4:◆2Vn6UAjVKk 2014/03/26(水)14:14:08 ID:iUGQqoDBx
タイトルは

男(幽霊)「よくも呪い頃してくれたなぁ!!」

6: 2014/03/26(水)14:14:21 ID:iUGQqoDBx
男(幽霊)「無いわ、いやちょっと無いわ…ちょっとあんまりだわ…」

男(幽れ)「いや俺も悪いよ?友達と遊びで肝試しに行ったのは悪いよ?」

男(幽r)「でもさ、ちょっと殺されるのはあんまりだと思うんだわ、どうよ?」

霊媒師「同情はするけど私に言われても…」

7: 2014/03/26(水)14:14:58 ID:iUGQqoDBx
男(幽)「なんか矢鱈と恨めしい連呼されて気が付いたらこうだよ、何アイツ?」

霊媒師「いえ、だから…」

男(ゆ)「一般的なイメージで言うと酷い氏に方したり?酷い恨み辛みを持ったまま氏んだりしたんだろうなとは想像つくけどさ、想像つくだけで俺知らねーもん!無関係だもん!」

霊媒師「あn「ふっざけんなあああ!!一発ぶん殴ってやらなきゃ気がすまん!!」

霊媒師「話を聞きなさい!!」

男(y)「はい」

8: 2014/03/26(水)14:15:27 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「はい、じゃあ成仏するにあたって言い遺したい事位は聞いてあげるわ、改めて言ってみなさい」

男(「え?」

霊媒師「言ってみなさい」

男「いや、ちょっと待ってよ、この憤りを残したままこの世を去れって言うのか?」

霊媒師「氏んだんだから男らしくさっぱりと逝きなさい!」

男「やだい!やだい!大体なんだよそんなちんちくりんで偉そうに霊媒師だのなんだの名乗って!」

霊媒師「ちんちくりんで悪かったわね!!どうせ見習いよ!!」

男「見習いだったのか、話付けたいから師匠呼んでこい」

霊媒師「あんたを祓うのが卒業試験なの!大人しく成仏しなさい!二度言わせないの!」

10: 2014/03/26(水)14:16:37 ID:iUGQqoDBx
一時間後

男「ヒデエヨーウウゥアンマリダヨーウウゥウウ」シクシク

霊媒師「うわぁ……」

男「何で俺がこんな目に遭うんだよぅ…この女は御札貼ろうと追い掛けてくるし、逃げようとしたら壁に御札貼ってあって通り抜けられないし」シクシク

霊媒師「……あなた確か享年は20を超えてたわよね?」

男「ピチピチの21歳だよぅ……特技はキムラとディスアームだよぅ……」グスッエグッ

霊媒師「何よそれ?」

男「なんだ知らないのか、まずキムラってのはな、稀台の柔道家木村政彦が……」

霊媒師「どうでもいいわ」

男「ヒデェヨオオオオ」

11: 2014/03/26(水)14:17:20 ID:iUGQqoDBx
男「ウェエエエエェエ」エゴッケホ

霊媒師「うーん…しょうがないわねもう」

男「ウェエエエッホエホッ…え?」ゲホッ

霊媒師「最初にこの口で『同情はする』なんて言ったのは確かだしね、良いわ、未練を果たすのを手伝ってあげる」

男「本当か?本当に手伝ってくれるのか?」

霊媒師「私も初めての仕事位綺麗に終わらせたいのよ」

男「ううう、ありがとうちんちくりん…」

霊媒師「ちんちくりんって言うな!!」

12: 2014/03/26(水)14:17:55 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「さてと」ゴソゴソ

