302: 2008/04/15(火) 02:17:30.62 ID:zxVtO5bB0

キョン「始めようっ…! 女王様ゲームっっ……!!」

309: 2008/04/15(火) 02:26:48.90 ID:zxVtO5bB0
ハルヒ「覚悟を決めたようね、他のみんなもいいわね!」

みくる「ひゃ、ひゃあい!」

長門「……」コク

キョン(くそっ、エラいゲームに巻き込まれてしまった……)


女王様ゲームは偶数の人数で行うゲームです、足りないキャラ二人をこの中からセレクトしてください。>>310>>313
古泉一樹 朝倉涼子 キョン妹 谷口 国木田
涼宮ハルヒの憂鬱 「涼宮ハルヒ」シリーズ (角川スニーカー文庫)
310: 2008/04/15(火) 02:27:42.11 ID:QxqNgXgX0
>>306
キョン⇒長門
長門⇒古泉
朝倉不明

313: 2008/04/15(火) 02:33:07.99 ID:83YgYFLu0
鶴屋さん

315: 2008/04/15(火) 02:35:55.86 ID:zxVtO5bB0
>>313
貴様っ……! 裏技を使ったなっ……!
というのは嘘で、鶴屋を入れ忘れていた。それでおk

もう一人再安価>>318

318: 2008/04/15(火) 02:37:45.18 ID:ILtppi3U0
国木田

321: 2008/04/15(火) 02:40:12.60 ID:zxVtO5bB0
役者はそろった。
では>>313鶴屋、>>318国木田を加えた6人でゲームだ。

さっきみたいにタッグ戦が面白いと思うので
視点キャラ>>325 相方キャラ>>328

323: 2008/04/15(火) 02:41:28.72 ID:zxVtO5bB0
キョン「……お前の言われたとおり割り箸はそろえた、そろそろ女王様ゲームとやらのルールを説明してくれ。」

ハルヒ「いいわ、よく聞きなさい。このゲームの特徴は、完全に男女の役割が分かれていることよ。」

みくる「えっ、誰かが誰かに命令を出すのではないんですか?」

ハルヒ「……」ジロ

長門「話は最後まで聞くべき。」

みくる「す、すいません。」

ハルヒ「オホン! それで、全員が……ただし男女は別々ね。割り箸を引くんだけど、女子側の割り箸には一つだけ女王様になる権利のある当たりの箸があるわ。ゲームの名前の通り選ばれた女子は女王様になる。」

キョン「なるほどな、男子は?」

ハルヒ「ふふっ、分からないわ。」

みくる「えっ?」

333: 2008/04/15(火) 02:47:37.35 ID:zxVtO5bB0
ハルヒ「男子側には奴隷・平民・騎士・王の4種類があるわ、この階級に応じた命令を女王様は下せるってわけ。」

キョン「男子側って、俺一人しかいないじゃないか。」

ハルヒ「ああ、それなら心配ないわ。そろそろ……」
ガラガラ
鶴屋「いやっほう、みんな元気かい? あたしも参加させてもらうにょろ!」

みくる「鶴屋さん!」

鶴屋「へへ、もう一人いるんだよ。とびっきりのかわいいのが!」

「きょ、キョン……」

キョン「く、国木田!」

338: 2008/04/15(火) 02:53:45.89 ID:zxVtO5bB0
国木田「ここどこだ? なんで僕連れてこられたんだよ……」

みくる「それ、私のセリ……」

ハルヒ「これで男子も二人、キョンにも味方ができたってわけよ。感謝しなさい!」

キョン「連れてきたのは鶴屋さんだろ。」

国木田「うぅ……いったいなにをするんだよ。」

みくる「あの……男の子は二人でも階級は4つあります、これはどういう……」

ハルヒ「そう、男子側は4つのうち2つしかいないわけ。」

キョン「ふーむ……」

343: 2008/04/15(火) 03:05:10.63 ID:zxVtO5bB0
長門(涼宮ハルヒの提案した女王様ゲームの概略はこう……
男子側の4つのうち二人が一本ずつ引きその指定された階級になり、女子側で一本だけある当たりを引いた女王の命令を聞く。女王は階級をコールし、男子を呼び出す。
ただし、二人ともその階級でなかった、つまり該当する階級が存在しなかった場合には女王がその場で責任をとって男子側の言うことを聞くこととなる。その際に命令できる男子は、階級の高いほう。以上が基本的な流れ……)

キョン「ハルヒ、男子側の階級というのが命令に影響するというのは?」

ハルヒ「そこが一番のポイントよ! 一番高い王は女王と同格だから、席を立って体を動かすことの命令はできないわ。例えばその場で歌を歌わせるとかすればいいわけ。」

長門(命令できる分、女王の方が王より高い気がする……)

346: 2008/04/15(火) 03:09:58.14 ID:zxVtO5bB0
鶴屋「なるほどっ、身分の低い男子になるほどそういう制限がなくなっていくんだね!」

ハルヒ「察しがいいわね、次に身分の高い騎士は女王に仕える身。席を立たせることはできるけど、膝をついたり顔を地面に突っ伏すことはできない。」

キョン「ようするに土下座みたいなのはダメか。」

ハルヒ「そういうこと。」

長門「騎士でも普通に膝はつくはず……」ボソッ

348: 2008/04/15(火) 03:13:42.21 ID:zxVtO5bB0
みくる「次は平民ですか?」

ハルヒ「そう、基本的に命令は聞かなければならない。ただし、あまりにひどい仕打ちはダメね。」

キョン「あまりにひどい仕打ち。」

ハルヒ「悪口を言ったり、暴力を振るったり。」

キョン「なるほどな。」

ハルヒ「よろしい、みんなこれで分かったかしら?」

国木田「す、涼宮さん。ちょっと待ってくれ!」

349: 2008/04/15(火) 03:17:43.60 ID:zxVtO5bB0
ハルヒ「あら、なにかしら。」

国木田「まだ一つ残ってるじゃないか、その……階級。」

鶴屋「えっと、あと一つって……?」

長門「……奴隷。」

全員(-ハルヒ)「!!」

ハルヒ「ふっふっふ……」

キョン「なんでもいい平民のさらに下、奴隷があるってことは……まさか!」

ハルヒ「そうよ! 罵倒されようとぶっ叩かれようと辛抱しなければならないのよーっ!」

な、なんだってーーー!!

354: 2008/04/15(火) 03:24:52.09 ID:zxVtO5bB0
長門(つまり、奴隷を引き当てなおかつ指名された場合はどんな屈辱にも耐えなければならないということ。
つけくわえると、女王と印のついていない箸には数字が書いてある。女王に選ばれなかった女子は女王の手下として番号がついており命令を聞く。
この手下は、女王がコールに失敗した場合に男子側の命令をこなす役目も果たす。)

ハルヒ「さぁて、そこのキョンの友達はいい加減理解できたかしら?」

国木田「こ、こんなのってないよ……」

長門「……」チョンチョン

キョン「ん、長門?」

357: 2008/04/15(火) 03:30:44.82 ID:zxVtO5bB0
長門「しっ。」

キョン(ないしょ話か、なんだ?)

長門(彼はどうみてもこの環境にそぐわない。)

キョン(彼……国木田か。たしかにな、純情なあいつにこのゲームはきつい。が、ハルヒはかえってそれを楽しみそうだな。)

長門(彼は何度かハルヒに食ってかかっている。追い込まれればなにをするか分からない。我々で穏便に運び、彼をサポートすべき。)

キョン(……俺へのサポートはないのか?)

長門(その必要はないと判断した。)

キョン(ぎゃふん。)

366: 2008/04/15(火) 03:40:32.75 ID:zxVtO5bB0
鶴屋「まぁまぁ国木田くん、お姉さんたちそんなにひどいことはしないっさね!」

国木田「そうしてくれると助かります、あははは……」

みくる「え、えっと……楽しみましょうね。」

キョン(あの二人も大丈夫そうだな。)

長門(問題は、涼宮ハルヒ……やはり彼女。)

キョン(ふぅ、こういうゲームに空気嫁な谷口がいなくてよかったぜ。ところで古泉は?)

