2: 2022/10/27(木) 21:21:25.25 ID:n3K6fx1q.net
-------------Precious Memories----------------

可可「かのん!」ギュッ

かのん「どうしたの? 急に手なんて繋いじゃって」ニコッ

可可「原宿は人がいっぱいいマスから。はぐれないように!」

可可「ほら、すみれも! 仕方ないからつないであげマス」スッ

すみれ「仕方ないって何よ…まったく」ギュッ

千砂都「可可ちゃーん、私はー!?」

可可「ごめんなさーい! 手が足りまセン!」

恋「あらあら」クスッ

千砂都「えーっ!? だったら恋ちゃん、私たちも手つなごうよ」

恋「えっ!?」ドキィッ

千砂都「余り者同士、こっちも仲良しだって見せつけてやろう!」

4: 2022/10/27(木) 21:27:02.29 ID:n3K6fx1q.net
――スクールアイドルは恋愛禁止

――応援している人たちを幻滅させないため、メンバー内でのいざこざを防ぐため

――女子高生は恋をするものなのに、窮屈な決まりデス

――でも、可可は恋愛禁止も悪いものではないと思っていマス

――だって…


――お付き合いさえしなければ、一線を越えなければいいだけのこと

――それさえ守れば、一人じゃなくて何人でも好きになっていいということでしょう?

――そして好きな人もスクールアイドルなら、その人もまた誰とも恋をしていないのデス!


すみれ「何よ。私の顔に何かついてる?」

――すみれのことが大好き。そして…

かのん「うん?」

――かのんのことが…初めて出会った時からずーーーっと、大好きデス…

7: 2022/10/27(木) 21:33:44.28 ID:n3K6fx1q.net
――けど…

かのん「あ! 見て見て、ちぃちゃん!」クイッ

千砂都「?」キュッ

恋「あ…」

千砂都「わぁ~~~! なんて綺麗なまんまる…!」キラキラキラ

かのん「でしょ? ちぃちゃんのお眼鏡に適うまる、見つけちゃった」

千砂都「さっすがかのんちゃん! えへへ~」キュッ

かのん・千砂都「うぃっすーうぃっすー!」

すみれ「あの子たちはまた…」

恋「本当に仲の良い幼馴染ですね…」


――かのんには千砂都がいる。とてもとても強固な絆で結ばれた幼馴染同士

――今は恋愛していないとしても…いつかは結ばれるのデショウか?

8: 2022/10/27(木) 21:39:13.88 ID:n3K6fx1q.net
可可「かのん…」ボソッ

すみれ「…」



すみれ「急に呼び出してゴメンね」

すみれ「恋」

恋「いえいえ、全然問題ありませんよ」

恋「それにこうして、みなさんと別れた後でこっそり会うというのもいいものです」

すみれ「それで話なんだけど…」

恋(はっ! この真剣な表情…そして2人きりというシチュエーション!)

恋(これはまさか愛の告白!?)

恋(ダメですダメです! 私には心に決めた方が…!)

9: 2022/10/27(木) 21:45:44.98 ID:n3K6fx1q.net
 
恋「す、すみません! 私には心に決めた方がいるのです!」ペッコリン

すみれ「はぁ? …まぁそりゃあそうでしょうけど」

恋「へ?」

すみれ「千砂都でしょ? 恋の好きな人」

恋「はわわわわわ!? エスパーですか///!?」

恋「それともそういった類の占術の使い手…!?」

すみれ「そういった類のものを使わなくてもバレバレよ」クスッ

恋「ふしゅぅ…///」

すみれ「何? 私に告白されるとでも思った? でも残念」

すみれ「私は…可可のことが好きなのよ」

恋「…」

恋「はい、知ってます♪」
 
 

10: 2022/10/27(木) 21:51:46.92 ID:n3K6fx1q.net
 
恋「それで、私に話とは?」

すみれ「その、好きな人の話なんだけど…」

すみれ「可可は…かのんのことが好きなんじゃないかって思ってるの」

恋「え?」

恋「そうですかね? 私は可可さんはすみれさんのことを好きだと思っているのですが」

恋「両想いなのでは?」

すみれ「…」

すみれ「そうだったらいいんだけどね…。だってスクールアイドルは恋愛禁止」

すみれ「…あの子から直接聞いたことはないのよ」

すみれ「あの子が恋愛的な意味で好きな人は誰なのかって」

恋「すみれさん…」

すみれ「そう思ったら不安で…寂しくなるのよ」
 
 

11: 2022/10/27(木) 21:57:09.40 ID:n3K6fx1q.net
 
恋「分かります!」ガバッ

すみれ「ちょっ! 恋?」グイグイ

恋「スクールアイドルは恋愛禁止。そうだと分かっていても誰かを好きになってしまうもの」

恋「私も千砂都さんのことが好きです…が、かのんさんとの関係を見ていると胸が締め付けられます」

恋「このまま卒業して、その時私が告白しても勝ち目があるとは思えません…」

すみれ「恋…」

恋「すみません、顔が近かったですね///」

すみれ「…いいのよ。恋も難儀な奴に恋したものね」

恋「人の好きな人をそんな風に言わないでください」ムッ

すみれ「ゴメンゴメン」

すみれ「それで…ここからが本題なんだけど」

すみれ「私たち、手を組まない?」
 
 

12: 2022/10/27(木) 22:03:09.76 ID:n3K6fx1q.net
 
恋「手を組む?」

すみれ「文字通りよ。共同戦線を張るの」

すみれ「恋が千砂都と仲良くなれるよう私も協力する」

すみれ「恋は私と可可が仲良くなれるように協力して?」

恋「ふむ…」

恋「仮に千砂都さんと私が仲良くなったとした場合、かのんさんが余る形になりますよね?」

恋「さっきの話だと、余ったかのんさんを可可さんは見逃さないのでは?」

すみれ「…痛いとこを突くわね」

すみれ「けど、今のままじゃ不安になるのも事実でしょ?」

すみれ「第一、かのんと千砂都がくっついたら可可が消去法的に私を選ぶ」

すみれ「その時は恋が余るのよ?」

恋「ものすごーーーーーくその絵面が浮かびます…(白目)」

すみれ「ね? やらないよりマシよ♪」
 

13: 2022/10/27(木) 22:09:05.47 ID:n3K6fx1q.net
 
千砂都「私バイトあるからここで! うぃっすー!」

かのん・可可「うぃっすー!」

――かのんと2人きりになってしまいマシタ…

――すみれには申し訳ないけど、すっごくドキドキしマス

かのん「可可ちゃん、あそこ…」

可可「代々木スクールアイドルフェスの会場…デスね」

かのん「うん。今年もあそこで歌ったけどさ…やっぱり1年生の時のことが一番思い出深いんだよね」

可可「え…」

かのん「あそこで始めてライブした。可可ちゃんと『Tiny Stars』を歌った」

かのん「本当の意味で人前でも歌えるようになった。負けたけど最高の時間だった」

かのん「また、ここで2人で歌いたいな…」

可可「かのん…!」
 

14: 2022/10/27(木) 22:16:23.15 ID:n3K6fx1q.net
かのん「ゴメンね、急に」

かのん「ただ…ここを見てたら思い出しちゃって」

可可「く、可可も思い出しマス!」

可可「最っ高の…時間デシタ」

かのん「可可ちゃんもそう思ってくれてるんだ。嬉しい…」

――なんて顔してるんですか、かのん…

――思わず…キスしてしまいたくなりマス…!

――って、何を考えてるんデスか!

かのん「可可ちゃん」

可可「は、ハイ!?」

かのん「私をスクールアイドルに誘ってくれてありがとう!」

かのん「可可ちゃんのこと、大好きだよ」ニコッ

16: 2022/10/27(木) 22:23:20.14 ID:n3K6fx1q.net
――大好き

――大好き?

――大好き!

――かのんが、可可のことを…!?


可可「かのんが、可可のことを…!?」ドキドキドキドキ

かのん「うん。これからも親友でいて欲しいな」


――え

――え

――えぇ…


可可「親友…」ズーン

18: 2022/10/27(木) 22:30:04.65 ID:n3K6fx1q.net
可可「可可もかのんのことが大好きデス!」

かのん「ありがとう。可可ちゃんにも親友と思って貰えて嬉しいよ」


――違いマス! 可可は…


きな子「あれ? かのん先輩と可可先輩?」ギュッ

夏美「先輩たち今帰りっすか?」ギュッ

可可「っ…!?」

かのん「うん、私たちは今帰り。2人も?」

夏美「そうですの」

きな子「ねー」


――なんてタイミングで余計な邪魔をしてくれるんデスか…!ゴゴゴゴゴゴ

20: 2022/10/27(木) 22:36:14.22 ID:n3K6fx1q.net
 
可可「2人とも、ちょっとステージ裏に来やがれデス」グイッ

夏美「ナッツ!?」

きな子「すみれ先輩を相手にしてる時のようなノリっす…」

かのん「??」



可可「2人とも、その手は何デスか」

夏美「へ?」

きな子「~~~~っ!」バッ

可可「恋人繋ぎなんて仲良しさんなのデスね」

夏美「あっ…! ま、ままままぁそうですの///」

可可「スクールアイドルは恋愛禁止。分かってマスか?」

きな子「わ、わわわ分かってるっす~!」目→

可可「はぁ…。周りの目には気を付けてくだサイね。スクールアイドルに人気は必要不可欠なのデスから」

可可「…」
 

22: 2022/10/27(木) 22:42:11.93 ID:n3K6fx1q.net
 
――可可は何を言っているのデショウ

――あの子たちが来なければ、可可がかのんに告白していたかもしれないのに…

――後輩にはルールを守るように言っておいて、自分は守らないなんて…

――嫌な女デス…

かのん「あれ? きな子ちゃんと夏美ちゃんは?」

可可「もう帰りマシタ…」

かのん「ふぅん? 何話してたの?」

可可「嫌な先輩からの嫌なお説教デス」ズーン

かのん「えぇ…。あの子たち一体何したの」

かのん「…」

かのん「けど、偉いよ可可ちゃん」

可可「へ?」

かのん「嫌な先輩になってでも伝えるべきことがあったんだよね? それって立派だと思うよ」
 

23: 2022/10/27(木) 22:48:14.68 ID:n3K6fx1q.net
 
かのん「私そういうの苦手だからさぁ。すみれちゃんやちぃちゃんにそういう役割させちゃってるよね…」

かのん「それに可可ちゃんも色々言ってくれてるなんて…」

かのん「やっぱりスクールアイドルとしての意識が高いね! 私も見習わないと!」

可可「…」

可可「ま、まぁそういうことデス」

可可「かのんも良い先輩にならないとデスね!」

かのん「そうだね~」

――反省

――今日のことは教訓にしまショウ

――『スクールアイドルは恋愛禁止』。ルールは守らないと

――かのんに褒められるような唐可可でありたいから

――だから…この想いは封印デス
 

24: 2022/10/27(木) 22:54:58.80 ID:n3K6fx1q.net


すみれ「恋」グッ

恋「はい、作戦決行です!」コツン

千砂都「まずは準備運動ー! ペア組んでー」

かのん「ちぃ…」

恋「千砂都さん! 私と組みましょう!」シュババッ

千砂都「へ!? う、うん…」

可可「では、かのんは可…」

すみれ「可可! 私と組むわよ!」シュババッ

可可「へ?」

可可「…」

可可「しょーがないすみれデスね! 組んであげマス!」

――昨日かのんと沢山話した分、今日はすみれと絡んでやりマスか

25: 2022/10/27(木) 23:00:27.84 ID:n3K6fx1q.net
 
かのん「え、えっと…」キョロキョロ

かのん(はっ! こういう時こそ先輩と後輩の絆を深めるチャンスなんじゃない!?)

