1: 2010/09/01(水) 03:40:30.02 ID:ylfvKM+kO
林田「けいおん?」

北斗「ああ、今、巷で大人気のコミックスだ」

神山「へえ、どんな話なんだい」

子分「なんだ知らないのかよお前ら!」

北斗「よせ。知らない方が語りがいもあるというものだ」

前田「……」
TVアニメ「けいおん!!」『けいおん!! ライブイベント ~Come with Me!!~』Blu-Ray メモリアルブックレット付【初回限定生産】

2: 2010/09/01(水) 03:46:14.33 ID:ylfvKM+kO
林田「面倒な説明はいいからよ、あらすじだけバーッと頼むぜ」

北斗「え……あらすじ?」

北斗「……」

北斗「女子高生がバンドをする、日常ほのぼの音楽コメディだ」

前田(それはあらすじというより、ジャンルなのでは……)

神山「へえ、バンドって事は楽器かい?」

子分「ああ、もう唯ちゃんが可愛くて仕方ないんだ」

北斗「ふっ……ムギの可憐さには敵うまい」

林田「……」

林田「なあ、ちょっといいか」

北斗「む?」

林田「音楽の話なのによ、その……可愛いキャラってのはどういう事だ?」

4: 2010/09/01(水) 03:51:34.25 ID:ylfvKM+kO
北斗「……質問の意味がわからないのだが」

林田「いや……あんまり音楽の漫画は読まねえからわからないんだけどよ、そういうのって楽器とか曲について語るもんじゃないのか?」

子分「ああ、もちろん。レスポールやテレキャス……楽器の話題もあるぜ」

林田「でもよ、お前らの言う、何とかちゃんの話が一番に出てくるんだろ?」

北斗「ふっ、けいおんを語る上で音楽などは無意味。彼女がそこにいればそれでよいのだ」

神山「……北斗君たちがそんなにハマっているなら、ちょっと興味があるかな」

子分「おう。そういうと思ってよ、ここに一巻があるから読んでみな」

神山「……」

パラパラ

5: 2010/09/01(水) 03:57:23.10 ID:ylfvKM+kO
北斗「……どうだ」

神山「いや、どうだと言われても……」

子分「唯ちゃん可愛いだろう!」

林田「まあ、女の子が出るのはわかったがよ……だから何なんだよ」

北斗「……え」

林田「確かに、女の子は可愛い。楽器の話もちょっとはしてるみたいだが……」

神山「でも、だから何だと言われてもね」

前田(……この律って子可愛いな)

林田「なあ、前田?」

前田「え……お、おう」

北斗「うぬぬ……貴様らにはけいおんの良さが解らないのか!」

神山「そう、そこだよそこ。何が北斗君たちを惹き付けているのか……それを教えてくれないかな」

北斗「ほう、この俺を試そうと言うのか、神山よ」

9: 2010/09/01(水) 04:02:50.20 ID:ylfvKM+kO
北斗「いいだろう。まず第一にけいおんの良さと言うのはな……」

北斗「……」

北斗(……あれ?)

北斗(こうして冷静に考えてみると、女子高生がダベって、ふわふわとしているだけではないか)
北斗(いや、確かに俺はそのふわふわが好きだ。好きなのだが……何が魅力か?)

北斗「……お、女の子が楽器をやっている」

神山「でも、楽器を弾いているシーンなんて数えるくらいしか無いみたいだけど」

子分「甘いな。いいか、漫画だとそう見えるかもしれないがアニメだとな……」

北斗(そ、そうだアニメだ。楽器の雰囲気を伝えるなら紙より映像の方が効果的なのは至極当然)

神山「へえ、アニメにもなってるんだ」

12: 2010/09/01(水) 04:08:02.33 ID:ylfvKM+kO
子分「ああ、ここにDVDの第一巻があるぜ」

北斗「ふふっ、次は映像で彼女たちを感じ取ってもらおうか」

前田「いや、学科でアニメ見ていいのかよ……」


ピッ


林田「……お、始まったな」

神山「話は同じ、女子高で唯が部活に入るところからなんだね」

唯『うんたん♪ うんたん♪』

神山「……確かに、声が入るとイメージは変わるかもしれないね」

ゴリラ「ンゴ」

フレディ「……」

林田「……」

前田「……」

14: 2010/09/01(水) 04:13:28.34 ID:ylfvKM+kO
神山「何だかんだで、第一期は全部見てしまったね」

北斗「彼女たちが堪能できた、それだけで貴様らは果報者だ」

子分「やっぱり唯最高~!」

林田「いや、そこは澪だろう」

前田「俺は律派かな」

ゴリラ「ンゴ」

フレディ「……」


神山「どういう話なのかは解ったよ。確かにアニメだと面白いのかもしれない」

北斗「ふふっ、そうかそうか」

神山「……で?」

子分「えっ……」

北斗「貴様、まだそんな事を言うのか。彼女たちの魅力は充分にわかっただろう!」

神山「女の子が可愛いのはわかりました。それで、北斗君は僕に何を伝えたくてこれを見せたんだい?」

15: 2010/09/01(水) 04:20:00.57 ID:ylfvKM+kO
北斗「そ、それはだな……」

神山「ここまで時間を取らせたんだから、相応の内容なんだろうね?」

北斗(くっ、奴の目は尖っている……今さら、ちょっとクラスに広めたかったなどと言ったら……)

子分(俺たちの権威が丸つぶれだ……)

林田「……神山よ、ちょっといいか」

神山「む?」

林田「確かに、お前にとっちゃあただのアニメかもしれねえ。女の子も好みのタイプがいなかったかもしれねえ」

北斗「は、林田……」

林田「正直最初はよ、女の子が楽器をやっているだけで何が面白いのかは分からなかった」

林田「……でもよ、一期を見終わった俺には分かるぜ。北斗たちが何を伝えたかったのかを、よ」

北斗「林田……」

16: 2010/09/01(水) 04:25:29.45 ID:ylfvKM+kO
林田「北斗たちはよ……俺たちとバンドやりてえって伝えたかったんじゃないのか

北斗「……え」

北斗(いやいや、どうしてそうなるんだ。何を言い出すかと思えば……バンド、だと……)

神山「バンド……そうなのかい、北斗君」

林田「言ってやれよ、お前が言いたかった事をよ」

北斗「バ……」

子分(うわあ、ぜってーアレは何も考えてない目だよ……)

北斗「バ……バンドだ。そうだ、林田」

子分(言っちゃった……)

林田「フッ、今ならわかるさ」

神山「北斗君……!」

北斗「な、なんだ神山(まずい、また何か言われる……)」

18: 2010/09/01(水) 04:30:43.11 ID:ylfvKM+kO
神山「感動したよ」ガシッ

北斗「え……」

神山「いや、実は僕も見ているうちにちょっと楽器が楽しそうに思えてきてね」

北斗「ほ、ほぅ。それでこそ俺が見込んだ男だ……」

神山「君がそう言ってくれるのなら、僕は喜んで協力するよ」

子分(えっ、本当にバンド組むの?)

林田「神山、俺もいるぜ」

神山「林田君……」

ゴリラ「ンゴ」

フレディ「……コク」

北斗「よ、よーし! 今日から俺たちはクロマティ高校けいおん部だ!」

全員「おおー!」


ベンチ

北斗「明日からどうしよう……」

くろまてぃ!

21: 2010/09/01(水) 04:36:40.05 ID:ylfvKM+kO
次の日

林田「なあ。バンドやるはいいけどよお、楽器はどうするんだ」

北斗「ふっ、各々がやりたい楽器を自分で買い揃えればいいだけだ」

神山「ちょっと待って下さい。けいおん部のメンバーは全員で五人でしたよね」

北斗「当たり前だ」

神山「僕たちは……」

前田「……」

林田「……」

子分「……」

ゴリラ「ンゴ」

フレディ「……」

メカ沢「……」

北斗「八人、か」

神山「あれ、メカ沢君、いつの間に?」

24: 2010/09/01(水) 04:43:06.75 ID:ylfvKM+kO
メカ沢「ふっ、バンドと聞いちゃあ……ちょいと血が騒いじまってな」

林田「お、メカ沢経験者か」

メカ沢「まーな。こう見えても音楽スタジオでバイトしていた事があるんだぜ」

神山「それは心強い」

北斗「ちなみに、なんの楽器が弾けるのだ?」

メカ沢「ドラムだ。俺から出る音はなかなか評判よかったんだぜ」

神山(俺から出る?)

北斗「ふむ、早速腕を見たいがここにはまだドラムが無いからな……」

メカ沢「だ~か~ら、任せておけっての。よっ」カシュン

神山「……」

メカ沢「いやあ、久しぶりだからな。ちゃんと設置できるかどうか」カシャン カシャン

林田「……」

26: 2010/09/01(水) 04:49:59.86 ID:ylfvKM+kO
メカ沢(ドラム)「出来たぜ。さ、弾いてくれ」

北斗(お前がドラムになるのかよぉぉ……)

神山「さすが、バイトしてただけあるね」

林田「ああ、すげえドラムっぷりだぜ」

北斗(いや、お前ら突っ込めよ……楽器弾けるかって聞いたじゃん。特技はドラムになる事ですって、そんなメンバーいねえよ)

メカ沢(ドラム)「へ、へへっ。あんまりジロジロ見るなよ。さ、誰が俺を叩いてくれるんだい?」

林田「そう言えば、前田はりっちゃんが好きだったよな」

前田「え、お、俺はドラムなんて触った事ないからいいよ……」

メカ沢(ドラム)「遠慮すんなって。最初はプロも素人……恥ずかしがってちゃ上達なんてしないぜ?」シャン シャン

北斗(喋る度にシンバルの部分が揺れるのか……)

28: 2010/09/01(水) 04:55:17.62 ID:ylfvKM+kO
前田「じ、じゃあ……ちょっとだけ」

ジャーン

林田「お、意外と響くな」

ドンッ ドンッ

メカ沢(ドラム)「いいぜいいぜー。慣れてきたらリズミカルに叩いてみな」

前田「こ、こうかな」

ドンッ シャン

神山「んん~、雰囲気はいいけどやっぱり安心するような音では無いよね」

前田「す、すまねえメカ沢……」

メカ沢(ドラム)「謝る事はねえよ。お前が今叩いているその……一生懸命な気持ちはビリビリ伝わってくるぜ」

前田「メカ沢……」

子分「へへっ、これから上手くなればいいじゃねえか!」

ゴリラ「ンゴ!」

フレディ「……」コクッ

北斗(くっ、なんだこのちょっといい雰囲気は……許せん)

30: 2010/09/01(水) 04:59:43.65 ID:ylfvKM+kO
北斗「ええい、待て貴様ら! そいつを見て何も思わないのか!」

前田「ん?」

北斗「お前じゃない。ドラムになっている……貴様だ」

メカ沢(ドラム)「んん~?」

北斗「よく考えてみろ、バンドメンバーがドラムになってるんだぞ。何か変だとは思わないのか!」

神山「?」

林田「なに言ってんだ、お前」

北斗「くっ……貴様ら……これが変だとは思わんのか!」

メカ沢(ドラム)「……」

メカ沢(ドラム)「ああ、確かに俺はとんでもないミスをしていたみたいだな」

神山「メカ沢君?」

北斗「……やっと気付いたか」

31: 2010/09/01(水) 05:05:30.68 ID:ylfvKM+kO
メカ沢(ドラム)「……すまねえな、久しぶりのドラムだったんでちょっと興奮していた。我ながら情けないぜ」

林田「待てよメカ沢。話が見えないぞ」

メカ沢(ドラム)「そこの北斗って奴は、よっぽどこのバンドに命かけてるらしいな。俺のミスに、こんな熱い言葉を掛けるなんて……」

北斗「……よくわからんが、わかってくれたならよかった。さあ、早く元に戻ってみんなでバンドを……」

メカ沢(ドラム)「すまねえ、サイドとトップの位置を逆にしていた」カシャン

神山「あ、間違えて置いてたんだあ」

林田「全く、一々北斗は熱く言うよな」

北斗「……」


ベンチ

北斗「そうじゃねえよ……」

ドラム(本体)メカ沢!

32: 2010/09/01(水) 05:09:55.72 ID:ylfvKM+kO
林田「なあ、さっきので考えたんだけどよ、楽器の経験者っているのか」

神山「確かに、誰か経験者がいないと大変かもね。北斗君は?」

北斗「……俺はベースを持っている」

林田「ベース?」

神山「ああ、澪ちゃんが弾いていた。で、君は?」

子分「いい加減名前で呼べ! いいか、俺の名前はな……」

神山「いや、名前よりも楽器経験者かどうかを聞きたいんだよ。で……?」

子分「そ、それはだな……」

北斗「ま、待て。その話は明日だ! 今日は解散だ!」

神山「えっ、どうしてだい?」

北斗「どうしてもだ! 今日は解散だ!」

34: 2010/09/01(水) 05:14:08.58 ID:ylfvKM+kO
帰り

北斗「ふ~っ、なんとか誤魔化せたな」

子分「……俺たち、間違えて二人してベース買っちゃいましたもんね」

北斗「うむ。そんな事が知れたら恥もいい所だ」

子分「でも、ムギちゃんが好きな北斗さんがどうして最初はギターを買おうと?」

北斗「うむ。俺も最初は唯が好きだったからな」

子分「そうでしたね」

北斗「……楽器、どうするかな」

子分「ベースでいきますか?」
北斗「いや、俺はキーボードをやる、当たり前だろうが」

子分「お、俺だってベースじゃないギターをやりたいですよ」

36: 2010/09/01(水) 05:18:47.52 ID:ylfvKM+kO
北斗「と、言うわけで楽器屋に来たわけだが」

子分「あ、すいませ~ん。ここに唯ちゃんが使っていたギターの……」

店員「はい?」

北斗「バ、バカ者! ちょっと来い」

子分「どうしたんです?」

北斗「いいか、バカ正直に……けいおんを見てギターが欲しくなりました、なんて俺が言えるわけないだろう」

子分「……」

北斗「いいか、俺はそこらのニワカオタクとは違うんだ。もっと堂々と楽器を買いに来た態度で挑むんだ」

子分「は、はぁ……」

北斗「店員よ、ちょっといいか?」

店員「は、はい?」

北斗「帝王の俺に相応しい楽器を教えろ」

37: 2010/09/01(水) 05:24:18.57 ID:ylfvKM+kO
店員「は、はあ? 何か希望の楽器は……先ほど、お連れ様がけいおんと仰られて……」

北斗「笑止。チャラチャラした女子高生アニメなど知らぬ。早く帝王のこの俺に相応しい楽器を教えるんだ」

子分「いや、言っちゃってる……」

店員「は、はぁ。帝王なら、何でもいいんですか?」

北斗「うむ。軟弱な音の出る楽器はいらん」

店員「で、でしたらこちらの……」

北斗「説明などいるか! 早くそれを包め。一応、子分の分もだ」

店員「は、はい。ではお会計が六万円になります……」


……。

39: 2010/09/01(水) 05:28:29.94 ID:ylfvKM+kO
店員「ありがとうございました」


北斗「……なあ」

子分「……」

北斗「どうしてベースなんだ」ボン ボン

子分「知りませんよ! 何ですか、帝王っぽい楽器って。ワケわかんないですよ!」

北斗「軟弱な音でバンドが出来るか」

子分「ああ~っ、変な頼み方しないで素直にけいおん見ました、でいいじゃないですか!」

北斗「帝王がそんなダサい買い物などできるか!」

北斗「……お、俺今から交換してもらってきますからね」ダダダッ

北斗「あ、お、おい!」

北斗「……行ってしまった」

44: 2010/09/01(水) 05:33:42.23 ID:ylfvKM+kO
北斗「結局、手元にはこのベースだけか」ボン

北斗「ううむ、確かにベースが二本あっても手に余る……」

北斗「……」


店員「いらっしゃいま……あれ?」

北斗「店員よ、つかぬことを聞くが、このベースは返品できるだろうか」

店員「え? いやあ、ケース開けちゃってますし……中古のだったらまだ受けとりましたけど、新品は……」

北斗「くっ……す、すまぬ。実はこの北斗嘘をついていた……」

店員「え?」

北斗「じ、実は俺はけいおんに感化されて楽器を、バンドを始めようとしていたのだ」

北斗「照れ隠しでつい、帝王だの何だのと言ってしまった……すまない」

店員「……僕も、見てますよけいおん」

北斗「お、おおっ?」

46: 2010/09/01(水) 05:39:01.46 ID:ylfvKM+kO
店員「お客さんでも多いんですよ。けいおん見て楽器を始める人が」

北斗「た、確かによく見たらポスターや紹介ポップが……」

店員「僕はムギちゃんが好きなんですけど、なかなか人気が無いみたいで……キーボードのコーナーは僕が飾り付けしてるんですよ」

北斗「お、おおっ……素晴らしい。素晴らしいぞこれは」

店員「えっ、お客さんもムギちゃん派ですか?」

北斗「無論だ。あの眉毛を愛でる事こそが帝王学の極みだと思っている」

店員「い、いやあ嬉しいなあ。あ……どうです、このキーボード……ムギちゃんと同じタイプですよ」

北斗「こ、これが……しかし、高いな」

店員「多少、値段は張りますが……」

北斗「笑止。帝王の前には値段など無意味……これをくれ」

48: 2010/09/01(水) 05:44:20.52 ID:ylfvKM+kO
店員「あ、ありがとうございます!」

北斗「……こんな所で同士に会えるとは思っていなかった。また寄らせてもらおう」

店員「は、はい! 楽器の事で何かあったら連絡下さい。大抵この店にいますから」

北斗「……うむ」

北斗「……」

北斗「ところで店員よ」

店員「はい?」

北斗「このベース、返品できない?」

店員「ああ~、そいつはちょっと無理でっすね~」

北斗「……」



ベンチ

北斗「無理かぁ~」

無理だよ。

49: 2010/09/01(水) 05:49:25.73 ID:ylfvKM+kO
次の日

子分「見ろよ。レスポールだぜ!」

林田「おっ、ついに自分の楽器か」

子分「形は同じ、ちょっと安物だけどな」

神山「いやあ、それでもすごいよ。やっぱり実物があると違うね」

北斗(結局奴は交換したのか……くっ)

林田「なあ、ちょっと弾いてみてくれないか?」

子分「いやあ、それがまだ全然弾けなくてよ……とりあえず楽器だけ、って感じなんだ」

前田「なあ、経験者がいないんじゃあこの先辛いんじゃないか?」

神山「しかし、経験者がいないとなると……練習は大変かもね」

前田「いや、今俺が言った……」

林田「そうだよなあ……この中で経験者って言ったらメカ沢くらいか」

51: 2010/09/01(水) 05:55:15.25 ID:ylfvKM+kO
メカ沢(ドラム)「俺はドラム専門だ。ギターの方は……さっぱりわからねえや」

北斗(ギターにもなるのか?)

神山「んー、他に経験者は?」

子分「フレディなんかどうだ? ほら、ギター」

フレディ「……」フル フル

神山「んー、フレディも弾けないのかあ」

林田「じゃあどうやって練習すればいいんだよ」

北斗「待て待て。そもそもお前らは何の楽器をするんだ」

神山「え?」

北斗「え、じゃない。ギター、ボーカル、ベース、キーボード……被りはあれど担当を決めなければ練習もできまい」

53: 2010/09/01(水) 06:00:39.50 ID:ylfvKM+kO
神山「ねえ、考えたんだけどさ、楽器って何だろうね」

北斗「む?」

神山「そもそも、けいおんメンバーはその楽器を使ってるからイメージが強いけどさ、他にも楽器はあるんじゃないかな」

林田「確かにな」

神山「只でさえ人数が違うんだから……何も楽器を枠にハメる事は無いと思うんだ」

北斗「ふむ」

神山「それこそカスタネットでも、マラカスでも……いや、楽器の形はしてなくてもいいのかもしれない」

メカ沢(ドラム)「……」シャーン シャーン

神山「ほら、小学生なんかがよくやった、身の回りの物で楽器を作ろうってヤツ……」

前田「ああ、あったな。コップに米を入れてフタをして鳴らしたり」

54: 2010/09/01(水) 06:05:06.75 ID:ylfvKM+kO
神山「それだよ。無理にギターやドラムじゃなくても、身近な物で音を奏でればいいじゃないか」

子分「……フッ、ギターなんて買って少々浮かれていたぜ」スッ

林田「なあ……この机を鉛筆で叩いて音を出してみたらどうだ」カッ カッ

神山「林田君……」

北斗「そういう事ならば、このドラム缶を叩く事によって……力強いビートになる」ガシャン

56: 2010/09/01(水) 06:09:37.55 ID:ylfvKM+kO
フレディ「……」ダン ダン ダンッ

神山「フレディ、地団駄でそんな力強い音を出せるなんて」

ゴリラ「……」ドン ドン ドン
メカ沢「胸を自ら叩いて音を出す……まさにビートだな」

神山「みんな……」

北斗「どうやら、担当楽器が決まったようだな」

林田「へへっ」

メカ沢(ドラム)「俺も気合いが入るぜ」ジャーン ジャーン

北斗「よおし! クロマティ高校けいおん部の再び始まりだ!」

全員「おおー!」


前田「……」


ベンチ

前田「なんだっけ、あんな音楽CMで見たような……」

確か、ストンプ。

59: 2010/09/01(水) 06:14:20.97 ID:ylfvKM+kO
次の日

神山「みんな、僕はけいおん部を辞めようと思うんだけど」

林田「えっ?」カッ カッ

神山「いやあ、昨日あんな事言っておいてあれだけどさ」

北斗「貴様、理由によっては只じゃおかないぞ」ガシャーン

神山「いや、ドラム缶や机叩くの止めて下さいよ。僕は真面目な話をしているんですから」

子分「とにかく理由を言えよ」

神山「昨日ちょっと考えたのが……」

神山「これは本当にけいおんなのか、と」

林田「お前言ってる事がコロコロ変わるな~」

62: 2010/09/01(水) 06:19:44.43 ID:ylfvKM+kO
北斗「まあ待て神山。本家けいおん部も時には音楽、時には雑談を……」

神山「いや、彼女たちはいいんですよ。可愛いからただ雑談しているだけで絵になるでしょう」

神山「僕たちは男子校で、楽器も満足に弾く事が出来ない。これじゃあただの時間潰し以下ですよ」

林田「お前ってたまにズバッとひどい事言うよな~」

北斗「なら、どうすればいいのだ」

神山「もう一度僕が音楽をやりたくなるような、そんな何かがあれば……でも、いいんです。僕の気持ちは氏んでしまったみたいだ」

神山「じゃあ、さよなら」

ガラッ

林田「お、おい神山」

子分「い、行っちまった……」

65: 2010/09/01(水) 06:26:30.71 ID:ylfvKM+kO
神山「……ん?」

ジャーン ジャーン

神山「なんだろう、教室から心地よいドラムの音が」

ダダダン ダダダダダン

神山「こ、このリズム感……なんだ、胸がドキドキする」

ズッダダ ズッダン

神山「もしかしてメカ沢君が僕のために……?」ハッ

神山(僕はなんて小さいんだ……今がけいおんっぽくないのなら、これから変えて行けばいいじゃないか)

66: 2010/09/01(水) 06:27:29.05 ID:ylfvKM+kO
ダン ダン ダダダン ジャーン

神山「このドラムも……そんな僕を応援してくれているみたいなビートだ……よしっ」

ガラッ

神山「メカ沢君。君のビートは僕の胸にしっかりと……」

林田「うおっ、すげえぜゴリラの奴」

子分「プロ並みのドラム捌きじゃねえか!」

ゴリラ「……」ジャーン ジャーン

神山「……」


ベンチ

神山「音楽って難しいなぁ……」

ゴリラすげー。

68: 2010/09/01(水) 06:33:52.53 ID:ylfvKM+kO
北斗「神山が戻って来た所で、担当楽器を決めるぞ」

林田「ええ~、もう鉛筆と机でいいじゃねえか」カッ カッ

神山「ダメだよ林田君。やっぱり形はどうあれしっかりした楽器を手にいれないと……僕たちはけいおん部なんだから」

前田「本当に意見が変わるな……」

北斗「うむ。ところで貴様ら、買う買わないは別にしても本物の楽器を見に行かないか?」

林田「楽器を?」

北斗「ああ、知り合いの楽器屋が近くにある。本物を見ればより気分も高まるだろう」

メカ沢(ドラム)「そいつはいい。俺も久しぶりに新品のドラムを見てえな」

北斗「よし、ではみんな行くぞ」

73: 2010/09/01(水) 06:39:46.81 ID:ylfvKM+kO
店員「いらっしゃいませ~、あ」

北斗「うむ。来てやったぞ」

店員「北斗さん、今日はまた随分大人数ですね」

北斗「こいつらが本物の楽器を見たいと言ってな。全員がクロマティ高校けいおん部のメンバーであり、我が下僕だ」

店員「へぇ~」

子分「さあ、ここだぞお前ら」

神山「ここが楽器屋か」

林田「すげえな」

前田「お、けいおんのポスターが」

店員(な、なんか濃いメンバーだなあ)

メカ沢(ドラム)「いやあ、この空気……久しぶりだな」

店員「え?」

店員「あ、あの。この……人? もメンバー……」

メカ沢(ドラム)「おうよ。俺、バリバリのドラムなんでよろしくぅ」シャーン シャーン

店員「は、はぁ……」

74: 2010/09/01(水) 06:45:22.61 ID:ylfvKM+kO
店員(な、なんかカシャカシャしてたのは気のせいかな?)

店員「あ、い、いらっしゃ……」

フレディ「……」コクッ

店員「……」

北斗「む、どうした店員よ」

店員(え、本物? いやいやいや……いやいやいや)

フレディ「……」

店員「あ、あの……もしかして……クイーンのボーカルの……」

北斗「はははっ、何を言っているんだ店員。確かにこいつは外人ぽく見えるがそんな横文字は通じないぞ」

店員「えっ? あ、あのだからクイーンの……」

北斗「むぅ、俺は帝王になる男、いわばキングだぞ」

店員「は、はぁ。すいません……」

店員(わけがわからない……)

75: 2010/09/01(水) 06:50:33.70 ID:ylfvKM+kO
北斗「わかればいい。引き続き楽器を見せてもらうからな」

店員「は、はぁ……」

店員(なんだかすごいメンバーだなあ。ドラム本体に、ボーカルっぽい人に)

店員(どういう音楽をやってるのかな?)

ドンッ

店員「あ、す、すいません。ボーッとしていて……」

ゴリラ「ンゴ」

店員「……」

林田「おーい、こっちに来いよゴリ」

子分「でっけえドラムのセットがあるぜ」

ゴリラ「ンゴ」

店員「……」


店の裏

店員「ゴリラじゃねーか……」

ゴリラです。

76: 2010/09/01(水) 06:55:48.46 ID:ylfvKM+kO
店員(いやいやいや、ゴリラはおかしいだろ、ゴリラは)

店員(だってゴリラだぞ……仕方ない、北斗さんの知り合いとは言え、ここはビシッと……)

店員「あ、あの、北斗さん?」

北斗「む?」

店員「ほ、他の方はいいんですけどね……あの、ゴリラみたいな方だけはちょっと……」

北斗「……」

店員「お店を壊されちゃったりでもしたら、万が一と言う事もありますし」

神山「あの、ちょっといいですか?」

店員「は、はい?」

神山「先ほどから聞いていると、あのゴリラがこの楽器店にいるのは好ましくない、と」

店員「え、ええまあ……」

神山「それは偏見という物です。少なくとも、あのゴリラには音楽を理解し愛する……心があります」

店員「心……」

77: 2010/09/01(水) 07:01:12.69 ID:ylfvKM+kO
神山「見てて下さい」

ゴリラ「……」スッ

店員「ち、ちょっと。売り物のドラムとスティックを勝手に!」

北斗「いいから、そこで見ていろ」

ゴリラ「……」カッ カッ カッ カッ

ダダダン ダダダン

店員「こ、これは……」

ジャーン ダン ダン ダダダン

店員(す、すごい。ゴリラらしい力強い音楽……それでいてどこか繊細さが溢れるような……)

店員「この安定感はセミプロ……いや、プロでも滅多にいませんよ!」

神山「これが、僕たちのドラマーのゴリラです。これでもまだ、ゴリラはこの店に不要ですか?」

78: 2010/09/01(水) 07:06:42.56 ID:ylfvKM+kO
店員「……いえ、僕が間違っていました。こんなに素晴らしい音を聞けるなんて」

神山「店員さん……」

店員「良いものを聞かせてもらえました。ありがとうございます」

北斗「礼ならゴリラに言うがよい」

店員「そうですね。あんなに気持ちいい音を出してもらえて、ドラムだってさぞかしいい気分で……」クルッ

林田「こ、こらゴリ。それはバナナじゃないぞ」

ゴリラ「ンゴ?」シャグ シャグ

前田「昼飯食べてなかったからなあ」

神山「あ、スティックがかじられてる」

店員「……」


店の裏

店員「音楽って難しいなぁ……」

あんたで二人目。

81: 2010/09/01(水) 07:12:18.79 ID:ylfvKM+kO
店員「だーかーらー、ゴリラはやっぱりダメですってば!」

北斗「先ほどはあんなに感動していたではないか」

店員「スティック食べられたら感動もなにもありませんよ、全く……」

客「おおい、ちょっとこれを弾いてみたいんだけど」

店員「あ、は~いただいま伺います」

店員「と、とにかく、あのゴリラは店の外に出して下さい! いいですね!」

ゴリラ「……!」ビクッ

ゴリラ「……」スタスタ

神山「あっ、ゴリ」

林田「お、おい待てよゴリ」

子分「ああ、行っちまった」

北斗「まあいい。店の外で待っているだろう」

店員「……」

客「おお~い」

店員「は、は~いただいま!」

83: 2010/09/01(水) 07:21:12.69 ID:ylfvKM+kO
店員「……で、こちらのキーボードにはマルチエフェクターが付いていまして」チラッ

神山「このギターカッコいいなあ」

北斗「神山はギター……ストラトか」

神山「まだちょっと迷っているんだけどね」

店員(さっきはちょっと言い過ぎたかなあ……スティックさえかじらなければ、いい人だったかもしれないし)


前田「なあ、このギターの形で何が変わるんだ?」

林田「雰囲気だよ雰囲気。作りは同じなんだからよ」

フレディ「……」

店員(ハァ……どうしよう)

ジャーン

店員(?)

ギュイーン

店員(な、なんだこの力強いギターは)

84: 2010/09/01(水) 07:26:39.91 ID:ylfvKM+kO
客「おいキミぃ、エフェクターがなんだって?」

店員「あ、は、はい……」

ジャジャ ギュゥーン

店員(この……まさにロックな……これは、シアハートアタックの……)

店員(ま、まさかさっきの外人さんが?)

客「ああ、ありがとう。また後で見に来るよ」

店員「あ、はい」

店員(い、一体誰が!)クルッ

林田「うおー、お前ギターまで弾けるのかよ」

子分「曲名とか全然わかんねえけどスゲーな」

ゴリラ「……」ギュ ギュ ジュィーヤ

店員「……」


店の裏

店員「どこ行ってたんだよ……」

トイレだってさ。

86: 2010/09/01(水) 07:38:32.98 ID:ylfvKM+kO
デストラーデ工業

山口(チッ、最近は猫も杓子もけいおん、けいおん……)

石川「でよ~、あずにゃんがよ~、こう……」

山口「……」

山口(なあにがあずにゃん、だ。お前高校にもなって何をニャンニャン言ってやがる)

石川「なあ、山口。お前もけいおん知ってるだろ!」

山口「……知らねえ、アバヨ」

ガラガラッ

生徒「山口って硬派だよなあ」

生徒「けいおんなんて全然興味ねえんだろうな」

87: 2010/09/01(水) 07:43:31.71 ID:ylfvKM+kO
山口「……」

山口(石川よお、同じ年下なら……やっぱり憂ちゃんだろうよ)

山口(いや、そんな事をあいつに語っても仕方ねえか。けいおんは派閥争いが只でさえ激しいんだ)

山口(そこで誰がいい、こいつの魅力はこうだ、なんて言っても火に油……)

山口(大体、憂ちゃんがいなきゃあ主人公の唯は何もできねえ……いや、現実的に考えてできるんだろうけどよお)

山口(あえて、姉には何もさせない事で憂ちゃんのしっかり具合が目立つ……古典的だが、俺はそうしっかり見せるキャラに弱い)

山口(泣かせるじゃねえか……U&I、なんてよ)

88: 2010/09/01(水) 07:46:57.57 ID:ylfvKM+kO
山口(でよ……恥ずかしい話、俺はけいおんに影響されて楽器を買ってしまった)

山口(ギター……レスポールだ。コツコツ練習してそこそこ弾けるようにはなっている)

山口(だが、最近一人で弾いていても、どこか虚しい。石川も何か影響で楽器を始めたりしてないだろうか?)

