1: 2010/09/13(月) 21:52:09.35 ID:VOPfvVQp0
憂達が高校三年生になって、早数ヶ月――――……

昼休み   教室

憂「梓ちゃんって、今年はライブやるの? 学園祭で」

梓「まさか。軽音部もつぶれたしね」

憂「そっか、そうだよね……」

梓「学園祭まで、あと二週間くらいかな?」
けいおん!Shuffle 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

2: 2010/09/13(月) 21:53:15.50 ID:VOPfvVQp0
憂「うん」

純「何の話?」

憂「梓ちゃんが、学園祭でライブやるかって話だよ」

純「へ? 梓やるの?」

梓「やらないよ。受験勉強で忙しいしね」

純「なーんだ。やらないのか」

3: 2010/09/13(月) 21:53:54.11 ID:VOPfvVQp0
梓「純だって、受験あるんだから。頑張んなさいよ」

純「わかってるけどさー」

梓「わかってるなら、やった方がいいわよ。あとで浪人しても遅いんだし」

純「うーん、それはそうなんだけどさ」

純「文化祭も最後なわけじゃん?」

純「もっとはっちゃけたいって言うか」

4: 2010/09/13(月) 21:54:35.17 ID:VOPfvVQp0
憂「私も、かな。思い出くらい作っておきたいし……」

純「あ、そうだ! 私達三人でバンドやらない?」

梓「え?」

純「私はベース、梓はギター、憂は……何やりたい?」

憂「うーん、ギターなら出来るけど……」

梓「ギター二人いてもねぇ」

5: 2010/09/13(月) 21:55:17.78 ID:VOPfvVQp0
憂「あ、キーボードなら!」

純「じゃあ、憂はキーボード! 完璧じゃん!」

梓「ま、待ってよ! マジでやる気?」

純「もちろん!」

梓「で、でも勉強が……」

純「ねえ、梓。友達と勉強、どっちが大事?」

6: 2010/09/13(月) 21:55:59.34 ID:VOPfvVQp0
梓「……その質問は卑怯だよ」

純「勉強なんて、いつでも出来るでしょ? でも文化祭は今しかないわけで」

梓「まあ、そうだけど」

純「ね? だからやろうよ、バンド! 私たち三人でさ!」

梓「でも、今からじゃ体育館の使用届けとか……」

純「飛び入り参加OKじゃん!」

7: 2010/09/13(月) 21:56:46.65 ID:VOPfvVQp0
憂「今からでも学園祭でライブ出来るってこと?」

純「そういうこと!」

梓「でも、練習してないし……」

純「大丈夫! ある程度は指が覚えてるでしょ!」

梓「そ、そうだけど……」

純「けど?」

8: 2010/09/13(月) 21:57:26.07 ID:VOPfvVQp0
梓「……わかったわよ! やるわよ! バンド!」

純「始めっからそういえばいいのにー」

梓「で? 何の曲弾くの?」

純「うわぁ、早速やる気」

梓「やるんだったら、早めに取り組んだ方がいいでしょ」

純「まあね」

9: 2010/09/13(月) 21:57:58.53 ID:VOPfvVQp0
梓「で。何の曲やるのよ」

純「うーん、あ! 『U&I』は?」

梓「唯先輩が作った?」

純「うん。そう!」

梓「まあ、いいかもね」

純「あれ? 歌詞ある?」

10: 2010/09/13(月) 21:58:33.86 ID:VOPfvVQp0
梓「歌詞は……憂、ある?」

憂「うん。お姉ちゃんからもらったんだ、歌詞のコピー」

梓「よかった~」

純「これで、演奏する曲は決まったね」

梓「他に決めることは?」

純(梓、意外とノリノリ?)

