1: 2013/12/20(金) 01:11:55.37 ID:qyHpfbev0
米花町 ───

克巳「ったくゥ~……」

克巳「母さんへの誕生日プレゼントくらい、自分で選べばいいだろ?」

克巳「二十過ぎた男と五十過ぎた男が並んでても絵にならないぜ……親父」

独歩「つべこべ言うねェ。たまには親孝行したってバチは当たらねェって」

克巳「しかも……なんでわざわざ米花町まで来たんだい?」

克巳「プレゼント買うだけなら、近くにもデパートがあるだろうに」

独歩「どこで買おうが俺の自由だろうが」

克巳「とかなんとかいって……」

克巳「万が一にも、プレゼント買ってるところを弟子に見られたくないからだろ?」

独歩「口の減らねェ息子だ……」フンッ…

独歩「──お?」
8: 2013/12/20(金) 01:16:11.07 ID:qyHpfbev0
蘭「もう……放して下さい!」

チンピラ「いいじゃねェかよ、なァ」ガシッ

チンピラ「茶の一杯や二杯、付き合ってくれたっていいだろォ?」

蘭「…………」



独歩「だれも助けようとしねェ……。世知辛い世の中になったもんだぜ」

克巳「手助けするかい?」

独歩「イヤ……必要ねェだろ。あの姉ちゃん、かなりヤルぜ」

10: 2013/12/20(金) 01:19:39.86 ID:qyHpfbev0
蘭「アアアアア……!」コォォ…

チンピラ「?」

ビュアッ!

次の瞬間、蘭の足刀がチンピラの顔面に寸止めされていた。

チンピラ「ヒ……ッ!」

蘭「まだ絡んでくるっていうなら……今度は容赦しないわよ!」

チンピラ「ひっ、ひえぇ~っ!」タタタッ…



独歩「ヒュウ~、ほらな」

克巳「みごとな上段足刀だ。親父よりキレがいいんじゃない?」

独歩「ま、俺なら当ててたけどな」

克巳「そしたら、また警察のお世話になっちまうよ……」

12: 2013/12/20(金) 01:22:31.06 ID:qyHpfbev0
独歩「なァ、克巳よ」

克巳「なんだい?」

独歩「ちィと予定変更して、ちょいとナンパといかねェか」ズイッ

克巳「オイオイ、まさか……」

克巳が静止する間もなく、蘭に話しかける独歩。

独歩「よう、姉ちゃん」

蘭「はい?」クルッ

蘭「!」ハッ

蘭(え……ウソ……。この人ってもしかして、神心会の愚地先生じゃない!?)

16: 2013/12/20(金) 01:25:38.31 ID:qyHpfbev0
克巳「親父、なにやってんだよ……」

蘭(あっ、この人は愚地克巳館長!? ウッソ~、どうして私なんかに!?)

蘭も空手道に生きる人間として、愚地独歩と愚地克巳の名は耳にしている。

独歩「なぁ、姉ちゃん」

独歩「さっきの蹴り……みごとだったぜェ。手本にしたいくれェだ」

蘭(さっきの……見られてたんだ)ポッ…

独歩「どうだい、ちょいと話をしたいんだが……時間、もらえるかい?」

蘭(今日はもう帰るだけだったし……まだ夕ご飯までには時間があるし……)

蘭「かまいませんけど……」

独歩「よっしゃ、じゃああっちの喫茶店でお茶でもしようや」

克巳(やれやれ……惚れちまったな、親父)

17: 2013/12/20(金) 01:28:21.43 ID:qyHpfbev0
喫茶店 ───

独歩「ほぉう、関東大会で優勝とは……大したもんだ」

克巳「どうりで、あんな蹴りを放てるワケだ」

蘭「いえ……お二人に比べたら、全然ですよ」

蘭「ところで、お話しというのは……?」

独歩「オウ、単刀直入にいわせてもらうぜ」

独歩「どうだい、神心会(ウチ)でチョット空手をやってみる気はねェか?」

蘭「!」

19: 2013/12/20(金) 01:31:33.10 ID:qyHpfbev0
蘭「神心会に……入門しろってことですか?」

蘭「でも私……部活もあるし、家のこともあるし……これ以上は──」

独歩「なに、今の部活を辞めろとか、毎週道場に通えとかいってるんじゃねェ」

独歩「極端なハナシ、お前さんが来たい時にだけ来てくれりゃいいんだ」

蘭「えぇっ!?」

独歩「俺にこれぐらいのこといわせる価値を、お前さんは持ってる」

蘭(神の拳っていわれる愚地先生が、ここまでいって下さるなんて……)