男「?」

霊媒師「まずはあんたが氏んだ所まで案内しなさい」カチャ

男「お、おう分かった」

霊媒師「何よ?」ピコーンピコーン

男「いや、イヤホンかそれ?」

霊媒師「Bluetoothよ」

男「何のためのだ?」

霊媒師「アンタは他の人から見えないんだから一人で喋ってる風に見えるでしょ?」

男「言えてる」

霊媒師「そこでBluetoothよ」

男「おいおい天才か」

13: 2014/03/26(水)14:18:32 ID:iUGQqoDBx
ー 二時間後 ー

霊媒師「ここね?」

男「ああ、このしみったれたカビくせえ今にも崩壊しそうな病院が俺を頃したクソッタレのすみかだ」

霊媒師「しかし随分大きいわね」

男「なんでも昔大規模な医療事故を起こして潰れたとかなんとか」

霊媒師「へー、でも規模からしてここに居着いた幽霊が居たとしたら、総本山のお師匠様達のお耳に入らない訳無いのだけど…」

男「なんだ職務怠慢かよ、ぶん殴る対象増えそうだな」

霊媒師「貼るわよ?」オフダピラー

男「ビエエエエェエエヒデエヨオオオオ!!」

霊媒師「何なのコイツ…」

14: 2014/03/26(水)14:18:58 ID:iUGQqoDBx
男「オンギャアアアアアイアイアイア!!」

霊媒師「うわぁ……」

???「…」チラッ

男「アンマリダヨォオォ…ん?」

???「!」ミヒュッ

霊媒師「……何よ?」

男「いや、なんか今なんか子供が……」

霊媒師「何ですって!?何処!?」

男「あの三階の角の部屋だ」

霊媒師「行くわよ!」

男「おう!!」

15: 2014/03/26(水)14:19:26 ID:iUGQqoDBx
~ 三階角 ~

霊媒師「ここね」

男「ここだな」

霊媒師「……ここよね?」

男「ここだぞ?」

霊媒師「……」

男「……行かねえのか?」

霊媒師「いや、だって、ねえ……?」

『小児科学教室』

16: 2014/03/26(水)14:19:59 ID:iUGQqoDBx
男「お前霊媒師の癖に変に怖がるのかよ」

霊媒師「子供関係はこの道でもデリケートなのよ、悪意も持ちようが無い内に亡くなった場合ただ寂しがっていたり、そこから人を巻き込んでしまったり」

男「お前が優しく祓ってやればいいだろ」

霊媒師「……」

男「ああ……」

霊媒師「私ではまだ……」

男「うん……」

17: 2014/03/26(水)14:20:33 ID:iUGQqoDBx
男「でもここに居てもしかたねえし……」

霊媒師「困ったわね……」

男「……よし、様子見だけしよう」

霊媒師「そうね」

男「……」ソローリ

霊媒師「……」ソローリ

男(……いるな)ヒソヒソ

霊媒師(……いるわね)ヒソヒソ

子供(幽霊)「……」

19: 2014/03/26(水)14:21:09 ID:iUGQqoDBx
男「俺思うんだけど」ヒュッミ

霊媒師「何よ」ヒュッミ

男「普通に考えて俺を頃したのはあいつじゃないだろうしほっといてもよくね?」

霊媒師「……」

男「俺より年上の男だったぞ?」

霊媒師「言うのがおっそいのよ!!」

男「お前も思い当たって無かっただろうが!!」

子供(幽r)「!?」

21: 2014/03/26(水)14:21:34 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「そもそも心配に思う自体はしょうがないじゃない!」

男「お前自分の口で何も出来ないって言ってたじゃねえか!」

霊媒師「そこまで言っては無かったでしょうが!!」

ワーワーギャーギャー

子供(幽)「……」ソローリ

男「あ」

霊媒師「あ」

子供(y)「ひっ」ピャッミ

霊媒師「待ちなさい!」

男「あーもう!」

22: 2014/03/26(水)14:22:02 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「見つけたわよークヘヘ……」

