唯「あいててて……」

唯「ここどこ？　びょーいん？」ﾑｸｯ

唯「あぁー…。わたし助かったんだ……」

唯「……帰ろう」ﾃｸﾃｸ

唯「ただいまー…」

憂「……」ｳﾙｳﾙ

唯(あちゃ～。やっぱ交通事故にあわれたらさすがにショックだよね。そっとしとこう)

唯「寝よう……」

唯(それにしても無傷なのはなんでだろ……)ｽﾔｽﾔ

唯「あっさだー！」

唯「なんかしらないけど今朝は快調！　早起きしちゃったよ～」

唯「うーいっ！　おっはよう～！」

憂「」ｺﾄﾝ

唯(まだショックなんだ……)

唯(う…。なんかごはん見るだけでおなかいっぱい……)

唯「憂、ごめんね。食欲ないや」

憂「」

唯「……」

唯「憂、口もきかないほどショックだなんて、悪いことしちゃったな～」

ﾋｿﾋｿ　ﾋｿﾋｿ

唯「なんか町の人たち、誰かのうわさ話してるみたい……」

町の人「あの女子高生、ガラスに姿が映ってなかったね」

唯「今日はみんな気を遣ってたのかな？　誰も話しかけてこなかったよ～」

唯「学園祭は終わったけど、部室にいかなきゃ……。勉強はそこでするしね」

――

唯「みんな、お待たせ～！」

澪「」

律「」

紬「」

梓「」

唯「みんなテンション低いねー！　どったの？」

梓「ぐすっ……」ｳﾙｳﾙ

澪「梓、もう泣くなよ……」

律「でも、唯が氏んじまうなんてな……」

紬「唯ちゃん……」

唯「え」

唯「え？　りっちゃん何言ってんの……」

澪「もうそのことは言うなよ…律」

梓「なんで、なんで…1ヶ月前にはライブで演奏してて…新曲も歌ってたのに！」

紬「唯ちゃん…。うわああああああああああああああああん！」

唯「ねぇ！　みんなドッキリでしょ！？　やめてよ！」

唯「あずにゃん！　ドッキリなんでしょ！？　抱きついたらほんとのこと言うよね！？」

ｽｶｯ

唯「え……」

唯(私…ほんとに氏んじゃったの！？)

唯「ギー太が立てかけてある…。お花も添えちゃって……」

唯「ギー太にも、もう触れないんだね……」

澪「唯、天国で元気にやってんのかな……」

唯「澪ちゃん！　私はここにいるよ！！」

律「あいつ、あっちでもギター弾いてるよな！」

唯「りっちゃん…。私ここにいるってば！」

紬「きっとそうよ！　唯ちゃんはむこうでも元気にやってるわよ」

唯「いまここで元気に動いてるのに！」ｱｾｱｾ

梓「唯先輩っ…！　なんで氏んじゃったんですか！」

唯「あずにゃん！　私氏んでないもん！！」

唯「ドッキリなんでしょ！？　ドッキリって言ってよ！　うわああああ！」

澪「入部してきたときは、ギターもできなくて、おっちょこちょいで……」

律「おっちょこちょいなのは変わってなかったけどな！」

紬「でも、今じゃ放課後ティータイムのボーカルで、ギターもうまくなってて……」

梓「ええ、確かにギターは上達してました！　私も頑張らなくちゃって気持ちにさせてくれました」

律「その唯も、もういない…か」

澪「私は唯のこと好きだったぞ。もちろん放課後ティータイムの仲間として」

律「あたしも好きだったぞ！　まぁ、澪に同じく、仲間としてな」

紬「唯ちゃんは嫌いになれないもんね～」

梓「私はみなさん負けないくらい、大好きでしたよ！　自信があります！」

澪「じゃぁ、私はその上だな！」

律「澪には負けないからな！　澪よりもっともっと大好きだったぞ！」

紬「りっちゃんよりも大好きだったもん！」

梓「みんな、大好きだったんですよ、唯先輩！」

唯「うぅっ、うえぇ…。みんなそんな風に思ってくれてたんだね……」

唯「まだ氏にたくなかったよぉ……！」

唯「みんなで部室で勉強して、Ｎ女子大に合格して、あずにゃんも入ってきて……」

唯「また、放課後ティータイムで音楽をやりたかったのに！」

にゃー

唯「あのときの猫ちゃん…？　助かったんだね、よかったね……」

唯「あ、みんな勉強始めたみたい…。頑張ってるな……」

～数日後～

唯(私も少しずつこの世に関渉できるようになってきたなぁ。)ﾋｮｲｯ

唯「こうしてクッキーも食べれるしね！」

唯(この数日間、みんなのことを観察してたけど、飽きないな～。あれ？　なんか変態さんみたい)

律「唯ができなかったこと、あたしたちでやるんだからな！」

澪「そうだな、あいつは受験もできなかったんだ、絶対に合格しないと！」

紬「ええ、頑張りましょう！」

梓「皆さん頑張ってください！」

唯「み、みんな…！」ｳﾙｳﾙ

唯「頑張ってね！」

紬「じゃぁ、休憩しよっか。お茶いれるね～」

紬「あれ？　なんかクッキーが少なくなってる～！？」

澪「そういえば最近、この部室からギターの音が聞こえるって噂が流れてるぞ」

律「唯かなーっ！？　なんつって～」

紬「でも、もしそうなのだとしら、唯ちゃんはまだ近くにいてくれてるんだよね！」

梓「じゃぁクッキーも唯先輩が！？」

澪「そ、それは…ないだろ」ﾁﾗ

律「えっ！？　何その目！　あたしじゃないよ！」

唯「あははは！」

唯「この生活も悪くないね～」

律「そういう噂なら、あたしも知ってるぜ！」

紬「なになに～？」

律「何でも町で唯のことを見かけた人がいたらしいんだ」

梓「浮幽霊ですか？」

澪「な、なんか唯だとあんまり怖くないな」

梓「ですね！」

唯「わたしのこと見えてる人がいたんだ！」

唯「でも、りっちゃんたちには見えてない…。もちろん憂も……」

唯「仏壇にごはんとか果物を供えるけど、あの朝ごはんのとき……」

唯「見ただけでお腹いっぱいになったのは、氏んでたからだったんだね」

唯「憂、わたしが氏んでてもごはん用意してくれたんだ」

唯「そういえば、昨夜も今朝もわたしのごはん作ってくれてた……」

唯「憂…。ぐすっ」

唯「でも、なんで町の人に見えて、りっちゃんたちには見えないんだろ？」

唯「親しかった人には見えないのかな？」

紬「唯ちゃんに、もう一回会いたいわね……」

澪「それは言わない約束だろ？　ムギ」

梓「そうですよ、今のを唯先輩が聞いてたら、かわいそうですよ！」

梓「唯先輩だって、私たちに会いたいだろうし……」

唯「あずにゃん……！」

唯「わたしだって、わがまま言ってられない……！」

唯「氏んじゃって悲しませたぶん、みんなを支えなきゃ！」ﾌﾝｽ

澪「おっと…。もうこんな時間だな」

律「帰ろっか」

紬「そうね」

梓「みなさん、また明日！」

唯「みんな帰っちゃった……」

唯「誰もいない、静まった部室……」

唯「ギー太といっしょなら寂しくないよ♪」

きみをみてると　いつもハートドキドキ　ゆれるおもいは～

さわ子「…？　唯ちゃんの声が聞こえるような……」

さわ子「まさかね」

唯「憂～。ただいま～」

唯「憂は、私の部屋を掃除してくれたりもするんだよね」

唯「いい妹をもって幸せだよ～」ｳﾙｳﾙ

唯「今日もご飯用意してくれてる！」

唯「見ただけだと味わかんないなぁ～。お腹いっぱいにはなるけど」

唯「憂の目の前でパクパク食べるわけにはいかないしね」

唯(憂…。わたしね、憂が寝るのを見守りながら寝るんだよ)

唯(だから、安心して寝ててね)

唯「ふがっ」ｽﾔｽﾔ

憂(お姉ちゃん…。私、一人でも頑張れるよ！　心配しないでね！)

憂(お姉ちゃんのご飯は、お姉ちゃんがいなくても用意してあげてるんだよ！)

憂(毎朝毎晩、お姉ちゃんが食卓にいる気がして、おいしいって言ってくれてる気がしてるんだよ)

憂(お姉ちゃんが近くにいると思うと、ダメなところは見せられないもんね！)