山口(きっかけはちょっと恥ずかしいかもしれねえが、話してみる価値はある……)

89: 2010/09/01(水) 07:50:39.63 ID:ylfvKM+kO
次の日

山口「なあ、石川よ。その……ちょっと、けいおんについて聞きたいんだけどよ」

石川「え? ど、どうしたんだよ山口……」

山口「……」

石川「え、えっとだな。けいおんって言うのは女子高に通うメンバーが音楽を通して……」

山口(違う、そんな事を聞きたいんじゃねえ)

山口「なんでも、楽器を使うらしいじゃねえか?」

石川「あ、ああ。メンバーが使っているのと同じ楽器が飛ぶように売れたって話だ」

山口「ほう……当然、お前も買ったんだろうな?」

90: 2010/09/01(水) 07:55:32.22 ID:ylfvKM+kO
石川「あ、ああ。でもよ……けいおんがきっかけで楽器を買ったなんて恥ずかしくてよ……」

山口「……いいんじゃねえか、別によ」

生徒「お、おいあの山口が……」

山口「いいじゃねえか。きっかけはけいおんです、好きなら堂々としていろや」

石川「や、山口……」

山口「……なあ、石川よ。その気持ちはちょっと俺にもわかるぜ。その、胸が燃えるような衝動って言うかな」

石川「わ、わかってくれるのか?」

山口「おうよ、好きならそれでいいじゃねえか。実は俺も……ちょっと買っちまったもんがあってな」

石川「や、山口もか!」

91: 2010/09/01(水) 08:00:24.01 ID:ylfvKM+kO
山口「ああ、俺のこの……」スッ

山口(石川を誘って正解だったな。あいつの反応……本物だ)

石川「じ、実は……ほら、見てくれよ山口。このタクアン!」

石川「不思議だよなあ、けいおん見てから何かタクアンが食べたくて食べたくて……なんでだろうな」

石川「いやあ、けいおんってホントにすげえよな」ポリ ポリ


山口「……」


ベンチ

山口「お前のがすげえよ……」

楽器→タクアン。

92: 2010/09/01(水) 08:06:58.74 ID:ylfvKM+kO
神山「楽器は買えなかったけど、いい勉強にはなったね」

林田「やっぱり本物は違ったよな」

フレディ「……」

ゴリラ「……」

子分「お前ら、楽器はどうするんだよ」

林田「どうするも何も、ポンと買える値段じゃないからな」

北斗「ううむ。ベースなら二本余っているが……」

前田「そうなのか?」

北斗「うむ、澪と同じではないが……一応ある」

林田「でもよお、ベース二人って多いんじゃねえの?」

神山「そうなのかい、北斗君?」

北斗「う、ううむ……」

ガラッ

マスクド「音楽の事なら……俺に任せな」

神山「え?」

94: 2010/09/01(水) 08:11:58.90 ID:ylfvKM+kO
林田「マスクド」

マスクド「さっきから聞いてれば……なんだお前ら。音楽なら一声かけてくれよ」

北斗「貴様は経験者か? 即戦力以外はお断りだ」

マスクド「フッ……」

ギュ ギュ ギュィーン

林田「マ、マイギターだ」

子分「それも、ちゃんとアンプにまで繋いでやがる」

マスクド「……この程度で驚くようじゃあ、レベルが知れるぜ」

北斗「ぐ、ぐぅ……」

林田「結構弾いてる感じだな」

マスクド「ああ、もう二十年間このギターとは一緒さ……」

前田「いや、俺たちまだ高校生なんだが……」

神山「これでギターの心配は無いね」

95: 2010/09/01(水) 08:16:51.93 ID:ylfvKM+kO
マスクド「で、さっきベースがどうとか言ってたが……そもそもお前ら、どういう曲がやりたいんだ?」

林田「曲?」

マスクド「ただ楽器弾いておしまい、じゃねえだろ。何か曲をみんなでだな……」

子分「……」

マスクド「おい、まさか何も考えてないんじゃないだろうな」

北斗「やりたい曲なら、ある」

マスクド「ほう……その曲は? やっぱりロックか? 思いきってパンクでも俺はいいぜ」

北斗「……ふわふわ時間、だ」

マスクド「……は?」

北斗「ええい、何度も言わせるな! ふわふわ時間だ!」

マスクド「いや……なんだよそれ」

96: 2010/09/01(水) 08:22:53.31 ID:ylfvKM+kO
唯『ああか~みさま、お~ねがい。ふたり~だ~け~の~♪』

マスクド「……」

唯『ふわっふわタ~ァイム♪』

北斗「どうだ、素晴らしい曲だろう」

子分「憧れますよね」

マスクド「……なあ北斗よ、これは何の冗談だ」

北斗「む?」

マスクド「俺は音楽をやるためにここにいる。それなのに、なんだこの腑抜けた曲は」

北斗「貴様、HTTを愚弄するとはいい度胸だな。そういう時は決まっていう台詞がある……『屋上』とな」

マスクド「……」

マスクド「チッ、ギターまで持ってきてバカみたいだったぜ」クルッ

北斗「ま、待て貴様。逃げるのか」

マスクド「馬鹿馬鹿しくてやってられん、じゃあな」

マスクド「お前らも、そんなガキっぽいアニメは卒業するんだな」

97: 2010/09/01(水) 08:32:16.96 ID:ylfvKM+kO
その夜

マスクド「チッ、あんなことがあったせいか眠れねえ」

マスクド「……テレビでも見るか」

ピッ

唯『けいおん!』

マスクド「うおっ! ……ちっ、脅かすなよ。ふん、深夜アニメか……まあ、他に見るのも無いしな」

唯『……U&I!』

ワー ワー

マスクド「フン、学園祭でバンドか。アニメにはありがちなパターンだな」

ジャーン ジャーン

マスクド「……最近のアニメは、イヤに楽器の描写にまで拘っているんだな」

唯『キミがいないとなにもできないよ』

唯『キミのご飯が食べたいよ』

マスクド「……」

99: 2010/09/01(水) 08:38:26.34 ID:ylfvKM+kO
唯『目を閉じれば、君の笑顔輝いている……』

マスクド「……」



次の日

マスクド「……」

北斗「む? なんだ貴様、まだ俺たちの音楽活動に文句があって……」

マスクド「北斗、俺を殴ってくれ」

北斗「む?」

マスクド「昨日、偶然けいおんを見てな……その、不覚にも感動してしまって……」

マスクド「偏見で変な事ばかりを言ってしまい、すまなかった。俺を殴ってくれ、でないと気が済まん」

北斗「……フン」クルッ

マスクド「な、なぜだ北斗。なぜ殴らない!」

北斗「けいおんを分かり合える者同士で殴って何になる。俺たちは楽器で語ればいい……違うか?」

マスクド「北斗……」

101: 2010/09/01(水) 08:47:34.76 ID:ylfvKM+kO
神山「そうだよ、これで僕たちは仲間だ」

マスクド「神山……」

林田「ギター、教えてくれよな」

マスクド「林田、もちろんだとも」

前田「経験者はありがたいな」

子分「全くだぜ」

フレディ「……」コク

ゴリラ「ンゴ」

北斗「よおーし! クロマティ高校新けいおん部……ファイトだ!」

全員「おおー!」

前田「……あれ、メカ沢は?」

神山「……あ、楽器屋に忘れてきちゃったみたい」


メカ沢(ドラム)『……』

店員(……どうすんだコレ)

さすがの店員も困惑気味。

103: 2010/09/01(水) 08:51:28.76 ID:ylfvKM+kO
客「このシールド下さい」

店員「あ、はい。ニ千円です……ありがとうございました~」

店員「ふぅ……」

メカ沢(ドラム)『……』

客「あ、すいません。このドラムなんですけど、値段が貼ってなくて……」

店員「あ、すいません。それ展示してるだけなんですよ~」

客「あ、そうなんですか、分かりました」

メカ沢(ドラム)『……』

店員「そろそろ閉店かなあ……」

店員「今日も一日、お疲れ様、と」

ガラガラ

104: 2010/09/01(水) 08:56:04.41 ID:ylfvKM+kO
店員「……って、違う!」

メカ沢(ドラム)『……』

店員「もう、なんでずっとここにいるの! ねえ、君歩いてたよね、お店入る時!」

メカ沢(ドラム)『……』

店員「あれからずっと喋らないし、でも北斗さんの連絡先も知らないし……ハァ」

店員「まあ、必要なら取りに来るよね?」

ウィィーン

店員「あ、すいません、今日はもう閉店で……」

ゴリラ「……」

店員「あ、あなたは……あの時の?」

ゴリラ「……」コクッ

店員「あっ、ドラムの方に向かって……」

105: 2010/09/01(水) 08:58:49.93 ID:ylfvKM+kO
ゴリラ「……」

店員「む、迎えに来たんですね。よかったあ」

ゴリラ「……」フル フル

店員「えっ、何か運ぶための台車ですか?」

ゴリラ「……」コクッ

店員「ま、待ってて下さい。店の裏から持ってきますんで……」タタタッ


106: 2010/09/01(水) 09:05:18.46 ID:ylfvKM+kO
店員「よかったあ、このままずっと置いておくわけにもいかないし……あのゴリラ、いいとこあるんだな」ガラガラ

店員「……やっぱりスティック食べなければいい人なんだな、うん」

店員「スティックの弁償も考えていたけど……もういいや、へへっ」ガラガラ


店員「お待たせしました! こちら台車になりま……」

メカ沢(ボロボロ)『……』

店員「……」


店の裏

店員「あいつ何しにここまで来たんだよ……」

そして誰もいなかった。

107: 2010/09/01(水) 09:11:05.98 ID:ylfvKM+kO
次の日

神山「あのおすいません。ここにメカ沢君はいるでしょうか」

店員「あ、クロマティ高校の……」

林田「ん、神山。あれじゃないか?」

メカ沢(ボロボロ)『……』

神山「これはひどい。あちこちにかじられた痕があるよ」

店員「い、いやあ。お宅のゴリラがね……昨日どうやら噛んじゃったみたいでして」

林田「ああ、またゴリラか」

神山「ま、何にしても……こうしてまた会えて嬉しいよメカ沢君」

ドラム『』

店員「あ、あの。それは普通のドラムなんですけど……」

林田「ははっ、神山。間違えるなんてらしくないぞ。な、メカ沢も笑ってやれよ」

トランペット『』

店員「いや、それも違いますし……ていうか、形も全然……」

108: 2010/09/01(水) 09:16:34.33 ID:ylfvKM+kO
神山「林田君、ふざけてないで。早くメカ沢君を連れて帰ろうよ」

ドラム『』

店員「だから、違うって言ってるでしょうが! ワザとやってるんですか!」

客「すいません~、レジお願いします」

店員「……とにかく、台車がありますから、早く連れて帰って下さいね」

神山「はい」


……

店員「ありがとうございました~」

店員「フゥ……さて、あのドラムが無くなって空いたスペースは、と」

メカ沢(ギター)「……」

店員「……」


店の裏

店員「ギターって何だよ……」

一体何があった。

115: 2010/09/01(水) 09:35:10.53 ID:ylfvKM+kO
北斗「……で、結局この新型ドラムを持ってきたわけか」

神山「はい」

子分「いや、普通に犯罪だろ……」

林田「こ、このトランペット音が出ねえんだけど……」

前田「林田は放っておくとして、メカ沢は結局どうするんだよ」

神山「彼なら大丈夫でしょう。楽器としてたくましく強く生きていけるはずです」

前田「お前ってたまにひどいよな……」

北斗「しかし、これで大体楽器の担当も決まってきたな」

マスクド「……どういう振り分けなんだ」

北斗「うむ。まず俺がボーカル兼キーボードだ」

マスクド「……まあ、まずは聞こう。他は?」

北斗「以上だ」

マスクド「は?」

116: 2010/09/01(水) 09:40:43.98 ID:ylfvKM+kO
北斗「俺の担当はもう決まっている。あとはお前たちが好きにやればいい」

マスクド「……そいつは賛成できねえな。なあ北斗よ、そもそもバンドをやるからにはよ……皆を引っ張るリーダーがいるんじゃないのか?」

北斗「リーダーだと? それはもちろんこの俺こそがリーダーに」

マスクド「音楽の知識も無いのに、リーダーシップなんてはれるのかよ?」

北斗「無論だ。俺は帝王学を学んでいるからな、この程度のリーダーなど……」

マスクド「なあ、お前はよ。リーダーなんて簡単だと思ってやしないか?」

北斗「何だと?」

マスクド「確かに、けいおんを見てりゃあリーダーなんて名前ばかり……りっちゃんもそんなにリーダーらしい働きはしてないように見えるかもしれねえ」

117: 2010/09/01(水) 09:45:32.80 ID:ylfvKM+kO
マスクド「でもよ、実際は練習の描写が省かれているだけであって……相当な練習をしないとあんな演奏はできないぜ」

北斗「む」

マスクド「もちろんアニメだからって部分はある。だがな……楽器をやるからには、練習しないと上手くはならない」

マスクド「その練習を効率よく運ぶ事、それがお前に出来るのか?」

北斗「うぬぬ、言わせておけば……」

神山「……あの。ちょっといいでしょうか」

マスクド「神山か」

神山「実は、僕もずっと疑問に感じていた事があるんですけど、いい機会なのでぶちまけたいと思います」

北斗「この際だ、何でもこい」

神山「ではですね……このグループの名前はどうするんですか?」

119: 2010/09/01(水) 09:49:40.02 ID:ylfvKM+kO
マスクド「なるほど、名前か」

神山「放課後ティータイム、のような気のきいた名前があればやる気も変わると思うんですけど」

北斗「ううむ、その辺りも話さねばならないな。よし、今日はこのまま会議だ」

マスクド「俺たちの将来のためだ。トコトン話し合おうぜ」

神山「では、まずこのグループの名前から。何か意見のある人はいますか?」

前田「なんでお前が仕切ってるんだよ……」

神山「そこ、私語は止めて下さい」

北斗「やはり、俺たちだとアピールできる名前がいいだろうな」

120: 2010/09/01(水) 10:04:01.52 ID:ylfvKM+kO
神山「そもそも、グループには色んな名前があります」

神山「ただ単語だけのグループもあれば、例えば名前の頭文字を並べていたりとか……言葉遊びになっているモノとか」

北斗「頭文字か」

神山「僕たちの頭文字は『KKMMMHFG』になりますね」

前田「偏ってるな」

神山「これは却下ですね」

北斗「ではこういうのはどうだ。『北斗と愉快な仲間達』だ」

神山「ええと、他に何か意見がある人はいませんか」

北斗「ぐぬっ、無視とはいい度胸だ」

林田「……なあ、彼女たちはよく放課後にお茶を飲んでたから『放課後ティータイム』なんだろ」

121: 2010/09/01(水) 10:09:41.26 ID:ylfvKM+kO
子分「まあ、さわちゃんが勝手に決めた名前だけどな」

北斗「それがどうしたと言うのだ?」

林田「じゃあよ、俺たちのよくやっている行動を名前にすれば分かりやすいんじゃないか?」

マスクド「なるほど、似た感じにはなるかもしれんがかえって覚えやすいかもしれん」

神山「では、意見をお願いします」

北斗「本家が『放課後』と時を示す言葉なのだから俺たちも当然……」

前田「でも最近は一日こうやって音楽の事を話しているよな」

マスクド「じゃあ……『丸一日音楽タイム』か?」

林田「それはさすがにダサくねえか?」

神山「ううむ、響きも考えるとなると難しいね」

122: 2010/09/01(水) 10:15:54.03 ID:ylfvKM+kO
ゴリラ「……」サラサラ

フレディ「……」サラサラ

神山「んっ、二人とも何を書いているんだい?」

ゴリラ・フレディ「……」スッ
神山「これは……バンドの名前? なになに……『青春クロマティー』に『クイーン』?」


マスクド「へえ、二人とも意外とセンスあるじゃねえか。俺の意見より全然マトモだぜ」

前田「どっちか一つか」

北斗「ふむ、他に意見がなければその二つのうちの……どちらかに決定だ」

……。

神山「では多数決をとります」

124: 2010/09/01(水) 10:23:38.23 ID:ylfvKM+kO
神山「名前は青春クロマティー、がいい人は挙手をお願いします」

……ススッ。

神山「ん、全員挙手かい?」

林田「ああ、なんかクロマティの汚ならしいイメージを拭ってくれるような……そんな感じがしてな」

北斗「うむ。学生の時は少しくらい恥ずかしいので丁度いい」

子分「雰囲気も放課後ティータイムに似てますしね」

前田「て言うかクイーンんてよ……」

神山「では、僕たちのグループ名は『青春クロマティー』に決まりました。意見を出してくれたのは……えっと?」

フレディ「……」スッ

神山「では、フレディに拍手をして今日はお開きとしましょう」

パチパチ パチパチ

前田「……」


ベンチ

前田「なんだろうなあ、この気持ち……」

クイーンて書いたのゴリラかよ。

158: 2010/09/01(水) 20:10:00.50 ID:ylfvKM+kO


北斗「ふむ、結局あのまま解散という形になってしまったな」

子分「この後どうします?」

北斗「そうだな……楽器屋は前も行ったし、帰るか」

子分「あ、ちょっとベースとか練習したりしないんですか?」

北斗「たわけ。もう部活の時間は終わったんだ、練習の必要などあるまい」

子分(うわあ、出たよこういう性格)

北斗「まあ、何もなければこのまま帰って……」

スッ

佐田「……よう、久しぶりだな」

北斗「な……」

子分「あっ……」

北斗「お、お前は……」

161: 2010/09/01(水) 20:16:24.76 ID:ylfvKM+kO
北斗「……すまん、誰だっけ?」

佐田「……おいおい、俺を忘れてるのか?」

北斗「おい子分、お前はこいつを知ってるか」

子分「確か、肉屋の……」

北斗「肉、だと……」

佐田「そして北斗軍団のナンバー2……佐田だ」

子分「て、てめえ。今さら何しに来やがった!」

佐田「なあに、偶然さ。ちょっと挨拶でもと思ってな」

子分「ふざけんな! お前がノコノコと北斗さんの前に出て来られると思ってるのか!」

北斗(……こいつ、もう肉の事は気にしていないようだな)

佐田「おいおい、そんなにいきり立つなよ」

子分「うるせえ! さっさとここから去りやがれ!」

佐田「……ん、お前が背負っているの、もしかしてギターか?」

163: 2010/09/01(水) 20:21:17.45 ID:ylfvKM+kO
子分「それがどうしたってんだ!」

佐田「……いや、じつは最近俺も楽器を始めてな。ちょっと気になっただけさ」

北斗「ほう……」

佐田「恥ずかしい話、漫画がきっかけでよ……まあ、身内でちょくちょく練習とかもしてるわけよ」

北斗「佐田よ、それはもしやけいおんという漫画では無いのか?」

佐田「……さすがだな。当たりだ」

北斗「ふっ、当然だ」

北斗(佐田もけいおんに影響されて楽器を始めていたのか……案外、この話題で俺たちの溝は埋まるのかもしれん)

北斗「佐田よ。今時間はあるか? よければそこのファミレスでけいおん談義をだな……」

子分「北斗さん!」

北斗「むっ?」

164: 2010/09/01(水) 20:28:33.61 ID:ylfvKM+kO
子分「こんな奴とけいおんを語る事なんてないですよ! 身内で練習してるって言ってもどうせ雑談だけに決まってます!」

佐田「いやあ、今度小さなライブハウスで歌うんだよ、よければ北斗も暇潰しに来てくれよ」

北斗(むう、敵対している俺でさえ誘うか……やはり佐田は大した奴だ)

子分「へっ、氏んでもお前とは語り合う口は持たねえからな!」

北斗(それに比べてこいつは……なんと小さい)

北斗(……まあ、肉に釣られる事が無くなっただけマシか)

166: 2010/09/01(水) 20:35:18.54 ID:ylfvKM+kO
佐田「あ、そうだ。そのライブでちょっとだけ臨時収入が入るんだ……っても本当に雀の涙程度だけどな」

北斗「ほう、金が取れるなら大したモノじゃないか」

佐田「ま、はっきり言って使い道もねえんだ。どうだい、これから飯でもいかねえか? 勿論俺が奢るぜ」

北斗「佐田……見上げた奴だ」

佐田「ついでに、けいおんや音楽の話でもしながら、よ」

168: 2010/09/01(水) 20:35:58.08 ID:ylfvKM+kO
子分「だーかーら! 俺たちは行かねえってんだろうが! 何がけいおんを語ろうだ、ふざけんな!」

佐田「……落ち着けよ。バンドのメンバーがやっている焼肉屋があるんだ。どうだ、そこで話さないか?」

子分「えっ」


焼肉屋

子分「あ、すいません、カルビ五人前追加で」

店員「はっはっはっ、じゃんじゃん食いねえ食いねえ」

北斗「……」


トイレ

北斗「結局肉じゃねえか……」

肉>>>>けいおん

170: 2010/09/01(水) 20:40:54.91 ID:ylfvKM+kO
焼肉屋

北斗「……」ジュウッ

子分「……」ヒョイッ パクッ

佐田「どうだ、うめえかよ」

子分「ああ、最高だぜ!」ヒョイッ パクッ

北斗「……」ジュウッ

佐田「そいつはよかった。ま、音楽っていう共通の趣味があるんだ……しばらくは休戦といくかい、北斗さんよ」

北斗「う、うむ」ジュウッ

子分「いやあ、けいおん様々ですね、北斗さん」パクッ

北斗(だから、俺が焼いてるそばから食ってるんじゃねえ!)

佐田「……ん、どうした北斗。あまり箸が進んでないようだが」

171: 2010/09/01(水) 20:56:19.53 ID:ylfvKM+kO
北斗「い、いや。今は食うよりも語りたい気分なんだ」ジュウッ

佐田「ああ、音楽……もとい、けいおんの話か」

子分「あ、北斗さん。そこのタン塩焦げそうですよ」

北斗(……もうこいつは無視だ)

北斗「で、佐田よ。お前は何の楽器を担当しているのだ」

佐田「俺は、ベースとボーカルさ」

北斗「ほう、澪と同じポジションか。では、好きなキャラも澪なんだな」

佐田「……いや、そいつはちょっと違うんだ」

北斗「む?」

子分「……あれ、ミノなんて頼んでないですよ。北斗さん、ちょっと店員に文句言ってきて下さいよ」

北斗(いいからお前は焦げたタン塩でも食っていろ)


173: 2010/09/01(水) 21:03:03.77 ID:ylfvKM+kO
佐田「確かに、澪は可愛いだが……俺は和ちゃんやさわちゃん先生の方に心を惹かれる」

北斗「ほう……」

佐田「けっしてよ、人気があるキャラが苦手とかじゃねえんだ。ただ、俺は……」

子分「ああ~、確かに競争率は低い方がいいもんな」

北斗(ええい、無視だ無視)


北斗「佐田よ……お前の気持ちはよくわかるぞ」

佐田「なにっ?」

北斗「好きになってしまったものは仕方ないだろう。それを気にやんでいても杞憂というモノだ」

佐田「北斗……」

北斗「生徒会、先生、クラスメイト、モブキャラ、結構ではないか。胸を張って好きと言える……それだけの魅力がけいおんキャラにはあるのだ」

北斗「主役たち意外にも、な」

佐田「北斗……」

174: 2010/09/01(水) 21:12:04.14 ID:ylfvKM+kO
佐田「……」ガタッ

北斗「む、どうした、トイレか?」

佐田「いや、今から練習だ……お前のお陰で、胸の奥のモヤモヤが吹き飛んだみたいだぜ」

北斗「佐田……」

佐田「ライブ、よかったら見に来てくれよな」

北斗「うむ、貴様のデビュー姿を見せてもらうぞ」

佐田「フッ……」


子分「……なんだか、あいつ変わりましたね」

北斗「そうみたいだな。これもけいおんの成せる技か」

子分「……俺たちも、少し練習したくなりましたね」

175: 2010/09/01(水) 21:12:55.58 ID:ylfvKM+kO
北斗「奇遇だな、俺もちょうどそう思っていたところだ」

子分「へへっ、じゃあ……」

北斗「うむ。行くぞ、俺たちのけいおん部へ……」

子分「あ、あとホルモンだけ食べたいんで。すいませ~ん、網交換してくださ~い」

北斗「……」


トイレ

北斗「あいつメンバーから外そうかな……」

ホルモン>>>>練習

178: 2010/09/01(水) 21:20:46.05 ID:ylfvKM+kO
マニエル高校

生徒「……でよお、そいつスイカと天ぷら食っちまってマジで腹痛起こしてんだよ」

生徒「ぎゃははははっ」

藤本(……チッ、相変わらずつまんねえ会話してやがる)

生徒「なあ、藤本もおかしいと思うだろ~。スイカと天ぷらなんてよお」

藤本「……お前ら、そんな会話していて楽しいのか」

生徒「え?」

藤本「スイカと天ぷら食ったら腹が痛くなった? その話を俺にしてなんの得があるってんだ、あ?」

生徒「い、いや、面白いかなって……」

藤本「面白けりゃあなんでもいいのかよ。そんな生産性の無い……ガキみてえな会話していて恥ずかしくねえのか」

生徒「う、うう……」

生徒「相変わらず藤本は考え方が硬派だな……」

付き人「……」

182: 2010/09/01(水) 21:26:47.34 ID:ylfvKM+kO
藤本宅

藤本「ふう……やっと学校が終わったな」

付き人「……」

藤本「そして、今の俺の手元には、今巷で大人気と言われている、けいおんの漫画があるわけだ」

藤本「サトリンさんを始め色んな人がネットでオススメしていたのに釣られて…ついに俺もけいおんデビューだ」

付き人「……」

藤本「見たところ、この女の子達を中心に話が進むようだな。以前の俺なら表紙で毛嫌いをしていたが……」

藤本「プラズマ戦記を読み続けている俺には、大抵の『萌え』要素のクリアは可能だろう」

付き人「……」

藤本「では、早速……」

ペラッ。

185: 2010/09/01(水) 21:31:11.05 ID:ylfvKM+kO
藤本「ふむ、桜ヶ丘高校……女子高か。なるほど、余計な男キャラを出さない舞台設定だな」

藤本「ほう……これが唯か。少し幼いがそこが可愛らしいのだろう」

唯『うんたん♪ うんたん♪』

藤本「……なるほど、これがうんたんの元ネタか」

藤本「チャットで、俺以外のユーザーがうんたん、と言い出した時はさすがに焦ったが……知ってしまえば何てことはない」

藤本「……今度俺も使ってみるかな」

付き人「……」

187: 2010/09/01(水) 21:35:06.03 ID:ylfvKM+kO
藤本「……」ペラッ

藤本「ふむ、人見知りで大人しい澪、元気っ娘な律、お嬢様の紬と……唯以外にも個性的な子が揃っているんだな」

藤本「それぞれ根強いファンがいるのにも納得ができるな」


付き人「……」

藤本「まあ、メインキャラはとりあえずこんな所か。とりあえず、この一巻しか持っていないからな……後はじっくりと話を読むとしよう」

ペラッ

ペラッ

188: 2010/09/01(水) 21:39:47.24 ID:ylfvKM+kO
藤本「ふぅ……ライトノベルと違い、漫画なのでスラスラと読めてしまった」

藤本「……」

藤本「とりあえず、この一巻だけでは掲示板のみんなが言っていた『感動』には巡り会えなかったわけだが」

藤本「しかし手元には二巻以降が無い……」

付き人「……」

藤本「ん?」


……。

藤本「よし、これで全巻だな」

付き人「……」←買ってきた

191: 2010/09/01(水) 21:44:17.69 ID:ylfvKM+kO
藤本「ほう、新キャラはあずにゃんと言うのか。更に幼い雰囲気で……ツインテール娘か」

藤本「……そうか。今までメンバーが全員集まっていなかったから本編が始まってなかったんだな」

藤本「これからは、しっかり後輩……あずにゃんにもギターを教えて本格的に音楽活動をしていくんだろうな」

藤本「全く、一巻は前座みたいなものか。いや、確かに音楽も多少はやっていたが……如何せん四コマ漫画では分かりにくい」

藤本「……まあ、全てはこれからか」ペラッ

付き人「……」

193: 2010/09/01(水) 21:50:32.33 ID:ylfvKM+kO
藤本「ふぅ。これで全部か」

藤本「確かに、音楽っぽい事もしていたが」

藤本「基本的にこいつらお茶飲んでダベっているだけじゃねえか……」

藤本「いやいや……プラズマ戦記に耐えた俺でも……」

藤本「……まあ、確かにギャグや日常の雰囲気がいいんだ、と言ってしまえばそれまでだが」

藤本「感動……ううむ……」

付き人「……」

藤本「……こんな時の掲示板か」

195: 2010/09/01(水) 22:00:51.92 ID:ylfvKM+kO
イレブンPM『今晩は! 皆さんにオススメしてもらった『けいおん』を一気読みしてテンションの高いイレブンPMです(笑)』

イレブンPM『いや~、女の子可愛かったですね。でも、プラズマ戦記などの冒険物と違ってちょっとマッタリしすぎてるのが……(汗) 皆さんが、感動したシーンってドコですか? ぜひぜひ教えて下さいませ☆』


藤本「……とりあえずこんな所だろう。批判だけでなく、質問とキャラを誉める。これなら反応が荒れる事もあるまい」

藤本「……ん。早速レスか、さすがけいおん、食い付きも早い」

澪タソモエ『冒険物? 何言っちゃってんの? けいおんはあの部室に女の子がいるだけで充分なんですよ?』

澪タソモエ『それをマッタリしすぎだとか、ただ女の子が可愛いとか……本当に全部読んだんですか? 澪タソがいるだけで感動シーンでしょうが!』

藤本「……」

196: 2010/09/01(水) 22:08:27.19 ID:ylfvKM+kO
藤本「むう……この変なHN(ハンドルネーム)の奴に始まり誹謗中傷の嵐が……な、なぜだ!」


イレブンPM『だって、中身が無さすぎますよ! ただ話してお茶を飲んで……たまに音楽をするだけなんて……少なくとも感動はできません!』

『中身(笑) 感動できません(キリッ)』

藤本「くっ……こいつらあ!」

管理人『お待ちください』

藤本「む……とうとう管理人さんまで出てきてしまった。ヤバい、掲示板を荒らしたと見なされたらアクセス禁止になってしまうかも……」

藤本「……とりあえず謝ろう」

イレブンPM『すいません、僕がけいおんに対して変な事を言ったがタメに……』


管理人『……いえ、いいんですよ。作品の感想は個人の自由ですから。正直私は全く怒ってはいませんよ』

藤本「……よかった」

198: 2010/09/01(水) 22:13:15.59 ID:ylfvKM+kO
管理人『ですが……』

藤本「む、何だ」

管理人『確かにけいおんは、プラズマ戦記に比べてしまえば冒険もしないで、ただ女の子がほのぼの話しているだけの普通の漫画です』

管理人『ですが、けいおんにはけいおんの良さがあります。プラズマ戦記を読み終わった時とは別の……暖かい気持ちがイレブンPMさんの胸の中にあるのではないのでしょうか?』

イレブンPM『……確かに、僕の気持ちは安心というか、とてもポカポカした気持ちになっているみたいです』

管理人『ええ、例え中身が無いと周りに言われても……イレブンPMさんの胸の安らぎは本物……それでいいじゃありませんか?』

藤本「管理人さん……」

199: 2010/09/01(水) 22:16:36.91 ID:ylfvKM+kO
イレブンPM『今回は僕が子供でした。中身が無いなどと言わず、純粋にけいおんを楽しんでいればよかったのですね』