11: 2010/09/13(月) 21:59:12.16 ID:VOPfvVQp0
憂「あとは……生徒会に参加届け出すくらいかな?」

梓「じゃあ、私が出してくるよ!」

憂「えーと、職員室行ったら参加届けの紙がもらえるから、それにメンバー名とか記入して……」

梓「行ってくる!」

梓は教室から出て行った。

12: 2010/09/13(月) 21:59:47.49 ID:VOPfvVQp0
純「お昼休み終わるまでに帰ってくるかなぁ?」

憂「さあ、どうだろ」

純「意外とやる気出てるよね、梓」

憂「ライブ、やりたかったんだね」

純「うん。軽音部もなくなって、暇そうにしてたからね」

憂「今回のライブ成功させてさ、梓ちゃんを喜ばせようよ!」

純「――うん。頑張ろうね」

13: 2010/09/13(月) 22:00:40.74 ID:VOPfvVQp0
梓「ただいま~」

純憂「はやっ」

梓「なんかすんなりOKされたよ」

憂「へえー」

梓「三年生は優先的に参加できるみたい」

純「ああー、だからか」

14: 2010/09/13(月) 22:01:30.18 ID:VOPfvVQp0
梓「うん。あ、あとバンド名なんだけど。勝手に決めたから」

純「なににしたの?」

梓「昼時ランチタイム」

純憂「………………」

梓「え? なんか変?」

純「いや、変じゃないけど……ナンセンス?」

15: 2010/09/13(月) 22:02:22.62 ID:VOPfvVQp0
梓「で、でも、ぴゅあ☆ぴゅあ、とか、ハニースィートティータイム、とかよりは良くない?」

憂「ま、まあ……」

梓「ば、バンド名くらいいいじゃん! 名前なんて飾りで、演奏が大事なんだよ! ね?」

純「まあ、そうだけどね」

梓「でしょ? 演奏頑張ろうよ!」

純「うん、まあ、そうだね! 頑張ろうか!」

16: 2010/09/13(月) 22:02:59.59 ID:VOPfvVQp0
憂「だね!」

梓「あれ? 私達どこで練習するの?」

純「音楽室は?」

梓「うーん、あそこは器楽部にのっとられたんだよねー」

純「ジャズ研部室、使う?」

梓「え、いいの?」

17: 2010/09/13(月) 22:03:46.79 ID:VOPfvVQp0
純「うん。多分使わせてもらえると思うよ」

梓「今日の放課後から?」

純「うん。あ、でも楽器持ってきてないじゃん」

梓「あー、そうだった。じゃあ、明日からかな。練習」

純「うん。そうしよっか」

18: 2010/09/13(月) 22:04:18.34 ID:VOPfvVQp0
****************************************

翌日

放課後     ジャズ研部室

純「と、いうわけでここ使わせてもらうぞ」

二年「あ、どうぞ……」

純「あ、気にしないで練習続けてて。ほら、梓、端っこの方使うぞ」

梓「あ、うん」

19: 2010/09/13(月) 22:05:29.91 ID:VOPfvVQp0
憂(なんか純ちゃんが格好よくみえるよう!)

純「じゃ、はじめよう」

梓「うん」

純「えーと、あ、忘れてた」

梓「何を?」

純「ボーカル」

21: 2010/09/13(月) 22:06:04.11 ID:VOPfvVQp0
梓「あ! 誰やるの?」

純「梓やってみる?」

梓「わ、私声には自信がないな」

純「私も。……憂、やってみない?」

憂「え? 私?」

梓「うん、いいね。憂ならきっとうまく歌えるよ」

22: 2010/09/13(月) 22:06:35.76 ID:VOPfvVQp0
憂「うーん、じゃあ……やってみようかな」

梓「ありがとう! よし、これでボーカルも決まったし、完璧じゃん?」

純「あとは練習するだけだね」

梓「うん。練習頑張ろう! おー!」

純憂「おー!」

二年一同(うるさいなぁ……)