長門(このゲームと涼宮ハルヒの情緒の不安定性を危惧し、閉鎖空間の発生に備えている。)

キョン(あいつがいないのは、そういうわけだったのか。)

ハルヒ「はいはい、もういいでしょう。そろそろ始めるわよ、お待ちかね女王様ゲーム!」

キョン(誰も待ってねーよ。)

鶴屋(女王様……か。)

368: 2008/04/15(火) 03:51:50.31 ID:zxVtO5bB0
ここから長門視点。

机の上に並べられる男子用四本と女子用の四本の割り箸。

キョン(国木田が奴隷を引き当て、なおかつ指名される。そして女王がハルヒならばBAD END決定だな、だが考えてみればそれはあまりにも低い確率のように思えるが……)

油断は禁物、単純に計算しても確率は64分の1。ありえない数字じゃない……

ハルヒ「はぁい女子のみんな、こっちの割り箸を選んでねー!」

みくる「はいぃ。」

鶴屋「どれが女王様かなぁ?」

うかつ、はなから機を逃した……!

ハルヒ「私はこれね。さっ、有希。あなたのはこれよ!」

……いけない、涼宮ハルヒが女王に選ばれては。
私の箸には『3』と書いてある、女王は私ではない誰か。

キョン(長門、おちつけ。)

372: 2008/04/15(火) 03:55:06.69 ID:zxVtO5bB0
キョン(要は、国木田に奴隷を引かせなければいいんだ。)

……

キョン(俺が奴隷と書かれた箸をがめてしまえばいい。)

……あなたは。

キョン(俺らしくないか? まあ、長門にはいつも世話になってるしな。)

……ありがとう。

国木田「キョン、僕は引いたよ。君も取りなよ。」

373: 2008/04/15(火) 03:58:46.14 ID:zxVtO5bB0
キョン「ばっ、お前なにさっさと取ってんだ!」

国木田「えっ?」

キョン「あっ、いや……」

……失敗。

ハルヒ「そこ、なにごちゃごちゃ言ってるの。」

キョン「なんでもない、ただの妄言だ!」

ハルヒ「……キョン、あんた大丈夫?」

キョン(すまん、長門……)

まだ、決まったわけではない……決まったわけでは……

374: 2008/04/15(火) 04:04:52.61 ID:zxVtO5bB0
キョン(俺の箸に書かれていたのは『騎士』だ、膝と顔はつかなくて済むやつか……)

あなたではない。ということは、奴隷は……

キョン(ま、まさか……)

私は国木田の方を見るが、いまひとつ表情だけではなにを引いたのか判断できない。

ハルヒ「そっちは引いた?」

涼宮ハルヒが前に出る。

キョン「お、おう。」

ハルヒ「それじゃまず、女王様は誰かなーっ!」

私ではない……誰、誰なの。

鶴屋「うーん……?」

みくる「ええと……」

ハルヒ「じゃーん! 最初の女王様は、このあたしよーっ!」

キョン(さ……)

最悪の事態……!

375: 2008/04/15(火) 04:11:43.23 ID:zxVtO5bB0
キョン「いきなりお前か、悪運の強いやつだ。」

ハルヒ「そういうキョンはどうだったのかしら、いきなり奴隷?」

キョン「さ、さあな。」

ハルヒ「ふーん……とぼけるの?」

……彼は演技している?

キョン(ひとまずハルヒのターゲットになったのは俺、国木田は眼中にない。ならば俺の階級を当てることに専念させ、『奴隷!』と言わせなければいい。幸い俺は騎士、当たったところで痛くはないさ。)

……でも彼女があなたを奴隷と予想し、彼・国木田が奴隷だったら?

キョン(……まるで流れ弾だな。)

377: 2008/04/15(火) 04:17:20.29 ID:zxVtO5bB0
涼宮ハルヒに『奴隷』と発せさせてはならない。もはやここまでくると、危険性はかなり高い。

ハルヒ「ここはぜひとも奴隷をいたぶってやりたいわねぇ。」

国木田「涼宮さん、本気だね……」

キョン「サディストめ……俺と国木田のどちらも奴隷じゃないかもしれないだろ。」

ハルヒ「ふん、今にあぶりだしてあげるわ。」

キョン「なにっ?」

ハルヒ「手下たち、集合! この女王様にいいアイデアを授けなさい!」

みくる「は、はいぃ!」

鶴屋「しょうがないねぇ。」

キョン「ちょ、そんなのありかよ!」

……

378: 2008/04/15(火) 04:23:30.60 ID:zxVtO5bB0
私が涼宮ハルヒをミスリードし、この場を収める。

キョン(長門! できるのか?)

まかせて、助言は得意。

鶴屋「みくるはどう思う?」

みくる「え、ええと……キョンくんは騎士だと思います。」

キョン(朝比奈さん当たってるよ、まあ偶然だろうけど。)

ハルヒ「手下2。それ、根拠はあるの?」

みくる「ふえっ、それは……」

ハルヒ「いい加減なことを言うと、あなたに罰を下すわよ。」

みくる「ご、ごめんなさぁい……」

379: 2008/04/15(火) 04:27:34.83 ID:zxVtO5bB0
鶴屋「はいはーい、女王様!」

ハルヒ「はい、手下1!」

鶴屋「キョンくんに、あたしが尋問してもいいかい?」

キョン「ちょ、鶴屋さん!」

ハルヒ「いいわ、その方がスリルがあって盛り上がるってものよ。いいわね、キョン!」

キョン「しかし……!」

待って。

ハルヒ「ん? 有希、じゃなかった手下3。どうしたの?」

彼への尋問は、私がする。

キョン(長門、お前……)

380: 2008/04/15(火) 04:32:33.55 ID:zxVtO5bB0
鶴屋「おおっ、長門っち積極的!」

ハルヒ「大丈夫なんでしょうね?」

まかせて。

ハルヒ「分かったわ、キョンを揺さぶってみなさい。どうキョン、有希が相手なら?」

キョン「よし、分かった。長門……受けて立とう。」

あなたが犠牲を苦にしないのならば、私が『あなたは騎士か?』と言ったところで動揺したふりをしてほしい。

キョン(分かった、俺にも責任がある。当てられてもいい。)

そして私があなたを騎士と判断し、彼女に進言する。

キョン(よし長門、頼んだ!)

381: 2008/04/15(火) 04:35:18.48 ID:zxVtO5bB0
では尋ねる……あなたは奴隷か?

キョン「いいや。」

それでは尋ねる……あなたは平民か?

キョン「違うな。」

それならあなたは……王?

キョン「ああ。」

では、騎士ではないと?

キョン「ち、違うな……俺は王だ。」

……よろしい。

ハルヒ「……」

387: 2008/04/15(火) 04:47:30.21 ID:zxVtO5bB0
みくる「キョンくんは王様なんですね……」

鶴屋「みくる、正直に答えたらゲームにならないっさ。長門っちはキョンくんの反応を見逃さないはずだよ。」

ハルヒ「手下3、ごくろう。どうだった? キョンの様子からして。」

……彼の階級は、騎士だと思われる。

みくる「えっ、でも違うってモガモガ」

鶴屋「もー、みくるは黙ってて。」

ハルヒ「どうしてキョンが騎士だと分かるの?」

彼の態度を見れば明らか、『騎士』の部分で動揺が見てとれた。

ハルヒ「なるほど……」

キョン(このままハルヒが『騎士』とコールすれば俺が呼ばれるのか……どうなる?)

ハルヒ「なんかひっかかるわねぇ、キョンは私たちを騙そうとしてるんじゃないの?」

キョン(ぎくっ、さすがハルヒ。そう簡単には信じないか……)

大丈夫。私は騙されていない、信じて。

ハルヒ「……そう。」

388: 2008/04/15(火) 04:55:00.84 ID:zxVtO5bB0
鶴屋「さあ、女王様のコールっさ! 呼ばれた者は元気よく返事にょろ!」

……ごく。

ハルヒ「女王を護る『騎士』!」

……やった!

ハルヒ「騎士の男子は返事をしなさい!」

キョン「お、俺だ。」

みくる「あー、キョンくん。ウソついてたんですね~。」

鶴屋「だから言ったでしょ、長門っちの読みもばっちりだったねっ!」

……

キョン「悪いな国木田、当てられちまった。」

国木田「あっはは、キョンは意外とウソをつくのが苦手なんだね。」

ハルヒ「当たり……か。手下3、よくやったわ。」

……光栄。

389: 2008/04/15(火) 05:04:55.80 ID:zxVtO5bB0
ハルヒ「騎士じゃ、大したこと命令できないわね。」

キョン「文句言うな、そういうルールだろ。」

ハルヒ「そこ、女王様に向かって口の利き方が悪いわよ。」

キョン「し、失礼……」

ハルヒ「さぁて、命令といくわよ! 今回彼を見破った功績を称えて、手下3にお願いしようかしら。」

……私?