蘭(でも……)

20: 2013/12/20(金) 01:34:27.64 ID:qyHpfbev0
蘭「申し訳ないんですけど、お金が……」

独歩「こっちからムリいってんだ。銭なんて取らねェよ」

蘭「えっ……!」

独歩「どうだい……?」

克巳「その辺にしとけよ、親父」

克巳「なにも今、この場で決めなきゃならないってこともないだろ?」

独歩「ン……わりィな。年甲斐もなく、ついはしゃいじまった」

23: 2013/12/20(金) 01:37:32.74 ID:qyHpfbev0
克巳「毛利君」

蘭「はい」

克巳「俺もこの人も、空手界じゃ多少は名が知れてる方だと自負してる」

克巳「こと空手に関する眼は、たしかなつもりだ」

蘭(名が知れてるどころか……知らない人なんていないわよ……)

克巳「そして俺も親父も──君の持つ才能に惚れちまった」

克巳「実は今度の日曜日、ウチの本部道場で黒帯研究会があるんだ」

克巳「よかったら、ぜひ来てくれ。これ、名刺」スッ…

蘭「……は、はいっ!」

25: 2013/12/20(金) 01:42:15.59 ID:qyHpfbev0
克巳「それじゃあ、代金は払っておくから」

克巳「足止めしてワルかったね」

独歩「すまなかったな」

蘭「こちらこそ、私なんかのために……ありがとうございます!」



喫茶店を出た二人──

克巳「強引なんだから、親父は……」

独歩「どうだい、あの毛利って姉ちゃん、来ると思うかい?」

克巳「どうだろ……」

克巳「あの年頃の女の子は、俺らとちがって空手以外に沢山やることあるからなァ」

28: 2013/12/20(金) 01:44:14.80 ID:qyHpfbev0
喫茶店に一人残った蘭──

蘭「…………」

蘭(たしかに最近、スランプってわけじゃないけど……)

蘭(なんというか、伸び悩んでたのよね……空手)

蘭(しかも、あの二人が直接私を誘ってくれるなんて……)

蘭(せっかくのチャンスだし……一度おジャマしてみようかな、神心会……)

32: 2013/12/20(金) 01:48:32.42 ID:qyHpfbev0
次の日曜日──

毛利探偵事務所 ───

蘭「コナン君、ちょっと出かけてくるね」

コナン「どこ行くの、蘭姉ちゃん? 今日は部活はないっていってなかった?」

蘭「神心会の本部道場……っていってもコナン君は分からないよね」

蘭「とにかく、今日は空手の稽古だから!」

コナン「行ってらっしゃ~い!」

コナン(神心会っていや……たしか、日本で一番規模の大きい空手団体だよな)

コナン(オイオイ、蘭のヤツ、これ以上強くなる気かよ……)

33: 2013/12/20(金) 01:52:19.61 ID:qyHpfbev0
神心会本部 ───

蘭「こんにちは、克巳先生!」

克巳「!」

克巳「オォ~、毛利君じゃないか!」

克巳(まさか、来てくれるとは……話をしてみるもんだな)

蘭「今日はよろしくお願いします!」

克巳「こちらこそ」

克巳「今日は男ばっかでムサいと思うけど、気楽にやってくれ」

克巳「少なくとも、稽古で女の子に下心を持つようなヤツはいないから」

蘭「はいっ!」

34: 2013/12/20(金) 01:55:31.01 ID:qyHpfbev0
克巳「本日の黒帯研究会は、この毛利君が特別に参加する」

克巳「まだ高校生だが、空手の腕は俺と父のお墨付きだ」

克巳「みんな、よろしく頼む」



「 オ オ オ オ オ オ ス ッ ッ ッ ! ! ! 」



蘭(うわ、すっごい気迫……)ビリビリ…

蘭(それに、末堂選手に寺田選手に、崎村選手……有名な人ばかりじゃない!)

