1: 2014/08/28(木)23:39:39 ID:AeGI8qJNi
猫「実家に帰ったときだけ、飼い主づらするな」
猫「いちいち抱きかかえるな、うっとうしい」
猫「眠りかけてのときに、あたまにふれるな。寝れん」
猫「その低い声で名前を連呼するのも耳ざわりだからやめろ」
猫「それから、むやみに猫じゃらしで釣るのもだ」
猫「本能のままに追いかけちゃうから」
猫「懐中電灯のあかりで釣るのも、もちろん禁止」
猫「ついでに肉球にさわるのもな」
俺「おまえ、かわいい顔して文句しか言わないな」
7: 2014/08/28(木)23:43:15 ID:AeGI8qJNi
猫「わたしは今年で12年生きたことになる」
俺「知ってるけど。なんだよ唐突に?」
猫「この年になってくると、カラダが重くてしゃあない」
猫「食えるエサの量も減ってくる。出る小便の量もだ」
猫「おまけに階段の手すりに飛び乗ろうとして、失敗する始末」
俺「まあ、いい年だもんなあ」
俺「そんで? それがどうかした?」
猫「もっと労われと言ってるんだ」
俺「これでも気ぃつかってるつもりなのに」
猫「にゃあ?」
俺「唐突にかわいいな、おまえ」
猫「……今のはまちがい。正しくは、ハア、だ?」
12: 2014/08/28(木)23:47:15 ID:AeGI8qJNi
猫「言ってみろ。昨日、自分がなにをしてたのか」
俺「お前も知ってるでしょ」
俺「昨日は一日じゅう寝てて、ちょっとお前と遊んでただけ」
俺「いや、遊んであげたって言ったほうがいいか?」
猫「ふざけるな、遊んでやったのはこっちだ」
猫「だいたいおぬしは、下半身をベタベタさわりすぎだ」
俺「ちょっとしか触ってないじゃん。おまえ、なぜか怒るし」
俺「そうだよ、気になってたんだよな」
猫「ん?」
俺「なんでおまえってさ、下半身さわられるのをイヤがるの?」
16: 2014/08/28(木)23:51:54 ID:AeGI8qJNi
猫「イヤだと感じることにいちいち理由なんてない」
俺「ただ単にイヤってこと?」
猫「そうだ。おまえがそら豆を食べられないのと同じだ」
俺「おっ。感心感心。飼い主のキライなものをおぼえてたか」
猫「ずっと昔に食わせようとしてきたからな、ガキんちょのおまえが」
俺「おぼえてないや。……しかし、テンション落ちるなあ」
俺「あと一時間もしたら東京に行くバスに乗るのに」
俺「お見送りが文句だもんなあ。しかも、猫の」
猫「文句ならまだある。『パシャパシャ』だ」
俺「パシャパシャ? なにそれ?」
18: 2014/08/28(木)23:55:46 ID:AeGI8qJNi
猫「あれだ。そう、スマートホンだ」
俺「ほほう、スマホがわかるか。えらいえらい」
猫「……なでるなら、もっと優しくなでろ」ゴロゴロ
俺「はいはい。で、それが?」
猫「だからパシャパシャだと言ってるだろうが」
俺「ああ、ひょっとして写真のこと?」
猫「そう、それだ」
俺「そういや昨日はあまりに暇だったから、おまえの寝顔を撮ってたんだよな」
猫「あれのせいで、わたしの貴重な睡眠時間が削られたわ」
俺「いつも寝てしかいないんだから、いいじゃん」
猫「おまえの惰眠といっしょにしないでほしい」
俺「どういう意味?」
19: 2014/08/28(木)23:58:01 ID:AeGI8qJNi
猫「わたしがふだんから寝ているのは、
いざというときに力を発揮できるようにするため」
俺「というと?」
猫「もしも獲物があらわれたとき、体力がなくて狩りができなきゃこまる」
俺「こまらないよ」
猫「なに?」
俺「だって、そんなことしなくてもエサもらえるじゃん」
猫「たしかに。しっぽをふって泣けばエサがもらえるからな」