子供「……」ビクビク

男「この女は……」

霊媒師「何よ」

男「お前は下がってろ」

霊媒師「何よ、子供の扱いに慣れてるつもり?」

男「弟が二人居た、任せとけ」

霊媒師「優しくするのよ」

男「どの口が言うか」

23: 2014/03/26(水)14:22:28 ID:iUGQqoDBx
子供「……」ビクビク

男「やあ」

子供「!」

男「あーやっぱり怖いか、そりゃそーだよな」

子供「……」

男「生憎遣れる飴玉や玩具も持ってないし、後ろには今一ポンコツなちんちくりん霊媒師がいるしで怖いだろうが」

霊媒師「おいコラ」

男「それでも俺達は君に嫌な事はしない」

子供「…?」

男「君とお話がしたいだけなんだ、いいかい?」

子供「………うん」コクン

霊媒師「へー……」

24: 2014/03/26(水)14:22:53 ID:iUGQqoDBx
男「よーし、おいちんちくりん」

霊媒師「また言ったなコラ」

男(話聞いとけ)ヒソヒソ

霊媒師(ええ!?)ヒソヒソ

男(俺はその道の話は出来ないしお前が適任だろ)ヒソヒソ

霊媒師(どう話し出せと)ヒソヒソ

男(やっぱりポンコツじゃねえか、子供と遊んだ事無いのか?)ヒソヒソ

霊媒師(久しく無いわよ!)ヒソヒソ

男(自分が子供の頃思い出して接しておけばいいんだよ、ほら行けゴーゴー)ヒソヒソ

霊媒師「あーもう」

25: 2014/03/26(水)14:23:26 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「えーと……こんにちは坊や」

子供「……こんにちは」

霊媒師「どうしてここに居るのかな?お母さんやお父さんは?」

子供「……ウルトラマン」

霊媒師「え?」

子供「ウルトラマンのお人形、取られちゃったの」

霊媒師「大切な物なのね?」

子供「うん、ママに買って貰ったお人形」

霊媒師「取られちゃったって、誰に?」

子供「おじさんに」

霊媒師「おじさん?知ってる人?」

子供「もうずっと前に取られちゃったの、知らないおじさん」

霊媒師「そう、話してくれてありがとう坊や、ちょっとごめんね?」

27: 2014/03/26(水)14:23:49 ID:iUGQqoDBx
男「どう見る?」

霊媒師「あまり良くは無いわね」

男「と、言うと?」

霊媒師「強い怨念を持った地縛霊が弱い霊を無理矢理縛り付けて……使役する事があるの」

男「……ひでえな」

霊媒師「ええ、本来なら本山のお師匠様達が最優先で祓いに赴く案件よ、やっぱりここは一度戻って連絡を……」

男「お前はいいのか?」

霊媒師「仕方ないじゃない」

男「……分かった」

28: 2014/03/26(水)14:24:47 ID:iUGQqoDBx


霊媒師「坊や、あとちょっとだけ我慢出来る?」

子供「え?」

霊媒師「これから私の知ってる優しいお兄さんやお姉さん達を呼んで怖いおじさんを懲らしめてあげる」

男「君を助けたい、ウルトラマンの人形も探して、君に返そう」

霊媒師「そしたら一緒に遊びましょう、ね?」

子供「ぼく……うん」

霊媒師「良い子ね、約束よ、じゃあ私は少しだけいなくなるから、このでくの坊のお兄さんに遊んで貰いなさい」

男「おいちんちくりん」

霊媒師「貴方と比べちゃいけない位の泣き虫さんだから、虐めて泣かせちゃ駄目よ?」

男「おい」

子供「あはは……」

29: 2014/03/26(水)14:25:13 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「それじゃあ私は行くけど、遅くとも夕暮れ前には戻れると思うわ」

男「おう、事が済んだら責任者と話させろよ?」

霊媒師「ハイハイ、坊やをくれぐれもね」

男「わーかってらい、良いからはよ行け」

霊媒師「後でね」スタスタ

男「さーて、何して遊ぼうか!」

子供「……お兄さん」

男「ん?どうした?」

子供「ごめんなさい……」

男「……おい」

???「察しがいいねぇ君」

男「……クソ」

30: 2014/03/26(水)14:25:37 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「はぁー……」(まさかこんな事になるなんて)スタスタ

霊媒師(最初に問答無用で御札貼っとけば良かった……)スタスタ

霊媒師(向いて無いのかなー……お兄様みたいにシュパッと、こうやってああするのに憧れてここまで来たのに……)スタスタ

霊媒師(まあ今はとりあえず連絡取らなきゃ、しょうがないわ)スタスタ

霊媒師(あれ?来る時玄関閉まってたかしら?)