キョン「俺が長門にか、なにをするんだ。」

ハルヒ「うーん、そうねぇ……」

騎士なら、大丈夫……だと思う。

ハルヒ「よし騎士、手下3の肩を揉んであげなさい!」

キョン「え?」

彼に、肩を……

390: 2008/04/15(火) 05:10:57.04 ID:zxVtO5bB0
ハルヒ「このゲームを抜きにしたって、あんたは有希にお世話になってるんだからそれくらいするべきよ。」

キョン「そ、それはそうだが……長門。」

……

ハルヒ「女王様の命令は絶対よ! それとも騎士だと肩揉みも頼めないのかしら?」

キョン「な、長門。そういうことだから……」

……いい。

みくる「意外と静かなスタートですね。」

ハルヒ「ちょっと物足りないのが残念ね。」

キョン「な、長門。揉むぞ……」

……お願い。

391: 2008/04/15(火) 05:17:07.64 ID:zxVtO5bB0
彼の両手が私の肩に置かれる。

ハルヒ「ちゃんと感謝の気持ちをこめるのよ。」

キョン「分かってるよ。」

少したくましい彼の手のひらが私の小ぶりな肩をゆっくりと揉み上げる。
……おちつく。

国木田「ふぅ、キョン。助かったよ。」

キョン「国木田、お前やっぱり……」

国木田「しょっぱなから奴隷引いちゃって焦ったよ。」

なんとか彼と協力して国木田を守ることができた、ひとまず安心。

キョン(やったな、長門……本心からおつかれさま。)モミモミ

うっ……よかった。はっ……あっ……

鶴屋「あれあれ微笑ましいねあの二人、いい雰囲気だあ。」

ハルヒ「……そうね。」

395: 2008/04/15(火) 05:25:42.29 ID:zxVtO5bB0
キョン(長門の肩、凝ってると思ったけど柔らかいな……)

ハルヒ「ちょっとキョン、いつまでもみもみしてんの? そろそろ手下3を返しなさいよ。」

キョン「お、もう終了か。やれやれ。」

彼は手を離し、自分の席へと戻る。
少し肩の調子がよくなった気がする……

ハルヒ「さあ、まだ一回目よ! うんと女王様の言うことをきいてもらうんだから!」

涼宮ハルヒはすかさず次のセッションへと移行する。

キョン「ふん、次は盛大に外してもらうぞ。」

今度はしくじらずに行動し、彼・国木田の危険性を限りなく0にしなければ……

ハルヒ「じゃあ次ね、割り箸を選んで!」

396: 2008/04/15(火) 05:36:08.06 ID:zxVtO5bB0
私は出遅れないように、すばやく涼宮ハルヒがまとめている割り箸に手を伸ばす。

ハルヒ「はい、次みくるちゃん。」

割った箸というのは一つひとつの形が違う、さきほど涼宮ハルヒが持っていた女王の印のある箸は根元の部分が大きく欠けている形だった。私は、それに合致する箸を引き抜いた。
一方男子側も、缶に入っている四本の箸から一本ずつ選び出していた。

キョン(長門、やったぞ!)

……え?

キョン(さっき奴隷の箸を持っていたのは国木田だ。あいつが缶に戻した箸を、そのまま俺が取ったのさ。思った通り俺が奴隷だが、これで国木田は安全だ。)

……またあなたに犠牲を強いて、申し訳なく思う。

キョン(いいって、お前の肩を揉ませてもらったんだ。)

……? お礼を言うのは私のほうでは。

キョン(あぁすまん、なんでもない。)

……そう。いずれにせよ、これで磐石。

398: 2008/04/15(火) 05:45:53.41 ID:zxVtO5bB0
鶴屋「あれれ、あたしの分がないよ?」

ハルヒ「あら有希、箸を二本持ってるじゃない。じゃ、こっちは鶴屋さんね。」

……しまった! 私が反応する前に箸が奪われた。私の手元に残った箸には……

『1』の文字。ということは女王様は……

鶴屋「いやっほう、あたしが女王様にょろよー!」

国木田「今度は鶴屋さんかあ。」

……またしてもうかつ。

キョン(長門……大丈夫だ。鶴屋さんなの思考能力はハルヒの何万倍も優れている、心配はいらん。)

鶴屋「女王様……女王様、か。」

399: 2008/04/15(火) 05:55:53.14 ID:zxVtO5bB0
……そのときの彼女は、なにかよからぬことを考えているように見えた。
いや、朝比奈みくるの友達に限って……

キョン(長門、それじゃフォローにならん。)

……あなたもさりげなくひどいことを言うのね。

キョン(朝比奈さんすいません、今は緊急事態なんです……)

鶴屋「よし、決めたよっ!」

みくる「え、あの……あの二人にいろいろ聞かなくていいんですか?」

鶴屋「どうせ確実なものではないんだし、あたしは命令できる内容を重視さっ。」

……どうする。

ハルヒ「女王様のコールよ!」

鶴屋「平民の人ー! 返事をしてね!」

400: 2008/04/15(火) 06:05:17.24 ID:zxVtO5bB0
……彼女が選んだのは平民、彼・キョンは奴隷だったのだからはずれ。
もし彼・国木田が平民ならば当たっている、命令を聞くことになる。……確率は3分の1。

……

鶴屋「いない、のかな……?」

どちらからも返事は無い。

ハルヒ「ちょっと、あんたたちなんだったの? 見せなさいよ。」

キョン「俺は奴隷。」

国木田「僕は騎士でした。」

鶴屋「ありゃあ、失敗しちゃったかあ……」

……存在しない階級を言った、その場合は女王が責任を負うことになる。

402: 2008/04/15(火) 06:09:22.18 ID:zxVtO5bB0
みくる「鶴屋さん、どんまい……」

鶴屋「いやぁ、貪欲に『奴隷』と言っておくべきだったねえ。そうすればキョンくんにめがっさにょろにょろなことを……」

キョン「ちょwwおまwww」

ハルヒ「はいはい、それでは女王様には罰ゲームを受けていただかないと。」

鶴屋「うっ、そうだったね。」

キョン「階級が高いのは騎士の国木田だ、お前が女王様の鶴屋さんに命令するんだ。」

国木田「ぼ、僕が鶴屋さんにねえ……」

……

鶴屋「……うふっ。」

404: 2008/04/15(火) 06:18:25.90 ID:zxVtO5bB0
国木田「こ、このゲーム自体をやめるというのは……」

ハルヒ「……あんたバカ?」

国木田「だ、だよね。ははは……」

一瞬私も同じことを考えたが、涼宮ハルヒがそれを許すはずはなかった。
彼女は真の意味で女王と言える存在……

キョン「あきらめろ国木田、命令はなんでもいいんだ。さっさと済ませちまおう。」

国木田「うーん、それじゃあ……女王様に早口言葉を言ってもらおう。」

鶴屋「ありゃりゃ、早口言葉か。」

405: 2008/04/15(火) 06:25:41.71 ID:zxVtO5bB0
早口言葉。人間は喉や唇の形を変えて声を出すが、その変化が激しい場合発声が難しいとされる。
……ちなみに私はプログラムの詠唱は得意だが、文に意味をもたない早口言葉は苦手。

鶴屋「オホン、あっーあー……」

彼女は準備を整えている……

鶴屋「じゃあ、いくね!」

待てよ、彼女の口ぐせを考えると……

鶴屋「めがっさにょろにょろ三にょろにょろ! あわせてにょろにょろ六にょろにょろ!!
めがっさにょ(ry」

……やはり、それか。

キョン「長門が盛大にツッコんだーーー!!」

ハルヒ「それで盛大なの!?」

582: 2008/04/15(火) 22:19:24.72 ID:zxVtO5bB0
>>579
どうも僕です。
ちょいちょい書き溜めてます、期待しないで待っててNEEEEEeeeeeeee

769: 2008/04/16(水) 06:35:28.56 ID:DRRwJIZ90
涼宮ハルヒの意向により執り行われる、『女王様ゲーム』……
男子側にキョン、女子側に涼宮ハルヒ、朝比奈みくると私がいる。さらに、上級生の鶴屋とキョンの友達の国木田を加えた6人でゲームがスタートした。


パチパチパチ
みくる「鶴屋さん早口言葉上手いですねえ、驚いちゃいました。」

鶴屋「いやあ、それほどでもないっさね。」

国木田「あはは、鶴屋さんさすがです。」

鶴屋「キョンくん、国木田くん。次は当ててみせるよ!」

ハルヒ「なに言ってるの、次も女王様になれるとは限らないわよ!」

彼・国木田はSOS団員かそれに準ずる存在ではない、このゲームにはついてこられそうにない。
私は、彼が涼宮ハルヒに楯突く事態を恐れ、彼が罰を受ける可能性を潰し安全に帰れるようにする。