管理人『イレブンPMさんは自分でそれに気付けた、それだけでもう立派なHTTの一員だと思いますよ』

藤本「俺が……一員」

イレブンPM『はい、ありがとうございます。また掲示板が落ち着いたら顔を出します……今度は、マッタリと中身のないトークでもしましょう(笑)』

管理人『はい、楽しみにしております。では、また……ノシ』


藤本「今回はけいおんに色々教えられたな……」

付き人「……」

201: 2010/09/01(水) 22:28:15.35 ID:ylfvKM+kO
次の日

藤本「ふっ、あんな事があったのに、学校に来れば清々しい気分だ。これもけいおんのお陰か」

藤本「程よい、中身の無さも必要なんだな」

付き人「……」

生徒「あ、いたいた。おーい藤本」

藤本「んっ、こんな朝からどうしたんだ?」

生徒「いやあ、昨日藤本に言われた事反省してよ……バイト先の店長に、ちょっと中身のある話をしてみたんだよ」

藤本「」ピクッ

生徒「そしたら、時給が上がってよ……いやあ、藤本のお陰だよ、ありがとな」

藤本「……ほう」

生徒「中身の無い話をするやつはバカだってつくづく感じたよ……」

藤本「……」ピクッ

付き人「……」

202: 2010/09/01(水) 22:30:48.41 ID:ylfvKM+kO
生徒「あ、そうだ、上がった給料で漫画買ったんだけど間違えて二冊買っちまったんだ……お礼として藤本にやるよ」

藤本「ほう……漫画か、いいな。どんな作品なんだ?」

生徒「けいおんって言う、スゲー感動する話なんだってよ。中身の無いそのへんの本とは訳が違うって噂の……」

藤本「ペラッペラだよ馬鹿野郎!」バキッ

生徒「お、朝から藤本に殴られてるぞ」

生徒「この光景も久しぶりだなあ」

付き人「……」

楽しむ心はどうした、藤本。

207: 2010/09/01(水) 22:46:54.23 ID:ylfvKM+kO
バンチョーちゃん「……」

神山「んっ、こんな所でどうしたんだい」

バンチョーちゃん「……!」

神山「……ああ、君もけいおんを見たんだね」

バンチョーちゃん「……」コクッ

神山「僕たちでバンドをやってるんだけど、よかったらバンチョーちゃんも一緒に……」

バンチョーちゃん「……!」パァァァ

208: 2010/09/01(水) 22:52:13.33 ID:ylfvKM+kO
ガラガラ

林田「おう神山……と、バンチョーちゃんも一緒じゃねえか」

神山「実は彼がけいおん部に入りたいって言うんだ」

バンチョーちゃん「……」コクッ コクッ

北斗「うむ、よかろう」

前田「嫌にあっさりと決めるんだな……」

北斗「丁度子分が一人クビになった所だ。それに、このけいおん部は来るもの拒まず、だ」

林田「えっ、子分がクビ?」

北斗「ああ、あいつはダメだ。楽器に対する情熱が感じられんからな」

前田「そうは言っても……いきなりは、なあ?」

神山「じゃあ、何の心配も無くバンチョーちゃんが入部できるね」

バンチョー「……」オロオロ

北斗「はははっ、よし、では今日も活動開始だ」

209: 2010/09/01(水) 22:57:09.10 ID:ylfvKM+kO
バンチョーちゃん「……」ゴニョゴニョ

神山「えっ、何をすればわからないって?」

北斗「ふむ……貴様は初日だからな。大人しく見学でもしてるがよい」

林田「……待てよ北斗、バンチョーちゃんにピッタリの仕事があるぜ」

北斗「む?」

林田「ほら、アニメでもやってた……ビラ配りだ。俺たちけいおん部もそろそろ知名度が欲しい所だからな」

前田「いや、知名度も何も練習すらまともに……」

北斗「うむ、新入部員でもくれば儲けものだ。よし、では早速ビラ配りだ」

バンチョーちゃん「……」コクッ

212: 2010/09/01(水) 23:02:47.81 ID:ylfvKM+kO
北斗「おい、バンチョーちゃんとやら。今日のノルマはビラ配り五十枚だ。全部渡すまで帰ってくるなよ」ドンッ

バンチョーちゃん「……!」

北斗「どうした、この程度の仕事が出来ないのか、ん?」

バンチョーちゃん「……」スッ

北斗「よし、行ってこい」

バンチョーちゃん「……」コクッ ダダダッ

神山「……ちょっと厳しいんじゃないかい?」

北斗「いや、アイツの目は本物だ。あの程度で音はあげまい」

前田「いや、目っていうかよお……」

神山「僕たちも負けずに練習しないとね」

林田「おう」

214: 2010/09/01(水) 23:07:32.19 ID:ylfvKM+kO
バンチョーちゃん「……!」

子分「……ん? そのチラシ……そうか、お前新しくけいおん部に入ったのか」

バンチョーちゃん「……」コクッ

子分「そうか……クビになった俺の分まで頑張ってくれや」

バンチョーちゃん「……」ガシッ

子分「なんだよ、引き留めるなよ。北斗さんにクビって言われたんだ……もう俺には何もできねえよ」

バンチョーちゃん「……」スッ

子分「こ、これは……新入部員届け? 俺に……?」

バンチョーちゃん「……」コクッ

子分「……考えとくよ。じゃあな、バンチョーちゃん」

バンチョーちゃん「……」

215: 2010/09/01(水) 23:12:13.89 ID:ylfvKM+kO
>>213
NO


生徒「おっ、バンチョーちゃん。ん、ビラ配り? へえ、けいおん部ねえ」

バンチョーちゃん「……」ピラッ

生徒「あー、最近暇だから冗談で入ってみるかな」

バンチョーちゃん「……」ピラッ

生徒「いやあ、バンチョーちゃんが可愛いからつい受け取っちまうぜ」

バンチョーちゃん「……」ピラッ

生徒「入部希望者は明日の放課後に北斗の所に行けばいいのか」

バンチョーちゃん「……」ピラッ

バンチョーちゃん「……」ピラッ

……。

216: 2010/09/01(水) 23:18:53.55 ID:ylfvKM+kO
次の日

神山「……昨日はバンチョーちゃん、戻ってこなかったね」

北斗「俺の見込み違いだったか……」

林田「まあ、いいじゃねえか。少数精鋭で今日も頑張ろうぜ」

フレディ「……」

ゴリラ「ンゴ」

北斗「うむ……では今日も練習をするとしよう」

ガラガラッ

生徒「おい、北斗がいねーぞ」ギュウギュウ

生徒「あ、足踏むなバカ野郎」ギュウギュウ

生徒「お、押すな、落ちる落ちる」ギュウギュウ

生徒「あー、あちー、あちー」ギュウギュウ

北斗「……」

ガラガラッ ピシャッ

217: 2010/09/01(水) 23:21:41.19 ID:ylfvKM+kO
北斗「おい、なんだ今の学生服の塊は!」

神山「新入部員じゃないの? ここに集合のはずだから」

北斗「……いや、教室にすし詰めはおかしいだろ。バカかあいつら」

バンチョーちゃん「……」スッ

神山「あっ、バンチョーちゃん。え、ビラを配ったらほぼみんな入部希望者になっちゃった?」

バンチョーちゃん「……」コクッ

北斗「ふん……下僕が増えたのはいい事だ。今からリーダーの俺が挨拶をしてやる」

前田「本当に全員入部させるのかよ?」

北斗「当然だ、来る者は拒まずだからな」

北斗「よし、場所を体育館に移すぞ。そこで新生けいおん部の集会だ!」

219: 2010/09/01(水) 23:27:39.13 ID:ylfvKM+kO
体育館

北斗「……」

神山「どうしたのさ北斗君」

北斗「いや、いざ集めてみたはいいが……今からけいおん部の集会をやるという空気では無いという事に気付いてな」

神山「不良が四十人集まっているだけだからね」

生徒「早くはじめろよぉ~!」

生徒「そうだそうだ~!」

北斗「くっ、うるさい蝿めが……」

神山「……ねえ北斗君。ハッキリ言って、これだけバカが集まってたら部活どころではないと思うんだけど」

北斗「……うむ、最もだ」

神山「僕に考えがあります。やっぱり彼らをテストして必要な人材だけを残しましょう」

北斗「テスト? しかしこれだけ人数がいたら時間が……」

神山「まあ、任せておいて下さい」

224: 2010/09/01(水) 23:37:49.70 ID:ylfvKM+kO
神山「はい、注目して下さい。今から皆さんに一つだけ質問をします。その質問に対して答えが『はい』だったら体育館の左。『いいえ』だったら右側に寄って下さい」

神山「ちなみにこれは全員参加です。旧けいおん部の皆さんも協力お願いします」

神山「ちなみに、質問の答えによっては入部を見送らせて頂く可能性がありますので、悪しからず」

生徒「なんでもいいぜ!」

生徒「早くしろ~!」

神山「では……行きます」

神山『ズバリ、あなたは何か楽器が弾けますか! です。弾けない人は体育館の右に寄って下さい!』

……。

……。

225: 2010/09/01(水) 23:39:43.53 ID:ylfvKM+kO


ゴリラ「ンゴ」

マスクド「……」

北斗「……」



残り全員


神山「……はい、では左にいる人は今回はご縁が無かったという事で。ありがとうございました」


ベンチ

北斗「……」

マスクド「……」

ゴリラ「……」

二人と一匹の青春クロマティー。

228: 2010/09/01(水) 23:47:29.42 ID:ylfvKM+kO
次の日

北斗「おい神山。昨日のあれはなんだ!」

神山「えっ、何がだい?」

北斗「……何がと聞ける貴様の根性が気に入らん」

神山「……」

神山「ねえ北斗君。君は一応青春クロマティーのリーダーだったよね」

北斗「うむ、当たり前だ」

神山「僕たちがバンドを結成してから何週間も経ったけど、結局君からは何も教わらなかったね」

北斗「き、貴様が昨日の騒ぎを起こさなければだな!」

神山「本当なら、旧けいおん部のメンバーはみんな同じ場所に立っているべきだった……違うかい?」

北斗「ぐっ……」

230: 2010/09/01(水) 23:51:09.61 ID:ylfvKM+kO
神山「もちろん、リーダーだからといって君だけの責任じゃあない。でも、みんなで音を楽しむ事は出来なかった……それだけじゃないのかな」

北斗「音を……楽しむ、だと?」

神山「……だから、北斗君の子分だって離れていったんじゃないのかな。北斗君が音を楽しむ事が出来ないのを見て、ね」

北斗「……」

神山「じゃあ、僕は帰るから。また明日」

スタスタ

北斗「あ、ま、待て……!」

……。

北斗「……くっ」

231: 2010/09/01(水) 23:54:37.36 ID:ylfvKM+kO
教室

ゴリラ「……」

北斗「……むっ、今日はゴリラだけか。マスクドはどうした」

ゴリラ「……」スッ

北斗「これは……退部届けだと!」

ゴリラ「……」

北斗「……」

北斗「今日は、もう解散にしよう。お前も家に帰るがよい」

ゴリラ「……」

北斗「行け、この北斗に同情など無用だ」

ゴリラ「……」スタ スタ

233: 2010/09/02(木) 00:00:26.43 ID:65jYV4EFO
楽器屋

店員「あ、いらっしゃい。お久しぶりですね北斗さん」

北斗「うむ……しかし、俺がここに来るのも今日で最後になるだろうな」

店員「えっ、何かあったんですか?」

北斗「うむ、実はな……」

……。

店員「そうですか、部が壊滅状態に……」

北斗「全て自分で招いた結果だ。後悔などはしていない」

店員「いやあ、楽しみだったのになあ。北斗さんたちの演奏聞くの」

北斗「仲間がいなければ……けいおん部は終わりだ」

店員「……」

北斗「というわけで、このキーボードとベース二本を引き取ってくれ。金などいらん……近くにあると辛いんだ」

店員「北斗さん……」

北斗「では、さらばだ店員よ。世話になったな」

234: 2010/09/02(木) 00:08:14.56 ID:65jYV4EFO
北斗「ふふっ、これで本当に手ぶらか。この方が体が軽くて済む」

北斗「……」

北斗「……この俺がバンドを組むなど、バカな夢だったのかもしれんな」

店員「そんな事ありませんよ」

北斗「むっ、いつの間に……。なんだ、まだ何か用か?」

店員「これ……僕には受け取れません。返しにきました」

北斗「……いらん。ベースもキーボードも、もう必要ない」

店員「キーボードもベースも、かなり練習していた跡がありまして……お店では受け取れませんでしたよ」

北斗「……下らん」

店員「みんなの前で発表とかはしたんですか?」

北斗「俺は帝王だ。半端な状態で発表などはできん」

店員「……」

235: 2010/09/02(木) 00:15:28.82 ID:65jYV4EFO
店員「とにかく、これは返しますよ。一度みんなに発表を見てもらえば……あるいは」

北斗「俺一人では何もできん。もういいんだ、終わった事だ」

店員「……」

ダダダダダッ

北斗「む……」

子分「北斗さーん! 俺を新入部員として入れてくださーい」

北斗「お、お前は……!」

子分「あれから、必氏でギター練習したんですよ! これで俺をけいおん部に……」

店員「北斗さん」

北斗「……ふふっ、店員よ。ベースとキーボードを貸せ!」

店員「はいっ。あとこれを……」

北斗「このギターケースは?」
店員「お守りみたいな物です。中身も入ってますから、注意して下さいね」

北斗「……礼を言う」

236: 2010/09/02(木) 00:21:39.09 ID:65jYV4EFO
次の日

北斗「……」

子分「……」

林田「どうした北斗。まだギターなんて持ってるのか?」

前田「けいおん部は無くなったんだからよ……早くそんな物……」

神山「林田君、前田君……」

林田「……わかったよ、そう睨むなって」

北斗「……みんなに言いたい事は色々ある。だが、俺はけっしてこの場で謝罪はせん!」

神山「……」

北斗「今の俺に出来るのは、音を楽しむ事だけだ! それでしか語る口は持たん!」

子分「北斗さん!」

北斗「うむ」ジィィーッ

北斗「頼むぞメカ沢」

メカ沢(ギター)「ヘヘッ、盛り上がってきやがったぜ!」

北斗「行くぞ! これが俺たち、青春クロマティーの『ふわふわ時間だ』」

240: 2010/09/02(木) 00:27:57.65 ID:65jYV4EFO
……。

北斗「ハァ……ハァ……」

メカ沢(ギター)「いいソウルだったぜ……」

神山「……」スッ

北斗「か、神山……」

神山「……」パチ パチパチ パチパチ

林田「カッコよかったぞ!」パチパチ

ゴリラ「ンゴ、ンゴ」パチパチ

フレディ「……」パチパチ

マスクド「……やるじゃねえか、北斗」

神山「リーダーらしい、素晴らしい演奏だったよ北斗君」

北斗「神山……」

神山「それで、実は僕たちも青春クロマティーに再入部したいんだけれども」

241: 2010/09/02(木) 00:30:00.28 ID:65jYV4EFO
林田「今度はちゃんとギター教えてくれよ!」

バンチョーちゃん「……」ウルウル

前田「頼むぞ北斗」

北斗「ああ……ああ」

北斗「よし、じゃあ……青春クロマティー……ファイトー!」
全員「おおー!」

243: 2010/09/02(木) 00:35:31.35 ID:65jYV4EFO
前略 お袋様。

今日も僕たちは元気です。

放課後いつものように集まっては、いつもと何も変わらない雑談をする日々なのですが。

これもアリかなと思っています。

では、今度のライブの練習があるのでこの辺で失礼します。


P.S 実はライブなんて嘘です。

P.SのP.S 今度プータンがギター片手にメジャーデビューをするそうです。


では、ごきげんよう。


おわり

244: 2010/09/02(木) 00:37:16.46 ID:RP7RvBP90
すばらしかった。久々に面白いSSを読んだわ、乙

245: 2010/09/02(木) 00:39:20.85 ID:XimfbOCy0
おもしろかった
乙!

246: 2010/09/02(木) 00:47:11.99 ID:65jYV4EFO
ギャグ路線でずっとやりたかったけど、眠気でダウン。

読んでくれた、保守の人ありがとう

263: 2010/09/02(木) 13:09:36.52 ID:65jYV4EFO


野中「……という漫画を描いたんだけどどうかな?」

編集「……いや、ダメに決まってるじゃないですか」

野中「どうして?」

編集「どうしても何も、他誌のキャラクター出ちゃってるじゃないですか」

野中「名前だけだよ、俺描いてないし」

編集「いや、八頭身のけいおんキャラなんて見たくないですよ」

野中「いや、だから俺描かないってば」

編集「いや、だからそういう問題じゃなくてですね……」

272: 2010/09/02(木) 20:18:20.11 ID:65jYV4EFO
野中「……」

野中「じゃあよ、一体どうすればこれは本誌に載るんだよ」

編集「とりあえず、けいおんキャラの名前がある時点でダメですよ。許可って言っても、他誌ですからやはり……」

野中「……」

野中「け○おん、とか」

編集「いや、○使ってる時点で本物名指ししている状態ですから……」

野中「……」

野中「漫画ってめんどくせーな」

編集「けいおんキャラにこだわらなければ大丈夫ですってば」

野中「いや、だから八頭身のけいおんキャラなんて描かないよ」

編集「ああっ、もうっ!」


話進まねえ。

275: 2010/09/02(木) 21:19:43.36 ID:65jYV4EFO
藤本「……」

生徒「でよお、澪ちゃんが最高なんだって!」

生徒「いやあ、そこはやっぱり律だろー」

藤本(いつの間にかうちのクラスでもけいおんがブームになってしまっている。それもこれもアイツが漫画なんぞを買って広めるから……)

アイツ「いや、唯に決まってるだろ! 憂も最高だし、マジ半端ねえよ!」

生徒「いやあ、お前がけいおん薦めてくれたお陰だよ」

アイツ「はははっ、俺敏感には流行なんだよ」

藤本(くっ……なにが敏感だ。もうアニメは二期までやっているのに、つい最近けいおんを知ったばかりじゃねえか!)ピリピリ

生徒「なあ、藤本もけいおん読んでみろよ」

藤本「……!」

ドガッ!

生徒「い、いてえ!」

アイツ「バカだな、藤本はけいおんが嫌いなんだよ。それに、藤本がけいおん読むわけないだろ~」

276: 2010/09/02(木) 21:25:54.36 ID:65jYV4EFO
藤本(違う……俺はけいおんが嫌いじゃない。むしろ大好きなくらいだ)

藤本(既に、アニメ一期は保存用と鑑賞用で購入済み。最近漫画でハマった貴様らとはワケが違うんだ)

アイツ「ほら、こっちで唯の素晴らしさについて語ろうぜ!」

生徒「おっ、けいおん談義か、いいねー」

藤本(……出来る事なら、俺も交ざりたい、が)

アイツ「だから唯ちゃんがよ~」

生徒「あずにゃん最高に決まってんだろ!」

藤本(……今さらキャラについてこいつらと語り合う気にはなれん)

藤本(だが、こいつらをニワカと笑ってはいけない。あいつらにはあいつらの楽しみ方がある)

藤本(俺は俺で、一人けいおんの魅力を噛み締めるだけだ)

278: 2010/09/02(木) 21:47:13.45 ID:65jYV4EFO
藤本(しかし、アニメで見るとやはりまた違った魅力があるものだ。最近は楽器を購入する事を考えているくらいだ)

生徒「はははっ」

アイツ「……なあ、ちょっと相談があるんだけどよ」

生徒「ん、どうしたよ?」

アイツ「せっかくけいおんにハマったんだからよ、俺たちもバンド組まねえか?」

藤本「……!」

生徒「お、いいねえ!」

生徒「じゃあ俺、あずにゃんのマスタングやるぜ!」

アイツ「じゃあ俺レスポールゥ!」

藤本(……バカ野郎、マスタングじゃなくてムスタングだ。それにアイツがレスポールだと!)


藤本(俺の欲しい楽器と被っている……)

280: 2010/09/02(木) 21:55:09.48 ID:65jYV4EFO
アイツ「よおし! 早速今日の放課後、楽器を見に行こうぜ!」

藤本(な、なに! もう楽器を買いに……くっ、このままでは俺が楽器を手に入れたとしても、二番煎じみたいになってしまう)

藤本(……それだけは嫌だ!)

生徒「あ、悪い。今日は俺都合が」

生徒「俺もちょっと用事があって、悪いな」

アイツ「……じゃあ、今日は俺もいいや。明後日みんなで行こうぜ!」

全員「おう!」

藤本(……チャンス)

付き人「……」

282: 2010/09/02(木) 22:10:02.65 ID:65jYV4EFO
楽器屋

藤本「……というわけで楽器を見に来たわけだ」

付き人「……」

藤本「なるほど、実物を見るとやはり胸から込み上げてくる物があるな」

藤本「さて、ギターのコーナーは、と」

付き人「……」

……。

唯『唯のギターだよっ♪』

藤本「フッ、等身大ポップか、なるほど。さすがブームだけあるってもんだ」

藤本「しかし、これで探す手間が省けたというものだ。さて、気になる値段だが……」

『30万円』

藤本「うむ。けいおんに書いてあった通りだ」

付き人「……」

藤本「……よく考えたら、アイツにこれをポンと買えるだけの金があるとは考えられないな」

283: 2010/09/02(木) 22:17:30.47 ID:65jYV4EFO
藤本「フッ。けいおんで言えば、どこかのお嬢様がこのギターを値引きして数万円にしてくれたりするんだろうが」

藤本「まあ、俺はそんな妄想はせずに地道に貯めた金でこいつを買う事ができる」

藤本「……まあ、本当は最新のパソコンを買うための資金だったんだが」

藤本「しかし、今日は買うつもりが無かったので持ち合わせが無い。次の休みでいいか……」

藤本「どうせアイツらもこんなに高いギターはすぐには買うまい」

藤本「よし、決めた。今日はパンフレットだけ貰って帰ろう」

付き人「……」

285: 2010/09/02(木) 22:23:05.77 ID:65jYV4EFO
二日後

アイツ「よし、今日から早速練習するぜ!」

ピカピカ

藤本「な……」

藤本(あ、あれは……間違いない。楽器屋にあった、唯と同じレスポール! アイツ、買いやがったのか)

アイツ「うおお、なんか興奮するぜ! よおし、早速コードを覚えて……」

生徒「すげえイキイキしてんなあ」

生徒「ああ、周りの俺たちまで楽しくなってきたぜ!」

藤本(……)

286: 2010/09/02(木) 22:26:51.50 ID:65jYV4EFO
スッ

アイツ「うっ、藤本……」

生徒「ふ、藤本が……あんな険しい顔をしてるぞ」

生徒「アイツ殺されるんじゃねえか?」

藤本(……)

ポンッ

アイツ「え……」

藤本「いいギターじゃねえか。お前をちょっと見直したぜ」

アイツ「藤本……」

藤本「30万もするギターをポンと買っちまうなんてな。お前のレスポールに対する情熱には頭も下がるぜ」

アイツ「藤本……お前、楽器が好きなのか」

藤本「……」

スッ

アイツ「ま、待てよ。それなら一緒にバンドしようぜ!」

287: 2010/09/02(木) 22:30:47.76 ID:65jYV4EFO
藤本「……俺が?」

アイツ「ああ、このギターの値段を知っているくらいだ。興味あるんだろ?」

藤本「……」

アイツ「な、藤本!」

藤本「俺もレスポールを弾くぞ?」

アイツ「いいじゃねえか。とにかくみんなで集まって楽器をやればいいんだ! 被りなんて気にするなよ」

藤本「……」

藤本「わかった」

アイツ「藤本……」

ガシッ

生徒「藤本が握手か」

生徒「あいつも楽器が好きだったなんて意外だな」

288: 2010/09/02(木) 22:40:28.67 ID:65jYV4EFO
藤本「じゃあ、次の日曜日に早速俺もレスポールを買ってくる」

アイツ「ああ! その前によ……これ、ちょっと弾いてみないか?」

藤本「それはお前のレスポールだろ。俺が触るわけにはいかない」

アイツ「遠慮すんなって、ほら!」グイッ

藤本「……」

藤本「これがレスポールか……なるほど、確かな重量感。素晴らしい……」

アイツ「だろ!」

藤本「……しかし、よく30万も金があったな」ギュイーン


藤本「しかし、お前30万もよく金があったな」

アイツ「……ああ、実はそのギターそんなに高くなかったんだよ」

藤本「なに?」

289: 2010/09/02(木) 22:44:40.30 ID:65jYV4EFO
アイツ「いやあ、昨日みんなで楽器を見てたらよ、いかにもお嬢様、って子が俺たちに声掛けてきてよ」

藤本「……」ピクッ

アイツ「俺がレスポール見てたら、その子が店員に何か話してくれたみたいでよ。このギター5万円で買えたんだよ」

藤本「……」

アイツ「ほら、こいつのムスタングも5万円だぜ」

生徒「本当にラッキーだったよな」ギュイーン

アイツ「はははっ、じゃあ、藤本は30万のレスポールで来週から一緒に練習を……」

藤本「そんな漫画みたいな話あるわけねえだろ!!」バキッ

生徒「……いや、あったんだってば」

生徒「わざわざ30万なんて言うから」

藤本、それレスポール。

291: 2010/09/02(木) 22:47:47.31 ID:65jYV4EFO
藤本宅

藤本「……と言うわけで、今俺の手元には30万円があるわけだ。これでレスポールは買える」

藤本「だが、アイツの言葉が気になる……楽器を見ていたらお嬢様が値引きしてくれた、だあ?」

付き人「……」

藤本「馬鹿馬鹿しい、そんな事本当にあるわけが……」

藤本「いや、だがアイツは確かに、お嬢様と言った。もしかしたらあの楽器屋には本当にムギちゃんみたいなお嬢様が来るのか?」

藤本「……」

藤本「よし」

294: 2010/09/02(木) 22:56:47.40 ID:65jYV4EFO
店員「あ、いらっしゃ……」

藤本「おい店員。ちょっと聞くが」

店員「はい?」

藤本「先日、この店でレスポールとムスタングを買った学生がいただろう」

店員「……あ、はい。お知り合いですか?」

藤本「いや、そいつらはどうでもいい。そいつらに楽器を値引きしてくれたお嬢様について聞きたい」

店員「?」

藤本「唯と同じレスポールを値引きしたん人間がいるんだろう?」

店員「い、いえ……あの、そのレスポールならまだ売れてませんよ?」

藤本「なにい?」

店員「あの学生さんが買ったのは確かにレスポールですけど……ほら、唯のやつはあそこに」

藤本「……」

店員「あの学生さんは、アレと同じやつでもっと安いのは無いか、と聞かれただけなので」

295: 2010/09/02(木) 23:04:27.08 ID:65jYV4EFO
店員「レスポールは似た色合いの物が多いですからね。パッと見ただけでは、素人さんにはちょっと見分けられないでしょうね」

藤本「……では、声をかけてくれたお嬢様と言うのは?」

店員「さあ……確かに、その日は女子高生も来てましたけど、最近は珍しい事じゃないので」

藤本「ほう?」

店員「やはりけいおんの影響ですかね。最近はこの店のスタジオを借りる女子高生も増えてるんですよ」

女子高生「キャッキャッ」

藤本「……確かに、いるな」

店員「何かちょっとしたきっかけで雑談した後に、カウンターの僕のところまで来たとか?」

藤本「……なるほど、漫画の見すぎで勘違いしたパターンか」

店員「多分……その学生さんもギターに詳しくなかったみたいで、唯と同じギターだ、と興奮してましたからね」

296: 2010/09/02(木) 23:13:54.55 ID:65jYV4EFO
店員「それに、そんなお嬢様がいたら本当にムギちゃんじゃないですか」

藤本「うむ、俺もそれが気になってな。こうして聞きにきた……そしてあのレスポールを買いに来たんだ」

店員「あ、そうなんですか!」

藤本「また何かあったら呼ぶ。ちょっと待っててくれ」

……。

藤本「……」

『30万』

藤本「ふふっ、ついに唯と同じレスポールを買えるのか」

藤本「しかし、まだ趣味にもなっていないギターに30万もかけるなんて……俺もすっかりHTTの一員だな」

付き人「……」

藤本「しかし、本当に俺にもムギちゃんみたいな子が声をかけてくれたり……ははっ、そんなわけないよな」

ポンッ

藤本「……ん? 誰だ」クルッ

ゴリラ「……」

藤本「……」

299: 2010/09/02(木) 23:19:21.25 ID:65jYV4EFO
店員「あ、ゴリラさん。来てたんですね」

ゴリラ「……」コクッ

店員「……あ、頼まれていた楽器揃ってますよ、はい」

ゴッチャリ

藤本「な……あんなにたくさんのギターやアンプにマイクを……。あのゴリラ、まさか……」

ゴリラ「……」スッ

店員「……はい、ちょうど40万。ありがとうございます」

藤本「なんて奴だ、あれだけの大金をポンと……あいつは富豪か?」

ゴリラ「……」ツイッ

藤本「お、俺の方を指差して……これはまさか」

店員「え、え……あ、はい。わかりました」

ダダダダッ

藤本「む、店員がこっちに来る、これはもしや本当に……」

301: 2010/09/02(木) 23:25:11.15 ID:65jYV4EFO
店員「あ、あのすいません」

藤本「どうした。まさか……あの富豪ゴリラが本当にこのレスポールを値引きしてくれるのか?」

店員「いえ、唯ちゃん等身大ポップと写真が撮りたいみたいで……」

藤本「……」

ゴリラ「ンゴ」

店員「あ、はい、じゃあ撮りますよ。藤本さん、もう少し真ん中寄って下さい」

藤本「……」スッ

店員「はい、チーズ」カシャッ

店員「じゃあ、写真できたら学校に届けますね」

ゴリラ「ンゴ」

藤本「……」


ベンチ

藤本「なんで俺まで一緒なんだ……」

いい笑顔。

303: 2010/09/02(木) 23:32:51.53 ID:65jYV4EFO
神山「あ、お帰りゴリラ」

ゴリラ「ンゴ」

北斗「うむ、買い出しご苦労だったな」

林田「これでやっと俺たちも音楽ができるぜ!」

子分「とりあえず人数分はあるはずだぜ」

北斗「うむ。では、まずフレディから好きな楽器を選ぶがよい」

前田「フレディがバイトした金でこの楽器を買ったんだから、当然だな」

林田「全額出して貰えるなんて、さすがフレディだぜ」

フレディ「……」スッ

北斗「む……マイクとは。ボーカル希望か」

フレディ「……」コクッ

305: 2010/09/02(木) 23:40:18.79 ID:65jYV4EFO
林田「フレディは歌がうまいもんな」

神山「キーボードとかもできそうなのにね。どうだい、フレディ」スッ

フレディ「……」フル フル

神山「やっぱりキーボードやギターは弾かないんだ」

北斗「うむ、では次は……」

……。

北斗「……よし、これでみんな楽器は持ったな」

神山「はい」

林田「おう」

メカ沢「俺はドラムだしな」

ゴリラ「ンゴ」

バンチョーちゃん「……」コクッ

前田「あれ……なあ、俺の楽器が無いんだけどよ」

北斗「なに?」

306: 2010/09/02(木) 23:46:01.58 ID:65jYV4EFO
林田「バカだなあ、まだこんなに余ってるじゃねえか。ほらよ、ちょっと重いけどよ」ゴトッ

北斗「林田、それはアンプだ。楽器じゃない」

前田「おい、どうすんだよ。人数分楽器があるんじゃねえのかよ」

北斗「……」

林田「もうフレディも金無いって言ってるぜ」

フレディ「……」

北斗「仕方ない、貴様はこのカスタネットで我慢してるがよい」

前田「いや、俺そもそもドラムだったんじゃあ……」

北斗「よおし、楽器が決まった所で練習開始だ!」

前田以外「おー!」

前田「いや、あの……」

308: 2010/09/02(木) 23:54:01.82 ID:65jYV4EFO
ゴリラ「ンゴ」スッ

前田「え……」

神山「ゴリが君にドラムを譲ってくれるそうだよ」

前田「い、いいのかゴリ?」

ゴリラ「ンゴ」

スッ

前田「お、おいゴリ! どこへ行く!」

北斗「……きっと新しい楽器を調達に行ったのだろう。奴の事だ、すぐに戻ってくるはずだ」

前田「ゴリ……」

北斗「さあ、俺たちは俺たちで練習だ! 青春クロマティー、ファイトだ!」

全員「おおー!」

309: 2010/09/02(木) 23:54:37.88 ID:65jYV4EFO
数日後

唯『唯のギターだよっ♪』

ゴリラ「ンゴ」

北斗「……」

前田「……」


ファミレス

北斗「何持ってきてんだよ……」

前田「楽器ですら無い……」

唯(等身大ポップ)来たる。

311: 2010/09/03(金) 00:03:20.00 ID:1Vc/1SsQO
唯『唯のギターだよっ♪』

神山「さて、今日も練習頑張ろうか」

前田「……」

林田「なあ、なんで唯ちゃんがここにいるんだよ」

北斗「ゴリラが例の店から貰ってきたらしい」


ゴリラ「ンゴ」

林田「しかもこんな写真まで……ていうか、隣のこいつ誰だよ」

神山「林田君、唯ちゃんがいるならそれだけでいいじゃないか。気合いも入るってものだよ」

林田「うう~ん……」

唯『唯のギターだよっ♪』

林田「……」

林田「なあ、唯ちゃんで思い出したんだけどよ。俺たちお茶会をやってないんじゃねえか」

北斗「お茶会だと?」

312: 2010/09/03(金) 00:07:36.49 ID:1Vc/1SsQO
林田「ああ、放課後に集まって練習はいいんだが……けいおんみたいに菓子を食った事は一度も無いだろ」

