1: 2016/06/23(木) 00:17:41.63 ID:91ywlpty.net
・ペルソナシリーズとラブライブのクロス
・アイドル設定無し

過去作リンク
 ことり 「悪魔のゲームソフト」
 ことり 「私の来世!?」
にこ 「友達の記憶」 希 「仲間への追憶」


4: 2016/06/23(木) 00:20:02.07 ID:91ywlpty.net
~深夜 音ノ木坂学院校舎内~


深夜、人気のなくなった校舎の中。女子高生とは思えぬ形相で剣を振り、果敢に敵に立ち向かう3人の生徒がいた。


?? 「うっ…! ぐはっ…!」

女生徒A 「大丈夫!? くっそぉ…ぅぉぉおおおお!!」

?? 「待って! 1人じゃ危険よ!」

女生徒A 「こんな状況でそんな事言ってられる!? アンタはそこでじっとしてなさい!」

?? 「でも…!」

女生徒A 「そのケガじゃまともに戦えないでしょ!」

女生徒B 「おい、来るぞ! 大丈夫、二人いればなんとか…!」

?? 「待って…! お願い!」

女生徒A・B 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


?? 「待ってぇぇ!!!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

5: 2016/06/23(木) 00:20:30.23 ID:91ywlpty.net
…春の日差しが、教室の窓から差し込んでくる。端の席はこの暖かさを存分に堪能できる。これが実に気持ちが良く、例え授業中でも、構わず居眠りをしてしまう程だ。
…まぁ、冬であろうと居眠りはするのだが。

「…にしても二人とも可愛いよね。羨ましいよ。」
「そんなことないって! そっちの方が可愛いよー。」
「そーだよそーだよ。胸だってでかいし…。」
「そんなことないよー!」


穂乃果 (あの3人、仲いいんだ…。楽しそう。)

ズズズ…

穂乃果 「……ッ!?」

穂乃果 (何今の…? なんかすごい悪寒がしたような…。)

海未 「穂乃果……?」

6: 2016/06/23(木) 00:20:58.27 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「んぅ……? あ、おはよう海未ちゃん。」

海未 「はぁ…。いつまで寝ぼけているんですか? もうお昼ですよ。」

穂乃果 「あっ、そっか。今お昼休みだったねぇ。」

ことり 「穂乃果ちゃん、お昼食べ終わるなりすぐ寝ちゃうんだもん。」

穂乃果 「えへへ。この席暖かくて気持ちよくて。」

海未 「だから席替えの時、窓側は避けるべきだとあれほど…。」

穂乃果 「誘惑には勝てなかったよ…。」

ことり 「あ、そろそろ移動しなきゃ。お昼休み、あと5分で終わっちゃうよ。」

海未 「次の授業はコンピューター室でしたね。」

穂乃果 「あっ、ちょっと待ってよぉ!」

7: 2016/06/23(木) 00:21:27.52 ID:91ywlpty.net
~コンピューター室~


先生 「はい、今日はExcelの使い方の授業の続きをやります。…くれぐれも遊ばないように。」

生徒 「「「「はーい!」」」」


穂乃果 「…とか言いつつ、みんなパソコンで遊ぶんだよねー。さて私も…。」

海未 「穂乃果…?」ギロッ

穂乃果 「うわぁぁっ!? な、何!?」

海未 「今、授業をサボろうとしませんでしたか…?」

穂乃果 「そ、そんなことないよ!」

海未 「ちゃんとやらないと、後々後悔するのは穂乃果なんですよ? ことりからも何か言っ……。」

ことり 「うわぁぁー、この服可愛い! 買っちゃおうかなー…?」

海未 「ことり…?」ギロッ

ことり 「ピィッ!!」

8: 2016/06/23(木) 00:22:02.58 ID:91ywlpty.net
海未 「何をしていたんですか…?」

ことり 「え…えっと…。ネットショップでお洋服をちょっと…。」

海未 「ことり…?」ギロッ

ことり 「で、でも見て! ネットでの評価も高いし!」

ズズズ…

海未 「そういう話をしているのではありません! ちゃんと授業に集中してください!」

ことり 「ご、ごめんなさぁいぃ…。」

穂乃果 「……?」

海未 「穂乃果、どうしました?」

穂乃果 「え…あっ、ううん。何でもないよ。」

穂乃果 (なんだろう…ことりちゃんのパソコンから、さっき感じたのと同じ悪寒…?)

海未 「さて、私も授業に……おや?」

穂乃果 「どうしたの海未ちゃん?」

海未 「いえ…パソコンの画面が急に消えてしまって。」

ことり 「海未ちゃん機械に弱いから…って、あれっ? 私の画面も消えてる…。」


「あれ!? 画面急に消えちゃった!」
「私もー。最悪…。」
「何ー? 停電?」


穂乃果 「私のパソコンも…。何が起こってるの?」

9: 2016/06/23(木) 00:22:33.01 ID:91ywlpty.net
先生 「なんだなんだ停電かー? …でも電気はついてるな。」

ズズ…
ズズズ……

穂乃果 「まただ…! さっきの悪寒がだんだん強く…。」

海未 「ほ、穂乃果? 大丈夫ですか?」

穂乃果 「いや…なんか変な感じがし…。」


その時、コンピューター室のいたる場所から、ガラスが割れるような音が次々となった。

10: 2016/06/23(木) 00:23:03.33 ID:91ywlpty.net
「きゃぁぁぁぁ!!!」
「何!? 怪物!!?」
「助けてえぇ!!!」

海未 「な、何が起こったのですか!?」

ことり 「パ…パソコンの画面から…変なのが…!」


割れたパソコンの画面から出てきたものは、この世のものとは思えない、黒く、スライム状の形をした化物だった。


?? 「グォォォォッッ!!」 ズズズ…

穂乃果 「な、何あれ…! 他のパソコンからもどんどん出てくる…!」

海未 「…! 穂乃果、危ない!!」

穂乃果 「えっ」


謎の化物の大群は、驚き固まっていた穂乃果に襲いかかった。

11: 2016/06/23(木) 00:23:55.07 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「うわぁぁぁっ!!?」ドテッ

ことり 「穂乃果ちゃん!」

先生 「おいお前ら! 早く逃げろ!」

海未 「待ってください! まだ穂乃果が…!」

先生 「なっ…! だがあんなヤツらどうすれば…!」


?? 「グルルル……」ズズ…

穂乃果 「嫌だ…来ないでぇ……。」

?? 「グォォォォッッ!!!!!」

穂乃果 「嫌だぁぁぁぁぁ!!!」


??? 「「ペルソナァァッ!!」」 パリィンッ!!


…突如目の前に現れた、女神のような姿をした2体の“ペルソナ”は、辺りの化物を一掃した。


穂乃果 「へ……?」

12: 2016/06/23(木) 00:24:32.00 ID:91ywlpty.net
海未 「あ…あの2人は…。」

ことり 「生徒会長さんと…副会長さん?」


絵里 「大丈夫? ほら、さっさと逃げて。」

希 「ここはウチらが何とかするから、ほら!」

穂乃果 「あ…ありがとうございます!」

海未 「穂乃果! こっちです!」

ことり 「穂乃果ちゃん! 無事でよかった…!」

先生 「ほら逃げるぞ! なんだか分からんが…あの二人に任せておこう!」

13: 2016/06/23(木) 00:25:02.64 ID:91ywlpty.net
絵里 「こんな時間に出てくるなんて…どういう事かしら。」

希 「さぁ…。それほど奴らの…“シャドウ”の力が強くなっとるっちゅうことなんやろか。」


シャドウ 「「「「「グォォォォッッ!!」」」」」


絵里 「お喋りは後ね。まずはこいつらを片付けましょ。」

希 「そうやね。」


そう言うと2人は、自分の胸に手を当てた。すると2人の足元に魔法陣のようなものが広がり、目の前にクルクルと回るカードが現れた。
そのカードに手を伸ばし、叫んだ。


絵里 「テルプシコラー!」カッ!
希 「ウーラニアー!」カッ!

ーーーーーー
ーーーー

14: 2016/06/23(木) 00:25:39.84 ID:91ywlpty.net
~教室~

穂乃果 「はぁぁ…怖かったよぉ…。」

海未 「大丈夫ですか、穂乃果?」

ことり 「何ともなくてよかったよ。」

穂乃果 「何だったんだろう…あの怪物も、会長さん達も…。」

海未 「分かりません。ですが、関わりすぎない方が身のためでしょう。」

穂乃果 「でも助けてくれたんだから、お礼くらいしないと。」

海未 「それはそうですが…。あの人達といたら、またあのような目に会うかもしれないのですよ?」

ことり 「まぁまぁ。穂乃果ちゃんがそうしたいって言うんだから、させてあげなよ。」

海未 「ことり…。」

ことり 「今日は臨時休校になるみたいだし、充分時間あるよ。生徒会室に行けば会えるんじゃないかな。」

穂乃果 「よし、そうと決まれば早速行こう! 2人も行くでしょ?」

海未 「わ、私達もですか…。」

ことり 「まぁ…助けてもらったのは私たちも同じだし、お礼しに行かないと。」

15: 2016/06/23(木) 00:26:05.38 ID:91ywlpty.net
~生徒会室前~


海未 「来てしまいました…。」

ことり 「怖い?」

海未 「少し…。」

穂乃果 「ほら行くよ。失礼します!」ガチャッ

海未 「あっ、ちょっと穂乃果!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

穂乃果 「…? あれっ、ここ生徒会室? 真っ暗で何も見えない…。」

穂乃果 「戻る扉がない!? 海未ちゃん! ことりちゃん!?」


??? 「あまり騒がないで欲しいなぁ。」


穂乃果 「誰っ!?」

16: 2016/06/23(木) 00:26:35.21 ID:91ywlpty.net
アリス 「驚かせちゃった? 私はアリス。よろしくね!」

穂乃果 「アリスちゃん…か、よろしくね! …ところで、ここはどこ?」

アリス 「言ってしまえば、私の世界かな。」

穂乃果 「アリスちゃんの世界…?」

アリス 「まぁ、私の話はここまでにしとこ。私はアナタに用があってここに呼んだんだよ。」

穂乃果 「私に用…?」

アリス 「別に大したことじゃないよ。ここに名前を書いて欲しいだけ。」

穂乃果 「これは…契約書? 何!? 詐欺!?」

アリス 「そんな! 大丈夫、書くだけでいいし、そしたらここから出してあげるから。」

穂乃果 「まぁ…それだけなら…。」

アリス 「…うん、ありがと。じゃ、また逢う日まで。」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

17: 2016/06/23(木) 00:27:09.92 ID:91ywlpty.net
海未 「…のか? 穂乃果、どうしたんですか?」

穂乃果 「えっ…海未…ちゃん?」

ことり 「穂乃果ちゃん、入るなりすぐにぼーっとしちゃうんだもん…。」

穂乃果 「ご、ごめん…。」


絵里 「…さっきから何なの、あなた達。」


穂乃果 「あっ、会長さん! あの…私たち、あなたにお礼がしたくて!」

絵里 「お礼…?」

海未 「先程、助けていただいたので。」

ことり 「本当に、ありがとうございました!」

18: 2016/06/23(木) 00:27:35.13 ID:91ywlpty.net
絵里 「そのこと…。別に、目の前に敵がいたから倒しただけよ。お礼なんていらないわ。」

希 「またエリちはそんなこと言う。わざわざお礼をしに来てくれたんよ?」

絵里 「希…。用はそれだけ? 臨時休校の話は聞いたでしょ、早く帰りなさい。」

海未 「はい。それでは…失礼します。」

穂乃果 「本当にありがとうございました。」


??? 「君たち、ちょっと待ちなさい!」

19: 2016/06/23(木) 00:28:13.66 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「えっ…?」

絵里 「織田先生…何を?」

海未 「あなたは確か…生徒会顧問の。」

織田 「織田だ。少し話があるんだが、3人とも、少し残ってくれないか?」

穂乃果 「話?」

織田 「まぁ、掛けて。今お茶を出すよ。」

ことり 「どうする海未ちゃん?」

海未 「先生に言われたんです。残らないわけにはいかないでしょう。」

20: 2016/06/23(木) 00:28:36.99 ID:91ywlpty.net
絵里 「先生、一体何を考えて…。」

織田 「彼女達には“素質”がある。」

絵里 「…! まさか!」

希 「でも先生が言うんやから、間違いないやろな。」

織田 「素質があると見られる以上、野放しには出来ない。まずは話をしようじゃないか。」

絵里 「……。」

希 「納得してないようやね。」

絵里 「当たり前でしょ。こんな危険なこと、他の生徒を巻き込みたくなかったのに…。」

21: 2016/06/23(木) 00:29:06.73 ID:91ywlpty.net
織田 「さて…君たちはあの化物に襲われたんだね?」

穂乃果 「はい…。」

織田 「あれはシャドウと呼ばれるものだ。普段は“言葉の裏”に潜んでいる。」

海未 「言葉の裏…?」

織田 「人は普段、嘘をつくこともあるだろう?」

ことり 「まぁ…。」

織田 「それは建前であったり、謙遜であったり、保身のためであったり…。人は様々な理由で嘘をつく。」

織田 「しかし、その言葉には裏がある。つまり本音だ。人は本音を隠す。その時に生まれるのがシャドウなんだ。」

織田 「シャドウは普段言葉の裏に潜む、と言ったね。しかし、たまに実体化して現れることがあるんだ。」

海未 「それがコンピューター室で見た…。」

織田 「そう、察しが良くて助かるよ。」

22: 2016/06/23(木) 00:29:39.11 ID:91ywlpty.net
織田 「あの時は多分、ネット上の嘘に潜んでいたシャドウが実体化したんだろう。」

穂乃果 「だからあの時…。」

ーー

ことり 『で、でも見て! ネットでの評価も高いし!』

ズズズ…

ーー

穂乃果 「だからあの時悪寒がしたんだ。」

織田 「悪寒?」

穂乃果 「はい。シャドウが出る前、なんか嫌な感じがしたんです。…多分、シャドウの気配だと思います。」

織田 「ふむ…。なるほど、私の目に狂いはなかった。」

海未 「…というと?」

織田 「彼女達がシャドウを倒す時、自らの化身を使ったのを覚えているかい?」

ことり 「ペルソナ…でしたっけ。」

織田 「そう、ペルソナだ。あれがシャドウに対抗できる、唯一の手段なんだ。」

23: 2016/06/23(木) 00:30:06.32 ID:91ywlpty.net
織田 「でも、それは誰でも出せる訳では無い。素質がない者には、どうやっても出せない。」

海未 「私たちにその素質があるとでも…?」

織田 「その通りだ。…特に君は、強いオーラを感じる。」

穂乃果 「えっ、私?」

織田 「君たちは幼馴染みかな?」

ことり 「はい。小さい時からいつも一緒です!」

織田 「恐らく、彼女の素質に影響されたのだろう。長い間近くにいたことで、君たちにも素質が宿った。」

絵里 「そんな事があるんですか…。」

希 「素質は伝染する…そういうことですか?」

織田 「まぁ、そう考えていいだろう。あくまでも、私の仮説だが。」

24: 2016/06/23(木) 00:30:31.59 ID:91ywlpty.net
海未 「それで…私たちにどうしろと? 一緒に戦ってくれとでも言うのですか?」

織田 「無論、無理にとは言わない。しかし、今は戦力がどうしても欲しいんだ。」

ことり 「どうしてですか? 2人でも充分敵を倒せてたじゃないですか。」

織田 「そうはいかないんだ。ペルソナの召喚は、体力や精神力を大きく消耗する。それに、最近シャドウの数が増えているんだ。」

絵里 「特に今日は…。アイツらは、今までは深夜に現れていたの。」

希 「あんな時間に現れるなんて、本当に信じられないことだったんよ。」

穂乃果 「でも、私たちにペルソナの召喚なんて…。」

織田 「勿論、最初からできる訳では無い。まだ君たちは、いわば潜在期間。“覚醒”していないからね。」

穂乃果 「覚醒?」

25: 2016/06/23(木) 00:31:07.38 ID:91ywlpty.net
織田 「ペルソナが出せるようになるまでには、ステップが存在する。覚醒して初めて、ペルソナを出せるようになる。」

ことり 「覚醒って…どうすれば出来るんですか?」

織田 「それがわかっていないんだ。だから君たちには、これからは私たちと一緒に行動してもらいたいんだ。」

絵里 「いつ覚醒してもいいように…ですね?」

織田 「そう。それに覚醒するタイミングで、新たにわかることもあるかもしれないしね。」

海未 「そんな! 私達は実験道具ではありません!」

ことり 「海未ちゃん…。」

26: 2016/06/23(木) 00:31:34.70 ID:91ywlpty.net
織田 「無理にとは言わない。しかし、これは学校を守る為でもある。」

穂乃果 「学校を…?」

織田 「理由はわかっていないが、ヤツらが現れるのは、この学校の敷地内だけなんだ。」

希 「ウチらはそれを突き止めるのも目標に活動してるんや。まだ分からないことだらけやからね。」

織田 「頼む…! 協力してくれないだろうか…。」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

27: 2016/06/23(木) 00:32:00.74 ID:91ywlpty.net
~穂乃果宅~


穂母 「穂乃果ー? この茶葉、持ってく?」

穂乃果 「うん! ありがとー。」

雪穂 「寮とはいえ、お姉ちゃんが一人暮らしねぇ…。なんか心配だなぁ。」

穂乃果 「なっ…! 私だってやればちゃんと出来るよ!」

雪穂 「本当かなぁ…。」


--結局、私達は織田先生に協力することにした。私達は、希先輩や絵里先輩も暮らしている寮に住むことになった。
きっとその方が観察もしやすいし、同じ素質を持つもの同士、コミュニケーションをとらせることも目的の一つなのだろう。

28: 2016/06/23(木) 00:37:36.35 ID:91ywlpty.net
申し訳ありません、何やら規制にかかったみたいです…
少々お待ちください(別端末)

30: 2016/06/23(木) 01:07:50.15 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「お店の手伝いに、度々帰ってくるから心配しないで。」

雪穂 「明日からお姉ちゃんいないのか…。まだ実感ないや。」

穂母 「寂しくなるわねぇ。ね?」

穂父 「……。」

穂乃果 「じゃあ明日早いからもう寝るね。おやすみ。」

穂母 「おやすみなさい。」

31: 2016/06/23(木) 01:08:14.93 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「…このベッドで寝るのも、今日で最後になるのかな。」

穂乃果 「明日は寮に寄ってから学校に行って…。うぅ、早起きできるかなぁ。」

穂乃果 「……。」スゥスゥ

ーーーーーー
ーーーー
ーー

~???~


穂乃果 「…あれ? ここは…。」


穂乃果が目を覚ますと、いつの間にか自室ではなく、見知らぬ場所にいた。
…ステージの舞台裏だろうか? たくさんの機材が置かれた中、穂乃果は青い高級そうな椅子に座っていた。
そして向かい側には、鼻の長い奇妙な老人と、椅子と同じような青い色の服を身にまとった女性がいた。


??? 「ようこそ、我がベルベットルームへ。」

穂乃果 「誰!? てか鼻長っ!?」

35: 2016/06/23(木) 12:58:31.58 ID:91ywlpty.net
残酷な天使規制食らったので浪人買ってきました。グダグダですいません…
>>32
完結まで書き終わっているのでご安心ください

36: 2016/06/23(木) 13:08:17.23 ID:91ywlpty.net
イゴール 「私の名はイゴール。お初にお目にかかります。」

穂乃果 「イゴール…さん?」

イゴール 「こちらはエリザベス。私と同じ、このベルベットルームの住人だ。」

エリザベス 「エリザベスでございます。以後、お見知りおきを。」

イゴール 「ここは、精神と物質の間にある場所。」

穂乃果 「?」

イゴール 「ここは、何かの形で契約を果たされた方のみが訪れる部屋。覚えておりますかな?」


そう言ってイゴールは、穂乃果に契約書のようなものを見せた。


穂乃果 「あっ、これ! アリスちゃんに頼まれて書いたやつ!」

イゴール 「今からあなたは、このベルベットルームのお客人だ。…これをお持ちなさい。」

穂乃果 「これは…鍵?」

37: 2016/06/23(木) 13:08:54.68 ID:91ywlpty.net
エリザベス 「その鍵は、この部屋のお客人である証。大切にお持ちください。」

イゴール 「また…お会いしましょう。」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

~朝~

穂乃果 「うぅ…。変な夢…。」

穂乃果 「…って、もうこんな時間! はやく準備しなくちゃ!」

ーー

穂乃果 「ごめん、お待たせー!」

海未 「予想はしてましたが…。さ、はやく寮に向かいますよ。」

ことり 「でも知らなかったね。織田先生が寮を持ってるなんて。」

海未 「正直怖いですが…行きましょう。」

38: 2016/06/23(木) 13:09:26.67 ID:91ywlpty.net
~朝 寮~


織田 「いらっしゃい。待ってたよ。」

穂乃果 「よ、よろしくお願いします!」

織田 「部屋の鍵を渡しておくね。3人とも、2階に部屋があるから。」

海未 「ありがとうございます。」

織田 「そうだ、言い忘れていたんだが。昨日話したことは、ほかの人には秘密でお願いね。」

ことり 「はい。…でも、昨日のコンピューター室での事件もありますし、秘密にするのにも限界が…。」

織田 「あぁ、大丈夫。あれはパソコンの故障って誤魔化しておいたから。」

海未 「本当にそんなので誤魔化せたんですか…?」

織田 「まぁ現実的なことではないからね。適当でも誤魔化せるさ。…ところで君たち、そろそろ学校じゃ?」

穂乃果 「えっ…うわぁぁぁっ!!? 海未ちゃんことりちゃん! 早く行かなきゃ!」

ことり 「ちょっと待って! 荷物置いてかなきゃ!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

39: 2016/06/23(木) 13:09:55.45 ID:91ywlpty.net
~深夜 寮~


織田 「さて…君たちには、学校での探索に参加してもらおう。」

穂乃果 「探索?」

絵里 「奴らは深夜に現れるって言ったでしょ?」

海未 「なるほど…見つけて退治するわけですね。ですが私たちがいて、足でまといになりませんか?」

希 「そのへんは、ウチらがサポートするから安心して。さ、行こうか。」

織田 「いってらっしゃーい。」


ことり 「あれ? 織田先生は行かないんですか?」ヒソヒソ

希 「先生、ペルソナ出せんのよ。でも通信機を使ってウチらに指示する役目があるから。」ヒソヒソ

ことり 「なるほどー。」

40: 2016/06/23(木) 13:10:36.32 ID:91ywlpty.net
~深夜 音ノ木坂学院内~


穂乃果 「うぅ…夜の学校は不気味だねぇ。」

ことり 「海未ちゃぁん…手、繋いでくれる…?」

海未 「構いませんよ。」

絵里 「こちら絵里。先生、シャドウの反応は?」

織田 『それが…どうも今日は反応が無いんだ。』

希 「微かな反応すらも?」

織田 『あぁ。なんだか不気味だ。』

絵里 「いないならそれに越したことはないわ。一応全体を見てから、今日は帰りましょう。」

41: 2016/06/23(木) 13:11:09.97 ID:91ywlpty.net
~寮 作戦室~


織田 「変だな…。こんなこと、今までは無かったのに。」

ピピピッ! ピピピッ!

織田 「こ…これはっ!? 絢瀬君! 絢瀬君ッ!」

絵里 『はい、こちら絵里。』

織田 「今までにないほど巨大なシャドウ反応だ! 今すぐ応戦準備を! 3人はどこかに避難させておきなさい!」

絵里 『…ッ!? わかりました!』


織田 「これは…“予兆”なのか…?」

42: 2016/06/23(木) 13:11:45.60 ID:91ywlpty.net
絵里 「希、応戦準備! あなた達はどこかに隠れてて!」

ことり 「えっ! ちょっと…何が…!」

希 「シャドウが来てるらしいんよ。しかもとびきり大きいヤツがな。」

ズズズズズズ…

海未 「そんな…! 2人とも行きましょう!」

ことり 「うん! ここは会長さん達に! 穂乃果ちゃん!」


穂乃果 「……来る。」ボソッ


海未 「穂乃果ッ!」

ゴゴゴゴゴゴゴ…

ことり 「な…なに!?」

希 「…! エリち、あれ!!」

絵里 「えっ」


希が指さした方向…校舎の窓の向こうには、3mはあるであろう大きなシャドウがいた。
体全体から手が生え、それぞれの手に剣が携えられている。ざっと見ただけでも、50本はありそうだ。


大型シャドウ 「グルォォォォォォォォァァァァァッッッ!!!」

43: 2016/06/23(木) 13:12:12.01 ID:91ywlpty.net
絵里 「何よ…あれ!?」

希 「とにかく広いところに! ここは危険や!」

絵里 「…屋上よ! 屋上に誘導しましょう!」

海未 「あの…私たちは!?」

希 「どこかの教室にでも隠れとき! これ相手に庇いながら戦うのは無理や!」

ことり 「行こう! 海未ちゃん穂乃果ちゃん!」

海未 「穂乃果ッ!」

穂乃果 「……。あっ、うん…。」

44: 2016/06/23(木) 13:12:50.28 ID:91ywlpty.net
~屋上~


大型シャドウ 「コォォォォォォォ…。」

絵里 「希…覚悟、しなさいよ。」

希 「分かってるよ…。行くよ!」

2人 「「ペルソナぁぁっ!」」カッ!

