4: 2022/08/12(金) 21:22:32.77 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「こんばんは。イナ川です」

ᶘイ^⇁^ナ川「これから私が語ります怪談は、身の毛もよだつような、とても恐ろしい話でございます……」

ᶘイº⇁ºナ川「今でもあの時のことを思い出すと、身体の芯がぶるぶると震えますが……ぴさんに脅されているので仕方なく語ります」


ᶘイ^⇁^ナ川「あれは、つい先月のこと……」

ᶘイ^⇁^ナ川「お友達である栞子さんに会うため、虹ヶ咲学園にお邪魔した時の話です──」

6: 2022/08/12(金) 21:25:08.90 ID:JsL6m2YI.net
第一話 ~この校舎はいい造りだ~


ᶘイ^⇁^ナ川「栞子さーん! おーい!」オテテブンブン

栞子「おや、この声は……イナ川さん」

ᶘイ^⇁^ナ川「お久しぶりです!」

栞子「はい。村の一件以来で……」

ᶘイ^⇁^ナ川「栞子さん? どうかしましたか?」

栞子「……あの」

ᶘイ^⇁^ナ川「はい?」

栞子「…………」





栞子「……そちらの好好爺はどなたでしょうか?」

7: 2022/08/12(金) 21:28:41.08 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「嗚呼! 私としたことが、うっかり紹介するのを忘れていました! なんとも愚かしい!」

ᶘイ^⇁^ナ川「この方は稲川良彦さん──芸名は稲川淳二さんです!」

淳二「どうも、栞子ちゃん」

栞子「はあ……。初めまして」

栞子(著名な方なのでしょうか?)

9: 2022/08/12(金) 21:32:56.53 ID:JsL6m2YI.net
栞子「あの、稲川さん」

ᶘイ^⇁^ナ川「はい?」

栞子「あなたではありません。お髭がたくましいほうの稲川さん」

淳二「はい、なんでしょうか?」

栞子「察するに……歩くのに疲れたイナ川さんが、稲川さんをタクシー代わりに利用しているようにお見受けしましたが……」

ᶘイ^⇁^ナ川「すごいです、栞子さん! 大正解です!」

栞子「す、すみません! この子が迷惑を……!」

淳二「いえいえ、いいんですよ。私もイナ川ちゃんとお話できて楽しかったですから」ヘッヘ

栞子「そうですか……。イナ川さん、送っていただいたお礼はしましたか?」

ᶘイ^⇁^ナ川「はっ! 私としたことが、ありがとうを言い忘れていました!」

ᶘイ^⇁^ナ川「淳二さん! ありがとうございました!」

淳二「ははは。こちらこそ、ありがとね」

10: 2022/08/12(金) 21:35:22.08 ID:JsL6m2YI.net
栞子「あの、稲川さん。私からも何かお礼をさせてもらえないでしょうか……?」

