1: 2010/09/01(水) 19:30:11.54 ID:GxVECjFi0
放課後、音楽室。

ガチャ
梓「こんにちは! さあ今日も練習をしましょう!
  次のライブも近づいてきましたからね!
  ここらでちょっと身を引き締めて!
  本気で練習に取り組んでみるべきだと思うんです!
  先輩たちもそう思いますよね!」


し~ん


梓「何だまだ誰も来てないのか」
TVアニメ「けいおん!!」『けいおん!! ライブイベント ~Come with Me!!~』Blu-Ray メモリアルブックレット付【初回限定生産】

2: 2010/09/01(水) 19:31:47.81 ID:xL4+fbzr0
ゾロア太郎期待

3: 2010/09/01(水) 19:33:22.80 ID:GxVECjFi0
梓「……」

梓「暇だなあ」

梓「何やってんだろ先輩たち……」

梓「……」

梓「……トンちゃ~ん」

梓「ふははー大魔神あずにゃんだぞー」

梓「スッポン鍋にして食っちゃうぞー」

梓「お前を食うと精力がつくんだぞー」

梓「……」

梓「虚しい」

梓「はー、誰でもいいから早くこないかな、先輩……」

4: 2010/09/01(水) 19:36:47.00 ID:GxVECjFi0
梓「できれば澪先輩がいいなぁ」

梓「澪先輩と音楽室で二人きり」

梓「ああ澪先輩……梓はいけない子です」

梓「どうかこの身におしおきを……」

梓「なんちゃって……ドゥフフ」

梓「律先輩はー……やかましいからなぁ」

梓「まぁ気を使わなくていいのは楽だけど」

梓「でもやかましいしなぁ」

                          ガタッ

梓「!?」

5: 2010/09/01(水) 19:40:10.60 ID:GxVECjFi0
                          ガタガタッ

梓「な、なんの音……!?」

                          ゴトッ

梓「誰かいるんですか……?」

                          ゴンゴン

梓「ど、どこから聞こえてくるんだろう……」

                          バキューン

梓「物置の方……?」

                          ガッガッ

梓「物置に誰かいるの……?」そ~っ

                          ドンドンドンドン

梓「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

7: 2010/09/01(水) 19:43:31.10 ID:GxVECjFi0
梓「こ、怖いけど……
  今この部室には私しかいない……
  私がこの物置の扉を開けるしかないんだ……!」

梓「あ、開けますよ!
  誰がいるか知りませんけど、いいですね!」

ドンドンドン

まるで開けてくれと催促しているかのように
中にいる何者かは物置の内側からドアを叩いている。

ドドンガドン

梓「い、今開けますよ……」
ガチャリ

梓「………………
  ………………
  ………………
  ……あれ、誰もいない」

「ここにいるぞ!」

梓「えっ!?」

8: 2010/09/01(水) 19:46:58.59 ID:GxVECjFi0
その声に反応して梓は足元を見た。
そこには一匹の小さなポケモンがいたのであった!

梓「あ、あなたが物置の中で暴れてたの……?」

「そうだぞ、悪いヤツにここに閉じ込められてたんだぞ」

梓「わ、悪いヤツ!?
  悪いヤツって誰のことなの?」

「今はそんなことどうでもいいんだぞ。
 早くこの猿ぐつわをとってほしいぞ」

梓「ていうかあなた……なんでさっきから喋ってるの!?
  ポケモンが人間の言葉を話すなんて……!」

「いいから早く猿ぐつわを取ってほしいぞ!」

梓「あ、ああ、ごめんなさい……」

10: 2010/09/01(水) 19:50:22.00 ID:GxVECjFi0
梓はポケモンの猿ぐつわを外してあげた。

「ふう、やっと開放されたぞ」

梓「ねえ、あなたは何なの?
  どうして人の言葉を話せるの?」

「話してるんじゃなくてテレパシーだぞ」

梓「あ、そうなんだ。
  でもテレパシーが使える時点で普通のポケモンじゃないよ。
  ねえ、名前はなんて言うの?」

「人間はおいらのことをゾロアって呼んでたぞ」

梓「ゾロアか……初めて聞くポケモンだよ」

ゾロア「おいらは遠いとこから
    悪いヤツに連れられて来たんだぞ」

梓「悪いヤツ? ……それで、その悪いヤツに
  この音楽室の物置に閉じ込められたってこと?」

ゾロア「そうだぞ、察しがいいぞゴキブロス」

梓「誰がゴキブロスじゃ」

11: 2010/09/01(水) 19:53:44.24 ID:GxVECjFi0
梓「私の名前は梓……中野梓だよ」

ゾロア「あずさか。覚えておくぞ」

梓「で……その悪いヤツってのは何なの?」

ゾロア「悪いヤツは、おいらのマァを捕まえてるんだぞ」

梓(マァ……? お母さんかな)

ゾロア「おいらとマァはずっと一緒にいたんだけど……
    悪いヤツがおいらたちをまとめて捕まえちゃったんだぞ。
    悪いヤツはマァに色々ヒドイことさせるんだぞ」

梓「それはそれは」

ゾロア「で、おいらだけ偶然逃げ出せたんだぞ。
    それであちこちさまよってるうちに
    なぜかここの音楽室の物置に入っちゃったんだぞ」

梓「なんだ、閉じ込められたんじゃなくて
  自分で勝手に入って出られなくなっただけなんじゃん」

ゾロア「う……」

12: 2010/09/01(水) 19:58:38.09 ID:GxVECjFi0
梓「あはは、間抜けだね」

ゾロア「……」

梓「どしたのー? おーい」

ゾロア「う、うるさいぞ!」ドロン

梓「うわっ!!」

ゾロアは飛び上がったと思うと、
一瞬にして梓の姿に変わった。
梓は驚いて腰を抜かした。

ゾロア「いしししし」

梓「へ、変身できるの……? すごい」

ゾロア「『変身』はバンダイの登録商標です」

梓「なんのこっちゃ……あ」

ゾロア「ん?」

梓「しっぽが見えてるよ」むぎゅっ

ゾロア「ぎゃひん!?」

13: 2010/09/01(水) 20:02:48.44 ID:GxVECjFi0
ゾロアはしっぽを掴まれると
またもとのポケモンの姿に戻った。

梓「あはは、変身はまだまだ不完全だね」

ゾロア「人間に化けるのは難しいんだぞ。
    ま、マァはもっと完璧に化けられるんだぞ」

梓「マァか……そのマァはまだ悪いヤツのとこにいるんでしょ?」

ゾロア「多分そうだぞ。
    おいら、マァを探しに行くぞ!」

梓「悪いヤツの居場所は分かってるの?」

ゾロア「わ、わかんないぞ」

梓「……じゃあ、探しに行けないんじゃ」

ゾロア「そうなんだぞ……
    うう、マァ……」

梓「ゾロア……」

ガチャ
唯「やっぴー、あずにゃんハロローン」

14: 2010/09/01(水) 20:06:58.48 ID:GxVECjFi0
梓「あ、唯先輩こんにちは。
  あとその挨拶は流石にナイです」

唯「そんな~、ひどいよあずにゃんっ!
  ……ん?」

ゾロア「……」

唯「わー、ポケモンだっ!
  ねーあずにゃん、これなんていうポケモン?」

梓「ゾロア、っていうそうです」

唯「ゾ口リ? わー、私かいけつゾ口リ知ってるよー、
  あー言われてみればキツネっぽいねー!
  ねえイシシとノシシは? いないの?」

ゾロア「ぞ、ゾ口リじゃないぞ、ゾロアだぞ!」

唯「しかも人間の言葉をしゃべれるなんて!
  最近のポケモンは賢いんだねー、
  おーゾ口リよしよしよーし、おーよしよし」

ゾロア「……あ、あずさ……
    この人間を何とかしてほしいぞ」

梓「……諦めたほうがいいよ」

15: 2010/09/01(水) 20:11:08.52 ID:GxVECjFi0
律「お、それ梓のポケモンか?」

澪「初めて見るポケモンだな」

梓「あ、律先輩に澪先輩、こんにちは」

唯「ゾ口リって言うんだって~、可愛いよねー」

ゾロア「ゾ口リじゃないぞ、ゾロアだぞ!」

澪「唯、本人がゾロアだって言ってるぞ」

律「ははは、アとリを間違ってどうすんだよー」

澪「……」

律「……」

澪・律「ぽ、ポケモンが喋ってる!!」

ゾロア「いちいち驚かないでほしいぞ」

16: 2010/09/01(水) 20:15:20.08 ID:GxVECjFi0
澪「な、なんで? なんで喋れるんだ?」

梓「あー、テレパシーだそうです」

律「へえ、便利だな」

澪「べ、便利って……
  人間の言葉で意思疎通できるポケモンなんて珍しい……
  というか世紀の大発見じゃないのか?」

律「そうか? 日本語しゃべるニャースとかいるらしいじゃん」

澪「それは噂レベルのアレだろ」

ゾロア「あずさ、この人達はなんなんだ?」

梓「えっと、軽音部の先輩たちだよ。
  こっちの人が唯先輩」

唯「やっほー、唯でーす! おいでーゾ口リー」

ゾロア「この人には近寄らない方がいい気がするぞ」

唯「がーん、嫌われたっ」

17: 2010/09/01(水) 20:19:31.94 ID:GxVECjFi0
梓「こっちの人が澪先輩」

澪「よろしくな……ゾロア」

ゾロア「こっちこそよろしくだぞ」

梓「で、こっちが律先輩」

律「私のことはりっちゃんと呼んでくれ!
  それで梓、このゾロアは梓のポケモンなのか?」

梓「いえ、ここの物置に迷いこんでたんです。
  なんでも悪いヤツから逃げる途中だったとか」

澪「悪いヤツ?」

ゾロア「そうなんだぞ、おいら、そいつに捕まってたんだぞ。
    それでマァがまだ悪いヤツのとこにいるんだぞ!」

澪(マァ……? お母さんかな)

