28:◆It3qR4pyLQ  2011/07/11(月) 01:35:09.27 ID:x2kGGNJ10

   『早苗の熱い熱い温泉物語』

29: 2011/07/11(月) 01:36:22.78 ID:x2kGGNJ10
「か~ぜを~しり~た~い♪」
 大量に立ち上る白い湯煙の中、泡立てた手拭いで背中を洗っていた。
 おびただしい数の蝋燭で荒削りの黒い岩壁を埋め尽くした巨大な浴場に、他の客は見当たらない。
 歌声は岩壁と硫黄温泉の湯面に反響し、暗く湿った空間に、余韻を残して大きく響いた。
 私は先日懸賞に応募して手に入れた先約チケットを使い、閑散とした地底の地獄温泉を、実に爽快な気分で堪能していた。
「あら早苗さん、ご機嫌よう」
 そこへ、ぺたぺたと、水音の混じった足音が背中に近づいてきた。
「ごきげんよう」
 うっすらどこかで聞いたことのある気のする声に向かって振り向いて返事したが、その声の主が誰なのかは分からなかった。
 薄暗い上に湯気で顔が見にくいというのもあるが、自分を見下ろす、その白くて落ち着いた顔が、今までに見知った中にあるようには思われなかった。
 しかしきっとどこかで会っているのだろうから、邪険にするわけにもいかなかった。
「早苗さんも懸賞ですか?」
「ええ、本当は三人分当てたかったんですけど、さすがに無理でしたね」
 名前の分からない相手に、どんな態度を取るべきか決められないまま、当たり障りの無い会話をすることにした。
 その人物は早苗の隣に竹の椅子を置いて腰を下ろし、浴槽から手桶で湯を汲み、頭からかぶった。
 湯が彼女の紫色の髪、肩、丸い乳房、白い良い腹、肉付きの良い尻を経て、やがて岩の床に勢いよくぶつかる。
 飛沫が激しく跳ね上がり、重い水音が浴場に響いた。
 謎の人物は、肩までくっついた髪から雫をぽたぽた垂らして、上品に微笑んだ。
「気持ちいいわねえ」
「ええ、本当に」
 それには心の底から同意した。

 肩を並べて、湯船に肩まで浸かっていた。
「守矢の方々は温泉、お好きそうですね」
「ええ、諏訪子様と神奈子様も一緒ならもっと良かったんですけど」
 二人の声が暗い岩の浴場に篭る。
「と言うことは、もっと早くに来れば私が一人風呂を味わえたのね。これは惜しいことをしたわ」
 そう言って、私より一回りは年上に見える首の細い女性は明るく微笑む。
 気品のある優雅な様子の彼女に、その身元を確かめる無礼をする気にはならなかった。
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30: 2011/07/11(月) 01:37:36.76 ID:x2kGGNJ10
 湯船から上がり、髪を洗うことにした。
 動物の脂で作られたと思われるレンガのような無骨な石鹸を手で擦って泡立てて、髪に付けていく。
 髪が多いので、髪全体を泡で飾るまで、何度も何度も同じ動きを繰り返さねばならなかった。 
「手伝うわ」
 湯船から女性が立ち上がる水音がして、ぺたぺた足音が近づいてきた。
「悪いです」
 一応断った。
「その長い髪に触りたいの」
 女性はもう一つの動物石鹸を隣の席から持ち出し、泡立て始めた。
 作業はすぐに終わった。
 滑らかな手触りの髪を手ごろな束にし、指を櫛のように差し入れ、梳くように軽くしごいていく。
 水気を帯びた自分の髪を触るのが気持ちよかった。
 私と同じように髪を洗う女性をちらりと見ると、目が合った。
「綺麗な髪。うらやましいわ」
 大事な髪を他人に触られるのはあまり経験の無いことだったが、女性の好意は素直に受け取ることにした。