憂(だからあたしはもう泣かないよ！)

憂「お姉ちゃん、私の気持ち届いた？　ふみゅぅ……」ｽﾔｽﾔ

～翌朝～

憂「はい！　お姉ちゃん！　朝ごはんだよ～！」

唯「すっごいおいしよぉ、憂～！」

憂(お姉ちゃんが実際に食べてるわけでもないし、おいしいって言ってるのが聞こえたわけじゃないけど、なんか嬉しいな！)

唯「おいしい！　おいしいよ憂！　うえぇぇぇん！」ｳﾙｳﾙ

――

憂「行ってきま～す！」

憂(お姉ちゃんがついてきてくれてる気もするよ！)

憂「あ、でもこの場合は憑いてきてるのかな！　えへっ」

憂(こんな一人ギャグも、笑ってくれてるのかな？)

唯「あっはははははは！　憂ってギャグのセンスもあるよね！　ほんとなんでもできる自慢の妹だよ～！」

唯「憂、最近背伸びてきたね～。」

唯「氏んでから私はまったく背も伸びないし、体重も変化しないんだよね」

唯「ってあれ？　憂、もうわたしよりおっきくない！？」

唯「姉として、嬉しいやら悲しいやらだよぉ」

唯「む、胸がわたしよりおっきいのは、元からなんだけどね。あはは」

憂「梓ちゃん、軽音部どう？」

梓「ん～。みんなもう受験勉強で忙しくてね…。練習は一人でしてるんだ」

憂「そうなんだ！　新入部員がたくさん入ってくるといいね！」

梓「ほんっと、そうなんだよ～。だって最低4人いないとダメなんでしょ？」

憂「あ、そうだったんだ！　う～ん…」

梓「どうしたの？」

憂「いや、お姉ちゃんのギターをもらって、軽音部に入ろうかな～なんて」

唯「ふぉぉぉぉ！　憂！　大賛成だよ！　ギー太も喜ぶよ！」

梓「そうしなよ！　憂！　唯先輩もいいって言ってるんじゃないかな？」

憂「分かった！　軽音部でもよろしくね！」

純「なになに？　なんの話？」

梓「憂が軽音部に入るんだってさ！　純もどう？」

純「う～ん…。考えとくよ！」

梓「そっか……」

純「ま、ジャズ研のこともあるしね、ゆっくり考えさせて！」

梓「うん！」

～放課後～

憂「お姉ちゃんのギター…。久しぶりに持ったけど、やっぱ重いねー」

梓「まあね。そんなことより、あわせてみよう！」

憂「うん！」

――

律「なんで3年2組に行くんだよ～」

澪「今日は教室で勉強するからだ！」

紬「憂ちゃんが入ったから、練習したいわよね、梓ちゃん」

律「なるほどね…。って！　お菓子はあるんだろうな！？」

紬「もちろんよ～。休憩のときに食べようね」

律「よっしゃー！　やるぞー！」

律「なんで？」

澪「なんだよいきなり！？」

律「なんで、唯が氏んだのに平然としてられるんだ！？」

紬「あら、そんなことないわよ？」

澪「本当は私だってすごく悲しい。泣き叫びたいよ。でも、それじゃぁ唯がうかばれないだろ？」

紬「私たちがいつもみたいに笑ってることが、唯ちゃんの幸せなんじゃないかしら？」

律「そうだよな…。それをあたしは……」

澪「いいんだ律。お前の気持ちはよく分かるぞ」

律「澪…！」

紬「りっちゃん、勉強頑張ろう？」

律「おう！」

唯「あずにゃんたち気持ちよさそうだな～」

唯「わたしもやりたいな～」

～♪　～♪

唯「ふでペンだ！」

ふでペン　ふっふー　ふるえる　ふっふー

ｼﾞｬｯ

憂「梓ちゃん？　急に止めてどうしたの？」

梓「唯先輩の歌声が聞こえた…気がする」

あいを　こめて　スラスラとね　さぁかきだそう～

憂「本当だ！　聞こえた気がしたよ！」

唯「あずにゃんたちに聞こえてる？　ちょっとだけだけど……」

唯「なんだか嬉しいな！」

唯「これからも歌い続ければ、軽音部のみんなに、届けることができるのかな？」

唯「わたしの、歌声」

澪「今度はギターの音じゃなくて、唯の歌声が聞こえる噂が流れてるぞ！」

律「唯がまだ近くにいてくれてるって、思えるよな」

紬「そうね、唯ちゃんの歌声私も聞きたいな♪」

ふわふわひかるねがいごとも～　ぐちゃぐちゃへたるなやみごとも～

澪律紬「！　聞こえた！」

澪「癒されるな///」

律「だなー///」

唯「こうしてみんなに歌を届ける、それが私の楽しみで、役目でもあるのかな」

憂「お姉ちゃん、まだ近くにいてくれてるんだよね！」

梓「だよね！　ほっとするな～」

憂「じゃぁ、もう遅いし、帰ろうか」

梓「そうだね！」

さわ子「ちょっと！」

憂「！？　山中先生？」

梓「なんでしょうか」

さわ子「あなたたちの仕業なの！？　唯ちゃんの歌声が流れるのは！」

憂「いえ、ちゃんとお姉ちゃんが歌ってるんです」

梓「唯先輩は、今も私たちを見守って、支えるために歌っているんです」

さわ子「そうなの…。でもそれって幽霊じゃ……」

憂「お姉ちゃんが幽霊なら怖くないですよ！」

梓「あ、それ澪先輩も言ってた！　私もそう思うけどね」

さわ子「まぁ、確かに、怖くないし、、癒されるわね」

唯「そういえばわたし、お風呂入ってない！」

憂「おっふろ、おっふろ～♪」

唯「気分だけでも入ろうかな」

唯「憂とお風呂に入るなんて何年ぶりだろうな～」

憂「ふぃ～。あったかい～」

唯(やっぱ憂、胸もおっきくなってるよ！)ｱｾｱｾ

憂「いいお湯だったな～」

唯「わたしもいいお湯な気分になったよ～」

憂(お父さん、お母さんも元気そうにしてたけど、本当は悲しみでいっぱいなんだろうな)

憂(私が頑張って二人に楽させなくちゃね！)

唯「それにしても今日はすっごく寒いね～」

憂「うう、寒いよ～」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

唯「だったら抱きしめてあげるよ」

唯(触れることはできないかもしれないけど、憂が少しでもあったかあったかな気分になれますように)

