑わい景気向上に繋がる。経済が活性化すれば国民の生活も潤うだろう」

シェヘラザード「……」カチャカチャ

国王「疲弊したこの国を蘇らせるにはまずそこからだ。他国からの信用は地に落ち、国に若い女は一人としていない、高齢化と労働力の偏り、我が国が…私が抱える問題はあまりに多い」

シェヘラザード「……」カチャカチャ

国王「だが余所へ行くこともなくこの地に残った国民や、会談に応じた隣国の王、そしてお前のようにこの国がかつての輝きを取り戻せると信じて居るものも居る」

国王「疲弊したこの国を立て直したいと言ったお前をあの日の私は夢物語だと一蹴したが…威厳も尊厳も地に落ちた私をそれでも王と認める者が居るのならば、私はその夢物語を現実にせねばなるまい。近頃、そう思えるようになったのだ」

シェヘラザード「……」カチャカチャ

国王「それにこの国が滅びてしまえば、お前の話す愉快で心躍る物語の数々を聞くことも出来なくなる。それは非常に……」

シェヘラザード「……」カチャカチャ

国王「…シェヘラザード、お前は魚を刻んでいるのか朝食を摂っているのか、どちらだ?皿の上が悲惨な事になっているが」

シェヘラザード「あっ…申し訳ありません。悩みごとと言いますか、少し考え事をしていましたので…とはいえ食物を粗末にするような無作法な真似、王妃としてあるまじき行い。どのような処罰でも受け入れる覚悟はできております」

国王「いや、構わん。その様子では私の話も聞いていなかったのではないか?」

シェヘラザード「……恥ずかしながら。陛下のお言葉を聞き漏らすなど妻としてあってはならぬこと、どのような処罰でもなさってください」

国王「もう良い、大したことは語っていない。忘れろ」

国王「だが普段はしっかりしているお前がこんな醜態を晒すなど余程の事だ。話してみろ、お前は何をそんなに悩んでいるのだ?」

466: 2016/06/27(月)00:33:48 ID:fWS
シェヘラザード「いえ、陛下にお聞かせするような事ではございません。ごく個人的な他愛もないことですので」

国王「私にはそうは見えぬが?思えば昨夜も少々様子がおかしかったように思える」

シェヘラザード「いえ…私は平気です。それに本日は大切な会談の日、このようなことで陛下のお時間を浪費するわけにはいきません」

国王「問題ない。王妃とはいえお前はまだまだ小娘だ、悩み事などたかが知れている。それとも何か?この私に小娘の悩みを聞いてやるだけの余裕すら無いとでも思っているのか?」

シェヘラザード「いえ…滅相もありません。陛下がそう仰るのでしたら、少しだけ…聞いていただいてもよろしいですか?」

国王「構わん。私は夫婦の間に隠し事をするなど許さん、お前が悩んでいることは全て打ち明けよ」

シェヘラザード「でしたら…。実は昨日…その、ラプンツェルさんと口論になりまして…。いえ、口論というほど激しいものでは無いのかもしれませんが…」

国王「普段、お前はあの娘と随分と親しくしているではないか。何かお互いの主張が食い違うことでもあったのか?」

シェヘラザード「お察しの通りです…。どこから話したものか…以前陛下もお会いした事があるキモオタさん、覚えておられますか?」

国王「覚えている。あの強烈な容姿と言動…そうそう忘れられるものではない。妖精と旅をしている男だろう?あのどこか気持ちの悪い…」

シェヘラザード「えぇ、そうです。そのキモオタさんは旅をしながら様々な方を助けていて…近々、様々な場所で悪さをしている者との決戦を迎えているのです」

国王「ほう…あの男の旅先での話は実に興味深いものだったが、物見遊山の旅という訳ではないのだな。それで、それがお前とラプンツェルにどう関わってくる?」

467: 2016/06/27(月)00:37:13 ID:fWS
シェヘラザード「ラプンツェルさんも私もキモオタさんの事情は知っていましたから、決戦が迫っていると聞いて私達も協力する事に決めたのです」

国王「…話の腰を折るぞ。あの娘はともかく、お前は王妃だ。協力するなとは言わないが、その内容によっては私はそれを止めさせねばならないぞ」

シェヘラザード「ご安心を。私はこの世界から…いえこの国から出て行くことはできません。ですから戦いの場に赴くような事はありません、今までと同じように私は陛下のお側にいます」

シェヘラザード(この世界【アラビアンナイト】はまだ結末を迎えていない。私は物語の筋書き上、毎夜毎夜、陛下にお話を聞かせるという役目がある…それを放棄すればこの世界は消えてしまう)

シェヘラザード(私は皆さんのように、直接キモオタさんの協力をすることが出来ない…残念ですが、この世界が消えてしまえば元も子もありません)

シェヘラザード「しかしラプンツェルさんは違います。彼女はもう居ても立っても居られないようで…キモオタさん達とともに戦い、力になりたいんだと強く思っていました」

国王「あの娘はそうだろうな。良くも悪くもじっとして居なさそうだ」

シェヘラザード「そうなんです…それが今回言い争いになった原因といいますか…。私はラプンツェルさんにはもっと学問に力を入れて欲しいのです、友のために戦うという意志は立派だと思いますが彼女はその…なんと言いますか…」

国王「知恵が足らないようだからな、あの娘は。それを懸念しているのだろう?」

シェヘラザード「…端的に言えばそうです。十年以上世間から隔絶されていたラプンツェルさんは最低限の知識しか身に付けていません。それに精神面が幼すぎます、思慮浅い部分も目立ちます」

シェヘラザード「あの長い髪の毛を操る魔法…体術を駆使すれば強敵を相手取る事もきっと出来ます。ですがラプンツェルさんの場合、精神や思考がその力に対して不足しています」

シェヘラザード「あの長い髪の毛…投げ縄や鎖のような武器は使い手の思考に左右されます。強力な力はうまく使えば敵を苦しめますが判断を誤れば見方を窮地に追い込むことにも…」

シェヘラザード「だから私はラプンツェルさんにもっと知識を与えなければならないんです。彼女のお母様であるゴーテルさんと約束しましたから」

シェヘラザード「そしてそれは戦う力を持たない私が唯一出来る協力なのです」

468: 2016/06/27(月)00:40:37 ID:fWS
シェヘラザード「ですから私は実戦よりも知識面の強化を優先しました。ですがラプンツェルさんはもっと実戦的な訓練がしたいと考えていたのです」

国王「成る程な。そこで意見が分かれてしまったのか」

シェヘラザード「私はゴーテルさんから彼女をお預かりしている身。危険な目に遭わせるわけにはいきません。それなのに彼女は実戦的な訓練がしたいしたいと意見を曲げなくて…」

シェヘラザード「私は自分の考えに自信がありました、知識を固めることこそ必要であると。ですから聞く耳持たないつもりだったのですが…その、少し私の劣等感を刺激する悪口を言われたもので…手をあげてしまいました」

国王「お前が手をあげるとは…どのような言葉がお前の尊厳を傷付けたのかは知らないが、余程の暴言だったのだろうな」

シェヘラザード「おでこを叩いた程度ではあったのですが…暴力は暴力。意見が食い違い、少し悪口を言われたからと友人に暴力を振るうなど…王妃以前に人間として恥ずべき行い」

シェヘラザード「酷く後悔しました。この事はラプンツェルさんに謝るつもりです、ですが…彼女に会えばまた言い合いになる可能性もあります」

国王「ラプンツェルは考えを曲げない、お前も同様。ならば何度意見を交わそうとも平行線だな」

シェヘラザード「…陛下、私の考えは間違っているのでしょうか?ラプンツェルさんの言うように実戦的な特訓をするのが彼女のためなんでしょうか?」

国王「シェヘラザード、お前はどう思っているのだ?」

シェヘラザード「正直な気持ちを言うのなら、わからないというのが本音です。昨日までは自信を持っていた考えも、今は揺らいでしまっているのです…知識だ学問だと言っておきながら私がとった行動は異なる意見に対する暴力でしたから」

シェヘラザード「そして考えれば考えるほど、自分の意見を押し通して友人を失うのも、彼女の意見に合わせて友人が傷つくのも…今の私は両方共恐ろしいのです」

469: 2016/06/27(月)00:44:55 ID:fWS
国王「事情はだいたい理解した。そう難しい問題ではないだろう」

シェヘラザード「私にはそうは思えません…。よろしければ陛下のお考えをお聞かせください」

国王「私ならばラプンツェルに実戦的な特訓をさせる。それを中心としつつ知識を得る時間も必ず取らせる」

シェヘラザード「両方する、ということですよね…でもそれではどちらも中途半端な仕上がりになってしまうと思うのですが…」

国王「悪く言えばそうだな。だが完璧を求める必要があるのか?ラプンツェルは戦士ではない、両方ともそこそこ出来ると考えれば寧ろ上々だと思わないか?」

シェヘラザード「それも一理あると言えばそうですが…」

国王「お前は完璧主義すぎる、高水準を求めすぎだ。ラプンツェルが身につけなければいけないのは効率的な戦い方でも無ければ強敵を倒す力でもない」

国王「氏なないことだ、それは座学では実感しにくい。あの娘が戦うことは氏と隣り合わせだと理解するには戦うしかない、しかし決氏の覚悟で戦えとはいわない。適度に戦いの役に立てばそれでいい、先ほども言ったがラプンツェルは戦士ではない、多くを求める必要などない」

国王「知略を百、戦術はゼロ。知略をゼロ、戦術を百にするより知略五十、戦術五十にしたほうが臨機応変な立ち回りが出来るだろう、と私は考える。それに……」

シェヘラザード「…?」

国王「ラプンツェルにやりたくもない学問をじっとして受けられると思うか?あの破天荒で我が道を行くワガママ娘が、だ」

シェヘラザード「ふふっ……いえ、恐らく途中で投げ出してしまうと思います」

470: 2016/06/27(月)00:48:25 ID:fWS
国王「なんだかんだ言ったところで全てはラプンツェル次第。頭を押さえつけて無理に勉強をさせても続かん。それなら『おまえの意見を飲んでやるから勉強もしろ』と諭す方がずっと懸命だ」

シェヘラザード「確かにそうですね…その方向に方針を変えてみます」

国王「あくまで私の考えだ、もっと良いやり方はあるかもしれないが…結局の所、この手の問題に正解など存在しない。あとはよく本人と話して決めるんだな」

シェヘラザード「わかりました。ありがとうございます、私一人では答えが出せずにいたので助かりました」

国王「小娘の悩み相談に乗る位は悪逆非道な国王と評判の私にでも容易いわ」

シェヘラザード「ふふっ、またその様なことを。近頃、国王様は変わったと皆さん口を揃えておっしゃっていますよ?」

国王「だとしたらそれはお前のおかげだ。お前という伴侶がいるから私は変わりつつあるのだろう。だから、あれだ…遠慮する必要は無いから悩みも思っていることも全て私に打ち明けよ、決して隠し事をしてくれるな」

国王「私はもう妻を疑いたくはない。妻を…お前を信じ続けていたいのだ」

シェヘラザード「ご安心ください。私は陛下を裏切るようなことは決していたしません、それだけは世界が滅ぼうと…有り得ないことです」

国王「…女の言うことは信じないと心に決めていた。だがお前の言葉は信じさせてもらうぞ」

シェヘラザード「はい、私も陛下がこの国を蘇らせることが出来ると信じております」

国王「うむ、任せよ。私が招いた事だ、始末は必ず付ける。だが今は…シェヘラザードよ、もう少し近くへ寄ってはくれぬか?」

シェヘラザード「はい、仰せのままに」スッ

・・・

給仕(やべぇ、お茶持ってきたけどめっちゃ入りづらい…)

471: 2016/06/27(月)00:50:43 ID:fWS
給仕「どーしよコレ…。国王様が過去のトラウマを乗り越えられるなら俺自身も嬉しいんだけど、お茶持って行かなかったらそれはそれで怒られそうだし…」

給仕「この雰囲気の中突入できる奴なんていないだろ。いたとしたらなんかこう…空気読めない感じの、脳味噌はいってない感じの奴だろ…」

スタスタスタ

かかし「すまン、ちょっと聞きたいんだガ…国王とシェヘラザードが朝飯食べてる部屋ってここカ?」

給仕「あ、あぁそうだけど…。今ちょっといい雰囲気だから入るの止めといた方g」

かかし「そうカ!この部屋であってたカ!国王ー!シェヘラザードー!帰ってきたから挨拶しに来たゾ!」ズカズカ

シェヘラザード「か、かかしさん!?戻ってたんですねっ、お疲れさまでした」アワアワ

かかし「いや別に疲れてねぇけド…何を慌ててるんダ?」

国王「かかし。確かに私はお前に城の出入りを許可したが…部屋に入る前の声かけくらい常識だ。お前に脳がないのは知っているがその辺りは配慮しろ」

かかし「あー…なるほド、そりゃあすまんナ。そうだよナ、二人は夫婦なんだからいろいろあるよナ!俺の配慮が足らなかっタ!俺は出て行くから続きをやってくレ」

シェヘラザード「無茶言わないでください!もう気にしなくて良いですから。むしろ今出て行かないでください、気まずいですから」

国王「お前は動揺しすぎだ。まぁ良い、久々に友と会ってきたのだろう?土産話を聞かせてもらおうか」

かかし「フーム?まぁそう言うならそうするがヨ。人間の大人の心理はいまいちわからねぇナ…」



給仕「あいつのメンタルすげぇ…」

472: 2016/06/27(月)00:53:35 ID:fWS
・・・

かかし「……っつーわけでナ、ドロシーとライオンの奴はキモオタ達と一緒に戦う事になっタ。俺とブリキはそれぞれ大人しくお留守番だナ!」

国王「成る程な。お前の共の話は以前聞いた。魔法の靴を履いた少女と臆病なライオン、ブリキの身体を持ったきこり…そしてかかしでありながら命が宿ったかかし…」

国王「お前達が出会って悪しき魔女を頃した話は実に心が躍った。そして今回、離れ離れになった仲間との奇跡の再会…そして少女ドロシーの決意!いやはや、やはり旅というものに憧れるな、私は」

かかし「国王はかわってるよナ、なんつーか冒険や旅の話好きすぎるっていうかヨ。俺みたいなかかしもすぐに受け入れてくれたしナ」

国王「私は昔から書物を読みや物語を聞くのが好きでな。シェヘラザードが話すおとぎ話も好きだがお前達のような旅人の実体験はそれとは違う心の高鳴りを感じるのだ」

シェヘラザード「陛下、どんなに疲れていても私のおとぎ話は必ず聞いてからお休みになられますものね」ウフフ

国王「お前の話は多忙な毎日を過ごす中で唯一の楽しみだ。しかし今回かかしは、以前キモオタの話にも出てきたあの半裸の国王の国に行ったと言うではないか!しかも以前聞いた話よりも国が栄えているように感じる」

国王「どういうことだ…国作りにはマニュアルも定石も存在しない、何が国家繁栄に繋がるかなど誰にも分からない。とはいえ半裸でありながら国をそこまで栄えさせるとは…」

かかし「興味あるなら裸王の国のこともっと話してやろうカ?後学のために色々と聞いてきたからナ、土産に貰った裸王マカロンもあるゾ」

国王「興味深い。興味深いが…もうあまり時間がない。だが続きが気になってしまうのは避けたい、また時間があるときに頼む」

かかし「そーかそーカ、じゃあまただナ。でもどうすっかナー、今日はシェヘラザードの勉強会無いんだロ?勉強会あるんだったらそっち行くけどナ、ちょっと街にでも行くカー」

シェヘラザード「大丈夫ですよかかしさん、今日もいつも通りの時間に勉強会やりますから。ラプンツェルさんにもお話ししてありますしね」

かかし「ン?どーゆうことダ?勉強会、今日はやらないってラプンツェルから聞いたゾ?」

473: 2016/06/27(月)00:56:28 ID:fWS
シェヘラザード「どういうことですか?私は確かに昨日ラプンツェルさんに…。まさか私が話を聞いてあげなかったから拗ねてしまったとか…」

かかし「なんかあったのカ?確かにちょっといつもと違う感じではあったがナー」

シェヘラザード「実はかくかくしかじかで…。いつもと違うとは、どの辺りがでしょうか?」

かかし「いやナ、実は俺早朝にはもうこの世界に帰ってきてたんダ。でもあんまり早くに城に行っても悪いなってなってサ、仕方ないからその辺の鳥と話でもしようとシェヘラザードの実家の辺り通ったんだガ」

かかし「なんかラプンツェルがコソコソ抜け出しててたんだヨ。あのねぼすけが早朝にだゾ?」

シェヘラザード「確かにそれはおかしいですね。それで、どうしたんです?」

かかし「どーしたんだこんな朝早くにーってこえかけたんダ。したらこう言ってたぞ『今日はお勉強会ないから!だからお城に行かなくても良いしシェヘラザードに会わなくても大丈夫だよ!私のことも言わなくてもいいからね!』ってナ」

シェヘラザード「……わかりやすすぎますね」

国王「詰めが甘い娘だな。どこに出かけたか知らないが目的はハッキリしているな」

シェヘラザード「昨日私が反対したからもう勝手に自分で特訓することにしたんですね…すぐに追いかけて話をしないと…」

シェヘラザード「しかしラプンツェルさんは世界移動の手段も持っていませんし…遠くに行っているとは思えませんが…一体どこへ…」

かかし「この辺りにそんな事できる場所ないだろウ?」

チカチカッ

国王「シェヘラザード、今お前の指輪が光ったように見えたが?」

シェヘラザード(別のおとぎ話との通信用の指輪が…。ラプンツェルさんが居なくなったこのタイミングで連絡、嫌な予感しかしませんね…)

シェヘラザード「私は少し席を外します、かかしさん、申し訳ありませんがやはり今日は勉強会は中止させてください。陛下は会談の方、そろそろお急ぎくださいね。成功を祈っております」ペコリ

タッタッタッタッ

474: 2016/06/27(月)00:58:48 ID:fWS
王宮 シェヘラザードの自室

チカチカッ

シェヘラザード「お待たせしてすいません、シェヘラザードです」スッ

???「ようやく通じたな。シェヘラザード!どうなっているんだこの状況は!」

シェヘラザード「まずは落ち着いてください。その声は【アリババと40人の盗賊】の世界のモルジアナですね?」

モルジアナ「あぁ、そうだよ!でもね、こっちは世界が消えちまうかもしれないってんだよ!落ち着いてなんか居られるかい!?」

シェヘラザード「世界が!?まさかアリスがそちらの世界へ…!」

モルジアナ「それならもっとわかりやすかったんだけどね。実はねこっちの世界で悪さをしている盗賊が何者かに退治されたんだよ」

シェヘラザード「あなたが退治するはずのあの盗賊団をですか!?だとしたらもう既に…!」

モルジアナ「あぁ、いや…あいつらとは別の盗賊団だ。こっちにはいくつもの盗賊団がしのぎを削ってるからな。今んとこ例の盗賊団は無事だ」

シェヘラザード「そうですか、それは一安心ですね…」

モルジアナ「だがな、そいつが例の盗賊団まで退治しちまったらアタシの出番が無くなっちまう!そうすりゃあ筋書きが変わってアタシもアリババもこの世界ごと消えちまうだろうが!」

シェヘラザード「それは避けねばなりません。何か手がかりはないのですか?盗賊団を捕まえたものがどこの誰で、どういった目的なのか」

モルジアナ「実はな、目星がついてるからお前に連絡したんだ。アタシの奴隷仲間がな、見たって言うんだよ。元々この世界には存在しない怪鳥をな」

モルジアナ「…それってよぉ、どうかんがえてもロック鳥だろ!あの軽率なクソゴミナンパ野郎が乗り回してる怪鳥のよぉ!」

475: 2016/06/27(月)01:06:39 ID:fWS
シェヘラザード「……」

モルジアナ「おい、聞いてんのか!?もしあのクソ野郎がアタシの世界を荒らしてるってなら許せねぇんだよ。おい、だから聞いてんのかシェヘラザード!」

シェヘラザード「……えぇ、聞いてますよ」ゴゴゴゴゴ

モルジアナ「お、おう。ならいいんだ、すまねぇ…(な、なんだこの指輪越しに伝わってくる気は…思わず謝っちまったじゃねぇか)」

シェヘラザード「……それで、ほかには?」

モルジアナ「お、おう。退治された盗賊団が妙なもんで縛られててよ…どうやら魔力が宿ってるみてぇなんだよ。ロープでも鎖でもなくてな。そいつはまるで…」

シェヘラザード「長い長い髪の毛…では?」

モルジアナ「そうなんだよ、よく分かったな。なにか心当たりでもあんのかい?あのクソゴミ以外でアタシの世界に進入してる奴にさ」

シェヘラザード「えぇ。私の友人です。そして彼女をそそのかしてそちらの世界へ行ったのはシンドバッドだという確信も持てました」

モルジアナ「そうかい、だったらなんとかしてくんねぇか?王子のアリなら空飛ぶ絨毯ですぐにこれるだろ?あいつが忙しいならイフリートでもいい、頼んでくれねぇか?」

シェヘラザード「いえ、その必要はありません。私が直接向かいます」

モルジアナ「いや待てよ!お前が軽々しく動いちゃなんねぇよ、【アラビアンナイト】が消えちまったらお前…アタシにゃ責任とれねぇしさ。あんたは母親みてぇなもんだからそうなっちまうのは嫌なんだ」

シェヘラザード「ご心配なく。これは私が直接動いた方が話が早いです、彼にそそのかされたであろうラプンツェルさんのことも気になりますし。どちらにしろ時間をかけるつもりはありません」

シェヘラザード「聞き分けのない息子を懲らしめるくらい、あっという間ですから」ゴゴゴゴゴ

490: 2016/07/04(月)00:19:07 ID:D89
アリババと40人の盗賊の世界 とある弱小盗賊団のアジト

ギャーギャー ワーワー

雑魚盗賊A「クソ!何が起こってるんだ!?別の盗賊団の奇襲か!?突然茂みからロープが伸びてきたと思ったら仲間が何人か捕らえられちまった!」

雑魚盗賊B「お前よく見ろ!ロープじゃあねぇよありゃ髪の毛だ!…えっ、髪の毛!?人間を縛れるほど長い髪の毛とかあんの!?なぁ、どうなの!?なぁおいいぃ!」

雑魚盗賊C「混乱するんじゃねぇ!少なくともあの女は長い髪の毛を自在に操る魔術だか妖術だかの使い手だ!気ぃ抜いたらもってかれるぞ!?」

盗賊頭領「一カ所に留まるのは危険だ!お前ら散れっ散れーっ!女の方だけじゃなくチャラチャラした男の方にも気を配れ!こいつらただ者じゃあねぇぞ!」

ワーワー

シンドバッド「よーし、奇襲が成功したな!こんな具合でうまーく不意を突いてやると相手はただ混乱するしかできねぇんだ、そうすりゃもうこっちのもんだぜ。じゃあ問題だ、ラプンツェル。ここでお前はどう動くべきか解るか?」

ラプンツェル「えーっとね、とーぞくが混乱してる間に攻撃する!」ドヤァ

シンドバッド「よし、正解だ!だが相手はお前の髪の毛を警戒してるからな、それに剣を抜いてっから正面から捕らえようとても髪を切られちまうぜ?さぁ、どーしたもんかねぇ?」

ラプンツェル「うーんとね、それじゃあこーするっ!」シュッ

シュルシュルシュルッ ガシッ

雑魚盗賊A「うおっ!?お、俺の足にあの女の髪の毛が絡みついて…ぬわーっ!?」ビターン

盗賊頭領「おい!大丈夫か!?あの女…足を引っ張ってこかせてくるぞ!お前ら気を付け…ぬおぉぉっ!」ビターン

雑魚盗賊B「へへっ、大丈夫ですぜ頭領!足を狙ってきてるってぇならこういう具合に飛び跳ねて避けりゃあ…!えっ、なんで避けたのに追いかけてきtぐわーっ!」ビターン

雑魚盗賊C「あの髪の毛、飛ばすだけじゃなく軌道さえも自在なのかよ!?この混乱の中であんなもん避けられるわけ…ぎゃーっ!」ビターン

ラプンツェル「ふふんっ!みんなを困らせる悪いとーぞくはこのラプンツェルがみーんな捕まえちゃうからね!ろーやの中で反省してるといいよっ!」フンス

491: 2016/07/04(月)00:21:32 ID:D89
シンドバッド「ひゅーっ、やるじゃねぇか!だがここで油断しちゃダメだぜ、転かしたら動けないうちに縛っちまえ!…っと、相手を縛るときに注意することはなんだ?さっき別の盗賊捕まえたときに教えた事、覚えてるよな?」

ラプンツェル「えっとね、刃物を持っていないか確認する!それか持ってても取り出せないように両手もぐるぐるに縛っちゃう!」

シンドバッド「よーし、その通りだ!こいつらが体勢立て直す前にとっとと縛っちまえ!」

ラプンツェル「わかった!みんなまとめて縛っちゃえーっ!」シュッ

シュルシュルシュルッ グルグルグルッ

「クソ、俺達盗賊がカタギの小娘に出し抜かれるなど…認めんぞぉ!」ジタバタ
「こんなむちゃくちゃに縛られてたんじゃナイフも取り出せねぇ…」ジタバタ
「追尾してくるとかズルいだろ!あんなもん初見で対処出来ねぇよ!」ジタバタ

シンドバッド「よし、一丁上がりだな!もうこいつらは動けねぇ、街に戻って番兵にでも伝えりゃあとは投獄なり処罰なりしてくれるだろうよ」

シンドバッド「しかしすげぇな!今回はほとんどお前一人で捕まえちまったぞ!俺はちょいと助言しただけだ、お前案外戦闘のセンスあるんじゃねぇか?」ハハハ

ラプンツェル「そうだよね!私センスあるよね!私もそう思う!だってすんごく余裕だったしね!あさごはんまえ!」フンス

シンドバッド「おいおい、誉めはしたがあんま調子に乗るんじゃねぇぞ?今回はうまいこといったけど毎回思い通りになるとは限らないんだぞ、確実に相手を無力化するまでは油断しちゃいけねぇ。じゃねぇと痛い目見るぜ?」

ラプンツェル「えへへっ、大丈夫!私の髪の毛は特別だからね!私が思った通りに動いてくれるし普通じゃ持てない物でも髪の毛使えばラクラクだもんっ!余裕だよよゆー!」ドヤァ

シンドバッド「いや、だからお前そういう慢心が真剣勝負の中じゃ命取りに…まぁいいか、確かにお前の髪の毛はすげぇしな!十分戦力として数えられると思うぜ!」ハハハ

492: 2016/07/04(月)00:23:53 ID:D89

ラプンツェル「私、シンドバッドに戦いのやり方教えてってお願いして良かったよ!こーして特訓できる場所にも連れてきてくれたし!ありがとね!」ニコニコ

シンドバッド「おう!まぁ、数え切れない程の冒険を繰り広げた俺に相談したってのは良い判断だったな!でもシェヘラザードにバレたらかなりヤベェからこの事は内緒な?」

ラプンツェル「わかった!私、絶対に言わないよー!」フンス

シンドバッド「それにしても嬉しいねぇ、お前には他に頼れそうな奴が大勢いるってのにその中で敢えて俺を選んでくれたんだからな。ラプンツェル、そんなに俺が好きなら俺の女になっちまうか?」ニッ

ラプンツェル「えへへ~、王子のほうがずっとカッコいいからやめとく!それにシンドバッドに相談したのもたまたまお城で会ったから話しただけなんだー」ニコニコ

シンドバッド「なんだよ…まっ、そーだよな。だが引き受けたからには手は抜かねぇぜ、バッチリ特訓してやるからよ!その代わり、約束した例のアレ…頼むぜ?」ヒソヒソ

ラプンツェル「うん!シンドバッドはすんごく頼りになってとっても強くてものすごくカッコいいって事を私の友達に伝えたらいいんだよね!」ニコニコ

シンドバッド「おっと、ちょっと間違ってるな。それを『可愛い女の子の友達』に伝えるんだ、男には別に言わなくても良いからな?どういう事かわかるだろ?」

ラプンツェル「わかってるわかってる!赤ずきんとかグレーテルとかシンデレラとか…あとシェヘラザードにもバッチリ伝えとくから、安心してね!」

シンドバッド「わかってねぇなお前!?子供とか人妻には伝えなくてもいいんだよ!いや人妻はありか…?つーかシェヘラザードには絶対に言うなよ?俺が言わせたってバレたらヤベェからな」

ラプンツェル「そーなの?それよりあれだね、シンドバッドはシェヘラザードにバレたらやばいことがいっぱいあるねぇ~」ニコニコ

シンドバッド「へへっ、まぁな。あいつは何かと口うるさいからよぉ…俺のこと思って言ってくれてるってのは解るが、全部に従ってたら窮屈で仕方ねぇぜ」

ラプンツェル「わかるわかる!私にも言ってくるもん!もうすぐお姫様になるんだから買い食いはやめなさいーとか!つまみ食いはやめなさいーとか!あと手が汚れたときとか裾で拭くのはやめなさいーとか言ってくるよ!」

シンドバッド「いや、それはハンカチとか使えよお前。ガキじゃねぇんだから」ハハハ

493: 2016/07/04(月)00:26:54 ID:D89
ラプンツェル「まーでもシェヘラザードがホントは良い子だって事は知ってるよ?国を良くするので忙しいはずなのに私やかかしにお勉強教えてくれるし!あとお菓子もくれるし!優しいし旦那さんの事すごく好きだし!」

シンドバッド「まぁ他人に厳しい分、自分にはもっと厳しいしな、あいつ。説教は多いし煩わしいこともあるけどまぁ…良い奴だよ、そうじゃなきゃ俺もわざわざ別の世界の警備なんかしねぇし」

シェヘラザード「うーん…そー考えるとお勉強会すっぽかして来た事、シェヘラザードに悪いことしちゃったなぁ…」

シンドバッド「おいおい、今更そんな事言っても仕方ねぇぜ?」

ラプンツェル「そーなんだけどさ、昨日はシェヘラザードが私のお話聞いてくれないからもーっ!てなっちゃって勝手にするって決めちゃったけど、やっぱりもっとお話しした方が良かったのかなぁ…」

シンドバッド「まぁそれが出来るなら一番良かっただろうがな、まーなんにせよお前は勉強より特訓を選んだんだ。シェヘラザードが思わず納得しちまうくらい強くなればいいんだ、あんまり気にすんなって」

ラプンツェル「そうだよね!もう決めちゃったんだし悩んでも仕方ないよね!特訓頑張るしかないよね!」ウンウン

シンドバッド「あぁ、そうだ。この調子でガンガン盗賊を退治していきゃお前は強くなれるし治安も良くなる!うまくすりゃあ逆に誉められるかもしれねぇぞ?」ニッ

ラプンツェル「そっか!悪者退治して街が平和になれば誉められるかもだね!あっ、でもさでもさ!確かこの世界はアリババって人が盗賊を退治するおとぎ話なんだよね?」

シンドバッド「まぁ正確にはアリババの召し使いのモルジアナっていう女が盗賊を退治するんだけどな。それがどーかしたか?」

ラプンツェル「もしもね?私達がうっかりモルジアナが退治するはずの盗賊をやっつけたら、このおとぎ話消えちゃうよね?それは私嫌なんだけど、大丈夫かな?このまま盗賊退治してても大丈夫?」

シンドバッド「ハッハッハ!意外と心配性だなラプンツェルは!確かに俺たちがうっかり例の『40人の盗賊団』を退治しちまったらモルジアナが連中を退治するってぇ筋書きが変わっちまってこのおとぎ話は消滅する。だがそんな事は絶対にねぇから安心しろ」

シンドバッド「なにしろこの世界には数十以上の盗賊団が溢れかえってるんだぜ?まさに大盗賊時代!そいつ等をうっかり倒しちまう可能性なんてかなり低いぜ、ざっくり五十分の一で計算してえーっと、何パーだ?…まぁとにかくありえねぇから心配すんなってこったな!」

ラプンツェル「そっか、それなら大丈夫だね!私達は安心して盗賊をやっつければいいんだね!」



シンドバッド「おう、俺が適当に標的として選んだ盗賊団がまさかあの『40人の盗賊団』だった!なんて事、絶対にありえねぇよ。ハッハッハ!」

・・・

494: 2016/07/04(月)00:29:38 ID:D89
とある盗賊団のアジト付近 茂み

ガサガサ

シンドバッド「よーし、ラプンツェル。次の標的はあの盗賊団だ、街で見かけた下っ端盗賊っぽい奴を尾行してたらまんまとアジトに到着だ!丁度良いから退治しとこうぜ」

ラプンツェル「わかった!でもなんだか沢山居るよ?大丈夫かなー?」

シンドバッド「いけるいける。お前さっきも余裕だったろ?確かに人数は多いが、ビビってしょぼい盗賊ばっかり相手にしててもなんにもならねぇだろ?」

シンドバッド「それに安心しな!もしもやべぇと思ったら俺も加勢する、いざとなったら上空を飛んでるロック鳥に奴らを襲わせるってのもありだ」

ラプンツェル「それなら安心だねっ!たくさん盗賊捕まえてもっと強くなってシェヘラザードに私がちゃんとしてるってところ見せたいもんね!」

シンドバッド「おう!お前が成長することはあいつにとっても嬉しいことのはずだ。しっかり頑張って認めてもらおうぜ」

ラプンツェル「うん、頑張る!」フンス

シンドバッド「で、今回の作戦だが…さっきと同じように奇襲をかける。だが今回は人数が多いからな、まずはお前の髪の毛を使ってあっちの方の茂みに石を投げ込め」

シンドバッド「そうすりゃ盗賊共はそっちに気を取られるだろうからその隙に一気に勝負を決める。それじゃあ適当な石を掴んで投げてみろ、気づかれないように高いとっから素早くな」

ラプンツェル「わかった!えーっと…じゃあこれにしよっ」ズシッ

シンドバッド「いやちょっと待て!ちょっと物音立てりゃあいいんだぞ?そんなデカい岩を使う必要なんかねぇって」

ラプンツェル「でも小さいよりおっきい方がいいと思う!よーし、じゃあちょっぴり重いけどこれを掴んであっちの茂みに投げるよ!せーのっ!」

ブンッ ズルッ

ラプンツェル「ありゃ?思ったより飛んでいかなかったなー…って言うか投げるときちょっとズルってなっちゃった。失敗失敗ー、えへへー」テヘペロ

シンドバッド「あーあー何やってんだ、無駄にデカい岩なんか投げるから飛距離足りてねぇぞアレ。お前これじゃあ向こうの茂みに届かねぇじゃねーか、ったく」

ヒューンッ


>>493
ぬお、シェヘラザードが喋ってる。ごめんね、誤字ですシェヘラザード→ラプンツェル

495: 2016/07/04(月)00:31:56 ID:D89
ラプンツェル達が標的にした盗賊のアジト

盗賊の親分「えぇい!アリババとかいう男の家はまだ突き止められねぇのか!お前には部下の指揮を任せてんだ、この不手際はテメェの責任だぞ、どうオトシマエ付けるつもりだぁ!?」バンッ

盗賊アニキ「す、すいやせん親分!どうやらアリババの野郎、随分と頭が切れる召使いを従えてるようで…そいつが俺たちを妨害してるようなんで」

盗賊の親分「だから何だってぇんだ!?頭がキレようが相当な手練れだろうと関係ねぇ!俺が殺せと命じたらテメェらはそれに従うだけだろうが!」ギロリ

盗賊アニキ「す、すいやせん!団員一同、血眼になって探してますんで…もう少しばかりお待ちくだせぇ!」

盗賊の親分「ったく、アリババの野郎…ただじゃおかねぇぞ!俺達が居ない間にアジトの洞窟に忍び込んで宝を盗んで行きやがって、素人に癖に盗賊から盗みを働こうなんざとんでもねぇ野郎だ!」

盗賊アニキ「まったくでさぁ。恐れ知らずなのか愚かなのか…どっちにしろ大胆とはこの事ですぜ。大した肝っ玉持ってますよアリババは」

盗賊の親分「何を感心してんだテメェは!いいかぁ!?盗賊ってのはメンツを潰されたらおしまいなんだよ!俺の40人の盗賊団がただに素人に出し抜かれたなんて他の盗賊団に知られたらどうなるかもわからねぇのか!?」

盗賊アニキ「い、いえ…この事が他の盗賊団に知れたらうちの盗賊団の名声は地に落ちちまいやす…!」

盗賊の親分「あぁそうだ、それだけは絶対に阻止すんだ!小さな盗賊団をようやくここまでデカくしたんだ、それを馬鹿な素人のせいで失うなんざ…間抜けすぎる!絶対にそんな事はさせねぇ!」

盗賊アニキ「へい、その通りでさぁ!」

盗賊の親分「いいか?俺はゆくゆくは世界を牛耳る盗賊…そう!盗賊王になる男だ!手下のテメェ等は命を賭けて俺の命令に従い、氏に物狂いで俺ために働け!俺を盗賊王にのしあげるためになぁ!ガーッハッハッハー!!」ガハハハ

ヒューンッ ドゴォッ!!