淳二「お礼……ですか」

淳二「……嗚呼、それならばちょうど頼みがあります」

栞子「どうぞ聞かせてください」

13: 2022/08/12(金) 21:38:46.72 ID:JsL6m2YI.net
『私たち一向は、虹ヶ咲学園の敷地内に足を踏み入れました』

『それというのも、淳二さんが出した要望が、ニジガク校内の見学だったからなのです』


ᶘイ^⇁^ナ川「へっ……へっ……」テコテコ

栞子「イナ川さん。よければ肩に乗ってください」

ᶘイ^⇁^ナ川「いいんですか!? わーい! その言葉を待ってましたー!」

栞子「……さてはわざと疲れたふりをしていましたね? やれやれ、仕方のない人ですね」

ᶘイ^⇁^ナ川「いぇーい!」チョコン

淳二「かわいいねぇ」

栞子「ええ。かわいさ余って、つい甘やかしてしまいます」

淳二「え? ああ、いえ。そうではなくて……」

栞子「……?」



淳二「この校舎はいい造りだ……」

栞子「……そうですね。私もそう思います」

15: 2022/08/12(金) 21:42:48.36 ID:JsL6m2YI.net
『私たちは学内を一通り回り、最後に部室棟へとやって来ました』


怪談同好会生徒「きゃー! 稲川淳二よー!」

俳句同好会生徒「夏の季語が歩いてるわー!」

淳二「いやはや、どうもどうも」

ᶘイ^⇁^ナ川「…………」

ᶘイº⇁ºナ川「──!」


『ええ。そこは曰く付きだとか、霊が出るだなんて噂はこれっぽっちもない場所でした』

『ですが、その時の私は……妙な胸騒ぎを覚えていたんです』

『嗚呼、なんか変だなぁ……怖いなぁ……』

『今すぐにここから離れたい──ですが栞子さんは何も感じていないようで、どんどん先へと進んでいきました』

16: 2022/08/12(金) 21:45:45.11 ID:JsL6m2YI.net
栞子「稲川さん。ここがスクールアイドル同好会部室です」

淳二「おお、ここが噂の……」

ᶘイº⇁ºナ川「!!」


『ここまで来てようやく、私は胸騒ぎの原因をはっきりと理解しました』

『嗚呼、なるほど。そういうことだったのか……と』


かすみ「あー! 怪談の人ですー!」

愛「いなっちじゃーん!」

エマ「有名な人?」

果林「ええ、夏の風物詩よ」

栞子「やはり名の知れた方だったのですね」

侑「稲川さん、サインください!」

淳二「はいはい。今書きますよ」

侑「……えっ」

17: 2022/08/12(金) 21:49:50.44 ID:JsL6m2YI.net
『がしぃぃぃんっ!!』

『歩夢さんは、稲川さんが伸ばした腕をしっかり握っていました』

『恐らくは折るつもりで握っていたのでしょう。ミシミシと音を立てていました』


淳二「いたた……いだだだだっ!!」

歩夢「今、あなた……侑ちゃんの胸を触ろうとしてましたよね?」

淳二「さ、サインを……! サインを書こうと……」

歩夢「あ?」

侑「歩夢、やめて! 稲川さん痛がってるじゃん!」

歩夢「侑ちゃん……」


『侑さんの制止で、歩夢さんは力を弱めてしまい……』


淳二「馬鹿めっ! わしの目的は最初からお前じゃ!」

ᶘイ^⇁^ナ川「逃げて! 栞子さん!」

栞子「!?」


『解き放たれた性の権化は、一目散に栞子さんへと飛び掛かりました』

18: 2022/08/12(金) 21:52:13.28 ID:JsL6m2YI.net
ランジュ「ラァ!」呀!

淳二「ぐへっ」バタッ


栞子「ランジュ……!」

ランジュ「栞子、怪我はない?」

栞子「はい、ありませんが……」

ランジュ「よかったわ……。大切な栞子に何かあったらどうしようかと……」

栞子「あの、ランジュ……」

ランジュ「何かしら? お礼なら結構よ」

栞子「……やりすぎです」

淳二「あがっ、あがが……」ピクピク

ランジュ「ラァ……」


『その後、淳二さんは警察に連行されていきました』

『淳二さんはどうやら最初から、栞子さんの身体が目的だったみたいです』

20: 2022/08/12(金) 21:55:49.35 ID:JsL6m2YI.net
栞子「……イナ川さん」

ᶘイ^⇁^ナ川「……」

栞子「あなたに話しかけています」

ᶘイ^⇁^ナ川「あ、私でしたか!」

栞子「先程の、稲川淳二さん……有名な方らしいので調べてみたんですが……」

栞子「……おかしなことに、2時間ほど前から茨城で公演を開いているようなんです」

ᶘイ^⇁^ナ川「むむ? でも淳二さんは私たちとずっと一緒にいましたよ?」

栞子「そうですよね……?」

ᶘイ^⇁^ナ川「本物の淳二さんは茨城に……? では……」



しおいな「……さっきの人、誰!?」

―――――

――

21: 2022/08/12(金) 22:00:01.08 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「私たちは稲川淳二という人間を、口髭だけで判別していますが……」