 次は女性が髪を洗い始めた。
 手伝うことも無いので湯船からその様子を眺めていた。
 細い首と肩に対して、胸元と腰周りの肉付きが良かった。
 お尻は大きい方がいいのかどうか分からない私は、女性の胸の大きさにだけ少し嫉妬した。
 女性は泡まみれの頭に指を立て、わしゃわしゃ音を経てて掻いている。
 無防備に晒している脇には、当然あるべき毛が立派に生え揃っていて、少々気恥ずかしくなった。

 日々、脇を晒しながら生活している自分はいつも腋毛は焼いているが、この女性にはそのような習慣は無いらしい。
 恥ずかしがっているなら、人前であんなに両手を挙げて頭をがっしがっしすることもない。
 幻想郷では、私のように腋毛を処理する者の方が珍しいのかもしれない。
 そういえば博麗の巫女の方はどうなのだろう。
 彼女はもしかしたら年齢的にまだ生えていないのかも知れない。
 生えるようになったら私と同じように焼くのだろうか、それとももう焼いているのか。
 私は女性の腋毛が気になって、しばらくそのことにとらわれていた。

31: 2011/07/11(月) 01:38:51.18 ID:x2kGGNJ10
 再び肩を並べて熱い湯船に浸かっていた。
「早苗さんは女の体に興味がおありで?」
 女性は細くいやらしい目つきだった。
「え、いえ、そんなわけでは」
 視線がばれていた後ろめたさと、自分を誤解されつつある焦りで、まともな弁明が出来なかった。
「もっと見せてあげましょうか?」
 女性は肩をくっつけてきた。
 なんとも妙な目つきで私の胸や腰元を観察している。
「あ、あの、もしかしてあなたは、女の体に興味がある人なのですか?」
 ようやく反撃の言葉を思いついた。
「ええ」
 が、あっさり返されて、相手には毛ほどのダメージも与えられなかった。
「早苗さんかわいいから。それに髪も綺麗」
 敗勢に立たされて必氏に二の矢をつがえているうちに、また一つ押される。
「私は、その」
 名前の分からない相手、だが相手は自分のことを知っている。
 その負い目のような気持ちもあって、私は女性を振り払うことが出来なかった。
 何も策を講じられないまま、女性の手が湯船の中で、腰に回された。
 熱い硫黄温泉とは違う、他人の手の温もりと柔らかさが、偶然ちょうど私の敏感な部分を触った。
 意思とは別に、恥ずかしい声が出た。
「ここが弱いの? もっと触ってあげましょうか」
「い、いえ、結構です」
 口ではそう言うも、私は抵抗しなかった。
 負い目もあるが、一旦触られてしまえば、なんだか別に少し体を触られるくらいどうってこと無いような気分だった。
「かわいい」
 が、女性は正面に回りこみ、私の伸ばしている足に跨るような格好になった。
 まさかそこまで本格的にするとも予想しておらず、さすがに逃げようとした。
 しかし既に足を封じられ、身動きが取れなかった。
 女性が首筋に舌を這わせた。
 私は「あの」とか、「だめですよ」とか口に出していたが、それはどう聞いても逆の意思を表してしまっていると、自分でも分かった。

32: 2011/07/11(月) 01:40:09.02 ID:x2kGGNJ10
 ……二人で風呂を上がった。
 体を拭いて着物を着る間、どちらも何も言わなかった。
 一見地味な白い装束に、群青色のフード。
 女性が着物を着終わると、ようやく女性が誰か分かった。
 聖輦船の騒動が起こったときに対峙したことがある。
「部屋、どこ?」
 脱衣所を出る時、一輪が聞いた。

「意外です、一輪さんが、その」
 旅館の長い廊下を歩きながら、ぽつり。
「あの船は、密室に女しか居ないからね、長年住んでるとそうもなるわよ」
 そういうものかも知れないと、なんとなく納得した。
 私達はさとりに掛け合い、一輪と部屋を同室にしてもらった。

「すぐにお料理をお持ちしますので少々お待ちを」
 さとりの従者らしき猫の妖怪が丁寧にお辞儀して引っ込んだ。
 布団は既に部屋の中央に二つ並んで敷いてあった。
 色即是空と書かれた掛け軸が床の間に掛けてある。
 その下には小奇麗な壷が置いてあり、互い違いの棚には一輪挿しが飾ってある。
 耳を澄ますと、暗い岩肌の景色の窓の向こうで、何の動物か分からない鳴き声がした。