ガチャガチャ

霊媒師(……あれ?)

31: 2014/03/26(水)14:26:02 ID:iUGQqoDBx
男「うっひゃー、痛え、氏んで以来久々に痛え、と言うかなんで痛いんだ?どう言う理屈だ?教えろ『怖いおじさん』?」ズキズキ

悪霊「楽しいねぇ君、まだ魂が振れてない様だ」

子供「ごめんなさい……ごめんなさい……」ブルブル

男「生きてた時の感覚思い出したからなのか足がまた生えてるぞおい、感覚で言えばブレブレだな」

悪霊「良ーい、良ーいよ君、使うのが楽しみだ」

男「あー何だが知らねえが、どうやら幽霊も殴り合いは出来る様だな、お前のそれは鉄パイプだが」

悪霊「僕みたいに氏んでなお強い思いを持ってるとねえ、どうやら物に触れられるみたいなんだよ」

男「なる程、まあ、だが、足がまた生えた」

悪霊「それから?」

男「つまり、立ち技が自由自在だ」ブンッ!!

32: 2014/03/26(水)14:26:58 ID:iUGQqoDBx
悪霊「おっと」ヒョイッ

男「避けんなぁ!!」ブンッザッ

悪霊「おっとっと」ヒョイッヒョイッ

男「てめえ……」

悪霊「勘弁して貰いたいなぁ、幽霊が格闘技とか笑い話にもならないよ?この状態で長いこといて良かった良かった」

男「スーっと水平移動だけで躱すか、一流のボクサーでもそうはいかねえわ」

悪霊「まぁ慣れだよ慣れ、次は?」

男「……手詰まり」

悪霊「だろうねぇ、僕の番だ」ブンッ!!

男「ぐっ…!」

33: 2014/03/26(水)14:27:47 ID:iUGQqoDBx
悪霊「あーいいよぉ、魂が段々弱ってくこの感じ」ゴッ!!

男「がっ…!」

悪霊「僕達幽霊はねぇ?どうやら生きていた頃とはほんの少しだけ違う次元に存在するみたいなんだ」ガツッ!!ゴスッ!!

男「……!…!」

悪霊「魂が形を作ってる様でねぇ、つまりそれを傷つければ……」ボグッ!!

男「ぐあっ!!」

悪霊「魂その物が、弱る」

男「ぐぅ……畜生」

悪霊「トドメェだーよー」

34: 2014/03/26(水)14:28:21 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「そこまでよ!!」

悪霊「あぁん?」

霊媒師「フッ!」シュッ!!

悪霊「おーっと」ヒュッ

霊媒師「まだまだぁ!!」シュッシュ!!

悪霊「んーあまりにも楽しくて忘れてたよ、居たねぇ、『ポンコツ霊媒師』だっけ?」ヒュッヒュッ

霊媒師「そこ!!」ヒュッ

悪霊「はい鉄パイプでブローック、とりあえず分が悪いねぇ、ここは一旦退却、かな?」スーッコツ

悪霊「と、いったいなもう、御札なんか貼ってくれちゃってぇ、通り抜けられないじゃないか」

霊媒師「まだ有るわよ!!」

悪霊「パスパス、下に逃げさせて貰うねー」スーッ

霊媒師「あ!………逃がしたか!」

男「うう……」

子供「ごめんなさい……ごめんなさいぃ……」グスグス

35: 2014/03/26(水)14:28:46 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「ちょっと!しっかりしなさい!!」

