968: 2018/10/25(木) 18:43:12.39 ID:sRjUcr26o
凛「ちゃんと見ててよ」
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(12) アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場 (電撃コミックスEX)
969: 2018/10/25(木) 18:44:59.13 ID:sRjUcr26o
凛「ねっ!」

ガシィ!

武内P「しっ……渋谷さんッ!?」


凛「目を離したら、承知しないから」

凛「ねっ!」

ガシィ!


武内P「待ってくださいッ!」

武内P「背中にしがみつきながら言われてもッ!?」

970: 2018/10/25(木) 18:48:28.74 ID:sRjUcr26o
凛「ふ――~~んんん~~ッ?」

凛「私が、背中にしがみついちゃあ駄目って事?」

ガシィ!

武内P「その通りですッ!」

凛「……それじゃあさ」


凛「おんぶして」

凛「ねっ!」

ガシィ!


武内P「駄目に決まってるじゃあないですかッ!?」

971: 2018/10/25(木) 18:53:41.47 ID:sRjUcr26o
武内P「渋谷さんッ! 何かあったのでしょうか!?」

凛「何か? 何かって、何?」

凛「何か無かったら、しがみついちゃあ駄目って事?」

武内P「きっと、何か理由がある筈ですッ!」


凛「……無い、って言ったら?」


…ドド…


武内P「……えっ?」


ドドドド


凛「特に理由が無いって言ったら……どうする?」


ドドドドドドドドドド


武内P「……今……今、何と……!?」

972: 2018/10/25(木) 18:59:18.41 ID:sRjUcr26o
凛「……」

ガシィ!

武内P「そんな……そんな馬鹿なッ!?」

武内P「正直に、理由を仰ってくださいッ!」

凛「それじゃあさ……代わりに――」


凛「おんぶして」

凛「ねっ!」

ガシィ!


武内P「理由を話す代わりに、おんぶ……!?」

武内P(渋谷さんは、何を仰っているのだ……!?)

武内P(どう考えても、交換条件としてはこちらが不利!)

武内P(……だと言うのに……!)


凛「ねっ!」

ガシィ!


武内P(まるで、平等であるかのように平然としているッ!)

武内P(むしろ、譲ってあげてるじゃあないのと言わんばかりにだッ!)

973: 2018/10/25(木) 19:05:34.09 ID:sRjUcr26o
武内P「わ……わかりました……!」

凛「何がわかったって?」

武内P「おんぶ……させていただきます……!」

凛「ふ――~~ううううん?」

ガシィ!


凛「言っておくけど、私を騙そうとしたら承知しないから」

凛「そうだね……もしも、おんぶせずに逃げたら――」


武内P「に……逃げたら……!?」


凛「プロデューサーの名前を呼びながら、全裸でジョギングする」

ズギャァァァンン!


武内P「……!?」

武内P(し……渋谷さんは、本当にやるッ!)

武内P(恥も外聞も……未来さえも賭けている凄みがあるッ!)

974: 2018/10/25(木) 19:14:12.54 ID:sRjUcr26o
凛「良い……?」

凛「優しく、花を慈しむようにおんぶして」

凛「ねっ!」

ガシィ!

武内P「は……はい……!」


凛「――行くよ」

凛「蒼い風が、駆け抜けるようにッ!」

ピョインッ!


武内P「……!」


凛「ふうううウウウンンン!」

シャカシャカシャカ!

……ストンッ

凛「手ッ!! 手で足を掴まないと、おんぶにならないでしょォォォォ!?」


武内P「すみません! すみません、渋谷さんッ!」

976: 2018/10/25(木) 19:21:29.32 ID:sRjUcr26o
凛「ふざけないでよッ!?」

凛「アンタ、おんぶって知らないの!? ねえッ!?」

凛「おんぶって言うのは!」

凛「アンタの手が、私の足を掴むのッ! わかるッ!?」

凛「こう、ガシィッと! ガシィッとさああ~~~ッ!?」

ガシィ!