「結構普通よね。地底の旅館だからもっと悪趣味なものだと思ってたわ」
 二人で長い机の前に正座していた。
 一輪はフードを脱いで棚に置くと、部屋の隅に積まれた座布団を持ち出し、自分の座布団に重ねた。
「早苗さんも要る?」
 さらにもう一枚持ち上げ、こちらを見た。
「はい、やりたくなりますよねえ」
 二人で仲良く笑った。

33: 2011/07/11(月) 01:41:22.63 ID:x2kGGNJ10
 料理は月並みだが、如才の無いものだった。
 鯛の尾頭付き。河豚や海老が入った海鮮鍋。そして肉や野菜の小さな皿が合わせて十ほど。
「魚や野菜はどこから調達したのかしら?」
「やはり、上からでしょうか」
「そうよねえ。こんな辺鄙なところにまで調達する筋を作るの大変そうね」
「でも、お酒はすごいですね。さすが地底というところでしょうか」
「お酒以外の娯楽もあまり無さそうだしねえ」
 二人の前の長い机には、鍋や皿の他に、大量の様々な色と大きさの酒瓶が置かれていた。
 その数、およそ三十。
 さらに床の間には先ほどの壷の代わりに立派な作りの酒樽が置かれた。
「全て飲むのは無理そうですねえ」
「鍋や皿は、料理というより、酒のつまみと考えた方がいいわね」
 これでもかという量の酒に、一輪は半ば呆れながらも、嫌な顔はしていなかった。

 地底では日が差さないせいか、時間の感覚が無くなっていた。
 私は飲んでは休み、飲んでは休みを繰り返し、いつぞやの博麗神社での失敗をせぬよう気をつけていた。
 一輪は酒を水のようにすいすい飲み干し、わんこそばでもやっているように、次々と枡に酒を注いでは、ことごとく空にした。
「ちょっと疲れたわ。私はちょっと休憩よ」
 やがて一輪は酒のつまった自分の腹を撫で、仰向けに寝転がった。
 その顔に特に変わった様子は無く、風呂から上がった時よりも白かった。
「一輪さん、強いんですね」
「まあね。さすがに地底の鬼には負けたけど」
 鬼と比べたことがあるのが既におかしいのだが、敢えて言うことでもないと思った。
「私はあまり強くありません。飲みすぎると気持ち悪くなってしまいます」
「気をつけなさいよ。ここにある酒を全部飲まないとダメって訳じゃないから」
「ええ、分かっています」

34: 2011/07/11(月) 01:42:36.23 ID:x2kGGNJ10
「あらまだ夕方くらいだったのね。もう夜のつもりだったわ」
 一輪は部屋の隅で細い煙を立てている香時計を覗き込んで言った。
「まだそんなもんですか。私はもう、いっぱいいっぱいですよ」
 豪華な料理と酒を飲んで食べて、既に胃袋がきつくなっていた。
 私は袴の帯を緩めた。
「ふふ、そうしてると、とっても色っぽいわよ。赤い顔で、かわいいの晒して」
 大人っぽい笑みで言われて、袴の隙間から、股間の毛まで見えているのに気付いた。
「し、失礼しました」
 慌てて袴を引っ張りあげて、それを隠した。

 私達は馬が合った。
 肩を並べて皿をつつきながら飲んで、お互いの主が運営に苦労していることや、髪のことや、いつかの異変のことなどを、楽しく話した。
 私は一度従者を呼び、お湯をもらって備え付けの茶を淹れてすすっていた。
 私を見つめる一輪は、表情こそずっとお上品だが、時折思い出したように、猛烈な勢いで酒を飲んだ。
 枡を止めずに傾けて鬼ころしを一息に飲む一輪の様子に、私は何か不思議な魔法を見せられているような気分になった。