キョン(なんとか凌げそうだな、長門。)

……彼と協力して。
このゲームの終わりは、まだ見えない……

女王様ゲームAパート おわり

770: 2008/04/16(水) 06:37:07.58 ID:DRRwJIZ90
というわけで、ここまでで一旦終了です。
続きは余裕があったらケータイからか、夜帰ってきてから書きます。

824: 2008/04/16(水) 20:30:52.61 ID:DRRwJIZ90
ハルヒ「さぁ、どんどんいくわよ! 次の女王様は誰かしら、割り箸を引いて。」

……私はこれ。

鶴屋「ほいさ。」

みくる「じゃあ私はこれに。」

キョン「よし国木田、お前も引け。」

国木田「うん。」

涼宮ハルヒを中心に盛り上がりをみせる『女王様ゲーム』、私と彼・キョンは影からのサポートに奮闘していた。

女王様ゲームBパート

826: 2008/04/16(水) 20:41:25.91 ID:DRRwJIZ90
ゲームは着々と進行していく。

ハルヒ「お、次の女王様は有希ね。さあ命令をどうぞ!」

……平民と手下2は漫才をするべき。

鶴屋「ショートコント!」

キョン「ちゅるやさんのドラゴンクエスト。」

鶴屋「やあ武器屋さん武器屋さん、スネークソードはあるかい?」

キョン「さっきパパスのつるぎを手にいれたでしょ。」

鶴屋「にょろーん。」

私も何度か女王を引き当て、重点的に漫才を行わせる。

ハルヒ「らき☆すたを実写ドラマ化したら一番大変なことはなにかしらね?」

キョン「はーい、左利きの役者を集めることだと思います。」

……ユニーク。

828: 2008/04/16(水) 20:52:21.03 ID:DRRwJIZ90
ゲーム開始から約一時間が経過、主だった波乱はなく状況は推移している。私は、涼宮ハルヒはゲームに飽きているのではないかと思い始めた。
それは、彼も同じだったようだ。

キョン「おいハルヒ、そろそろおひらきでいいんじゃないか。もう何回かやったんだし。」

ハルヒ「なんですって、冗談じゃないわ!」

涼宮ハルヒは彼をまるで仇敵のように見て言った。

ハルヒ「まだ全然面白いことが起きてないじゃない、あたしはこのままじゃやめられないわ!」

キョン「しかしだな……」

ハルヒ「だいたいみんな、女王様になってもろくな命令をしてないじゃない。もっと過激でスリリングなのを下すべきよ!」

キョン「それはお前が十分すぎるほどやってると思うんだが……」

ハルヒ「なに言ってるの、ここ数回全然女王様の箸を引いてないのよ……」

……

829: 2008/04/16(水) 21:01:40.78 ID:DRRwJIZ90
みくる「そういえばそうですねえ。」

キョン「そりゃあそんなこともあるだろう、これは運なんだし。」

……実は私の手つきも慣れてきて、涼宮ハルヒに女王の印がついた箸がいかないようにさりげなくコントロールしている。
それはキョンも同じようで、国木田に極力奴隷とならないよう割り箸を誘導しているようだ。

ハルヒ「いいわ、次こそ引いてやるんだから!」

キョン「やっぱり続けるのか……」

……やはり女王様ゲームは続行、私と彼のミッションも今しばらく続くようだ。しかし、これなら大丈夫。いずれ涼宮ハルヒの興奮も冷めるだろうと思われた。
しかし、ゲームが終盤に向かうにつれて、彼女を中心とする穏やかでない風が吹き始めていたのを私はまだ知らなかった……

832: 2008/04/16(水) 21:11:27.95 ID:DRRwJIZ90
ハルヒ「女王様、誰かしらーっ!」

鶴屋「ありゃ、あたしじゃないね。」

……違った。

みくる「あ、私です。」

ハルヒ「あら、めずらしいわね。そういえばみくるちゃんも当たるのが少ないのよね~」

私ばかりが女王に当たるのも不自然なので、こうしてたまに他人へと当たりを送る……

みくる「あっ、コールと命令ですね。えっと……」

国木田「さて、どんな命令がくるのかな。」

キョン「朝比奈さんなら心配ないさ。」

ハルヒ「……」

私も、朝比奈みくるは嗜虐的思考に準ずるものは持ち合わせていないと思っている。
彼女もこの場が荒れることは望んでいないはず、おそらく無難なものが……

834: 2008/04/16(水) 21:19:25.02 ID:DRRwJIZ90
以外と人いるのねw
茨城県結城市のみんな、元気してるかい。

836: 2008/04/16(水) 21:21:38.41 ID:DRRwJIZ90
ハルヒ「待ちなさい、みくるちゃん。」

……凍てつくような鋭い言葉が放たれた。淡々たる現状を許さない涼宮ハルヒが舞台を揺らしにきたのだ。

みくる「は、はい……?」

キョン(ま、まずい。やはり黙っちゃいなかったか!)

ハルヒ「あなた、男子側に完全になめられているわ。どうせ大した命令は来ない……ってみくびられてるのよ。」

キョン「おい、ハルヒ。お前は手下だ、女王様には敬語を……」

ハルヒ「シャラップ!!」

キョン「ぎゃふん。」

838: 2008/04/16(水) 21:30:50.68 ID:DRRwJIZ90
ハルヒ「そういうわけですから女王様、男子側には恥ずかしさを募らせる命令が必要だと思うのです。」

……その発言は脈絡が見受けられない。

キョン「おいまて、なんで大した命令イコール恥ずかしさが募るなんだよ!」

ハルヒ「だって、あんたたちマゾでしょ。」

国木田「うわあああ、バレてたーーー!!」

キョン「国木田ーーー!?」

なんというカミングアウト。

ハルヒ「さぁ、女王様。思い切った命令をあいつらに!」

みくる「ふえぇ、ええと……」

キョン(完全に傀儡政権だな……)

……同感。

839: 2008/04/16(水) 21:40:55.49 ID:DRRwJIZ90
鶴屋「まあまあみくる、一回くらいいいじゃないか。要は、男の子たちが赤面するような恥ずかしいことをさせればいいだけなんだからさ。」

鶴屋がフォローを入れる、たしかにいたずらに拒否をしても涼宮ハルヒの機嫌を損ねるだけ……彼女は既に悟った上での発言だろうか。

みくる「わ、分かりましたっ!」

ハルヒ「おおっ?」

みくる「て、手下2と騎士の人は……い、いっしょにダンスしてください!」

そうきたか……

キョン「騎士か、俺は違うな……」

国木田「あちゃあ、当てられたよ。」

キョン「なんと! そっちの手下2って誰です?」

鶴屋「はいはーい、あたしだよっ!」

キョン「なんだとーーー!!」

……落ち着いて。

840: 2008/04/16(水) 21:51:30.60 ID:DRRwJIZ90
鶴屋「Shall we dance?」

国木田「よ、喜んで……」

鶴屋と彼・国木田は手を取り合い、ステップを踏み自由に舞う。

鶴屋「チャララチャララッチャッチャッ♪ ほら国木田くん、どうせなら楽しくねっ!」

国木田「は、はい……!」

歌を口ずさみその長い髪をふりかざしながら、ややのろい国木田をリードする鶴屋。

みくる「鶴屋さん、とても楽しそうです。」

ハルヒ「しゃくだけど、上手く決まってるわね……」

激しさとしなやかさを兼ね備えた見事な踊り、頭のなかに円舞曲が聴こえてきそう……

843: 2008/04/16(水) 22:03:17.52 ID:DRRwJIZ90
鶴屋「ザンザン♪」

私も含め、全員が拍手で迎える。

鶴屋「なかなかよかったよ、国木田くん!」

国木田「は、はい……ありがとうございました。」

みくる「さすが鶴屋さん。よく体が動きますねえ、リードもお上手でしたし。」

鶴屋「よく動き、よく遊ぶのがあたしのモットーっさね! ハルにゃん、少しは満足できたかい?」

ハルヒ「まっ、まあまあね。この調子で盛り上げるわよ!」

……見事だったと思う。

鶴屋「ありがとう、長門っち!」

キョン「国木田、おつかれ。」

国木田「あっはは、上手く踊れなかったよ。」

キョン「うらやましいぞこの!」

あちらでもちゃかしあっている、かなりよい雰囲気。

846: 2008/04/16(水) 22:12:23.78 ID:DRRwJIZ90
キョン「俺だって朝比奈さんと……」

ハルヒ「なに考えてんのよ、キョン。」

キョン「い、いや……」

……私はそのとき油断をしてしまった、一瞬の気の緩みが大変な事態を招くことを思い知ることとなる。

ハルヒ「ほら次よ、箸を取って!」

鶴屋「あいよー。」

みくる「はぁい。」

……私の箸は2番。

鶴屋「やった! あたしが女王様だ!」

みくる「鶴屋さんおめでとう!」

849: 2008/04/16(水) 22:21:59.82 ID:DRRwJIZ90
ハルヒ「うー、またはずれ……」

鶴屋「んー、男の子の方はどうかな?」

キョン「お、俺の顔を見たって分かりませんよ。」

鶴屋「どうかなあ、キョンくんはウソをつくのが下手っぽいからね。ねー長門っち。」

……先ほど>>331でした私の尋問は示し合わせた上での結果、当たって然るべきことだったのだが……

鶴屋「あっ、キョンくん。お箸が上下逆さまで階級が見えてるよ!」

……いけない!