男「ああ…?くそ、痛え……」

霊媒師「魂がダメージを受けてるのね、まず落ち着いて、均衡が取れれば痛みも引くわ」

男「うぅ……」コクリ

霊媒師「坊や!大丈夫!?」

子供「ごめんなさい…ごめんなさい……ママ、ごめんなさい……」グスグス

霊媒師「あなたは悪くないわ、誰も怒らないわ、泣かなくていいの」

子供「ママ、ママ……」

霊媒師「いいの、大丈夫だから、大丈夫だから、ね?」

36: 2014/03/26(水)14:29:13 ID:iUGQqoDBx
男「あー糞……いってえ……」

霊媒師「落着いた?」

男「身体の中から外まで痛みが残ってるがな…」

霊媒師「危ない所だったわ、まだ動かないで」

男「動けねえよ……」

霊媒師「口は動くわね、何があったのか教えて」

男「あーまず、お前が出ていったら、坊やに謝られた」

霊媒師「それは……」

子供「ごめんなさい……ぼく、ぼく……」

男「いいんだよ、君のせいじゃないとお姉ちゃんも言ってただろ?」

霊媒師「何かあったらあいつに知らせるように言われてたのね?」

子供「うん……」

37: 2014/03/26(水)14:29:36 ID:iUGQqoDBx
男「後は、見ての通りだ」

霊媒師「分かったわ」

男「で、お前の方は?」

霊媒師「それが……」

男「あー、ああいうタイプはそういうタイプだ、分かる、携帯とかは?」

霊媒師「私はまだ見習いだから、通信機器を身に着けてると霊能力が鈍るの……」

男「聞いてみただけだ、気にすんな」

霊媒師「本当にごめんなさい」

男「だが、どうする?」

霊媒師「奴は手強いわ、意識があなた以上にはっきりした強力な霊」

男「それから?」

霊媒師「居場所も分からないけど地縛霊で有ることは確かだから、この病院内でケリを付けなきゃいけないわ」

男「出来るか?」

38: 2014/03/26(水)14:29:56 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「私一人では無理よ、でもあなたと、坊やの助けがあれば……」