ーーーーーー
ーーーー
ーー

~家庭科室~


ズドォォォン…
ゴゴゴゴゴゴゴ…

ことり 「海未ちゃぁぁん…。」

海未 「ことりぃ…、どうしてこんなことに…。」

穂乃果 「……。私、いってくる。」

ことり 「穂乃果ちゃん、何を!?」

穂乃果 「何か嫌な予感がする。…2人はここにいて。」ダッ!

海未 「穂乃果ぁっ!? 待ってください!」

45: 2016/06/23(木) 13:13:17.63 ID:91ywlpty.net
~屋上~


絵里 「はぁっ…はぁっ…!」

希 「アカン…ウチ、もうダメかも…。」

絵里 「何を言ってるの!? 私たちがやられたら、この学校はどうなるの!?」

希 「そう…やけど…!」


バタンッ!


穂乃果 「絵里先輩、希先輩!」

46: 2016/06/23(木) 13:13:52.30 ID:91ywlpty.net
絵里 「あなた…どうして来たの!? 危険よ、引き返しなさい!」

海未 「会長!」

ことり 「副会長さん!」

穂乃果 「海未ちゃんことりちゃん!? どうして!」

海未 「穂乃果だけ行かせるわけにはいきません!」

穂乃果 「危ないよ!」

ことり 「それは穂乃果ちゃんもおなじだよ!」


大型シャドウ 「グォォォォッッ!!」


ことり 「えっ」ガシッ!!
海未 「えっ」ガシッ!!


穂乃果 「…!? ふたりとも!!!」


大型シャドウから伸びた手が、ことりと海未を捕らえた。ことりと海未はそのまま、大型シャドウの元へと引き寄せられてしまった。

47: 2016/06/23(木) 13:14:20.54 ID:91ywlpty.net
海未 「うっ…ぐっ…! 離してください!」

ことり 「穂乃果ちゃぁぁん!!!」

穂乃果 「やめて…やめてよ!! お願いだから!」

大型シャドウ 「ガァォォァァォァォァッッ!!」ギュウウ…

ことり 「うっ…がっ…!」

海未 「く…苦し…!」

穂乃果 「やめて…やめて!」

絵里 「うっ…ペル…ソナ…ッ!」


絵里は残された微かな力で、ペルソナを召喚しようとした。だが、ペルソナはすぐに消えてしまった。


希 「無理や…ウチらにはもう…!」

穂乃果 「そんな…!」

48: 2016/06/23(木) 13:14:51.20 ID:91ywlpty.net
『穂乃果ちゃぁん! 待ってよぉー!』
『ほらふたりとも! 学校遅れるよ!』
『誰のせいだと思ってるんですか!』
『あはは…!』
『あは…』

穂乃果 「嫌だ…ここでお別れなんて…。」

穂乃果 「そんなの……っ!!!」 カッ!


…穂乃果の周りで、旋風が巻き起こる。
穂乃果の足元に、魔法陣のようなものが現れ、空から光りながら回るカードが出現した。


絵里 「あ…あれは…!」

希 「まさか…覚醒が…!」


イゴール (さぁ…今こそ、あなたの力を開放する時です…。)


穂乃果 「お願い…わたしに、力をっ!!」


穂乃果 「ペルソナぁぁぁぁぁっ!!」パリィンッ!!

49: 2016/06/23(木) 13:15:17.75 ID:91ywlpty.net
穂乃果の叫びに応じ、穂乃果のペルソナが現れる。片手に笛を持ち、その顔は喜びに満ちている。


エウテルペー 『我は汝…汝は我…。我、喜びの女神、エウテルペーなりっ…!』


絵里 「エウ…テルペー?」

希 「また1人…“ムーサ”の…。」


穂乃果 「行くよ…エウテルペー!」

エウテルペー 「ハァァァァッ!!!!」ザシュッ!!


エウテルペーは、2人を掴んでいるシャドウの腕を切り落とした。


大型シャドウ 「グォォォォッッ!!??」

海未 「きゃぁっ!!」ドテッ

ことり 「うわぁっ!!」ドテッ


穂乃果 「絵里先輩、希先輩! 2人を!」

絵里 「えっ…ええ!」

希 「2人ともこっちや!」

50: 2016/06/23(木) 13:15:44.45 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「いっけぇぇぇぇぇっ!!」

エウテルペー 「ウッ…グッ…グォォォォッッ!!」ドスドスッ!!


エウテルペーは、大型シャドウの破片すら残さぬ勢いで攻撃を続けた。


大型シャドウ 「グォォォォッッ!! ウォァァァッッ!!」シュゥゥ…

穂乃果 「はぁ…はぁ…。か、勝った…?」

穂乃果 「やったぁ…ありがと…エウテル……。」バタンッ

ーーーーーー
ーーーー
ーー

51: 2016/06/23(木) 13:16:19.84 ID:91ywlpty.net
~作戦室~


織田 「なんだ…あの力。…素晴らしい!」

織田 「こちら織田。敵は殲滅されたが、高坂さんが倒れた。絢瀬君、救出に向かってくれ。」

織田 「……ムーサの1人、エウテルペー。」

織田 「“彼女達”が揃う日も近いか…。ふふ…ふははははは!!!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

続く
ーーーー

52: 2016/06/23(木) 13:17:02.95 ID:91ywlpty.net
~ベルベットルーム~


イゴール 「再びお目にかかりましたな。」

穂乃果 「んぅ…ここは…ベルベットルーム…だっけ?」

イゴール 「そう。貴方は力を覚醒したショックで、意識を失われたのです。」

穂乃果 「力…そうか、私ペルソナを…。」

イゴール 「“ペルソナ”とは、もう一つの貴方自身なのです。その力をすぐに理解するのは、難しいかもしれませんな…。」

穂乃果 「もう一つの…私?」

イゴール 「貴方の力は、極めて特別なもの。その名も…“ワイルド”。」

穂乃果 「ワイルド…?」

53: 2016/06/23(木) 13:17:28.53 ID:91ywlpty.net
イゴール 「他者と絆を深め、コミュニティを築き、あらゆるペルソナを使いこなす。それがワイルドの力。」

穂乃果 「???」

イゴール 「いずれ分かることでしょう。今はただ、あなたの“やれる事”をこなすことです。」

穂乃果 「私のやれる事…。」

イゴール 「お客人のやれる事を探し、自らの選択に責任を持つ。それが契約の内容です。」

穂乃果 「契約…。」

イゴール 「おや…あなたの世界では、多少の時間が流れたようです。これ以上お引き止めはできますまい。」

イゴール 「それでは、ごきげんよう…。」

54: 2016/06/23(木) 13:18:00.05 ID:91ywlpty.net
~翌朝 寮~


織田 「高坂君は、まだ寝ているのかい?」

海未 「はい。寝坊はいつものことですが、この時間というのは…。」

ことり 「学校で倒れてからずっとあのまま…。やっぱり心配だよ…。」

絵里 「大丈夫よ。私も初めてペルソナを出した後、同じような状態になったから。」

希 「ペルソナ召喚には、多くの体力や精神力を消費する。きっと、体がその消耗に対応出来なかったんよ。」

織田 「しかし、初めてであれだけの力を開放するとは驚きだよ。彼女は大きな戦力になるだろう。」

海未 「ちょっと待ってください! 穂乃果を戦いに巻き込むつもりですか!?」

織田 「当たり前だろう。…そもそもここに来た時点で、“それ”を覚悟していたんじゃないのか?」

海未 「そう…でした。すいません。」

織田 「もっとも、戦いに加わるかどうかは、彼女の意思次第だが。」

織田 「…おっと、噂をすればなんとやらだ。」

55: 2016/06/23(木) 13:18:37.60 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「おはよう…。」

ことり 「穂乃果ちゃん! 大丈夫なの…?」

穂乃果 「うん。大丈夫、平気。」

織田 「おはよう高坂君。昨日の活躍は見事だったよ。」

穂乃果 「あまり覚えてないや…。でも、力になれて良かったです。」

絵里 「あの時は本当にありがとう。あなたは命の恩人よ。」

穂乃果 「そんな…えへへ。」

織田 「…早速本題に入ろうか。高坂君、君の今後についてなんだが…。」

希 「先生、それはちょっといきなり過ぎるんじゃ…。」

織田 「だが早急に決めたいことなんだ。事態は一刻を争う。」


穂乃果 「……?」ゴソッ


ことり 「どうしたの穂乃果ちゃん?」

56: 2016/06/23(木) 13:19:02.95 ID:91ywlpty.net
穂乃果は着ていた制服のポケットの中に、何かが入っているのに気がついた。


穂乃果 「これ…。」

海未 「それは…鍵ですか?」

ことり 「寮の鍵じゃないね。ピカピカで綺麗…。」

穂乃果 「……。」グッ

穂乃果 「先生。」

織田 「何かね?」

穂乃果 「私も、一緒に戦わせてください!」

海未 「穂乃果!?」

織田 「ほう…。」

57: 2016/06/23(木) 13:19:34.62 ID:91ywlpty.net
織田 「勿論大歓迎だ。よろしくね、高坂君。」

絵里 「よろしくね、穂乃果。」

希 「よろしく。」

海未 「穂乃果…どうして!?」

穂乃果 「それが今の私にやれる事だから…。それだけじゃダメかな…?」

ことり 「穂乃果ちゃん…。」

海未 「全く…穂乃果らしいです。」

穂乃果 「2人とも…。」


織田 「…どうやら、異論はないようだね。」

59: 2016/06/23(木) 13:20:04.16 ID:91ywlpty.net
~深夜 音ノ木坂校舎~


穂乃果 「はぁぁぁっ!」ザシュッ!

シャドウ 「グォォォォッッ!!」

絵里 「穂乃果、後ろ!」

穂乃果 「えっ…うわぁぁ!」

希 「ペルソナっ!」カッ!

シャドウ 「ヌゥゥゥゥ…」

穂乃果 「ありがとうございます…希先輩!」

希 「ええって。ほら、探索の続き行くよ。」

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ーー

60: 2016/06/23(木) 13:20:36.38 ID:91ywlpty.net
~その頃 寮~


海未 「穂乃果は大丈夫でしょうか…。」

ことり 「先輩もいるし、大丈夫だよきっと。」

織田 「すまないね、君たちだけ待機させちゃって。またあんな大きなシャドウが現れたら危険だからね。はい、ホットミルク。」

海未 「ありがとうございます。」

織田 「君たちと高坂さんは幼馴染みだったね。さぞかし心配だろう。」

ことり 「えぇ…。でも、いつもの事ですから。」

織田 「いつもの事?」

海未 「こちらの話です。…ホットミルク、ご馳走様でした。今日は失礼します、おやすみなさい。」

ことり 「あっ、私も…。おやすみなさい。」

織田 「あぁ、おやすみ。」


織田 「…いつもの事、ねぇ。」

61: 2016/06/23(木) 13:21:01.03 ID:91ywlpty.net
ことり 「海未ちゃん、いくらなんでも先生にあれは…。」

海未 「すいません…つい。」

ことり 「心配…なの?」

海未 「いえ、穂乃果なら大丈夫でしょう。…ですが穂乃果はいつもこうです。一人で突っ走って、私達のことを置いてけぼりにして…。」

ことり 「寂しいんだね。」

海未 「ふふっ、それはことりも同じでしょう?」

ことり 「えへへ、さすが海未ちゃんだね。うん、私も寂しいよ。」

ことり 「でも穂乃果ちゃんがやりたいって言ってるんだもん。私が足を引っ張るわけにはいかないよ。」

海未 「ことり…。」

62: 2016/06/23(木) 13:21:35.75 ID:91ywlpty.net
海未 「そうですね…。私も、全く同じことを考えてました。」

ことり 「おんなじだね、嬉しい。」

海未 「応援しましょう、穂乃果のこと。」

ことり 「うん!」

海未 「……。」

ことり 「……。ねぇ、海未ちゃん。今日、一緒に寝てもいい?」

海未 「もちろんです。小さい頃、お泊まり会をした時以来ですね。」


ことり (穂乃果ちゃんがやるって言ってるんだもん。私のワガママで…)

海未 (穂乃果に迷惑をかけるわけにはいきません。私は…)

ことり・海未 (私は…こうしているだけで充分…。)

ーーーーーー
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ーー

63: 2016/06/23(木) 13:22:01.78 ID:91ywlpty.net
~翌朝 寮~


穂乃果 「おはよー…。」

海未 「穂乃果、もうお昼ですよ。日曜日とはいえ、寝坊が過ぎますよ。」

穂乃果 「しょうがないじゃん! 昨日は2時までずっと戦ってたんだから!」

海未 「そ、そうでした…。すいません穂乃果。今お茶いれますね。」

穂乃果 「えっ…いや、そんないいよ!」

ことり 「穂乃果ちゃん、はい! 席あけたよ、座って。」

穂乃果 「ありがとう…。どうしたの、ふたりとも?」

海未 「なんでもありませんよ。はいお茶。」

穂乃果 「そう…ありがとう。」


織田 「みんな揃ったね。」

64: 2016/06/23(木) 13:22:51.45 ID:91ywlpty.net
織田 「さて、昨日は探索お疲れ様。今日は休み…と言いたいところだけど。」

絵里 「また奴らが?」

織田 「あぁ、レーダーに反応があってね。音楽室に、大量のシャドウが潜んでいたんだ。」

希 「音楽室…。シャドウが生まれる原因になるような物は無さそうやけど…。」

織田 「音に惹かれたのかも知れないね。まぁ、いるとわかった以上、殲滅するまでだ。頼んだよ、みんな。」

穂乃果 「任せてください!」

ことり・海未 「……。」

織田 「そうだ、今日は君たちも同行してくれるかな? 大型シャドウの反応もないし、大丈夫だろう。」

海未 「分かりました…。」

ことり 「みんなの邪魔にならないように、気をつけます。」

穂乃果 「海未ちゃん、ことりちゃん…?」

織田 「それじゃあ、22時にここに集合。それまでは自由にしてくれ。」

65: 2016/06/23(木) 13:23:19.16 ID:91ywlpty.net
~その頃 音楽室~


ポロロン…

真姫 「ふぅ…誰もいない音楽室で弾くピアノはいいわね。家で弾くのとは、また違う良さがあるわ。」

真姫 「2年生になったらもう音楽とはサヨナラ。今の内に楽しんでおきましょ。」


真姫 「ねっ、トマ太郎?」

シャドウ 「キュピピー!」


真姫 「…小さくて丸くて真っ赤で、本当にトマトみたいね。食べちゃいたくなるわ。」

シャドウ 「キュピッ!!!?」

真姫 「冗談よ。あなたは私の癒しなの。そんな事するわけないでしょ。」

シャドウ 「キュピピー!」

真姫 「それにしても…」


真姫 「あなたは一体何者なの?」

66: 2016/06/23(木) 13:23:44.54 ID:91ywlpty.net
~深夜 音ノ木坂校舎前~


絵里 「こちら絵里。学校につきました。」

織田 『よし。シャドウの反応は、やはり音楽室からだ。数も多い、油断はするな。』

絵里 「もちろんです。」

希 「さ、行こか。」


穂乃果 「……先輩!」


絵里 「何かしら。」

穂乃果 「すいません、先行っててもらえますか? 海未ちゃんとことりちゃんに、話があるんです。」

海未 「穂乃果…?」

ことり 「穂乃果ちゃん?」

67: 2016/06/23(木) 13:24:06.32 ID:91ywlpty.net
絵里 「ダメよ、団体行動を乱すわけには…」

希 「ええよ。エリち、行こうか。」

穂乃果 「ありがとうございます。」

絵里 「ちょっと希!?」

希 「エリち、お願い。」

絵里 「…。分かったわ。すぐに合流するのよ、分かった?」

穂乃果 「はい。ありがとうございます。」


海未 「穂乃果、何を考えているのです!?」

ことり 「そうだよ! はぐれたら危ないよ!」

穂乃果 「2人とも…」


穂乃果 「なにか隠してない?」

海未・ことり 「…!」

68: 2016/06/23(木) 13:24:35.04 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「今日の2人、なんか変だよ。なにか隠してる? それとも何か言いたいこととかあるの?」

ことり 「それは…。」

穂乃果 「お願い、教えて。これじゃ私、戦いにも集中出来ないよ。」

ことり 「……。」

海未 「…寂しかったんです、私達は。」

ことり 「海未ちゃん!?」

穂乃果 「寂しい…?」

海未 「穂乃果はいつも一人で行ってしまって、私達を置いていってしまう。…それが穂乃果のいい所でもありますが、私達は孤独でした。」

ことり 「…穂乃果ちゃんは大事な友達だから、いつまでも一緒にいたい。でも今は、一緒にいるのにいないような気がしちゃったんだ。」

穂乃果 「2人とも…。」

69: 2016/06/23(木) 13:25:38.56 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「どうして…どうして言ってくれなかったの!?」

ことり 「だって…そんな事言ったら、穂乃果ちゃんに迷惑かけちゃうと思って!」

穂乃果 「そんなことないよ! どうして2人だけ我慢してたのさ! 私なんて、いつも2人にワガママ言って…。」

海未 「穂乃果…。」

穂乃果 「おかしいよ…2人とも。悪いのは穂乃果なのに、我慢して、苦しんで…。」

ことり 「そんな…穂乃果ちゃんは悪くないよ!」

海未 「そうです! 私達がワガママ言ってるだけなんです!」

穂乃果 「…ありがとう、2人とも。私にワガママ言ってくれて。」

海未 「えっ…?」

穂乃果 「だって、2人にそんな風に言われたこと無かったんだもん。私、嬉しいんだ。」

ことり 「穂乃果ちゃん…!」

70: 2016/06/23(木) 13:26:04.36 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「ねぇ2人とも。これからも、私にワガママ言ってくれる?」

海未 「…! はい…もちろんです!」

ことり 「私も! 穂乃果ちゃん、これからもよろしく!」

穂乃果 「うん…よろしく…海未ちゃん、ことりちゃん…!」グスッ

海未 「もう…何を泣いているんですか。」グスッ

ことり 「海未ちゃんだって…。」グスッ

海未 「ことりも泣いてますよ…。ふふっ。」

穂乃果 「あははは!!」

ことり 「えへへ…。」


3人は涙を流しながら、笑っていた。また一段と、絆が深まった気がした。

フォォ……

海未 「こ…これは…!?」

ことり 「私達の体が…光ってる!」

71: 2016/06/23(木) 13:26:30.15 ID:91ywlpty.net
海未 「これは…まさか!」

ことり 「うん…感じる。ペルソナの力!」

穂乃果 「2人とも、おめでとう!」

海未 「でも…どうして既にペルソナを所持している穂乃果からも光が?」

穂乃果 「さぁ…? それより、はやく先輩と合流しなきゃ!」

ことり 「そうだね! よぉし、私も活躍しちゃうぞー!」

海未 「私だって! さぁ、行きましょう!」

72: 2016/06/23(木) 13:27:00.19 ID:91ywlpty.net
~音楽室~


穂乃果 「エウテルペー!」カッ!

シャドウ 「グォォォォッッ!!」

穂乃果 「打撃が効かない! 海未ちゃん、アイツの弱点わかる!?」

海未 「はい、任せてください!」


海未 「メルポメネー!」カッ!


海未 「……分かりました! 弱点は氷です!」

穂乃果 「ありがとう! よぉし…」


穂乃果 「ジャックフロスト!」パリンッ!

73: 2016/06/23(木) 13:27:25.94 ID:91ywlpty.net
絵里 「複数のペルソナ…そんなことが出来るなんて…!」

希 「エリち後ろ!」

絵里 「えっ…きゃぁっ!!?」

ことり 「絵里先輩! 今回復を…!」


ことり 「エラトー!」カッ!


絵里 「ありがとう、ことり!」

ことり 「頑張ってください!」

海未 「サポート役もいいですね。みなさんのお役に立てて嬉しいです!」

ことり 「本当は前線で戦いたかったんじゃない?」

海未 「…まぁ少しは。ですが今は、これが私の役目です!」

ことり 「そうだね! よぉし…いくよ!」


海未・ことり 「「ペルソナぁぁっ!!」」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

74: 2016/06/23(木) 13:27:53.57 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「ふぅ…やっと片付いたね。」

絵里 「えぇ。海未の分析と、ことりの回復が無かったら危なかったわね。」

希 「ありがとな、おふたりさん。」

海未 「そんなとんでもない!」

ことり 「えへへ、ありがとうございます。…ん?」

サササッ…!!

ことり 「…!?」

絵里 「どうしたの、ことり?」

ことり 「いや…今なにかいたような…。」

海未 「シャドウの気配はしませんし…虫ではないですか?」

ことり 「そうかなぁ?」

絵里 「さ、そろそろ帰りましょ。明日の学校に響くわ。」

75: 2016/06/23(木) 13:28:18.09 ID:91ywlpty.net
~翌朝 音楽室~


真姫 「トマ太郎、おはよう。」ガララ

真姫 「……? トマ太郎?」


シャドウ 「キュピピ…」


真姫 「…!? トマ太郎、どうしたの!? 酷い怪我…。」

真姫 「保健室! 保健室に行きましょ!」

76: 2016/06/23(木) 13:28:43.98 ID:91ywlpty.net
~保健室~


真姫 「あのっ、すいません!!」ガララッ!

ことり 「はーい、どうしましたかー?」

真姫 「この子が…この子が怪我してて!」

ことり 「どれどれ…。…ッ!!?」

真姫 「ど、どうしたんで…」


ことり 「離れてっ!!!」


真姫 「…!? ど、どうしたのよ…?」

ことり 「その子は…そいつは危険なの! 今すぐ私にあずけて、ここから離れて!」

真姫 「何よそれ…いきなりそんな事言われて、言う通りにすると思う?」

ことり 「いいからっ! はやくっ!」

真姫 「何よ…意味わかんないっ!」ダッ!

ことり 「あぁっ! ちょっと!」

77: 2016/06/23(木) 13:29:09.13 ID:91ywlpty.net
真姫 「なんなのよあの人…。」

真姫 「仕方ない、私が治すわ。…知ってた? 私、これでも医者を目指してるのよ。」

真姫 「…いや、違うわね。」

シャドウ 「キュピピ?」

真姫 「あっ、ううん。何でもないわ。」

真姫 「安心しなさい、あなたは私が守るわ。」


真姫 「絶対に。」

続く
ーーーー

78: 2016/06/23(木) 13:30:07.80 ID:91ywlpty.net
~夜 寮~


織田 「シャドウを保護している生徒が?」

ことり 「はい。リボンの色からして、1年生だと思います。」

絵里 「危険ね…。いくら小さくて、まだ人間に危害を加えるレベルではないとしても、いつ牙をむくか分からないわ。」

織田 「そうだね…早いところ始末する必要がある。」

ことり 「でも彼女、そのシャドウのことをとても大切にしてました。そんなことさせてくれるとは…。」

希 「困ったね…。」

海未 「とにかく、事情を話して納得してもらうしかありません。」

絵里 「そうね。…穂乃果、お願いできるかしら。」

穂乃果 「えっ、私!?」

79: 2016/06/23(木) 13:31:15.47 ID:91ywlpty.net
絵里 「私が行っても、堅苦しくなってしまいそうで…。あなたの方が気軽に接することが出来そうだし、話もしやすいと思うわ。」

穂乃果 「そうでしょうか…。」

織田 「うん、素晴らしい人選だ。頼んだよ、高坂君。」

穂乃果 「わ、分かりました…。うん、頑張りますっ!」

ことり 「赤い髪が特徴的だったから、1年生の教室にいけば、すぐにわかると思うよ。」

穂乃果 「分かった、ありがとう!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

81: 2016/06/23(木) 13:31:53.31 ID:91ywlpty.net
~翌朝 一年生教室~


穂乃果 「赤い髪の娘…赤い髪の娘…。」キョロキョロ

穂乃果 「あれっ、いないなぁ…。もぅ、せっかく早起きして早めに学校に来たのに!」


花陽 「あの…何かご用ですか?」


穂乃果 「ん? 君、1年生?」

花陽 「は、はい…。」

穂乃果 「ちょうど良かった! ねぇ、1年生の、赤い髪の娘知らない?」

花陽 「赤い髪…。あぁ、西木野さんですよね? 歌の上手い…。」

穂乃果 「西木野さんって言うんだ。」

花陽 「はい…。西木野…真姫さん。」

穂乃果 「今日はまだ来てないのかな?」

82: 2016/06/23(木) 13:32:33.81 ID:91ywlpty.net
花陽 「いえ、音楽室だと思います。西木野さん、休み時間とか、いつもそこにいるから…。」

穂乃果 「音楽室…?」ピクッ

花陽 「? どうかされましたか…?」

穂乃果 「あっ、ううん、何でもない! ありがとう、ええっと…。」

花陽 「小泉です。小泉…花陽。」

穂乃果 「花陽ちゃん、ありがと! またね!」

花陽 「はい…。」ペコリ


凛 「かよちん、どうしたのー?」

83: 2016/06/23(木) 13:33:10.06 ID:91ywlpty.net
花陽 「あっ、ううん。ちょっと先輩とお話してただけ。」

凛 「ふーん…。」

花陽 「凛ちゃん、今の先輩知ってるの?」

凛 「ううん、知らないよ。さっ、かよちん。お話の続きしよ!」

花陽 「うん。」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

84: 2016/06/23(木) 13:33:38.12 ID:91ywlpty.net
~音楽室~


ポロロン チャラララララ…

真姫 「どう、この曲。癒されるでしょ?」

トマ太郎 「キュッピー!」

真姫 「傷も治ったみたいで良かった。さすが私ね。」

トマ太郎 「キュピピー!」

真姫 「あなたもそう思う? ま、当然よね。」


穂乃果 「西木野さんっ!」ガララッ!