猫「外の世界と比べればなんとチョロイことか、人間は」
猫「ほれ、ニャーニャー。エサくれニャー」
俺「たった今、それ通じなくなったから」
22: 2014/08/29(金)00:02:01 ID:nU8f5FObc
俺「だいたい箱入り娘のおまえは、外に出ないじゃん」
猫「なにを言っている! 数え切れぬほど、外の世界へ飛びだしておるわ!」
俺「ああ、あれね」
俺「いつもオレや母さんが帰ってきて、とびらのすき間から出るやつね」
猫「そうだ。見事な身のこなしだろう?」
俺「アスファルトに足がのったと同時に家に戻ってくるけどな」
猫「それは、あの地面が肉球に容赦しないからだ」
俺「それに。トラックが目の前を横切ってたとき、おまえすごかったぞ」
猫「トラック? ああ、あのデッカイのか」
俺「転げまわりながら、家に帰っていったからな」
24: 2014/08/29(金)00:10:13 ID:nU8f5FObc
猫「外になじめば、おのずとトラックとやらにも慣れる」
俺「たぶんムリだよ。おまえって猫一倍からだ小さいし」
俺「ついでに気も小さいしな」
猫「そんなことはない」
俺「うしろから抱えようとするだけで、ビビって脱兎のごとく逃げるくせに」
猫「警戒心が強いだけだ」
俺「いーや、母さんも言ってた」
猫「なんて?」
俺「『なんであたしが育てると、気もからだも小さく育つんだろ?』って」
猫「……」
26: 2014/08/29(金)00:14:30 ID:nU8f5FObc
俺「外の世界にはキャットフードもジャーキーも猫缶もないからな」
猫「食料を自分で確保せにゃならんことぐらい、わたしでもわかる」
猫「食べるものが、虫やゴミに変わることも」
俺「考えるまでもなく、外の世界が大変だってわかるだろ?」
猫「ふんっ、自分こそ猫の手をかりんと虫も駆除できんくせに」
俺「……そんなことはない」
猫「ヤモリが便所に出たとき一目散に、
わたしを抱えて、便所に連れこんだのは誰だっけ?」
俺「あれは訓練だよ、訓練。万が一のときのな」
俺「おかげでめったにできない狩りが、体験できただろ」
猫「ヤツは壁に張りついてた。けど、にらんだら怖気づいて落っこちた」
猫「あとは一瞬。あれじゃ、訓練にゃあならん」
俺「……今さあ、狩りで思い出したんだけどさ」
猫「どうした?」
27: 2014/08/29(金)00:17:22 ID:nU8f5FObc
俺「そのヤモリ狩ったあとに、なんでオレの部屋に置いた?」
猫「あれはまだ生きてたんだよ」
俺「え? そうなの?」
猫「オスのくせに自分よりはるかにちっちゃい生き物すら
狩れないおまえに狩りの練習をさせようと思って」
俺「いらんわ、そんな気づかい」
猫「からだはちっちゃくても、大きなお世話はできるみたいだな」
猫「まだわたしのほうが偉大だな、うん」
俺「でもまあ、あの行動にはそんな意味があったわけだ」
30: 2014/08/29(金)00:27:38 ID:nU8f5FObc
猫「おぬしたち人間よりわたしたちの時間は短い」
猫「余計なことにさく時間は、もっと短い」
俺「……なるほど」
猫「なんだか嬉しそうだな」
俺「気のせいだよ。それより、寿命で思い出したんだけど」
俺「猫って氏ぬ間際に、人の前から消えるらしいんだよ」
俺「どうしてそんなことをするのか、理由わかる?」
猫「知らん」
俺「え?」
猫「わたし、飼い猫だからそういうのわかんなーい」
俺「……さてはおまえ。オレがバカにしたこと、気にしてるな」
猫「べつに」
31: 2014/08/29(金)00:29:38 ID:nU8f5FObc
猫「人間のすみかは至れり尽くせり。
飼い猫であるわたしには、それがよくわかる」
