◆1

雪の女王「以前ヘンゼルを連れてきた時にも感じた事だが…君は顔に似合わず優しい心を持っている男だな」フフッ

キモオタ「ドゥフフwwwよく言われるでござるwww」コポォ

雪の女王「マッチ売りは君に出会えて幸せだったと思うぞ。彼女は命を失ったが…その魂が安らかに眠ることを祈り続けてくれる者に出会えたんだ」

雪の女王「少なくとも…君たちの存在は彼女の心を救うことが出来た。私はそう思うよ」

キモオタ「それなら嬉しいのでござるが……しかし我輩は心身共にキモいでござるからなぁwwwマッチ売り殿の支えになれたのかどうか怪しいところでござるwww」コポォ

ティンカーベル「まったくその通りだよね!っていうか今だから言うけどマッチ売りちゃんなんでキモオタに懐いてたんだろう…こんなにキモいのに…」ムムム

キモオタ「ちょwwwずっとそんな事思っていたのでござるかwwwせっかくのシリアスが台無しwww」コポォ

ティンカーベル「あはは!でもさ、大丈夫だよ!マッチ売りちゃんも世界中の子供達もいつか絶対幸せになれるよ!」

ティンカーベル「司書さんが読み聞かせしてた時さ、子供達はマッチ売りちゃんの為に泣いてくれたよ。だからアンデルセンやマッチ売りちゃんが願う未来は絶対に来るよ!」

キモオタ「ですなwwwそうだと超絶喜ばしいでござるwwwそうでござろう女王殿www」

雪の女王「あぁそうだな。私もアナスンの友人として、その未来が訪れることを願っているよ」

キモオタ「ドゥフフwww我輩、女王殿には改めて礼を言わせていただきたいでござるwwwマッチ売り殿が生み出された理由…聞けて良かったでござるよwww」

キモオタ「アンデルセン殿の想いを遂げるためにもマッチ売り殿との約束を果たすためにも…我々がアリス殿を必ずや止めて見せますぞ!」フンッ

ティンカーベル「おぉー!更にやる気が沸いてきたって感じ?」

キモオタ「このキモオタ全力で挑みますぞwww明日は遂に決戦でござるし気持ちを引き締めていきますぞwwwティンカーベル殿www」コポォ

ティンカーベル「そうだね!頑張ろうね!まぁでもキモオタは気持ちだけじゃなくてその出っ張ったお腹も引き締めた方がいいと思うけどね!」クスクス

キモオタ「ちょwww別にそれ今言わなくてもいいのではwww隙あらば我輩をディスるのやめていただきたいwww」ポヨン

772: 2016/09/12(月)00:38:46 ID:eFq
雪の女王「フフッ、作戦の決行は明日だというのに二人とも冗談を飛ばす余裕があるんだな。頼もしいことだ」クスクス

キモオタ「いやぁwwwそういう訳ではないのでござるけどwwwふざけてるのは我々にとって平常営業でござるからwww」コポォ

ティンカーベル「まぁ私の場合は緊張をほぐす意味であえてキモオタをからかってるみたいなところあるけどね!」フンス

キモオタ「ちょwwwものは言い様でござるなwwwじゃあ仕方ないですなってならないでござるぞwww」コポォ

雪の女王「フフッ、まぁ気負い過ぎるよりはずっといいさ。だが二人とも冗談が好きなようだ、ふざけすぎて作戦に影響を出さないようにな」クスクス

ティンカーベル「あーっ!女王ったら私たちがいつも冗談ばっかしふざけてばっかしだとか思ってるでしょ?心外だよねキモオタ!」プンスコ

キモオタ「まぁ割と否定は出来ないでござるけどwwwとはいえアリス殿を止めることに関しては大真面目ですぞwww」

ティンカーベル「そうだよね!今回の女王の話でちょっと気になることもあったし!」

キモオタ「そうですな。現実世界の住人であるアンデルセン殿が…女王殿に出会う前からおとぎ話の世界の存在を知っていたという点でござるな?」

ティンカーベル「そうそう、いきなり女王が来ても驚かなかったんだもんね」

雪の女王「そうだな。アナスンは私と出会う以前からおとぎ話の世界の存在を知っていた。ある童話作家から聞いたと言っていたが…」

ティンカーベル「うーん…誰から聞いたのかな?ていうかその童話作家はどうしてこの事を知ってたんだろうね?」

キモオタ「不可解でござるよね。現実世界の人間におとぎ話の世界を認知する手段はありませんからな…」

773: 2016/09/12(月)00:41:08 ID:eFq

雪の女王「確かに妙ではあるが…このアナスンがおとぎ話の世界について知っていたことはアリスの件とは無関係なのではないか?」

雪の女王「【不思議の国のアリス】が出版されたのは私達が出会ってからずっと後だ、この時代にアリスは存在すらしていないさ」

キモオタ「となるとアリス殿の仕業という可能性は無いでござるか…となると何処の誰がどうやってその事を知ったのか…」

雪の女王「随分と気にしているな、何か理由でもあるのか?」

キモオタ「実はアンデルセン殿の他にもおとぎ話の世界の存在を認知している作者を我々は知っているのでござるよ」

ティンカーベル「【かぐや姫】の世界で知ったんだけどさ、女王はウィーダっていう作者知ってる?」

雪の女王「あぁ、確か【フランダースの犬】の作者だったな」

キモオタ「かぐや殿に聞いた話だとどうやらウィーダ殿はおとぎ話の世界の存在を知っていて、更に【フランダースの犬】の世界へ渡る手段ももっていたとか…」

ティンカーベル「この事がアリスと何か関係があるのかどうかはわかんないけど…でも気になるよね」

キモオタ「アリス殿は現実世界を憎んでいるようでござる。ならば…現実世界とおとぎ話の世界、両方の存在を認知している者が何らかの鍵を握っている可能性も…あるでござるな」

ティンカーベル「アリスはヘンゼルみたいに自分の作者に腹を立ててた感じじゃないし、何か別のところに現実世界を嫌う理由があるんだろうしね」

雪の女王「本来知るはずのない世界の存在を知っている作者達…彼等の存在がアリスが凶行に及んだ理由と関係していると、そう考えているわけだな?」

774: 2016/09/12(月)00:42:42 ID:eFq

キモオタ「ぶっちゃけそこまで考えが固まっているわけではないでござるが…」

ティンカーベル「どんな理由があったとしてもアリスのやってる事は許しちゃいけないことだよ。でも何でこんなことしたのかは気になるし…」

雪の女王「知っていればアリスを止めるためのカードともなり得る、か」

キモオタ「そうですな。雪の女王殿、アンデルセン殿はその事について何か言っていなかったでござるか?」

雪の女王「特には記憶にないな。存在を知ってはいたがアナスンがおとぎ話の世界へ行くことは一度も無かったしその経験が無いとも聞いている」

ティンカーベル「あくまで知ってるだけって事かな、世界移動する手段も無かっただろうし…あっ!でも女王なら世界移動できるじゃん!」

雪の女王「確かにそうだがアナスンを現実世界から連れ出した事はないよ。必要性もなかったし彼が望んだことも無かったからな」

キモオタ「そうでござるか…おとぎ話の世界について知っていた作者は今の所アンデルセン殿、ウィーダ殿と…あとはとある童話作家殿でござるか」

ティンカーベル「うーん…女王は他に心当たりない?」

雪の女王「そうだな…アナスンはあまり他人との関わりをもたないタイプだった。話すとしても余程近しい人物だろうが…」

雪の女王「…実際のところはどうか解らない。だが可能性がある人物はいるな」

775: 2016/09/12(月)00:44:42 ID:eFq
キモオタ「おとぎ話の世界の存在を知っていた可能性がある人物…それは一体誰ですかな?」

雪の女王「数人存在するアナスンと特に親しい人物だ。一人は当時のオペラ歌手ジェニー・リンド…彼女は作家ではないがアナスンとは親しかった」

ティンカーベル「童話作家じゃないけどアンデルセンと仲良かったなら知ってた可能性はあるって事だね」

雪の女王「あとは君達も知っている名だろうが…グリム童話の作者兄弟だ」

キモオタ「確かヘンゼル殿グレーテル殿の世界を生み出した作者でござるな?」

雪の女王「あぁ、君の仲間の【ラプンツェル】の作者でもある。兄の名はヤーコプ、弟をヴィルヘルムと言った」

ティンカーベル「すんごく有名だよね、グリム童話!やっぱ童話作家同士は惹かれあうのかな?スタンド使いとおんなじで」

キモオタ「ぶっふぉwwwお主このタイミングでwww」コポォ

雪の女王「話を進めるぞ?アナスンにとってグリム兄弟は童話作家の先輩であり良い理解者でもあった。アナスンが誰かにおとぎ話の世界のことを話すとすればこの三人だと思うが……いや、もう一人居たな。この事を話しているかも知れない相手が」

キモオタ「ほう…それは一体どなたですかな?」

雪の女王「当時、私達が出会ったとある青年だ。相当変わった奴だったが…才能にあふれた奴で、ユーモアもある奴だったな。私は相当手を焼かされたがおもしろい青年だった」

ティンカーベル「へーっ…女王が言うならきっと相当だよね、その人の話もちょっと聞きたいかも!」

キモオタ「ティンカーベル殿は頻繁に話を脱線させますなwwwしかし我輩も興味はありますぞwww」

雪の女王「そうか?それならば彼との出会いについて話そう。あれは…私がアナスンの助手となってしばらく経ったある日のことだった」

776: 2016/09/12(月)00:46:26 ID:eFq
過去
現実世界 デンマーク アンデルセンの自宅

アンデルセン「参ったな…あまり時間がないのだが、またもや蝶ネクタイが見つからない」ガサゴソ

男の声『愚か者。前もって支度しておかないから時間に追われるのだ』

アンデルセン「このあいだ発売された有名作家の小説、それを早く読めと急かすあなたにも責任はあるんですよ?」ゴソゴソ

男の声『私一人では本を開けないのだから仕方あるまい、私に責任を押しつけるな。お前が探すよりあの女に聞けば早いだろう、そうするべきだ』

アンデルセン「確かにそうですけど頼らずに済むならその方がいいんですよ。あとで何を言われるか解りませんからね」クスクス

男の声『おとぎ話の住人など利用するために存在しているのだ、何を遠慮している?』

アンデルセン「またそんな事を…それに遠慮じゃありません。彼女に頼りすぎると小言が飛んでくるのでね」ハハハ

雪の女王「おいアンデルセン、また独り言か?そんなことしている暇があるなら急げ、今日は出版社に顔を出すんだろ?私はもう支度できているんだぞ」ガチャッ

アンデルセン「あぁ、すまない。もう少し時間をくれないか?」

雪の女王「…蝶ネクタイならクローゼットの開き右側だ。早くしろ」

アンデルセン「おぉ、こんな所にあったか。君はやはり優秀な助手だな、助かったよ」フフッ

雪の女王「私が優秀なんじゃない、お前が無精すぎるんだ。大体だな、お前には有名作家だという自覚があるのか?衣類の管理くらい出来て当然だろう、そんな事で私の手を煩わせるのは──」クドクド

男の声『おい、この喧しい女を黙らせろ』チッ

アンデルセン「いいんですか?私が氷塊になればもう小説読めませんよ?」クスクス

777: 2016/09/12(月)00:48:25 ID:eFq

アンデルセンの住む街 出版社

・・・

出版業者「いやー、アナスン先生に助手さん!わざわざ御足労頂いてすいません!助かりますー」

アンデルセン「いいや、構わないよ。日用品と食料の買い出しもあるからな、それのついでだ」

出版業者「えぇ~こっちがついでなんですか?勘弁してくださいよー!早速なんですがお願いしてたもの、出来てます?」アハハ

雪の女王「重版が決まった童話集で修正を入れたい箇所のリストだったな。これだ」スッ

出版業者「はいはい、ありがとうございます。早速拝見…やっぱり集録する童話の内容自体に変更はないんですね」

アンデルセン「あぁ、読みやすくするために何ヶ所か変えただけだな。内容は一切触っていない」

出版業者「それが良いですよ!先生の作品はそのままじゃないとダメです」ハハハ

アンデルセン「そうは言うがこれは私の最初の童話集だからな、改めて見直すとつたない表現の場所もあって恥ずかしい思いをしたよ」フフッ

出版業者「まだ駆け出しの頃の作品ですからね、それは仕方ないですよ!昔の作品読むのなんか恥ずかしいのは作家あるあるですから」アハハ

雪の女王「しかし、わざわざこんな昔の童話集を印刷し直す必要があるのか?」

出版業者「先生の作品は人気ですからねー、それに半年前に出版した【マッチ売りの少女】!あれが大ヒットしたこともあってまた需要が増えてきてるんですよ!」

出版業者「あの童話の出版はかなり物議を醸しましたけど…先生の名前を更に広めることになりましたからね!結果的には良かったと私は思ってますよー」

778: 2016/09/12(月)00:50:33 ID:eFq

雪の女王(私がアンデルセンの助手になったしばらく後【マッチ売りの少女】は出版され、もう半年の月日が流れた)

雪の女王(その本は瞬く間に売れ、たちまち世間の人々に知れ渡ることになった。それと同時にアンデルセンとその助手である私はしばらく多忙な日々を送ることになったが…)

雪の女王(最近になってそれもだいぶ落ち着いてきた。助手としての活動は苦労も多いのだが…もう慣れたものだ)

雪の女王(それに自身が執筆した童話に込めた感情や想いをアンデルセンは執筆作業の傍ら、時間を見つけては私に話してくれた。それは私にとってとても価値のある時間だった)

出版業者「えーっと…はい、じゃああとはこんな感じで印刷しておきますね先生!何か他にあります?」

アンデルセン「いいや、君に任せるよ。君ならば安心して任せられるからな、頼んだよ」

出版業者「もー、照れるじゃないですか!じゃあ今日の作業はこれで終了です、重版本の見本出来たらすぐに届けますね」

アンデルセン「あぁ、頼むよ」

出版業者「それでは今日はありがとうございました。…っといけないいけない!ファンレター渡すの忘れてました、えーっと…はい!これです!」ドサッ

アンデルセン「また随分と来ているな。とても有り難いことだが、これを持ち帰る助手クンの気持ちを考えると複雑だな。この量は相当重いぞ?」クスクス

雪の女王「そう仰るのでしたら先生がお持ちください。私は荷物持ちではありませんので」

出版業者「はははっ…えっとそれで、ですね…今回も念の為全部こちらで中身は確認させて貰ってますけど、ご了承お願いします」ペコッ

779: 2016/09/12(月)00:52:08 ID:eFq
アンデルセン「それは構わないが…。中身を確認せずにそのまま渡してくれてもいいんだぞ?君たちも恐ろしいだろう、悪意が込められているかも知れない郵便物を確認するのは」

出版業者「いえいえ、先生が怪我でもしては大変ですし一般のファンが悲しみますよ。だから中身の確認はさせてください、以前のように刃物が仕込まれた郵便物が届かないとも限りません」

アンデルセン「解った、ただ君達も十分に気をつけてくれ。私にとって君達は大切な仕事仲間なんだから」

出版業者「そう言っていただけると嬉しいです!私達は大丈夫なんでご心配なく!」アハハ

雪の女王「しかし陰湿な奴もいるものだな。【マッチ売りの少女】の結末が気に入らないからといって手紙に刃物を仕込んで送りつけるなど…何処の誰だか知らないが野蛮な奴だ」

アンデルセン「フフッ、君は人のことを言えないだろう?氷の刃で私を切りつけたのはどこの誰だったかな?」ヒソヒソ

雪の女王「陰湿な奴と一緒にするな。私は正面から正々堂々と殺意を向けた」ヒソヒソ

アンデルセン「根本は同じだろう?まぁ君のおかげで多少の殺意には動じなくなったから感謝はしているよ」クスクス

雪の女王「……。結局、犯人は見つからないのか?」

出版業者「ちょっと難しいでしょうね…。アナスン先生の作風は少し特殊ですから以前からクレームとか講義の手紙は来てましたけど、今回は特別反響が大きいですよ、良いものも悪いものもひっくるめて」

出版業者「【人魚姫】の時もすごかったですけどね『ハッピーエンドにしてくれ』って手紙は。今回の【マッチ売りの少女】もかなり悲しい物語ですから…まぁこの手の抗議やクレームはもう仕方ないですよ」

出版業者「もちろん好意的な手紙の方が圧倒的に多いですし、先生の作品が素晴らしいからこその反響ですから喜ばしいことですよ。ささっ、外までお送りしますよ先生!」

780: 2016/09/12(月)00:54:34 ID:eFq
現実世界 アンデルセンの住む街 帰り道

雪の女王「……」

アンデルセン「どうしたのかね助手クン?さっきから黙っているが…何か悪巧みでもしているのかい?買い物も済ませたんだ、早く帰ろう」クスクス

雪の女王「ほおっておいてくれ、少し考え事をしているだけだ」

アンデルセン「私に批判や抗議の手紙、悪質な手紙が来たことを考えていたのか?」

雪の女王「まぁな…お前におとぎ話を書き直せと迫った私がこんなことを言うのもおかしな話だが」

アンデルセン「あぁ、確かにそうだ。直接刃を向けてきたのは君だけだしな」クスクス

アンデルセン「だがな女王、童話にしろ何にしろ世間に出す以上は聞こえてくる評判は好意的な意見や肯定的な声だけじゃない」

アンデルセン「否定的な意見や批判をぶつけられる覚悟がなければ作家などできない。私の場合は特に暗い結末が多いからな、【人魚姫】の時も相当言われたもんだ」

雪の女王「あのおとぎ話も相当暗い結末だからな」

アンデルセン「ハッピーエンドにしてくれって言葉は何度言われたか数えていないくらいだ。他にも『アンデルセンは性根が歪んでる』とか『冷徹な心を持つ卑劣な作者』とも言われたな」

雪の女王「私に言えた事ではないがそこまで言われて辛くはないのか?腹は立たないのか?お前は確かに暗い運命を主人公に課すが…それは意味あることだろう」

アンデルセン「自分が書いたものに対する評判も批判もそれは作者として私が受け止めるべき責任だ。それにそんな事で腹を立てても仕方ないだろう?」

雪の女王「だが…お前の想いを知った今、お前に対する批判がこれほどというのは……すっきりしない」

アンデルセン「気にせず喜べばいいのさ。彼等はマッチ売りを不憫に思って私に抗議してくれているんだ。マッチ売りの運命を変えたいと思って私を批判するんだ」

アンデルセン「それはむしろ喜ばしい事じゃないか、人々の意識がマッチ売りを救うことに向いているんだから。それが原因で私が叩かれるのは苦でもなんでもないさ」

781: 2016/09/12(月)00:56:29 ID:eFq
アンデルセン「私は富や名声、賞賛を得るために童話を書いているんじゃないんだ。私がどう思われようと些細なことだ」

雪の女王「…お前がそれで良いというのなら、私は何もいわない」

アンデルセン「それでいいんだよ。でも出来れば私が過激派に襲われた時はすぐに氷の盾を展開してくれ、氏んでは執筆できないからな。頼んだよ助手クン?」

雪の女王「…私はあなたの助手ですからそれくらいのことはしてやりますよ。ただ自分の身を守れるくらいにはしておけ」

アンデルセン「ハハッ、確かにそうだな。少しは体を鍛えるのも悪くないn」

ガシャーン!