盗賊の親分「ゲボアッ」ドサッ

盗賊アニキ「!? 突然岩が飛んで来やがった!?い、いやそれよりも!だ、大丈夫ですかい!?親分!?」ユサユサ

盗賊の親分「」

盗賊アニキ「し、氏んでる…!お、親分が謎の奇襲でやられたァー!?」

496: 2016/07/04(月)00:34:11 ID:D89
盗賊アニキ「…テメェ等、辺りに気を配れ!親分を頃した奴はまだ近くにいるかもしれねぇ、探せ!探せ!このまま帰すんじゃねぇぞ!」

ワーワー サガセサガセー

盗賊「アニキ!俺、妙なことに気がついたんスけど…そっちの茂みからいい香りがしませんかい?なんか女の子の匂いっていうか…」スンスン

盗賊アニキ「馬鹿!お前、こんな時にお前馬鹿!ここは俺達盗賊のアジトだぞ!?女の子の匂いなんてするわきゃねぇだろふざけんなよお前……あ、マジだな。なんか花の匂いするわ」スンスン

盗賊「でしょ?俺、鼻はすごくいいんス!もしかして親分を頃した女の子がそこの茂みに潜んでいるとか…」

盗賊アニキ「馬鹿お前!親分は相当の手練れだったんだぞ!?こんなフローラルな香りさせてる女の子が親分を殺せるわけねぇだろ!もしそんなすごい娘居たら見てみたいわ!そしてその強さを褒めてやりたいくらいだわ!」

ラプンツェル「あっ、はいはーい!みんなの親分倒しちゃったの私だよ!すごいでしょ!」フンス

盗賊アニキ「!?」

シンドバッド「バッカお前何で出て行くんだよ!やべぇから逃げるぞって言ったろ!?」グイグイ

ラプンツェル「えっ、でも誉めてくれるって言ってたから…シンドバッドだって誉められると嬉しいでしょ?私は誉められるの好きー!」ニコニコ

シンドバッド「なこと言ってる場合か!早く逃げるぞ!」

盗賊アニキ「待て待て!このまま帰す訳にはいかねぇぞ!テメェ等この子らの周りを取り囲め!」

ザザザッ

ラプンツェル「ありゃー…囲まれちゃったね。ねぇシンドバッド、私知ってるよ!こういうのをぜったいぜつめいっていうんだよね!」ドヤァ

シンドバッド「…あぁ、物知りだよお前は。この人数じゃあ正面突破は無理だな。だったらお前を呼ぶしかねぇよな!ロック鳥!降りて来い!お前の見せ場がやってきたぜ!」

497: 2016/07/04(月)00:36:46 ID:D89
ロック鳥「ルオオオォォォォォォォッ!!」バサバサーッ

盗賊アニキ「なんだこの怪鳥は!あのチャラいのが呼んだのか…!まさか猛獣使いだったとは…いや、んな事言ってる場合じゃねぇ!待て待てお前らちょっと聞け!」

シンドバッド「ロック鳥!盗賊共を一蹴しろ!爪で裂こうが吹き飛ばそうが啄もうがお前の勝手だ!自由にしちまって構わねぇぞ!」

ロック鳥「ルオッ!ルオォォォォォック!!」バサバサーッ

盗賊アニキ「待て待て!そこのチャラいの!勘違いしないでくれ!俺達はあんたらと戦うつもりなんかねぇ!」

シンドバッド「やかましい!俺らを取り囲んでおきながらよくもそんな白々しい嘘がつけたもんだ!今更怖じ気づいてもおせぇ!ロック鳥やっちまえ!」

ラプンツェル「待って待ってー、ロック鳥ー。ちょっと待ってあげて!この人達戦うつもりないっていってるから攻撃しちゃかわいそうだよー」

シンドバッド「おいラプンツェルお前いい加減にしろ!こいつ等は盗賊だぞ!あんなの嘘に決まってる!ロック鳥、いいからやっちまえ!」

ロック鳥「ルォッ」フイッ

シンドバッド「あっ、お前!何、ラプンツェルの命令を優先してんだ!お前のマスターは俺だろうが、なにラプンツェルにすり寄ってんだ!」

ラプンツェル「ロック鳥はさっき自由にしていいって言ってたから好きなようにしてるだけだもんねー?」ナデナデ

ロック鳥「ルオッ!」スリスリ

シンドバッド「肝心なときにお前誰に似て……いやハッキリしてるよな。こうなりゃあ俺が一人で相手するしかねぇか…!」スラッ

498: 2016/07/04(月)00:42:26 ID:D89
盗賊アニキ「そりゃあ盗賊の言葉なんか信用できねぇか。しかもこの構え、やはりただ者じゃねぇ…!テメェ等、守りを固めろ!」

シンドバッド「この大人数を相手にするってぇのは相当分が悪いが、この程度の逆境には慣れっこだ。数多の海を駆け、いくつもの修羅場をくぐり抜けたシンドバッド様に切り開けねぇ道はねぇ!さぁテメェら覚悟しt…痛ってぇ!」ビターン

ラプンツェル「もーっ!盗賊のみんなが戦う気が無いって言うのはホントだよ、武器持ってないもん!よく見なきゃだよ!ねーっ、ロック鳥?」グルグルグルー

ロック鳥「ルォーッ」

シンドバッド「ラプンツェル!バカお前早くほどけ!そうやって油断させて隠したナイフでブスリといかれたりすんだよ!こいつ等は悪党なんだぞ!?世間知らずなお前には思いも寄らないような卑劣な手を使うんだぞ!」

ラプンツェル「えーっと、はじめまして!私の名前はラプンツェルだよ!こっちはロック鳥で、あのぐるぐる巻きになってるのがシンドバッド。よろしくね!」ニコニコ

シンドバッド「聞けお前!」ジタバタ

盗賊アニキ「俺はこの盗賊団の副団長。と言えば聞こえが良いがこいつ等にまとめ役、盗賊アニキなんて呼ばれてる。それより、俺は盗賊家業に着いて長いが…カタギに真っ正面から自己紹介されたのは初めてだ」

ラプンツェル「初めてあった人には自己紹介しなきゃなんだって!塔の外じゃ挨拶は特に大切だってママが言ってた」

盗賊アニキ「そうかい、だが俺が言う事じゃあないが盗賊相手にする事じゃあねぇ。そこの兄ちゃんが言うように盗賊は汚い手でも平気で使うんだぜ」

ラプンツェル「でもアニキは違うでしょ?さっき言ってたもん、戦うつもりなんか無いって、でしょ?」

盗賊アニキ「まぁ…そうだが、普通は盗賊の言うことなんか信じないもんだ」

ラプンツェル「どーして?」

盗賊アニキ「どうしてもだ。だが…今回俺達に戦う気が無いってのは本当だ。むしろあんたに感謝してんだ、親分を…いやあの男を倒してくれたんだからな」

盗賊アニキ「あんたは俺達の恩人だ、こいつ等を代表して礼を言わせてくれ。助かった、恩に着る。礼にもならねぇが宴に参加してくれねぇか?もちろん無理にとはいわねぇ」ペコッ

ラプンツェル「よくわかんないけど、どーいたしまして!そしてパーティーは大好きだから私もやるやる!」フンス

シンドバッド「…どうなってやがる?普通は親分を倒されたんなら仕返しするもんだ。そもそも戦う気がないってのは嘘じゃねぇのか?」

盗賊アニキ「よぉしテメェ等!宴の支度だぁ!恩人に出来る限りの礼を尽くせぇ!」

499: 2016/07/04(月)00:47:26 ID:D89
・・・

ラプンツェル「じゃああの親分はとっても酷い人だったって事ー?」モグモグ

盗賊アニキ「あぁ、俺達は盗賊だからあんたらカタギに人並みに扱って貰えねぇ事に不満なんざねぇよ。だがあの男は…団長でありながら俺達団員を人間として見てすらいなかった、宝物を奪い名声を高めるための道具としてしか見ちゃいなかったんだ」

盗賊アニキ「あいつは団員を駒としか思っちゃいなかった。命を落としかねない無茶な任務、明らかに人手が足りない状態での任務なんか当たり前で、自分のみを守るために部下を盾にする囮にするなんざしょっちゅうよ」

盗賊アニキ「精神的にも肉体的にも過酷な生活、それでいて休息なんざまともに取れやしねぇし全員に十分な飯が行き渡らないことも少なくなかった。ほとんど奴隷のようなもんだった」

ラプンツェル「むーっ、ひどいね!休憩できないのもご飯食べられないのも辛いよね!そんな盗賊団やめちゃえばよかったのに!」ムシャムシャ

盗賊アニキ「奴は傍若無人だったが…それを黙認させるほどの力があった。全員でかかれば勝機もあっただろうが、この大盗賊時代だ…親分を失った後、団をまとめられる器がある奴がいねぇと…別の盗賊団の食い物にされちまうだけだった」

ラプンツェル「アニキじゃだめだったの?」ガジガジ

盗賊アニキ「俺はそんな器じゃねぇよ。こいつらは慕ってくれてるが…学がねぇから、読み書きはかろうじて出来るが難しい事となるとなぁ。それで…」

ガヤガヤガヤガヤ

「ラプンツェルさん!ノンアルなんですよね!ぶどうジュースどうぞ!本当、ラプンツェルさんには感謝してるんですぜ、なぁ?」
「おう!あのおっさん無茶ばっかりだったからな。でもよそに行くあてもねぇから従うしかなくてなぁ…」
「でももう違うもんな!俺達はあのブラック盗賊団から解放された!ラプンツェルさん!乾杯しましょ乾杯!」

盗賊アニキ「お前ら!恩人に失礼だぞ!ちょっと下がってろ!」

500: 2016/07/04(月)00:49:40 ID:D89
「アニキばっかりズルいッスよ!俺達もラプンツェルさんとおしゃべりしたいッス!」
「そうッス!こちとら女の子と飯食うのなんて十数年振りっすよ!この喜びを噛み締めさせてくだせぇ!」

盗賊アニキ「お前ら…情けねぇ事言ってんじゃねぇ!この方はカタギなんだ、俺達とは住む世界が…」

ラプンツェル「もーっ、私あんまりラプンツェルさんとか言われるのイヤだなー、くすぐったいから!ラプちゃんでいいよー」ニコニコ

「うおぉー!ラプちゃんはなんて器がでかいんだ…つーか女の子を愛称で呼べる日が来るとか泣きそうだ俺…」
「泣くな泣くな!涙でラプちゃんの姿が拝めないなんて損だぞ!」
「うおぉー!ラプちゃんの髪の毛くんかくんかしてぇー!」

盗賊アニキ「誰だァ!今失礼なこと言った奴ー!…すいやせん、こいつらは気のいい連中なんですがどうも下品でならねぇ…気ぃ悪くしねぇでくれ」

ラプンツェル「いいよいいよぉ、口悪いお猿さんや妖精の友達とかいるし、あんまり気になんないよ」ニコニコ

盗賊アニキ「ラプンツェルさん、見かけによらず肝据わってんだな…」

シンドバッド「ラプンツェル、お前あんまりこいつ等と仲良くするんじゃねぇぞ。腹の中じゃ何考えてるのかわかんねぇんだ」グルグルマキ

シンドバッド「…あといい加減に髪の毛ほどいてくれねぇか?」

ラプンツェル「ダメ。シンドバッド、ひどいこというもん!みんなは戦うつもり無いのなんかもうとっくにわかってるくせにー!」

501: 2016/07/04(月)00:52:23 ID:D89
盗賊アニキ「いや、その兄ちゃんの言うとおりだ。あんまり俺達に情を持たない方がいい。俺から誘っておいてなんだがあんたは少々世間を知らなすぎる」

ラプンツェル「えーっ?そりゃ盗むのは悪いことだと思うけど、みんなは良い人だよ?私にも優しいし!もー友達だよ、私たち!」ニコニコ

盗賊アニキ「カタギがそんな事口にするもんじゃねぇ。優しいのはそりゃああんたが恩人だからだ、みんな感謝してるからな。だが結局俺たちは盗賊、悪党なんだ。今だって俺達はある一人の男を頃すために探してたんだしな、あんたらと同じカタギの男をな」

盗賊「そんな言い方…!ありゃああの男の命令で仕方なくやってたことじゃないですか!宝物を盗まれた報復にって…あの男が氏んだ今、もうアリババを頃す必要も無いんd」

シンドバッド「ちょ、ちょっと待て。今なんて言った?その宝物を盗んだ男の名だ」

盗賊アニキ「どうしてそんな事を気にするんだ?まぁ今となっては隠す必要も無いけどよ…宝を盗んだのはアリババっていう男だ。俺達『40人の盗賊団』に宝物庫に忍び込んでな」

盗賊「盗賊から宝を盗むなんてトンデモねぇ!ってんであの親分だった男が怒っちゃって、でももう別にどうでもいいんですけどねアリババ殺さなくても…って大丈夫ですかい?兄ちゃん汗すっげぇけど…どっか痛いのか?」

シンドバッド「……」

シンドバッド(おいおいおい!こんな偶然ってあんのか!?この世界にいくつ盗賊団があると思ってる!?よりによってお前…やべぇ、完ッ全にやらかしちまった…!)

シンドバッド(どうすんだこれ…!親分が氏んじまったら結末を迎えられなくなってこのおとぎ話が消えちまう!いや落ち着け、この盗賊の兄貴分を新しい親分に仕立て上げて…いやダメだ、こいつらにはもうアリババを頃す理由が無い!)

シンドバッド(とにかくここはシェヘラザードに報告してうまく改変してもらうのが一番の解決策だよな。だがそうするってなると必然的にあいつの耳に入れなきゃ何ねぇ訳で…)

シンドバッド(…駄目だ!どっちにしろシェヘラザードは魔神の如く怒る…防ぎようがねぇ!)

502: 2016/07/04(月)00:54:23 ID:D89
シンドバッド「あいつに知られずに…いやそうすると…するってぇと…いや無理か…」ブツブツ

盗賊「アニキ、大丈夫すかねこの兄ちゃん…急にブツブツ言ってるけど」

盗賊アニキ「大丈夫じゃねぇか?別に怪我してる訳じゃねぇ。…まぁそういう事だラプンツェルさん、所詮俺たちは盗賊、盗みも頃しもする悪党だ。だから盗賊なんかを友達だなんて言うもんじゃねぇ、冗談だとしてもな」

ラプンツェル「冗談じゃないよ?よくわかんないけど、だったらみんなもう盗賊やめたらいーじゃん、親分ももういないんだしさ!」

盗賊アニキ「そんな簡単なことじゃねぇんだ。こいつらは俺と同じで大体が孤児、身よりもなけりゃ学も金も無い、読み書きできない奴が大半だ。結局悪党に身を置くか奴隷に成り下がるか…そんくらいだ、末路はな」

ラプンツェル「お仕事が無いなら私が探すの手伝ってあげるよ!私、友達もいっぱいいるからお仕事無いか聞いてみる!パパ…あっ、王様なんだけどね、パパにお願いしたら働くところ見つけてくれるかも!」

盗賊アニキ「お、王!?ラプンツェルさん、姫君なのか!?い、いや…だったらなおさら俺たちと関わっちゃあ…」

ラプンツェル「あとは…シンデレラとかシェヘラザードに聞いたらお城のお仕事貰えないかなー。あっ、みんなマッチョだから裸王なら喜んでお仕事くれるかも!あとで聞いてみる!」

盗賊アニキ「…なぁラプンツェルさん、あんたがあの男を倒したのは偶然なんだよな?」

ラプンツェル「うん、そーだよ?」

盗賊アニキ「どうして俺達にそこまで肩入れするんだ?頭領を失った盗賊団の連中に仕事を探してやるなんて…どう考えても普通じゃあねぇぞ、何故そこまでする?ただ成り行きで杯を交わしただけだぞ、俺達は…」

ラプンツェル「一緒にご飯食べて飲み物飲んでお喋りしたらもうお友達だよ?盗賊とかかたぎ?とかよくわかんないけど、関係ないよ。だってもうみんなは私の友達だもん」

ラプンツェル「だから友達がお仕事無くて困ってるんなら私はお手伝いするよ!そんなの当たり前のことだよー」ニコニコ

503: 2016/07/04(月)00:58:53 ID:D89
その時、盗賊アニキの頬を伝ったのは涙であった。
物心付いた時には既に親は無く、他の孤児達と盗みをして食いつなぐ日々
社会の隅に追いやられ、他人から優しい言葉をかけられることなど…無かったのである

盗賊アニキ「あんたは…盗賊の俺達を友と呼んでくれるのか?散々盗みを働いた俺達を!」

ラプンツェル「だから最初っからそういってるのにー。それにもうみんなは盗賊じゃないでしょ?私がお仕事探してきてあげるからおーぶねに乗ったつもりでいてよね!」フンス

盗賊アニキ「ラプンツェルさん…!俺の心は今、喜びで満ちている。親分から解放されたからじゃねぇ、真っ当な仕事が見つかるかもしれないからでもねぇ!あんたのような心優しい人に出会えたことが、俺はとても嬉しい」

ラプンツェル「アニキが嬉しいなら私も嬉しいなー、でも出来ればラプンツェルさんはやめてよー。友達はそんな風に呼び合ったりしないよ?」ニコニコ

盗賊アニキ「あぁ、わかった…!よぉし、お前らぁ!親分から解放された今、俺達は盗賊団を捨てる!そして今ここに新たな団体を発足する!その名も『40人のラプちゃん親衛隊』だ!反対意見がある奴はいるか!?」

「みんな賛成ですぜアニキィィ!ナイスアイディア!」
「よっしゃあぁぁ!これからもラプちゃんと一緒だぁ!」
「ラプちゃんかわいいぃぃぃ!!ラプちゃんマジ天使ぃぃぃ!!くんかくんかぁー!」

盗賊アニキ「ラプちゃん、これから俺達はあんたに付き従う。だがそれは部下としてでも奴隷としてでもねぇ、友人として…そして親衛隊としてラプちゃんの力になる、構わねぇか?」

ラプンツェル「しんえーたい?とかよくわかんないけど、みんな仲良くできるって事だよね!それなら賛成賛成!」

盗賊アニキ「そうと決まればもう一度乾杯だラプちゃん!お前等ぁ!飲み物準備しろー!ラプちゃんはノンアルだぞノンアル!」

ワーワー ガヤガヤ

シンドバッド(や、やべぇ…名案が浮かばないうちに話がこじれて来やがった…!)

505: 2016/07/04(月)01:01:21 ID:D89
シンドバッド「な、なぁ…お前等さ、盗賊やめる事ねぇんじゃね?なんつってもプロなわけだしさ。ほら、もったいないだろ、技術がさ。だろ?」

ラプンツェル「もーっ!みんなが新しいお仕事探そうってしてるのに何でそんな事いうの?シンドバッドのイジワル!」プンスカ

「そうだぞお前!ちょっと顔が良いからって調子に乗ってんのか!?ふざけんなよハンサムが!」
「ちょっとモテそうだからって舐めんなよチャラ男が!くたばれ!」
「プンスカしてるラプちゃんもかわいいぃぃぃ!!」

シンドバッド「クソっ…なんだこの結束力…なんとかしてこいつら盗賊やめるの阻止しねぇと…!」

スタッ

???「おやおや、あなたにしては珍しく随分と余裕がなさそうですね…いつもは余裕ぶっていることが多いのに」スッ

シンドバッド「こんな状況で余裕ぶっていられるかってんだ!このままじゃ俺はお前に……ゲッ、シェヘラザード…!?」

シェヘラザード「ゲッとはなんですか。もう少し言葉を選びなさい、あなたはおとぎ話の主人公なんですからね。まぁ今は、それよりも……」

ゴゴゴゴゴ

シェヘラザード「何がどうなっているのか私に説明をしなさい、シンドバッド?」

520: 2016/07/11(月)00:24:03 ID:fIW
・・・

シンドバッド「──で、今に至るって訳だ…。あとは見ての通り俺は身動きがとれねぇしあいつ等は宴に夢中でこっちに気づいてすらいねぇ…ってな所だ。他に何か聞きたいこと、あるか?」

シェヘラザード「いいえ、大丈夫です。大体の状況は把握しましたから」

シンドバッド「話が早くて助かるぜ。いやぁ、お前はなんつっても俺達と違って頭の回転が速いからな!一度話しただけでぱぱっと状況把握しちまう、やっぱお前は聡明な女だ。流石は俺の作者だぜ」ハハハ

シェヘラザード「ありがとうございます。でもおだてたところでお説教を中止にしたりしませんよ?」

シンドバッド「ハハハ!お前何言ってんだよ、そんな下心なんて無ぇって!……なんで解ったんだ?」

シェヘラザード「当然です。あなたが突然誉めるのは何かやましいことがある時か、お説教回避のおべっかのどちらかなんですから」フイッ

シェヘラザード「まぁ色々と言いたいことはありますが…あなたの性格ではラプンツェルさんの頼みを断ることは出来ないでしょうし、友人として彼女の相談に乗るのは当然だと思います」

シンドバッド「だろっ?困ってる女を見過ごすなんて出来ねぇしそれがダチだってぇなら尚更だ。なんだなんだ、お前今日は妙に話がわかるじゃねぇか!」ヘラヘラ

シェヘラザード「で・す・が!その方法が最悪です!百歩譲って彼女の特訓に付き合うのはいいとしても、どうしてそれを【アリババと40人の盗賊】の世界でおこなうのですか!?」

シンドバッド「そ、そりゃお前…実戦に勝る特訓無しだからな。この世界には数え切れないほどの盗賊団が存在すんだからそいつ等を退治がてら特訓の相手にすりゃ街は平和になるわラプンツェルは強くなるわでwin-winだろ?ハハハ…」

シェヘラザード「何がwin-winですか!確かに物語と関連性のない盗賊団なら退治しても直接的な問題はないでしょう…ですが結果はどうです!?あなた達二人はあろうことか40人の盗賊団の親分を倒してしまっているではないですか!」キッ

シンドバッド「そ、そりゃあうっかりっていうか不可抗力っていうか…わざとじゃねぇんだって!結果的にそうなっちまっただけで俺達には悪気があった訳じゃねぇんだよ、な?」

シェヘラザード「悪気があろうと無かろうと同じです!彼が氏んでしまった今…このままにしておけば物語が立ちゆかなくなり、この世界は消えてしまうんですよ!」

シェヘラザード「完結していないおとぎ話に不用意に干渉すればこうなってしまう危険性があることをあなたは知っていたはず。それなのによく考えもせず…いくらなんでも軽率過ぎます!それなのにあなたは言い逃れや言い訳ばかり…!」

521: 2016/07/11(月)00:25:10 ID:fIW
シンドバッド「わ、わかってるって…悪かった。ついいつもの癖で言い訳しちまったけどよ…流石に今回ばっかりは反省してる。いいや、猛省してる!見ての通りだ!」

シェヘラザード「とてもそうは見えませんけど…」ジーッ

シンドバッド「ぐっ…そうかよ、こういうとき普段の行いのツケが廻ってくるよな…」

シェヘラザード「分かっているなら普段からキチンとしなさい。まぁ…学んだこともあるようですし今回はあなたの言葉を信じます。それに、いつまでも拘束されているのは辛いでしょう」スパッ

シンドバッド「おぉ、流石はシェヘラザード!恩に着る!お前が作者で俺は幸せもんだぜー!」ヘラヘラ

シェヘラザード「言った側から軽口を叩くのですから困ったものです…。事態が落ち着いたらアリババやモルジアナにも謝罪しておくのですよ、特にモルジアナは激昂していましたから念入りに」

シンドバッド「おう、任せろ!にしてもお前がこの程度の説教で許してくれるなんて珍しいじゃねぇか。いつもだったら何時間もガミガミガミガミ…」

シェヘラザード「あら、お望みならば何時間でもガミガミしますけど?」

シンドバッド「そ、そういう意味じゃねぇよ!勘弁してくれ!」

シェヘラザード「まったく、あなたは一言多いのですから…。確かにあなたの行動に関してまだ言いたいことは山ほどありますが…」

シェヘラザード「今回はラプンツェルさんの気持ちを考えていなかった私にも非があります。ですからあなただけを糾弾するのは筋違いです、私も反省すべき所はしなければなりませんからね」

シンドバッド「まっ、そりゃあ一理あるな。お前があいつの話聞いてりゃこんな大事には…おっとやべぇ、また余計なことを言っちまうとこだったぜ」ヘラヘラ

シェヘラザード「……まぁいいです。今はこの状況をどうするか考えましょう。この世界が消滅してしまうという危機から、まだ脱していませんからね」

522: 2016/07/11(月)00:26:25 ID:fIW
シェヘラザード「このおとぎ話が本来の結末を迎える上での問題は二つ…ひとつはモルジアナが倒すはずの親分が氏んでいること。そしてもう一つは…」

シンドバッド「盗賊団がどう言うわけかラプンツェルの親衛隊になっちまってることだな。あいつ等もう盗賊業どころかアリババへの仕返しなんかどうでもいいと思ってるぞ」

シェヘラザード「あなたの話だと彼等は元々親分に尽き従っていただけで根っからの悪人ではなかったのでしょう。とはいえ…この世界を守るためにアリババへの仕返しはしてもらわなければいけません」

シンドバッド「つーかよぉ、このおとぎ話の作者はお前なんだからどうにでもなるんじゃねぇの?ぱぱっとうまい具合に書き換えちまえば万事解決だろ?」

シェヘラザード「随分と簡単に言ってくれますね…。私なら書き換えは確かに出来ます、ですがここまで物語が進行している状態では大規模な改変は不可能です、つじつまを合わせることが出来なくなるので」

シンドバッド「なるほどな、作者の力も万能じゃねぇってか」

シェヘラザード「そもそも物語の改変は現実世界へ影響を及ぼしますからね…本来ならばあまり使いたくはありません」

シンドバッド「そうなのか?でも消えちまう訳じゃねぇし些細なもんだろ?」

シェヘラザード「とんでもない。大規模な改変はこの物語を気に入ってくださっている方、このおとぎ話を元に新たな物語を紡いだり作家を志してくれた方、その方達を裏切ることになりますからね」

シンドバッド「まぁ言い分はわかるけどよ、余所の世界の連中に気を使いすぎじゃねぇか?お前の物語の聞き手はあくまで国王だろ?」

シェヘラザード「確かに私は王に優しい心を取り戻してもらうために物語を紡ぎましたが…現実世界で私の物語が誰かの心を動かしているのなら、私はそれを大切にしたいのです」

シンドバッド「そうかい、頭の良い奴の考えることは良くわかんねぇけどよ。お前がそうしたいってならそれでいいんじゃねぇか」

シェヘラザード「えぇ。ですから、なるべく小さな改変で済むように…出来るだけ些細な変更で済む方法を考えましょう」

523: 2016/07/11(月)00:27:32 ID:fIW
シンドバッド「まぁ盗賊の連中はどうにか説得してアリババの所へ行かせるとしてもだ…問題は親分だよな。本人は氏んじまってる、代役を立てようにも氏んじまう役回りを無関係の奴にやらせるのもなぁ…」

シェヘラザード「そうですね。それにあれを見ていると盗賊団の皆さんの命を奪うというのも…」

・・・

ラプンツェル「あっ、アニキもうお酒無いよ?私がついできてあげるよー」ニコニコ

「ラプちゃんのお酌とかアニキズリィー!ラプちゃん俺も俺も!」
「大体さぁラプちゃんの隣占領するのズリィよアニキ!」
「アニキには俺がついで差し上げやす!だからラプちゃんこっち来てー!」

親衛隊アニキ「えぇい、ラプちゃんは俺についでくれるって言ってんだよ!お前等は後だ後!後で頼め後で!」

・・・

シンドバッド「まぁなぁ…あいつ等氏んじまったらラプンツェルもショックだろうしな」

シェヘラザード「こうしましょう。物語は当初の筋書き通り進行させましょう、ただし…親分役もあの盗賊達もモルジアナに退治されるだけ。命までは失いません、それなら改変も僅かで済みます」

シンドバッド「そうすりゃ親分の代役も氏なずに済むな。でもよ、俺には良くわかんねぇけど氏ななくても大丈夫なのか?」

シェヘラザード「盗賊達の生氏はこの物語で重要では無いですから、問題ないでしょう」

シェヘラザード「【マッチ売りの少女】のマッチ売りさんや【キジも鳴かずば】の弥平さんのように氏ぬ事が物語に重大な影響を与える人物を生かしたままおとぎ話を存続させることは出来ませんが……彼等はそうではありませんから」

シンドバッド「良くわかんねぇけど大丈夫なら問題ねぇな。となるとあとは誰が親分の代役をするか、それとどうやって盗賊達をやる気にさせるかだが…」

シェヘラザード「それに関しては私に考えがあります」

524: 2016/07/11(月)00:29:09 ID:fIW
シンドバッド「そんじゃお前に任せてりゃいいな。どんな手か知らねぇけど俺が無い知恵絞るよりはずっといいしな」ハハッ

シェヘラザード「どちらにしろ、彼等と話さなければいけませんね。では行きましょうか」スッ

シンドバッド「待て待て!用心しろよシェヘラザード、あいつらラプンツェルにはゾッコンだが俺に対しては辛辣だしな…いきなり余所者のお前が顔を出すのはマズい」

シェヘラザード「そうでしょうか?私には彼らがそこまで悪人のように見えませんが」

シンドバッド「人は見かけによらないって言うだろ?用心するに越したことねぇよ。実際、俺はそうとう嫌われているようだしな…不用意に出て行かない方がいいぜ」

シェヘラザード「それはあなたが嫌われるようなことをしたのではないですか?大方、調子に乗ってヘラヘラしていたのでしょう」

シンドバッド「お前も大概辛辣だな…俺はこう見えておとぎ話の主人公、魅力はあるって自負してんだ。そもそも俺が他人に嫌われるような奴に見えるか!?」

シェヘラザード「あなたは良い人ですよ、相応の魅力もあります。ですがそれは初対面ではわかりにくいです、外見は相当チャラチャラしてますし。もう少し清潔感と誠実さをですね…」

シンドバッド「…あーっ、わかったわかった!もう行くぞ!これ以上話してたらこっちが傷ついちまうぜ、ったく」スタスタ

シェヘラザード「大丈夫ですよ、長くつきあっていれば魅力がわかるはずですから」ウフフ

シンドバッド「っつーかよ、結局親分の代わりは誰がやるんだ?つってもラプンツェルにさせるわけにもいかねぇし盗賊の兄貴分にやらせるのか?」

シェヘラザード「いいえ、親分の代役は盗賊団以外の人物でなければ39人になってしまいますからね。代役はシンドバッドに頼もうかと」スタスタ

シンドバッド「いやいやいや待てお前!何で俺なんだよ!?聞けお前!」

525: 2016/07/11(月)00:30:08 ID:fIW
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ

「いやー!しかしようやく盗賊から足を洗えるぜ。なぁ、お前はどんな仕事に就きたい?俺は騎士がいいな、白馬の騎士」
「白馬の騎士ってお前(笑)俺は独学だけど剣術くらいしか取り柄ないしなぁ、どっかの城で雇ってもらえりゃ御の字だな」
「俺は仕事はなんでもいいがとにかく彼女が欲しい」
「真顔はやめろよ切実すぎて笑えねぇ」

親衛隊アニキ(うんうん、ラプちゃんのおかげでこいつ等もまともな仕事に付けそうだ。昨日まで将来を語るなんて出来なかったのに、良い事だな)

スッ

シェヘラザード「盛り上がっているところ失礼いたします、少しお時間よろしいでしょうか」

親衛隊アニキ「なっ!?なんだぁ!?今日は次から次へと…!」ザワザワ ザワザワ

シェヘラザード「申し遅れました、私シェヘラザードと申します。シンドバッドとラプンツェルさんの友人なのですが、二人がお世話になったようなので…私もご挨拶をと思いまして」

親衛隊アニキ「ラプちゃんの友達か。俺はこいつ等盗賊の兄貴分…いや、ラプちゃん親衛隊のアニキだ。そんな事よりあんた、随分良い身なりしてるがこの辺は物騒だから気をつけろ…ラプちゃんもだがもっと危機感を持つべきだ」

シェヘラザード「ご忠告ありがとうございます、私には立派な護衛が居ますのでご心配なく。ところでラプンツェルさんはどちらに?」

親衛隊アニキ「おう、ラプちゃんならそこに……ラプちゃんなにしてんだ…?その前髪なんだ?一発芸か…?」

前髪がすげぇ長い人「わ、私ラプンツェルじゃないデース!人違いダヨー」コソコソ

親衛隊アニキ「なぁラプちゃん、あの嬢ちゃん友達なんだろ?何でそんな嘘t」

前髪がすげぇ長い人「う、嘘じゃないデース!シェヘラザードは友達だけど今私がここにいることバレたら怒られちゃうから内緒にしてて!…あっ、内緒にしててデース」

526: 2016/07/11(月)00:30:56 ID:fIW
シェヘラザード「そうですか。申し訳ありません、友人によく似ていたので」ペコリ

前髪がすげぇ長い人「気にしないでイイヨー。あとラプンツェルに会っても怒らないであげてネー?あっ、私はラプンツェルじゃないケドネ?」コソコソ

シェヘラザード「はい。しかし困りました、これ以上ラプンツェルさんの居場所がわからないとなるとゴーテルさんが心配しますね…きっと食事も喉を通らず夜も眠れない程に…お年を召されていますし寝込んでしまうかも…」

ラプンツェル「…!だ、ダメだよそんなの!ママに心配かけたくないもん!」バッ

シェヘラザード「おはようございます、ラプンツェルさん」ニコリ

前髪がすげぇ長い人「あっ、えっと…おはようデース…」バサッ

シェヘラザード「もうその小芝居は良いですよラプンツェルさん、私はあなたを叱りに来た訳じゃないんですから」

ラプンツェル「本当?シェヘラザード、怒ってない?」チラッ

シェヘラザード「そうですねぇ…怒ってないわけではないです」ウフフ

ラプンツェル「えーっ!?やっぱり叱りにきたんだ!」ガビーン

シェヘラザード「ですがそれは、あなたがかかしさんを巻き込んでまで嘘を付いたこととおとぎ話の世界の事情を知っていながらシンドバッドの誘いに乗ったことです」

シェヘラザード「ですから私の反対を押し切って戦うことを選んだことに関しては怒っていません。むしろ私が謝るべきです、昨日の私はラプンツェルさんの話を聞かずに自分の意見を押しつけてしまいました」

527: 2016/07/11(月)00:32:26 ID:fIW
シェヘラザード「今では後悔と反省をしています。それと…思わず叩いてしまったこと、本当に酷いことをしてしまいました。ごめんなさい」ペコリ

ラプンツェル「ううんっ、私も勝手なことする前にもっかい話した方が良かったよね…ごめんね!もう二度とぺたんこおっOいって言わないよ!気にしてるのにぺたんこおっOいって言ってごめんね!」

「あぁ…確かに…」
「あぁ、ぺたんこだな…」
「お前等!あんまりじろじろ見るんじゃねぇ!ぺたn嬢ちゃんに失礼だろうが!」

シェヘラザード「……。いえ、ラプンツェルさんがわかってくださったのならそれ以上は望みません。では仲直りのしるしに」スッ

ラプンツェル「うん!あくしゅ!なーかーなーおーりっ!はいっ!仲直りしたー!」ブンブン

シェヘラザード「はいっ。でもかかしさんとモルジアナには謝っておくんですよ?迷惑をかけていますからね」

ラプンツェル「うんっ!わかった!で、モルジアナって誰!」ニコニコ

親衛隊アニキ「なんだかよくわかんねぇが、仲直りしたってことは良いことだ。おい、嬢ちゃんにも何か飲み物を出してやれ!」

シェヘラザード「あっ、お気遣いなく。突然押し掛けたというのにもてなして貰っては…」

親衛隊「いいんだよ!ラプちゃんは俺らの友達!友達の友達は友達だからな!」

シンドバッド「そうだよな!いやぁ二人が仲直りできて良かったぜ。俺も二人の友達だから俺にも酒を頼むぜ」

親衛隊「シェヘラちゃんお待ちどうー!ノンアルでよかったかな?」ニコニコ

シンドバッド「おい無視はやめろ」

528: 2016/07/11(月)00:33:24 ID:fIW
・・・しばらくして

親衛隊アニキ「おいおい待て待て!?余所の王妃だぁ!?嬢ちゃん、案内付けてやるから今すぐ戻れ!そんな高貴な奴が居ていい場所じゃねぇぞここは!」

シェヘラザード「ご心配感謝します、ですが私はそんな大層なものではありませんよ。いざとなればシンドバッドも居ますし」

親衛隊アニキ「しかしなぁ…わざわざ治安の悪い場所にくるんじゃねぇよ。盗賊には女子供だろうと容赦ねぇ卑劣な奴も多いんだぞ」

シェヘラザード「説得力に欠けますね、それが真実ならば私は今頃拘束されているはずですよね?」

ラプンツェル「アニキやみんなはもうとーぞくじゃないから大丈夫!それにみんな優しいよ!」ニコニコ

親衛隊アニキ「ラプちゃんがそう言ってくれるのはありがてぇが…」

シェヘラザード「ところでラプンツェルさんは彼等に新しいお仕事を探してあげるのだと言っていましたね。あてはあるのですか?」

ラプンツェル「えーっとね、お友達みんなに聞いてみようかなって思ってるしパパにも相談してみる!あっ、シェヘラザードのお城でお仕事余ってない?みんな強いらしいからお城の兵士とか!」