ᶘイ^⇁^ナ川「それ故に、似た感じの口髭の好好爺がいれば、稲川淳二と見分けがつかなくなってしまう……」

ᶘイ^⇁^ナ川「思い込みとは怖いものですねぇ……」


ᶘイ^⇁^ナ川「おっとすみません。話が脱線してしまいました」

ᶘイ^⇁^ナ川「……え? 今のが本編じゃないのかって?」

ᶘイ^⇁^ナ川「いえいえ、私が恐ろしいと感じたのは、これとは別の話でございます」

ᶘイ^⇁^ナ川「話は戻り、栞子さんと偽淳二さんと共に同好会部室に訪った時のこと──」

ᶘイ^⇁^ナ川「栞子さんの肩から降りた私は、踏まれないように安全な場所を求めてヨタヨタ歩いておりました」

ᶘイ^⇁^ナ川「もちろん、上を見ながら」

ᶘイ^⇁^ナ川「へっへ。私はサイズ的に、視線を上にするだけでスカートの中が覗き放題なのでございます」

ᶘイº⇁ºナ川「そんな私に激震が走りました」

ᶘイ^⇁^ナ川「栞子さんのくまさんパンティーや歩夢さんの真っ赤な勝負下着も気になりましたが……」



ᶘイº⇁º;ナ川「まさか、同好会のあの人が…………ノーパンとは……」

ᶘイº⇁ºナ川「…………」

ᶘイ^⇁^ナ川「嗚呼、工口いなぁ……工口いなぁ……」


第一話 おわり

22: 2022/08/12(金) 22:04:57.47 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「突然ですが、皆さんの好きな食べ物はなんでしょうか?」

ᶘイ^⇁^ナ川「え、私ですか? 私が好きなのは……」

ᶘイ^⇁^ナ川「もちろん、ぴさんが作ってくれるカップヌードル!」

ᶘイ^⇁^ナ川「カップヌードルは調理が難しく、手間暇かかりまくる世界一大変な料理だそうで」

ᶘイ^⇁^ナ川「『そんな料理を毎日作ってあげてるんだから感謝しろ』と、ぴさんはよく言います」

ᶘイº⇁ºナ川「しかし私は知っています。お湯を注いで3分で完成することを……」


ᶘイ^⇁^ナ川「今回私が語りますのは、そんなカップヌードルよりも長いお話です」

ᶘイº⇁ºナ川「長く、長く、とても長いお話──」

23: 2022/08/12(金) 22:04:57.57 ID:H81U/mEu.net
おい勝手に終わるな

24: 2022/08/12(金) 22:07:31.70 ID:JsL6m2YI.net
第二話 ~このラーメン屋はいい外観だ~


栞子「……すごい行列ですね。まさに長蛇と言ったところでしょうか」

ᶘイ^⇁^ナ川「栞子さん! 早く並びましょう!」

栞子「はいはい。わかってますよ」

ᶘイ^⇁^ナ川「あ、見てください! 翠い看板です! きれいな色ですねぇ~」

栞子「イナ川さん。余所見していると危ないですよ」

ᶘイ^⇁^ナ川「はーい!」

25: 2022/08/12(金) 22:11:03.46 ID:JsL6m2YI.net
栞子「家系ラーメンは……初めてです」

ᶘイ^⇁^ナ川「!」

ᶘイ^⇁^ナ川「私は2回目なので、先輩ですね!」

栞子「そういうものでしょうか……?」

ᶘイ^⇁^ナ川「わからないことがあったら、この先輩になんでも訊いてください!」エッヘン

栞子「ふふっ。……ええ、頼りにしてますよ」

26: 2022/08/12(金) 22:14:23.80 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ・᷄⇁・᷅ナ川「それにしても長い列ですね~」