蘭(サインください……なんていったらマズイよね)

蘭(今日は勉強させてもらおうっと)

39: 2013/12/20(金) 01:59:43.92 ID:qyHpfbev0
神心会『黒帯研究会』は、実戦的に空手の研究を行う会である。

克巳「今日は対凶器の研究を行う」

克巳「拳と凶器──もちろん、普通に考えたら凶器の方が強い」

克巳「しかし、凶器を普段から扱いなれている人間など、ほとんどいない」

克巳「いうなれば“日本刀を持った素人”……」

克巳「一方の我々は、拳足を日常のように振るっている」

克巳「いうなれば“斧を持った職人”……」

克巳「日本刀と斧、武器としての性能に特化しているのはもちろん日本刀だが──」

克巳「日本刀を持った素人と、斧を持った職人がもし立ち合ったなら」

克巳「斧を持った職人にも、十分勝ち目がある」

蘭(そうよね……私だって武器を持った相手を倒したことあるもの)

42: 2013/12/20(金) 02:02:42.40 ID:qyHpfbev0
研究会は続き──

克巳「毛利君、せっかく来たんだ。対刃物──挑戦してみるかい?」

蘭「えっ、私がですか!?」

克巳「俺が持っている匕首を蹴り飛ばして、こないだのように俺に足刀を放ってくれ」

蘭「オス……やってみます!」

ザッ……!

蘭(相手は私よりずっと格上……手加減はむしろ失礼に当たっちゃうわ)

蘭(なら……本気で!)

蘭「セイヤァ!」

パキンッ!

鮮やかな足さばきで、克巳の匕首を蹴り飛ばす蘭。

43: 2013/12/20(金) 02:05:28.86 ID:qyHpfbev0
さらに──

ガッ!

足刀を放つが、さすがにこれは克巳の左腕にガードされた。

オォ~……!

克巳(やはりこの娘……ホンモノだ)

克巳(空手がウマイってだけじゃない……実戦を体験してる動きだ……!)

克巳「よかったよ、毛利君」

蘭「オス……こちらこそ、ありがとうございました!」

46: 2013/12/20(金) 02:08:54.63 ID:qyHpfbev0
研究会が終わり──

蘭「今日はありがとうございました、克巳先生」

克巳「我々こそ、勉強させてもらったよ」

克巳「今日は男ばかりだったけど、ウチには女子部もあるし、また気軽に寄ってくれよ」

克巳「君が受付で名前をいえば、稽古に参加できるようにしとくから」

蘭「はい!」

克巳「ところで……君はむやみにケンカをするタイプには見えないが──」

克巳「ずいぶん“実戦慣れ”しているように見受けられる」

克巳「どうしてだ?」

47: 2013/12/20(金) 02:13:16.03 ID:qyHpfbev0
蘭「実は……父が探偵をやってまして……」

克巳(父親が、探偵……? 毛利……)ハッ

克巳「そうか、君のお父さんはあの有名な“眠りの小五郎”かッ!」

蘭「はい」

克巳「ナルホド……」

克巳「お父さんの仕事を手伝う時に、犯人と格闘することもあるってことか」

蘭「ええ、そうなんです」

克巳(どうりでウチの門下生と比べても、凶器や実戦に慣れているワケだ)

克巳(それに、毛利小五郎も柔道の達人と聞いたことがある……)

克巳(この娘もまた、俺や範馬刃牙と同じく“強き父を持つ子”だってことか)

こうして、蘭の神心会空手体験は終わった。

48: 2013/12/20(金) 02:18:31.32 ID:qyHpfbev0
それからというもの──

井上「強いわね~、毛利さん。とてもかなわないわ」

蘭「いえ、井上先輩こそ……すごい回し蹴りでした!」



蘭「あの、サイン……いただけないでしょうか?」

末堂「え、かまわねェけど……」

加藤「へっ、有名人は辛いなァ、末堂?」



独歩「どれ……ちょいと稽古をつけてやろうか」

蘭「いいんですか!?」

蘭は時間の許す限り、神心会の門をくぐった。

49: 2013/12/20(金) 02:21:26.49 ID:qyHpfbev0
そして、稽古の成果はというと──

犯人「くそっ、こうなったらボウガンで……!」サッ

コナン「(やべえ!)蘭姉ちゃん、避けてっ!」

ビュッ!