親衛隊アニキ「ラプちゃん、気持ちはありがたいがいくらなんでも余所の国の盗賊団崩れを雇うような王族はいねぇよ。あんまり嬢ちゃんを困らせるようなこt」

シェヘラザード「そうですねぇ、陛下に相談してみましょうか?」

親衛隊アニキ「そんな簡単に決めて良いことじゃねぇだろ!?見ず知らずの連中をお前…」

ラプンツェル「うん、お願い!あとあとシェヘラザードは頭良いからみんなが新しいお仕事見つけるいい方法考えつくよね?なにかないかな?」

シェヘラザード「うーん…そうですねぇ…」

シェヘラザード「やはり新たな仕事に就くのなら盗賊時代の行為は清算しておくべきですね」

529: 2016/07/11(月)00:34:54 ID:fIW
ラプンツェル「とーぞくじだいのこーいをせーさん…?よくわかんない!」

親衛隊アニキ「シェヘラの嬢ちゃんは俺達に罪を償えって言ってるのさ、散々盗みも頃しもしてきた俺らが今更普通の暮らしを手に入れようなんて虫がいい話だからな」

シェヘラザード「どんな事情があったとはいえ窃盗は犯罪です。犯罪を犯せば償うのは当然です」

親衛隊アニキ「あぁ、それは当然の報いだ。だが…自首なんかすりゃいつ牢から出られるか…そもそも出られるかどうかも怪しい」

ラプンツェル「シェヘラザードー、何とかならない?みんなホントは良い人だからろーやはかわいそうだよ」

シェヘラザード「そう言われましてもこの国でも窃盗は罪なのですよね、なら法に則った罰を受けるべきです。ですが…この国から出て行けばもうこの国の法律に縛られることはありません」

ラプンツェル「そっか!別の国に逃げよう!」ポンッ

親衛隊アニキ「あんたら王族なのにとんでもねぇこと言い出すな…要するに高飛びじゃねぇか」

シェヘラザード「厳密には違います、罰からは逃げますが罪を捨てる訳ではないのです。法律ではなくあなた方が出来る方法で今までの罪を償えばいいのでは無いでしょうか?」

親衛隊アニキ「まぁ…そうするしかねぇけどな、この国じゃ働き口はみつからねぇだろうし捕まれば牢屋だしな」

ラプンツェル「じゃあきまり!みんなで別の国にお引っ越ししてそこから仕事探そう!」

シェヘラザード「ところでアニキさん、盗品はまだどこかに保管してあるのですか?」

親衛隊アニキ「あぁ…金はほとんど使っちまったが宝石やら何やらはまだ随分残ってる」

シェヘラザード「出来ればそれは元の持ち主に返しておきたいですね。それは可能ですか?」

530: 2016/07/11(月)00:35:41 ID:fIW
親衛隊アニキ「盗賊やめるなら盗んだ物は元の場所に…ってか。全てってわけにはいかねぇが…大体はどこから盗んだのかわかると思うぜ」

シェヘラザード「ならば返せるものだけでも返しましょう。返したからといって罪が消えるわけではないですが、その方がいいです」

親衛隊アニキ「そうだな、じゃあお前等!宴が済んだら早速お宝返却開始するぞ!」

親衛隊「へい!しかしアニキ…そうするとアレ、どうします?」

親衛隊アニキ「あぁ、アリババに奪われた宝物か…」

シェヘラザード「まぁ、何者かに宝物を奪われたのですね。ならばそれも取り返した上で元の持ち主に返却しましょう」

シンドバッド(なるほど、名目は違えど盗品を取り返すって部分は同じ。それなら自然にこいつ等をアリババの所へ誘導できるってわけか)

親衛隊アニキ「そうだな、それがいい。だがアリババには頭の切れる奴が付いててな、一筋縄じゃいかねぇだろう…親分もいねぇしな。嬢ちゃん、あんたも頭が良さそうだ。知恵を貸してくれねぇか?」

シェヘラザード「それならば亡くなった親分代わりにそちらのシンドバッドをお貸ししましょう。こう見えて機転も利いて戦いの腕も立ちますよ、皆さんの役に立つはずです」

シンドバッド「来た来た来やがった…はいはい!やりゃいいんだろ!こうなったのは俺のせいだし盗賊の親分でもなんでもやってやるよ!」

「は?お前が親分とかねぇわ」
「女の子ならいいけどよぉ、でもラプちゃんやシェヘラちゃんを危ない目にはあわせらんねぇし…」
「いくら罪滅ぼしのためだっていってもこんなチャラ男の下につくとか形式上だとしてもごめんだわ」

シンドバッド「こいつら…」

531: 2016/07/11(月)00:37:40 ID:fIW
シンドバッド「お前等俺を舐めるのも大概にしろよ!俺はあの怪鳥ロックを従える優秀な船乗りなんだからな!」

「それロック鳥がすげぇだけだろ、勘違いすんなよ」
「自分で優秀とか言う奴は大概雑魚だよな(笑)」
「つぅか丘の上で船乗りの経験とか生かせねぇだろ、結局一般人じゃねぇかこいつ」

シンドバッド「畜生…おいラプンツェル!こいつらに俺のすごさ教えてやれ!俺は気がすすまねぇが親分代わりはしねぇといけねぇんだ!」

ラプンツェル「うん!えーっとね、シンドバッドはね!女の子好きでいっつも女の子のことばっかり気にしてるけど強いし頭もちょっとだけ良いからみんなの親分の代わり出来ると思う!だから宝物返す間だけ親分にしてあげてよ、ねっ?」

「ラプちゃんがそう言うならもちろんだよー!なぁみんな!」
「おうよ!それに考えて見りゃ親分って目立つし命も狙われやすいから親しい奴より案外どうでもいいこいつのほうが適任かもな!」
「あぁ、確かに。こいつならうっかり別の盗賊に殺されようがどうでもいいしな!」

シンドバッド「……」

親衛隊アニキ「よし、じゃあ頼むぞ兄ちゃん。ありがとなシェヘラの嬢ちゃん、色々と知恵を貸してくれてよ」

シェヘラザード「いえいえ。ただ…あなた達が盗賊をやめようとしていることが周囲にバレては余計なトラブルを招くでしょう。あくまで内密に…盗みを働くふりをして返却した方がいいと思います」

親衛隊アニキ「そうか、そうだな!よし!ここが正念場だぞお前ら!きっちりケジメ付けてまともな生活送れるように頑張るぞ!」

オォォーッ!

532: 2016/07/11(月)00:39:46 ID:fIW
・・・

親衛隊アニキ「よし、じゃあ宴はここまでだ!ちゃっちゃと片付けて仕事に移るぞ!」ヘーイ!

ラプンツェル「あっ、じゃあ私もお手伝いするよ!」

シェヘラザード「私もお手伝いします。この量ですからね、手は多い方がいいでしょう」

親衛隊アニキ「いやいや、二人には世話になっちまったからな。座っててくれよ。それにシンドバッドの兄ちゃん、気ぃ悪くしねぇでやってくれな、こいつら暗い青春しか送ってねぇからあんたのようなモテそうな男に厳しいんだよ」

シンドバッド「ったく、何で俺がムサい盗賊どもの面倒を…」

ラプンツェル「あっ、違うよ!とーぞくじゃなくてしんえーたい!」

シンドバッド「あぁそうだったな。まぁ俺が代役してこの世界が消えないならそれで良いけどよぉ…もうちょっとなんとかなんねぇかなあいつら」

シェヘラザード「それじゃあシンドバッドに任せて私達は帰りましょうかラプンツェルさん。あなたの特訓をどうするかも考えなければいけませんし」

ラプンツェル「そうだった!じゃあ帰るねアニキ!また遊びに来るしみんなのお仕事ちゃんと探しとくからみんなにも頑張ってねって伝えといて!」

親衛隊アニキ「あぁ、俺たちなりの罪の償いを見つけて必ずそれをやり遂げてみせる。そしてラプちゃんの親衛隊として胸張れるようになるからよ、またいつでも来てくれ。みんな喜ぶ」

ラプンツェル「うん!みんな友達!友達はいつでも会えるんだよ!だからまたね!」

親衛隊アニキ「あぁ、あんたに会えて良かったよラプちゃん。そんじゃあまたな」

シェヘラザード「ふふっ、では行きましょうか。帰りは魔法の絨毯で空の旅です、だからといってあまりはしゃがないようにしてくださいね?」

ラプンツェル「はーい!よーし、次来るときはもっともっと強くなってるようにしよっ!」ニコニコ

・・・

543: 2016/07/18(月)00:36:50 ID:2mQ

舌切り雀の世界 雀のお宿

舌切り雀「えっ?この世界にあの有名な『桃太郎』が来てるってんですかい?そりゃすげぇ!」

雀の長老「これ、舌切りの!日ノ本一の英雄を呼び捨てにするとは何事じゃ!様を付けんかい様を!」

舌切り雀「へぇすんません。そんで…本当なんですかい?その桃太郎サマが来てるってのは?」

雀の長老「うむ、偵察隊からの確かな情報じゃ。お供として有名な三匹は不在じゃが素性が解らぬライオンを引き連れているとの報告もあるのぅ」

舌切り雀「ほー…まぁ鬼退治のお供が犬猿雉って完全に舐めてますもんね。桃太郎もようやく本気を出したってとこですかね」ハハハ

雀の長老「様を付けろと言うに!まったく…舌を切られても相変わらず口に減らない奴じゃ、お前はもう少し言葉を選んでじゃなぁ…」

舌切り雀「まぁまぁ、今日は小言を聞くために来たんじゃありやせんから。お説教はまたの機会ってぇ事で、じゃないとまた抜け羽が増えますぜ」ハハハ

雀の長老「そうやって思ったことを口にするのを控えろと言うておるんじゃい!お前には雀のお宿の一員だという自覚と気配りが足りん!」

舌切り雀「やだなぁ、長老忘れたんですかい?あっし、雀のお宿の一員として、お世話になったご主人をキチンともてなしてお土産のつづらもバッチリ渡したじゃねぇですかい。完璧な仕事でしたぜありゃあ」

雀の長老「お前はその後に訪れたご婦人にとんでもない仕打ちをしたじゃろ!よりによって世話になった相手に魑魅魍魎の入ったつづらを渡すなど宿始まって以来の不祥事じゃ!」

舌切り雀「あのクソババァはあっしの舌を切り落としたんですぜ!?そのくせ強欲にももてなしを要求しやがって…ありゃあ当然の報いですぜ!」

雀の長老「阿呆!そもそも舌を切られたのはお前が勝手に糊を食い尽くしたせいじゃろうが!」

舌切り雀「まぁ…うん…いやいや、そうだとしても舌を切るなんざやりすぎだ、あっしがババァに復讐をするのは当然ですぜ!」

雀の長老「まったく…そういう考えじゃから自覚が足りないというんじゃ。舌切りの、ワシ等が営む雀のお宿とはどういうものか言うてみよ。きちんと理解しているかの?」

544: 2016/07/18(月)00:39:06 ID:2mQ
舌切り雀「当然ですぜ!ほら、あれ…客をもてなす宿!来た客をもてなしてつづら渡して…つう感じで…へへっ」

雀の長老「…良いか?我々が作っているのは癒しの空間なのじゃ。訪れた人を歓迎し心尽くしのもてなしをすることで理不尽や不条理のまかり通る社会で疲弊した心と体を癒す場所…それが雀のお宿」

雀の長老「一時だけでも慌ただしい日常から離れて安らいで頂き、帰り際にはお土産のつづらをお渡しする。そして笑顔でご帰宅なさるお客様の笑顔が何よりの報酬なのじゃ。決して復讐に利用して良い場所ではない」

舌切り雀「えーっ?じゃあなんで魑魅魍魎の入ったつづらとか用意してるんですかい?財宝より化物を選ぶ変態用ですかい?」

雀の長老「違うわい!あれは非力な我々が外敵から身を守るための護身用つづらじゃ!お土産用ではない!」

舌切り雀「あーなるほど!てっきり宿でベロンベロンになってゲロる客とか横柄な態度のクソみてぇな客をぶちのめす為かと思ってやした!はははっ!」

雀の長老「まったく…お前のような未熟者が何故このおとぎ話の主人公なのかのぉ…」

舌切り雀「ははっ、なんでですかね?」ヘラヘラ

雀の長老「笑い事ではない!偵察部隊からの報告によると桃太郎様はこの雀のお宿をめざしているようじゃ。おそらくは同じ主人公であるお前に何かしらの協力を求めるためじゃな」

舌切り雀「桃太郎があっしに用事?えーっ、正直相手するの面倒ですぜー?」

雀の長老「様を付けろと言うに!あと面倒とか本人の前で決して口にするでないぞ!」

545: 2016/07/18(月)00:40:49 ID:2mQ

雀の長老「おそらく、桃太郎様がお前の元へやってくるのは昨今のおとぎ話の世界を取り巻く現状に関連しておる。お前も現在おとぎ話の世界がどのような状況にあるかよく知っているだろう?」

舌切り雀「そりゃあもう。前にあっしの所に来た鬱陶しい白鳥と女版一寸法師みてぇな連中から詳しく話を聞きやしたから!アリスが暴れて世界がヤバい。ってなもんですよね?」

雀の長老「言葉選びはさておき…まぁそうじゃ。本来ならば我々もおとぎ話の世界の住人として、好き勝手しているアリスに立ち向かうべきじゃが…」

舌切り雀「そりゃ無理ってなもんですわ、あっしらは非力でちっぽけな雀ですぜ?」

雀の長老「如何にも。口惜しいかな…我々は戦うことなどできん、出来ることと言えば自分たちだけの力でこの【舌切り雀】の世界を守りきり、他の世界の方々の手を煩わせないことくらい」

雀の長老「しかし、詳しい理由は解らぬが桃太郎様はこの宿に…お前に協力を求めてやってこられる。これは喜ばしく、誇らしい事じゃ」

舌切り雀「アリスと戦う力を持つ桃太郎に協力できりゃあ、間接的つっても世界を守る戦いに一役買えるから、ですかい?」

雀の長老「左様。非力な我々でも力になれることがある、これほど嬉しいことはない。じゃから舌切りの、桃太郎様が訪れたら出来る限りのおもてなしと協力をする事、良いな?当然ワシ等も出来ることはするでな」

舌切り雀「えーっ…それあっしじゃないとダメですかい?ほら、あっし口も悪いし短気だしあんまり接客って向いてないと思うんd」

雀の長老「自覚しておるのならなんとかせい!お前は主人公じゃろ!」

舌切り雀「いや、そんなこと言われてもそれ現実世界の奴が勝手に決めたことですぜー?あっしに言われてもねぇ?」

雀の長老「言い訳無用じゃ!とにかく桃太郎様のお相手はおまえに任せるでな。しっかりと準備を整えて、さっさとお出迎えにあがらんか!」

546: 2016/07/18(月)00:43:27 ID:2mQ
舌切り雀の世界 雀のお宿から少し離れた森

舌切り雀「長老の話だとそろそろこの辺までたどり着いてんじゃねぇかって話だけどよぉ…桃太郎って強いんだろ?迎えなんかいるのかねぇ?」

舌切り雀「しっかし面倒な事になっちまったなー、あっしが日ノ本一の英雄の接待かぁー…面倒な上に気が重いわなぁー…接待しろつってもなぁ…何しろってんだよ」

舌切り雀「糊食っただけでブチキレるババァとか、わざわざ森の奥まであっしを探しに来たご主人とかもそーだけど、人間の考えってのはイマイチわかんねぇしなぁ…」

舌切り雀「とりあえずあれだ、好物はきびだんごだろうな。厨房の連中にクッソ大量に作っとけって言ったからまぁ問題ねぇだろ」

舌切り雀「しっかしあっしに何の用事なのかねぇ…確かに日ノ本が舞台だって共通点はあるが時代も場所も違うしそもそも世界が違うってのに、何頼まれるんだか知らねぇけどさ」

舌切り雀「まっ、どっちにしろ下手に出てやるか。鬼を倒す程だから相当な手練れでよ、そんでお高く止まってる偉そうな野郎だろうしなー…んっ?」

ドタドタドタ

行商人「うわああぁ!だ、誰か助けてくれぇ!」

流浪の侍「逃がしはせん…!悪いが荷は全て置いていって貰おうか…さもなくば斬る!」チャキッ

舌切り雀(うわー、物騒になっちまったなこの辺も。野武士か落ち武者か…どっちにしろ商人にゃ気の毒だがあっしにはどうにもできねぇ)

行商人「そ、そいつはできねぇ!商品を渡しちまったら村で俺を待ってるお客に申し訳ねぇ!だから勘弁しちゃくれねぇか!」

流浪の侍「…拙者の知ったことではない。こちらも命を繋ぐには銭が必要…荷を渡す気がないというのならば、お主を頃して奪うまで…!」

行商人「くっ、もう逃げ場がねぇ…ここまでか!村の衆、すまねぇ…!」

547: 2016/07/18(月)00:46:16 ID:2mQ
流浪の侍「退路は断たれた、観念するがいい…!」ググッ

ビュオンッ! ガキィィンッ!!

桃太郎「…罪無き商人を襲うとは不届きなり」グググッ

行商人「た、助かった…!」

流浪の侍「馬鹿な…拙者の太刀が防がれただと!?」

桃太郎「腰に携えた刀、そしてその身なり、侍としての器は整っているようだが…肝心の中身が伴っていなければ侍とは呼べぬ、素人同然」

流浪の侍「拙者を愚弄するか…!主を失おうとも拙者は侍だ、拙者が素人だなどという戯れ言…撤回して貰おう!」ジャキッ

桃太郎「確かに刀は相当な業物のようだが…信念無き刃などナマクラ刀にも劣る、そのような棒きれで斬れる物などありはせん」

流浪の侍「どこまでも拙者を愚弄するというのだな…貴様が相当な手練れだというのなら、一切の容赦はせぬ!」ダダッ

ビュオンッ! スッ

桃太郎「…言ったであろう、信念無きお主では拙者を斬ることは叶わぬ。早々に去るがいい」

流浪の侍「くっ…堕ちようとも拙者は侍!いくら貴様が強かろうとそこまで言われながら背を向け逃げるなどできん!」ズバッ

桃太郎「退くもまた兵法…とはいえその心意気、悪くはない」ビュッ

流浪の侍「ぬぐぉ…峰打ちだと!?くっ、動けぬ…!侍同士の果たし合いに遠慮など…ひと思いに斬れ!」ドサッ

桃太郎「お主は斬るには惜しい。商人よ、この隙に逃げよ。護衛についてはやれぬが…大きな街道へ出ればもう案ずることもないだろう」

行商人「あ、ありがとうございます!助かりました!では私は失礼して…!」スタタタタ

桃太郎「さて…これであの商人は無事村へたどり着けるだろう。次は…お主だ」スッ

548: 2016/07/18(月)00:48:15 ID:2mQ

流浪の侍「ようやく斬る気になったか。命を捨てる覚悟など遠の昔に出来ている…!斬れ…!」

桃太郎「言ったであろう、斬るには惜しいと。しばらくすれば動けるだろう…もうあの様な真似をするのは止めることだ。お主が侍であり続けたいのならな。これは僅かだが…とって置くが良い」スッ

流浪の侍「銭だと…?このような施しをされるいわれはない!」

桃太郎「お主もかつては主君のために刃を振るう真の侍だったのだろう?」

流浪の侍「あぁ…だが主を失い、職を失った拙者にはもうこうするしか生きる道が無いのだ!」

桃太郎「拙者はそうは思えぬ。今は辛くとも歩みを止めなければいずれまた侍として刃を振るうことも叶おう。この路銀は…それを願う拙者の気持ちだ、受け取っては貰えぬか」

流浪の侍「……」

桃太郎「信念無き刃ではあったが、お主の剣術はなかなか見所が有るものだった。すぐにでもお主を必要としてくれる者は現れるだろう。では…拙者はこれにて」

流浪の侍「待て。お主、名はなんという?」

桃太郎「桃太郎。そう呼ばれている」

流浪の侍「桃太郎。拙者は侍だ、受けた恩義は必ず返す…!次に合間見えるときは名実ともに侍として…お主の前に参ずる!必ず、必ずだ」

桃太郎「うむ…承知した。いずれまた合間見えよう」スッ

549: 2016/07/18(月)00:52:02 ID:2mQ

・・・

桃太郎「……」スタスタスタ

舌切り雀(へぇー、さすがは日ノ本一だ。商人を助けたうえに堕ちた侍にまで気をまわせるなんてな、少なくともあの侍は盗人にならずに済んだわけだ)

桃太郎「……」

舌切り雀(ただ悪い奴をぶちのめすんじゃなくて改心させちまうなんてすげぇなあいつぁ!あっしなら速攻でぶちのめすってのに、接待にも俄然やる気出てきたってもんだ!)

桃太郎「……ライオン、そこの茂みにいるのか?もう良い、姿を見せて構わぬ」

ガサガサ

ライオン「ガルルゥ…」ノシノシ

舌切り雀(おっ、あれが例のライオンか。丁度良い、もうここで声かけちまって宿まで案内するか)

桃太郎「ライオンよ。今し方、流浪の侍に襲われていた商人を救ってきたのだが……」

舌切り雀「おーい、桃t」

桃太郎「うおぉぉぉっ!ライオン聞いてくれよマジで!あの侍思ったより強くてめっちゃびびった!!つーか最初刃受け止めたとき結構ギリギリだったからねあれ!?泣きそうなの我慢したの賞賛して欲しいくらいだっての!」

ライオン「だよねだよねぇ!?僕も茂みから見てたけどもう何度も目を覆っちゃったもん!見てるだけで漏らしそうになっちゃったよ僕ぅー!」




舌切り雀「は?」

550: 2016/07/18(月)00:53:57 ID:2mQ
ライオン「それにしても桃太郎さんいきなり飛び出してっちゃうからびっくりしたよもぉー…知らない世界で独りきりとか怖くて想像しただけでたてがみが抜け落ちちゃうよぉ…」

桃太郎「わかるわかる!すげー心細いもんなぁ…でも商人が襲われてたからさ、正直めっちゃ怖かったけど見過ごすわけにはいかないしさー」

ライオン「でもよかったよぉ。さっき桃太郎さんも言ってたけどいくら強くっても信念っていうのが無かったら何にも斬れないんだよね?だったら安心だよぉ」

桃太郎「いやいや!斬れるからね!?信念あろうがなかろうが刀振るえば大体斬れるし避け損なえば血まみれで氏ぬからね!?」

ライオン「えぇっ!?でもこれさっき桃太郎さんが言ってたんだよぉ!?あれ嘘だったのぉ!?」

桃太郎「嘘じゃないって!あれはなんていうかこう…精神的な?心意気みたいな?なんかそういうアレで…」

ライオン「そうだったんだぁ…他にもいろいろカッコイイ事言ってたから実は余裕があるのかなぁなんて思っちゃったよぉー…」

桃太郎「ないない!余裕とか微塵もないから!ほんと戦ってる最中ももう英雄やめて柴刈りで生計立てたいと思ってたし!」

ライオン「あっ、それはいいねぇ!平和が一番だもんねぇ~」

桃太郎「ほんとそれ。早いところアリスを何とかして平和な村で暮らしたいー、最近ちょっと畑とか欲しいなーって拙者思っててさー、良い土地探して貰うかなー」

舌切り雀「……」

551: 2016/07/18(月)00:55:35 ID:2mQ
桃太郎「でもまぁみんなも頑張ってるしアリス倒すのは頑張るけどさ。っていうかもうそろそろ到着しても良さそうなんだけどなぁ…えっと、地図地図」ゴソゴソ

ライオン「この世界の主人公の雀さんの飼い主だったお爺さん、丁寧に地図描いてくれて良かったねぇ」

桃太郎「ありがたいよね。でも言いにくいけど達筆すぎて字が読めないんだよ…なんてよむんだろこれ『大きな…蜂の巣に気を…つけるべし』かな?……はぁっ!?そんなの口頭で言ってよぉぉ!!こえええぇぇぇ!!!」

ライオン「だ、駄目だよ!蜂さんは騒ぐと寄ってくるんだってかかしが言ってた!静かにしようよ!」

桃太郎「マジでか!わかった、静かに静かに…な?」ヒソヒソ

ライオン「はーい、そっと森を抜けようね」ヒソヒソ

桃太郎「蜂はなぁ…マジでヤバいから!うちの村でも蜂に刺されて氏んだ奴いるからね?マジで気をつけよう、マジでヤバいからね蜂は」

ライオン「うんうん、僕とかほとんど裸だから刺され放題で怖いよぉ~」

桃太郎「ライオンを覆えるような布無いしなぁ…でも拙者は怖いから顔覆おうかな…蜂ヤバいし」

ライオン「えぇーっ!ずるいよぉー!蜂はヤバいんでしょぉ!?僕も何か欲しいよぉー!」

舌切り雀「テメェ等ァ!男が蜂がヤベェ蜂がヤベェって…つまんねぇことで騒ぐんじゃねぇ!それでもテメェ等男かァァ!!」

桃太郎「うわああああぁぁぁ!!!!」ビクゥーッ
ライオン「で、出たあああああぁぁぁ!!」ビクゥーッ

552: 2016/07/18(月)00:58:22 ID:2mQ
舌切り雀「うるせぇぇ!何も出てねぇってんだ!ったく、どうなってんだ英雄と百獣の王が実はヘタレだったってぇのか?」

ライオン「も、桃太郎さん!この雀さん喋ってるけど…日ノ本の雀さんは喋るの?」ヒソヒソ

桃太郎「喋らない喋らない!雉以外で喋る鳥なんてうちの世界にもいないって!多分……突然変異じゃないのか?」ヒソヒソ

ライオン「突然変異!ならしかたないねぇ…」ヒソヒソ

舌切り雀「違ぇ!あっしはこのおとぎ話【舌切り雀】の主人公、だから喋れるだけだ。ライオン、オメーと同じだ」

桃太郎「ちょ、ちょっと待って…じゃあお主は拙者のこと知って……?」

舌切り雀「おう、オメー桃太郎だろ?でもまぁまさか日ノ本一の英雄桃太郎があんなヘタレだとは思わなかったがなぁ」

桃太郎「……」

舌切り雀「……?なんだってんだ、急に黙ってよぉ」

桃太郎「ヘタレというのは何の事だろうか舌切り殿。拙者は鬼退治の英雄桃太郎!そんな拙者がヘタレ?舌切り殿は何か幻でも見たのではないか?」キリッ

舌切り雀「今更キリッとしたとこで誤魔化されるわきゃねぇだろが!このドンブラコ野郎がァァ!!」

桃太郎「ひえっ、すいませんっ!」

553: 2016/07/18(月)01:00:41 ID:2mQ
舌切り雀「おい、ドンブラコ。そっちのライオンは何者だ?つーかオメー等の目的はなんだよ?」

桃太郎「あっ、拙者の名は桃太郎で…」

舌切り雀「オメーみたいな流されやすそうな野郎はドンブラコで十分だろうがァァ!!」

桃太郎「ひいぃっ!ラ、ライオン!早く自己紹介したげて!この雀すげぇ怖い!」

ライオン「あっ、あの…僕はその【オズの魔法使い】のライオンでその…よろしくお願いします」ペコペコ

舌切り雀「よろしく頼む。で、雀のお宿を目指してるってぇ聞いたぞ?このあっしに用があんだろう?何の用事か教えて貰おうか」

桃太郎「うむ。実はお主に折り入って頼みたいことがあるのだ。その頼みというのは…」

舌切り雀「何を格好付けてやがんだテメェ!」

桃太郎「い、いや…拙者はキリッとしてないと実力出せないって言うか…あと体裁とかイメージとか色々あるから人前ではキリッとするようにしてて…」

舌切り雀「普通に喋れ。ヘタレが取り繕ってるみてぇで腹立つ」

桃太郎「な、なぁライオン…ちょ、ちょっと言いすぎじゃない?いくらなんでも…」ヒソヒソ

舌切り雀「文句があんならあっしに直接言えばいいだろうがぁ!ヒソヒソすんじゃねぇぇ!!何の用事でここに来たのかさっさと言えこのヘタレドンブラコ!」

桃太郎「ひぃぃっ!もおおぉぉ!なんなのこいつううぅぅ!!!もうマジ怖いいやだもう拙者ああああぁ!!」

554: 2016/07/18(月)01:03:29 ID:2mQ
・・・

舌切り雀「なるほどねぇ…大体事情は理解した。とりあえずお前等は本物で、アリスを倒すための修行でこの世界に来たってぇんだな?」

ライオン「う、うん。そうなんだよぉ…ねっ、桃太郎さん?」

桃太郎「そ、そうそう。お主のつづらは魑魅魍魎を出せるって友人から聞いて…ちょっと協力して貰えないかなぁ…って」

舌切り雀「あっしのじゃねぇけどな。まぁ良いだろ、お前等がヘタレだってのはどうも納得いかねぇがアリスを倒す為ってなら協力してやらぁ」

桃太郎「おぉ!かたじけない!できればもうちょっと優しいしゃべり方にしてくれるともっとありがたいんだけど…」チラッ

舌切り雀「でもどうしてこの世界なんだ?他の世界には鬼とか怪物とかいるだろうしそういう奴らを征伐した方が話が早いんじゃねぇか?」

桃太郎「雀に無視された…」ガビーン

舌切り雀「まぁさっきはヘタレだってバカにしたけどよぉ、修行のために魑魅魍魎に立ち向かおうって気概は流石は桃太郎って所だな、そんくらいの相手じゃねぇと修行にならねぇってか」

桃太郎「そ、それはどうも…。修行!そう、修行の為にね!強い相手と戦わないと意味ないからね!ははっ…」

舌切り雀「おっ、わかってるじゃねぇか!ビビりだがやるときはやるって感じかぁ?少しは見直したぜ」

ライオン「うんうん!でも協力して貰えて良かったねぇー…雀さんのつづらから出てきた魑魅魍魎ならもしも危なくなっても引っ込めてもらえるし、これで最初の予定通り怪我することなく安全にしゅぎょうできるねぇ」ニコニコ

桃太郎「ばっ…なんでそういうこと言っちゃうんd」

舌切り雀「ドンブラコ」

桃太郎「は、はい…」

舌切り雀「正座」

桃太郎「わかりました…」

555: 2016/07/18(月)01:06:21 ID:2mQ
舌切り雀「修行するには強敵じゃないと意味がない。でも本気の戦いだと怪我をするかもしれないし氏ぬかもしれない。だからいざという時引っ込められそうって事でうちのつづらを頼った…つうことか?」

桃太郎「はい…」

ライオン「ご、ごめんね桃太郎さん…」

桃太郎「い、いいよ。事実だし…」

舌切り雀「事実なのが問題なんだろうがァ!傷付くのが怖いからいざってときにやっぱり無しって出来る修行を選ぶって…どう言うことだテメェなめてんのか!」

桃太郎「すいませんっ!なめてません!」

舌切り雀「あっしはな…嫌いなもんが3つあるんだ」

舌切り雀「ひとつは調子に乗ってるクソババァ。もう一つは和ばさみ。もう一つ、なんだかわかるか?」

桃太郎「さ、さぁ…なんですかね…」

舌切り雀「オメーみたいな男のくせにビクビクしてるヘタレ野郎だァー!男ならもっと堂々としろこのキビダンゴ野郎!」バンッ

桃太郎「ひぃっ!」

556: 2016/07/18(月)01:09:56 ID:2mQ
舌切り雀「おい…ひとつ気になってたんだがよ。お前が背負ってる旗はなんだ?なんて書いてあるか読んで見ろ」

桃太郎「あっ、この旗ですか?これは『日本一』ですね」

ライオン「確かアリスちゃんとの戦いが決まってからお爺さんが新しくこさえてくれたんだよねぇ?」

桃太郎「そうそう、じーちゃんばーちゃんには内緒にしてたんだけどさ、心配するから。でもお供がバラしちゃってさぁー、そしたらじいちゃんとお供が協力して旗作ってくれたんだよ!ばぁちゃんは得意のキビダンゴ作ってくれたし、気を使わせて申し訳ないんだよなー」

ライオン「でも優しいよねぇ。家族ってこういうときありがたみを感じるよねぇ」

桃太郎「確かになー。流石にアリスの世界には付けていけないけどみんなの気持ちがこもってるからそれ以外ではなるべく付けようかなって」

ライオン「うんうん、それがいいよぉ」

桃太郎「そうだよなぁ?ははっ、ちょっとこっぱずかしいけど」

舌切り雀「何ほのぼのとしてんだ!おいドンブラコ、テメェは本当に日ノ本一なのか?」

桃太郎「えっ、そりゃまぁ…一応鬼倒してるしね、拙者…日ノ本一って名乗って良いかなって思ってるけど…」

舌切り雀「テメェみてぇなヘタレ野郎が…日ノ本一なわけねぇだろうが調子のんじゃねぇぞ!」

557: 2016/07/18(月)01:13:25 ID:2mQ
舌切り雀「お前の世界もそうだろうがこの世界も日ノ本なんだ。おめぇみたいな奴が日ノ本一を名乗るなんざあっしが許さねぇぞ!?」

桃太郎「す、すいません!すぐに外します!」

舌切り雀「男が一度掲げたもんをほいほい降ろすんじゃねぇぇぇ!!」

桃太郎「もおおぉぉぉっ!じゃあどうしろっていうんだよお前えええぇぇ!!!」

ライオン「お、落ち着いて桃太郎さん!」

桃太郎「だってあいつが…!あいつが無茶苦茶言うからさぁぁ!!」

舌切り雀「無茶じゃねぇよ。今のお前を日ノ本一と認めるわけにゃなんねぇが…だったら自他共に認める日ノ本一になりゃあいい」

桃太郎「えっ、なにそれどう言うこと…?」

舌切り雀「だからよぉ!お前や俺以外にも日ノ本が舞台のおとぎ話はいくつかあるだろ?今からそいつ等の所に行ってよぉ…お前が本物の日ノ本一だって証明して回れ」

桃太郎「他の日ノ本のおとぎ話の世界で…拙者のことを認めて貰う!?無理無理無理!」

舌切り雀「やる前から諦めんな!あっしがこれから連れて行く世界の主人公に認められたならつづらも貸してやるしお前を桃太郎だって認めてやる、修行にもなるだろ?」

桃太郎「そ、そうかもしれないけどさぁ…いやでもなぁ…」

舌切り雀「ウジウジせずにスパッと決めろやこのドンブラコ野郎がァァァ!!」

桃太郎「は、はいぃぃ!わかりました!やりますぅ!」

576: 2016/07/25(月)00:38:40 ID:WJF
金太郎の世界 足柄山

ライオン「あ、あの…雀さん、僕達ってもう世界移動してるんだよね?ここってもう【舌切り雀】の世界じゃあないんだよね?」オドオド

舌切り雀「おうよ、ここは既に別のおとぎ話【金太郎】の世界だぜ。それがどうかしたってぇのか?」パタパタ

ライオン「ううん、ただ周りの景色が雀さんの世界とすっごく似てるから不思議だなぁって…遠くに見える建物の造りとかそっくりだもんねぇ」

舌切り雀「そりゃあそうだ、あっしの故郷とここは別の世界に違いねぇ、だが同じ『日ノ本』ってぇ国を舞台にしてんだからよ」

ライオン「うぅーん…それなんだけど実は僕よくわかってないんだ。別の世界だけど同じ国…?この世界には雀のお宿は無くて…?桃太郎さんの家族も住んでなくて…?でもここは日ノ本で…うぅん?」

舌切り雀「あくまで舞台が同じってだけでそれぞれの世界は別モンだって事だ。あんまり難しく考えるこたぁねぇよ」

ライオン「そっかぁ、でもこういうとき頭が良かったらなぁーって思うよぉー、僕あんまり物知りじゃないから…もっと賢かったらあれこれ考えなくてもいいのになぁ」

舌切り雀「ハハッ!面白ぇ事言うなぁお前!【オズの魔法使い】で知識を求めてんのはお前じゃなくてかかしだろ?」ハハハ

ライオン「あははっ、そうだねぇー、僕が欲しいのは勇気なのに知識も欲しいなんて欲張りだねぇ~」アハハ

舌切り雀「おうよ、強欲なのはよくねぇぞ。あのババァみてぇに魑魅魍魎に襲われちまうかもしれねぇからなぁ~?」ケラケラ

ライオン「あわわ…僕は欲張らないようにしなきゃ!とりあえずは勇気だけ、勇気を手に入れることだけ考えようっと」ウンウン

舌切り雀「おう、それが良いぜぇ!…って言うかよぉ」チラッ

桃太郎「うわぁ…マジで来ちゃったよ…別のおとぎ話の『日ノ本』…ここの主人公に拙者を認めて貰う…?いやいや、無理だってマジで…」ブツブツ

舌切り雀「テメェはいつまでグダグダ言ってやがんだ!いい加減覚悟決めろやァァ!クチバシでガッてすんぞコラァァ!」ガッガッガッ

桃太郎「ひいぃっ!痛っ!痛っ!既にガッてやってるだろお前!もうなんなのこの暴力雀マジで嫌だもぉぉぉぉ!!」ヒイイィィィ

577: 2016/07/25(月)00:39:51 ID:WJF
桃太郎「怖えぇぇ…こいつマジで容赦ねぇ…怖えぇぇ…」コォォォッ

ライオン「その治癒能力本当に便利だねぇ。それにしても雀さんは桃太郎さんに対して特に厳しいよねぇ…も、もうちょっと優しくしてあげられないかなぁ…なんて思ってみたりするんだけど」チラッ