男「……」

霊媒師「坊や、聞いて?」

子供「う、うん…なに?」

霊媒師「大体でいいの、あいつの居そうな場所は分かる?」

子供「それなら……」

悪霊「おーっと忘れてたぁ!」ニョキッ

男「なっ!?」

霊媒師「!?」

子供「ひっ」

悪霊「お前も、来い」ガシッ

39: 2014/03/26(水)14:30:22 ID:iUGQqoDBx
男「ま、待て!!」

霊媒師「やめなさい!!」

悪霊「それからぁ!僕は四階の薬品室にいるよぉ!この真上ぇ!」ズズ

子供「いやだ!!いやだぁ!!」

悪霊「来るならゆっくりでいいよぉ!暇ならコイツで潰してるからさぁ!じゃーねー」ズルル

子供「助けて!!離してぇ!!おねえちゃ……」

霊媒師「ああ、坊や……くっ!!」

男「糞が!!」

40: 2014/03/26(水)14:30:46 ID:iUGQqoDBx
男「おい」

霊媒師「ええ」

男「あいつは外道だな?」

霊媒師「ええ」

男「道具は残ってるか?」

霊媒師「御札が六枚」

男「全部使え」

霊媒師「無論よ」

男「あと一つ聞きたい事がある」

霊媒師「言いなさい」

41: 2014/03/26(水)14:31:09 ID:iUGQqoDBx
~ 四階・薬品室 ~

悪霊「ほーらほらぁ、坊やが欲しがってる人形はこーれかな?」グニグニ

子供「ああ!やめて!返して!」

悪霊「ずーっとここに隠しといたんだ、薬品棚に薬と一緒にね、しっかしやっすい出来のソフビだよねー」グニグニ

子供「やめて!僕のウルトラマンだ!」

悪霊「クロロキンにフィブリノゲンにソリブジン、僕が生きてる内に努めてた会社が卸したのもあるよ」グニグニ

子供「やめて!やめてよ!」

悪霊「やっすい薬だよ、このソフビと同じ様にね、このソフビしか買えない様な貧乏人が求めるんだ」ペリ

子供「ああああ!!」

悪霊「ほれ、返してやる」ポイッ

子供「ママ……ママ……」ポロポロ

悪霊「お前らが求めるから応えたのに、責任は僕一人持ち、本当に嫌だったなあ…」

子供「ああ、ああ……」

42: 2014/03/26(水)14:31:34 ID:iUGQqoDBx
悪霊「しかし遅いねー、逃げちゃったかな二人共?」

子供「うそだ……」

悪霊「だって来ないじゃーん、丁寧に居場所まで教えてあげたのにさ、お前が泣いてるのにさ、喚いてるのにさ、来ないじゃーん」

子供「いやだ……うそだ……」

悪霊「見捨てられたんだよお前、今頃窓割ろうとしたりしてんのかな、無駄なんだけどね」

子供「約束…したもん…」

悪霊「お前はまた捨てられたの、医者に捨てられ親に捨てられ、氏んだ後も捨てられて」

子供「うそだっ!!」

男「ああ、嘘だとも」スッ

44: 2014/03/26(水)14:31:55 ID:iUGQqoDBx
男「オラァっ!!」ブンッ!!

悪霊「いきなり後ろはビックリするじゃない」ヒュッ

男「やっぱり避けるか」

子供「おにいさん!」

男「ごめんな、遅くなっちゃって」

悪霊「いやあ本当だよてっきり逃げたかと」

男「秘密兵器の用意に手間取ってな」

悪霊「何それ、ゴム手袋に御札貼っただけじゃーん」

男「ああ、当たれば一発だろ?」

45: 2014/03/26(水)14:32:17 ID:iUGQqoDBx
ー 少し前 ー

霊媒師「ええ、物に触れる、現世に干渉出来る霊は稀にいるわ、アイツみたいにね」

男「あんなに器用に出来る物なのか?」

霊媒師「異例の中の異例ね、よっぽど霊で居続けてるか、それとも……」

男「まあいい、俺も出来るか?」

霊媒師「感情を触れてる部位に集中させる事、例えば……」

男「例えば?」

霊媒師「『怒り』、とか」

47: 2014/03/26(水)14:32:40 ID:iUGQqoDBx
男「子供で遊びやがって」ブンッ!!

悪霊「おおっとぉ!」ヒュッ

男「子供をてめえのエゴで縛り付けやがって」ブンッ!!

悪霊「とっとっとぉー」ヒュッ

男「動くなよ、てめえだけは許せねえ」

悪霊「あっはっは、こわぁーい、逃げるよー」スーッ

子供「隣の部屋に!?」

男「待てっ!!」

48: 2014/03/26(水)14:33:07 ID:iUGQqoDBx
悪霊「いらっしゃぁーい、ハイゴツン」ビュンッ

男「がぁっ!?」ガンッ

悪霊「正直これからどうしようかと思っててさー」ビュッ

男(肩で受けろ!)

男「くっ!」ゴン

悪霊「いやー来てくれて良かったよ、玩具が増える」ヒュッ

男「ツっ!」ゴッ

悪霊「ガキにも飽きてたしさぁー、君みたいなタイプが欲しかったんだ」ビュンッ!

男「ガハッ!」ドスッ!

悪霊「お!入った入ったぁ!」

男(そろそろ限界か……よし)スーッ

悪霊「あれ?今度はそっちが逃げちゃうの?追っちゃうよ?追っちゃうよ?」スーッ

49: 2014/03/26(水)14:33:27 ID:iUGQqoDBx
ー 少し前 ー

男「薬品室には俺が殴り込む、お前は2つ隣の部屋で仕掛けといてくれ」

霊媒師「いいけれど、何故2つ隣の部屋なの?」

男「色々あるが大きい理由は三つ、一つは坊やから引き離す必要があるから」

霊媒師「危害を加える可能性もあると」

男「ああいうタイプだからな」

霊媒師「二つ目は?」

男「不意打ちをやり返す、そのためには壁一枚余裕を持ってやられる必要がある」

霊媒師「上手くやってね、3つ目は?」

男「間違っても坊やには見せられない」

50: 2014/03/26(水)14:34:08 ID:iUGQqoDBx
悪霊「待て待てーぃ!……ん?」スーッ

霊媒師「いらっしゃい」スッ

悪霊「おっと、危ない危ない」クルッ

男「居るぜ」スッ

悪霊「んじゃ下に逃げるもんねー」コツッ

悪霊「あれ?御札?」

霊媒師「そこだけじゃないわよ」

悪霊「あ、天井にも、廊下側にも、無論奥にも」

悪霊「もしかして、嵌められた?」

男「その」サッ

霊媒師「通りよ」スッ

51: 2014/03/26(水)14:34:27 ID:iUGQqoDBx
悪霊「いやーうっかりうっかり、ここにきて正面からの殴り合いとはね」

霊媒師「観念しなさい」

悪霊「でも残りの御札は一枚でしょ?何が出来るの?」

霊媒師「こ、この!喰らいなさい!」シュッ!