「逃げるな!待て不審者めー!待てぇー!」
「だから俺は不審者じゃねぇっての!何度言えば解ってくれんだよ!」
「不審者じゃないなら何故逃げる!やましいことがあるからだろう!」
「警察が追ってきたらそりゃあ誰だって逃げるっつーの!」

雪の女王「何だか騒がしいな…捕り物でもやっているのか?」

アンデルセン「どこかで事件でもあったんだろう。一見安全なこの街も治安に不安のある地区は存在するからな…」

782: 2016/09/12(月)00:58:44 ID:eFq
警官「待てこの不審者めー!逃がしはしないぞー!」タッタッタッ

青年「クッソ、あの警官しつこいな…!っと曲がり角発見!この角を曲がりゃあの警官をまけるかもしれないな…っとぉ!?」ヒュッ

ドンッ

アンデルセン「うぉっ!」ドサッ

青年「ぐあぁっ!」ズサーッ

雪の女王「おい、アンデルセン。大丈夫か?手を貸してやろう」スッ

アンデルセン「あぁ、悪い。まったく見知らぬ青年から突進されるとは思わなかったよ。君、大丈夫か?」

青年「あぁ、悪ぃ…。ってやべぇ!こんな事してたら捕まっちまう!そうだ…おっさん頼む!俺を匿ってくれ!」

アンデルセン「さっき騒がしかったのは君が警官から逃げていたからか…悪匿うのはいいが君に非があるなら私は匿えないぞ?」

青年「誤解なんだよ、俺は何もしてねぇのに不審者扱いされてよぉ…。やべっ!もうさっきの警官が来ちまう、俺はそこに隠れてるから頼んだぜおっさん!マジで頼んだぜ!」コソコソ

雪の女王「……随分勝手な奴だな。で、どうするんだアンデルセン?」

アンデルセン「まぁ誤解だというのなら彼を信じようじゃないか」

タッタッタッ

警官「あの不審者め…何処へ逃げた!?あっ、そこの方々こちらにこんぐらいの背丈の青年が走ってきませんでしたか?不審者なんですよそいつ、見ませんでした?」キョロキョロ

アンデルセン「不審者?悪いが見ていないな、そうだろう?」

雪の女王「…あぁ、こっちには来なかったな」

警官「あれっ?そうですか…どっかで見失ったか…。ともあれご協力感謝します、不審者を見かけましたら御一報を!」ピシッ

783: 2016/09/12(月)01:01:34 ID:eFq
・・・

アンデルセン「君、もう出てきても大丈夫だ。あの警官は向こうを探しに行ったからな」

青年「いやー、助かった!ったくこんな善良な旅の青年を捕まえて不審者とか…とにかくありがとなおっさん!何か例がしたいんだけどさ…おっさん、名前は?」

アンデルセン「私か?私はハンス・クリスチャン・アンデルセン。こっちの綺麗な女性は私の助手だ」

雪の女王「見え透いたおべっかはよせ。まぁ好きに呼ぶといい、助手とでもなんとでもな」

青年「アンデルセンって…あのアンデルセン先生か!?こんなに早く会えるなんて感激だなぁ!っと、失礼な態度とっちまった!おっさんとか呼んで悪い!いや、すんませんでした!」

アンデルセン「そんなかしこまらなくていい。それより君は何故追われていたんだ?何もしていないのに追われるとは思えない、誤解だとしても何か原因があるんだろう?」

青年「それがさっぱり検討がつかなくて…俺、街でスケッチしてただけなんですよ。ほら、これが証拠のスケッチブックです」

バサッ

アンデルセン「これは……」

雪の女王「……おい、お前やはり不審者じゃないか」ギロリ

青年「えぇっ!?何でそうなるんですか!?言ったでしょ、俺は絵を描いてただけだって!」

雪の女王「だったら説明しろ。何故このスケッチブック…どのページをめくっても幼い少女が描かれているんだ?」

青年「何故って…そりゃ幼女が世界で一番かわいいからに決まってるでしょ?当然じゃないですか」キョトン

784: 2016/09/12(月)01:06:02 ID:eFq

雪の女王「……おいアンデルセン、こいつを警官に突き出すぞ」

アンデルセン「気持ちは解るが彼が何かをしたわけじゃないだろう?」

青年「そうですよ!俺は三時間ほど街の幼女を凝視してスケッチしてただけです!もちろん幼女には指一本振れてませんよ!」

雪の女王「…他にも風景とか幼女以外の町人とか描けるものはいくらでもあるだろ、なぜ幼女しか描かない?」

青年「そりゃあ幼女が好きだからですよ。世界中の美術品や宝石をかき集めても一人の幼女が放つ輝きの前には無価値でしょ?」

雪の女王「…おい、こいつ限り無くアウトだぞ」

アンデルセン「……確かにそうかも知れないな」

青年「えーっ!?なんでわかってくれないんですか!?先生だって幼女好きでしょ!?」

アンデルセン「君の嗜好に私を巻き込むな。確かに子供は好きだが幼い少女に限定しない」

青年「マジでか…先生の童話を読んでアンデルセン先生は間違いなく俺と同じ口リコン仲間だと思ったのに…っていうか隠さなくてもいいんです!口リコンは悪い事じゃないんです!」

アンデルセン「……女王、彼を捕まえておいてくれ。私は警官を呼んでくる」

青年「ちょ、すいませんすいません!何でもするんで警官は勘弁してくださいって!」

雪の女王「……おい、どうするんだアンデルセン?」

アンデルセン「とりあえず…名前を聞かせて貰おう、君の名前を聞いていなかったからね。それから少し話を聞いて、もしも君のことを信用できないと思えばすぐに警察に突き出す」

青年「えぇぇ…何でこんなことになってんだよ…。じゃあもう名前ちゃんと言うんでそしたら俺の話聞いてくださいよ?」



チャールズ「俺、チャールズって言います。チャールズ・ラトヴィッジ・ドジソン。それが俺の名前ですよ…偽名とかじゃないんでマジで警官は勘弁してくださいよもう…」

804: 2016/09/19(月)00:33:47 ID:HPk
アンデルセン「自己紹介ありがとうチャールズ。ところで一つ指摘をさせてもらうが…どうやら君は口リコンの意味を勘違いしているようだ」

チャールズ「えっ?そんなことないですって、口リコンってあれでしょ?幼女が好きな人のことですよね?俺や先生みたいな」

アンデルセン「…いや、微妙に違う。口リコンというのは少女に対して性的嗜好を持っていたり、恋愛感情を抱く者の事だ。ただの子供好きを口リコンと呼ぶのは誤用だ」

チャールズ「へーっ、俺、ずっと『幼女好き=口リコン』だと勘違いしてましたよー!また一つ勉強になりました」アハハ

アンデルセン「さてチャールズ、その事を踏まえて一つ確認したいのだが…」

チャールズ「あっ、はい。なんですか?」

アンデルセン「言動から察するに…君はどうやら幼い少女に対して強い執着を持っているようだ。それも相当過剰な執着だ」

チャールズ「はははっ、執着って言い方は大げさだなぁ~!しかも過剰って!それじゃまるで俺が異常者みたいじゃないですか~、冗談きついなぁ~」ハハハ

チャールズ「俺は幼女が大好きなただの学生ですよ、特に珍しいもんでもないですって」ナイナイ

雪の女王「ただの学生はスケッチブック一杯に幼女を描いたりしないと思うが…?」

チャールズ「そうですかー?確かにこの趣味持ってるの俺以外に見たこと無いけど、まぁそんなの些細なことですって」

チャールズ「というか本当はスケッチじゃなくて写真に幼女の姿を収めたいんですけどね…どうしても写真の撮影って時間かかるじゃないですか?もうちょっと技術が進めばカメラももっと気軽に使えると思うんですけどねー」

チャールズ「街角の幼女をパシャッと撮影してその写真を外見別にファイリングするんです!ブロンドの幼女、銀髪の幼女、ツインテールの幼女、ボブショートの幼女…って感じで!」

チャールズ「うわっ、想像したらワクワクしてきた…!実現させたいなぁ、あらゆる幼女が記録された幼女アルバム…。いや待てよ、更に技術が進めば気軽に映像の撮影も出来るようになるんじゃ…?」

チャールズ「そうすれば可愛く動く幼女がいつでも見放題!?それも属性別にファイリングして…うわーっ、そんな未来が来たらいいですよねー!なんか俺テンションあがってきちゃいましたよー!」ワクワク

アンデルセン「チャールズ」

チャールズ「はい、なんですか?」ワクワク

アンデルセン「警察に行こう」

チャールズ「えっ!?」

805: 2016/09/19(月)00:36:19 ID:HPk
チャールズ「行きませんよ!なんでですか!?今の俺の話にそういう要素ありました!?俺、趣味の話しただけですよ!?」

アンデルセン「私の知り合いに腕の良い精神科医が居るんだ。今からカウンセリングを頼めないか聞いてみよう」

チャールズ「だから行きませんって!俺、犯罪者でも病人でもないんですよ?」

雪の女王「今のは完全に変質者の発想だったぞ。なんだ外見毎のファイリングって、確実に異常者だぞお前は」

チャールズ「言い過ぎじゃないですか!?俺、理想の未来を語っただけですってー!だって好きなものの姿をいつでもどこでもずっと眺めていられるってもう夢でしょ!?」

アンデルセン「単刀直入に聞こう。君は幼い少女に欲情する性癖を持っているのか?」

チャールズ「えぇっ!?俺がですか!?」ガーン

アンデルセン「私はそう疑っている。君を否定するつもりはないが…君の思考は『子供好き』の範疇を越えている。それどころかある種の危険性すら感じる」

チャールズ「ちょ、ちょっと待ってくださいって!俺が幼女に欲情する危険な変質者だって言うんですか!?いくら先生でもさすがに酷いですよそれ!」

アンデルセン「暴言を浴びせたことは謝る。だが幼い子供を狙った犯罪は後を絶たない、中には自らの性的欲求を満たすため凶行に及ぶ者もいる」

アンデルセン「もちろん、君がそうだと言っているわけではない。だが…それが健全な愛情であろうと不健全な欲望であろうと、君の少女に対する感情は端から見ていて異常なレベルだ」

アンデルセン「私も童話作家の端くれ、子供達の幸せを願ってペンを握っているんだ。もしも君が少女に対して邪な感情を持っているのなら…私は君を野放しには出来ない」

チャールズ「…先生、俺は確かに幼女が好きです、大好きです。でも今までの人生で一度も幼女に欲情したことなんかありません。俺、言い逃れで適当言ってるんじゃありません」

チャールズ「俺、幼女は触れずに愛でるもの、そして守るべきものだって思ってます。だから先生が案じているような幼女を悲しませるような真似は絶対にしません!」

チャールズ「言うなれば俺は…そう、健全な口リコンなんです!俺の幼女に対するこの想いに邪な感情が入り込む余地なんて一ミリだってありません!」

806: 2016/09/19(月)00:38:04 ID:HPk
アンデルセン「そうか。その言葉に一切のごまかしや偽りは無いか?」

チャールズ「はい、全世界の幼女に誓って真実です」キッ

アンデルセン「……解った、君の言葉を信じよう。変質者扱いして済まなかった、許してくれチャールズ」スッ

チャールズ「いや、解って貰えたならそれでいいですよ!っていうかそんな疑いを掛けられるほど俺の言動ってヤバイのか…自分じゃ気づかないもんだな…」

アンデルセン「言っては悪いが君に目を付けたあの警官の判断は正しい。そのレベルだよ、君から感じる危うさは」

チャールズ「マジですか!?それはちょっとショックですわ…」

アンデルセン「だが私は君を信じると決めた、警察に突き出すつもりはもう無い。だが…今後は少女に対する愛情は内に秘める事を薦める、少なくとも公の場では」

チャールズ「うーん…俺としては何も悪い事してないから自然体でいたいんですけど…警官の世話になるのはイヤだからなぁ…」ムムム

雪の女王「…おい、アンデルセン。こいつ野放しにして平気なのか?」

アンデルセン「私に訴えかける彼の目…あれは嘘を付いている目ではなかった。大丈夫だと私は思うが、君はまだ不安を拭えないか?」

雪の女王「さっきの言葉に偽りはないように思える、その点は信用に値する。だが…やはり思考というか言動がまずすぎる」

雪の女王「奴がさっき言っていた理想の未来とやらを警官に聞かせて見ろ、危険思想者として牢獄行きは確実だぞ?」

アンデルセン「まぁ、そこは私も同意だが…な」

807: 2016/09/19(月)00:40:31 ID:HPk
アンデルセン「さて…チャールズ。旅の途中だというのに長々と引き止めてすまなかったな」

チャールズ「あっ、いや、それは全然問題ないんです。俺の目的地この街ですから!」

雪の女王「おそらく先ほどの警官はまだお前を探している。ほとぼりが冷めるまでは目立つ行動は控えた方がいいだろうな」

アンデルセン「人の多い街だ、目立たなくしていれば大丈夫だろう。失礼の詫びに観光の案内でもしてやりたいが…あいにく私にはそういった事に疎い」

チャールズ「俺、別に気にしてないんですけど。もしも俺がそれを望むなら失礼の詫び、してもらえるんですか?」

アンデルセン「理由があったとは言え君の名誉を傷付けたからな。私に出来ることならばさせてくれ」

チャールズ「それなら一つ頼みがあります…アンデルセン先生!」

アンデルセン「なんだい、急に大きな声を出して…」

チャールズ「俺、この街に来たのは観光とかじゃないんです!実は俺、アンデルセン先生に会うためにこの街にやってきたんです!」

アンデルセン「私に会うために?そのためにわざわざこの街へ?」

チャールズ「ですよ!俺、先生のおとぎ話読んですげー感動しちゃって、先生の技術を学びたいって思ったんです。だから俺のこと弟子にしてk」

アンデルセン「それは断る」

チャールズ「えぇーっ!?俺の望み何でも聞いてくれるって言ったじゃないですかー!」

アンデルセン「そんな事は言っていないし『私に出来ることなら』と念を押したぞ?悪いが他のことにしてくれ」

808: 2016/09/19(月)00:42:41 ID:HPk
雪の女王「諦めろ。こいつは弟子はとらない、弟子にしてくれって奴は他にもいたが全て断っているからな」

チャールズ「そこを何とか!俺、先生に弟子入りするためにわざわざイギリスから来たんですよ!ぶっちゃけ長旅ですよ!しかも学校には休学届け出してます!そんぐらいの覚悟ですよ俺!」

アンデルセン「君の熱意は嬉しいのだがやはり駄目だ」

チャールズ「ぐぬぬ…やっぱり俺みたいな若造じゃ力不足ですか!じゃあもっと勉強して実力磨いて…」

アンデルセン「そうじゃない、力不足なのはむしろ私だ」

チャールズ「んなわけないですよ!先生はあの俺的ベスト幼女童話【マッチ売りの少女】を書いた大作家ですよ!?というかもはや童話作家の第一人者じゃないですか!」

アンデルセン「例え優れた作家だからといって師としても優れているというわけじゃあないだろう?」

アンデルセン「そもそも私が持つ童話作家としての技術は完全に独学だ。師を取って教えを受けた訳でも学校で学んだわけでもない…他者に教えられるような代物じゃあないよ」

アンデルセン「私の作品に感銘を受けてくれたことは嬉しく思う。だがどうせ師をとるなら他の童話作家にすべきだ。知り合いの出版業者に口利きをしてあげよう、それなら協力できる」

チャールズ「俺はアンデルセン先生じゃないと駄目なんですって!そうじゃなきゃわざわざデンマークまで来ませんって!」

アンデルセン「しかし、なぁ…君を弟子にしても私にはまともなことなど何も教えられない」

チャールズ「それでもいいんですって!とにかくアンデルセン先生の技術を近くで見るだけでも…!」

809: 2016/09/19(月)00:47:28 ID:HPk
アンデルセン「君はしつこいな…初めてだよ、そこまで食い下がる弟子志願者は」

チャールズ「俺、時間ないんで必氏にもなりますよ!休学期間も無限じゃないし…まぁ他にもいろいろあるんですけど」

アンデルセン「仕方ない、ならば試験を行うというのはどうだ?」

雪の女王「アンデルセン…?」

チャールズ「おっ!適性試験って訳ですね!俺がそれに合格すれば弟子にして貰えると!」

アンデルセン「あぁ、そんなところだな。だが不合格なら諦めること、それで構わないか?」

チャールズ「望むところですよ!それしか方法無いってなら俺はやります!」

アンデルセン「ならば私の家に招待しよう。こんな街中じゃあ試験も出来ない」

チャールズ「よっし!俺、どんな試験だろうとクリアしてみせますよ師匠!」

アンデルセン「気が早いな君は。言っておくが生半可な試験ではないから覚悟しておくようにな」

チャールズ「オッケーです!よーっし、世界中の幼女達よ俺に力を…!」

スタスタ

雪の女王「……」

810: 2016/09/19(月)00:49:35 ID:HPk

アンデルセンの自宅 応接室

アンデルセン「さぁ入って、遠慮なく座りなさい」

チャールズ「ここがアンデルセン先生の家かぁ…!流石は大作家ですよ家具とかもすげーこだわりとか感じますもん!このソファもかなり高級品ですよね!俺、こーいうの詳しいんです」ドヤァ

アンデルセン「いや、中古で購入した安物だが」

チャールズ「…家具の価値は使い心地の良さですよね!」

雪の女王「あぁ、そのソファ座り心地があまり良くないから近々処分するんだが」

チャールズ「……試験を始めましょう先生!」

アンデルセン「そうだな。そのために招いたんだ、ソファの品評を頼みたい訳じゃないからな」クスクス

チャールズ「そうですよ!で、試験ってなんですか?俺、ぶっちゃけ成績はいいんで学術試験なら自信アリアリですよ」ドヤァ

アンデルセン「童話作家に弟子入りしようというのなら試験内容はただ一つだ」

ドサッ

雪の女王「原稿用紙、そしてペンとインク…考えるまでもないな」

アンデルセン「さっき話した通り、私は他人にものを教えるなど出来ない。だから現時点で君にある程度の技量と才能が備わっていないと弟子になんかできない、それを計らせてもらう」

チャールズ「なるほど!じゃあつまり…!」

アンデルセン「おとぎ話を一本書いてみなさい。それを読んで君を弟子として招くかどうかを判断する」

811: 2016/09/19(月)00:55:17 ID:HPk
チャールズ「いいですね、わかりやすいです!他に取り決めとかありますか?」

アンデルセン「あまりダラダラと書かれても困るからな、制限時間は二時間だ」

アンデルセン「二時間のうちに完全にオリジナルのおとぎ話を一本仕上げること。言っておくが推考も含めた時間だ、原稿用紙を何枚使っても構わないから物語として完成したものを提出すること」

チャールズ「二時間で推考込み…」

雪の女王(童話作家に弟子入りしようと言うんだ、文章の心得はあるだろう。とはいえチャールズは素人)

雪の女王(素人に完全オリジナルのおとぎ話を二時間で書けというのは…この試験、単純だが一筋縄ではいかないな)

チャールズ「先生、ひとつ確認させてください」

アンデルセン「なんだい?言っておくが二時間という制約は変更しない、それが無理だというのなら諦めて貰おう」

チャールズ「いや、二時間で十分なんですけど…幼女は何人まで出しても良いですか?」

アンデルセン「…それは必要な質問かい?」

チャールズ「必要ですよ!完成した後で『幼女はひとりまで』とか言われたら困りますからね!何人までオッケーですか?最低でも6口リは使いたいんですけど…」

アンデルセン「好きにするといい。十でも百でも好きなだけ。では…開始だ」ポンッ

812: 2016/09/19(月)00:57:25 ID:HPk
試験中

チャールズ「で、ここで幼女と幼女が幼女でトリプル幼女で…口リ口リ口リ口リ…」カリカリカリカリ

アンデルセン「……」ジッ

雪の女王「おい、アンデルセン…お前正気か?」

アンデルセン「なんだい突然?私はいたって正気だよ、いついかなるときでもね」フフッ

雪の女王「…珍しいと思ってな、お前がこんな試験をするなんて初めてだ。いつもはどんな相手でも断って終わりじゃないか」

アンデルセン「偶然、そしておかしな出会いではあったがこれも縁。それに彼の幼い少女に対する想いは知っているからね、それがどうおとぎ話に映し出されるか興味がある」

アンデルセン「一見すると異常者のような彼の思考も…その根底にあるのは子供を愛する心。それは童話作家にとって必要不可欠な要素だ」

雪の女王「そう言えば聞こえが良いが…危うさの方が買っていると私は思う」

アンデルセン「まぁ童話にしろ何にしろ、少々変わり者の方が素晴らしい作品を作れるものさ。変わり者という一点において彼は他の追随を許さないだろう?」

雪の女王「変わり者でまとめて良い範疇なのか?まぁいい…それにお前もかなりの変わり者だからそういう意味では説得力がある話だ」

アンデルセン「その理屈だと君も随分と良い童話を書きそうだな、君も随分な変わり者だ」クスクス

雪の女王「…で、こいつが仮に素晴らしい作品を買いたとしたら本当に弟子として招き入れるのか?」

アンデルセン「そりゃあそうだ。試験をしておきながら採用する気がない、なんて酷いことはしない」

アンデルセン「素質とある程度の技術があると判断できればキチンと彼を迎え入れるよ。当然、厳しい判定にはなるがな」

823: 2016/09/20(火)00:03:29 ID:OJY
アンデルセンの自宅 応接室

アンデルセン「あと三十分だ、チャールズ」

チャールズ「はーい、了解しましたー」カリカリカリカリ

アンデルセン(元々構想が頭の中にあったのか、筆の進みが快調だ。突然の試験にも関わらず筆が止まることがない)

アンデルセン(限られた時間の中での執筆。構想があったとしても原稿に落とせる情報は限られている、しだいに余裕を失うだろうと思っていたが…)

アンデルセン(焦りは一切見られない。それだけ普段から物語を書き慣れているという事だろうか?どちらにせよ作品を完成させることはできそうだ。となると……)

アンデルセン「……先生、居ますか?」ヒソッ

男の声『あぁ、ここにいる』

アンデルセン「彼の作品はもうじき完成するでしょう。その評価をするのは私の役目ですが…出来ればあなたの意見も聞かせて頂きたい」

男の声『何故この私が素人が書いた小説の真似事など読まなければならないのだ…しかも童話なのだろう?気が乗らないな』

アンデルセン「そう仰らずに。どんな作家も初めは素人、もしかしたら未来の巨匠の作品が読めるかも知れません」

男の声『そう都合良くいく訳なかろう。作家を目指して夢を叶えられる者など一握り、それで名をあげる大作家となれば更に僅かな数だ』

男の声『私やお前のような成功者は非常に少ない至極稀な例だ。ほとんどの作家志望者は夢敗れていく、そんな輩を私は腐るほど見てきた』

アンデルセン「確かにそうですが…読んでみなければ物語の価値なんて計れないでしょう。読みもせず作品を評価する行為は我々作家が最も嫌う行為の一つ。そうではありませんか?」

男の声『まぁいい…視界に入った文章を批判するくらいはやってやろう。時間潰しにはなる』

824: 2016/09/20(火)00:06:53 ID:OJY
アンデルセン「…時間のようだな。チャールズ、試験終了だ」スッ

チャールズ「よっし!なんとかギリ間に合いましたよ!あっ、これ完成した作品です。どーぞ確認してください!」バサッ

雪の女王「どうやら時間には間に合ったようだな。やるじゃないか、どうやらただの口リコンでは無いらしい」フフッ

チャールズ「違いますよ助手さん!『健全な』が抜けてますって!健全な口リコンでお願いします!まぁなんとか間に合いましたー!」アハハ

アンデルセン「まずは完成おめでとうと言っておこう。だが問題は内容だぞチャールズ?」バサッ

チャールズ「もちろん!内容も手を抜いてませんよ、ぶっちゃけかなり自信ありますから!」

雪の女王「すごい自信だな…アンデルセン、私にも読ませてくれるか?少し興味がある」

アンデルセン「勿論。それじゃあ読ませて貰おうか。さてと……」バサッ

チャールズ「見所は主人公の幼女です!彼女はデンマーク生まれで裕福とも貧しいとも言えない家に生まれました。ブロンドで口元のほくろがチャームポイントで好きな食べ物はブドウとパンケーキ!特技は利きジャムで好きな動物はジャッカルです!」ペラペラペラペラ

アンデルセン「チャールズ」

チャールズ「はいっ!なんですか?もしかして二人目の幼女の方が気になります?彼女は可愛いですよー!ボブカットでぱっちりしたまつげがチャームポイントで好きな食べ物は…」ペラペラペラペラ