舌切り雀「こっちだってあんまりギャーギャー言いたくねぇんだぜ?でもなぁ…あっしが元々キツい性分だってのもあるけどよ、こいつの腐った桃みてぇな性格見てると我慢ならねぇんだよ。で、つい怒鳴っちまう」

桃太郎「腐った桃!?それ言い過ぎじゃない!?もうちょっと配慮した言い方g」ガーン

舌切り雀「雀ごときに怒鳴られてヒーヒー言ってるような男なんざ腐った桃以下だろうがァァ!」ガッ

桃太郎「痛いっ!雀ごときって言うけどお前気性も荒いし声もデカいから迫力すごいからね!?か弱さなんか微塵も無いからね!?」

舌切り雀「だからってビビっていい理由にはならねぇだろうが!オメェは仮にも日ノ本一を掲げてんだぞ?だったら誰に何を言われようが揺るがねぇ意識だの強いの気概があって当然じゃあねぇのか!」

桃太郎「うっ…一理ある…。確かにビビりなのは拙者の弱点だし…」

舌切り雀「国一番の英雄だろうがなんだろうが結局は人間だからよぉ、一つ二つ弱い部分があろうが隙があろうがそりゃ仕方ねぇよ。どんな偉業を成し遂げたところでそいつは神仏じゃねぇんだから」

舌切り雀「だがなぁ、オメェの場合はあまりに情けねぇ部分が多い!この際だから正直に言うがよぉ…お前の戦いぶりを初めて見た時はスゲェと思ったぜ。剣術に関しては日ノ本一ってのにあながち嘘じゃねぇと思ってるしな」

ライオン「わっ、やったね桃太郎さん!雀さん、誉めてくれてる!認めてくれてるよ!」ワチャワチャ

舌切り雀「ただし!こいつの場合は他がクソ過ぎて剣術の凄さが霞んでんだよ!戦いの後にやれビビっただの泣きそうだのと愚痴るわ…いい大人が蜂に怯えるわ…柴刈りで生計立てたいだの言って現実逃避するわ…些細なことでギャーギャー騒ぐわ…」

舌切り雀「挙げ句に雀なんぞに怒鳴られてすぐに謝るわで…どれだけ自分に自信がねぇんだオメェはよぉ!?」

桃太郎「ぐぬぬ…正直、否定できない…」

舌切り雀「だからそこで否定しろォォ!鬼退治を果たした英雄が何を雀ごときに言いたい放題言われてるんだ!そこをまずおかしいと思えェェ!」

桃太郎「た、確かに…」

578: 2016/07/25(月)00:41:29 ID:WJF
舌切り雀「あっしはオメェを日ノ本一とは認めないって言ったがな、ありゃあお前の立ち居振る舞いや精神面に不安が…すっげぇ不安が残ってるからだ!」

桃太郎「ええぇ…言い直してまで強調しなくても…。でも確かに言うとおりだよなぁ…拙者、素だとありえないくらい情けないし…」

ライオン「で、でもでも!桃太郎さん普段はキリッとしてるから大丈夫だよ!」

舌切り雀「大丈夫な訳ねぇだろうが!ヘタレな本性隠して取り繕ったところでなぁ…いずれボロがでるもんなんだよ!根本的な解決にはならねぇだろ!」

ライオン「ひえっ、そんな怒鳴らないでよぉ…」

桃太郎「いや…言い方はキツいけど舌切り殿の言うとおりだ。拙者は自分の武術に満足してるわけじゃないけど、精神面の弱さは本当にどうにかしないといけないなって思ってる」

舌切り雀「なんだよ、自覚はあるってぇ事か」

桃太郎「うん。もう本性バレたし開き直って話すけど…拙者は昔から自分に自信が無くて臆病でさ…鬼ヶ島の大悪鬼と対峙した時も自信が持てなくて、失敗するのが怖くて刀を振るえなかった」

桃太郎「でもさ、その時キモオタっていう友達のおかげで…拙者は勇気の出し方を知ったんだ。自分一人じゃ駄目だけど…拙者を頼って応援してくれる人達の為なら拙者は勇気を出せる。英雄でいられる」

舌切り雀「なるほどなぁ、だから周囲の目を気にしてキリッとしてるときだけは全力が出せるってぇのか」

桃太郎「うん、そういうこと。でも…近頃こんな風に考えてた。逆に言えば一人の時とか気心知れた家族友人と居るときはキリッとする必要がないから、もしそんな時襲撃されたら…実力を出せないんじゃないかって」

ライオン「桃太郎さん、そんな風に思ってたんだ…。でも確かにアリスちゃん汚い手も平気で使うからねぇ…」

桃太郎「だからさ、どんなときでも実力が出せるように…いつでも家族な友を守れるように、精神的な弱さの克服をしなきゃいけないってずっと考えていたんだけど…」

桃太郎「やっぱり拙者、筋金入りのヘタレなのかな。自分なりにいろいろしてみたけどうまくいかなくて」ハハハ…

579: 2016/07/25(月)00:43:01 ID:WJF

桃太郎「頭では解っててもどうしても逃げ腰になっちゃうって言うか…一度染み付いた性格はそうそう簡単には変えられないって言うか…情けない話なんだけどさ」

ライオン「そ、そんなことない!家族や友達のために勇気を出して頑張ろうってしてるのが情けない訳ないよ!ねっ、そうでしょ雀さん?」

舌切り雀「いいや。心構えは立派だがよぉ、結局自分を変えられてねぇんだろ?だったらなんの意味もねぇよ」

桃太郎「まぁそう言うかなって思ってたけど…やっぱ舌切り殿は手厳しい…」

舌切り雀「だが丁度良いじゃあねぇか!あっしはオメェのヘタレな所が気にいらねぇ。オメェは精神的に強くなりてぇ、目的とするところは同じなんだからよぉ」

桃太郎「確かに…精神的に強くなれれば拙者も日ノ本一に相応しくなれる。そうすれば舌切り殿も納得というわけか…」

舌切り雀「おうよ!だがオメェが言うように性格なんざそうそう変えられねぇってのも一理ある」

ライオン「じゃ、じゃあ一体どうやって桃太郎さんはもっと強くなるの…?」

舌切り雀「そうだな…よっし。おい桃、あっしはこれからこの【金太郎】の世界を含めていろんな日ノ本のおとぎ話にオメェ達を連れ回すって、さっき言ったよな?」

桃太郎「うん。拙者が日ノ本一だって認めて貰うために……あっ!もしかしてそれ中止にするっ!?」パァッ

舌切り雀「何を嬉しそうにしてんだオメェ!そうじゃあねぇ!当然、日ノ本のおとぎ話巡りは続行する!」

桃太郎「ですよね…そんな甘くないですよね…」

舌切り雀「当たり前だろうが!で、だな…これからお前は色々な奴に出会って日ノ本一だって事を認めて貰わなきゃなんねぇ訳だが…」

舌切り雀「その間、お前は一切格好付けるの禁止だ。どんな相手でも素の状態で接しろ」

580: 2016/07/25(月)00:44:21 ID:WJF
金太郎の世界 足柄山の山奥

熊「グルルゥ…グオオオォォォッ!」ダダダッ

金時「おっ、真正面からの突進か!お前は相変わらずみてぇだな!そういう分かり易い力のぶつかり合い、俺は好きだぞ!」ガシッ

熊「…っ!ガアァァ!」バシッ

金時「ハッハッハァ!そう易々と投げ飛ばされちゃあくんねぇか!だが、そうこなけりゃわざわざ都から修行に来た意味がねぇってもんだ!」ググッ

熊「……グルルゥ、グオォッ!」ガシッ

金時「うおっ、危ねぇ危ねぇ!もうあれから二十年近いってのに全然衰えてねぇな!だが俺も都で遊んでた訳じゃあねぇんだぞ!」ググッ

熊「……っ!」ズオォォッ

金時「ずええぇぇいっ!」ブオンッ

熊「クマァァァッ!!」ドサーッ

金時「ハッハッハァ!まずは白星一つ!相撲なんて久し振りだったが、意外と身体が覚えるもんだな!」

・・・

ライオン「ひ、ひえぇぇ…あの人熊と素手で戦って投げ飛ばしちゃったよぉ!?ものすごく強いみたい…」

桃太郎「ねぇ舌切り殿、やっぱ格好つけちゃだめ?熊倒しちゃう大男相手に拙者は素でいかなきゃいけないんでしょ?えぇぇ…ちょ、えぇぇ……」

舌切り雀「何を怖じ気づいてんだオメェ!素の状態のオメェを認めて貰うって所に意味があんだろが!そうすりゃ今より自信も勇気もつくだろ!オラ早く行くぞ!」

581: 2016/07/25(月)00:46:17 ID:WJF

舌切り雀「おい、金太郎ー!見てたぜぇ、相変わらずの怪力だなオメェは!」パタパタ

金時「んっ?その声…舌切りの!おぉ、久しいな!元気そうで何より!」ハッハッハ

舌切り雀「おうよ!へへっ、こうしてガキの頃みたいに熊と相撲とってると、とても都で活躍するお侍には見えねぇな金太郎!」ヘヘッ

金時「山に居ようが都に居ようが俺は俺、何も変わりはしないぞ!まっ、名は『坂田金時』に変わりはしたが『金太郎』の方が呼びやすいだろうからそうしてくれ!」ハッハッハ

舌切り雀「おう。ところでよぉ、今日はオメェにちょいと頼みがあんだよ。修行中悪いが…つき合っちゃくれねぇか?」

金時「おうっ!俺もお前もおとぎ話の主人公同士!何でも言ってくれ!」

舌切り雀「二つ返事で助かるぜ!おい、桃ライオン、オメェ等挨拶しろ。この世界の主人公…今は坂田金時って名らしいが、要するに金太郎だ。名前くらいは知ってるだろ?」

ライオン「あっ、はじめまして!ぼ、僕は【オズの魔法使い】のライオンです。あの、臆病で有名な…えへへ、よろしくお願いします」

金時「おぉ!あの西洋のおとぎ話の!よろしく頼む!」ニカッ

ライオン「う、うん。なんだかすんごくさわやかな人だなぁ…」

桃太郎「金時殿、お初にお目にかかかる。拙者h」キリッ

舌切り雀「おい」ギロリ

桃太郎「……えっと、桃太郎です。よろしく」ペコッ

582: 2016/07/25(月)00:48:58 ID:WJF
金時「おおっ!桃太郎というと現実世界の日ノ本で知らぬ者はいないという、あの鬼ヶ島の悪鬼を征伐したことで有名な日ノ本一の大英雄!」

桃太郎「いやいやいや!ちょっと持ち上げ過ぎだから!そんな大したもんじゃないから拙者!」

舌切り雀「堂々としてろ!オメェが悪鬼を倒したのは事実だろうが」

金時「ハハッご謙遜を!私はご紹介に預かった金太郎こと坂田金時と申す。まさかあの有名な桃太郎殿にお会いできるとは、感激です」ニッ

桃太郎「あっ、いや、そんな堅い感じじゃなくていいんで!もっと普通に頼みます、拙者ホントに大層な人間じゃないんで!」

金時「…? そう言うことならお言葉に甘えて楽にさせて貰おう!しかし桃太郎殿と会ってみたかったというのは本当なんだ、何しろ日ノ本一と名高い武人!同じ武人としては興味を持たずにはいられなくてな!ハッハッハァ!」バシバシバシ

桃太郎「ハハハ…って痛っ!肩!叩きすぎだから!」

舌切り雀「二人とも鬼退治の英雄だってのにこの差はなんなのかねぇ…」

ライオン「ねぇ雀さん、僕が聞いた話だと【金太郎】って男の子が主人公だったんだけど…あの金太郎さんは大人だよね?桃太郎さんよりもちょっと年上くらいだもん。それに…金太郎さんが鬼退治したって初耳だよぉ?」

舌切り雀「そりゃお前の知識不足だな、さてはあんまり【金太郎】の内容しらねぇな?」

ライオン「う、うん…金太郎さんの名前は知ってるけど内容まではちょっと…わかんない、ごめんね?」

583: 2016/07/25(月)00:51:07 ID:WJF
金時「ハッハッハァ!確かに現実世界でも俺の名は知っててもどんな内容かは知らないって奴が多いらしいからな!」

ライオン「ひえっ、聞かれちゃってた!?ごめんなさいごめんなさい!」

金時「気にしなくていいぞ、前に来た白鳥と親指姫にも『名前はメジャーなのに内容はマイナー』とか言われたしな。童の俺がお袋に貰った鉞(まさかり)を担いで熊に相手に相撲…ってのがよく知られてる話だよな!」ハハハ

ライオン「ぼ、僕が知ってるのもそこだけで…でも続きがあるんだよねぇ?」

舌切り雀「おう。金太郎はガキの頃から熊倒すくらい怪力だったからな、その力を見込んだ源のナントカって武士に雇われて都で侍になるんだよ」

金時「そうだな。それでいずれ都には酒呑童子っていう狂暴な鬼とその手下が現れるんだ、そいつを退治するのが俺の役割であり、この【金太郎】の結末なってことだ。まだまだ先の話だけどな」

桃太郎「すげぇ…じゃあ金太郎殿は鬼退治の英雄ってことか。うわーすげぇ人と知り合っちゃったなぁ拙者」

舌切り雀「オメェも鬼退治成功してんだろうが!他人事かテメェ!」

桃太郎「いやいや!そうは言うけど金太郎殿はひとりで鬼の軍勢を倒したんでしょ?拙者はお供も仲間も居たから、金太郎殿の方がすごいって!」

金時「いや、俺も一人じゃなく仲間の武士と共に戦う予定だ。それに鬼退治と言えば聞こえは良いが…毒入りの酒を使った騙し討ちなんでな、桃太郎殿の足下にも及ばんよ!ハッハッハァ!」

ライオン「そうなんだ…それでも十分すごいけど、桃太郎さんは真っ向から勝負して勝ってるから、どちらかって言うと桃太郎さんの方が鬼退治としてはすごいのかなぁ…」

舌切り雀「【金太郎】の内容がいまいち認知度低いのも、桃太郎の鬼退治の劣化版っぽからかもなぁ。オメェの鬼退治がすごすぎるからなぁ」ニヤニヤ

桃太郎「や、やめろそういうのは!なんか拙者のせいっぽい感じになっちゃうだろ!」

584: 2016/07/25(月)00:55:43 ID:WJF
金時「しかし桃太郎殿は思ったよりずっと親しみやすいな!もっとこう…力こそ正義!みたいなガチガチの武士かと思っていたぞ!」

桃太郎「いやむしろそういう人が一番苦手で…平和で優しい世界なのが一番だって思ってるしね、拙者」

金時「それは確かにそうだな!ところで桃太郎殿は何故この世界へ来たんだ?」

桃太郎「えーっと、実は拙者達近々アリスを倒しに……あっ、知ってるのかな?アリスのこと」

金時「うむ、数々のおとぎ話に危害を加えていると聞いた。本来ならば俺もアリスの企みを止める戦いに賛成したいが…この【金太郎】はまだ結末を迎えていない。出来ることはすると雪の女王と約束はしたけどなぁ…易々とこの世界を離れるわけにはいかない」

舌切り雀「まぁ基本的には自分の世界を守るのが優先だよな。戦いたくても何かと事情があって戦えないって奴は結構多いからよぉ」

桃太郎「その点、拙者のおとぎ話は結末を迎えてるから自由に動けるもんなぁ……えっと、それでまぁアリスと戦うことになったんだけど」

桃太郎「それにむけてちょっと精神修行をしたいなと思って、色々な日ノ本のおとぎ話を巡って拙者が日ノ本一だということを認めて貰おうかなって感じで…」

金時「ハッハッハァ!面白いことを言うなぁ桃太郎殿!俺が認めるまでもなく、お前さんは日ノ本一に決まっているだろう?何を今更!」

桃太郎「そ、そう?そう言って貰えるのは嬉しいなぁ。ねぇ舌切り殿、とりあえず金太郎殿は拙者が日ノ本一って認めてくれてるわけで…ひとまずこの世界での目標達成って事でいい、よね?」

舌切り殿「なぁ金太郎よぉ、お前は戦いもせずに評判だけでコイツの力を認めるのか?そりゃあ武士としてちょっとばかりどうかと思うぜぇ?」

桃太郎「ちょ、そういう余計なこと言わなくてもいいから…!」アセアセ

585: 2016/07/25(月)00:58:33 ID:WJF
金時「確かに…手合わせもせずに相手に力を見極めた気でいるなんて俺もまだまだだ!よぉし、桃太郎殿!俺と手合わせを願いたい!」

桃太郎「いやいやいや!金太郎殿は拙者を認めてくれてるんでしょ!?無意味な戦いはやめとこうって!お互いに戦いを控えた身なんだし命大事に!」

金時「むぅ…桃太郎殿が嫌だと言うなら無理強いするのも…」

舌切り雀「違うぞ金太郎。もう戦いは始まってんだ、桃太郎はこうしてお前が自分と戦うに相応しいか計ってやがるんだぜ?少し断る素振りを見せた程度であきらめる奴なんか戦うに値しないとか思ってんだぞコイツは」

桃太郎「ちょ…そんな訳ないだろ!?あっ、お前ワザとか!ワザと金太郎殿を焚き付けつるためn」

金時「そういう事だったか…やはり俺とは一回りも二回りも格上!鬼退治の先輩として胸を貸して貰うとしよう!」ドスドスッ

ライオン「あれ?金太郎さん、どこ行くの…?」

金時「なに、本気の手合わせならば素手という訳にもいかない。桃太郎殿が刀を使うのなら俺も愛用の武器で挑もうと思ってな!」

ググォッ

ライオン「う、うわぁ…!おっきい斧…あっ、鉞!それがお母さんに貰った奴?」

金時「いや、これは都の鍛冶屋に依頼した特注品でな。俺は刀よりもこっちの方が性に合っているからな!」

桃太郎「デカすぎじゃない!?その刃渡りなんなの!?それに柄も長いから刀じゃ間合い的に不利だって!今ならまだ間に合うからやめとこうって!」

金時「ハッハッハァ!桃太郎殿、お前さん程じゃないが俺だって腕には自信がある。それに強者と戦いたいと言うのは武士の常、いざ…参る!」

桃太郎「もおおぉぉ!なんで強い奴は決まって戦いたがりなの!?っていうか参るなよもぉぉ!!」

586: 2016/07/25(月)01:00:34 ID:WJF
桃太郎「でもここで逃げちゃ来た意味ないし…こうなった以上頑張るけども!金太郎殿!この手合わせで拙者が勝ったら日ノ本一だって事、マジで認めて貰うからね!?」シャキン

金時「勿論!だがこっちも本気でいかせて貰うぞ!酒呑童子征伐の前に鬼退治の英雄を倒す事が出来れば、俺も自信もって鬼退治に臨めるというもの!」

桃太郎「自信が欲しいのはこっちだっての!……って、うぉっ!こえええぇぇ!!」ヒュッ

金時「先手は取らせて貰ったぞ!どうやら流石のお前さんも鉞相手には戦いの経験が足りないみたいだな!」ビュオンッ

舌切り雀「あー、桃の奴…金太郎に先手許しちゃってんじゃねぇか」

ライオン「金太郎さん強いしあの斧おっきいもんねぇ…。でもあんなに大きい武器だと重たいだろうし、そうなると動きも遅くなって隙が出来ちゃうんじゃない?」

舌切り雀「まぁ見てろ、多分桃も同じ事考えてるんだろうが…そんなたやすい相手じゃねぇぞ金太郎は」

金時「ぜぇいっ!」ブオンッ

桃太郎(よっし、うまく避けれた!鉞みたいなデカい武器は強力だけど隙もデカい!しかも金太郎殿は巨漢だから鉞を降り終えたあとにでかい隙が出来……あれっ?)

金時「さぁて!もう一丁おぉ!」ビュオンッ

桃太郎「ちょ、なんで隙が…!っていうか金太郎殿、この巨漢でその素早さって……うおぉっ!隙ないじゃん!」ヒュッ

金時「ハッハッハァ!刀の方が小回りが効くだろうけどな、俺の怪力なら鉞でも木切れみたいに振り回せる!合間を縫って反撃なんかさせないぞ桃太郎殿!」

587: 2016/07/25(月)01:03:04 ID:WJF
ビュビュオン ビュビュオン ビュビュオン

桃太郎「マジかよ…あんなデカい鉞、掠っただけでもヤバそうだ…。避けてばっかりじゃダメだ、どうにかして動きを止めないと反撃できねぇ…」

金時「どうした桃太郎殿!この俺に手加減など無用!さぁいつでも攻撃してきてくれて構わないぞ!ハッハッハァ!」ビュオンッ

桃太郎「……っ!」

ライオン「あわわ…これまずい感じがするよぉ…ちょっとでも動きを止めないと…あっ!桃太郎さん!避けるんじゃなくて防御したらどうかな!?鉞を刀で受け止めて、そっから反撃するんだよぉ!」

舌切り雀「おい、素人が見よう見まねで余計な事を…」

桃太郎「それじゃ駄目なんだってライオン!こんな刃受け止めたら刀ごと真っ二つになるから!」ヒョイッ

舌切り雀「おっ、惑わされてうっかり防ぐと思ったがよぉ、あいつやっぱり戦闘に関してはそこそこ冷静っぽいな。あんな細い刀で鉞の刃をうけとめられるわけねぇ、相手が金太郎なら尚更な」

ライオン「ぼ、僕余計なこと言っちゃったね…でも、それじゃどうやって勝てばいいのかな!?桃太郎さん大丈夫かな?」

舌切り雀「心配いらねぇよ。あいつは豆腐みてぇな精神力だしすぐにビビる情けねぇ腐れ桃だが……」

桃太郎「防御は出来ない、刃を刀で受け止めるのもダメ、刀は金太郎殿に届かない…だったら狙うのは一カ所!」ヒュッ

ズパッ ガリッ

金時「…っ!俺を狙うでも刃を防ぐでもなく、鉞の柄を刀で受け流した…?」

桃太郎「柄の部分ならそんな力加わらないから受け流しつつ切れ込み入れていけば…そのうち使い物にならなくなる」ジャキッ

桃太郎「そんなにデカい刃なんだから柄にかかる負担だって相当なもんだ、拙者が勝つには…この一点を狙うのみいぃぃ!!」ヒュッ

舌切り雀「……武術に関してあいつは間違いなく日ノ本一だからな」

588: 2016/07/25(月)01:05:28 ID:WJF
・・・

桃太郎「これで……終わりだああぁぁ!!」シャキンッ

金時「くっ…これ以上柄で攻撃を受けるわけにはいかない、しかし攻撃の手を休めれば合間を縫って攻撃されるだけだ…!やむを得ないか!」ガガッ

ビッ ズドオォォッ

ライオン「鉞の柄が!折れた!」

舌切り雀「柄があのデカい刃を支えきれなくなっちまったか。勝負あり、ってところだなぁ」

金時「桃太郎殿、参った。俺の負けだ…まさか全ての攻撃を交わしつつ鉞を壊されるなんて考えてみなかった、今までそんな相手は居なかったからな、完敗だ。やっぱり日ノ本一の英雄は……」

桃太郎「……すっ」

金時「す…?」

桃太郎「すいませんでしたあああぁぁ!!手合わせなのに大切な武器壊してすいませんでしたあああぁぁ!!拙者もう必氏で…あの、弁償するんでホントすいません!」ペコペコ

金時「…ハッハッハァ!相手の心配までできるとは流石日ノ本一!弁償なんてしなくていい、おかげで貴重な体験が出来た!」

桃太郎「そ、そう…?いいならお言葉に甘えようかな…」

舌切り雀「おい金太郎、こいつ金持ってるから新しい奴買って貰えよ、鉞」

桃太郎「いやいや!別に金持ってないから!悪鬼から取り戻した宝物は返して回ってるからね!?まぁお礼とかで色々貰った分はあるけど…あれ実家だし」

舌切り雀「まぁ何はともあれ、実際に戦ってみてどうだったんだ?金太郎、こいつは文句なしの日ノ本一か?」

金時「あぁ、武術も機転も利く。戦って改めて実感したが…やはり日ノ本一は桃太郎殿にのみ許された称号だ、俺に文句を付ける理由はないぞ!ハッハッハァ!」

589: 2016/07/25(月)01:10:41 ID:WJF
金太郎の世界 足柄山

・・・

桃太郎「はぁ…マジで疲れた、どっと疲れた…」

ライオン「お疲れ様ー、でも金太郎さん認めてくれてよかったじゃない!鮭とかお土産に貰ったし」

桃太郎「素手で捕まえてたよな金太郎殿、人間技じゃないよあれ…」

舌切り雀「でもまぁ、よくやったじゃねぇか桃。その調子で次行くぞ」

桃太郎「マジでやっぱり次行くの…?金太郎殿相当強かったし、もういいんじゃ…」

舌切り雀「何甘えてんだ!金太郎は腕っ節は強かったが特別頭がいいわけでも妖術使えるわけでもねぇんだ!そういう奴らの所にもいかなきゃあな」

舌切り雀「候補としちゃあそうだな…冷気を操る雪女、動植物の声を聞き取れるじーさん、あと強そうな奴を誰か…あぁ、飯食わない嫁さんがいたな。この中なら誰がいい?」

桃太郎「なんなのその選択肢…でも金太郎殿メッチャ強かったし、次は簡単に認めて貰えそうなところが良いから…飯食わない嫁さんで、いい?」

舌切り雀「おう、わかった。【食わず女房】の世界な。じゃあパパッと行くぞ」

桃太郎「あれっ?楽な場所選んだらすげー怒鳴られるかなって思ったけど大丈夫だった…なんだ!舌切り殿もなんだかんだで拙者のこと気遣ってくれてるんだな、ありがたいなぁ」

ライオン「あ、あのさ…多分だけど【食わず女房】って…多分、楽じゃないんじゃ…っていうかその人確か……」

舌切り雀「おい、よけいなこと言わなくていいぞ。楽しようとした罰だ」ヒソヒソ

桃太郎「よっし、この調子で次も頑張るか!バンバン認めて貰って自信つけて、アリスを倒してみせるぞ!」ハハハ

605: 2016/08/01(月)00:27:23 ID:DD1
【九冊目、これまでのあらすじ】

・・・

食わず女房「逃げないでくださいよ桃太郎さーん。アタシお腹が空きすぎてもう我慢できませんよぉ…それとも後頭部に大口開けてる女はお嫌いですか?やっぱり気味悪いですか?」グオオォォ

桃太郎「うわああぁぁ!!別に外見的な理由で逃げてんじゃないから!お主が拙者を食べようとするから逃げてるんだってぇぇ!」タッタッタッ

食わず女房「そんなに怖がることないですよぉ、キチンといただきます言って感謝して食べますし…内臓も骨も残さず食べますから。それとも丸呑みはお嫌いですか?それなら油をたてて天ぷらにします、それならいいですか?」ドタドタドタ

桃太郎「調理方法とかどうだっていいんだよぉぉ!ライオン!舌切り殿!どうして相手が鬼女だって教えてくんなかったんだよぉぉ!このままじゃ美味しく頂かれるから助けてええぇぇ!」

舌切り雀「うるせぇ!オメェが【食わず女房】の世界に来るって決めたんだろうが!一人で何とかしろ!…おいライオン、あっし等はもっと離れとくぞ、まだ氏にたくねぇ」

ライオン「わ、わかったよぉ!ご、ごめんね桃太郎さん」スタタタ

桃太郎「あからさまに距離取るなよおおお!鬼だからって女の人は斬れないしさぁぁ!な、なにかちょこっとだけで良いからこの人の弱点とか教えてぇぇ!」

舌切り雀「おーい、食わず女房!そこの桃がお前の苦手なもん教えてくれってよ」

食わず女房「苦手なものはありますけど…それが原因で前の旦那さんを食べ損ねちゃったんでナイショです。でも好きな食べ物は人間ですよ、特に若い男性の生肉が一番好きです。ですから桃太郎さん、もう諦めましょうよー」ガアアァァ

桃太郎「諦めないに決まってんだろおおぉぉ!で、でもちょっと希望見えてきたぞ…何かは解らないけど弱点はあるってことでしょ!?考えろ拙者!考えろ拙者!」

舌切り雀「…さぁて、おいライオン。あいつ待ってる間暇だからこれまでのあらすじやるぞ」

ライオン「えっ」

舌切り雀「もう九冊目始まってから随分経つだろ、内容忘れてる奴もいるかも知れねぇからここらであらすじしといた方がいいだろ」

ライオン「う、うん…その通りなんだけど…こういうのってキモオタさんとティンクちゃんの役目じゃあ…」

舌切り雀「いいんだよこんなもん暇な奴がやりゃあ。ウダウダ言ってねぇでさっさとやっちまうぞ!」

606: 2016/08/01(月)00:29:39 ID:DD1
おとぎ話の世界を消滅させている黒幕・アリスに対抗するべく旅を続けていたキモオタ達
そんな彼らの元に飛び込んできたのはシンデレラが行方不明になったという知らせだった
どうやら彼女はアリスにさらわれてしまったのだという情報を得たキモオタ達はシンデレラ奪還を計画する
しかし、奪還が目的とはいえ【不思議の国のアリス】の世界に乗り込む以上、決戦は避けられない…作戦の決行を三日後に控え、キモオタと仲間達はシンデレラを救う力を手にするのために別々のおとぎ話の世界へ向かう

キモオタとティンカーベルは【雪の女王】の世界で女王を相手に戦闘の訓練を受け
裸王、ヘンゼルとグレーテル、司書、ドロシーは【裸の王様】の世界で各々に出来ることをより特化させるために動き
赤ずきん、赤鬼、人魚姫の三人は【ライオンとねずみ】の世界で仲間との連携を重視した特訓を重ね
ラプンツェルは【アラビアンナイト】の世界で戦闘訓練をしながら勉強に打ち込み
桃太郎とライオンは様々な日ノ本のおとぎ話を巡り精神修行を目的とした旅を…それぞれ続けていた。

最終決戦を前に研鑽を重ねるキモオタとおとぎ話の主人公達
だがアリスも自らの望みを果たすため着実に歩みを進めていたのだった…

舌切り雀「って感じかねぇ…他の連中も苦労してんだな。【雪女】の姉ちゃんも【聞き耳頭巾】のじーさんも一筋縄じゃいかねぇ性格してっからなぁ…桃がどう切り抜けるか楽しみだぜ、ハハッ」

ライオン「桃太郎さん…無事にアリスちゃんと戦うことが出来るかなぁ…」

食わず女房「桃太郎さん、お肉に付けて食べるならお醤油がいいですか?お塩がいいですか?あたしは断然お塩派です、素材の味を楽しみたいのでー」

桃太郎「ぼかしちゃいるけど拙者の味付けをどうするかって話だよねそれ!?そんな事本人に聞いちゃうの!?」

食わず女房「だってどうせ食べるなら美味しく食べたいじゃないですかー。桃太郎さんは桃から生まれたんですしきっとほんのり甘いお肉に違いないです…想像したらよだれ出ちゃいますよ~」グゥー

桃太郎「ちょ、食欲増さなくて良いからぁぁ!とにかく食わず女房殿の弱点を見つけないとこのままじゃマジで食べられる!うわああぁぁ!嫌だああああぁぁぁ!マジで勘弁してよもおおぉぉ!!」

・・・

次レスから本編です

607: 2016/08/01(月)00:31:39 ID:DD1
キモオタ達の作戦決行まであと1日

雪の女王の世界 女王の宮殿前 氷のドーム

キモオタ「うおおぉぉ!悪鬼をも断ち切るこの刃…受けてみるがよいですぞぉぉ!」ビュバッ

雪の女王「ふふっ、随分と思い切った攻撃が出来るようになったな。でもまだまだ…戸惑いが残ってる、踏み込みが甘いよキモオタ」スッ

ティンカーベル「ありゃ、避けられちゃった…でもドンマイドンマイ!今のはいい感じだったよキモオタ!次ガンバロ、次!」

キモオタ「ガッテン承知www引き続き作戦は『ガンガンいこうぜ』ですぞwwwいい感じの援護射撃頼むでござるwww」コポォ

ティンカーベル「よーし!わかったよ!いつでもいけるからね!」フワフワ

雪の女王「決戦を明日に控え随分と燃えているようだな。だが熱くなりすぎて冷静さを失ってはいけない、どれ私が少し頭を冷やしてやろう」ススッ

ティンカーベル「キモオタ!女王が距離をとったよ!多分つららを飛ばしてくるか吹雪ぶわぁーっ!ってしてくるよ!警戒してよね!」

キモオタ「わかっていますぞwww我々、何度それの餌食になった事かwww」コポォ

雪の女王「ふふっ、何度も戦ったものな。私の攻撃パターンはお見通しというわけか。だが予測できていても対応しきれなければ意味はないぞ?」パキパキパキ…

ティンカーベル「あっ、これ、つらら飛ばす方だ!キモオタ!どうする?このまま避けて攻める感じ?それともサイリウムで塔を出して防御する?」

キモオタ「ここは強気で攻撃続行ですぞ!我輩はあのつららを迎撃するでござるからお主は隙を見て女王殿へ攻撃するチャンスを見極めてくだされ!」

ティンカーベル「わかった!まかせて!バッチリ隙をとらえるからね!」

雪の女王「ここで防御に徹しては私のペースに飲まれてしまうからな、悪くない判断だ。だがこの無数の氷柱をどう捌くつもりだい?」ヒュバババ

キモオタ「とび道具にはとび道具で応戦するのが定石wwwここはクール口リの力を借りますぞwww」フリフリ

おはなしサイリウム「コード認識完了『赤ずきん』武器モード『猟銃』への形状変化を実行」

608: 2016/08/01(月)00:34:53 ID:DD1

キモオタ「ドゥフフwww赤ずきん殿の射撃テクをもってすればつららなどただの冷たい的ですぞwww」ズダーンズダーンズダーン

パリンパリンパリーン!