憂「お姉ちゃん…。あったかくて、いい気持ち……」ｽﾔｽﾔ

唯(よかった～。これで、安心して寝られる……)ｽﾔｽﾔ

ﾁｭﾝﾁｭﾝ

憂「もう朝か～。ん～っ」ｸﾞｸﾞｸﾞ

唯「あ、外…！」

憂「すごい！　雪が降ってる！　もう12月だもんね～」

唯「わたしが生きてたら、受験勉強でひいひい言ってる時期だな～」

憂「お姉ちゃんからもらったマフラーつけていこっ！」

唯「憂、それまだ持っててくれたんだ！」ﾊﾟｧｧｧｧｧ

憂「このマフラーがあれば、どんな寒さもしのげる気がするよ！　お姉ちゃん！」

唯「憂、よかったね！　わたしは全然寒くないな～。これも氏んでるからかな？」

――

梓「あ、憂！　そのマフラーまだ持ってたんだね！」

憂「ボロボロになっても使い続けなきゃね。私の宝物だもん！」

梓「羨ましいなぁ…。私も平沢家の子がよかったなぁ～」

憂「妹の座は私だから…。梓ちゃんは飼い猫かな？」

梓「何それ～！」

ｱﾊﾊﾊﾊﾊﾊﾊ

唯「いいなぁ～。楽しそうだな～」

澪「さむっ……」

律「あれ～、澪ちゃん？　コートのポケットに手つっこんでるのは何でかな～？」

澪「手袋なくしたんだよっ！」ｸﾜｯ

律「ほら、これやろうか？」ｽｯ

澪「え、いいのか？」

律「実は新しいのあるしね」

澪「あ、ありがとう……律」

律「唯の分まで、Ｎ女子大の試験頑張ろうな！」

澪「おう！」　

紬「おはよう～！」

澪「おはよう、ムギ」

紬「N女子大の試験まで、あと2ヶ月ね」

澪「ああ、さっきそこで律と誓いあったんだ。唯の分まで頑張ろうって」

紬「私も、絶対に合格してみせるわ！」

澪「それにしても、律はちゃんと合格できるんだろうか？」

紬「大丈夫、あれからずっと勉強してきたし、これからもこの調子でいけば……」

律「そうだぞー、澪！　あたしはやればできる子なんだ！」

澪「どっかで聞いたことあるぞ、それ……」

梓「そういえば、純の軽音部入部の話はどうなったんだろうね」

憂「まだ返事もらってなかったね」

唯「純ちゃんが入ってくれたら、軽音部も安泰かもね～」

唯「憂、あずにゃん、頑張れ～！」

――

純「ああ、その話ね。うん、軽音部入るよ！」

梓「やった！　じゃ、ベースお願い！」

純「うん！　改めてよろしくね！」

憂「やった～！　純ちゃんも一緒だ！」

唯「う゛い～！　よかったねぇ！」ｳﾙｳﾙ

～新年～

唯「いよいよ勝負の年…。りっちゃん、澪ちゃん、紬ちゃん、頑張ってね！」

憂「お姉ちゃんも近くにいるとは思うんだけど…。実際一人での年越しだったなぁ」

唯「憂～、そんな寂しいこと言わないでよ～！」

――

律「澪、ムギ、梓、憂ちゃん、鈴木さんを連れて初詣にでも行こうかな」

律「」ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ

澪『なんだ、律か…。ん？　初詣？　う～ん…。よし、行くか！」

律「なんだかんだで全員集まったけど、今年は唯抜きか～」

澪「このへんに唯がいるのかな？」ｽｽｽｯ

律「ほれほれ～。唯～。たこ焼きだぞ～！」

唯「りっちゃんのいじわる！」ｱｳｱｳ

憂「はやくお参りに行きましょう！」

紬「そうね、りっちゃん行くよ～」

律「へーい」

律(N女子大の試験…。唯のためにも合格できますように！)

澪(唯が伝えてくれた、いろいろなこと…。試験でそれをいかせますように！)

紬(唯ちゃんが、みんなが、幸せな結末を迎えられますように……)

梓(軽音部が無事続けられますように…！　それから、先輩たちが合格できますように！)

憂(お姉ちゃんがちゃんと成仏できますように……！)

純(今年もみんなで笑っていられますように……！)

――

律「よ～し帰るぞ～！」

梓「みんなで写真撮りましょうよ！」

澪「そうだな、タイマーセットして…。いっくぞ～！」

ﾊﾟｼｬｯ


今日は寝させてください
明日の朝に書き始める予定ですが、それまでの間保守をしていただけるとありがたいです
こうしたほうがよかった、などの意見がございましたら、ご自由にどうぞ

澪「初詣のときに撮った写真を現像しに行くかな」

――

澪「できた！　えっと…。どれどれ」

澪「！　これ…！」

――

律「はぁ？　写真に変なもん？」

澪「これ心霊写真だって！　やばいって！」

梓「一体何が写ってるんですか？」

澪「なんだか…。桜高の制服で手袋をつけた腕が、憂ちゃんのとこに写ってる……」

唯「あ゛っ！　それわたしだ！」

憂「それはきっとお姉ちゃんだと思います！」

憂「その手袋はクリスマス会のときにあげた手袋です！　間違いありません！」

澪「ははっ、唯、こんなとこまで出てくるなんてな」

唯「みんな、受験勉強に大忙しだね～」

律「あ～！　もう！　疲れた～！」

澪「何言ってんだ！　試験はもう1ヶ月後なんだぞ！」

紬「それじゃ、休憩にしましょう」

律「やーりぃっ！」

唯「あはは、りっちゃん大丈夫なのかな？」

～受験前日～

澪「いいか、律。いよいよ明日なんだぞ」

律「わーってるって！　澪は心配性だな～」

紬「りっちゃん、真剣に受け止めなきゃダメ！」

律「へ～い」

唯「いよいよ明日かぁ。　私が受けるわけでもないのに、ドキドキしてきちゃったよ～」

憂「(来年は私が受験…。)みなさん、頑張ってください！　これはほんの気持ちです！」

律「おっ！　お守りじゃん！」

澪「いいのか？　憂ちゃん」

紬「ありがとう～！」

憂「お姉ちゃんができなかったこと、みなさんで、やり遂げてください！」ｳﾙｳﾙ

澪「そうか、唯は氏んじゃって…。受験すらできないんだもんな」

律「今までずっとそばにいてくれて、何気なく過ごしてきたけど……」

紬「唯ちゃんはもういないんだったね……」

憂「ですから、絶対合格してください！」

律「まかせとけ！」

澪「本当に大丈夫なんだな！？」

律「あともうちょっとお願いしますぅ……」ｱｾｱｾ

ｱﾊﾊﾊﾊﾊﾊ

にゃー

澪「あ、ユイ、元気か？」

憂「軽音部って、猫飼ってたんですか？」

律「これはな、唯が事故で氏んだとき、抱えていた猫なんだ」

紬「唯ちゃんはこの子を助けるために、飛び出して轢かれたのね……」

澪「だから、ユイって名づけたんだ」

憂「そうなんですか……」

梓「憂、そろそろライブハウスいこっ！」

憂「うん、そうだね！　それではみなさん…。本当に、頑張ってください！」

～その日の夜～

唯「いよいよか～……」

唯「わたしが生きてたら、あんな風に切羽詰まってたんだろうな…」

唯「りっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃん、頑張れ……」ｽﾔｽﾔ

～試験当日～

律「受験票落とした……！」

澪「バカ律！　何してんだよ！」ｱｾｱｾ

紬「もう時間がないわ……！　どうしよう！」

ﾊﾟｻｯ

律「ん？　あっ！　あたしの受験票！」

澪「なんだよ、律の真下に落ちてたじゃんか～」ﾎｯ

紬「なんにしても、よかった～」

唯「りっちゃん、おっちょこちょいなんだから～！　感謝しなよ！？」

では～　始めてください！

澪(分かる…。これも分かるぞ！)

紬(勉強した成果が出てきてる！　唯ちゃん、いけるよ！)

律(分からん…。これも分からんぞ！)

唯「なんかりっちゃん顔色わるい…。もしかして、りっちゃんヤバイ？」

唯「澪ちゃんは…。なんかすごいスラスラ解いてる……」

唯「ムギちゃんはもうこの教科は終わって見直しに入ってる…！　すごいね！)

唯「ん～」ﾋｮｲｯ

唯「んで…」ﾋｮｲｯ

唯(澪ちゃんの答えとりっちゃんの答えを比べてみたけど……)

唯「りっちゃん、それでも5つくらいしか間違いがないよ！　これならギリでいけるよ！」

律「おわったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」

澪(あれは間違いなくいけてるはずだ！)ﾌﾝｽ

紬(澪ちゃん自信満々ね。私も合格してるといいんだけど……)