律「その悪いヤツってのはどこにいるんだ?」

ゾロア「それは分かんないぞ。
    でも蔵雲市に行くって言ってたぞ」

律「蔵雲市ってここじゃん」

ゾロア「えっ」

18: 2010/09/01(水) 20:23:43.97 ID:GxVECjFi0
梓「てことはその悪いヤツはこの街にいるってこと?」

澪「なんかすごい偶然だな。
  乙女座の私としてはセンチメンタリズムな運命を感じずに居られない」

ゾロア「ほんとだぞ、これはきっと神様が与えてくれたチャンスだぞ」

唯「よーし! じゃあ今からゾ口リのマァを探しに行こう!
  ついでに悪者もやっつけちゃおう!」

律「おー!」

ゾロア「ま、マァを探すの手伝ってくれるのか?」

唯「あたりまえだよ! 目の前で困っている人を見かけて
  そのまま放っておくなんて出来ない!
  ねえりっちゃん!」

律「あたぼうよ! 私たちに任せな!」

ゾロア「みんな……」

澪「おいおい、部活はどうするんだよ」

律「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!
  梓だってゾロアのマァを探したいよな」

梓「モチのロンです(キリッ」

澪「梓まで……」

19: 2010/09/01(水) 20:27:54.51 ID:GxVECjFi0
梓「だって、私が最初にゾロアと出会ったんですから。
  私に出来ることは何でもやってあげたいです。
  それに目の前で困っている人を見かけて
  そのまま放っておくなんて出来ませんし」

唯「それ私のセリフだよね」

律「よーし、じゃあゾロアのマァ捜索隊、出発!」

梓「おー」

ゾロア「おーだぞ」

澪「えっ、今から行くのか? 今はやめといたほうが」

律「もー、なんだよさっきから……
  何回話の腰を折れば気がすむんだ」

梓「そうですよ、空気読んでください」

澪「だって、さっきのニュース知らないのか?
  市の北部であちこちの水道管が爆発して、
  洪水みたいになってるって……」

律「北部なんて遠いじゃねーか。
  こっちまでこねーよ」

澪「えー、でも危ないよ。
  先生も早く家に戻れって言ってたし」

20: 2010/09/01(水) 20:32:08.19 ID:GxVECjFi0
律「じゃあ澪だけ帰れよ」

澪「えっ」

唯「そうだよ」

梓「ゾロア、澪先輩は来てくれないんだって。
  4人だけで行くことになっちゃったよ」

ゾロア「おいらは別に何人でもいいぞ」

律「よし、では改めて出発!」

唯「おー」

澪「……」

澪「……」

澪「……」

澪「……」

澪「……」

澪「……」

澪「……」

澪「わ、私もいくぅー!」

21: 2010/09/01(水) 20:36:18.37 ID:GxVECjFi0
外。

律「さてどこから探すか」

梓「ゾロア、その悪いヤツはなんの目的で蔵雲市に来てるの?」

ゾロア「分かんないぞ」

梓「悪いヤツの特徴は?」

ゾロア「白髪のじいさんだったぞ。
    ニオイは覚えてるから会えばすぐ分かるぞ」

律「てことは町中にいる白髪のじいさんに会うたび
  ゾロアに匂いをかがせればいいというわけか」

澪「通報されるぞ」

ゾロア「あと、口ひげを生やしてて、
    耳には赤いピアスを着けてたぞ」

澪「口ひげに赤ピアスか……それならだいぶ絞れるな」

律「ようし、その悪いヤツをとっちめて
  ゾロアのマァを取り戻してやろうぜ!」

梓「なんか燃えてきました!」

22: 2010/09/01(水) 20:40:28.04 ID:GxVECjFi0
澪「で、どうやって探すんだ?
  街中をしらみ潰しに歩きまわるのか?」

律「うーん、問題はそこなんだよなー」

唯「人海戦術でいこう!」

梓「いや人海戦術って言ったって、
  こっちは5人しかいないじゃないですか」

唯「大丈夫だよ。憂~!」

憂「どうしたのお姉ちゃん!」シュバッ

澪「はやっ!」

唯「実はカクカクシキジカで、憂のポケモンを貸して欲しいんだよ~」

憂「お安い御用だよ! 出ておいで、マイ・ステディ!」

バンギラス「ぐわーおーん」
ドンカラス「ぎゃぎゃーぎゃーす」
ヨノワール「ぐぼぼぼーぼぼぼ」
ラムパルド「ぎゃおぎゃおーん」
カイリキー「ふんす」
シザリガー「ぶっしゅぶっしゅ」

律「なんでそんな物騒なポケモンばっかなんだ」

23: 2010/09/01(水) 20:44:39.27 ID:GxVECjFi0
唯「憂のドンカラスはこの街にいる2000羽のヤミカラスを従えてるから
  人海戦術には持って来いなんだよー」