23: 2010/09/13(月) 22:07:23.07 ID:VOPfvVQp0
数時間後

梓「今日はここまでにしようか?」

純「うん。そうだね」

憂「ジャズ研の子達、皆帰っちゃったしね」

純「本当だ。あー、鍵取りに行かないと」

梓「え? 何で?」

純「最後に部室を出た人が鍵を閉めることになってるんだよね、ここ」

24: 2010/09/13(月) 22:07:57.27 ID:VOPfvVQp0
梓「ふーん」

純「じゃ、私取りに行ってくるから」

梓「んー」

純はジャズ研部室から出て行った。

梓「いやー、ギター弾くの久々だけど、思いのほかうまく出来たよ」

憂「私のキーボード、どうだった?」

25: 2010/09/13(月) 22:09:50.32 ID:VOPfvVQp0
梓「かなりうまいよ。ぶっつけ本番でもいけるんじゃない?」

憂「えへへ」

梓「あーあ、あと一人入ってくれれば、軽音部も廃部にならなくてすんだのにな」

憂「うん……私と純ちゃんが入っても、あと一人足りなかったもんね」

梓「うん。残念だったなぁ」

憂「…………」

26: 2010/09/13(月) 22:10:43.10 ID:VOPfvVQp0
梓「ま、でもさ。まだ軽音部があったら、こうやって三人でライブする機会なんてなかったわけだから」

憂「そうだね」

梓「こうやって、高校最後の文化祭で、親友とライブやるってのもいいと思うんだ」

憂「……だね」

純「お待たせ」

梓「あ、早いね」

29: 2010/09/13(月) 22:11:42.18 ID:VOPfvVQp0
純「そう? まあいいや。帰ろう」

憂「ちょっと外、暗いね」

梓「あれ? 鍵はどうするの?」

純「刺したままでいいって」

梓「無用心だね」

純「まあまあ」

ガチャリ

純「よし、帰ろっか」

30: 2010/09/13(月) 22:12:40.68 ID:VOPfvVQp0
****************************************

翌日からも、梓たちの練習は行われた。

そして、土曜日

梓「今日は学校もあいてないし……どこで練習しようか?」

憂「うーん。私もキーボードないしなぁ」

純「梓、家にキーボードあったりしない?」

梓「あるわけないでしょ」

純「だよね……」

31: 2010/09/13(月) 22:13:19.73 ID:VOPfvVQp0
憂「じゃあさ、今日は思い切って遊ばない?」

梓「あ、いいね。昨日まで必氏に練習してたんだから、今日くらいはいいよね」

純「うん。遊ぼう!」

憂「どこ行こうか?」

梓「あ、この前出来た水族館は?」

純「いいね。そこにしようか」

****************************************

33: 2010/09/13(月) 22:14:01.20 ID:VOPfvVQp0
水族館

純「こうやって、友達と水族館行くのって初めてだなぁ」

梓「うん。修学旅行とかでしか行かないからね。水族館って」

純「なんか、幻想的な雰囲気だね」

憂「だね」

梓「あ、亀……トンちゃんみたい」

35: 2010/09/13(月) 22:15:09.53 ID:VOPfvVQp0
憂「そういえば、トンちゃんってどうしたの?」

梓「紬先輩がひきとってくれてる」

純「あ、私向こうのエイがいるとこ行ってるね」

梓「迷子にならないでね」

純「まさか。子供じゃないんだから」

憂「じゃあ、私は熱帯魚のところ行くね」

36: 2010/09/13(月) 22:15:56.23 ID:VOPfvVQp0
梓「うん、いってらー」

憂は熱帯魚のスペースに、純はエイやマンタのスペースに向かった。

梓(一人になっちゃったな)

梓(たまにはいいかもね、一人で水族館歩くの)

水族館の中は薄暗く、水槽から放たれる光だけが眩しかった。

38: 2010/09/13(月) 22:16:34.08 ID:VOPfvVQp0
梓(あ、クラゲ……)

藻のように漂うその姿に、梓は眼を奪われた。

梓(……可愛い)

梓(…………よく考えたら、クラゲをこうやって、まじまじ見るの初めてだなあ)

クラゲのいる水槽だけは、闇のように暗かった。

代わりに青白い光輝を、クラゲ自身が発していた。

39: 2010/09/13(月) 22:17:24.16 ID:VOPfvVQp0
梓(何だかとても、神秘的……)