蘭「かわすまでもないわ!」ブオンッ

パシィッ!

コナン(ボウガンの矢を、弾き飛ばしただと!?)

犯人「バ、バカな!?」

蘭「愚地先生直伝……廻し受け、よ」スゥッ…

蘭「デヤァッ!」ビュオッ

バキィッ!

犯人「ぐええっ……!」ドサッ

コナン(蘭のヤツ、この数週間でとてつもなく強くなってやがる……!)

50: 2013/12/20(金) 02:24:29.46 ID:qyHpfbev0
そんなある日の夜──

神心会本部 ───

蘭(忘れ物しちゃった……)

蘭「えぇ~と、女子部の道場はどこだったっけ……」キョロキョロ…

パンッ……  パンッ……  パンッ……

蘭「なにかしら、この音?」

パンッ! パンッ! パンッ!

蘭(この部屋から聞こえてくる……)

ガチャッ……

53: 2013/12/20(金) 02:28:30.75 ID:qyHpfbev0
ドアを開けると、一人で黙々と左拳を振るう克巳の姿があった。

蘭「克巳先生!」

克巳「お、毛利君か」

蘭「すみません、稽古のおジャマをしてしまって……」

克巳「ハハ、かまわないよ。おおかた、この“パンッ”て音が気になったんだろう?」

克巳「名探偵の娘さんとしては、気になるのは当然だよな」

蘭「名探偵だなんて……。でも、いったいなんの音だったんですか?」

克巳「ン~……ま、探偵に犯行を突き止められた犯人は、白状する義務がある、か」

克巳「あれは、俺の拳のスピードが音の壁を超えたことによって生じた破裂音だ」

蘭「拳が……音の壁を……!?」

克巳「俺の必殺技“マッハ突き”だ」

蘭「マッハ突き……!?」

55: 2013/12/20(金) 02:32:54.75 ID:qyHpfbev0
克巳「正拳突きの際に使用する関節を、同時加速させることで」

克巳「拳は音速を生み出すことができる」

克巳「さらに、想像(イメージ)で関節の数を増やすことで、速度はさらにハネ上がる」

蘭(そんなことができるなんて……)

蘭「でも、音速を超えた正拳なんて、拳もただじゃ済まないんじゃ──」

克巳「おっしゃるとおり。さすがの名推理だ」

蘭「!」ハッ

蘭「克巳先生のなくなった右腕って、もしかして……」

克巳「そう……。“俺だけのマッハ突き”を完成させた代償に肉が弾け飛び──」

克巳「ダチにプレゼントしちまった」

蘭「…………」ゴクッ…

58: 2013/12/20(金) 02:36:44.87 ID:qyHpfbev0
克巳「おっと……しゃべりすぎた」

克巳「武道家ってのは結局自分が一番大事だからな……これ以上はナイショにしとこう」

克巳「あとついでに、これは師匠としていっておくが」

克巳「マッハ突きは、自分にも危険な技だ」

克巳「もし、到達できたとしても……使用(つか)うのはやめておきなさい」

克巳「君のような、未来ある女学生ならなおさらだ」

蘭「は……はいっ!」

蘭「どうもありがとうございましたっ!」

バタンッ……

克巳(あの娘なら……もしかすると、もしかするかもな)

59: 2013/12/20(金) 02:39:36.09 ID:qyHpfbev0
帰り道──

蘭「セイッ!」

ブンッ!