律「なんかこえーよ」

憂「ドンカラスは手下のヤミカラスたちに指示を!
  ヨノワール、ラムパルド、カイリキー、シザリガーは
  それぞれ東西南北に散って捜索して!」

梓「……バンギラスは?」

憂「バンギラスはお姉ちゃんが疲れないように
  おんぶしてあげて!」

バン「OK」

唯「わーい、ありがとうバンギラス」

梓「……」

ゾロア「心強い味方が増えて嬉しいぞ」

律「じゃあ私たちも捜しに行くか」

澪「そうだな」

24: 2010/09/01(水) 20:48:50.18 ID:GxVECjFi0
ゾロア「じゃあまず南の方に行きたいぞ」

梓「なんで?」

ゾロア「おいらはあっちの方から来たんだぞ」

律「そうか。では方角を南に定め、捜索隊出発!」

唯「いえーい」

バン「のっしのっし」

梓「ゾロア、マァはきっとすぐ見つかるからね!」

ゾロア「うん!」

澪「バンギラス怖い……」

26: 2010/09/01(水) 20:57:21.24 ID:GxVECjFi0
3時間後。

律「はあ、疲れた……」

澪「さっぱり見つからなかったな」

梓「というか白髪の老人自体いませんでしたね、この高齢化社会の現代なのに」

ゾロア「うう……」

梓「大丈夫だよ、ゾロア。明日はきっと見つかるよ」

澪「明日も探すのか……」

梓「そりゃ見つかるまで探してあげないと」

律「なんだー、澪はこの可愛いゾロアちゃんを見捨てるってのかー?」

澪「そ、そんなこと言ってない。
  ただちょっと歩きまわって疲れただけだ」

梓「それはみんな一緒ですよ」

唯「私は全然疲れてないよー!」

バン「ぎゃおー」

澪「今はじめて唯を頃したいと思った」

梓「同感です」

27: 2010/09/01(水) 21:01:31.56 ID:GxVECjFi0
律「さてもう帰るか」

澪「そうだな……ゾロアはどうするんだ、今夜」

梓「私の家に連れて帰りますよ」

澪「そうか、じゃあゾロアは任せたぞ」

ゾロア「一晩よろしく頼むぞ、あずさ」

梓「うん、こちらこそ」

唯「じゃあね、みんなー、ゾ口リー」

バン「どっすどっすどっす」

澪「ああ、ばいばい……」

律「……明日も唯がバンギラスに乗ったらシメような」

梓「はい」

ゾロア「シメる……?」

28: 2010/09/01(水) 21:05:42.28 ID:GxVECjFi0
中野家。

梓「ここが私の家だよ、ゾロア」

ゾロア「おじゃまするぞ」

梓「着替えてくるから、リビングで待ってて」

ゾロア「わかったぞ」

30: 2010/09/01(水) 21:09:52.59 ID:GxVECjFi0
梓「お待たせ。
  どうしたの、キョロキョロして」

ゾロア「広い家だなーって思って」

梓「そうかな? 普通の中流家庭の一軒家だと思うけど」

ゾロア「でもあずさ一人には大きすぎると思うぞ」

梓「いやいや、別に私一人で住んでるわけじゃないよ」

ゾロア「そうなのか?
    でもこの家、あずさ以外に誰もいないんだぞ」

梓「ああ、お父さんとお母さんは、
  今地方のライブに仕事に行ってて、
  しばらくのあいだ帰ってこないんだ」

ゾロア「そうだったのか」

梓「だから、ゾロアも気兼ねなく
  ゆっくりくつろいでて良いよ」

ゾロア「……」

梓「どしたの?」

31: 2010/09/01(水) 21:14:15.47 ID:GxVECjFi0
ゾロア「あずさも一人ぼっちだぞ」

梓「あー……」

ゾロア「おいらと同じ……マァと離れて独りで……」

梓「いやでも私のはそんなんじゃ」

ゾロア「マァ……どこにいるんだろ」

梓「……」

ゾロア「マァに会いたいぞ……うう」

梓「だ、大丈夫だよっ。
  マァはきっとすぐ見つかるよ。
  それに私は独りじゃないよ、ゾロアがいてくれるんだもん」

ゾロア「あずさ……」

梓「それにゾロアだって今は独りじゃない。
  私がいるし、軽音部の先輩たちだってゾロアの味方だよ」

ゾロア「うん、そうだったぞ……」

梓「だから、元気出して。
  泣き顔してちゃマァだって心配するよ」

32: 2010/09/01(水) 21:18:25.53 ID:GxVECjFi0
ゾロア「ありがとう、あずさ……
    おいらもう泣かないぞ」

梓「そっか。えらいえらい」なでなで

ゾロア「く、くすぐったいぞ。それよりあずさ」

梓「何?」

ゾロア「軽音、ってなんなんだ?
    さっきからちょくちょく言ってるけど」

梓「あー、軽音って言うのは軽音楽のことで……
  軽い音楽って書くんだけどね」

ゾロア「軽い音楽? カスタネットとか?」

梓「違うよ、みんなでバンドをやるの。
  私はギターをやってるんだ」

ゾロア「ぎたー?」

梓「そうだ、何か弾いてあげるよ」

ゾロア「ぜひ聴いてみたいぞ」

33: 2010/09/01(水) 21:22:35.00 ID:GxVECjFi0
ギターを取り出す梓。

梓「じゃーん。これがギターです」

ゾロア「へえ……なんか変な形してるぞ」

梓「じゃあ弾くよ」
ジャンジャカジャカジャーン

ゾロア「おお、音が出たぞ」

梓「♪~」
ジャカジャカジャンジャン

ゾロア「すごいぞあずさ!」

梓「今ではほら~笑いながら~話ができるよ~♪」

ゾロア「きゃっきゃっ」

梓「忘れたねってとぼけてる~♪」
ジャジャーン

ゾロア「お腹すいたぞ」ぐー

梓「うぉい」

34: 2010/09/01(水) 21:26:45.82 ID:GxVECjFi0
梓「せっかくいい気持ちで歌ってたのにー」

ゾロア「仕方ないぞ、空腹には勝てないんだぞ」

梓「食べるもの、何かあったかなー。
  コンビニ弁当でも買いに行こうかな」

ゾロア「こんびに?」

梓「……あ、あった。カップラーメン。
  今つくるからちょっと待っててね」

ゾロア「なんでもいいから早く食べたいぞー」

こぽぽぽぽ
梓「よし、あとは3分待つだけ」

ゾロア「? それだけで出来るのか?」

梓「そうだよ。現代科学の結晶、それがカップラーメン。
  一人暮らしの強い味方だよ」

ゾロア「な、なんだかすごいんだぞ」

35: 2010/09/01(水) 21:31:22.41 ID:GxVECjFi0
……

ゾロア「ふー、美味しかったぞー。
    こんなにおいしいものは初めて食べたぞ」

梓「そか、口にあって良かった」

ゾロア「こんなものを毎日食べられるなんて、あずさは幸せなんだぞ」

梓「はは、もうこれ食べて3日目だけど
  流石に飽きてきちゃったよ」

ゾロア「そういうものなのか?」

梓「そうだよ。いくら美味しくても、
  続けて食べるとね」

ゾロア「ふうん……?」

梓「ゾロア、お風呂はいろ」

ゾロア「うん、お風呂なんて久々だぞ」

梓「そっか、じゃあ念入りに洗わなきゃねー」

ゾロア「そうだぞー」

36: 2010/09/01(水) 21:35:33.00 ID:GxVECjFi0
……

入浴後。

ゾロア「ふー、気持ちよかったぞーいろんな意味で」

梓「ああ待ってゾロア。
  濡れた体で歩きまわっちゃだめだよ、ちゃんと拭かないと」ごしごし

ゾロア「んー」

梓「はい、これでOKだよ」

ゾロア「さっぱりしたぞ」

梓「ふふ、よかった」

ヴーッ ヴーッ

梓「ん? 律先輩からメール……」

律『ゾロアの様子はどうだー?
  明日も放課後に引き続き捜索するから
  学校にゾロアを連れて来といてくれよな!』

梓「うーん、学校に連れていくって言っても……
  どうしようかなー、モンスターボールなんてないし」

37: 2010/09/01(水) 21:39:43.32 ID:GxVECjFi0
梓「ねえゾロア、明日学校に……」

ゾロア「ふああー……な、なんだぞ?」

梓「眠いの?」

ゾロア「まだ眠くなんかないぞ~……」うつらうつら

梓「ふふ、今日いっぱい歩きまわって疲れたよね。
  もう寝よっか。私のベッドで一緒に寝よ」

ゾロア「うん……」

おねむのゾロアを抱きかかえ、
梓は自分の部屋に行った。
そしてベッドにゾロアを横たえる。

梓「えーと、ゾロアは元気です、
  なんとかして連れていきます……と、送信。
  じゃあ電気消すよ、ゾロア」

ゾロア「くかー」

梓「もう寝てるし……おやすみ」
パチッ

39: 2010/09/01(水) 21:44:03.99 ID:GxVECjFi0
「ぐーぐー」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「マァ……」

「……」

40: 2010/09/01(水) 21:48:22.84 ID:GxVECjFi0
翌朝、通学路。

梓「ゾロア、学校では大人しくしてなくちゃだめだからね?」

ゾロア「分かってるぞ」

梓「学校でいたずらなんかしちゃだめだよ」

ゾロア「いたずらって?」

梓「昨日音楽室で私に化けて驚かせたじゃん」

ゾロア「そういえばそんなこともあったぞ。こんなふうに」ドロン

梓「もー、だからダメだってば。
  こんなとこ誰かに見られたら……」

純「おーい梓、おはよー……
  ってアレ? 梓が二人いる!? どういうこと?」

ゾロア「いしししし」

梓「はー、まったく……」

41: 2010/09/01(水) 21:52:34.50 ID:GxVECjFi0
純「あはは、は、これはきっと夢幻……
  私ったらまだ目が覚めてないんだね、
  そりゃ今日は確かに寝坊したけれどもさ。
  あー早く目が覚めないかなー」

梓「しっぽをつかむこうげき」ぎゅむっ

ゾロア「ぎゃひん!」ドロン

純「あ、梓が一人に戻った」

梓「私はもとから一人いないよ……
  この子が私に化けてただけだよ、純」

純「ん? なんだポケモンか」

ゾロア「おいらはゾロアだぞ」

純「そっかー自己紹介できて偉いね……
  って、ポケモンが喋ってるっ!」

ゾロア「テレパシーだぞ」

梓「もうお約束だなあ、このやりとり」

42: 2010/09/01(水) 21:56:44.43 ID:GxVECjFi0
純「へえ、てことはこのゾロアのマァを捕まえてる
  悪者を探し出してコテンパンにやっつっけたいってこと?」

梓「コテンパンにしたいとは言ってないよ……
  でもその悪者がほんとに悪いことしようとしてるなら
  どうにかしないといけないよね」

ゾロア「おいらはマァが戻ってくればそれでいいぞ」

純「てゆーか梓たちがそんなことしなくても
  警察に任せればいいんじゃないの」

梓「はあ……分かってないね純は」

純「あん?」

梓「警察に頼らず子供たちだけで事件を解決する……
  児童小説の基本ですよ」

純「これ児童小説と違うがな」

43: 2010/09/01(水) 22:00:54.11 ID:GxVECjFi0
学校、教室。

ガラッ
純「おっはよーう」

憂「おはよう純ちゃん、梓ちゃん。
  あとゾロアも」

梓「おはよう」

ゾロア「おはようだぞ。
    昨日は手を貸してくれてありがとうだぞ」

憂「どういたしまして」

「あっ、何そのポケモン! 中野さんの?」

梓「へ?」

「見たことないポケモンだー可愛いー」
「わ、しかも人間の言葉しゃべってる! すごー」
「かわいいー、抱かせて抱かせて」
べたべた

ゾロア「ううー、もみくちゃになっちゃうぞ」

純「ちょっとちょっと、ゾロアが嫌がってるでしょー」

「あ、ごめんなさーい。つい」

44: 2010/09/01(水) 22:05:15.31 ID:GxVECjFi0
ゾロア「うう、酷い目にあったぞー」

憂「あはは、ゾロア可愛いもん、仕方ないよ。
  あっ一番可愛いのはお姉ちゃんだけどね」

梓「はいはい」

純「教室はゾロアには危険かもね」

梓「そうだね……また他の生徒に見られたとき
  同じ目にあっちゃうかも」

純「そうだ、放課後まで音楽室に置いとけば?」

梓「あ、それいいかも。どうかな、ゾロア。
  放課後まで音楽室で一人で待てる?」

ゾロア「ひ、独りは嫌だぞ」

純「えっ」

ゾロア「マァとはぐれて独りになって、それでみんなと出会えて
    ……それなのにまた独りになるなんて嫌だぞ」

梓「ゾロア……」

純「そっか、そうだよね、ごめんね」

45: 2010/09/01(水) 22:09:25.58 ID:GxVECjFi0
憂「その気持ち分かるよ、
  私もお姉ちゃんと離れて一人になったとき
  吐き気や頭痛や目眩がしたり手足が震えたり
  喉が無性に乾いたり幻覚が見えたり
  体の奥から焼けてくるような感覚に襲われたりするもん」