何分経っただろう。

純「あーずさっ!」

梓「うひゃうっ!」

梓「な、何だ純か。びっくりさせないでよ」

純「いや、何度呼んでも反応なかったんだ」

梓「え? 何度も呼んだ?」

梓「うん。とりつかれたように見入ってたよ」

40: 2010/09/13(月) 22:17:59.92 ID:VOPfvVQp0
梓「そ、そう……」

純「でもまあ、梓が目を引かれるのも無理はないかもね」

梓「でしょ? こんなに綺麗なんだよ」

純「うん。クラゲって思ったより綺麗だね」

梓「うん――」

41: 2010/09/13(月) 22:18:32.46 ID:VOPfvVQp0
純「何かの本で読んだんだけどさ。ベニクラゲって氏なないらしいよ」

梓「へえ、そんなクラゲいるんだ」

純「うん。氏ねないクラゲなんだって」

梓「氏ねない、か」

純「可愛そうだよね。氏にたくても氏ねないなんて」

梓「かもね」

43: 2010/09/13(月) 22:19:03.90 ID:VOPfvVQp0
純「――ねえ、もし私が氏んだらさ、泣いてくれる?」

梓「何? いきなり」

純「何となく、感傷的になったんだよ」

梓「そういうのは感傷的って言うの?」

純「私の中では言うよ。それで、梓は泣いてくれる? 私が氏んだら」

梓「純が氏んだってわかったら、私は泣くでしょうね。だから誰にも知られずに氏んでね、そのときは」

純「そんな氏に方あるの?」

梓「氏なないでって言ってるんだよ」

44: 2010/09/13(月) 22:20:42.48 ID:VOPfvVQp0
純「……そっか」

梓「それにしても、クラゲって見ていても飽きないね」

純「だね」

梓「ねえ、純」

純「ん?」

45: 2010/09/13(月) 22:21:48.87 ID:VOPfvVQp0
梓「今回のライブ、成功させようね」

純「うん」

梓「怒涛の拍手もらえるようなさ、演奏しようよ」

純「うん」

梓「ずーっと記憶に残るようなさ、そんなライブにしようね」

純「うん」

梓「ライブ終わったらさ、最高だったねーって笑えるようにさ」

純「うん――絶対」

47: 2010/09/13(月) 22:22:27.48 ID:VOPfvVQp0
梓「私、嬉しくて泣くかもしれないけど、その時はよろしくね」

純「そのときは、梓の涙拭いてあげるよ」

梓「純も泣いてるんじゃない?」

純「かもね」

憂「あ、ここにいたんだ。梓ちゃんたち」

梓「憂。もう見終わったの?」

48: 2010/09/13(月) 22:23:17.95 ID:VOPfvVQp0
憂「うん。あ、クラゲ?」

梓「うん。クラゲ」

憂「綺麗だね、宝石みたいに輝いて」

梓「でしょ」

憂「ああ、何かロマンティック」

49: 2010/09/13(月) 22:24:06.90 ID:VOPfvVQp0
梓「わかる、現実味がなくなるよね」

憂「うん」

三人はクラゲの水槽を見やる。

一緒に仲良く並びながら。

50: 2010/09/13(月) 22:24:55.04 ID:VOPfvVQp0
月曜日

梓「来週だよね、学園祭」

純「うん。もう時間もないし、頑張って練習しよう!」

憂「だね! 頑張るぞー!」

純憂梓「おー!」

ジャズ研部員(やかましいなぁ……)

52: 2010/09/13(月) 22:25:41.01 ID:VOPfvVQp0
火曜日

純「昨日は全部出来なかったね」

梓「うん。だから今日は通してやってみようか」

憂「それがいいね」

純「よーっし、1、2、1、2、3、4!」

53: 2010/09/13(月) 22:26:13.98 ID:VOPfvVQp0
水曜日

梓「あー、日に日に胃が痛くなるなぁ」

憂「緊張しちゃうね、どうも」

純「不安だよね、いくら練習しても」

憂「うん。成功させたいね」

梓「だね。今日も練習頑張ろう!」

54: 2010/09/13(月) 22:27:10.65 ID:VOPfvVQp0
木曜日

憂「あとすこし!」

梓「ああー! どきどきする!」

純「もう、勉強なんか手につかないよー」

梓「うん。受験生なのにね」

純「ま、学園祭終わったら頑張ればいいよ! それまでは目下、ライブのことだけ考えよう!」

憂「うん!」

55: 2010/09/13(月) 22:27:59.42 ID:VOPfvVQp0
金曜日

梓「いよいよ来週だね」

憂「うん。私達がやれることはやったし、――成功するよ」

純「うん。絶対ね」

梓「じゃあ、今日は最後の確認程度に練習しよっか」

憂「だね。変に根詰めて、体調崩してもなんだしね」

56: 2010/09/13(月) 22:28:47.54 ID:VOPfvVQp0
そして――文化祭当日

舞台裏

純(どうしよう……かなり緊張してる)