蘭(この拳が音より速く……? とても信じられない……)

蘭(仮に打てたとしても、私の手が使いものにならなくなる……)

蘭(私には克巳先生のように、体のどこかを失うなんて覚悟、とてもない……)

蘭(でも……なんだろ)

蘭(私……マッハ突きを……目指してみたくなってる……)

蘭(どうしちゃったんだろ、私……)

61: 2013/12/20(金) 02:43:01.35 ID:qyHpfbev0
毛利探偵事務所 ───

蘭「ねえ、コナン君」

コナン「なぁに、蘭姉ちゃん?」

蘭「空手の正拳突きが、音より速くなるなんて可能だと思う?」

コナン「できるわけないじゃない、そんなの」

コナン「だって、格闘技で一番速いとされるボクサーのパンチだって」

コナン「せいぜい時速30km程度なんだよ?」

コナン「一方、音は時速1225km。40倍もちがうんだから」

蘭「そうよねえ……」

63: 2013/12/20(金) 02:45:56.51 ID:qyHpfbev0
蘭「じゃあ……コナン君」

コナン「なに?」

蘭「関節をイメージで増やすなんてこと、できると思う?」

コナン「できるわけないよ」

コナン「さっきからなにいってるんだよ、蘭姉ちゃん」

蘭「ご、ごめん……きっと私、疲れてるのね」

コナン(オイオイ、音より速い拳とか、関節を増やすとか、いきなりどうしたんだ?)

コナン(大丈夫か、蘭のヤツ……。空手のやりすぎなんじゃねえか?)

64: 2013/12/20(金) 02:48:37.84 ID:qyHpfbev0
蘭(コナン君のいうとおりだわ……できるわけないよね)

蘭(新一に聞いてもきっと──)



新一『拳が音速を? 無理に決まってんだろ! 漫画の読みすぎだっての!』

新一『バーロ……イメージで関節を増やすなんて、できるわけねーだろ?』



蘭(──って、アイツのことだからバカにするに決まってるわ)

蘭(なんか……想像しただけで腹立ってきたわ)ムカッ…

65: 2013/12/20(金) 02:51:32.27 ID:qyHpfbev0
蘭(自分だって、推理小説の読みすぎじゃないのよ!)

蘭(あの推理オタク、どこをほっつき歩いてるんだか……)

蘭「!」ハッ

蘭(今、私……想像で勝手に新一に話をさせて、想像に勝手に怒って……)

蘭(もしかして想像って、ものすごい力を秘めてるんじゃ……)

蘭(もし……この想像力を高めることができたら──)

蘭(私にもマッハ突き、できるかもしれない!)

67: 2013/12/20(金) 02:55:41.51 ID:qyHpfbev0
この日から、蘭はイメージで自分の関節を増やす稽古に没頭した。

蘭(関節、関節、関節……)

小五郎「蘭、ビール買ってきてくれよぉ~……なくなっちまったよぉ~……」ウイ~…

蘭「ジャマしないでよ、お父さん! 今いいところだったのに!」

小五郎「な、なんだぁ!?」ビクッ



蘭(関節、関節、関節……)

園子「ちょっと蘭、どうしたのよ。さっきからボケッとして」

蘭「あ、ゴメン、園子……。ちょっと関節をね……」

園子「へ?」



そして──

68: 2013/12/20(金) 02:59:53.99 ID:qyHpfbev0
パンッ!

蘭「う、打てた……」シュウウ…

蘭(今の音──あの夜に聞いた音と同じ!)

蘭(私の正拳が、ついに音の壁を超えたんだわ!)

蘭(そして同時に、“さらに威力を上げる方法”も分かっちゃった……)

蘭(でも、もしそれをやったら──)

蘭(きっと私の腕は……克巳先生のように……)

蘭(もう、マッハ突きのことは忘れた方がいいのかも……)

70: 2013/12/20(金) 03:02:39.65 ID:qyHpfbev0
しかし、武の神様は、飛躍を遂げる彼女に更なるプレゼントを与えた。

蘭(今日はもう寝なくちゃ……疲れが明日に残っちゃう!)

蘭(それじゃ歯を磨いて……)

歯を磨くために、洗面台の前に立つ蘭。

蘭「!」ハッ

蘭(見つけた……)

蘭(私の……私だけのマッハ!!!)