かのん「きな子ちゃん…」

夏美「」シュババッ

かのん「メイちゃ」

四季「」シュババッ

かのん「(´・ω・`)」ショボーン

すみれ「かのんー、終わったらアンタの分付き合ってあげるから待ってなさーい」

かのん「はぁい」ショボン

恋「///」

可可「♪」

すみれ(やっぱり可可と一緒が一番いいわ…)
 

26: 2022/10/27(木) 23:08:33.90 ID:n3K6fx1q.net
千砂都「次はランニングー! 今日はグラウンド使えるからここ周るよー」

かのん「ちぃちゃ…」

恋「千砂都さん、2人で先導しましょう!」シュタタッ

千砂都「うん! 行こうか」

メイ「先輩たち飛ばしてるな…」

夏美「あの足速2人に先導されたら堪りませんの」

可可「はぁ、はぁ…」

すみれ「可可ー、遅れてるわよー?」

可可「なんですみれは可可のペースに合わせてくれてるのデスか…」

すみれ「何言ってるのよ。私だってあの2人のペースに合わせて走るなんてキツいんだから」

可可「そう、デスか…?」ガチッ

可可「っとととぉぉ!?」ズッテーン

すみれ「可可!?」

28: 2022/10/27(木) 23:14:17.43 ID:n3K6fx1q.net
可可「痛ったたデス…」ズキズキ

きな子「大丈夫っすか? 可可先輩」

すみれ「すっごいコケ方だったわね…」

恋「すみません、私たちがいつもより速いペースで先導したばかりに…」

千砂都「普段使えないグラウンドだったからペース間違っちゃったね。ゴメン…」

かのん「救急箱持ってきたよー!」

かのん「ほら、可可ちゃん傷口見せて」

可可「あ…」

かのん「まずは洗ってからだね。立てる?」スッ

すみれ「―――!! 可可、私と…」

可可「ありがとうございマス、かのん…」ギュッ

かのん「大丈夫みたいだね。行こう?」

すみれ「っ…」

29: 2022/10/27(木) 23:20:07.82 ID:n3K6fx1q.net
可可「痛っ…!」

かのん「はい、これでもう大丈夫。擦り傷だしきっとすぐ直るよ」ペタリ

可可「…ありがとう、かのん」

かのん「どういたしまして」ニコッ

可可「…///」

可可「かのん…」

かのん「今日は練習やめとく? 足痛いだろうし」

可可「いえ…大丈夫デス」

かのん「無理はしないでね?」

可可「ハイ!」

――昨日、封印したのに…! 今日はすみれと絡むって決めてたのに…!

――やっぱりかのんは優しい…かのんのことが、可可は…!

30: 2022/10/27(木) 23:26:21.06 ID:n3K6fx1q.net
 


千砂都「な、なんか今日は近いね?」

恋「そうですか? 親友ですもん当然です!」ギュゥッ

かのん「すみれちゃんも距離感おかしくない?」

すみれ「たまにはいいでしょ?」キュッ

夏美「アレはいいんですの?」

きな子「私たちは怒られたのに…ねぇ可可先輩?」

可可「…」

すみれ(やっぱりあの子は…かのんのことが好きなんだわ)

すみれ(それが分かっていて可可と向き合うのは凄く辛い)

すみれ(けど、今は恋と共同戦線の途中。なら…せめてかのんを遠ざけるだけでもしないと)

可可「かのん…かのん…かのん…」ブツブツ
 

31: 2022/10/27(木) 23:32:05.07 ID:n3K6fx1q.net
――おかしいデス…

――昨日2人きりになってからずっと、かのんのことが頭に浮かぶ

――すみれのことだって好き。でも今はかのんのことばかり

――かのん、かのん、かのん…!

――好き、好き、好き…!

――大好きで、大好き…!

――素晴らしい声の貴女が好き。初めて出会った時の衝撃…クラスで再び会えた運命…

――一緒にあのステージに立って最高のライブをして…悔しい思いも嬉しい思いもした

――ずっとクーカーの2人でいられれば良かった?

――そんなことはない。すみれのことも大好き。レンレンもきなきなもメイも四季も夏美も

――千砂都も…!

――

――

――

――

――

――

――

――

――

――

――

――

――

――……  千砂都がいなければ可可の恋は成就されるのでしょうか?  ……――

――

34: 2022/10/27(木) 23:38:27.15 ID:n3K6fx1q.net
可可「え―――――――」バタッ

――急に足から力が抜けて…!

――そういえば、さっきグラウンドでコケたのデシタ…

――…足が上がらない

――立てない…

――どうして?

――痛いから? どこが? 足が?


すみれ「えっ…!? 可可ーーーーーーーーー!!!」

恋「可可さん!? あぶな…」

かのん「っ―――――――――――!!」ダッ

千砂都「――――――――――――!!」シュタッ


――それとも心が?

35: 2022/10/27(木) 23:44:02.83 ID:n3K6fx1q.net
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………

――その先の光景を、全て鮮明に覚えている

……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………

――道路の真ん中でコケて立てなくなった可可を、2色の閃光が助け出そうと走る

――マリーゴールドの歌姫とピーチピンクの踊り子

――2人は可可を突き飛ばし…そして

…………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………

――暴走するトラックの轟音に悲鳴を掻き消されながら…雑踏の中に転げ落ちていった

……………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………

36: 2022/10/27(木) 23:50:04.43 ID:n3K6fx1q.net
 
 
――あの、凄惨な思い出から5年が経つ
 
 
かのん「 」

可可「…」

可可「かのん…」

すみれ「可可…今日も来てるのね」

可可「すみれ…、レンレン…、お久しぶりデス」

恋「はい…。可可さんも」

可可「レンレンのお腹、大きくなりマシタね…」

すみれ「もう7か月だもの…」

可可「そう、デスか…」

可可「時が経つのは早いデス…」


――歌姫は、未だ目を覚まさずに病室に横たわっていた
 

43: 2022/10/28(金) 19:33:20.23 ID:8MDDESHi.net
-----------mnemonic-------------

――暗い

――暗い

――暗い…

――だけどかすかに音を感じる

ピクッ…ピクッ…

――ずっと動かなかった手足が動く。布団に包まれているような温かさを感じる

――電子音が聞こえて声が聞こえて…騒ぎ立てる音まで聞こえてくる

――うるさいなぁ、もう少し眠っていたいのに…

――…

――眠っていたい? 本当に?

――もう充分眠ったじゃない…


??「かのん…!? かのん!? どうしたんデスか!?」

44: 2022/10/28(金) 19:41:35.71 ID:8MDDESHi.net
かのん「え…?」

かのん「可可…ちゃん…?」

可可「!!!」

可可「かのん、かのん…!」

――ああ、やっぱり可可ちゃんだ…

――可可ちゃんの声を皮切りに、どんどん他の人の声も聞こえてくる

――医者? 看護師さん? って何々ぃ!? すごい人数が来てる気がする…

ありあ「お姉ちゃん…!?」

――ありあ!? お母さん、お父さんも…!

かのん「ん…?」

――状況を確かめたいのに体が動かない…金縛りってやつ?

――私…一体…

45: 2022/10/28(金) 19:55:11.52 ID:8MDDESHi.net
かのん「私…一体…?」

メイ「かのん先輩…!? これは夢じゃないよな…!?」

かのん「メイちゃんまでいるの!? っていうか私、今何されてるの? なぁんか体動かないし…」

かのん「それに目隠しされてるみたいでさ」

ざわっ

かのん「んん!?」

可可「えっ…!?」

――え? 私また何か変なこと言った?

――みんなの表情が分からないよ…。目隠しされてるんだから…

――…?

――今、私…手を動かして…顔に触ってるよね? 私の手、こんなんだっけ…?

――私の目、開いてるよね…!?

46: 2022/10/28(金) 20:07:40.30 ID:8MDDESHi.net
ありあ「お姉ちゃん、落ち着いて聞いてね――」

――ふむふむ。私は今病院にいて…

――ずっと入院してた? 5年!? 5年…

――ははぁーん、これはドッキリだね?

――……

――なんでみんなこんなに真面目な口調で言うの…?

――どうして上手くツッコめないの…? 身体が上手く動かないんだよ…

――どうして…

――どうして…

――みんなの顔、見られないの…!?

――…………

――あ……!

47: 2022/10/28(金) 20:21:24.30 ID:8MDDESHi.net
かのん「私……もしかしてトラックに轢かれたりした?」

可可「そう、デス…」

可可「可可のことを助けてくれマシタ…」

かのん「あー……それで入院してるってこと?」

かのん「なんかそれは理解できる気がする…体が動かないのもそういうことかな」

かのん「けど5年は言い過ぎでしょ~。私知ってるんだよ、植物状態?から回復した例なんてそうそうないんだって」

…………

かのん「え…?」

かのん「本当に…?」オギャーッオギャーッ

かのん「…赤ちゃんの声?」

きな子「ごめんなさいっす~、私の子どもが…」

かのん「はぁっ!? 今のきな子ちゃんだよね!? きな子ちゃんの赤ちゃん…!?」

48: 2022/10/28(金) 20:31:01.00 ID:8MDDESHi.net
 
――実感は全く湧かない

――だけど聞こえてくる様々な情報が外堀を埋めていく

――きな子ちゃんと夏美ちゃんが結婚して赤ちゃんを産んでること…

――感染症が再流行していてみんなマスクをしていること…

――それにスクスタがサ終してバーチャルスクールアイドルのやつが始まってるのを聞かされたら信じざるを得ない

――私、本当に浦島太郎状態なんだ…

かのん「え…?」

可可「そんな…!」

――そしてもう一つ、重大なことが分かってしまった

――私は目隠しをされているんじゃない



――脳に障害を負ったせいか、目が見えなくなっているらしい…
 

52: 2022/10/28(金) 20:41:53.31 ID:8MDDESHi.net
 
可可「うっ…くぅっ…!」

かのん「もう、泣かないでよ可可ちゃん。私まで泣きたくなっちゃう」

可可「でも…!」

かのん「話聞いてたらさ、こうして目を覚ませたこと自体が奇跡なんだってね」

かのん「だから…目が見えないくらいで贅沢言えないよ」

可可「かのん…!」

――嘘

――本当は凄くショックだ

――5年も時間を飛ばしてしまった。あの大好きだった結女での生活には戻れない

――みんなで描いたあの夢は潰えた

――大好きな仲間の顔だって見えやしない

――きな子ちゃんと夏美ちゃんの赤ちゃん、見たかったなぁ…

――けど、何故だか分からないけど…

――私より先に泣き始めた可可ちゃんの前で泣くのだけは憚られた
 

53: 2022/10/28(金) 20:52:15.45 ID:8MDDESHi.net
 
――次の日の朝、起きた時に見たのはまた泣いてる可可ちゃん

――また目を覚まさなくなったのかって心配になったみたい

――…けど、こんなに可可ちゃんが私のことを心配してくれるなんて

――嬉しいな。可可ちゃんは大事な親友だから

――5年も経てば、それこそきな子ちゃんたちみたいに結婚したり新しい立場になってるだろうに…


かのん「そういえばさ、昨日来てくれた人って…」

可可「ハイ。かのんの家族と、きなきなとその子も来てくれマシタ」

かのん「あれ? メイちゃんもいなかった?」

可可「メイは看護学生デス。今は実習中だそうデス」

かのん「えっ!? そりゃまたビックリだよ…」

かのん「…すみれちゃんと恋ちゃんは今日来てくれるんだったね。楽しみだなぁ」
 
 