栞子「あなたは私の手に座ってるだけじゃないですか。文句言わないでください」

ᶘイ^⇁^ナ川「へっへ」

ᶘイ^⇁^ナ川「あ、栞子さん! しりとりしましょう!」

栞子「そうですね。時間潰しにもなりますし」

ᶘイ^⇁^ナ川「では私から! しりとりの『り』!」

ᶘイ^⇁^ナ川「り……り……」

ᶘイ^⇁^ナ川「…………」

ᶘイº⇁ºナ川「負けました」

栞子「なぜ始めようと思ったんですか……」

ᶘイ^⇁^ナ川「しりとり、栞子さんから始めてください!」

栞子「では……『倫理』」

ᶘイ・᷄⇁・᷅ナ川「続ける気あるんですか?」

27: 2022/08/12(金) 22:19:51.16 ID:JsL6m2YI.net
栞子「かなり進みましたが……列はまだまだ長いですね」

ᶘイ^⇁^ナ川「あ、見てください! 少し先のところで列が途絶えています!」

栞子「あそこがお店なのでしょうか」

ᶘイ^⇁^ナ川「きっとそうです!」



栞子「……曲がり角で先が見えなかっただけでしたね。まだまだ続いています」

ᶘイº⇁ºナ川「既に30分近く並んでるんですけどね……」

ᶘイº⇁ºナ川「お腹空きました……」グー

栞子「どうしますか? 店に着くまで先は長そうですし、別のお店に……」

ᶘイ^⇁^ナ川「いえ! ここまで並んだ労力がもったいないので、このまま並び続けましょう」

栞子「コンコルド効果ですね……。まあいいでしょう、イナ川さんも一緒にいてくれますし」

ᶘイ^⇁^ナ川「はい!」

28: 2022/08/12(金) 22:23:40.44 ID:JsL6m2YI.net
待機客a「おい店はまだかよ……」

待機客b「かれこれ3時間は並んでるぞ……」

栞子「後ろに並んでいる方も苛立っているようですね」

ᶘイ^⇁^ナ川「私たちもかれこれ1時間近く並んでますしね……」


栞子「……!」

ᶘイ^⇁^ナ川「列が道路で分断されてます……!」

栞子「次、信号が青になったら走りますよ」

ᶘイ^⇁^ナ川「はい!」

栞子「落ちないよう、しっかり捕まっていてくださいね」

ᶘイ^⇁^ナ川「ぎゅー」

栞子「……行きます!」


『私たちはなんとか赤色に変わる前に渡り切り、前の人に追いつきました』

29: 2022/08/12(金) 22:28:08.15 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「!」

ᶘイ^⇁^ナ川「栞子さん!」

栞子「……ついに、ですね」

ᶘイ^⇁^ナ川「ここのホテルの中にお店があるんですね!」

栞子「あまり想像がつきませんが……」

ᶘイ^⇁^ナ川「楽しみです! 栞子さんは?」

栞子「ええ、とても楽しみですよ」


ᶘイ^⇁^ナ川「前の人達はもれなく、エレベーターに乗ってますね……」

栞子「……7階で止まりました」

栞子「エレベーター、降りてきます……」

ᶘイ^⇁^ナ川「……私たちも乗りましょう」

30: 2022/08/12(金) 22:31:30.06 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「……7階まで来ました」