雪の女王「大したものだな、私が生成した氷柱がこうも容易く砕けるとは…流石は魔女が生み出した魔法の猟銃といったところか」

キモオタ「ドゥフフwwwこれで迎撃&障害物の除去に成功ですなwwwそして休む暇を与えずこのまま女王殿にダイレクトアタックですぞ!」ガチャッ

ズダーンズダーン

雪の女王「息をつかせぬ攻撃で相手の攻め手を封じる…初日と比べれば随分成長したな。次の一手に繋がる行動がとれている。だが私の氷結は攻め専用ではないぞ?」

パキパキパキ カキンカキーン

キモオタ「ぬぅ、氷の盾で…!女王殿の能力は今更ながらチート過ぎますぞ!万能過ぎますぞ!?」

雪の女王「ふふっ、君のサイリウムと同じで攻守自在なのさ。強度を上げれば盾にだってなる、その分投擲には向かない氷塊になってしまうがな」

ティンカーベル(あの能力なんでもでき過ぎてずるいよ!でもキモオタに気を取られてる隙に後ろから攻撃すれば勝てるよね!よーし…)ヒュッ

雪の女王「それとティンカーベル、奇襲はバレないようにするものだよ」パキパキパキ

ティンカーベル「わーっ!なんで後ろからだったのに気づいちゃうの!?っていうか羽根が凍り付いて飛んでられないy」ビターン

キモオタ「ティンカーベル殿ー!おもいきり顔面打ったでござるが大丈夫ですかな!?」

雪の女王「キモオタ、君も仲間に気を取られていると…手詰まりになるぞ?」パキパキパキ

キモオタ「ブヒッ!?両足が氷漬けに!?ぐぬぬ…油断したでござる…!」ビターン

雪の女王「途中まではいい調子だったんだがな…私の能力への理解が不足している。まずは氷結能力を封じるか弱体化させる事が優先だ、そうしなければ勝負にならないぞ」

キモオタ「それは解っているつもりでござるが…女王殿の氷結能力はノーモーションかつ射程も広いしで隙がなさ過ぎますぞ!?封じるなど難易度ベリーハードでござるよ…」

雪の女王「確かに氷結能力は強力だが私自身は無敵じゃない、この能力を満足に使えなければただの低体温の女だ。不氏の体を持っているわけでもなし、ナイフで胸を突けば氏ぬぞ?」

ティンカーベル「能力の無力化とか言うのは簡単だけど実際にやるとなると簡単にはいかないじゃん!」プンス

雪の女王「だがアリスも私と同じだぞ?魔法や魔法具で武装していてもアリス自身はただの女の子だ、それらを無効化あるいは弱体化すれば相手をするのは容易いさ」

キモオタ「確かにそうでござるが…やはり言うは易し行うは難しでござるなぁ…」

609: 2016/08/01(月)00:37:50 ID:DD1
雪の女王「まぁ容易くはないだろうが…君もティンクも確実に成長しているぞ。無茶なごり押しも減ったし正確な判断もできるようになった、そこは誇って良い」

キモオタ「ドゥフフwww誉められましたなティンカーベル殿www悪い気はしないwww」コポォ

ティンカーベル「まぁね!わたしはちょっとブランクあっただけでフック率いる海賊と戦ったりしてたし!まぁ当然ですよ!」フンスッ

雪の女王「ふふっ、そのポジティブさは君達の一番の武器だな。さて…もうそろそろ良い時間だ、今日の戦闘訓練はここまでにして宮殿に戻ろうか」

ティンカーベル「もうそんな時間?でも私はまだまだいけるよ!さっきももうちょっとでいけそうだったし!」

雪の女王「やる気なのは良いことだが君達がすべき事は他にもあるだろう?アリスはまだ手の内をすべて晒していない、どのような魔法具を前にしても問題ないようにしなければな」

キモオタ「そのためにはおとぎ話の世界にどのような魔法具が存在しているのか把握しておかなければなりませんからなwww今日も今日とて書庫でおとぎ話を読みまくりますぞwww」

ギィィッ バタンッ

カイ「なんだ、丁度一段落ついてるみたいだな。キモオタ、ティンカーベル、晩飯できてるから終わったらダイニングに来い」

キモオタ「うっひょーwww飯でござるwww飯でござるwwwこれを楽しみに一日頑張ってるでござるからなwww」コポォ

ティンカーベル「もーっ!意地汚いよ!私達はお世話になってるんだからもっと謙虚にしてなきゃ!でも私もお腹空いたからすんごい食べるよ!超食べるよ!」

雪の女王「ふふっ、彼等は食事のことになると途端に元気になるな。さて、私も夕飯を頂くとしようか」クスクス

カイ「……女王、悪いがお前は応接間へ向かってくれるか。待たせてる連中が居るんだ」

雪の女王「あぁ、それは構わないが…客人かい?」

カイ「いや…白鳥と親指姫だ。詳しくは聞いていないが親指姫の奴珍しく深刻な顔してたぜ、何があったか知らないが…行って話を聞いてやってくれ」

雪の女王「…わかった。キモオタとティンクは君に任せるよ、疲れてるだろうから労ってやってくれ。任せたよ」スタスタ

610: 2016/08/01(月)00:41:16 ID:DD1
雪の女王の宮殿 応接間

雪の女王(普段は賑やかな彼等が深刻そうにしているというのは確かに珍しい。何か余程の問題があったと考えるべきか…とにかく話を聞かなければいけないな)

ガチャッ

雪の女王「二人とも待たせてしまってすまない。別件で手を取られていてね…それよりどうしたんだい?こんな風に改まって…いつもは私の所に直接報告に来るというのに」

親指姫「女王様…!」バッ

雪の女王「親指姫、何かあったのかい?珍しく君の表情に余裕がない、いつもはもっと毅然としているだろう?」

親指姫「…申し訳ございません!この親指姫…女王様の想いを守ることが出来ませんでした…!こんなちっぽけな私を信頼してくださったのに応えることが出来なかった…!どうかこの首を切り落として頂きたい…!」

雪の女王「落ち着くんだ親指姫。そんな事できるわけがないだろう」

親指姫「いいえ、私に生きる資格はないんです。それだけではありません、私は…私は、戦友を守ることが…彼の世界を救ってやることが出来なかった…!」クッ

白鳥「お前は悪くないよ…だからそんなに自分を責めるなよ…。女王様だって困惑してらっしゃるだろ」

親指姫「……すまない。だが私は…とても平静を保っていられそうもない」

白鳥「女王様には僕が説明するから、だから…少し落ち着こう、なっ?」

親指姫「……わかった」

雪の女王「…彼女がこんなに取り乱すなんて余程の事だ、何か大きな問題があったんだな?」

白鳥「はい…女王様もご存じの通り、僕達は様々なおとぎ話の世界を巡ってアリスの件の注意喚起、それと警備を続けていました。それで…任務も一段落したんで一度この宮殿に帰ろうって話になったんですが」

白鳥「親指姫がその前に寄って欲しい世界があると言うんで、とある世界に寄り道したんです。そこは以前に訪れた事がある世界で…そこの主人公と親指姫はその時すっかり意気投合した親友同士だったんです」

白鳥「女王様もよくご存じの【しっかり者のスズの兵隊】のおとぎ話の世界…そしてその主人公、スズの兵隊です」

612: 2016/08/01(月)00:47:00 ID:DD1
雪の女王「あぁ…直接会ったことはないけれど、そのおとぎ話はよく知っているよ」

親指姫「スズの兵隊は…あいつは玩具の兵隊だったが、芯のしっかりした男だった…。兵隊だということに誇りを持った、本物の戦士だった」

白鳥「…彼は背丈も親指姫と近いし、数々に困難に翻弄されるという物語にも共通点がある。だからこいつは…スズの兵隊のことを信頼していたし戦友として認めていたんです」

雪の女王「だがその口振りだと、彼は…いや、【しっかり者のスズの兵隊】のおとぎ話は…」

白鳥「……僕達がその世界にたどり着いた時には、もう街は焼け野原でした。状況を察した僕達はすぐにスズの兵隊が居た家を訪ねましたが、もう……」

雪の女王「……そうか」

親指姫「私達がたどり着いた頃にはそのスズ製の体はおおかた溶け出して私の声も聞こえなかったみたいでした、けど…」

親指姫「あいつの傍らには踊り子の人形が寄り添っていました。あいつは…戦士として、守るべきものを守って…氏にました。でも、私がもう一歩早ければ…あいつは氏なずに済んだかも知れなかった…!」

白鳥「親指姫…」

雪の女王「親指姫、あまり気に病まない方がいい。残念だがどうにもならないという事は…あるものだよ」

親指姫「しかし…あの世界は、【しっかり者のスズの兵隊】の世界は女王様にとても大切な世界のはずです!それを知っていながら私はあの世界を守ることが出来なかったんです!悔やんでも…悔やみきれません、そしてアリスが…憎い…!」

雪の女王「確かにあの世界が消滅したという事実は衝撃的だ。だが…それは君のせいじゃない。なってしまったものは…どうにもならない、受け入れるしかないよ」

親指姫「女王様がお優しい方だという事はよく知っています…ですがあいつの世界を創ったのは私達の作者と同じハンス・クリスチャン・アンデルセンなんですよ!?アリスへ怒りを感じないのですか!?悔しくないのですか!?」

親指姫「女王様は以前教えてくださったじゃないですか!アンデルセンが…アナスンが記したおとぎ話は一つとして失いたくないと!」

613: 2016/08/01(月)00:52:37 ID:DD1
雪の女王「確かにそう言ったよ。今もその思いは変わりない」

親指姫「それなら一つ提案があります女王様……私はアリスが許せません。今すぐにでも協力者を率いて強襲をかけたいと考えています。スズの兵隊に弔いの為にも」

白鳥「ちょっと待ってって!お前はなにを言い出すんだよ!気が動転してるのはわかるけどそんな事できるはずないじゃないか!」

親指姫「何故だ!?これ以上奴を野放しにすれば他のおとぎ話だって次々消えていく!アナスンのおとぎ話の中には結末を迎えていないものだってあるんだ、それらが餌食になるかも知れないんだぞ!」

白鳥「容易くないからキモオタ君達は必氏に努力してるんだろ!僕達が私怨で勝手な事をしてアリスを倒すチャンスを逃しでもしたらどうするんだ!?」

親指姫「だったらどうしろって言うんだ!?このまま私や女王様の大切なものが消えていくのを指を咥えて見ていろって言うのか!?」

白鳥「そうじゃない!慎重になれって言ってるんだ!これは僕達だけの問題じゃないんだぞ!」

親指姫「お前じゃあ話にならない…!女王様はアリス襲撃に賛成してくださいますよね?あいつの命を…アナスンの世界を奪われた無念は晴らすべきです!」

雪の女王「悪いが…君の提案は飲めない。今、アリスの世界を襲撃する事はできない」

親指姫「何故ですか!?アリスはアナスンの生み出したおとぎ話を消した悪人です、殺さない理由がありますか!?それともあなたがアナスンのおとぎ話が大切だというのはその程度のものなんですか!?今すぐにアリスを殺s…痛っ!何をする無礼者!」ガッ

白鳥「無礼者はお前だ!お前はモグラやコガネムシの自分勝手な行動に振り回されて辛い思いをしたんだろ?今度はお前が他の奴らを振り回すのかよ!?巻き込まれるのは嫌だけど自分が巻き込むには構わないって!?」

親指姫「……いや、悪かった頭に血が上りすぎていた。女王様も…申し訳ありません。女王様だって辛いというのに…やり場のない怒りに思わず当たり散らしてしまって…」

雪の女王「いいんだ、気持ちは分かるよ。私だって内心…アリスを全く憎んでいないわけではないしな…だからこそ慎重に行動すべきだよ、親指姫」

614: 2016/08/01(月)00:55:40 ID:DD1
雪の女王「カイから聞いたかも知れないが…今、キモオタ達はアリスの世界へ向かうための特訓の最中だ、明日にはその作戦が実行される。今私たちが動くのは得策じゃあないんだ」

親指姫「はい、それは…先程聞きました。でも、あいつら…大丈夫なのですか?」

雪の女王「確かに未熟な部分はあるが…全く見込みがなければ特訓の相手をしたりしないさ。少なくとも私はキモオタ達ならアリスを止められるかも知れないと…見込みがあると考えている」

親指姫「私には気持ちの悪い男と不愉快な羽虫にしか見えませんが…」

白鳥「まぁその点はお前も不愉快なこびとだけd痛いっ!」ズブッ

親指姫「随分とあの男のことを評価しているのですね、女王様は」

雪の女王「まぁ確かに気持ちは悪いが…それだけの男ではないよ。なにしろヘンゼルが行動を共にするくらいだからな。目に見えない魅力というのはあると思うぞ」フフッ

白鳥「とはいえ目に見える魅力が一番重要ですよね、この美しい僕のようn痛っ!」ブスリ

親指姫「確かにあの男の想いには共感すべき所もありますが…」

雪の女王「君ももう少し他人と打ち解けるようにすればもっと周囲の人間の魅力に気づけると思うが…あぁ、今頃彼らは食事中だ、是非一緒に食卓を囲むと良い。二人とも空腹だろう?」

親指姫「それは…いささか空腹でもありますが…私はあの羽虫があまり好きではないので…お互い嫌な気分になるだけでは」

白鳥「ンナハハ!ほらほら、女王様がそうやって提案してくださったんだから僕達も夕飯をご馳走になろうじゃないか!」グイッ

親指姫「おい、引っ張るのはよせ!私はまだ行くと決めたわけでは…」

白鳥「なーに言ってんだよ!それじゃあ女王様、急にお邪魔してすんませんでした!僕達しばらくここに滞在するんでよろしくお願いします、ンナハハハ!」スワーン

雪の女王「あぁ、ゆっくりしていくと良い。それと…すまないが私は夕飯はいらないとカイに伝えておいてくれるか?」フフッ

白鳥「わっかりましたー!この純白の翼にかけて必ず伝えまs痛い!やめろ!」ブスリ

ペタペタペタ

雪の女王「フフッ、賑やかな方が彼等らしいな。……ふぅ」

615: 2016/08/01(月)00:58:31 ID:DD1

白鳥「ンナハハハ!さっき厨房から香っていたのはまさしくシチューの香り!いやはや、楽しみだ!」スワーン

親指姫「お前は強引すぎるぞ。目の前で別のおとぎ話が消えたっていうのに…薄情な奴め」

白鳥「ずいぶんな言い方だなぁ、僕だって辛いに決まってるだろ。それに女王様…きっと一人になりたいだろうしさ。そういうこと考えて僕は動いてるんだよ、気配りできる白鳥だよ僕は」

親指姫「どうだか…。だがまぁ…先程、私が取り乱した時に正気に戻してくれた事には礼を言おう。悪かった」

白鳥「どういたしまして。まぁ気持ちは分かるけど女王様だってあれ普通にしてたけどきっと相当つらいと思うよ?」

親指姫「まぁそうだろうな…酷いことを口にしてしまったな。反省する」

白鳥「まったくだよ。女王様がアナスンの事特別大事に想ってることは知ってるだろ?それなのにあんな言い方はないよ」

親指姫「うるさいな…反省すると言ったろう。まぁ…何者かがおとぎ話の世界を荒らしていると知って、女王がまず私やお前に協力を仰いだのも同じ作者だからだろうしな…」

白鳥「ハンス・クリスチャン・アンデルセン…彼がどういった人物かは僕はあんまり知らないけど、女王にとっては自分の生みの親って以上に大切なんだね」

親指姫「詳しく聞いたことは無いからな…だが女王様の大切なものを守るのも私達の勤めだ、それが形あるものだろうと形ないものだろうとな」

白鳥「そのつもりだよ。まぁ女王様が声をかけてくれたおかげでこの美しい翼で様々な世界を飛び回れるわけだし」

親指姫「あぁ、私も女王様のおかげで小さくても戦えることを知った。せめてもの礼にすらならないが…恩は返したいところだ」

白鳥「そうだね、その一環としてティンクちゃんとは仲良くしてくれよ?仲違いしたら女王様悲しむだろうし」

親指姫「それはあの羽虫次第だな」

白鳥「もうその呼び名の時点で望み薄なんだよなぁ…まぁなんとかフォローするから挑発だけはやめてよ」

616: 2016/08/01(月)01:03:42 ID:DD1

雪の女王の宮殿 女王の自室

雪の女王「……遂に消えてしまったか、いつかはこの日が来るかも知れないと思っていたが。……思っていたよりもショックが大きいな」

雪の女王「……」

雪の女王「私のワガママでしかないが…アナスンの生み出したおとぎ話は一つとして消滅させたくなかった。今更…そんな事を言ってもどうにもならないが…」

雪の女王(もうあれから…あの幸せな日々からどれくらいの月日が流れただろうか…)

雪の女王(あれは…お千代がこの宮殿で暮らすようになる前、まだヘンゼルもグレーテルも…カイもいない。ずっとずっと昔……)

雪の女王(現実世界の時の流れでは…もう百五十年程前か…)

雪の女王(何もかもが懐かしいな、現実世界で出会ったアナスンの事…ヤーコプ、ヴィルヘルム…もう皆、ずっと昔に亡くなってしまった。おとぎ話だけを後世に残して…)

雪の女王「……ふぅ、駄目だな。私が辛気くさい顔をしていると皆を不安にさせる。ショックな出来事ではあったが…気持ちを入れ替えよう」

雪の女王「そうだな…久々にあの本を読むとしよう。今なら書庫にカイが来ることもないだろうしな…。あの本を開いている間は君との思い出に浸れるからな、アナスン…」

スタスタ

雪の女王(アナスンことハンス・クリスチャン・アンデルセン……私の【雪の女王】を始めとする数々のおとぎ話を生み出した、世界的に有名な童話作家)

雪の女王(彼はおとぎ話を通して様々なことを世界中の子供達に伝えようとしていた。変わり者ではあったけれど貧しい子供達を救うことをいつも考えていて…優しくて暖かくて誠実で、そのくせおとぎ話に関しては考えを譲ることを知らなくて…)



雪の女王(そして…私が生涯で唯一愛した男だ)

626: 2016/08/08(月)00:36:40 ID:9xL
雪の女王の世界 女王の宮殿 ダイニング

キモオタ「くぅ~www運動後の飯はどうしてこんなにうまいのかwww我輩、今なら無限に食えそうですぞwww」ガツガツバクバク

ティンカーベル「たくさん特訓したもんね!明日もいっぱい頑張る為にいっぱい食べちゃおう!」モグモグムシャムシャ

カイ「お前等少し落ち着いて食えよ。そんな急いで食わなくても誰も取らないだろ…どれだけ腹減ってたんだよ」

キモオタ「いやいやwwwカイ殿の料理の腕前が良い故に我々も手が止まらないのでござるよwww」コポォ

ティンカーベル「私達、現実世界じゃいっつも出前か外食かコンビニ弁当だからねー…私達のために美味しいご飯作ってくれてありがとね、カイ!」

カイ「礼なんて要らねぇよ。こっちも食料庫の整理が出来て助かってるからな、その干し肉とか結構ギリギリだったんだぜ」

キモオタ「ちょwww我々は残り物処理班ですかなwwwしかしカイ殿と女王殿の二人暮らしならば食料そんなに備蓄する必要も無いのではwww」バクバク

カイ「女王が多めに買い込むんだよ、いつヘンゼル達が帰ってきても良いようにな。常に五人が十分に食える量は備蓄するようにしてる」

ティンカーベル「もしかして三人とも食べ物が無かったせいで前の家族失っちゃってるからかな?きっと女王はせめて今はおなかいっぱい食べさせてあげようって思ってるんだねぇ」ムシャムシャ

キモオタ「実に優しい方ですなwwwでは我々は調理してくださったカイ殿に敬意を表してこの料理を食い尽くしますぞwww」バクバク

ティンカーベル「そうだね!出された料理は全部食べるのがマナーだよね!カイも早く食べなきゃ私達が全部食べちゃうよー?」ムシャムシャ

カイ「俺はもういい。でも女王達の分だけは適当に残しとけよ」

ティンカーベル「あはは、言われなくたって女王の分まで食べたりしないよー!私達こう見えて遠慮してるし!」ムシャムシャ

キモオタ「そうですぞwww他人の飯を奪うほど落ちぶれてはいませんからなwww」コポォ

カイ「嘘つけ。あわよくば食い尽くそうって勢いだっただろうが」

627: 2016/08/08(月)00:37:52 ID:9xL

親指姫「女王様に世話になっている身でよくもまぁガツガツと無遠慮に…まるで家畜だなお前達は」

ティンカーベル「出たな!誰が家畜だおらぁー!キモオタはそうかも知れないけど私は違うし!失礼なこと言うなバーカ!」ムシャムシャ

キモオタ「ちょwwwお主も大概失礼ですぞwww我輩はギリギリ家畜ではないwww」コポォ

白鳥「親指姫!なんで開口一番暴言吐くんだよ!?仲良くしようって話だっただろ!」

親指姫「こいつ等の浅ましい姿を見て気が変わった。それに私は思った事を口にしただけだ、私に非は一切無い」プイッ

ティンカーベル「言ってろバーカ!それより白鳥もこっちで一緒に食べようよ、そんなチビッコの騎士ごっこに付き合う事ないよ!」

親指姫「聞き捨てならないな、私はお前達と違って遊びでやっているわけではない。己を律し、常に騎士道に恥じぬ行動を心掛けているのだ…ごっこ等と言われる謂われはない」

ティンカーベル「へーそっかそっかすごいねふーん。っていうか……騎士道(笑)」プスプス

親指姫「何だその顔は…言いたいことがあるのならハッキリと言え」イラァ

ティンカーベル「べっつにー?……ププッ、騎士道(笑)」

親指姫「羽虫の分際で私を…騎士を愚弄するか!切り捨ててくれる!」チャキッ

ティンカーベル「はぁー?私は別に何も言ってませんー!言いがかりはやめてくださいー!そーやってすぐ暴力に頼るのが騎士道(笑)なんですかぁー?」

親指姫「他人を小馬鹿にすることだけは一人前のようだな…軽口叩いた事を後悔させてやる!剣を抜け羽虫、相手になってやる!」スタッ

628: 2016/08/08(月)00:39:27 ID:9xL
ティンカーベル「ふんっ!そっちがその気ならこっちだって本気だからね!とびきり痛い奴…食らえー!」ギギッ ビュンッ

親指姫「くっ…空中からとび道具で攻撃とは卑怯な!羽虫!降りてきて正々堂々と戦え!」

ティンカーベル「これが私の正々堂々ですぅー!ふははは!制空権はこちらにありー!」ビュンビュンビュン

親指姫「クソっ…!あまり調子に乗るなよ、羽虫など撃ち落としてやる!」ヒュッ

ティンーベル「わっ!こいつ小石投げてきた!とび道具は卑怯だって言ってた癖に自分はいいんですかぁー!おかしいと思いますぅー!」

親指姫「黙れ!目には目をだ!すぐに地を這わせてやるから覚悟しろ羽虫!」ヒュンヒュン

ティンーベル「ふんっ、上等だよ!やってみろやぁー!」ヒュヒュヒュ

白鳥「何やってるんだ親指姫!やめろ!…あぁ、駄目だ。こうなったら僕の言うことなんか聞きやしないんだから!すまないがキモオタ君からも止めるように言っt」

キモオタ「カイ殿、申し訳ないでござるが茶を一杯頂けますかなwww」

カイ「仕方ねぇな…ほらよ。キモオタ、そこの皿こっちに寄越せ。そいつ等の争いに巻き込まれて割られたらかなわねぇから」コトッ

キモオタ「わかりましたぞwww」スッ

白鳥「どうしてそんなに落ち着いているのかな君達は…」

629: 2016/08/08(月)00:41:21 ID:9xL
キモオタ「女子の争いに首を突っ込むとろくな事がないですからなwww我々メンズは傍観するに限りますぞwww」コポォ

カイ「同感だな、下手に関わると怪我するだけだ。ほらよ白鳥、お前の飯だ」コトッ

白鳥「おぉ、ありがとう!まぁ僕が止めに入ってどうにかなりそうもないし…よし!もう放っておいて食事にするかな!ナハハ!」スワーン

キモオタ「それが賢明ですなwww我々はボーイズトークに花を咲かせるとしますぞwww」コポォ

カイ「ガキと鳥類と気持ち悪いオタクで話が弾むかよ…俺は洗いもんしてくるからお前等でやってろ」スッ

白鳥「おっと待ってくれるかなカイ君!女王様からの伝言なんだが…今日は夕食いらないそうだ」

カイ「はぁ?特に体調が悪いようには見えなかったが…理由は聞いてないのか?」

キモオタ「あれだけハードな運動をしておきながら飯抜きなど我輩なら有り得ないwww」コポォ

白鳥「カイ君ならピンと来るんじゃないかな…実は【しっかり者のスズの兵隊】のおとぎ話が消滅してしまってね、さっき女王様にそのことを報告してきたんだ」

カイ「あぁ…なるほどな。そりゃあ飯を食う気になんかならねぇか、あいつの場合」

キモオタ「ほう…?それは女王殿にとって特に大切なおとぎ話なのですかな?」

カイ「あぁ。正確にはあいつが特に大切にしている話のうちの一つ…だな。なぁ白鳥、あいつの様子はどうだった?」

白鳥「普段通りに振る舞っては居たけど…内心、相当ショックだったと思うよ」

カイ「そりゃあそうか…俺たちに気落ちした姿なんか見せるわけねぇよな」

631: 2016/08/08(月)00:44:26 ID:9xL
キモオタ「なにやら…深刻そうですな?」

白鳥「まぁね…。おとぎ話の世界を守ろうとしてる女王様や僕達にとって物語に優劣なんかはないけど…あのおとぎ話はアンデルセンが書いたものだから、女王様は特にショックが大きいのさ」

キモオタ「アンデルセン殿…でござるか」

カイ「ハンス・クリスチャン・アンデルセン…【雪の女王】の作者だな」

キモオタ「知ってますぞ。そういえば以前ヘンゼル殿の話にも出てきましたな…確か女王殿が現実世界に直接会いに行ったとかなんとか…」

白鳥「そのことは僕もあまり詳しくは知らないんだけどね…でも女王様にとっては大切な人なんだろうね」

キモオタ「ふむ…。我輩は現実世界の人間故よく解らないのでござるが…おとぎ話の住人にとって作者というのは特別なものなのでござるか?」

カイ「ほとんどの場合は作者に特別な感情なんかねぇよ。ヘンゼルみたいに作者を憎んでる奴も少数派だ、女王はアンデルセンと直接交流があったから特別に感じてるだけだろ」

キモオタ「なるほど。確かに我輩の友人からも作者の話を聞いたことなどほとんどありませんからな」

白鳥「でもきっと…相当な信頼を寄せていたんだと思うよ?おとぎ話を救うって話になったとき、僕達に声をかけたのだってそれが理由だろうしね」

キモオタ「ということは白鳥殿と親指姫殿のおとぎ話も?」

カイ「【みにくいアヒルの子】も【親指姫】もアンデルセンの書いたおとぎ話だ。女王は作者を信じていたからこそ、協力者にこいつ等を選んだんだろうな」

632: 2016/08/08(月)00:46:47 ID:9xL
白鳥「アンデルセンのおとぎ話の中であの頃既に結末を迎えていて、自由に動ける主人公は僕とあいつくらいだったんだろうね」

キモオタ「その頃はまだアリス殿が黒幕だと判明していませんでしたからな、誰が敵かわからない状態でも信用出来たということは女王殿のアンデルセン殿への信頼は相当のようですな」

カイ「そうだな、まだ情報が不足していた頃だ。事情を知らない連中に事態を伝える必要もあった、それを踏まえての人選だろ」

白鳥「僕なら世界移動も陸海空も自在だからね!それに親指姫はチビだから潜入に向いてる、警備の厳しいお城なんかも楽々さ」

キモオタ「確かにwwwうちのティンカーベル殿もその辺での活躍多いでござるしwww」コポォ

白鳥「もちろん美形だからっていうのも採用理由なんだろうけどね?親指姫もまぁ姫っていうだけあるし僕の美しさは言わずもがな!ンナハハハ!」

キモオタ「出たwww白鳥殿のナルシスト節www」コポォ

カイ「まぁあれだな、女王が気落ちしてるってなら…なんとかしたいところだな」

キモオタ「ほうwww憎まれ口叩きながらも女王殿が心配なのですなカイ殿www」コポォ

カイ「茶化すな。あいつの強大な魔力はアリスを止めるのに必ず役立つ、精神的に弱ってる状態のままだといざって時困るだろうが」

白鳥「そうだね、女王様の過去に何があったか知らないけど…女王様のショックを何とか和らげたいとは思うよね」

キモオタ「我々も女王殿にはすっかり世話になっておりますからなぁ…」

633: 2016/08/08(月)00:49:17 ID:9xL
カイ「だが…それなら逆にそっとしておいた方が良いような気もするな。俺や白鳥が行っても…あいつは弱い部分を見せようとしないだろ」

白鳥「確かに…でも今の僕があるのは女王様が声をかけてくれたからなんだ。少しでも女王様の力になりたいよ」

キモオタ「作者が同じといえ白鳥殿は随分女王殿を気にかけてますなwww」

白鳥「そりゃあ女王様には感謝してるからね。僕はずっと誰かの役に立ちたいって思ってたんだよ。生まれた頃から誰にも愛されずに蔑まれて馬鹿にされて生きてきたから…誰かに必要とされたかった、それが夢だったんだ」

白鳥「でも自分が白鳥だって気が付いてもその夢は叶えられなかった。だから今、女王様の元で世界を飛び回って間接的でもたくさんの人を救えているって事を僕は誇りに思ってるのさ!」

キモオタ「なるほど…ただのナルシストではなかったのですな白鳥殿www」

白鳥「そうとも!真のイケメンは心もイケメンってね!それは親指姫も同じ気持ちだと思うよ、あいつも昔は周囲に振り回されっぱなしだったからね」

キモオタ「親指姫殿のおとぎ話は知っていますぞwww小さいから誘拐されたり誘拐されたり誘拐されたりしてましたなwwwしかし確かハッピーエンドだったはずwww」コポォ

カイ「確か花の王子と結婚して幸せな暮らしを…って結末だったな。ヘンゼルの言葉を借りるようだが親指姫はどこか納得してなかったんだろ、自分の結末に」

白鳥「そうだろうね、だからあいつは王子に黙って城を抜け出した。周囲が定めた運命じゃなく今度こそ自分の意志で、自分の運命を決めるためにね。だからその機会をくれた女王様には感謝してるはずだ」

キモオタ「あの暴力的な性格はそれまで押さえつけられていた反動なのでござろうかwww」

白鳥「解らないけどまぁ僕はいい迷惑だよ…出会った頃はあいつの暴力でハゲると思ったよ…まぁハゲても美しいのが真のイケメンだけどね?」

634: 2016/08/08(月)00:52:03 ID:9xL
白鳥「で、ここの書庫で読んだ【一寸法師】にえらく感動してね。それからはもうあの女騎士スタイルさ」

キモオタ「親指姫殿www意外と影響されやすいwww」

白鳥「自分と同じ小さな体なのに自分で運命を切り開いた一寸法師はあいつにとって理想の生き方だったんだろうねー…まぁ今のあいつはイキイキしてるから結果的には良かったのかな、僕を針で刺さなければね。大体あいつは…」

カイ「おい、話がそれちまってるぞ。今は女王をどうするかだろ?」

白鳥「そうだったね!ンナハハハ!僕としたことが!」スワーン

キモオタ「それならば我輩とティンカーベル殿が女王の所にいってくるでござるよwww我々のようなおとぼけキャラと話せば悩みなどバカバカしくなるでござるよwww」

白鳥「それ自分で言っちゃうのか…」

カイ「まぁ多少気休めにはなるかもな…バカな奴と話すのは疲れるが不思議と場が和むことはあるしな、バカ特有の空気っていうか…そういうのは確かにある」

キモオタ「ぶっちゃけそういうことでござるよwww我々そういうの得意でござるしwwwティンカーベル殿!バトルはそのあたりにして一緒に行きますぞwww」

ティンカーベル「…もうちょっとでチビッコを倒せそうだから後にして」ゼェゼェ

親指姫「ふん…ならば一生無理だな…諦めろ」ゼェゼェ

キモオタ「ちょwww息切れしてるでござるwww思ったよりガチで戦ってたwww」コポォ

635: 2016/08/08(月)00:53:53 ID:9xL
雪の女王の宮殿 書庫

ティンカーベル「なるほどね。女王様は自分のおとぎ話の作者と交流があって、そんでその作者が書いたおとぎ話が消えちゃってショックを受けてるっぽいって事ね?それで私達二人でそのショックを和らげようって話かー」

キモオタ「その通りwww説明的セリフありがとうでござるwww」コポォ

ティンカーベル「でもさー、ホントにそれだけ?」

キモオタ「ちょwwwなんですかなwwwその意味深な問いかけはwww」コポォ

ティンカーベル「知ってるんでしょ?アンデルセンが書いたおとぎ話は【雪の女王】や【みにくいアヒルの子】や【親指姫】だけじゃないってさ」

キモオタ「ドゥフフwwwお見通しですなwww」コポォ

ティンカーベル「わかるよ、これだけ一緒にいるんだし。調べてたんでしょ?マッチ売りちゃんのおとぎ話書いた作者のこと…ググッたんでしょ?」

ティンカーベル「【マッチ売りの少女】を書いたのがアンデルセンだって、知ってるんでしょ?」

キモオタ「まぁ、そうですなwww」コポォ

ティンカーベル「作者と交流があったなら女王に話聞けば…アンデルセンが何を思ってあの救いのないお話を書いたのか解るかも知れないもんね」

キモオタ「そうかも知れませんなwwwしかし女王殿が落ち込んでいるかも知れないから励ます…と言うのが一番の目的なのであってwww我輩の個人的な質問はあくまでついでというかwww」

スッ

雪の女王「フフッ、気持ちは嬉しいが私は落ち込んでなどいないぞ?」フフッ

キモオタ「ちょwww女王殿www我々の話聞いていたでござるかwww」コポォ

636: 2016/08/08(月)00:55:57 ID:9xL
雪の女王「そんなに大きな声でコポコポ言っていれば嫌でも耳に入るさ」クスクス

ティンカーベル「やっぱキモオタのせいだ!コポコポうるさいからだよ!反省して!」

キモオタ「ちょwwwなんでそこまでwwwしかし図書館的な場所では静かにするのはルールwww申し訳ないwww」コポォ

雪の女王「私達しか居ないんだ、気にすることはないさ。ただカイが居るときは静かにしていないと後が怖いぞ?」フフッ

ティンカーベル「ねぇ、女王…作者のアンデルセンと交流があったって話、本当?」

雪の女王「あぁ、本当だとも。もう随分と昔の話だけれどね」

キモオタ「そのアンデルセン殿のおとぎ話が消えたからショックを受けていると聞いてきたのでござるが…」

雪の女王「…まぁショックだよ。彼がどういう考えを持っておとぎ話を書いていたかを知っているからな。だけど消えてしまったおとぎ話はアナスンのものだけじゃない」

雪の女王「ペローやグリム兄弟、それ以外にも様々な作者が書き記したおとぎ話が消えている。誰が作者だろうとおとぎ話が消えるのは辛いさ…おとぎ話に込められたら想いまで消えてしまうからな」

キモオタ「聞かれてしまっていたようなので正直に話すでござるが…女王殿、実は……」

雪の女王「【マッチ売りの少女】が何故生み出されたか、あの悲劇的な結末に意味があるのか…それを知りたいんだろう?」

キモオタ「…マッチ売り殿は自分の運命を受け入れたでござる。だから我輩も彼女の意志を遂げるためにも交わした約束を守るためにも旅を続けているのでござる。そこに一切の迷いはないでござるよ」

キモオタ「しかし女王殿がアンデルセン殿と交流があったと言うのなら…話を聞きたいと言うのは本音でござる」

雪の女王「…君達になら話しても構わないだろう、【マッチ売りの少女】の話とアナスンと私の過去を。特別な本棚があるんだ、そこへ案内しよう」

・・・

637: 2016/08/08(月)01:05:00 ID:9xL

ここではない時 ここではない場所

・・・

「何故だ…何故…。何故、私が殺されなければならない…」

「私は願っただけだ…すべての人類が幸福に生きる世界を…」

「大人も子供も老人も、大人も子供も、貴族も奴隷も…その境無く幸福を掴める未来を…」

「私は紡いだだけだ…誰をも幸せにすることができる物語を…おとぎ話を…」

「私が紡いだ物語を…皆は喜んで聞いていたではないか…」

「私が紡いだ物語を…皆は涙して聞いていたではないか…」

「それこそが未来への希望ではないのか…苦しい現実を塗り替える希望ではなかったのか…」

「あぁ…嘆かわしい…。私は思い違いをしていた…おとぎ話が私を救ったからといって…全ての人類を救うなどできるはずがなかったのだ…」

「所詮はただの戯れ言……言葉の組み合わせに過ぎない」

「それを天才だのなんだともてはやされて…私は有頂天になっていたのだ…」

「愚かな自分に腹が立つ…神にでもなったつもりだったのか…?」

「結局私は少々運が良かっただけの奴隷…。私のおとぎ話など…奴隷の言葉遊びに過ぎない」

「そんなものが世界を…未来を変える力を持っているわけが無いではないか…」

「あぁ……今、氏を目の前にして…ようやく過ちに気がついた…」

「こんなものは…何の意味もない、ただの言葉の羅列……」



「我々作者に…おとぎ話に…何かを変える力などありはしないのだ…」

・・・

654: 2016/08/15(月)00:54:37 ID:kNn
現在
雪の女王の世界 女王の宮殿 書庫

・・・

ポツン

ティンカーベル「あっ、見て見てキモオタ!あの本棚だけ他と違うよ!ガラス扉も付いててなんか特別っぽい感じがする!」ピューッ

キモオタ「確かに特別感ありますなwww図書館などでこの手の本棚に収められているのは大抵が貸し出し禁止のレア本でござるしwwwおそらくこの棚に並んでいる本も相当貴重な一品に違いないwww」

雪の女王「大切な物には違いないが、本自体はごく普通の本屋に並んでいた物だ。購入したのは随分と昔だがな」

ティンカーベル「そーなの?それにしては買ったばっかりの新品みたいにピッカピカだよ?」

雪の女王「この本棚には魔法がかかっていてな。ここに並べられた本はあらゆる事象の干渉を受けない。時間の流れから切り離されているせいで経年劣化することもないのさ」

キモオタ「ちょwwwしれっと言ったでござるがそれかなり高度な魔法なのではwww」コポォ

雪の女王「まぁ、かなりレベルの高い魔術だな。この本棚を創るためにおよそ半月の時間を要したし魔力も相当消費した」

ティンカーベル「女王がそこまでして残したいって思った本がこの棚には並んでるんだよね…それってやっぱアンデルセンが書いたおとぎ話?」

雪の女王「あぁ、この棚にはアナスンが執筆したおとぎ話が一遍も洩らさずに収められている。私は現実世界で彼と交友を深めるうちに彼のおとぎ話を特別なものと思うようになったんだ、彼の作品は私にとって宝物なのさ」フフッ

ティンカーベル「そうだったんだ…じゃあ私達悪いことしちゃったね…ごめんね、女王」

雪の女王「どうした突然?君に謝られるようなことなどされたか?」

ティンカーベル「だってさ、女王は知ってると思うけど私達【マッチ売りの少女】の世界に結構干渉しちゃってるんだよね…他にも【裸の王様】とかも……ね、キモオタ?」

キモオタ「ですな…そして我々が干渉したことで物語に変化が現れているでござる。アンデルセン殿のおとぎ話を大切に思う女王殿にとってそれは…嫌な事でござろう。すまなかったでござる」

雪の女王「悪意は無かったんだ、責めはしない。君達が行動しなければ【マッチ売りの少女】や【裸の王様】の世界そのものが消えていたかも知れないんだ、むしろ感謝してるよ」

雪の女王「それに君達やアリスが干渉しなくてもおとぎ話の内容が変化するということは自然に起こるものだ。数百年、元々の内容のまま物語が伝わることはなかなか難しい」

雪の女王「だから私はこの本棚を創り、彼の紡いだ物語を詰め込んだ。百年経とうと千年経とうと人々に忘れられようと物語が変化しようとせめて私だけは彼の本当の願いを忘れないようにな」