前田「……それはあまり練習には関係ないだろ」

神山「いや、そうとも言い切れないよ」スッ

前田「神山?」

神山「練習前にお菓子を食べて雑談をする。それだけで部全体の雰囲気も良くなると思うんだ」

林田「だろ? けいおんのみんなだってただダラダラしていたわけじゃないんだしよ」

前田「いや、あれは本当のダラダラだと思うが……」

北斗「ふむ、神山の言うことにも一理あるか」

北斗「よし、今日から青春クロマティーのメニューにもお茶会タイムを盛り込む事にしよう」

林田「えっ、本当かよ北斗」

314: 2010/09/03(金) 00:14:04.90 ID:1Vc/1SsQO
北斗「よし、早速ティーセットの用意だ!」

全員「……」

子分「ま、待ってくださいよ。この教室にそんなセットあるわけないでしょう」

北斗「む、では早速買ってこい。別に高級品で無くてよい、雰囲気さえ出せればな」

林田「いや、だから金は楽器買ってスッカラカンなんだってば」

北斗「ぬうう……では青春クロマティーの放課後ティータイムどうするのだ!」

神山「とりあえずは諦めるしかありませんね」


バンチョーちゃん「……」グッ

315: 2010/09/03(金) 00:19:12.85 ID:1Vc/1SsQO
工事現場

監督「え、日雇いのバイト? どうしてもすぐ金が必要だって?」

バンチョーちゃん「……」コクッ

監督「でもウチはキツいよ? その辺より日給はいいかもしれないけどさ」

バンチョーちゃん「……」メラメラ

監督「……やる気はあるみたいだな。来な、最初からガンガン働いてもらうぜ」

バンチョーちゃん「……!」

……。

監督「バカ野郎! そんなスピードじゃあ日が暮れちまうぞ!」

バンチョーちゃん「……」ヨロヨロ

監督「ああっ、貸せ! もうここはいいから、向こうを手伝ってろ!」

バンチョーちゃん「……」ショボン

316: 2010/09/03(金) 00:23:13.05 ID:1Vc/1SsQO
バンチョーちゃん「……」

神山『ありがとう、君がティーセットを買ってくれたんだね』

北斗『はははっ、これで青春クロマティーの放課後も安定するというものだ』

林田『ありがとうよ、バンチョーちゃん』

前田『よし、これ飲んだらしっかり練習しようぜ!』

全員『おー!』

モク モク

バンチョーちゃん「……!」グッ


監督「おい、バンチョー!」

バンチョーちゃん「……」ヨタヨタ

監督「バンチョー!」

バンチョー「……」フラフラ

監督「ほら、これが最後だ、頑張れ」

バンチョー「……」ググッ

317: 2010/09/03(金) 00:29:32.92 ID:1Vc/1SsQO
監督「よーし、今日はあがりだ! お疲れさん」

バンチョーちゃん「……」ハァ ハァ

監督「……ほら、今日の分だ。よく頑張ったな」

バンチョーちゃん「……!」

スッ

監督「なに? ちょっと多いだって?」

バンチョー「……」コクッ

監督「頑張っていたからな、オマケってやつだ。……怒鳴って悪かったな、帰ったらゆっくり休めよ」

バンチョー「……!」

監督「この金、そのけいおん部とやらのために使ってやりな」

バンチョー「……」ペコッ

ダダダダッ。

319: 2010/09/03(金) 00:34:40.99 ID:1Vc/1SsQO
クロマティ高校

バンチョー「……」ワクワク

ダダダダッ

ガラガラッ

北斗「さあ、ジャンジャン飲むがいい」

メカ沢(ポット)「お茶なら任せておけ」

林田「あちちっ、でもお茶ってうめえな」

フレディ「……」ズズズッ

メカ沢β(湯飲み)「メカラッタ」

バンチョーちゃん「……」



ベンチ

バンチョーちゃん「……」

負けるなバンチョーちゃん。

321: 2010/09/03(金) 00:40:29.83 ID:1Vc/1SsQO
北斗「……む、もうこんな時間か。ではそろそろ帰るか」

バンチョーちゃん「……」ズズズッ←結局混ざってる

林田「だなあ、じゃあみんな、またな」

前田「ま、待てよ。ただお茶を飲んで終わりってわけにもいかないだろ」

神山「前田君、もう下校時間だよ。学生は帰らないと」

前田「だ、だってよ……」

北斗「今日はこうして親睦が深められただけで充分ではないか。明日から本気を出せばよい」

前田「そんなもんかなあ……」

北斗「では、解散だ」

前田「ん~……」

ゴリラ「……」

323: 2010/09/03(金) 00:45:57.93 ID:1Vc/1SsQO
前田「……結局みんな帰っちまった」

前田「こんなんで本当に楽器弾けるのかな~。まだギターもドラムも一度も鳴らしてないんだけどな」

前田「……あずにゃんもこんな気持ちだったのかな」

前田「いや、向こうはまだ練習していただけマシか。こっちは本当にお茶を飲んで終わったからな」

前田「ハァ……」

ゴリラ「……」ポン

前田「ん……ゴリ。まだ残っていたのか」

ゴリラ「……」スッ

前田「ギターなんか背負って……ま、まさか居残り練習か!」

ゴリラ「……」

325: 2010/09/03(金) 00:53:48.83 ID:1Vc/1SsQO
前田「そうだよな、けいおん部になったからには練習しないとな……」

ゴリラ「……」

前田「よしわかった、やろうぜゴリ! じゃあ……俺は何をどうすればいい。何でも協力するぜ」

ゴリラ「……」スッ

……。

前田「……はい、チーズ」カシャッ

ゴリラ「……」ギュィーイ



ベンチ

前田「ギター持って撮りたいとか……しかも同じポーズ……」

ゴリラ、お気に入り。

326: 2010/09/03(金) 01:01:14.96 ID:1Vc/1SsQO
次の日

北斗「では、今日もまずお茶会から練習を始めるとしようか」

バンチョーちゃん「……」シュタッ

北斗「む、どうした。何か意見でもあるのかか?」

バンチョーちゃん「……」スッ

林田「こ、これはティーセット? まさかバンチョーちゃんが……」

バンチョーちゃん「……」ポリポリ

北斗「むう、お前の気持ちしかと受け取った。このティーセットは我がけいおん部で大切に使わせてもらうぞ」

バンチョーちゃん「……」コクッ

神山「じゃあ、早速これでお茶を入れよう」

前田「なあ北斗……練習はいいのか?」

北斗「お茶会の後でも遅くはあるまい。やる気を出してから練習した方が能率もいいと言う物だ」

前田「はぁ……」

マスクド「……いや、ちょっと待てや北斗」

327: 2010/09/03(金) 01:10:33.00 ID:1Vc/1SsQO
北斗「なんだ、マスクド。いたのか」

マスクド「最近練習をしてないみたいなんでな、ちょっと邪魔するぜ」

林田「マスクド……」

前田「これは、また喧嘩になるパターンか……?」

北斗「なんだ、この活動に文句があるのか?」

マスクド「……確かに、以前の俺ならギターを叩きつけて帰っていただろう。だが、今は違う」

北斗「む?」

マスクド「俺は一応楽器経験者だからな。今日はみんなにちょっとギターの基本を教えようと思ってな」

マスクド「と言っても、本格的にギターを弾くわけじゃない。みんなはお茶でも飲みながら、見ていてくれればいい」

北斗「ふむ。講習みたいなものか、それはいい考えだ」

前田(大丈夫かな……)

329: 2010/09/03(金) 01:15:43.38 ID:1Vc/1SsQO
マスクド「いいか、まずはこのギター。このままでも弾きたい所だが……」ギューイ

マスクド「まずはメンテナンスも兼ねて音合わせ、正しい音に調整するんだ」

神山「あの、僕たちにはそんな技術も経験もないんだけれども」

マスクド「心配するな、音を合わせるために……このチューナーを使う」スッ

神山「……」

マスクド「これを付けて、音階を調整してだな……」ビィィーン

神山「あの……」

マスクド「ん、まだ何か質問か?」

神山「それはチューナーじゃなくてメカ沢βなんだけれど」

メカ沢β(チューナー)「メ、メカラッ……」

マスクド「ああっ!」

前田「……不安だ」

330: 2010/09/03(金) 01:20:51.15 ID:1Vc/1SsQO
マスクド「……音を合わせたら、次はいよいよ弾き始めるぞ」

マスクド「さて、ギター単体でも音は出るが、このままの音では少し寂しい」

マスクド「ここで、このギターをアンプに繋ぐ事にする」

林田「アンプ?」

マスクド「ああ、シールド……まあ、ケーブルだな。これをギターと……アンプに繋いで、と」カチッ カチッ

331: 2010/09/03(金) 01:25:01.09 ID:1Vc/1SsQO
マスクド「さ、これで迫力あるサウンドがアンプから」ピィィーン

マスクド「あ、あれ?」ピ口リィー

マスクド「おかしいなあ、全然音が響かねえぞ。このアンプ壊れてんじゃねえのか!」カチッ カチッ

神山「あ、あの……」

マスクド「ああ、ちょっと待ってくれ。ここをしっかり接触させれば多分……」

神山「さっきからケーブル挿しているそれ、アンプじゃなくてメカ沢君なんだけども」

メカ沢(アンプ)「ピ口リィー ビィィーン」

マスクド「ああっ!」

北斗「……いや、そもそも挿すとこあるのかよ」

前田「やっぱりダメだ……」


青春クロマティー、未だに楽器に触らず。

333: 2010/09/03(金) 01:50:15.20 ID:1Vc/1SsQO
のなー「もうネタがない」

編集「はい」


おわり

334: 2010/09/03(金) 01:50:50.55 ID:Mi1Q1aMa0

372: 2010/09/04(土) 03:08:44.07 ID:IqhLp+7oO
林田「合宿に行きたい」

神山「え?」

林田「いや、部活には夏の強化合宿が付き物だと思ってな。けいおん部で何か合宿ができればいいな、と」

北斗「ふうむ……確かに」

前田「でもよ、そのためにはちゃんと計画を立てないと意義のある合宿にはならねえんじゃねえか?」

神山「それならみんなで考えればいいじゃないか。僕たちは青春クロマティーなんだから」

ゴリラ「ンゴ」

フレディ「……」

北斗「よし、では今日の放課後は合宿について話し合う事にしよう」

375: 2010/09/04(土) 03:17:55.69 ID:IqhLp+7oO
神山「えー、では何か意見のある人」

子分「やっぱりけいおんみたく、別荘を借りて練習したいと思うんだけどよ」

前田「別荘か……」

林田「待て待て。とりあえず山に行くか海に行くかを決めようぜ?」

子分「いや、なんで山か海なんだよ」

林田「夏の合宿やキャンプと言えばどっちかだろ。まあ、今行き先が決まれば随分場所を絞れると思うんだがな」

北斗「うむ。俺たちには別荘を提供してくれる金持ちのお嬢様などいないからな」

神山「……」

神山「あの、金持ちで思い出したんですけど」

北斗「む?」

神山「確か北斗君の家ってお金持ちだった気がするんだけれども」

377: 2010/09/04(土) 03:25:39.52 ID:IqhLp+7oO
林田「……そういや、何度か北斗の家には行ったが結構豪華だったな。執事までいたし」

神山「それくらいの家なら、別荘の一つや二つは持っているんじゃないかい?」

北斗「確かに、俺は貴様らの家庭よりは数倍、いや数十倍の資産があるだろう」

北斗「もちろん別荘もいくつか持ってはいるが……音楽の練習には使えない」

林田「ん? どうしてだよ」

北斗「周りに他の別荘が密集しているのだ。この時期なら、避暑地にある別荘は大体埋まる」

北斗「いくら開放的とは言え、日中の騒音は許してくれまい」

林田「そんなに人がいるのかよ?」

北斗「まあ、音楽をやる別荘で無いと言うのは確かだな」

神山「……」

神山「あの、ちょっといいですか?」

378: 2010/09/04(土) 03:31:12.75 ID:IqhLp+7oO
北斗「む?」

神山「確かに音楽も大事ですけど、僕たちは何のために合宿に行くんでしょうか」

前田「いや、だから楽器の練習のためだろ」

神山「いえ、僕はここにいるみんな……青春クロマティーで同じ時間を過ごす事に価値があると思うんです」

林田「……」

神山「楽器が使えない? それでも、音楽について友と語る事はできます。むしろ練習なんて、放課後いつでも学校でできるじゃないですか」

北斗「……」

神山「大事なのは、やはりみんなで思い出を残せる事にあると思うんですが」

北斗「……ちょっと待っていろ」ピッ

北斗『あ、うむ。北斗だが……あの別荘を……うむ』

ピッ

379: 2010/09/04(土) 03:32:20.95 ID:IqhLp+7oO
>>376
イガちゃん以外がキャラゴッチャになってて書けない。
今手元に本ないから、書くとしたら明日

380: 2010/09/04(土) 03:38:38.39 ID:IqhLp+7oO
神山「北斗君?」

北斗「……合宿の場所が決まった。俺の別荘を使ってくれて構わない」

林田「お前……」

北斗「うむ。思い出を残せれば……確かに、楽器だけにこだわるのは良くないかもしれんな」

前田「……」

北斗「けいおん、で音楽をやっているシーンが少ないのは、こういう意味も込めての事かもしれんな」

林田「へへっ、お前らがいればいいってか。ちょっと恥ずかしいセリフだけど……それが青春クロマティーだもんな」

北斗「そういう事だ。では、合宿の日には遅刻するな……以上で今日は解散だ!」

全員「おおー!」


ベンチ

前田「こだわらないでどうすんだよ……」

旅行って計画立ててる時が一番楽しいよね。

382: 2010/09/04(土) 03:43:12.13 ID:IqhLp+7oO
バス停

北斗「よし、ここからは歩きだ」

林田「ふう、楽器を背負いながら移動するのは辛いな」

神山「一応けいおん部だからね。とりあえずは持っていないと」

子分「でも森林に囲まれているから空気は最高だぜ!」

ゴリラ「ンゴ! ンゴ」

神山「ははっ、ゴリラも合宿だからはしゃいでるんだな」ポンッ

フレディ「……」

北斗「別荘までは、ここから20分も歩けば着くはずだ」

前田「……なあ、別荘までの道のりは?」

北斗「ん。ここを真っ直ぐいけばいいだけだが?」

前田「そう、か」

384: 2010/09/04(土) 03:51:03.91 ID:IqhLp+7oO
ザッ ザッ

前田(いつぞやの時は森で迷子になって遭難した事もあったが……)

前田(さすがに一本道ならいくら俺たちでも迷う事はないだろう)

前田(とりあえず、着いたらゆっくりしてえ……どうせこいつらは練習する気なんか無いだろうからな)

……。

20分後。

林田「なあ、なんか道がデコボコで進みづらいぞ。木だって多くてよく前が見えねえし」

北斗「……ここは一体どこだ」

前田(……)

前田(普通に迷っている……)

神山「この辺りに別荘があるのかい?」

北斗「……いや、こんな場所は知らん」

林田「ああ? また俺たち遭難したのかよ!」

北斗「ええい、騒ぐな。所詮は別荘地周辺の森だ。来た道を戻ればそれらしい家や道が見えてくるはずだ!」

前田(……)

386: 2010/09/04(土) 03:56:51.43 ID:IqhLp+7oO
更に20分後。

北斗「……迷った」

林田「やっぱりかよ! 畜生、また俺たち遭難しちまったじゃねえか!」

神山「林田君、落ち着いて」ポンッ

林田「神山……」

神山「確かに僕たちは一度遭難している。だけど言い返せば経験がある……」

林田「……そうだな、確かに。俺たちのサバイバルテクがあれば、今だって大丈夫なはずだよな」

前田(いや、遭難の経験値なんて欲しくねえだろ……)

北斗「うむ、みんなで協力すればこんな森など怖くあるまい」

ゴリラ「ンゴ」

フレディ「……」

子分「でも北斗さん。もう大分森は暗くなってきてますけど……」

387: 2010/09/04(土) 04:05:23.07 ID:IqhLp+7oO
北斗「むう、こう足場が悪くては歩き回っても危険か。よし、今日はここで野宿だ」

林田「まあ、野宿でも、一晩くらいなら余裕だよな」

北斗「うむ。では完全に暗くなる前に火をおこす準備と寝床の確保、そして最後に持ち物の確認だ」

全員「おー!」

……。

北斗「さて、火はおこした。寝床も作った。最後に全員の持ち物を確認していく」

林田「まあ、サバイバルでは常識だよな」

北斗「うむ、ではまず前田からだ」

前田「お、俺? 俺はこのリュックに……チョコとビスケットだけだ。正直、荷物はほとんどねえよ」

北斗「うむ。食料があるのはありがたい。では次に神山だ」

神山「僕は、このギターとアンプです」ドンッ

北斗「……で?」

神山「以上です」

388: 2010/09/04(土) 04:10:40.35 ID:IqhLp+7oO
北斗「他の荷物はどうした?」

神山「僕はけいおん部です。これがあれば他には何もいりません」

北斗「言ってる事は立派だが……まあいい、次は林田だ」

林田「俺はこのアンプだ」ドンッ

北斗「……」

北斗「他は?」

林田「これだけだ」

北斗「なっ、貴様……!」

林田「俺も神山と同じ考えだ。この楽器がありゃあ、俺は他に何もいらねえ……これは音楽の合宿なんだからよ」

子分「だから、アンプは楽器じゃねえって言ってんだろ!」

北斗「そういう貴様はけいおんのブルーレイディスクしか持ってきていないではないか……」

林田「肝心の北斗はどうなんだよ?」

北斗「俺の荷物は宅急便で別荘に送ってあるので、何も無い」

神山「残るはフレディとゴリラか……」

389: 2010/09/04(土) 04:15:06.88 ID:IqhLp+7oO
フレディ「……」スッ

神山「ん、これは……タクアンかい?」

フレディ「……」コクッ

北斗「よし、これで食料が増えたな」

前田「いや、タクアンのみってのもおかしいだろ……」

北斗「では最後にゴリラだ。貴様は何か食料を……」

ゴリラ「……」ドッチャリ

林田「リュック一杯のバナナと……おい、缶詰めやお菓子もあるぜ」

ゴリラ「ンゴ」

前田「これだけあれば三日は何とかなりそうだぜ」

フレディ「……」コクッ

391: 2010/09/04(土) 04:19:10.81 ID:IqhLp+7oO
北斗「でかしたぞゴリ。この件が落ち着いたら貴様は我が青春クロマティーの副部長にしてやろう」

ゴリラ「ンゴ」

神山「おめでとうゴリ」パチパチ

林田「おめでとう」パチパチ

前田「もう、ツッコム気も起きん……」

392: 2010/09/04(土) 04:23:08.68 ID:IqhLp+7oO
北斗「よし! ではこの食料を大事に……」

ゴリラ「……」ツン ツン

神山「えっ、まだ荷物があるのかい?」

ゴリラ「……」コクッ

北斗「さすがは副部長になっただけの男だ。そこまで準備がいいとは……やるな」

ゴリラ「……」ガサゴソ

ゴリラ「ンゴ」スイッ

唯『唯のギターだよっ♪』

北斗 神山 林田「……」


森の外れ

北斗「等身大ポップはいらねえだろ……」

林田「どうやって持ってきたんだアレ……」

唯(等身大ポップ)樹海デビュー!

394: 2010/09/04(土) 04:30:53.97 ID:IqhLp+7oO
北斗「……まあ、とにかく。これでやる事は終わったわけだ」

林田「状況は最悪だがよ、こうして火を囲みながらの野宿もなんだか……ちょっといいかもな」

神山「そうだね。なんだか青春って感じがするよね」

子分「へへっ、少し恥ずかしいけどな」

フレディ「……」コクッ

ゴリラ「ンゴ」

唯『唯のギターだよっ♪』

北斗「……ではついでた。今夜はここでミーティング、けいおん談義といかないか」

子分「さんせい~! じゃあテーマは唯の可愛さについて話しましょうよ!」

北斗「いや、記念すべき第一回目のテーマには紬こそが相応しいだろう」

前田「いや、やっぱりリーダーの律がだな……」

神山「もっと広いテーマで話すのがいいんじゃないですか?」

北斗「む、どういう事だ神山」

397: 2010/09/04(土) 04:39:06.12 ID:IqhLp+7oO
神山「例えばそう、憂ちゃんがあんなに姉を甘やかしている理由とかを議論するのはどうでしょう」

林田「議論っつてもよ。そんな事話してなんか意味あるのかよ?」

子分「それによ、そういう情報は本編で小出しに語られるからいいんだろ!」

神山「……与えられた情報だけで満足なんですか?」

子分「うっ……」

神山「なにも僕は、そこまで本格的に討論をするつもりはありません」

神山「ただ、あんな事があったからかな、とか……唯と憂の生い立ちをちょっと想像して話に華を咲かせたいだけです」

全員「……」

林田「……確かに、そういうのも面白いのかもしれねえな」

子分「まあ、語るだけならタダだしな」

北斗「うむ、では今夜のテーマは主に、唯と憂の性格について話し合いをしよう」

400: 2010/09/04(土) 05:17:31.26 ID:IqhLp+7oO
子分「はいはい! 唯ちゃんと憂ちゃんはもう昔からずっと仲が良くて、そのまま現在に至ってると思うんだ!」

神山「昔から?」

子分「だってよ、あんなに仲がいいんだ。ありゃあ筋金入りだろ」

神山「つまり、君は彼女たちは一切喧嘩もせず、ここまで育ったと言いたいのかい?」

子分「いや、そこまでは言わないけどよ……でもあれだけ仲が良いんだ。よほど順風満帆な姉妹関係を……」

林田「ふっ、人間ってのはそんなに甘いもんじゃねえ。幼い頃に紆余曲折したからこそ、今の彼女たちがあるんだと思うぜ?」

北斗「俺もそう思う」

子分「紆余曲折?」

林田「例えば、唯が憂ちゃんのオヤツを横取りしたり、お姉ちゃん風を吹かせてオカズをたくさんもらったり……機会はいくらでもあったはずだ」

神山「小さい頃は、やはり姉としての力が強いんだろうね」

401: 2010/09/04(土) 05:22:46.66 ID:IqhLp+7oO
林田「そう、最初は憂ちゃんは姉のワガママにそうとう腹をたてたはずだ。しかし、唯だって年齢的にはそう変わらない、いきなり出来たお姉ちゃんにはなれやしない」

北斗「うむ。いまだになれてはいないしな」

林田「ある日、憂ちゃんは気付くんだ。私がしっかりしないとダメなんだ……ってな」

前田「……」

林田「つまり、姉は結果的に生きる上での厳しさを教えてくれた、ってわけよ」

神山「なるほど、いつまでも甘えてばかりはいられない、と感じたんだろうね」

子分「でもよ~、だったら性格があまり変わっていないであろう、唯ちゃんの方はどうなんだよ」

林田「少なくとも、高校生の間はあのままだろうな。受験で少しは変わるかもしれないが……まだ妹に頼る部分も大きいはずだ」

403: 2010/09/04(土) 05:30:23.27 ID:IqhLp+7oO
前田「……まあ、キャラの過去なんてどうでもいいよな。所詮漫画なんだしよ」

神山「前田君、それは違うと思うよ。いくらほのぼの漫画だからって、キャラがいる以上は多少の設定……もとい歴史は必要だと思うんだ」

神山「例えば。君はりっちゃんがカチューシャをしたキッカケを知ってるかい」

前田「……澪が笑顔になってくれたから……ハッ」

神山「そういう事だよ。それによって律と澪の絆が時間の流れとアイテムを使う事によって表現されている」

前田「そうか……確かに、キャラである以上いらない設定なんていうのは無いのかもしれねえな」

404: 2010/09/04(土) 05:36:32.37 ID:IqhLp+7oO
前田「そうだな、昔色々あって今そこにいる。その昔を全部知りたいのは、確かにファンの心理かもしれねえ」

前田「たとえそれが漫画であっても……いや、漫画だからこそ、そういう情報は大事なんだろうな。改めてそれがわかった気がするよ」

神山「前田君……」

北斗「うむ。それがわかっただけでも今夜の収穫だ。これで青春クロマティーの絆はまた深まったわけだ」

前田「ああ、そんな気がするよ」

406: 2010/09/04(土) 05:40:55.73 ID:IqhLp+7oO
子分「昔に何があっても、今が可愛けりゃそれでいいんだ!」

林田「おうよ、そこにいる理由や生い立ちなんて関係ねえ!」

北斗「本日の議論の結果は『そこにいる理由など関係ない』だや」

林田「へへっ、まとまったな」

子分「唯ちゃんもちょっと笑顔になっている気がするぜ」

唯『唯のギターだよっ♪』

北斗「よし、では本日は就寝だ!」

全員「おおー!」

フレディ「……」

ゴリラ「……」


森の外れ

フレディ「……」

ゴリラ「……」

過去は関係無いってさ!

409: 2010/09/04(土) 05:47:21.57 ID:IqhLp+7oO
就寝

……。

ガサガサ……ワオーン!

北斗「む、今の遠吠えは……まさか野犬か?」

子分「け、結構近くから聞こえましたよ!」

林田「こういう時のために、さっきまでのたき火の火種は残してあるぜ」

北斗「よし、小さな枝と風で火を大きくしろ。野犬が近付けないようにするんだ」

林田「……あれ? おかしいな、あまり火が大きくならないぞ」

神山「少し枝が湿っているみたいだね。もう少し燃えやすい物から、くべてみてくれないかい?」

林田「わ、わかった。この辺の葉っぱならどうだ!」

ワオーン!

410: 2010/09/04(土) 05:52:08.58 ID:IqhLp+7oO
北斗「おい、さっきより声が近いぞ! 早く火を強くしろ!」

林田「んな事言ってもよ……なかなか明るくならねえから作業もしづらくて……」

ガサガサ ガサガサ

子分「な、なんか動いてるぜ!」

神山「林田君!」

林田「くっ……よし、これならどうだっ!」カサッ シュッ

ボウッ!

北斗「おおっ、一気に炎が広がったぞ」

前田「真っ昼間みてえに明るくなったな」

メラメラ

411: 2010/09/04(土) 05:56:55.14 ID:IqhLp+7oO
シーン。

子分「物音もしなくなったし、これで一安心だな!」

メラメラ

神山「ふぅ、それにしてもよく燃えてるね。何を入れたんだい?」

林田「夢中で手を伸ばしてよ、適当にその辺の物を入れたんだが……いやあ、よく燃えてくれてるな」

神山「そうなんだ」

北斗「しかし、よくやったな、林田よ」

林田「へへっ、照れるぜ」

413: 2010/09/04(土) 06:03:11.09 ID:IqhLp+7oO
メラメラ メラメラ

前田「……しかし、この燃え方は異常じゃねえか? なんか火柱が人の身長くらいあるし」

子分「ははっ、怖い事言うなよ。人間が燃えてるわけじゃあるまいしよ」

ゴリラ「……」

子分「……あれ、そう言えばここにあった唯ちゃんのポップは?」

メラメラ メラメラ

ゴリラ「……」

神山「どうしたんだいゴリ。さっきからそんなに炎ばっかり見つめて……あっ」

林田「ん。どうしたか、かみや……あっ」

唯『……の……ギ……よ♪』メラメラ メラメラ

全員「……」


森の外れ

林田「すまん、ゴリ……」

ゴリラ「……」

唯ちゃん(等身大ポップ)夏のおもいで!

415: 2010/09/04(土) 06:08:29.31 ID:IqhLp+7oO
翌朝

唯『』

神山「これは、完全にもうゴミ……いや、灰だね」

林田「うう、すまんゴリ……」

ゴリラ「……」サッ サッ

北斗「灰など集めてどうする気だ、ゴリラよ」

ゴリラ「……」ザック ザック

神山「そうか、ここにちゃんと埋葬してあげるんだね」

ゴリラ「……」コクッ

北斗「……終わったら、出発だ。今日こそ人のいる所に出るぞ」

416: 2010/09/04(土) 06:13:03.24 ID:IqhLp+7oO
別荘

北斗「……というわけで、なんとかたどり着けたな」

神山「いやあ、険しい道のりだったね」

ゴリラ「……」

前田「まだ落ち込んでんのか?」

林田「くっ……すまん、俺のせいで……」

ゴリラ「……」ポン ポン

林田「ゴリ?」

神山「もう、ゴリラは君の事を許しているみたいだよ。気にするな、って」

ゴリラ「……」コクッ

林田「……ありがとう、ゴリ」

ゴリラ「ンゴ」

北斗「よし、一休みしたら早速練習だ。荷物を置いて全員居間に集合だからな」

全員「おおー!」

ゴリラ「……」

417: 2010/09/04(土) 06:18:18.82 ID:IqhLp+7oO
一時間後。

林田「いやーこのお茶はうめえな」

北斗「まずはお茶会をせねばこの部活は始まるまいな」

前田(結局、練習なんかしやしねえ……)

フレディ「……」ズズッ

子分「……あれ、フレディ。そう言えばゴリラは?」

フレディ「……」フル フル

神山「そう言えば、いつの間にか見ないね」

前田「……あ、玄関のドアがいつの間にか空いてる」

子分「も、もしかしてアイツ、傷心のあまり出ていったのか?」

林田「……楽しんでいる俺たちの姿を見るのが辛かったのかな」

神山「林田君……」

林田「俺、ちょっと探して来るよ」ダダダッ

北斗「……行ったか」

419: 2010/09/04(土) 06:23:41.98 ID:IqhLp+7oO
神山「……遅いね、もう一時間だよ」

北斗「まさかまた迷ってるのではないだろうな」

ガチャッ

北斗「む……」

前田「は、林田」

林田「……まだゴリは戻ってないのか」

神山「そうみたいだね」

林田「バス停まで戻って町の辺りを探してみたが……それらしい奴はいなかったぜ」

前田「まあ、いたらいたで騒ぎになってるだろうしな」

子分「と言うことは、やっぱり森に?」

神山「……もしかしたら、唯ちゃんと心中する気なのかもしれないね」

林田「な……!」

神山「だって、合宿にまで彼女を連れて来ていたんだよ。そんな彼女がいなくなって、相当傷付いたに違いないよ」

北斗「彼女と共に、この森で氏ぬつもりか……」

420: 2010/09/04(土) 06:28:30.18 ID:IqhLp+7oO
林田「くっ……!」

神山「ダメだよ林田君。もう夜になる、また遭難しちゃうよ」

林田「は、離せ! 俺は、ゴリを……ゴリを!」

北斗「ええい、落ち着け林田!」

林田「ぐっ……」

北斗「奴も本当に氏ぬつもりなら、迷惑にならないよう何か残していくだろう。だが、何も無いと言う事は、まだ氏ぬと決まったわけじゃない」

林田「で、でもよ……」

神山「もしかしたら、一人になりたいだけかもしれないよ。あるいは唯ちゃんのお墓にもう一度行ったとか」

北斗「……何にしろ、もう少し待とう。ゴリラの事だ、森には強いはずだからな」

林田「北斗……わかったよ」

北斗「うむ」

422: 2010/09/04(土) 06:32:11.08 ID:IqhLp+7oO
……。

林田「もうすぐ日付が変わる……くっ!」

神山「ダメだってば。森は危険だよ」

林田「は、離せ!」

子分「あっ、ま、待て。窓の外を見ろ」

北斗「……む」

ゴリラ「……」

林田「ゴ、ゴリ。よかった……」

神山「よかったね林田君」

北斗「フッ、ずいぶん堂々とした姿で歩いて来てるものだな」

424: 2010/09/04(土) 06:35:45.51 ID:IqhLp+7oO
神山「きっと、彼女にちゃんとお別れが言えたんだよ」

林田「ああ、ああ……」

前田「泣くなよ、ほら、ティッシュ」

林田「すまねえ前田」

ガチャッ

ゴリラ「……」

林田「おかえりゴリ!」

ゴリラ「……」コクッ

北斗「ふふっ、これでめでたしめでたしだな」


426: 2010/09/04(土) 06:42:58.03 ID:IqhLp+7oO
子分「じゃあ、深夜はけいおんブルーレイパーティーといこうぜ!」

林田「へ、へへっ、お前もたまにはいい事言うじゃねえか」

神山「彼女もきっとこの森から僕たちを見守ってくれているはずさ」

フレディ「……」コクッ

北斗「よし、では今から帰って来たゴリと、俺たちを助けてくれた唯ために宴会だ!」

全員「おおー!」

林田「さあ、ゴリラもそんなとこ突っ立ってないでこっちに……」

ゴリラ「……」スッ

梓『私とセッションしましょう!』

全員「……」


ソファー

北斗「また等身大ポップか……」

神山「ていうかドコからあんな物を……」

林田「俺の涙は一体……」

ゴリラ、とっかえひっかえ。

430: 2010/09/04(土) 06:55:13.44 ID:IqhLp+7oO
帰りのバス

神山「合宿も終わっちゃったね」

林田「遭難なえなけりゃあもっとゆったりとした気分になってたのによ」

北斗「ははっ、それも含めていい思い出になったではないか」

子分「結局、楽器は全く弾きませんけしたけどね」

北斗「まあ、絆が深まったと思えばいいではないか。新しい仲間も増えたしな」

梓『私とセッションしましょう!』

フレディ「……」コクッ

433: 2010/09/04(土) 07:04:13.10 ID:IqhLp+7oO
前田(……まったく、元気な奴らだ。ゴリの一件なんてもう忘れてやがる)

ゴリラ「……」

前田(あれ、こいつ。なんで手ぶらなんだ?)