54: 2022/10/28(金) 21:02:42.00 ID:8MDDESHi.net
 
すみれ「…準備できた?」

恋「はい、行きましょう…」

すみれ「かのんが目を覚ましたのは嬉しい。嬉しいけど…」

恋「…」

恋「言いたいことは分かります。私もどんな顔で会えばいいのか分かりません」

恋「あの日、可可さんがコケる原因を作ったのは私ですから…」

すみれ「ぼーっとしてる可可を放ってたのが私」

すみれ「私たちが自分のことしか考えてなかったからこんなことが起きた…!」

恋「かのんさんは許してくれるでしょうか…」

恋「そんな悲惨なことがあったにも関わらず…5年という月日に耐えられなくなって」


恋「これから結婚しようという私たちを…」
 

55: 2022/10/28(金) 21:10:26.50 ID:8MDDESHi.net
すみれ「かのん…私のこと、分かる…!?」

恋「かのんさん…!」

かのん「わぁ…! すみれちゃんと恋ちゃんの声だ…!」

すみれ「かのん!」ギュッ…

恋「かのんさん!」ギュウッ…

かのん「あはは…あんまり苦しいのは無理…」

恋「す、すみません!」ハワワワ

かのん「いいっていいって。ところで今ちょっと触っただけだけど恋ちゃん太った?」

かのん「スクールアイドル卒業したから不摂生したりゲーム漬けだったりするんじゃない?」ニヤニヤ

恋「っ…!!」

すみれ「可可…伝えてないのね」

可可「すみまセン…」

かのん「え? 何々…? なんなの…?」

57: 2022/10/28(金) 21:20:16.48 ID:8MDDESHi.net
 
すみれ「実はね、かのん…」

恋「私たちは恋人同士なのです。お腹に赤ちゃんもいて…結婚する予定なのです」

かのん「…」

かのん「え?」


――また赤ちゃん? すみれちゃんと恋ちゃんの?


かのん「なんで…? ちょっとそれは理解できない…」ブルッ

かのん「きな子ちゃんと夏美ちゃんは分かるよ…。仲良かったもん」

かのん「でも、すみれちゃんは可可ちゃんのこと好きなんだと思ってたんだけど…!?」

すみれ「それは…」

可可「っ…」

可可「可可がすみれを振ったのデス…」




可可「可可は…かのんのことが好きだから…!!」
 
 
 
 
 
 

58: 2022/10/28(金) 21:30:07.24 ID:8MDDESHi.net
 
――5年という月日

――私が小学校を卒業してから事故が起きる日までだと思うとその長さが分かる

――Liella!の仲間と過ごしたのなんて長くて2年

――それより長い時間をみんなは過ごしている。そりゃあ関係だって変わるよね

――それは分かるよ。分かるけど…


かのん「すみれちゃんが恋ちゃんと結婚…?」

かのん「可可ちゃんが私のことを好き…?」

かのん「そんなこと急に言われたって分からないよ…。私たち、恋愛禁止だったでしょ…?」


――『恋愛禁止』という蓋が外れてそれぞれの想いは溢れていく

――大人の恋愛を始めているみんなに対してただ一人

――私だけが、幼いまま取り残されている気がした
 

59: 2022/10/28(金) 21:40:30.82 ID:8MDDESHi.net
 
すみれ「…っ」

恋「すみません…。座らせてください…」ヨロリ

すみれ「恋…。貴女は待合室で休憩にしましょ」

恋「ですがまだ謝るべきことが…!」

すみれ「いいのよ! …貴女にもお腹の子にもこれ以上ストレスはかけられないわ…」

恋「う…」

かのん「何? まだ謝るべきことって…」

すみれ「ゴメン…恋を休ませてから話しに来るから…!」

かのん「っ…」

可可「…レンレンはずっと気に病んでいたんデス…。あの事故は自分たちのせいだと」

かのん「事故…」

――そういえば、あの事故についてもう一つ大事なことを忘れている気がする…!
 

60: 2022/10/28(金) 21:50:49.09 ID:8MDDESHi.net
 
――あの瞬間の何かを思い出せない。…可可ちゃん、すみれちゃん、恋ちゃん…

 
 
 
 
 
 
 
 
かのん「ねぇ、ちぃちゃんは?」

可可「っ―――――!!」
 
かのん「ちぃちゃんは…どこにいるの?」 
 
 
 
 
 
 
――瞬間、記憶が戻っていく…

――混濁した記憶が纏まらないのに涙が溢れていく
 

61: 2022/10/28(金) 22:01:21.19 ID:8MDDESHi.net
――どうして昨日、思い出せなかったんだろう


かのん「え? どうして黙るの…?」


――世界で一番大事な幼馴染。まるが好きで可愛い人


かのん「ちぃちゃんだよ。嵐千砂都…」

かのん「ねぇ、可可ちゃん?」


――あの日、あの時…トラックに轢かれそうになった可可ちゃんを一緒に突き飛ばして…


かのん「答えてよ…。なんで? 私が起きたって知ったら真っ先に来てくれるよね?」


――そして…衝撃に弾かれ地面に転がっていった小さな体


かのん「まさか…! まさか、まさか…!」




可可「違いマス!」

可可「千砂都は…千砂都は…少し、遠い場所にいるだけデス…!」

62: 2022/10/28(金) 22:10:15.65 ID:8MDDESHi.net
 
かのん「っ…!」

かのん「『遠い場所』って何!? 遠い場所って…」

かのん「それって誰かが氏んだときに言う例えじゃん!」

可可「違いマス! 本当に千砂都は遠い場所にいて来られないだけなんデス!」

可可「千砂都は生きてマス!」

かのん「本当…?」

可可「本当デス…」

かのん「じゃあ…電話させてよ」

可可「…!!」

かのん「私のスマホ…はそりゃあないよね。可可ちゃんのスマホ貸してよ」

かのん「お願い…!」

可可「ごめんなさい…! それは…出来まセン…!」

かのん「!?」
 

63: 2022/10/28(金) 22:20:04.09 ID:8MDDESHi.net
 
かのん「なんで!? どうして!?」

かのん「生きてるなら電話くらい出来るでしょ!?」

かのん「私は目が見えなくなっちゃったんだよ!?」

かのん「ちぃちゃんが生きてるっていうなら! 遠くにいるって言うなら!」

かのん「せめて声を聞かせてよ…!」

かのん「会いたいよ…!」

かのん「ちぃちゃん…!!」

可可「それでも…できまセン…」

かのん「~…!!!!」

かのん「!? ゲホッ…ェホッ…!?」

可可「!? かのん…!? かのん!!」


――回復しきっていない私の体は、この衝撃に耐えられなかった

――上手く呼吸が出来ず…私は再び意識を失った
 

64: 2022/10/28(金) 22:30:55.35 ID:8MDDESHi.net
 
すみれ「…」

可可「…」

すみれ「ゴメン…」

可可「どうしてすみれが謝るのデスか…」

すみれ「貴女がずっとかのんに付き添っているのに…私たちは月日に耐えられなくて…!」

すみれ「かのんはもう起きないかもって見切って…恋と幸せになる道を選んだ」

すみれ「こんな…貴女たちを裏切るようなことをして…ごめんなさい…!!」

可可「謝る必要はないデス」

すみれ「え…!?」

可可「あの事故の後、すみれとレンレンはずっと落ち込んでいマシタ」

可可「そのせいか2人でいる時間が増えて…心の傷を慰め合ううちに心が通ったのデスよね?」

可可「素敵なことだと思いマス。まして赤ちゃんまで出来て…祝福する以外に出来まセン」

可可「すみれは幸せになって…? レンレンと一緒に…」

可可「可可はもう、貴女と幸せになることは出来ないから…!」
 

65: 2022/10/28(金) 22:40:19.94 ID:8MDDESHi.net
すみれ「っ―――――!!」

すみれ「なれないったらなれない!」

すみれ「こんなことになったのは私の責任なのよ!!」

すみれ「私が恋愛禁止を破って自分に都合のいいことをしたからこんなことが起きたの!」

すみれ「誰か…私に罰を与えてよ…」

可可「それは違いマス! コケたのは可可デス!」

可可「『恋愛禁止』を破って浮ついた気分のまま…ぼーっとしてたのは可可デス…」

可可「…」

可可「それに」

可可「罰を一番受けるのべきなのは可可デス…あの日、確かに」


可可「千砂都がいなければ恋が成就するかもしれない、そんな最低なことを思っていましたから――」

すみれ「――――」

66: 2022/10/28(金) 22:50:22.95 ID:8MDDESHi.net
――再び目が覚めたのは次の日の朝

――真っ暗闇の景色が私を落ち着かせてくれたから、思考はハッキリ戻った

――昨日のことは全部忘れていない

――突きつけられる現実がまた私の心を強く打つけど…

――起きてから知った衝撃的なことを整理することができた

かのん「ぁ…」

可可「かのん…!?」

かのん「おはよう…」

かのん「可可ちゃん…?」

かのん「どうしてまた、ここにいるの…?」

67: 2022/10/28(金) 22:58:32.65 ID:8MDDESHi.net
かのん「可可ちゃん…」

可可「どうしマシたか? 何か調子悪いとか…」

かのん「ううん、調子が悪いとかはどうでもいいの…」

かのん「ちぃちゃんのことを聞きたい…」

可可「…っ」

かのん「…」

可可「…千砂都は生きてマス。それは本当デス」

可可「けど、電話は出来ないしここにも来れないのデス…」

かのん「そう…」

かのん「そういうことか…だから隠すんだね…」

可可「かのん…?」

68: 2022/10/28(金) 23:03:06.41 ID:8MDDESHi.net
かのん「私、5年間も置いてきぼりにされて…みんなが結婚した話を聞いてショックだった」