アンデルセン「少し黙っていろ」

チャールズ「はい」

825: 2016/09/20(火)00:09:23 ID:OJY

しばらく後…

・・・

雪の女王「……本当にこれを素人の学生が書いたのか?」ヒソッ

アンデルセン「…私も君と同じ感想だ。確かに拙い部分はある、無茶な展開もだ。だがそれを差し引いてもとても素人が書いたとは思えない完成度だ」

雪の女王「あぁ、事前に暗記していたプロの作品を書き記しただけでは……と疑いたくなるほどよく出来ている」

アンデルセン「確かに。だが正真正銘この作品は彼によるものだ」

雪の女王「…そうだろうな。最初から幼女を前面に押し出しておきながらも最後まで幼女たっぷり、こんな作品を書けるのはこいつくらいのものだ」

アンデルセン「少女だらけで話の展開は異質だが…物語としての面白さは本物だ。彼はどうやら作家としての才能を持つ逸材のようだ」

雪の女王「……ただの口リコンにも見えるがな。とにかく私の評価を言うならば『凄まじい幼女推しで胸焼けしそうだが、おとぎ話としては十分楽しめる作品』だな」

アンデルセン「解った。君の意見も参考にしよう」

雪の女王「最終的な決定をするのはお前だ、だが私はこいつの実力があれば弟子にしてもいいのではないかと思うぞ。弟子にしたらしたで苦労も多そうだがな」

アンデルセン「もう少し考えてみる。すまないが君は彼に茶を出してくれるか。書きっぱなしで疲れているだろうから」

雪の女王「いいだろう。こいつは口リコンでおかしな奴だが努力は認める、労ってやるとするか」スクッ

スタスタ

アンデルセン「さて…あなたはどう思いますか、先生?」

826: 2016/09/20(火)00:12:38 ID:OJY
男の声『……この作品でまず目に付くのは幼女の多用だ』

アンデルセン「確かにそれは気になります。女王も言っていたように、あまりに幼女の出番が過剰で辟易する。なにしろ総勢8人の少女が出てきますからね」

男の声『このページ数でこの人数は明らかに過剰。作者の趣味があまりに前面に出過ぎている。しかし……』

男の声『これだけ幼女が登場していながら全ての幼女に個性があり差別化出来ている。人物の書き分けはほぼ完璧と言える』

男の声『物語の展開も申し分ない。キチンと山場があり結末もキチンと整っている。作品としての完成度の高さは認めざるをえないだろう』

アンデルセン「…そうですね。私も概ね同意見です」

男の声『奴は奇人だが作家としての才能は…凄まじいものを感じる。今はまだ未熟だが技術を身につけ経験を積めば必ず大作家になれるだろう』

男の声『いずれは私やお前、そしてシャルル・ペローやグリム兄弟といった有名作家と名を並べることも不可能ではない。いや…それすらも凌駕する才能を奴からは感じる』

アンデルセン「確かに…私が彼と同年代の頃ここまで書けた記憶ありませんから」

男の声『アンデルセン。奴を弟子に迎え入れろ、こいつにはそれだけの実力と才能がある』

アンデルセン「あなたも賛成というわけですか。フフッ、あれほど素人の作品は読みたくないと言っていたのに」クスクス

男の声『ここまでの実力があるとは思わなかっただけだ。だがこの作品を読んだ今なら解る』

男の声『こいつは本物だ。いずれ…世界の価値観を変える程の作品を生み出す。そんな気がしてならないのだ』

827: 2016/09/20(火)00:18:31 ID:OJY
チャールズ「んーっ、この紅茶冷たくて香り良いですねー。でもどうやってこんなにキンキンに冷やしてるんですか?井戸水?」ゴクゴク

雪の女王「いいや、ただ氷で冷やしているだけだ。私は温かい紅茶は少々苦手なのでな」コトッ

チャールズ「氷ってそんな時期でも無いのに?あっ!もしや話に聞く氷を作る装置を持ってるんですか!?あんな一般的じゃないモノを持ってるとか流石は先生!」

雪の女王「…まぁそういう事にしておけばいい。と言うかお前はアンデルセンに夢を見すぎだ、あいつはただの中年だぞ」

チャールズ「そーですか?でもアンデルセン先生はすごいって思いますよ、俺」

雪の女王「童話作家としての地位を確立したからか?」

チャールズ「それもですけど、それってやっぱ先生が残した作品がすごいからだと俺は思うんです!」

チャールズ「どの作品も好きですけど俺は特に【マッチ売りの少女】が好きですね、確かに可哀想ですけど不幸な幼女もいるって世間に知らしめられたと思います!良作ですよあれは!」

チャールズ「あとはあれも好きです!【雪の女王】!あれ良い話ですよ!」

雪の女王「へぇ…そうか?【雪の女王】が好きか、どうせ主人公のゲルダが好きなだけだろう?」クスクス

チャールズ「ぶっちゃけそうです!いやー、ゲルダちゃん可愛いんですよ!性格の曲がっちゃったカイにボロクソに言われるのに彼を助けるために旅に出るんですよ!健気でしょ!?いやー、ゲルダちゃんマジ可愛い、マジ天使」

雪の女王「フフッ、確かにゲルダは健気で勇敢な少女だな」

チャールズ「ですよね!それに比べてあの雪の女王!ぶっちゃけ俺あいつ嫌いですよー、あいつがカイをさらわなきゃゲルダちゃんは辛い旅をしなくても済んだ訳ですからね!」アハハ

雪の女王「……まぁ、そうだな」

チャールズ「きっと雪の女王は性格悪いせいで婚期を逃して、それを理由にショタコン趣味に走ってる変態ババァですよ!あははh」

雪の女王「……」ドスッ

チャールズ「痛いっ!えっ!?なんで叩いたんですか今!?」

828: 2016/09/20(火)00:23:46 ID:OJY

アンデルセン「楽しそうだな二人とも」フフッ

雪の女王「私は今、雪の女王を侮辱されて非常に気分が悪いがな」

チャールズ「うぅ…助手さん、女王のファンでしたか。…ていうか助手さん女性なのに結構力ありますよね…」ウゥゥ

雪の女王「それで、決まったのかアンデルセン?こいつを弟子にするか否か」

アンデルセン「あぁ、悩んだが私はチャールズを弟子として迎えることにしたよ」

チャールズ「マジですか!?本当ですか!?ガチですか!?やっぱなしとかダメですよ!助手さんが証人ですよ!?いいんですか!?」ガタッ

アンデルセン「落ち着けチャールズ。撤回したりしないさ、君はもう私の弟子だ」

チャールズ「よっしゃぁぁ!うわーっ!マジで夢みたいですよー!神様ありがとう!全世界の幼女ありがとう!」テッテレー

雪の女王「フフッ、大げさな奴だな。だが良かったじゃないか願いが叶って」

チャールズ「ですよー!じゃあ助手さんはもう先輩ですね!よろしく頼みますよ先輩!」ウキウキ

アンデルセン「そうと決まれば君に住む場所を与えなければな。二階の隅に使っていない部屋があるからそこを使いなさい。助手クン、案内してやってくれ」

雪の女王「それは構わないがあの部屋は埃っぽい。もう日も落ちたから掃除は明日にして今日はここで眠る方がいいんじゃあないか」

アンデルセン「確かにそうだな。私も今日は少々疲れた、詳しい話と弟子としての活動は明日からにして今日はもう休みなさい」

チャールズ「わかりました!じゃあ明日からよろしくお願いしますね師匠!」

アンデルセン「師匠はやめてくれ。先生の方が呼ばれ慣れていてしっくりくる。今後も先生と呼ぶようにしてくれるか?」

チャールズ「わかりました!アンデルセン先生!」ニッ

829: 2016/09/20(火)00:25:19 ID:OJY
翌日 昼頃
アンデルセンの自宅 アンデルセンの書斎

アンデルセン「さて、部屋の掃除と当面の生活用品の手配は済んだかい?」

チャールズ「はい!お借りした部屋も掃除できました、窓なんかもう幼女の瞳のように澄み切るまで磨きましたよ!」

雪の女王「私が付き添って買い出しも済ませてある。当面の生活はなんら問題ないだろう」

チャールズ「いやー、やっぱ先輩は女性なだけあって細かいところ気が付きますよね!おかげで買い忘れなくて助かりましたよー」

雪の女王「私は疲れたがな。どこかの弟子が少女を見かける度に足を止めてしまうせいで」

チャールズ「あはは、だって幼女可愛いから仕方ないですってー」ハハハ

アンデルセン「フフッ、相変わらずだな君は。だが君は今後、周囲の人間から私の弟子として見られる。目に余るような行動は控えるように」

チャールズ「あー…そうですよね。俺に対するイメージがそのまま先生への評価にもなっちゃうのか。わかりました!気をつけます!」

アンデルセン「そうして貰えると助かる。だが萎縮する必要は無いし無理に自分を作る必要もない、程度を守って普段通りにしてなさい」

チャールズ「わかりました!じゃあ幼女好きも隠さなくてオッケーですね!」

アンデルセン「…常識的な範囲内でな」

チャールズ「わかりました!まっかせてください!先生の顔に泥を塗ったりしませんよ!」

831: 2016/09/20(火)00:33:17 ID:OJY
アンデルセン「それと…君がここに滞在するのは休学期間中だけ。つまり君が復学するまでが私の弟子としての活動期間だ」

チャールズ「でもそれじゃ今からざっと半年ですよ?せっかく先生の弟子になれたのに半年間だけとか寂しいですよー!」

アンデルセン「学校は卒業しておいたほうがいい。将来的に作家にならないという選択肢を残しておくためにも」

チャールズ「…確かに、そうですよね。作家にならないって選択肢も…残しておきたいです、俺」

雪の女王(何だ?少し元気がないように見えたが…?)

アンデルセン「勿論、卒業後にやはり作家になると決意したのなら戻ってきても構わない」

アンデルセン「だが君はまだ若い、作家を目指すのは結構なことだがそれに固執しない方がいい。私の弟子としての活動期間中にも様々なことに挑戦してみることを勧める。何事も経験だ」

チャールズ「なるほど!例えばバイトしてみたりとか史跡を見て回ったりとか職人とか学者にいろんな話を聞いてみたりとかですね!」

アンデルセン「そんなところだ。どんなに優れた作家も知らない事を書き記すことは出来ない。作家になろうが別の職につこうが経験は君の力になる」

チャールズ「じゃああんまり先生の助手になった意味がないんじゃ…?ねぇ先輩?」

雪の女王「私に話を振るな。君の師がそう言うのならば君は従うべきだろう」

アンデルセン「問題無い、私に教えられることは少ないがまったく指導しないつもりはないよ。私が持つ技術と知識は出来るだけ指南する、その時間もキチンととるさ」

チャールズ「おぉ!ちゃんと指導もして貰えるんですね!よっし!」

アンデルセン「あぁ、だがそうなると何か目標が欲しい。という事で、君に一つの課題を与える」ガタッ

チャールズ「課題…ですか?えっ、何するんですか?またおとぎ話書くんですか?」

アンデルセン「あぁ、君にはもう一本おとぎ話を書いて貰う。だがその作品を評価するのは私じゃあない。この手紙の差出人だ」スッ

832: 2016/09/20(火)00:38:35 ID:OJY

アンデルセン「この手紙は今朝私のもとに届いたものだ」スッ

アンデルセン「どうやら珍しくにまとまった休みが取れたため、久しぶりに食事でもどうかという誘いだ」

チャールズ「先生のお知り合いからですよね?その人に読んで貰う童話を俺が書くんですか?」

アンデルセン「そうだな。君が昨日書いた作品は素晴らしかった、だがまだ拙い部分や未熟な部分も目立った。この客人が訪れるのは二ヶ月後だ、それまでに更に腕を磨いて…」

アンデルセン「彼等が唸るほどの素晴らしいおとぎ話を読ませてやろう。それが当面の君の目標だ」

チャールズ「なるほど!いろんな経験して、先生の教えを受けて、その結果を新作おとぎ話にぶつけてその人達に読んで貰うと!そういう事ですね!」

アンデルセン「そういう事だな。だが彼等はなかなか厳しいぞ?私や助手クンよりおとぎ話に関してはずっと厳しい」

チャールズ「大丈夫です!バッチリ修行してすんごい童話書いて見せますよ!」ハハハ

雪の女王「お前の同業というと童話作家か…まさかとは思うが、その相手は…」

アンデルセン「フフッ、ほらチャールズ。手紙の差出人の名前、確認しておくといい」ピラッ

チャールズ「ですね!えっと…この手紙の差出人は……」ピラッ


差出人 ヴィルヘルム・カール・グリム


チャールズ「えぇぇ……先生これ……マジですか?」

アンデルセン「マジだとも。君は二ヶ月後までに彼が唸るような素晴らしい童話を書き上げなければいけない」

アンデルセン「童話作家としての私の大先輩、グリム童話の作者の一人であるヴィルヘルムさんを唸らせるような童話をね」

833: 2016/09/20(火)00:40:43 ID:OJY

チャールズ「ちょ、初っぱなからハードル高くないですか!?それにもし俺がしょぼいおとぎ話なんか書いたりしたら…」

アンデルセン「大丈夫さ、ヴィルヘルムさんは温厚だから情けない童話を見せても君を怒鳴りつけたりしないさ」

アンデルセン「だが私の評価は下がるだろうな。『作者としてはそこそこだが弟子をとるような器じゃないな。正直ガッカリ』などと思われるかも知れない」

チャールズ「ちょ、それはむしろ困りますよ!俺のせいで先生の面目丸潰れとか嫌ですって!」

アンデルセン「だが弟子が育たなければそれは師匠の責任だ。あと君の先輩である助手クンも残念な目で見られるだろう」

雪の女王「それは勘弁願いたい所だ。君のせいで私まで劣ってみられるのは…なぁチャールズ?」クスクス

チャールズ「ちょ、責任重大じゃないですか…!」

アンデルセン「だからいいんじゃないか、壁が高いほど人は本気になれる。君の場合は半年しか時間がないんだから高すぎる壁に挑戦するくらいが丁度いい」

チャールズ「そりゃあ理屈は解りますけど…」

アンデルセン「フフッ、ひとまず私からの話は以上だ。今日は夕飯までは君の自由時間としよう。夕飯の後、私の書斎に来なさい。昨日の作品の反省点をあげて分析をしよう」

チャールズ「解りましたけど…えぇぇ…あのグリム童話の…えぇぇ…大丈夫かな、俺」

アンデルセン「ほらほら、二ヶ月なんてあっという間だぞ?時間は有限、ぼさっとしていてはヴィルヘルムさんに何を言われるか解らないぞ?」クスクス

チャールズ「うぉぉ…なんか俺、いきなりどえらい課題に挑戦することになっちゃってますね…いやっ!でも俺、頑張りますよ!」

チャールズ「バッチリ完成度の高いおとぎ話書いて見せますよ!先生や先輩の為にも、世界中の幼女の為にも俺、本気で修行頑張りますよ!」

851: 2016/09/27(火)00:13:55 ID:cMN
チャールズの弟子入りからしばらく後
デンマーク アンデルセンの住む街

八百屋「らっしゃい!らっしゃい!新鮮な野菜がどれもお値打ちだよー!おっと、そこのお姉さん!今日はイモが安いよ!激安だよ!」ラッシャイ

雪の女王(お買い物スタイル)「どれどれ、これは確かに安い。しかし芋は火を通さなければいけないからな…。店主、生で食べられる野菜はないのか?」

八百屋「サラダ用ですかい?だったらこの辺のレタスやらがオススメ!新鮮だから塩で食うと特にうまいよ!」

雪の女王「確かに瑞々しくて美味しそうだ。それを2つ貰おう」チャリーン

八百屋「へい!じゃあこれ品物ね、毎度どうもー!」

雪の女王「さて、食料品の買い出しはこんな所だな。他の用事は済ませているし、あとはパンを買って帰るだけか」

雪の女王「しかしこう店が多いとどの店で買ったものか…迷ってしまうな」キョロキョロ

出版業者「…あれっ?助手さん?助手さんですよね?」

雪の女王「ん…?あぁ誰かと思えば君か。外で会うとは珍しいな」フフッ

出版業者「こんな所で奇遇ですねー。助手さんは先生のお買い物ですか?」

雪の女王「あぁ、食料品の買い出しに。君もかい?」

出版業者「いやー、私は遅めの昼飯ですよ。打ち合わせが長引いてしまって昼飯食べる時間も取れなくてですねー、参りましたよ」ハハハ

雪の女王「フフッ、それは災難だったな。お疲れ様」

出版業者「まったくですよ…あっ、それよりどうですか?先生の弟子についたっていう青年、確かチャールズ君だったかな?彼、まだ続いてます?」

雪の女王「あぁ、彼が弟子入りしてからもう二週間が経つが弱音一つ吐かず、毎日頑張っているよ」

852: 2016/09/27(火)00:17:33 ID:cMN
出版業者「そうですか!それはなによりです、なにしろ先生今まで弟子なんかとったこと無いでしょう?それに手加減とかしなそうですし…」

出版業者「作家に憧れる若者は多いですけど、実は結構ハードですからね。他の作家さんのところで弟子入りしたはいいけどすぐ挫折しちゃったって子も何人か見てるんで気になってたんです」

雪の女王「うちの場合は心配無さそうだ、アンデルセン…先生とも私ともうまくやってる。毎日が楽しそうで羨ましいくらいだよ」

出版業者「楽しんでやるっていうのは一番大切ですからね、その分なら安心ですかね。良かった良かった」ハハハ

雪の女王「先生だけでなく弟子のチャールズにまで気を回さなければいけないとは、君の仕事もなかなか大変だな」

出版業者「いやいや、半分趣味ですい。私は先生の担当でありファンですからね、巨匠アンデルセンが育てた弟子の作品!興味あるに決まってますよ!」

雪の女王「ファン心理としてはそうなるか…だがそれは当分先だな」

出版業者「そうですかー…なかなか見込みがあるって先生は言ってましたけど、まだ世間に出すほどのレベルじゃないって事ですかねー」

雪の女王「そうだな。昨日も新作を見せに来たが驚愕の14口リだったからな…あれじゃあ万人受けは無理だな」

出版業者「えっ?口リって…何がです?」

雪の女王「…いや、何でもない。忘れてくれ」

出版業者「はぁ…まぁいいですけど」

853: 2016/09/27(火)00:20:16 ID:cMN

出版業者「あっ、先生はどうです?急に弟子をとって生活にも変化があったでしょうけど…お変わりないですか?」

雪の女王「変わりないよ。師として教えられることは少ない…なんて言っていたが、毎日チャールズの作品を共に考察したり細かい表現の指導なんかをしている。実に教育熱心だよ」

雪の女王「元々忙しい人だがなんとか時間をやりくりして弟子との時間を作っているようだ。だが疲れている様子はない、むしろ楽しんですらいる…作家というのはやはり変わり者が多いよ」

出版業者「ハハッ、先生は逆境慣れしてますから。多少忙しいくらいはむしろ楽しんじゃうタイプですよ。担当としては先生にあまり負担がかかってないようで良かったです」

雪の女王「その辺りはチャールズの飲み込みが早いというのも一因だろう。それに日に日に力を付けていくチャールズを見ているのは楽しく師として嬉しいそうだ、そう言っていたよ」

出版業者「そうですか。師としてもうまくやってるって感じですね、流石は先生!ですが私としては…」

雪の女王「心配しなくても次回作の執筆も進んでいるよ。君の心配はむしろそこだろう?」クスクス

出版業者「はは、ばれちゃいましたね。なんだかんだいっても私が一番楽しみにしてるのは先生の次回作ですからね、業者としてもファンとしても!」

雪の女王「フフッ、わかった。先生に伝えておくよ」

出版業者「お願いします。でもしかし、なんというか…とても意外ですね」

雪の女王「先生が弟子をとった事がか?まぁ確かにそうだが」

出版業者「ハハッ、違いますよ。私が意外と言っているのは助手さん、あなたの事です」

854: 2016/09/27(火)00:22:39 ID:cMN

雪の女王「私の事…?どういうことだ?私は意外な事など何一つしていないが」

出版業者「うーん、なんといいますか…今だから言いますけど、初めてあなたと出会った時、私は『恐ろしい女性が先生の助手をしている』と思ったものです」ハハハ

雪の女王「また随分な印象だな…まぁ否定はしないが」

出版業者「初対面のあなたは先生の助手でありながら、先生に不信感を持っているようで…それは憎しみのようにも見えました」

出版業者「深くは追求しませんでしたけど私は思いましたよ、この女性はきっと何か事情があって嫌々ながら先生に付き従っているのかもしれないと」

雪の女王「なかなか鋭いな君は。確かにあの時は…そうだったよ。あの日、先生に付き従ったのは望んでの事じゃなかった」

出版業者「でしょう?だからおそらく長くは続かない、そう思っていましたが…あなたはこうして今日まで助手としての活動を続けている」

出版業者「それだけじゃなく、今のあなたからは先生への憎しみは感じられません。むしろ、望んでいなかったはずの今の状況を楽しんでいるのではないですか?」

雪の女王「…まぁ、そうかもしれないな」

出版業者「そうですよ。先生が師として弟子の成長を喜んでいる、チャールズ君が楽しそうに修行している、あなたはそう話していましたが…」

出版業者「私には、二人のことを話すあなたが一番楽しそうに見えまましたよ?実に嬉しそうに二人のことを話していましたからね」フフッ

雪の女王「そんな風に面と向かっていわれると…気恥ずかしいものがあるよ。だが……」


雪の女王「確かに今の生活は…私にとって心地良いものかもしれないな」

855: 2016/09/27(火)00:25:27 ID:cMN

出版業者「まぁ助手さんは随分丸くなりましたよね、でもムスッとしていたあの頃より今の助手さんの方が素敵ですよ。それに今ではあなたと先生の間には固い絆さえ感じていますよ、私は」

雪の女王「あぁもう解った解った、勘弁してくれ…もうこの話はヤメだ」フイッ

出版業者「ハハッ、そんなに照れなくたって良いじゃないですか」アハハ

雪の女王「まったく君は…。まぁいい、そんなことよりこの辺りで良いパン屋を知らないか?」

出版業者「パン屋ですか?でも先生、いつも近所のパン屋を利用しているって言っていましたよ?」

雪の女王「それが臨時休業でな、私は他のパン屋を知らないから困っていたところだ」

出版業者「そういうことならそこの角を曲がったところに評判のパン屋がありますよ。うちの若い子にも人気で、最近流行ってるみたいですよ」

雪の女王「なるほどな、なら試してみるとするか。ありがとう、助かったよ」

出版業者「いえいえ、じゃあ私はそろそろ会社に戻ります。じゃあ先生とチャールズ君によろしくお願いします」

雪の女王「あぁ、伝えておくよ」

出版業者「では、また何かありましたら一報ください。それでは」スタスタ

雪の女王「まったく、予想外な人物にからかわれてしまったな」フゥ

雪の女王(だが彼の言うとおりだ。アンデルセンを頃すためにこの世界に来たと言うのに…今では彼等との生活を楽しんでいる私がいる)