キョン「なにっ、まさか!」

……遅かった。

851: 2008/04/16(水) 22:31:13.74 ID:DRRwJIZ90
キョン「って逆さまなんかじゃないじゃないですか……あーっ、鶴屋さん今俺の箸見たでしょう!」

鶴屋「さぁてね。」

鶴屋は彼が慌てて割り箸を確認する隙をついて、彼の階級を覗き見したのだ。恐らく次のコールは彼が標的になる。
しかし彼女はなぜこのようなことを……?

ハルヒ「命令は決まったかしら、女王様。」

鶴屋「ばっちりだよ、いいかい。」

キョン(すまん長門、こんな初歩的な手に……)

……気にしないで。

鶴屋「手下3、カモーン!」

みくる「手下3……あっ、私ですぅ。」

鶴屋「男の子、平民。おとなしく名乗りでちゃいなさーい!」

……平民、彼の持っている箸にはそう書いてあった。

キョン「うあっ、やっぱり見てたんじゃないですか……」

鶴屋「ごめんね~キョンくん。」

854: 2008/04/16(水) 22:42:34.51 ID:DRRwJIZ90
キョン「くそー……で、なにをすればいいんです?」

鶴屋「むふふ、みくるのおててにちゅってしてあげてね!」

オウフ。

キョン「えええええー!?」

みくる「ななななな……」

ハルヒ「なんですってーーー!!」

全員が、三者三様の驚きを見せている。あなたはなにを考えているの……?

鶴屋「いいじゃないかいいじゃないか、ほっぺや口じゃないんだからさ!」

キョン「ししし、しかしですね……!」

みくる「そ、そうですよ鶴屋さん。いくらキョンくんでも……あっ!」

鶴屋「あれあれ~、実は期待100パーセントなんじゃないかみくる。」

855: 2008/04/16(水) 22:53:52.22 ID:DRRwJIZ90
みくる「ふえぇ、そうじゃなくって~……」

手をばたばたさせる朝比奈みくるだが、女王たる鶴屋が彼女を後ろから取り押さえ右手をつまみだす。

鶴屋「ほらキョンくん、こっちは準備OKっさね!」

キョン「い、いいんですか。朝比奈さん……」

みくる「……」

彼女の返事はない。しかし覚悟を決めたように目を閉じ、軽く首でうなずいた。

キョン「憧れの朝比奈さんに……手とはいえ、キスっ……!」

ハルヒ「……キョンっ!!」

キョン「ひゃいっ!?」

吼えるような勢いで怒号を飛ばす涼宮ハルヒ、彼・キョンは彼女の声にびくつき背筋をぴんとさせる。

キョン「は、ハルヒ……」

ハルヒ「……な、なんでもないわ!」

キョン「いいの……か?」

ハルヒ「女王様の命令でしょ、さっさとやっちゃえばいいじゃない!」

……これは。

856: 2008/04/16(水) 23:02:37.10 ID:DRRwJIZ90
鶴屋「さぁキョンくん、王子様になったつもりでぶちゅっと!」

キョン「……では朝比奈さん、失礼して。」

みくる「や、優しくしてくださいね……」

彼はうなずくと朝比奈みくるの前にひざまづき、彼女の白くやんわりとした肌の右手を軽くひき寄せる。そして、数秒間その手を見つめた後、目を閉じて彼女の手の甲に口付けをした。

みくる「あっ……」

朝比奈みくるが甘い声を漏らした。彼女は若干口元を緩ませて、嬉しさを表したようにみえた。
彼・キョンもそろそろいいだろうと唇を離そうとしたとき……

鶴屋「なにが、あっ……、だよみくる! 嬉しいなら態度で示さなきゃ、そぉれ!」

朝比奈みくるの背後にいた鶴屋がどんと乱暴に彼女を突き飛ばす。

みくる「ふえぇ!?」

キョン「なっ……!」

どしんという音は彼女が盛大に転んだ音だった、そして見事に彼の上におおいかぶさっている……

鶴屋「みくる、グッジョブ!」

ハルヒ「ちょっ……!」

857: 2008/04/16(水) 23:14:57.44 ID:DRRwJIZ90
まさに涼宮ハルヒにこれ以上ないショックを与えた瞬間だと思われる、彼女は目を見開き頻繁なまばたきを繰り返している……

みくる「ふえぇ、キョンくんごめんなさい!」

キョン(朝比奈さんのたわわな胸が富士山にかかる積乱雲のように俺の顔面に~!)

それなんて工口ゲ?

みくる「もう鶴屋さん、なんてことするんですかぁ。」

鶴屋「さっき国木田くんと踊らせてくれたでしょ、そのおかえし。」

……ようやく離れた朝比奈みくるは顔を紅潮させて鶴屋に口をぱくぱくさせていた。

国木田「キョンってば、鼻が伸びきってるよ。」

キョン「うむ、生きててよかったと思える瞬間だ。」

……一方こちらは鼻が充血していそうなキョン。

ハルヒ「……」

そんな朝比奈みくるとキョンに目をやり、ぎりりと歯を鳴らす涼宮ハルヒがいた……

860: 2008/04/16(水) 23:23:45.60 ID:DRRwJIZ90
キョン(な、長門すまん! だがあれは不可抗力で……)

……彼女の手の甲への口付けも?

キョン(いやっ、それはだな……)

冗談、気にしないで。

キョン(な、長門~、こんなときに冗談はよしてくれよ……)

それより、私にいい考えがある。

キョン(いい考え?)

涼宮ハルヒは、あなたと朝比奈みくるのまぐわいに間違いなく嫉妬している。

キョン(まぐわい言うな! いやしかし、ハルヒが嫉妬って……)

私には分かる、なぜなら……

キョン(なぜなら……?)

……なんでもない、忘れて。

864: 2008/04/16(水) 23:34:42.91 ID:DRRwJIZ90
キョン(なんだそりゃ……それで、お前の考えというのは?)

目には目を、歯には歯を……要するに涼宮ハルヒにも同じことを味わわせればいい。

キョン(ハルヒに……鶴屋さんや朝比奈さんがやった、スキンシップみたいなイベントを用意すればいいということか?)

そう……

キョン(と、いうことは相手は……)

あ・な・た

キョン(ぎゃふん。)

手はずは私が整える。私が女王を引き当て、涼宮ハルヒとあなたを指名しイベントを発動させる。そのために、あなたには『騎士』以下の階級を引き当ててほしい。

キョン(席を立って動くためだな、よし分かった!)