武内P「は……花を慈しむようにと言われたので……!」

武内P「か……勝手がわからず……すみませんッ!」


凛「良い!? ちゃんとおんぶして」

凛「ねっ!」

ガシィ!


武内P「は……はい……!」

977: 2018/10/25(木) 19:27:12.26 ID:sRjUcr26o
凛「――行くよッ!」

凛「蒼い風が、駆け抜けるようにッ!」

ピョインッ!


武内P「くっ……!」

ガシィッ!


凛「! やったッ! おんぶッ!!」

ガシィ!

凛「目を離したら、承知しないから」

凛「ねっ!」

ガシィィ!


武内P「っ……!」

978: 2018/10/25(木) 19:37:29.74 ID:sRjUcr26o
武内P「……し……渋谷さんッ!」

武内P「これで、理由を教えて頂けるのですよね……!?」

凛「ンンン~~ッ! プロデューサー?」

凛「プロデュゥゥゥサァァァ――~~ッ?」

武内P「なッ……何でしょうか……!?」


凛「おんぶをしたらさあ~~」

凛「……おぶっている相手に対してッ!」

凛「優しい言葉ってものをかけるべきじゃあないのッ!?」


武内P「やっ……優しい言葉ッ!?」

武内P(む……無理矢理! 無理矢理に、おんぶさせておいてッ!?)

武内P(そんな相手に、優しい言葉をかけろとッ!?)

979: 2018/10/25(木) 19:46:48.90 ID:sRjUcr26o
武内P「そ……そう、言われましても……!」

凛「優しい言葉ッ! あるでしょーッ!」

凛「アンタッ! 私のプロデューサーでしょ――ッ!?」

武内P「くっ…………い、良い!」


武内P「良い、笑顔ですッ!」


凛「……」

シィ――ン


武内P「なっ……!?」

武内P(今のでは駄目だとッ!?)

武内P(その沈黙は! 何もおっしゃらないと言う事は!)

武内P(納得していただけないと言う事ですかッ!?)

980: 2018/10/25(木) 19:52:01.73 ID:sRjUcr26o
コンコンッ!


武内P「!」

武内P「し……渋谷さんッ」ボソボソッ

武内P「誰か来たようですので、降りてくださいッ」ボソボソッ


凛「……どうして?」

ガシィ!


…ゴゴ…


武内P「えっ?」


ゴゴゴゴ


凛「私、まだ優しい言葉をかけて貰ってない」

凛「なのに……どうして降りなくちゃあいけないの?」

ガシィッ!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!


武内P「……!?」

981: 2018/10/25(木) 20:00:41.93 ID:sRjUcr26o
武内P「待ってくださいッ! 渋谷さんッ!」ボソボソッ

凛「ホラ、優しい言葉をかけてよ」

凛「ねっ!」

ガシィ!

武内P「そんな事を言っている場合では……!」ボソボソッ!



「あれェ~~? 誰も居ないのかなァ~~ッ?」

「プロデューサーさんは、此処に居るって話だったじゃあないですか」

「そうだよね、しまむー。おっかしいな~~ッ?」

ガチャガチャッ!

「……鍵がかかってますね」


武内P「……!」

武内P(早くッ!)

武内P(渋谷さんが降りるのでも! お二人が諦めるのでも!)

武内P(どちらでも良いッ! 早く、そのどちらかになってくれッ!)

982: 2018/10/25(木) 20:08:41.27 ID:sRjUcr26o
武内P「……!」

凛「優しい言葉をかけてよ」

凛「ねっ!」

ガシィ!


「ふっふっふ……どジャアアぁぁぁ~~ン!」

「あっ、鍵! 未央ちゃん、鍵を持ってきたんですねッ!」

「しまむーと会う前にさ~~ちひろさんとも会ってたんだよね~~」

カチャカチャッ


武内P「!?」

武内P(な……何てことだッ!)