唯「みんな、頑張ったね、すっごく、頑張ったね……」ｳﾙｳﾙ

梓「先輩！　どうでしたか！？」

澪「梓、待っててくれたのか！」

紬「ありがとね～」

律「あたしは氏んだよ～。あははははー」

梓「ダメだったんですか！？」

律「ぐふぅっ！　まだダメって決まったわけじゃないけど……」

律「自信ないよぉ…！　唯、ごめんなぁ！　合格してなかったら……」

澪「バカ律！　あんなに頑張ったんだ！　失格なわけないだろ！」

紬「そうよ、合格を信じて発表を待ちましょう？」

憂「じゃぁ寒いので帰りましょうか！」

～合格発表日～

唯「N女子大は、受験番号を貼り出すみたいだね。りっちゃんたち、合格してるかな？」

ﾜｲﾜｲｶﾞﾔｶﾞﾔ

澪「あ、あったぞ！　私の番号！」

紬「私もあった～！　やったね、澪ちゃん！」

律「」

澪「律…？　おま、お前まさか！」

律「…った……」

紬「へ？」

律「あ、あった…！　き、奇跡だ……」ｺﾞｸﾘ

澪「律…！　やったな！」

紬「おめでとう！　りっちゃん！」

律「うわあああああああん！　唯、やったよ！　あたしやったよ！」

唯「りっちゃあああああああん！　よかったねぇ、よかったねぇ！　うわああああああああん！」

――

澪「と、いうわけでみんな合格してたんだ」

梓「おめでとうございます！　律先輩はどんなコネを使ったんですか？」

律「オイ！」

紬「ちょっとお菓子の準備してくるわね～」

唯「ムギちゃんが来る前にクッキー少し食べちゃおっと」

唯「いただきまーす」ｽｶｯ

唯「あ、あれ……？」

唯「クッキーがつかめない……？」

唯「じゃぁシャーペンとかなら……」ｽｶｯ

唯「あ、あれれ？」

――

紬「みんな～クッキーよ～！」

梓「いただきます！　あ、コレいけますね！」

唯「いいなぁ～」

唯「少しずつ、ほんの少しずつだけど……」

唯「この世に関渉できなくなってる……？」

唯「なんだか寂しくなるな……」

唯「放課後ティータイムのみんなの演奏を、大学で聞くまでは…消えたくない」

～卒業式～

梓「ぐすっ……」ｳﾙｳﾙ

憂(お姉ちゃん…。卒業してほしかったな……」

――

澪「とうとう桜高ともお別れか……」

律「梓、梓もN女子大に来るのか？」

梓「そのつもりです。憂もそうする？」

憂「うん！　先輩方、向こうでも頑張ってください！」

紬「憂ちゃんたちも、軽音部頑張ってね！」

梓憂純「はい！」

――

憂(お姉ちゃん！　あれから私たちは新入部員も入ってきて、頑張ってるよ！)

憂(学祭ライブも成功して、私たちは引退です！)

憂(もう受験シーズンに入ってきて、勉強は大変ですが、梓ちゃんや純ちゃんと頑張っています)

梓「憂？　考え事？」

憂「あ、いやっ！　違うんだよ！」

純「変な憂ー」

憂「あはは、さぁがんばろっか！」

梓「憂、ここわかんないんだけど……」

憂「ああ、それね……」

唯「ほほえましい光景ですなぁ～」

純「二人とも、頑張ろうね」

梓憂「うん！」

唯「憂……」

唯「もう少しで、一緒にいれなくなるのかな……」

唯「そんなの嫌だよ！」

唯「あずにゃんとも離れたくないよ！　ぐすっ」

～試験当日～

憂「お姉ちゃん…！　私、絶対に、合格してみせるね！」

梓「憂、やる気だね！　よーし、私もがんばるぞ！」

純「あわわ、私も頑張らなきゃ！」

唯「みんな、わたしが見守ってるからね」

梓「ふぃ～。終わった～！」

憂「なんか大丈夫そうだったね！」

純「私はわかんない……」

憂「きっと大丈夫だよ！」

唯「みんな苦戦してなかったな～。3人とも、合格してるといいねぇ」

～合格発表日～

憂「やったぁ！　合格してたよ！」

憂(これも、お姉ちゃんが見守ってくれてたからなのかな？)

梓「よかった～！　私の名前もあったよ～！」

純「」

純「」

梓「純！　どうしたの！　純！」ﾕｯｻﾕｯｻ

純「」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

憂「純ちゃん！　どうしたの！」

純「合格してた……！」

梓「な、なんだ！　よかったね！　純！」

唯「憂、合格したか～、よかったね～！　お姉ちゃん嬉しいよ」

唯「！？」

唯(なんか一瞬目の前が霞んで……)

唯「ま、まだこの世に残るんだ…。放課後ティータイムの演奏を…聞くんだ…！」

～N女子大　入学式～

憂「ふぅ…。入学式終わった～」

律「憂ちゃんお疲れ！　緊張した？」

憂「いえ、そうでもないです」

梓「澪先輩、身長伸びました？」

澪「えっ！？　気にしてるのに～」

律「澪、このままだと巨大女になる～って心配してんだよな」

紬「心配しなくてもいいのにね？」

純「でも、スタイルがいい澪先輩かっこいです！」

澪「そ、そうか？　ありがとう///」

唯「ふぉぉぉぉぉっ！　澪ちゃん身長も胸も大きくなってる！」

唯「しばらく見ないうちにすごい成長したな～」

唯「りっちゃんも、ちょっと大きくなってる！　あ、前髪おろすことにしたんだ。かわいい～♪」

唯「ムギちゃんはすっかりお嬢様な顔立ちになって、すっかり大人の女だね！」

唯「それも、もうすぐ見れなくなるの？」

唯「嫌だなぁ～。お別れなんて」

澪「これで放課後ティータイムがまたできるな！」

梓「大学ではやってなかったんですか？」

律「だって、他の人なんて考えられないし……」

梓「それもそうですね」ｸｽｯ

純「私、澪先輩のベース見て勉強します！」

澪「そうか、あんまり期待しないでくれよ？」

純「そんなことありませんよ！？」

～部室～

澪「それじゃ、始めるか」

律「1、2、1、2、3、4！」

～♪　～♪

紬(すっごく楽しい！)

澪(コレだ！　コレだよ！)

律(久しぶりだけど、一体感のあるこの音楽！）

憂(お姉ちゃんが演奏してるとこ見たかったな)

唯「♪　♪」

唯「あ、あれ？　また目の前が霞む……」

唯「でも、いい演奏だな…。混ざりたいな……」

――

澪「いいかんじだったな！」

梓「そうですね！　みなさん前よりも上手くなってたし！」

律「あたしは！？　あたしはどう！？」

梓「あーうまかったですー」

律「オイ！？」

～文化祭～

澪「唯、今日のライブ聞いてくれるかな？」

律「聞いてくれるだろ。この時のために、あたしたちは頑張ってきたんだ」

紬「最高のライブにしようね！」

憂(お姉ちゃん、ギー太と一緒に、私の音楽を届けるよ)

憂(澪先輩の歌声はより綺麗になっていてかっこいいです！)

憂(お姉ちゃん…)

憂(ずっと、そばにいてね)

アナウンス「それでは、軽音部による演奏です、どうぞ！」

>>1です
お待たせしました

唯「いよいよ始まる……！」

澪(いくぞ…！　しっかり聞いとけ、唯！)

～♪　～♪

唯「す、すごい……」

唯「みんな、笑ってて、楽しそうで……」

唯「あずにゃんのギターはもう私じゃ追いつけない」

唯「澪ちゃんのベースは聞きほれちゃうし」

唯「りっちゃんのドラムはペースが乱れることなく、気持ちよく演奏できそう」

唯「ムギちゃんのキーボードは、安定しててすごいよね」

唯「みんな…。すごいよ……！」

ｼﾞｬｰﾝ

澪「ハァ、ハァ……」

律「唯、聞いてくれたかな……？」

梓「きっと、聞いてましたよ」

憂「お姉ちゃん……」

ﾜｰｯ

ｱﾝｺｰﾙ！　ｱﾝｺｰﾙ！

紬「……！」

律「いよっしゃぁ！　もう一曲いっくぞぉ！」

律「ふぃ～。疲れた～」

澪「結構よかったんじゃないか？」

紬「そうね、いい演奏だったわ」

梓「みなさん、おつかれさまです！」

憂「飲み物を準備しました！」

律「さんきゅ～」

唯「感想を言いたい…。すごかったね、って言ってあげたい…。でも、届かない……」

唯「あー、目の前が真っ暗だ……」

唯(もうほんとに消えなきゃなのかな……)