前田「なあ、ゴリラよ、お前荷物は一体どうしたんだ。ギターやらリュックやらよ」

ゴリラ「……」プイッ

前田「……話したくなかったら、深くは聞かねえよ。悪かったな」

434: 2010/09/04(土) 07:09:11.16 ID:IqhLp+7oO
ゴリラ「……」

前田(ま、俺にとってはどうでもいい事か)

ゴリラ「……」

バスはどんどん森から離れ、みんなを元いた街まで運んで行く。

その、忘れられたように小さくなった森のある場所に、彼女は眠っている。

同じけいおん部の仲間を助けてくれた、平沢唯。

そんな彼女の傍には、大好物なお菓子がたくさん入ったリュック。

さらに『いい笑顔』で写っているゴリラと彼女の写真が一枚。

そして……彼女がずっとギー太と一緒にいられるようにと、アンプに繋がれたままのレスポールが一本。

そのお墓の場所は、写真に写っている二人しか知らない、秘密の場所。

その場所で、今日も彼女はギターを弾きながらお菓子を食べて……ずっと変わらない笑顔で、彼と笑っている。

青春クロマティー、合宿編 完

435: 2010/09/04(土) 07:12:42.35 ID:IqhLp+7oO
ちょっとだけシリアス。

もう書かないつもりだったけど、残ってて笑った。

今から仕事なんだ、ごめんね。

残ってたら、多分四天王も。
他に見たいネタとかあったら出来るだけ応えたいので、何かあったらお願い。

雰囲気を楽しんでもらえれば○。

452: 2010/09/04(土) 15:36:19.76 ID:IqhLp+7oO
>>446
すまん、アキって誰だっけか?

478: 2010/09/04(土) 22:13:54.20 ID:IqhLp+7oO
いまから帰ります

481: 2010/09/04(土) 23:05:22.26 ID:IqhLp+7oO
ちょっとだけ、課長バカ一代。


八神「社長、お話というのは?」

松平「うむ。君はこの漫画をしっているかね」

けいおん1巻。

八神「……いえ、こんな子知り合いにはおりませんが」

松平「いや、だから漫画だって。……まあいい、実は今回、我が会社がこのキャラクターをモチーフに商品を開発する事になったのだよ」

八神「この女の子をモチーフに? そんなに人気なんですか、この子は」

松平「ああ、運よくキャラクターの使用権を我が社が競り落とせた。この企画には相当な額の資金が動いている」

八神「うむ……侮りがたいですね」

482: 2010/09/04(土) 23:11:00.52 ID:IqhLp+7oO
八神「で、私は何をすればいいんでしょうか?」

松平「このキャラをモチーフに、何かアイデアを考えてきてほしい。誰も彼も匙を投げてな……頼れるのは(バカの)君しかいないのだ」

八神「なるほど……わかりました、引き受けましょう」

松平「おお、頼んだよ。イメージを沸かせるために、この漫画は君にあげよう。利用したまえ」

八神「はい」

松平「頼んだよ」

483: 2010/09/04(土) 23:17:12.02 ID:IqhLp+7oO
……。

八神「なるほど、高校生が楽器を使ってほのぼのする漫画か」

八神「ううむ、ここから製品を作るとなると……」

八神「……」

八神「難しいな」

八神「高校生、ほのぼの、夢」

八神「……よし、これでいってみよう」

489: 2010/09/04(土) 23:43:27.73 ID:IqhLp+7oO
……。

松平「ほう、もうアイデアがまとまった、と」

八神「はいまずはイメージをハッキリさせるためポスターを作成しました」

八神「ご覧ください」ピラッ

松平「……」

松平「なるほど、確かにメインの5人はしっかりと写っているようだが」

唯『目指せこうしえん!』

松平「なんでみんな野球帽を被ってバットを持っているんだね」

八神「高校生の夢と言えば、甲子園球場でしょう」

松平「いや、楽器だって言ってるだろうが……」

493: 2010/09/05(日) 00:20:55.71 ID:NvatqRAQO
八神「一体何が不満なんですか?」

松平「いや、不満も何も……キャラクターのイメージと言うものがね」

八神「イメージ……」

八神「ではキャラを立たせるにりっちゃんに葉っぱをくわえさせましょうか」

松平「いや、彼女はむしろキャラ立ちしている方だろうが……」

八神「あ、ぐわははは、ってりっちゃんが笑うのは」

松平「だから! それじゃあキャラが変わっちゃうだろうが!」

495: 2010/09/05(日) 00:31:38.73 ID:NvatqRAQO
松平「……まあ、まだ試作の段階でよかった。こんなポスターが採用されていたら、損害もいい所だ」

八神「え?」ゴッチャリ

松平「……そのポスターの束は?」

八神「とりあえず、試作として500枚程」

松平「君の仕事は野球のポスターを印刷する事だったのかね?」

八神「……ハッ」

松平「ようやっと気付いたのかね……」

八神「……すいません、私とした事が」

松平「うむ、わかってくれればいいんだ。早速このポスターを手直しして……」

八神「はい、みんなの口元に葉っぱを印刷して作り直します」

松平「……だから、岩鬼から離れろよ」

507: 2010/09/05(日) 04:15:42.00 ID:NvatqRAQO
すまぬ。付き合いでご飯行ってた


松平「……で、肝心の商品は何を作るのかね。ちゃんと彼女たちをイメージしてあるんだろうね?」

八神「はい。こちらが試作品になります」スッ

電気ポット。

松平「……」

八神「これでどんなティータイムでもバッチリです」

松平「……君ねぇ、ちょっとそのポスターを見てみたまえ」

509: 2010/09/05(日) 04:25:07.55 ID:NvatqRAQO
八神「……」

唯『目指せこうしえん!』

松平「で、これは?」

電気ポット

八神「……?」

松平「まったく、野球もイメージも関係ない。これじゃあただの……」

八神「えっ、お茶を飲んで夢を叶える漫画じゃないんですか?」

松平「いや、だからね……甲子園がそもそも間違いなんだってば」

510: 2010/09/05(日) 04:35:33.40 ID:NvatqRAQO
課長バカ一代は難しい……雰囲気勉強してまた書き直しますさ。
あと、アキについて教えてくれた人ありがとう


会議室

イガちゃん「えー、では早速今日も会議を始める」

トミー「今日のテーマは?」

イガちゃん「ふむ。実は俺が最近ハマっている漫画があるんだが……それについて話そうと思う」

タミー「漫画?」

ユリー「……」

能智「ま、待ってくれよ。どうして議題が漫画の事になるんだよリーダー」

イガちゃん「うむ、それはだな。この漫画が俺たち四天王のテーマ……ロックとワルの融合にマッチするからだ」

タミー「ロックとワルの融合……」

512: 2010/09/05(日) 04:43:09.26 ID:NvatqRAQO
イガちゃん「ああ。まずはこの漫画を見てほし……」ガサガサ

イガちゃん「ん……」

トミー「どうしたんだリーダー?」

イガちゃん「……すまん、肝心の漫画を忘れてしまったようだ」

能智「え。なんだよ、俺ちょっとワクワクしていたのに」

イガちゃん「ああ、明日には必ず持ってくるから、すまん」

トミー「……とりあえず、どんな漫画なのか、大雑把に教えてくれないか」

イガちゃん「うむ。まず、主人公は女子高生だ」

能智「女子高生?」

513: 2010/09/05(日) 04:49:19.28 ID:NvatqRAQO
タミー「……その女子高生がすっごいワルとか?」

イガちゃん「いや、どちらかと言えば良い子達だ」

トミー「おいおい、それの何処がロックとワルの融合な漫画なんだよ」

イガちゃん「……すまん、少し嘘をついた。別にワルと言う訳ではないんだ」

能智「?」

イガちゃん「だが、見てもらえれば分かる。俺がその漫画を薦める理由が……お前たちにも分かるはずだ」

タミー「そんなに面白い漫画なのか?」

イガちゃん「ああ、俺が保証しよう!」

トミー「そんなに力強く言われちゃあ……な」

514: 2010/09/05(日) 04:56:47.05 ID:NvatqRAQO
イガちゃん「と言うわけで、今日は解散だ。明日の会議でまた会おう」ガチャ

タミー「ま、待てよ。せめて漫画のタイトルだけで……」

バタン

能智「……行っちまった」

トミー「俺たちも……帰るか」

帰り道

ユリー「……」

タミー「なあ、さっきのリーダーの話、気にならないか」

能智「え、やっぱり? 俺もチョー胸がモヤモヤしているんだけど」

トミー「あんな中途半端に宣伝されたら、誰だって気になるよな」

タミー「……明日まで待てねえよな」

能智「ああ……」

トミー「なあ、今からちょっと本屋に行ってみねえか?」

ユリー「……」コクッ

タミー「よし……行くか」

515: 2010/09/05(日) 05:04:42.25 ID:NvatqRAQO
本屋

タミー「……でよ、どんな漫画だっけ?」

能智「タイトルはわからねえけど、確か……」

ユリー「女子高生がどうとか、言っていたな」

タミー「女子高生か……まあ、人気がある本なら特設コーナーとかもあるだろうしな」

トミー「……でもよ、女子高生が主役の漫画なんていくらでもあるぜ。せめてジャンルでもわからねえと……」

能智「うーん……」

タミー「仕方ねえ。手分けしてそれらしい本を探すしかないな」

トミー「ああ。それらしい本を見つけたら買って確かめてみようぜ」

タミー「そうだな……よし、じゃあ行動開始だ」

518: 2010/09/05(日) 05:11:37.27 ID:NvatqRAQO
公園

タミー「全員揃ったな。では、品定めと行こうか」

トミー「ああ」

ユリー「おう」

能智「じゃあまず俺から……」スッ

『らき☆すた』

タミー「……これが女子高生が活躍する本なのか?」

能智「ああ、アニメになったり何やらと……そこそこ大きく取り上げられていたぜ」

能智「中身もまあ、ほのぼのしている内容だから、良い子達ではある」

トミー「とりあえず、リーダーの言った条件はクリアしているみたいだな」

タミー「これが俺たちに影響を与える漫画とは、あまり思えないがな」

能智「まあ、いいじゃねえか。次は誰だ?」

519: 2010/09/05(日) 05:17:43.27 ID:NvatqRAQO
トミー「俺は、この本じゃねえかと思うんだ」スッ

『ひだまりスケッチ』

タミー「これが?」

トミー「ああ……女の子がメインの四コマ漫画だ。これも、リーダーの言った条件はクリアしている」

ユリー「……なんか、さっきのらきすたと雰囲気が似てるな」

タミー「四コマってだけじゃねえか。まあ、そういう俺も結局は四コマ漫画だったんだがな」

能智「ん、タミーもか」

タミー「おう、俺の場合はこれだったがよ」スッ

『けいおん!』

トミー「へえ……女子高生が主人公の漫画って結構あるもんだな」

520: 2010/09/05(日) 05:26:06.86 ID:NvatqRAQO
トミー「俺の場合は店員に聞いたからな。まあ、ちょっと恥ずかしかったが……」

タミー「あ、その手があったか」

能智「……でもよ、本当にこの中にリーダーの言ってた本があるのかな」

全員「……」

トミー「ん、そう言えばユリー。お前の本がまだだったな」

ユリー「お、俺のは多分違うからいいよ」

521: 2010/09/05(日) 05:29:20.13 ID:NvatqRAQO
タミー「おいおい、一応見せてみろよ。そんな隠され方したら気になるじゃねえか」

能智「そうだそうだ、せっかく買ったなら見せてみろよ」

ユリー「じ、じゃあ……」スッ

トミー「ま、女子高生が主役ならよ、それだけで正解している可能性があるんだから……」

『侵略!イカ娘』

トミー「いや、多分女子高生ではないんだ……」

全員「……」


ベンチ

能智「イカかあ……」

イカが主人公でいいじゃなイカ!

524: 2010/09/05(日) 05:36:31.90 ID:NvatqRAQO
次の日

ガチャリ

イガちゃん「む。もうみんな集まっていたのか」

タミー「ああ……早速だかよリーダー。机の上を見てくれ」

イガちゃん「ん……この漫画はどうしたんだ?」

トミー「いや、昨日のリーダーの話が気になってよ。俺たちが独自に漫画を推理してこれを買ってきたんだよ」

ユリー「で、この中にリーダーの言っていた、すげー俺たちのタメになる漫画があるのか……教えてほしいんだ」

イガちゃん「ほう」

能智「まあ、イカの漫画以外は女子高生が主役なんだ。そして良い子ばから……この中にきっとあるんじゃないか、と思ってな」

525: 2010/09/05(日) 05:41:45.19 ID:NvatqRAQO
>>524
ばから→ばかり


イガちゃん「……」

トミー「個人的にはよ、このけいおんか、ひだまりスケッチが当たりだと思うんだが」

タミー「まあ、待てよ。慌てなくてもすぐわかるんだ」

能智「そうだ。リーダーが薦めるすげー漫画……それがもうすぐわかるんだ」

ユリー「昨日はモヤモヤして眠れなかった……ゲソ」

タミー「……なんか移ってるぞユリー」

イガちゃん「……」

全員「……」ゴクリ

526: 2010/09/05(日) 05:47:01.84 ID:NvatqRAQO
イガちゃん「残念ながら、俺のおすすめする漫画、それはこの中には無い」

全員「な、なにぃ!」

トミー「くそっ、自信あったのによ……少しショックだぜ」

タミー「じ、じゃあ何なんだよ! 正解の漫画はよ!」

ユリー「……」

イガちゃん「うむ、それはな……」ガサガサ

全員「……」ゴクリ

イガちゃん「これだ」

『あずまんが大王』

全員「……」


ベンチ

タミー「……うん、少ないヒントだったけどさあ……」

トミー「昨日とは違う、このモヤモヤは何なんだろうな……」

ユリー「……ゲソ」

テッテテ、テッテテ、テテ、テッテッテ♪ あ

532: 2010/09/05(日) 06:01:49.57 ID:NvatqRAQO
イガちゃん「えー、本日の議題は……」

トミー「ち、ちょっと待ってくれよリーダー」

イガちゃん「ん、どうしたトミー。何か提案があるのか?」

トミー「いや、提案もなにもよ……俺たちメンバーは前回の結果に納得いって無いんだけどよ」

イガちゃん「前回?」

タミー「……どうしてあの漫画をリーダーがオススメしたか……その、正直ちょっとわからなくてな」

イガちゃん「なんだと?」

ユリー「いや、確かに内容は面白かったよ、でも……ただ女子高生が話しているギャグ漫画ってだけで……」

イガちゃん「お前ら……何が言いたい?」

タミー「だから、あの漫画からリーダーが何を感じて俺たちに何を伝えたかったか……聞きたくてな」

533: 2010/09/05(日) 06:08:57.28 ID:NvatqRAQO
イガちゃん「……」

イガちゃん「話は変わるが、昨日の本の中にあったけいおんを読んでみたんだ」

タミー「いや、話題変えるんじゃねえよ!」

トミー「そうだぜリーダー、ちゃんとあずまんがの良さを説明してくれよ」

イガちゃん「ああ、あのデスデビルのさわちゃんには俺たちに近い物……まさにロックとワルを感じた」

能智「……ダメだ、完全に話をすり潰す気だ」

タミー「……まあ、確かにけいおんは面白かったけどよ」

トミー「ああ、女の子だから、なんてちょっとバカにしていたが……伝わってくる物はあったよな」

536: 2010/09/05(日) 06:14:04.79 ID:NvatqRAQO
イガちゃん「そうだ、俺はただ漫画を紹介したかっただけじゃない。いいか……けいおんのメンバーを考えてみろ」

能智「メンバー?」

トミー「ハッ、俺たちと同じ人数……全部で五人だ」

イガちゃん「そうだ、最初はあずにゃんがいなくて四人……まさに四天王状態だったが、気が付けば五人」

イガちゃん「……これに俺は運命を感じた

トミー「……いや、別に向こうは四天王にこだわっていた訳じゃなくて」

能智「というか運命って何だよ?」

イガちゃん「うむ、実はな……俺たち四天王でやりたい事が出来たのだ」

能智「やりたい事?」

イガちゃん「ああ……」

538: 2010/09/05(日) 06:19:38.41 ID:NvatqRAQO
ユリー「ま、まさかリーダー……」

イガちゃん「うむ。実は最近メンバー同士の交流が少なくなった気がしてな……きっかけは漫画で恥ずかしいのだけれども……」

タミー「俺は、賛成だ」

イガちゃん「タミー……」

タミー「リーダーがやる、と言ったら俺たちはそれに従う。それが四天王だからよ……」

トミー「……ああ、あの漫画には俺たちを動かすだけの、パワーがあった。協力するぜ」

イガちゃん「い、いいのか……だが、初心者が上達するにはかなり長い時間を要すると聞く。誘っておいてなんだが……」

能智「いいんじゃねえか。俺たち五人が協力すれば……頂点を極めるなんてあっという間だぜ、きっとよ」

イガちゃん「お前ら……」

539: 2010/09/05(日) 06:23:55.11 ID:NvatqRAQO
イガちゃん「し、しかし金もかかるのだぞ?」

タミー「……さすがに何十万は出せないがよ、まあ、安物で数万の物もあるだろうよ」

能智「そうだな。実は俺、ちょっと憧れていたんだよな」

トミー「こんなメイクしているから、余計にな……へへっ」

イガちゃん「しかし、いいのか。始めるきっかけは、漫画と……俺のワガママなんだぞ」

ユリー「水くさいぜリーダー」

タミー「ああ、リーダーの決定には従う……俺たち四天王で天下取ってやろうぜ」

トミー「何でも、リーダーに力を貸すぜ」

リーダー「……すまん、みんな」

541: 2010/09/05(日) 06:29:13.37 ID:NvatqRAQO
リーダー「よし、ではみんなの力を貸してもらうぞ!」

トミー「おう!」

タミー「腕がなるぜ!」

ユリー「よし、じゃあまずは担当から決めようぜ」

イガちゃん「いや、まずはその前に道具を揃えるんだ。ちなみに俺のはだな……」ゴソゴソ

542: 2010/09/05(日) 06:36:44.97 ID:NvatqRAQO
タミー「な、リーダーはもう楽器を持っているのか……」

トミー「すげー熱の入れようだ……」

イガちゃん「昨日特売で買ったノートパソコンだ。大容量でサクサク動くと言われたから、これにした」

全員「……」

タミー「なあ、リーダー、ちょっといいか?」

イガちゃん「ん」

タミー「なんでノートパソコンなんだよ?」

イガちゃん「パソコンを使わなければ達成できない目的だからだ。当たり前だろ?」

トミー「リ……ーダーのやりたい事って一体何なんだよ。バンドを組んで楽器をやる事じゃないのか?」

リーダー「楽器だと? 俺はただ『レバ剣』という物が欲しいだけだ」らきすたであった

全員「……」


ベンチ

トミー「あー、すげーモヤモヤする……」

タミー「いつから話がすり変わったんだろうな……」

多分、運命の件の後からかな。

544: 2010/09/05(日) 06:45:35.41 ID:NvatqRAQO
イガちゃん『えー、では今日の会議を始める。何か提案のある者は挙手をしてくれ』カタカタ

タミー『リーダー』カタカタ

イガちゃん『……』

タミー『なあ、リーダー』カタカタ

イガちゃん『……』

タミー「……」スッ

イガちゃん『どうした、タミー』カタカタ

タミー『こうやって、ゲームのチャット上だけで話すのは止めにしないか?』カタカタ

イガちゃん『ゲームと言うのは止めろと言ったはずだ。俺はこの世界では戦士なんだぞ』カタカタ

トミー『でもよ、同じ部屋にいるのにパソコン内だけで会話っていうのもよ……』カタカタ

イガちゃん『その方が雰囲気がでるだらう』カタカタ

イガちゃん『すまん、誤字』カタカタ

546: 2010/09/05(日) 06:52:28.91 ID:NvatqRAQO
イガちゃん『とにかく……いいか。レバ剣を一刻も早く見つけるために、作戦会議だ。何か意見は無いのか!』

トミー『まあ、俺たち全員レベル1なんだが……まずどうすればいいんだ?』

イガちゃん『提案がある時は手を上げろ!』

トミー「……」スッ

イガちゃん『はい、トミー』カタカタ

トミー(……やりづらい)

……。

イガちゃん『……とにかく、レバ剣は超レアなアイテムらしい。生半可な覚悟では手に入れられまい』カタカタ

イガちゃん『だか、俺たち四天王が力を合わせればすぐに見つかるだろう、みんなの活躍を期待する』カタカタ

ユリー『あ、リーダー! 狼に襲われてるよ!』カタカタ

イガちゃん『あrkuさenらhなxx』カタカタ カタカタ!

タミー(キーボードうるせえ……)

トミー(リアルで無言なのが余計不気味だ……)

547: 2010/09/05(日) 06:58:48.77 ID:NvatqRAQO
イガちゃん『おい、誰か復活の薬は持ってないのか!』カタカタ

トミー『俺たちまだそんな物持ってないよ』カタカタ

タミー『薬が随分高額だしなあ。かといって復活の魔法も無いし』カタカタ

イガちゃん『くっ……このままではレバ剣どころではない! なんとかしろ!』カタカタ

トミー「……」

トミー「なあ、リーダ……」

イガちゃん『手を挙げてから喋れ!』カタカタ

トミー「……」スッ

イガちゃん『はい、トミー』カタカタ

トミー(だんだん、殺意が沸いてきた……)

イガちゃん(戦士、レベル1)は氏んでいる。

549: 2010/09/05(日) 07:04:16.02 ID:NvatqRAQO
タミー『……俺たちだけじゃあ冒険はまだ厳しいよ』カタカタ

ユリー『そうだよ。レバ剣はとりあえず後回しにして、地道にレベルを上げようよ』カタカタ

イガちゃん『ちまちまとレベルなんか上げてられるか。敵が強いエリアにレアアイテムがあるのは当然……早く探せお前ら!』カタカタ

トミー『俺たちのレベルじゃあ、この辺りの敵には勝てないよ』カタカタ

タミー『一回街まで戻ろうよ、ね?』

イガちゃん『むう……もう貴様らなど知らん。勝手にどこへでも行け!』カタカタ

イガちゃん「……」

全員「……」

タミー(いや、本体がいる時点で気まずいんだって……)

能智(こんな空気の中ゲームしても楽しくない……)

551: 2010/09/05(日) 07:11:25.37 ID:NvatqRAQO
ユリー『あ……ま、待て。俺たち囲まれているぞ』カタカタ

狼の群れ『ウゥゥ!』

トミー『こ、この数はヤバいよ』カタカタ

能智『で、でも逃げ場所も無いぜ!』カタカタ

イガちゃん『俺には関係の無い事だ』カタカタ

トミー(氏んでるからって呑気な……)

狼の群れ『ガウッ!』

タミー『き、来た! もう終わりだ!』カタカタ

ユリー『だ、誰か……助けてくれえ!』カタカタ

スッ

全員(あ……だ、誰かが!)

ズワァァアア!

タミー『ぜ、全体魔法……すげえ……』カタカタ

552: 2010/09/05(日) 07:14:15.61 ID:NvatqRAQO
トミー『すげえ、一瞬で狼が灰になった』カタカタ

イレブンPM『……大丈夫ですか、危ない所でしたね』

ユリー『あ、あなたは……?』カタカタ

イレブンPM『名乗る程の者ではありません……って、名前が出ちゃってますね(笑)』

タミー『た、助けてくれてありがとうございます』カタカタ

イレブンPM『いえいえ。あ、そちらの方は氏亡していますね、えい☆』

イガちゃん『む……』カタカタ

イレブンPM『全回復と、強化の魔法をかけておきました。これでしばらくは安全なはずですよ!』

553: 2010/09/05(日) 07:19:50.08 ID:NvatqRAQO
藤本宅

藤本「……たく、レベル1の素人がなんでこんな危険なエリアに」

藤本「まあ、レベルMAXな俺のキャラならばこんな場所の敵は雑魚以下だが……」

付き人「……」

藤本「初心者がこんな所にいてはまた氏体が増える。それとなく注意してやるか」

藤本「ええ、この辺りは低レベルの方には危険なエリアです。街までテレポートで送りますので、もっと簡単なエリアでレベルをあげましょう、と」カタカタ

藤本「……フフッ、上級者面をするつもりは無いが、こうやってビギナーに指導する瞬間は何より気持ちいい」

藤本「こいつら、泣いて喜ぶに違いない」

付き人「……」

554: 2010/09/05(日) 07:24:41.23 ID:NvatqRAQO
トミー『おい、いい人だぜ』

タミー『あ、ありがとうございます!』

藤本「フフッ、そうだろうそうだろう、もっと感謝するがいい」

イガちゃん『……おい、イレブンPMとやら。この辺りで一番レアなアイテムが落ちているのは何処だ!』

藤本「む、なんだこいつぁ……まるで言葉遣い、ネチケットがなっちゃいねえ。仕方ないな」

イレブンPM『イガちゃんさん。もしかしたら、キャラ作りのためにそんな口調なのかもしれませんが……初心者さんは基本敬語の方がいいですよ!』

藤本「まあ、こんなもんだろう。キャラを作るあまり言葉が乱暴になる……初心者にはよくあるミスだ」

イガちゃん『うるさい、俺はリーダーだぞ。さっさとレアアイテムの場所を教えろ』

藤本「こ、こいつ……」ギリッ

付き人「……」

555: 2010/09/05(日) 07:29:13.09 ID:NvatqRAQO
会議室

タミー『リ、リーダー。そんな乱暴な言葉は悪いよ』カタカタ

ユリー『そうだよ、せっかく助けてくれたのに』カタカタ

トミー『イレブンPMさん、すいません』カタカタ

イレブンPM『……いえ、いいんです。僕はいらなかったみたいですね。皆さんの前から立ち去ります』

イガちゃん『おい待て。それならせめてレアアイテムの場所を吐いてから去れ』カタカタ

イレブンPM『……』

イレブンPM『一番レアなアイテムは「闇魔王の城」エリアに落ちています。まあ、皆さんが辿り着くにはレベルが足りなすぎますが……』

イガちゃん『ふん、それだけわかればよい。行くぞお前ら! ご苦労だったな、貴様』カタカタ

イレブンPM『……』

556: 2010/09/05(日) 07:34:19.46 ID:NvatqRAQO
イガちゃん『よし、目指すは魔王の城だ!』カタカタ

イレブンPM『待って下さい。最期にとっておきの魔法をかけてあげますよ☆』

タミー『わあ、やっぱりいい人だ』カタカタ

ユリー『ありがとうございます』

イレブンPM『はい、皆さん頑張って魔王城まで辿り着いて……とでも言うと思ったか! バカ野郎が!』

ザシュッ

タミー『あ、リーダーが斬られた』カタカタ

能智『生き返してくれたり、頃したり、わからない人だな……』カタカタ

イガちゃん『……』


トイレ

イガちゃん「やっぱり楽器の方にしておけばよかったかな……」

一応、選択肢にはあったんだ。

584: 2010/09/05(日) 20:50:39.21 ID:NvatqRAQO
>>509の続きから



松平「……ふぅ」

松平「やはり、八神君とは言え今回の立件は難しかったか」

ガチャリ

八神「そんな事はありません」

松平「む……どうした、今頃になって。もうアイディアも資金もあるまい。ポスター500枚も刷りやがって」

八神「確かに、それは私のミスでした。しかし、あれから私なりに考えをまとめ……こうして再び参上しました」

松平「ほう、聞かせてもらおうか。君の考えとやらを」

586: 2010/09/05(日) 20:56:23.72 ID:NvatqRAQO
八神「はい」

八神「まず、私自身の反省する部分……それは姿勢が中途半端だという事でした」

松平「ほう」

八神「我が社の製品の出来。そして、借りているキャラクターを活かした販売戦略……この二つが合わさらなければ今回の企画は成功とは言えません」

松平「……うむ」

八神「しかし、そこに野球を掛け合わせた私の販売戦略は見事に的を外していた、と考えざるを得ません」

松平「まあ、女子高生だから……しかも葉っぱまで」

八神「そう、そこです。彼女たちは女子高生……故に、最初から野球を持ってきた私のミス……今回はこれに尽きます」

松平「……」

588: 2010/09/05(日) 21:02:59.25 ID:NvatqRAQO
松平(なんだか、今日の彼はバカに見えないな……)

松平「……それで、君はそのミスをどう補う事にしたのかね」

八神「はい、まずは根本的な部分に戻り考えてみました。彼女たちはまず楽器をやっています」

松平「一番大事な部分だな」

八神「そして我が社はけいおんをモチーフにした製品を作る事を目標にしていました」

松平「うむ」

八神「……そこに、私が個人的な理由から野球を勝手に混ぜてしまいました」

松平「……」

八神「そんなミスは二度と起こさぬよう、今度はちゃんと『ドカベン』の使用権利を獲得しましたので、ご安心下さい」

八神「以上が私のプランになります」

松平「……いや、だから野球じゃなくてけいおんがだね……」

課長バカ一代編 完

589: 2010/09/05(日) 21:09:20.82 ID:NvatqRAQO
会議室

イガちゃん『みんなログインしているな。よし、今日も早速冒険だ』

タミー『わかったぜリーダー』

トミー『早くレバ剣を手に入れないとな』

イガちゃん『……待てトミー。お前だけなんでレベルが20になっているんだ』

能智『本当だ。俺たちみんな横並びだったのによ』

トミー『いやあ、実は攻略サイトを見て効率のいいレベル上げ方法を試してみたんだよ』

ユリー『今日、一人早めに来ていたのはそのためかー』

トミー『ああ、アイテム情報や豆知識も仕入れたし……ちょっと成長した感じだぜ』

イガちゃん『……』

591: 2010/09/05(日) 21:15:23.45 ID:NvatqRAQO
タミー『ところでよ、何でリーダーだけレベルが一桁なんだ?』カタカタ

トミー『ああ、前にPKされたからレベルが下がったんだな』カタカタ

能智『PK?』カタカタ

トミー『プレイヤーキルって言って、ゲームに参加している者同士で殺せるシステムだ』カタカタ

トミー『主に対戦なんかに使われるが……このゲームのPKはプレイヤー狩りをして、装備品を奪えるシステムだから注意がいるな』カタカタ

ユリー『なるほど、それでリーダーのレベルが下がったんだ』カタカタ

トミー『ああ、ペナルティで経験値が下がるシステムらしい。だから氏にそうになったら無理はしない事だな』カタカタ

593: 2010/09/05(日) 21:21:21.26 ID:NvatqRAQO
タミー『まあ、前のイレブン何とかは一撃でリーダーを倒してたからな』カタカタ