真姫 「!?」

85: 2016/06/23(木) 13:34:13.57 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「あっ…いきなりゴメン。」

真姫 「別に。」

トマ太郎 「キュピー?」

穂乃果 「…!」

真姫 「ダメッ! 隠れてなさい。」ヒソヒソ

穂乃果 「西木野さん、その子…。」

真姫 「……。何ですか? あなたもあの先輩みたいに、この子を渡せとか言うつもりですか?」

穂乃果 「でもっ! その子は危険で…」

真姫 「そんなことないっ!」

真姫 「この子は…私の大切な友達なの!」

穂乃果 「お願い、話を聞いて!」


海未 「私からもお願いします。」

穂乃果 「海未ちゃん! それにことりちゃんも!」

真姫 「あなた達…。」

86: 2016/06/23(木) 13:34:43.68 ID:91ywlpty.net
海未 「その子はシャドウと言って…私達に危害を加える、危ない生物なんです。」

真姫 「はぁ…?」

ことり 「話すと長くなるけど…」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

真姫 「…ふぅん、なるほどね。」

穂乃果 「分かってくれた?」

真姫 「まぁ…。でも非現実的なことだし。」

海未 「信じられなくても無理はありません。しかし分かってください、その子は危険なんです。」

ことり 「お願い、だからその子を…」

真姫 「嫌よ。」

87: 2016/06/23(木) 13:35:10.79 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「そんな…。」

真姫 「言ったでしょ。この子は私の大切な友達なの。それに、この子は私を傷つけるようなことはしないわ。」

トマ太郎 「キュピピー!」スリスリ

真姫 「くすぐったいわよ、トマ太郎。」


キーンコーンカーンコーン


真姫 「…そろそろHRの時間なので。失礼します。…またね、トマ太郎。」

トマ太郎 「キュピー。」

フッ…

ことり 「消えた…。」

真姫 「あなたがたの事は誰にも言わないので、安心してください。それでは。」


海未 「これは…一筋縄では行かなそうですね。」

88: 2016/06/23(木) 13:35:42.36 ID:91ywlpty.net
~夜 寮~


織田 「そうか…それは参ったね。」

穂乃果 「ねぇ先生、あのままでもいいんじゃないんですか?」

織田 「というと?」

穂乃果 「私にも、あの子が人に危害を加えるようには見えませんでした。相当西木野さんに懐いてるようでしたし、大丈夫なんじゃないかと。」

海未 「そうですね…。それは私も少し感じてました。」

絵里 「でもシャドウのことは、私たちにもよく分かってない。少しでも可能性があるなら、始末しなきゃ。」

希 「何かあってからやと遅いからね。」

織田 「意見が分かれてしまったね…。」


6人の間で沈黙が続いた。
その時、寮内に警告音が鳴り響いた。

89: 2016/06/23(木) 13:36:18.13 ID:91ywlpty.net
ことり 「!? な、何ですかこれ!」

絵里 「まさかこれは…!」

織田 「あぁ…あの時と同じ、大型シャドウだ! 場所は…」

海未 「学校のグラウンドです! そこから、強いシャドウの気配が!」

穂乃果 「よし、すぐに行くよ!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

90: 2016/06/23(木) 13:36:50.39 ID:91ywlpty.net
~深夜 音ノ木坂学院~


深夜の音ノ木坂学院。その校庭にいたのは、巨大なライオンのような姿をしたシャドウだった。


穂乃果 「で…でかいっ!」

絵里 「怯えてる暇はないわ! みんな、覚悟はいい?」

ことり 「もちろん!」

海未 「さぁ、いきますよ!」


シャドウ 「オォォォォォォォ!!!」

ーーーーーー
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91: 2016/06/23(木) 13:37:18.15 ID:91ywlpty.net
~その頃 真姫宅~


真姫 「なんなのよ…あの人達。トマ太郎は私の友達なのに…トマ太郎は、そんなことしないのに!」

真姫 「私は信じてるから…トマ太郎。」


毛布を全身にかぶり、目をつぶったその時、真姫は地響きのような音と、かすかな揺れを感じた。


真姫 「…? なに、地震?」

真姫 「いや…違う? この音は…学校の方から?」

92: 2016/06/23(木) 13:37:44.49 ID:91ywlpty.net
窓から学校の方を見ると、ちょうど学校のある方角から、なにやら煙がたっているのが見えた。


真姫 「何あれ…まさか…シャドウが?」

真姫 「…! トマ太郎!」


いてもたってもいられなかった。真姫はパジャマの上に上着をはおり、家から飛び出した。

93: 2016/06/23(木) 13:38:13.69 ID:91ywlpty.net
~音ノ木坂 校庭~


希 「かはぁっ!!」

穂乃果 「希先輩! …許さない! うぉぉぉぉ!!!」


穂乃果は剣を使い、大型シャドウに切りかかった。しかしシャドウは素早い動きで難なくその攻撃をかわし、鋭い爪で穂乃果に襲いかかった。


絵里 「穂乃果危ないっ! ペルソナっ!」カッ!

テルプシコラー 「ハァァッ!」 キィンッ!

穂乃果 「ありがとうございます!」

絵里 「そういうのは後! 今は目の前の敵に集中して!」

海未 「みなさん! 奴は炎が弱点です!」

希 「でも炎を使える人が…。」

穂乃果 「任せてください! ジャックランタン!」カッ!

94: 2016/06/23(木) 13:38:45.99 ID:91ywlpty.net
穂乃果の新たなペルソナ…ジャックランタンが放った炎は、シャドウの顔に見事ヒットした。


シャドウ 「グォォァァッ!」 ヨロッ…

ことり 「今だよ!」

絵里 「畳み掛ける! みんな、いくわよ!」

5人 「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」

シャドウ 「グルルル…。 ……?」


シャドウに一斉に攻撃を仕掛けようとする5人。しかしシャドウが見ていたのは、その5人ではなかった。


真姫 「何…あれ。あれがシャドウ…?」

シャドウ 「グルルウォオァァァァ!」


シャドウは5人の間を掻い潜り、真姫の方へと一目散に突っ込んだ。

95: 2016/06/23(木) 13:39:10.98 ID:91ywlpty.net
絵里 「…!? あの娘はっ!」

穂乃果 「西木野さん!? どうしてっ!」

希 「まずい…早すぎて間に合わない! 逃げてっ!!」


真姫 「嫌…来ないで…。足が…動かないのっ!」

シャドウ 「グォォォォッッ!!」 ダダダダッ!!

真姫 「嫌ぁぁぁぁぁぁぁっ!」

トマ太郎 「キュッピピーー!!」ドンッ!

真姫 「えっ」

96: 2016/06/23(木) 13:39:42.06 ID:91ywlpty.net
真姫の体が大きく傾いた。-トマ太郎が、真姫の体を押したのだ。真姫はそのまま倒れ、シャドウの攻撃をかわすことが出来た。


真姫 「うっ…! と、トマ太郎!?」

トマ太郎 「キュッピー!」


絵里 「シャドウが…人を助けた!?」

海未 「やはりあの子は本当に…。」

シャドウ 「グルルルル…」

穂乃果 「まずいっ! シャドウがまた西木野さんに!」

希 「早く止めないと! ウーラニアー!」カッ!

97: 2016/06/23(木) 13:40:12.99 ID:91ywlpty.net
真姫 「ありがとう…トマ太郎。」

トマ太郎 「キュピ。」

真姫 「やっぱりあなたは最高の友達よ。さ、おいで。」

トマ太郎 「キュッピピー!!」


トマ太郎が真姫の胸に飛び込もうとした、その時だった。
…トマ太郎の体が真っ二つになり、そのまま光の粒となり、消えてしまった。


真姫 「…………へ?」

シャドウ 「グォォォォォォォォォッ!!!」

98: 2016/06/23(木) 13:40:38.33 ID:91ywlpty.net
希 「間に…合わなかった…。」

海未 「ですがまだ西木野さんは無事です! 早く救出に!」

穂乃果 「うん! 西木野さんっ、待ってて! ペルソナっ!」カッ!


エウテルペーの攻撃で、シャドウは横に倒れた。その隙に穂乃果は、真姫の元に向かった。


穂乃果 「西木野さんっ、大丈夫!?」

99: 2016/06/23(木) 13:41:07.88 ID:91ywlpty.net
真姫 「…トマ…太郎…?」

真姫 「嘘よね…。いつもみたいに、姿を隠すために消えただけよね…?」

真姫 「ねぇ…出てきてよ…お願い…お願いだからっ!」


穂乃果 「西木野さん…。トマ太郎は…もう。」


真姫 「アイツ…? アイツがあなたを虐めたの?」

真姫 「ごめんね…痛かったよね…トマ太郎…。」

真姫 「……許さない。」 フッ…


穂乃果 「西木野さん…?」


真姫 「絶対に…許さないっっ!!!!」カッ!

穂乃果 「…!? 西木野さん…まさか!」

100: 2016/06/23(木) 13:41:33.14 ID:91ywlpty.net
真姫 「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」パリンッ!


真姫の周りで旋風が巻き起こる。そして…真姫のペルソナが、姿を現した。


カリオペイア 「ガァァァァァァァッッ!」


絵里 「あの子も…ペルソナを!?」

希 「でもこれは…。」

織田 『あぁ…。怒りに身を任せた覚醒。これはまずい…。』

101: 2016/06/23(木) 13:42:05.16 ID:91ywlpty.net
真姫 「アンタだけはっ…! 絶ッッッ対に許さないっ!」

カリオペイア 「ハァァァァッッ!!」


真姫のペルソナ…“カリオペイア”は、大型シャドウに殴りかかった。
シャドウは抵抗こそしたものの、そのあまりにも強大な力になす術もなく、そのまま黒いスライム状のようなものになり、弾けとんだ。


ことり 「…! やった!」

海未 「はい。…ですが、彼女の様子が…。」


真姫 「はぁっ…はぁっ…! あぁぁぁぁぁっ!!!」

穂乃果 「西木野さんっ! もうやめてっ!」

102: 2016/06/23(木) 13:42:32.45 ID:91ywlpty.net
シャドウが消えても尚、真姫のペルソナは攻撃をやめなかった。飛び散った欠片を、片っ端から潰しにかかっていた。

倒された大型シャドウの赤い目の部分…その欠片に手を伸ばしたその時、ペルソナの動きがピタリと止まった。


穂乃果 「と…止まった…?」

真姫 「トマ…太郎……。」


希 「…ヤツの目と、トマ太郎の姿が重なったんやね…。」


真姫の目から涙がこぼれた。それと同時に、真姫のペルソナは消えた。

103: 2016/06/23(木) 13:42:58.63 ID:91ywlpty.net
真姫 「うっ…ひぐっ…! トマ太郎っ…!」

真姫 「ごめんなさい…ごめんなさいっ! 私が…私のせいでっ…!」

穂乃果 「そんな…西木野さんのせいじゃ…。」

海未 「西木野さん…。私達も、本当に申し訳ありませんでした。あなたの気持も理解しようとせず、ただシャドウを倒そうとばかり…。」

ことり 「ごめんなさい…。」


真姫 「…別に、いいわよ。」

真姫 「……そうよね、トマ太郎。私に泣いてる暇なんてない。」

真姫 「あなたにこんな酷いことをした奴らを…許すわけにはいかない。」

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ーー

104: 2016/06/23(木) 13:43:24.82 ID:91ywlpty.net
~数日後 寮~


織田 「ということで、今日から戦線のメンバーに加わることになった西木野君だ。」

真姫 「あらためて、よろしくお願いします。」

穂乃果 「こっちこそよろしく、真姫ちゃん!」

真姫 「なによ…馴れ馴れしいわよ。」

穂乃果 「いいじゃーん! 真姫ちゃーんっ!」

真姫 「くっつかないで!」

海未 「元気になったようで、本当に良かったです。」

105: 2016/06/23(木) 13:43:48.73 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「…そういえば、この戦線の名前とかないんですか? チーム名みたいなの。」

絵里 「そういえば考えたこともなかったわね…。」

希 「いい機会やし、考えてみよっか。」

海未 「何がいいでしょう…。折角ですし、私たちのペルソナに関する名前にしませんか?」

希 「…それなら、ピッタリのがあるよ!」


希はそう言って、大き目の紙とペンを取り出し、机の上に広げた。

106: 2016/06/23(木) 13:44:17.97 ID:91ywlpty.net
希 「テルプシコラー、ウーラニアー、エウテルペー、メルポメネー、エラトー、カリオペイア…。」

希 「神話上で、“ムーサ”と呼ばれる女神。その9姉妹の内の6人なんよ。」

海未 「そんな偶然が…。」

織田 「いや、必然か…。」ボソッ

ことり 「…? 先生、なんて?」

織田 「あぁ、いや。何でもないよ。」


穂乃果 「じゃあチーム名は、ムーサですか?」

ことり 「うーん…なんか可愛くないなぁ…。」

真姫 「チーム名に可愛さを求める…?」

希 「あっ、じゃあ!」


希は持っていたペンで、紙のど真ん中に大きく字を書いた。

107: 2016/06/23(木) 13:44:43.89 ID:91ywlpty.net
『μ's』


穂乃果 「…? ゆーず?」

希 「ムーサの英語名。“ミューズ”や。」

ことり 「μ's…。うん、いいと思います!」

海未 「はい、私もそう思います!」

穂乃果 「よーし!」


穂乃果 「今日から私たちは、μ'sだ!」

108: 2016/06/23(木) 13:45:13.04 ID:91ywlpty.net
希 「気に入ってくれてよかった。」

真姫 「それにしてもμ'sの九姉妹の内の6人ね…。偶然にしてもできすぎね。」

海未 「確かに…。」

織田 「これは…残りの3人も、どこかにいるのかもしれないね。」

絵里 「なにかを意味してるのでしょうか…。」

海未 「もし9人揃ったら…。ふふっ、楽しみですね。」

穂乃果 「仲間が増えるのはいいことだよ! よし、ちょっと私探してくる!」ダッ!


海未 「えっ、ちょっと穂乃果! 探して見つかるようなものでは…」

ことり 「もう行っちゃったよ。」

絵里 「相変わらずね、穂乃果は。」

109: 2016/06/23(木) 13:45:42.05 ID:91ywlpty.net
希 「……あと2人、か。」

海未 「? あと3人、では?」

希 「えっ…あぁ! そうやったな! やだなー、ウチ引き算もできなくなっちゃったー!」

ことり 「希先輩がそんなドジするなんて珍しいですね。」

絵里 「えぇ、本当に。ちょっと可愛いわね。」

希 「ちょっ…やめてってばエリち!」

海未 「ふふっ。」

ことり 「あははは!」

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110: 2016/06/23(木) 13:46:03.52 ID:91ywlpty.net
~夜 希の部屋~


希 「もぅ…恥かいた…。」

希 「μ'sの9姉妹…。あと…3人。」

希 「…いつになったら戻ってくるん?」


希 「にこっち…。」


続く
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112: 2016/06/23(木) 13:46:51.06 ID:91ywlpty.net
~深夜 穂乃果部屋~


穂乃果 「……んぅ?」


誰かの気配を感じて目が覚めた。ベッドから体を起こして辺りを見回すと、部屋の窓際に、見覚えのある、金髪の幼げな女の子が立っていた。


穂乃果 「アリス…ちゃん?」

アリス 「…! ふふっ、また会ったね。穂乃果ちゃん。」

113: 2016/06/23(木) 13:47:23.52 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「どうして私の部屋に? 鍵もしてたはず…。」

アリス 「私はこっちの世界の住人じゃないから…ね?」

穂乃果 「そういえばそうだったね。」

アリス 「あっ、納得しちゃうんだ。」

穂乃果 「正直、アリスちゃんの世界ってのもあまり信じられてないけど…。アリスちゃんが嘘をついてるようには見えないから。」

アリス 「…そっか。」

114: 2016/06/23(木) 13:48:11.87 ID:91ywlpty.net
アリス 「…穂乃果ちゃんはすごいね。」

穂乃果 「えっ、何が?」

アリス 「穂乃果ちゃんの言葉からは、“奴ら”の気配を感じない。…やっぱり、あなたを選んでよかった。」

穂乃果 「選んだ…?」

アリス 「穂乃果ちゃん、手を出して。」

穂乃果 「こう?」


アリスは穂乃果が差し出した手を軽く握った。すると、二人の手が青く光出した。


穂乃果 「うわわっ! なにこれ!?」

115: 2016/06/23(木) 13:48:47.66 ID:91ywlpty.net
アリス 「……魔術師と恋愛。愚者の力も強くなってる。」

穂乃果 「???」

アリス 「コミュニティはペルソナの力の源。大切にしてね、穂乃果ちゃん。」

穂乃果 「コミュニティ…あの鼻の長い人も言ってた…。」

アリス 「コミュニティは、他者との絆のこと。絆を深めれば深めるほど、コミュニティは築かれていく。」

アリス 「コミュニティが築かれれば、アルカナの力も強くなる。それは、ペルソナの力が強くなることと同じ。」

116: 2016/06/23(木) 13:49:23.24 ID:91ywlpty.net
アリス 「そしてこれは…私とあなたとの絆の証。“氏神”のアルカナ。」

穂乃果 「氏神…?」

アリス 「今、穂乃果ちゃんには4つのアルカナが宿ってる。」

アリス 「でもこれだけじゃない。絆の数だけコミュニティは存在し、コミュニティの数だけアルカナは存在する。」

アリス 「みんなとの絆を大切にね。」

穂乃果 「よくわからないけど…うん、分かった!」

アリス 「ふふっ。…じゃ、私そろそろいくね。」

穂乃果 「うん、また!」

アリス 「おやすみなさい。」フッ


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117: 2016/06/23(木) 13:49:55.74 ID:91ywlpty.net
~朝 通学路~


穂乃果 「…でねぇ! 雪穂ったらしょっちゅう連絡してくるんだよ。やっぱり寂しいんだねぇ。」

海未 「今度帰ってあげたらどうですか? きっと喜びますよ。」

ことり 「……。」キョロキョロ

穂乃果 「そうだねぇ、そうしてみる!」

ことり 「……。」キョロキョロ

海未 「…ことり?」

ことり 「…えっ、あっ! な、何!?」

海未 「どうしたのですかさっきから。周りを気にして…。」

ことり 「うん…。なんか、視線を感じるというか…。」

穂乃果 「視線…?」キョロキョロ

118: 2016/06/23(木) 13:50:31.60 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「誰もいないけど……。」

海未 「気にしすぎですよ。…ですが一応。」

海未 「ペルソナ。」カッ!

ことり 「ちょっ…ちょっと! 街中で召喚は流石に…。」

海未 「ペルソナ使いの素質がないものには、ペルソナの姿は見えないようですし、大丈夫でしょう。」

穂乃果 「そうだったんだ…。」

海未 「織田先生が話していたでしょう。…! 後ろですっ! 後ろに人の気配が!」

穂乃果 「本当に!? 穂乃果見てくる!」

ことり 「あっ、穂乃果ちゃん! 危ないよ!」

119: 2016/06/23(木) 13:50:59.43 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「……。」ササッ!

穂乃果 「……そこだっ!」ザッ!

穂乃果 「あれっ…誰もいない。おかしいな…海未ちゃんは確かに…」


穂乃果が諦めて二人の元へ戻ろうと振り返った時、目の前に1人の女性が立ちはだかった。
ツインテールで、サングラスとマスクをしており、まさに『不審者』のそれだ。


穂乃果 「は…はわわわわ…。」

?? 「……あんた、高坂穂乃果ね?」

穂乃果 「は、はいっ!」

120: 2016/06/23(木) 13:51:53.58 ID:91ywlpty.net
?? 「μ's…。シャドウ討伐隊ね…。」

穂乃果 「えっ、どうしてそのことを…。」

?? 「あんた達…。」

穂乃果 「はっ、はいっ!?」

?? 「さっさと解散しなさいっ!」ビシッ!

穂乃果 「へ…えっ、うぇぇ!?」

?? 「私みたいにならない内に…分かった!? 希にもそう言っといて!」


そう言うとツインテールの女性は、遠くへ走っていってしまった。


海未 「穂乃果っ!」

ことり 「穂乃果ちゃん、大丈夫!?」

穂乃果 「う、うん…。大丈夫。」

穂乃果 (私達のこと、シャドウのことも知ってた…。あの人は一体…?)

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121: 2016/06/23(木) 13:52:31.01 ID:91ywlpty.net
~夜 作戦室~


織田 「ふむ…そんなことがねぇ。」

ことり 「解散しろって言われたの? どうしてそんなこと…。」

真姫 「そんな勝手なこと…。」

海未 「私達は、学校を守るために活動しているのに、そんな言い方…。許せません!」

絵里 「……。」

希 「……。」

穂乃果 「…? 先輩、どうしたんですか?」

希 「うん…ちょっとね。…ごめん、ウチもう寝るね。おやすみ。」

穂乃果 「えっ、ちょっ! 希先輩!?」

穂乃果 「…行っちゃった。」

122: 2016/06/23(木) 13:52:55.86 ID:91ywlpty.net
絵里 「その人ね…。多分だけど、希の友達なの。」

ことり 「えっ、本当ですか!?」

織田 「そして、君達と同じペルソナ使いだ。」

海未 「そうだったんですか…。」

穂乃果 「でも、それならどうして解散しろなんて? そもそも、ペルソナ使いなら、一緒に戦うべきじゃ…。」

絵里 「戦ってたわよ。…私と希が戦い始めるよりもずっと前に。」

穂乃果 「そうなんですか?」

123: 2016/06/23(木) 13:53:31.22 ID:91ywlpty.net
織田 「でも、ちょっとした事件があってね…。」

ことり 「事件?」

絵里 「先生、話しても…。」

織田 「…構わないだろう。いや、むしろ話しておくべきだ。」

海未 「…教えてください。彼女の過去に何があったんですか?」

絵里 「…わかった。希には悪いけど、話すわ。」


絵里 「彼女の名前は『矢澤にこ』。私と同い年よ。」

絵里 「そして私たちと同じ、音ノ木坂の生徒。」

織田 「当時、戦線メンバーは3人だった。彼女と、その友達の優香さんと真奈さん。」

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124: 2016/06/23(木) 13:53:55.00 ID:91ywlpty.net
それは、今から2年前。にこが1年生の時だった。にこはその時、校内でただひとりのペルソナ使いだった。
その時戦っていたのは、にこを含めて3人。2人はペルソナを使えなかったが、学校を守るために、にこに協力したいと言って、戦線に加わることになった。

―その日は特に敵の勢いが凄まじかった。倒しても倒しても、敵はどんどん増えていく。遂には、にこはシャドウの攻撃で負傷してしまった。

125: 2016/06/23(木) 13:54:21.41 ID:91ywlpty.net
にこ 「うっ…! ぐはっ…!」

優香 「大丈夫!? くっそぉ…ぅぉぉおおおお!!」

にこ 「待って! 1人じゃ危険よ!」

優香 「こんな状況でそんな事言ってられる!? アンタはそこでじっとしてなさい!」

にこ 「でも…!」

優香 「そのケガじゃまともに戦えないでしょ!」

真奈 「おい、来るぞ! 大丈夫、二人いればなんとか…!」

にこ 「待って…! お願い!」

優香・真奈 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


にこ 「待ってぇぇ!!!」

126: 2016/06/23(木) 13:54:44.22 ID:91ywlpty.net
織田が駆けつけた時には、もう遅かった。シャドウの姿こそなかったものの、にこは気を失い倒れ、2人は行方不明となっていた。

にこは自分のせいで2人を失ったと、自らを責め続けた。戦うことは、もう出来なくなった。

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127: 2016/06/23(木) 13:55:10.57 ID:91ywlpty.net
織田 「…それから私は、ペルソナ使い以外の戦線への参加を禁じた。」

真姫 「そういうことだったのね…。」

織田 「彼女には、本当に悪いことをしたと思っている。謝って済むことではないが…。」

絵里 「解散しろと言ったのも、自分のような思いをさせたくなかったから…かもしれないわね。」

穂乃果 「にこ先輩…。」

織田 「戦いには、いつだって危険はつきものだ。君達だって、いつ同じ目に会うかもわからない。…心してくれ。」

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128: 2016/06/23(木) 13:55:39.35 ID:91ywlpty.net
~その頃 にこ宅~


にこは、先日の希とのメッセージのやり取りを見返していた。


希 < にこっちー! 今日、ウチらのチームの名前が決まったんよ!

希 < その名も…μ's! どう、いい名前やろ?

希 < 由来はね、みんなのペルソナが、ムーサの9姉妹だったから。

希 < …にこっちのペルソナも、9姉妹の1人なんよ。覚えてる?

希 < あの時…一緒に戦えなくてごめんな。

希< にこっち、あなたの気持ち、勿論分かってる。分かってるつもり。でも、その力を無駄にしたらあかん。

希 < お願い。今度こそ、一緒に戦お?

希 < そろそろ寝るね、おやすみ。

129: 2016/06/23(木) 13:56:13.03 ID:91ywlpty.net
にこ 「…バッカじゃないの?」

にこ 「また…もし仲間を失ったら…私はもう…。」


メッセージを眺めていると、希から新たなメッセージが送られてきた。


希 < なぁにこっち、今日穂乃果ちゃんに会った?

希 < 「解散しろ」って言われたって…。にこっちじゃないよね?


にこ 「……。」

130: 2016/06/23(木) 13:56:45.16 ID:91ywlpty.net
にこ < 間違いないわ。私よ。

希 < どうしてそんなこと言ったの?

にこ < 私みたいな思いをして欲しくなかったのよ。見たところ、3人とも仲良さそうだったし。

希 < ことりちゃんと海未ちゃんのこと?