655: 2016/08/15(月)00:57:24 ID:kNn

雪の女王「だからこの棚には消滅したはずの【しっかり者のスズの兵隊】が残っているだろう?」スッ

ティンカーベル「あっ、本当だ!おとぎ話の世界が消滅したら現実世界から絵本もなにもかも消えちゃうのに、この棚の本は消えないんだね!」

キモオタ「流石はハイレベルな魔法なだけありますなwww」コポォ

雪の女王「君達が干渉したという【マッチ売りの少女】も同様だ。この棚の本には君達が登場しない、この通りな」パラパラ スッ

ティンカーベル「本当だね、私達が登場しちゃう現実世界の絵本とは違って元々のまんまだ!」

雪の女王「これでこの棚の本は一切の変更がされていない状態…アナスンが書き記したそのままのおとぎ話が並んでいると解ってくれたはずだ」

キモオタ「バッチリ理解しましたぞwww」

雪の女王「そうか、それならアナスンについて話すとしようか。まずは…丁度いい、キモオタはこの【しっかり者のスズの兵隊】をティンクは…この【ヒナギク】を読んでみるといい」

雪の女王「もちろん、一切改変のない元々の物語だ」

キモオタ「了解でござるwwwちなみに女王殿wwwこれあとで感想とか聞かれるでござるか?我輩この手のレビュー苦手なのでござるがwww」コポォ

雪の女王「聞くつもりだ、しかし別に君たちを試そうというわけじゃないんだ。どちらのおとぎ話も童話作家としての彼の特色が色濃くでているおとぎ話だからな、是非読んで欲しい。それだけさ」

キモオタ「そう言うことならばwwwおっwwwどうやら兵隊が主人公でのようでござるなwwwこれはバトルアクションものが期待できますぞwww」ワクワクコポォ

ティンカーベル「ヒナギクってお花の名前だよね?それじゃこっちはファンシーなカワイイ系おとぎ話かなー?読むの楽しみ!」ワクワク

656: 2016/08/15(月)00:59:17 ID:kNn
数分後

キモティン「……」ズーン

雪の女王「読み終わったか?やはり二人とも凄まじく暗い表情をしているな」

キモオタ「スズの兵隊殿、理不尽アンド理不尽な目にあった挙げ句、溶かされて氏んだでござるけど…」ズーン

ティンカーベル「こっちもだよ…人間に振り回されてヒバリは苦しんで氏んじゃうしヒナギクは枯れちゃうし…ちょっと後味悪すぎるよ何これ…」ズーン

雪の女王「ふふっ、とびきり暗い内容だっただろう?気分が悪くなる程にな」

キモオタ「ちょっwww解っててこのチョイスwww以外とおにちくですな女王殿www」

雪の女王「それで…君達の率直な感想を聞こうか、それを読んでどう思った?」

ティンカーベル「私は…人の身勝手な振る舞いがどれだけ酷い事かっていうのがよくわかったし、子供達がこれを読んだら思いやりの気持ちを持てるかもって思ったよ。でも……」

雪の女王「でも?」

ティンカーベル「正直、すごく胸くそ展開だったよ!最後だけ報われてもいいじゃん!よくあるじゃんそういう展開!ダメなの!?」イライラ

キモオタ「ティンカーベル殿おさえておさえてwww我輩が読んだ方もまぁ理不尽エンドでござったけどもwww」

ティンカーベル「もーっ!アンデルセンなんなの!?【マッチ売りの少女】もそうだし【人魚姫】も暗い結末だし…この作者バッドエンド大好きおじさんじゃん!」

657: 2016/08/15(月)01:01:44 ID:kNn
ティンカーベル「女王には悪いけど私はぶっちゃけこの作者嫌いになったよ!」プンスカ

キモオタ「お主はwww女王殿の前でよくそんな事言えますなwww空気を読むでござるよwww」

ティンカーベル「知ったこっちゃないよ!作者は読み手に何かを伝えたいからおとぎ話を書くって事、私は理解してるつもりだよ?マッチ売りちゃんの結末は悲しいけど意味のあるものだと思ってるし、きっとたくさんの人の心に響いて優しい気持ちにさせてるなって信じてる」

ティンカーベル「でもいくらなんでも多すぎなんだよ!しかもこれほんの一部でしょ?どうせ他にもバッドエンドあるんだろうし…理不尽エンドのおとぎ話のほとんどをこいつが書いてんじゃないかって勢いじゃん!」プンプン

ティンカーベル「私はマッチ売りちゃんの氏に意味があるって信じてたけど……バッドエンドが多すぎてなんかこいつのこと信用できなくなってきた!こいつ自分の趣味でこんな結末にしてんじゃないの?」イライラ

キモオタ「こwwwいwwwつwww遂にこいつ呼ばわりwww女王殿、ティンカーベル殿はちょっと興奮してるだけなので無礼は大目に見てあげて欲しいですぞwww」

雪の女王「気にしていないさ、私も初めはティンクと同じ意見だった。私達にとっておとぎ話の世界こそ現実だからな、氏の運命を背負った者を生み出すことが残酷だと考えるのは当然だ」

ティンカーベル「だよね!バッドエンドはまぁ仕方ないにしても氏なせる必要ないよね!そうすればマッチ売りちゃんだってもうちょっと救われたと思うもん!」

雪の女王「それはどうだろうな…氏ななければ本当に幸せなのか?」

ティンカーベル「えっ?」

雪の女王「マッチ売りに会った君達なら解るだろう、君達の干渉が無く、仮に彼女があの世界で生きながらえたとして…本当に幸福になれたと思うか?」

ティンカーベル「そ、それは…なれたかもしれないじゃん!もしかしたらあの神父さんがうまいこと…」

キモオタ「無いでござるな、シンデレラ殿と裸王殿の活躍が無ければ孤児院は作られなかったでござる。神父殿にはどうにもできなかったでござろう」

キモオタ「あの世界に一切の干渉が無く、あの雪の夜に運良くマッチ売り殿が生き延びたとして……あの父親の元では先は見えているでござるよ」

ティンカーベル「それはそうかも知れないけど…」

キモオタ「我輩も…アンデルセン殿は理不尽エンドを書きすぎだと思うでござる。しかし、ただバッドエンドを書きたいだけならもっと惨たらしく頃す展開を選ぶのではないですかな?」

キモオタ「『お婆ちゃんの幻を見て幸せな気持ちで天に召された』などと書いているあたり…マッチ売り殿のを苦しめるつもりなどなかったのでござろう」

658: 2016/08/15(月)01:03:23 ID:kNn
ティンカーベル「確かにキモオタの言うとおりかも…少なくとも悪意があったわけじゃないのか…」

雪の女王「キモオタ、君はなかなか良いところに目を付けるな」フフッ

キモオタ「いやはやwwwただのキモいオタクの妄想でござるけどwww」

ティンカーベル「でもさ、作者の趣味じゃないとしたらなんでこんなにたくさんバッドエンドのおとぎ話書いてるのかな?」

キモオタ「うむ…白鳥殿や親指姫殿も結末こそハッピーエンド寄りでござるけど、辛い日々を送っていたようでござるしな…」

雪の女王「君達はさっきからバッドエンドバッドエンドと言っているが…アナスンはこう言っていたぞ」フフッ


雪の女王「『【マッチ売りの少女】はハッピーエンドだ』と」


ティンカーベル「はっ!?えっ!?何!?どゆこと!?」

キモオタ「ブヒィ!?どういう意味ですかな!?」

雪の女王「まぁ、そういう反応になるか。まぁ君達もこの話が終わることには…アナスンという人物が少しは理解できるかも知れないな」

ティンカーベル「えーっ、正直、自信ないけど…絶対私は理解できないタイプの奴だと思う、だってあれ…少なくともハッピーエンドじゃないでしょ?」

キモオタ「まぁまぁwwwとにかく聞かせて貰うでござる、アンデルセン殿の事を理解できればマッチ売り殿の運命の事も…もっと深く知れるでござろうwww」

雪の女王「そうだな、少し前置きが長くなってしまったが…彼について語るとしようか」

雪の女王「これは、ずっとずっと昔…この世界が生まれて間もない頃、現実世界で【雪の女王】が発表されてしばらく経った頃の話だ」

・・・

659: 2016/08/15(月)01:06:19 ID:kNn
ずっと昔…現実世界でおよそ170年前
雪の女王の世界 冬 とある村外れ

ビュオオォォォ 

きこりのおっさん「おぉい、そこのソリぃ止まれ、止まれぇ!ここは通れねぇぞぉ!」

男「待ってくれ、通れないってどういう事だ!?俺は急いでるんだ!早く隣村までいかねぇといけないんだぞ!」ズサー

きこりのおっさん「そうは言ってもなぁ、昨日の晩の大雪で橋が壊れちまって通れねぇんだ。まだ修理には時間かかるぞぉ?」

男「何とかならないのか!?嫁さんが急に産気づいちまって…今すぐにでも隣村の産婆に頼まねぇといけねぇんだ!」

きこりのおっさん「そりゃ大変だぁ!でも橋はまだ直らねぇ…お前さんそこの村のもんだろ、そこにも産婆はいただろぉ?」

男「間が悪いなんて言っちゃいけねぇが…隣の家の奥さんも少し前に産気づいちまって、そっちについちまってる…うちのはまだ少し余裕がありそうだからすぐに隣村から産婆を呼んでくれって言われてよぉ…」

きこりのおっさん「ぬぅ…力になりてぇが、大回りして下流の橋を通った方が早いかもしれねぇな…」

男「何時間余分にかかると思ってんだお前!手遅れになっちまったら俺はどうすりゃいいんだこのヒゲモジャが!」グイグイ

きこりのおっさん「お、俺に当たるんじゃあねぇって、そうは言っても…うぉっ、何だぁ!?」

ビュオオオオォォォ

男「なんだ!?突然吹雪が…!くっ、前が見えねぇ!なんだってこんな日に!」

ビュオオオォォ

660: 2016/08/15(月)01:08:28 ID:kNn
ビュオオオォォォ…スッ

きこりのおっさん「ぬぅ…おさまったか。何だったんだ今の吹雪は…突然吹雪いてあっと言う間におさまっちまったぁ…」

男「お、おい!?こりゃあどういう事だぁ!?」

きこりのおっさん「ん…?な、なんじゃぁこりゃあぁ!?」

キラキラキラ…

男「さっきまで何もなかった場所に氷で出来た橋が…!」

きこりのおっさん「よぉし、ちょっと待ってろぉ!……大丈夫だぁ、強度も十分だ!通れそうだぞぉ!」グッグッ グイグイ

男「ほ、本当か!?助かった…これで隣村まで行ける!」ホッ

きこりのおっさん「不思議な事もあるもんだぁ…きっと妖精がお前さんを助けてくれたんだなぁ、それより急げぇ!嫁さんがまってるぞぉ」

男「お、おう!それじゃあ俺は行くわ!」ススーッ

きこりのおっさん「うーむ、こんな事もあるんだなぁ…。しかしこんな立派な橋があるってぇなら急いで橋を直すことねぇかなぁ…」

セクシー美女「…その橋、あまり長くはもたないぞ」

きこりのおっさん「!? 姉ちゃん一体どこから現れたんだぁ!?」

セクシー美女「ゲルダの父親…さっきの男が戻ってくるまでは大丈夫だが、その後は次第に溶けていく。早急に橋の修理をした方がいい」スッ

ビュオオオォォォ

きこりのおっさん「消えた…!な、なんだったんだ今の姉ちゃんは…まさか、雪の妖精か…?」

661: 2016/08/15(月)01:11:16 ID:kNn
雪の女王の世界 女王の宮殿

雪の女王「……さっきのは余計な手助けだったかもしれないな」ファサッ

雪の女王「生み出されて間もないこの世界が消える道理はない、おそらく遠回りをしてもあの男の奥さんも赤ん坊も何一つ問題なかっただろうに」

雪の女王「……まぁいいか、カイは無事に生まれたようだし。あの様子ならば今頃、ゲルダも元気な産声を上げていることだろう」

雪の女王「……」

雪の女王(しかし…未だに私は納得していない)

雪の女王(この世界は現実世界に住むアンデルセンという男が生み出したおとぎ話の世界…作者が書き記した通りの筋書きで人々の運命が定められた【雪の女王】の世界)

雪の女王(私がこの世界で一番の魔力と自在な氷結能力を持つ雪の女王であることも、このだだっ広い宮殿に一人で暮らしていることもアンデルセンが定めた運命)

雪の女王(今日、あの村で産声を上げた二人の赤ん坊…ゲルダとカイと名付けられる二人の子供にも重要な役割が与えられている)

雪の女王(まだ先の話だが…親友同士になった二人、カイは悪魔の鏡が原因でゲルダと決別する。その彼を私がこの宮殿へとさらってくる…それが私に与えられた役割であり運命だ)

雪の女王(私の役割はいわゆる主人公の敵役、悪役。それに関しては何も思わない、私には両親も家族も友人も存在しないから誰かを巻き込むこともない。悪役だろうとなんだろうと引き受けてやろう)

雪の女王(それよりも納得がいかないのは主人公ゲルダの運命の方だ。ある日突然親友カイと離ればなれになり、彼を取り戻すために彼女は一人でこの宮殿を目指して旅をする)

雪の女王(旅の協力者はいる、最終的にカイを取り返すこともできて幸せな結末が待っている。しかし…決して楽な旅ではない、何一つ罪を犯していない少女が何故過酷な旅を強要されなければいけないのか)

雪の女王「少女に…子供に何故そんな過酷な運命を押しつけるのか?私には理解できない」

雪の女王(アンデルセンという男は…私の理解の外にいる。子供は守るべき存在、愛でるべき存在。無用な試練を与える必要があるだろうか…?)

662: 2016/08/15(月)01:14:34 ID:kNn
それからしばらく経ったある日

雪の女王「……」

雪の女王(私は苛立っていた)

雪の女王(ゲルダとカイが生まれ、この世界の物語が動き出してからというものどうしてもアンデルセンという男のことが気になった)

雪の女王(彼はただの作者。現実世界の男、おとぎ話の住人である私が気にかける必要などなかった)

雪の女王(だがどうしても…その作者が気になってしまったのだ。幸い、私には有り余る魔法の力が存在する。おとぎ話の世界の事情も、他のおとぎ話の存在も知っている)

雪の女王(彼について調べていくうちに一つの真実にたどり着いた。どうやら彼が紡ぐおとぎ話の多くは主人公が苦しみ辛い思いをするようなのだ)

雪の女王(おとぎ話はその全てがハッピーエンドではない。それは当然だ、おとぎ話には教訓を与える役割もあるのだから主人公全てが幸せになるとは限らない。だが…)

雪の女王(彼が紡ぐおとぎ話のいくつかは…理不尽な運命を主人公が強いられている。自業自得とはとてもいえない者も多い、幸せな結末さえ与えられない、救われることのない主人公が大勢いる)

雪の女王(悲恋の末泡と消える人魚、恋実らず焼き解かされる玩具の兵隊、人間に弄ばれるヒバリとヒナギク…。
詐欺師に騙される王、自らの行いが原因とはいえ沼に沈められる娘、同様に終わることのない舞踏を続けざるをえない少女。周囲に翻弄され続ける小さな娘、独りきりで虐げられ続ける白鳥…あげればきりがない)

雪の女王(これほど辛い思いをしている者が居て、その元凶がアンデルセンであると知って…私は黙っていられない)

雪の女王(その多くの主人公は自分がおとぎ話の世界の住人だと言うことすら知らないだろう。しかし…私は知っている)

雪の女王(そして私なら…現実世界へ向かうことが可能。世界を移動する魔法は使える、アンデルセンに与えられたこの魔力を兄弟姉妹たちの為に使うべきだ)

雪の女王(そう、私は決めた。現実世界へ渡り、私たちのおとぎ話を生み出したアンデルセンに出会い、その悪行を止めさせる)

雪の女王「罪のない主人公たちを苦しめる作者は…まさに悪魔だ。その悪魔を、私は成敗しなければいけない」

・・・

663: 2016/08/15(月)01:17:15 ID:kNn
1840年代
現実世界 デンマークのとある都市

ザワザワ ザワザワ

雪の女王「……」スタスタ

雪の女王(この国、この都市にアンデルセンは住んでいる筈だ。だが正確な場所までは把握できていない、地道に探し出すしかないが…それより)

「おい、あそこ歩いてる女…この辺りでは見慣れない服装だな、外人かな?」
「っていうか、すげー美人だぜ。もう結構冷える季節になったのに妙に露出も多いし…いや、それは大歓迎なんですけどね。乳デカいし!」
「じろじろ見るなよお前、デンマークの民度が低いと思われるだろ…とはいえ綺麗な人だよな」

雪の女王(少々、私のこの姿は目立つようだ…。彼は私達おとぎ話の住人が実際に存在している事すら知らないだろうが、目立たないに越したことはないな。何か変装を…)

スッ

若者「そこのお姉さん、見たところ観光かな?この街は見所多いから悩んじゃうでしょ、俺が案内してあげようか?」ヘラヘラ

雪の女王「そうだな…是非案内を頼もうか。とはいえ観光地には興味ないんだ、できれば路地裏のような人目に付かない場所へ案内して欲しいな」

若者「路地裏?なんでそんな所に…」

雪の女王「フフッ、人目に付かない場所でする事なんかそう多くはないじゃないか。それとも私に皆まで言わせるつもりかい?」クスクス

若者「えっ、マジで?それってもしかして…行く行く!行きます!そこの路地裏なら人通り超少ないからそこに行こうか」ウヘヘ

雪の女王「何処でも構わないよ、誰にも見られないのならな」フフッ



ペキペキペキ ヌアアァァー!

雪の女王「さて、男物のコートだが…これで少しは目立たずに済むな。しかし人目に付かない場所へわざわざ行かないと魔法が使えないのは面倒なものだな」スタスタ

664: 2016/08/15(月)01:20:28 ID:kNn
雪の女王(さて…あまり派手に聞き込みをする訳にもいかないが…一軒一軒当たっていくわけにもいかない、そもそもアンデルセンの風貌を知らないからな)スタスタ

雪の女王「となると…どうやってアンデルセンの家を探すのが最善か…」

靴磨きの少年「ねぇねぇお姉さん、アンデルセン先生に会いたいの?」ニコニコ

雪の女王「口に出ていたか…。その通りだが、君はアンデルセンの家を知っているのか?」

靴磨きの少年「残念だけど知らないよ。でも先生がよく行く本屋さんなら知ってるよ、そこの店員さんなら先生の住所知ってるかも。ところで…お姉さんの靴、少し磨こうか?」ニコッ

雪の女王「そうだな、世間話でもしながら磨いて貰おうか。代金は銀貨一枚で足りるか?」

靴磨きの少年「うん、十分だよ。じゃあちょちょっと磨いちゃうね……あぁアンデルセン先生だけどね、先生はそこの広場の脇にある小さな本屋によく入ってるのを見るよ」フキフキ

雪の女王「そうか。この後そこの本屋に行ってみるとしよう」

靴磨きの少年「そっか、でもお得意先の住所を見知らぬ女の人に教えてくれないと思うよ?先生に会いたくて来る観光客だって少なくないし、その辺のガードは堅いんじゃないかな。方法がない訳じゃないけど」チラチラッ

雪の女王「フフッ、君は実に腕のいい靴磨きだな。銀貨をもう一枚渡すからもう少し念入りに頼むよ」

靴磨きの少年「そりゃどーも。そういえばあの本屋さん、いつも通りならもう少しあとに本とかインクとかの配達をすると思うよ。もしかしたらアンデルセン先生にお家にも届けにいくかもね……はい、終わり!」キュッキュッ

雪の女王「君のおかげで足取りが軽くなりそうだ、ありがとう」ナデッ

靴磨きの少年「いえいえ、また靴磨きが必要ならいつでもどーぞ」ニコニコ

665: 2016/08/15(月)01:24:29 ID:kNn
しばらく後…
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの自宅

雪の女王「思った以上に容易くたどり着けたな。私が思っていた以上に彼が有名人だったということもあるが…しかし、有名人の割には普通の家に住んで居るんだな」

雪の女王「…さて、いつまでも家の前をうろうろしていて怪しまれても良くない」スッ

雪の女王「そこの路地からなら人目に付かないな、丁度よく小窓もある。鍵はかかっているかも知れないが…まぁそれは大した問題じゃない」

パキパキパキ ガチャン

雪の女王「……家の中から人の気配はしないな。それじゃあお邪魔させて貰おう」スタッ

雪の女王「さて…作家先生なんだ、どこかに執筆作業に使っている部屋があるはずだ。そこで彼が帰ってくるのを待とう」

雪の女王「アンデルセンに出会ったら、まずは奴が執筆した残酷な物語の数々を書き直させる」スタスタ

雪の女王「他人が無理やり干渉すればおとぎ話の世界が消える可能性もあるが、作者ならば問題がない筈だ。もしも私の要求を飲まず…おとぎ話の修正を断るようならば」スタスタ

雪の女王「彼が私に与えたこの氷結能力で脅迫する。アンデルセンがどんな男だとしても…自分のおとぎ話よりも命を優先させるだろうからな…っと、この部屋かな?」スタスタ

ガチャ

雪の女王「ペンにインク、原稿紙…どうやらここがアンデルセンの仕事部屋のようだ」

雪の女王「資料らしい本の他に自分が書いたおとぎ話の本も並んでいるな、私の世界【雪の女王】も並んでいる。この多くの物語の主人公が奴の餌食になっているわけだ…」

雪の女王「なんにせよアンデルセンが帰宅してからだな。それにしても慣れない世界を歩き回って少々疲れた、少し座って…んっ?机の上に原稿が置いてあるな、どうやら書き終えたばかりのおとぎ話のようだが…」

雪の女王「奴はいつ戻ってくるかわからない、退屈しのぎに読ませて貰おうか。この原稿の、このおとぎ話のタイトルは…」

雪の女王「【マッチ売りの少女】…か、せめてこの物語の主人公が他の主人公のように辛い思いをしないことを祈るばかりだな」ペラッ

666: 2016/08/15(月)01:28:50 ID:kNn

アンデルセンの自宅

アンデルセン「いやはや、参ったな。すぐに家に戻るつもりが…すっかり遅くなってしまった。まだ新作の推敲が終わっていないというのに、さぁ急いで推敲を始めよう」ガチャガチャッ

男の声『待て…妙だ、アンデルセン。お前は家を出る前、確かに鍵を閉めた。何故、家の中から人の気配がする?』

アンデルセン「人の気配?私には何も感じないのですが…」

男の声『私はお前と違って敏感だ、間違いない。しかも…ただの盗人じゃあなさそうだ…おとぎ話世界の住人の可能性が高い、膨大な魔力を感じる』

アンデルセン「おぉ…それは楽しみだ!どこの世界の誰かは知らないがおとぎ話の世界に住む者が私に会いに来てくれたというわけだ!」フフッ

男の声『愚か者、お前はあの様な物語を書き連ねておきながらよくも楽しげに出来るものだ。お前の作風はおとぎ話の住人に愛されると言うよりは恨みを買う方だ』

アンデルセン「そんなつもりは無いのだが…私は自分に作品を愛しているんですよ?」

男の声『お前がどう思っているかなど関係は無い。おとぎ話の住人は作者の決定には抗えない、そして作者に想いまでは知る由がない』

男の声『私に言わせればお前がおとぎ話の住人に恨まれて殺されようが自業自得だ。おとぎ話に人々の未来を変える力があるなどと未だに信じている愚かな男への報いだ』

アンデルセン「おや、あなただって以前は私と同じ志だったと聞いていますけどね」

男の声『過去の話だ。おとぎ話にはそんな力は無い。そして私はもう、決して筆をとらない』

アンデルセン「勿体ないですよ、かつて沢山の名作を生み出した作者であるあなたがもう筆をとらないというのは…」

男の声『……今はそんなことはどうでもいい、どうやら客人はお前の書斎で待っているようだ。早く向かうべきではないか?』

667: 2016/08/15(月)01:38:22 ID:kNn
アンデルセンの書斎

ガチャッ

雪の女王「……っ」ギロッ

アンデルセン「これは驚いた、私の書斎に忍び込むなんて誰かと思ったが…こんなに美しい女性だとは思わなかった」フフッ

雪の女王「…貴様がアンデルセンだな?」

アンデルセン「あぁ、如何にも。私がハンス・クリスチャン・アンデルセンだ。君の名も是非教えて欲しいものだが…」

雪の女王「その前に答えて貰おうか、この原稿は…何だ?」バサッ

アンデルセン「っ、ぞんざいに扱わないで欲しいものだ。それに何…とはどういう意味かな?それは昨晩書き上げたばかりのおとぎ話【マッチ売りの少女】というおとぎ話だ、まだ推敲を残しているから完成とはいえないが」

雪の女王「私が問いかけているのは内容の事だ」

アンデルセン「内容…?この作品に何かおかしなところがあるかい?」

雪の女王「色々と言いたいことはある、だがこの物語は何だ!?常軌を逸している!正気じゃあない!まともな人間がよくもこんな残酷なバッドエンドを書けたものだ!」バンッ

アンデルセン「バッドエンド…?おかしな事を言う女性だ、【マッチ売りの少女】はハッピーエンドじゃないか、マッチ売りは氏ぬことが出来て幸せだったんだからね」

ヒュッ バチーンッ!!

アンデルセン「ぐっ…!何をするんだ君は…!」

雪の女王「…人を殴るなんて初めてだ。だが私の心は決まった…あぁ、まだ名乗っていなかったな」

雪の女王「はじめましてアンデルセン、私は貴様が生み出した雪の女王という名の魔女だ。そしてさようならだ、アンデルセン」

雪の女王「私は貴様を頃すことに決めたよ、無慈悲で残酷な作者様を…!」ギロリ

パキパキパキ ヒュオオオォォォ

678: 2016/08/22(月)00:39:01 ID:kap
過去、現実世界 (1840年代)
アンデルセンの書斎

アンデルセン「そうか、君は雪の女王か。自分が生み出した物語の登場人物と言葉を交わせる日が来るとは…実に喜ばしい」フフッ

雪の女王「私はただただ不愉快だがな。貴様の思想もその余裕そうな態度も全て気にくわない」スッ

パキパキパキ…! シャキンシャキン

アンデルセン「おぉ、無数の氷の刃で私の動きを封じるとは…いやはや見事な手際だね、流石は雪の女王だ。賞賛と拍手を贈ろう」パチパチパチ

雪の女王「止めろ。嘗めた態度で私を挑発して隙を生み出そうというのなら無駄だ」

アンデルセン「失敬、そんなつもりは無いよ。純粋に君の能力への賞賛さ」

雪の女王「余計な行動はするなと忠告してやろう。今、私は貴様の命を容易く散らせるという事を忘れるな」

アンデルセン「君は随分と物騒な物言いをするね。冷静沈着に見えてその心に秘めた怒りと情熱は『雪』とはあまりにもかけ離れている…『焔』という二つ名の方が今の君にはお似合いかな」クスクス

679: 2016/08/22(月)00:40:40 ID:kap
雪の女王「訂正する、余計な言葉も発するな。刻まれて氏ぬのが嫌ならこの書斎ごと貴様を焼き殺そうか?私はどちらでも構わない」ギロリ

アンデルセン「むぅ…すまない、そう怒らないでくれ。私は場を和ませようと冗談を口にしただけなんだ、悪気は無いよ」

雪の女王「悪気は無い…か。貴様が不幸にしてきた数多くの主人公たちにもそうやって言い訳をするつもりか?」ギロッ

アンデルセン「薄々感づいてはいたけれど…。君がこの世界へ来た理由は私が執筆したおとぎ話に不満があったから…そうだね?」

雪の女王「その通りだ、私は貴様のせいで苦しんでいる者達を救いたい。しかし物語の筋を無理に変えればその世界を消滅させてしまう、一度決められた結末を変えることは出来ない。ただ一人、作者を除いてな」

アンデルセン「なるほど、君の納得がいくように物語を書き直せと言うんだね」

アンデルセン「…確かに作者である私になら人魚姫の恋を成就させる事も、赤い靴の少女の呪いを解く事も、マッチ売りに裕福な暮らしをさせることも容易い…君はそれを望んでいるんだろう?」

雪の女王「そうだ。今すぐに彼女達の物語をハッピーエンドに書き直すというのなら、私はこの刃を収める。だが断るというのならば…どうなるかは言わずとも解るな?」

アンデルセン「あぁ解るとも、だが君の望みには応えられない。私はおとぎ話の結末を決して変えるつもりはないよ」

680: 2016/08/22(月)00:42:26 ID:kap
ヒュッ ザシュッ

アンデルセン「……っ!」ボタボタ

雪の女王「残っている方の耳でよく聞け、アンデルセン」スッ

雪の女王「貴様のおとぎ話を全てハッピーエンドに書き直せ。これは頼みでも要求でもない、命令だ。次は耳では済まさないぞ?」

アンデルセン「ハハッ…やっぱり君は『雪』なんかじゃないなぁ」ハハハ…

雪の女王「余計な言葉を発するなと私は言ったはずだ、何度も言わせるな。私の命令に対して首を縦に振る事、それ以外の言動は氏に繋がると思え」

アンデルセン「君こそ何度も同じ事を言わせないで欲しいな、私は言ったはずだよ」

アンデルセン「おとぎ話の結末は変えない。君がどんな暴挙に出ようこの考えは覆らないよ」

シュッ ピタッ

雪の女王「こんな風に…刃の切っ先を喉笛に突きつけられなければ正しい判断ができないか?アンデルセン」

アンデルセン「……っ」

雪の女王「図に乗るなよ?私は貴様を頃すことに抵抗も躊躇も感じない。これが生き長らえる最後のチャンスだと思え、さぁ…結末を変えろ」

アンデルセン「断る。決して変えないよ、私は」

雪の女王「……っ」

アンデルセン「どうしたんだい?私は生き長らえる最後のチャンスをふいにしたんだ。さぁ、ひと思いにやってくれ…私を頃すんだろう?雪の女王」フフッ

681: 2016/08/22(月)00:44:15 ID:kap

雪の女王「貴様…!」ギロリ

アンデルセン「いや…女王である君の手を煩わせるのは忍びないな…。目の前に丁度良い刃があるんだ、これで自ら命を絶つとしようか」スッ

雪の女王「……っ!やめろ…!」

フッ

アンデルセン「どうしたんだい?氷の刃を収めては私を頃すことが出来ないぞ?」フフッ

雪の女王「…もういい、茶番を続けるな」

アンデルセン「そうかい?君が言うのならそうしようか」フフッ

雪の女王「やはり貴様は…意地の悪い男だな」ギロリ

アンデルセン「私のおとぎ話を書き換えられるのは私だけ、頃してしまって君は望みを叶えることが出来ないばかりか唯一の希望すらふいにしてしまう」

アンデルセン「でも君はそこまで愚かじゃない。頃す頃すと強気に脅してきたのも、それを悟らせないためだったんだろう?」

雪の女王「……」ギロリ

アンデルセン「そう睨まないでくれ、もう私を脅迫して我を通すことは無理だと解っただろう?ここは一つ話し合いで解決しようじゃないか、君にはそれしか手が残っていないのだしね」

雪の女王「言葉の端々に嫌みを織り交ぜるのは止めろ。私の憎しみを煽って貴様に利益があるのか?」

アンデルセン「あぁ…すまない。全くの無意識なんだ…悪気は全くないんだ、大目に見て欲しい」

682: 2016/08/22(月)00:46:33 ID:kap

雪の女王「……で、話し合いで解決すると貴様は言ったな?」

アンデルセン「言ったね。あぁ、耳の手当てをしながらでも構わないね?こう見えて相当痛いんだよ」ハハハ…

雪の女王「好きにしろ。話を戻すが…そう言った以上、場合によってはおとぎ話の結末を書き替える、そう解釈してもいいな?」

アンデルセン「構わないよ。そうでなければ嘘になってしまう」ガサガサ

雪の女王「さっきはあれほど頑なに拒んでいたというのに、どういう心境の変化だ?」

アンデルセン「誤解を招かないように言っておくけれど、既に世間に発表されている【人魚姫】や【赤い靴】の結末は決して変えないよ」

アンデルセン「私は自分の納得できる物語を書けたから世間に公表した。これを変えることはありえない。もうこれに関しては諦めてくれとしかいえない」

雪の女王「…それならば、私が結末を変える事が出来るのはこの原稿のおとぎ話だけというわけか?」スッ

アンデルセン「そうだね、この原稿のおとぎ話【マッチ売りの少女】はまだ世間に公表していない」

アンデルセン「作者である私とある童話作家と…それと書斎に忍び込んで盗み見した君の三人だけだ、この童話の内容を知っているのは」

雪の女王「まだ発表されていないから世界も構築されていないというわけだな。だが……」ペラペラ

雪の女王「何度読んでも胸くその悪い内容だ。よくも貴様はこんな物語を書けたものだと心底思う」

雪の女王「可哀想な少女が報われず救われず氏んでいくだけなど…そんな結末には絶対にさせない。必ず貴様を説き伏せて彼女には幸せな結末を用意させる」

683: 2016/08/22(月)00:49:28 ID:kap
アンデルセン「その前に…雪の女王、最初の読者として君に聞きたい。【マッチ売りの少女】を読んだ感想を、聞かせてくれないか」

雪の女王「貴様を頃す決意が固まった」

アンデルセン「いや、そういうのではなくて…もう少し一般的な感想をだな…」

雪の女王「それほどに残酷だった。という事だ」フイッ

雪の女王「それに貴様の口振りだと…おとぎ話を書いてそれが世間に知れ渡るとそのおとぎ話の世界が生まれる、と言うことを知っていたようだな?」

アンデルセン「そうだね、知っていたよ。とある童話作家から聞いたからね」

雪の女王「本来、現実世界ではそれは知られていないはずだ。貴様がどこからそれを知ったのかまでは聞かないが…この事実を知っていたという事は」

雪の女王「【マッチ売りの少女】を生み出すという事はそれと同時に父親に虐待され貧しく食事もできず苦しい生活の末、些細な幻にすがって凍氏する…そんな少女を実際に生み出す。それを理解した上で執筆したということだな?」

アンデルセン「そう思ってくれて構わない。それを理解した上で私はこの物語を書いた」

雪の女王「残酷だとは思わなかったのか?このマッチ売りに申し訳ないとすら思わなかったと?」

アンデルセン「…残酷だとは思う、マッチ売りには酷な運命を背負わせたとも思う」

アンデルセン「だが私は童話作家だ、必要があると考えたから彼女にこの運命を定めた。それに…」

アンデルセン「彼女なら…あの女性ならきっと私の考えを理解して納得してくれると信じている。マッチ売りはきっと私の意図を汲んで運命を受け入れてくれると信じている」

684: 2016/08/22(月)00:54:39 ID:kap

雪の女王「あの女性…?」

アンデルセン「マッチ売りにはモデルがいるんだ。優しくて自分のことより他人を優先する優しい女性だった」

アンデルセン「私は数え切れない程の愛情と恩を受け取ったけれど何一つ返せないままこの世を去ってしまった。せめてこの【マッチ売りの少女】が恩返しになればいいのだが」フフッ

雪の女王「…貴様は不可解なことばかり口にする男だ」

アンデルセン「そうかい?」

雪の女王「そうだろう。こんな残酷なおとぎ話の主人公のモデルにされてその女が喜ぶ訳ないだろう。むしろ普通は憤慨する」

雪の女王「それに貴様はこのおとぎ話をあろうことかハッピーエンドだなどと抜かした。私に言わせれば全てのおとぎ話の中でも屈指のバッドエンドだ、こんな残酷な結末が他にあるか?」

アンデルセン「確かに彼女の境遇は残酷かも知れない。だがあの結末はむしろハッピーエンドだ」

雪の女王「解らない男だな貴様は。氏を迎える結末が幸せだというのか?」

アンデルセン「解っていないのは君だと思うが…ならば生きていれば幸せなのか?」

雪の女王「当然だろう、氏んでしまっては終わりだ。幸せになる未来すら失うことになる」

アンデルセン「わかっていないな…未来なんかないんだよ、貧民には」ボソッ

雪の女王「何だ?よく聞こえなかったが?」

アンデルセン「いいや、なんでもないよ。すまないがその原稿をよこしてくれ」スッ

685: 2016/08/22(月)00:56:32 ID:kap
アンデルセン「さて…本題に入ろう」スクッ

アンデルセン「君は私のおとぎ話の主人公を…マッチ売りを救いたいと考えている。それはおとぎ話がただの『物語』ではなく君たちのとっての現実だからだ」

アンデルセン「だが私もそうそう容易く自分の想いを曲げられない。私は必要だと思ったからこの物語を執筆した、当然この結末も必要なものだと思っている」

雪の女王「私はそうは思わないがな」

アンデルセン「君と私は違うからね。だからこそこのおとぎ話を書いたともいえるが…ともかく」

アンデルセン「私としてもマッチ売りには幸福になって欲しいと思っている、だからハッピーエンドにした訳なのだし」

雪の女王「貴様はまだ言うか、あの結末の何処が…」

アンデルセン「それに関してはひとまず置いておくとして…とにかく私にとってこの物語はハッピーエンドなんだ。それを書き換えろと言うからにはこれよりも素晴らしい結末でなければいけない」