純(心臓もバクバクしてるし、手もかなり汗かいてる)

純「憂、緊張するね」

憂「うん、かなり」

57: 2010/09/13(月) 22:29:27.92 ID:VOPfvVQp0
純「いやー、トチらないか心配だよ」

憂「だよね」

梓「な、なーに辛気く、臭い顔してるの」

純「梓は平気なの?」

梓「も、もちろガッ ……舌噛んだ」

純「やっぱ緊張してるのね」

58: 2010/09/13(月) 22:29:57.72 ID:VOPfvVQp0
梓「……うん。そりゃあね」

純「緊張しない方がおかしいよね」

梓「でも、純たちがいるから、すこし心強いかな」

純「え?」

梓「すこしだけどね。すこし」

純「……正直じゃないなあ。かなりって言えばいいのに」

梓「個人の感覚よ」

純「確かに」

60: 2010/09/13(月) 22:30:50.57 ID:VOPfvVQp0
アナウンス『それでは、昼時ランチタイムの……』

純「始まるね」

梓「いよいよだね」

憂「絶対、成功させようね」

純梓「――うん」

そして、舞台の幕が開いた。

61: 2010/09/13(月) 22:31:46.78 ID:VOPfvVQp0
幾百の視線は、総てステージにいる三人に向けられていた。

期待と好奇の入り混じった視線を、三人は感じていた。

憂「あ、皆さん、こんにちわー!」

憂がMCを始める。

憂「えーと、私達は……」

63: 2010/09/13(月) 22:32:22.72 ID:VOPfvVQp0
憂のMCが、体育館にいる全員の耳に響く。

衆人環視に晒されながらも、憂の声は震えることなく轟く。

そして、憂のMCが終わると同時、体育館内の静寂が強まり――。

憂「それじゃあ聞いてください! 『U&I』!!」

――演奏が始まった。

その激しい旋律は、或いは聖歌の様でもあった。

64: 2010/09/13(月) 22:33:55.60 ID:VOPfvVQp0
”君がいないと何も出来ないよ
 君のご飯が食べたいよ

 もし君が帰ってきたら

 とびっきりの笑顔で
       抱き着くよ”  

客席が沸き立つ。

梓のギターが激しさを増す。

65: 2010/09/13(月) 22:35:52.21 ID:VOPfvVQp0
”君がいないと謝れないよ
 君の声が聞きたいよ
 君の笑顔が見れれば

 それだけでいいんだよ

 君がそばにいるだけで
 いつも勇気もらってた
 いつまででも
 一緒にいたい
 この気持ちを伝えたいよ ”

歓喜と驚喜と声援が、客席から聞こえる。

スポットライトを浴びた三人の演奏は続く。

66: 2010/09/13(月) 22:38:19.59 ID:VOPfvVQp0
”晴れの日にも雨の日も
 きみはそばにいてくれた

 目を閉じれば
 君の笑顔
 輝いてる

 君がいないと何もわからないよ
 砂糖と醤油はどこだっけ
 もし君が帰ってきたら
 びっくりさせようと思ったのにな”

天上の天歌のような歌声が、その滑らかな韻律が、体育館にいる人々の心を奪う。

67: 2010/09/13(月) 22:40:12.33 ID:VOPfvVQp0
歌詞は続く。

客席にいるしべ手の人が圧倒され、感動に震える。

優雅なメロディが、人の魂を飲み込む。

高揚が伝わってくる。

興奮が伝わってくる。

69: 2010/09/13(月) 22:41:24.32 ID:VOPfvVQp0
              ” 思いよ

               届け    ”