にこ < そう。もし誰かを失うことになったら、きっとあの娘達は立ち直れないわ。

希 < そうかもしれないけど…。

にこ < だから解散しろって言ったの。大丈夫よ、私が戦うのをやめてからアンタ達が戦い始めるまで放置してても、学校に影響はなかったでしょ。

希 < でも、日に日にシャドウの力は強くなってて…。

にこ < 知ってるわよ。巨大なシャドウも出てたようだし。

希 < …なんだ。全部知ってたんやね。

にこ < まぁね。

131: 2016/06/23(木) 13:57:11.85 ID:91ywlpty.net
希 < ふふっ。

にこ < 何笑ってるの? 文面で笑うの気持ち悪いわよ。

希 < 別にー? にこっち、ウチらのことすごく気にかけてくれてたんやなって。


にこ 「なっ……!?」


にこ < ばっかじゃないの!? 私はただあいつらに分かって欲しくて…!

希 < そうやねー♪

にこ < アンタ…いい加減にしなさいよ?

132: 2016/06/23(木) 13:57:39.16 ID:91ywlpty.net
希 < にこっち、ウチらは覚悟してるつもりよ。

にこ < はぁ?

希 < 危険なことだってわかってる。仲間を失うかもしれないことだって、もちろんわかってる。

にこ < じゃあどうして…?

希 < それがウチらの使命だから。…この力を授かったのも、運命やと思ってる。

希 < ウチらは危険を冒してでも、あの場所を守らなくちゃいけない。そんな気がするんよ。

にこ < ふーん…。

希 < そうしないと、仲間だけじゃなくて、他にも大事なものを失いそうな気がする。…何かわかる?

にこ < ?

希 < そのうちわかるよ。じゃ、ウチもう寝るね。おやすみ。

133: 2016/06/23(木) 13:58:09.63 ID:91ywlpty.net
にこ 「何よそれ…そのうちわかるですって?」

にこ 「いつも勝手なことばかり…。…どう思う? クレイオー。」

にこ 「…ペルソナに聞いてもわからないか。」

にこ 「…そろそろ寝よ。」


にこ 「おやすみ。」

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ーーーー
ーー

134: 2016/06/23(木) 13:58:48.10 ID:91ywlpty.net
~放課後 アイドル研究部 部室~


にこ 「……ふぅ。」


パイプ椅子に腰をかけ、背もたれにもたれかかる。狭い部室に、一人きり。この空間が一番落ち着くのだ。
外から運動部の掛け声がかすかに聞こえる。この空間に1時間ほど身を預け、その後帰宅するのが、にこの日課だった。


にこ 「二人とも…今頃どこで何してるんだろ。」

にこ 「私だけ置いてって…本当、馬鹿じゃないの。」

にこ 「3人でアイドルについて語って、真似して歌って踊ってみたり…。」

にこ 「あの2人の他に、大事なもの…。そんなもの…。」


しばらく黄昏ていると、部室のドアをノックする音が聞こえた。

135: 2016/06/23(木) 13:59:24.57 ID:91ywlpty.net
にこ 「誰…? 入部希望?」


にこがドアを開けると、そこには見覚えのある人物が立っていた。


穂乃果 「…こんにちは。」

にこ 「アンタ…。何の用?」

穂乃果 「ちょっとお話したくて。いいですか?」

にこ 「…誰に言われたの?」

穂乃果 「え?」

にこ 「誰かに、私を説得するように言われたんじゃないの?」

穂乃果 「まさか。私はただ、あなたとお話がしたかっただけです。」

にこ 「何よそれ…。……入りなさい。」

穂乃果 「ありがとうございます!」

136: 2016/06/23(木) 13:59:55.36 ID:91ywlpty.net
にこ 「…で、何しに来たのよ?」

穂乃果 「いえ、特には。本当に、お話がしたかっただけです。」

にこ 「そう…。じゃあ、私から聞きたいことがあるんだけど。」

穂乃果 「なんですか?」


にこ 「アンタ、あの2人がいなくなったらって、考えたことある?」


穂乃果 「2人…海未ちゃんとことりちゃんのことですか?」

にこ 「そうよ。」

穂乃果 「うーん…考えたことないですね。ずっと一緒だと思ってますし。」

にこ 「それはどうかしらね…。」

穂乃果 「にこ先輩は…ここの部員だったおふたりと、どういう関係だったんですか?」

にこ 「……親友だったわ。あなた達と同じね。」

137: 2016/06/23(木) 14:00:25.05 ID:91ywlpty.net
にこ 「辛いわよ。…いえ、辛いなんてもんじゃないわ。何にもなくなる、そんな感じ。」

穂乃果 「……。」

にこ 「私はね、アンタ達にそんな思いをして欲しくないの。」

にこ 「…ねぇ、アンタはどうしてそこまでして戦うの?」

穂乃果 「…それが、私に出来ることだから、です。」

にこ 「似たようなこと言うのね、希と。」

穂乃果 「そうなんですか?」

にこ 「えぇ。希も全く同じようなこと言ってたわ。本当、みんなして馬鹿みたい。」

穂乃果 「そうでしょうか?」

にこ 「はぁ?」

138: 2016/06/23(木) 14:00:54.75 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「私は、これが私のやるべき事だと思ってます。だから、その使命を全うしている。」

穂乃果 「これって、すごくいいことだと思うんです。」

にこ 「……。」

穂乃果 「確かに、大事な仲間を失うかもしれないと思うと、怖いです。」

穂乃果 「ですが、怖がってばかりじゃ、前に進めないと思うんです。」

穂乃果 「私は、自分の手で未来を切り開きたいんです。」

にこ 「……何が言いたいの?」

穂乃果 「言葉のままです。」

にこ 「……。」

139: 2016/06/23(木) 14:01:22.10 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「にこ先輩の気持ち、すごくわかります。でも、こうしてるだけじゃ、何も変わらないと思います。」

にこ 「…!」

穂乃果 「2人も、こんなこと望んでないと思います。」

にこ 「アンタ…さっきから聞いてれば勝手なことばかり…!」

穂乃果 「にこ先輩は逃げてるだけですっ! 少しは前を向いて、戦ってみたらどうですか!?」

にこ 「うるさい…!」

穂乃果 「にこ先輩、希先輩に言われたこと、覚えてませんか。」

にこ 「はぁ?」

穂乃果 「他にも大事なものを失うって…。そう言われましたよね。あれ、何のことだと思いますか?」

にこ 「知らないわよっ!」

140: 2016/06/23(木) 14:01:50.31 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「自我。私はそう思います。」

にこ 「自我…?」

穂乃果 「目の前の現実から逃げてばかりだと、自我を失う…自分が自分でなくなる、そう言いたかったんだと思います。」

にこ 「今の私が…自我を失ってるとでも?」

穂乃果 「はい。」

にこ 「どうしてそんなこと…!」

穂乃果 「じゃあにこ先輩は、本当にこのままでいいと思ってるんですか?」

にこ 「はぁ?」

穂乃果 「本当は、戦わなくちゃって。2人の分まで戦わなくちゃ。そう思ってるんじゃないですか?」

にこ 「そんなこと…思ってないわよっ!」

ズズズ…

穂乃果 「……やっぱり。」

141: 2016/06/23(木) 14:02:20.70 ID:91ywlpty.net
にこ 「なにがやっぱりなのよ!」

穂乃果 「にこ先輩。」

にこ 「何よ。」

穂乃果 「今夜、私達は出撃する予定です。シャドウの反応が強くなってる場所があるって。」

にこ 「どうしてそんなことを私に? 来いとでも言うの?」

穂乃果 「来たくないならそれでもいいです。それがにこ先輩の本当の気持ちなら、ですが。」

にこ 「はぁ…?」

穂乃果 「では、私はこれで。失礼します。」

にこ 「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」

穂乃果 「…そうだ、シャドウの反応があった場所、一応言っておきますね。」


穂乃果 「ここですよ。」

142: 2016/06/23(木) 14:03:43.67 ID:91ywlpty.net
穂乃果はそう言って、部室を後にした。にこは1人、ドアの前で立ち尽くしていた。


にこ 「ここ…? シャドウは嘘から産まれる存在…。」

にこ 「私が嘘をついてたから…? 自分から逃げてたから…?」

にこ 「そんなこと…そんなことないっ!!」


にこは荷物も置いたまま、部室から飛び出し、そのまま家へと帰った。

143: 2016/06/23(木) 14:04:07.71 ID:91ywlpty.net
~深夜 音ノ木坂学院~


絵里 「…すごい気配ね。」

真姫 「相当な数よ…。」

希 「狭い空間にあんなに…。にこっち…。」

穂乃果 「あの狭さじゃ戦いにくいでしょうから、私が校庭におびき出します。」

絵里 「頼むわ、穂乃果。」

ことり 「気を付けね、穂乃果ちゃん!」

海未 「お願いします!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

144: 2016/06/23(木) 14:04:35.36 ID:91ywlpty.net
~アイドル研究部 部室前~


部室前…外からでもわかるほど、中はシャドウで溢れていた。ドアの隙間から、すでにシャドウの手などが伸びてきている。


穂乃果 「すごい…こんなの初めて見たよ。」

穂乃果 「よし…いくよっ!」


穂乃果はドアノブを回し、ドアを勢いよく開けた。それと同時に、シャドウが外へと大量に溢れ出てきた。まるで、満員電車から出てくる客のように。


穂乃果 「うわぁっ!? そ、想像以上だよ…!」

穂乃果 「うぅぅ…ほらっ、こっちだよ!」


穂乃果は大急ぎで校庭へと走り出した。しかし廊下は一本道。向かい側から来たシャドウと、部室から溢れ出たシャドウに挟まれてしまった。

145: 2016/06/23(木) 14:05:07.14 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「仕方ない…ここである程度倒さなきゃ…。」

穂乃果 「ナルキッソス!」カッ!


ナルキッソスの攻撃で穂乃果の周りのシャドウは一掃されたが、それだけでは到底足りず、次々とシャドウの数は増えていく。


穂乃果 「ま、まずい…この数を1人では流石に…!」

穂乃果 「みんなに連絡を……うぁっ!!」


穂乃果が携帯を手に取った時、シャドウの攻撃で携帯を落としてしまった。そしてそのまま、シャドウの中へと埋もれてしまった。

146: 2016/06/23(木) 14:05:35.40 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「まずい…本当にまずいよ…!」

穂乃果 「海未ちゃん…ことりちゃぁん…!」

シャドウ 「「「「「ウォォォォォ!!」」」」」

穂乃果 「う、うわぁぁぁぁっ!!!」


?? 「クレイオーっ!!」パリンッ!


―突如目の前で、大きな爆発が起こった。爆発の衝撃と爆風で、あたりのシャドウはまとめて吹き飛ばされた。


穂乃果 「えっ…に、にこ先輩っ!?」

にこ 「勘違いしないで。荷物を忘れたから取りに来ただけよ。」

穂乃果 「にこ先輩…!」

147: 2016/06/23(木) 14:06:05.74 ID:91ywlpty.net
~校庭~


海未 「…! ペルソナ反応、一人増えました!」

絵里 「まさか…にこ!?」

希 「間違いない…あの爆発…にこっち!」

ことり 「もう我慢出来ないっ! 私、もう行く!」

絵里 「あっ、ちょっと! …もぅ、仕方ないわね。」

希 「よーし、行くよー!!」

海未 「私はここでみなさんのサポートを。お気をつけて!」

148: 2016/06/23(木) 14:06:35.00 ID:91ywlpty.net
~廊下~


にこ 「ペルソナっ!」カッ!


にこのペルソナ、“クレイオー”は、大きな爆発をあちこちに放った。シャドウはなす術なく、次々と倒されていった。


穂乃果 「にこ先輩すごい…!」

にこ 「馬鹿、こっちのことはいいの! アンタはそっちのシャドウを!」

穂乃果 「あっ、はい!」

穂乃果 「ペイルライダーっ!」カッ!


ーーーーーー
ーーーー
ーー

149: 2016/06/23(木) 14:07:22.98 ID:91ywlpty.net
ことり 「穂乃果ちゃんっ! …って、あれ?」

穂乃果 「あっ、ことりちゃん! ごめん、もう全部倒しちゃった!」

絵里 「すごいじゃない!」

穂乃果 「いえ、にこ先輩のお陰です。」

にこ 「ふんっ!」

希 「にこっち…!」ダキッ!

にこ 「なっ…! ちょっ…離れなさいよ!」

絵里 「ふふ…本当によかった。…さ、海未のところに戻りましょ。」

希 「そうやね。さ、行こっか。」

穂乃果 「はい! さ、にこ先輩も!」

にこ 「……うん。」

151: 2016/06/23(木) 14:07:50.69 ID:91ywlpty.net
にこ (2人とも、見てる…? 私、もう逃げるのはやめた。)

にこ (また仲間を失うかもしれない…確かに怖い。怖いけど…)

にこ (怖がってばかりじゃ、前に進めない。穂乃果の言う通りだったわ。)

にこ (これが私のやるべき事よね。…今度こそ、やり遂げてみせるから。)

にこ (しっかり見ておきなさい…アンタ達!)

152: 2016/06/23(木) 14:08:21.93 ID:91ywlpty.net
~校庭~


穂乃果 「おーい! 海未ちゃーん!!」

希 「解析お疲……れ?」


大急ぎで海未の元へと戻ってきた穂乃果達。
…しかしそこに、海未の姿は無かった。

続く
ーーーー

153: 2016/06/23(木) 14:09:45.15 ID:91ywlpty.net
~深夜 音ノ木坂学院校庭~


ことり 「海未ちゃぁぁんっ!?」

希 「海未ちゃんは確かにここで…。一体どこに!」

真姫 「まさか、シャドウに…?」

穂乃果 「そんなことないっ! 海未ちゃんならきっと…」

にこ 「でも、彼女のペルソナは戦闘向きではない。もし大量のシャドウに襲われれば…。」

絵里 「うかつだったわ…! どうして海未を一人なんかにっ!」

希 「後悔しても遅いよ。今はとにかく、海未ちゃんを探さないと!」

にこ 「でも、どうやって探すの? 海未のような、他のペルソナ反応を感知できる人はいないわよ。」

絵里 「……。取り敢えず、先生に連絡しましょう。」

154: 2016/06/23(木) 14:10:18.52 ID:91ywlpty.net
絵里 「…こちら絵里。シャドウの討伐は完了。しかし、海未が行方不明になりました。」

織田 『……。』

絵里 「至急、彼女の捜索にあたります。先生は、寮に海未が帰ってもいいように、待機をお願いします。」

織田 『……。』

希 「……織田先生? さっきからなぜ何も…」


『ガッ……ピーッ…ンパイッ!…ザザザッ… リセンパイッ!』


絵里 「…!? その声、海未ね!?」

ことり 「よかった…海未ちゃん、寮に帰ってたんだね。」

絵里 「全く…ダメじゃない、勝手に一人で帰っちゃ。心配したのよ?」

海未 『…り先輩っ! 違います! 彼は…織田先生はっ!』

織田 『…うるさいよ。少し黙ってくれるかな。』ドゴッ!

155: 2016/06/23(木) 14:10:48.96 ID:91ywlpty.net
通信機越しに、鈍い音が聞こえた。


海未 『…がっ! ぐふっ…あがっ…!?』

絵里 「…っ!? 海未、どうしたのっ!?」

海未 『彼は…味方ではありません…。彼は私たちを利用し…がはっ!』ドゴッ!

織田 『うるさいと言っているだろう。…絢瀬君。』

絵里 「あなた…一体何をっ!?」

織田 『寮から西に行ったところに、教会があるのは分かるかな? 入口に、女神像が9つ並んでいるのが特徴的な教会だ。』

織田 『詳しい話はそこでだ。待っているよ、女神達。』


そう言ったのを最後に、通信は一方的に切られてしまった。

156: 2016/06/23(木) 14:11:18.06 ID:91ywlpty.net
絵里 「……っ! くそぉっ!」ガッ!


絵里は通信機を地面に投げ捨て、足でそれを踏み潰した。何度も、何度も。


希 「エリち! やめてっ!」

絵里 「はぁっ…はぁっ…!」

穂乃果 「絵里先輩…。」

ことり 「…行きましょう。海未ちゃんを、助けなきゃ!」

絵里 「……そうね。ごめんなさい。」

絵里 「…行きましょう。」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

157: 2016/06/23(木) 14:11:46.23 ID:91ywlpty.net
~深夜 教会~


希 「……ここやね。」


入口に9つの女神像が並ぶ教会。
左右にそれぞれ4つ、残りの一つは、屋根の上からこちらを見下ろすかのように立っている。
ステンドグラスは既にいくつか割れており、人が普段利用していないのが分かる。しかし、中からは光が漏れている。


穂乃果 「ここに…海未ちゃんが…。」

絵里 「えぇ。それに、“アイツ”もね。」

真姫 「ここにいても仕方ないわ。入りましょう。」

158: 2016/06/23(木) 14:12:14.16 ID:91ywlpty.net
~教会内~

入口から祭壇まで赤いカーペットが伸びている。その脇に椅子が幾つも並んでおり、屋根はコウモリ天井になっている。
…そして祭壇の上には、織田と、体を拘束された海未がいた。


織田 「…ようこそ、女神達よ。」

穂乃果 「海未ちゃんっ!」

海未 「穂乃果…皆さんっ!」

織田 「引きつけ役ご苦労だった。もう戻っていいぞ。」


織田は海未の拘束を解いた。
自由になった海未は、すぐに穂乃果の元へと駆け寄り、抱きついた。

159: 2016/06/23(木) 14:12:51.54 ID:91ywlpty.net
海未 「申し訳ありませんでした…。私が不甲斐ないばかりに。」

穂乃果 「海未ちゃんは悪くないよ。それより…」

絵里 「どういうつもりですか、織田先生。」

織田 「そんな怖い顔をしないでおくれよ。今日は祝福すべき日だ! もっと楽しくいこうじゃないか。」

にこ 「祝福すべき日…?」

真姫 「一体何を…。」

織田 「今、この場に9人の女神が揃ったのだ! 今こそ、この世界を大きく変える時なのだ!」

ことり 「9人揃った…?」

真姫 「女神っていうのは、私達の事? それならあと2人足りないわよ。」

織田 「そうだな…揃った、と言うよりは、“揃えた”の方が正しいか…。」

にこ 「揃えた…?」

160: 2016/06/23(木) 14:13:23.09 ID:91ywlpty.net
織田 「この2人に…見覚えはないかね、矢澤君?」


そう言って織田は、そばにあった机の上にかかっていた布をとった。そこにいたのは、横になった2人の女性だった。


穂乃果 「誰…あの2人…?」

にこ 「あ……あぁぁ…。」ガタガタ

海未 「に、にこ先輩…? どうされたんですか?」

希 「あの2人…昔にこっちが一緒に戦ってた…!」

ことり 「そ、そんな…っ!」

161: 2016/06/23(木) 14:13:56.39 ID:91ywlpty.net
織田 「この2人は、今日女神になる。いや、私が女神にさせるのだっ!」

にこ 「アンタ…2人に何をする気なのっ!?」

織田 「矢澤君は知らなかっただろうが…彼女達にもペルソナの素質があったんだよ。」

にこ 「なっ…!」

織田 「しかし、いつになっても覚醒しなかった…。そろそろ我慢の限界、そんな時だった。あの事件が起きたのは。」

希 「2人が行方不明になったこと…?」

織田 「そうだ。矢澤君を救出した後、私は2人を必氏で探した。」

織田 「そして見つけたのさ。…シャドウに体を蝕まれた状態でね。」

162: 2016/06/23(木) 14:14:26.12 ID:91ywlpty.net
織田 「丁度良かった。素質を持つ者の実験体が欲しかったんだ。」

織田 「そもそも、2人をあのままにしておいても命の保証はなかった。それなら、私の実験道具となった方が有意義だと考えたんだ。」

にこ 「そんな勝手なこと…っ!」

織田 「おいおい、私は今の今まで彼女達を生かしておいたのだ。むしろ褒めてくれたまえよ。」

織田 「そして研究を重ねた結果、遂に2人から無理矢理ペルソナを出すことを可能にしたのだ。…この召喚機を使ってね。」


織田が取り出したのは、拳銃のような形をした召喚機だった。


希 「無理矢理…ペルソナを?」

163: 2016/06/23(木) 14:14:55.16 ID:91ywlpty.net
真姫 「そんなことをして何をするつもり? 9人のペルソナを揃えたら、何かが起こるとでも?」

織田 「その通りだよ西木野君。9人の女神が揃った時、この世界ともう一つの世界とを繋ぐ扉が開かれるのだっ!」

穂乃果 「もう一つの世界…?」

織田 「その世界の主…“プセウドス”が降臨せし時、この世界は虚実に包まれる。嘘がこの世界を支配するのだ!」

真姫 「嘘がこの世を支配する…?」

希 「…そういえば、作戦室にあった本。そこに書いてあった…。」


『9人の女神が揃いし時、異界への門、開かれん。虚実の神 プセウドス、その地に降臨し、世界を虚実の海へと沈めん。』


ことり 「世界を嘘で満たすってこと…? でもどうしてそんなこと…?」

織田 「簡単さ。」

164: 2016/06/23(木) 14:15:24.66 ID:91ywlpty.net
織田 「私はこの世界にウンザリしていたのさ。どいつもこいつも、本音を隠し嘘をつく。人を欺き、時には己も騙す。」

織田 「本音は人を傷つける。だから人は嘘をついてそれを避けようとする。」

織田 「しかし人は嘘をついた罪悪感に押しつぶされ、苦しむ。他人のために自分が苦しむ。なんてバカバカしい。」

織田 「それなら、いっそこの世から本音を消してしまえばいい。そうすれば人は苦しむこともなく、誰も傷つかない。素晴らしいことじゃないか!」

真姫 「なんて自分勝手な…。」

海未 「そんなこと、人々が望んでいるわけありませんっ!」

織田 「ガキ共に何がわかるっっ!!?」

穂乃果 「……っ!?」ビクッ!