「早苗って呼んでいい? さん付けは他人行儀だわ」
 新しい酒瓶を開けながら、一輪が聞いてきた。 
「いいですよ」
「それで私のことも一輪、って呼んで」
 少し意外だった。
「年上ですよね?」
「年なんて、大した意味を持たないわ。それよりも各々の意思の方が重要よ」
「意思、と言いますと?」
「私は早苗と対等になりたいのよ。だからずっと私がお姉さんみたいに見られるのは嬉しくないの」
 一瞬だけ、寂しそうな顔をしたように見えた。

35: 2011/07/11(月) 01:43:50.10 ID:x2kGGNJ10
 それからまたささやかな宴会が続いた。
 いつの間にか互いに多少くだけた態度になった。
 呼び方を変えると、自然に一輪との距離も縮まった。
 私も一輪もそれとなく座布団を近づけ、肩の触れるかどうかいうくらいになった。
「仲良くなりたいと思ってるのは、単なるお友達としてではないの」
 私の耳に近い場所で、ささやくように一輪が話した。
 様々な話題を経て、そろそろ核心に触れようとしているようだった。
 香時計の火はすっかり消えていた。

 私はその話題を一輪が切り出すのを待っていた。
「私は女の体に興味があるの」
「ええ」
「早苗の体に興味があるの」
「いいですよ」
 それは酒のせいか、それとも私もそうなのか、どちらでもよかった。
 一輪の体に、私も興味があった。

 布団の上で向かい合って座って、上着を開かれた。
「これは?」
「ブラジャーっていうんですよ。外の女性は形が崩れないようにこれを着けてるんですよ」
「そう、だから早苗はこんなに可愛い形をしているのね。ウチのかしらにも教えてあげなくちゃ」
 一輪は子供っぽい無邪気な顔で笑った。

 一輪に見つめられている。
 深い群青色の瞳には私の顔が映っていた。
 どちらともなく口を近づけた。
 唇が触れると一輪は私を押し倒した。

36: 2011/07/11(月) 01:45:04.59 ID:x2kGGNJ10
 激しい接吻だった。
 上品にしていた一輪が、今まで溜め込んでいた欲望を満たそうとするような、乱暴な接吻だった。
 肺の空気を強引に吸われ、息が出来なかった。
 一輪の舌が、私の舌に絡む。
 彼女の舌から逃げるように私は舌を動かした。
 それを追いかけてなお絡みつく彼女の舌。
 舌の側面も裏側も、余すところなく舐め尽された。
 口の中の鬼ごっこをしていると、いつの間にかびっくりするほどの唾液が口の中に溜まっていた。
 どちらの唾液か分からない甘い液を、私は息の出来ないまま飲み込んだ。
 自分の喉が上下し、ゴクリと大きな音がした。
 それが合図だったかの様に、一輪は私の口を開放した。

「一輪、すごいよ。私すごく興奮してる」
 ぼんやり雲がかったような意識で、心臓がかつてないほど激しく鼓動している。
 肺を動かす筋肉が引きつったような奇妙な感覚がした。
 自分の腹が遠慮がちにうずいているのも感じた。

 お互い服を脱ぎ捨ててその辺に投げ捨てた。
 抱き合ってまた口付けした。
 今度はすぐ口が離れ、一輪は私の首筋を舐め、筆で字でも書くように舌先をもっと私の体の下の方へ滑らせた。
 乳房の周りを強めに揉まれながら、乳頭辺りを舌で可愛がられる。
 接吻された時から、自分の乳首が張り詰めているのが分かっていた。
 それがはじいたり噛まれたりして、一層硬くなっていく。

 ふと、一輪の乳首もそんな風になっているように見えた。
 私は彼女の乳首を指で触った。
「うふ」
 一輪は楽しそうに私を見返した。

37: 2011/07/11(月) 01:46:18.23 ID:x2kGGNJ10
 しばらくそうやって遊んでいると、一輪は次の行動に移った。
 仰向けの私に跨っていた彼女はすりすりと後ずさり、私の足を開かせてその間にちょこんと座った。
「ちょっと恥ずかしい」
「大丈夫、心配要らないわ」
 