純「ごめん聞いてなかった」

梓「マァと再会するまでゾロアを独りになんかさせないよ。
  だから安心して、ゾロア」

ゾロア「うん……ありがとうあずさ」

純「でも現実問題として
  このまま教室に置いとくのはあれだよね」

梓「先生に見つかってもあれだしね」

純「じゃあもうあれしかないんじゃない」

梓「あれって?」

純「何かに化けて人目をごまかす。
  どう、いいアイデアじゃない?」

梓「うーん……どうかなゾロア」

46: 2010/09/01(水) 22:13:35.39 ID:GxVECjFi0
ゾロア「でもそんな永い時間ずっと化けてられるか分かんないぞ」

梓「そっか」

純「できるできないじゃない。やるんだよ」

憂「なんか怖いよ純ちゃん」

ゾロア「わ、分かったぞ。頑張ってみるぞ」

梓「で、何に化ける?」

純「カバンとかでいいんじゃないかな。
  それで梓の机におとなしくぶら下がっとけば
  なんの問題もないでしょ」

梓「できる? ゾロア」

ゾロア「おやすいごようだぞ!」ドロン

純「おお、どこからどう見てもカバン」

憂「これ以上はないくらいカバンだね」

梓「じゃあ、机にかけとくから。
  途中で変身が解けないようにね」

ゾロア「うん、気をつけるぞ」

47: 2010/09/01(水) 22:17:45.95 ID:GxVECjFi0
放課後。

純「まさか朝からずっとカバンのままでいられたとは」

ゾロア「自分でもびっくりだぞ。
    こんな長く化けられたなんて」

梓「すごいよゾロア、よく頑張ったね」なでなで

ゾロア「へへへ、照れるぞ」

憂「梓ちゃん、今日も悪者を探しに行くの?」

梓「うん、そのつもりだけど……」

憂「ごめんね、今日はポケモン貸せないんだ」

梓「そうなの? なんで」

憂「実は知り合いのポケモンバッカークラブに助っ人を頼まれてて。
  しばらく梓ちゃんたちに手を貸せそうにないんだ。ごめん」

梓「あーそうなんだ、それならいいよ、私たちだけで探すから」

憂「お姉ちゃんのためにバンギラスだけでも置いていこうか」

梓「絶対にやめていただきたい」

48: 2010/09/01(水) 22:21:56.28 ID:GxVECjFi0
音楽室。

ガチャ
梓「こんにちは」

律「お、やっときたなー」

唯「ゾ口リー、久しぶりーよしよしよし」

ゾロア「く、くすぐったいぞ、やめてほしいぞ。
    それに別に久しぶりじゃないぞ」

澪「こら唯、ゾロアが嫌がってるだろー」

律「さてと、全員そろったことだし!
  ゾロアのマァと悪いヤツを探しに行くか!」

唯「待ってましたーイエーイ」

澪「今日も練習はできないんですねわかります」

梓「練習よりゾロアの方が大事です!」

ゾロア「あずさ……ありがとうだぞ」

澪(梓もすっかり毒されてしまったな……)

49: 2010/09/01(水) 22:26:06.33 ID:GxVECjFi0
外。

梓「今日は憂は用事があるらしくて
  ポケモンを貸してくれないそうです」

律「うーん、じゃあ私たちだけで探すしかないな」

唯「じゃあ私は向こうのほう探すー」

律「おう。じゃあ私は南の方に行くから、
  澪は西の方角を探索してくれ」

澪「えっ、西……」

律「なんだ、イヤなのか?」

澪「お前らほんとにニュースとか見ないんだな……
  ゆうべ、市の西部で雷が落ちまくったって知らないのか」

梓「ああ、それで町の人がそろって避難したらしいですね」

澪「被害はなかったらしいのが救いだな」

ゾロア「……」

律「雷っつっても今はもうおさまってんだろ。
  なら別に怖いことねーじゃんか」

澪「べ、別に怖がってるわけじゃないし……」

50: 2010/09/01(水) 22:30:16.79 ID:GxVECjFi0
律「はいはい……
  じゃあ梓はゾロアと一緒に東のほうへ」

梓「はい、わかりました!
  行こうゾロア」

ゾロア「OKだぞ! 今日こそマァを見つけるぞー」

梓「ふふっ、そのイキだよ」たたっ

澪「……」

律「しかし梓はゾロアにご執心だね」

澪「何か通ずるところがあるんじゃないか」

律「通ずるところねー……
  まあ、そうでもなきゃ初対面のポケモンに
  普通はここまでやってやらないよな」

澪「お前だって今こうしてゾロアに協力してんじゃないか」

律「私は練習さぼりたいだけだから!」

澪「そうだと思った……」

52: 2010/09/01(水) 22:38:37.49 ID:GxVECjFi0
3時間後。

律「はあ、疲れた……」

澪「さっぱり見つからなかったな」

梓「こっちもです……
  目についたホテルや旅館を全部尋ねて
  こんな人泊まってませんかって聞いたんですけどね」

澪「勇気あるな梓」

梓「これが最も効率的な探し方だと思ったんですけど」

ゾロア「結果は伴わなかったぞ」

律「私も道行く人に片っ端から聞いてみたけど
  収穫はゼロだった」

唯「私は人通りの多い場所で貼り込み調査したけど
  まったく見つかりませんでした!」

梓「人通りの多い場所ってどこですか?」

唯「えっとね、駅前のアイス屋さんとか、商店街のドーナツ屋さんとか、
  大通りのクレープ屋さんとか、あとはそれからーえーっとえーと」

律「もういい、それ以上言われるとお前を殴る自信がある」

53: 2010/09/01(水) 22:42:47.39 ID:GxVECjFi0
澪「こんな調子で見つかるのかな」

律「さあなー、でも探すしかないだろ」

澪「でもその悪いヤツは何か目的があってこの町に来てるんだろ?
  つまり早く見つけないとこの町で悪いことするってことだ」

梓「じゃあ早く見つけなきゃいけませんね……」

ゾロア「そうだぞ、あいつはほんとに悪いヤツなんだぞ」

律「ていうか、どこがどう悪いんだ? 犯罪者なのか?」

ゾロア「マァを酷い目に合わせるんだぞ。
    言うこと聞かなかったら電撃したり火あぶりしたり」

澪「見えない聞こえない」

ゾロア「おいらはただ苦しんでるマァを
    見てることしか出来なかったぞ……
    だから、今度はおいらの力でマァを助けたいんだぞ」

梓「ゾロア……」

律「この町に来た目的とかは分からないのか?」

ゾロア「それは分かんないぞ……
    ただ何かを手に入れるって言ってた気はするぞ」

54: 2010/09/01(水) 22:46:57.76 ID:GxVECjFi0
澪「なにかってなんだ?」

律「なにかの探され率は異常だな」

梓「うーん、手に入れるといえば……
  珍しいポケモンとかですかね」

澪「そんなのこの町にいるかな」

梓「そういえば、この前ツノのないオドシシがいました!」

澪「シキジカの見間違いじゃないのか」

唯「はいはーい! 珍しいポケモンなら、
  貼り込み調査中に目撃しちゃったよーん」

律「なに、マジか」

澪「なんていうポケモンだ?」

唯「うーん、名前は分かんないけど
  今まで見たことがないような感じだったよ~。
  なんかラッキョウみたいな」

澪「ラッキョウ? そんなポケモンいるか?」

律「知らん」

55: 2010/09/01(水) 22:51:07.63 ID:GxVECjFi0
梓「見間違いじゃないですか?」

唯「ほんとだよー、見たもん、間違いないよ。
  こうフワ~ッと空を飛んでてねーラッキョウが」

律「夢でも見たんじゃないのかー」

唯「もう、まったく酷いねみんな……
  せっかくみんなのぶんもドーナツ買ってきたのに」

律「唯ちゃんバンザイ!」

梓「唯先輩も他人のために何かすることができるんですね!」

唯「えーっと……あれ? ないや……
  あ、そうだ。帰ってくるときにお腹すいて食べちゃったんだった」

律「帰ろうぜ」

澪「そうだな」

ゾロア「おいらもおなかすいたぞー」

梓「今日は味噌味のラーメンにしようか」

唯「ああっ! 待って! 追いてかないでくんなましー」

56: 2010/09/01(水) 22:55:17.85 ID:GxVECjFi0
帰り道。

梓「……」

ゾロア「あずさ?」

梓「ん、なに?」

ゾロア「あずさ、軽音部のみんなと別れてから
    なんだか寂しそうにしてるぞ」

梓「そ、そうかな」

ゾロア「そうだぞ。みんなといたときは、
    もっと楽しそうだったぞ」

梓「……うん、先輩たちと居るときは、ほんとに楽しいんだ。
  先輩たちが居ない時間が、
  私にとって普通のはずの時間が、
  寂しく感じられるくらいに」

ゾロア「あずさ……」

梓「あ、ごめんね。しんきくさい感じになっちゃって。
  今はゾロアといるから、寂しくなんかないよ」

ゾロア「……」

57: 2010/09/01(水) 22:59:27.70 ID:GxVECjFi0
ゾロア「よし分かったぞ!
    おいらがあずさを楽しませてやるぞ!
    そいやーっ」ドロン

梓「わっ、エテボースに化けた!」

ゾロア「いしし、くすぐる攻撃~」

梓「あははは、あはっ、
  もうやめてよゾロア、あはははっ」

ゾロア「お次はー」ドロン

梓「あ、今度はキレイハナ」

ゾロア「はなびらの舞い~」

梓「わー、きれいきれい」

ゾロア「もいっちょ」ドロン

梓「あっ、唯先輩に化けた。
  でも人に化けると相変わらず尻尾が見えるね」ぎゅむ

ゾロア「ぎゃひん!」ドロン

58: 2010/09/01(水) 23:03:37.62 ID:GxVECjFi0
ゾロア「あうー、おいらはまだまだだぞ。
    マァならもっと完璧に化けられるのに」