栞子「……ここ、客室前の廊下ですよね? まだまだ列は続いています」

栞子「いくらなんでも、このようなところに列ができるとは思えないのですが……」

ᶘイ^⇁^ナ川「ですね……」

栞子「イナ川さんは先輩ですから、この不思議な状況について何かわかりませんか?」

ᶘイ ˘ ⇁ ˘ ナ川「…………」

ᶘイ^⇁^ナ川「わかりません!」

栞子「そうですか。それは困りましたね」


『それから列はスタッフ用の通路に入り、階段で下へ降りて、そのままホテルの裏口から外へと出ました』


栞子「ホテルを通り抜けしただけ……? 一体なんだったのでしょうか?」

ᶘイ^⇁^ナ川「列、まだ終わりませんね」

栞子「ですね」

31: [ここ壊れてます] .net
『その後もちょこちょこと前進しながら、横断歩道を越えていき、宛てのない進行を続けました』

『そうしてしばらく歩いていると……栞子さんがふと気付きました』


栞子「……あの翠い看板、3時間程前にも見ましたよね?」

ᶘイ^⇁^ナ川「!」

栞子「この周辺の景色にも見覚えがあります……」

ᶘイ^⇁^ナ川「……つまり、どういうことですか?」

栞子「恐らくは……」



栞子「この長蛇の列は、ずっと同じところをぐるぐると回り続けている……のではないでしょうか」

栞子「どこにも行き着くことはなく、永遠に……」

ᶘイ^⇁^ナ川「……なるほど」

栞子「まさに、ウロボロス……」


『私たちは知らぬ間に、蛇に飲まれていたのかもしれません……』

32: [ここ壊れてます] .net
『どれだけ並んでも店には辿り着けないと知り、私たちは即座に列から離れました』


ᶘイº⇁ºナ川「お腹空きました……。もう一歩も動けません……」

栞子「あなたは歩いてないでしょうに」

ᶘイ^⇁^ナ川「へっへ。そうでした!」

栞子「……ラーメン屋、どんな味だったんでしょうか?」

ᶘイ^⇁^ナ川「わかりません。そもそもお店がないなら食べることすら……」


『そう言いながら、先程まで自分達が並んでいた列を振り返ってみました』

『……すると』


栞子「…………」

ᶘイ^⇁^ナ川「…………」

栞子「ラーメン屋……です」

ᶘイ^⇁^ナ川「……はい」

栞子「……いい外観、ですね」

ᶘイ^⇁^ナ川「…………はい」

―――――

――

34: 2022/08/12(金) 22:53:06.58 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「もし、あのまま並び続けていたとしたら……私たちはあのラーメン屋に入ることができたのでしょうか……?」

ᶘイ^⇁^ナ川「……そう考えると、すごくもったいないことをした気分になってしまいます」

ᶘイ^⇁^ナ川「でも、まあ……」

ᶘイ^⇁^ナ川「カップヌードルの素晴らしさを再認識できたので、よしとしましょう!」



ᶘイ^⇁^ナ川「……あ。そろそろお湯を入れて3分が経ちます」

ᶘイ^⇁^ナ川「それではこの辺で失礼いたします……」


第二話 おわり

35: 2022/08/12(金) 23:00:48.83 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「……これは、栞子さんが生徒会長になって間もない頃のお話」

ᶘイ^⇁^ナ川「今でも思い返すたびに、背筋がゾクッとします……」

ᶘイ^⇁^ナ川「日常にありふれた、よくあるお話……」

ᶘイ^⇁^ナ川「それなのに、どうして私はこんなにも恐怖を感じるのでしょうか……?」

ᶘイ^⇁^ナ川「その理由は、皆さん自身で確かめてみてください──」

36: 2022/08/12(金) 23:08:05.75 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「栞子さん! 栞子さん!」