猫「この家の中にいても、知りたいことを調べることはできるだろう」
俺「実際に猫本人の意見を聞きたいんだよ」
猫「知らんもんは知らん」
猫「だいたい箱入り娘が、この家からどうやって消える?」
俺「それはまあ、そうだけど」
猫「そういうのは、外をうろついてる連中に聞いたほうがいい」
俺「……そうだな」
猫「だけど、ほかの質問になら答えられる」
俺「質問じゃなくて文句ならある」
猫「誰に?」
俺「もちろん、おまえに」
33: 2014/08/29(金)00:35:44 ID:nU8f5FObc
俺「オレの勉強のジャマをしたこと、おぼえてる?」
猫「はて。記憶にないな」
俺「人が受験勉強のために、ノートを机にひろげてたらな、
おまえってばその上にのってきたんだよ」
俺「しかも、何回ノートの上からどかしても、すぐにもどってくるし」
猫「にゃー、ひょっとしてさかりのときのことか?」
俺「そうだよ。勉強してるオレの目の前で、ずっとケツふってたんだよ」
猫「なんだ、そんなことか」
俺「そんなこととはなんだ、そんなこととは」
猫「おぬしは真夏の炎天下に、汗をかいてる人間に文句を言うのか?」
俺「汗かかないおまえが、汗をたとえに使うんかい」
34: 2014/08/29(金)00:36:01 ID:nU8f5FObc
眠くなってきたので
残りは明日に書きます
残りは明日に書きます
47: 2014/08/29(金)21:50:35 ID:i2Om6v8a5
俺「とにかく、さかり時期のおまえは勉強のジャマだったんだよ」
俺「しかも夏だと、毛をまきちらすし」
猫「それもしゃあない」
猫「ずっと同じ毛をまとっていては、不潔だ」
俺「おまえ、風呂に入らないもんな」
猫「誰があんな恐ろしいものに入るか」
猫「全身に水を浴びるなんて……身の毛がよだつ」
俺「12年生きてて風呂に入ったの、5回もないだろ」
俺「そういや。一回、洗ってやろうとしたオレを引っかきまくったよな」
猫「人間の生活習慣を猫におしつけようとしたバツだ」
48: 2014/08/29(金)21:53:39 ID:i2Om6v8a5
俺「トイレとかは数回でおぼえて、感心したのになあ」
猫「それとこれとはべつだ」
俺「ていうか、我が家に来たときのこと、記憶にある?」
猫「うっすらとなら」
俺「すごかったなあ、あのときのおまえ」
俺「もうずっとリビングの中を走りまわってさ」
俺「猫って、こんなに元気な生き物なんだってビックリしちゃったよ」
猫「ずっと狭いケージの中にいたんだ」
猫「子どもだったわたしは、いきなりの広い空間に興奮したんだろ」
俺「二時間ぐらい、転げまわるように暴れてたもんな」
52: 2014/08/29(金)22:00:01 ID:i2Om6v8a5
猫「そっちこそ、おぼえてるのか」
俺「なにを?」
猫「子どものわたしに、たえずベッタリだったこと」
俺「忘れてないよ」
猫「眠りからさめて目をあけると、かならずおぬしの顔が目の前にあったからな」
俺「だって当時のおまえって、メチャクチャかわいかったんだもん」
猫「今は? ……まあいいや」
猫「おぬしはすぐに目をのぞきこんでくるからな。
それもうっとうしかった」
俺「目があうと絶対顔をそらすよな、おまえ」
猫「目をあわせるのは好きじゃない」
猫「そうじゃなくても、おまえは存在そのものがやかましい」
俺「なんだよ、存在がやかましいって」
53: 2014/08/29(金)22:07:40 ID:i2Om6v8a5
俺「まあでも、おまえって子どもキライだよな」
俺「イトコたちが来ると、すぐどっかに隠れちゃうもんな」
猫「あの双子のガキんちょか」