武内P(このままではマズイ! マズすぎるッ!)

武内P(この、おんぶした状態をお二人に見られてしまうッ!)


カチャッ


武内P「……!」

983: 2018/10/25(木) 20:16:02.06 ID:sRjUcr26o
ガチャッ!


未央「オッハヨーございまァ~~すッ!」

卯月「プロデューサーさん、おはようございますッ♪」


武内P「――本田さん、島村さん」

武内P「おはよう、ございます」


未央「……なァ~んだ! 居たんじゃん!」

卯月「私達の話し声、聞こえませんでしたか?」


武内P「すみません」

武内P「先程まで、音楽データの確認をしていたので……」


未央・卯月「……成る程ォ~~!」


武内P「……」

984: 2018/10/25(木) 20:23:49.56 ID:sRjUcr26o
未央「それだったら、声が聞こえなくてもしょうがないよねェ~~」

卯月「プロデューサーさん、お仕事お疲れ様ですッ♪」


武内P「ありがとうございます」

武内P(……危なかった)

武内P(本田さんと島村さんに気付かれる所だった)

武内P(……だがッ!)


武内P・凛「……」

バ――ン!


武内P(スーツの上着の二着目!)

武内P(渋谷さんの上から、それを更に着用する事で!)

武内P(乗り越えたッ! 二人羽織でッ!!)

985: 2018/10/25(木) 20:31:52.01 ID:sRjUcr26o
武内P・凛「……」

武内P(幸い、渋谷さんも静かにしている……)

武内P(さすがに、お二人に知られるのは恥ずかしいのだろう)

武内P(だが……このままで居ればバレるのは時間の問題……!)

武内P(……何とか、この部屋を脱出しなくてはッ!)


武内P「……すみません」

武内P「少しだけ、席を外します」


卯月「はいっ、わかりました」

未央「行ってらっしゃ~~い」


武内P・凛「……」

武内P(背中を見られないよう……慎重に……!)

武内P(違和感を与えず、自然に移動しなければ……!)

986: 2018/10/25(木) 20:39:46.18 ID:sRjUcr26o
武内P・凛「……」


未央「ところでさァ――ッ!」


武内P「!?」

武内P「ど……どうか……されましたか?」


未央「……何が言いたいか、わかってるんじゃあないの?」


…ズズ


武内P「な……何のこと、でしょうか……?」


未央「言ってたんだよねェ~~『先に行ってる』ってさァ~~ッ」


…ズズ…ズズズ…!


未央「来てるハズなんだよ……しぶりんが」


ズズズズズズズズズズ…!


武内P「……!」

987: 2018/10/25(木) 20:46:57.26 ID:sRjUcr26o
卯月「……プロデューサーさん」


武内P「し……島村さん……!?」


卯月「今日の歩き方……おかしいんじゃあありませんか?」

卯月「その歩き方……まるで……」


卯月「背中を見られたくない」


卯月「……そんな、強い意志を感じますよ」


ズギャァァァン!


武内P「……!」

武内P(う……疑われている……いや、確信を持っているッ!)

武内P(本田さんと島村さんは……!)

武内P(私の背中に、渋谷さんが居ると確信を持っているッ!)

988: 2018/10/25(木) 20:55:35.62 ID:sRjUcr26o
武内P「い……いえ……そんな事は、決して……!」

凛「……」

ガシィッ!


未央・卯月「……」ジィ~ッ


武内P「……!」

ドクン…ドクン…ドクン…


未央「……まっ! どこか寄り道でもしてるのかもねッ!」

卯月「はい♪ きっと、そうに違いありませんッ!」


武内P「……え、ええ……そうですね」

ドクン…ドクン…ドクン…


未央「うんうん! そう言えばさァ~~、プロデューサァ~~」

卯月「……今日は、困ってても右手を首筋にやらないんですね?」


武内P「!」

ドクンッ!!