雪の女王「まったく、情けないことだな。私はいつから容易く懐柔されるような安い女になったんだか……だが、まぁ」

雪の女王「それはそれで、悪くはない…か」フフッ

856: 2016/09/27(火)00:28:42 ID:cMN
街で噂のパン屋

雪の女王「ここが彼の言っていたパン屋か。なるほど、なかなか感じのいい店構えだな」

カランカラーン

女子1「限定のパン、ギリギリ間に合って良かったねー」ホクホク
女子2「いつ来ても売り切れてるから今日は運が良かったよ!でも毎日パンばっかり食べてて太っちゃうかも」
女子3「大丈夫、パンって元は小麦でしょ?つまり野菜なの、むしろヘルシーなのよ!」
女子1、2「ホントだ…!ダイエットに最適じゃん!」キャッキャ


雪の女王「ふぅん…どうやら、なかなか盛況のようだな。よし、今日はここでパンを買って帰るとしよう」ガチャッ

カランカラーン

チャールズ「ヘイ!ラッシャイ!安いよ安いよ!焼きたてだよ!」ラッシャイ

雪の女王「……」

チャールズ「あれっ?先輩!?どーしてこんな所に?パンはいつもの店で買うはずでしょ?」

雪の女王「休みだったんだ、いつもの店が。それより…君は何をしているんだ?」

チャールズ「ハハッ、魚でも売ってるように見えます?」アハハ

雪の女王「かけ声はまさに魚屋のそれだったがな。パン屋でそのかけ声はないだろう」

チャールズ「でも意外すぎて印象には残るでしょ?それが狙いなんですよ、うまくすれば名物バイト店員として話題になってお客も増えますよ!」アハハ

雪の女王「確かにアンデルセンは君にいろいろやってみろとは言っていたが…名物店員を目指せとまでは言っていなかったんじゃないか?」クスクス

チャールズ「でもせっかくバイトしてんですから、楽しくやらなきゃ損ですって!俺が話題になれば店も賑わうし良いことだらけですよ」アハハ

857: 2016/09/27(火)00:30:49 ID:cMN

婆さん「チャールズちゃん、今日はもうデニッシュ売り切れかい?」

チャールズ「あぁっと、もうじき焼きあがると思うんで店長に聞いてきますわー!…すんません先輩!ちょっと今、バタバタしてるんでまた後で!」

雪の女王「あぁ、仕事中に悪かった。買い物しながら君の仕事ぶりを観察しておこう、アンデルセンに伝えなければならないしな」フフッ

チャールズ「ちょっ!お手柔らかに頼みますよー!じゃあ先輩、ごゆっくり!」スタスタ

雪の女王「ふふっ、社会勉強の一環に始めたアルバイト…といった所か。物怖じせず何でも手を出してみる奴だな、チャールズは」フフッ

チャールズ「婆ちゃん、デニッシュあとちょっとかかるみたいだけど時間大丈夫?なんなら俺が後で家まで届けようか?」

婆さん「あら、ありがとねぇ。でも大丈夫よぉ、どうせ暇だし焼きあがるまで待ってるから」ホッホッホ

チャールズ「そっか、それじゃあ椅子持ってくるわ!ちょい待ってて!」ダッシュ

婆さん「おやおや、悪いねぇ…」

雪の女王「……ほぉ」

雪の女王(チャールズと共に生活することになって気が付いたことがある)

雪の女王(その過剰なまでの幼女好きの陰に隠れて目立たないが、チャールズは人付き合いがとてもうまい)

雪の女王(自らを口リコン…健全な口リコンと呼ぶ程の裏表のない性格。よく気が付き実行に移せる行動力…この街に来て僅かな間に多くの友人が出来たようだ)

雪の女王「まったく…行き過ぎた幼女愛がなければ良くできた青年なんだがな」フフッ

858: 2016/09/27(火)00:33:26 ID:cMN

雪の女王(初めはどうしようもない口リコンだと思っていたが…つき合ってみればなかなかの好青年だ)

お姉さん「うーん、種類が多くて悩むわねぇ…チャールズちゃん、今日のオススメはなにかしら?」

チャールズ「そうですねー…一応、店長は豆のパンがオススメって言ってたけど俺は断然クルミパンがオススメ!実は店長が手を滑らせちゃって、いつもより多めにクルミ入ってます」ヒソヒソ

お姉さん「あはは、それじゃあクルミパンにしようかしら」

チャールズ「ヘイ!毎度!」

怖い兄ちゃん「おう、チャールズ…例のブツは用意出来てんのか…?おぉん?」

チャールズ「出来てますよー!特注のチョコたっぷりパンですよね!」

怖い兄ちゃん「バッカお前声がデケェよ…!イメージ崩れるだろ…!」ヒソヒソ

チャールズ「気にしすぎですってー。あっ、新作のすんごい甘いジャムも入れといたんで味みといてください!」

怖い兄ちゃん「おいおい、気が利くじゃねぇか…」ホクホク

おばさん「チャールズちゃーん、今日もたくさん買うからおまけしとくれ!」

チャールズ「うーん、あんまりおまけすると店長がうっさいからなぁ…でも毎日来てくれてるし今日は特別ですよ!もちろん店長には内緒って事で!」

おばさん「言って見るもんだねぇ。よっ!チャールズちゃん男前!」

チャールズ「ハハッ、それ知ってますよー」アハハ



雪の女王「あいつ、作家より接客の方が向いてるんじゃないか…?」

859: 2016/09/27(火)00:37:14 ID:cMN
ショタ「おい、チャールズ!今日も来てやったぞ!」ヘヘヘ

チャールズ「おっ、今日もおつかいか。ちゃんと母さんの手伝いして偉いじゃーん!立派だぞー!」

ショタ「ヘヘッ、こんなおつかい俺にとっちゃ簡単すぎてあくび出ちゃうぜ!」

チャールズ「そっかそっか、余裕か!でも気を付けて帰るんだぞ?寄り道とかしないようにな!」

雪の女王(実のところチャールズは幼女にだけ優しい訳じゃない、少年相手でも優しく接している。こう見ていると分にはただの子供好きだが…)

店長「お客さん…チャールズ君の下宿先の方ですかね?さっき話しているのを見かけたので。あっ、私店長やってますどうぞよろしく」ペコリ

雪の女王「まぁそんな所だ。チャールズは少し変わった奴だが…真面目に働いているだろうか?」

店長「えぇ、変わった子ではありますがよく気が付くし助かってますよ。私はパンは焼けても接客は苦手でして、バイトと言わずずっといてほしいくらいで」アハハ

雪の女王「そうか、役に立っているならなによりだ」

店長「明るくて物怖じしませんからお客さんからも人気がある自慢の店員ですよ。まぁ……あの悪癖さえなければ、ですけどね……」

雪の女王「……まぁ、何かは大体察しが付く」

ドタドタドタ

チャールズ「店長聞いてください!あの幼女ひとりでおつかいに来たんですって!偉いでしょ!?偉くないですか!?偉いんですよ!あとポニーテールがクッソ可愛くないですか!?」

店長「なぁ、チャールズ…」

チャールズ「と言うわけで、俺はあの子からお代を貰うこと出来ないんで!むしろおつかいする幼女が見れたことにお金払いたいくらいですよ!だからパンはタダであげて良いですよね?」

店長「……チャールズ、ちょっと厨房に来なさい」

チャールズ「えっ!?なんでですか!?」キョトン



雪の女王「……やっぱりこいつはどうしようもない口リコンだな」

860: 2016/09/27(火)00:39:51 ID:cMN
アンデルセンの自宅への帰り道

チャールズ「店長にめっちゃ叱られてしまった。何故だ…」

雪の女王「何故も何もないだろう…まさか幼女がくる度にパンをタダで渡そうとしているのか?」

チャールズ「そうですけど?」

雪の女王「何を当然みたいに言っているんだ」

チャールズ「実はですね…最近気が付いたんですけどパン屋の店員としてなら合法的に幼女とお話できるんですよ!その対価だと思えば安すぎます!」

雪の女王「もういい…その件は店長とよく話せ。それより良かったのか?荷物を持ってくれるのは嬉しいがまだ仕事中じゃなかったのか?」

チャールズ「大丈夫ですよ、午後の一番忙しい時間は超えましたし交代で店長の奥さんが売り場に入ってくれるんで!」

雪の女王「そうか。それなら良いんだが」

チャールズ「先輩にはお世話になりっぱなしですからね、荷物くらい持たせてくださいよー」アハハ

雪の女王「ふふっ、調子の良い奴め。だが変わり者のお前もああやって働いている姿を見ると普通の若者という感じだな、なかなか格好良かったぞ」

チャールズ「いやー、そんな風に言われると照れt…あっ!先輩!あの幼女お母さんとペアルックですよ!めっちゃ可愛くないですか!?クッ…今日はスケッチブック持ってきてない!」

雪の女王「……言った側からお前は」ハァ

861: 2016/09/27(火)00:41:46 ID:cMN

チャールズ「いやー、仕方ないですって。猫好きの人だって路地に猫が居たら目で追っちゃうでしょ?」

雪の女王「猫好きと君の幼女好きを一緒にするんじゃない、似て非なるものだろうそれは」

チャールズ「そうですかー?同じだと思うけどなぁ…」

雪の女王「まったく…あぁ、そういえば店長、お前の癖にはあきれていたがバイトではなく本格的に働いて欲しいと言っていたぞ?チャールズ、期待されてるじゃないか」クスクス

チャールズ「あぁ…そうなんですよ。それは嬉しいんですけどね、俺パン屋にななるつもり無いんですよね…」

雪の女王「まぁそうだろうな。お前の夢は作家だものな」

チャールズ「……まぁ、うん、そうですね。作家、なりたいですよー」アハハ…

雪の女王「なんだか歯切れが悪いな。そういえば以前も進路について話しているときどこか影があるように見えたが」

チャールズ「やだなー!俺みたいな明るく元気なパッションボーイが影なんか背負うわけ無いですって」アハハ

雪の女王「そうか?私の予想だが…君は将来進むべき道について何か悩んでいるんじゃあないのか?」

チャールズ「…あはは、先輩には隠し事出来ないですねー。参ったな、もぅ」ハハハ

チャールズ「まぁ、ぶっちゃけ悩んでます。俺は将来、何の職に付くべきなのか…」

862: 2016/09/27(火)00:44:27 ID:cMN
雪の女王「私でよければ話を聞こうか?」

チャールズ「…そもそも俺、作家になりたくて先生に弟子入りしてますよね?」

雪の女王「あぁ、そうだな」

チャールズ「作家になるのは俺の夢です。いつか先生みたいな大作家になってベストセラー叩き出して幼女のかわいさを世界に知らしめたいって野望もあります!幼女話作家ですよ!」

雪の女王「追求したい単語が出てきたが…まぁ、今は聞き流そう」

チャールズ「でも…実はある大学の教授から将来的に学者になることを視野に入れてうちで学ばないかって言われてまして」

雪の女王「ほぅ、すごいじゃないか。大学教授から直々に声がかかるなんて」

チャールズ「俺、こう見えて成績めっちゃ良いですからね!コネもありますし」ドヤァ

チャールズ「その事を両親に話したらすごく喜んでくれましたよ。ぶっちゃけその教授についていけば学者としての成功はほぼ約束されたようなもんですからね」

雪の女王「だがお前の夢は作家だろう?好条件だからと好きでもない道へ進んでも後悔が残るだけだと私は思うが」

チャールズ「そこが悩み所なんですよ…学者に全然興味なかったら悩んだりしませんって」

雪の女王「つまり、作家が夢ではあるが学者の道にも興味があり…どちらの道に進むか悩んでいる。という事か」

チャールズ「そうなんですよ…スパッと決めればいいんでしょうけど。そうもいかなくて」

863: 2016/09/27(火)00:47:12 ID:cMN
チャールズ「もちろん一番は作家です!先生の作品読んですごく感動しましたしね。その気持ちに嘘はないです」

チャールズ「でも学者というのも立派な仕事だと思うんですよ。やりがいありそうだし、元々勉強は好きなんで興味はすごくあります」

雪の女王「もしかして休学してこのデンマークに来たのも…その事に答えを出すためか?」

チャールズ「そうです。作家になるか学者になるか…アンデルセン先生のとこに突撃して自分の力を試したいって気持ちもありましたね」

チャールズ「才能無いって一蹴されたら諦めも付いたんですけどねー。でもどうやら俺、才能あるみたいでー、参りましたよー」ニヤニヤ

チャールズ「いや、ホントで参りましたよ…もうそろそろどちらか決めないと行けないのに一向に答えが出なくて…」

雪の女王「まぁ、難しいところだな…私も安易にアドバイスが出来ない。一生ものの問題だからな」

チャールズ「実はうちの父さん学者を目指してたんですけど色々あって結局なれなくて…だから俺が学者になったら嬉しいと思うんですよ。親孝行にもなるかなって、そういう気持ちもあるんですよ」

雪の女王「君の将来はご両親のものじゃない、そんな事を気にする必要はないんじゃあないか?」

チャールズ「それ、父さんにこの事話した時に同じ事言われましたよ。気にせずやりたいことやれって言われました」ハハハ

チャールズ「でもなぁ…父さんには散々苦労かけてきたし…。こう、目に見える親孝行、したいんですよねぇ……あー、悩みますよー」

雪の女王「難しい問題だが…休学が開けるまで時間の猶予はあるんだろう?」

チャールズ「まぁ…そうなんですけど」

雪の女王「それならまだ今は悩めばいい。グリムに読んで貰う童話も完成していないんだろう?今は目の前の事を一つ一つ挑戦していくことだ」

雪の女王「そうすればいずれ答えはでるさ。例え学者になったとしてもこの修行の日々が無駄になると言うことも無いのだし」

チャールズ「まぁ…そうですね!今はグリム先生に見せる幼女童話ですよね!進路のことは俺、ギリギリまで悩んでみます!」

雪の女王「あぁ、それがいい。話くらいならいくらでも聞くから、いつでも相談してくるといい」



雪の女王(作家の才能にあふれていようが、普通じゃないくらい口リコンだろうが…彼もまた進路に悩む年頃の青年に違いないという事か…)

884: 2016/10/03(月)00:24:54 ID:sRm
時は流れ、グリム兄弟が訪れる日の前夜
デンマーク アンデルセンの自宅 書斎

ドタバタドタバタ ガチャッ

チャールズ「先生ー!自信作が出来上がったので持ってきましたー!是非とも先生の評価が欲しいんですけど、今いいですか?」

アンデルセン「あぁ、構わないよ。あのグリム兄弟に君が執筆したおとぎ話を読んで貰うというこの試み…明日は遂に本番だ」

アンデルセン「厳しい彼等を唸らせるには相当の完成度が求められる…私も師として出来る限りの助言はしよう。さぁ、作品をこちらに」

チャールズ「はいっ!遂に完成したこのチャールズ渾身の自信作…!」バッ

コトッ

チャールズ「レーズンとくるみのパンです!焼きたてのうちにご賞味ください!」ホッカホカ

アンデルセン「……君は何のためにここにいる?パン職人修行のためか?」

チャールズ「あははっ!やだなー、ジョークですって!原稿と見せかけてパンを出すっていうハイレベルなジョークですよー!驚きました?」ドヤァ

アンデルセン「…チャールズ。この手の込んだジョークをするためにわざわざパンを焼いたのか?」

チャールズ「はいっ!あっ、でもジョークといえどパンの味には自信ありますよ!」

アンデルセン「…そんな事より原稿を渡しなさい」

チャールズ「もー、先生はジョークが通じないんですからー!折角ですから一口食べてみてくださいよー、これはこれで自身があるんd」

アンデルセン「原稿を渡しなさい」

チャールズ「はい、これです」スッ

アンデルセン「まったく君は…何故普通に渡せないんだ?緊張しろとまでは言わないが少しは緊張感を持つべきだろう」

チャールズ「いやー、実はこう見えてかなりビビってるんですよー?だからジョークで場を和ませようと思ったんですよ」アハハ

チャールズ「だってですよ!?何しろ素人の俺が書いた作品をあの有名なグリム先生方に読んで貰えるんですよ!?そりゃあ緊張しますって!」

アンデルセン「とても緊張しているという風には見えなかったが…。まぁいい、問題の作品を読ませて貰おうか」バサッ

885: 2016/10/03(月)00:27:10 ID:sRm

アンデルセン「…ふん、ふん。結局、主人公は幼い少女にしたんだな」ペラペラッ

チャールズ「はい!俺のアイデンティティってそれですから!幼女LOVEってのは外せません!」

アンデルセン「……ふむ、そうか」ペラペラ

チャールズ「……」ソワソワ

アンデルセン「……」ペラペラッ

チャールズ「あの…俺、気が付いたんですよ先生」

アンデルセン「……ほう、何に?」ペラペラ

チャールズ「先生にはこの二ヶ月でたくさんの試作を読んで貰いましたけど…。俺、幼女の可愛さを最大限に引き出すために今までの試作では大勢の幼女を登場させてきました」

チャールズ「この世界に誰一人同じ幼女など存在しません。十人十色ならぬ十口リ十色…個性の違う幼女がキャッキャする童話。それこそが唯一の正しい答えだと思っていたんです」

アンデルセン「……」ペラペラ

チャールズ「でも俺は気付いたんです、幼女の可愛さを伝えるために大勢の幼女を登場させるのはむしろ愚策!一つ前の試作のように37口リも出す必要は無かったんです!」ガタッ

チャールズ「夜空に輝瞬く無数の星々より、晴天に輝くただ一つの太陽が眩しいように…!一人の幼女の可愛さのみを丁寧に書き記していく!それこそが正しい幼女おとぎ話の在り方だと俺h」

アンデルセン「手持ち無沙汰なのは解るが少し黙っていなさい。集中できない」

チャールズ「わかりました…。うー、でもこの待ってる間の空気苦手なんですよー…」ワチャワチャ

886: 2016/10/03(月)00:29:45 ID:sRm
・・・

アンデルセン「…チャールズ。読み終えたよ」バサッ

チャールズ「そうですか!それで…俺が書いた作品、どうです?グリム先生方に出しても大丈夫ですかね?」

アンデルセン「あぁ、この完成度ならば手酷く扱われる事は無いだろう」

アンデルセン「私が教えた事をきちんと生かし、自分の技術として身に付けている。君のこだわりである少女の可愛らしさも充分に表せている、良作だ」

チャールズ「いやー…面と向かって誉められちゃうと照れますよー。でも、それだけ誉めてくださるって言うことは……」

アンデルセン「あぁ。明日、ヴィルヘルムさん達に読んで貰う作品はこれにしよう。到着までに清書を済ませておきなさい」

チャールズ「おぉ…!ありがとうございます!屈折二ヶ月!没や直しになった原稿は数知れず…!遂に先生に認めて貰える作品が書けました!」

アンデルセン「なに、君の努力が実を結んだのさ。もっとも、幼い少女に固執しなければもっと早く合格が出せていたような気もするがな」クスクス

チャールズ「えーっ?そんなことしちゃったら俺の作品じゃなくなっちゃいますよー!」

アンデルセン「フフッ、それは確かにそうだ。それに…幼い少女の描写に限れば私よりも君の方が優れている。そんな素晴らしい武器を使わない手はないしな」フフッ

チャールズ「えぇっ!?いやいや!先生より俺のが優れてるとか無いですって!世界で一番の童話作家は先生だって、俺思ってるんですから!」

アンデルセン「そうかい?それならば素直に喜んでおこうか。さぁ、あまり時間はないんだ、今日は自室に戻って作業をしなさい。ここだとつい私と話し込んでしまうだろうからね」

チャールズ「あーっ、それもそうですね…わかりました!じゃあ今日は自室で作業します!では先生、おやすみなさい!」シュタッ

アンデルセン「あぁ、おやすみ。チャールズ」

887: 2016/10/03(月)00:32:10 ID:sRm
しばらく後
アンデルセンの書斎

雪の女王「光が漏れていたから灯りの消し忘れかと思えば…まだ起きていたのか。もう随分と遅いぞ」ガチャッ

アンデルセン「あぁ…もうこんな時間か。書きかけの童話を仕上げたくてね、時間を忘れていたよ」フフッ

雪の女王「明日はグリム兄弟を迎えなければいけないんだ、今日はもう身体を休めたらどうだ?」

アンデルセン「そうだな。クマを作って二人に会えば余計な心配をかけてしまう。そこそこで切り上げて休むよ」

雪の女王「それがいい。君はチャールズの作品ばかり気にかけているが本来二人は君に会うためにデンマークまで来るんだ」

雪の女王「君が疲れた顔をしていては二人も素直に再会を喜べない。君が元気な姿を見せてやることが彼らに対する最大の歓迎だ。香りの良い紅茶でもいれよう、それを飲んでもう眠るといい」

アンデルセン「……」

雪の女王「どうした?私の顔に何か付いているか?」

アンデルセン「いいや。ただ、君も私と出会った頃に比べると随分と柔らかい性格になったものだと感じてね」

雪の女王「それを言われたのは君で二人目だ…。悪いがその話はやめてくれ、それを言われるのはきまりが悪い」

アンデルセン「フフッ、そうかい?だが私は元々君という人物を冷酷な女王として描写した訳じゃないんだ。今の君の姿の方がイメージに近いし私はそのほうが好きだな」フフッ

雪の女王「…私は先に休ませて貰うからな。お前も馬鹿なことを言っていないで早く休むべきだ。まったく…」スタスタ

888: 2016/10/03(月)00:35:55 ID:sRm
アンデルセン「待ってくれ。眠る前に少し時間をくれないか女王」スッ

雪の女王「何だ?バカバカしいからかいに付き合う気はないぞ?」

アンデルセン「違うさ。明日、彼等に読んで貰う童話が完成したようでね。チャールズがさっき置いていった下書きがあるんだが…興味あるだろう?」

雪の女王「それは当然あるが、読んでも構わないのか?」スッ

アンデルセン「勿論。むしろおとぎ話の世界に住む君にもこれを読んで欲しい」バサッ

雪の女王「どういう事だ…?まぁ、読ませて貰うが…」ペラペラ

雪の女王「……」ペラペラ

雪の女王「……これは凄いな」

アンデルセン「二ヶ月前、初めて彼が書いた作品を目にした時、その実力に驚いたものだ。だがこれはそれを遙かに凌ぐ」

雪の女王「若さ故の成長性と吸収力、といったところか。僅か二ヶ月で…これほどの作品を仕上げるとはな」

アンデルセン「あぁ、本人には言わないで欲しいのだが…この物語はプロ作家の作品と遜色ない。だが私は彼の書く童話で注目すべき点は別の部分にあると考える」スッ

雪の女王「別の部分…?」

アンデルセン「あぁ、彼が書く童話には…私の作品を含む、世に知られている童話とは違う部分がある。そしてそれは彼のおとぎ話で唯一の弱点とも言える」

889: 2016/10/03(月)00:38:09 ID:sRm
雪の女王「チャールズが書く童話と広く読まれている有名な作品、明らかに違う、そして弱点となっている点…か」

