1: 2012/06/01(金) 20:10:56.60 ID:DwstWeKa0
柊志乃「へぇ……あなたのことだから、また女の子の話が聞けるのかしら?」

P「何ですかその言い方……いやまぁ、確かにそうですけど」

志乃「やっぱり……。今までも何人もの女の子を泣かせてきたものね」

P「止めて下さいよ、ソレ。なんだか俺が凄く悪い男みたいじゃないですか。
  確かにデビューしてステージに立って、LIVEが成功した後に嬉し泣きしちゃう子は多いですけど……」

志乃「そういう意味じゃなかったのだけれど……やっぱり、あなたはいけない子ね…プロデューサーさん」

P「?」


柊志乃(31)

3: 2012/06/01(金) 20:22:30.23 ID:DwstWeKa0
志乃「まぁ……わからないなら今はそれでいいわ。焦らされるのには慣れてるもの」

P「はぁ……」

志乃「熟成を待たないと美味しくならないものもあるし……プロデューサーさんには、期待してるの」

P「はは……その時に、志乃さんの好みに合えばいいですけどね」

志乃「その心配はないわね……今だって、あなた。中々いい味よ?
   我慢するのがちょっと勿体なく感じちゃうくらい」

P「……程ほどにお願いします」

志乃「ふふ…」

4: 2012/06/01(金) 20:32:29.81 ID:DwstWeKa0
志乃「それじゃあ、今日はあなたの思い出話を肴にしましょうか……ふふ、この一杯が美味しくなりそうね」

P「そんなに大した話でもないんですけどね…10年以上前の子供の時の話だから、あやふやなところも多いですし」

志乃「いいじゃない。ある程度は想像の余地があった方が楽しめるというものよ」

志乃「さぁ、始めてちょうだい?」

5: 2012/06/01(金) 20:40:30.89 ID:DwstWeKa0
P「わかりました……あれは、俺がまだ小学生だった時のことなんですけど…」

志乃「ふむ」クィッ

P「家の鍵を忘れちゃって、しかもちょうどその時に親が仕事で遠出してて」

志乃「あら」

P「夜遅くになってもまだ親が帰ってこなくて……確か、心細くなって家の周りをウロウロしながら泣いてたんですよ」

志乃「あらあら」

6: 2012/06/01(金) 20:50:02.37 ID:DwstWeKa0
P「いやぁ、俺が子供の時は本当に泣き虫で……うちの子たちはみんな小さいのにしっかりしてるから、ちょっとへこんじゃいますよ」

志乃「そうかしら……。でも、ランドセルを背負って、困惑した顔で泣いている小さなあなたは……」

志乃「――確かに、簡単に想像できるわね」クスッ

P「ハハ……恥ずかしいです」

志乃「そういうちょっと情けないところも含めて、あなたのいい味だと思うけど」

8: 2012/06/01(金) 20:59:30.33 ID:DwstWeKa0
P「はぁ…ありがとうございます……そういうものですか?」

志乃「ええ、ただの出来る人じゃつまらない。かと言って何も出来ないなんてものは論外」

志乃「濃い味をしていたって、ただ単調なだけじゃすぐに飽きてしまう……」

志乃「その点で、プロデューサーさん……あなたは、知れば知るほどに香りも味も変っていくのよね……」

志乃「ねぇ……あなたの深いところ、もっと知っていきたいのだけれど――」スッ

P「は、話を続けますよっ!」

9: 2012/06/01(金) 21:06:27.47 ID:DwstWeKa0
志乃「もう……いけずなんだから」

P(あ、危ないところだった……)

志乃「まぁいいわ……それじゃ、続けてちょうだい」

P「え、ええ……それで…えーっと、……ああ、そうそう」

P「泣きながら歩いていたら、女の人に声を掛けられたんですよ
  『どうしたの? ぼうや』って感じで」

志乃「………ふぅん」


………………
…………
………

11: 2012/06/01(金) 21:11:58.55 ID:DwstWeKa0
『………』グスッグスッ

『……おかあさん…』グスッ

『あら、こんな時間に……ぼうや、どうしたの?』

『……え?』

『こんな遅くに一人歩きは……危ないわよ』

『お母さんとお父さんはどうしたの?』

『う、うう……』

『う゛わ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁんッ!!!』

『……あらあら』

13: 2012/06/01(金) 21:20:21.80 ID:DwstWeKa0
『……落ち着いた?』

『……』コクッ

『……お父さんとお母さんは?』

『……いない』

『お家には……入れないのね?』

『……うん』

『そう……』

『……』

『それじゃあ……』

15: 2012/06/01(金) 21:26:39.89 ID:DwstWeKa0
ファミレス


『……』キョロキョロ

『こういうところに来るのは、はじめて?』

『……誕生日の時に、一回だけ』

『そう。何でも好きなものを頼んでいいわよ。お腹、空いてるでしょう?』

『………ありがとう』

『ふふっ』

16: 2012/06/01(金) 21:30:55.43 ID:DwstWeKa0
P「今思うと、『知らない人にはついて行ってはいけません!』っていう言い付けを余裕で破ってたなぁ」

志乃「……」クィッ

P「まぁ、あの時は俺も心細かったし……志乃さん?」

志乃「……」トポトポ

P「……あの?」

志乃「……」グィッ

P(何故か志乃さんの飲むペースが一気に速くなったけど……)