梓「へえ、すごいんだねゾロアのマァって」

ゾロア「うん、誰かに化けるのも完璧だし、
    すっごい幻影だって使えるんだぞ!」

梓「ふふ、ゾロアも早くマァみたいにならなきゃね」

ゾロア「うん!」

梓「じゃあ早く帰ろうか、お腹すいちゃったし」

ゾロア「おいらもうぺこぺこだぞー」

警察「あ、ちょっとそこの君」

梓「は、はい?」

警察「ああいや、そんな身構えなくていいよ」

梓「あ、もしかして悪いヤツがいたんですか!?」

ゾロア「えっ、そうなのか?」

警察「悪いヤツ? なんじゃそら」

60: 2010/09/01(水) 23:07:47.84 ID:GxVECjFi0
梓「なんだ、違うのか……」

ゾロア「残念だぞ」

警察「君が何を言ってるのかは知らんが……
   えーと、君の家はどこにあるんだね」

梓「まっすぐ歩いて5分の場所に」

警察「そうか、なら安心だな」

梓「なんなんです?」

警察「ああ、近頃この市内で雷や洪水が起こっているだろう。
   実は今も市の南部で竜巻が確認されてね。
   その地域一帯の住民が避難したんだ」

梓「た、竜巻ですか?」

警察「ああ、しかし不思議な竜巻でね、
   発生した場所から一歩も動かないんだ」

梓「はぁ」

警察「そんなわけだからこっちの方にまで被害が及ぶことはないだろうが
   テレビやラジオの気象情報は見ておいてくれたまえ」

梓「はい」

61: 2010/09/01(水) 23:11:57.25 ID:GxVECjFi0
中野家。

梓「ただいまー……っていっても誰もいないんだけど」

ゾロア「ひとり突っ込みは寒いぞ」

梓「う、うるさいな」

ゾロア「そうだ、テレビつけなきゃ」

梓「ああ、竜巻が出てるんだったね……ポチッとな」

テレビ『蔵雲市に発生した竜巻は以前としてその場に留まっています。
    専門家はここ数日発生している蔵雲市の異常気象について
    近いうちに調査に乗り出す方針で……』

梓「まだ動いてないのか」

ゾロア「へんな竜巻だぞ……
    あずさ、それよりお腹すいたぞ」

梓「ああそうだったね。
  じゃあちょっと早いけど夕飯にしようか」

ゾロア「わーい」

梓「今日は味噌味のカップ麺でーす」

ゾロア「おー、美味しそうだぞ」

62: 2010/09/01(水) 23:16:10.36 ID:GxVECjFi0
梓「お湯を入れて3分経ったので出来ました」

ゾロア「うーん、美味だぞ」ずるずる

梓「やっぱカップ麺は一人暮らしの強い味方だね」ずるずる

ゾロア「……」

梓「ん、どしたの?」

ゾロア「な、なんでもないぞ。
    早く食べて、お風呂に入りたいぞ」

梓「あ、そんなに急いで食べると」

ゾロア「ずるずるるる……あちっ!」

梓「も~、落ち着いて食べないと」

ゾロア「えへへ」

梓「ふふ、あはははっ」


こうして中野家の夜は、
いつもよりちょっと賑やかに更けていくのであった。

63: 2010/09/01(水) 23:20:20.46 ID:GxVECjFi0
翌日、放課後、音楽室。

ガチャ
梓「こんにちは」

律「お、やっときたなー」

澪「これでみんな揃ったな」

唯「じゃあ今日も出発~」

梓「ところで最近ムギ先輩見かけませんけど、
  休んでるんですか?」

律「ムギか、あいつなら家の用事で
  どっか遠いとこに行ってるらしいぞ」

澪「そのうち帰ってくるんじゃないか?」

梓「ああ、そうだったんですか。
  なんかナチュラルに無視されてたから
  ムギ先輩のこと忘れてるんだと思いましたよ」

唯「あはは、そこまで鳥頭じゃないよ~」

ゾロア「なーあずさ、ムギって誰なんだ?」

65: 2010/09/01(水) 23:24:31.12 ID:GxVECjFi0
梓「ああ、軽音部のもう一人の先輩だよ。
  ゆるふわ金髪で綺麗な人なんだ」

唯「それでマユゲが沢庵みたいなんだよー」

ゾロア「ゆるふわ金髪でマユゲが沢庵……?
    それってもしかしてこんな人じゃないか?」ドロン

唯「おー、ムギちゃんに化けたー」

澪「すごいな、そっくりだ」

梓「ゾロア、ムギ先輩のこと知ってるの?」

ゾロア「知ってるも何も、こいつは悪いヤツと一緒にいた女だぞ!」

律「な、なんだってー!」

澪「それ本当なのか? ムギが悪人の仲間だなんて」

ゾロア「間違いないぞ、こんなマユゲの人なんて他にはいないぞ」

梓「それは確かにそうだけども」

律「ムギと白髪の老人はどういう関係なんだ?」

ゾロア「そ、それは分かんないぞ……」

澪「うーん」

66: 2010/09/01(水) 23:28:41.98 ID:GxVECjFi0
律「ムギが悪者の仲間ねえ……信じられるか?」

澪「どうだろう……ちょっとな」

ゾロア「ほんとだぞ、信じてほしいぞ!」

梓「私は信じるよゾロア!」

ゾロア「あずさ……」

梓「私はゾロアが嘘を付くような子だとは思えません!
  それに……私たちがゾロアを信じてあげなかったら
  ゾロアはまた一人ぼっちになっちゃいます!
  そんなの可哀想です」

唯「そうだね、あずにゃんの言うとおりだよ!」

澪「唯は信じるのか」

唯「私、友達が裏切って悪者になる展開が夢だったの」

律「何を言ってんだ」

唯「勧善懲悪の名目で友人をフルボッコに出来るチャンスだよー」

律「もういいお前は黙ってろ」

澪「とりあえず、ムギに連絡取ってみるか」
ピポパポ

68: 2010/09/01(水) 23:32:51.98 ID:GxVECjFi0
紬『もしもし、久しぶりね澪ちゃん。
  このまま出番がないんじゃないかってヒヤヒヤしてたわ』

澪「ははは、こやつめ。ところで今どこ?」

紬『今はまだ豊縁地方にいるけど』

澪「あ、そうなんだ。実はこっちにゾロアっていうポケモンがいてさー、
  ムギのことを悪者の仲間とか言うんだよー、
  そんなわけないよなー」

紬『…………』

澪「ムギ?」

紬『みんなは今どこにいるの?』

澪「え、音楽室だけど」

紬『分かったわ、そこを動かないで』ブチッ

澪「え? おーい、もしもーし、もしもーし」

唯「切られたあとの電話にもしもしって呼びかけるの
  サムいからやめたほうがいいよ」

澪「う、うるさいな。お約束なんだよ」

律「ムギはなんて言ってた?」

69: 2010/09/01(水) 23:37:01.38 ID:GxVECjFi0
澪「さあ、よく分からん。
  ここから動くなって言われた」

律「なんで?」

澪「分からないってば……
  あ、そうだゾロア、ムギはまだ豊縁にいるって言ってたぞ。
  だからこっちに来てるっていう悪者とは一致しないんじゃないのか」

梓「悪者とムギ先輩が同行してるとは限らないんじゃ」

ゾロア「きっとそうだぞ、別行動なんだぞ。
    ていうか『ここから動くな』ってめっちゃ怪しいぞ」

律「怪しいといえば怪しいが……どういう意味か分からないし」

澪「意味不明なとこが余計怪しいような」

唯「あ、分かった!
  私たちを音楽室にとどめておいて、
  他の仲間にここを襲わせて私たちをやっつけようとしてるんだ」

澪「ははは、まさかそんな映画みたいな展開」

ガチャ
紬「そのまさかよ!!」

澪「うわあああああ!!」

70: 2010/09/01(水) 23:41:11.07 ID:GxVECjFi0
澪「む、ムギ! なんでここに……
  豊縁にいるはずじゃ」

紬「ええ、豊縁にはいたわ、4日前までね。
  もう準備は整ったからこっちに戻ってきたの、こっそり」

澪「な、なんだよそれ」

唯「ムギちゃーん、戻ってきたなら早く言ってくれればよかったのにー」

紬「触らないで!」

唯「びくっ」

紬「あなたたちがゾロアを持っている限り、
  私とあなたたちは敵なのよ」

律「ど、どういうことだ!?」

梓「む、ムギ先輩の狙いはゾロアなんですか?
  悪者と一緒になって何をしようとしてるんですか……?」

ゾロア「毛を逆立てて紬を威嚇」

紬「違うわ、間違っているわよ梓ちゃん。
  私は悪者と組んでいたわけじゃない……私自身が悪者なのよ!」

澪「ど、どういうことだ。
  ゾロアの話によれば悪者は白髪の老人じゃ」

71: 2010/09/01(水) 23:45:20.22 ID:GxVECjFi0
紬「それは執事の斉藤よ。
  ゾロアークのしつけは斉藤に任せていたから、
  そのゾロアには斉藤の方が悪者に見えたんでしょうね。
  私はほとんどゾロアたちの前に姿を見せなかったから」

