1: 2016/06/13(月) 23:09:58.61 
―カフェ―

オーク(78)「う~む、物騒な記事が載っとるなぁ」バサッ

女騎士(80)「どんな記事だい?」

オーク「非行少年グループの間で『ジジイ狩り』『ババア狩り』というのが流行っとるんだと」

女騎士「なんだいそりゃ、ナンパでもしてくれるのかい?」

オーク「そうじゃない。年寄りを見つけては恐喝したり暴行を加えて、金品を奪うんだそうだ」

オーク「年齢が高ければ、人も魔物も区別なく狙うらしい」

女騎士「おやおや、ひどいことする輩もいたもんだ」

オーク「まったくだ。近頃の若いもんってやつは……」
田んぼで拾った女騎士、田舎で俺の嫁だと思われている(1) (マガジンポケットコミックス)
2: 2016/06/13(月) 23:13:18.06 ID:uO4kmIU3o
女騎士「ま、アタシもアンタもほとんど金なんて持ってないし……」

女騎士「そんな連中に襲われることなんてことないだろうけどねえ……」

オーク「ハハハ、そうだな」

女騎士「じゃ、そろそろ出ようかい」スクッ

女騎士「おっとっと」ヨロッ

オーク「おいおい、大丈夫か?」

女騎士「平気さね、これぐらい」

3: 2016/06/13(月) 23:16:48.63 ID:uO4kmIU3o
オーク「やっぱりそろそろ杖を買った方がいいんじゃないか?」

女騎士「いらないよ、あんなもん。アタシは自分の足で歩けるよ」

オーク「だけど、こないだも杖なしで歩いてた老人が転倒して頭打ったなんて記事があったし……」

オーク「遠い異国には、転ばぬ先の杖、なんて言葉もあるそうだ」

女騎士「……それもそうだねえ」

女騎士「もう自分は若いだなんて強がるトシでもないし、杖の一本も買っておこうかねえ」

オーク「その方がいい。じゃあさっそく、近くのショップに寄ろうじゃないか」

4: 2016/06/13(月) 23:19:17.89 ID:uO4kmIU3o
―ステッキショップ―

店員「いらっしゃいませー!」

女騎士「えぇと、歩行を補助するための杖が欲しいんだがね」

店員「はいはい!」

女騎士「なにしろ初めて買うもので、どういうのがオススメなんだろうねえ」

店員「そうですねえ……」

5: 2016/06/13(月) 23:22:47.47 ID:uO4kmIU3o
店員「まず……お客様は女性ですから、軽い杖の方が負担が少なくて済むでしょうね」

店員「また、歩行補助に適した杖の長さはだいたい……」

店員「“自分の身長”を2で割って、そこに数センチ足したぐらいがちょうどいいとされています」

店員「なので、このぐらいの長さがちょうどいいかと……」スッ

女騎士「ふむふむ、なるほどねえ」

店員「あとはグリップやデザインなどを見て、自分のお好みのものを探すのがよろしいかと存じます」

女騎士「どうもありがとう。それじゃ色々試させてもらうよ」

6: 2016/06/13(月) 23:27:19.04 ID:uO4kmIU3o
店員「ありがとうございましたー!」



オーク「おっ、なかなかいい杖じゃないか」

女騎士「これでアタシも晴れて杖デビューってわけだねえ」コツコツ

女騎士「買う前は、杖なんか持ったら余計老けちまう、と思ったけど……なんだか若返った気分だよ」

オーク「ここしばらく、自分のための買い物なんかしてなかったろうからな」

オーク「存分に、杖と一緒に散歩を楽しむといいさ」

女騎士「そうさせてもらおうかねえ」カツッ

7: 2016/06/13(月) 23:31:38.99 ID:uO4kmIU3o
女騎士(こうして杖ついて歩くってのも……なんだか新鮮だねえ)

女騎士(昔、初めて剣を持った時のあの気分をふと思い出すよ)

女騎士(ようし、今日はいつもより多めに歩いてみようかねえ)

……

……

8: 2016/06/13(月) 23:37:32.93 ID:uO4kmIU3o
……

……

しばらくして――

女騎士「どうだいオーク? アタシもだいぶ杖で歩くのに慣れてきたよ」

オーク「なかなかサマになってるじゃないか。いかにも貴婦人という感じの雰囲気が漂っとるよ」

女騎士「貴婦人……かい。ふふふ、照れるねえ」

女騎士「じゃあ今日は二人で美術館でも行かないかい?」

オーク「そうだな、美術鑑賞でも楽しもう」

9: 2016/06/13(月) 23:41:04.92 ID:uO4kmIU3o
非行少年「ちょっとそこのお二人さ~ん」ゾロゾロ…

女騎士「なんだい、アンタたちは」

非行少年「お金のない貧しい若者たちでぇ~っす」

非行少年「アンタたち年寄りは若者を支援してやる義務がありま~っす」

オーク(こいつら……まさか、ジジイ狩りやババア狩り!?)

非行少年「ほら、お財布出して」

非行少年「さもないとアンタら、今ここで天国からお迎えがくることになるよ?」

オーク(昔の俺だったら、こんな奴ら屁でもなかったんだが……)

オーク「女騎士、ここは大人しく――」ボソッ

女騎士「いやなこった」

10: 2016/06/13(月) 23:44:00.43 ID:uO4kmIU3o
女騎士「これからアタシはオークと美術館に行くんだ」

女騎士「アンタらみたいなゲスにやる金なんて、1ゴールドもありゃしないよ」

非行少年「おいおいウザイなぁ、このバアさん」

非行少年「よ~し、だったらこいつら駆除しちゃおう」

非行少年「ジジイやババアなんて生きてても仕方ない存在なんだからさぁ」

非行少年「教会も葬儀代稼げて喜ぶだろう……よォッ!」ブンッ



バキィッ!

11: 2016/06/13(月) 23:48:33.58 ID:uO4kmIU3o
非行少年「ぶげぇ……ッ!?」ドサッ



「うわあっ!?」 「リーダーがやられた!」 「やりやがったな、このババア!」

女騎士「ババアを甘く見ちゃいけないよ! この若造ども!」ブォンブォン

女騎士「こっちも近頃、杖のおかげですこぶる体の調子がいいんだからね!」ブォォォォン

女騎士「さあさあ、かかってきな! 一人残らずこの杖で殴り倒してやるよ!」ブンブンブンブン

女騎士「ハイィィィィィィィィッ!!!」

バキィッ! ドカッ! ドギャッ! バキッ! ドゴォッ!



オーク「つえー……」





― 完 ―

12: 2016/06/14(火) 00:22:26.45 ID:Zl09HwSxO
腐っても…もとい老いても女騎士

14: 2016/06/14(火) 01:26:08.69 ID:9xaTz+IWO
そのうち仕込み杖になりそう


引用元: 女騎士(80)「くっ、転ばぬ先の杖!」