アンデルセン「あぁ、技量の違いなんかじゃない。彼が今までに書いた試作にも共通する事だ」

雪の女王「……教訓。教訓の有無だな?」

アンデルセン「流石は女王、その通りだ。彼の作品で最も目を付けるべき所は、彼が書く全ての作品に教訓が存在しないことだ」

アンデルセン「これは些細なことに見えるが、実はとても大きな事だ」

雪の女王「確かに…童話、おとぎ話というのは基本的に子供に聞かせるもの。故に大抵の童話には教訓が存在する」

雪の女王「【シンデレラ】が『逆境でも清く生きれば救いがある』と伝えているように【赤ずきん】が『約束を守らなければ酷い目に合う』と語っているように【裸の王様】が『見栄を張ることの愚かさ』を述べているように」

雪の女王「【マッチ売りの少女】が『優しい心を持つ為に不遇な者の存在を伝える』意味があるように…聞き手である子供達の教育に繋がる教訓がほぼ全てのおとぎ話に存在する」

アンデルセン「だが…彼の童話は違う。完全な娯楽だ。終始、可愛らしい幼女が愉快で楽しい経験をする物語だ」

アンデルセン「この物語はとても素晴らしい、彼のような趣味のない私でも主人公の少女を可愛いと感じる。なにより読んでいて楽しい気分になれるし子供達はこれを読んで笑顔になれるだろう」

雪の女王「アンデルセン、私には何が弱点なのか解らない。例え教訓がなくても彼の作品は素晴らしい、それでは駄目なのか?」

アンデルセン「私は君と同じ考えだ。チャールズの童話のように楽しいだけ愉快なだけなおとぎ話、それに何の問題もないと考える。だが…」



アンデルセン「…世間はそうは思ってくれない。悲しいことにな」

・・・

890: 2016/10/03(月)00:41:08 ID:sRm
翌日
アンデルセンの自宅 リビング

チャールズ「うーん…うーん…。あー、手持ち無沙汰だなー…」ウロウロ

チャールズ「ねぇ先輩。アナスン先生遅くないですかー?グリム先生方のお迎えに出てから結構時間経ってますよ」

雪の女王「あぁ…そうだな」ウトウト

チャールズ「俺、作品読んで貰うこと考えたらもう気が気じゃなくって!そりゃあアナスン先生が認めてくれたんで自信はありますけど、…あー、ドキドキする」

チャールズ「そうだ!俺ちょっと街に出て幼女の数数えてきます!そしたら気持ちも落ち着くと思うんで!」

雪の女王「あぁ…わかった…」ウツラウツラ

チャールズ「先輩!ちゃんと止めてくれないと俺マジで幼女数えに行きますよ!?そしたら警察まで迎えにこなきゃいけないかも知れないんですよ!?いいんですか!?」

雪の女王「自覚があるならやめればいいだろう…。悪いが寝不足なんだ、彼らが帰ってくるまで仮眠させてくれ」

チャールズ「もーっ、でも先輩が寝不足とか珍しいですよね」

雪の女王「少し気になることがあってな…一晩中その事が頭に残って眠れなかった」

雪の女王(アンデルセンが言う、チャールズの童話の弱点…結局なんなのか解らなかった。しかもそれが気になって寝付けずにいる始末)

雪の女王(彼が将来をどうするかはおいておいて…童話作家になると決めたとき、その弱点とやらが彼の障害になるとすれば私はそれを取り除きたい)

雪の女王(なんだかんだで彼の努力はよく知っているからな。だが弱点がなんなのか解らないことにはどうしようもない)

チャールズ「そういえば昨日、先生も遅くまで起きていたみたいでし…ははぁん、わかりましたよぉ~。二人して夜遅くまであれでしょ?愛を語りあっていt」

ドスッ

チャールズ「痛いっ!単なるジョークですから!手加減してくださいって!」

891: 2016/10/03(月)00:45:08 ID:sRm

雪の女王「次、その手のジョークを口にしたら全身の血液を凍らせる。心臓から遠い場所からじわじわと凍らせる」

チャールズ「怖っ!何なんですかその発想!」

雪の女王「…冗談さ。アンデルセンの童話【雪の女王】の魔女でもなければどんな芸当出来ないだろう?」

チャールズ「まぁそうですよね!普通の人間である先輩に魔法なんか使えない…って言うか現実に魔法なんか無いですからね!俺が凍ることは無いって事です」ハハハ

雪の女王「やれやれ…だが君を一発叩いたら少し眠気が覚めたよ」フフッ

チャールズ「どういう理屈なんですかそれー!しっかし、遅いですねー…トラブルとか無ければいいけど、っていうか有名人だからファンに囲まれてるとか!?」

雪の女王「君は本当に落ち着きがないというか…賑やかな奴だな」クスクス

チャールズ「そりゃあ苦しいことや辛いことより楽しいことの方がいいですからね!それにはまず明るい空気ですよ!」

雪の女王「君の童話が明るく愉快なものばかりなのも、その信条に則ってか?」

チャールズ「あれっ?先輩、俺の作品読んでくれたんですか?どうでした?楽しかったです?」ワクワク

雪の女王「あぁ、愉快な物語だったよ。楽しい童話だった」

チャールズ「それはよかったです!幼女の可愛さも知って欲しいですけど、読んでくれた人を楽しませたいって気持ちはやっぱありますからね~」

892: 2016/10/03(月)00:46:35 ID:sRm

チャールズ「先生が書くおとぎ話ってちょっと暗い物語多いじゃないですか。【人魚姫】とか【マッチ売りの少女】とか…あと【ヒナギク】とかヤバいですよね」

雪の女王「確かにそうだな、だが彼の童話は意味もなく暗いわけじゃあ…」

チャールズ「いやいや!わかってますよ?暗い話なのには理由があるって事は。それも物語の形の一つだと思うしその事にまぁ文句とかはないんですけど」

チャールズ「でも俺ってやっぱまだ子供なんですかねー?意味や理由があってもやっぱり童話はハッピーエンドが一番だと思うんですよー。少なくとも俺が書く童話はそうありたいなって」アハハ

雪の女王「まぁ…それに越したことはないが」

チャールズ「でしょっ?その方が幼女も喜んで読んでくれますよ!俺の持論なんですけど幼女が一番輝くときは笑顔の時なんですよ!もちろん喜怒哀楽どんな表情でも幼女は天使なわけですけどねっ!」

雪の女王「フフッ、そうか。まぁどんな弱点があろうと君なら乗り越えられそうだな、なんとなくだがそう思うよ」

チャールズ「えーっ?弱点ってなんの話です?」

雪の女王「何でもないさ、気にせず君は好きなように童話を書けばいいしなりたいものなればいい」

チャールズ「ちょい気になりますけど、了解です。…んっ?」

ゴンゴンッ

雪の女王「どうやら来客だな…ようやくアンデルセン達が帰ってきたのかも知れない」

チャールズ「そんじゃ俺出迎え行ってきますよ!先輩はお茶の準備とかして貰ってて良いですよ!」スタスタスタ

893: 2016/10/03(月)00:48:41 ID:sRm
ゴンゴンッ

チャールズ「はいはーい、今あけますよ~っと」スタスタスタ ガチャッ

ガチャッ

チャールズ「アナスン先生!おかえりなさい!いやー、遅かっ…ムグッ」ガシッ

大柄な老人「……相手を確認せず鍵を開けるとは愚かな奴め」

チャールズ「何だこの人いきなり胸ぐらを…!くっ、老人なのになんて力だ、離してくれ!離せっ!」ジタバタ

大柄な老人「俺のような老人の腕を振り解く事さえ出来んか、若造」ググッ

チャールズ「まさかあんた…先生の作品を狙う賊か!?クッ、離せ!先生の留守は俺が守る!」ギロリ

大柄な老人「ほう、目つきが変わったな。師の作品に対する敬意はあるようだ、だが…心持ちで何かを守れる程甘くは無い」

大柄な老人「離せと言ったな、その要求飲んでやる」ググッ

チャールズ「こいつ…!まさか俺をぶん投げるつもりか、マジか…!」

大柄な老人「そこまで予想が出来ているのなら、貴様がすべき事は一つのはずだな」フンッ

ブンッ ガッシャーン

チャールズ「ぐあっ…!グッ…なんなんだこのジーサン…!」

大柄な老人「フンッ、とっさに身体を捻って利き腕が叩きつけられる事だけは防いだか」

大柄な老人「どうやら作家としての自覚はあるようだな若造」

894: 2016/10/03(月)00:52:56 ID:sRm
雪の女王「大きな音がしたが、何かあったのかチャールズ!」バッ

チャールズ「先輩!このジーサン、先生の財産を狙う賊に違いないです!警官呼んでください!ここは俺が食い止めます!」

雪の女王「賊、だと…!?」バッ

大柄な老人「薄着の若い女、貴様はアナスンの助手だな」

雪の女王「アナスン…?チャールズ!この老人は本当に賊なのか?」スッ

大柄な老人「フンッ、どうやら頭が回るのはこの女の方らしいな。おい、若造俺は賊では無い」ガシッ

チャールズ「うぐっ…!だったらいきなり襲いかかってきて何が目的なんだ!」

大柄の老人「黙って質問に答えろ。貴様は何故童話を書く。何のために筆をとる」

チャールズ「…幼女の可愛さを世に伝える為、そして幼女を笑顔にするためだ!」

チャールズ「そんな事を聞いてどうするって言うんだ…このっ!」ブンッ

大柄な老人「届かぬ拳を握るか。だが怒りを纏ってなお利き手を庇う点は評価してやる」

雪の女王「この老人、やはり…!」

大柄な老人「この若造の気概は計れた。出てきて構わんぞ、ヴィルヘルム、アナスン」フンッ

895: 2016/10/03(月)00:55:39 ID:sRm
優しげな老人「兄さんは手荒過ぎるんだよ。アナスンの大切な弟子を怪我させたらどう責任をとるんだい?」

大柄な老人「フンッ、この程度で怪我をするようでは作家としての見込み無しだ」

アンデルセン「チャールズ、すまない。君の話をしたら『作家としての自覚、素質を計る』と言って聞かなくてね…加減はしてくれたと思うが、怪我は無いか?」

チャールズ「いや、怪我はしてないんですけど…っていうことはこの人達があの!?」

優しげな老人「君がチャールズ君、だね?話はアナスンから聞いているよ。兄さんが乱暴な真似をしてすまなかったね、アナスンの初弟子だから期待しているみたいでね、許してやって欲しい」

ヴィルヘルム「僕はグリム童話集の編者の一人、ヴィルヘルム・カール・グリム。グリム兄弟の弟の方ね、よろしく」スッ

チャールズ「あっ、よろしくお願いします!俺、チャールズっていいます」

ヴィルヘルム「うんうん、よろしくね。…ほら、兄さん」

大柄な老人「グリム童話集の編者というのも今となっては過去の話。『グリム兄弟』などと一纏めで呼ばれる事を俺は好まん」フンッ

ヤーコプ「俺はヴィルヘルムの兄、名はヤーコプ・ルートヴィヒ・カール・グリム。覚えておけ、若造」

チャールズ「うわーっ!やらかした!す、すんませんさっきジーサンとか言っちゃって!」

ヤーコプ「俺はお前に暴力を振るった事を謝罪するつもりは無い。故にお前の無礼を咎めるつもりもない。些末なことだ、気にするな」

896: 2016/10/03(月)00:57:59 ID:sRm
チャールズ「へーっ、いきなり掴みかかってくるからヤーコプ先生って怖くて厳しいのかなって思いましたけど、結構理解あってよかったー!ビビって損したなー!あははは!」バシバシ

ヤーコプ「……」ゴッ

チャールズ「うぐっ…ゲホゲホッ!えーっ!?なんで蹴るんですか!?」

ヤーコプ「おい、弟子に舐めた口をきいても良いと教育しているのか、アナスン」

アンデルセン「最低限の礼節があればいいという方針ですね。私も他人に誇れるような人間ではないので。でもチャールズ、解ったと思うがヤーコプさんはこういう人だから今後気を付けなさい」フフッ

チャールズ「そーいうのは事前情報が欲しかったですよ先生…」

ヴィルヘルム「ハハッ…そして君はアナスンの助手さんだね。よろしく」スッ

雪の女王「こちらこそよろしく頼む」スッ

ヤーコプ「フンッ、多少は頭が回るようだが…随分と尊大な女だな、気に食わん」

雪の女王「貴様も似たようなものだろう?もののついでに言わせて貰うが貴様が破壊した玄関の修繕費、忘れないようにな」

ヤーコプ「ほう、口の達者な女だ。だが愛嬌の一つも無く人付き合いが多くなる作家の助手が勤まるのか甚だ疑問だな」フンッ

雪の女王「あいにくだが勤まっているからここにいる。貴様も童話作家ならばその程度の想像は働かせて欲しいものだ」フイッ

ヴィルヘルム「兄さんも助手さんも落ち着いて、せっかくデンマークまで来たんだから言い争いなんて止めよう兄さん」

アンデルセン「何にせよこんな所で話していても仕方がない。二人ともリビングへどうぞ、チャールズもだ。助手クンは人数分の紅茶を頼むよ」

897: 2016/10/03(月)01:00:51 ID:sRm
アンデルセンの自宅 リビング

チャールズ「でもドイツからデンマークって、一見近そうですけど実際旅するとなると大変だったんじゃないですか?ヴィル先生ー」

ヴィルヘルム「そうは言っても僕達は観光で来たからね、旅っていうのは道中の旅情を楽しむものだから。その土地の風景や人柄に振れたりね」

チャールズ「あっ、わかりますわかります!!旅の途中にその土地に住む幼女見かけると嬉しくなっちゃいますもんね!わかりますわかります!」

ヴィルヘルム「いや、そんな話はしていないのだけど」

ヤーコプ「……」フンッ

ヴィルヘルム「しかし、変な話僕達はそこそこ名が知れてるから君のような作家見習いは萎縮しちゃって話しかけてくれないことが多いんだけど、チャールズ君はどんどん話しかけてくるね」

チャールズ「あっ、長旅で疲れてるのに迷惑でしたか?」

ヴィルヘルム「いいや、兄さんは気にくわないようだけど僕は親しく話しかけてくれた方が嬉しいよ」

アンデルセン「買い被りすぎです、彼の場合は場の空気を読むつもりが無いだけですよ」フフッ

チャールズ「ちょっ、そんな事無いですってー!」ハハハ

雪の女王「有名な童話集の編者だからお高く止まっているのではと思ったが…随分と親しみのある老人だな、アンデルセン」

アンデルセン「ヴィルヘルムさんは優しい人だよ。心優しいあまりおとぎ話の内容を変えてしまうくらいだから」クスクス

雪の女王「おとぎ話の内容を…?」

898: 2016/10/03(月)01:05:08 ID:sRm
雪の女王「アンデルセン、それは一体どういう…」

ヤーコプ「アナスン、もう茶は結構。わざわざデンマークにまで足を運んだんだいつまでも世間話をしているというのも時間の浪費に思える」

アンデルセン「そういう時間も必要だと思いますけどね、ですが確かにせっかくこの街に来たのですから街の名所でも案内しましょうか?」

ヤーコプ「結構。それは明日にでも頼む」

ヤーコプ「若造、お前も長々と世間話などせず早急に例の物を出せ」

チャールズ「例の物…?あっ、あーあー!先生方に見ていただく童話ですよね!すっかり忘れちゃってました!」アハハ

ヤーコプ「忘れていただと…?アナスンが是非と言うから見習いであるお前の童話を読んでやることに了承したのだ、それをお前は…忘れていただと?」ギロリ

チャールズ「じょ、ジョークですよ!バッチリ覚えてますから!」アワアワ

チャールズ「先生!怖くないですか!?俺はヤーコプ先生マジ怖いです!」ヒソヒソ

アンデルセン「確かに怖いな、私も昔はそうだったな。だが彼が恐ろしいというのなら私に話しかけている場合ではないんじゃないか?」

ヤーコプ「若造、アナスンと何やら相談する余裕があるのなら早急に作品の原稿を渡せ。あまりもたつくと再びお前を投げつけることになるが?」

チャールズ「ええぇ!?わかりましたぁ!これです!」バサッ

チャールズ「俺が今の技術を使って作ったおとぎ話です。長旅でお疲れでしょうが、評価して貰いたいんです!」」

899: 2016/10/03(月)01:17:00 ID:sRm
・・・しばらくして

ヴィルヘルム「この童話…本当にチャールズ君が一人で?アナスンが部分的に書いたとかではなく?」

アナスン「私にはこんな細かく幼い少女を描写するなんて出来ませんよ」フフッ

チャールズ「ちょっとした助言はして貰いましたけど内容とかは全部自分で考えてます。ですよね先輩?」

雪の女王「あぁ、私が証明しよう」

ヴィルヘルム「……これは凄いね兄さん。プロの作品としても通用するよ。本当に完成度高いよ、素人の作品とは思えない」ペラペラ

ヤーコプ「……」ペラペラ

チャールズ「いやー、びっくりしたよチャールズ君!まさかここまで完成度が高く纏まっているとは!才能なのか努力なのか解らないけど、素質があると僕は思うよ」

チャールズ「ま、マジですか!うわー、ヴィル先生にそう言って貰えると自信付くなぁー」

ヴィルヘルム「ほら兄さんも何かあるでしょ、せっかく僕達を頼って童話を読んでくれって言っているんだから何か感想とか言ってあげてよ」

ヤーコプ「若造、お前の作品悪くはない。だが…お前の童話には教訓がない、あるいは私が見逃しているのか?もしもそうだというのならどんな教訓を込めたのか聞かせろ」

チャールズ「あっ、いや、元々教訓なんか入れていないんですよ。僕みたいな若造が教訓なんて掲げでもって感じですし、何より明るい話の方がいいです」

ヤーコプ「…話にならんな。私は認めるわけにはいかない」フゥ

チャールズ「えぇっ!?何処が駄目なんですか!?」

ヤーコプ「お前は何もわかってはいない」

ヤーコプ「この世界で作家を名乗ること。こと童話作家を目指すと言うことがどれだけ難しいか、」



ヤーコプ「「世間の連中は童話を文学とすら思っていない」のだぞ」

910: 2016/10/10(月)00:16:14 ID:A18

チャールズ「世間が童話を文学だと思ってない…?それってどういう意味なんです…?」

ヤーコプ「言葉通りの意味だ。若造、文学作品の種類をいくつか述べてみろ、それくらい出来るだろう」

チャールズ「えぇっと…まず小説ですよね。あと詩と、他には…」

ヴィルヘルム「著名人が記した伝記なんかもそれに該当するね」コソッ

ヤーコプ「ヴィルヘルム、助言をするな」

ヴィルヘルム「大丈夫、大したことは教えてないよ」

チャールズ「あとは…あっ、先輩!こないだ本棚整理してた時、旅の記録を記した本が出てきましたよね。あれも文学の一つですよね?」

雪の女王「あぁ、いわゆる紀行というものだな。旅先での体験や出会い、交流を記したものがそれにあたる。あれも立派な文学のひとつだ」

アンデルセン「他には随筆や演劇の為に書かれた脚本、戯曲なんかも文学として数えられるな」

ヤーコプ「助言をするなというのにお前達は…俺はこの若造に聞いている、外野が口を挟むな」

チャールズ「あははっ、ヤーコプ先生!別に良いじゃないですかー、細かいこと言いっこ無しですよー!」ヘラヘラ

ヤーコプ「真面目な話に最中に何をヘラヘラしている」ドゴォ

チャールズ「痛いっ!スンマセンッ!」

911: 2016/10/10(月)00:19:10 ID:A18
ヤーコプ「いいか、若造。そもそも文学作品というのは『言語を用いた芸術作品』を指す」

ヤーコプ「小説にしろ伝記にしろ紀行にしろ、言語によって人の心を打つ事が出来る芸術作品を文学作品と呼ぶ」

チャールズ「うーん…それはわかるんですけど、でもそれだとおかしくないですか?」

ヤーコプ「何がだ?言ってみろ」

チャールズ「先生はさっき『世間は童話を文学と思っていない』って言ってましたよね?でもその定義でいくと童話だって『言語を用いた芸術作品』になるわけで…」

チャールズ「やっぱ童話は絶対に文学ですよ、心を打つ作品も多いですもん。それなのに世間には認められていないっていう主張は…矛盾しちゃいません?」

ヤーコプ「気付いたな。この話の主題となるのはそこだ、若造」

チャールズ「……?」

ヴィルヘルム「兄さん、その話をする必要あるかい?チャールズ君の夢を壊すことになる。触れなくていい闇に触れて、才能ある若い芽を摘んでしまっては……」

ヤーコプ「この若造は確かな才を持っている、それならば尚更知っている必要があるだろう。童話作家という人間と童話という作品が置かれている現状を。違うか?」

ヴィルヘルム「それは…」

ヤーコプ「若造…いいや、チャールズ。童話作家を志すお前にとっては酷な話になるが、よく聞いておけ」

ヤーコプ「世間はお前が思っているほど、童話を必要としていない。童話など文学と呼ぶに値しない、芸術作品としての価値など無い、そういった考えが大多数だ」

912: 2016/10/10(月)00:21:22 ID:A18

チャールズ「ちょ、何でそーなるんですか!童話は間違いなく文学ですって!」

ヤーコプ「喚くな。俺の意見ではなく一般論だ」

チャールズ「いや、おかしいでしょ!だって俺、アナスン先生の童話に心打たれてここにいるんですよ!?それなのにあの作品達が価値のないものだなんて…そんなことないですって!」

ヤーコプ「俺はなにもお前の師を否定したいわけではない、アナスンの童話に限らずこの世界の童話は等しく無価値だと思われていると言うことだ、多くの人間にな」

チャールズ「いや、でも…そんな話おかしいでしょ!」

ヤーコプ「繰り返すがこれは俺の意見ではない。信じられないならばお前の師に聞いてみろ」

チャールズ「アナスン先生…!」バッ

アンデルセン「彼の言葉に偽りはない。以前と比べれば随分マシにはなったが、それでも童話を文学作品のジャンルの一つとして認めるという声はまだまだ大きなものではない」

アンデルセン「君が私の童話を読み、心を打たれたというのならそれは喜ばしい事だ。同じように私の童話に好意的な意見を寄せてくれる読者も多い、著名人や権力者にも私の童話を認めてくれる者はいる。だが…」