憂「お姉ちゃんも、いつかは消えちゃうのかな」

梓「消えるって？」

憂「うーん…。天国に行っちゃう…とか？」

梓「そばにいてくれなくなるのは寂しいけど、そのほうが唯先輩にとってもいいんじゃないかな？」

憂「なんで？」

梓「だって、いつまでもこの世に執着して、思いをふりきれないんじゃ、次の人生が楽しめないでしょ？」

梓「それじゃ、つまらないじゃん！」

唯「あずにゃん……」

～数日後～

レポーター『こんにちは！　今日は、桜ヶ丘高校前行きのバス停の前に来ております！』

レポーター『私は今、この辺りに幽霊が出るとの情報を聞き、駆けつけてまいりました』

レポーター『どのような幽霊かと申しますと、鏡やガラスに映らない、女子高生の霊だそうです』

レポーター『さっそく、専門家の方に聞いてみましょう！』

霊媒師『あー、こりゃいかんね、もう怨霊臭がプンプンするわ」ｸﾜｯ

レポーター『では、さっそく、除霊の方をお願いします！』

霊媒師『今準備するけぇのぉ』

レポーター『一体どんな除霊を披露してくれるのでしょうか！』

レポーター『CMの後、全てが明らかに！』

――

憂「お、お姉ちゃんのことだ……！」

憂「どうしよう…。お姉ちゃんが除霊なんてされちゃったら…！」

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾙ

憂「もしもし、梓ちゃん！｣

梓『憂！？　今テレビ見てるよね！　あれ、唯先輩のことだよね！』

憂「どっ、どうしよう！」

梓『生放送みたいだから、今なら止められるかも！』

憂「そうだね、バス停に行こう！」

霊媒師「いいですか？　決して邪魔をしないでくださいね」

レポーター「もし、邪魔が入るとどうなるのでしょう？」

霊媒師「除霊成功に後一歩ってところでも失敗する」

レポーター「霊が消えかけでも、ですか」

霊媒師「そのとおりじゃ」

レポーター「分かりました、みなさん、気を付けてください！」

憂「はぁっ、はぁっ、疲れたよ～！」

梓「急がないと、はぁっ！　唯先輩がっ！」

律「お、お前ら！　テレビ見たよな！」

澪「唯は消させないぞ！」

梓「ムギ先輩は！？」

澪「行きたかったみたいだが、家の用事がなんとかって言ってたぞ！」

憂「とにかく急ぎましょう！」

霊媒師「は～れ～っ、うんけんそわか…！」

唯「おさんぽ、おさんぽ～♪」

唯「あれ？　なんだろ。体がぴりぴりする……」ｸﾞｲｯ

唯「なんかに引っ張られてる～！」

霊媒師「いこ～　いこ～　いこよいれうゆ～」

唯「うわっ！　おばあさん誰！？」

霊媒師「けい～　けい～　けいよいれうゆ～」

唯「あああああ…。なんか体がふわってしてきた～……」

梓「はぁ、はぁ、ついた！」

憂「なんかもう除霊終わりそうだよ！？」

澪「ど、どうしよう！」

律「霊媒師の気を散らせねぇと！」

澪「どうやってだよ！」

律「えーっと……」

律「おい！　ジャニオタのクソババア！」

霊媒師「けい～　けい～…　ああんっ！？」

唯「うぇあぁっ！」ﾄﾞｽﾝ

唯「あいててて……。あ、りっちゃん！」

霊媒師「よくも邪魔したね！　ああ、霊が逃げてく…！」

律「どーんなもんだいっ！」ﾋﾞｼｯ

梓「というかジャニオタだったんですね……」

霊媒師「えっ、営業妨害だ！　あれほど邪魔をするなと言ったのに！」

律「テレビを見ていませんでしたの～。すいませんね！」

澪(でかしたぞ、律！)

唯「もう町を歩けないよぉ……」

レポーター「あーっと！　ただいま除霊が中止されました！」

レポーター「どうやら邪魔がはいってしまったようです」

霊媒師「あれは失敗したんじゃない！　違うんだからな！」

レポーター「と、霊媒師は弁解しています」

レポーター「異常、心霊特集コーナーでした！」

アナウンサー「皆さん、こんにちは」

アナウンサー『ここ最近、姿を現していた幽霊は、見られなくなりました』

アナウンサー『それについて、霊媒師はこう言っています」』

霊媒師『ほらな！　やはり除霊に成功していたんだ！』

霊媒師『失敗したと思った奴、ざまぁみ　ﾌﾞﾁｯ

アナウンサー『と、言っています』

アナウンサー『以上、ニュースコーナーでした』

憂「まさか、ほんとに消えたりしてないよね？　ちゃんと逃げてくれてるよね？」

唯「うん、大丈夫だよ憂ー。って、聞こえてないけど」

――

澪「それにしても、この前の律は大活躍だったな！」

紬「見たかったなぁ～」

律「ほんと、ムギは損してるよ～。なんせあの勇姿を見れなかったんだからな！」

澪「調子に乗るな！」ｺﾞﾂﾝ

律「いて～っ！」

梓「でも、唯先輩もいつかはこの世から消えなくちゃいけない時がくるんじゃないでしょうか？」

澪「そうだな……」

律「そんなこといって、梓ほんとは寂しいんだろ！？」

梓「そ、そんなこと…ないです……」

紬「素直になっちゃいなよ、梓ちゃん」

梓「うぅ～」ｳﾙｳﾙ

唯「あずにゃんの言うとおり……」

唯「いつまでも、この世に残っていられない……」

唯「目の前が霞んだり、いろんなものに触れないっていうサインも表れはじめてる……」

唯「消えて…。その次はどうなっちゃうのかな……」

唯「生まれ変わるなら、憂が結婚して産んだこどもがいいな……」

～バレンタインの日～

憂「お姉ちゃんの仏壇に、チョコのお供え物しようかな！」

憂(お姉ちゃんは、毎年手をボロボロにしてまで、私のためにチョコを作ってくれたよね)

憂「今年は豪華なチョコにするから、期待しててね！」

唯「ふぉぉぉぉ！　期待してるよ憂ぃぃぃ！」

唯「わたしも憂にお返し作りたかったなぁ」

憂「できた…！　お姉ちゃん、おいしく召し上がれ♪」

唯「うふふ、味は感じないけど、お腹いっぱいだよ～」

唯「触れたら口に運んで味を感じるのにな～」

梓「憂先輩、まだ消えちゃってないよね？」

憂「うん、昨日のチョコもおいしいって言ってくれた気がしたもん♪」

梓「そっか…。氏んじゃうってどんな気持ちなんだろうね」

憂「きっと、悔しくて、悲しくて、どうにもならない気持ちだったんじゃないかな」

梓「……」

憂「まだまだ高3、これからやりたうじいこともあっただろうし」

憂「正直、物足りない人生だったんじゃないかな……」

梓「唯先輩、うかばれるといいね」

唯「憂、あずにゃん……」ｳﾙｳﾙ

唯「消えちゃうのはほんとに惜しいよ…。それくらい、いい子だね、二人とも」

唯「ああ、ダメだ！　いくらなんでも依存しすぎだよ！」　

唯「この世に執着しつづけたらダメな気がする！」

唯「憂が、大学を卒業するその時……」

唯「わたしは、消えよう」

唯「今日から憂は大学2年生…」

唯「タイムリミットはあと2年ってことだよね」

唯「その間に、できる限りのことをしよう」

唯「あれ？　でもよくよく考えたら、まだ大学2年の1年間をまだ過ごしてないや」

唯「だから3年間…。タイムリミットは伸びたけど、できることは数少ない……」

唯「最後に、一度だけ…。みんなと話したいなぁ」

霊媒師「悪霊はっけーん！！」

唯「え」

唯「まってください！　わたしは悪霊じゃないんですよ！」

霊媒師「うん、大抵の霊はそういうんじゃ」

唯「あと3年間残ってたのに…。最後の日に、みんなとおしゃべりしたかったのに…。ぐすっ」ｳﾙｳﾙ

霊媒師「今度は泣き落としか！　悪霊のすることはワンパターンじゃい！」

唯「分かりました…。潔く除霊されます」

霊媒師「そんなこと言うやつに悪霊はおらんよ」

唯「え？」

霊媒師「その、残りの3年間というのは？」

唯「わたしがこの世から離れるまでの、決意の3年間です」

霊媒師「地縛霊かと思うたが…。ここまで意思を持っておるとは……」

唯「？」

霊媒師「分かった！　協力してやろう！」

唯「協力？」

霊媒師「そうだな、この3年間、わしはお主を見守ろう」

霊媒師「そして、最後の日。妹の卒業式じゃったか？」

唯「は、はい」

霊媒師「その時、お前に大サービスをしてくれようぞ」

唯「大サービス？」

霊媒師「ああ、期待しとけ」

唯「ジャニオタさん、優しいんですね」

霊媒師「え」

――

憂「私ももう大学2年生かぁ」

梓「早かったねぇ」

純「彼氏ほしいなぁ」

梓「女子大でそれは無理な話じゃない？」

純「だったら合コンしようよ～」

憂「ごっ、合コン？」

梓「ごっ、強姦？」

純「梓……」ｼﾞﾄｰ

梓「冗談だよ、純が本気で言ってるわけないしね、それに乗じてギャグを…」

純「本気だよ！」

憂「え！？」

純「私も、かっこよくて、優しくて、頼りになる彼氏がほしいよぉー！」

梓憂(あははー。夢見すぎだっつの)

純「何が何でも彼氏つくるー！」

梓(やかましい)

憂(やかましいね)