ここでなんとか彼女の感情を挽回し、安定させる。残されたチャンスは少ない……もう一ふんばり必要。

869: 2008/04/16(水) 23:49:51.08 ID:DRRwJIZ90
国木田「キョン、このゲームいつ終わるんだろう……」

キョン「さあ、あいつ次第としか言えないな。」

まさしく、このゲームは涼宮ハルヒの一存によって行われているゲーム。続けるもやめるも彼女の意志のままに動いているのだ。だから、彼女を満足させない限り明日という日が来ずにこのゲームが続く可能性だってある。

鶴屋「さあっ、次行くよ!」

さきほどの鶴屋の行動は、おそらく朝比奈みくるを気遣ってのこと……彼女は他人に隔たりなく気を配っていたつもりであったのだろう。しかし、この場においては涼宮の感情の起伏が最重要事項。

みくる「うーんと、これを……」

……私は何度でも任務をこなす、涼宮ハルヒの心に積もった淀みを晴らすまでは。そのためには、多少の不正行為も……

ハルヒ「私が……女王様になるんだから!」

私はちらりと缶を覗き、当たりの箸を見つけすかさず手を伸ばす。そして、最後に残った一本の箸を涼宮ハルヒが手に取った。

870: 2008/04/16(水) 23:56:44.00 ID:DRRwJIZ90
私は彼・キョンの方を見る。彼は指で輪をつくり、OKのサインを出した。彼はちらりと割り箸をこちらに見せた、彼の階級は『騎士』……
……よし、コンビネーションは完璧。あとは私が命令を下すだけ……彼と涼宮ハルヒに愛の……

ハルヒ「やった、私が女王様よっ!」

えっ……?

キョン(なにっ!)

私ははっとして手元の割り箸を見る。
はっきりと『3』の数字が書かれている。……なぜ、どうして?

キョン(どうした長門、お前が女王様を取ったんじゃなかったのか。)

間違えた? 私が……

871: 2008/04/17(木) 00:11:02.85 ID:Ax36dXB90
鶴屋「やったねハルにゃん、ようやく女王様の番がまわってきたよ!」

みくる「ご、ご命令を。女王様……」

ハルヒ「ふふーん、キョ~ン。」

キョン「な、なんだよハルヒ。気持ち悪いな。」

ハルヒ「女王さまよ!」

涼宮ハルヒは久しぶりに女王になれたのが嬉しかったのか、幾分気持ちを落ち着けた様子……

キョン「はい、女王様。で、俺の階級はなんだっていうんです?」

ハルヒ「ま、『王』あたりでしょうね。生意気に調子いいみたいだから。」

しかしなぜ、先ほど確実に取ったはずの私の当たりの印のついた箸がすり替わっていたのだろう……

キョン「残念だな、俺は騎士だ。」

ハルヒ「……」

872: 2008/04/17(木) 00:24:11.85 ID:Ax36dXB90
国木田「僕は平民でした。」

鶴屋「あらぁ、ハルにゃんはずしちゃったねえ。」

ハルヒ「……っまあ、こんなこともあるわよ! あはは……で、キョン。私は女王として責任を取るけど、何をしたらいいの?」

キョン「えっ? ええとな……」

ハルヒ「なによ、早くしなさいよね。」

涼宮ハルヒに直接命令を下せる……これはチャンスでありピンチであると考えられる、よくアイデアを練って。

キョン(そうだ、要はハルヒが楽しめればいいんだ……よし!)

私にそうつぶやくと、彼は普段私が読んでいる本が納まっている棚へ向かい、一冊の本を選び持ってきた。

キョン「ハルヒ、俺といっしょにこの本を朗読しよう。」

874: 2008/04/17(木) 00:45:31.58 ID:Ax36dXB90
彼が持ってきた本の表紙には『現代版源氏物語』と書かれていた。

キョン「現代語に訳されてよみがえったラブストーリーの名作だ、いっしょに切ない気持ちになろうぜ。」

ハルヒ「キョン……」

涼宮ハルヒは頬を赤らめ、彼の方を見る。

ハルヒ「しょ、しょうがないわね。そういうルールだし……ほら、クライマックスのところでいいわね!」

彼女は目尻を緩ませ、彼の元へ歩み寄る。そして本の片側を持ち、文章を覗きこんだ。
彼にしては機転の利いた行動かもしれない、もしかしたら涼宮ハルヒを満足させることができるかもしれない。

キョン「長門がこの前読んでたんだ、きっと面白いぞ。」

……ん、現代版源氏物語?

キョン「おぉ、あれはなんと可憐な少女だ。ぜひ私のものにしたい。」

らめえええええ

877: 2008/04/17(木) 01:08:22.04 ID:Ax36dXB90
ハルヒ「ひ、『光君。いけないわ、こんなところをお婆さまに見られたら……』」

キョン「わ、『若紫ちゃん。そう言いながらこっちは濡れ濡れじゃないか……』そう言いながら源氏は、若紫の……み、蜜壷に指を這わせる……」

ハルヒ「そ、『そこはだめよ、まだ誰にも触らせてな……あっ、あああっ!』嬌声を上げながら、あふれ出す若紫の透明な……あ、愛液……」

キョン「『やっぱり君のお母さんにそっくりだよ、この端正な顔立ち、体つき、それに……か、感度の良さもね。』源氏の……あ、愛撫は激しさを増し、若紫を高ぶらせていく……」

ハルヒ「『ひゃはああぁぁん! だっ、だめえ! そんなに……そんなにしたら私っ、もう……!』ううっ、うっ……」

キョン「そ、『そろそろ僕も我慢できないよ、若紫ちゃん……』源氏は若紫の人形のような華奢な体を床に寝かせ、いきり立った……せ、性器を」

……編集の都合上省略させてもらった部分がある……続きを読むにはワッフルワッフルと書き込んでほしい。

879: 2008/04/17(木) 01:55:29.69 ID:Ax36dXB90
あ、復活した。

880: 2008/04/17(木) 01:55:49.93 ID:Ax36dXB90
みくる「……鶴屋さん、若紫『ちゃん』って……」

鶴屋「……若紫は作中初登場は14歳さ……」

ハルヒ「……キョン……」

キョン「……な、なんでしょう女王様。」

ハルヒ「最高のラブストーリーだったわ。」

キョン「そ、そうか……それはよかった……」

……由々しき事態。

国木田(どうしよう、少し勃っちゃったよ……)


古泉「うわあああ、神人が更に巨大化したあああ!!」

883: 2008/04/17(木) 02:12:08.77 ID:Ax36dXB90
キョン(長門おおぉぉ! なんであんなもの置いてあるんだよ、っていうかあんなきわどい内容の本をお前は平然と読んでいたのか?)

内容を確認せず持ち出したあなたも悪い、それもよりによって若紫の部分を。もしやあなたは口リk……

キョン(うわあああ、やめてくれ! 悪かった、俺が悪かったから!)

もはや、なりふりかまっていられない。とにかくゲームを終息に向かわせ……

みくる「え、えっとそれでは次のくじを……」

ハルヒ「はい、私はこれ!」

は、早い……!
私はまた缶の中を覗くが、印のついた割り箸はなくなっていた。

ハルヒ「あははっ、私が……また私が女王様よーっ!」

涼宮ハルヒ……そうか、さきほど私の箸がすりかわっていたのはあなたが望んだからだったのね。
そして今も……と、いうことは……!

ハルヒ「賎しい『奴隷』、こっちへ来なさい。」

キョン「お、俺だ……」

885: 2008/04/17(木) 02:22:48.94 ID:Ax36dXB90
涼宮ハルヒはなにも考えずに彼を『奴隷』と言った、やはりこの結果は彼女が強く望んだもの……

ハルヒ「キョン、さっきはよくも恥をかかせてくれたわね……」

キョン「いやっ、違うんだハルヒ! あれは……」

ハルヒ「……まれ。」

キョン「ハルヒ! きいてくれ!」

ハルヒ「だまれ!!」

……そう言い涼宮ハルヒは、ばっと席を立ち上がり彼の内膝を思いきり蹴飛ばした。

キョン「あああぁぁ! いってええぇぇ!!」

鈍い音をたてて床に倒れこむ彼……

国木田「うわあああ!」

みくる「ひゃあああ!」

鶴屋「キョンくん!」

891: 2008/04/17(木) 02:41:35.10 ID:Ax36dXB90
ハルヒ「このっ! このっ!! アホキョンっ! バカキョンっ!!」

膝を抱えて床で丸くなっているキョンに、容赦なく足蹴りをくわえる涼宮ハルヒ……

ハルヒ「私をっ! ばかにっ!! しやがってっ! うらあっ!!」

キョン「ハルっ……やめっ……ぐぶっ……ああぁぁっ!」

金切り声をあげて悶える彼、すかさず上級生の二人が涼宮ハルヒを取り押さえる。

みくる「涼宮さん、やめてください!」

鶴屋「キョンくんがかわいそうだ!」

ハルヒ「はなしてっ! くっそっ!」

普段の好奇心に満ちたつり目とは次元の違う、鬼のような形相を呈し醜く変化した顔。
いつもの鋭く甲高い声ではなく、犬か狼が吠えるように太く低い声。自分の肺を潰しそうなほど息は荒く、白く並んでいる歯はそのまま砕けてしまいそうなほど強く噛み締めていた。
それほどの激情を伴いながら彼女は、二人を振り払おうとじたばたと暴れる。