165: 2016/06/23(木) 14:15:59.49 ID:91ywlpty.net
織田 「君たちは何もわかっちゃいない。一度新たな世界を経験すればわかる。」

織田 「本音が…真実がいかに無駄で、何もうみ出さないものであるかっ!」


織田は机の上に横たわっている2人の頭に、召喚機を突きつけ、引き金を引いた。
…すると2人から、ペルソナが引き出された。


タレイア(?)『フグァァァァァァァァッッ!!?』

ポリュムニアー(?)『アガァァァァァァッッ!!?』


希 「タレイア、ポリュムニアー…。ムーサの九姉妹の2人。でも何か違…うぐぅっ!? 」

ことり 「うぐっ…な、何これっ…!」


2体のペルソナが現れ、その呻き声を聞いた時、7人の体に電流が流れたような痛みが走った。
さらに何かに縛られたように、体が動かなくなった。そして…
7人の体から、ペルソナが引き出された。

166: 2016/06/23(木) 14:16:34.39 ID:91ywlpty.net
真姫 「カリオペイア…どうしてっ…!?」

海未 「メルポメネー…戻りなさい!」

絵里 「だめっ…制御がきかない!」

織田 「ふはははは…いいぞ…! まもなく門が開かれるっ!」


祭壇の上…地上8m程の位置に、黒のような、紫のような色をした穴が現れた。
向こう側は真っ暗で、何も見えない。…だが、そこから出てくるものには、見覚えがあった。


穂乃果 「あれは…シャドウ!?」

ことり 「すごい数…だめっ…外に出たら!」

希 「アカン…体が言う事を…!」


穴から現れた無数のシャドウは、10人には目もくれず、教会の外へと溢れ出た。
体が自由に動かなくなった7人には、それらを止める術は無かった。

167: 2016/06/23(木) 14:17:10.70 ID:91ywlpty.net
織田 「もうすぐだ…もうすぐ世界はシャドウに蝕まれる! そしてプセウドスが降臨した時、世界は完全に虚実の海に沈むんだっ!」

真姫 「そんな…。」

織田 「さぁ現れよ! プセウドスよっ!」


織田が両手を大きく広げ、空を仰ぐ。
…しかし、穴からそれらしきものは現れなかった。


絵里 「……? 何も出てこないじゃない…。」

織田 「どういうことだ…? 何故だ、何故現れないっ!? プセウドスッ!」


??? 『んぁぁぁっ! もううるさいなぁっ!』


織田が声を荒らげたその時、穴の向こうから声が聞こえてきた。

168: 2016/06/23(木) 14:17:42.87 ID:91ywlpty.net
??? 『そんな不完全な召喚で、プセウドスが呼び出せるわけないでしょ?』

織田 「なっ…!?」

穂乃果 「この声…もしかして…。」

織田 「ふざけるなっ! 今までの私の努力は無駄だったというのか!?」

??? 『残念だけど、その通りだよ。プセウドスは、そんなずさんな召喚で呼び出されるようなヤツじゃないよ。』

織田 「ふざけるなっ…そんなこと、私は認めないぞ!」

??? 『あぁぁっもうっ! いい加減にしてっ!』

169: 2016/06/23(木) 14:18:11.10 ID:91ywlpty.net
??? 『出ないものは出ないのっ! あんたが認める認めないは関係ないの。』

織田 「なんだと…。」

??? 『…あんた本当にうざい。勝手にこんなに穴までぶち開けて。』

??? 『…消えてくれる?』


織田の体が宙に浮き始めた。織田は暴れ抵抗したが、その体は徐々に穴へと近づく。


織田 「な、何なんだこれは…! やめろ…やめろぉぉっ!!!」

170: 2016/06/23(木) 14:18:34.82 ID:91ywlpty.net
織田の姿が見えなくなると同時に、強制的に引き出された2体のペルソナの姿は消え、7人の体は自由に動くようになった。


絵里 「体が動く!」

にこ 「……! 2人ともっ!」


にこは机の上に横たわっっていた2人の元へ駆け寄った。


にこ 「2人ともっ! 返事してっ…お願いだからっ!」

171: 2016/06/23(木) 14:19:03.46 ID:91ywlpty.net
??? 『可哀想に…。あいつのくだらない実験に使われて、しかも命まで落とすなんて…。』

にこ 「ひぐっ…優香ぁ…真奈ぁ…!」

??? 『…さて、あなた達はどうする?』

希 「どうするって…?」

??? 『プセウドスが現れなかったとはいえ、こちらの世界と、あなた達の世界とをつなぐ門が開かれてしまった。』

真姫 「本当…穴はあいたままね。」

??? 『幸い、この門から現れるシャドウには、そこまで強い力はない。』

??? 『このままにしておいても、シャドウの被害にあうのはこの街だけで済む。』

海未 「そんな…。」

172: 2016/06/23(木) 14:19:30.40 ID:91ywlpty.net
ことり 「だめだよっ! この街だけだとしても、誰かが犠牲になっていいわけない!」

穂乃果 「シャドウを倒せるのは私たちだけ…。なら、私たちが街を守らなきゃ!」

??? 『……ふふっ。』

絵里 「何がおかしいの?」

??? 『何も。ただ、穂乃果ちゃんならそう言うと思ったよ。』

希 「どうして穂乃果ちゃんの名前を…?」

穂乃果 「あなた…やっぱり。」

173: 2016/06/23(木) 14:20:01.21 ID:91ywlpty.net
??? 『さてと、あなた達はこの街を救いたいんだよね?』

海未 「当たり前ですっ! この力はそのためにあるんです!」

??? 『なら、この門を閉じるしかないよ。そしてそのためには…』

穂乃果 「プセウドスを倒す…。でしょ?」

??? 『さすが穂乃果ちゃん、その通り。』

ことり 「じゃあ…私たちでまた召喚を?」

??? 『そう。今度こそ、ちゃんと9人を揃えて召喚をする必要がある。そうしないと、いつまでたってもプセウドスには会えないからね。』

174: 2016/06/23(木) 14:20:30.77 ID:91ywlpty.net
??? 『じゃ、楽しみに待ってるよ。…ずっと、ここでね。』


それから、穴の向こうから謎の声が聞こえることは無かった。


穂乃果 「9人を揃える…。あと、2人。」

絵里 「そうと決まれば話は早いわ。なんとしても残りの2人、タレイアとポリュムニアーのペルソナを宿している人を見つけましょう。」

希 「でも、それより今は…。」

海未 「……。」


にこ 「うぐっ…2人とも…。」

175: 2016/06/23(木) 14:21:02.86 ID:91ywlpty.net
にこ 「こんなのってないわよ…。やっと会えたのに、こんな…こんな…!」


優香 「うぅ……。」

真奈 「うぐぐ…。」

にこ 「…! 優香、真奈っ!」

絵里 「よかった、生きてたのね!」

希 「でも、2人とももう体が…。」

海未 「ほとんど、シャドウにやられて…。」


優香 「にこ…? えへへ、久しぶりだね。」

真奈 「本当、変わんねぇな。ちゃんと飯食ってんのか?」

にこ 「なによ…うるさいわねっ!」ポロポロ

176: 2016/06/23(木) 14:21:26.84 ID:91ywlpty.net
優香 「バカ、何泣いてんのよ。」

にこ 「だって……だって…!」

真奈 「私たちなら大丈夫だよ。なぁ、優香?」

優香 「うん。“向こう”にいっても、アンタのことは忘れないよ。」

にこ 「バカ…何言ってんのよ! あきらめないでっ…!」

優香 「…ねぇにこ。手、握ってくれる?」

真奈 「私も、お願いできるかな?」

にこ 「……うん。」ヒグッ

177: 2016/06/23(木) 14:21:51.29 ID:91ywlpty.net
優香 「…あったかい。」

真奈 「最期にこうしてにこに会えてよかった。ありがとな、にこ。」

にこ 「そんな…私だって…! ごめんなさい…私のせいで2人ともっ…!」

優香 「アンタそんなふうに思ってたの? 馬鹿だねぇ。」

真奈 「本当本当。」

にこ 「うぐっ…ひぐっ…!」

優香 「……そろそろ、かな。」

真奈 「うん…私も限界かも。」

にこ 「…!? だめっ! まだ二人と一緒にいたいっ!」

178: 2016/06/23(木) 14:22:15.61 ID:91ywlpty.net
真奈 「ワガママ言うなよ。余計子供に見えるぞ。」

優香 「にこ、必ずこの世界を救ってね。私たちの分まで…戦って。」

にこ 「…当たり前でしょ! 私を誰だと思ってるの!?」

真奈 「そうそう、その…いきだよ。」

優香 「頑張ってね…。」

にこ 「ひぐっ……うんっ…任せてっ…!」


…二人が何か呟いた気がした。
しかし、にこを除いた6人には、その声は聞こえなかった。

ーーーーーー
ーーーー
ーー

179: 2016/06/23(木) 14:22:38.38 ID:91ywlpty.net
~数日後 墓地~


にこ 「海も見えるし、いいとこね。」

海未 「はい…。お2人とも、これで安らかに眠れるでしょう。」

絵里 「さ、手を合わせて。」

7人 「…………。」


にこ 「ありがと、2人とも。あとは私たちに任せて。」

穂乃果 「にこ先輩…。」

にこ 「…みんな、先に戻ってくれる? 穂乃果はちょっと残って。」

希 「うん。さ、行こっか。」

180: 2016/06/23(木) 14:23:03.84 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「にこ先輩…。」

にこ 「…アンタにだけは、言っておきたいことがあって。」

にこ 「…ありがと。あの時、私を説得しに来てくれて。」

穂乃果 「…いえ。」

にこ 「アンタのおかげで、私は私を取り戻すことが出来そうよ。」

穂乃果 「そうですか…。」

にこ 「…手、いいかしら。」

穂乃果 「はい。」


穂乃果とにこは、固く握手を交わした。

181: 2016/06/23(木) 14:23:29.19 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「…あったかい。」