アンデルセン「それでも世間一般では…まだ童話は文学と呼ぶに値しないという意見は多い」

チャールズ「マジですか…こんなに素晴らしいものなのに、何で認められないんだ…」

アンデルセン「私も若い頃、君と同じ事で随分と悩んだよ。当時は今以上に童話という作品に対する理解が浅かったからね」

アンデルセン「童話に限った話では無いが、良い物が必ず世間でも正当に評価されるというわけでは無いんだよチャールズ」

913: 2016/10/10(月)00:24:09 ID:A18
雪の女王「確か…お前は以前、私に話してくれたな。童話【火打ち箱】を世間に発表したときの話を」

アンデルセン「あぁ、そんな話もしたかな」

チャールズ「【火打ち箱】なら俺も読みましたけど…何かあったんですか?」

ヤーコプ「信じられないかも知れないが、稀代の童話作家アンデルセンは初めて出版した童話を世間から酷評されている」

チャールズ「えぇっ!?先生の童話がですか!?」ガタッ

ヴィルヘルム「あれは目を覆いたくなるほどの酷評だったよ。なまじ『即興詩人』という小説で名が売れていただけにね」

アンデルセン「即興詩人ほどの小説が書けるのに何故こんな駄作に時間を割くのか?童話などという子供だましに手を出す暇があるなら真っ当な小説を書け、と言った評価が主だったな」

アンデルセン「中には好意的な意見もあったが…世間の評価は概ね同じ。童話なんかに時間を割くな、童話なんてものを何故書く?直ちにやめろとな、一見好意的に見える手紙も小説方面で頑張って欲しいという内容だったりな」

チャールズ「童話だっていう理由だけでそんな酷評を…俺、許せませんよ!不当じゃないですかそんな評価!」

アンデルセン「それだけ童話という作品が世間に認められていなかったという事だ。私の作家としての未熟さも当然あったとは思うがな」

チャールズ「……」

ヴィルヘルム「チャールズ君、二人が話していることは紛れもない事実だ。でもそう悲観することはないんだよ」

ヴィルヘルム「確かに昔は酷いものだったし今もまだ童話や童話作家が置かれている状況は良いとは言えない。でもこの先、きっと童話を取り巻く環境はずっと良くなる」

ヴィルヘルム「僕はね、そう信じているんだ。いいや、確信さえしているよ」

914: 2016/10/10(月)00:26:46 ID:A18
ヤーコプ「根拠のない慰めはやめておけ、空しいだけだ」

ヴィルヘルム「兄さん、本当に根拠がないと思ってるかい?」

ヤーコプ「…フン」

ヴィルヘルム「チャールズ君、ペロー先生は知っているね?」

チャールズ「もちろんです。【シンデレラ】や【眠り姫】で有名ですもんね」

ヴィルヘルム「シャルル・ペロー先生はかつて民間伝承の物語を脚色し、親しみやすい童話にして世に出した」

ヴィルヘルム「そして僕と兄さんは様々な地方の民間伝承をまとめて童話集にした。これは様々な童話を世間に知って貰うことに成功したと思っているよ」

ヤーコプ「童話集がさほど批判されなかったのは、作品としての価値よりも様々な地方の物語をまとめたという資料的な価値を評価されてだろうがな」

ヴィルヘルム「そして君の師匠、アンデルセンは民間伝承ではないオリジナルの作品…創作童話をいくつも世に出した」

ヴィルヘルム「今までの話を聞いていれば解ると思うけれどこれはすごいことなんだよ。童話という作品が軽視されているこの時代、歴史や文化の裏付けがある民間伝承ではなく創作童話を発表し、支持を受けてるんだから」

アンデルセン「運が良かっただけです、なにしろライバルとなる同業が少なかったですから」

ヴィルヘルム「あれね、謙遜だからね」クスクス

チャールズ「ですよね、先生は才能ありますもん!」ハハハ

ヴィルヘルム「僕もそう思うよ。兄さんが言ったように世間には童話を文学として認めていないという声が大きいけれど…逆の意見だって少しずつ増えてきている」

ヴィルヘルム「アナスンは少しずつだけど、世間の童話に対する考えを変えることに成功しているんだ。そしておそらく遠くない将来、アナスンはきっと成し遂げる」

ヴィルヘルム「童話は立派な文学だという事を世間に認めさせることにね」

916: 2016/10/10(月)00:28:54 ID:A18
アンデルセン「ヴィルヘルムさん、それはさすがに買い被りすg」

チャールズ「そぉですよおおぉぉ!!よくぞ言ってくれましたよヴィル先生!俺もおんなじ意見です!アナスン先生は絶対にやってくれます!」ガタッ

チャールズ「なにしろアナスン先生は世界で一番の童話作家ですから!絶対に、絶ッ対ッにっ!童話はもっともっと親しみやすくそして価値ある物だって世界に知らしめられるはずです!そして世界の幼女はみんな幸せ!ラブアンドピース!」ズワッ

ヴィルヘルム「そ、そうだね」ドンビキ

チャールズ「アナスン先生、俺、故郷に帰っても作家以外の仕事に付いたとしても一生先生のこと応援してますから!」

アンデルセン「あ、あぁ…ありがとう」

チャールズ「そうと決まったら次の作品に取りかかりましょ!俺、何でも手伝いますよぉぉぉ!!」

ヤーコプ「チャールズ」スクッ

チャールズ「はいっ、なんですか?ヤーコプ先生!」

ヤーコプ「勝手に盛り上がるな、俺の話はまだ終わっていない」ドゴォ

チャールズ「そうでしたスンマセンッ!」

ヤーコプ「確かにヴィルヘルムが言うように、少しずつであるが童話を取り巻く環境は改善されつつある。だがそれでも一つだけ変わらない物がある、童話にとって欠かせないとされているものがな」

チャールズ「あっ、もしかしてそれが『教訓』ですか?」

ヤーコプ「そうだ。少数派である童話を文学と認めるという者達もこれに関しては譲らず、一様にこう口にする」

ヤーコプ「童話には教訓がなければならない、とな」

917: 2016/10/10(月)00:32:22 ID:A18
ヤーコプ「童話は子供向けの作品だ。そこに教育をねじ込むという行為は理にかなっている」

ヴィルヘルム「確かに…それに関してはね。僕達が編集したグリム童話にもほぼ全て教訓が存在するしね」

アンデルセン「…私の童話もそうだ。むしろ世間で一定の知名度を得ている作品で、教訓が存在しない作品などありはしない」

チャールズ「うーん…まぁ確かにそうですよね。どんな童話にも教訓はあります、俺やっぱ少数派なのかな…」

雪の女王(昨晩アンデルセンが言っていた、チャールズの弱点の件。どうやら二人も童話には教訓が必要と考えているようだな)

雪の女王「私には問題がないように思える。教訓というのはそんなに必要なものか?」

ヤーコプ「教訓とは童話とは切り離せないものだ。素人は黙っていろ」

雪の女王「何だと…?」キキッ

ヴィルヘルム「言い過ぎだよ兄さん、彼女はチャールズ君を心配して言っているのにそんな言い方は良くない」

ヤーコプ「何が言い過ぎなものか、子供の為の物語に娯楽は必要無い。それが世間の総意であり、童話が童話である理由だ。それだけはアナスンであろうと何者であろうとねじ曲げることはできない」

ヤーコプ「だが、チャールズの作品には教訓が無い。故にこの物語がいかに優れていようとも…これは童話として認められることは決してない。条件を満たすことが出来ていないのだからな」

雪の女王「……っ」

雪の女王(アンデルセンが言っていたのはこの事だったのか…教訓がない物語は、世間から童話として認められない。認められないという事は…チャールズは評価されないという事だ、童話作家として)

ヤーコプ「これで理解できただろう。俺がお前の作品を認めないと言った理由が」

918: 2016/10/10(月)00:34:18 ID:A18
チャールズ「うーん……でもまぁ、いいんじゃないですかね?教訓なくても」

ヤーコプ「お前は何を言っている、俺の話を聞いていなかったのか?」

ヤーコプ「ただでさえ文学として完全には認められていない童話という作品、その絶対条件とも言える教訓を取り去っては…それはもはや童話ではない」

チャールズ「でもそれは童話じゃないっていうんじゃなくて、世間から童話として認められないってだけの話ですよね?」

ヤーコプ「同じ事だ。認められなければお前の作品が世に出たところでそれは受け入れられない。プロを目指す以上は受け入れられ評価される作品を生むことが第一だ」

チャールズ「ヴィルヘルム先生とヤーコプ先生は何で童話集創ったんですか?」

ヤーコプ「その話が今、関係あるのか?」

ヴィルヘルム「いいじゃないか兄さん、答えて困ることはないんだ。まぁちょっと複雑な理由だけどね」

ヴィルヘルム「僕は各地で細々と語り継がれている物語を世界に…後世に伝えたいと思ったんだ。まぁ他にも理由はあるけれど、基本的にはそれが理由だよ」

ヤーコプ「民間伝承とはその土地の歴史の断片、過去の記憶の欠片。俺は学者としてそれに興味を持ち、保護すべきと考えた」

ヴィルヘルム「僕と兄さんの思惑には違いがあったけれど、童話集としてまとめる事はお互いの目的を叶えることに繋がると考えた」

ヤーコプ「故に俺とヴィルヘルムは各地を周り、物語を集めた。というのがグリム童話成立の始まりだ」

919: 2016/10/10(月)00:36:25 ID:A18

チャールズ「なるほど…!本人の口からこう言うこと聞けるの感激だなー!」

ヤーコプ「お前…話を逸らすつもりか?」

チャールズ「いやいや、そうじゃないです!えーっと、アナスン先生はなんで童話を書き始めたんですか?」

アンデルセン「子供達に、読者に想いを伝えるためだ。…だがこれは何度も話したはずだが」

チャールズ「あははっ、確認ですよ!確認!」ヘラヘラ

ヤーコプ「お前は何がしたい?今更、俺達やアナスンが童話を書いた理由など聞いて何になる」

チャールズ「ヤーコプ先生、初対面の時俺に聞いたじゃないですか。なんで童話を書くのかって」

ヤーコプ「聞いたな、そしてお前は『幼女を笑顔にするため』と答えていたか…フン、ふざけた理由だ」

チャールズ「やっぱり、俺にとってはそれなんですよ、童話を書く理由って。ヤーコプ先生からしたらふざけた理由に見えるかもですけど」アハハ

チャールズ「俺はヤーコプ先生みたいに童話の保護とか、ヴィル先生みたく童話を広めるとか…ペロー先生みたいに童話を親しみやすくするとか、そういう立派な考え持ってないんですよ」

チャールズ「ましてやアナスン先生みたいに子供達に何か大切なことを伝えたい!なんて大それた事、できません。幼女に笑っていて欲しい、それだけです、でも…」

チャールズ「幼女を笑顔にしたいっていう事に関しては誰にも負けない強い思いがあるって言い切れます。やっぱ俺って生粋の健全な口リコンですからねー」アハハ

920: 2016/10/10(月)00:38:53 ID:A18
チャールズ「俺にとってはそれが全てなんですよ」

チャールズ「世間に評価されなくても悪く言われても食いつなげなくても、俺が書いた物語で幼女を笑顔にすることが出来たなら俺の勝ちです!」

チャールズ「それ以外はまぁ、割と二の次ですかね」アハハ

ヤーコプ「…例え生活に苦しもうと、後ろ指を指されようとその信念は曲げないつもりか?」

チャールズ「世間の目を気にして心にもない教訓入れても意味ないと思うし、それで幼女を楽しませるっていう目的失ったら意味ないですよー」

チャールズ「だから俺は今後も童話には教訓入れません!世間が俺を認めなくても幼女が笑えばそれでオッケーですよ」アハハ

アンデルセン「実に君らしい答えだな。実のところ、教訓がない物語という事が君が童話作家を目指す上での障害になるのではないかと思っていたが…杞憂だったな」

雪の女王「私としては心配して損をしたという気分だな。元々こいつは自分のことなど二の次、幼女を一番に考える変態だ」

チャールズ「ちょ、変態じゃないですってー!健全な口リコンですって!健全な!」

ヤーコプ「…フン、笑わせる。幼女を笑顔にできれば世間の評価などいらないだと?とんだ綺麗事だな」

ヴィルヘルム「兄さん、だから言い過ぎだって…いいとおもうよ僕は、彼はまだ若いし」

ヤーコプ「甘い、プロを目指す以上は世間の評価は必須。それを必要ないと言うのならばそいつはもう童話作家ではない、ただの素人だ」

921: 2016/10/10(月)00:43:23 ID:A18

ヤーコプ「俺はお前を作家とは認めん。これ以上の話は無駄だ、童話作家など諦めて別の職を探せ、幼女の為などという淡い幻想を抱いたまま作家の真似事を続けていろ。世間の評価を捨てた以上、行く末は見えて居るがな」

雪の女王「…貴様、大概にするんだな。こいつは変態だが私の後輩だ、それ以上の侮辱は後悔することになるぞ」ガタッ

アンデルセン「助手クン、やめるんだ。それ以上は私が許さない」

雪の女王「お前は弟子があそこまで言われているというのに聞き流すのか…?」

アンデルセン「そうじゃない。いいから座るんだ」

雪の女王「……」スッ

チャールズ「あはは…なんか俺のせいで雰囲気悪くなっちゃってすんませーん。ヤーコプ先生も、話聞いてくれてどーもでした」ペコ

ヤーコプ「……ヴィルヘルム、ペンと紙を寄越せ」

ヴィルヘルム「あぁ、はいはい…はい、これでいい?」スッ

ヤーコプ「十分だ。おい…チャールズ、このメモを取っておけ」サラサラサラ スッ

チャールズ「んっ?なんなんですか?このメモ…」

ヤーコプ「私の連絡先だ。先程言ったように俺は貴様を作家として認めん、認めんが…それで諦めるような奴では無さそうだ、お前は」

ヤーコプ「不相応に夢を追いかけて野垂れ氏なれても迷惑だ。とはいえアナスンの弟子を見捨てるのも忍びないからな…助けが欲しければ訪ねてこい、職の手配くらいはしてやる」

チャールズ「おぉ…!わかりました!ありがとうございます!」

922: 2016/10/10(月)00:46:59 ID:A18

アンデルセン「フフッ、相変わらず素直じゃないな、ヤーコプさんは」ヒソヒソ

ヴィルヘルム「なんだかんだで期待してるんだろうね、彼に。若手にこんな風に連絡先なんか絶対渡さないからね、普段は」ヒソヒソ

雪の女王「アンデルセンは奴の真意を見抜いていたから私を止めたのか…。しかし面倒な男だ、素直にチャールズの力になればいいだろうに」ヒソヒソ

アンデルセン「彼のように少々キツい物言いをする人間も必要だ。特にチャールズのようなタイプにはね」ヒソヒソ

雪の女王「まぁ…確かにそうかも知れないな」ヒソヒソ

ヤーコプ「お前達、ヒソヒソと密談をするのはやめろ気分が悪い。言っておくがなチャールズ、くだらないことで私を訪ねてくるんじゃあないぞ、迷惑だからな」

チャールズ「あはは、わかってますってー!それにしてもヤーコプ先生も素直じゃないですよねー、一見気難しそうに見えて俺のこと気遣ってくれるんですもん!いやー、本当に素直じゃないんd…痛いっ!」ドゴォ

ヤーコプ「お前はまず目上の人間に対する作法を学べ」

チャールズ「なんでヤーコプ先生は学者なのにこんなに強いの…おかしい、おかしくない…?」ゲホゲホ

ヤーコプ「童話収集の際に必要だったから身に付けた体術だ。お前が私に舐めた言動を繰り返すのなら容赦なく繰り出す」

チャールズ「うぅ、気を付けます…」

ヤーコプ「フン、さて…長々と話し込んだせいか少々空腹だ。アナスン、何処か食事の出来る場所へ案内してくれ。出来れば堅苦しくない場所がいい」

アンデルセン「えぇ、わかりました。弟子に指導をしていただいた礼に、良い店にご案内しますよ」フフッ

・・・

928: 2016/10/11(火)00:32:05 ID:OJH

過去 現実世界
デンマーク アンデルセンが住む町 とある料理店

………

ヴィルヘルム「ほー、なかなか雰囲気のいい店じゃないか。店内は小綺麗だし、料理の味にも期待できそうだね」

ヤーコプ「俺は堅苦しいマナーに縛られず食事ができるのならば何よりだな、料理に味の良し悪しは求めん」

アンデルセン「その口ぶりだと、相変わらずお仕事の方忙しいようですね」クスクス

ヤーコプ「あぁ、毎日毎日接待だの会食だので落ち着いて飯を食う事ができない。仕事とはいえ正装して物を口に運ぶ作業はもううんざりでな」

ヴィルヘルム「兄さんは顔が広いし有名だからね。そういう場所にお呼びがかかるのは仕方ないよ。今やただの学者じゃないんだからそれくらいはね、それに言いたくないけどこの前だって…」

ヤーコプ「ヴィルヘルム、休暇中だ。仕事の話は控えろ」

ヴィルヘルム「もう、都合が悪くなるとこうなんだから…。でも折角みんなで食事だっていうのにチャールズ君来れなくて残念だね」

雪の女王「仕方ないさ、突然アルバイト先の奥さんが倒れたって言うんだから。手伝いに向かわないわけにはいかないだろう」

アンデルセン「とはいえ相当後ろ髪引かれていたな。グリム兄弟と食事をする機会など滅多に無い、その貴重な機械を失ったのだからね」クスクス

ヴィルヘルム「滞在中に絶対ご一緒させてくださいね!絶対ですよ!約束ですよ!幼女に誓ってくださいよ!?なんて言っていたね、食事なんかいつだってできるだろうに」ハハハ

ヤーコプ「フン、俺としてはやかましい若僧が不在だとゆったりと飯が食えて喜ばしい限りだがな」

ヤーコプ「しかし、あいつが言葉の端々に幼女幼女言うのはどうにかならないのか?いい加減にうっとうしく感じるのだが」

アンデルセン「それは無理ですね、誰も彼の幼女愛を止めることなどできませんよ。そうだろう助手クン」

雪の女王「あぁ、あいつの幼女好きを治すよりもひとつの戦争を収める方がずっと容易そうだ」クスクス

929: 2016/10/11(火)00:35:09 ID:OJH

ヴィルヘルム「それにしてもチャールズ君、面白い青年だったね。あの作品を読む限り才能もやる気もある、アナスンは良い弟子を持ったね」

アンデルセン「私には過ぎた弟子ですよ。他の大御所作家の弟子になった方が彼の成長のためには良かったのではないかと思うくらいでね」

雪の女王「そうは言うがあいつは童話作家を目指しているんだ、お前以上の適任はいないだろう」

アンデルセン「そうかも知れないが…どうも誰かにモノを教えるというのは苦手でな、今も手探り状態なんだ。こう見えて」

ヴィルヘルム「それでいいんじゃないかな?初めから完璧な師匠なんて居ない、弟子と一緒に成長すればいいのさ」

ヤーコプ「何にせよあの若造の師匠はお前にしか勤まらん」

ヤーコプ「師への敬意はあるようだが、あの様にお調子者で礼儀に欠けた変人、他の作家の下では数日で破門だ」

アンデルセン「ふふっ、そうかも知れませんね。でも私ですら着いていけない時がありますよ、課題の提出を求めると手作りパンを出してきたりしますから、彼」

ヴィルヘルム「へ、へぇ…才能があると言われる人は作家でも画家でも往々にして変人だけどね…ちょっと意味わからないね、それは」ドンビキ

ヤーコプ「フン、才能はあるというのに奇人で変質者とは惜しい若造だ」

アンデルセン「ともあれ、今日来れなかった彼の分も我々で楽しい食事にしよう。助手クン、二人にメニューを渡してくれるか」

雪の女王「あぁ、わかった。帰りが遅くなるかもしれないとチャールズは言っていたが、彼にも何か料理を持ち帰ってやろう」

アンデルセン「それがいい。彼もきっと喜ぶよ」

930: 2016/10/11(火)00:37:48 ID:OJH
しばらく後
………

ヴィルヘルム「うん、どの料理も美味しいね。店の雰囲気に負けてない、アナスン、いい店を知ってるじゃないか」カチャカチャ

ヤーコプ「確かに、悪くはない」ムシャリ

アンデルセン「私達は外食が多いからこの辺りの料理店は結構詳しいんだ、何か好みがあればそれに合った店を紹介しますよ」

ヤーコプ「外食が多い?それはおかしいな話だな、女の助手がいるんだからこいつに炊事を任せればいいだろう」

雪の女王「……」フイッ

ヤーコプ「あからさまに目をそらしたな。おい、まさかとは思うがお前、料理ができないのではないだろうな?」

雪の女王「見くびらないで貰おうか、出来るに決まっている。…やらないだけだ」

ヤーコプ「……ククッ」

雪の女王「何故笑った。答えろ、ヤーコプ」キッ

ヤーコプ「答えてもいいのか?お前のプライドを傷付ける事になるぞ?」クックック

雪の女王「いいだろう、覚悟ができているというのならばこの地を吹雪舞う真冬にしてy」

アンデルセン「ヤーコプさん、私は彼女の内面と教養に惚れたから助手にしたんです。炊事ができるできないは問題じゃない。だから君も気にしなくていい、怒りを納めてくれ」

雪の女王「…すまない。つい頭に来て我を忘れてしまった」

ヤーコプ「フン、単なる冗談のつもりだったのだがな。アナスンがそう言うのならば謝罪しておこう、悪かった」

ヴィルヘルム「もう、兄さんは本当に口が悪いんだからもう少しい考えて喋って欲しいよ。助手さん、兄が失礼な事を言って申し訳ない」ペコッ

雪の女王「構わない。ところで、ヴィルヘルム。ひとつ聞きたいことがあるのだが、構わないか?」

アンデルセン(さりげなく話をそらしたな…実は気にしているのか)

ヴィルヘルム「僕に?もちろん構わないけれど、なにを聞かれるのかドキドキするね」ハハハ

931: 2016/10/11(火)00:41:01 ID:OJH
雪の女王「お前は優しい人間で…その優しさからおとぎ話の内容を変える。そうアンデルセンから聞いたんだが、どういうことなんだ?」

ヴィルヘルム「アナスン、そんなこと話したのかい?」

アンデルセン「隠すようなことでもないと思って話したんですが、問題あったかな?」フフッ

ヴィルヘルム「いや、いいんだけど。えぇっと、助手さん。彼が言っている事は本当だよ、まぁ僕が優しい人間かどうかは知らないけれど」

ヴィルヘルム「僕は童話集の内容を少し改変してる。それは事実だよ」

雪の女王「何の為にそんなことを?童話集程の有名作品、改変なんかして下手すればその世界が消えてしまうというのに」

ヴィルヘルム「消えて…?それ、どういうことだい?」

雪の女王「知らないのならいい、忘れてくれ。それより聞かせてくれ、何故おとぎ話の改変なんかしているんだ?」

ヤーコプ「聞かない方がいい。実に馬鹿馬鹿しい理由だからな」

ヴィルヘルム「馬鹿馬鹿しいとはあんまりだよ兄さん、僕はこの改変に意味があると思っているし兄さんも認めたじゃないか」

ヤーコプ「確かに認めたが、それは改変が結果的に童話集の為になると思ったからだ。お前の考えに同調したからではない。そもそも…」

ヤーコプ「おとぎ話の登場人物が不憫だから物語を改変するなんて理由、誰が同調する?」

932: 2016/10/11(火)00:42:59 ID:OJH
雪の女王「おとぎ話の登場人物が不憫だから改変を?作者のお前がか?」

ヴィルヘルム「そうだよ、グリム童話集が世に出てから少しずつね」

雪の女王(確かに作者であるヴィルヘルムならそれは可能だ。だが、何の為に…?)