かのん「可可ちゃんが私のことを好きだってのも驚いた。親友だと思っていたから…」

かのん「あれだけ仲の良かったすみれちゃんを振るほど好きだったなんてね…」

かのん「だから振られたすみれちゃんは恋ちゃんに手を出したんだ…」

可可「…」

かのん「思いもしないよこんなこと。私たち、恋愛禁止だったんだから」

かのん「だから…自分でも想像しないことを…ようやく思いついちゃったんだ…」


かのん「ねぇ、可可ちゃん…」




かのん「ちぃちゃんがいなければ…私は可可ちゃんのものになるって思ってるんじゃない…?」

可可「……!!!!」

69: 2022/10/28(金) 23:10:33.86 ID:8MDDESHi.net
可可「あ…あぁ…!」

かのん「酷いこと言ってゴメン…」

かのん「ゴメン…」

可可「ぁ…ァぁ…ぁぁぁ…!」

かのん「ゴメン…なんだけど…」

かのん「違うなら、違うって言ってよ…!」

可可「ち…が…!」

かのん「違うって…言ってよ…」

可可「ちがい…ま………」


可可「セン…………」

可可「可可は…」

可可「千砂都がいなくなれば…恋が成就するかもしれないと…思っていまシタ…」

かのん「…………………」

70: 2022/10/28(金) 23:16:52.84 ID:8MDDESHi.net
 
かのん「…」

可可「ぁ…ぁぁ…」

かのん「可可ちゃんの気持ちは分からないし分かりたくないけど…理解は出来るよ」

かのん「5年も付き添ってくれたんだよね。可可ちゃんのことは責められない」

かのん「それほどまで私のことを好きでいてくれてありがとう…」

可可「かの、ん…」

かのん「そしてゴメンね」



かのん「私はそれでも、ちぃちゃんが好きだ…」



――見えなくても分かる…

――可可ちゃんの嗚咽が聞こえるから…

――こんなに酷いことを言ったのに…少し清々しい気分になれた
 

71: 2022/10/28(金) 23:24:31.50 ID:8MDDESHi.net
 
――それからまた数日が経った

――あれ以降は体調も落ち着き、リハビリがスタートしようとしていた


メイ「かのん先輩! …澁谷かのんさん」

かのん「メイちゃん! 検温の時間だね」

かのん「メイちゃんって看護学生なんだってね?」

メイ「ああ、そうだよ。ここに実習に来ることになったのは偶然だけどな…です」

メイ「はい、バイタル計りまーす」

かのん「あはは。実習生だもんね。タメ口はまずいもんね」

メイ「そうなんだよ…ですよ」

かのん「メイちゃんも四季ちゃんと結婚してるの?」

メイ「はあああっ///!? いやいやしてないしてない!」

メイ「そっか…。きな子たちも結婚したしそう思ってるよな…」

メイ「私も四季もまだ学生だからな。付き合ってはいるけどそれは流石に先の話だよ」
 

73: 2022/10/28(金) 23:30:04.34 ID:8MDDESHi.net
メイ「はい、バイタルOK。今日からリハビリだよな? 頑張れよ」

かのん「あ…」

かのん「ねぇメイちゃん、もう少しだけいい?」

メイ「ん?」

――入院生活はとにかく暇な時間が長い。私は目が見えないから音楽やラジオを聞くくらいしか娯楽がない

――感染症が流行ってるとかでなかなか人と話す機会もない

――知り合いと話せる時間は貴重なんだ…


かのん「どうしてメイちゃんは看護師になろうって思ったの?」

メイ「あ?ああ…」

メイ「四季が大学で研究したり発明したりしてる機械を活かそうと思ったら病院とパイプがあった方がいいからな」

メイ「あいつ、かのん先輩の役に立ちたいってその部門の研究室選んだんだ。今度会ったら応援してやってくれよ」

かのん「そう、なんだ…」

75: 2022/10/28(金) 23:36:16.72 ID:8MDDESHi.net
メイ「じゃ、私はこれで…」

メイ「あ、おはようございます。…もう起きてますよ」ツカツカ

かのん「…」


――5年も経って起きた私のところに来てくれる人は日に日に減っていった

――最初は夏美ちゃん、四季ちゃん、理事長先生やサニパの2人も来てくれたのに…

――今はもう、毎日来るのはこの子だけ。家族ですらないただ一人


可可「おはようございマス…」

かのん「今日も来てくれたんだね」

かのん「でも可可ちゃん、毎日ここに来て大丈夫なの?」

可可「単位はもう取り終えてマス。研究も四季に任せてマスし順調デス」


――あんな言葉を投げかけた後も、私を好きだと言うこの人は来てくれた

76: 2022/10/28(金) 23:42:31.42 ID:8MDDESHi.net
 
可可「今日からリハビリだと聞いていマス。頑張りましょう!」

かのん「う、うん…」


――どうしてここまでしてくれるんだろう?

――私のことが好きだから?

――………

可可「ほら、マンマルの癒し音声データを作ってきマシタよ。入れておきマスね」

かのん「…」


――ちぃちゃんのことは、メイちゃんにだけ聞いてみた

――答えは同じ。『生きているけど遠くにいる』『電話は出来ない』

――そして『可可先輩に聞いて欲しい』…『可可先輩を信じてやってくれ』…

――可可ちゃんは信じられないよ…

――募る不安は消えないけど、それでも前を向いて頑張るしかない

――今の私の隣には誰もいないのだから
 

86: 2022/10/29(土) 20:47:29.04 ID:kOn6IgRP.net
『貴女のことが好きです!』
『友だちとしてじゃない…恋人になって欲しいんだ』


『…』
『本当に?』


『え…』


『これまでずーっと一緒だったよね? でも…これからは少しだけ別の道になるかもしれない』
『それが不安だから、確かな絆を持ちたいだけなんじゃない?』


『うっ…!』


『それが理由なら恋人になんてなれないよ』
『大丈夫。私はずっと貴女の隣にいる。離れてたって心は繋がってる』
『そもそも学校だって同じなんだから全然近いじゃない。ちゃーんとこれからも甘やかしてあげるYo!』
『また明日からも、同じように過ごそう? だって私たち…幼馴染で、親友でしょ?』

87: 2022/10/29(土) 20:53:26.16 ID:kOn6IgRP.net
-------------POP TALKING---------------

可可「かのん、大分歩けるようになったじゃないデスか!」

かのん「うん。これなら外にも出られるかもって」

かのん「でも…外に出ても風景見えないからなぁ」

可可「風を感じるだけでも大分違いマスよ」

かのん「そういうものかなぁ」


――あれからさらに数日が経った

――毎日毎日やってくる可可ちゃんのことが嫌だった

――ちぃちゃんの秘密を言うことなく近づいてくる、大人になった親友のことが

――大学だってあるんでしょ?

――可可ちゃんが私の所に毎日来るのは理解できないよ…

――この意思の固さはまるで…


――そんなことを思いながらも、可可ちゃんが来てくれることにホッとしている自分がいる

――私の隣には……残念ながら、彼女しかいないのだから

88: 2022/10/29(土) 21:01:14.23 ID:kOn6IgRP.net
――ちぃちゃんについての安否は、未だ自分の中で決心がついていない

――メイちゃんも生きているって言っていたから生きてるハズ…

――ここに来られない理由としては新型感染症がどうこうの可能性もあるっぽい

――けど、電話も出来ない理由は分からない

――本当に生きているの?

――私と同じで植物状態なんじゃないの?

――時々、可可ちゃんがLINEが来ていると言ってメッセージを読み上げてくれた

――確かにちぃちゃんっぽいメッセージだった

――けど信用できない可可ちゃんが読み上げてる以上は本物か分からない

――可可ちゃんならそれっぽいメッセージくらい考えられるでしょ?

――モヤモヤ思う一方で、それを調べられない自分の能力…目が見えないことに対しての不満が募る

――だからリハビリを頑張った。無力で幼い私にはそれしかなかった…

89: 2022/10/29(土) 21:12:29.33 ID:kOn6IgRP.net
恋「あ…」

きな子「…浮かない顔っすね」

きな子「恋先輩は健診帰りっすよね? 私とこの子はまだ時間あるし…話していかないっすか?」

恋「…」



きな子「マリッジブルー…って感じじゃなさそうっすね」

きな子「かのん先輩たちのことじゃないっすか?」

恋「…隠しても仕方ありませんね」

恋「…この子も生まれるのに、ストレスに感じている場合ではないのですが…!」

恋「ですが…! どうしてもあの日のことを思い出すのです…! その後の日々も…!」

恋「なのに、私はまだかのんさんに謝れていなくて…!」

きな子「…」

きな子「じゃあ、謝りに行っちゃえばいいっすよ」

90: 2022/10/29(土) 21:17:52.85 ID:kOn6IgRP.net
恋「えっ…!? えええっ!?」

恋「いやいや、それは…かのんさんはリハビリも始まったばかりで大変な状況なんですよ?」

恋「可可さんとも上手くいってないらしく…メイさんが間を取り持っていると聞いています」

恋「そんな状況で私なんかの懺悔を聞いている場合では…」

きな子「でも、お腹の赤ちゃんに良くないっすよ?」

恋「!!」

きな子「私は…かのん先輩ならちゃんと聞いてくれると思うっす」

きな子「信じてもいいんじゃないっすか?」

恋「…ですが」

きな子「それに、可可先輩と上手くいってないって言うならその仲もついでに取持ちににいけばいいじゃないっすか」

きな子「…というか、本当はそっちの方が気になってるんじゃないすかね?」

きな子「身重でストレスをかけられない人だって分かってるのに無下にするような人たちじゃないっすよ」

恋「…!?」

91: 2022/10/29(土) 21:26:58.27 ID:kOn6IgRP.net
恋「…それは卑怯ではないでしょうか?」

きな子「そのくらいでいいと思うっすよ」

きな子「私は…母親になった今、そんな想いでいるっす」

きな子「一番大事なものの為だったら…なんだってするっすよ」

恋「…!!!」

恋(千砂都さん…!)

恋「……きな子さん、少し変わりましたね…。誰より一番早く結婚したせいか、随分大人に見えます」

きな子「そんなことないっすよ~」

恋「…」

きな子「第一今、ウチの夏美ちゃんは稼ぎも少ないのに、可可先輩たちの為に何やら頑張ってるみたいなんすよ」

恋「え」

きな子「その分家庭に回して欲しいのに…夏美ちゃんを貸してるんだからそっちの問題はそっちで解決して欲しいっすね」

恋(大人になっているというかオカンと化しています…)

きな子「だから…頑張って行ってくるっす! 自分の為に! その子の為にも! っす!」トンッ…

92: 2022/10/29(土) 21:32:50.64 ID:kOn6IgRP.net
恋「…お話があります」

かのん「…」

かのん「恋ちゃん? うん…」

――まだ可可ちゃんの来ないお昼前。恋ちゃんはやってきた

――もうすぐ赤ちゃん生まれるんじゃなかったっけ? こんなとこに一人で来て大丈夫なのかな…?



恋「お話というのはまず…」

恋「どうか…私たちを許してください。あの日の事故の原因は私たちなのです…!」

かのん「…」

かのん「いやいや、それはいいって」

かのん「事故の原因は100%トラックの方なんだし」

かのん「…可可ちゃんからも聞いた。すみれちゃんと恋愛同盟組んでたんだってね? 私たち、恋愛禁止だったのにさ」

恋「…本当に」

かのん「いいって…」

94: 2022/10/29(土) 21:39:23.43 ID:kOn6IgRP.net
――謝罪、か…。みんなあの日の事故に罪の意識を感じている。そんなこと気にしなくていいのに…

――可可ちゃんが毎日ここに来てるのも、そういう部分があるんでしょ?