にこ 「そうかしら。」

穂乃果 「はい。」

にこ 「…ありがとう。これからも、よろしく。」

穂乃果 「…はい!」


2人は墓をあとにした。
…2人の背中を押すように、追い風が吹いた。優香と真奈が応援してくれているような、そんな気がした。

続く
ーーーーーー

182: 2016/06/23(木) 14:24:30.07 ID:91ywlpty.net
りん 「りんねぇ、将来お姫様になるの!」


…なんて言っていたのはいくつの時だっただろう。女の子なら誰でも一度は思うことで、凛も例外ではなかった。
女の子の中の女の子。世界に認められた女の子。凛はそんなお姫様に憧れていた。
…いや、今も憧れている。

~~~

女生徒C 「いちについてー、よーい…」

凛 「……。」グッ


号砲の音を聞き、スタートを切る。
入部して間もない身ではあるが、先輩より少し遅い程のタイムで400mを走りきる。


凛 「ふぅ…。はぁ…はぁっ…。」

花陽 「凛ちゃん、お疲れ様!」

183: 2016/06/23(木) 14:25:02.76 ID:91ywlpty.net
凛 「ありがと、かよちん。」

花陽 「凛ちゃん最近調子いいね。コーチが、この調子なら全国も夢じゃないだろうって言ってたよ!」

凛 「本当に!? 嬉しいにゃー!」

花陽 「えへへ、頑張ってね凛ちゃん。」

女生徒C 「頑張れよー、期待の新人君!」

凛 「はいっ! ありがとうございます!」


…そうだ、お姫様への憧れなんて捨てなきゃ。今の凛はお姫様じゃなくて、“ヒーロー”だから。かよちんや、先輩方のヒーローだから。

だから…

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ーー

184: 2016/06/23(木) 14:25:43.21 ID:91ywlpty.net
~夜 寮~


穂乃果 「部活動ですか?」

絵里 「えぇ。確かあなた達は部活動に所属してなかったわよね?」

ことり 「そうですねぇ…。あまり興味が湧く部活が無かったというか。」

真姫 「私はそもそも興味なしです。勉強に専念したいですし。」

絵里 「そう…。」

海未 「確か、にこ先輩はアイドル研究部でしたよね?」

にこ 「えぇ、でもほとんど活動はしてないわ。今後は親戚に預けてる妹達の様子も度々見に行かなきゃだし、尚更ね。」

希 「なるほどなぁ。」

穂乃果 「でも、どうして急にそんなことを?」

185: 2016/06/23(木) 14:26:15.74 ID:91ywlpty.net
絵里 「これはあくまで私の仮説なんだけど、残りの女神2人を宿している人間は、音ノ木坂にいると思うの。」

穂乃果 「音ノ木坂に…?」

絵里 「理由は分からないけど、シャドウが今まで現れていたのは音ノ木坂の校舎内だけ。それに、今ここにいるペルソナ使いは、みんな音ノ木坂の生徒。」

海未 「偶然にしては出来すぎていますね。」

希 「だから残りの2人も、音ノ木坂にいると考えたんや。」

にこ 「でも、それと部活の話に何の関係が?」

186: 2016/06/23(木) 14:26:48.00 ID:91ywlpty.net
絵里 「ペルソナ使いを探すなら、出来るだけ多くの生徒と接した方がいいでしょ?」

ことり 「部活に入ることで、他の生徒と接する機会を増やすということですか?」

絵里 「そうよ。まぁ、強制はしないから考えておいて。」

穂乃果 「部活かぁ…。」


絵里 「さ、今日も出撃よ。街に溢れ出たシャドウを片付けなきゃ。」

希 「街の人達に影響が出ない内に、ね。」

187: 2016/06/23(木) 14:27:26.89 ID:91ywlpty.net
~その頃 教会~


織田が開いた異界とこちら側の世界とを繋ぐ門は、変わらず禍々しいオーラを放ちながら開いていた。
度々シャドウがその門から出現し、街中に放たれていった。


アリス 「まさか…無理矢理開こうとするなんてね。」

アリス 「これはそれの罰だから。せいぜい悔い改めなさい。」

アリス 「…もってあと2日ってとこかな。まぁ、どの道生きては出てこれないでしょ。」


アリス 「もうすぐ、“あの人”が9人の女神を揃えてくれる…。そうすれば私は…。」

アリス 「あぁ…本当に“あの人”のペルソナの力は素敵。」

アリス 「穂乃果ちゃん…待っててね。」

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188: 2016/06/23(木) 14:27:54.80 ID:91ywlpty.net
~翌日 放課後~


穂乃果 「ほへぇー…これが陸上部かぁ。」


穂乃果、海未、ことりの3人は、部活動見学のため校内を歩き回っていた。
海未の勧めで、穂乃果とことりは陸上部の見学をしていた。


海未 「走るという行為はすべての運動の基本です。きっと戦いの際も、この部活での経験は役に立つでしょう。」

ことり 「なるほど、確かにそうだね。」

海未 「特に穂乃果は最近お腹周りが…」

穂乃果 「うわぁぁぁぁぁぁっ!!? やめてよぉぉぉっ!!」


花陽 「あのー…どうですか? 陸上部。」

189: 2016/06/23(木) 14:28:29.39 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「あれっ、花陽ちゃんじゃない!」

花陽 「お、お久しぶりです…。」

海未 「知り合いなのですか?」

穂乃果 「真姫ちゃんを探してた時に協力してくれたんだ。花陽ちゃん、陸上部のマネージャーだったんだ。」

花陽 「はい…。凛ちゃんに誘われて。」

ことり 「凛ちゃん? お友達?」

花陽 「はい。小さい頃から仲良しで…。」


凛 「おーい、かよちーん!」

190: 2016/06/23(木) 14:29:24.65 ID:91ywlpty.net
花陽 「あっ、凛ちゃん。お疲れ様。」

ことり 「あなたが凛ちゃん?」

凛 「えっ、はい…。」

花陽 「陸上部の見学なんだって。凛ちゃん、ちょっと案内してくれる?」

凛 「分かったにゃ! じゃあえっと…ってあれ!? 高坂先輩!」

穂乃果 「久しぶり、凛ちゃん。」

海未 「この娘とも知り合いだったのですか?」

穂乃果 「うん。前に一度会ったんだ。…確か、真姫ちゃんが覚醒した日だったかな?」

凛 「覚醒…?」

穂乃果 「あぁぁっ! ううん、こっちの話。」

凛 「そうですか…。じゃ、陸上部案内しますね。」

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191: 2016/06/23(木) 14:29:58.82 ID:91ywlpty.net
穂乃果 「ハードルって意外と高いんだねぇ。」

海未 「選手の皆さんが軽々ととんでいるので分かりませんでしたが…これは大変そうですね。」

ことり 「うぅぅ…私できなさそう。」

凛 「大丈夫、すぐとべるようになりますよ。」

穂乃果 「凛ちゃん得意なの?」

凛 「得意って程じゃあ…。」

ことり 「凛ちゃんの走るところ、見てみたいなぁ。」

凛 「…じゃあ、一回やってきます。」

192: 2016/06/23(木) 14:30:32.02 ID:91ywlpty.net
そう言って凛は、400mハードルを軽々とこなして見せた。


凛 「ふぅっ…はぁっ…。」


穂乃果 「すっごぉいっ! 凛ちゃんカッコいい!」

凛 「カッコ…いい…?」ピクッ

ことり 「うんっ、すっごくカッコよかったよ!」

凛 「……。」

海未 「…? どうしたのですか?」

凛 「い、いえ何でも…。凛、練習に戻りますね。」

穂乃果 「あっ、うん。ありがとう!」

凛 「それじゃあ。」


凛は3人に向かって軽く頭を下げ、先生の元へと走って行った。

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193: 2016/06/23(木) 14:30:58.55 ID:91ywlpty.net
~職員室~


先生 「文化部の見学?」

穂乃果 「はい。最近部活動に興味を持って…。」

先生 「なるほどなぁ…。だが吹奏楽とかは、もう新入生に楽器を割り振り終えて練習に本腰を入れ始めているし…。」

先生 「コンピューター部は無期限活動停止中だしなぁ…。」

海未 「無期限活動停止…何故です?」

194: 2016/06/23(木) 14:31:33.09 ID:91ywlpty.net
先生 「確かお前らのクラスの授業の時だったろ。あの“事故”。」

ことり 「あぁ…シャドウの。」

先生 「アイツらのせいでコンピューター室のパソコンはほとんどお釈迦だ。とても活動できる状態じゃない。」

海未 「確かに…あれほどの惨状だと、仕方ないですね。」

先生 「よりにもよって俺の授業の時に…。お陰で俺が始末書を書くハメになった。クソッ!」ガッ!


情報担当でありコンピューター部の顧問でもある佐野 成彦は、自分の机を思いっきり蹴った。


ことり 「ひぃっ…!」

佐野 「あっ…あぁすまなかった。ついカッとなって…。」

ことり 「い、いえ大丈夫です…。」

佐野 「お詫びと言ってはなんだが…いくつか部活を紹介しよう。と言っても、俺が紹介できるのは文化部だけだが。」

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195: 2016/06/23(木) 14:32:00.35 ID:91ywlpty.net
~夜 寮~


絵里 「どう? いい感じの部活は見つかった?」

穂乃果 「うーん…あまりピンと来るものは…。」

ことり 「佐野先生が紹介してくれた部活も回ったんですけどね…。」

海未 「弓道部も勧めたんですが、穂乃果に静かな場所は合わないかと。」

にこ 「あー…すっごい分かるわ。」

絵里 「まぁ、無理にとは言わないわ。シャドウ討伐もあるし、体力は温存しないとね。」

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196: 2016/06/23(木) 14:32:27.42 ID:91ywlpty.net
~翌日 放課後~


穂乃果 「ふっ…ふっ…ふはぁ……。」


空が深いオレンジ色に染まり出した頃。
穂乃果は陸上部のメンバーと一緒にランニングをしていた。


海未 「結局、陸上部にしたのですね。」

穂乃果 「うんっ! 体力つけておけば、戦闘でも役に立つからね。」

海未 「良い心がけです。それに…」


海未は穂乃果の腹部に目を落とし、目を鋭く尖らせ呟いた。


海未 「最近たるんでいるようですし…」

穂乃果 「うわぁぁぁぁ!!! だから言わないでよぉ!」

ことり 「あはは…。」

197: 2016/06/23(木) 14:32:54.30 ID:91ywlpty.net
「おーい高坂ー! そろそろ練習戻れよー!」


穂乃果 「あっ、はーい! じゃあ行ってくる!」

海未 「はい。頑張ってくださいね。」

ことり 「いってらっしゃーい。」


海未 「ことりはマネージャーでしたっけ?」

ことり 「うん。文芸部もいいかなって思ったんだけど、穂乃果ちゃんが心配で…。」

海未 「そうですか…。それでは、穂乃果のことは任せます。」

ことり 「うん。海未ちゃんも、弓道部頑張ってね。」

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198: 2016/06/23(木) 14:33:23.64 ID:91ywlpty.net
~数時間後~


「今日の部活は以上です。お疲れ様でした!」

「「「「「お疲れ様でしたー!」」」」」


穂乃果 「ほえぇー疲れたぁ…。」

ことり 「お疲れ、穂乃果ちゃん。はい、タオル。」

穂乃果 「ありがとー! …あっ、おーい!」

凛 「ん…? あっ、高坂先輩。お疲れ様です!」

穂乃果 「お疲れー! 今日の凛ちゃんもカッコよかったよー!」

凛 「えっ…あっ…ありがとう…ございます。」

花陽 「あっ、お疲れ様です!」

199: 2016/06/23(木) 14:33:49.47 ID:91ywlpty.net
ことり 「花陽ちゃん。お疲れ様。」

凛 「かよちん…凛、今日先帰るね。」

花陽 「えっ、うん。何か用事?」

凛 「いや…うん…まぁね。…じゃあ!」


そう言って凛は、その場を足早に去った。


花陽 「凛ちゃん…?」

ことり 「なんか様子…おかしかったね。」

花陽 「…高坂先輩、凛ちゃんと何話してたんですか?」

穂乃果 「私はただ、凛ちゃんみたいにカッコよく走りたいなぁ…って。」

花陽 「あっ…。」

ことり 「どうか…したの?」

200: 2016/06/23(木) 14:34:14.65 ID:91ywlpty.net
花陽 「高坂先輩…後輩の身で、こんなこと言うのもなんなんですが…。」

花陽 「凛ちゃんも、“女の子” なんです。そこを分かってあげてください…。」

穂乃果 「えっ…それってどういう…」

花陽 「今日は失礼します。…お疲れ様でした。」


穂乃果の言葉を待たず、花陽もその場を後にした。残された二人の間には、何とも言えない空気が続いた。

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201: 2016/06/23(木) 14:34:46.52 ID:91ywlpty.net
~夜 寮~


海未 「それはまずいことをしましたね…。」

希 「きっとその凛ちゃんって娘は、女の子らしい自分も、見て欲しかったんやろうね。」

絵里 「だから、カッコいいって言葉に嫌悪感を抱いていたのかもね…。」

穂乃果 「あぁぁ…どうして私っていつもこうなんだろう…。」

海未 「今更後悔しても仕方ありません。明日にでも、ちゃんと顔を合わせて謝るほか無いでしょう。」

穂乃果 「うん…そうだね…。」


穂乃果は自分の腕を目にあて、しばらく思考にふけった。


穂乃果 「…あぁ、そうか。だからあの時…。」

ことり 「…? どうかしたの?」

穂乃果 「ほら、前に私、『ペルソナ使いを探してくる!』って言って外に出たことあったでしょ?」

202: 2016/06/23(木) 14:36:12.49 ID:91ywlpty.net
海未 「あぁ…そんなこともありましたね。」

絵里 「たしか、この戦線の名前を、μ'sにするって決めた時だったかしら。」

穂乃果 「あの時、私凛ちゃんと一回会ったんだ。」

ことり 「そうだったの?」

穂乃果 「うん。でね、その時凛ちゃん…」


穂乃果が話を続けようとした、その時だった。
…強いシャドウ反応を感知したことを伝えるサイレンが、鳴りだした。

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ーー

続く
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206: 2016/06/24(金) 00:01:56.92 ID:jrQPkEZm.net
~深夜 音ノ木坂学院 校庭~


深夜の音ノ木坂。空は曇っており、一層不気味さが増している。
そんなグラウンドに1人、400mレーンにハードルを並べ、練習をしている生徒がいた。


絵里 「何…あの子? こんな時間に…。」

希 「シャドウ反応も近いっちゅうのに…。うかうかしてられんね。はやいとこ帰さないと…」


海未 「待ってくださいっ!」


真姫 「ど、どうしたのよ…いきなり大声出して…。」

海未 「シャドウ反応…彼女からです…!」

にこ 「そんな…!」

ことり 「人に…宿ってるってこと…?」


シャドウ 「……。」


真姫 「…! まずい、こっちに気づいたわ。」

207: 2016/06/24(金) 00:02:36.94 ID:jrQPkEZm.net
人の形をした…いや、人に宿ったシャドウは、何も言わず、7人に近付いてきた。
…その顔は、一部のメンバーには見慣れたものだった。


ことり 「うそ…まさか…。」

穂乃果 「凛…ちゃん…?」


凛(?) 「……ふふっ。」


真姫 「そんな…星空さん、どうして…。」

希 「…自分に嘘をつきすぎたんや。」

にこ 「えっ…?」

希 「自分に嘘をつき続けて、騙して…。そうして溜まった嘘が、奴らの餌になったんや。」

絵里 「どうしてそんなことが分かるの?」

希 「織田先生の研究資料にあったんよ。過去に、とある田舎町で同じようなことがあったらしいんよ。」


凛(?) 「…ねぇ。」

7人 「「「「「「「…!?」」」」」」」

208: 2016/06/24(金) 00:03:06.94 ID:jrQPkEZm.net
凛(?) 「凛…カッコ…いい…?」

穂乃果 「えっ…。」


凛(?) 「凛、カッコよかったでしょ…?」

凛(?) 「凛はみんなのヒーローだから…カッコよくなくちゃ…ね?」

凛(?) 「凛、みんなの理想に近付こうと…頑張って…!」


穂乃果 「違う…。」


凛(?) 「みんなが求めてる凛は、“こっちの凛” だから…! だから一生懸命…!」


穂乃果 「違うっ!!」

凛(?) 「…!?」

209: 2016/06/24(金) 00:03:47.11 ID:jrQPkEZm.net
穂乃果 「そんなの…本当の凛ちゃんじゃない!」

凛(?) 「なっ…!」

穂乃果 「そうやって自分を騙して…自分を頃して、本当の自分を隠してる!」

穂乃果 「そんなの…本当の凛ちゃんじゃないっ!」

凛(?) 「さっきから何を…。高坂先輩に…凛の何がわかるのっ!!?」ドヒュンッ!


凛の叫びに応じて、凛から、黒くおぞましいオーラをまとった触手のようなものが現れた。
その触手は穂乃果の頬をかすめ、奥にあった花壇を木っ端微塵に破壊した。

210: 2016/06/24(金) 00:04:16.75 ID:jrQPkEZm.net
ことり 「ひっ…! ほ、穂乃果ちゃんっ!」


凛(?) 「高坂先輩に、凛のことなんて分かるわけないっ!」

穂乃果 「うん…分からないよ。まだ会ってから1ヶ月も経ってないもん。」

穂乃果 「でも…凛ちゃんが自分を殺そうとしてるのは、よくわかる。」

凛(?) 「なんで…そんなこと…。」

穂乃果 「私、知ってるから。凛ちゃんがなりたい、“本当の自分” を。」

凛(?) 「本当の自分…?」

穂乃果 「分からないなら…ううん、分からなくなってるなら…」

穂乃果 「私が教えてあげる。」

211: 2016/06/24(金) 00:04:51.53 ID:jrQPkEZm.net
そう言って穂乃果は、ペルソナを召喚する体制に入った。


絵里 「…! 待ちなさい穂乃果! 彼女を攻撃したら、彼女自身も傷つけることに…」

穂乃果 「大丈夫ですよ。」

絵里 「えっ…?」

穂乃果 「私は、“伝える” だけですから。攻撃はしません。」

凛(?) 「……?」


穂乃果 「いくよ…凛ちゃん。」

穂乃果 「ペルソナ。」カッ!


穂乃果が出したペルソナ、『ヴィーナス』が放った波動で、凛の動きは完全に止まった。
そして穂乃果は、かたまり動けなくなった凛を、優しく抱きしめた。


凛(?) 「なっ…!?」

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ーー

212: 2016/06/24(金) 00:05:25.86 ID:jrQPkEZm.net
~凛(シャドウ) 内部~


暗く閉ざされた空間。その真ん中に、凛は横たわっていた。意識は朦朧としていて、凛自身は何が起こっているのかわからない様子だ。

『……ちゃん、凛ちゃん、聞こえる?』


凛 「その声…高坂…先輩…?」

穂乃果 「うん。ごめんね、こんな目にあわせちゃって…。」

凛 「いや、その…凛には何が何だか…」

穂乃果 「…私、凛ちゃんに謝らなくちゃいけない。」

凛 「謝るって…何を?」

穂乃果 「凛ちゃんの気持ちに気付かないで、無神経に“かっこいい” なんて言っちゃったこと。」

凛 「いや…そんな…。」

213: 2016/06/24(金) 00:05:56.98 ID:jrQPkEZm.net
穂乃果 「こんなこと言うと、偉そうって言われちゃうかもだけど…。」

凛 「…?」


穂乃果 「凛ちゃん、自分を頃しちゃダメだよ。」


凛 「自分を…?」

穂乃果 「うん。凛ちゃんは優しいから、つい自分のことより、みんなのことを優先しちゃうのかな…?」

凛 「いや…どうだろう…。」

穂乃果 「きっとそうだよ。だって現に…」


穂乃果 「“なりたい自分” より、“みんなが望む自分” を優先してるじゃない。」


凛 「…!」

214: 2016/06/24(金) 00:06:37.08 ID:jrQPkEZm.net
穂乃果 「女の子らしくなりたいけど、みんなはヒーローである凛ちゃんを望んでる。」

穂乃果 「だから必氏に、自分抑えてたんでしょ?」

凛 「そ、そんなこと…。」


穂乃果 「…初めてあった日のこと、覚えてる?」

凛 「初めてあった日…。」

穂乃果 「凛ちゃん、ショーケースの向こうのワンピース、見てたよね?」

凛 「あっ…。」

穂乃果 「ヒラヒラしたスカートみたいなのもついてて、とても可愛かったよ。」

穂乃果 「絶対、凛ちゃんに似合うよ。」

凛 「そ、そんな…。」

215: 2016/06/24(金) 00:07:19.98 ID:jrQPkEZm.net
穂乃果 「これは漫画の受け売りなんだけどね。」

穂乃果 「何かを犠牲にして得たものって、結局なにかが欠けてるんだって。」

凛 「……。」

穂乃果 「みんなの理想を叶えるのも、いい事だと思う。けどね…」

穂乃果 「自分のなりたいようにしても、いいと思うんだ。」

凛 「高坂…先輩…。」


穂乃果 「…さて、そろそろ戻ろうか。」

凛 「戻る…?」

穂乃果 「自分と向き合う時だよ。さ、行こう?」


穂乃果は立ち上がり、体操座りになっている凛に手を伸ばした。
凛が穂乃果の手をとったとき、あたりは白い光に包まれた。

ーー
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ーーーーー

216: 2016/06/24(金) 00:07:52.72 ID:jrQPkEZm.net
~音ノ木坂学院 校庭~


…穂乃果に抱きしめられた凛から、禍々しいオーラが徐々に取り除かれていく。そのオーラはまた一つに集まり、人の形になった。
その面影は、まさに星空凛、そのものだった。


ことり 「…! シャドウが…!」

絵里 「引き剥がされた…?」


凛 「うぅ……。」

穂乃果 「おかえり、凛ちゃん。」

凛 「高坂…先輩…。」

穂乃果 「…ほら、後ろ見て。」

凛 「えっ…?」


凛が振り向くと、そこには自分と同じ姿をしたシャドウがいた。

217: 2016/06/24(金) 00:08:27.21 ID:jrQPkEZm.net
凛 「凛が…もうひとり…?」

穂乃果 「凛ちゃんが、隠し続けてきた自分…。今なら、向き合えるんじゃないかな。」

凛 「……。」


凛は、シャドウに向かって歩き出した。


凛 「…ごめんね、今まで見ないふりしてきて…。」

凛 「でも、今なら、あなたを受け入れられる…。」

凛 「また…凛の中に、戻って…くれる?」


シャドウはただ黙って、頷いた。
そしてその体は光に包まれ、徐々にその姿を変えていった。
変貌したその姿は、さながら、豪華な服に身を包んだお姫様のようだった。


絵里 「あれは…ペルソナ…?」

希 「うん。ポリュムニアー、ムーサの女神の1人…。」

ことり 「綺麗…。」

218: 2016/06/24(金) 00:08:55.55 ID:jrQPkEZm.net
凛のペルソナ、ポリュムニアーは、光の玉となり、凛の体の中へと沈んでいった。


凛 「……。ありがとう…。」

穂乃果 「凛ちゃん…。」

凛 「高坂先輩、ありがとうございます。」

穂乃果 「そんな…私は何も…」


穂乃果が凛から目をそらしたその時、穂乃果の目に、とんでもないものがうつり込んだ。
…おびただしい量の、シャドウだった。


真姫 「し、しまった…! 気付かなかった!」

絵里 「すごい数…みんな、準備をっ!」


穂乃果 「凛ちゃん、さがってて!」

凛 「……。」


穂乃果の手を押し退け、凛はシャドウの近くへと歩き出した。


穂乃果 「凛ちゃんっ!?」

219: 2016/06/24(金) 00:09:23.21 ID:jrQPkEZm.net
凛 「凛を許してくれて…しかも力までくれた…。」

凛 「なら…戦わなきゃ…。これも、凛のやりたいことだから…。」

穂乃果 「凛ちゃん…。」


凛 「いくよ…もう1人の…私。」

凛 「ペルソナっ!!!」カッ!


ポリュムニアーは、大きな雷を発生させ、辺りのシャドウを一掃した。
その雷の勢いで、空を覆っていた雲までもが、吹き飛んだ。


希 「こ…これは…。」

穂乃果 「すごい…。」


凛は嬉しそうに微笑み、満天の星が浮かぶ空を見上げて叫んだ。


凛 「星空にゃ!」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

220: 2016/06/24(金) 00:09:51.34 ID:jrQPkEZm.net
~翌朝~


穂乃果 「おっはよー! 今日もーいい天気ー!」

花陽 「あっ、おはようございます。高坂先輩。」

凛 「おっはよー!」

穂乃果 「うん、おはよう!」


花陽 「ちょ…ちょっと凛ちゃん、先輩だよっ!?」

穂乃果 「あぁ、いいよいいよ! ねぇ凛ちゃん?」

凛 「うん! 同じ寮に住むことになったし、仲良くしなきゃ!」

花陽 「先輩がいいなら…。」

221: 2016/06/24(金) 00:10:13.98 ID:jrQPkEZm.net
穂乃果 「ほら、練習始まるよ! いこう、凛ちゃん!」

凛 「はいっ! じゃあかよちん、またあとで!」


そう言って凛と穂乃果は、足早にその場を去った。花陽はただ手を振って、2人を見送った。


花陽 「……また、置いてかれちゃった…。」

ーーーーーーー
続く

228: 2016/06/25(土) 00:58:59.94 ID:5OQcWz2L.net
--私の隣には、いつも凛ちゃんがいた。

小学生の時も…
中学校に入っても…
音ノ木坂に入学しても…

いつだって私の隣には、凛ちゃんがいた。


…でも、凛ちゃんの隣に私はいなかった。

229: 2016/06/25(土) 00:59:44.46 ID:5OQcWz2L.net
小学生の時も…

『あっ、凛ちゃんといつも一緒にいる人!』
『名前…えぇと…なんだっけ…?』


中学校に入っても…

『凛ちゃんおはよーっ!』
『あと…小泉“さん” もおはよう。』


音ノ木坂に入学しても…

『凛はやっぱすごいな!』
『これなら全国も夢じゃないぞ!』
『ほらマネージャー、凛にタオル出して!』


…そうだ。凛ちゃんは凛ちゃんじゃなくちゃダメだけど…


ーーー 私は“私”じゃなくてもいいんだ。ーーー

ーーーーーー
ーーーー
ーー

230: 2016/06/25(土) 01:00:14.23 ID:5OQcWz2L.net
~朝 音ノ木坂学院 校庭~

朝とはいえ、季節の移り目となってくると、暑さは限界を超えてくる。尚且つここは東京、特に暑くなってくる。
背中に溜まった汗が、背中と体操着とをくっつける。時々下からパタパタと空気を送ってやるが、ほんの気休め程度にしかならない。


花陽 「マネージャーでこれだもんなぁ…。凛ちゃん達、本当すごいなぁ。」

ことり 「本当。今日は特に暑いし…。」

花陽 「私にもっと出来ることがあればなぁ…。」

ことり 「花陽ちゃんは充分頑張ってると思うけどなぁ。」

231: 2016/06/25(土) 01:00:44.97 ID:5OQcWz2L.net
花陽 「まさか、私なんてそんな…」

ことり 「ダメだよ花陽ちゃん。“自分なんか”って思いすぎちゃうと、本当にそうなっちゃうよ?」

花陽 「そういうものなんですか?」

ことり 「そういうものだよ。」


…南先輩、彼女は私のことを、ちゃんと“見てくれている” 気がする。先輩といると、自分の存在がだんだん濃くなっていくような…色が付いていくような。
そんな心地いい感覚に、溺れそうになる。


凛 「おーい、かよちーん!」

232: 2016/06/25(土) 01:01:40.58 ID:5OQcWz2L.net
花陽 「凛ちゃん、お疲れ。」

ことり 「お疲れ様。」

凛 「あっ、ことり先輩! お疲れにゃ!」

ことり 「ふふっ、今日も元気いっぱいだね。」

凛 「うんっ! ことり先輩の朝ごはんが美味しくて、朝から元気全開にゃ!」

ことり 「本当に? 嬉しい!」

花陽 「あはは…。」


先輩方のいる寮に住むことになった凛ちゃんは、今までより一層元気になったように見える。なんというか、悩みが晴れたような…。

……あぁ、やめて。やめてよ。
そんなに楽しそうにしないで…元気な笑顔を見せないで…。
私の色が…剥げていく…

ーー私の存在が…消える。

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233: 2016/06/25(土) 01:02:13.83 ID:5OQcWz2L.net
凛 「…あれっ?」

ことり 「ん? どうしたの、凛ちゃん?」

凛 「かよちんは?」


花陽 『やだなぁ凛ちゃん、花陽はこ…』


ことり 「本当だ、さっきまでここにいたのに…。」

凛 「お手洗いにでも行ったのかな?」


花陽 『えっ……。』


ーーーその日、私の存在は、確かに消えた。ーーー

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234: 2016/06/25(土) 01:02:48.76 ID:5OQcWz2L.net
~夜 寮~


絵里 「友達が消えた?」

凛 「今日の朝、部活中急にいなくなって…。その時はトイレにでも行ったのかなって思ったんだけど…。」

ことり 「とうとう丸1日姿を見せなかった…。」

真姫 「そういえば小泉さん、今日は休みだったわね。」

凛 「おばさんに電話しても、「家には帰ってない」って…。」

希 「それは心配やね…。学校の敷地内で忽然と消えたんなら、誘拐とかの心配はいらんやろうけど…。」

穂乃果 「携帯は?」

凛 「勿論かけたにゃ。でも…」

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235: 2016/06/25(土) 01:03:18.84 ID:5OQcWz2L.net
凛 「お願い…出てよかよちん…。」プルルル


ガチャッ


凛 「…! よかった…かよちん!?」

『……………。』

凛 「かよちん、今どこにいるの? みんな心配してるよ…?」

『……………。』

凛 「かよちん…? ねぇかよちん!」


ガチャッ


凛 「……切れた…。」

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236: 2016/06/25(土) 01:03:47.07 ID:5OQcWz2L.net
絵里 「無言電話…。」

海未 「心配ですね…。なにか事件に巻き込まれてなければいいのですが…。」

凛 「かよちん……ぐすっ…。」


凛はとうとう、大粒の涙を流し始めてしまった。


ことり 「凛ちゃん! きっと大丈夫だから! ね…!?」

凛 「かよちん……ううぅぅ……。」

絵里 「何とかできないものかしら…。」

穂乃果 「……! そうだ!」

にこ 「なにか解決策でも?」

237: 2016/06/25(土) 01:04:19.84 ID:5OQcWz2L.net
穂乃果 「海未ちゃんのペルソナを使えば、花陽ちゃんの反応を感知できるんじゃない!?」

絵里 「なるほど…その手があったわね!」

希 「海未ちゃん、できる?」

海未 「不可能ではないですが…。」

にこ 「どういうこと?」

海未 「私自身、彼女との関わりが浅いので、感知できても、それが彼女のものなのか分からない可能性が…。」

真姫 「なるほどね…。」

海未 「何か、彼女の所有物などがあれば…。」

凛 「…! 凛持ってるにゃ!」

238: 2016/06/25(土) 01:04:45.11 ID:5OQcWz2L.net
ことり 「本当!?」

凛 「はい! 前に返し借りたまま、返し忘れたボールペンが…ほら!」

絵里 「でかしたわ、凛。海未、そのペンでどう?」

海未 「試してみます…ペルソナっ!」カッ!

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239: 2016/06/25(土) 01:05:14.55 ID:5OQcWz2L.net
…みんなから私の姿が見えなくなってから早十数時間。
ついつい凛ちゃんのあとをつけて、寮にまで来てしまった。


花陽 「お父さんとお母さん、心配してるだろうなぁ…。」


絵里 『友達が消えた?』


花陽 「…!」