純「」ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

純「あ、うん、ありがとう！　じゃ、そういうことで」

梓「何してんの？」

純「合コンをセッティングしてみました！」

梓憂「えー！？」

憂「何で勝手にセッティングしてるの！？」

梓「呆れた…。もう付き合いきれんわ……」

純「待って！　お願い！　もう3人で行くって言っちゃったんだよ～！」

梓憂(この女……)

純「ね？　お願い…。友達でしょ？」

梓「あー、憂。どうする？」ﾋｿﾋｿ

憂「断ったら面倒なことになるのは目に見えてるよ……」ﾋｿﾋｿ

梓「私もそう思う……」ﾋｿﾋｿ

唯「ふぉぉぉぉぉぉぉ！　憂が合コンなんて許しません！」ｷﾞｬｰｷﾞｬｰ

憂「しょうがないから参加してあげるよ」

梓「その代わり今度見返り頼むわ」

純「ありがとう！　二人とも！」ﾊﾟｧｧｧｧ

唯「純ちゃん！　頃す！　ころす！　コロス！」ｷﾞｬｰｷﾞｬｰ

霊媒師「やめんか！　そんな感情を抱けば悪霊となるぞ！」

唯「あ、ジャニオタさん」

霊媒師「」

～合コン会場～

男A「フヒヒｗｗｗｗｗｗｗｗｗ　憂ちゃんっていうんだ？　可愛いねｗｗｗｗｗ」

梓(何コイツ気持ち悪い……)

純「Aさんって、カッコいいんですね！」ｷﾗｷﾗ

男A「そう？　フヒヒｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

憂(もう嫌だよ！　こんな空間……)

梓「ちょっとお手洗いに」ｽｯｸ

憂「私も……」ｽｯｸ

純(二人とも、気を遣ってくれたんだね！)

男A「フヒヒｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男B「フヒヒｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男C「フヒヒｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

～トイレ～

梓「逃げようか」

憂「そうだね」

憂「今日わたし…そのー、きてるからさ」

梓「？　あー、なるほど」

憂「実は体調がよろしくないというか……」

梓「そっか、じゃぁゆっくり逃げよう」

憂「ゆっくり？」

男A「純ちゃん可愛いねｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男B「食べたくなるほどにねｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男C「ちょっと場所を変えようかｗｗｗｗｗｗ」

純(キタキター！　これは付き合うお誘い？　3人もなんて、モテ期きちゃったー！)

男A「フヒヒｗｗｗｗ　純ちゃん、ここだよｗｗｗｗｗ」

男B「この小屋でゆっくり話そうｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男C「邪魔されたら台無しだね、鍵を閉めようｗｗｗｗ」

純(なんだかワクワクしてきた！)

唯「憂、きてたのかー。わたしは氏んでるからこないけど、やっぱ女は大変だよね」

梓「それにしても、純はあれのどこかっこいいっていうの？」

憂「そうだよね、なんか変態さんみたいな顔してた」

梓「まさか本当に強姦じゃ……」

憂「そ、そんな……」ｺﾞｸﾘ

梓「ちょっと純探してくる！」ﾀﾞｯ

憂「あ、梓ちゃん！」

梓「憂は先に帰っててー…」

憂「ど、どうしよう」ｵﾛｵﾛ

梓「純！　絶対あいつらやばいよ！　今助けにいくからね！」ﾀﾀﾀｯ

――

男A「フヒヒｗｗｗｗ　服を脱ごうか純ちゃんｗｗｗｗ」

男B「きっと気持ちよくなるよｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男C「暴れちゃダメｗｗｗｗ　大声も出さないでねｗｗ」

純「いや！　やめて！　離して！」

ｶﾞﾀｯ　ﾄﾞｰﾝ

男A「ドアが蹴破られたｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男B「どちらさまｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男C「てか可愛いｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

「あんたら…。何してんの？」

純「律先輩！」

律「おー、鈴木さんじゃん」

純「助けてください！」

律「はーん、なるほど、そういうことね」

男A「女一人に何ができるのｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男B「レ○プする対象が増えただけｗｗｗｗｗｗｗｗ」

男C「ごっつぁんですｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ」

律「あー、確かに、あたし一人じゃ無理だわ」

律「おまわりさ～ん、こっちこっち」

男ABC「え」

――

純「あの…。助けてくださってありがとうございます」

律「気にすんなって。たまたまあそこ通ったら、なんか小屋が騒がしかったからね」

律「女の子の悲鳴が聞こえたし、ただごとじゃないなと思って」

純「そうだったんですか…。あの、私のこと、純ってよんでもらえますか？」

律「ん、いいよ」

梓「ハァ、ハァ、純ー！？　大丈夫！？」

純「あ、梓！　律先輩が助けてくれたんだよ！」

梓「そうだったんだ！　ありがとうございます！」

律「いいってば…！　今日は遅いから帰ろうぜ！」

――

憂「梓ちゃん、大丈夫かな？」

♪　♪

憂「梓ちゃんからメールだ！」

梓『純は無事助かったよ！　律先輩が助けてくれてたの。
　　憂は家についた？　もう夜も遅いから気を付けてね！』

憂「よかった～！　二人とも無事だったんだね！」

唯「憂、よかったね～！」

憂「返信しなきゃ……」

憂『帰りは、一人じゃない気がするので、心配しないでね。　
　　梓ちゃんこそ、一人にならないように。純ちゃんには、明日厳しく言っとこうね！』

――

澪「律のやつ、コンビニの前で待ち合わせって言ってたのに……」

澪「帰ろう……」

～翌日～

梓憂「純(ちゃん)！」

純「ひぃっ！」ﾋﾞｸｯ

梓「だからあれほど……」ｸﾄﾞｸﾄﾞ

憂「どれだけ心配したと思って……」ｶﾞﾐｶﾞﾐ

純「ご、ごめんなさい……」ｼｭﾝ

梓「まぁ、反省したならよし！」

憂「軽音部いこ！」

純「うん！」

唯「この3人の絆は固いな～」

～その年の文化祭～

澪「今年もすごい盛り上がりだな！」

律「気分がいいぜ！」

紬「今年も楽しみましょう！」

梓純「おー！」

梓「あれ？　憂どうしたの？」

憂「…なんでも、ない……」

ｼﾞｬｰﾝ

憂「はぁ、はぁ」ﾊﾞﾀﾝ

ｷｬｰ

梓「憂！」

澪「憂ちゃん！」

――

憂「ごめんなさい…。ライブ、台無しにしちゃって」

梓「何言ってるの！？　憂の体の方が大事だよ！」

憂「梓ちゃん……」

唯「憂…。」

唯「もうこの1年も終わるね……」

唯「わたしが憂にできることってどれくらいあるのかな？」

唯「憂と喋れるようになったとき、何話していいかわかんないよ……」

霊媒師「悩んでるのか？」

唯「え……」

霊媒師「妹と話すことを……」

唯「そんなことはありません…。ただ……」

唯「憂に何もしてやれなかったのに、憂と話したいなんて思っていいのかなって……」

霊媒師「この世に関渉できにくくなってる霊にできることなんて、そうそうないぞ」

霊媒師「お主にできるのは、妹を見守ることくらいじゃ」

唯(それからのわたしは、憂を見守りつづけてきたんだよ)

唯(憂が苦しいときも、悲しいときも、嬉しいときも、ずっとそばにいたよ)

唯(澪ちゃんたちが大学を出て、とうとう憂も卒業の年だね)

唯(この声は届かないけど、憂が卒業するめでたい日に)

唯(わたしは、憂に会えるよ！)

憂「お姉ちゃん…。もう4年生だし、立派な大人だよ」

梓「どうにかして、唯先輩としゃべりたいね～」

純「大人？　憂、何言ってんの？」

憂「あ、純ちゃん！(今ではヤリOンといわれる純ちゃんだ)」

梓「お、おはよう(ヤリOンきちゃった）」

純「大人っていうのはね、もう初体験を済ませた人のことを言うのよ！　ホホホホ！」

純「あんなに気持ちいいのに、やってないなんてねぇ……」

純「あ、相手がいないか！　ｷｬﾊﾊﾊﾊ！」

梓(純だって肉体だけの関係で、本命はいないくせに……)