猫「来客が子どもだと、家に入ってくる前にわかる」
俺「どうして?」
猫「子どもの足音は耳が痛くなるから」
俺「なるほど。あいつらドタドタ歩くもんな」
猫「おぬしの足音は、ここ数年でだいぶマシになったな」
俺「オレも成長するんだよ」
猫「からだはちっこいままに見えるが」
俺「うるせー」
55: 2014/08/29(金)22:16:01 ID:i2Om6v8a5
俺「ていうか、おまえって一番母さんになついてるじゃん」
俺「なんで母さんなの?」
猫「愚問だ。お母さんがわたしの世話を一番してくれるからな」
俺「オレだってするじゃん」
猫「どこがだ。エサやりだってときどきしかしない」
猫「シモの世話はまずしない」
猫「気をきかせて、暖房をつけることもしない」
俺「……」
猫「その点、お母さんはおまえとは真逆だ」
猫「よく気がつき、よく気が利く」
猫「どちらになつくか、考えるまでもない」
56: 2014/08/29(金)22:19:35 ID:i2Om6v8a5
猫「なにより、お母さんの足音は静かだ」
俺「はいはい。おまえは世話してくれて、静かな人間が好き、と」
俺「あれ? でも、オレが寝てるときはおまえって、
オレの上にのってくるよな」
猫「おぬしは体温が高くて、寝床にはちょうどいいからな」
俺「うるさいんじゃないのかよ」
猫「寝てるおぬしがたてるのは、寝息だけだからな」
俺「ふーん」
猫「ただし、春のおまえは寝てるときもやかましいな」
俺「春は花粉症で、鼻がつまってるんだよ」
57: 2014/08/29(金)22:29:14 ID:i2Om6v8a5
猫「ところで。さっきから誰と比べてる?」
俺「え?」
猫「あきらかに誰かとわたしを比較してるだろ」
猫「トイレの話やわたしが家にきたときに、
こんなに猫って元気なんだなって言葉でわかった」
俺「……」
猫「おそらく、前に飼ってた猫のことを言ってるんだろ」
俺「おまえ、あたまいいな。猫のくせに」
猫「おぬしはあたまわるいな。人間のくせに」
59: 2014/08/29(金)22:38:43 ID:i2Om6v8a5
俺「まあ、そのとおりなんだけど」
俺「おまえの前にも、いっしょに住んでた猫がいたんだよ」
猫「それで?」
俺「そいつはミルクって名前なんだけど」
俺「野良猫だったんだよ」
猫「誰かからもらったのか?」
俺「ううん。ついてきた」
猫「ついてきた? 野良猫が?」
俺「そう。まだ8歳のときだよ」
俺「学校帰りだったんだけど。
たまたま歩いてるあいつと、目があったんだよ」
俺「そしたら、家までついてきた」
60: 2014/08/29(金)22:50:47 ID:i2Om6v8a5
猫「めずらしいこともあるんだな」
俺「母さんとオレの予想では、たぶん本当によわってたから……かな」
俺「どうしようもなくて、人間にすがるしかなかったんだと思う」
猫「そのすがる相手が、たまたまおぬしだったと」
俺「そういうこと」
俺「真っ白な猫でさ。目の色が左右でちがったんだよ」
猫「ふーん」
俺「おまえもちっさいけど、あいつはもっとちっこかったんだよな」
62: 2014/08/29(金)22:57:17 ID:i2Om6v8a5
猫「そいつはどうなった?」
俺「いなくなった」
猫「……」
俺「うちで育てるようになってから、一ヶ月後にきえた」
俺「もともとおまえとちがって、夜以外は放し飼いにしてたんだ」
猫「だからさっき聞いたんだな、猫が消える理由」
俺「うん。ずっと気になってたんだよ」
俺「もちろん思い当たる場所は全部探したけどさ、見つからないし」
俺「あのときは放し飼いにしてたこと公開して、しばらくは泣いてたな」
63: 2014/08/29(金)23:02:02 ID:i2Om6v8a5