――そんなものはいいから、ちぃちゃんのことを誰か教えてよ…!

恋「ありがとうございます…!」

かのん「うん。恋ちゃんは全然悪くないよ」

かのん「赤ちゃんもいるのにずっとストレスに感じてたんだね…。ゴメン、私こんなんだから言いにくかったでしょ?」

恋「そんなことはありません! 私に勇気がなかったからなのです…」

恋「そして…」

かのん「??」

恋「勇気を持って言いたいことがあります」


恋「私…千砂都さんのことが好きだったのです!!!!」


かのん「…」

かのん「はい?」

95: 2022/10/29(土) 21:44:14.58 ID:kOn6IgRP.net
――……はぁ

――恋愛同盟の話は可可ちゃんから聞かされたし恋ちゃんがちぃちゃんのこと好きなのは聞いてたけど…

――あ! 昔の想い人だって言うなら…ちぃちゃんが今どこにいるのか知ってるんじゃ…!?

かのん「…」

かのん「恋ちゃんがちぃちゃんのこと好きだったのは分かったよ。そんなことより…」

恋「そんなことよりではありません!」

かのん「!?」

恋「私がどんな想いで千砂都さんを諦めたと思っているんですか!!」

かのん「!!!???」

恋「私が………どんな想いで告白して…即即玉砕したと思っているのですか…!!」

かのん「えっ…!?」

――告白して、玉砕…!?

96: 2022/10/29(土) 21:49:04.22 ID:kOn6IgRP.net
――ってことは、ちぃちゃんは…!!

――生きてる…!? 植物状態なんかでもないってこと…!?

かのん「それどういう」

恋「千砂都さんは貴女のことを第一に考え、私の告白にピクリともせず行ってしまったのです!」

かのん「!?」ビクゥッ

――行く? 逝く…じゃないよね…?

恋「身を焦がすほど想っていたのに! 毎日毎日千砂都さんの病室にも行ったのに!」

恋「あの人はいつも貴女の病室にいて、貴女が目を覚ますのを待っていたのです!」

恋「あの表情を毎日見せられた私の気持ちが貴女に分かりますか!?」

かのん「っ………!!?」

――な、なんなのこの恋ちゃん…!

――まるで人の話も聞かない…最初に会った時の狂犬のような恋ちゃん!?

――ちぃちゃんが生きている確証が持てる嬉しいエピソードなのに笑顔になれないんだけど…!?

97: 2022/10/29(土) 21:56:25.44 ID:kOn6IgRP.net
恋「そんな、千砂都さんが…」ヘタリ…

恋「かのんさんのことを託したのが可可さんなのです…」

かのん「え…!?」

恋「どうか…どうか…」

恋「可可さんと仲良くしてください…!!」

恋「信じて、あげてください…!!」

――病室(個室だけど)だと言うのに散々叫んで終いには崩れ落ちるように座る恋ちゃん

――まるで懺悔するかのような涙声を聞かせながら…

――…そういえば、恋ちゃんとはLiella!に入る前はこんな風にギスギスしてたっけ(ここまではなかったかもしれない)

――だけどそれ以降は、可可ちゃんとすみれちゃんはともかく仲間内であんまり喧嘩とかしなくなったよね?

――それはきっと、恋ちゃんがいつも優しく微笑んでいてくれたから…

――仲直り、かぁ…

――もう22歳だっていうのに、まるで子どもみたいだ

99: 2022/10/29(土) 22:00:27.99 ID:kOn6IgRP.net
 
恋「申し訳ありませんでした…」

かのん「う、うん…。お隣の方たちには謝っておくから」

恋「よろしくお願いします」

恋「はぁ…スッキリしました」

恋「これでようやく、この子が生まれるまで心穏やかに過ごせそうです」

かのん「あ…」

――私だけじゃなく、みんなあの事故のことで心を痛めてる

――罪だったり、背負った障害だったり、報われない想いだったり

――恋ちゃんは赤ちゃんがいるのにずっとそれを抱えていたんだ

――可可ちゃんだって、きっと…

恋「勘違いしないでくださいね? 千砂都さんとのことはもう吹っ切れています」

恋「今はもう、すみれさんだけを愛しています。そのことに間違いはありません」

恋「それでは…失礼しました」
 

101: 2022/10/29(土) 22:04:31.72 ID:kOn6IgRP.net
――可可ちゃんは、お昼過ぎにやってきた…


かのん「あいたっ…」

可可「大丈夫デスか! かのん!」

かのん「うん、ちょっとコケちゃっただけ」

可可「やはり外はまだ厳しいデスか…」

可可「膝を見せて下さい。…傷は特にないデスね」

かのん「ちょっと可可ちゃん、外でめくらないでよ…///」

可可「スミマセン…///」

かのん「…」

かのん「そういえば、事故の起きた日にこんなことあったんだよね」

かのん「立場は逆だったけど…」

可可「あ…」

可可「そう、デス…」

可可「可可がコケて…それが事故の原因になったのデス」

かのん「…」


――聞きたい。ちぃちゃんのこと…でもその前に

――可可ちゃんに言わないといけないことがあるんだ…

102: 2022/10/29(土) 22:09:00.70 ID:kOn6IgRP.net
 
かのん「…もう、気にしなくていいんだからね?」

可可「え…?」

かのん「あの事故はトラックの側が100%悪い。可可ちゃんは悪くないよ」

かのん「だから私に許して欲しいとか、そういうのはもうやめていいんだよ」

かのん「可可ちゃんは私に5年も付き添ってくれたんだから…充分だよ」

可可「かのん…」

可可「可可は…」

かのん「許す。許すよ…」

かのん「だからさ、もう自由になっていいんだよ」

かのん「大学院行くんでしょ? また単位取らないとなんでしょ?」

かのん「大学1年留年してるから四季ちゃんと同学年なんでしょ?」

かのん「…これ以上、時間を無駄に出来ないでしょ?」
 

103: 2022/10/29(土) 22:13:22.72 ID:kOn6IgRP.net
 
可可「許してくれて、ありがとうございマス」

かのん「可可ちゃん…じゃあ」


――明日からは来なくなる?

――それがいいよ。可可ちゃんには自分の人生があるんだから


可可「でも、ここには来ます」

かのん「…どうして?」

可可「かのんのことが好きだから」


――また、告白されてしまった

――やめてよ…

――私には好きな人がいるんだよ…

――可可ちゃんには私のことなんて放って幸せになって欲しいんだよ…!
 

104: 2022/10/29(土) 22:17:12.64 ID:kOn6IgRP.net
かのん「やめて…」

かのん「やめてよ! もう私のことなんか放ってよ!」

かのん「私には可可ちゃんより好きな人がいるんだよ…!」

可可「知ってマス」

可可「けど…それでも諦めまセン」

かのん「その諦めの悪さは何なの!? 芯の強さは何なの!?」

かのん「まるで…まるで…私の好きな…」

可可「千砂都に…芯の強さでまで負けるわけにはいきまセン」

可可「千砂都が頑張っているのに…可可が諦めるわけにはいきまセン」

かのん「!!!」

可可「可可はかのんが好きだから。だからいつまでも、人生全部をかけてでも頑張り続ける」



可可「好きなことを頑張ることに、おしまいなんてないのデスから…!!」

105: 2022/10/29(土) 22:21:35.02 ID:kOn6IgRP.net
かのん「あ…」

――今の言葉…!