 一輪は私の足を大きく開き、その間に頭を埋めた。
 私の陰毛の林に彼女の鼻が当たった。
 そして私の秘密の部分が、柔らかい物で押し分けられる。
 一輪の舌は、ためらうことなく私の肉の内側まで入り込んだ。
 そして、私の穴の入り口をぬるぬるした液を存分に纏って舐めた。
 つるつる滑る舌の不思議な感覚に、私自信はどんどん濡れていくようだった。

 心臓の鼓動に合わせて羞恥心が膨らむ。
 それと同時に、彼女に舐められているという実感が、えもいわれぬ優越感を呼び起こす。
 やがて彼女が私の核に舌を押し付けると、私は背中を仰け反らせて快楽を味わった。
「ああ」
 と、我慢できず声が漏れる。
 一輪の舌は一瞬たりとも休むことなく、私の核を器用に可愛がる。
「あああ」
 容赦なく叩き込まれる熱い感覚に、私は声をずっと上げ続けた。
 快感という温かい液体を、股間から無理やり体の中に注ぎ込まれるようだった。

 体が火照って汗だくになった。
 一輪は私の中に指を入れた。
 すっかり解れた私の穴は、すんなり指を受け入れた。
 中で動かされると、単なる性感とは違う重い快楽を感じた。

「不思議な感じ」
「こっちで果てるのが一番気持ちいいのよ」
 私は一輪に全てを任せることにした。

39: 2011/07/11(月) 01:47:33.82 ID:x2kGGNJ10
 一輪は指を入れたまま、私の股間に顔を押し付けた。
 異なる二種類の快感が、恐ろしい速さで私の体全体を快楽の海へ沈めていく。
 耐えられない激しい快感に、つい身をよじってしまう。
 たまらず足を強く閉じようとしても、一輪の頭を挟むだけだった。
 私はいつの間にか涙を流し、歯を食いしばっていた。 
 
 やがてすぐその時が気来た。
「んん!」
「我慢しないで大声出していいよ」
「あ! あああ! あああ! ああああ!」
 声を出してもいいのか、と最後の理性で理解した私は、自然に任せて声を出した。

 長い絶頂だった。
 終わった後は、全身に虚脱感が満ちて、体を動かすのが億劫だった。
 股間が汗と愛液と唾液でびしょびしょに濡れているのが分かった。
 一輪は最後に私に覆いかぶさって優しい接吻をした。

40: 2011/07/11(月) 01:49:14.59 ID:x2kGGNJ10
 ……鶏の声で目が覚めた。
 鶏は陽が無くても朝が分かるのだろうか、と、はっきりしない意識で思う。
 隣では何もつけていない白い肩の一輪が安らかな寝顔をしている。
 昨夜の乱れた彼女を思い出して、私は散々可愛がってもらった自分の部分を抑えた。
 女同士で、入れるものも指か舌しかないのに、あれほど気持ちよくなれるということが、未だに信じられなかった。
 そしてふと、私はまだ処Oなんだろうか、と素朴な疑問が浮かんだ。

 私は布団から出て、何も着けないまま窓から外を見た。
 何度見ても、面白みの無い黒い岩肌ばかりの景色。
 窓の下には数匹の犬や猫がたむろっていて、先ほど鳴いたと思われる鶏もそこに居た。
 その鶏に、さとりが餌付けしているのが見えた。
 さとりはこちらに気が付くと、笑顔でひらひらと手を振った。
 自分も真似して手を振った。

 一輪と共に旅館を出立し、人間の里で別れた。
「今度遊びに行くわ」
「私も。きっといつでも会えますよね」
 最後に一輪は周りを見回し、人目が無いことを確認すると、私にそっと口付けた。
 昨夜に比べると、子供のような簡単なものだった。
 唇を離した一輪の顔は、初めに見た時よりもずっと幼く見えた。

おしまい

あとがきなど

 一輪さんはおねえ工口かっこ可愛いと思う。
 早苗は霊夢や魔理沙より一回りおねえさん。

引用元: 東方SS四つ