憂(なんだろう…。正直ウザい……）

純「と、いうわけで肉体労働に忙しいから軽音部やめるわ！　ｷｬﾊﾊﾊﾊﾊ！」

憂「なんで純ちゃんあんなことに……」

梓「私たちは誘わなかったけど、あれから合コンを繰り返してたみたい……」

梓「そこでまた同じようなことが起こって、純が吹っ切れたんだよ」

憂「梓ちゃん、あんなケバいのはほっといて、部室いこう！」

梓「確かに、なんか黒いし化粧激しくなったよね」

唯「あ、あれじゃどっちかっていうとヤマンバだよ……」

唯「仲間を一人失っちゃったけど、憂大丈夫かな」

憂「純ちゃんやめちゃったね、あはは」

梓「またストレスで倒れたりしないでね」

憂「梓ちゃん、心配しないで。純ちゃんがやめるなんてとるにたらないことだよ、あはは」

梓(作り笑顔なのバレバレ…。本当に大丈夫かなぁ)

唯「見守るだけなんて、つらいよぉ……」

霊媒師「お盆ならなんとかして3分くらいならあわせてやれるぞ」

唯「ほんと！　ジャニオタさん！」

霊媒師「だからそう呼ぶなと…！」

唯「憂に頑張っての一言でいいから、伝えてあげたいんです！　お願いします！」

霊媒師「まかせときな！」

～お盆～

憂「梓ちゃん、スイカおいしいね」

梓「うん、おいしいね(種がめんどくさい)」

唯「わ～っ！　おいしそうなスイカだね～！」

憂「おっ！　お姉ちゃん！？」

梓「唯先輩！？」

唯「あずにゃん久しぶり～♪」

梓「し、氏んじゃったんじゃ？」

唯「お盆だから帰ってきたの！　あと2分くらいで消えちゃうけど」

憂「そんな！　もっとおしゃべりしたいよ！」

唯「憂、聞いて」

唯「憂が卒業するその日、私は……」

憂「え？　もう一回言って！」

唯「だから…。それまで…ってね……」

霊媒師(声が途切れてる…。時間か……)

憂「おっ、お姉ちゃん！」

頑張ってね、憂――

憂「お姉ちゃんは、卒業する日まで、頑張ってねって言ってた気がする」

梓「私もそう思う！　…ねぇ、憂」

憂「なに？」

梓「卒業式の日に、先輩方を集めない？」

澪『卒業式の日？　ああ、空いてると思うぞ。行けばいいのか？』

梓「あ、はい。是非きてください！」

律『あ～、うん、空いてるよ』

憂「お願いします！」

梓「澪先輩くるって！」

憂「律さんもくるよ！」

梓「ムギ先輩は外国から帰ってきたのかな？」

憂「電話してみて！」

梓「ムギ先輩！　よかった、帰ってたんですね。私たちの卒業式の日に……」

憂(お姉ちゃん…。準備は整ってるよ！)

唯「あずにゃんたち、頑張ってくれてるな」

唯「ジャニオタさん、どれくらいの時間をくれるんですか？」

霊媒師「ずばり、1時間じゃ」

唯「そんなに短いんですか！？」

霊媒師「これでも結構長いほうじゃ！」

霊媒師「1時間で大切なこと、伝えたいことを全て話すんじゃ」

唯「そしてわたしは……消える」

憂「今日は、お姉ちゃんの命日なんだよね」

梓「そっか、学祭ライブの1ヶ月後だったもんね」

憂「どっ、どうしよう！？」

梓「うわっ！　何！？」

憂「何話したら分かんないよ……」

梓「今まで言いたかったこと、聞きたかったこと、いろいろあるでしょ」

梓「素直に自分の気持ちを伝えて、お別れしよ？」

憂「…うん！」

梓「でも、お盆の時はびっくりしすぎて、反応もできなかったよ～」

憂「あれは何だったんだろうね？」

霊媒師「やぁお嬢さんたち」

梓「あ！　あのときの！」

憂「ジャニオタ霊媒師！」

霊媒師(もうツッコむのやめよう)

霊媒師「あのときの平沢唯はわしによるものじゃ」

梓「そんな…！　唯先輩を除霊しようとしてたくせに！」

憂「あ、梓ちゃん？」

梓「やってやるです！」ﾎﾟｶﾎﾟｶ

霊媒師「あ、やめんか！　こら！」

霊媒師「と、いうわけで、平沢唯の熱意に負けたわしは、あいつを見守ることにしたんじゃ」

憂「そうだったんですか……」

梓「信じられません…！　唯先輩をあんな目にあわせておいて！」

霊媒師「信じぬならそれもよかろう……」

霊媒師「だが、主らの卒業式の日は、楽しみにしておくと良い」

憂「は…はい！」

唯「ジャニオタさん！　時間を早送りして！」

霊媒師「はいはい、ちょっと待っとれよ～…ってできるか！」

唯「ですよねー」

唯「早く憂とおしゃべりしたいなー！　あと、あずにゃんとも！　それからそれから……」

霊媒師(幽霊のくせに活き活きしとるわ)

霊媒師(そんなにも、平沢唯にとって、あの子らは大事なんじゃろうな)

梓「もう卒業まで2ヶ月か……」

憂「お姉ちゃんに会えるのは嬉しいけど……」

梓「同時に唯先輩がこの世からいなくなってしまう……」

憂「でも、いつまでもお姉ちゃんに依存するわけにはいかないんだよね」

梓「唯先輩が、この世に依存するわけにはいかないのと同じだよね」

梓「唯先輩…。お盆に会った時は、全く雰囲気変わってなかったね」

憂「そうだね、生きてる時のおねちゃんのまんまだった」

梓「卒業式の日に会う時は、どうなんだろうね」

憂「私がお姉ちゃんより大きくなっちゃったから、なんか複雑だな～」

梓「私、4cmしか伸びてないんだけど……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

純「よぉー！　乳臭さの抜けねぇガキ共！」

梓(うわ、出た……)

憂「こ、こんにちは」

純「平沢は相変わらずお姉ちゃんお姉ちゃん言ってんの？」

純「高校の時から思ってたんだけど」

憂「？」

純「よくもまぁ、あんなどんくさい人を好きになれるよねぇ」

憂「今…。なんて…？」

梓(こいつ、信じられない！)