志乃「……続けて」

P「あ、はい」

21: 2012/06/01(金) 21:40:57.70 ID:DwstWeKa0
『ごちそうさまでした』

『ほっぺた、ソース着いてる』

『え?』

『ほら』ゴシゴシ

『……』

『ね、キレイになったわ』ナデナデ

『……ありがと』

24: 2012/06/01(金) 21:47:12.53 ID:DwstWeKa0
志乃「そうねぇ……今でも…たまに唇にノリがついてたりするものねぇ……」

P「え、本当ですか」

志乃「ええ、楓ちゃんがチラチラと気にしていたりするけど」

P「……気をつけます」

志乃「あれはあれで、中々面白いのだけど」クスッ

P「勘弁してください」

28: 2012/06/01(金) 22:03:19.51 ID:DwstWeKa0
志乃「それで、その後は?」

P「ええっと……確か…あ、財布の中に親への連絡先が入ってたんですよ。
  最初からそれを使えば良かったんですけど、その時はきっと気が動転してたんですね」

志乃「連絡は自分で?」

P「その当時は……携帯とか持ってなかったし、公衆電話も近くに無かったから、お姉さんの携帯を借りたのかな?」

志乃「なるほどね」

P「とにかく、その人に大分助けられちゃって……」

P「その後も、そのお姉さんとはちょくちょく会うようになったんですよ」

志乃「……ふむ」

31: 2012/06/01(金) 22:13:28.37 ID:DwstWeKa0
『あら……君は……またお家に入れないの?』

『……』フルフル

『じゃあ、どうして?』

『あの…この前は、ありがとうございました。コレ、お礼に…』

『気にしなくていいのに……ありがとう。
 これは……チョコ?』

『高級品だって、お母さんが』

『いい子ねぇ……だけど、この時間に一人は危ないわよ』


P「親が風呂に入ってる時とかを見計らって、こっそり抜け出してお姉さんを探したりしてました」

志乃「悪い子ね」

33: 2012/06/01(金) 22:27:56.96 ID:DwstWeKa0
P「チョコも、親が大事にしてたやつを持っていったので……後で凄まじい勢いで説教を受けましたよ」

志乃「理由をしっかりと話せば、わかってもらえたんじゃない?」

P「そうですねぇ……二人っきりで会いたいっていう気持ちがあったんだと思います。
  あれ多分、初恋ですね。そのお姉さんに惚れてましたよ俺」

志乃「でも、名前は知らないのよね?」クィッ

P「ああ、そうだったなぁ。『優しいきれいなお姉さん』ってことで納得してました。
  名前と連絡先くらい、聞いておけば良かった」


37: 2012/06/01(金) 22:37:01.45 ID:DwstWeKa0
P「家での悩みとか、学校の話とか、色々聞いてもらったりもして……。
  ……仕事帰りの女性を捕まえて長話とか、今思うと、迷惑なことしてたかも」

志乃「そう? 私は、その女性もあなたとの時間を楽しんでいたと思うわ。
   鬱陶しく感じていたのなら、時間をずらすか、道を変えるかしていたでしょうし」

P「だと良いんですけどね……いつからか、そのお姉さんにも中々会えなくなっちゃって」

志乃「……ふぅん」

39: 2012/06/01(金) 22:45:27.68 ID:DwstWeKa0
『あ、あの……!!』

『凄い汗かいてるけど、大丈夫? 風邪ひいてない?』

『大丈夫です! あ、あの、来週、卒業式なんです!』

『あら、おめでとう。私は見に行けないけれど……うん、おめでとう』

『はい、ありがとうございます! そ、それで……その日に、言いたいことがあって!』

『……それは今じゃ、駄目なのね?』

『はいっ どうしても来週がいいんです! 準備が、あるので!』

『そう……うん、楽しみに待っているわ』

『はい!』



『……来週、か』


40: 2012/06/01(金) 22:50:04.37 ID:DwstWeKa0
『……』ソワソワ

『……』キョロキョロ

『……』

『……』グスッ

『……はぁ』


P「何だかんだ言って、結構長いこと会っていたんですけど……その日は、何故だか会えなくて」

志乃「……」

P「結局……あの日が最後だったのかなぁ」

41: 2012/06/01(金) 22:56:35.04 ID:DwstWeKa0
P「ま、これで終わりです……そんな大した話じゃなくてすいません」

志乃「そう……」

P「志乃さんは、そういう話はありますか?」

志乃「そうねぇ……」

P「その手の経験は豊富そうなイメージなんですけど」

志乃「そう見える?」

P「ええ、余裕ある大人の女性って感じです」

43: 2012/06/01(金) 23:02:38.60 ID:DwstWeKa0
志乃「……ああ、一つあったわ」

P「おお」

志乃「その女の人が、今もプロデューサーさんの言いたかったことを楽しみに待ち続けているとしたら――」

志乃「――あなたは、どう思う?」

P「……え?」

46: 2012/06/01(金) 23:12:29.88 ID:DwstWeKa0
P「えっと、志乃さん……?」

志乃「ふふ……今日はもう遅いし、お開きにしましょう」

P「あ、はい……お疲れさまでした」

志乃「今度、飲むときは……二人っきりで一晩中飲みましょう?」

志乃「そこで、今日の話の続きをするの」

47: 2012/06/01(金) 23:14:08.98 ID:DwstWeKa0
志乃「――私はその時、きっとシェリーが飲みたい気分でしょうね」


おしまい

49: 2012/06/01(金) 23:16:43.58 ID:DwstWeKa0
というわけで終わり。支援感謝
最後に送信ミスした。志乃さんのSSがもっと増えますように

50: 2012/06/01(金) 23:18:35.31 ID:stfj/mBe0

いいなこういうの

54: 2012/06/01(金) 23:27:57.32 ID:JtA28ThJ0

引用元: P「こうして志乃さんと飲んでると、昔のことを思い出すなぁ」