240: 2016/06/25(土) 01:05:47.81 ID:5OQcWz2L.net
凛 『今日の朝、部活中急にいなくなって…。』


花陽 「凛ちゃん…。」


私のこと、気にかけてくれていたんだ。…こんな私でも。
ありがとう…凛ちゃん…。


凛 『かよちん……ぐすっ…。』


あぁ、凛ちゃんが泣いてる。私なんかのせいで。
……そういえば私、消えちゃう直前、こんなこと考えてたっけ。


『そんなに楽しそうにしないで…元気な笑顔を見せないで…。』


花陽 「あぁ…花陽、最低だ。」


楽しそうにしないで、なんて…自分勝手なことを。そんなこと思える身分じゃないのに。
そんなの凛ちゃんの勝手なのに、私と来たら。

241: 2016/06/25(土) 01:06:21.48 ID:5OQcWz2L.net
…そっか、これは天罰だ。
自分勝手なワガママで、友達を束縛しようとした私に、神様が罰を与えたんだ。


花陽 「凛ちゃんが輝くと、私の存在が薄くなる…。」

花陽 「だから凛ちゃんが輝かないように…?」

花陽 「あはっ…。友達失格だ…花陽。」


自分の存在が、また一段と薄くなった…そんな感じがした。

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242: 2016/06/25(土) 01:06:55.00 ID:5OQcWz2L.net
海未 「………。」


海未はボールペンを両手で握り、精神を研ぎ澄ませていた。


穂乃果 「なんか…犬みたいだね。」

ことり 「今そういうことを言わないの。」

穂乃果 「ご、ごめんなさい…。」


海未 「…!」

絵里 「見つかったの!?」

海未 「はい…。それも…。」


そう言って海未は、後ろにあった食器棚を指さした。


海未 「あそこです。」

真姫 「嘘!?」

希 「そんな近くに…。」


凛 「かよちん…?」

243: 2016/06/25(土) 01:07:31.01 ID:5OQcWz2L.net
凛はふらふらと立ち上がり、食器棚の方へと向かって歩き出した。


凛 「かよちん…いるなら返事しなくちゃダメだよ。」

凛 「…つかまえ…た!」


凛は食器棚の前で、花陽がいるであろう場所を抱こうとしたが、手は空を切り、“何か” が手に当たることは無かった。


凛 「あれ…ちょっと外しちゃったかな…?」

凛 「ここ…? それとも…ここ?」


凛は諦めず食器棚や台所で手探りを続けたが、結果は虚しいものだった。


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244: 2016/06/25(土) 01:07:58.70 ID:5OQcWz2L.net
海未 『あそこです。』


海未はそう言って、花陽のことを指さした。
ペルソナ…? その力で花陽のことを見つけたらしい。まるで超能力者だ。


凛 『かよちん…いるなら返事しなくちゃダメだよ。』


花陽 「凛ちゃん…。」


凛が自分の方へと向かってくる。そして、自分のことを抱きしめようとした。
…しかし、凛は自分の体をすり抜けていった。

245: 2016/06/25(土) 01:08:26.00 ID:5OQcWz2L.net
花陽 「あはは…これじゃあ花陽、まるで幽霊だ。」

花陽 「あはは…ぐすっ……あれっ…?」


花陽はその時初めて、自分が涙を流していることに気が付いた。


花陽 「もう…どこまで自分勝手なんだろ花陽…。」

花陽 「もう…嫌だっ……!」


花陽は宛もなく、外へと走り出した。

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246: 2016/06/25(土) 01:08:59.59 ID:5OQcWz2L.net
凛が膝から崩れ落ち、またボロボロと涙を流し始めた時だった。
寮の出入口の扉が、ひとりでに勢いよく開いた。


穂乃果 「…!? 何!?」

希 「もしかして…花陽ちゃん!?」

海未 「そのようです! 反応が外に行きました!」

絵里 「追いかけましょう!」


8人は反応を追って、寮から飛び出した。

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ーー

続く
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251: 2016/06/26(日) 00:56:45.65 ID:n6Cyyf2R.net
~深夜 音ノ木坂学院 校庭~


花陽 「はぁっ……はぁっ……。」


宛もなく走って、ここまで来た。
適当に走っているつもりだったが、“何か” が自分をここに呼んでいたような気がした。


凛 「かよちーんっ! どこにいるのー!?」

花陽 「…!」

穂乃果 「花陽ちゃん! いるなら返事して!」

花陽 「なんで…花陽なんかの為にそこまで…。」

花陽 「お願い来ないで…。」


花陽 『来ないでっっ!!!』


凛 「…!?」

252: 2016/06/26(日) 00:57:12.83 ID:n6Cyyf2R.net
ことり 「今…花陽ちゃんの声が!」

海未 「反応は、丁度グラウンドの真ん中です!」

凛 「かよちん、一緒に帰るにゃ…。」


凛はふらふらと、グラウンドの真ん中へと歩き始めた。


花陽 『ダメ…来ないでっ!』


花陽の叫びに応じ、花陽の体から禍々しいオーラが放たれた。
そしてそのオーラは、凛の体を弾き飛ばした。


凛 「にゃぁっ…!!?」

希 「凛ちゃんっ!?」

253: 2016/06/26(日) 00:57:44.11 ID:n6Cyyf2R.net
花陽 『ダメだよ…花陽はこのままじゃなきゃ…。』

花陽 『罰を…受け入れなくちゃ…。』


凛 「罰…? かよちん、何言って…」


花陽 『自分勝手なワガママで、親友のはずの凛ちゃんを妬んで…。』

花陽 『凛ちゃんが輝きすぎて、花陽の存在が薄れるから…! 誰からも、意識されなくなるからっ…!』

花陽 『だから凛ちゃんに輝いて欲しくないなんて…。』

花陽 『これはそんな花陽への罰なの…。』


凛 「かよちん…。」

海未 「凛、今の花陽に触れてはいけませんっ! 体を完全にシャドウに蝕まれていますっ!」

真姫 「そんな…。」

254: 2016/06/26(日) 00:58:13.83 ID:n6Cyyf2R.net
絵里 「姿が見えなくなったのも、シャドウによる影響なの…?」

海未 「それだけではありません…。思考までもが支配されています。」

にこ 「あのネガティブすぎる思考も、シャドウのせいなの?」

海未 「そういう意味ではありません。今花陽は、心の奥底に隠していた本心を、シャドウによって外に放出させられているんです。」

凛 「てことは…あれがかよちんの本心…?」

海未 「そういうことになります。」

凛 「……。」


凛は何か決心したように目を鋭く尖らせ、禍々しいオーラの密集する所へと歩み出した。


穂乃果 「凛ちゃんっ!?」

255: 2016/06/26(日) 00:58:45.58 ID:n6Cyyf2R.net
花陽 『やめて…来ないでっ…来ないでっ!』ドヒュンッ!


花陽から溢れ出るオーラは、凛の体に突撃していく。


凛 「…っ! いっ……。」

花陽 『やめてよ…これ以上、凛ちゃんを傷つけたくないのっ!』

凛 「……。」


それでも凛は、花陽の元へと歩むのをやめなかった。


花陽 『なんで…なんでなの凛ちゃんっ!?』ドヒュンッ!

凛 「うっ…! ……なんで…って?」

花陽 『凛ちゃんにこんな酷いことして…。どうしてそんな花陽に近付いてくるのっ!?』

凛 「そんなの…決まってるよ…。」

256: 2016/06/26(日) 00:59:23.94 ID:n6Cyyf2R.net
凛 「親友だもん。」

花陽 『……!』


凛 「親友を助けたいって思うのは、変なこと?」

花陽 『…変じゃない…けど…。』

凛 「じゃあ何の問題もないにゃ。」

花陽 『でも花陽…』

凛 「かよちんっ!」

花陽 『ひゃいっ!?』

257: 2016/06/26(日) 00:59:52.51 ID:n6Cyyf2R.net
凛 「かよちんの存在が薄れる…? そんなこと、あるわけないにゃ!」

花陽 『どうしてそんなこと…』

凛 「だって…」


凛 「だって凛には見えてるもん。かよちんのこと。」


花陽 『…っ!?』

凛 「ほら、かよちん、今泣いてる。」

花陽 『えっ…な、なんで…。』

凛 「だから言ったでしょ? 見えてるって。」

258: 2016/06/26(日) 01:00:20.19 ID:n6Cyyf2R.net
凛 「凛ってば馬鹿だにゃ。親友の気持ちに、今の今まで気づけなかったなんて…。」

凛 「でも、かよちんが本心を教えてくれたから…。」


凛は自分の右手で花陽の涙をぬぐい、頬に手を添えた。


凛 「ちゃんと見える。かよちんのこと。」

花陽 『凛…ちゃん…。』


凛 「……かよちんの洗うタオル、すごい評判いいんだよ。」

花陽 『へ…?』

259: 2016/06/26(日) 01:01:27.18 ID:n6Cyyf2R.net
凛 「先輩達も言ってたにゃ。かよちんの洗ってくるタオルは、いつもいい香りがするって。」

花陽 『そんな…。』


花陽は恥ずかしそうに、うつむいた。


凛 「みんなにも見えてるんだよ…かよちんのこと。」

凛 「見えてないなんて…存在が消えてるなんて…そんなこと絶対にない。」


花陽の体の色が、段々と戻り始めた。


凛 「だってほら…ここにいるもん。」

凛 「かよちんは…ここに。」

花陽 「凛ちゃん……ひぐっ……。」


花陽 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんっ!!!」


完全に色を取り戻した花陽は、泣き崩れ、凛の胸に顔を埋めた。

260: 2016/06/26(日) 01:01:57.15 ID:n6Cyyf2R.net
シャドウ 「グォオォォォォァッ!?」


花陽の体を蝕んでいたシャドウは、一気に花陽の体外へと放出された。
-そしてそのシャドウは、花陽を背後から襲いかかろうとした。


ことり 「…! 花陽ちゃん、危ないっ!」

凛 「しまっ……!」


ガキィンッ!


シャドウの攻撃は、花陽の背中に命中する直前に、“何か” に阻まれた。


花陽 「……えっ…?」


花陽が振り返るとそこには、白く輝く大きな盾を持った、女神のようなものがいた。

261: 2016/06/26(日) 01:02:29.38 ID:n6Cyyf2R.net
絵里 「あ…あれは…まさかっ…!?」

希 「タレイア…! ムーサの、最後のひとり!」

真姫 「9人の女神が…揃った…!」


花陽は凛から離れ、シャドウと向き合った。
もうその目に、迷いはなかった。


花陽 「凛ちゃん…さがってて。」


花陽は軽く深呼吸をし、右手を広げ、前に突き出した。
それに応じ、花陽のペルソナ、“タレイア” は、シャドウの周りに大きな旋風を巻き起こした。そしてその旋風は一つの大きな塊となり、シャドウを包み込んだ。


花陽 「これで…終わりですっ…!」

シャドウ 「ガァァァァァァァァッ!!」

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262: 2016/06/26(日) 01:03:01.06 ID:n6Cyyf2R.net
~数日後 朝 校庭~


朝のHRが始まる約1時間前。部員達は目をこすり、眠気と戦いながら、グラウンドで走っていた。


ことり 「ふぁぁ……。」

花陽 「ふふっ、ことり先輩があくびなんて、珍しいですね。」

ことり 「昨日読んだ小説が面白くてつい…。」

花陽 「気をつけなきゃダメですよ…?」

ことり 「うぅ…。」


『おーい花陽ー! 水持ってきてー!』


花陽 「あっ、はーいっ!」


花陽はことりに向かって軽く一礼し、先輩の元へと走っていった。

263: 2016/06/26(日) 01:03:27.56 ID:n6Cyyf2R.net
海未 「花陽、名前で呼んでもらえるようになったんですね。」

ことり 「うん。凛ちゃんと私がお願いしたのもあるんだけど、別に名前を呼ばなかったのに理由はなかったんだって。」

海未 「そうだったんですか。」

ことり 「それを花陽ちゃんが気にしてたって言ったら、みんなびっくりしてたよ。」

海未 「しかし、何はともあれよかったです。」

ことり 「うん。…みんなにも、花陽ちゃんのこと、ちゃんと見えてた。」

海未 「…誰からも見られてない人なんて、存在しませんよ。」

ことり 「それ、花陽ちゃんに言ってあげたら?」

海未 「いえ、彼女はもう気付いているはずです。」


海未は花陽の方へと目をやり、微笑んだ。


海未 「彼女はずっと、みんなと一緒でしたから。」

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264: 2016/06/26(日) 01:03:54.49 ID:n6Cyyf2R.net
~1週間後 深夜 教会~


教会内に空いた、この世と向こうの世界とを繋ぐ門は、相変わらず黒いオーラを放っている。


花陽 「これが…門…。」

希 「花陽ちゃんは見るの初めてやったね。」

花陽 「ここに…プセウドスが…?」

にこ 「えぇ。全ての元締め…そいつを倒せば、この街は…」

穂乃果 「私たちが…やらなきゃ。」


??? 「やっと来たね…。」


穂乃果達が話していると、穴の中から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

265: 2016/06/26(日) 01:04:23.19 ID:n6Cyyf2R.net
真姫 「その声…久しぶりね。」

??? 「1回しか話してないのに、よく覚えてたね。すごいすごい。」

穂乃果 「…いい加減、姿を見せてよ。」


穂乃果 「アリスちゃん…。」


絵里 「…!? その名前…どうして…。」


アリス 「ふふっ。バレてたんだ。」

穂乃果 「すぐ分かるよ…。あんなに、仲良くしてたんだもん。」

アリス 「仲良く…? 会ったのはたった2.3回じゃなかった?」

穂乃果 「そうだけど…。」

アリス 「まっ…いいか。」

266: 2016/06/26(日) 01:04:44.55 ID:n6Cyyf2R.net
アリス 「…で、みんな揃って、どうするの?」

真姫 「決まってるでしょ…。プセウドスを呼び出して、倒す!」

海未 「この街を、シャドウの手から救うんですッ!」

アリス 「ふぅん…本当にやるつもりだったんだ…。」

にこ 「当たり前でしょ!? どれほどの覚悟で、ここまで来たと思ってるの?」

アリス 「そ。……でも、」

ことり 「でも……何?」

267: 2016/06/26(日) 01:05:09.56 ID:n6Cyyf2R.net
アリス 「1人…違うこと考えてる人がいるっぽいけど?」

希 「なっ…!?」

海未 「そんなはずありませんっ!」

凛 「そうにゃ! 凛達は、プセウドスを倒そうって、そう決めてここまで団結してやってきたんだにゃ!」


アリス 「……だってさ。」

アリス 「あんたの口から言ってあげなよ…。自分は違う計画を考えてるって。」

アリス 「みんなを…“騙してた” って…。」


ことり 「へ……?」

穂乃果 「アリスちゃん…さっきから一体誰に話してるの?」

268: 2016/06/26(日) 01:05:57.65 ID:n6Cyyf2R.net
アリス 「穂乃果ちゃん達を騙してた人にだよ? それ以外にいないでしょ?」

にこ 「だからっ! そいつが誰だって聞いてるんでしょ!?」

希 「にこっち! 落ち着いて。単なるアイツのデマや。」

アリス 「…まぁ、あんたたちがどう思おうと自由だけど…。」

アリス 「そろそろ自分の口でいいなよ。」


アリス 「絢瀬絵里さん。」

絵里 「………っ!!!!!」


穂乃果 「えっ……?」


8人の視線が、絵里の元へと集まった。
絵里は1人、アリスを険しい表情で睨んでいた。

ーーーーーーー

続く

274: 2016/06/26(日) 23:55:37.72 ID:n6Cyyf2R.net
私がペルソナ能力に覚醒したのは、生徒会長に就任した1ヵ月後…去年の11月頃だった。

あれはそう…生徒会の仕事で、夜遅くまで残っていた時だった。

ーーーーーー
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ーー


絵里 「ふぅ…生徒会の仕事って、案外多いのね。」


ズズズ…


絵里 「…? 何かしら今の。」


生徒会室の外に、何かの気配を感じた絵里は、扉を中からそっと開け、外をのぞき見た。
そこにいたのは…この世のものとは思えぬ、奇妙な“影” のような姿をした、無数の怪物だった。

275: 2016/06/26(日) 23:56:12.54 ID:n6Cyyf2R.net
絵里 「なっ…何よあれ…!?」

シャドウ 「グゥゥゥッ?」

絵里 「ひっ…!」


怪物と目が合ってしまった絵里は、慌てて生徒会室の扉をしめ、そのまま扉にもたれかかる形で、膝から崩れ落ちた。


絵里 「何あれ…お化け…? 嫌…嫌よ…!」


ドンドンドンドンッ!!!


絵里 「イヤぁぁぁぁぁっ!!」


怪物は扉を破ろうと、執拗に攻撃を続ける。
ーーそしてついに扉は破られ、大量の怪物が、生徒会室の中へとなだれ込んできた。

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ーー

276: 2016/06/26(日) 23:56:49.09 ID:n6Cyyf2R.net
…その後のことは、よく覚えていない。
気付けば怪物は一匹残らず消え去っており、絵里は3つ並べられたパイプ椅子の上に横たわっていた。

そして、そんな絵里の様子を伺っていたのが、生徒会顧問の織田だった。


絵里 「うぅ…私……。」

織田 「気付いたか。今はまだ起き上がらない方がいい。覚醒のショックが、あまりにも強すぎる。」

絵里 「織田先生…? 私…何を…。」

織田 「覚えていないのか? 奴らと戦ったことを。」

絵里 「奴ら…?」


絵里は、自分が気を失う前のことを思い出そうとした。すると、突然激しい頭痛に襲われた。


絵里 「うっ…うぅぅぅ…!!!?」


それと同時に、“奴ら” のことも思い出した。
一緒に戦った…謎の“女神” のようなもののことも。

277: 2016/06/26(日) 23:57:20.07 ID:n6Cyyf2R.net
絵里 「私…あの化け物を…。」

織田 「横になったままでいい。話を聞いてくれ。」


そして絵里は、織田からシャドウのことや、ペルソナのことを教わった。


絵里 「…どうして、この学校だけ?」

織田 「それは分からない…。全て“彼女” の気まぐれなんだ。」

絵里 「彼女…?」

織田 「…案内しよう。そろそろ立てるかい?」


絵里は織田の肩を借りながらなんとか立ち上がり、織田に連れられ、教会へと向かった。

278: 2016/06/26(日) 23:57:48.72 ID:n6Cyyf2R.net
~教会~


絵里 「ここは…?」

織田 「もう利用されていない教会だ。ここに彼女はいる。」

絵里 「先生、その…彼女というのは…?」

織田 「シャドウの世界…そこの住人さ。」


アリス 「やっほー。今度はお仲間も一緒?」


織田 「やぁ…アリス。」

絵里 「アリス…?」

アリス 「…その気配、もしかしてペルソナ使い?」

279: 2016/06/26(日) 23:58:17.14 ID:n6Cyyf2R.net
織田 「あぁ…。これで二人目だ。」

絵里 「先生…なぜシャドウの世界の住人と?」

織田 「そうだな、まずはそこから説明しなくちゃならない。」


織田 「彼女が、私達の学校をシャドウに襲わせている張本人だ。」

絵里 「どうしてそんなことを…!」

アリス 「それはまだ教えられないなー。」

織田 「この通りだ。なぜあの学校なのかは教えてくれない。」

織田 「しかし、学校を襲わせるのを止める条件は教えてくれた。」

絵里 「条件…?」

280: 2016/06/26(日) 23:58:44.82 ID:n6Cyyf2R.net
織田 「プセウドスの話は覚えているかい?」

絵里 「はい、確かシャドウの世界の主…。」

織田 「それを呼び出すこと…。それが条件らしい。」

絵里 「…!? しかし、さっき聞いた話では、そいつが召喚されれば世界は…!」

織田 「あぁ。世界は嘘に満たされる。」

絵里 「そんな…。」

織田 「しかし、だ。絢瀬君、世界が嘘に満たされるというのは、それほど大きな問題だろうか?」

絵里 「は…?」

281: 2016/06/26(日) 23:59:14.49 ID:n6Cyyf2R.net
織田 「もしこのまま、奴らを放置していたとしよう。あの学校…いや、生徒達はどうなる?」

絵里 「それは…。」

織田 「学校を大切に思う気持ちは、君も同じなはずだ。」


織田は絵里に近づき、アリスに聞こえないように耳打ちした。


織田 「プセウドスを召喚した後のことは、私たちでまたどうにかすればいい。…そうだろう?」

絵里 「……織田先生が、そう言うのなら。」

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ーー

282: 2016/06/27(月) 00:00:08.00 ID:8LxgnWCs.net
それから私達は、学校を救うため、プセウドスの召喚に必要なペルソナ使いを探し始めた。

そんな中現れたのが、穂乃果達だった。


希 『納得してないようやね』

絵里 『当たり前でしょ。』


学校を…生徒を救うためにやっているのに、肝心のペルソナ使いが生徒だなんて…
これほど、運命を恨んだことは無かった。



>>20

283: 2016/06/27(月) 00:00:44.78 ID:8LxgnWCs.net
それでも、私たちの計画は、完璧だった。
仲間達も、私と織田先生の計画に気付いている様子はない。
一時は世界を犠牲にしてしまう…しかし、それも私たちで解決するつもりだった。
……そう、約束したのに。

織田先生は、私を裏切った。


織田 『詳しい話はそこでだ。待っているよ、女神達。』

織田 『それとそうだ…絢瀬君、今までご苦労だった。』


絵里 「……っ!?」


織田 『安心したまえ。この無線は君にしか聞こえていない。』

織田 『君には感謝している。私だけでは、ここまでペルソナ使いを集められなかった。』

織田 『君は、学校を守る…その目的のために頑張っていたが…。』

織田 『実は私は、学校なんてどうでもよいのだよ。』


絵里 「なっ…!?」

284: 2016/06/27(月) 00:02:14.12 ID:8LxgnWCs.net
>>155

285: 2016/06/27(月) 00:02:29.23 ID:8LxgnWCs.net
織田 『私の目的は、世界を嘘で満たすことだ。学校を救うことじゃない。』

絵里 「そんな…。」

織田 『では…先程言ったとおりだ。教会で待っているよ。』


そう言って織田は、無線を一方的に切った。


絵里 「……っ! くそぉっ!」

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ーー

織田先生がアリスによって葬られた…。
それでも、私の目的は変わらない。

学校を救う…。例え、世界を犠牲にしてでも。そう…一時は嘘に満たされるかもしれないが、私たちなら元に戻せる。

286: 2016/06/27(月) 00:03:04.75 ID:8LxgnWCs.net
プセウドスを倒す…みんなはそう言っているが、はっきり言って無理だ。
奴は普通のシャドウとは違う。正真正銘の“神” だ。そんなものに、どう立ち向かえと言うのか。

もし立ち向かって、負けでもしたら、世界だけでなく、学校までもが犠牲になるかもしれない。

それなら…確実に学校が助かる道を選ぼう。
仲間達は納得しないだろう。時が来るまで、嘘をつこう。

そうだ…これが最善の選択。
私は、間違っていない。

私は……私は……

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287: 2016/06/27(月) 00:03:35.18 ID:8LxgnWCs.net
絵里 「間違ってないっっっ!!!!」


絵里は叫んだ。
それは憤りからのものなのか…彼女自身もわかっていなかった。

全てを知った8人は、ただ絵里を見つめていた。
…それしか、出来なかった。


絵里 「プセウドスを倒すなんて無茶…! なら、せめて学校だけでも…。」

絵里 「私達の学校だけでも…救おうと!」


穂乃果 「絵里先輩…。」


絵里 「お願い…分かってよみんな…。」

絵里 「一時だけでいいの…。世界を嘘に沈めるのは。」

絵里 「あとは私たちで…」


にこ 「保証は?」

288: 2016/06/27(月) 00:04:02.53 ID:8LxgnWCs.net
絵里 「へ…?」

にこ 「世界が嘘に沈んだ後、私たちで元に戻せる保証がどこにあるの?」

絵里 「それは…」

にこ 「無いんでしょ?」


にこの核心を突く言葉は、絵里の言葉を詰まらせた。


にこ 「2人は…」

にこ 「優香と真奈はッ…! 世界を犠牲にするために氏んだんじゃないっ!」

にこ 「学校“だけ” を救うためじゃないっ!」

にこ 「世界を救うため…そうじゃないの?」

絵里 「………。」

289: 2016/06/27(月) 00:04:31.98 ID:8LxgnWCs.net
にこ 「…あんたがそんなやつだとは思わなかったわ。」

希 「にこっち…。」


絵里 「………私の」

にこ 「…?」

絵里 「にこに私の…何がわかるのよっ!!?」

にこ 「…!?」

絵里 「分かってないのはそっちよ! あなた達こそ、プセウドスに勝てるなんて保証、どこにあるのよっ!」

絵里 「同じ、保証がないなら…。確実に助かる方を選ぶ!」

絵里 「それは間違っていない!」

にこ 「アンタ…。」

290: 2016/06/27(月) 00:05:06.36 ID:8LxgnWCs.net
穂乃果 「2人とも…その辺に…。」

絵里 「あなたもよっ!!」

穂乃果 「えっ…?」


絵里 「あなたは…穂乃果はみんなより力があるから、プセウドスを倒すなんて言えるんでしょうけど…。」

絵里 「あなたは弱い人間の心をわかってない…。」

穂乃果 「絵里先輩…。」

絵里 「私は…私の決めた道を進むわ。」


そう言って絵里は、ペルソナを召喚する体制に入った。

291: 2016/06/27(月) 00:06:23.72 ID:8LxgnWCs.net
絵里 「ごめんなさい……。」

穂乃果 「…!」


絵里 「ペルソナッッッ!!!!」カッ!


絵里のペルソナ…テルプシコラーの咆哮は、8人の体からペルソナを引き抜いた。
そして、9体のペルソナは、一斉に歌い始めた。
今まで聞いたことのないような、美しい歌声…それに似つかわしくない、不気味なオーラが、門から溢れでた。

外にあった9体の女神像の目が光り出した。
そして、教会は大きく揺れ始め、屋根の一部が崩れ落ちてきた。
門は上へ上へと移動し、教会を覆い隠す程大きくなった。

そしてその門から、2本の角を生やし、その名には似つかわしくない、綺麗な顔立ちをした、6mはあるであろう怪物が姿を現した。

それが、シャドウの世界の主、“プセウドス” であると、9人はすぐに察した。

ーーーーーー
続く

298: 2016/06/28(火) 00:03:01.28 ID:CME4loqW.net
穂乃果 「あれが…プセウドス…。」


プセウドス 『…ついに揃えたか。9人の女神を。』


海未 「…!?」

にこ 「あいつ…人の言葉を!?」

絵里 「だから言ったでしょう。あいつは…シャドウとは一線を超えた存在…。」


プセウドス 『聞くところによれば、君達は私を倒そうとしているらしいじゃないか…。』

299: 2016/06/28(火) 00:03:29.83 ID:CME4loqW.net
真姫 「そうよ…! 例えあんたが神だろうが関係ない。私達は、あんたを倒す…!」

凛 「凛達ならできるにゃ!」


絵里を除いた8人は、ペルソナを召喚する体制に入った。


絵里 「あなた達…。」

プセウドス 『よいだろう…。神に立ち向かうことが、如何に馬鹿げたことか…。』

プセウドス 『身をもって知れっ!!』


8人 「「「「「「「「ペルソナッッッ!!」」」」」」」」

300: 2016/06/28(火) 00:03:59.56 ID:CME4loqW.net
8人のペルソナは、プセウドスに向かって突き進んだ。
…しかし、プセウドスに触れる直前、ペルソナの動きが止まった。


花陽 「えっ……。」

プセウドス 『神は如何なるものにも干渉しない。』

プセウドス 『故に何者も、神には触れられぬっ!』


プセウドスの咆哮とともに、8人のペルソナは吹き飛ばされ、その体はバラバラに砕け散った。


にこ 「がはっ……!?」


アリス 「ペルソナとは、自分自身そのもの。ペルソナが砕ける程のダメージ…あなた達は耐えられるかしら?」


希 「ぐっ……うぅぅ…。」

穂乃果 「まだ……まだまだぁ…っっ!!」

301: 2016/06/28(火) 00:04:27.37 ID:CME4loqW.net
穂乃果はボロボロになりながらも、ペルソナを召喚し、プセウドスに立ち向かおうとした。
…しかし、穂乃果のエウテルペーは、プセウドスの元へ辿り着くより前に、何者かに地面に叩きつけられ、その体を押さえ付けられた。


エウテルペー 『ガァァッッ……!?』ドォンッ!

穂乃果 「あ…あれって…。」


エウテルペーを押さえつけた者の正体は、絵里のペルソナ、テルプシコラーだった。


ことり 「絵里先輩っ!?」

302: 2016/06/28(火) 00:04:56.61 ID:CME4loqW.net
穂乃果 「絵里先輩…どうしてっ…?」

絵里 「……やめてよ。」

希 「エリち…?」


絵里 「もう……やめてよっっ!!!」


絵里の叫びで、テルプシコラーは力を強め、エウテルペーを更に強く地面に押さえ付けた。
次第にエウテルペーは、その姿を消していった。それを見たテルプシコラーも、その姿を消した。


絵里 「もう…充分わかったでしょ…?」

絵里 「プセウドスには…敵いっこないって…。」


気付けば絵里は、大粒の涙を流していた。

303: 2016/06/28(火) 00:05:29.47 ID:CME4loqW.net
穂乃果 「絵里先輩…。」

絵里 「これ以上、あなた達が傷つくのを見たくない…。もう…やめてよ…。」

にこ 「絵里…アンタ…。」

海未 「絵里先輩…私達は決して…」

絵里 「“諦めない”…? そんな綺麗事で、あなた達は命を失いたいのっ!?」

絵里 「無理なものは無理なのっ! お願いだから…分かってよっ…!」

穂乃果 「………。」


違ったんだ。絵里先輩は、決して自分勝手に行動していたわけじゃなかった。
誰よりも人のことを考えて…私達の…生徒達のことを考えて…。
いつの間にか、それしか見えなくなって…。世界を犠牲に、なんて…。

でも…それは…………間違ってる。

ーーーーーー
ーーーー
ーー

304: 2016/06/28(火) 00:06:29.63 ID:CME4loqW.net
アリス 「……。」

プセウドス 『…? どうしたのですか、アリス様。』

アリス 「うーん…なんだかねぇ。圧倒的な力で支配するのって、案外つまらないなぁって。」

プセウドス 『はぁ…。』

アリス 「……! そうだっ! ねぇ、プセウドス!」


アリスはプセウドスに耳打ちした。
プセウドスは一瞬、驚き目を見開いたが、すぐにアリスの方へと向き、頭を下げた。


プセウドス 『かしこまりました…。』

ーーーーーー
ーーーー
ーー

305: 2016/06/28(火) 00:07:00.15 ID:CME4loqW.net
絵里 「うぅっ…。ぐすっ……。」


絵里は相変わらず、涙を流していた。そんな絵里を、8人は複雑な感情で見つめていた。


穂乃果 「……違う。」

絵里 「…!? 穂乃果…あなたこれだけいっても…」

穂乃果 「そうじゃないです。絵里先輩の気持ちは、痛いほど…分かりました。」

絵里 「ならどうして…。」

穂乃果 「私が違うって言ってるのは…」


…その時だった。今まで感じた禍々しいオーラとは比べ物にならないほど、強い気配をまとった黒い煙のような塊が、絵里の体を貫いた。
いや、貫いたと言うより、溶け込んだの方が正しいかもしれない。その黒い煙は、絵里の体へと沈んでいった。

306: 2016/06/28(火) 00:07:26.36 ID:CME4loqW.net
穂乃果 「……!? 絵里先輩っっ!!!!」

絵里 「がっ……!? うっ…ぎっ……!!?」

ことり 「穂乃果ちゃん…あれ…!」