ゾロア「そ、そうだったのか」

紬「さあ、早くゾロアを渡しなさい。
  ゾロアークに言うことを聞かせるために
  もうゾロアの映像データでごまかすのは限界なのよ」

唯「ゾロアークって?」

ゾロア「おいらのマァだぞ!
    マァはおいらを守るために
    こいつに従ってたんだぞ……」

澪「なんだそれ、ゾロアを人質みたいに使って
  ゾロアークに言うことを聞かせてたってことか……」

紬「そういうことよ」

律「……おいムギ、お前の目的はなんなんだ?
  ゾロアークを使って、何をしようとしてる?
  私たちに隠れて、何を企んでいるんだ?」

梓「はっきり言ってください、何をしようとしてるのか」

72: 2010/09/01(水) 23:49:34.03 ID:GxVECjFi0
紬「私の目的は……時の波紋」

唯「ときのはもん?」

澪「聞いたことがある。セレビィが時渡りをするときに生じる
  高エネルギーを蓄えた時空のゲート」

紬「さすが澪ちゃん、よく知ってるわね」

唯「え、じゃあ私が見たラッキョウってもしかして」

梓「セレビィだったってことですか」

紬「いつどこで見たかは知らないけど、多分そうでしょうね。
  私は4日前……セレビィの出現と同時にこちらに戻ってきてから
  ずっと時の波紋を探していたの。ゾロアークの力を借りて」

澪「ゾロアークを?」

ゾロア「マァに何をさせたんだ! このたくあん!」

梓「お、落ち着いてゾロア……」

唯「あっ、ゾロアークってすごく鼻が利くとか」

紬「そんな犬みたいな使い方するわけないでしょ……
  唯ちゃんたちもゾロアと一緒にいたんなら知ってるでしょ、
  その力を」

73: 2010/09/01(水) 23:53:43.85 ID:GxVECjFi0
澪「化ける力か?」

紬「より正確には『化かす』ね。
  ゾロアやゾロアークは自在に幻影を生み出すことができる。
  もっとも、そのゾロアはまだまだ力不足みたいだけど」

ゾロア「う」

紬「私はゾロアークに命じて、
  その幻影の力でこの町に自然災害を起こさせたわ」

澪「あっ、最近の洪水や雷は全部それか」

紬「そうよ。そして人々を避難させ、
  無人となった町で時の波紋を探しまわったのよ。
  自分の足でしらみ潰しに」

唯「なんか地味だね」

紬「うるさいわね。
  誰にも見つからないようにするにはこうするしかないのよ」

澪「でもなんで時の波紋が……セレビィがこの町に現れるって分かったんだ」

紬「予言した者がいたのよ。
  この時この町にセレビィが現れ、時の波紋がうまれる……
  琴吹公大の手記にはこう記されていたわ」

澪「琴吹公大……琴吹家の先々代当主だな。
  テレビで見たことある」

74: 2010/09/02(木) 00:00:17.22 ID:Ms/gHFnS0
紬「ええ。琴吹公大は時の波紋のエネルギーを吸収し、
  未来を見ることができる力を手に入れた。
  そしてその力を使って事業を次々と成功させ、
  今の琴吹家の財を築いたのよ」

唯「なにそれチートじゃん」

梓「……ムギ先輩の目的も、その未来を見る力なんですね。
  そんなことのために、ゾロアやゾロアークを……
  この町の人々を混乱に陥れて……!」

紬「はっ、長々と説明口調でしゃべりすぎてしまったわ。
  早くゾロアを渡しなさい。
  渡してくれれば明日からお菓子をもっと豪華にしてあげる」

唯「ぜひゾロアをどうぞ!」

澪「おいこら待て」

梓「ゾロアは渡しません!
  あとゾロアークを返してもらいますから!」

紬「それは出来ない相談よ、梓ちゃん」

通信機斉藤『お嬢様、豊崎町にてセレビィを発見いたしました』

紬「そう、よくやったわ斉藤。
  ゾロアークに追わせなさい、そして時の波紋を」

ゾロア「マァ!」

75: 2010/09/02(木) 00:04:15.66 ID:Ms/gHFnS0
紬「ほら、ゾロアをよこすのよ。
  ゾロアークのモチベーションを上げるためにもね」

梓「鬼畜……!」

澪「もう馬鹿なことはやめろ、ムギ!」

律「そーだそーだー」

紬「ふん、話し合いは無理なようね。
  ならば力づくで奪い取るのみよ。
  行きなさい、ゴウカザル、ガブリアス、メタグロス!」

サル「ギャース!」
ガブ「ビシャーン!」
メタ「ガギャギャァッ!」

梓「なんという厨パ」

律「お、ポケモンバトルか。
  よーし澪、こっちもポケモンを出せ」

澪「えー、私、レベル60のゴニョニョしか持ってないよ」

律「いいかげん進化させろよ」

澪「氏んでも嫌だ」

76: 2010/09/02(木) 00:07:26.52 ID:Ms/gHFnS0
ゾロア「おいらが戦うぞ!」

梓「ゾロア!?」

律「ばか、無謀だぞ。お前じゃ勝てん」

ゾロア「ここでポケモンと戦えるのはおいらしかいないんだぞ。
    みんなはマァを探してきて欲しいんだぞ。
    そしてマァに伝えてほしいぞ、
    『おいらはもう悪いヤツから逃げたから、
    マァも悪いヤツの言うことなんか聞かなくていい』って」

梓「でも、ゾロア一人じゃ」

ゾロア「おいらは独りじゃないぞ。
    みんなおいらの仲間だって言ってくれた。
    みんなおいらのこと信じてくれた。
    それで充分だぞ」

梓「……」

ゾロア「おいらは逃げることしか出来なかったけど、
    みんなに助けてもらうことしか出来なかったけど……
    今度はおいらが自分の力で、
    悪いヤツを倒して、マァを助ける!」

梓「ゾロア……」

紬「威勢だけは一人前ね」

77: 2010/09/02(木) 00:10:29.31 ID:Ms/gHFnS0
澪「よし分かった!
  私のゴニョニョも一緒に戦わせる!
  レベルだけはムダに高いから
  足手まといにはならないはずだ!」

ゴニョ「……」

ゾロア「ありがとうだぞ!」

律「よし、私たちはゾロアークを探しに行くぞ!」

唯「おう! でどこに居るの?」

澪「豊崎町だ! さっき通信で言ってたろ」

紬「チッ……ゴウカザル! 唯ちゃんたちを止めなさい!」

サル「ギャース!」

ゾロア「させないぞー!」

ゴニョ「……」

ガブ「ビシャーン!」

メタ「ガギャギャァッ!」

梓「行きましょう、ゾロアたちが足止めしてくれてるうちに!」

78: 2010/09/02(木) 00:13:19.43 ID:Ms/gHFnS0
外。

律「はあ、はあ、はあ……全力疾走はきついなっ」

唯「豊崎町って……どこだっけ」

澪「結構遠いぞ」

梓「ていうか……この調子じゃ
  豊崎町に着いた頃にはゾロアークたちは別の場所に……」

澪「確かにそうだな……」

唯「あーもう走れなーい! 憂ー!」

憂「どうしたのお姉ちゃん!」ズババーン

律「どこにいたんだよ」

唯「ドンカラスかして~。
  空を飛ぶでぎゅぎゅーんとひとっ飛びしたいの」

憂「お安い御用だよ、はいどうぞ」

ドン「ぎゃぎゃーぎゃーす」

澪「そうだ、ついでにドンカラス配下のヤミカラスたちに
  ゾロアークの居場所を探してもらおう」

律「ああ、そりゃいいな」

79: 2010/09/02(木) 00:16:09.52 ID:Ms/gHFnS0
唯「というわけでドンちゃん、頼むよ」

ドン「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー!」

梓「うわっ、ヤミカラスが集まってきた!」

律「に、2000羽のヤミカラスを従えてるんだっけ……」

澪「空が真っ黒……この世の終わりのようだ」

ドン「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー!」

憂「お姉ちゃん、ヤミカラスたちの情報によれば
  ゾロアークとセレビィは豊崎町から動いてないって!」

律「なぜ言葉が分かる」

憂「ドンカラス、お姉ちゃんたちを豊崎町まで運んであげて!」

ドン「ぎゃーぎゃー!」がっし

澪「うわっちょっと待て、首根っこ鷲掴みは……」

律「まさかこのまま飛ぶ気じゃ」

ドン「ぎゃーす!!」ばっさばっさばっさ

梓「ぐえええええっ!」

憂「いってらっしゃ~い!」

80: 2010/09/02(木) 00:20:26.27 ID:Ms/gHFnS0
時の波紋のエネルギーを吸収すると
反動で辺り一帯のエネルギーが時の波紋に逆流する
そのせいで街中の植物が枯れ果てる
植物枯らせるところを見られるのはマズイので
紬はゾロアークを使って人払いをした