895: 2008/04/17(木) 02:54:21.07 ID:Ax36dXB90
ハルヒ「あんたなんか……あんたなんかどうせ、みくるちゃんといちゃいちゃしたいんでしょ! 骨の2、3本折ってやるから、思いっきり看病してもらえばいいじゃない!!」

いつしか彼女の目から大粒の涙があふれていた。

ハルヒ「ぐっ……あんたなんか、しらないんだか……らっ、うっ……」

泣きじゃくりながら手足を振り回す涼宮ハルヒ。分からない、私の胸も苦しい……なぜ?
キョンはよろよろと体を起こし、ハルヒの方へと向きなおる。

キョン「ハル……ヒ、俺な……実はおまえのこt」

ハルヒ「うるっさああぁぁい!!」

再び室内に響き渡る鈍い音。
彼女が蹴ったのは、彼の右目だった。

898: 2008/04/17(木) 03:04:20.70 ID:Ax36dXB90
キョン「……っっ!!」

国木田「きょ、キョン……!! ひえぇ!」

今度は声にならない声をあげる彼。凄惨たる光景……それを目の当たりにした国木田は顔から血の気が引き、席に座ったまま震えている……

ハルヒ「ふーっ……!! ふーっ……!」

鶴屋「な、なんてことをするんだ……!」

みくる「キョンくーん!!」

ハルヒから離れ、キョンのもとへかけよるみくる。

キョン「……さひなさん……」

みくる「キョンくん……!」

ハルヒに蹴り飛ばされた彼のまぶたは真っ赤に腫れ上がり、すきまから粘っこい涙が流れていた……

みくる「ひどい……! うぅっ……!」

彼の頭を抱きしめるみくる、顔をうつむけて彼女の嗚咽も聞こえだした……

900: 2008/04/17(木) 03:17:22.57 ID:Ax36dXB90
ハルヒ「よかったじゃないキョン、そうやってみくるちゃんに優しくしてもらえて。あたしのおかげよね、感謝しなさい。」

みくる「涼宮しゃん!!」

涙声でみくるが叫んだ、舌足らずではあるが彼女が本気で叫んだ。

みくる「こんなのってあんまりじゃないですか! キョンくんがなにをしたっていうんですかあ!」

ハルヒ「このバカキョンはね、あなたをいつも工口い目で見てるのよ。さっきだってここぞとばかりにみくるちゃんの体を……こういうけだものには、ムチをいれとかないとダメなのよ!」

鶴屋「言っていいことと悪いことがあるよ、ハルにゃん。キョンくんはそんな男の子じゃないよ、それにさっきのことはあたしが悪いんだ。ぶつならあたしをぶって……」

みくる「鶴屋さんまでそんなこと言わないでください!」

鶴屋「みくる……」

みくる「それより涼宮さん、キョンくんを……キョンくんをもう、許してあげて……」

部屋に次々と飛び交う悲痛な声……

ハルヒ「そう……みくるちゃんがそこまで言うなら、分かったわ。」

そして女王ハルヒは命じた。

ハルヒ「全員でキョンをぶん殴りなさい。」

903: 2008/04/17(木) 03:29:43.93 ID:Ax36dXB90
彼女の加虐嗜好は、半端ではなかった……

みくる「涼宮さん、今なんて……?」

朝比奈みくるは目をぱちくりさせて涼宮ハルヒに尋ねる。

ハルヒ「一人一発でいいわ。そこで情けない顔をしているキョンを殴りなさい、そうすれば許してあげる。」

誰もが耳を疑った、既に打撲を負っているであろう彼に追い討ちをかけろという。

ハルヒ「私は女王様、あなたたちは手下、そしてこいつは『下僕』。もちろん覚えてるわよね、『奴隷』はどんな暴力も屈辱も耐えなければならないってこと。」

鶴屋「いい加減にするっさねハルにゃん、お姉さんも怒るよ!」

ハルヒ「女王様の命令は絶対よ、さあやりなさい!」

ハルヒの言葉に勘弁ならないと手を振り上げる鶴屋、その手が彼女の頬を張り叩こうとしたとき……

キョン「まって……ください。」

ぼろぼろの彼が、口を開いた。

キョン「みんな……俺を殴ってくれ。」

908: 2008/04/17(木) 03:36:35.52 ID:Ax36dXB90
国木田「キョン!」

みくる「キョンくん、なにを言ってるんですか!」

キョン「すいません朝比奈さん、俺のために……鶴屋さんもいいですから。」

鶴屋「でっ、でもさ……!」

キョン「あのままじゃ本当に骨が折られるところだったんですよ、それが気合が何発かいただくだけで済むなら安いもんですよ。」

右半分がひしゃげた顔で笑みを見せる彼、私も思わず直視するのを避けた。

ハルヒ「へぇ、度胸あるじゃない。」

キョン「約束は、守れよ……」

彼女に一言だけそういうと、彼は立ち上がる。

キョン「さあ、遠慮なくどうぞ。大丈夫です、氏にはしませんって!」

そしてもう一度、いびつな顔で笑った。

キョン「それに俺、マゾですから。」

910: 2008/04/17(木) 03:46:03.38 ID:Ax36dXB90
……そうは言ったものの、誰も彼を殴ろうなどとしない。この状況で加虐ができるのは、私の知る限りでは目の前にいる涼宮ハルヒか朝倉涼子しかいないだろう。

キョン「っはは、ダメだなみんな。女王様の言うことを聞かないと後が怖いぞ?」

そう言うと彼は国木田のもとに歩み寄る。

国木田「きょ、キョン……!」

キョン「やってくれよ国木田、頼むから。」

国木田「い、いやだ! それに怖いのはキョンの方だよ!」

キョン「ったく、甘いんだよお前は。」

国木田「えっ?」

すると彼は国木田の手を引っ張り、自分の腹部に打ち込んだ。

キョン「んぐっ!」

みくる「きゃああぁぁ!!」

913: 2008/04/17(木) 03:57:06.81 ID:Ax36dXB90
キョン「さて、次は……」

ゆらりゆらりと鶴屋のもとへと寄り、同じように頼む。

鶴屋「キョンくんはバカだよ! バカの言うことなんか聞きたくないっさ!」

キョン「そうですね……でもね、鶴屋さん。」

さっきと同じように強引に拳を引き寄せ、自分の腹へ一撃。

鶴屋「あっ……!」

キョン「人を一人殴れないあなたほどじゃないですよ。ぐっ……」

痛々しすぎる彼の姿が目に映る。
感情なんて持たないはずの私の心を、なにかが揺さぶっている感覚がある。

キョン「さあ、朝比奈さん。」

彼はまたセリフを繰り返し、頼んでいる。

みくる「い、イヤです! 理由もなく他人を殴るくらいなら、こんな手は使えなくしてやります!」

そういうとみくるは、左手の爪を右手の甲に立てる。

キョン「だめですよ。」

朝比奈みくるの拳もまた、彼の腹部に引き寄せられたのだった……

キョン「俺のキスした手、大事にしてくれなきゃ……ねっ……」

915: 2008/04/17(木) 04:11:00.80 ID:Ax36dXB90
そして彼は、このゲーム中協力して戦ってきた私の前に立った。

キョン「長門……お前はやってくれるよな?」

……それはできない。

キョン「なんでだ、ハルヒのためだろう。」

……それでも、あなたを殴る理由がない。

キョン「適当に加減してくれればいい、人間は頑丈にできてるんだ。」

私は激しく首を横に振る。

キョン「お前……本当に感情がでてきたんだな、俺は嬉しいぞ。」

感情……違う、この行動は有益でないと判断しただけ。

キョン「そうじゃない、国木田や鶴屋さんに朝比奈さんがそうしてくれたように俺のことを哀れんでくれてるんだ。大事な感情だぞ、それは。他人のために悲しめる・かわいそうだと思える心なんだ。」

916: 2008/04/17(木) 04:18:19.81 ID:Ax36dXB90
……もしそれが私にあるとして、それならなぜあなたは自虐を求めるの?