989: 2018/10/25(木) 21:02:45.61 ID:sRjUcr26o
未央「まるでさァ~~、右手を使えないみたいだよねェ~~ッ?」

卯月「あのクセ、やめちゃったんですか? プロデューサーさん?」


武内P「……!」

武内P(し……しまったッ!)

武内P(右手は、渋谷さんの足を掴んでいるッ!)

凛「……」


武内P「そ……それ、は……!」

武内P(一瞬だけ、手を離して首筋にやるか!?)

武内P(いいや! 渋谷さんの足がプラリとなってしまう可能性が高い!)

武内P(クッ……どうすれば!? どうすれば、誤魔化せるッ!?)


未央「ンンン~~ッ、プロデューサー?」ニコッ!

卯月「困ってるのは、否定しないんですね?」ニコッ!


武内P「!?」

990: 2018/10/25(木) 21:10:27.05 ID:sRjUcr26o
未央「……プロデューサー」

未央「隠し事って、良くないんじゃあないかな?」


武内P「か……隠し事とは……!?」


卯月「……プロデューサーさん」

卯月「おんぶ……してるんじゃあないですか?」


武内P「お……おんぶ、ですか……!?」

武内P(このままでは……このままではッ!)


未央「見えてるんだよおォォォ~~ッ!! 首元にッ、手がッ!!」

卯月「肩の所もッ!! 不自然に盛り上がってますもんッ!!」


武内P「……」

武内P「はい」

991: 2018/10/25(木) 21:21:59.20 ID:sRjUcr26o
  ・  ・  ・

未央・卯月「せ~~のォ~~ッ!」

…コチョコチョコチョコチョコチョッ!

凛「ふうっ、うっ、うっくくくふふふふっ!」

凛「やめっ! 本当、無理ッ! あはは無理無理無理無理ッ!」

パッ!


武内P「! やっと……やっと、離れて頂けたッ!」


ガシィ!


武内P「なっ!? まだ、諦めないと!?」


卯月「次は私をおんぶしてください」


武内P「……えっ?」

卯月「ねっ!」

ガシィ!

武内P「……!?」

992: 2018/10/25(木) 21:30:08.83 ID:sRjUcr26o
武内P「な、何故ッ!? どうしてそうなるのですかッ!?」


未央「しぶりんだけをおんぶってのはさあ……」

未央「……贔屓、だよね?」

未央「贔屓は……良くないんじゃあない?」

未央「未央ちゃん的にはさあ、メチャ許せないんだよねェ~~」


卯月「……だから」

卯月「おんぶしてください」

卯月「ねっ!」

ガシィ!


武内P「……!」

993: 2018/10/25(木) 21:34:51.17 ID:sRjUcr26o
卯月「――島村卯月」

卯月「頑張りますッ♪」

ピョインッ!


武内P「……」


卯月「頑張りッ、頑張ッ、頑張り頑頑頑張りッ!」

シャカシャカシャカシャカッ!

武内P「……」

ガシィッ!

卯月「! やりましたッ! おんぶですッ♪」


未央「やったね、しまむ――ッ!」


武内P「……」

994: 2018/10/25(木) 21:47:11.79 ID:sRjUcr26o
武内P「確かに……贔屓はよくありませんね」

卯月「はいッ♪」

ガシィ!


未央「次は、私をおんぶしてよ」

未央「ねっ!」


武内P「ええ……ですが、どうしたものでしょうか……」


未央「しぶりん、スタンドプレーは良くないよッ!」

凛「……まあ……確かにそうだね、ごめん」


武内P「皆さんの、奇妙な行動に巻き込まれる」

武内P「私は、そういう運命なのだ、と」

武内P「……そう、思うようになってきました」


武内P「徐々に、ですが」



おわり

引用元: 武内P「ムラムラ、ですか」