って説明を書くの忘れてたな

81: 2010/09/02(木) 00:22:56.75 ID:Ms/gHFnS0
豊崎町。

ばっさばっさ
ドン「ぎゃーすぎゃーす」

澪「はあ、はあ、やっと解放された」

律「氏ぬかと思った」

梓「ああ、制服の首周りがデロンデロンに……」

唯「楽しかったねー、そらをとぶ」

澪「何でお前だけちゃっかりドンカラスの背中に乗ってるんだよ」

唯「えへー、ドンちゃんの背中、もふもふして気持ちイイんだー」

ドン「ぎゃー///」

律「照れんなよ」

澪「で、ここにゾロアークたちがいるのか」

梓「人っ子ひとりいませんね」

律「ゾロアークが幻影で人払いをしたんだろうな。
  なあに、かえって探しやすい」

澪「さて、どこだゾロアークとセレビィは」

82: 2010/09/02(木) 00:25:35.44 ID:Ms/gHFnS0
ドン「ぎゃーす!!」

澪「!? あ、あそこ!」





ゾロアーク「シュエエアィサィ!」

セレビィ「ビィー!」

びっしばっしぼかっがしっ




梓「ゾロアークとセレビィが戦ってる!」

唯「あれがゾロアーク?」

律「多分そうだろ、たてがみの色とか似てるし」

澪「そんなのんきなこと言ってる場合か」

梓「ゾロアーク! ゾロアークー!」

83: 2010/09/02(木) 00:27:35.88 ID:Ms/gHFnS0
ゾロアーク「!?」

梓「聞いてゾロアーク!
  ゾロアはもう悪者の手から逃れたの!
  だから、ゾロアークももう命令に従わなくていいんだよ」

ゾロアーク「…………」じっ

澪「う、するどい目付き」

律「信じてもらえてないな……
  まあ人間にヒドイことされてきたんじゃ当然か」

梓「ど、どうしましょう」

澪「とりあえずセレビィを逃がそう。唯!」

唯「おっけー! ドンちゃん、ゾロアークの攻撃をひきつけて」

ドン「ぎゃぎゃーす!」ばさばさばさ

ゾロアーク「!!」

澪「さあセレビィ、今のうちに逃げろ」

セレビィ「ビィ!」ふわー

ゾロアーク「ッ……!!」

88: 2010/09/02(木) 01:00:30.26 ID:Ms/gHFnS0
ごめん猿くらってた
猿は厄介ですね色々とね

89: 2010/09/02(木) 01:01:50.24 ID:Ms/gHFnS0
唯「ドンちゃん、ふいうち! ばかぢから! ブレイブバード!」

ドン「ぎゃぎゃー!!」
びっしばっしぼかっがしっ

ゾロアーク「ターアィーサィ!」がくり

律「やりすぎだろ……
  ゾロアーク倒れちゃってんじゃねえか」

梓「でも話は通じないみたいでしたし
  こっちのほうが楽ですよ」

律「そういう問題か」

澪「まあなんにせよ、ゾロアークは取り戻せた。
  結果はオーライだ」

梓「ゾロアたちはどうなってるでしょうか……」

唯「大丈夫だよ、厨ポケ軍団をやっつけて
  ムギちゃんに足の裏なめさせてるよ」

梓「図が想像できませんよ……
  ドンカラス、私たちを学校まで連れて帰って」

ドン「ぎゃーす!」

紬「その必要はないわ」

90: 2010/09/02(木) 01:05:56.60 ID:Ms/gHFnS0
唯「む、ムギちゃん!」

澪「絶妙なタイミングで現れるな」

梓「ぞ、ゾロアは……」

紬「ゾロアならここにいるわよ」

高々と掲げられた紬の右手には
傷だらけのゾロアが掴まれていた。

紬「さすがゾロアね、幻影を使ってゴウカザルたちを倒すなんて……
  でも残念ながら私には幻影は通用しないのよ。
  この幻影キャンセラー(笑)がある限りね!」

ゾロア「うう……ごめん、みんな、マァ……」

梓「ゾロア!」

ゾロアーク「…………」

澪「ところで私のゴニョニョは?」

紬「ああ、戦闘の最中にドゴームに進化してたわよ」

澪「NOOOOOOOOOOOO!!!」

律「おめでとう」

唯「おめでとう」

91: 2010/09/02(木) 01:08:40.21 ID:Ms/gHFnS0
紬「さあゾロアーク、いつまでへたばっているの?
  早くセレビィを追うのよ!
  ゾロアがどうなってもいいの?」

ゾロア「マァ……」

ゾロアーク「……」

律「ムギの言うことなんて聞くことないぞ、ゾロアーク。
  私たちがすぐにゾロアを取り戻してやるからな!」

唯「ドンちゃん、ムギちゃんのマユゲにブレイブバード!」

ドン「ぎゃーす!」

紬「おっと、そんなことをしたらゾロアがどうなるか分かっているんでしょうね。
  言い忘れていたけど私の手には電撃マシンが仕込んであるのよ」

澪「なんて卑怯かつ安直なんだ」

紬「みんな、そこから一歩でも動いてみなさい。
  ゾロアが電撃で丸焼きになるわよ」

唯「わー、おいしs」
律「おいそれ以上言うな」

斉藤「もう無駄です、紬お嬢様」

紬「斉藤!? なぜここに……」

93: 2010/09/02(木) 01:13:06.02 ID:Ms/gHFnS0
律「あ、白髪口ひげ赤ピアスの老人」

澪「ゾロアが言ってたとおりだな」

斉藤「お嬢様、たった今、セレビィが時の波紋に戻ってゆきました」

紬「なんですって? じゃあ……」

斉藤「はい、時の波紋は消滅してしまいました」

紬「な、なんてこと……時の波紋が……」

律「へっ、お目当ての物はなくなったみたいだな」

澪「もうこれ以上はあがくだけ無駄だぞ、ムギ。ゾロアを開放しろ」

紬「なんでっ……ううっ……」

がくりと地面にくずおれる紬。
ゾロアはその手から離され、
一直線にゾロアークのもとへと駆けていった。

ゾロア「マァ……マァ……!」

互いに自由となった身での再会を喜び合う二体。

ゾロア「マァ、また会えて嬉しいぞ……」

律「ええ話や」

94: 2010/09/02(木) 01:17:20.67 ID:Ms/gHFnS0
梓「良かったね、ゾロア」

ゾロア「うん、それもこれも、あずさたちが
    おいらに協力してくれたおかげだぞ!
    もう何度ありがとうって言っても足りないくらいだぞ」

梓「……うん」

唯「いやあ、そう感謝されると照れますな///」

ドン「ぎゃー///」

律「見てみろ、ムギ。あの心温まる光景を。
  お前はゾロアとゾロアークに心の底から詫びろ」

紬「どうでもいいわよそんなの!
  斉藤……こうなったのもあなたがしっかりしていないからよ!
  どう落とし前をつけてくれるの!?」

斉藤「……」

澪「八つ当たりはみっともないぞ、ムギ」

紬「うるさいわね! 斉藤、なんとか言いなさいよ!」

斉藤「……」

紬「シカトしないでよ! たくあんパンチ!」

斉藤「……」すかっ

96: 2010/09/02(木) 01:21:49.77 ID:Ms/gHFnS0
紬「なっ……」

律「なぬ、パンチが斉藤さんの体をすり抜けた」

紬「ま、まさか……この斉藤は、幻影!!」

ゾロアーク「にやり」

梓「ゾロアークがやったの!?」

ゾロア「マァはやっぱりすごいぞ!」

紬「おかしいわ、私には幻影キャンセラーが……
  あ、電池切れてる」

澪「うわあ」

律「ははは、まんまとゾロアークにハメられたってわけか」

唯「ムギちゃんダサ~い(笑)」

ドン「ぎゃっぎゃっぎゃっぎゃっぎゃっ」

紬「うるさいうるさいっ!
  本当はこんなはずじゃ……こんなはずじゃなかったのよっ」

澪「落ち着けよ、ムギ」

98: 2010/09/02(木) 01:25:15.62 ID:Ms/gHFnS0
紬「もういいわ!
  こうなったら私一人で時の波紋を見つけてみせるから」

通信機斉藤『もう無駄です、紬お嬢様』

紬「斉藤!?」

律「今度は本物か」

斉藤『お嬢様、たった今、セレビィが時の波紋に戻ってゆきました』

紬「なんですって? じゃあ……」

斉藤『はい、時の波紋は消滅してしまいました』

紬「な、なんてこと……時の波紋が……」

律「へっ、お目当ての物はなくなったみたいだな」

唯「なんかデジャブ」

紬「う、うう……どうして……」

梓「ムギ先輩、どうしてそこまでして時の波紋を……
  未来を見る力を手に入れたかったんですか?」

紬「私が欲しいのは未来なんかじゃないわ……過去よ」

梓「過去?」

99: 2010/09/02(木) 01:27:39.52 ID:Ms/gHFnS0
紬「そう、過去……私たち、もうすぐ卒業でしょう」

唯「うん、9月14日の放送で」

紬「私は嫌だったの、高校を卒業することが。
  卒業して、みんなと離ればなれになることが……
  せっかく楽しい思い出をたくさん築いたのに、
  今まで出会った誰よりも仲良くできたのに、
  もう離れなきゃいけないなんて悲しすぎるじゃない」

梓「……」

紬「私は未来なんていらない。
  ずっと過去に浸っていたいの。
  永遠に高校時代を過ごしていたいの!
  だから、時の波紋を……!」

律「ムギのばかちん!」ぼかっ

紬「ぐぇあ」

律「そんなことのために、こんなバカみたいなことをやったのか。
  ゾロアやゾロアークを傷つけて!
  町中を混乱の渦に叩き込んで!」

紬「そんなこととは何よ……!
  私にとって過去は、思い出は、かけがえのないものなのよ!」

律「かけがえのない思い出ってのは、
  未来に進むためにあるもんなんだよ」

100: 2010/09/02(木) 01:31:04.00 ID:Ms/gHFnS0
紬「未来に……」

律「そうだ、お前が未来に対して不安な気持は痛いほど理解できる。
  過去に執着する気持ちもな。
  だからって未来から逃げてちゃ何にもならない。
  私たちは今という時間を思い出に変えることで
  未来へと羽ばたく翼を手に入れられるのさ」