憂「ありがとう――っ!!!」

憂の科白が終わった瞬間

体育館を吹き飛ばすほどの拍手の豪雨が、三人に浴びせられた。

少しばかり眩しいスポットライトの中で、

憂達は静かな達成感をおぼえていた。
                               and more…

70: 2010/09/13(月) 22:42:03.84 ID:VOPfvVQp0
エピローグ       祭りの後に

憂「学園祭、終わっちゃったね」

三人はジャズ研部室にいた。

三人以外誰もいないそこは、いやに静かだった。

純「うん。終わっちゃった……」

71: 2010/09/13(月) 22:42:42.25 ID:VOPfvVQp0
梓「……虚無感がひどいね」

純「心にぽっかり穴が開いたみたい」

梓「陳腐な表現だね」

純「でも、本当にそんな感じ」

純「好きなドラマが終わっちゃったときよりも寂しい感じ」

憂「……これで、最後だもんね」

72: 2010/09/13(月) 22:43:48.30 ID:VOPfvVQp0
梓「……うん」

純「泣いても笑っても、最後、か」

梓「……おかしいな、泣きそうだよ」

純「もう泣いてるじゃん。梓」

梓「そういう純こそ、泣いてるよ?」

73: 2010/09/13(月) 22:44:30.18 ID:VOPfvVQp0
純「え? 本当?」

純は目元をぬぐう。

純「本当だ……泣いてる」

憂「あはは、純ちゃん泣き虫だな~」

純「……憂もね」

三人全員の声は、震えていた。

74: 2010/09/13(月) 22:45:05.91 ID:VOPfvVQp0
梓「――成功したよね? ライブ」

純「うん。した」

憂「大成功だよ」

梓「楽しかったよね? ライブ」

憂「うん」

純「楽しかったね」

75: 2010/09/13(月) 22:46:02.84 ID:VOPfvVQp0
梓「また……出来るかな?」

純「…………」

憂「…………」

純「……出来るよ、きっと」

梓「いつ?」

純「大学行ったらさ、また、皆で出来るよ」

梓「その時は――」

純「もちろん、唯先輩達と一緒にさ」

76: 2010/09/13(月) 22:46:55.38 ID:VOPfvVQp0
梓「……よかった」

純「ねえ。笑おうよ」

梓「え?」

純「だって、泣いてばっかじゃつまらないよ。笑おう」

梓「……うん」

憂「そうだね」

77: 2010/09/13(月) 22:47:46.59 ID:VOPfvVQp0
純「ほら、皆もっとスマイルスマイル!」

梓「こう、かな?」

純「そうそう、いい笑顔!」

梓「私、ちゃんと笑えてる?」

純「うん。あ、でも待ってね」

梓「え?」

78: 2010/09/13(月) 22:48:32.42 ID:VOPfvVQp0
梓がきょとんとしていると、純がハンカチを取出して、梓の目をこしこしと拭いた。

純「笑顔に涙は似合わないよ」

梓「そう、だね」

純「ほら、憂も笑って!」

憂「う、うん」

純「――うん。やっぱ皆、笑顔の方がいいよ!」

79: 2010/09/13(月) 22:49:17.00 ID:VOPfvVQp0
梓「笑顔浮かべてると、何だか自然に楽しくなってくるね」

純「うん。楽しくなってくるんじゃなくて、楽しいんだよ」

梓「だね」

純「ねえ、皆。打ち上げ行かない?」

梓「え?」

純「今日のライブの打ち上げ。ね?」

80: 2010/09/13(月) 22:50:01.13 ID:VOPfvVQp0
憂「いいね。カラオケにする?」

純「うん。食べて飲んで歌って、遊ぼうよ!!」

梓「そうしよっか」

純「決まりね! じゃあ、行こう!」

憂梓「うん!」

いつかまた、ライブを三人で出来るよう、今日という日を忘れないでおこう。

口には出さずとも、誰もがそう思っていた。
                                            fin

81: 2010/09/13(月) 22:50:53.59 ID:uwUU5XeeP

青春っすなぁ

83: 2010/09/13(月) 22:52:15.75 ID:IxIFF8AN0
乙!

しかし、よくジャズ研部員がキレなかったなwww

引用元: 憂「学園祭」