猫「聞く相手をまちがえたな」
俺「かもね」
猫「……」
俺「……」
猫「で、そのあとわたしと会ったわけだ」
俺「そう。なんとなくペットショップに寄ったら、たまたまな」
猫「なんでわたしを飼いたいと思った?」
俺「直感、かな」
猫「もっと具体的な理由はないのか」
64: 2014/08/29(金)23:06:11 ID:i2Om6v8a5
猫「毛並みが美しかったから、とか。
目がくりくりしててかわいかったから、とか」
猫「以前飼ってた猫と似ていた、とか」
俺「真っ白なあいつと、アメショーのおまえは似ても似つかんわ」
猫「それもそうか」
俺「まあでも、なんかいっしょに住みたいな、って思ったんだろうな」
猫「ひと事みたいに言うんだな」
俺「昔の自分のことって、案外わかんないんだもん」
猫「いいかげんなヤツ」
俺「まあね」
猫「……そういえば、わたしもずっと気になっていたことがある」
俺「ん?」
猫「わたしの名前」
65: 2014/08/29(金)23:12:12 ID:i2Om6v8a5
猫「なんであんな名前にしたんだ」
俺「へえ。おまえも自分の名前の由来が気になるのか」
猫「すこし」
俺「……ミルクは、真っ白だったこと。
はじめてあげたのが、牛乳だったからその名前にしたんだ」
俺「ほんとは猫に牛乳ってあんまりよくないらしいけどな」
猫「それが名前の由来なのか。ガッカリだ」
俺「10歳にもなっていないガキんちょが考えたんだぞ」
猫「で、わたしの名前は?」
俺「……おまえの名前かあ」
猫「てきとうに考えたのか?」
俺「まさか」
66: 2014/08/29(金)23:17:56 ID:i2Om6v8a5
俺「なぜかおまえを見てたら、おジャ魔女ドレミってアニメを思い出してさ」
猫「アニメ?」
俺「だから、最初はおまえの名前を『ドレミ』にしようかと思ってた」
猫「ほとんど考えてないじゃないか」
俺「でもそれだと、安直すぎるからさ」
俺「あたまの文字をいろいろ入れかえてみたんだよ」
俺「『ファレミ』とか『ミレミ』とか『ソレミ』とか」
猫「で、最終的に今の名前になったわけか」
俺「うん。三文字ってうっとうしいからな」
俺「それに、その名前だと漢字をあてれたからな」
猫「なるほど」
70: 2014/08/29(金)23:27:58 ID:i2Om6v8a5
猫「よし、もう気になったことも知れたし帰っていいぞ」
俺「ゲンキンなヤツ」
猫「おまえの帰りのバスの心配をしてるんだ」
俺「まだ大丈夫だよ。
ていうか、気づかいとかできるんだな」
猫「ふん。おまえといると疲れるからな、さっさと帰ってほしいだけだ」
俺「しんらつだなあ」
猫「……実際、あまりよくないんだ」
俺「……」
猫「昔に比べると、食欲も減った」
猫「出る小便の量も減った」
猫「階段の手すりにのぼるのを、失敗するようになった」
俺「……」
73: 2014/08/29(金)23:36:52 ID:i2Om6v8a5
俺「……なにかあったら、きちんと言えよ」
俺「オレでも、母さんでも、オヤジでもいいからさ」
猫「おバカなおぬしの前だから、こうしてしゃべってるが」
猫「口は災いのもと。
ふつうの人間の前で、口を開こうとは思わんな」
俺「フツーじゃないのか、オレは」
猫「それに。安心しろ、まだまだ氏んでやらないから」
俺「あたりまえだろ」
猫「……前のヤツが疾走したとき、おぬしは泣いたんだったな?」
俺「うん? そうだけど?」
74: 2014/08/29(金)23:45:43 ID:i2Om6v8a5
猫「もし……もし、わたしが氏んだら、また泣く?」
俺「……」
猫「なぜ黙る」