憂「いくら純ちゃんでも…！」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

梓「憂！　抑えて！」

梓「今、問題起こしたらめんどくさいことになるよ！」

憂「うっ…！」

純「ハン！　手が出せないのね」

純「ガキは寝てな！　キャハハハハハ」

憂「ううう…悔しい…！　ぐすっ」ｳﾙｳﾙ

梓「よく我慢したね、憂」

憂「高校の時からって…」

憂「そう思いながら私たちと付き合ってたの！？」

梓「憂……」

憂「私だけならともかく、お姉ちゃんにまであんなこと言って……」

唯「憂…。お姉ちゃんは大丈夫だからね！　憂は卒業式の日まで頑張ろ！」

～大学の卒業式の日～

憂「大学ともお別れ…。そして、お姉ちゃんとも……」

梓「憂、約束の場所に行かなきゃ。澪先輩達も待ってると思うよ！」

――

澪「おー、梓、憂ちゃん、久しぶりだな」

律「梓ちょっと身長伸びたんじゃないか？」

紬「みんな成長してるのよね♪」

霊媒師「おお、揃ったか」

霊媒師「では、今から平沢唯の実体化の儀式を始める」

霊媒師「いこ～　いこ～　～いこよいれうゆ」

唯「ばぁ～！」ﾊﾟｯ

澪「ゆ、唯！」

唯「えへへ～。みんな久しぶり～」

憂「お姉ちゃん！」ﾀﾞｷｯ

紬「本当に唯ちゃん…なのね」

律「唯…！」

梓「えぐっ、ぐすっ」ｳﾙｳﾙ

霊媒師「制限時間は今から24時間じゃ。24時間たったら自動的に消えるでな」

霊媒師「やりたいことは済ませとけよ。ではわしはコレにて」

唯「ありがと～！　ジャニオタの霊媒師さん！」

霊媒師「」ﾋﾗﾋﾗ

憂「お姉ちゃんっ！　お姉ちゃんっ…！」

唯「よしよし、寂しかったよねぇ！」

唯「澪ちゃん、すごい美人になったね！　スタイルも抜群だし……」

澪「ああ、実はスカウトされて、今はモデルをやってるんだ」

唯「すごーい！」

澪「まだ駆け出しってとこだけどな」

唯「澪ちゃん、あんなに恥ずかしがり屋さんだったのに、今は人の前にでる仕事だよね」

澪「あぁ」

唯「それってすっごい成長だよ！　澪ちゃんすごいよ！」

澪「そんな、褒めることないだろ…///」

唯「澪ちゃん、これからもその才能を活かして、頑張ってね！」

澪「…うん」

唯「りっちゃんは前髪下ろして、可愛くなったよね～」

律「ほっとけ！」

唯「りっちゃんはいっつも明るくて、ムードメーカーで……」

唯「まさに部長！　ってかんじだったね」

律「唯……」

唯「りっちゃんは今何してるの？」

律「今は、歌手のバックでドラムしてるけど……」

律「いずれは、あたしがステージの主役になるんだ！」

唯「すごいね！　りっちゃんもすごいよ～」

律「なんで？」

唯「ちゃんと夢持ってるもんね！　夢、絶対叶えてね！」

律「おう！」

唯「ムギちゃんは、すっかり雰囲気が変わった！」

紬「え？　そうかしら……」

唯「うん！　すっごく落ち着いてて、大人の女の人だね！」

紬「ありがとう！　これ、今ウチの会社で作ってるお菓子なの。よかったら食べて！」

唯「いただきまーす！」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

唯「すっごくおいしい！　？　ウチの会社ってことは……」」

紬「私が社長をやってるのよ～」

唯「すっごーい！　ムギちゃん社長さんなんだね！」

紬「今はお父様の会社を継いでるだけよ」

紬「だから、私が一から会社を作りあげて、成功したその日から、本当の社長さんなのよ」

唯「ムギちゃんの目標はすごいね！　わたしじゃ到底無理だよ～！」

唯「ムギちゃん、目標を見失っちゃだめだよ！」

紬「うん！」

梓「唯先輩…！」ﾀﾞｷｯ

梓「何で氏んじゃったんですか！　寂しかったんですよ！？」

梓「唯先輩がいない学生生活なんて…楽しくなかった！」

唯「あずにゃん、周りを見て？」

梓「え？」

唯「あずにゃんは一人じゃなかったよね？」

唯「わたしなんかいなくても、あずにゃんを支えてくれる人は何人もいるんだよ！」

梓「…仮にそうだとしても、わたしなんか　なんて言わないでください！」

唯「あずにゃん、相変わらずだねぇ」

唯「でも、すっごく大好きだよ、あずにゃん♪」

梓「唯先輩…。また会えますか？」

唯「うん、いつかきっと会えるよ～」

唯「あ、それと…。あずにゃん、憂をよろしくね！」

梓「はい！」

唯「みんなとおしゃべりできたし、憂と家に帰るよ～」

澪「ああ。唯、じゃあな！」

律「生まれ変わっても親友だからな！」

紬「そうよ！　次も親友だからね！」

梓「唯先輩…！　嫌です！　離れたくないです！」

唯「あずにゃんのわがままめ～」

梓「うっ、うえっ、ひぐっ」

ﾁｭｯ

唯「あずにゃんのほっぺやわらか～い！　これでいいかな？」

梓「は…はい…。さよなら、です……」

唯「じゃぁ、憂、帰ろうか！」

憂「うん！」

梓「うわあああああああん！　唯先輩！　うわあああああああっ」

澪「いっちゃったな……」

律「澪～。何泣いてんだよ～」

澪「なっ！　お前だって泣いてるだろっ！」

律「だって…。だって…！　ぐすっ」

澪「そうだよな」ﾀﾞｷｯ

律「ふぇ？」

澪「お前だって、辛いよな」

律「澪…！　うっ、ううっ」

澪「泣いていいんだぞ」ｷﾞｭｯ

律「うわあああああああああん！　唯ぃ！　ううっ！」

紬「えへへ、みんな泣き虫！　うふふっ」ﾎﾟﾛﾘ

憂「それでね、その時にね！」

唯「へぇ、そうなんだ…！　ふぅ～ん……」

憂「私ね、辛いことも我慢してね、頑張ったよ！」

唯「えらいねぇ！　憂はやっぱり自慢の妹だよ～♪」

ｸﾞ～

唯「あ、お腹すいたみたい…」

憂「今準備するからね！」ﾀﾀﾀﾀﾀﾀ

憂「～♪」

唯「憂のご飯はしばらく口に運んでなかったから、すっごく楽しみだよ～」

憂「もうちょっとでできるからね～！」

唯「いいにお～い」

憂「できたよ～！　今並べるからね！　待ってて！」ｺﾄﾝ

唯「わーい！　いただきまーす！」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

憂「ど、どう？」

唯「憂、料理の腕あがったね！　なんだかプロみたい！」

憂「や、やった～！」

憂「私、将来シェフになりたいな」

憂「それで、お姉ちゃんにお腹いっぱい食べさせてあげるの」

唯「うん、うん！」

憂「お姉ちゃんがギター弾いて、私が料理作って……」

憂「でも、もうそれも叶わないんだね……」ｳﾙｳﾙ

唯「やだなぁ！　そんな寂しいこと言わないでよ！」

憂「そうだよね！　また、いつか会えるよね……」

唯「次生まれ変わっても、憂とは姉妹な気がするよ」

憂「うん、それがいいよ！」

唯「あれ、喋ってたらこんな時間…！」

憂「もう寝ようか！」

――

唯「う～い～。憂は暖かいね」

憂「お姉ちゃんも、すごく暖かくて、気持ちいいよ」

唯「あったか、あったか！」

憂「あったか、あったか！」

憂「お姉ちゃん…。離れたくないよぉ…！」

唯「あずにゃんみたいにわがまま言わないの！」

唯「あのジャニオタさんが与えてくれた、大切な時間」

唯「もしかしたら、この大切な時間もなかったかもしれないんだよ？」

唯「今こうして会えるのは当たり前のことじゃない。それは憂も分かってるよね？」

憂「うん…」

唯「大丈夫！　この世にいられなくなっても、ちゃんと憂のことは見守るつもり」

憂「で、でも…！」

唯「それでも寂しいなら…」

ﾁｭｯ

憂「えっ、唇…」

唯「初めて、なんだよ」

憂「わ、私も！」

唯「最初で最後の、唇でのキス―」

唯「相手が憂で、よかった」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

憂「うん、私も…」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

唯「おやすみ、憂」

憂「おやすみ、お姉ちゃん」

唯(憂、今までありがとう…。憂がいろいろしてくれた分、お返しできなかったね)

唯(でもね、この数年間、憂を見続けてたけど、ほんとに頑張ってたよね！)

唯(もうね、お姉ちゃんは涙が枯れるくらい泣いても足りないよ)

唯(憂はすごく健気だったよね。お父さんもお母さんも出かけること多いから、ほぼ一人暮らしなのに)

唯(周囲の哀れみの目を気にせず、生きてきたよね)

唯(そんな憂なら、これからも大丈夫だよ！)

唯(それじゃぁね、憂)

唯(なんだか、体が軽いんだ…。そろそろお別れみたい……)

唯(でもね)

唯(最高に気持ちいいんだよ…！　憂……)

ﾁｭﾝﾁｭﾝ

憂「ん～っ！」

憂(お姉ちゃん……)

次の日、お姉ちゃんはいなくなっていました
でも、もう悲しくありません

私があの夜感じた唇の感触は、忘れられないと思います

――

～それから数年～

憂「梓ちゃーん！　朝ごはんできたよ～！」

梓「ふぁぁ～。憂、おはよう～」

あれから私は、梓ちゃんと一緒に住み始めました
今は私の家ですが、いずれは自分たちのマイホームに住みたいな、と思っています

みんなも、うまくやっているようです

澪さんは一流モデルになりました　ものすごく謙虚で、ウケがいいみたいです
律さんは今や人気バンドのリーダーです　もちろんパートはドラムです　すごくかっこいいです
紬さんは自分の会社を一から立て、大人気の会社になりました　社長の人柄がいいからですよね

私たちは、私たちの人生を楽しく生きています

お姉ちゃんも、楽しくやっていますか？

次に生まれ変わる時も姉妹だといいですね

平沢憂　あなたの最愛の妹より

これで終わりです
今まで見てくださった方、保守してくださった方、ありがとうございました

誤字などがひどく、ぐだぐだなSSでしたが……
次はもっとうまく書きたいと思います

>>1　乙

くそっ泣いた

乙だが・・・
純ちゃんはどうなったんだ
せめて末路だけでも書いてくださいおねげーします