能智『注意のしようがないよな、ハハッ』カタカタ

イガちゃん『……』

ユリー『でもトミーは物知りになったよな』カタカタ

タミー『本当だぜ、頼れる存在って感じだよな。なんかリーダーっぽいぜ!』カタカタ

トミー『そ、そんな事はないぜ、ヘヘッ』カタカタ

イガちゃん『フッ、貴様はいつもそうだ』カタカタ

トミー『え?』

イガちゃん『攻略情報を見てゲームを極めたつもりか? お前は手のひらの上で踊らされているようなものだぞ?』カタカタ

イガちゃん『大体、そんな知識など冒険している間に自然と身に付くんだ。その方が……本当の経験値となる』

トミー『経験値……』

594: 2010/09/05(日) 21:26:25.05 ID:NvatqRAQO
イガちゃん『俺はあのイレブン野郎に殺されたからわかる。PKの恐ろしさや緊張感……それが攻略情報に書いてあったか、トミーよ』

トミー『い、いや。ただ……情報だけが淡々と書かれていただけだ』

イガちゃん『そうだろう、文字を読むだけでは伝わらない……実戦の恐ろしさ。俺の背中にはその傷痕が残っている』

全員『……』

イガちゃん『みんなにもう一度問う。そんなに攻略情報は必要で、そこまでしてこの世界で生きたいのか?』

ユリー『……リーダーはレバ剣欲しくないの?』

イガちゃん『ユリー、最初に言っただろう。俺はこの四天王としてやりたい事がある、と』

イガちゃん『レバ剣を拾う時は、お前らと一緒だ』

タミー『リーダー……』

595: 2010/09/05(日) 21:32:06.81 ID:NvatqRAQO
トミー『リーダー、俺が間違っていたよ』

イガちゃん『む……』

トミー『なまじ、攻略情報なんか見ちゃうとさ、全員で冒険していても……なんだか俺だけズルしているみたいになるよな』

タミー『トミー……』

トミー『リーダーに早くレバ剣を見つけて欲しかったんだけどよ、ちょっとお節介だったかな、ハハッ』

イガちゃん『……』

イガちゃん『トミー、他には何か豆知識や攻略情報は無いのか』

トミー『えっ、だって……』

イガちゃん『早く教えろ。俺がレバ剣を見つけるためにはどうすればいいのか……お前なら分かるだろう』

タミー『リーダー……』

能智『トミーの気持ちを汲んで……ヘヘッ、少し感動したぜ』

597: 2010/09/05(日) 21:37:50.68 ID:NvatqRAQO
トミー『そうだな、レアな武器だから……まずは戦力を強化しないと。レベルも上げないとな』

イガちゃん『うむ』

トミー『で、一番のレアアイテムは闇魔王の城にあるって言ってたから……とにかくそこまで辿り着けるくらいにならないと』

イガちゃん『……よし。今後の目標が見えたな』

ユリー『リーダー……』

イガちゃん『俺たちは闇魔王の城を目指しつつレベルをあげるぞ! みんな俺についてこい!』

全員『おおー!』

599: 2010/09/05(日) 21:47:25.66 ID:NvatqRAQO
一ヶ月後

イガちゃん『……ついにレベルMAXか』

タミー『長かったな、ここまで』

能智『寝る間も惜しんでキャラを育てた甲斐があったってもんだぜ』

イガちゃん『違う、キャラではない。俺たち自身がこの世界を通して成長したんだ……』

イガちゃん『今画面に映っているこのキャラは俺たちの心そのものの姿だ……』

タミー『ヘヘッ』

トミー『おう』

イガちゃん『よし、いよいよ魔王のいる城に突入だ。準備はいいか!』

全員『おおー!』

イガちゃん『いよいよレバ剣が手に入る時が来たのか……』

600: 2010/09/05(日) 21:54:30.40 ID:NvatqRAQO
藤本宅

藤本「ふぅ……もう闇魔王の城も一人で大丈夫なくらい強くなったな。ここまで長かったぜ……」

藤本「この空間をソロで生き残る事が出来るのは、世界に五人といまい。それくらいの難関エリアなんだからな」

付き人「……」

プルルルル プルルルル

藤本「ん、こんな時に電話か……もしもし?」

アイツ「お、おう藤本か。今から他校の番長をシメに行くんだがよ……俺たち、何人で行った方がいいかな?」

藤本「あ? どういう意味だよ」

アイツ「いや、その番長がメチャクチャ強くてよ……タイマンだと藤本以外だと勝てる奴がいねえんだよ!」

藤本「……俺は今日は行けないと言っていたはずだが」

602: 2010/09/05(日) 22:00:37.38 ID:NvatqRAQO
アイツ「そ、それはわかってるさ。でもよ、タイマンで負けるくらいならいっそ……卑怯でもいいから多人数でボコしちまってもいいかなって思って……」
藤本「それを俺に相談しているわけか」

アイツ「あ、ああ……ちょっと悩んじまってよ」

藤本「……」

藤本「あのなあ、喧嘩にルールなんてねえんだよ……卑怯? 最高の褒め言葉じゃねえか」

アイツ「ふ、藤本……」

藤本「マニエル高校の意地をみせてやれや」

アイツ「わ、わかったぜ! ありがとよ、藤本!」

ガチャッ

プー プー

藤本「……さて、と。続けて城に潜るか」

603: 2010/09/05(日) 22:05:05.99 ID:NvatqRAQO
会議室

ユリー『ここが魔王の城か』

タミー『なんか不気味な雰囲気だぜ……』

トミー『ん、ま、待て。既に先客がいるみたいだぞ』

イガちゃん『む、あれは……』

イレブンPM『とう! やあ!』

イガちゃん『イレブン野郎!』

能智『ひ、ひいっ!』

タミー『ま、また斬られちまうよ!』

トミー『待て。俺たちは全員レベルMAXだ。昔とは違う……』

イガちゃん『うむ。この体力とメンバーならそう簡単には氏ぬまい……』

イガちゃん『……む』

全員『ん……』

イガちゃん『よし、お前らリーダー命令だ』

604: 2010/09/05(日) 22:09:49.11 ID:NvatqRAQO
藤本宅

藤本「よし、そろそろ魔力も無くなるし帰るか」

ゾロゾロ

藤本「む……なんだこの集団は」

イガちゃん『……』

藤本「待てよ、こいつは……もしかして一ヶ月前につい頃してしまった態度の悪かった奴か?」

イガちゃん『ここで会ったが百年目だ』

藤本「レベルMAXか……昔の奴とは違うみてえだな」

イレブンPM『何かご用ですか?』

イガちゃん『……』

ザシュ

藤本「うお! いきなり攻撃してきやがったな。全体魔法で反撃だ!」

能智『……』

藤本「チッ、僧侶のバリアか。これじゃあ魔法はあまり効かないぞ……」

606: 2010/09/05(日) 22:19:56.88 ID:NvatqRAQO
藤本「……っていうか、いくら俺でもレベルMAXが五人相手で勝てるわけがねえだろ!」

イレブンPM『ぎゃああああ』

イガちゃん『見たか、これが俺たち四天王の絆の力だ』

藤本「何が絆だ……ただのタコ殴りじゃねえか……」

藤本「しかも四天王なのに五人いるし……」

607: 2010/09/05(日) 22:22:05.91 ID:NvatqRAQO
藤本「や、やられた、俺の最強キャラが……くっ、卑怯者め!」

イガちゃん『フフッ、悔しいか。画面の向こうで卑怯などと言ってみろ……それは最高の褒め言葉なのだからな』

藤本「……クソがぁああ!」

プルルルル プルルルル

藤本「誰だこんな時に!」


決闘場所

アイツ「あ、見てくれよ藤本! 五対一だけどよ、俺たちの手で番長をぶちのめしたぜ、ヘヘッ!」

アイツ「最初は罪悪感あったが喧嘩だからよ、勝った方が偉いんだよな」

アイツ「番長の野郎、倒れてから卑怯なんて叫んでいたけどよ……全く最高の褒め言葉だぜ!」

藤本「多人数で一人を襲うなんて卑怯なマネすんじゃねえ!」ガスッ

生徒「いや、藤本が言った事だろ……」

生徒「相変わらずぶれるよなあ……」

イレブンPMのレベルが5、下がった。

608: 2010/09/05(日) 22:28:09.53 ID:NvatqRAQO
藤本宅

藤本「……よし、やっとレベルがMAXに戻ったか」

藤本「今日は闇魔王の城にも奴らはいないみたいだし、落ち着いて狩りができるな」

付き人「……」

藤本「……しかし、これだけ城に潜っても未だに巡り会えない最高のレアアイテム」

藤本「一体どんなアイテムなんだろうな……」

プルルルル プルルルル

藤本「……また電話か」

ピッ

アイツ「あ、もしもし。藤本か、ちょっと聞いて欲しい事があるんだがよ」

藤本「やっぱりお前か……で、なんの用だ」

アイツ「いや、今から他校の奴と喧嘩するんだけどよ……でもよ、以前そいつらと戦って俺たち負けてるんだよ」

藤本「……それで?」

610: 2010/09/05(日) 22:34:08.38 ID:NvatqRAQO
アイツ「でよ、戦利品として俺たちの財布やボンタンを全部持っていかれたんだ」

藤本「ああ、そんな事もあったな……」

アイツ「だからよ、今日買ったら俺たちが奴らの持ち物を全部ひっぺがしてやろうと思ってるんだけどよ……藤本、そういうのは嫌いかなと思って……つい相談をよ」

藤本「……」

藤本「いいんじゃねえの。奪っちまえよ」

アイツ「ふ、藤本……」

藤本「喧嘩に負けた相手はは根こそぎ全てを奪われて当然だ。身ぐるみはもちろん、誇りもな……」

アイツ「誇り……」

藤本「ああ、マニエル高の誇りをかけて戦ってこいや」

アイツ「あ、ありがとう藤本! よーし、やる気が出てきたぜ!」

ガチャッ

藤本「……」

612: 2010/09/05(日) 22:40:57.61 ID:NvatqRAQO
藤本「……ん」

イガちゃん『何かアイテムを拾ったぞ』

タミー『なんかキラキラした剣だな』

トミー『リーダー運がいいなあ』

藤本「ん……ま、待てよ! あの剣は……」

イレブンPM『あの、すいません』

イガちゃん『む、イレブン。また貴様か、さてはこの剣を横取りに来たのか』

スワッシュ!

藤本「ま、間違いない……その効果音と画面効果は……」

イレブンPM『……いえ、今日は対戦をしに来たわけではありません。あの、その剣の事なんですが……』

イガちゃん『む、この剣がどうかしたのだ?』

スワッシュ!

イレブンPM『……それこそ幻のレアアイテム。この世界に数本しかない最強の剣ですよ』

ユリー『えっ』

能智『この剣が……』

613: 2010/09/05(日) 22:45:18.21 ID:NvatqRAQO
イガちゃん『これが……俺の探していた最強の剣』

イレブンPM『それを一体どこで?』

タミー『……地面を掘るコマンドをしたら、偶然見つけたんだ』

藤本「埋まっていたのか……チッ、ボスがドロップする物とばかり思ってたぜ」

イガちゃん『……フフッ、これが……』

藤本「こいつを斬ったのがもう数ヶ月前……まさか、先を越されてゲーム最高のレアアイテムを見つけられるとはな」

イレブンPM『……負けましたよ』

イガちゃん『む? どうしたのだイレブンよ、いきなり』

615: 2010/09/05(日) 22:52:06.50 ID:NvatqRAQO
イレブンPM『最初に会った時は、まさか貴方がここまで成長するとは思ってませんでした』

イレブンPM『事実、今の貴方の手の中で、ゲーム内で最高のレアアイテムが輝いている。すごい人だ』



イガちゃん『……』

イガちゃん『違う、俺がすごいのでは無い』

イレブンPM『?』

イガちゃん『ここまで来られたのは、俺を支えてくれた四天王の皆のお陰だ……』

イガちゃん『確かに、俺は最強の剣が欲しかっただけだ。最初は仲間に当たり散らした事もあったさ』

トミー『リーダー……』

イガちゃん『だがな、今は違う。こうして仲間と共にこの世界を歩く事ができる……それだけで俺は満足なんだ』

617: 2010/09/05(日) 22:57:08.74 ID:NvatqRAQO
タミー『リーダー……』

能智『泣かせるじゃねえか……』

イレブンPM『なるほど、貴方がその剣を入手できた理由が何となくわかりましたよ。いや……もしかしたら、剣が貴方を選んだんでしょう』

イガちゃん『イレブンよ……貴様もまた、俺の強敵(とも)だった……』

イレブンPM『……はい!』

イガちゃん『よし、お前も今日から四天王の一人にしてやる。どうだ嬉しいか!』

イレブンPM『それも楽しそうですね! ではよろしくお願いします!』

イガちゃん『うむ……』

618: 2010/09/05(日) 23:03:44.25 ID:NvatqRAQO
トミー『なあリーダー。一回、名乗りを上げてシメにしないか?』

イガちゃん『名乗りだと?』

トミー『ああ、騎士が高らかに剣を振り上げて……って奴さ。まあ、雰囲気だがよ』

イレブンPM『いいですね。僕も協力しますよ!』

イガちゃん『……よし。では俺がずっと欲しかったこの剣を名乗りとしよう』

能智『いいアイデアだな』

イレブンPM『はい! 僭越ながら僕も叫ばせてもらいます!』

イガちゃん『では……行くぞ! 俺はこの剣に誓う!』

イガちゃん『ここにいる四天王で……この世界をより良い世界に導くと!』

イレブンPM『おう!』

イガちゃん『この……レバ剣で!』
イレブンPM『その……聖剣フェニックスで!』

全員『……え?』

619: 2010/09/05(日) 23:07:42.81 ID:NvatqRAQO
イガちゃん『おい貴様。名前を間違えているぞ、これはレバ剣という最強の武器のはずだ?』

イレブンPM『あの……レバ剣てなんですか?』

イガちゃん『む?』

イレブンPM『このゲームで最強のレアアイテムは、聖剣フェニックスという武器になります。七色に輝くその剣が……ほら』

イガちゃん『……おい、レバ剣は一体どこにあるんだ』

イレブンPM『いえ、ですから……このゲームにレバ剣というアイテムは無いんですってば』

イガちゃん『なにぃ?』

イレブンPM『無いんですってば』

全員『……』

620: 2010/09/05(日) 23:12:16.75 ID:NvatqRAQO
藤本「バ、バカだこいつら。感動して名乗りをあげてしまった自分が恥ずかしい……」

イガちゃん『レバ剣以外には興味ない。こんな物はいらん』

スワッシュ!

藤本「ま、まて。そんなに密着して剣を振るな!」

タミー『おおっ、イレブンの体力が点滅している』

トミー『一撃でこんなに減るのか……すごいな』

能智『さすが最強の剣だな』

イガちゃん『こんな物いらん!』

スワッシュ

イレブンPM『ぎゃああああ』

藤本「し、氏んじまった! またレベル下がってるじゃねえかチクショウ!」

622: 2010/09/05(日) 23:17:15.36 ID:NvatqRAQO
チャリン

チャリン

チャリン

藤本「……くっ、俺の装備と金が全部ばら蒔かれちまった! まあ、ここは過疎地だ、誰かにアイテムを拾われるなんて事は……」

イガちゃん『む、金だ金だ』

タミー『おっ、この装備……俺のよりつええぜ!』

藤本「バカ野郎! それは買える物の中で一番レアな奴だ。気安く触る……」


623: 2010/09/05(日) 23:24:54.86 ID:NvatqRAQO
トミー『この魔法、レベルMAXだぜ!』

能智『このアクセサリーだって、付加能力がヤバいくらいだぜ!』

藤本「おい! なんで仲間の俺から出た装備をパクってるんだ! おい!」

イガちゃん『……あ、俺たちはそろそろ帰るから。さらばだ、イレブンよ』

……。

藤本「……全員ログアウトしやがった」

藤本「俺があの装備を揃えるのにどれだけ時間をかけたと思ってるんだ……あんな奴らと関わったばかりに……」

624: 2010/09/05(日) 23:26:41.13 ID:NvatqRAQO
藤本「……丸裸だ」

藤本「これからどうするか……もう、俺には何も無い……くそっ!」

プルルルル

藤本「誰だ! こんな時に!」


決闘場所

アイツ「おう、見てくれよ藤本! 財布にボンタンや短ラン……根こそぎ奪ってやったぜ!」

藤本「……!」ブチブチブチッ

アイツ「……あ、そういやこんな剣を持ってる奴がいたんだけどよ」

スワッシュ!

藤本「無闇やたらに所持品を奪うんじゃねえ!」ドガシッ!

生徒「もう、何も信じられねえな……」

生徒「いや、剣て何だよ……」

藤本はこのネトゲを辞めました。

627: 2010/09/05(日) 23:32:49.40 ID:NvatqRAQO
相撲部

部長「よし、かかってこい!」

副部長「どすこい!」

ペタッ

パタン

部長「……よし、もういっちょうだ!」

副部長「どすこい!」

ペタッ

パタン

部長「……」

……。

629: 2010/09/05(日) 23:37:30.81 ID:NvatqRAQO
部長「よし、今日の稽古はこれまでだ」

副部長「ごっつぁんでした!」

部長「……なあ」

副部長「はい?」

部長「どうしてまたいつも通り部員が二人になっているんだろうな」

副部長「あいつら、最近相撲部に全く顔を出さないんですよね」

部長「……奴らの心が相撲から離れてしまったか」

副部長「そ、そんな悲しい事言わないで下さいよ!」

部長「だが、奴らはもうここには来ていない。それが何よりの証拠じゃないのか?」

副部長「部長……」

630: 2010/09/05(日) 23:45:24.37 ID:NvatqRAQO
次の日

副部長「部長はああ言ったが、俺はもう一度奴らと話し合ってみるぞ」

副部長「一度は土俵にあがった仲間だ……同じちゃんこを食った友人だ、俺の言葉が届かないとは思わん」

副部長「……ここが奴らのいる教室か。なんだか中が騒がしいな」

ワイワイ ガヤガヤ

副部長(くっ、この教室はこんなに盛り上がっていると言うのに……それに引き換え我が相撲部は……)

副部長(ええいっ、ままよ!)

ガラガラッ!

副部長「おい、神山! 林田!いるか!」

梓『私とセッションしましょう!』

副部長「……」

ピシャッ

631: 2010/09/05(日) 23:54:14.57 ID:NvatqRAQO
副部長「なんだ今のは……」

副部長「ここ、学校の中だよな。あの変な置物は……」

副部長「……」

ガラガラッ。

梓『私とセッションしましょう!』

副部長「……」

ピシャッ

副部長「奴が門番かのように立ちふさがっているため、教室に入れない……」

副部長「いや、薄そうな生地だったし、手で押し退ければ簡単に倒れるような代物なんだろうが……」

副部長「この、なんだろう。手を出せないもどかしさ……」

副部長「この、胸のドキドキは一体なんだ……?」

633: 2010/09/06(月) 00:00:48.36 ID:drOZ7Km1O
副部長「落ち着け……あれは所詮、絵とか紙とか段ボールかそんな物だ」

副部長「そうだっ! なにを勝手にときめいているんだ俺は!」

副部長「……しかし、彼女に手をあげる事はできん。それは俺の本能が否定している」

副部長「……スーハー、スーハー」

副部長「よし、優しくそっと彼女にツッパリしよう」

634: 2010/09/06(月) 00:05:21.99 ID:drOZ7Km1O
副部長「うん、それがいい。それなら彼女も怖がるまい」

副部長「……たかが絵にそんな優しさを抱くとは、俺も十分変わり者だ。神山達を笑えないな」

副部長「……よし!」

ガラガラッ!

副部長「す、すまないがここを通してもらえな……」

紬『ふふっ、お茶の時間にしましょう?』

副部長「う、うわあああぁぁぁああ!」バキッ

神山「……あ、副部長がムギちゃんの首を折ってるぞ」

林田「せっかくゴリラがまた集めてきたのによお」

ゴリラ「んゴ」

副部長「……」


ベンチ

副部長「弁償だって……」

そんなにビビることねえだろ。

635: 2010/09/06(月) 00:09:58.07 ID:drOZ7Km1O
神山「……で、僕たちに何の用ですか、副部長」

副部長「神山、お前ら最近相撲に顔を出してないようだか、何かあったのか?」

神山「ああ、今は僕たちけいおん部として活動しているんですよ」

副部長「けいおん部だと。あの紙人形もけいおん部とやらに関係があるのか?」

紬『ふふっ







林田「可愛そうに、あんなに首が垂れ下がっちゃって」

副部長「ええい、弁償すると言っているだろうが! そもそもけいおん部とは何なんだ!」

神山「はい、それはですね……」

639: 2010/09/06(月) 00:17:20.37 ID:drOZ7Km1O
副部長「……ほう、そんな漫画があるのか」

神山「ええ、大人気御礼。今や社会現象の一つと言っても過言では無いくらいです」

副部長「な、なに! おい、可愛い子が楽器を弾くだけでそんなに人気が出るのか」

神山「まあ、大まかに言えばそうでしょうね」

副部長「……」

副部長「なあ神山。もし可愛い子が相撲をやったら……相撲部の人気が出たり、もっと相撲界が盛り上がるとは思わないか?」

神山「……いえ、僕はそうは思いません。そもそも土俵は女性が立つ場所ではない、と聞きましたが」

副部長「う……まあ、女性力士も全くいないわけではないが……」

神山「でも人気のある作品が世に出るかは別でしょう。相撲人気が復活するとも限りませんし」

640: 2010/09/06(月) 00:22:03.43 ID:drOZ7Km1O
副部長「……結局、相撲が人気になるのとけいおんがブームになるのは違うか」

神山「……」

副部長「そうだよな……可愛い女の子が相撲をやる理由なんてないもんな」

神山「……いえ、そうとも限りませんよ」

副部長「む?」

神山「僕にいい提案があります。後は部長さんと少し考えてみて下さい」

副部長「ん……」


相撲部

紬『ふふっ、お茶の時間にしましょう』ブラン ブラン

部長「……で、この首の折れたポップを貰って来たわけか」

副部長「はい……」

部長「不気味だ……」

副部長「今にも首が取れそうですものね」

部長「こいつを一体どうしようと言うんだ」

副部長「う~ん……」

641: 2010/09/06(月) 00:26:55.06 ID:drOZ7Km1O
部長「とりあえず、首を補修しよう。ブラブラして見ていられない」

副部長「は、はい。でも、ここにはテープや板なんて何も……」

部長「……」

ガラガラッ

林田「邪魔するぜ」

副部長「ん……林田か。珍しいな」

林田「いえ、ちょっとムギちゃんについて神山から伝言を預かってな」

部長「伝言?」

神山『彼女たちが相撲をすれば、ブームは必ず来る』

林田「……とね」

副部長「彼女? この……けいおんメンバーがか?」

副部長「……」

642: 2010/09/06(月) 00:32:39.67 ID:drOZ7Km1O
副部長「この首の折れたポップが……ねえ」

部長「相撲、相撲……相撲といえば……マワシか?」

副部長「マワシ? あっ、もしかしたら」シュル シュル

副部長「……ほら、マワシを首に巻いたら、首がガッチリくっつきましたよ!」

部長「ほー、やるな」

副部長「彼女たちが相撲をとったら……何となくわかる気がしますね! きっと相撲ブームが復活して相撲人口増える事間違い無しだ!」

部長「……」

部長「まあ、細かい事は聞かないけどよ」

副部長「はい?」

部長「この……首の折れたポップは一体どう活かせばいいんだ? 相撲とはあまり関係無いし」

副部長「……」

部長「彼女たちがやってるのは楽器なんだろ?」

副部長「楽器、けいおん、相撲……」

副部長「……そうだ」

653: 2010/09/06(月) 04:46:07.11 ID:drOZ7Km1O
次の日

部長「よし、今日も稽古を始めるぞ」

副部長「……」

副部長「あの、すいません。その前にちょっとお話が」

部長「ん?」

……。

部長「トントン相撲?」

副部長「ええ、あの台の上で紙の人形を使ってやる……あのトントン相撲です」

部長「それがどうかしたのか?」

副部長「この、彼女の等身大ポップを使ってそれをするんですよ!」

部長「……」

副部長「……」

654: 2010/09/06(月) 04:50:25.10 ID:drOZ7Km1O
部長「なあ、お前のその何とか相撲を人気にしたいっていう気持ちはわかる。けど……彼女たちは楽器をやりたいから楽器をやってるんだろ?」

副部長「え……」

部長「それをよ、いきなり明日から楽器をやめて相撲をやってくれなんて……いくら漫画のキャラとは言え、なんか違う気がしないか?」

副部長「部長……」

部長「お前、明日から音楽をやれって言われて、ハイわかりました、ってできるか?」

副部長「あまり興味は無いですね」

部長「だろ。俺たちは相撲しかできないんだよ……けいおんなんて、無縁の存在だったんだ」

副部長「部長……」

655: 2010/09/06(月) 04:56:31.47 ID:drOZ7Km1O
部長「……まあ、この紬ちゃんだっけ? これを返すついでに……今日は神山たちの部活具合でも見学しないか?」

副部長「あいつらのけいおん部をですか?」

部長「ああ、離れているとはいえ部員だ。近況も気になるしな」

副部長「……はい」


教室

ガラガラッ

副部長「よう、お前たち。紬ちゃんを返しにきたついでに、お前らの様子を……」

神山「どすこい。どすこい」

前田「おっ、やるなフレディ」パチン パチン

ゴリラ「ンゴ」がっぷり

子分「うおっ! 押し出し負けだ!」

部長「……」

林田「……お、部長たちじゃねえか。いやあ、なんか急に体を動かしたくなってよ。今日の部活内容は相撲の練習をしている所なんだ」

副部長「もう、けいおんも何も関係ねえじゃねえか!」

……ごもっとも。

656: 2010/09/06(月) 05:08:12.53 ID:drOZ7Km1O
のなー「ネタがない」

担当「はい」

おわり

701: 2010/09/07(火) 09:00:41.73 ID:4wA9uDpIO
神山「突然ですけど僕、手品ができるんですよ」

前田「本当に唐突だな……」

北斗「ふむ、練習も飽きた。娯楽代わりに見せてもらおうか」

前田「いや、全く楽器弾いてないけどな……」

神山「では、誰かこのカーテンの中に入って下さい。僕が消してご覧になりましょう」

全員「……」

神山「誰かいませんか?」

林田「はい、はい! 俺が入るぜ」

神山「では林田君、どうぞ」

スッ。

703: 2010/09/07(火) 09:04:42.35 ID:4wA9uDpIO
神山「では、今からこの中にいる林田君が瞬間移動をします……はいっ!」バッ

子分「あ、ほ、本当に消えている!」

北斗「むう、やるな神山」

子分「き、消えた林田は一体どうなったんだ?」

神山「ご安心を。ちゃんと後ろにあるロッカーから……」

部長「……懐かしいな」

副部長「はい。以前このマジックで部長が消えてしまいましたからね。まあ、そう何度も人が消えるなんて……」

ガチャリ。

神山「……」

部長「消えてる……」

704: 2010/09/07(火) 09:10:12.72 ID:4wA9uDpIO
神山「あれ~、おかしいな~?」

北斗「おい神山よ、どうなっているのだ」

神山「いやあ、本当はこのロッカーから林田君かゴリラが出てくるはずなんですけど……」

前田「林田かゴリラってのもおかしいだろ……」

ゴリラ「ンゴ」

副部長「今回はゴリラもここにいる……」

部長「……もしや林田も、俺と同じようにマワシの国に行ったのか」

北斗「マワシの国、だと……」

部長「ああ、詳しくは説明しないが、とにかくこことは違った世界だった……」

神山「……」

神山「さ、他にマジックに協力してくれる方はいませんか?」

北斗「おい、林田はいいのか!」

神山「彼ならきっと大丈夫。すぐに戻ってきますよ」

前田「消した本人がそう言えるのも、すごい話だな……」

705: 2010/09/07(火) 09:18:00.11 ID:4wA9uDpIO
『あ……今日は私が一番のりぃ!』

……。

林田「む……ここはどこだ?」
ガタガタ

林田「目の前が真っ暗だ」

『……ま、動いた?』

林田「……そうか、神山のマジックに付き合ったからか。」

林田「ロッカーの中か……神山め、狭い場所に移してくれたな。くっ……」

ガタン ガタン

『っ! ……な、なんかガタガタ言ってるよお!』

706: 2010/09/07(火) 09:19:34.24 ID:4wA9uDpIO
『だ、だれか中にいるの……?』

林田「くそ……このっ! 開けっ!」

バァン!

林田「ふ~、やっと出てこれた……おい、神山よ。今度はちゃんと段取りを……ん」

唯「……」

林田「お前は……も、もしかしてゆ……!」

唯『き、きゃああああ!』ダダダダッ

林田「ま、待てっておい!」

林田「……行っちまった」

林田「今のは……そう、紛れもなく唯ちゃんだった」

林田「それにこの部室、ここは……あの高校なのか?」

708: 2010/09/07(火) 09:24:00.80 ID:4wA9uDpIO
林田「待てよ、落ち着け。以前もマンホールに落ちて別の世界に行った事はあったが……今回はまた話が違う」

林田「俺は神山のマジックで、いつの間にか目の前が真っ暗になって」

林田「気が付いたらこの……けいおん部のロッカーの中にいた。そして唯ちゃんと思える人物に……むう」

バタバタ バタバタ

林田「はっ……まずい、誰か来る!」

709: 2010/09/07(火) 09:28:32.98 ID:4wA9uDpIO
律「モヒカン~?」

唯「ほ、本当にいたんだよ! こう……ロッカーから、バァ~ンって!」

律「おいおぃ、夢でも見たんじゃないの~?」

唯「りっちゃんだって見ればわかるよ!」

律「はいはい。まあ、暇だから別にいいんだけどなぁ~」

唯「……あ、開けるよ」

律「はいよ」ガチャリ

唯「は、早いよりっちゃん! 中にいるって……あ、あれ?」

ガラーン

律「全く~。何がモヒカンだよ~、ちょっとワクワクしちったじゃないか~」

唯「た、確かにいたんだよぉ~……」

710: 2010/09/07(火) 09:31:57.89 ID:4wA9uDpIO
唯「そ、そうだ! ロッカーだよ、ロッカーに隠れてるんだよ」

律「……ここにか?」

唯「そこから出てきたんだもん! 本当だもん!」

律「ほいよっ」ガチャリ

律「き、きゃあああ……」

唯「りっちゃん!」

ガラーン

律「へへっ、なんてな~。誰もいないっての」

唯「に、逃げちゃったのかな~……」

律「ハァ、これで安心したか、唯」

唯「……うん。少し、ありがとうねりっちゃん!」

律「おう、リーダーにドンと任せとけって」

唯「えへへ~」

711: 2010/09/07(火) 09:35:03.38 ID:4wA9uDpIO
……。

『多分、林田君は……』

林田「ん、この声は……神山か!?」

ガチャリ

北斗「む、おお、林田!」

林田「こ、ここは……元の教室か」

神山「ほらね、すぐに戻ってきたでしょう」

子分「一時はどうなるかと思ったけどな」

部長「……マワシの国には行っていないようだな」

林田「……」

林田「みんな、ちょっと聞いてくれないか。本当にあった話だ」

北斗「む……」

712: 2010/09/07(火) 09:39:02.97 ID:4wA9uDpIO
林田「……という事があったんだ。信じられないとは思うけどよ……」

全員「……」

神山「林田君。僕は君の話を信じるよ」ポンッ

林田「神山……」

北斗「あながち信じられないが、夢があるいい話ではないか」

部長「俺の実体験の例もある……一概に嘘とは言えないな」

林田「みんな……」

子分「行けるもんなら、俺だって行きたいくらいだぜ」

北斗「きっかけは神山のマジックだったな……よし、神山よ」

神山「はい?」

北斗「もう一度そのマジックをやってみせてくれ。今度は俺が入ってみよう」

713: 2010/09/07(火) 09:45:11.13 ID:4wA9uDpIO
桜ヶ丘高校

唯「あ、安心したらお手洗い行きたくなっちゃった! ちょっと行ってくるね」ダダダダッ

律「お~、気をつけてな~」


律「……全く、そんな怪しい人間いるわけないだろ」

律「唯も案外臆病なんだな。私だったらこう……大声あげて変質者なんか撃退……」

ガタガタ

律「ひっ!」

ガタガタ ガタガタ

『む……狭い。ここが例のロッカー』

律「な、な、な、な、なに……」

714: 2010/09/07(火) 09:48:42.26 ID:4wA9uDpIO
ガタガタ バタンッ!