唯「おなかすいた」

律「だから私たちは、この今を、現在だけを見つめていればいい……
  それが未来への糧となり、過去の思い出となるんだ」

澪「そうだな。だって"今"以外、誰も生きれないから(キリッ」

紬「そんな……
  私は間違っていたの……?」

ドン「そうだよ、いつか別れは訪れる。それは必然なんだ。
   だからといって過去に縋るようなことをしてはいけない。
   今この時を、精一杯生きることで、
   少しでも多くの思い出を作る……それが君にできる唯一のことだ」

紬「うう、みんなあ……
  ごめんなさい……ごめんなさい……うぇええええん」

自らの過ちを悔い、紬は赤子のように泣きじゃくった。
これをもって一連の騒動に終止符が打たれた。

104: 2010/09/02(木) 02:00:16.75 ID:Ms/gHFnS0
その後、紬は自分で警察を呼び、
自らの行いを警察に全て打ち明けた。
紬の手には手錠が掛けられ、
パトカーに乗せられて連れていかれた。

ゾロアとゾロアークはポケモンセンターに運ばれた。

梓「あの、2匹は大丈夫なんでしょうか」

医師「うん、すぐに体力を回復できるだろう」

律「よかったー」

医師「しかし君たち……どこであのポケモンを?」

澪「どこで、と言われましても」

唯「捕まえたのは私たちじゃないよー」

医師「そうか、まあ誰が捕まえたにせよ、
   あのゾロアとゾロアークは海外のポケモンでね。
   個体数がとみに減っていて、
   国際法によって捕獲が禁じられているんだ」

梓「そうなんですか」

医師「だから体力が回復し次第、こちらで元の国に送り返す手続きをとる」

梓「よろしくお願いします」

106: 2010/09/02(木) 02:06:33.35 ID:Ms/gHFnS0
律「てことはゾロアたちとはもうお別れかー、寂しいな」

梓「……」

澪「あのー、ゾロアたちは今どこに」

医師「治療室に居るよ、会わせてあげよう」

唯「わーい」



治療室。

律「おーいゾロア、ゾロアーク、大丈夫かー」

ゾロア「うん、もう平気だぞ」

医師「こら治療室で騒ぐんじゃない」

ゾロア「早く元気になって、みんなやマァと遊びたいぞー」

澪「あー、そのことなんだけどな」

梓「ゾロアとゾロアークは……
  住んでた国に戻らなきゃいけないんだって」

ゾロア「え……」

医師「君たちが治ったらすぐにでも送還の準備を始める」

108: 2010/09/02(木) 02:09:22.86 ID:Ms/gHFnS0
ゾロア「そんなあ……おいら、もっとみんなと一緒にいたいぞ。
    せっかく仲良くなれたのに」

ゾロアーク「……」

律「寂しいけど仕方ないことだ。
  国に戻ればおまえたちの仲間がいっぱいいるんだろ」

ゾロア「それはそうだけど……」

律「なら、そこがおまえたちの居るべき場所だ。
  暇ができたら遊びにいくから、そのときは歓迎してくれよな」

ゾロア「……うん」

澪「ああそれと……ごめんな、ゾロア、ゾロアーク。
  私達人間のエゴで、おまえたちを傷つけてしまって」

ゾロア「みおが謝ることなんてないぞ。
    それに、つむぎの気持ちはエゴなんかじゃないぞ。
    おいらだってみんなと別れたくない気持ちは同じだもん」

唯「ゾ口リ……」

澪「ふふ、優しいなお前は」

律「優しいというよりお人好しだ、将来が不安だな。
  ゾロアーク、ちゃんとゾロアを強い子に育ててやれよ」

ゾロアーク「こくん」

109: 2010/09/02(木) 02:12:35.40 ID:Ms/gHFnS0
医師「2匹とも、傷はもう大丈夫そうだな。
   万能粉とスターの実とフエン煎餅と元気の欠片を砕いて
   モーモーミルクに溶かした特製特効回復薬がうまく効いたようだ」

律「聞いただけでマズそうな」

医師「ではさっそく送還の準備にとりかかる。
   君たちは出ていってくれたまえ」

唯「えー、もうですか? ケチだなー」

医師「これも仕事のうちなんだよ」

律「残念だけどこれでお別れみたいだなー」

澪「2人とも元気でな」

唯「また遊ぼうねー」

ゾロア「うん、みんなありがとうだぞ。
    ほんとにほんとにありがとうだぞ!」

梓「ゾロア……」

ゾロア「あずさには一番感謝してるぞ。
    最初においらを見つけてくれたし、
    ずっと一緒においらといてくれたし……
    あとカップラーメンも美味しかったぞ!」

梓「こっちこそ……ありがとう。元気でね、ゾロア、ゾロアーク……」

110: 2010/09/02(木) 02:14:42.83 ID:Ms/gHFnS0
これが軽音部とゾロアたちとの別れになった。
ゾロアたちは梓たちの知らないうちに本国へ送り返された。

今回の一件はテレビや新聞ではまったく報道されなかった。
琴吹家がマスコミに圧力をかけたためである。
インターネットで事件に関する噂はあることないこと書かれたが
どれも信憑性に欠けたたために全て消えていった。
事の真相を知っているのは梓たちだけだ。

ともあれ蔵雲市は災害の幻影から解放され
元の平和で穏やかな日々が戻ってきた。
そしてそれは軽音部にも……
ただ一つ、紬がいなくなったことを除いて。

ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー ○ ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー'
               o
            .     
                 ___
                ´:::::::::::::::::::`丶、_ノ
          /::::::::::::::::::::::::::::::\:::\
        /::::::::::/::::: |:::/\:::::::::::ヽ::::ヽ
          /::::::::::::i::::::/|:::Lノ \i:::::人:::::::
       ′ ::::::: |:::: | |:::|     |/V }::::::|
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       :::::/::::::八:: |   {{___}}⌒ト='{
       ∨::::::(⌒l八 "  ̄r=::::、    
       厶イ:::::\      、:::_ノ  /
         \::::::::::T^丶       /
         ∠:::::r┴-    Tニ´
          _ >{    \/ }

111: 2010/09/02(木) 02:18:11.10 ID:Ms/gHFnS0
音楽室。

バクオング「ギゴガゴーゴーッ!」

澪「ああ、紅茶か。ありがとう」

唯「バクたろうもすっかり給仕係が板についてきたね」

律「唯、バクたろうはバクオングじゃなくてバクフーンだ。
  ていうか結局もう一段階進化させたのかよ」

澪「これはこれでありかなと」

律「あ、そう」

梓「……」

律「どうした? 梓」

梓「え、何がですか」

律「いや最近なんか元気ないっぽいし。
  具体的に言えばゾロアたちと別れてから、ずっと」

唯「あー、確かに」

澪「なんだ、ゾロアがいなくなって寂しいのか」

梓「そ、そんなんじゃないです。ただ……」

112: 2010/09/02(木) 02:20:23.73 ID:Ms/gHFnS0
律「ただ?」

梓「私には何ができたのかなって思って」

澪「どういうことだ」

梓「唯先輩はドンカラスで私たちを運んだり戦ったりしました。
  律先輩はムギ先輩を説き伏せましたし、
  澪先輩だってゴニョニョを出してゾロアの手助けをしてました。
  私だけ何も出来なかったんです」

律「なんだ、そんなこと気にしてたのかよ」

梓「そんなこととはなんですか。
  私は真剣に悩んでるんですっ」

律「お前は充分ゾロアたちのために力を尽くしてたよ」

澪「うん、最初にゾロアを見つけたのも梓だし、
  ゾロアを家に泊めたのも梓だ」

律「梓がいなかったら、
  ゾロアは今もマァと会えずに一人ぼっちだったかもしれないんだ。
  梓の存在に、ゾロアがどれだけ救われたか考えてみろ」

唯「マァと離れ離れになってる間、
  ゾ口リの心の支えはあずにゃんだけだったんだよ!」

梓「そ、そうでしょうか」

113: 2010/09/02(木) 02:23:27.59 ID:Ms/gHFnS0
律「そうだよ。逆に言えば私たちは梓みたいなことを
  ゾロアにはしてやれなかったんだ。
  梓は梓にできることをした。
  ゾロアだって感謝してるはずさ」

梓「……はい」

唯「そーだ、いつゾ口リの住んでる国に遊びにいく?」

澪「いつ、と言われてもな。
  というか行くことは決定してるのか」

律「とりあえず受験終わって高校出てからだろ。
  それから考えようぜ」

唯「えー、早くゾ口リに会いたいよー。ね、あずにゃん」

梓「そうですね。いつか遊びにいきましょう、ムギ先輩も一緒に」

澪「ああ、軽音部の5人でな」

律「今度はきっとみんな笑顔で」

唯「楽しい時間を過ごせるはずだよ」

梓「はい。きっとそんな、素敵な未来が待ってるはずです」

バクオング「おわり」

115: 2010/09/02(木) 02:25:11.32 ID:Ms/gHFnS0
これでおしまい

元ネタは今年のポケモン映画
面白かったから見に行くといい

116: 2010/09/02(木) 02:26:13.10 ID:u9w1wFKPP
乙です

117: 2010/09/02(木) 02:48:22.01 ID:kIB1ueLhP
乙にゃん

引用元: 唯「幻影の覇者!」