栞子「しーっ。イナ川さん、生徒会室では静かにしていてください」

ᶘイ^⇁^ナ川「……はい」シュン

副会長「会長。この件なのですが……」

栞子「はい、どれどれ……」


ᶘイ^⇁^ナ川「暇です~」

ᶘイ^⇁^ナ川「……おや?」

ᶘイ^⇁^ナ川「この窓から部室棟が見下ろせますね」

ᶘイ^⇁^ナ川「どれどれ、同好会の皆さんは練習に励んでいるでしょうか~」

ᶘイ^⇁^ナ川「…………」

37: 2022/08/12(金) 23:12:01.04 ID:JsL6m2YI.net
『部室棟の屋上には、同好会の面々が揃っていました』


『マネージャーの侑さんを始め』

『歩夢さん』

『かすみさん』

『しずくさん』

『果林さん』

『愛さん』

『彼方さん』

『せつ菜さん』

『エマさん』

『璃奈さん』

『ミアさん』

『ランジュさん』





『栞子さん』

38: 2022/08/12(金) 23:20:54.88 ID:JsL6m2YI.net
『私はほぼ反射的に、後ろを振り返りました』


ᶘイº⇁º;ナ川「……」

栞子「ええ。ですから予備案をいくつか用意しておいて……」


『そして、もう一度屋上を確認』

『そこには、間違いなく三船栞子の姿があります』

『今、生徒会室にいるはずの栞子さんが、何故か部室棟で同好会メンバーと混じり、練習している……』

『つまり、同じ人間が同時に二人、別々の場所に存在していることになります』


ᶘイº⇁º;ナ川「……栞子さん」

栞子「はい。どうかしましたか?」

ᶘイº⇁º;ナ川「……いえ、なんでもないです」


『私の目の前にいるこの栞子さんは本物だと、根拠はないけど確信していました』

『だとすると……』


ᶘイº⇁º;ナ川(向こうにいる栞子さんは、一体何者……!?)

39: 2022/08/12(金) 23:29:10.08 ID:JsL6m2YI.net
栞子「……それでは今日はここまでにしておきましょうか」

栞子「さて、イナ川さん。同好会へ行きますよ」

ᶘイº⇁ºナ川「!?」

栞子「……どうかしましたか?」

ᶘイº⇁ºナ川「あ、いや……」


『二人の栞子さんを会わせてはいけないという直感が働き、私は同好会へ向かうのを阻止しようと試みました』

『しかし、私がなんと言って止めればいいものか思案している間に、栞子さんはズンズン近づいていきます』


ᶘイº⇁º;ナ川「し、栞子さん! 今日はいいお天気ですね!」

栞子「そうですね。絶好の練習日和です」

ᶘイº⇁º;ナ川「日和ではありません!」

栞子「イナ川さん……?」


『そうこうしている内に……』

『着替えを済ました栞子さんは、屋上に到着してしまいました』

40: 2022/08/12(金) 23:36:31.67 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイº⇁º;ナ川「…………」


『そこに、もう一人の栞子の姿はありませんでした』


ランジュ「栞子。おかえりなさい」

栞子「……? ただいま帰りました?」

ᶘイº⇁ºナ川(見間違い……だったのでしょうか?)

41: 2022/08/12(金) 23:41:59.55 ID:JsL6m2YI.net
『その後、普通に練習は行われ、何事もなく終わりました』


ᶘイ^⇁^ナ川(やっぱり気のせいでしたね!)

ᶘイ^⇁^ナ川(栞子さんが二人もいるはずありません!)

栞子「イナ川さん。一緒に帰りましょうか」

ᶘイ^⇁^ナ川「はい!」



ᶘイº⇁º;ナ川「──!」


『突き刺すような視線を背中に感じていましたが……』

『私は気付かぬふりをして、栞子さんと共に家路に着きました』

―――――

――

42: 2022/08/12(金) 23:47:10.90 ID:JsL6m2YI.net
ᶘイ^⇁^ナ川「結局のところ、あれが幻だったのかどうかはわかりません」

ᶘイ^⇁^ナ川「私自身、栞子さんに関して思うところがあったため、あのようなドッペルゲンガーを見たのかもしれませんし……」

ᶘイ^⇁^ナ川「……いえ、余り深く話すべきではないですね」

ᶘイ^⇁^ナ川「それではいつものやつで、この話は締めましょうか」



ᶘイ^⇁^ナ川「嗚呼、怖いなぁ……怖いなぁ……」


第三話 おわり

43: 2022/08/12(金) 23:49:10.67 ID:6jEMY3oH.net
ドッペルゲンガーはお前だろうがイナ川

44: 2022/08/12(金) 23:49:22.86 ID:WourCB3+.net
こわい

46: 2022/08/12(金) 23:53:32.26 ID:QALfNrT0.net
イナ川がいるせいであんま怖くねえだろ

53: 2022/08/13(土) 08:02:39.88 ID:WGSbO+Cr.net
イナ川は肩に乗るサイズなのか

引用元: 栞子「夏といえば」ᶘイ^⇁^ナ川「ホラーです!」