『とう!』

律「ひいいっ!」

北斗「む、確かにここはクロマティ高校ではない……む!」

律「い、い……」

北斗「なるほど、話は本当のようだ、おい貴様!」

律「」

北斗「……貴様に用はない。おい、今すぐムギをここに」

律「ひ、ひやぁああああ!」
ダダダダッ

北斗「やれやれ……これだからりっちゃんは」

北斗「……ふむ。ここがけいおん部の部室か。落ち着く」

北斗「しかし、部員が誰もいないのではここにいる意味が無いな」

北斗「……一度戻るか」

715: 2010/09/07(火) 09:52:58.94 ID:4wA9uDpIO
クロマティ高校

ガチャッ

北斗「戻ったぞ」

神山「あ、おかえり。どうだった」

北斗「林田の話は本当だ。どうやら神山のマジックとこのロッカーを使えば、桜ヶ丘高校に行けるらしい」

林田「……ん、北斗。お前何持ってるんだ?」

北斗「りっちゃんのカチューシャだ。逃げる時に落としたらしい」

前田「逃げるって……」

神山「いや、彼女たちからしたら僕たちは別世界の人間だからね。驚くのも無理はないよ」

前田「もっと違う事で逃げたと思うんだけどよ、こいつら見た目とか……」

林田「じゃあ、次は誰が行くんだ?」

716: 2010/09/07(火) 09:59:25.88 ID:4wA9uDpIO
桜ヶ丘高校

律「ほ、本当だって! 変な白い服着たおっさんがロッカーの中から……」

澪「……」

紬「……」

律「頼む! 一緒に来てくれ、この通りだ!」

澪「そりゃあ部活だから行くけどさ……」

紬「本当にそんな事があったの?」

律「ああ、唯だってモヒカンの男を見ているらしいんだ。あのロッカーには……何かがいる!」

澪「あ、あんまり怖い事言うなよ……」

紬「ちょっとだけ楽しみだわ~」

律「そんな楽しみな事じゃないんだって……もう、あの雰囲気だけで……」

澪「相当怖い体験をしたみたいだな……」

717: 2010/09/07(火) 10:05:09.98 ID:4wA9uDpIO
部室前

梓「……あ、みなさん来ましたよ」

唯「あ、お~い」

律「唯! 出たぞ、例の怪しい……モヒカンじゃないけど変な男が!」

唯「えっ!」

澪「まあ、そんなのいるわけないけどな」

律「……それが澪の最期の言葉だった、と」

澪「変な事を言うな!」

紬「調べてみればわかるわよ」

唯「う、うん……じゃあ、行くよ!」

ガチャッ

律「そ~っと、そ~っとだぞ……」

719: 2010/09/07(火) 10:08:19.32 ID:4wA9uDpIO
紬「わくわく」

澪「……」

シーン

唯「部室にはいません、りっちゃん隊長!」

律「油断するなよ~、ロッカーだ。ロッカーから来るぞ」

澪「この空きロッカーか?」

唯「そうだよ、中からモヒカンがバァ~ンと」

律「私は白い親父だった」

梓「本当ですかぁ?」

唯「油断しちゃダメだよあずにゃん」

律「そうだぞ~、今は静かでもそのうちガタガタとロッカーを揺らして……」

ガタガタ ガタガタ

澪「ひいっ!」

紬「ほ、本当に揺れてる」わくわく

律「や、やっぱり来たか……」

720: 2010/09/07(火) 10:15:22.87 ID:4wA9uDpIO
ガタガタ ガタガタ

澪「ま、まさか本当に……」

ガタン!

唯「……な、中にいるのは誰!」

……ガチャッ

全員「ドキドキ……」

スーッ

バンチョーちゃん「……」

全員『か、かわいい……』


クロマティ高校

林田「ああっ、りっちゃんのカチューシャが!」

神山「こら、黄色いけどそれはバナナじゃないよ」

ゴリラ「ンゴ?」シャグ シャグ

前田「結局食ってる……」

バンチョーちゃんならオッケー。

722: 2010/09/07(火) 10:21:40.21 ID:4wA9uDpIO
バンチョーちゃん「……」カキ カキ

律「なるほど、手品でねえ……」

澪「そのロッカーがそんなと繋がっているなんて……」

唯「ねえ、バンチョーちゃんの中には誰が入ってるの!」

バンチョーちゃん「……!」ドカッ

梓「あっ、壁に穴が……」

紬「唯ちゃん、そういう事は言っちゃダメよ」

唯「ご、ごめんなさい……」

唯(あ、あれ、なんで怒られるんだろう、私)

バンチョーちゃん「……」スタスタ

澪「もう帰るのか?」

バンチョーちゃん「……」コクッ

紬「他のお友達も連れてくるんですって」

律「そっか~、気をつけてな」

唯(って言うかムギちゃん言葉を理解している……?)

723: 2010/09/07(火) 10:29:05.94 ID:4wA9uDpIO
唯「と、とりあえず変な人じゃなかったね」

律「私たちが見た時は変な人だったんだけどな~」

澪「そこまで言われると見てみたい気もするけど……」

梓「あの様子じゃあ、すぐに新しい人が来るんじゃないですか?」

紬「ふふっ、今度はどんな人かしら~」

ガタガタ

律「おっ、噂をすれば」

ガッタン ガッタン

724: 2010/09/07(火) 10:29:36.86 ID:4wA9uDpIO
唯「な、なんかずいぶん激しく揺れてるよ~」

澪「体が大きくて詰まってるのかな?」

ガタガタ……

紬「開けてあげましょう。よいしょ」

ガチャリ

フレディ「……」

全員『……』


クロマティ高校

林田「フレディ一人で大丈夫かなあ」

神山「彼は紳士だからね、きっと大丈夫だよ」

前田「……そういう問題かあ」

お茶だけ飲んで帰ってきました。

725: 2010/09/07(火) 10:33:29.35 ID:4wA9uDpIO
律「……なあみんな。さっきから変な人間ばかりじゃないか?」

唯「モヒカンに白いのに……あ、着ぐるみの人は可愛かったな~」

梓「唯先輩! 次、着ぐるみなんて言ったら私が怒りますよ!」

唯(……私なんで怒られてるのかなぁ)

澪「それにさっきの外人か……思わず叫びそうになっちゃったよ」

紬「半裸だったしね~」

律「一体なんの集まりなんだ、奴らは……」

澪「確かに、少し気になるな」

紬「次に来た人に、ちゃんとお話を聞いてみるのはどうかしら?」

唯「さんせい、さんせい~」

ガタガタ

梓「あ……」

726: 2010/09/07(火) 10:37:30.17 ID:4wA9uDpIO
律「もう、この音にも慣れたな」

澪「あれだけ人が来ればな」

唯「……次も変な人だったらどうしよう~」

紬「大丈夫、私たちも慣れてきているはずよ」

梓「その言い方はちょっとひどいですよ……」

ガタガタ

……ガチャリ

律「よ、いらっしゃい~。けいおん部へようこ……」

ゴリラ「……」

全員『……』


クロマティ高校

林田「おい、ゴリラがいつまで経っても戻ってこねえぞ!」

神山「彼一人はまずかったかなあ……」

バンチョーちゃん「……」

保健所へゴーゴーマニアック。

749: 2010/09/07(火) 19:32:56.59 ID:4wA9uDpIO
保健所トラック『ブロロロロォ』

律「……ふう」

澪「……」

紬「……」

唯「……」

梓「……」

律「なんだったんだろうな、アレは」

澪「ゴリラ……だろうな」

唯「こ、怖かったね~」

紬「そうかしら? 何だか優しい目をしていたように見えたけど」

梓「なんか、可愛らしかったですよね」

唯(……マジで?)

750: 2010/09/07(火) 19:39:06.69 ID:4wA9uDpIO
律「……今日はもう帰るか。ロッカーの中も打ち止めみたいだしな~」

澪「じゃあみんな、また明日」

梓「さよなら~」

……。

唯「た、ただいまぁ~」

憂「おかえりなさい、お姉ちゃん。どうしたの? 何だかすごい疲れているみたいだけど……」

唯「今日の出来事もそうだけど、説明するのも疲れるよ~」

憂「そう……よっぽどの出来事があったんだね?」

753: 2010/09/07(火) 19:43:24.47 ID:4wA9uDpIO
唯「でも、これ聞いたら憂びっくりして腰抜かしちゃうよ~」

憂「え、なになに? 逆に楽しみだよ~」

唯「えへへ~、実はね……今日学校にゴリラさんがいたんだよ!」

憂「……」

唯「びっくりした~?」

憂「あのさ、違ったらごめんね、お姉ちゃん」

唯「んっ?」

憂「もしかして、今日学校にいたゴリラさんって……この人?」

ゴリラ「ンゴ」

唯「……」


ソファー

唯「なんであたしんちにいるのよ……」

ゴリラ「ンゴ」

これでもゴリラ、喜んでいます。

754: 2010/09/07(火) 19:48:55.90 ID:4wA9uDpIO
唯「……」

憂「あ、机拭いてね~」

ゴリラ「ンゴ」フキフキ

唯「……」

ゴリラ「ンゴ」カチャッ カチャッ

憂「はい、食器並べてくれてありがとう~」

ゴリラ「ンゴ」

唯「あの、ちょっといいかな?」

憂「ん、どうかした、お姉ちゃん?

唯「あのさ、なんで彼……いえ、ゴリラさんはここにいるの?」

憂「この人帰る場所が無いんだって。もう学校にも入れないから……」

唯「いやいや、なんでここなのさ!」

憂「だって……道をさ迷っていたから可愛そうで……」ウルウル

唯「憂が拾ったんかい!」

ゴリラ「……」

755: 2010/09/07(火) 19:53:43.48 ID:4wA9uDpIO
憂「でもお家の手伝いもしてくれるし……いい人なんだよ」

ゴリラ「ンゴ」

唯「……あのさ、ちょっといいかな?」

憂「ん?」

唯「憂には、この人が……どんな姿に見えるの?」

憂「ゴリラさんでしょ?」

唯(……一応ゴリラには見えてるんだ)

唯「あのさ、おかしくない?」

憂「なにが?」

唯「ゴリラだよ?」

憂「ゴリラさんだね~」

唯(憂は優しすぎるよぉ……)

757: 2010/09/07(火) 19:56:28.58 ID:4wA9uDpIO
唯「保健所に連絡しようよ」

憂「……それは可愛そうだよ」ウルウル

唯「うぅ……」

ゴリラ「……」ガチャリ

憂「あっ、待ってゴリラさん!」

唯「あ……」

憂「ど、どうしよう、出ていっちゃったよ!」

唯「だ、大丈夫だよ、野生だからきっと生きていけるよ!」

憂「だって……野ざらしなんて可愛そうだよ……」ウルウル

唯「……」

憂「わ、私探して来る!」ガチャッ

唯「う、憂~、ご飯は~!」

唯「……行っちゃった」

758: 2010/09/07(火) 19:59:41.61 ID:4wA9uDpIO
……。

唯「もう……みんな何か変だよぉ」

唯「……お腹すいたぁ~」

唯「テレビでも見よう、あ……」

唯「リモコンがきっちり整理されている。机も床もピカピカ」

唯「これ、憂だけじゃなくてゴリラさんが?」

唯「……」

唯「確かに、いい人なのかもしれない。そうだよね、ゴリラさんは何も悪い事はしてないもんね」


唯「帰ってきたら……謝ろうかな」

759: 2010/09/07(火) 20:04:47.02 ID:4wA9uDpIO
ガチャッ

憂「ただいまぁ~」

ゴリラ「ンゴ」

唯「お、おかえり!」

憂「ゴリラさん、お買い物してくれてたんだって~。お姉ちゃんの分もちゃんと……」

唯「あ、あの。ごめんねゴリラさん」

憂「お姉ちゃん?」

唯「色々とお家の事手伝ってくれて……ありがとうね」

ゴリラ「……」コクッ

憂「これで仲直りかな? ふふっ」

唯「うん! お腹すいたよ憂!」

760: 2010/09/07(火) 20:06:19.57 ID:4wA9uDpIO
憂「すぐご飯にするね。今日はゴリラさんがお寿司を握ってくれるんだって!」

ゴリラ「ンゴ」

唯「ゴリラが……寿司?」

……。

憂「あははっ、中とろ美味しい~」

ゴリラ「ンゴ」

憂「あ、あと玉子お願いね」

ゴリラ「ンゴ」

憂「おいしい~♪」

唯「……」




ソファー

唯「憂、馴染みすぎだよぉ……」

できた妹、憂ちゃん。

762: 2010/09/07(火) 20:10:00.50 ID:4wA9uDpIO
唯の部屋

唯「……うん、美味しかった」

唯「やっぱり、悪いゴリラさんじゃないみたい……」

唯「よ~し! 景気付けにギターでも弾こっ!」

ギュイーン

唯「うん、ギー太絶好調!」

コン コン

唯「んっ、憂? どうぞ~」

ゴリラ「ンゴ」ガチャリ

唯「あ、ゴリラさん。どうかしたの?」

ゴリラ「……」スッ

唯「え、ギター? あ、私のギー太とおんなじ! ゴリラさんの?」

ゴリラ「……」コクッ

唯「もしかして、一緒に弾きたいの?」

ゴリラ「……」コクッ

763: 2010/09/07(火) 20:13:53.95 ID:4wA9uDpIO
唯(すごい、このゴリラさん……指さばきも、音の感じも!)

ゴリラ「……」

唯「えへへっ、何だか楽しくなってきたよ!」

ゴリラ「……」コクッ

憂「お姉ちゃん、宿題やった~?」ガチャリ

唯「……え、宿題?」ピタリ

憂「うん、明日は小テストもあるんだから勉強するんでしょ?」

唯「わ、忘れてたよ~! うわ~、早く勉強しないと。ごめんねゴリラさん、ギターはまた今度ね!」

ゴリラ「……」コクッ

764: 2010/09/07(火) 20:16:37.27 ID:4wA9uDpIO
唯「ええっと、この問題が……む~っ……」

唯「だ、ダメだぁ! わかんないよ~。こんなんじゃ明日のテストも、うう……」

ゴリラ「……」スッ

唯「ん、な~に? え、ここの公式を……あ、本当だ」

ゴリラ「……」

唯「そっか、ここはさっきの問題と同じだね!」

ゴリラ「……」コクッ

唯「こ、これなら何とか勉強できるよ、ありがとうゴリラさん!」

ゴリラ「……」

766: 2010/09/07(火) 20:19:30.07 ID:4wA9uDpIO
次の朝

唯「くぅ~……くぅ~……はっ!」

唯「し、しまった! つい机で寝ちゃっ……あれ?」

唯「毛布なんてしてたっけ? まさか、ゴリラさんが……?」

コンコン

憂「お姉ちゃん、起きてる~?」

唯「あ、うん。今行くよ憂~」

唯「……えへへっ」

767: 2010/09/07(火) 20:23:19.19 ID:4wA9uDpIO
憂「あ、おはようお姉ちゃん」

唯「おはよう。あれ、ゴリラさんは?」

憂「うん、学校が開いたら早めに帰るんだってさ。みんなに見つかると迷惑になるからって」

唯「そう……なんだ」

憂「昨日宿題一緒にやってたよね?」

唯「うん、これでテストもバッチリだよ! ギターだって一緒に弾いたし!」

憂「ふふっ、お姉ちゃんもすっかりゴリラさんと仲良しだね」

唯「うん……何だか帰っちゃうのが少し寂しいなあ」

憂「お姉ちゃん……」

769: 2010/09/07(火) 20:26:44.00 ID:4wA9uDpIO
通学中

憂「でもさ、そのロッカーからまた来られるんでしょ?」

唯「みたいだけどね~。でも次はいつ会えるかな~?」

憂「信じていれば、きっと会えるよ……だって、あんなに素敵な人なんだもの」

唯「……確かに、色々気を遣ってくれた、いいゴリラさんだったね」

771: 2010/09/07(火) 20:31:41.61 ID:4wA9uDpIO
憂「うん。学校でもきっとみんなの人気者になれるよ!」

唯「見た目はゴリラだけどね~」

憂「あははっ、それはそうかもね。でも、本当は心優しいから……ね」

唯「うん! ……あ、あれ? 学校の周りが何か騒がしいよ?」

憂「どうしたのかな? 生徒いっぱい……」

772: 2010/09/07(火) 20:35:14.22 ID:4wA9uDpIO
さわちゃん「……あ! ゆ、唯ちゃん! 今学校に近づいちゃだめよ!」

唯「な、何かあったの、さわちゃん?」

さわちゃん「なんかね、学校の中にゴリラが逃げ込んだらしいの! 警察の人まで呼んで大騒ぎよ!」

さわちゃん「もう、桜ヶ丘高校始まって以来の大事件よ!」

さわちゃん「噂ではゴリラの皮を被った変質者とか……ああ、想像しただけで恐ろしいわ!」

警察『おい、自衛隊はまだか!』

警察『麻酔銃で眠らせるんだ!』

警察『早く学校を包囲しろ! 相手は怪しいゴリラだ、気を付けろ!』

唯 憂「……」


ベンチ

唯「やっぱり、普通の反応はこうだよね……」

憂「本当は心優しいのにね~」

とりあえず、小テストは無くなった。

773: 2010/09/07(火) 20:40:51.35 ID:4wA9uDpIO
律「ん、あれは……おい~唯~、こっちこっち~」

唯「あ、りっちゃんにみんな~」

澪「おはよう。大変な事になってるな……」

梓「学校は大騒ぎですよ~……」

憂「み、皆さんの知り合いさんだったんですか?」

律「知り合いと言うか、ロッカー仲間というかあ……」

紬「ふふっ。でも、こんな事警察の方には言えないわよね」

唯「ゴリラさん、捕まっちゃうのかなあ?」

梓「だ、大丈夫ですよ! 今頃、ロッカーに入って元の世界に……」

憂「そうだといいね。ちょっと心配、かな」

唯「うん、心配……」

梓「あれ、唯先輩。心配してるんですか?」

唯「昨日一緒にギター弾いたりしてね~。えへへっ、ちょっと仲良し!」

775: 2010/09/07(火) 20:47:36.75 ID:4wA9uDpIO
唯「もしゴリラさんが出てきたらさ、お話してみようと思うの。その人は悪くないって!」

律「そうだな……」

澪「うん、私も協力するぞ」

紬「事情を話せばきっと大丈夫よ。何も悪い事はしていないんだし、ね」

梓「そうですよ! 彼は優しい目をしていますから!」

憂「みなさん……」ウルウル

警察『……確保ぉぉ!』

澪「ピクッ!」

778: 2010/09/07(火) 20:53:37.80 ID:4wA9uDpIO
警察『ほら、道を開けて! ほら、歩け歩け!』

律「く、来るぞ!」

紬「唯ちゃん!」

唯「ま、待って下さい! その人は、悪い人なんかじゃあ……」

神山「ち、ちょっと。いきなり何をするんですか!」

警察『うるさい、さっさと歩け。変態ゴリラ野郎が』

神山「いや、あの……意味がわかりません。僕はただゴリラと入れ替わりに……」

警察『続きは署で聞くから、ほら、歩いて』

神山「あの、ですから……」

バタン。

全員『……』


ベンチ

律「あれ、誰だろうなあ……」

澪「今までで一番まともそうな人だったのにな……」

神山、桜ヶ丘高校の歴史に名を刻む。(大事件で)

780: 2010/09/07(火) 21:00:16.34 ID:4wA9uDpIO
桜ヶ丘高校

律「さ、今日も練習始めようか!」

梓「あ、あんな事があったのにですか?」

澪「て言うか、普通学校だって早退くらいにはなるだろ……」

律「気にしない、気にしない! にしても……あの人もロッカー部の人かな?」

紬「そうかもしれないわね。今までと同じ学生服を着ていたし……」

さわちゃん「へえ、そんな事があったんだ。にわかには信じられないけど……」

唯「……」

唯「そもそも、どうしてロッカーから色んな人が出てくるんだろうねえ?」

梓「このロッカーに、何か秘密があるんですかね?」

ガラリ。

神山「それには僕がお答えしましょう」

全員『!』

781: 2010/09/07(火) 21:06:10.78 ID:4wA9uDpIO
さわちゃん「き、君は確か……今朝警察に連れていかれた……」

神山「神山です。けいおん部のみなさん、初めまして」

全員「……」

神山「ん、どうしましたか?」

律「いや、なんか」

澪「礼儀正しいなあ、と」

神山「初対面なんですから、当然です。挨拶をしなければ話すきっかけも生まれませんからね」

唯(……朝はすごいきっかけだったけどなあ)

さわちゃん「そ、それで。どうして君が学校のな、なかに……?」ブルブル

律「さわちゃん、震えすぎ」

782: 2010/09/07(火) 21:10:23.01 ID:4wA9uDpIO
唯「……マジックだったんだ~」

梓「なるほど、それなら納得ですね」

澪「いや、それだけで納得するのもどうかと思う……」

紬「あ、あの。そのマジック見せてもらえませんか!」

唯「……え?」

律「いいねえ~、面白そうじゃん!」

澪「お、おい律」

神山「僕は構いませんよ。その方が勉強した甲斐もあったというものですから」

律「いやった~♪」

さわちゃん「……でも、いきなり人が消えるマジックは怖いわねえ」

神山「あ、でしたら、まずは他の物から試しましょう」

唯「物から?」

783: 2010/09/07(火) 21:15:10.45 ID:4wA9uDpIO
神山「そこで髪を垂らしているあなた」

律「……」

唯「りっちゃん、髪止めないと私そっくり!」

律「どこかに落としちまってさ……それで、髪がどうしたんだよ!」

神山「まま、落ち着いて下さい。いいですか、この箱の中をご覧下さい」

紬「なにも、なにも入っていないわよ!」わくわく

梓「ムギ先輩、はしゃぎすぎです」

神山「はい、ここに布を被せて……ハイッ」

パッ。

唯「こ、これは!」

784: 2010/09/07(火) 21:19:18.92 ID:4wA9uDpIO
神山「はい、出てきました」

律「……これは確かに私のカチューシャだけどさあ」

カチューシャ(ボロボロ)

律「何で、あちこちに噛んだ痕があるんだよ!」

神山「……あ、すいません。ゴリラが噛んだのを忘れていました」

紬「ふふっ、お茶目なゴリラさんなのね」

律「……いや、でも、さすがにこれはさぁ」ボロボロ

唯「ねえねえ、新しい物は出せないの?」

神山「やってみましょう。では、そのカチューシャを箱の中に」

澪「物々交換みたいなものなのかな?」

さわちゃん「ち、ちょっと興奮するわね」

785: 2010/09/07(火) 21:25:46.05 ID:4wA9uDpIO
神山「では、いきます。ワン、ツー、スリー」

パッ

律「お……おお?」

神山「ふふっ、どうですか?」

さわちゃん「す、すごい! 確かに、これはりっちゃんのカチューシャとは違う!」

澪「……でも、何これ?」

律「なんか、頭の部分にアンテナが生えてるような」

神山「……え?」

神山「……あ」

神山(これは、高橋先輩の……『アレ』じゃないか)


梓「これ、本当にカチューシャなんですか?」

神山「……とりあえず、頭に付ける物ではあります」

律「なんだその曖昧なの~」

787: 2010/09/07(火) 21:28:19.87 ID:4wA9uDpIO
その頃。

林田「なあ最近よ、高橋先輩のヤツ変わったと思わねえか?」

子分「ああ、何て言うか……頭からオーラが出てるよな」

高橋「……」ボロボロ

林田「俺たちも早くあんな貫禄出せるようになりてえよな!」

メカ沢「ああ、全くだぜ」

前田「……」


ベンチ

前田「ゴリラ噛んでたじゃん……」

高橋先輩の出番は、ここだけ。

788: 2010/09/07(火) 21:34:02.72 ID:4wA9uDpIO
律「ん~……とりあえず、装着!」スチャッ

澪「おおっ、行った」

唯「ど、どう?」

律「……あ、なんだろう、これ。ちょっとつけ心地いいかもしれない」

梓「本当ですか~?」

紬「ふふっ、りっちゃん可愛い~」

律「えへへ~、似合う似合う☆」

神山「……ま、いいか」

神山「と、言うのが僕のマジックになります」

澪「いや、小さく、まいいかって……」

神山「さ、他には何かありませんか!」

澪(うわあ、一番まともだと思っていたのに……)

唯「はい、はい! 私、ゴリラさんのいる世界に行きたい!」

神山「えっ、本気ですか?」

789: 2010/09/07(火) 21:37:34.74 ID:4wA9uDpIO
唯「うん、私たちもそのロッカーを使って違う場所に行きたい!」

さわちゃん「だ、大丈夫? 変な場所に飛ばされちゃったりしたら……」

神山「大丈夫です。僕のはマジックに毛が生えた程度の物ですから、危険はありませんよ」

澪(……いや、実際ゴリラが飛んできてるわけで)

唯「じゃあ、やるやる!」

神山「では、ここに入って下さい」

スッ

唯「えへへ~」

神山「……はいっ!」

ファサッ。

全員『あ……』

790: 2010/09/07(火) 21:42:57.86 ID:4wA9uDpIO
唯「あ、あれ? 何にも変わってないよ~!」

澪「し、失敗?」

神山「……」

梓「本物の唯先輩ですか?」

唯「うん、なんにも変わらないよ~、あずにゃん」

神山「もしかして、こっちから向こうには行けないのかもしれません」

澪「……ちょっとガッカリ」

律「な~」

さわちゃん「んん~、残念。この布で隠すだけで違う世界に行けるなんて、ちょっと楽しみだったんだけど……」スッ

律「まあまあ、実際は世の中そんなうまくは……」

ファサッ。

……。

律「……さわちゃん?」

791: 2010/09/07(火) 21:51:47.55 ID:4wA9uDpIO
澪「さ、さわちゃんが消えた!」

澪「ど、どうするんだよ」

神山「慌てないで下さい。マジックの布ですから……」

唯「そ、そっか。じゃあロッカーからさわちゃんが!」

ガタガタ

梓「あ、久しぶりにロッカーに反応が!」

神山「ほら、所詮はマジックですから。さあ、さわちゃん先生の登場で……」

ガチャッ。

ゴリラ「ンゴ」

全員『……』


ベンチ

律「さわちゃんどこ行ったんだよ……」

神山「以前もこんな事がありました」

澪「やっぱりダメじゃん……」

部長じゃないのに、ね。

792: 2010/09/07(火) 21:57:16.45 ID:4wA9uDpIO
神山「では、僕はそろそろ帰る時間ですので、これで」ガチャリ

律「……無責任すぎるだろ」

ゴリラ「ンゴ」

澪「またゴリラか……」

唯「あの時のゴリラさん」

ゴリラ「……」コクッ

唯「よかった、また会えたね!」

梓「で、でも先生は一体どこへ……」

律「まあ、さわちゃんなら大丈夫さ~。別の場所でも元気に先生やってるよ」

澪「職業上は同じだけど、男子高校だからなあ」

紬「先生なら大丈夫よ、ふふっ」

ゴリラ「ンゴ」

律「……なんだかゴリラが嫌に馴染むなあ」

794: 2010/09/07(火) 22:01:40.39 ID:4wA9uDpIO
クロマティ高校

神山「ただいま~」ガチャリ

北斗「む、遅かったな、神山よ」

神山「いやあ、ゴリラと入れ違いになったら警察に捕まっちゃって」

林田「……相変わらず無茶をする奴だ」

神山「……ところで、このロッカーから誰か出てこなかったかい?」

子分「いや、今日出てきたのは神山だけだぜ。ゴリラもいきなり消えちまったしよ」

神山「……」

林田「何か、気になる事でもあったのか?」

神山「……」

神山「いえ、特には何も」

林田「そうかあ~」

796: 2010/09/07(火) 22:04:24.91 ID:4wA9uDpIO
部長「なあ、神山よ。次は俺をマジックで消してくれないか」

副部長「え、部長も行くんですか!」

部長「ああ、俺もちょっとけいおんにハマって……行きたいと思うんだ、神山よ」

神山「わかりました。じゃあ次は部長に行ってもらいましょうか。ではここに……」スッ

部長「うむ……」

798: 2010/09/07(火) 22:12:28.65 ID:4wA9uDpIO
神山「はいっ」ファサッ

副部長「おおっ、消えた」

林田「で、でもよ……以前はゴリラが出てきたけど……今回は」

ガタガタ

ガチャリ

神山「む……」

さわちゃん「もう、一体ここはどこなのよ~、って、あれ?」

全員「……」

799: 2010/09/07(火) 22:13:01.59 ID:4wA9uDpIO
その頃部長。

王様「おおっ、マワシの戦士ブチョーよ……再びこの地に現れるとは……」

ブチョー「……」


四角い土俵

実況『おおーっと、現役チャンピオン、ブチョー強い! その姿はまるで何かを求め続ける野獣のようだ!』

ブチョー「どうして俺だけここなんだ!」

ディフェンディングチャンピオン、ブチョー!

806: 2010/09/07(火) 22:53:57.66 ID:4wA9uDpIO
神山「ええ、では今の状況をまとめてみましょう。まず、マジックでさわちゃんが消え、ここにいます」

北斗「ふむ」

子分「お、ほ、本物だ!」

フレディ「……」コクッ

さわちゃん(この雰囲気、これが本当に高校生なの? なんかおっさんみたいな人もいるし)

神山「そして、今はゴリラと部長が向こうにいっているはずです」

林田「なるほど……交換留学みたいなもんな」

前田「林田、自信満々で言ってるが頭の良い発言ではないぞ」

神山「いえ、もしかしたらその考えは正しいのかもしれませんよ」

さわちゃん「ど、どういう事?」

神山「とりあえず、図で説明しましょう」

807: 2010/09/07(火) 23:00:14.64 ID:4wA9uDpIO
さわちゃん←→部長、ゴリラ

林田「なあ、神山よ。俺たちはけっして頭がいいわけじゃない。だから聞くが……これはどういう意味だ?」

神山「……つまり、今彼女がここにいるのは、部長とゴリラが向こうにいるから、となります」

北斗「ふむ、何らかの均衡がとれている状態なのだな」

神山「おそらくは。つまり、ゴリラか部長がこちらに戻ったら、さわちゃんはまた消えてしまうかもしれません」

さわちゃん「ま、また暗い場所に行くの!?」

神山「ご安心を、とりあえずはゴリラも部長も向こうにいるでしょう。心配ならさわちゃんは向こうに帰っても大丈夫だと思いますし」

さわちゃん←→部長、ゴリラ

林田「う~ん……」

808: 2010/09/07(火) 23:05:53.27 ID:4wA9uDpIO
神山「林田君、どうかしたかい?」

林田「いやよ、この図……足し算みたいにできねえかなって思ってよ」

前田「足し算?」

林田「ほら、さわちゃんの部分を合計にして、部長とゴリラを数字にしてみれば……」

3=1+2

子分「あ、ああっ、しっくり来るぞ」

神山「林田君にしては冴えてるね」

北斗「うむ、見直したぞ林田」

林田「へへっ、もしかしたら、こっちと向こうはこんな関係なのかもな」

809: 2010/09/07(火) 23:07:54.34 ID:4wA9uDpIO
さわちゃん「……」

神山「じゃあ、名前に戻してみよう。何か謎が解けるかもしれないからね」スッ

子分「謎が解けたら、林田のお手柄だな!」

林田「いやあ、照れるぜ」

さわちゃん「……あのさ、そのまま足し算にしたら変な事に……」

さわちゃん=部長+ゴリラ

全員『……』

さわちゃん「……」


ベンチ

さわちゃん「だから、私言ったのに……」

イジメだよ、これ。

813: 2010/09/07(火) 23:16:03.79 ID:4wA9uDpIO
次の日

子分「あっ、ゴリラさんおはようございます」

さわちゃん「……」

林田「部長、おはようっす」

さわちゃん「……じゃ、ない」

神山「やあ、ゴリ部長、おはようございます」

さわちゃん「変な名前で呼ぶなー!」

神山「一体、何を怒ってるんですか?」

北斗「まったく、ゴリちゃんはワガママだな」

子分「本当っすよー、わっはっはー」

さわちゃん(な、何よ、この学校……雰囲気も悪いし、バカばかりじゃないの!)