俺「いや、そういうのって考えたくないから」
猫「考えろ。考えて、想像して」
俺「…………まあ……泣く、かなあ」
猫「ふーん。満足に世話もしないくせに?」
俺「それとこれとはまたべつだろ」
俺「でも、できりゃ泣かせてほしくないな」
猫「安心しろって言っただろ。そう簡単にはくたばらない」
75: 2014/08/29(金)23:56:52 ID:i2Om6v8a5
猫「猫が氏ぬ直前に消える、理由」
猫「すこし考えたら、予想がついた」
俺「え? わかるの?」
猫「あくまでわたしの予想だ」
猫「自分が弱っているときに、敵に襲われたらどうする?」
俺「オレに聞かれても」
猫「ふつうに考えれば、すぐに答えは出るだろ」
俺「困るだろうな。弱ってたら反撃もできないし」
猫「それが、そのまま答えにつながる」
猫「氏の直前ということは、当然弱っているってことだ」
猫「だったら、身を隠すのが最善の策だろう」
78: 2014/08/30(土)00:02:56 ID:6RHahQcJM
俺「そういうことなの?」
猫「猫のわたしが言うんだ、まちがいない」
俺「……」
猫「どうした?」
俺「もし、だよ。おまえの言ってることが本当だったらさ」
俺「ミルクは、オレや母さんを敵だと思って消えたってことになるでしょ」
俺「それに、もしかしたらおまえも……」
猫「わたしは最期までここにいたい。そう思ってる」
猫「それに、ミルクは野良猫だったんだろ」
猫「野生は野生に帰る。ただ、それだけのこと」
81: 2014/08/30(土)00:09:51 ID:6RHahQcJM
猫「ミルクはおぬしに感謝している。絶対に」
俺「断言するんだな」
猫「だって、わたしもそう思ってるから」
俺「おまえ……」
猫「わたしはとっても恵まれてる」
猫「それぐらいは飼い猫のわたしでも、よくわかる」
猫「野良猫だったミルクはわたし以上に、
おぬしやお母さんの施しが身にしみたはずだ」
俺「……そっか」
83: 2014/08/30(土)00:16:21 ID:6RHahQcJM
俺「あー、なんか、うん。すっきりしたよ」
俺「そろそろ行くよ、バスに間に合わなくなるといかないしな」
猫「待て」
俺「ん?」
猫「せっかく知りたいことを教えてやったんだ」
猫「ジャーキーの一本ぐらい、よこしてけ」
俺「へいへい」
86: 2014/08/30(土)00:21:47 ID:6RHahQcJM
俺「……じゃあ、そろそろ本当に行くわ」
猫「次に帰ってくるのはいつになりそう?」
俺「んー、次はやっぱりコタツがリビングに出るころかなあ」
猫「じゃあ、それまでは静かなわけだ」
俺「本当は寂しいんだろ。強がらなくていいぞ」
猫「わたしは本気でおまえをうっとうしいと思っている」
俺「傷つくなあ」
猫「だけど。おぬしがいつ帰ってきも、わたしは確実にここにいる」
俺「おう」
87: 2014/08/30(土)00:23:04 ID:6RHahQcJM
俺「また帰ってくるからな。いってきます」
猫「待っててやる。いってらっしゃい」
89: 2014/08/30(土)00:24:11 ID:6RHahQcJM
おわり
ここまで読んでくれてありがとうございました
91: 2014/08/30(土)00:25:54 ID:ZwZDcDTgN
乙
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地域 Sapporo
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が
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