──────

────

──

74: 2013/12/20(金) 03:07:22.60 ID:qyHpfbev0
数日後、神心会での稽古を終えた蘭は、克巳に駅まで送ってもらっていた。

蘭「すみません……。私、オバケとかが苦手で……」

蘭「夜道を一人で歩くのが怖いんです……」

克巳「ハハハ、かまわないよ。いくら空手でも幽霊は倒せないもんな」

克巳「じゃあ、俺はこれで」

蘭「ありがとうございました」ペコッ…

ワァァ……! キャァァ……!

蘭「悲鳴……?」

克巳「この駅で、なにかあったようだな」

76: 2013/12/20(金) 03:10:28.58 ID:qyHpfbev0
人々の悲鳴の原因は、駅内で暴れる凶悪犯であった。

凶悪犯「どりゃあっ!」ブオンッ

バキィッ!

高木「うぐっ……!」ドサッ

小五郎「ぐおっ!」ドザァッ

コナン「高木刑事! おっちゃん!」

コナン(ちくしょう、なんてヤツだ!)

コナン(高木刑事とおっちゃんを倒して)

コナン(俺の麻酔針やサッカーボールまでかわしちまうなんて!)

コナン(もし蘭がいたとしても……この犯人は止められねえかもしれねえ!)

79: 2013/12/20(金) 03:14:18.11 ID:qyHpfbev0
克巳(なんだアイツは……)

克巳(かつての五人の氏刑囚にこそ及ばないが──かなりの戦力だ)

克巳(今この場でヤツを制圧できるのは、俺しかいないだろう……)

克巳「毛利君、君は下がって──」

蘭「あの……私にやらせて下さい!」

克巳「しかし……」

蘭「お願いしますっ!」

克巳「……ワカった。毛利君、君に任せる!」



凶悪犯「次はあの小娘だァ!」ドドドッ

蘭「アアアアア……」コォォ…

コナン(蘭!? ──そうか、この駅の近くには神心会本部がある!)

コナン「蘭、逃げろッ! そいつはお前でも敵わねえ!」

80: 2013/12/20(金) 03:17:43.84 ID:qyHpfbev0
凶悪犯「シイッッッ!」ブオッ

蘭「くっ!」サッ

凶悪犯の鋭いパンチを、間一髪でかわす蘭。



克巳(どうする気だ……ッッ)

克巳(拳か!? 足か!? いや、どちらでもない!?)

克巳(毛利君が髪を振りかざした!?)

克巳(ま……まさか……ッッ)

83: 2013/12/20(金) 03:21:46.66 ID:qyHpfbev0
蘭(突きは当てるのではなく、引き戻す瞬間がもっとも速い……)

蘭(その時に生じる衝撃波を使った一撃こそが──)

蘭(私が到達した極意……“当てない打撃”)

蘭(でも、もし私がこの技を放ったら、きっと私の腕は骨ごと砕け散ってしまう……)

蘭(なら──腕や体で打たなければいいの!)

蘭(私のヘアスタイル……まるでツノのような形になっている部分……)

蘭(“ここ”を使う!)

蘭(この部分に骨があると、関節があると、ツノがあるとイメージして……)

蘭(“当てない打撃”を放つ!)

蘭(これが私だけが掴んだ──私だけのマッハ!!!)ブンッ



パァァァンッ!!!

87: 2013/12/20(金) 03:25:33.48 ID:qyHpfbev0
凶悪犯「ぐはァ……ッッ」

ドザァッ……!

コナン「す、すげぇ……あの凶悪犯を一撃で……!」

克巳「おみごと……ッッ!」

しかし、蘭の髪型のツノ状になっている部分は、今の一撃で吹き飛んでしまっていた。



蘭(そうだよね……。頭にツノが生えてるわけないよね……)

蘭(魔法が……解けたんだわ)





                                   < 完 >

89: 2013/12/20(金) 03:26:31.60 ID:IFrgtlsL0

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引用元: 毛利蘭「マッハ突き……!?」