神山「早く、ゴリラと入れ替わってゴリラの世界に帰らないんですか?」

さわちゃん(特にこの神山って子……まるで悪意が無いみたいに人をバカにするから、余計に傷つくは……)

816: 2010/09/07(火) 23:23:24.20 ID:Dz3TMQtB0
ところで神山があっち行ったときはどういう手品だったんだ?

817: 2010/09/07(火) 23:23:34.28 ID:4wA9uDpIO
神山「……そうだ、今日は先生に紹介したい子がいるんですよ」

さわちゃん「紹介したい子~?」

ガラガラッ

神山「やあ、伊東君」ポンッ

伊東「あ、か、神山さん、なんか用ですか?」

神山「……いや、理由もなくこの先生を君に紹介したくなってね」

伊東「へえ、び、美人な人じゃないですか」

さわちゃん「ま、美人だなんて……!」

神山「紹介します、こちらゴリラと部長のハーフのさわちゃん先生です」

さわちゃん(誰がハーフよ! て言うか、何か酷くなってる……)

伊東「ゴ、ゴリラ? またゴリラ絡みですか、勘弁してくださいよ」

さわちゃん(しかもまたなんだ……)

818: 2010/09/07(火) 23:28:29.62 ID:4wA9uDpIO
>>816

回想

ガチャリ

神山「やあ、おはようゴリ。早かったね」

ゴリラ「ンゴ?」

神山「実は僕も一度向こうに行きたくてね、こうして早起きをして学校まで来てしまったんだよ」

ゴリラ「……」コクッ

神山「じゃあ、昼には多分戻るよ、林田君たちによろしく」

神山「……あ、そうだゴリ。このカーテン閉めてくれないかな。一人じゃあちょっとやりづらくてね」

ゴリラ「……」スッ

ファサッ。

>>778

821: 2010/09/07(火) 23:39:12.53 ID:4wA9uDpIO
神山「……」

さわちゃん「……」

伊東「……」

神山「いやさ、伊東君」

伊東「は、はい?」

神山「そこは男性がちゃんとリードしないといけないんじゃないのかな?」

伊東「あ、あの、リードって言われても……初対面ですし」

さわちゃん「しかも、どうして今ここにいるかもわかんないし……」

神山「ゴリラ君とさわちゃん先生は、きっと仲良くなれると思いまして」

伊東「ああ、もうっ! ゴリラじゃないですよ!」

神山「じゃあ、僕は放課後の部活があるから、また」

さわちゃん(……神山君が一番酷い人間のような気がしてきたわ)

822: 2010/09/07(火) 23:43:47.68 ID:4wA9uDpIO
伊東「す、すいませんね。何だか僕のせいで……」

さわちゃん「えっ? あ、ああ、いいのよ気にしないで。私、先生だから、生徒のワガママには慣れているしね~」

伊東「あ、先生だったんですか。見ない人だったんでちょっとビックリしてたんですよ~」

さわちゃん「わ、理由あってここにいるの。よろしくね」

伊東「は、はい。いやあ、本当に先生って綺麗ですよね」

さわちゃん「えっ……」ドキッ

伊東「あ、い、いえ……つい。ははっ、すいません」

さわちゃん(……素直ないい子じゃない。こんな不良校にもこんな子がいるなんて、ふふっ、驚きね)

伊東「いやあ、マジで先生のファンになっちゃいましたよ!」

さわちゃん(見た目は何だかゴリラみたいだけどね)

825: 2010/09/07(火) 23:48:31.97 ID:4wA9uDpIO
神山「……さて、あの二人の仲は深まっただろうか」

神山「さわちゃん先生もこの学校に慣れるまで大変だろうからなあ。少しでも生徒と打ち解けてもらわないと」

ワイワイ キャッキャッ

神山「……ん、教室の外からでも、こんなに騒ぎ声が聞こえるなんて」

神山「どうやら僕の目論みはうまく言ったようだな」

ガラガラッ

神山「二人とも、仲良くなった所で僕たち、青春クロマティーの練習部屋に……」

ゴリラ2「キャッキャッ」

ゴリラ3「ワイワイ」

神山「……」


ベンチ

神山「また、ゴリラが増えるのか……」

増えます。

827: 2010/09/07(火) 23:53:56.72 ID:4wA9uDpIO
神山「えー、というわけで」

ゴリラ2「ンゴ」
ゴリラ3「ンゴ」

神山「増えました」

前田「……で、さわちゃんと伊東はどうしたんだよ?」

神山「……」

ゴリラ2
ゴリラ3

神山「彼らで無い事だけは確かです」

前田「そんなのわかってるわ!!」

子分「また新しいゴリラか……」

神山「ううむ、どうした物か」

林田「……なあ、またさっきの方程式を作ってみればいいんじゃねえか?」

北斗「む?」

林田「そうすりゃ、この何も無い状態よりはマシになるはずだぜ。答えの見えないパズルよりも、な」

神山「よし、ではやりましょう」

828: 2010/09/07(火) 23:58:31.43 ID:4wA9uDpIO
さわちゃん=部長+ゴリラ

神山「先ほどの式はこれです。ここに、まず伊東君を足します」

北斗「新しい登場人物だからな、当然だな」

神山「伊東君はクロマティ高校側にいるので、こうなります」

伊東+さわちゃん=部長+ゴリラ

前田「……こうなるのか?」

林田「なあ、それだと右の部長側の合計は変わらねえか?」

神山「いえ、まだこれは式の途中の段階です。ここからまた数字を発展させます」

829: 2010/09/08(水) 00:04:01.13 ID:SJpFFhcAO
神山「先ほどの変化で、こちら側は……こう、つまり」

伊東=ゴリラ

さわちゃん=ゴリラ

神山「こうなります」

前田「……」

林田「なるほど、ゴリラがこっちにいる状態だものな」

神山「ええ。これで、式の数字は変化しました。後はこれを当てはめれば完成です」

……。

神山「出来ました、これで消えた二人の謎が何かわかるはずです」

ゴリラ+ゴリラ=部長+ゴリラ

全員「……」


ベンチ

林田「神山よ、なんだいありゃあ……」

神山「自分でもよくわからない……」

上位が全部ゴリラ。

837: 2010/09/08(水) 05:03:33.63 ID:SJpFFhcAO
ゴリラ+ゴリラ=部長+ゴリラ

神山「でも、まだしっくり来ないなあ。何か違和感があると言うか」

前田「いや、だから根本的によ……」

林田「なあ、ちょっといいか。確か数学の考え方にはよ、同じ種類の数は同じ場所にまとめる、って考えがあったよな」

神山「……エックスやワイの事かい?」

林田「あまりよく知らねえがよ、そうすりゃこの式もスッキリするんじゃねえの?」

神山「この式で仲間をまとめるとなると……」

ゴリラ+ゴリラ=部長+ゴリラ

3ゴリラ=部長

北斗「こうなるわけだな」

神山「……3ゴリラで1部長かあ」

839: 2010/09/08(水) 05:09:58.45 ID:SJpFFhcAO
子分「なあ、イコールって事はよ、部長も同じ仲間って事なのか?」

神山「種類的には似た部類に入るだろうね、この式に並んでいるくらいだから」

前田「いや、種類も何もこの式自体がおかしいだろ……」

林田「じゃあよ、最終的にはこうなるんじゃねえの?」

ゴリラ+ゴリラ=ゴリラ+ゴリラ

神山「……」

北斗「ここまで来ればあと一歩だな」

林田「ああ、これならバカの俺でもわかるぜ。つまり……最終的な答えは、こうだ!」カキカキ

ゴリラ=ゴリラ

全員「……」

林田「なあ、神山よ。結局、俺たち何を考えていたんだっけか?」

神山「……とりあえず、ここまでゴリラが増えるとは思っていなかったよ」

ごりらはぶちょう!

843: 2010/09/08(水) 05:16:45.54 ID:SJpFFhcAO
前田宅

前田「ただいまぁ……ったく、3ゴリラってなんだよ」

前田「ふぅ、自宅がやっぱり一番落ち着くぜ」

さわちゃん「あ、すいませんね奥様、お構い無く」

伊東「このお菓子うまいっすね」

前田母「……」

前田「……って、なんだよ! 何で俺の家にいるんだ!」

伊東「い、いやあ、気付いたらここにいて」

さわちゃん「前田君のお家だってわかったら、つい」

前田「いや、つい、の意味がわかんねーよ」

ゴリラ2「ンゴ」

ゴリラ3「ンゴ」

前田「お前らもか、っていうか誰だよ!」

前田母「……」スッ

前田「普通におもてなしするんじゃない!」

844: 2010/09/08(水) 05:22:45.32 ID:SJpFFhcAO
さわちゃん「まあまあ、前田君、落ち着いて」モグモグ

伊東「そうですよ先輩、これ食べたらすぐに帰りますから」

前田母「……」

前田「そっちは俺じゃない!」

前田「……とにかく、落ち着いたら帰ってくれ」ピシャッ

さわちゃん「前田君……」


自室

前田「まさか家にいるとは……」

前田「……ていうか、さわちゃんは早くロッカーくぐって帰ればいいのによ」

ワイワイ ガヤガヤ

前田「くそっ、まだいるのか、あいつら。ここはガツンと……」

ガタガタ

前田「む……クローゼットが、揺れている?」

845: 2010/09/08(水) 05:28:29.02 ID:SJpFFhcAO
ガタガタ

前田「だ、誰かいるのか?」

前田「ま、まさか……ここでゴリラってパターンか?」

ガタガタ

……ガチャリ

前田「……!」

部長「む、ここは一体……」

前田「あ、あんたは」

部長「ああ、俺は戻って来られたのか」

前田「む、向こうの世界に行ってた部長か?」

部長「……いや、俺はまたマワシの世界に行っていたんだ。どうやら、このクローゼットとマワシの世界が繋がっているらしいな」

846: 2010/09/08(水) 05:28:51.93 ID:SJpFFhcAO
前田「……」

部長「……と、言うわけで」

部長「俺はまたすぐに大会があるから、戻るぞ。またな」ガチャリ

前田「……」


居間

前田「どこでも繋げりゃいいってもんじゃないだろ……」

部長の肩には、輝くチャンピオンベルト。

847: 2010/09/08(水) 05:35:08.08 ID:SJpFFhcAO
次の日

神山「えー、前田君の報告により……この式の一部が間違っている事がわかりました」

伊東+さわちゃん=部長+ゴリラ

林田「またこれか……」

神山「はい、話では部長はマワシの国に行っているらしいので……こうなります」

伊東+さわちゃん=ゴリラ

林田「お、ちょっとスッキリしたな」

神山「はい、そして更に直すとこうです」

ゴリラ+ゴリラ=ゴリラ

849: 2010/09/08(水) 05:40:03.77 ID:SJpFFhcAO
林田「……で、神山。式をいじくり回したはいいがよ、結局これで何がわかるんだ」

前田「いや、式の元々の言い出しっぺはお前だろ……」

神山「とりあえず、数字で考えましょう」

2+3=5

林田「あ、ああっ、右の方が、ゴリラの5、になる!」

850: 2010/09/08(水) 05:43:17.53 ID:SJpFFhcAO
神山「違うよ林田君、これは例えばの話だから必ずしも答えが5とは限らないんだよ」

前田「いや、だからよ……なんの数字なんだよ」

神山「さて、この式を見てわかる事が一つだけあります。それは右のゴリラの方が単体で大きい数字、となる事です」

ゴリラ+ゴリラ=ゴリラ

林田「な、なるほど! 右の方がでかいのか!」

神山「さらに、彼らは同じ仲間なので一まとめにできます。つまり……」

林田「そ、そうかわかったぜ! これがこの式の答えだあ!」

ゴリラ

さわちゃん「……いや、ならないならない」

さわちゃん、結構馴染んでます。

851: 2010/09/08(水) 05:47:29.92 ID:SJpFFhcAO
桜ヶ丘高校

律「おっす~」ガチャリ

律「……って、誰もいないのか。最近あたしが一番のりばっかしだな~」ピコピコ

律「誰よりも早く部室に来る……これも部長の責任感ってやつ~?」ピコピコ

律「……あ、こんな所に週刊漫画がある」ピコピコ

律「……あんま面白くないや」バサッ

律「んん~……しかし暇だなあ」ピコピコ

紬「あ、おはようりっちゃん」ガチャリ

律「お~っすムギ~」

紬「まだみんな来てないんだ。お茶の用意しちゃうね」

律「頼むよ~」ピコピコ

852: 2010/09/08(水) 05:51:44.42 ID:SJpFFhcAO
紬「ふふっ、そのカチューシャ、似合ってるわよ」

律「これ? ああ、最初は違和感あったけど……慣れるとなかなか愛着がね~」

紬「神山さんは、もしかしたら何か不思議な体験ができるカチューシャだ、って言ってたけど……」

律「ああ、それね。全然なんも無し。まあ、あえて言うなら弟と殆ど喧嘩しなくなった事かなあ?」

紬「ふ~ん?」

律「あ、あと、最近ご飯がずっと柔らかめに炊かれている気がするくらいかな」

紬「それが不思議な事?」

律「……いや、無理やり探した結果」

紬「ふふっ、不思議ってそんな物よね」

854: 2010/09/08(水) 05:59:31.09 ID:SJpFFhcAO
……。

澪「ははっ、律の不思議もたかが知れているな」

律「むぅ~、こんなの付けただけでそんなに変わるわくないんだよ~」

唯「このご飯おいしい~」ムシャムシャ

澪「……まあ、あたしたちの不思議って言えばさ」

紬「そうねえ」

律「けいおん部の部室で、ゴリラが寿司を握っている事だよな……」

梓「あ、た、玉子と甘エビ下さい」

ゴリラ「ンゴ」ニギニギ

梓「あ、美味しい……」

唯「えへへ~」

澪「もう、すっかり慣れたけどな」

855: 2010/09/08(水) 06:06:26.96 ID:SJpFFhcAO
ゴリラ「……」スッ

律「ん、どうしたゴリ~?」

ゴリラ「……」

唯「えっ、みんなが心配だから一度帰るって?」

ゴリラ「……」コクッ

梓「じ、じゃあ、帰る前に寒ブリをお願いします!」

澪「おいおい……」

ゴリラ「……」

唯「ふんふん……入れ違いになったさわちゃんも呼んできてくれるって~!」

紬「まさに、至れり尽くせりね~」

ゴリラ「……」ガチャリッ

……。

律「行っちゃったな」

澪「いないといないで、何だか部室が広く感じるよな」

唯(ああ、これが寂しいって言う事なのかなあ)

856: 2010/09/08(水) 06:11:42.54 ID:SJpFFhcAO
唯「……」カキカキ

梓「唯先輩? 何書いてるんですか?」

唯「へへっ、ちょっと歌詞が浮かんだからメモ書きだよ!」

律「おっ、もしかして初めてけいおん部らしい行動したんじゃないか、これ?」

梓「いつにもまして、食べたり飲んだりばかりでしたからね……」モグモグ

律「いや、梓が一番寿司は食ってたからな~……」

紬「ゴリラさんのお寿司、美味しいわよね~」

858: 2010/09/08(水) 06:18:41.55 ID:SJpFFhcAO
ガチャリッ

さわちゃん「や、やっと帰ってきたわあ……ただいまみん」

澪「あ、おかえりなさいゴ……先生」

さわちゃん(え……)

律「ああ~、久しぶり。ゴリ……もとい、さわちゃん」

さわちゃん(今、確かにゴリって言った?)

梓「あ、ゴリラさん。私ホタテ貝が食べたいです」

唯「見てみて~、ゴリさんのために歌詞書いたんだよ~」

さわちゃん(この二人に関しては完全にゴリラだぁ!)

さわちゃん「ね、ねえ……私、そんなにゴリラ? 何か変わった、私?」

律「……いや、なんというかぁ、雰囲気?」

唯「なんか、貫禄が出てきた感じだよねぇ~」

859: 2010/09/08(水) 06:22:48.62 ID:SJpFFhcAO
さわちゃん「か、貫禄?」

梓「確かに、しばらく見ないうちに、その……オーラが変わったような」

紬「なんか、先生変わりましたよね」

律「男子校にいたんなら、そりゃあ変わるか~」

さわちゃん「……」

さわちゃん「ねえ私、ゴリラなの?」

律「さ、さわちゃん?」

さわちゃん「正直に答えて。向こうでゴリラみたく扱われた私……今もちょっと、ゴリラみたい?」

全員「……」

唯「……でも、先生はやっぱり先生だよぉ?」

さわちゃん「唯……ちゃん?」

860: 2010/09/08(水) 06:27:04.26 ID:SJpFFhcAO
律「まあ、正直さ、雰囲気は変わったかもしれないけど」

澪「でも、やっぱり先生がいないとけいおん部、って感じがしないよな」

さわちゃん「二人とも……」

唯「うん、さわちゃんはさわちゃんだよ。他の誰でもない、さわちゃん先生だよ!」

紬「はい、先生。お茶……ふふっ、高級な玉露茶です」

梓「そうですよ。お寿司、車エビにシャコもありますし、どうぞ先生!」

さわちゃん「み、みんな~……」ウルッ

861: 2010/09/08(水) 06:30:49.50 ID:SJpFFhcAO
さわちゃん「……」グスッ

さわちゃん「よ、よ~し、先生また桜ヶ丘高校で頑張っちゃうんだからっ……」

ガチャリッ

律「あっ、さわちゃんおかえり」

ゴリラ「ンゴ」

唯「これで先生が二人揃ったね~」

梓「さ、さわちゃんゴリさん、サーモン握ってくれませんか!」

紬「はい、さわちゃんお茶」

ゴリラ「ンゴ」

さわちゃん「……」


ベンチ

さわちゃん「みんなもう、ゴリラって言ってるようなもんじゃない……」

ゴリラ「……」ポン ポン

躊躇無しは酷いよね。

864: 2010/09/08(水) 06:42:57.01 ID:SJpFFhcAO
ガチャリッ

和「ねえ、ちょっといいかしら」

唯「あ、和ちゃんだ~、どうしたの~?」

和「えっと、先週言ってた部室整理の話。はい、これ……通達書類」

律「どれどれ、えっと……な、なにい!」

澪「ど、どうした律?」

律「整理する備品の中に……あのロッカーがある……」

唯「えっ!」

和「もう、随分古いロッカーだから、整理したいって言ってたよね?」

律「あ、あれは無し! 無し!」

紬「ね、ねえ。これ、通達って事は……」

和「……ええ、もう変更はできないわよ。あくまで通達するだけだから」

唯「そ、そんな……」

865: 2010/09/08(水) 06:51:00.36 ID:SJpFFhcAO
ガタン ガタン

唯「……行っちゃったね」

澪「これで、もう会えないのかな」

律「さ、寂しい事言うなよ! 寂しいけどさ……」

梓「ゴリラさんのお寿司、もっと食べたかったなあ」

律「……今日は、もう帰るか」

澪「明日から、また部室が広くなるな」

次の日

ガチャリッ

神山「あ、すいません。入り口が部室外の非常ドアからに変更になったんで、お願いします」

全員『……』


ベンチ

澪「クロマティってすごいんだな……」

律「私たちの涙……」

どこでもいいみたいです。

867: 2010/09/08(水) 06:56:16.49 ID:SJpFFhcAO
クロマティ高校

神山「……というわけで、曲を作りましょう」

林田「曲?」

神山「ええ、青春クロマティーらしいオリジナル曲を作るんです」

北斗「うむ、自分たちの曲を持ってこそのバンドと言えよう」

前田「でもよ、曲作りって難しいんじゃねえのか?」

神山「まあ、そこは手探りでやっていくしかないね」

林田「そっちの方がやってる感じがしていいじゃねえか」

前田「……まあ、確かにそうかもな」

子分「でもよ、曲を作るって言っても何をどうすればいいんだよ」

868: 2010/09/08(水) 07:05:57.91 ID:SJpFFhcAO
神山「とりあえず、フレディに作曲をしてきてもらいました」

フレディ「……」コクッ

林田「お、デモテープがあるのか、本格的だな」

カチッ。

『ダン ダン ダン』

『ダン ダン ダン』

前田「……」

『ウィーワーウィルエー、ロックユー』

カチッ

神山「とりあえず、このメロディーに合わせて作詞……みんなには歌詞を考えてもらいます」

前田「いや、歌詞入ってんじゃん。しかもロックユーって……」

林田「難しそうだけど、やってみるぜ」

北斗「俺の音楽センスの見せどころというものだ」

前田「いや、だからよお……」

870: 2010/09/08(水) 07:14:24.63 ID:SJpFFhcAO
前田家

前田「ったくよお……結局歌詞出しあってもロックユーのまま変わらずじゃねえか」

前田「楽器だってあれから一度も弾いてねえしよお……」

前田「まあ、いいや。腹減ったな、飯はなんだ?」

前田母「……」スッ

前田「ん、今日はいやに豪勢なんだな。一体何か……あっ」

『お誕生日おめでとう』

前田「そうか、今日は俺の単純だったか……最近忙しくて、忘れていたぜ」

前田母「……」

前田「ん、まだ何かあるのか?」

ガラッ

神山「前田君」

前田「か、神山? それにみんな……どうしてここに」

871: 2010/09/08(水) 07:19:09.50 ID:SJpFFhcAO
林田「みずくせえな、友達の誕生日だろ。お祝いくらいさせてくれよ」

前田「林田……」

北斗「ふっ、部下の祝日くらい祝うのはリーダーとして当然だ」

フレディ「……」コクッ

ゴリラ「ンゴ」

前田「みんな……ありがとう」

872: 2010/09/08(水) 07:23:39.25 ID:SJpFFhcAO
神山「よし、じゃあみんなで前田君のために誕生日の歌を唄おう!」

全員「おおー!」

前田(へっ、さっきまで腐っていた自分が情けなくなるぜ)

神山「……さん、はい」

『ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー』

『ハッピーバースデーディアー……ロックユー』

前田「……」

『ハッピーバースデートゥーユー……』

パチパチ パチパチ

神山「前田君、誕生日おめでとう」

前田「……ありがとう、みんな」


トイレ

前田「ディアーロックユーって何だよ……」

とりあえず、語呂はいい。

873: 2010/09/08(水) 07:28:13.67 ID:SJpFFhcAO
のなー「この際だから、はっきり言っておくとさ」

担当「はい?」

のなー「最初は俺もけいおんキャラを使う気はなかったわけよ、借りておいてなんだけどさ」

担当「……いや、借りてはいませんから。勝手に描かれているだけで」

のなー「まあ、俺も漫画家だからよ。ただ絵を描くだけじゃなく、お話を考えないといけないわけだよな」

担当「まあ、仕事ですから」

のなー「お話、つまりアイディアがなきゃあ話だって描けやしない。当然だな」

担当「当然ですね」

874: 2010/09/08(水) 07:29:21.95 ID:SJpFFhcAO
のなー「まあ、つまりもうネタがない」

担当「はい」

おわり

882: 2010/09/08(水) 11:07:26.96 ID:Cr5ybfCX0

竹ノ内も見たかったけど無理かww

884: 2010/09/08(水) 11:37:45.90 ID:EGQXtsOsP
乙!

903: 2010/09/08(水) 20:28:58.87 ID:SJpFFhcAO
竹之内「……久しぶりだな、学校に顔を出すのも」

竹之内「俺がいない間に、何か変わった事でも起きていないか……ふっ、つい仲間を心配してしまう」

ガラッ

竹之内「よう、みんな」

神山「あ……た、竹之内君」

林田「久しぶりじゃねえか」

前田「一体今までどこに言ってたんだ?」

竹之内「ふっ、ちょっと旅に……な」

神山「ああ、旅といえばちょっと面白い物があるんですよ」

竹之内(……)

竹之内(こいつの提案で得をした事は一度もなかったからな……不安だ)

905: 2010/09/08(水) 20:38:53.77 ID:SJpFFhcAO
移動後

竹之内「……ここは?」

神山「桜ヶ丘高校という女子高です。まあ、ちょっとした経緯から交流をしていまして」

竹之内「ほう……確かに男ばかりのクロマティよりはいい思いができそうだな」

神山「ここが、例の部室になります」

神山「お邪魔します」

ガチャリッ

さわちゃん「あっ、いらっしゃ~い」

907: 2010/09/08(水) 21:10:24.98 ID:SJpFFhcAO
紬「こんにちは~」

神山「今日は二人だけなんですか?」

さわちゃん「ええ、部活がお休みな日なのよ。あら、そっちの人は……」

竹之内「……竹之内だ、よろしく頼む」

紬「新しいお客さんね。けいおん部へようこそ~」

さわちゃん「また大きな子ね~」

竹之内(けいおん部? ……いや、それはともかくこいつら。俺の姿が怖くないのか)

竹之内(けっして怖がってほしいわけではないが、仮にもクロ高を牛耳る俺だ……)

竹之内(まあ、こいつらが最初にゴリラとでも対面していたなら、話は別だかな)

竹之内(ゴリラに比べりゃあ、人間の俺なんてまだ可愛いもんだ、うん)

908: 2010/09/08(水) 21:27:09.58 ID:SJpFFhcAO
さわちゃん「ねえ、君たち今から暇?」

神山「ん、何かあるんですか?」

紬「実は、先生が私のために色んなお店を案内してくれるの~」

さわちゃん「いい機会だからね。あなたたちもどう? 人数は多いほうが楽しいでしょ?」

竹之内(おいおい、待てよ。知り合いの神山はともかく初対面の俺までか?)

紬「そちらの、竹之内さんもお時間大丈夫ですか?」

竹之内「……あ、ああ」

さわちゃん「じゃあ決まりね! レッツゴーよ」

紬「はい~」

竹之内(……こいつらの緩い雰囲気はなんだ。これが女子高というものなのか?)

909: 2010/09/08(水) 21:37:18.43 ID:SJpFFhcAO
竹之内(まあ、気にしないのが彼女らのスタイルなんだろうな)


竹之内(それに、久しぶりの学校だ。少しくらいハメを外しても罰は当たらないだろう)

さわちゃん「じゃあ、みんな乗り込んで~」

車。

竹之内「……」

竹之内「なあ、これで出掛けるのか?」

さわちゃん「ええ、ちょっと遠出になるからね。あ、そうなるとやっぱり竹之内君は忙しいかしら?」

竹之内(一度誘ってもらい、それを断るなど言語道断。車は正直辛いが……)

竹之内(まあ、窓際で外を見つめていれば大丈夫だろう。あれから特訓もしたし)

竹之内「……いや、大丈夫だ。俺は不義理な事はしないタチだからな」

さわちゃん「そう、よかったわ~」

911: 2010/09/08(水) 21:48:21.24 ID:SJpFFhcAO
>>909

> 竹之内(まあ、気にしないのが彼女らのスタイルなんだろうな)


> 竹之内(それに、久しぶりの学校だ。少しくらいハメを外しても罰は当たらないだろう)

> さわちゃん「じゃあ、みんな乗り込んで~」

> 車。

> 竹之内「……」

> 竹之内「なあ、これで出掛けるのか?」

> さわちゃん「ええ、ちょっと遠出になるからね。あ、そうなるとやっぱり竹之内君は忙しいかしら?」

> 竹之内(一度誘ってもらい、それを断るなど言語道断。車は正直辛いが……)

> 竹之内(まあ、窓際で外を見つめていれば大丈夫だろう。あれから特訓もしたし)

> 竹之内「……いや、大丈夫だ。俺は不義理な事はしないタチだからな」

> さわちゃん「そう、よかったわ~」

912: 2010/09/08(水) 21:58:22.40 ID:SJpFFhcAO
ミス。

さわちゃん「じゃあ、出発~」

ブロロロロ

竹之内(……)

竹之内(うん、大丈夫だ。位置は助手席、しかも何か起こしそうな神山は後ろで彼女とおしゃべりしてやがる)

竹之内(それに、放課後の外出だ、たかが出掛ける場所も知れているだろう)

ブロロロロ

913: 2010/09/08(水) 22:00:32.93 ID:SJpFFhcAO
竹之内(いいとこ、駅前のデパートや歓楽街という所だろうな)

ブロロロロ

竹之内(……まだ走るのか)

ブロロロロ

ブロロロロ

神山「そういえば、どこに行くんですか?」

さわちゃん「あ、もう着くわよ~。ほら、看板見えてきた」

紬「こ、ここが噂の……!」

『ここより先、いろは坂』

紬「きゃああ~、来たわ~」

竹之内「……」


休憩所

竹之内「いろは坂ってなんだよ……」

庶民派、ムギちゃんのリクエストです。

914: 2010/09/08(水) 22:04:59.26 ID:SJpFFhcAO
ブロロロロ クイッ

竹之内(うっ……一々左右に揺れる感じが相当くる。ヤバい、気持ち悪い……)

さわちゃん「でも、竹之内君って本当に無口ね~。坂に入ってから一言も喋らないなんて」

神山「彼は硬派な性格ですから。あ、でもけっして不愉快なわけではありません、そういう顔なんですから」

さわちゃん「ふ~ん?」

竹之内(くっ……好き放題言いやがって。何か喋って口を開いたら、それと同時に何か出てきちまうんだよ)

紬「あ、あの。お菓子持ってきたんだけど食べますか?」

さわちゃん「あ、私は運転終わったら食べるわね~」

神山「僕も休憩所でいただくよ」

紬「そうですか、竹之内さんはどうしますか?」

915: 2010/09/08(水) 22:08:01.02 ID:SJpFFhcAO
竹之内(今そんなもの食べている余裕なんてねえ……くっ、甘ったるい匂いが社内に充満してやがる)

神山「多分、竹之内君もあとで食べるんじゃないかな。よっぽど外の景色が気に入っているみたいだし」

竹之内(違う、外を見ていないと一瞬でゲームオーバーするだけだ。しかし、ナイスフォローだ神山)

紬「……わかりました。じゃあ、これはまた後で食べましょう」スッ

竹之内(……ふう、一難去ったか)

918: 2010/09/08(水) 22:14:01.93 ID:SJpFFhcAO
ブロロロロ ガクッ

竹之内「うおっ!」

さわちゃん「ち、ちょっと下りでスピード出るから! ちゃんと掴まっててね!」

ブィイイイー

紬「きゃあっ」

竹之内(ぐ、ぐおおおあ……や、ヤバい……)

竹之内(内臓が、右に左に踊ってやが……ぐっ……)

竹之内(耐えろ、耐えるんだ……初対面でゲロなんか吐いたら、そりゃあもう最悪の印象だ)

竹之内(おそらく、ゴリラと俺が並んでいても俺の周りには誰も寄らなくなるくらいの……ぐっ)

竹之内(それだけは、勘弁だ……耐えるんだ、竹之内……!)

……。

919: 2010/09/08(水) 22:17:35.95 ID:SJpFFhcAO
さわちゃん「ふぅ、ちょっと落ち着いたみたいね」

神山「まさにジェットコースターみたいなスリルでしたね」

紬「怖かったけど、楽しかったわ~、来てよかった」

竹之内(……ふう、危なかった。いくら訓練した俺とはいえ……何か『あと一押し』があったら吐いていた所だったな)

神山「いやあ、よかったよかった」

竹之内(いつもなら、その一押しをこいつがもたらすんだが……今日は大丈夫なようだ)

竹之内(ふっ、窓から入る風がいつもより気持ちよく感じる……)

922: 2010/09/08(水) 22:22:53.98 ID:SJpFFhcAO
さわちゃん「あ、もう休憩所みたいだから……あそこでひとやす……」

紬「ええ、そこで……って、き、きゃあっ!」

さわちゃん「ど、どうしたのムギちゃん?」

紬「後で食べようとしていた……みんなの分のエクレアが……」

紬「さっきの坂と揺れで混ざってぐちゃぐちゃに……」

竹之内「……」

神山「うわあ、これはひどいね」

紬「ほら、見て竹之内さん、こんなに」テロ~ン

竹之内「う……うおっ!」


紬「きゃあ~、竹之内さんが暴れてる!」

神山「こんな所で暴れちゃ危ないよ」

竹之内「う、うるせえ!」

さわちゃん「あ、そ、そんなとこ蹴ったらエアバックが作動しち」ボシュウ!

ちなみに、いろは坂行った事ありません。

925: 2010/09/08(水) 22:27:28.32 ID:SJpFFhcAO
のなー「そろそろ1000だから、終わり、と」

のなー「うん」

のなー「けいおんのみんなに協力してもらってここまで来れたけど」

のなー「振り返ってみると、そうだな……」

のなー「……」

のなー「……四天王オンラインゲーム編が書いてて一番楽しかったかなあ」

ご愛読と保守、ありがとうございました。

引用元: 北斗「貴様ら、けいおん、という漫画を知っているか」 神山「え?」