雪の女王「ヴィルヘルム…詳しく聞かせてくれないか?」

ヤーコプ「こんな事に興味があるのか?つくづく変わった奴だな」

ヴィルヘルム「いいじゃないか、別に。いいよ、話すよ。この事に興味を持ってくれたのは助手さんが初めてだ」

アンデルセン「女王、前もって言っておくが彼はおとぎ話の世界の存在について知らない」ボソッ

雪の女王「そうなのか?ならば尚更不思議だ、知らないのに何故…」

アンデルセン「聞けば分かるよ。ただ作者には彼のような人間もいるということ、君には知っていて欲しい」ヒソヒソ

ヴィルヘルム「えっと、話を続けても構わないかな?」

雪の女王「…わかった。ヴィルヘルム、続きをお願いするよ」

ヴィルヘルム「まず根本的な部分だけど…僕達はグリム童話集の作者だけど、その物語を一から作った訳じゃない」

ヴィルヘルム「そのほぼ全てが一般の人達の間に伝わっていた民間伝承の物語。グリム童話集はそれらをまとめたものなんだ」

933: 2016/10/11(火)00:45:42 ID:OJH
ヤーコプ「とはいえ、同じような民間伝承でも地域や話す人物によって細かな違いがあった。それらをひとつのおとぎ話として確立したという点では俺達は編者でありながら作者でもあると考えて差し支えはない」

ヴィルヘルム「さっきチャールズ君にグリム童話集の成立について話した時聞いていたと思うけど、兄さんの目的は童話の保護」

ヴィルヘルム「だから一番最初はなるべく手を加えないようにして世に出したんだ」

ヴィルヘルム「でも、僕は納得していなかったんだ。その童話集の内容に」

雪の女王「それは何故だい?」

ヴィルヘルム「元々、民間伝承の物語というのは刺激的で暴力的で、時に性的なものも多いんだ」

アンデルセン「昔は今よりも娯楽が少なかっただろうから、そういった要素が含まれた物語が好んで伝えられたのかもしれない」

ヤーコプ「暴力的な表現や性的表現を問題視することも昔はなかったのだろう。故に今の目線で見れば過剰な表現が目立つ」

ヴィルヘルム「それらの表現の中には童話集となって世界中の人の目に触れるようになった今、ふさわしくないものもあった。僕の改変、ひとつはそれを解決するためでもあった」

雪の女王「確かに子供たちが気軽に読める物語が暴力的過ぎたり性的なのは良くないな」

ヴィルヘルム「でも僕はそれよりもおとぎ話の登場人物たちが不憫だったんだ。子供たちには見せられないような残酷で酷い目にあうのは彼らなんだから」

雪の女王「だからこそ改変をした、という事か」

ヴィルヘルム「その通りだよ。例をあげるとキリがないけれどあえていくつか例を出すなら…助手さんは知っているかな?」

ヴィルヘルム「【ヘンゼルとグレーテル】というおとぎ話を」

934: 2016/10/11(火)00:50:44 ID:OJH
雪の女王「あぁ、知っている。貧しい兄妹の話だ、両親に捨てられるという展開は衝撃的だ」

ヴィルヘルム「うん、そうだね…両親に口減らしの為に捨てられるんだ、兄妹が氏んでしまう可能性が高い事を承知でね。だから僕はこのおとぎ話を幸せな話に書き換えようとしたけど、兄さんは許してくれなかった」

雪の女王「血も涙もない奴だなヤーコプは」

ヤーコプ「馬鹿かお前達は。ヘンゼルもグレーテルも単なる登場人物、存在しない子供だ。いい大人がそんなものに感情移入をするな」

雪の女王「……」

ヤーコプ「そもそもあのおとぎ話は過去に起きた飢饉が元になっている。子供を捨てる事に躊躇無い親など居ない、だがそうしなければならないほどの大飢饉、それは確かに存在した歴史だ」

ヤーコプ「それを可哀想だからなんて理由で書き換えるくらいなら童話集など出版する意味がない。だから最初、ヴィルヘルムの改変を俺は許さなかった」

ヴィルヘルム「でも僕は頼み込んでなんとか改変を許可してもらった。兄妹の家族構成を少しだけという条件でね」

雪の女王「家族構成…?そんな些細な部分だけ変えたのか?」

ヴィルヘルム「そう、兄さんの言葉は正論だ。だから改変は最低限にすることにしたんだ。元々兄妹は実の父親と母親と暮らしていた、貧しくも清くね。でも…」

ヴィルヘルム「飢饉が生んだ悲劇のせいでヘンゼルとグレーテルは捨てられて魔女に襲われてしまう。しかし自分達を捨てたのが実の両親だというのはあまりに悲惨すぎる」

ヴィルヘルム「せめて、継母の口車に乗せられて捨てられたという内容の方が少しでも彼らの心の救いになるだろう」

ヴィルヘルム「そう思って僕は二人を捨てたのを両親ではなく父親と継母という内容に改変したんだ

935: 2016/10/11(火)01:00:40 ID:OJH

雪の女王「そうだな、確かに兄妹の気持ちを考えればまだ救いはある。少なくとも実の母親は彼等にとって綺麗な存在のままなんだから」

ヴィルヘルム「僕もね子供達が不幸になる物語はやはり辛いんだ。本当なら【マッチ売りの少女】の改変もしたいのだけど」チラッ

アンデルセン「ヴィルヘルムさんの頼みと言えど駄目ですよ。それだけは何があっても譲らない」

ヴィルヘルム「うん、そうだよね。駄目で元々、聞いてみただけだよ」

ヤーコプ「お前は【赤ずきん】の主人公が狼に食われたままなのは可哀想だなどと言って、本来登場しなかった猟師に助けさせておきながら…次はマッチ売りだと?大概にしろよ…?」

ヴィルヘルム「チャールズ君じゃないけど子供たちには笑っていて欲しいでしょ?それに狼に食べられっぱなしだとペローさんの所と被るんだ」

ヤーコプ「今までは言わずにいたが俺には理解が出来ない。どうしてそこまで感情移入をするんだ?」

ヤーコプ「【ラプンツェル】もそうだ、元々は主人公が塔に侵入した王子と逢瀬を繰り返して結果として孕まされる内容だった。それを『母親の気持ちを考えるとやるせない』などと言って改変を求めてくる始末…」

ヴィルヘルム「考えて見てよ兄さん、塔に幽閉してまで大切に大切に手塩にかけて育てた娘が騙されて妊娠させられるなんて、親からしたらショックなんてもんじゃない」

ヤーコプ「だからそこまで感情移入することがおかしいと言っているんだ。ラプンツェルもゴーテルも存在しない!そもそもゴーテルがラプンツェルを幽閉した理由は不明のはずだろう」

936: 2016/10/11(火)01:06:07 ID:OJH

ヴィルヘルム「奪ってきた赤ん坊を育てるメリットなんか魔女にはないじゃないか。何らかの理由で育てているうちに愛着がわいたと考えるのが自然だよ」

ヤーコプ「……」イライラ

ヴィルヘルム「そうなれば娘を守るために塔に幽閉したという説明もつく。そうだとすれば結婚前の愛娘を傷物にされるなんて氏ぬほど辛いはずでしょ。だから僕は…」

ヤーコプ「お前は…この際だからハッキリ言っておくがな!お前も大概変人だぞ、そこまで登場人物に感情移入する奴がどこにいる!端から見たら気違いだぞ!」バンッ

アンデルセン「ヤーコプさん、落ち着いて。何もそんなに怒鳴ることないでしょう」

ヤーコプ「アナスンは黙っていろ、これは兄弟の問題だ!それともなにか?ヴィルヘルム、お前はゴーテルの知り合いか何かか!」バンッ

ヴィルヘルム「そんなわけないじゃないか、僕に魔女の知り合いは居ない、」

ヤーコプ「そんなことは知っている!そもそも俺はだなお前のそう言うところが気に入らない!いい歳をしてお前は…!表に出ろヴィルヘルム!」

ヴィルヘルム「望むところだよ。そんなこと言うのなら僕だって不満はある、大体兄さんはいつもいつも…!」

ギャーギャー 

雪の女王「おい、お前達落ち着け。冷静になれ!アンデルセン!お前も止めろ!」

アンデルセン「いつもの事だよ、童話の事になると意見がぶつかって喧嘩になる」

雪の女王「なんでそんなに落ち着いているんだお前は…」

アンデルセン「二人とも童話に対して本気だから喧嘩になる。私や君が割って入って止められるものじゃない」

アンデルセン「店の外でやってくれる理性が残っていただけマシだよ。私達は食事を続けながら待っているしかない。君も座るといい、この焼き物なかなかの味だぞ」モグモグ

雪の女王(やはり作家というのは、みんなどこかしらおかしな部分があるものだな…)

937: 2016/10/11(火)01:11:14 ID:OJH
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます

 ガ チ 喧 嘩 す る 老 人 

次回
今朝タブレットが壊れて買い換えて設定とかしてたら時間が無くなった(言い訳)
次回こそ下の内容やります!

チャールズの弟子期間も終わりを迎えます
そんななか本来の居場所ではない場所に長居している女王にも身の振り方を決断するときが来たようです
過去編、そろそろ終わりです

954: 2016/10/17(月)00:39:46 ID:Iox
アンデルセンが住む街 料理店の店先

ヤーコプ「ヴィルヘルム、俺はお前の思考や言動を否定することは極力避けてきた。お前はグリム童話集を共に産み出した大切なパートナー、出来る限りは意思を尊重したい」

ヤーコプ「故に今まで口に出さずに居たが…あえて言う。お前の行っている改変は必要の無いものが多い。ほとんどがグリム童話集には不要な改変だ」

ヴィルヘルム「僕は一つとして意味の無い改変なんかしていないと思っている。そもそも兄さんは条件付きとはいえ僕の改変に納得してくれただろう、それを今さら蒸し返すなんてどうかしてる」

ヤーコプ「言ったはずだ、俺が認めたのは童話集にとって必要な改変も存在していたからだと。解りにくい表現、現在の道徳観と合わない内容、過剰な性的表現暴力的場面、それらは確かに加筆修正の必要がある」

ヤーコプ「その場合もあくまで本来の物語を崩さない程度に、最小限に抑えるべきだ。だがお前の改変はどうだ?最小限と言えるか?」

ヴィルヘルム「……確かに僕の改変は元々の内容を大きく変化させたものもある。兄さんがそこに納得できないのも理解できるけど、だけどこれは必要な事なんだよ」

ヤーコプ「童話の登場人物に過剰な感情移入をし、可哀想だの不憫だのという個人的な感情で内容を書き換える事が…必要な事だと?」

ヴィルヘルム「…必要だよ。長い編集活動でずっと物語に関わっていたせいかな…僕は彼等を他人とは思えない、彼等の辛い運命を見過ごせない。兄さんはそうは思えないかい?」

ヤーコプ「思えないな。不憫だとは思うがそれまでだ、童話の登場人物はあくまで創作。現実ではない」

ヴィルヘルム「現実じゃないから、創作だからこそ不幸な運命のままなんて可哀想だと僕は思う。僕が書き換えることでヘンゼルとグレーテルが救われるならそうするべきだ、違うかい?」

ヴィルヘルム「少し筋書きを変えるだけで赤ずきんは氏なずに済む。ゴーテルは悲しまずに済む。辛い運命、悲惨な結末を書き換えられるならそうするべきだと僕は思う、それに何の問題があるというんだい?」

ヤーコプ「…呆れて物も言えんな。自分が可哀想だと感じたから助ける、不憫だと感じたから救う。作者という職権を乱用して思うがままの展開に書き換える?都合のいいように?」

ヤーコプ「お前は神にでもなったつもりかヴィルヘルム?」

955: 2016/10/17(月)00:42:32 ID:Iox
ヴィルヘルム「そんなつもりは無いよ、どうしてそんな言い方しかできないんだ兄さんは…!」バッ

ヴィルヘルム「目の前に苦しんでいる人が居たら手を差し伸べるのが普通だよ。僕がしていることはそんなにおかしいことかい!?」

ヤーコプ「ならば道中に見かけた孤児達に手を差し伸べてこい。物乞いをしてきた少年や花売りの娘、お前に全てを救えるというのならやってみろ」

ヴィルヘルム「全てなんて…出来るわけ無いじゃないか!そうやって飛躍した意見を述べて僕を黙らせようなんて…」

ヤーコプ「飛躍?捨てられたヘンゼル兄妹も家の無いこの街の孤児も同じようなものだ。むしろ生きて家に帰れる保証があるだけヘンゼル兄妹の方が幸福だろうが」

ヤーコプ「兄妹は不憫だが物語のなかでは氏なない。だがあの孤児は今こうして言い争いをしている間に命を落としていても不思議ではない。それとも何か、童話の登場人物は救いたいが現実世界の人間は知った事ではないのか?」

ヴィルヘルム「そうじゃなない。そうじゃない、でもそれは……」

ヤーコプ「元の赤ずきんのように若くして命を失った人間がこの世界にどれくらいいる?ゴーテルのように苦しみを味わった事の無い人間などいるのか?」

ヤーコプ「この現実の世界では…辛い境遇にある奴は神が救ってくれるのか?理不尽な氏を迎えた奴は神がその運命を塗り替えるのか?お前が登場人物達にしてやったように」

ヴィルヘルム「…いや、そんな事はないよ」

ヤーコプ「だろうな。そんな都合のいい話は存在しない。だがそういう事だ、ヴィルヘルム」

ヤーコプ「童話の登場人物の運命は俺達の目に見え、現実世界の人間の運命は俺達に見ることが出来ない。そこに違いがあるだけだ」

ヤーコプ「不幸だろうが幸福だろうがそれはそいつの運命だ、当人が足掻くのならばいざ知れず。他人が干渉できるものでも、していいものでもないだろう」

ヤーコプ「童話は子供達が読むものだ、全てを包み隠さずとは言わないが…現実の厳しさを伝えることも大切なことだと俺は思うがな」

ヴィルヘルム「……」



雪の女王「……」コソッ

956: 2016/10/17(月)00:45:39 ID:Iox
料理店 店内

カランコロンカラーン

雪の女王「……」スッ

アンデルセン「どうかしたか?二人の様子を見に行ったかと思えば、戻った途端に俯いて」

雪の女王「いや…ヤーコプがもっともな事を言っていてな。少し、考えさせられた」

アンデルセン「フフッ、君にそんな顔をさせるとは流石はヤーコプさんだな。聞こうか、彼は何を言っていたんだ?」

雪の女王「…現実世界の人間も、おとぎ話の世界の人間もその運命に可視性があるかどうかの違いがあるだけで本質的な事は変わらない。というような事をな」

アンデルセン「ヤーコプさんがそんなことを…確かに成り立ちや住む世界が違うだけで私達と君達の間に大きな違いなんか無い。どちらもそれぞれの世界で暮らす一人の人間だ」

雪の女王「…私は自分達おとぎ話の世界の住人をどこか特別視していたのかもしれない」

雪の女王「現実世界の作者が童話を産み出し、その筋書き通りの運命を持った人々が暮らす世界が生まれる。それがおとぎ話の世界」

雪の女王「辛い運命や結末を抱えている人物がいればそれは作者の責任。唯一書き換えが出来る作者にはそれを正す義務があると以前は考えていたが……それはやはり違う」

アンデルセン「……」

雪の女王「私達は特別な存在なんかじゃない、数ある世界に存在する多くの生き物の中のひとつに過ぎない。その運命が気に入らないからと他人を恨んだり書き直させるのは間違っている」

雪の女王「望んだ未来というのは誰かに頼るのではなく、自分達の手で手繰り寄せるものなのかもしれない」

雪の女王「作家のお前が子供達の幸せを祈って童話を書いたように、各々が自分に出来る事で未来を変えるべきなんだろうな」

957: 2016/10/17(月)00:52:53 ID:Iox
アンデルセン「私の耳を切り裂いた人の言葉とは思えないな、やはり君は変わったよ。丸くなった」クスクス

雪の女王「茶化さないで欲しい、私は真面目な話をだな…」

アンデルセン「そうは言っても、君達の運命は抗いようのないものだろう。結末を変えれば物語は消える、努力で変えられるものじゃない」

雪の女王「それを言われると困ってしまうが…」

アンデルセン「だが、おとぎ話の結末を変えられなくてもおとぎ話の世界の未来は変えられる」

雪の女王「……どういう事だ?」

アンデルセン「例え話だが…【マッチ売りの少女】の世界ではマッチ売りは氏んでしまう結末だ。その運命は変えられない」

アンデルセン「だが…彼女が亡くなったその先の未来は変えられるだろう。私が書いたのは彼女が天に召されるまでだ、その後の世界がどうなるかまでは書いていない。つまり良くもなるし悪くもなる」

アンデルセン「そのままならばおそらく、彼女の氏後も世間は何も変わらない、同じことが繰り返されるだろう。だが彼女が望み、誰かの心を動かせたのならば…自分は氏んでもその後の世界を少しでも良いものに出来るかもしれない」

雪の女王「そうか…その世界に存在しているのは物語を動かす登場人物だけじゃない。物語には直接関わらない人物も大勢いるのだからな」

アンデルセン「彼女と関わる事で心を動かされた人物が現れる可能性もある。もしかしたら彼女の優しい想いを引き継ぐ者がいるかもしれない」

雪の女王「物語が結末を迎えた後も世界は存在し続ける訳だからな…そういう考えもあるのか」

アンデルセン「…だがこれは仮説に過ぎない、それも相当都合のいい仮説だ。そもそもあの世界の人間は他人に興味がない人間がほとんどだからな。言ってしまえばこれは単なる希望的観測だ」

雪の女王「いいや…そうだとしても素敵な考えだ。少なくとも私はそうであると信じたい。運命には抗えなくても変えられる何かが私たちにもあるということを信じたい」

アンデルセン「…信じても良いんじゃないか?君達はおとぎ話の登場人物である前に一人の人間なんだ」

アンデルセン「現実世界の私達に出来て君達には出来ないなんて道理は無い。誰だろうと未来を変える力を持っているものだ」

958: 2016/10/17(月)00:56:02 ID:Iox

アンデルセン「というか、君はこうして現実世界に滞在して私の考えを含む様々なことを知り、そして経験しているんだ」

アンデルセン「自分の未来をより良いものに変える位の事はして貰わなければ困る。そうでなければ私は話し損、殺されかけ損だ」クスクス

雪の女王「あいにくだが【雪の女王】が結末を迎えても、私は倒されたり何かを失ったりする訳じゃない。より良い未来に…と言ってもそもそも特に不幸になるという訳でも無い、それはお前も知っているだろう」

アンデルセン「そうか?君の性格だとさらってきたカイを相当可愛がる事になると思うぞ。君は子供好きだからな、辟易されるほど撫でたりするに決まっている」フフッ

雪の女王「それは…確かにそうかもしれないが…」

アンデルセン「一緒に住んでいた少年がある日突然居なくなる。淋しい食卓。君が咳をしても心配する人は居ない。君は広い広い宮殿にただ一人で住み続ける事になる。あぁ、それはとても寂しいだろうな」

雪の女王「や、やめてくれ。想像しただけで気が滅入りそうだ」

アンデルセン「だがなにもしなければきっとそうなるぞ?カイとずっと宮殿で暮らすことは出来ないが…君が寂しさを感じず暮らせる方法は必ずある」

アンデルセン「元の世界へ戻ったらなんとかその方法を探しだす事だ。街に降りてそこの人々と生活してもいい、別の世界に移り住んでみるのもありだ。他には、そうだな……」

雪の女王「君はつくづくおかしな奴だ。お前にとって私は数ある作品の登場人物の一人に過ぎない。物語が完結した後の事まで考えなくてもいいだろうに」

アンデルセン「何もおかしい事なんてないさ、私は君を産み出した作者なんだ」

雪の女王「それが…何か関係あるのか?」

アンデルセン「大いにあるとも。君も知っての通り作者と一言で言っても様々な人間がいる」

959: 2016/10/17(月)01:00:09 ID:Iox
アンデルセン「童話の歴史や存在事態を大切にする作家。童話の登場人物を大切にする作家。従来の在り方にとらわれず楽しさを追求する作家、の見習い」

アンデルセン「そして私のような童話作家もな。他にも上げればキリがない程だ。だがどんな作家にも共通することがある。何か解るかい?」

雪の女王「…いいや、何なんだ?」

アンデルセン「私の持論だが…童話作家は例外なくおとぎ話という作品に魅了されている。そして、自分の作品や登場人物を愛している」

アンデルセン「ヤーコプさんだってああ言っていたけれど童話の登場人物を嫌っている訳じゃないんだ。ヴィルヘルムさんとは方向性いが違うだけで童話を大切にしている」

雪の女王「自分の作品を、愛している…か」

アンデルセン「あぁ。私達はとにかく童話が大好きでおとぎ話を書きたくて書きたくて仕方がない。そうして生まれた童話を作家は我が子のように愛するのさ、その物語だけじゃなく登場人物さえも。童話作家というのはそういうものさ」