雪の女王「…つまり、私に現状よりもマッチ売りを幸せに出来る結末を用意してみろという事だな?」

アンデルセン「そうだ、それに私が納得すれば結末をきちんと書き換えて発表する。それで私に出来る精一杯の譲歩だ」

雪の女王「十分だ。こんな最悪の結末よりも幸せな展開など湧き出るほど存在するからな」

アンデルセン「そうか、ならば君の考えるハッピーエンドを聞かせてくれ、私はそれをメモしていく」スッ

686: 2016/08/22(月)00:59:36 ID:kap
雪の女王「そうだな…まずは氏ぬのは無しだ」

アンデルセン「氏ぬのは無し、と。ならばマッチ売りは何故氏なないんだい?」

雪の女王「何故?こんな幼い少女が氏ぬなど可哀想だからに決まっているだじゃないか」

アンデルセン「そうじゃない。これはおとぎ話だが最低限のリアリティは必要なんだ」

アンデルセン「マッチ売りは貧しい暮らしをして食事も着るものにも困っているんだ、まともな防寒もせずに体調も万全じゃない状態で一晩過ごせるとは思えない」

雪の女王「ならばそもそも貧しい生活という設定を変えるべきだ、彼女は裕福な家に暮らしていて両親からも愛されていてだな…」

アンデルセン「……何故そんなお嬢様がマッチを売る事になるんだ?」

雪の女王「売らなくてもいいだろう、マッチ売りが幸せならば」

アンデルセン「…目だ、そこを変えたらこの物語の意味がない。マッチ売りの境遇はそのままで最後の晩だけの改変しか認めない」

雪の女王「注文の多い奴め…ならばこうだ。その日、マッチがたくさん売れた事にしろ。そうすれば氏なないだろう」

アンデルセン「マッチがたくさん売れました、おしまい……では物語を締めることなんかできない。それくらい配慮してくれないか?」

雪の女王「何の問題がある?オチが特にないおとぎ話なんていくらでもあるだろう」

アンデルセン「民間伝承ならともかく私のおとぎ話は創作童話だ、そんな結末では多くの人に読んでもらえるわけがない

687: 2016/08/22(月)01:03:25 ID:kap
しばらく後…

雪の女王「……」ムムム

アンデルセン「もうそろそろネタ切れではないか?」

雪の女王「待て、今考えているところだ」

アンデルセン「いいよ、いくらでも待つ。でもわかっただろう、これ以上のハッピーエンドなどありはしないんだよ」

雪の女王「黙っていろ。ならばこうだ、マッチ売りが息を引き取る前に心優しい富豪が現れてだな…」

アンデルセン「よく読んでくれるか女王、この街にそんな富豪が居るならもう少しマッチ売りはましな生活が出来ているさ」

雪の女王「何なんだ貴様は却下却下と、結局マッチ売りを幸せにするつもりも結末を変えるつもりもないんじゃないか」バンッ

アンデルセン「…君は魔女としては一流だが作家としては三流だ」

アンデルセン「女王はマッチ売りを可哀想に思うあまり現実が見えていない。世間は彼女のような貧民には無関心だ、手をさしのべる者なんか決していない」

アンデルセン「食事も衣服も不足して、父親からは虐待され、毎日毎日苦しい日々を過ごすマッチ売りを助ける者なんていない…それは君も散々考えて解っただろう」

雪の女王「……」

アンデルセン「もう薄々理解してるだろう?私が何故、氏をハッピーエンドだと言ったか」

雪の女王「黙っていろ。私はまだ認めていないし諦めてもいない」

アンデルセン「無駄だよ女王…マッチ売りを、このような貧しい少女を救うのは氏しかない」

アンデルセン「この冷たい社会の中で貧しい少女は未来を夢見ることすら許されない。誰見手をさしのべてくれない上に少女が一人で生きていけるほど社会は甘くもない」

アンデルセン「氏ぬことでしか救われない、そういう状況もあるんだ。解っただろう、女王」

688: 2016/08/22(月)01:12:04 ID:kap

雪の女王「黙れ、私は認めない。そうだ魔法だ…魔法を使えばいい!マッチ売りの所へ魔女が現れる、これなら自然な展開だ」

アンデルセン「【シンデレラ】は名作だよ、ペロー先生の童話はどれもすばらしい。でも【マッチ売りの少女】には相応しくない」

雪の女王「貴様…いい加減にしろ、今度こそ問題はないだろう」

雪の女王「【シンデレラ】は人気の高い作品だ、あれも貧しい娘のシンデレラが登場するが魔法で助けられるじゃあないか。ならばマッチ売りも同じように…」

アンデルセン「私の作風はペロー先生のそれとは大きく異なる。民間伝承を元にしたファンタジー色の強いペロー先生の作品と違って私の作風はずっと現実的だ」

アンデルセン「ファンタジー色の強い作品を書くときだってリアリティは残している、そしてこの【マッチ売りの少女】は限り無く現実に近い形に仕上げたいと考えている、だから魔法使いは出せない」

雪の女王「マッチ売りを幸せにしたいとお前は言ったはずだ、ならば魔法を使って助ければいいだろう。何が気にくわない?」

アンデルセン「それなら聞くけれど現実世界に住む貧しい子供たちは…清く生きていれば魔法使いが来るのか?正しく生きていれば王子が来てくれるのか?ガラスの靴を持って?」

雪の女王「…いいや来ないさ。だが別にいいだろう、おとぎ話の世界なんだから多少は都合がいい展開だとしても」

アンデルセン「駄目なんだそれじゃ。ここで魔法に頼っては私が伝えたいことがかき消される、キチンと読み手に伝わらない」

アンデルセン「この思いが伝わらなければ未来を変えられない。貧しい子供たちを取り巻く現状を変えることなんてできないんだよ」

689: 2016/08/22(月)01:16:12 ID:kap
雪の女王「未来?現状を変える?貴様は何を…」

アンデルセン「【マッチ売りの少女】はただのおとぎ話じゃない」

アンデルセン「私が童話作家として出来る、貧しい子供たちの未来を救うための希望だ」

雪の女王「救う…?世界を、おとぎ話で、か?どういう事だ…?」

アンデルセン「…雪の女王、悪いが今日は帰ってくれないか」

雪の女王「…断る。貴様は何を言っている、話はまだ終わっていないだろう」

アンデルセン「わかっている。この話をうやむやにするつもりはない、ただ…君に見て欲しいものがある。だから明日、同じ時間にこの場所に来てくれないか?」

雪の女王「……」

アンデルセン「私がこのおとぎ話を通して伝えたいことを見せる。言葉では伝えきれないが…女王ならば必ず理解してくれるはずだ」

雪の女王「…いいだろう。つき合ってやる、ただしお前がこのおとぎ話に込めた思いとやらに納得がいかなかった場合は…このおとぎ話を世に出すことは許さない」

アンデルセン「それでも構わない。なんなら両腕をへし折ってくれても構わない」

雪の女王「…いいだろう。ならば明日、もう一度訪れる事としよう」スッ

690: 2016/08/22(月)01:21:01 ID:kap
女王が去った後 アンデルセンの書斎

男の声『貴様も酔狂な男だ』

アンデルセン「あぁ…いらしてたんですね。声が聞こえませんでしたからどこかへ行かれたのかと」

男の声『傍らでずっと聞いていた。所詮あの女はおとぎ話の住人、作者であるお前がその気になれば氷結能力を失わせることも出来ただろうに』

アンデルセン「その必要はありませんよ。それに…私を頃したいほど憎んでいるという事はそれ程マッチ売りや他の主人公を思ってくれていると言うことです。それは嬉しいことですよ」

男の声『くだらないな。所詮おとぎ話の住人など我々作者の道具に過ぎない。想いを伝えるための道具にな』

アンデルセン「あなたの事、尊敬していますよ。しかしそのような考えには賛同できません」

男の声『お前に賛同して貰おうとも思わん。だが私には無意味に思えてならない』

アンデルセン「そうでしょうか?」

男の声『あいも変わらず貴様はおとぎ話で未来を変えるなどと宣っているしな。不可能な夢を見るのも大概にしろ』

アンデルセン「不可能ではありませんよ。長い時間はかかっても必ず変えられます」

男の声『馬鹿め。実際に私は千年以上もの長い間人間の歴史を目の当たりにしてきた、だがおとぎ話如きに何かが変えられたことなど一度もない。不可能だ』

アンデルセン「……」

男の声『そもそみだ、おとぎ話の住人に現実世界の人間であるお前に考えなど理解できる訳ないだろう、世界が違う』

アンデルセン「そんなことはありませんよ。彼女は心優しい女性です、きっと私と同じ感情をもってくれるはずですよ」

・・・

691: 2016/08/22(月)01:22:30 ID:kap
お楽しみ

707: 2016/08/29(月)00:05:56 ID:VlT
時は少し遡って…過去、1835年
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅

出版業者「いやー、凄いですよ先生!先日増刷したばかりだというのに追加で刷ってくれって依頼がバンバン来てて…更に更に増刷することが決まりました!」ホクホク

アンデルセン「ふふっ、なんだか作者の私よりも君の方が嬉しそうだ」

出版業者「そりゃ嬉しいですよ!自分の所で印刷した本が大ヒットしたんですから、出版冥利に尽きるってもんです!」

出版業者「それにバンバン増刷してるんでぶっちゃけ儲かってます!これもアンデルセン先生と『即興詩人』のお陰ですよ!」

アンデルセン「私のような無名の作家の作品を世に出してくれたんだから君に感謝しているのはむしろ私の方だよ」

出版業者「そんな畏れ多いですってー!でも無名作家なのはもう過去の話ですよ、アンデルセン先生の名前を知らないデンマーク人はもう居ませんからね!よっ!有名作家!」ポンッ

アンデルセン「ふふっ、そんなにおだてなくても次回作を出すときには是非君の所に頼もうと思っているよ」クスクス

出版業者「いやいや!お世辞とかゴマスリとかではなくて…でも今後ともご贔屓にしていただけるならありがたいです!うちもバッチリ高品質な本を印刷し続けますんでまた声かけてください!」

アンデルセン「あぁ、実はいくつか案はあるんだ。まだ完成にはほど遠いのだけどね」スッ

出版業者「おぉ!それは楽しみですね、ちなみにどんな作品なんですか!?『即興詩人』のような恋愛小説ですか?それとも冒険小説?いや推理小説というパターンも…」

アンデルセン「どれもハズレだ。『即興詩人』への反響は非常に喜ばしいが私が目指している作家は小説作家ではないんだよ」

アンデルセン「私が目指しているのは童話作家だ。だから次の作品はおとぎ話にしようと思っている」

出版業者「お、おとぎ話…ですか?えぇ…マジですか…?」ドンビキ

708: 2016/08/29(月)00:09:53 ID:VlT
出版業者「ちょ、ちょっと待ってください先生!それちょっと考え直しませんか!?」ガタッ

アンデルセン「何故だい?私がおとぎ話を執筆することに何か問題があるのかな?」

出版業者「問題しかありませんよ!おとぎ話っていうのは子供向けの読み物で…!いわゆる子供だましなんですよ!?」

出版業者「世間ではほとんどの場合、童話は文学作品として認められませんし扱いも小説等よりずっと劣ります…それは先生もご存知でしょう?」

アンデルセン「童話という作品を取り巻く現状は知っているよ。しかしおかしいとは思わないかい?おとぎ話には素晴らしい作品だって多いんだ、それなのに子供向けだという理由で一蹴するなんて…間違っている」

出版業者「先生の仰りたい事は解りますけど、それが世間の評価なんですって!先生は『即興詩人』のような名作を執筆できる立派な小説家なんですから小説一本でいきましょうよ!」

出版業者「せっかく世間に認知されて評価もされてるのに、わざわざ童話なんか書いて先生の評判を落とすことは無いですって!」

アンデルセン「童話は近い将来、必ず文学作品として認められて確固たる地位を築く。シャルル・ペロー先生やヤーコプさんにヴィルヘルムさんのような童話作家もこの先増えていくだろう」

出版業者「それでも…!先生は一般的な小説が書けるんですからそっちに力を入れるべきです!」

アンデルセン「その方が君の会社は儲かるから…かい?だから人気の低い童話を書かれては困ると?」

出版業者「…正直に言えばそれも理由の一つです!でもそれだけじゃありません、私は出版業者である前に一人の人間として先生に才能に惚れているんです!『即興詩人』も自腹で買いました!」

出版業者「先生の才能はずば抜けています!だからこそ童話なんて書くのは勿体ないです!これは先生のファンとしての私の気持ちなんです!」

710: 2016/08/29(月)00:13:39 ID:VlT
・・・

アンデルセン「……何故だ、何故解ってくれない。世間のおとぎ話に対する評価は不当だ…何故だ…」ブツブツ

男の声『机に突っ伏していても作品は仕上がらない。いつまでそうしているつもりだアンデルセン』

アンデルセン「正直、あそこまで強く反対されるとは思っていませんでした。彼は『即興詩人』の出版で私のために親身にしてくれましたから、きっと協力してくれると信じてました」

アンデルセン「そのうえ…彼の忠告は私の作家としての将来を案じているからこそのものです。あれは彼の心からの言葉ですから尚更堪えました…」

男の声『だから私は忠告してやったのだ、童話作家を目指すなど止めろと』

アンデルセン「しかし…私の夢は童話作家です。作品を通して想いを伝えるには童話作家でなければいけません」

男の声『小説家の何が不満だ?小説でも作品を通して考えや想いを伝えることはできるだろう』

アンデルセン「そうですが、子供は小説を読みません。私が本当に想いを伝えたい相手は子供たちなんです」

男の声『お前はおとぎ話というものを高く評価しすぎだ。お前が思うほどおとぎ話は良いものでも力を持ったものでもない』

アンデルセン「かつては高名な童話作家だったあなたが、そんなことを口にするのですか?」

男の声『昔の話だ。今はただの亡霊だ。千年以上も前に肉体は朽ちたが、どう言うわけか私の魂はこの世に留まっている…理由は解らんがな』

男の声『だが現世に残れるなら儲けものだ、私は様々な人間の元を転々としながら長い時間を過ごした。霊で居るのも悪くない、こうして優れた作家の側にいればいつでも新作の小説を楽しめるのだからな。なぁアンデルセン』

アンデルセン「優れた作家などと…買いかぶりすぎですよ。『即興詩人』だってたまたま読者のウケが良かっただけです」

男の声『謙遜するな、お前の才能は本物だ。だからこそ私はお前の元に居る、そしてその存在を明かした。…その童話に夢を見ている所だけは頂けんがな』

アンデルセン「童話作家のあなたですら、認めてはくれないのですね。おとぎ話が持つ力を、未来を変える力を」

男の声『かつて童話作家だったからこそ、千年以上の時を過ごしてきた私だからこそ認めないのだ』

男の声『生きていた頃はお前と同じ考えを持っていた頃もあった。だが結局、おとぎ話などただの作り話に過ぎない。まして希望を託すなど愚かしい事だ』

・・・

711: 2016/08/29(月)00:18:11 ID:VlT

雪の女王が訪れた翌日
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅

・・・

男の声『起きろ。起きろと言っているのだ、アンデルセン』

アンデルセン「…んん、うたた寝してしまったようだ」ウツラウツラ

男の声『あの女との約束の時間まで僅かだ。寝過ごしてまた家を破壊されては私も居心地が悪い、早急に脳を覚醒させろ』

アンデルセン「あぁ…マズいですね。寝ぼけ眼では彼女に凍らされるかも知れない。えぇっと…蝶ネクタイはどこにしまったか…。フフッ…」

男の声『…何を笑っている?』

アンデルセン「思い出し笑いですよ、先程夢を見ましてね。私が童話作家になる前、丁度『即興詩人』を出版したころの夢です」ゴソゴソ

男の声『あぁ…あの頃か。私はあの時散々忠告してやったのに、結局お前は童話作家になるという愚かな道を選んだのだったな』フンッ

アンデルセン「私の夢でしたからね。ですが今はこうして結果も残せています、ですから『愚かな』という物言いは訂正していただきたいものです」

男の声『何を言っている、当時は滅茶苦茶に酷評されていただろう。あの出版業者の言葉通り、実力ある作家が童話など書くなとまで言われていた癖に』

男の声『まぁまったくの正論だったがな。それなのにどういうわけか…お前の童話は周囲に受け入れられてしまった、私には到底理解できんな』

アンデルセン「私が落ち目の時でも出版を引き受けてくれた彼や、常々文句を付けてくれたあなたのおかげですよ。感謝してます」フフッ

男の声『フンッ、お前のおとぎ話がどれだけ受け入れられようとそれがなんの力も持たないただの物語だという事実は変わらん』フイッ

アンデルセン「あなたは相変わらずですね、あの頃からおとぎ話への嫌悪は一向に変わらないんですから」

男の声『お前も大概だろう。いつまでも無意味な夢を追い続けている辺りがな』フンッ

・・・

712: 2016/08/29(月)00:21:27 ID:VlT
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅 前

雪の女王「……」ザッ

──アンデルセン「明日、同じ時間にこの場所に来てくれないか」

──アンデルセン「私がこのおとぎ話を通じて伝えたいことを見せる」

雪の女王(あの男が【マッチ売りの少女】を通して読者に伝えたかったこと……)

雪の女王(あの男は、アンデルセンは多くの主人公を不幸にした憎むべき作者だ。だが……この言葉が嘘だとは思えない)

雪の女王(アンデルセンは何を思ってあんな辛い結末の物語を生み出したのか…)

雪の女王「ここで考えても仕方ないか…。奴に会えば全て解る」スッ

リンゴンリンゴーン…

アンデルセン「あぁ、いらっしゃい。来てくれたんだね女王」フフッ

雪の女王「お前が来いと言ったのだろう?それとも来ない方が良かったか?」ギロッ

アンデルセン「そんな事はないさ、歓迎する。ただまた昨日みたいに鍵を壊して進入してくるのかも…と身構えていたから拍子抜けではあるかな」フフッ

雪の女王「そうか。今からでも遅くはないだろう、貴様の期待に応えて扉を破壊してやろうか?30秒ほど貰うが」スッ

アンデルセン「待ってくれ、冗談だ。これから出掛けなければいけないんだ、扉を壊されるのは困ってしまう」フフッ

713: 2016/08/29(月)00:23:38 ID:VlT
雪の女王「出掛ける…?その先に貴様があのおとぎ話を書いた理由があるというのか?」

アンデルセン「まぁそうだね。少し歩くが構わないだろう?」

雪の女王「いいだろう。そういう事ならつき合ってやる。それで、何か支度が必要か?」

アンデルセン「いいや、女王はそのままの格好で構わない。それ以外には必要なものも特に無い」

雪の女王「そうか。いや…待て、昨日似たような格好で街に出たら妙に目立ってしまったんだ。暗い色のコートを羽織るとかして変装しておいた方がいい」

アンデルセン「あぁ…確かに君の衣装は刺激的だ。この季節にしては露出も多い」クスクス

雪の女王「他人事のように…貴様がそのように生み出したんだろう?問題があるのなら貴様が責任を持ってなんとかしろ」ギロリ

アンデルセン「なんでも私の責任にされても困ってしまうな。だが問題はないよ、むしろ少々目立った方が好都合だ」

雪の女王「好都合…?」

アンデルセン「とにかくその格好のままでいいよ。さぁ、そろそろ行こうか」

雪の女王「待て。結局何処へ行くんだ?」

アンデルセン「そう身構えなくても良いじゃないか。なんてことない、ただのパーティー会場さ」スタスタ

714: 2016/08/29(月)00:29:26 ID:VlT
現実世界 デンマーク とある大きなパーティー会場

アンデルセン「さぁ到着だ。えぇっと、招待状は何処へしまったかな…」ゴソゴソ

雪の女王「随分と大きな会場だな。無駄に豪奢で、警備も客も多い…身なりに随分と金をかけていそうな輩も多い」

アンデルセン「貴族のお坊ちゃんの主催だからね。さて、女王には一つ芝居を打って貰うが…ここでは私の助手として振る舞ってくれるか?」

雪の女王「私が…貴様の助手だと?私がお前を襲撃した理由を忘れたか?」ギロリ

アンデルセン「忘れちゃいないよ。ただ…私はあまりこういった場には顔を出さないから女性の君を連れていれば周囲の人間は興味本位で関係を聞いてくるかも知れない」

アンデルセン「私もこう見えてこのデンマークでは随分と名の知れている男だ。腑に落ちないかも知れないが面倒を防ぐためだ、頼むよ」フフッ

雪の女王「…やむを得ないか。あくまでフリだ、いいな?」

アンデルセン「あぁ、構わないよ。助手クン、早速荷物を持ってくれるかな?」フフッ

雪の女王「……」ギロッ

アンデルセン「参ったな。こんな調子じゃすぐに怪しまれてしまう、そうすれば目的を達成することも難しいな…いやはや参ったな」ヤレヤレ

雪の女王「わかりましたお持ちします…ただしあまり調子に乗ると後で地獄を見ることになりますよ先生」ギロッ

アンデルセン「あぁ恐ろしい助手だ…まぁお手柔らかに頼むよ」クスクス

715: 2016/08/29(月)00:34:01 ID:VlT

ザワザワ ザワザワ

アンデルセン「さて…この辺りに彼が居るはずだが…」キョロキョロ

出版業者「あっ、アナスン先生!今日はご足労頂きありがとうございます!なんとお礼を言っていいやら!」

アンデルセン「やぁしばらくぶり。どうだい調子は?」

出版業者「おかげさまで特に病気もなく!どうやら先生もお変わりないようで!……ところでそちらの女性は?はっ!もしかして先生の恋人ですか!?」

アンデルセン「違う違う、そうじゃないよ。彼女は…」

出版業者「またまたー!隠さなくたって良いですよ!私と先生の仲じゃないですか!こんな若くて綺麗な女性捕まえて先生も隅に置けませんね!ふぅーっ!」フゥーッ

雪の女王「こいつが今、違うと言ったのが聞こえなかったか…?」ギロリ

出版業者「ひっ」ビクッ

アンデルセン「彼は私の作品の出版を担当してくれているんだ、随分長い付き合いになる。さぁ挨拶を」

雪の女王「…申し遅れました、私はアンデルセン先生の助手です。先程は冗談が過ぎて申し訳ございません」ニッコリ

出版業者「あっ、ジョーク!?そうですよね!いやいやこっちこそ失礼しました、先生は長らく助手さんをとらなかったので私はてっきり!ははは!」

アンデルセン「もう少しうまくあわせてほしいものだが…」ボソッ

雪の女王「お前のような男と恋仲だと思われた私の気持ちになれ。不愉快意外の何ものでもない」ボソッ

716: 2016/08/29(月)00:38:38 ID:VlT
出版業者「何はともあれ私がご案内しますよ!先生、どうぞこちらへ!助手の方も」スッ

アンデルセン「それにしても…随分大勢の客を招いたようだ、あのお坊ちゃんは。相当費用もかさんでいるだろうな」

出版業者「えぇ、豪華すぎです…普通はここまでしませんよ。やっぱり貴族の方は体裁とか気にしますからね、著名人も結構来てますよ。それであのー…先生のご友人のグリム様とかリンド様とかには…招待状渡していただきました?」チラッ

アンデルセン「それは手紙で断ったはずだが?」

出版業者「でしたよねぇ…ダメ元で聞きました」ペコリー

アンデルセン「ヤーコプさんもヴィルヘルムさんも何かと忙しいだろうしジェニーには舞台だってあるんだ。例え暇があったとしてもこんなくだらない集まりの為にわざわざ呼べないし呼ばないよ」

出版業者「…いや本当にすいません。失礼なのは承知の上なんですけど、私としても一応頼むだけはしておかないと」

アンデルセン「構わないよ、君の気苦労も理解できる」

出版業者「すんません、でも本当にアナスン先生が来てくださっただけでもぜんぜん助かりました。これでうちの会社も首の皮繋がりましたよ…」

雪の女王「おいアンデルセン…先生、結局この集まりは何なのですか」

アンデルセン「とある貴族の坊ちゃんが先日小説家としてデビューしてね、これはその記念式典を兼ねたパーティーというわけだ」

出版業者「そうなんです。その方はアナスン先生のファンらしくてですね…先生の作品を扱ってるうちの会社にその小説の出版をさせてやるからアナスン先生を紹介しろって言われまして」

出版業者「断ると後が怖いんで…失礼を承知で先生にお願いしていたんですよ。本当はこういう集まり苦手なのに本当にすいません、先生」

アンデルセン「まぁたまにはいいんじゃないか、それに別の目的も果たせそうだ」

717: 2016/08/29(月)00:42:31 ID:VlT
雪の女王「なるほど…その貴族としてはこのパーティーに貴様…先生が来ていれば箔が付くというところか。こう見えて有名作家だものな」

アンデルセン「貴族というのはやたら見栄を張りたがる。私がいれば『あのアンデルセンが認めた!』とか言いはれる、自画自賛になってしまうが私の名前は出版物を出す時に使えば何かと都合がいいのさ」

出版業者「先生以外にもいろんな著名人来てますよ、画家とか政治家とか歌手やら色々…挨拶回りだけで大変ですよ」グッタリ

雪の女王「他人の威光を借りようって腹積もりか…馬鹿馬鹿しい」

アンデルセン「気持ちは分からんでもないがな、意味があるかどうかは別問題だが」

出版業者「ちょっと先生も助手さんも何処で誰が聞いてるかわかんないんでもうちょっとトーンを…ところで招待状と一緒にお贈りした小説は読んでもらえました?絶対送ってくれって言われてるんで…」

アンデルセン「あぁ、一応目を通しておいた」

出版業者「助かります。あっ、あそこにいらっしゃるのがその小説の作者でこのパーティーの主役の…」

雪の女王「貴族のお坊ちゃまか」

出版業者「先生、ホント軽くでいいんで挨拶して貰っていいですか?一応紹介するって約束なんで、ホントスイマセン」

アンデルセン「あぁ、では行こうか助手クン」スタスタ

雪の女王「…あぁ、行こうか先生」スタスタ

718: 2016/08/29(月)00:47:17 ID:VlT

出版業者「せ、先生お疲れ様ですー!」ヘコヘコ

貴族作家「あぁ、君か。どうかしたのか?」

出版業者「先生に是非とも紹介したい方がいらっしゃいまして…ささっ、アナスン先生お願いします」ススッ

アンデルセン「本日はお招きいただきありがとうございます。お初にお目にかかります。私、ハンス・クリスチャン・アンデルセンと申します」ペコリ

貴族作家「おぉ、あなたがあの有名な!招待状をお渡ししたもののこの様なパーティーには滅多に足を運ばないと聞いていましたので心配していたのです」

アンデルセン「いえいえ、お招き感謝しております。この度はデビュー作品の出版おめでとうございます」

貴族作家「ありがとうございます。実は私はあなたのファンなのでお会いできて光栄です。立食ではありますが食事も用意しているので存分に楽しんでいただきたい」

アンデルセン「ありがとうございます。それにしても随分と豪勢な式典ですね、これほどに贅を尽くしたパーティーは私といえども見たことがございません」

貴族作家「そうでしょうそうでしょう!数々の著名人を呼び寄せ会場にも装飾にも料理も最上級のものを用意しましたからな」ハハハ

アンデルセン「流石は○○様の御子息、金に糸目を付けないとはまさにこのことでございますな」ハハハ

出版業者「先生ー!アナスン先生ー!口汚いの出てますって!」ヒソヒソヒソヒソ

貴族作家「フフッ、アナスン先生はどうやら冗談がお好きなようだ。ところで私の作品は既にごらん頂けましたか?」

アンデルセン「えぇ、もちろんですとも。非常に興味深い内容でした」

719: 2016/08/29(月)00:53:36 ID:VlT
貴族作家「そうですか!あのアナスン先生に読んでいただけるとは光栄です。で…いかがでしたか?私の作品は」ウキウキ

アンデルセン「いやはや、あの様な凄まじい作品を目にしたのははじめてと言って差し支えありませんね」

貴族作家「おぉ、そんなに素晴らしかったですか!」

アンデルセン「えぇ、なんと表現しましょうか…読み手の感動を誘う言葉使い、終止収まることのないワクワク感と膨れ上がる期待…それを受け止めるだけの重厚な結末」

アンデルセン「私にはとても真似できない物語でした」

貴族作家「おぉ、アナスン先生にそこまで誉めていただけると自信がつきますよ。次回作も期待していただきたい、完成しだい贈らせますので」ホクホク

アンデルセン「それは光栄ですね…んっ?どうしたかね助手クン?」

雪の女王「は?…………あぁ、そろそろお時間が迫っております先生」

アンデルセン「なんと、せっかくの機会だというのに…先生、名残惜しいですが私は新作の執筆がございますのでこの辺りで…」

貴族作家「そうですか。おい、アナスン先生をご自宅までお送りして差し上げろ」

使用人「はっ!」

アンデルセン「いえいえ、それには及びません。それでは私はこれで…」

720: 2016/08/29(月)01:03:35 ID:VlT
・・・

出版業者「助かりましたアナスン先生!今日はありがとうございました、でも不意に口悪くなるの何とかしてください…」

アンデルセン「悪気はないんだが…さぁすまないが私は用事があるから失礼するよ。新作は出来次第連絡を入れるからもう少し待っていて貰えるかな」

出版業者「あっ、はい!お待ちしています!あの、送迎本当にいいんですか?遠慮なさらなくていいんですよ?」

アンデルセン「あぁ結構、寄るところもあるんでね。それじゃあお疲れ様」スッ

・・・

アンデルセン「ふぅ、少々疲れたな助手クン?」

雪の女王「もうその茶番はいいだろう…それと突然私に振るのは止めろアンデルセン」

アンデルセン「あぁ、すまない。君ならうまくあわせてくれると思ってね」フフッ

雪の女王「調子のいいことを…さっきだってそうだ。ワクワク感だの自分には真似できないなどと感想を述べていたが…貴様あの男の小説読んでいないな?」

アンデルセン「フフッ、失礼だな?ちゃんと読んださ、20ページくらいね」フフッ

雪の女王「そんなところだと思った。感想に内容がなかったからな、抽象的な言葉ばかりでストーリーや展開には一切振れていない」

アンデルセン「見抜かれてしまったな。だが彼は気が付いていなかったから良しとしようか」クスクス

雪の女王「不誠実な奴め。どれだけ興味が無くともそれなりに読んで感想を述べるのもああいった場では社交辞令として必要だろう」

アンデルセン「そうは言うが…実際の感想なんか言えば悪評が広がり私が贔屓にしている出版社が潰れることになりかねないしな」クスクス

雪の女王「大袈裟すぎるな。そんなに酷い出来と言うわけでもないだろうに」

アンデルセン「そうだな、まぁ彼の小説でもっともすばらしいところをあげるなら…鍋敷きとして使うのに丁度よい厚さだったというところくらいだな」フフッ



アンデルセン「さぁ用事は済んだ。次の場所へ向かおうか、女王」

雪の女王「次の場所…?」

728: 2016/09/01(木)00:14:50 ID:agy

現実世界 デンマーク アンデルセンが住む街 パーティー会場前

アンデルセン「あぁ、夜の風が心地よいな。やはり人混みは私の性に合わない」フフッ

雪の女王「…アンデルセン。私はお前が【マッチ売りの少女】を生み出した理由を知るためにここにいるんだ」

アンデルセン「あぁ、知っているよ。私もそのために君を連れてきたんだ」

雪の女王「ならば答えて貰おうか。このくだらないパーティーに私を連れてきた理由はなんだ?」

アンデルセン「言っているじゃあないか、私が【マッチ売りの少女】を生み出した理由を君に教えるためだよ」

雪の女王「そうは言うが、私にはこの時間に意味があったようには思えない」

雪の女王「貴族が道楽でパーティーを開催し、富や名声のある連中が集まって体面や社交を気にして無為な時間を過ごしていただけだ。そんな場に…」

アンデルセン「【マッチ売りの少女】が生み出された理由があるとは思えない…と言いたいのかな、君は」

雪の女王「そうだな、あれはマッチ売りの悲惨な結末とはかけ離れた場だった」

アンデルセン「昨日、私がこう言ったのを覚えているかい?『このおとぎ話は限り無く現実に近い形に仕上げたい』と」

雪の女王「あぁ覚えている。しかしそれとこのパーティーに参加した事に何の関係がある?」

アンデルセン「マッチ売りが生きる世界は【マッチ売りの少女】の世界だがそれはこの現実世界に限りなく似ている。そしてマッチ売りが住む街をこの街に例えるのなら…」

アンデルセン「さっきの会場にいた人々は、マッチ売りの街に住んでいた裕福な人々だ」

雪の女王「【マッチ売りの少女】の街の連中?あの会場にいた連中がか?」

729: 2016/09/01(木)00:16:21 ID:agy
アンデルセン「例えるならだ。思い出して欲しい、マッチ売りは貧しかったが何もあの街全体が貧困に苦しんでいたわけじゃない」

アンデルセン「マッチ売りが寒さに震えて売れないマッチを握りしめている時、あの街の人々の多くは暖かく明るい家の中で美味しい料理を食べていただろう」

雪の女王「そう考えると随分と無慈悲な連中だ。その金の一部を使ってマッチを買ってやれば彼女は救われるだろうに」

アンデルセン「気持ちは解るが彼等を責めるのは筋違いだ。彼等の多くは真っ当な仕事をしてそれ相応の生活を手に入れている、後ろ指を指されるようなことはしていないさ」

アンデルセン「だがいくら懐に余裕があっても街の連中はマッチを買わない、絶対に。私がそう書き記したからじゃなく、絶対にマッチを買わない理由がある。それが何だか解るかい?」

雪の女王「街の連中が…マッチを必要としていなかったから、か?」

アンデルセン「それもあるだろうね。他には?」

雪の女王「優しい心を持っていなかったからじゃあないか?例えマッチが必要なくても可哀想な少女を見かけたら手をさしのべるものだ」

アンデルセン「なるほど、どちらも正解と言えるだろうね。でも私の考えはこうだ」

アンデルセン「街の人々はマッチ売りに気付いていない。だからマッチを絶対に買わない」

雪の女王「気付いていない?裸足の少女が一人でマッチを売る姿なんか目立つ筈だ、気が付かないなんて有り得ないだろう。絶対に目に付く」

アンデルセン「私が言っているのは視覚的な意味ではないんだ」

雪の女王「なんだそれは。目に見えているのに気付いていない…という事か?なおさら理解できない…貴様は何が言いたい?」

アンデルセン「私が言いたいこと、私の考え。それを知るために君はここにいるんだろう?」

アンデルセン「ならば容易に聞かずに感じ取ることだ。私が生み出した君ならばきっと同じ考えにたどり着けるだろうからね」クスクス

730: 2016/09/01(木)00:18:07 ID:agy
アンデルセンの住む街 大通り

雪の女王「…いいだろう、私はそれを知るためにここにいるんだ。貴様の挑発めいた物言いは気に入らないがな」

アンデルセン「フフッ、それならばいつまでもここでおしゃべりをしていても仕方がない。先を急ごう」

雪の女王(もう日も暮れている、こんな時間に何処へ向かうというのだ?)