キョン「本当に哀れみの心があるなら、たとえ大事な人を傷つけるをためらわないことも必要なときがあるんだ。……分かってくれ、長門。」

……分からない、分からない。私には理解できない。

キョン「そうか……しかたないな。」

そう言うと彼は、先ほどと同じように私の手を取り拳を握らせる。彼を殴るのは、自分の意志ではない……

キョン「最後の一発か……」

……待って。

キョン「長門?」

……あなたの意志で、あなたを傷つけたくない。

キョン「じゃあ、やってくれるか?」

……彼は私の手を離し、胸を突き出した。
……私の頬を冷たい感覚が伝わった……

918: 2008/04/17(木) 04:26:36.25 ID:Ax36dXB90
キョン「これでいいな、ハルヒ。」

彼は課せられた試練を甘んじて受け入れ、乗り越えた。しかし、誰も喜ぶ者はなく悲しみに暮れ、涙を流し嗚咽を漏らすばかりであった。
……彼女と彼を除いては。

ハルヒ「使えない手下たちね、相手もやってもらうなんて。」

キョン「約束は守れと言ったはずだ、俺とみんなを許してやってくれ。」

ハルヒ「……まあいいわ、珍しくがんばったから許してあげる。」

キョン「……そうか。」

……許されない。

ハルヒ「そろそろゲームも終わりにしましょうか、なんかつまんないし。」

……許されない!

ハルヒ「えっ、なによ有希。なんか言った?」

あなたは、許されない!

919: 2008/04/17(木) 04:36:18.10 ID:Ax36dXB90
ハルヒ「な、なによ有希。そんなに怒って、らしくないわよ……」

そんなことは、問題ではない。

ハルヒ「なによ、キョンのことは許したでしょ。もうこのことは終わりなの!」

終わっていない、今度はあなたが彼に謝るべき。

ハルヒ「え?」

あなたが彼にしたむごい仕打ちを、詫びるべき。

キョン「長門、もういい……やめてくれ。」

だめ……涼宮ハルヒ、謝るべき。

ハルヒ「ふんっ、冗談じゃないわ。なんで私が謝らなきゃならないのよ!」

……

ハルヒ「だいたい有希もしつこいわよ! なんでこんなやつ……いっ!」

涼宮ハルヒが言葉を言い終える前に、私は彼女の頬を張り飛ばしていた……

922: 2008/04/17(木) 04:43:04.06 ID:Ax36dXB90
国木田「あっ!」

鶴屋「わっ!」

みくる「ひっ!」

キョン「長門……」

……生まれて初めて、怒りで他人を、殴った……

ハルヒ「な、なにするのよ有希! 痛いじゃない!」

……痛い、なぜ?

ハルヒ「そんなの有希がぶった……から……」

……あなたは泣いている、なぜ?

ハルヒ「それはあっ……痛いのがつらい……からよっ!」

あなたは、そのつらさに耐えられる?

ハルヒ「……えっ?」

924: 2008/04/17(木) 04:52:55.06 ID:Ax36dXB90
……彼は耐えた、彼はあなたのためだけに耐えた。苦痛も、屈辱も、すべて。

ハルヒ「ひぐっ……キョンが……私のために?」

キョン「ハルヒ……」

どれだけつらかったと思うの? 何倍も痛かったか分かる? 彼はただゲームのために、あなたのために耐えた。
……それを、それをあなたは……

ハルヒ「ぐすっ……有希……有希も、泣いてるの?」

……分からない。でも、胸が苦しい。痛くないのに、苦しい……

ハルヒ「私も……私も苦しいよう……空しい気持ちで、いっぱいで……」

……分かった? 悲しみや苦しみは耐えるものじゃない、乗り越えるもの……
一人じゃなく、二人で。二人じゃなく、みんなで。

ハルヒ「ゆきっ……有希ーーーっ!!」

925: 2008/04/17(木) 05:03:30.69 ID:Ax36dXB90
彼女は泣いた、私の首に顔を埋めて。彼女は流した、先ほどの激情とは別の涙を。

ハルヒ「うわああぁぁん!! ごめんなさい! ごめんなさい!!」

彼女は謝り続けた、自分の罪を認めて。ひしひしと震えていた彼女の肩を、私はそっと包んだ。
私もまだ、泣いていたと思う。

ハルヒ「ごめんなさい……ごめんなさい、キョン……」

彼へのあふれ出る贖罪の気持ちが私の耳にこだましていた。

ハルヒ「こんな顔にしちゃって、本当にごめんなさい……痛かった?」

キョン「ああ、痛かった……でもさ、なんか今……すごく、嬉しい。」

ハルヒ「キョンっ! ううっ……」

彼女は涙の限り泣き続けた。言葉の限り謝り続けた。そんな二人を私たちは見つめていた……


古泉「閉鎖空間が、完全に消滅した……」

926: 2008/04/17(木) 05:09:41.43 ID:Ax36dXB90
鶴屋「あぁもう、とんだゲームになっちゃったよ。」

みくる「本当に、一時はどうなることかと……」

国木田「もう、いい加減帰っていいよね……」

キョン「おう国木田、いろいろ大変だったな。」

国木田「ま、キョンほどじゃないけどね。」

ハルヒ「あはっ、言えてる!」

……終わっていない。

ハルヒ「えっ?」

終わっていない、次の女王は私……

ハルヒ「ああっ、私の割り箸が! いつのまに……」

女王の名において命ずる、手下1と『奴隷』。

キョン「奴隷って……俺か?」

ハルヒ「すり替えられた箸は、1番。私?」

927: 2008/04/17(木) 05:18:29.60 ID:Ax36dXB90
二人とも、映画『タイタニック』の有名なシーンを演じて。

キョン「た……」

ハルヒ「タイタニック!?」

涼宮ハルヒは両手を広げて、体を反らす。彼・キョンは彼女の腰に手を当てる。
そう、あのシーン……

キョン「そら、目を開いて。」

ハルヒ「私飛んでるわ、ジャック!」

……カット。

鶴屋「うーむ、なかなか似合ってるねえ。」

みくる「お似合いです!」

……では、もう一つやってほしいシーンがある。

ハルヒ「え、まだあるの?」

……あと、一つだけ。

928: 2008/04/17(木) 05:26:05.05 ID:Ax36dXB90
……本来は沈み行く船タイタニック号で愛を誓い、約束を交わすシーンである。

キョン「なにがあっても、なにが起こっても、あきらめないと約束してくれ!」

ハルヒ「約束するわジャック、いつまでもあきらめないわ!」

キョン「ローズ!」

ハルヒ「ジャック!」

キョン「ハルヒ!」

ハルヒ「キョン!」

その場で抱き合う二人。

古泉「うわ、なんですかこれ。」

930: 2008/04/17(木) 05:36:45.45 ID:Ax36dXB90
キョン「古泉、いつのまに! っていうかどこに行ってたんだ?」

古泉「いやぁ、例によってバイトですよ。それにしてもキョンくんすごい顔ですね、どうかなさったんですか?」

キョン「あぁこれ? これはな……愛の刻印ってやつだよ。」

古泉「はあ?」

ハルヒ「も、もうね。キョンがキズモノになっちゃて、仕方ないから私がもらってあげることにしたのよ。」

古泉「なるほどそういうわけか……それはそれはおめでとうございます。」

キョン「キズモノにしたのはどこの誰だよ。」

ハルヒ「い、いいの! キョンは私だけのキョンでいなさい、いいわね! 女王様の命令よ!」

鶴屋「やっぱり女王様はいつでもハルにゃんかぁ。」

みくる「でも、私たちは手下じゃないですぅ。」

……なにがあっても、なにが起こっても、あきらめない。その気持ちを支えるのは、大切な仲間。キョン、朝比奈みくる、鶴屋、古泉一樹、そして私。みんなといっしょにいたい……
それがあなたの、女王様の願いでしょう? 涼宮ハルヒ……

女王様ゲーム フィナーレ……


国木田「ねぇ帰っていい? そろそろ帰っていい?」

931: 2008/04/17(木) 05:38:57.81 ID:Ax36dXB90
なんとか1000いく前に終わったな、時間を考えるとフィナーレまで見られる人はそんなにいないと思うけど……
途中ちょっとバイオレンスな展開になっちゃった『女王様ゲーム』、俺は書ききれて満足だ。
最後まで見てくれた人はありがとう!

932: 2008/04/17(木) 05:49:40.51 ID:Ax36dXB90
よし、誰もいないなww
群馬県利根郡の人を中心に今日もがんばって行ってらっしゃい!

966: 2008/04/17(木) 15:39:37.35 ID:Ax36dXB90
>>965
俺は後に退けなくなっただけだけどねww
バイオレンスの部分かエンドの部分にひかれるかで読む人の性格が分かったりするかもなww
書くのに時間ばかりかかってすまんかった、スレ立て主も乙ですた!

引用元: 涼宮ハルヒの命令