――スクールアイドルになることを決意した日を思い出す

――22歳だけど5年をフイにした私の人生にとって最高の2年間。その始まり

――貴女のその意思の強さに口説き落とされて、私は歌を歌ったんだよね…

――そして鮮烈に思い出されるペンライトの輝きたち

――2人で立った始まりのステージ…


可可「改めて言いマス。かのんのことが好きデス…!」


――目の前にいるもう少女とは言えない年齢になった人からの告白は

――少女といえない年齢になってなお幼い心の私には深く響いて

――

106: 2022/10/29(土) 22:27:31.36 ID:kOn6IgRP.net
 
かのん「…可可ちゃんのことなんか嫌いだよ…!」

かのん「放っていいって言ってるのに聞かないし…毎日毎日ハイテンションでグイグイ来るし…」

かのん「ちぃちゃんのこと隠して言ってくれないし…言っても信用できないし」

かのん「いつの間にか私の家族と仲良くなって着替えとかも持ってくるし…外堀埋めてくるタイプなの!?」

かのん「すみれちゃんとそのまま仲良くなってれば良かったんだよ…」

かのん「それなら手放しで祝福出来たんだよ…!」

かのん「なのに…なのに!」

かのん「どうして私なの…!? 5年も寝てたんだよ…!? 普通諦めるでしょ…!?」

かのん「こんな覚悟決まった人、私の一番好きな人くらいしか知らないよ…!」

かのん「可可ちゃんはおかしいよ…!」



かのん「そんな可可ちゃんのことなんか…!」



かのん「ちぃちゃんの次に大好きだよ…!!」



――まだ体力に不安がある私は姿勢を保てず倒れそうになってしまう

――それを…隣で支えてくれたのは、一番好きな人ではなく、大嫌いだった二番目に好きな人だった
 

109: 2022/10/29(土) 22:31:35.95 ID:kOn6IgRP.net
 
可可「千砂都の次、デスか…」

かのん「うん…。それだけは譲れないよ…」

可可「どうしたら譲ってくれマスか?」

かのん「グイグイ来るなあ」

かのん「ん…いっそちぃちゃんに思いっきり振られたら諦めつくかも」

可可「そう、デスか…」

可可「それは無理かもデスね」

可可「千砂都は誰がどう見ても、かのん一筋デスから」

かのん「でしょ? そういうところが好き」

可可「むぅ。だったら可可だって負けてまセンよ」

可可「可可だってかのん一筋デス」

かのん「可可ちゃん…」
 

110: 2022/10/29(土) 22:35:47.48 ID:kOn6IgRP.net
 
四季「あの…」ヌッ

かのん「へぇっ!?」

可可「ほわぁぁっ!?」

四季「すみません、どう見てもいい雰囲気のところを邪魔して…///」

かのん「四季ちゃん!? い、いやいやいやいい雰囲気とかじゃないから///」

可可「な、なななんの用デスか…」

可可「じゃなくて、可可が呼んだのでした…」

かのん「可可ちゃんが? そういえば二人って同じ大学の研究室なんだったよね?」

四季「はい。それで研究の一環でかのん先輩のことを調べようと」キラン

かのん「えぇ…? 四季ちゃんたちって機械系の大学じゃなかったっけ…?」

四季「とりあえず頭の大きさを計りますね」ジャキッ

かのん「頭の大きさ!? すみれちゃんに小顔ストレッチ習っとけば良かった…」
 

111: 2022/10/29(土) 22:40:49.22 ID:kOn6IgRP.net
四季「…これであとの問題は…」ブツブツ

可可「…こればかりはどうしようもないデスよね…」ブツブツ

かのん「…なんの話?」

夏美「マニーの話ですの」ヌッ

かのん「なっ!?」ビックゥ

夏美「にゃっは~♪ かのん先輩お久でっすの~! 貴女の心にオニ…」

夏美「もうこのテンションは子持ちのリーマンがするものじゃないですの…」ズーン

かのん「あ、あはは…」

夏美「可可先輩、マニーの話なら乗りますの」

夏美「クラウドファウンディングってご存知ですの?」

可可「知ってマスし助かりマス、が…」

四季「気持ちは有難いけど額的には足りないかな…」


かのん「???」

112: 2022/10/29(土) 22:45:23.52 ID:kOn6IgRP.net
 
――なんの話をしてるのかは分からない

――難しい理系っぽい話をしているみたい

――四季ちゃんも可可ちゃんも大学生なんだなぁ


夏美「うむむむむ…協力したいけど夏美の稼ぎじゃ無理ですの…」

夏美「…というか、普通に自分の家のことだけで手いっぱいですの…」

四季「夏美ちゃんは無理したらダメ。子どもだっているんだから」

可可「そーデスよ。動画の件だけでも十分助かってマス!」ピロリン

可可「ン…? LINE…? それに…銀行からのメール…………!?」

四季「銀行?」

可可「…………っ」

可可「まったく、どこで話を聞きつけてくるのデスか…。格好良すぎデスよ…!」

可可「千砂都ぉぉ…!!」

かのん「えっ…!?」
 

114: 2022/10/29(土) 22:50:29.68 ID:kOn6IgRP.net
 
かのん「ちぃちゃん!? ちぃちゃんからなの…!?」

可可「はい…」

かのん「…!!」


――ちぃちゃんは生きている。それはみんなが言っていた。恋ちゃんの話も合わせて間違いない

――でも会えない。電話も出来ない

――可可ちゃんに送られてくるLINEは可可ちゃんが読み上げてるから信憑性がない?

――今は可可ちゃんのことを少しだけ信じられる…だったら


かのん「ちぃちゃんから、どんなメッセージが来たの…!?」

可可「…」

可可「可可と四季が共同開発したアプリの制作費代の支払い、と…研究費の寄付の申し出だそうデス…」

可可「こんなことお願いしてないのに…こんなのズルいデスよ…!」

可可「千砂都には本当に敵いマセン…!!」

かのん「アプリの制作費…? 研究費…!?」
 

117: 2022/10/29(土) 22:55:06.14 ID:kOn6IgRP.net
 
――言われるがまま病室に戻る

――なぜかは知らないけど病室に人が集まってくる

――四季ちゃん、夏美ちゃん、メイちゃん

――すみれちゃん…

――私の目前から電子音が聞こえる。パソコンの起動音?

――一体何が始まるの…



『かのんちゃん』『うぃっすー!』

『かのんちゃん』『聞こえてる』『かな』


かのん「あ……………!」

かのん「ちぃ、ちゃん…!? ちぃちゃんの声…!?」

かのん「ちぃちゃんなの…!?」
 

119: 2022/10/29(土) 23:00:05.37 ID:kOn6IgRP.net
 
――でも、でも…なんなのこの違和感…!?


『久しぶり』『だね』

『なかなか』『会いに』『いけなくて』『ゴメンね』

『電話』『も』『出来なくて』『ゴメンね』


『私さ』『声』『が』『出ない』『から』


かのん「え…!?」


――声が出ない…!?


可可「千砂都は事故で声を失いマシタ…。かのんが視力を失ったのと同じように…」

可可「だから…感染症の流行で帰国できない千砂都と直接会話できるようにする為にアプリを作った」

夏美「私の撮った動画、それ以前に撮った動画。そこから音声を抜き出して編集した音声アプリ…」


四季「『POP TALKING』」
 

120: 2022/10/29(土) 23:05:49.90 ID:kOn6IgRP.net
 
千砂都「『今』『私』『ウィーン』『に』『いまーす』」zoom

かのん「う、ウィーン…!? それって」

千砂都「『私』『ここで』『ダンス』『の』『仕事』『してる』『の』」zoom

かのん「え…!? 外国まで行って…ダンスの仕事…!? どうして…」

千砂都「『マァニー(夏美ボイス)』『の』『為』『だよ』」zoom

かのん「お、お金…?」

かのん「あ…!」

――アプリの開発費、研究費の寄付…!?

かのん「じゃあ…」

かのん「まさか、私の為に…!?」

かのん「起きるかどうかも分からない私が起きた時…お金が必要になるだろうからって…!?」


千砂都「『そうだよ』」

かのん「…!!!」
 

122: 2022/10/29(土) 23:11:39.21 ID:kOn6IgRP.net
かのん「そんな…そんなこと!」

かのん「そんなお金があったら自分の声が出るように手術とか出来るんじゃないの!?」

かのん「なんで!? どうして!?」

かのん「私の為に外国にまで行って体を張って働いてる!?」

かのん「どうしてみんなみんな私の為に人生かけてくれてるの…!?」

可可「っ…!!」

かのん「そんなことしなくていいよ…」

かのん「私は…ただ…」

かのん「ちぃちゃんが傍にいてくれた方が嬉しかったよ…」

千砂都「『ゴメンね』」zoom

千砂都「『それは』『出来な』『かった』。『我慢』『出来な』『かった』」zoom

千砂都「『じっと』『する』『の』『苦手』『だから』…『それに』」zoom



千砂都「『可可ちゃん』『が』『いるから』…『私は』『働く』『ことに』『した』」zoomかのん「そんな…そんなこと!」

かのん「そんなお金があったら自分の声が出るように手術とか出来るんじゃないの!?」

かのん「なんで!? どうして!?」

かのん「私の為に外国にまで行って体を張って働いてる!?」

かのん「どうしてみんなみんな私の為に人生かけてくれてるの…!?」

可可「っ…!!」

かのん「そんなことしなくていいよ…」

かのん「私は…ただ…」

かのん「ちぃちゃんが傍にいてくれた方が嬉しかったよ…」

千砂都「『ゴメンね』」zoom

千砂都「『それは』『出来な』『かった』。『我慢』『出来な』『かった』」zoom

千砂都「『じっと』『する』『の』『苦手』『だから』…『それに』」zoom



千砂都「『可可ちゃん』『が』『いるから』…『私は』『働く』『ことに』『した』」zoom

かのん「!!!」

124: 2022/10/29(土) 23:15:07.33 ID:kOn6IgRP.net
 
――ちぃちゃんは、事故の後で生氏を彷徨ったけど数日で目を覚ました

――声を失って…

――私が目を覚まさないことに悲しみながらも必氏の思いでリハビリをした

――私が起きた時、私の出来ない事を出来るようにって…

――病院にいる間は毎日お見舞いに来たけど、転院してからはそうもいかなくなった

――それでも…いつか私が起きる時を信じて


――けど…


千砂都「『私』『かのんちゃんの』『こと』『好き』『だよ』」

千砂都「『だから』『すべて』『カケラ』『れる』」

千砂都「『だけど』…」


『私』『の』『好き』『は』『恋』『じゃない』


『だから』『可可ちゃん』『に』『任せて』『出来る』『こと』『を』『した』」
 

125: 2022/10/29(土) 23:17:06.21 ID:kOn6IgRP.net
 
『可可ちゃん』『の』『こと』『困らせ』『たら』『ダメだよ』…


――人目も憚らず涙が溢れてくる。画面の向こうのちぃちゃんには私の姿が見えてるのに

――可可ちゃんの泣く声も聞こえてくる

――すみれちゃんの声も、メイちゃんの声も

――どうしてみんな泣いてるの?

――私が泣いてるからもらい泣きしているの?

――それとも…


――POP TALKINGはちぃちゃんの声で抑揚なく言葉を聞かせてくれる

――だからただ一人、画面の向こうのちぃちゃんがどんな表情をしているのか私にだけは分からない

――どんな想いで私を振っているのか。どんな表情で可可ちゃんに任せたと言っているのか

――私を信じていながら…可可ちゃんほど間近にいることを続けられなかった彼女の後悔を私は知らない

――全てを賭けて『好きな人』の為に尽くし…『好きな人』の幸せを願っていたのか私には…分かった
 

126: 2022/10/29(土) 23:20:07.69 ID:kOn6IgRP.net
 
千砂都「…」ポチッ

ウィーン「も゙ゔい゙い゙の゙…? 久々の再会だったんでしょう?」ウルウルグスン

千砂都「…」カリカリ

ウィーン「起きた後の姿は写真で見てたから? 伝えることは伝えたから?」グズグズ

ウィーン「貴女ってそういうところサッパリしてるわよね…」

ウィーン「…」

ウィーン「澁谷かのん…これからもあの子の為に働くって言うの?」

千砂都「…」カリカリ

ウィーン「もちろん…。はぁ」

ウィーン「リハビリが終わればあの子もなんらかの形で働くわよ。それに唐可可だっている。もういいじゃない」

千砂都「…」ソウナッタラモウイイカモネ

ウィーン「!! その暁には…私との生活の為にお金を稼ぐってことね!?」

千砂都「…」ソレハナイ。アナタトハビジネスパートナー

ウィーン「(´・ω・`)」ガウィーン
 

127: 2022/10/29(土) 23:27:34.56 ID:kOn6IgRP.net
かのん「可可ちゃん…私」

かのん「振られちゃった…」

可可「…」

可可「でも、好きなんじゃないデスか?」

かのん「…」

かのん「うん…」

可可「あんなに想われるかのんが羨ましいし、想える千砂都が羨ましいデス」

可可「けど…」

可可「可可はそれでも、かのんが好きデス」

かのん「…///」キュッ

129: 2022/10/29(土) 23:30:16.61 ID:kOn6IgRP.net
 
かのん「…私さ、高校中退になってるよね?」

可可「そうデスね?」

かのん「つまり卒業してない。…ってことはスクールアイドルも卒業してないってことにならない?」

可可「ハイ?」

かのん「だったら私はまだスクールアイドル! 恋愛禁止!」

かのん「恋愛禁止だから…そういうフリさえしておけば…」

かのん「2人の人を同時に好きになったっていいよね?」

可可「あ…!」

かのん「ダメ?」

可可「ダメ、と言いたいところデスが…可可も高校生の頃はそういう想いデシタ!」

可可「ズルいです! かのんだけ!」

かのん「へっへぇーん」

可可「な、なら可可は大学生デス! カレッジスクールアイドル現役デス!」

かのん「あははは…。それは無理があるでしょ…」
 

130: 2022/10/29(土) 23:32:12.93 ID:kOn6IgRP.net
かのん「私、リハビリ頑張るよ」

かのん「ちぃちゃんがお金稼いでるけど、それをちぃちゃんが自分自身の為に使えるようにしたい」

可可「…良い目標だと思いマス」

可可「可可も全力でサポートしマスよ」

かのん「うん…」

かのん「私の隣にいてくれるの、心強いよ」

可可「ずーっと隣にいますからね」

かのん「…」

かのん「隣に…」

かのん「…」

かのん「もう一つ、目標があるんだ…聞いてくれる?」

かのん「可可ちゃんと2人で叶えたい目標なんだ…!」

131: 2022/10/29(土) 23:33:54.47 ID:kOn6IgRP.net
かのん「そんな…そんなこと!」

かのん「そんなお金があったら自分の声が出るように手術とか出来るんじゃないの!?」

かのん「なんで!? どうして!?」

かのん「私の為に外国にまで行って体を張って働いてる!?」

かのん「どうしてみんなみんな私の為に人生かけてくれてるの…!?」

可可「っ…!!」

かのん「そんなことしなくていいよ…」

かのん「私は…ただ…」

かのん「ちぃちゃんが傍にいてくれた方が嬉しかったよ…」

千砂都「『ゴメンね』」zoom

千砂都「『それは』『出来な』『かった』。『我慢』『出来な』『かった』」zoom

千砂都「『じっと』『する』『の』『苦手』『だから』…『それに』」zoom



千砂都「『可可ちゃん』『が』『いるから』…『私は』『働く』『ことに』『した』」zoom

かのん「!!!」

140: 2022/10/30(日) 21:10:45.42 ID:M8o+0uov.net
-------------Tiny Stars---------------