悪霊「もう能がないなぁー、同じ様に避けて……」ヒュッ

男「はいガラ空き」ビュッ!!

悪霊「へ?…ギャッ!!」ゴスッ!!

男「体の真ん中に入った、痛えだろ」

悪霊「こ、この…!!」ビュンッ

男「」ビュッ!!

悪霊「ギャアッ!!」ドスッ!

53: 2014/03/26(水)14:35:01 ID:iUGQqoDBx
悪霊「い、いい気になるなぁ!!」ビュンッ!!!

男「……」

フィリピンの戦闘武術であるエスクリマ、エスクリマには、ディスアームと言う敵の武器を掴んで奪う技法がある
滑らかに、円を描くように相手の武器に手を添え、パズルでも解くかの様に敵の武器の握りを崩して奪うのだ

男「フッ!」

御札が張り付いたままの鉄パイプが、腹に突き刺さる

悪霊「あっ……がっ……」

そして男は藻掻く様に伸ばされた敵の手首を掴み、身体を時計回りに回転させる

男「覚えとけ、キムラって技だ」

手首を極め、そのまま最後に放たれた御札が貼られた壁に叩きつける

男「地獄で閻魔様に掛けてみな、一発芸位の扱いは受けられるぜ」

言い放つと壁と御札と頭とのサンドイッチを作るかの様に膝蹴りを加える
そして、一言も漏らさぬまま悪霊は滅した

54: 2014/03/26(水)14:35:30 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「凄い……」

男「慣れて、不意打ちを食らわなけりゃザッとこんなもんよ」

霊媒師「そうだ、坊やは!?」


~ 薬品室 ~

男「おーい」

霊媒師「坊や!?」

子供「お、おにいさん!おねえさん!」

霊媒師「はー良かった」

男「だから言ったろうが」

霊媒師「もう大丈夫だからね、よく頑張ってくれたね」

子供「うん……うん!」

霊媒師「酷い事されなかった?」

子供「それが……」

男「ん?壊れちまってら」

子供「うう……」

霊媒師「ちょっと!」

男「大丈夫だろ、セロテープ探して貼れば直る」

子供「ほんとう?」

男「ああ、と言う事でちんちくりん、探してこい」

霊媒師「御札でもいいかしら?」

男「やめろ」

55: 2014/03/26(水)14:35:54 ID:iUGQqoDBx
子供「それじゃ……」

霊媒師「うん、約束だからね」

男「おう、遊ぼう!」

子供「……」ジワ

56: 2014/03/26(水)14:36:12 ID:iUGQqoDBx
ー しばらくして ー

男「ビエエエエエエ」

霊媒師「うわぁ……」

男「ま、まさか…ウェッ…最期にあんな笑顔を……ウグッ」

霊媒師「まーた泣いてる」

男「良かった…ウグッウェッ…良かったよ……」

霊媒師「さて、じゃああなたの番ね」

男「は?」

霊媒師「え?」

57: 2014/03/26(水)14:36:49 ID:iUGQqoDBx
霊媒師「何よ?」

男「いやあいつじゃなかったし」

霊媒師「は?」

男「性別と年代以外全く違ったし」

霊媒師「聞こえない」

男「いや、違ったし、あんな分かりやすい奴だったらもっと分かるように伝えてるし」

霊媒師「聞かない」

男「待て、おい」

霊媒師「……おとなしくしなさーい!!」

男「ああああ!やらせるか!」

霊媒師「待ちなさい!止まりなさい!こらー!!」



終わり

60: 2014/03/26(水)14:40:03 ID:uJd6QXlRj
いい疾走感だった

引用元: メモ帳整理してたら黒歴史SSが出てきた