アンデルセン「さて、行き先だが…この街道を真っ直ぐ向こう側へ進んでいく。ただただ道なりに進んでいくだけだから迷うことはないだろう」スッ

アンデルセン「では私は先に向かう、君は少し後からついてくるといい。ある程度の距離をとりながらな、ただしはぐれると面倒だから私を見失わないように」

雪の女王「待て。同じ場所に向かうのだろう?はぐれると面倒だと解っていながら何故わざわざ別行動する必要があるのか?」

アンデルセン「おやおや、なんだかんだ言いながら見知らぬ街で独りきりなのは心細いのかい?だから私と共に行動したいと」クスクス

雪の女王「茶化すんじゃない。人通りの多いこの街道でそのような意味のない行動をとる必要は無いと言っているんだ」

アンデルセン「私がわざわざ無意味な行動に時間を費やす理由があるのかい?あるというのならその理由を聞かせて貰おう」

雪の女王「そういう訳ではない。だが一般的に考えて……」

アンデルセン「君は雪深い氷の世界で長らく独りで生活してきた、誰とも関わらずにね。だからこそ自分の考えを常に正しく思い、自分の行動に迷いなど無かっただろう」

アンデルセン「誰も反対意見を出す者が居ないし、自分と比較する相手が居たわけでも無いからね。だが女王、同じ場所に立っていてはそこからは同じ風景しか見えない」

アンデルセン「実際の風景は自分の目に映っているものだけじゃあない、見方を変えなければ見えないものがたくさんある。その事に気がつけなければ…」

アンデルセン「君も、君が無慈悲と称したマッチ売りの街の連中と同じだよ」スタスタ

731: 2016/09/01(木)00:19:24 ID:agy
スタスタ スタスタ

雪の女王「……」ギロリ

雪の女王(結局あの男は私の少し前を歩いていく。そしてそれを見失わないように距離を置いて私は後を追う)

雪の女王(あの男の挑発じみた口調は頭に来る、おそらくはそれが無自覚だということもそれに拍車をかけた)

雪の女王「私が…マッチ売りに手をさしのべなかった薄情な街の連中と同じ?ふざけるのも大概にしろ、そんな訳がないだろう」ブツブツ

雪の女王(私が【マッチ売りの少女】の結末に納得がいかないのは彼女を思ってのことだ、可哀想な少女が可哀想なまま氏ぬ結末など…何よりも残酷だ)

雪の女王(だがあの男にはそうしてでも誰かに伝えたい何かがあったわけで…そして奴はそれを私に伝えるためにどこかへ向かっている)

雪の女王(少しの距離を置いて歩くという一見無意味な行動をして、だ)

雪の女王「…見方を変えなければ見えないものがあると奴は言った。おそらく…一緒にいては見えないものを後ろから見ていろという事だろうが…」

アンデルセン「……」スタスタ

雪の女王「有名な童話作家だか何だか知らないが…ただの男にしか見えない。あんな奴の背中を見て何が解ると言うんだ」

雪の女王(…いや、奴は腹の立つ男だが無意味なことをさせたりはしないだろう。今は文句を言うよりも奴が何を言おうとしているのか汲み取ることの方が大切だ)

雪の女王(奴が言うように、見方を変えれば今まで気づけなかったことが見えるかも知れない。今はそれを信じる事にしようか)スタスタ

732: 2016/09/01(木)00:21:36 ID:agy
スタスタ スタスタ

アンデルセン「……」スタスタ

雪の女王「とはいえ、何も変わった事など…。んっ…?誰かが奴に近づいて来る、カゴ一杯の花束…あの風貌は花売りか?」

花売りの少女「ごきげんよう、素敵なお洋服のおじさま。綺麗なお花はいかがですか?」ニコッ

アンデルセン「花か、そういえば久しく飾っていないな。ひとつ貰おうか、お嬢さんいくらだい?」スッ

花売りの少女「ありがとうございます!こっちの花は銅貨一枚、花束だと銅貨五枚です」ニコッ

アンデルセン「そうか、どれも美しくて目移りしてしまうな…どうしたものか」

花売りの少女「おじさま。もしよろしければこのカゴには無い特別なお花もお売りできますよ?お暇ならいかがですか?」ニコニコ

アンデルセン「…そうか、値段を聞いても構わないかな?」

花売りの少女「一晩で金貨30枚です」ニコッ

アンデルセン「そうだな…せっかくだけど時間が無い、この花束を金貨一枚で貰おう」スッ

花売りの少女「そうですか、ありがとうございます!でも花束はひとつ銅貨五枚ですよ?お釣りは無いんですが…」

アンデルセン「いいんだ。君に洋服を誉められて気分がいいから、とっておきなさい」スッ

花売りの少女「ありがとうございます、素敵なおじさま。では、ごきげんよう」ニコッ

733: 2016/09/01(木)00:24:03 ID:agy

アンデルセン「……」スタスタ

雪の女王「アンデルセンの奴、花を買ってあげるなんて優しいところがあるじゃないか」フフッ

雪の女王「しかし…あいつ花束似合わなすぎるな…。……なんだ、あいつまた花売りに話しかけられてるじゃないか」

花売りの娘「素敵なお花をお持ちですねおじさま」ニコリ

アンデルセン「ありがとう。見たところ君も花売りのようだね」

花売りの娘「はい、よろしければおひとついかがですか?おじさまはとてもお花が似合いますからきっとより素敵に見えますよ」ニコニコ

アンデルセン「フフッ、君は随分と口がうまいな。いくらだい?」スッ

花売りの娘「花束はひとつで銅貨五枚です。一晩でしたら金貨35枚ですけどおじさまは優しそうな方なので金貨28枚でお売りしますよ」ニコッ

アンデルセン「折角だが気持ちだけ受け取っておこう。金貨一枚で花束をひとつ貰えるかい?」

花売りの娘「はいっ、ありがとうございます」ニコッ

雪の女王「来るときは気が付かなかったが…この辺りには随分と物売りや物乞いが多いな。しかし何故私のところには花売りが来ないんだ?アンデルセンは既に二人に声をかけられているのに」

雪の女王「勝ち負けでは無いが…なんだか妙に悔しいな。これでは私が声をかけづらい女のようじゃないか。花なんていくらでも買ってやるのに」ギリッ

花売りの女の子「あの…お姉さん、今の本当ですか?お花、買ってくれますか?」トテトテ

雪の女王「んっ…聞かれてしまったか、恥ずかしいな。だがいいだろう、君も花売りなんだろう?一つと言わず残っている花束すべて買ってやろう、いくらだ?」スッ

734: 2016/09/01(木)00:25:19 ID:agy

花売りの女の子「ぜ、全部ですか?本当にですか?でも、それだと……」キョトン

雪の女王「あぁ、カゴごと全部貰おう。いくらだ?」

花売りの女の子「全部だとえっと…銀貨20枚です。あの、でも……」

雪の女王「そうか、ではこれで」スッ

花売りの女の子「あ、あの…とても嬉しいんですけど全部買っていただくとあの、その……」ペコペコ

雪の女王「なんだ?売れ残りが出るよりも売り切った方がいいだろう?」

花売りの女の子「そうなんですけど、でもそれじゃ…花売りが出来なくなっちゃうので…」オドオド

雪の女王「……?」

ザッ

アンデルセン「まったく君は何をやっているんだ、彼女の仕事の邪魔をして…営業妨害かい?」

雪の女王「邪魔とは随分だな、私はただこの子から花束を全て買おうとしただけだ。貴様にそんな言い方をされるいわれは無い」

アンデルセン「私の連れ合いが申し訳ないことをしたねお嬢さん。お詫びに花束を一つだけ頂こう、金貨二枚でいいかな?」スッ

花売りの女の子「えっ、あっ、ありがとうございます。じゃあこれ…どうぞ」スッ

アンデルセン「ありがとう、確かに。さぁ行こうか女王、これ以上彼女の邪魔をしては悪いからね」スッ

雪の女王「何が邪魔だと言うんだ?この少女もマッチ売りのように花が売れなければ親に叱られるかも知れない、それならば全て花を買ってやった方がいいだろう」

アンデルセン「…思った以上に君は純粋なんだな。とにかく行こう、私達が騒いで目立っては彼女も仕事をしづらくなるだろうからね」

735: 2016/09/01(木)00:27:45 ID:agy
スタスタ スタスタ

雪の女王「流石にこれは説明して貰うぞアンデルセン!納得がいかない」ギロリ

アンデルセン「説明はする、だからそう憤らないでくれ女王。なんならさっき買った花束は君に贈るよ、ほらこれで怒り心頭の君もとりあえず外見だけは美しくて穏やかな女性に見えるぞ」ハハハ

雪の女王「貴様は本当に私を落ち着かせるつもりがあるのか?それとも馬鹿にしているのか?」ギロリ

アンデルセン「馬鹿にしたつもりはないんだが…気に障ったのならば謝るよ」

雪の女王「いいか?彼女は花束を売っていた、私はそれを全て買おうとしただけだ。花が全て売れればそれに越したことはない、これのどこが問題なんだ?」

アンデルセン「彼女達は花売りに扮しているだけだ、自分の本来の仕事を隠すために花売りの姿をしているだけ。だから花を全て買われると困ってしまうわけだな、変装道具を奪われるようなものだからな」

雪の女王「そういうことならば…私の好意が仇となった理屈は解る。しかし何故自分の仕事を隠す必要がある?」

アンデルセン「彼女達は自分自身の身体を売って生活しているからだ」

アンデルセン「彼女達の中には未成年の少女も少なくない。目立った売春行為はトラブルを招きかねないだろう、だから花売りとして客に近づく…表向きの職業が花売りならばいざというとき言い訳も利く」

雪の女王「笑えないジョークだな。貴様の書くおとぎ話にそんな下品な冗談は無かったと思うが?」キッ

アンデルセン「冗談ではないさ。実際、女性の君に声をかけた花売りが他にいたかい?」

雪の女王「いいや、居なかった。しかし…」

アンデルセン「そりゃあ居る訳はないだろう、少女を買う女性なんかいないからね。もし彼女達が本物の花売りならば君にも声をかけるはずだろう。違うか?」

雪の女王「待て、話の筋は通っているが…あまりに馬鹿げている!花売りの中には年端もいかない娘だって紛れていた、彼女達が身を売っているなど…そんなおかしな話があるか!」グイッ

アンデルセン「おかしな話でも何でもない。彼女達はほとんどが貧民街の出身、親もなく金もなく読み書き計算がろくに出来ない者も多いだろう」

アンデルセン「それでも男ならば肉体労働の仕事に就けるが…彼女達はそうもいかない。生きていくには金が必要だが…働き口がない」

アンデルセン「ただでさえ女性の働き口は少ないと言うのに学がなければまともな仕事に就くのは難しい。となるともう身体を売って金を得るしかない」

アンデルセン「信じたくないという君の気持ちは分かるが…これが現実だ」

736: 2016/09/01(木)00:30:35 ID:agy
アンデルセン「彼女達のような貧しい子供たちは生きるために手段を選んでいられない。食事を得るためには身を売ろうと心を売ろうと金を手にしなければならない」

雪の女王「それなら誰かが手をさしのべればいい……お前は相当高名な童話作家だ。収入だって十分あるだろう」

アンデルセン「だから私に彼女たちを養えと?」

雪の女王「そこまでは言わない、だが少なくともお前になら彼女達が身を売らなくても生活できるようにするだけの資産がある…そうだろう」

アンデルセン「私財をなげうつのは構わない、私は独り身だからな。だがそれで何人の子供たちが救える?あいにくだが貧困に苦しむ子供たちを全て助けられるほどの資産は持っていない」

雪の女王「だが何もやらないよりもずっと良い。少なくとも救われる子供はいるわけだからな…なんだったら私の宮殿の資産も使ってくれ、それならば…」

アンデルセン「私と君が全ての財産を寄付したとしてもそれは一時的な救済にしかならない。根本的な解決策にはならない」

雪の女王「だから何もしないというのか?根本的な解決が出来ないからといって見捨てるのか?」

アンデルセン「そうは言っていない。だがこれは…貧困層の子供たちを取り巻く問題は思いつきの寄付で解決できるような根の浅い問題じゃない」

アンデルセン「同じような苦しみを持っている子供たちはこの街の外…いやデンマーク国外の様々な国々に存在する。そのすべての子供たちを救うなど今の私達には不可能だ」

雪の女王「……」

アンデルセン「今の我々に出来ることはせめて、せめて彼女達から花を買い…わずかばかりの金銭を渡すことくらいだ」

737: 2016/09/01(木)00:32:22 ID:agy
雪の女王「…馬鹿げている」

アンデルセン「そうだな、私もそう思う。だが…彼等彼女らを取り巻く問題は何もこれだけじゃない」

雪の女王「まだ何かあるっていうのか?」

アンデルセン「もう暗いというのに道の端に子供が多いと思わないか?」

雪の女王「確かに言われてみればそうだが…まさか彼等には帰る家もないというのか?」

アンデルセン「ほとんどがそうだ、スラム街に住む場所があるのならまだ良いが…そうでない子供も多い。この大通りは飲食店や商店も多いから路地裏よりいくらか暖かいし雨をしのげる場所もある」

アンデルセン「だがそれはあくまで最低限だ、野外で寝泊まりして体調を崩すこともあるだろうが当然医者にかかる金など無いわけだ。だがそれを覚悟で路上生活をしなければ他にいくところ等無い」

アンデルセン「無理がたたって病氏する子供だって少なくない」

雪の女王「……お前がおとぎ話を通して言いたい事、少しは理解できたかも知れない」

アンデルセン「そうかい、それはなによりだ…ならば最後にそこの路地を曲がろう。より現実を見ることができる」

雪の女王「そこの路地…先が見えないほど真っ暗じゃないか、街灯が赤々と灯るこの大通りと違って薄暗いが…」

アンデルセン「言っただろう、見方を変えなければ他の景色は見えない。ただ…十分に警戒をして進むことを勧めるよ」

アンデルセン「身に危険が及びかねない場所に女性を連れ行くのは忍びないが…現実を見据えるためにはこれも必要だ」

738: 2016/09/01(木)00:35:33 ID:agy

アンデルセンが住む街 町外れの路地

スタスタ スタスタ

アンデルセン「……」

雪の女王「……おい、アンデルセン。平気なのか?」

アンデルセン「何がだい?」

雪の女王「暗くてよく見えないが明らかに誰かに見られている。いや監視されているといってもおかしくない」

アンデルセン「まぁそうだろうね。私達はパーティー帰りでそれなりに身なりだ。平気かどうかで言えば…平気ではないな」

雪の女王「……予想はしていたが、きっと想像通りなんだろう」

アンデルセン「あぁ、きっと君の予想は正しい。だからこそ決して隙を見せないことだ。そうでなければ……持って行かれるぞ、何もかも」

ガタッ ビュバッ

賊の少年1「…外したか。気をつけろ、この女良い身なりをしている割には素早いぞ」

雪の女王「やはり予想通り…こんな薄暗い小道に入り込めばこうなるのは当然か。貴様は相当無茶をする…」スッ

アンデルセン「あまり悠長にしている場合では無さそうだな、想定よりも数が多い」スッ

賊の少年2「怯むな!相手は二人、数ではこっちが圧倒的有利だ!」

賊の少年3「男の方はそこそこのコートを着込んでいるし女の方は見たこともない生地の洋服だ。剥ぎ取って売ればいくらかは凌げる」

雪の女王「こんな少年たちが追い剥ぎに身を落とすか…嘆かわしく悔しいが、今はそんなことを行っている場合でもないな」

アンデルセン「君のことだから実際に目にしてみないと信じきれないと思ってね。だがこれで信じざるをえないだろう、あとは彼らをいなして帰宅するのみだ」スッ

740: 2016/09/01(木)00:42:04 ID:agy

賊の少年1「逃がす隙を与えるな、取り囲め。逃げ道を塞げ」ヒュッ

チャキッ

雪に女王「錆び付いてはいるが…子供がナイフなんか握るものじゃないよ」スッ

賊の少年「だったらこいつでブン殴るってのなら構わないよなぁー!」ビュオンッ

パキパキパキ

雪の女王「私相手になら構わないよ。その程度の強度しかない角材なら…氷の盾で十分だ」パキキ

族の少年3「何もない場所から氷が…!何者だこいつ…!」

雪の女王「暗がりでこそ実力が出せるのは君たちだけじゃない。助けてあげたいところだが…理由があろうとも君たちの行為は悪だ、見過ごすことは出来ないな」スッ パキパキパキ

アンデルセン「女王、駄目だ。君の氷結に耐えられるほどの体力は彼等にはないかもしれない…あくまで魔法の類は無しだ」

賊の少年1「ごちゃごちゃとやかましい。一斉にかかれば避けられまい、攻め手を休めるな。生きるために容赦はするな」バッ

雪の女王「アンデルセン、悠長なことを言っているのはお前じゃないか。この力を使わなければ私など腕力もないただの女だ、避けるのが精一杯だぞ」スッ


739: 2016/09/01(木)00:39:17 ID:agy
賊の少年2「クソッ…まただ!さっさと頃しちまわないと騒ぎを嗅ぎつけて誰かきちまう」チャキッ

賊の少年3「女が手強いなら男の方からだ!見るからにほそっちょろい優男だ、俺たちが一斉にかかれば一瞬だ」ババッ

アンデルセン「その考えは的確だ、私は闘いの心得がないからね。だが私は作家だ、作家には作家なりの戦い方があるというものだ」スッ キュルキュル

ビュンッ ビチャッ

賊の少年2「うわっ!目の前が真っ暗に…何かぶちまけてくるぞ気をつけろ!」グアアア

賊の少年3「クソッ、得体の知れない液体で目潰ししてくるとは…これ以上は無理だ、引き上げよう」

賊の少年1「やむを得ない、引くぞ」スッ

スタタタタ

雪の女王「どうやら彼等は追い払えたようだな。しかし…インク瓶、こんなものを投げつけて応戦するとは呆れた作家根性だな」

アンデルセン「仕事柄必要な消耗品だからな、それに相手を倒すほどの力は私にないからな。そもそも倒す必要はない、追い払えればそれで上々だ。これに懲りればいいのだが…難しいか」

雪の女王「どちらにしろ無茶をする奴だ。賊に襲撃されると解っていながら人目に付かない路地に入り込むんだからな」

アンデルセン「言っただろう、こうしないと君が信じないと思った。本当は彼等にも僅かばかりでも援助をしたいが…悪事に手を染めて利益を得たんじゃあ彼等の身にならない」

雪の女王「味を占めて犯罪に手を染めることが常態化するのは良くないからな」

アンデルセン「さぁ、どちらにしろ…これで見て貰うものは全て見て貰った。予定より遅くなってしまったけれど、我が家に帰るとしよう」

アンデルセン「そしてそこで聞かせて貰おう、君が感じたこと。そして私の想いや考えを理解することが出来たかどうかを」

741: 2016/09/01(木)00:56:54 ID:agy

アンデルセンの自宅 キッチン

雪の女王「貴様が無茶をするせいで無駄に疲れてしまったな」ドサッ

アンデルセン「そう言わないでくれ、私が口で言ったところで君は容易には信じないだろう?っと、お茶より冷たい水の方がいいかい?」

雪の女王「頂こう。まぁ…それに関しては否定しないがな」

アンデルセン「それで、わかってくれたかな。私が何故マッチ売りを生み出したのかが」コトッ

雪の女王「あぁ、私が今日目にした身を売る少女も路上生活をする子供も追い剥ぎに身を落とす子供も…紛れもない現実。そして彼等は…マッチ売りと同じだ」

雪の女王「おとぎ話の中でマッチ売りは報われずに氏んだ、それを私は残酷だと思ったが……少なくともマッチ売りは自分の身体を売ることは無かったし、酷い父親が居るといえ帰る家もあった、犯罪に手を染めることも無かった」

雪の女王「逆に行えば…そこまで身を削ることなく安らかに眠れたのは確かにある種の幸福かもしれない。私が出会った彼等は明日も明後日も辛い生活を強いられる、それならいっそのこと楽になった方が幸せだという考えも理解できなくはない」

アンデルセン「あぁ、彼らは氏ぬことでしか幸福になれない」

雪の女王「そしてお前が見えていないと言ったのは…私をあの街の連中と同じにしたのは、その事が見えていなかったからだ」

雪の女王「自分は平和な人生を送っている、不足のない生活が送れている、だからそれに満足して現実を別の角度から見ようとしない」

雪の女王「だから気づけない。同じ街に住んでいても気づけない。同じ大通りにいながらも私やあのパーティー会場の人間はきっと目と鼻の先に貧困に苦しむ子供が居るとは思っていない」

雪の女王「少し角度を変えて見ようとすれば見えるのに、そうしないからあの辛い生活を強いられたら子供たちに気付いてあげられない」

雪の女王「貴様が…アンデルセンが読者に伝えたい言葉はおそらくこうだろう」

雪の女王「『君の隣にいるマッチ売りに気付いてくれ』」


アンデルセン「流石は雪の女王、君なら解ってくれると信じていたよ。…そう、君の言う通り。私の気持ちはまさにそれだよ」

アンデルセン「何処にでもマッチ売りのような子供はいる、お話の中の彼女が特別な訳じゃない。だからその存在に気づいてあげてほしくて…私はこの物語を執筆したんだ、すぐ隣にいるマッチ売りに気づいてほしくてね」

752: 2016/09/06(火)00:17:06 ID:CTj

アンデルセン「君がこの街の隅で身を削りながら生きている子供達を見て知ったように、私は世界中の人に知って欲しいんだ」

アンデルセン「【マッチ売りの少女】を通して、自分の隣にもマッチ売りが居ることを。すぐ近くにも助けを必要としている人達が居ることを」

アンデルセン「そして自分の生活に余裕があるのなら手を差し伸べて欲しい。自分の生活だけで精一杯だというのなら無理する必要なんかは無い、だがせめて…その現状を知っていて欲しい」

アンデルセン「大切なのは隣にいるマッチ売りに目を向けることだ。世界中の人達がそれを出来るようになれば…それは大きな力となり必ずこの世界はもっと優しく幸せになれる」

雪の女王「…お前が見据えていたのは、世界中の子供達の幸福だったというわけか」

アンデルセン「そんな大仰なものではないよ。ただ私も幼い頃は貧しい家庭で育った。だから隣にいるマッチ売りに気付くことは容易だっただけさ」

アンデルセン「デンマークの田舎に住む貧民の私が、何の因果かこうして童話作家として活動し十分すぎる地位と名声を手に入れた。だから私は自分に出来る形でマッチ売りに手を差し伸べているだけだよ」

雪の女王「確かに…童話作家としてのお前が持つ影響力は絶大だ。お前のおとぎ話はこのデンマークをあっという間に越えて世界に広まるんだろう」

雪の女王「なにしろ世間の評価じゃあお前は有名童話作家。そいつが書いた作品なんだ、ひとたび世に出れば【マッチ売りの少女】とそれに込められた思いが世界中を飛び交うのにそう時間は掛からないだろう」

雪の女王「そうすれば世界中の人々は、隣にいるマッチ売りに気付けるかもしれない。お前がそう願ったように」

アンデルセン「そうだな、きっと気付いてくれる。そうすれば未来は必ず良いものになるだろう…おとぎ話にはそれだけの力がある。改めて私は童話作家であることを誇りに思うよ」フフッ

アンデルセン「一つの想いを、一つの言葉を世界中に伝えるのは容易じゃない。どんなに立派な王でも大統領でも、すさまじい影響力を持つ学者の先生でもそれは難しい」

アンデルセン「だが童話作家にはいとも容易くそれが出来る。作者によって紡がれたおとぎ話は人から人へ親から子へ語り継がれていく。百年後も千年後も、例え私の本が全て朽ちて、この名が人々の記憶から消え去っても…」

アンデルセン「おとぎ話が人々の心に残ることが出来たなら、おとぎ話は消えやしない。それに込められた想いも時を越えて生き続ける、あらゆる時代のあらゆる国々で」

雪の女王「もしそうなれば…それはとても素晴らしいことだな」

アンデルセン「あぁ。長い時間の果てにいつか必ず、必ず訪れるはずだ」

アンデルセン「世界中の不幸な子供達が救われる日が。マッチ売りがマッチの炎の奥に見た幻なんかではない…本当の幸福を手にするときが」

753: 2016/09/06(火)00:19:36 ID:CTj
雪の女王「……」

アンデルセン「これが童話作家アンデルセンが【マッチ売りの少女】に込めた想いと、このおとぎ話を生み出した理由だ」

雪の女王「あぁ…よく解ったよ。どうやらお前は私が思っていたよりも悪い奴ではないらしい、変わった奴だという評価は覆らないがな」

アンデルセン「そりゃあどうも。だが変わり者はお互い様だ、わざわざ作者にクレームを入れに来るおとぎ話の住人なんかそうそう居ない」フフッ

雪の女王「まぁ…否定は出来ないな。だが私を生み出したのはお前だ、似る部分もあるだろう」フイッ

アンデルセン「ハハッ、それもそうだな。それはさておき…私は話すべき事を全て打ち明けた。おとぎ話に込めた思いも何もかも全てな」

雪の女王「…あぁ、お前の想いも信念も私は確かに受け取った。今まで見落としていたものにも気付かせてくれて感謝さえしている」

アンデルセン「それならば…君の考えを聞かせて貰おう」スッ

アンデルセン「女王、君はマッチ売りの結末に納得が出来たかい?この【マッチ売りの少女】を出版することに…賛成してくれるかい?」

雪の女王「納得は出来たよ。マッチ売りの悲惨な結末は…世界中の不幸な子供を救う光となる。幸せな未来を紡ぐための希望になる」

アンデルセン「女王、君なら解ってくれると信じていた。それならば……」

雪の女王「だが【マッチ売りの少女】を出版することに賛成するかと聞かれれば……正直、答えが出ない」

754: 2016/09/06(火)00:22:26 ID:CTj
アンデルセン「…そうか」

雪の女王「お前が【マッチ売りの少女】を執筆した理由、お前の信念はとても立派で非常に尊いと私は思う」

雪の女王「不幸な子供達を救おう、未来を変えようと言う心意気に私は共感がもてる、私に出来る事があるのなら協力するつもりだ」

雪の女王「【マッチ売りの少女】の物語を世界中の人に読んで欲しいという気持ちは……ある。だが私もやはりおとぎ話の住人だ」

アンデルセン「気がかりなこともある…そうだな?」

雪の女王「なんだ…私の考えなんてお見通しなんだな」

アンデルセン「私は言わば君の父親だからな。もっとも君は不本意に思うだろうが」

雪の女王「…今ではそうでもないさ。だがお前が言うとおり気がかりなこともある」

雪の女王「それは【マッチ売りの少女】の主人公の事だ。いくらお前の信念が立派で、この物語に価値があろうと、未来を照らす光になる可能性があろうと…」

雪の女王「マッチ売りは不幸になるために生み出される。言い方は悪いがそれは揺るぎない事実だ」

アンデルセン「……」

雪の女王「部外者の私がいくら納得したところで…お前が彼女にどれだけ希望を託したところで…彼女は苦しい生活を送りやがて氏んでいく」

雪の女王「幸福な幻に…偽りの幸せに包まれて、ひとりで氏んでいく…。それは私達が勝手に運命づけていいことなんだろうか…?」

755: 2016/09/06(火)00:24:42 ID:CTj
雪の女王「今となっては…もう私はお前を責めるつもりはない。だが…」

アンデルセン「マッチ売りには自分の行く末に意味があるなんて知らない。ただ貧しい生活、虐待、空腹、無関心…様々な理不尽に揉まれて氏んでいく」

アンデルセン「現世の苦痛から逃れられるといっても…幼い少女にとって命を失うことは恐怖以外のなにものでもないだろう。だからこそ私は幻を彼女に見せたのだが……いや」

アンデルセン「どんな言葉を並べ立てた所で結局、君たちおとぎ話の住人にとってはこう写るのだろうな」

アンデルセン「マッチ売りは作者アンデルセンに利用されて殺された、とね」

雪の女王「…そこまでは思わないさ。だが…【マッチ売りの少女】を出版して世間にそのおとぎ話が認知されればやがて彼女の世界が生み出される」

雪の女王「その世界ではそのおとぎ話の内容の通りの運命が待ち受けている。マッチ売りは…どう足掻いても氏んでしまう」

雪の女王「今ではお前の想いは正しいと思っている、このおとぎ話は世間に公表すべきだと。だが私の選択が一人の少女の命を奪うことになると考えると…決断できない」

アンデルセン「【マッチ売りの少女】の出版に賛成することは君自身がマッチ売りの命を奪うことになると…そう考えているのか?」

雪の女王「そうだ。ここで私が出版に反対すればマッチ売りは氏なない。その代わり世界中の子供達が救われることもない」

雪の女王「どちらかを選べと言うのは…酷な話だ。私には答えを出せそうにない」

アンデルセン「……そうか、ならばこうしよう。君との約束は反故にする」

雪の女王「反故だと?どういうことだ?」

756: 2016/09/06(火)00:26:09 ID:CTj
アンデルセン「私は君に【マッチ売りの少女】を執筆した理由を話して君が納得すれば出版、納得しなければ出版はしないと約束したな」

雪の女王「あぁ、そうだ」

アンデルセン「しかし君がそれほどにまで悩むのならばこの約束は無かったことにする」

アンデルセン「これでは出版してもしなくても君の心にはずっと雲がかかる。いずれその選択を後悔するかも知れない」

アンデルセン「それならば私が独断で出版をすることを決める。それならば君が気に病むことはないだろう、全ては私の責任となるのだから」

雪の女王「しかし、それでは…」

アンデルセン「何も問題はないさ。私は信じているからね、マッチ売りの事を。彼女は…もしも自分がおとぎ話の住人で自分の結末を知ってしまったとしても、それを受け入れる強さと優しさを持っている」

雪の女王「何故そこまで言い切れる?会ったこともない少女だぞ?」

アンデルセン「彼女には…マッチ売りにはモデルがいると昨日話したな」

雪の女王「あぁ、確かお前が世話になった相手だと…」

アンデルセン「マッチ売りのモデルは私の母親なんだ。もう随分と昔に亡くなってしまったがな」

757: 2016/09/06(火)00:28:36 ID:CTj
雪の女王「お前の…母親。お前は幼い頃は貧しかったといっていたが、その母親もそうだったのか…?」

アンデルセン「私の母は幼少時代とても貧しい家庭に育った。それこそマッチ売りのように父親に暴力を振るわれたという話も耳にしたな」

アンデルセン「それでも母はめげずに生き、やがて私の父と結婚するが…父も母を残して先に逝ってしまった」

雪の女王「妻とお前達子供を残して…か。貧しい生活の上にそれは辛かっただろう」

アンデルセン「それからと言うもの母は女手ひとつで私と兄弟を育ててくれたよ。自分のことは全て我慢して私達のために苦労を買って出てくれた」

アンデルセン「自分の幸福よりも他人の幸せを願うような人だった。周囲が笑っていれば自分が辛かろうと平気な顔をしているような人で…」

アンデルセン「やがて私は夢を叶えるために母を実家に残して都会へ出て行った。母が亡くなったという知らせを聞いたのも葬儀のずっと後で、氏に目にも会えなかったよ。とんだ親不孝者だ」

雪の女王「……」

アンデルセン「散々苦労をかけていながら何一つ親孝行出来なかった。童話作家として成功した頃には既に母は亡く…私は墓前に花と自分の童話集を手向ける事しか出来なかった」

アンデルセン「だから母をマッチ売りのモデルにしたのは親孝行のつもりなんだ。【マッチ売りの少女】が…自分自身がモデルとなったおとぎ話が不幸な子供達を幸せにすることが出来たのなら……母はきっと喜ぶ、そういう人だ」

アンデルセン「フフッ、こんな話…いい歳をした男が何を言っているのかと思われるかも知れないな」

雪の女王「いいや、そんな事思ったりしないさ」

アンデルセン「だから彼女は…マッチ売りはきっと解ってくれる、私はそう信じているんだ」

758: 2016/09/06(火)00:33:13 ID:CTj
雪の女王「…随分と都合のいい考え方だ」

アンデルセン「フフッ、そうかも知れないな。君の言うとおりだ」フフッ

雪の女王「だが…お前は【マッチ売りの少女】の作者だ。お前がマッチ売りの人物像に幼い頃の母親の姿を投影したのなら…マッチ売りの性格もまた母親と同じようになるのかも知れない」

アンデルセン「そうなってくれなくては困るな。マッチ売りが…母が失意の中氏んでいくのは嫌だ」フフッ

雪の女王「……いいだろう。ここでお前にだけ責任を押しつけては女王の名が廃る」

雪の女王「【マッチ売りの少女】の出版に賛成する。これでもしマッチ売りが自分の運命を恨んだとしてもそれはお前だけじゃなくお前と私の責任だ」

アンデルセン「ほう、いいのか?後で後悔しないな?」

雪の女王「しないさ。と言うより…お前の母は自分の運命を恨んだりしないんだろう?」

アンデルセン「しないな、貧しい生活に文句一つ言わない人だった」

雪の女王「それなら問題ない。私はお前を信じることにした、お前が問題ないというのなら問題ないのだろう」

アンデルセン「私を評価してくれることはありがたいが…なんだか恐ろしいな、昨日はあれほど私を殺そうとしていたのに。手のひら返しが早くないか?」クスクス

雪の女王「そうだな。なんなら今すぐにまた手のひらを返してお前の腕をねじ切っても構わないんだぞ?」

アンデルセン「あぁ済まない。言い過ぎた、腕は勘弁してくれ…執筆が出来なくなる」

759: 2016/09/06(火)00:37:56 ID:CTj
雪の女王「ただし、一つ条件がある。それを飲まないなら出版に賛成しない」

アンデルセン「ほう…何を言われるのか解らないが少々恐ろしいな」クスクス

雪の女王「マッチ売りに関しては確かに納得した。だがお前が執筆した他のおとぎ話は別だ、お前がこれから生み出していくおとぎ話に関してもだ」

雪の女王「お前のことだ、どのおとぎ話にも何らかの思いが込められていてそれぞれの主人公のいく末には何かしらの理由が存在する…そうだろう?」

アンデルセン「当然だ。富や名声を得る事が目的の中身が空っぽのおとぎ話は書かない主義なんでね」

雪の女王「だろうな。ならばお前のどの作品にどんな思いを込めているのか…一つ一つ説明してもらおう。それが条件だ」

アンデルセン「……なるほど」ニヤニヤ

雪の女王「…なんだその顔は」

アンデルセン「その条件を飲もう。ただし助手として私につき従う事がこちらから提示する条件だ、飲めるかい?」

雪の女王「勘違いをするなよ?私は別に個人的な興味があるからお前の話を聞くわけじゃあないんだ。助手になるつもりはない、あくまでだな…」

アンデルセン「まぁそういう事にしておいてやろう。この世界に滞在したいのなら部屋を用意してあげよう、これからよろしく頼むよ。助手クン?」クスクス

雪の女王「……お前は本当に一言多いな」キッ

アンデルセン「睨まないでくれたまえ助手クン。それとも何か不服かな?」

雪の女王「……いいえ、何でもありませんよ先生。ただしあまり師匠面するようなら氷の刃がその胸を貫きますからご注意を」

アンデルセン「ハハッ、それは恐ろしい。とんでもない助手をとってしまったな」クスクス

・・・

760: 2016/09/06(火)00:41:35 ID:CTj
現在
雪の女王の世界 女王の宮殿 書庫

雪の女王「……と、こんな所だ」

ティンカーベル「なるほど…マッチ売りちゃんの話がハッピーエンドっての納得いかなかったけど、アンデルセンが言いたいこと解った気がする」

ティンカーベル「確かにさ、私もピーターパンがやられちゃったのに私一人だけ逃がして貰ったときは辛くて…ちょっと氏んじゃいたいって思ったもん、内緒だけどさ」

雪の女王「氏ねば苦しみから解放されると言う考えは…良いとは思わないがそれにすがらざるを得ない場合というのは残念ながらあるものだ」

ティンカーベル「まっ、でもさ!アンデルセンがマッチ売りちゃんに不幸な運命を押し付けた理由、解って良かったよ!」

ティンカーベル「少なくとも私は納得できたよ!さっきはアンデルセンバカにして悪いことしちゃったカモ!言い過ぎた!」

雪の女王「いいのさ、あいつは悪く言われても仕方のない奴だ」クスクス

ティンカーベル「女王も大概言いすぎだけどね…」

雪の女王「それでキモオタはどうだい?君はマッチ売りと実際に出会い、交流があったんだろう?私の話を聞いてどう思ったんだ?」

キモオタ「いやはや…我輩、不覚にも男泣きでござるよ…!」ブワァ

ティンカーベル「もー!いいよ泣かなくても!キモイからー!」フワフワ

キモオタ「えええwwwマッチ売り殿のこと思い出して泣いてるんでござるからもうちょっと優しくしてくれてもいいでござろうにwww」

761: 2016/09/06(火)00:50:59 ID:CTj

キモオタ「女王殿、まずは話していただいてありがとうでござる」ペコリ

雪に女王「どういたしまして。で、君の中で何か変わったかい?」

キモオタ「そうですな…まずはマッチ売り殿のあの結末がキチンと意味や願いがあるもので良かったと安心しているでござる」

キモオタ「昨今のお涙頂戴展開のアニメのように人気取りのためにあんな結末にされていたとしたらマッチ殿も浮かばれませんからなwww」

雪の女王「その点は安心してくれ。アナスンは自分の利益のためにおとぎ話を書いたりはしなかった」

キモオタ「そのようでござるな…それに、アンデルセン殿の考えはドンピシャだったでござるよ」

雪の女王「ドンピシャ?」

キモオタ「マッチ売り殿は自分の氏が未来の子供達の為になるのならと自分の運命を受け入れたのでござる。まさにアンデルセン殿が信じたように…彼女は強く優しい少女でござった」

ティンカーベル「うんうん、私達やドロシー達が干渉しちゃったからおとぎ話の事とか知る事になっちゃったけど…結果的には良かったのかな?」

キモオタ「それは何ともいえないでござるな…。とはいえマッチ売り殿は作者や周囲の者、自分の境遇を恨むようなことは無かったでござる」

キモオタ「偶然か必然か、アンデルセン殿の想いもマッチ売り殿の想いも本質は同じ。子供達の幸せを願ってのことでござる」

キモオタ「マッチ売り殿が幸福だったかどうか…我輩は断言できないでござる。しかしそれでも、彼女やアンデルセン殿の想いは確実に【マッチ売りの少女】の中に息づいているわけでござる」

キモオタ「【マッチ売りの少女】が消滅しなければアンデルセン殿が願ったように不幸な子供達は減っていくでござろう、そしてやがて世界中の子供達が幸せになれたとき」

キモオタ「本当の意味で、マッチ売り殿は幸せになれるのでござろうな。そして我輩はそれを願うばかりでござるよ」

762: 2016/09/06(火)00:57:00 ID:CTj
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます

マッチ売りちゃんの幸せを切に願う俺とキモオタ
シリアス場面長かったけど次回はちょっとシリアスはお休み!

次回

   ロ リ コ ン 登 場 !   

お楽しみに!

>>750
キモオタや仲間達に出会えたことがあの時のマッチ売りちゃんにとってはすごく大きな救いだったんじゃないかなって思います

>>751
ちょwwwアンデルセンの方も気にしてあげてwww

763: 2016/09/06(火)01:26:21 ID:IJl
乙!
マッチ売りちゃん…

764: 2016/09/06(火)08:44:11 ID:Mo3
乙です!
続き待ってます!!

765: 2016/09/06(火)10:19:52 ID:RkD
乙!
口リコン・・・・?誰だ?

引用元: キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」九冊目