夏美「かのん先輩に持ってきたものがありますの」ガサゴソ

かのん「私に?」

夏美「じゃん! 結婚式の招待状でっすの~!」

かのん「…え?」

かのん「夏美ちゃんときな子ちゃんはもう結婚して子どももいるよね?」

かのん「まさか離婚して新しい人と結婚することになったの…?」カタカタ

夏美「え゙っ」

かのん「夏美ちゃんのことそんな風に育てた覚えないよ!?」

夏美「育てられた覚えもありませんの!?」

夏美「…違いますの。私はウェディングプランナーの仕事をしてますの」


夏美「これは、すみれ先輩と恋先輩の結婚式の招待状ですの」

141: 2022/10/30(日) 21:16:55.80 ID:M8o+0uov.net
かのん「あ…」

かのん(すみれちゃんと、恋ちゃんの結婚…もう赤ちゃんも生まれてるんだよね)

夏美「感染症『など』で延び延びになってましたがようやっと開催する運びとなりましたの」

かのん(『など』…)

かのん(私が起きたせいなのが多分にあるよね、きっと…)

かのん「あれ? でもすみれちゃん家って神社だし、しきたりとかあるんじゃないの?」

かのん「夏美ちゃんが割って入る余裕とかある?」

夏美「ふっふっふ~ん。そこは敏腕プランナーのオニナッツ…今はサクナッツですの」

夏美「色々たっくさん理由をこねて、会場を代々木公園にしましたの!!」

かのん「!?」

夏美「意味…分かりますの?」ズイッ

夏美「間に合わせられますの…?」ズイズイッ

142: 2022/10/30(日) 21:22:34.86 ID:M8o+0uov.net
 
可可「大丈夫デス」

かのん「正直体は動かないけど歌うだけなら…」

四季「そこは私に任せて」ヌッ

かのん「…夏美ちゃんといい四季ちゃんといい、私目が見えないんだから驚かせるのやめてよね?」

四季「Sorry.」

四季「千砂都先輩からの寄付もあって2つ目の研究も上手くいってる」

四季「あとは治験を行うだけ」ワキワキ

かのん「なんか変な手の動きしてたりしない…?」

かのん「第一その変な研究? の成果って私で試して大丈夫なの? 西木野先生許さないと思うけど…」

メイ「それは大丈夫だ!」ヌッ

かのん「…」

メイ「実習は終わったけど、ここの先生たちとは今でも繋がってるからな! 話はつけてるよ」

かのん「う、うん…。じゃあもう後には引けないね」
 

143: 2022/10/30(日) 21:28:26.73 ID:M8o+0uov.net
 
夏美「後に引けない理由はもう一つありますの」

かのん「もう一つ?」

夏美「最近、海外渡航の制限が解けたの知ってますの?」

かのん「うん…! もしかして!?」

かのん「もしかして…!」パアアアア

夏美「その通り! 結婚式には千砂都先輩も来てくれますの!」

かのん「ちぃちゃんが…!」


――やっと会えるのデスね

――あの事故からもう6年、やっと幼馴染同士が再開できる…!

――最近はzoomとPOP TALKINGのお陰でやり取りも出来るとはイエ

――やっぱり直接会うとなると嬉しくて仕方ないデショウね…


かのん「そうと決まったら今すぐ練習しないと!」
 

145: 2022/10/30(日) 21:36:42.60 ID:M8o+0uov.net
 
――少しだけ、あの日々に戻ったような感覚

夏美「ワン、ツー、ワン、ツー」パンパン

可可「こ、こんな運動毎日するのはひっっっさしぶりデス…」ハァハァ

きな子「可可先輩はへばってられないっすよー。ほら、もう一回っす!」

四季「足関節神経ブゥロック!一部シンクロ」ガシャコン

かのん「なんかこういうのズルくない? 私も踊るよ?」

メイ「そっちは許可出来ないってよ。ダンスは機械に手助けしてもらえって」

メイ「植物状態から1年でここまで回復するだけでも凄いんだからよ…」

四季「かのん先輩は歌に集中」

四季「第一、目が見えてないのにダンス出来ます?」

かのん「うっ…確かに。足引っ張っちゃうだけかも」
 

146: 2022/10/30(日) 21:43:05.07 ID:M8o+0uov.net
 
――だけど少しだけ大人になった違和感もありながら

かのん「私、友だちの結婚式とか初めてなんだけど…」

かのん「何か用意しておくものとかある?」

可可「気持ち、デスかね」キラン

ありあ「衣装とかお金とかは私たちで用意しておくしね」

かのん「お金か…。結婚式って結構高いお金出すんだよね?」

かのん「カフェの経営めっちゃ傾いてるって聞いてるけど大丈夫?」

ありあ「大丈夫じゃないよ?」

ありあ「今のところ貯金を崩しながら生活してる状態なんだよ…?」

かのん「えぇ…」

ありあ「でもちゃんと出すってお母さん言ってた! せっかくの機会だもんね!」

ありあ「私もすみれ先輩たちのこと祝福したいし!」
 

147: 2022/10/30(日) 21:49:38.09 ID:M8o+0uov.net
 
――すみれとレンレンの結婚式の日を迎えようとしていマシタ

千砂都「『今から』『飛行機に』『乗るね』」zoom

かのん「うん。気を付けてね」

かのん「ちぃちゃんに会えるの楽しみに待ってるから」

千砂都「『うん』『じゃあ』『当日に』」ポチッ

かのん「POP TALKINGもver.2になって大分話しやすくなったなぁ」

かのん「これも可可ちゃんたちが作ったんだよね。私、どれだけ可可ちゃんのお世話になってるんだろう…」



可可「間に合いマシタ…」

四季「お疲れ様です…」

――すみれと恋へのサプライズだけでなく、かのんへのサプライズにも出来そうデス

――千砂都にも…ようやく顔向けできマスかね…?
 

148: 2022/10/30(日) 21:55:24.96 ID:M8o+0uov.net
かのん「…ちぃちゃん」

千砂都「…!!」

かのん「ちぃちゃん!」ギュウッ…

千砂都「…」ギュゥゥッ…

かのん「会いたかったよ…! 元気で良かった…! 本当に…! 本当に…!」

千砂都「…」ポンポン

可可「かのん…千砂都ぉ…!」グスン

ウィーン「悔しいけどいい光景ね…」グスン

かのん「…話したいことはたくさんあるけど、今日の主役は私たちじゃないもんね」

かのん「けど、私たちの舞台も用意してもらってるからさ。楽しみにしててよ!」

千砂都「『もちろん』!」

149: 2022/10/30(日) 22:01:10.25 ID:M8o+0uov.net
夏美「みなさま! 今日は平安名すみれさん、葉月恋さんの結婚式にご来場ありがとうですの!」

夏美「…感染症対策の為、近親者ほか十数人の参加なんですが」

夏美「新郎新婦の入場ですの! みなさん、拍手でお出迎え下さい~!」パチパチパチパチ


――すみれとレンレンが華やかな道を歩いてくる

――とっても綺麗デス

――特にすみれはウェディングドレスがよく似合いマスね

――是非、2人…いや3人で幸せになって欲しいものデス

――けど…

――少しだけ、陰りがあるのは…かのんと千砂都にまだ負い目があるからデショウか?

――それとも…


すみれ「…」

150: 2022/10/30(日) 22:07:07.28 ID:M8o+0uov.net
 
――式は進んでいく

――感染症対策で会食等がないので略式なのデスが

――挨拶・誓いの言葉に指輪交換・ケーキ入刀・サニパ様やサヤさんのスピーチ…

可可「エ…?」

すみれ「今からお色直しなの。アンタ手伝いなさい?」ギュッ

夏美「サップラ~~イズ! すみれさんのエスコート役はLiella!時代一番仲の良かった唐可可さんでっすのー!」

可可「ちょっ…聞いてないデスよ!?」グイッ

すみれ「アンタたちだって何か悪だくみしてるんでしょ? 少しくらい付き合いなさい?」



可可「…もう、強引なんデスから」

すみれ「可可」

可可「!!」

――な、なんなのデスか? まったく…すみれはマッタク!
 