アンデルセン「私も自分の作品全てを愛している。当然【雪の女王】もカイもゲルダも、そして女王…君の事もだ」

雪の女王「……」

アンデルセン「それに私は君を良き助手であり友人だとも思っている。友人の幸せを願うのは当然だろう?」

雪の女王「…友人、か。大作家先生にそう思って貰えるとは光栄な限りだよ」フフッ

アンデルセン「フフッ、君こそ茶化さないでくれ、私は真面目な話をしているんだぞ?」フフッ

アンデルセン「今の生活は私も気に入っている。だが君もいずれは自分の世界に帰らなければいけない。いつまでもこの世界にいることは…出来ないのだから」

アンデルセン「ならば…せめて君が元の世界へ帰った後の事を案じるくらいはさせてくれ。私に出来るのはそれくらいだ」

960: 2016/10/17(月)01:04:22 ID:Iox
雪の女王「……今は問題無いが私がずっと帰らなければ【雪の女王】の世界が消滅してしまうからな」

アンデルセン「……あぁ、私としてはおとぎ話が消えてしまうのは作者として、困る」

雪の女王「……」

アンデルセン「……」

雪の女王(……途端に暗い雰囲気になってしまった)

雪の女王(私だって気がついていなかった訳じゃない。私は本来、ここに居るべき存在ではない。アンデルセンが童話に込めた想いを知った今、もうここにいる理由はなくなっているんだ)

雪の女王(だが…私の正直な気持ちを言うのなら……)

雪の女王(いいや、それは…ワガママだ。それを通すことは決してしてはいけない、それはアンデルセンが産み出した童話を消してしまうことになるからだ)

雪の女王(とはいえ…避けたい話題ではあった。あぁ、沈黙が辛い。ヤーコプとヴィルヘルムはまだ戻って来ないのか?この沈黙が続くくらいなら険悪な二人と食事をする方がずっとマシだ)

二人「……」

雪の女王(駄目だ。間がもたない、ひとまず二人の様子を見てくるとか理由つけてこの場を離れて…)

チャールズ「ちょっとちょっとー!何でこんなお葬式ムードなんですかー!俺、せっかく来たってのにこの空気で飯食うの嫌ですよ!?」

チャールズ「アレなら幼女の話します?場がパッと明るくなることうけあいですよ!」ヘラヘラ

961: 2016/10/17(月)01:06:39 ID:Iox

アンデルセン「チャールズ、アルバイト先に向かったんじゃあなかったのか?ずいぶん早いな」

チャールズ「いやー、そうだったんですけど。奥さん倒れちゃったでしょ?そんな状態で店開けてても店長が奥さん心配してソワソワソッワソッワしててもー…仕事にならないから閉めましょって言ってやりましたよー」アハハ

チャールズ「で、皆さんに合流しようとフラフラ探してたんですけどグリム両先生が店先で口喧嘩してたんですぐにわかりましたよー!」

アンデルセン「そうか、まぁ彼等もじきに和解して戻ってくるさ。君も何か注文するといい、空腹だろう?」

チャールズ「ペッコペコですよー、何にしようかな…あっ、すんません店員さん!あの幼女が食べてるのと同じ奴ください!」キリッ

アンデルセン「…注文まで幼女に影響されることはないんじゃないか?」

チャールズ「いやいやー、見てくださいあの笑顔。あの料理絶対うまいですよ。俺は断然、幼女のチョイスを信用します」

雪の女王(こいつは相変わらずアレだがとにかく助かった…これでなんとか場の空気が明るくなる。チャールズに感謝だな)

チャールズ「ところでお二人はなんであんなに暗かったんですか?何の話してたんです?教えてくださいよ俺にも、なんか気になるんで!」ヘラヘラ

雪の女王(折角雰囲気良くなったのにこいつ…察しろ口リコンめ!)キッ

チャールズ「えぇっ!?先輩なんか怒ってません!?なんで睨むんですか!?」

アンデルセン「対したことは話していないよ、チャールズ。ただ…彼女もそろそろ私の助手を辞めなければならない時が近くてね、その話をしていたんだ」

962: 2016/10/17(月)01:11:27 ID:Iox
チャールズ「えぇ!?なんでですか!?やめちゃうんですか先輩!」ガタッ

雪の女王「あぁ、そうだ。なぁ、チャールズ…悪いがこの話はあまりしたくないのだが…」

チャールズ「駄目ですよー!俺は学校もあるから弟子やめなきゃですけど先輩はそうじゃないでしょー?俺、反対ですよ!」

雪の女王「そうは言うが私にも事情があってだな…」

チャールズ「先輩がやめちゃったら誰が先生の助手するんですか!?」

アンデルセン「その時は新しい助手を雇うしか…ないだろうな。今の仕事量を一人でというのは厳しい」

雪の女王「こいつは有名作家だ、私の後釜なんかすぐにでも見つかるさ。君が心配することじゃn」

チャール「見つかったとしても続くわけないじゃないですか!普通の人に助手が勤まるほど先生はマトモな性格じゃあ無いんですよ!?」

アンデルセン「チャールズ、落ち着け。それとさりげなく私を悪く言うのはやめろ」

チャールズ「マトモじゃない先生の助手は先輩じゃないと務まりませんって!だから助手やめちゃ嫌ですよー!」

雪の女王「引き留めてくれるのは嬉しいが…」

チャールズ「俺は何の事情があるのか知らないですけど、でも先輩だってやめたくないでしょ!?」

963: 2016/10/17(月)01:18:50 ID:Iox
雪の女王「私か?私は…」

アンデルセン「……」

雪の女王(私は助手を辞めたくない。だが、そんなワガママを通してはカイやゲルダはどうなる?これは私一人の問題じゃない)

雪の女王「私は、私は自分の意思で助手を辞めようと…」

アンデルセン「…女王。私に何か遠慮しているのなら、その必要はない」

チャールズ「ん?女王?先生、それってd」

アンデルセン「君の正直な想いを聞かせてくれ。それが結果として【雪の女王】の存続に関わるのなら…共にどうすることが最善か考えよう」

雪の女王「……」

アンデルセン「君に幸せになって欲しいというのは出任せなんかじゃないんだ。聞かせてくれ、君は…どうしたい?」

雪の女王「私は、私は…続けていたい。童話作家アンデルセンの助手を」

雪の女王「お前がこの先書いていくであろう童話を、お前の側で読みたい。お前の願いが世界を変えていくところを見届けたい」

雪の女王「いいや、それも言い訳に過ぎない。あれこれ理由を言ったとこで結局のところ…」



雪の女王「アナスン、私はお前という人間が好きなのだと思う。ただ、それだけだ」

977: 2016/10/24(月)00:56:45 ID:n90
雪の女王「まったく不思議なものだ。私はかつてお前の事を心底憎み、お前を頃す為にこの街に来たというのに」

雪の女王「お頃すどころかまさか好意を持ってしまうことになるとは…どうやら私は随分とチョロイ女だったようだな、我ながら情けないよ」フフッ

アンデルセン「情けなく思う必要などないさ、それだけ私に人間的魅力があるという事だろう?」フフッ

雪の女王「フフッ、まぁそういう事にしておいてやろう。まぁ、とにかく…」

雪の女王「自分の運命だとか責任だとか、そういうものを考慮せずに私自身がただやりたいと思うこと…それはお前の助手を続けること。それが私の本音だ、アナスン」

アンデルセン「君の気持ちは判った。君がそうしたいと願うのならば助手を続けるといい、私としても君が側にいてくれるのならばそれは喜ばしい事だ」

アンデルセン「それによって生じる問題をどうすべきか…それはまた追って話し合うとして、だ。今、ここで一つだけ認識を共有したい事がある」

雪の女王「認識を共有…何の事だ?」

アンデルセン「君が私を敬愛してくれるのは嬉しい、共に過ごしたいと思ってくれたこともだ。だが住む世界が違う君と私がいつまでも共に暮らすということは不可能。この意味は…わかっているだろう?」

雪の女王(わかっている。私は童話世界の人間、アナスンは現実世界の人間。元々、異なる時間の流れの中にいるのだ)

雪の女王(どんなに著名で優れた作家だろうとアナスンはただの人間、いずれ氏という形で別れが訪れる。対する私は寿命で氏ぬことはない。その代わり永遠の悲しみを背負うことになるのだ、敬愛する友を失った悲しみを)

雪の女王(【雪の女王】が結末を迎えた後も、寒く冷たい世界でただ一人、消えることのない世界で永遠に…だ)

アンデルセン「それでも君は…」

雪の女王「愚問だな、アナスン。氏なない人間はいないし、残された人間が全ての悲しみから逃れる方法もきっと無い」

雪の女王「それでも私は君の助手であることを選ぶ。そうすることが今の私にとって一番の幸福なんだ」

978: 2016/10/24(月)00:58:33 ID:n90
雪の女王「例え運命や結末が決まっていても変えられる何かがある、そう言ったのはお前だぞアナスン」

雪の女王「私はより幸せになるためにお前の助手を続けるんだ、いつか訪れるだろう悲しみなんか今は知ったことじゃないのさ」フフッ

アンデルセン「…私としたことが余計な心配をしてしまったようだ。そもそも君は悲しみに押し潰されるようなか弱い女性では無かったな、強い力も神経の図太さも持っている」クスクス

雪の女王「そうだな、私は神経の図太い女だ。そして侮辱されて黙っているような性格じゃあ無いぞ?望むなら君の書斎を少し涼しくしてやっても構わないんだが」フフッ

アンデルセン「フフッ、君には逆らわない方が良さそうだ。以前、君に破壊された窓や書斎の床板の修繕は思いの外費用がかかったしな」

アンデルセン「ともあれ、改めて歓迎するよ女王。これからも私のパートナーとして力を貸してくれ」スッ

雪の女王「あぁ、いいだろう。こちらこそ宜しく頼むよ、アナスン」スッ

チャールズ「……うんうん!なんかよくわかんないけど一件落着ですね、先輩が助手続けてくれるなら俺も安心してイギリスに帰れますよー。先生を一人にはできませんからねー」

アンデルセン「君が私をどう評価しているのか、改めて聞く必要がありそうだな…」

雪の女王「君には礼を言わないとな、君が言い出さなければ私はきっと本音を吐けなかった」

チャールズ「やだなー!礼言われることしてませんって!俺自身、先輩には助手続けてて欲しいって気持ちありましたしー。あぁ、でも気になること一つ聞きたいんですけどー」アハハ

チャールズ「なんで先輩、女王って呼ばれてるんです?あだ名ですよね?」ヘラヘラ

979: 2016/10/24(月)01:00:50 ID:n90
雪の女王「あぁ…それはだな…」

雪の女王(どうする…?思わず流していたが、聞かれてしまった以上チャールズにおとぎ話の世界について話すか…?)

雪の女王(いや、やめておいた方がいいだろう。チャールズは信用できるが…だとしてもおとぎ話の世界の事は他言するような事じゃない。だが、それならなんと言い訳をすればいいか…)

チャールズ「あー、なんかすんません、もしかしなくても言いにくい事なんですよね?」

雪の女王「いや、あのだなチャールズ…」

チャールズ「いや、言いにくいことなら大丈夫です!きっとあれなんですよね、先輩が態度デカ過ぎて付けられた蔑称でしょ?先輩、先生に対しても敬語とか使わないからそのせいで付けられた不名誉な…痛ったい!」ドスッ

雪の女王「私の呼び名を不名誉のように言うのはやめろ。そもそもお前の雑な敬語も似たようなものだろう」

チャールズ「えぇー…じゃあなんでなんですか?まさかガチな王族ってわけでも無いでしょ?はっ!まさか性的な…いやいやいや嘘ですすんません拳振り上げるのやめえましょ!ねっ!ラブアンドピース!」

アンデルセン「彼女が女王と呼ばれる理由、私が教えようか。チャールズ、実はな…まさに君の想像通りなんだ」

チャールズ「えーっ!そうなんですか!?じゃあやっぱり性的な…」

アンデルセン「違う、そっちじゃない。私まで睨まれるからその説はもう口に出すんじゃない」

チャールズ「っていう事はまさかガチの女王なんですか…?」

アンデルセン「あぁ、彼女は正真正銘…本物の女王なのさ」

980: 2016/10/24(月)01:04:02 ID:n90
雪の女王「おいアナスン、その事は…」ヒソヒソ

アンデルセン「大丈夫だ、まぁ見ているといい」ヒソヒソ

チャールズ「えええぇーっ!マジなんですか!?先輩、リアルクイーンなんすか!?」ガビーン

アンデルセン「チャールズ、声が大きい。これは当然ながら公に出来ない話題だ」

チャールズ「ですよね!俺、こう見えて口固いんで大丈夫ですよ!幼女に聞かれない限りは!」

雪の女王「待て待て、幼女に聞かれたら言ってしまうのか?」

チャールズ「幼女に隠し事しろって言うんですか!?当然言いますよ!」

雪の女王「こいつは…」

アンデルセン「チャールズ。当然、幼女にも内緒だ」

チャールズ「おぉ…先生のこの雰囲気、どうやらガチみたいですね。わかりました、幼女にも内緒ですね!」

アンデルセン「ならば話そう。実はだな……彼女は某国の女王なのだが、王族という立場に嫌気がさしてしまい、黙って国を後にし…そしてこの街にいるんだ」

チャールズ「なるほど…王族って偉いしリッチだし自由そうだけど色々大変そうですもんね、しきたりとか世間体とかー。それが嫌で逃げ出したんですね?」

アンデルセン「あぁ、そんなところだ。で、だな…色々あって私は彼女を匿っているんだ。そして私の助手という形で民衆に紛れている。だが当然、この事が彼女の母国に知られれば最悪戦争だ。攻めいられれば私はもちろんこのデンマークの存続すら保証出来ない」

アンデルセン「本来ならば国へ戻るべきだろうが…だが彼女はここに残ると決めた。私は彼女の意思を尊重したい、故に彼女が女王であることは内密にして欲しい」

雪の女王(まぁ誤魔化す必要があるとはいえこうもスラスラと嘘を…流石は作家、創作は得意か。いいや、そんな言い方は他の作家に失礼だな)

981: 2016/10/24(月)01:06:14 ID:n90
アンデルセン「という事なのだが…納得できたかいチャールズ?」

チャールズ「わっかりました!任せてください!俺、誰にも言いませんから!安心してくださいね、先輩!」

雪の女王「あ、あぁ。助かる…」

雪の女王(真実を打ち明けるわけにはいかないとしても、騙しているようで気が引けるな…)

チャールズ「いやー…まさか先輩にそんな秘密があったとは…確かにどことなくロイヤル感ありますもんね先輩!」アハハ

雪の女王「そうか?そんな事は初めて言われたが」

チャールズ「いやいやー、ありますよ気品とかそういうの!まっ、王族だろうと一般人だろうと俺にとっては頼れる先輩だって事に変わりないですよ!頼れるしスタイルいいしで自慢の先輩なんですからー」アハハ

雪の女王「フフッ、君は侮辱したり持ち上げたり忙しい奴だな」クスクス

チャールズ「あははっ、細かい事は気にしない方向でいきましょう!あっ、先輩飲み物空じゃないですかー。俺、新しいもの貰ってきますよ!同じのでいいですか?」

雪の女王「あぁ、悪いが頼もうかな」

チャールズ「了解です!他にもご用が御座いましたら何なりとおもーしつけください、女王サマー。なんつってー」アハハ

982: 2016/10/24(月)01:10:55 ID:n90
雪の女王「どうやら、うまく誤魔化せたようだな…」

アンデルセン「あぁ、彼に真実を伝える訳にはいかないからな」

雪の女王「だが、少々悪いことをした気にもなるな。彼は私たちを信じてくれているのに騙すような真似をしてしまった」

アンデルセン「疑わずに信じてくれたからな…確かに罪悪感はある。だがそれでも、彼にはおとぎ話の世界の存在を伝えるべきではない。少なくとも今はまだ」

アンデルセン「彼はまだ若く作家としての経験も浅い。まだまだこれから延びていく才能ある若者だ。下手におとぎ話の世界の存在を教えてしまえば…彼の芽を摘むことにもなりかねない」

雪の女王「確かにな…」

アンデルセン「優しい青年だからな、自分の握るペンが実際に誰かの運命を描いていると知ってしまえば彼は自由に物語を書けなくなるかもしれない」

雪の女王「奔放に見えてそういう気は使う奴だからな…そう考えると言わないで正解だったのかもしれないな」

アンデルセン「あぁ、一度知ってしまえば知らなかった頃には戻れない。いずれ、彼がおとぎ話の世界の存在を知ってしまうとしても…今はまだ早い」

アンデルセン「彼に嘘をついたことを咎められようと、私は彼の師として…真実を伝えることはしない。それが彼のためだと思うからだ」

雪の女王「フフッ、弟子を案じた師匠らしい配慮だな。お前にしては珍しい」

アンデルセン「珍しいは余計だ。さて…チャールズも来たことだしそろそろグリム両先生を呼んでこようか、いい加減に喧嘩の熱も覚めただろう」

雪の女王「そうだな、私が呼んで来よう。折角の食事会、喧嘩などしていては勿体無い」ガタッ

アンデルセン「そうだな。先生方に話を聞かせてもらうことはチャールズにとってもよい経験になる。そういった場はなるべく多く設けてやりたいな」

アンデルセン「そうして得たものがいずれ彼の中で形を持ち、産み出されたおとぎ話が多くの人達を笑顔にできる事を私は切に願うよ」

・・・

983: 2016/10/24(月)01:18:31 ID:n90
現在
雪の女王の世界 女王の書庫

・・・

雪の女王「それからしばらくしてグリム兄弟は故郷へと帰ったが、滞在中にチャールズは兄弟から多くの知識と鉄拳を受け取ったようだ」

雪の女王「それからも彼は修行として様々な経験を積んだようだった。それから数ヶ月経って、チャールズは弟子としての期間を終えてイギリスへと帰っていったよ」

雪の女王「これがアナスン唯一の弟子、チャールズについてだ。この時アナスンは彼におとぎ話の世界の存在を教えることをよしとしなかったが…私の知らないところで教えていたのかもしれないからおとぎ話の世界の存続を知っていたかどうかは、なんとも言えないな」

キモオタ「なるほどwwwしっかし百年以上前のデンマークにそこまで拗らせた口リコンがいたとはwww驚きですぞwww」

ティンカーベル「ちなみにそのチャールズは童話作家になれたの?」

雪の女王「どうだろうな…以前お千代の住まい探しに現実世界へ渡ったとき少し聞いて廻ったが少なくともチャールズという童話作家は居ないようだった」

キモオタ「才能があってもそうそう作家にはなれないのかも知れませんな…いやはや、世知辛いですな」

雪の女王「ペンネームで本を出している可能性もあるからなんとも言えないが、な」

ティンカーベル「あのさ、流れとか無視して言っちゃうけど」

キモオタ「なんでござるかwww」

ティンカーベル「ぶっちゃけ私はチャールズの事より女王とアンデルセンの恋の行方が気になる!大人の恋!憧れちゃうよねー!さぁ聞かせて貰うからねー!」ワクワク

キモオタ「出た出たwwwティンカーベル殿の持病が発症しましたぞwwwというかそんなことをしている場合ではwww」

雪の女王「悪いが君が期待するような話は出来ないぞ?結局、アナスンの氏によって私達は別れを余儀なくされたのだし」

ティンカーベル「それでもいいから聞かせて!恋愛話っていうのは結末とかわりとどーでもいいの!その経過にドキドキきゅんきゅんするもんなの!」クワッ

雪の女王「そ、そうか…君も随分と拗らせているようだが、聞いて満足するなら話してあげようか…」ヒキヒキ

ティンカーベル「よっし!聞かせて聞かせて!くぅー、ワクワクするうー!」

キモオタ「ちょwww毎度毎度お主は話を脱線させ過ぎですぞwwwまぁ聞きたいことは大方聞かせて貰った故に別にいいでござるけど」

タシッ

984: 2016/10/24(月)01:38:55 ID:n90
キモオタ「ん…?」

タシッ

ティンカーベル「キモオタ?どーかしたの?一緒に女王の恋バナ聞こうよ!」

キモオタ「お主リラックスしすぎですぞwwwというか、何か物音が聞こえたような…まぁ気のせいでござろう。というかお主明日は作戦決行なのに夜更かしは感心しませんぞwww」



???「鈍感な豚だと思ったがなかなか鋭い一面もあるようだな。わざと聞こえるようにしていたとはいえ、私の足音に反応するとは…誉めてやるぞ豚、いいやキモオタよ」

???「などと言ったところで私の声は届かないがな。姿を見せる事も見せない事も、声を聞かせることも聞かせないことも私の裁量ひとつだ。霊体だったあの頃のようにな」

???「だがあいつが…チャールズが私の『器』としてこしらえたこの体は実に使い勝手がいい、猫の姿などふざけていると最初は思ったものだが」

チェシャ猫「神出鬼没、完全に姿を消すことが可能なこのチェシャ猫という名の器はこの手のスパイ活動にはもってこいだ。こうしてコイツらのすぐ側にいても気付かれる事はない」

チェシャ猫「例え相手が屈指の魔力を誇る雪の女王だとしても、私の存在を関知することは出来ない」

チェシャ猫「さて、もうここに用事はない。しかし、見れば見るほど愚かな連中だなにも知らずに雑談に花を咲かせているとはな」

チェシャ猫「明日決行されるアシェンプテルの奪還作戦、それがこちらにもれているとも知らずに」

チェシャ猫「さて、私も早々に帰還して支度をしなければな」

チェシャ猫「フフフ…さぁもうじきだ。もうじきチャールズの無念を晴らせる、私の屈辱を拭える…私とアリスの願いがようやく成就する!」

チェシャ猫「ようやく、ようやく!愚かな人間共を、くだらない世界を全て消し去ることができるのだ…!」

985: 2016/10/24(月)01:46:41 ID:n90
『作者』編 おしまい

長くなってしまったけど付き合ってくれたみんなありがとう
次スレでは遂にあの世界へ…!

次回
不思議の国のアリス編 お楽しみに!
スレが埋まったら新スレ立てるのでチェック頼みますー



引用元: キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」九冊目