ことりが指さした方には、徐々に黒い煙に姿を変える、プセウドスがいた。


希 「プセウドス…? まさか……エリち!!」


絵里の身に何が起こっているのか…気付いたときには、もう遅かった。


絵里 『………ペルソナ。』

307: 2016/06/28(火) 00:08:10.99 ID:CME4loqW.net
絵里のペルソナは、黒く、不気味なオーラを纏っていた。
絵里自身も、その目から色は消え、体全体から黒いオーラを放っていた。
体…精神…その全てを、プセウドスに支配されていた。


希 「エリちっ! アカン!」


希の声すら、今の絵里には届かなかった。
絵里のペルソナは、希めがけて突っ込んできた。しかし、その攻撃は、花陽のペルソナの盾で防がれた。


花陽 「ぐぅっ………。」

希 「花陽ちゃん…。」

花陽 「絵里先輩っ! 正気に戻って!」


花陽のペルソナは、絵里のペルソナを攻撃しようとした。

だが花陽のペルソナは、希のペルソナに羽交い締めにされた。

308: 2016/06/28(火) 00:08:38.97 ID:CME4loqW.net
タレイア 『ウガァァァァァッ!!!?』

希 「あかん…テルプシコラーを攻撃したら、エリちの体も…!」

花陽 「でもっ! 今はそんなこと…」


花陽が言い終わるより前に、テルプシコラーは、タレイアとウーラニアーをまとめて吹き飛ばした。


ことり 「花陽ちゃんっ! 希先輩っ!」

海未 「ダメです…今の絵里先輩は、完全にプセウドスに支配されています。」

真姫 「プセウドスを絵里先輩から引き剥がさないと…ってこと?」

穂乃果 「うん…。でも…」


プセウドスの力を借りたテルプシコラーの力は、想像を絶していた。まず、近付くことさえ間もならない。

309: 2016/06/28(火) 00:09:12.77 ID:CME4loqW.net
穂乃果 「何かあるはず…方法が…!」


テルプシコラーは、情け容赦もなく、8人に襲いかかる。8人はその攻撃をなんとか防ぐだけで、攻撃はしない。
8人の体もそろそろ限界かと思われたその時だった。穂乃果はあることを思い出した。


穂乃果 「今の状況…。」

ことり 「穂乃果…ちゃん?」

穂乃果 「今の状況、凛ちゃんや花陽ちゃんの時と似てない?」

海未 「そう…いえば…。」

にこ 「つまり…2人の時と同じように、絵里からもプセウドスを引き剥がせるのね。」

穂乃果 「確証はないですが…。」


穂乃果は考えた。どうすれば、絵里の体からプセウドスを引き剥がせるか。

310: 2016/06/28(火) 00:09:43.92 ID:CME4loqW.net
…そもそも、シャドウはどうやって人の体に入り込むのだろうか。
どんな人間にでも入り込めるのなら、今までの戦闘でも毎回そうしていたはずだ。
花陽、凛、絵里に入れたのに、なぜ穂乃果達に入れなかったのか…?

…3人がシャドウに取り憑かれた時の言葉が思い浮かんだ。


凛 『みんなの望む…凛にならなきゃ…。』

花陽 『私のことなんて誰も見てない…。』

絵里 『私は…間違ってないっ!』



穂乃果 「……そうか!」

ことり 「穂乃果ちゃん…?」


何かを思いついた穂乃果は、改めて絵里の方を向き、ペルソナを召喚する体制に入った。

311: 2016/06/28(火) 00:10:29.47 ID:CME4loqW.net
希 「…!? 穂乃果ちゃんっ…ダメッ…!」


絵里 『ペルソナッ!』カッ!


テルプシコラーは穂乃果に向かって、とてつもない速さで飛んできた。


穂乃果 「アラミタマッ!」カッ!


テルプシコラーの攻撃が、アラミタマに直撃したその瞬間、大きな爆発が起こった。
穂乃果の体は、爆風に飲み込まれた。


海未 「穂乃果ぁっ!!」

絵里 『ふんっ…。』


しかし穂乃果は、煙の中から何事も無かったかのように現れた。

312: 2016/06/28(火) 00:11:13.49 ID:CME4loqW.net
絵里 『小癪なっ…テルプシコラーッ!』カッ!

穂乃果 「ジークフリートッ!」カッ!


テルプシコラーの槍と、ジークフリートの剣で、つばぜり合いとなった。
2人のペルソナはそれぞれ後ろに大きく吹き飛ばされた。
しかし、穂乃果は絵里の方へと歩み寄るのをやめなかった。


絵里 『どうしてっ…。その力はどこからっ!?』

穂乃果 「ペルソナの力の源は人との絆…。」

穂乃果 「…そうだったよね、アリスちゃん。」

アリス 「……まぁ、その通りだけど。」

313: 2016/06/28(火) 00:11:47.39 ID:CME4loqW.net
穂乃果 「この力は…みんながくれたもの。」

穂乃果 「海未ちゃんや、ことりちゃん。凛ちゃん、真姫ちゃん、花陽ちゃん。」

穂乃果 「にこ先輩、希先輩…。」


穂乃果 「絵里先輩との…絆の力。」


絵里 『…っ!』

穂乃果 「たとえ、絵里先輩が私たちを騙していたんだとしても…。一緒に過ごした日々は、絶対に嘘じゃない。」


絵里の体から、少しづつ、黒い煙が抜け始めた。


絵里 『どうして…そんなこと…。』

穂乃果 「だって絵里先輩…ペルソナを出す前に、言ってたじゃないですか。」

穂乃果 「『ごめんなさい』って。」


絵里 『ほ……のか……。』

314: 2016/06/28(火) 00:12:20.69 ID:CME4loqW.net
穂乃果 「…引き返せなかったんですよね。」

絵里 『えっ…?』

穂乃果 「みんなと過ごす内に考えが変わってきて…でもそうしたら、今までやってきたことが無駄になる気がして…。」

絵里 『穂乃果……。』

穂乃果 「先輩…今からでも遅くないです。」


穂乃果は絵里に、手を差し伸べた。


穂乃果 「戦ってください…私達と一緒に!」

絵里 「……!!」

315: 2016/06/28(火) 00:12:56.11 ID:CME4loqW.net
プセウドス 『なっ…何故だ…!? 体が…動かせぬ…っ!』


プセウドスは、絵里の体を操ることが、徐々に出来なくなっていた。


絵里 「でも…プセウドスには…。」

穂乃果 「無駄か無駄じゃないかなんて、関係ないですよ。」

絵里 「関係ない…?」

穂乃果 「私は、今自分に何が出来るか…何をするべきか考えて、その通りにやって来ました。」

穂乃果 「それは、みんなも同じだと思います。」

絵里 「みんなも…?」


絵里が穂乃果の後ろにいた7人に目を向けた。7人は、みんな笑顔で、絵里のことを見ていた。


穂乃果 「今私たちがやるべき事は…目の前の敵に立ち向かうこと。」

絵里 「穂乃果…。」

穂乃果 「やりましょう、絵里先輩。前に…進みましょう。」

316: 2016/06/28(火) 00:13:36.13 ID:CME4loqW.net
絵里 「……。」


絵里は目を閉じ、軽く深呼吸をした。
そして穂乃果を見つめ直し、差し伸べられた手を、握った。
それと同時に、プセウドスが絵里の体から引き剥がされた。


プセウドス 「ぐぁぁぁぁぁっっ!!!?」


絵里 「…忘れていたわ、私。」

穂乃果 「絵里先輩…!」

絵里 「そうよ…私は今まで、自分を見失ってた…。」

絵里 「やりたいこと…やらなきゃいけないこと…ごちゃ混ぜになっちゃって…。」

絵里 「穂乃果の…ううん、みんなのお陰よ…。」

希 「エリち…!」

にこ 「全く…世話のやける生徒会長ね。」


9人の元に、笑顔が戻った。
しかし、それは一瞬のことだった。

317: 2016/06/28(火) 00:14:20.27 ID:CME4loqW.net
プセウドス 「ぐぅぅっ……。」

ことり 「プセウドス…。」

プセウドス 「ふふ…こんな屈辱、生まれて初めてだ。貴様ら…タダで済むと思うな…。」

絵里 「……悪いけど。」


絵里 「私達は、負けるつもりは無いわよ。」


9人は、決心したような目で、プセウドスを睨みつけた。


プセウドス 「ふふふ…面白い…。その威勢、いつまで持つかな?」


プセウドスは2つの角を、紫に輝かせた。
それに呼応し、プセウドスの手の内に、黒紫色の気弾が現れ、徐々に大きくなっていった。そしてそれは黒く鋭い槍のようなものに姿を変え……


穂乃果の体を、貫いた。


穂乃果 「……へ?」

318: 2016/06/28(火) 00:15:05.20 ID:CME4loqW.net
穂乃果は自分の腹部を見た。
黒く禍々しいオーラを放つ槍のような形をしたものが、腹部を貫通している。
血が出ていないことから、物理的に刺されたものでは無いことは分かった。

しかし、自分の生気が、その槍に徐々に吸い取られていくのも感じていた。


穂乃果 「ひぇ…な…なぁにこりぇ……」

海未 「穂乃果……穂乃果ッッ!!」

ことり 「穂乃果ちゃぁぁぁんっっ!!!」

絵里 「そんな…嘘………でしょ……?」


プセウドス 「何もかも貴様のせいだ小娘。貴様がいなくなれば、他の8人は支えを失い、総崩れだ。手間もかからず、合理的だ。」


にこ 「……ッ! ふっざけんなぁぁぁっ!!」


にこはクレイオーを召喚し、プセウドスに突っ込んだ。
しかし、やはりプセウドスの体に触れることは叶わず、クレイオーは吹き飛ばされた。


プセウドス 「物わかりの悪い人間だ。神には何者も干渉できぬと言ったはずだ…。」


花陽 「そん……な……。」

319: 2016/06/28(火) 00:15:31.17 ID:CME4loqW.net
希 「穂乃果ちゃんっ! ダメや…気をしっかりっ!」

穂乃果 「うぅ………わ…た……し……。」


黒い槍のようなものが抜けると同時に、穂乃果は倒れ、海未の腕の中で、徐々にその体を冷たくしていった。


海未 「穂乃果ぁっ! ダメです…あなたはこんなところでっ……!」


穂乃果の目から、徐々に生気が無くなっていく。もはや焦点は定まっておらず、手も足も、力が入らないのか、だらんと垂れていた。

320: 2016/06/28(火) 00:15:59.70 ID:CME4loqW.net
穂乃果 「……ご……め…………」


穂乃果は目を閉じた。
眠るように静かに。


海未 「………穂乃果…? 嘘…ですよね?」

凛 「うそ……うそだよ……。」

真姫 「こんな…ことって……。」

にこ 「は……? 何…してんのよ…アンタ…?」

希 「何かの間違いや…そうに決まっとる…。」

ことり 「ほ…ほの…あ……あぁ……!」


ことりは声にならない叫びをあげながら、穂乃果の体をゆさり続けた。
……穂乃果は指の1本さえ、動かさなかった。


海未 「穂乃果ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!」

ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー


ーーーーーーー
続く

330: 2016/06/29(水) 00:02:07.27 ID:h0h8XCBv.net
~ベルベットルーム~


穂乃果 「ここは………。」


いつもと変わらない、ステージの舞台裏のような空間。…ベルベットルームだ。


イゴール 「お気づきになられましたか。」

穂乃果 「私……。」

イゴール 「ご心配には及びません。あなたはまだ生きてらっしゃる。」

イゴール 「流石は、プセウドス。その力は本物、極めて強力なものだ。」

イゴール 「しかし…お客人はそれに対抗する力を既に持っている。」

穂乃果 「私が…?」

331: 2016/06/29(水) 00:02:53.04 ID:h0h8XCBv.net
イゴール 「覚えておいでですかな? 私は以前申し上げました。」

イゴール 「築いたコミュニティの力こそ、貴方を真に変えることの出来る力だと…。」

イゴール 「聞こえますかな…数多の声が。」

イゴール 「一つ一つはごく小さな力。しかし確かに、貴方へと向けられている。」

イゴール 「届いておりますかな…?」


穂乃果 「声……。」


イゴールの手の内に、大きな白い光の玉が現れた。
…その光を見つめていると、みんなの思いが、胸に伝わってきた。

332: 2016/06/29(水) 00:03:30.53 ID:h0h8XCBv.net
花陽 『穂乃果先輩…こんなに早くお別れなんて、嫌です…。』

花陽 『私…怯えてばかりで、全然力になれなくて…。』

花陽 「でも…穂乃果先輩と一緒にいたら、そんな自分でも変われる気がしたんです。」

花陽 『お願いします…また、穂乃果先輩と、戦わせてください…。』

333: 2016/06/29(水) 00:03:59.40 ID:h0h8XCBv.net
凛 『穂乃果先輩、何してるにゃ…。』

凛 『穂乃果先輩が言ったんだよ…? 「何かを犠牲にしたらだめだ」って…。』

凛 『それなのに、穂乃果先輩が犠牲になっちゃダメだよ…。』

凛 『…凛ね、穂乃果先輩が似合うって言ってくれたワンピース、この前買ったんだ。』

凛 『お願い…戻ってきてください…。戻って来て、ワンピース着た凛を、見て欲しいにゃ…。』

335: 2016/06/29(水) 00:04:28.05 ID:h0h8XCBv.net
真姫 『…最初は、トマ太郎を頃したシャドウに対する、憎しみだけで戦ってきた。』

真姫 『でも、今は別の理由が出来たみたい。』

真姫 『先輩達と戦うのが、とても楽しくて…。一緒にいる時間が、とても楽しくて…。』

真姫 『こんな時間をくれた穂乃果先輩には、本当に感謝してる…。』

真姫 『……お礼、言いたかったのに。こんなことになるなんて…。』

真姫 『お願い…もう1度、あの時間を…。』

336: 2016/06/29(水) 00:04:56.67 ID:h0h8XCBv.net
希 『穂乃果ちゃん…ウチ、何の力にもなれんの…?』

希 『エリちのことだって、ウチが一番に気付いてあげなくちゃいけないハズやったのに…。』

希 『穂乃果ちゃんは本当に、女神のような人や。ウチの…ウチらの、救いの女神。』

希 『だから今穂乃果ちゃんを失って…ウチはもうどうしようもなくなってしもうたんや。』

希 『お願い…もう一度だけでいいんよ。ウチらを…助けて。』

希 『そしたら今度は、ウチが穂乃果ちゃんを助ける番やから…。』

337: 2016/06/29(水) 00:05:26.02 ID:h0h8XCBv.net
にこ 『アンタに言われたこと…まだ頭に残ってる。』

にこ 『アンタのお陰でまた戦えるようになって…あの2人とも、再会できた。』

にこ 『…あの2人が逝く直前、何を言ったか知ってる?』

にこ 『「あとは任せた」っ…て。』

にこ 『あの2人の願いを叶えるには、アンタの力が必要なの。』

にこ 『お願い…起きて。一緒に…戦って。』

338: 2016/06/29(水) 00:05:53.76 ID:h0h8XCBv.net
ことり 『穂乃果ちゃん…こんなの嫌だよ。』

ことり 『小さい頃からいつも一緒で…離れ離れになることなんて、考えたこともなくって…。』

ことり 『ことりにとって穂乃果ちゃんは欠かせない存在…。それは分かりきってたことだけど。』

ことり 『こんなに大きな存在だったんだって、今更気付いたよ…。』

ことり 『穂乃果ちゃんの為なら…ことりの命だって捧げる…! だからぁっ…!』

ことり 『もう一度…ことりに…あの笑顔を見せてよ…。』

339: 2016/06/29(水) 00:06:20.20 ID:h0h8XCBv.net
海未 『あなたは本当に…勝手な人ですね。』

海未 『絵里先輩も戻って、これからという時に、1人だけ先に倒れて…。』

海未 『あなたは本当に…勝手です…っ!』

海未 『約束…覚えてますか?』

海未 『私まだ、あなたにワガママを聞いてもらえてません…。』

海未 『穂乃果…戻って来なさい。でないと今度こそ…本当に許しませんから…っ!』

340: 2016/06/29(水) 00:06:50.46 ID:h0h8XCBv.net
絵里 『穂乃果…ありがとう。』

絵里 『こんな私を…許してくれて。また一緒に戦おうって、言ってくれて。』

絵里 『感謝しても、し尽くせないわ。』

絵里 『…ねぇ、聞こえてる? みんなの声。』

絵里 『みんな、あなたを必要としている。あなたが戻ってくるのを待ってる…。』

絵里 『私も同じよ、穂乃果。私もあなたを必要としてる。』

絵里 『…また一緒に、戦いたい。』

341: 2016/06/29(水) 00:07:15.57 ID:h0h8XCBv.net
穂乃果 「みんな……。」


…イゴールの手の内にあった光の玉が、徐々に変形していく。
やがてそれは一つのカードとなり、穂乃果の元へとやってきた。


イゴール 「その力は、あなたが旅路の中で育んだ絆の結晶…。」

イゴール 「その力があれば、可能かもしれませんな。“神” に触れることが…。」

穂乃果 「神に触れる…。」

342: 2016/06/29(水) 00:07:52.98 ID:h0h8XCBv.net
ベルベットルームに、奥から光がさした。
その光とともに、沢山の人の歓声が聞こえてくる。


エリザベス 「…オンステージ、でございます。」

イゴール 「契約はついに果たされました…私の役目はこれで終わりです。」


…目の前が白い光に包まれる。
もう、イゴールや、エリザベスの姿は見えない。視界は完全に、“白” に包まれた。


イゴール 「貴方は、最高の客人だった。」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

343: 2016/06/29(水) 00:08:27.55 ID:h0h8XCBv.net
~教会~


海未 「穂乃果っ…穂乃果ぁっ…!」


海未は泣きながら、穂乃果の名前を叫び続けていた。


プセウドス 『愚かだ…神に刃向かう者の末路は、実に惨めだ。』

プセウドス 『安心したまえ。君たちもすぐに、彼女の元へ送り届けてやる。』


プセウドスの手の内に、再び黒紫の光の玉ができはじめる…。8人はもう、それに対抗する気力を失っていた。
光の玉が黒い槍へと形を変え、8人を貫こうとしたその時-

その攻撃を、何者かが防いだ。


真姫 「あ…あれって…!」

希 「エウテルペー…! 穂乃果ちゃんっ!」


攻撃を防いだのは、穂乃果のペルソナ、エウテルペーだった。
8人が穂乃果の方を見ると、穂乃果はうっすらと、目を開けていた。

344: 2016/06/29(水) 00:08:59.68 ID:h0h8XCBv.net
海未 「…! 穂乃果!!」

ことり 「よかった……生きてる…!」

絵里 「穂乃果…!」


穂乃果はゆっくりと立ち上がり、プセウドスの方へと目を体を向けた。


穂乃果 「届いた…みんなの声。」

穂乃果 「みんなの支えがあるから、私は戦える…。みんながいるから…私は何度でも立ち上がれるっ!」


プセウドス 『戯言だ…ッ! 何度立ち上がろうと同じこと! 消えろッ!』


プセウドスがまた、黒い槍で穂乃果を貫こうとした。
しかしそれを、真姫のペルソナ、カリオペイアが両手で掴み、受け止めた。


プセウドス 『何っ…!?』

345: 2016/06/29(水) 00:09:25.84 ID:h0h8XCBv.net
真姫 「もう二度と…失いたくない…! 大切な…“仲間” をっ!」


カリオペイアが掴んでいた槍を、希のペルソナ、ウーラニアーが、剣で切り落とした。


プセウドス 『ぐぅぅっ……!?』

希 「今度はウチらが守る番…。ウチらはもう…逃げないっ!」

穂乃果 「2人とも…。」


海未 「真姫達だけではありません!」

346: 2016/06/29(水) 00:10:02.15 ID:h0h8XCBv.net
海未のペルソナは無数の氷の矢を、プセウドスに向けて放った。
しかしそれらの矢は、プセウドスの波動によって砕かれてしまった。


海未 「たとえ無駄だと言われても…私たちは戦います!」

ことり 「そう! 私たちはただ、前に進む!」


プセウドス 『愚かなことを…私には触れられぬと、言ったはずだッッ!!』


プセウドスの波動で、海未とことりのペルソナは、砕け散ってしまった。


にこ 「それはどうかしら…?」

プセウドス 『何…?』

347: 2016/06/29(水) 00:10:38.08 ID:h0h8XCBv.net
凛 「凛達なら、不可能を可能にできる…!」

花陽 「みんなの思いに、限界は無いんですっ!」

にこ 「二人の願いを…想いを…!! 無駄にはしないっ!!」


3人のペルソナは、プセウドスの元へと向かう。しかし、プセウドスの剣の一振りで、3体のペルソナは砕け散った。

しかし、その3体の影になっていたところから、同じくプセウドスに向かってくる者がいた。
絵里のペルソナ…テルプシコラーだった。
テルプシコラーの槍と、プセウドスの剣で、つばぜり合いとなった。


絵里 「穂乃果が…いえ、みんなが教えてくれた。仲間の力、絆の力…。」

絵里 「どれだけあなたが強くても…あなたが神なのだとしても…!」

絵里 「私たちの絆は、絶対に砕けないっ!」


…ついに、テルプシコラーが押し勝ち、プセウドスの剣はバラバラに砕けた。


プセウドス 『何ぃっっ!?』

348: 2016/06/29(水) 00:11:02.02 ID:h0h8XCBv.net
プセウドス 『馬鹿なっ…神には何者も干渉できぬはずっ!』

絵里 「喰らいなさいっっ!!!」


テルプシコラーは、そのまま槍でプセウドスを突こうとしたが、プセウドスはそれを素手で受け止めた。
そしてそのまま、テルプシコラーを投げ飛ばした。


絵里 「ぐぅぅっ……!!」

穂乃果 「絵里先輩っ!」

絵里 「平気よ…あなたに比べれば、どうってことないわ。」

穂乃果 「絵里先輩…。」

349: 2016/06/29(水) 00:11:30.08 ID:h0h8XCBv.net
穂乃果の目から、自然と涙が溢れ出ていた。
もう…みんな、1人じゃない。

今なら…出来る。みんなの思いを、一つに。


穂乃果は両手を大きく広げた。すると、穂乃果の背に、穂乃果の身長の4倍はあるであろう、巨大な魔法陣が現れた。


穂乃果 「みんな…力を貸して。」


8人は顔を見合わせ、頷いた。
9人の体からペルソナが引き抜かれ、それらは光の玉となった。
9つの光の玉は、魔法陣に均等に並んだ。
そしてそれらは中央に集まり、一つのカードへと形を変えた。そのカードは、眩い光を放ち、プセウドスの目を眩ませた。


穂乃果 「………いくよっ!」


9人 「「「「「「「「「ペルソナッ!」」」」」」」」」カッ!!!!!!!!

350: 2016/06/29(水) 00:12:24.19 ID:h0h8XCBv.net
現れたのは、巨大な剣を携えた、女神だった。全身から眩い黄金の光を放ち、そのペルソナの波動で、プセウドスは大きく吹き飛ばされた。


アフロディーテ 『我は汝…汝は我。我、真の絆を見出したり…。』

アフロディーテ 『我、愛の女神…アフロディーテなりっ…!』


プセウドス 『アフロディーテ…? 何を出しても…同じことだっ!!!』


プセウドスは、再び黒紫の光の玉を、手の内に生成した。そして、それは槍ではなく、アフロディーテと同じような、巨大な剣となった。


穂乃果 「お願い…アフロディーテッ!」


プセウドスとアフロディーテの剣が、ぶつかった。アフロディーテの剣から溢れ出る光は、プセウドスの剣を光の粒に変え、浄化していった。


プセウドス 『こ…これはっ…!?』

351: 2016/06/29(水) 00:13:05.43 ID:h0h8XCBv.net
絵里 「今よ、穂乃果っ!」

穂乃果 「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」


アフロディーテは、剣をプセウドスの腹部に突き刺した。そしてそのまま上へ上へと押し上げ、シャドウの世界へと繋がる門の中へと、プセウドスを押し込めた。


プセウドス 『ぐはぁっ……!?』


9人 「「「「「「「「「いっけぇぇぇっ!!」」」」」」」」」


剣先から放たれた、レーザービームのような光は、プセウドスを貫き、そのままシャドウの世界へと伸びていった。


プセウドス 『馬鹿な…っ! 人間風情が…この私をっ…!!!?』


…そしてプセウドスは、シャドウの世界ごと光の粒となり、消えていった。

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ーーーー
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353: 2016/06/29(水) 00:13:37.66 ID:h0h8XCBv.net
シャドウの世界とこちらを繋ぐ門は、光の粒となり、教会内に降り注いだ。
アフロディーテは再び9つの光の玉に戻り、9人の体に戻っていった。


海未 「……やったの、ですか…?」

ことり 「うん…やったんだよ…私たち。」

絵里 「穂乃果……。」

穂乃果 「絵里先輩…みんな……!」

凛 「やったにゃぁぁっ!!!」


9人は、歓喜の渦に包まれた。
…しかしそれを、よく思わない者がいた。


アリス 「随分派手にやってくれたねぇ。」

穂乃果 「アリスちゃん…。」


9人はアリスの方を向き、身構えた。

354: 2016/06/29(水) 00:14:08.28 ID:h0h8XCBv.net
アリス 「やめてやめて。私はもう何もしないよ。」

アリス 「プセウドスも…私の世界も消えちゃったし、もう私には何も出来ないよ。」

アリス 「でも…これで終わったわけじゃない。」


穂乃果 「えっ…?」


アリス 「私はまた、私だけのシャドウの世界を作る。」

絵里 「私だけの……?」

アリス 「この地球に国が幾つもあるように、シャドウの世界は幾つも存在する。」

アリス 「つまり、この世からシャドウが完全に消えた訳では無い。」

アリス 「プセウドスも、あくまで“私の世界” での主でしかない。」

355: 2016/06/29(水) 00:14:45.36 ID:h0h8XCBv.net
アリス 「…もし私が、また世界を作り上げることが出来たら…」

アリス 「その時はまた、戦ってくれる?」


アリスは穂乃果に問いかけた。その目は、とても純粋なものだった。


穂乃果 「…もうごめんかな。」

アリス 「ふふっ。まぁ、そうだよね。」

アリス 「でも…穂乃果ちゃん達がなんと言おうと、私はまた来るよ。」

アリス 「今回の借りは、絶対に返すから。」


アリスは、シャドウの世界の者とは思えない、優しい笑みを見せた。
そしてアリスは、徐々にその姿を消していった。


穂乃果 「…待って!」

357: 2016/06/29(水) 00:15:13.87 ID:h0h8XCBv.net
アリス 「何?」

穂乃果 「お別れする前に、一つだけ聞きたいことがあるの。」

アリス 「聞きたいこと?」


穂乃果 「どうして…私たちの学校だったの?」

穂乃果 「どうして音ノ木坂だけを襲わせたの…?」


アリス 「…なぁんだ、そんなことか。」

穂乃果 「そんなこと…?」

358: 2016/06/29(水) 00:15:42.43 ID:h0h8XCBv.net
アリス 「あなたがいたからだよ。穂乃果ちゃん。」

穂乃果 「私が…?」

アリス 「実際、襲う場所…人質にとる場所なんてどこでもよかった。」

アリス 「でも、襲う場所を探してる時、あなたを見つけた。」

アリス 「私の世界のシャドウは、嘘に宿る存在…。」

アリス 「穂乃果ちゃんは本当に眩しい存在だった。自分に決して嘘をつかず、自分を信じて生きていた。」

アリス 「そう、私のシャドウが、付け入るスキもない位。」

アリス 「その時思ったんだ。この人と戦いたいって。」

アリス 「だからあなたに力をさずけた…。ペルソナの力をね。」

359: 2016/06/29(水) 00:16:11.62 ID:h0h8XCBv.net
アリス 「…これが、全ての真実。満足した?」

穂乃果 「………。」

アリス 「穂乃果ちゃんには、ずっとそのままでいて欲しいな。」

穂乃果 「えっ?」

アリス 「これからも…今のように、自分を信じて生きて欲しい。」


アリスは、穂乃果の後ろにいた8人に目を向けた。


アリス 「…もちろん、みんなもね。」

希 「アリスちゃん…。」

360: 2016/06/29(水) 00:16:39.96 ID:h0h8XCBv.net
アリス 「さて…そろそろ行かなきゃ。こっちの世界の空気は、やっぱり合わないや。」

穂乃果 「アリスちゃん…。」

アリス 「なんで寂しそうな顔してるの? 私はあなた達の敵なのに。」

アリス 「…じゃあね、みんな。」


アリスは徐々にその姿を消し、遂には完全に見えなくなってしまった。


穂乃果 「……ありがとう、アリスちゃん。」

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361: 2016/06/29(水) 00:17:13.88 ID:h0h8XCBv.net
~数日後 通学路~


絵里 「おーい!」


穂乃果が海未とことりと登校していると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。


海未 「絵里先輩、おはようございます。」


シャドウの一件も解決し、メンバーはそれぞれの家へと帰り、寮には誰にもいなくなった。そういうこともあり、メンバーが揃って登校することは少なくなってきた。


穂乃果 「絵里先輩と登校するなんて、何日ぶりだろうなぁ…。」

ことり 「同じ寮の時でも、私たちより早く学校に行っちゃってたから、なかなか一緒になれなかったもんね。」


4人は会話を楽しみながら、学校へと向かった。…すると、絵里が突然足を止めた。


穂乃果 「…絵里先輩?」

362: 2016/06/29(水) 00:17:46.96 ID:h0h8XCBv.net
海未 「どうしたのですか? 忘れ物でも?」

絵里 「いえ…その…。」


絵里はしばらく言葉を探しているかのような素振りを見せた。
そして、絵里は3人に向かって、頭を下げた。


絵里 「ごめんなさい! あなた達を…騙すようなことをしてしまって…。」

絵里 「謝って、済むことではないけど…。」

ことり 「絵里先輩…。」

363: 2016/06/29(水) 00:18:16.52 ID:h0h8XCBv.net
3人は顔を合わせると、揃って笑い出した。


穂乃果 「何のことですか?」

海未 「全く心当たりがないですね。」

ことり 「何のことだかさっぱりです。」


絵里 「……!」


絵里は目に涙を浮かべたが、零れる前に手で涙を拭った。


絵里 「全く……嘘つきなんだから…っ!」


絵里は3人に駆け寄った。
空は快晴、夏の暑さは特に酷くなっているが、絵里が3人の元を離れることは無かった。

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364: 2016/06/29(水) 00:18:42.66 ID:h0h8XCBv.net
~エピローグ~


…人気のない教会。窓ガラスは既にいくつか割れており、天井も一部崩れていた。
祭壇の上には、教会ではまず見られない、寝台のようなものが2つあった。


?? 「こんな教会あったんだ…。近くに住んでたのに、全然知らなかった。」


長髪の少女は、1人でその教会にいた。
少女は引越しを明日に控えていた。引越し前夜に街を散歩していたところ、この教会を見つけたのだ。


?? 「なんだろ…あれ。」


少女が寝台に近付くと、寝台の傍に、拳銃のようなものが2つ落ちていることに気がついた。


?? 「これ本物…? いや、弾は入ってないし、そもそも本物なわけないか…。」

365: 2016/06/29(水) 00:19:04.97 ID:h0h8XCBv.net
その拳銃のようなものには、『PERSONA』という刻印が刻まれていた。


?? 「ペルソナ…か。カッコいい…かも。」


少女は辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、持っていた手提げ鞄に、2つの拳銃のようなものをしまった。


?? 「銃刀法違反とか…ならないよね…?」

?? 「今日は早く寝なきゃだし…そろそろ帰ろ。」


少女は教会をあとにした。
少女の持ち出した拳銃が、災厄そのものであると、その時の少女に知る由はなかった。

ーーーーーーー

~終~

366: 2016/06/29(水) 00:21:38.00 ID:h0h8XCBv.net
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。これにて完結です。
途中で1度エタってしまい、本当に申し訳ありませんでした。
長編を書くのは今回が初めてのことでしたが、いかがでしたでしょうか? 今後短編は書く予定ですが、長編は書くかどうか分からないです

最後に改めて
読んでいただき、ありがとうございました
よろしければ、今後の参考とさせていただきますので、感想等よろしくお願いします

引用元: 【長編SS】穂乃果 「ペルソナッ!」