151: 2022/10/30(日) 22:13:44.36 ID:M8o+0uov.net
すみれ「かのんと千砂都を連れてきてくれて有難う」

可可「…」

すみれ「ずっと引っ掛かってた…。あの2人に辛い想いをさせた私が幸せになっていいのかって」

すみれ「けど、貴女があの2人の笑顔をまた取り戻してくれた…」

すみれ「今日、あの2人の顔を見てやっと憑き物が落ちたの」

すみれ「貴女には救われてばかりよ。可可」

可可「すみれ…!」

すみれ「私、幸せになるからね。恋と一緒に」

可可「…ハイ」

可可「フン! いっつまーでっも辛気臭い顔してたのに今日だけしおらしい顔をして!」

可可「もうさっさと幸せになりやがれーデス! すみ…っ…!!!?」チュッ…

すみれ「貴女のこと好きだったわ、可可」

可可「~~~~~~~っ!!??」

153: 2022/10/30(日) 22:19:06.65 ID:M8o+0uov.net
 
可可「なっ…ななっ………!?」

可可「なーんてことしてんデスかこのグッソクムシ~~~!」

可可「今しがた誓いの言葉とキスをレンレンとしたばかりデスよね!?」

すみれ「声大きいわよ…」シッ

すみれ「もうしないったらしない。これからは恋としかしない」

すみれ「貴女が黙ってればいいだけの話なんだからそうしてればいいのよ」ニヤリ

可可「ハァ~~?」

可可「可可が黙っててもお天道サマも神様も見てマスよ」

可可「結婚式の最中にこんなことするなんて罰あたりデス!」

すみれ「あら? 貴女も知ってるでしょ? 罰も神様も関係ない」

すみれ「私こそがショウビジネスの女神、平安名すみれなんだから!」

可可「はぁ…」


――なーにがショウビジネスの女神デスか。もうただの子持ちの人妻デス

――けど吹っ切れて、可可の好きだったあの笑顔に戻りマシタね

――幸せになって、すみれ…
 

155: 2022/10/30(日) 22:25:48.21 ID:M8o+0uov.net
 
可可「まったく…すみれはマッタク」プンプン

かのん「可可ちゃんお帰り。すみれちゃんと何話してたの?」

千砂都「…」チョンチョン

千砂都「(ほっぺた、お化粧取れてるよ?)」カリカリ

可可「~~~~~~っ!?」

千砂都「(何話してたかより何してたかの方が気になるな~~)」ニヤニヤ

可可「な、なんでもないデス///!」

かのん「???」

可可「そ、そんなことより…」

可可「いよいよ余興の準備デス。かのん」

かのん「うん!」

可可「…」

可可「千砂都もついてきてくだサイ」

千砂都「??」
 

156: 2022/10/30(日) 22:31:36.32 ID:M8o+0uov.net
四季「サプライズお疲れ様です。可可先輩」

メイ「化粧とれてるぞ」ヒソヒソ

可可「今すぐ直しマス…」パフパフ

四季「さて、式はお色直しも終わってもうすぐゲストによる余興の時間」

四季「準備はいいですね?」

かのん「…うん」ドキドキ

可可「もっちろんデス!」

千砂都「??」

四季「はい、それじゃあ今から頑張るかのん先輩にもサップラーイズ」パンパカパーン

かのん「へ?」

千砂都「(四季ちゃんこんなキャラな時あったよね)」ニコニコ

四季「第2の研究成果のお披露目です」

四季「…気分悪くなったら言ってくださいね?」ガシャコン

157: 2022/10/30(日) 22:37:20.14 ID:M8o+0uov.net
四季「視神経接続OK。『かのんちゃんボード』起動」ピッピッ

可可「…」ドキドキ

かのん「え…!? 何これ? 何、これ…?」

かのん「わぁ…!!」


――可可と四季の研究。メイメイが看護師になって医師と関係を築きながら進めた発明

――POP TALKINGやダンス補助のサポートマシンもそうデスがこれは時間もお金もかかりマシタ

――視力を失った人に現実の風景をVR技術を駆使して脳に直接伝えるヘッドセット『かのんちゃんボード』


かのん「ちぃちゃんが見える…! 見えるよ…!」

かのん「なんか、逞しくなったね…?」

千砂都「!!」ミエテルノ?

かのん「それに…」チラッ

158: 2022/10/30(日) 22:43:46.99 ID:M8o+0uov.net
 
 
 
――やっと、目が合いマシタね…


かのん「可可ちゃん…」


――5年間、ずっと目を覚まさなかった貴女を待ち続けマシタ

――起きてからも、可可ではなく千砂都のことを考え続けていマシタね

――それが…


かのん「綺麗、だね…」

かのん「なんかこう、大人になったって言うか…」

かのん「素敵だよ! ゴメン、語彙力なくって!」


――やっと、可可の方を見てくれたのデスね…!
 
 
 

160: 2022/10/30(日) 22:49:05.08 ID:M8o+0uov.net
 
四季「かのんちゃんボードは脳への負荷を考えたら1日十数分が限界だと思います」

四季「ダンスと歌の負荷も考えたらステージにいる間で打ち止めかな」

メイ「ステージ空いたぞ。…みんなの表情、ちゃんと見て来いよな」

千砂都「(頑張って)」カリカリ

かのん「みんな…うん!」

可可「いきまショウ!」



夏美「さぁさぁさぁ! ゲストによる余興の時間でっすのーーー!」ザワザワザワザワ

夏美「結婚式の招待は近親者他十数名にしたつもりがこの盛り上がりっぷり!」ザワザワザワ

夏美「どこの誰が噂を流したんでっすの~?」←

夏美「これからのライブは~動画にしてクラウドファウンディングの協力者様へお返ししますの!」

夏美「…交通事故に遭い、生氏を彷徨いながら復活した伝説のスクールアイドルLiella!のセンター!」

夏美「澁谷かのんさん、そして唐可可さんの登場ですの!!」
 

161: 2022/10/30(日) 22:55:12.79 ID:M8o+0uov.net
 
――かのんの頬が綻ぶのが分かる

――目の前にある無数のペンライトはあの日のステージを再現してくれている

――家族の顔が見える。友だちの顔が見える。ライバルやお世話になった人たちの顔も

――きなきなが抱いてるのが彼女の赤ちゃん。ベビーカーにいるのはすみれたちの子デス

――すみれとレンレンは…まだ歌も始まってないのに号泣してるではないデスか

――かのんの手が私の手を包む。あの日のように私は微笑み…

――最高のステージが始まる




夏美「曲はもちろん…」

夏美「Tiny Stars!」
 

163: 2022/10/30(日) 23:17:38.69 ID:M8o+0uov.net
epilogue

かのん「本っっっ当疲れた…」

かのん「手とか足とか喉とかっていうより疲労感が…」

千砂都「『お疲れ様』『私』『泣いちゃったよ』」

かのん「ありがとう、ちぃちゃん」

四季「やはり疲労度を考えると実用化はまだまだ厳しい」

可可「かのんの経過観察もしないとデスし、再三の実験が必要デスね」

メイ(結構とんでもない発明してるんだよなぁ、この2人…)

夏美「み゙な゙ざん゙ーーーー! 私゙感゙動゙じま゙じだの゙ぉぉぉーーー!」グズグズ

夏美「感動したんですの…感動したんですけど!」

夏美「そろそろ次の演出に入りますのー!」ニャッハー

メイ「次ってなんだっけ?」

夏美「ブーケトスですの」ニヤリ

四季「―――――!!」シュババッ

164: 2022/10/30(日) 23:25:01.61 ID:M8o+0uov.net
ウィーン「ブーケトス…! 絶対取るわ!」

ウィーン(千砂都は澁谷かのんには渡さない!)グイグイ

四季「こういうのにマジになるなんてまだまだ子ども…」グイグイグイグイ

ウィーン「貴女には言われたくないわ!?」

ありあ「私も欲しいーーー!」グイグイッ

理事長「いいや! 私にも取らせて頂戴!」グイグイグイグイ

メイ(欲しいけどあんな風にはなりたくねえなぁ…)

すみれ「…」

すみれ「ま、ちゃーんとオチはつけないとね♪」

すみれ「さっきのライブは感動したわ。最っ高のライブだった」

すみれ「だから…貴女にあげるしかないでしょ!」ポイッ


かのん「??」パスッ

166: 2022/10/30(日) 23:33:02.62 ID:M8o+0uov.net
かのん「もしかして、今私が持ってるのって…」

可可「ブーケデスね」

千砂都「『おめでとう』『かのんちゃん』」

かのん「ええええええっ!? 私!? じゃあ次に結婚するのは…」

かのん「私ってこと…!?」

すみれ「貴女に一番幸せになって欲しいもの。当然よ」

かのん「すみれちゃん…!」

恋「けど、一体誰と結婚するのでしょうかね~?」ニヤニヤ

かのん「えっ…」

可可「!!」ドキリ

千砂都「??」ドキドキ

メイ「なんか高校卒業してないからまだスクールアイドル! とか言ってたみたいだけどよ」

四季「今のライブを以てスクールアイドルも卒業したってことでいいんですよね?」

きな子「恋愛禁止なのはもう終わりっす! どっちを選ぶんすかね…」ドキドキ

167: 2022/10/30(日) 23:41:05.50 ID:M8o+0uov.net
千砂都「『どっち』『ね』…『そういうこと』…」

可可「千砂都? なんか顔怖くないデスか?」

かのん「え゙っ!? ちぃちゃん何か怒ってるの?」

千砂都「『かのんちゃんの』『ぼく』『ねん』『じん』」ムスッ

かのん「えーっ!?」

千砂都「『私は』『zoomで』『振った』『でしょ』」

千砂都「『あと』『中学の』『時も』」

恋「中学の時も!? なんですかそれ!」

すみれ「聞きたいんだけど…?」ニヤニャ

かのん「その話はやめてーーーー!?」

千砂都「『困らせたら』『ダメ』『とも』『言ったよね?』」

かのん「―――!!」


千砂都「『私の』『こと』『好き』『じゃない』『よね?』」

168: 2022/10/30(日) 23:48:19.94 ID:M8o+0uov.net
 
 
かのん「――好きだよ!!」

千砂都「…!!」

可可「っ…」

かのん「好きだよ…。こんなにしてくれる人、好きじゃないワケないじゃん…」

千砂都「『かのんちゃん』」

かのん「けど!」

かのん「ゴメン…」

かのん「ちぃちゃんは…2番目に好き」

可可「エ…」

かのん「一番好きなのは可可ちゃんなんだ…!」


かのん「だから」


かのん「可可ちゃん! 私と結婚して下さい…!!」
 

170: 2022/10/30(日) 23:53:25.48 ID:M8o+0uov.net
 
可可「え、エエエエエエ…!?」ボシュッ

可可「プロポーズは流石に早過ぎデス…」シュウウウウ

恋「…ぷっ」

すみれ「…ほら、アンタもシャキっとして返事しなさいよ」

千砂都「『こっちが』『振った』『と』『思ったら』『フラ』『れるの』『なんか』『マル』『じゃないなぁ』」

千砂都(けど…良かった)

千砂都(これで…)

千砂都(…)

千砂都(…あれ?)

千砂都(もう、嬉し涙なんて出てるじゃん…)

千砂都(そう、嬉し涙。こんなに嬉しいことはないでしょ?)

千砂都「『おめでとう』…」
 
 

171: 2022/10/30(日) 23:55:15.23 ID:M8o+0uov.net
 
夏美「うわぁ… これもう披露宴どころじゃないですの」

へーんじ! へーんじ! へーんじ!

ありあ「可可せんぱーい! お姉ちゃんをよろしくお願いしまーす!」

理事長「そうよ! 幸せにならないと許しませんよ!」

ウィーン(これで千砂都は私のものになるのね!)ホッ

可可「うぅ…」

かのん「お返事、聞かせてくれる…?」

かのん「こんな目が見えなくて…歩くのもやっとの私だけど」

可可「…」

可可「もちろん、これからずーっと支えていきマス」

可可(千砂都にも負けないくらい、貴女のことを支えられるよう頑張りマス)
 

172: 2022/10/30(日) 23:58:07.35 ID:M8o+0uov.net
 
 
 
 
 
可可「私も――かのんのことが好きデス!」






――貴女のその口から流れる歌に一目惚れして

――ステージに立ったり学校生活を楽しんで

――辛い想いもして…5年間貴女の唇を見続けました

――歓声に包まれながら貴女の唇に口づけする

――大切な人たち、かけがえのない人たちに包まれて

――これからも、私と煌めく双子星のように一緒に人生を歩んでください

――かのん



173: 2022/10/31(月) 00:07:23.52 ID:geKulJ7m
乙っしたー
ハッピーエンドで良かった
ちぃにはマルがいるもんね

174: 2022/10/31(月) 00:07:58.47 ID:H/rR83Ix

引用元: 可可「Precious Memories」かのん