403: 2018/03/28(水) 22:10:49.27 ID:Q8yPIu9co

「よっ! 今日もナイスなお尻だね、しまむー!」


 事務所の廊下、プロジェクトルームに向かう廊下。
 後ろから声が聞こえたと思ったら、


「ひゃあっ!?」


 お尻を……こう、ペロンッ、って感じで撫でられちゃいました。
 突然そんな事をされたら、ビックリするじゃないですか!


「も、もう! 未央ちゃん!?」
「あっはは、ごめんごめん!」


 笑いながら、未央ちゃんは片手を顔の前にやり、頭を下げました。
 その、とっても元気な笑顔を見て、怒る気が失せちゃいました。
 ……って、こんなだから、お尻撫でられちゃうのかなぁ。


「前を見たら、桃が歩いてたものだから、つい!」
「も、桃って……未央ちゃ~ん!?」
「あはははは!」
「謝る気あるんですか……ふふふっ!」


 未央ちゃんは、私が所属するニュージェネレーションズのリーダーです。
 とっても明るくて、素直で、いつも元気いっぱい!
 一緒に居ると、こっちまで元気になっちゃいます♪


「――おはよ、未央、卯月」
「ひょおわあっ!?」


 そして、もう一人のメンバーが、とってもクールな凛ちゃんです。


「しっ、しぶりん!? なんで私のお尻触ったの!?」
「卯月がやられてるの見たから、お返し」


 凛ちゃんは、歌もうまくて、シンデレラプロジェクトだけじゃなく、
美城専務が選んだ、プロジェクトクローネにも参加してるんですよ!
 とっても綺麗で、大人びてて、すっごくカッコイイんです!


「あっ、そうだ! 二人共、おはようございます♪」
「……遅くない?」


 そして、そんな凄い二人と一緒に居るのが、私、島村卯月。
 何の取り柄もない、アイドルに憧れてた、普通の女の子。
 だけど、笑顔だけは自信があります!
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(10) (電撃コミックスEX)
404: 2018/03/28(水) 22:29:35.25 ID:Q8yPIu9co

「って、私も言うの忘れてた! おはよ、しまむー、しぶりん!」


 明るく笑いながら、未央ちゃんが言いました。
 とってもキラキラしてる、素敵な笑顔で!


「……お尻を撫でる前に、挨拶が先じゃない?」


 呆れたようにため息をつきながら、凛ちゃんが言いました。
 その仕草がとっても大人びてて、年下だとは思えないです!


「そう? それじゃ、今度から、よろしくお願いします、って言いながら撫でるね!」
「あ、あはははは……!」
「そういう意味じゃないから……っていうか、ふふっ、何それ?」


 とっても素敵な二人に挟まれている、私。
 色んな事があって、泣いて、ぶつかって……それでも、今、こうして一緒にいる。
 それって、とっても凄い事だと思うんです!
 私達自身が頑張ったのもありますけど――


「良い、お尻です」
「……えっと、プロデューサーさんの真似、ですか?」
「島村さん、貴女の長所は、笑顔と、お尻です」
「え、笑顔と……お尻ですかぁ!?」
「はい。咲き誇る薔薇の様な笑顔と、触り心地が良いお尻です」


 プロデューサーさんの声を真似ている、んですよね。
 未央ちゃん、頑張って低い声を出してますもん。
 あ、声を出さずに……え? そう聞けって?


「え、えっと……その心は?」
「ズバリ! 長所はローズヒップでしょーう!」
「――っぶふうっ!?」
「り、凛ちゃん!?」


 凛ちゃん、さっきから黙ってると思ったら、笑いをこらえてたんですか!?
 今も、口とお腹を抑えて震えてますけど……それ、こらえられてませんよ!?



「――皆さん、おはようございます」



 そんな私達に、とっても低い声がかけられました。
 この声は――


「おっはよー、プロデューサー!」
「プロデューサーさん、おはようございます♪」
「おはよう、プロデューサー」


 私達に魔法をかけてくれた、プロデューサーさん!

405: 2018/03/28(水) 22:43:28.95 ID:Q8yPIu9co

「今ね、しまむーの話をしてたんだよ!」
「島村さんの……ですか?」
「みっ、未央ちゃん!?」


 何を言うつもりですか!?


「しまむーってさ、良いお尻してると思わない?」
「もう、未央ちゃ~ん!?」
「未央、調子に乗りすぎ」


 なんで言っちゃうんですかぁ!?
 そんな事言ったら、プロデューサーさんが困っちゃいます!
 それに、は、恥ずかしいじゃないですか!


「は……はぁ」


 プロデューサーさんが、右手を首筋にやって困ってます。
 そして、私の方を見た――


 ――から、


「へ、へうぅ!?」


 お尻を抑えて、凛ちゃんの後ろに隠れました。


「プロデューサーは見なくていいから」
「すっ、すみません……つい、流れで」
「未央ちゃん! もう、恥ずかしいじゃないですかぁ!」
「ごめんごめん、しまむー!」


 謝ってくれたけど……ごめんね、未央ちゃん。
 お尻を服越しに見られても、そんなに恥ずかしくないんです。
 だって、アイドルをやってたら、そういうのって普通ですもん。


 ――だけど、


「あうぅ……」
「す、すみません……島村さん」


 こうすると、プロデューサーさんは、私を意識してくれるんです。
 憧れてたアイドルじゃない。
 普通の、女の子として。

406: 2018/03/28(水) 22:59:29.88 ID:Q8yPIu9co

「い、良いんです……すぅ、はぁ」


 深呼吸をして、呼吸を整えるフリをします。
 だって、そうしないと不自然……普通じゃないから。


「――はいっ! もう、大丈夫です♪」


 プロデューサーさんに、私の、精一杯の笑顔を向けます。
 だって、プロデューサーさんは、笑顔がとっても好きだから!
 私の笑顔、とっても褒めてくれるんですよ!


「良い、笑顔です」
「……えへへっ!」


 ……こうやって!
 それに、困らせちゃうのは駄目ですもんね。
 プロデューサーさんには、いつまでも、私の事を見てて欲しいですから!
 そのためなら、島村卯月、頑張ります♪


 ――だから、


「ふーん。プロデューサーって、お尻が好きなんだ」
「しっ、渋谷さん!? ご、誤解です!」
「……ふふっ、冗談。ちょっと、からかいたくなっただけ」


 ――二人にも、


「ああっ! やっぱり、プロデューサーも男――狼なのねっ!」
「本田さんまで……もう、許してください」
「「――あはははっ!」」


 ――協力して貰っちゃいます。


「……」
「? 島村さん? どうか、されましたか?」


 あっ、いけない!


「えっ? 私が、どうかしましたか?」
「あっ、いえ……何でも、ありません」


 笑顔、笑顔♪

407: 2018/03/28(水) 23:23:39.50 ID:Q8yPIu9co

「さあさあ、プロジェクトルームに急ごうではないか!」
「……そのテンション、いつまで続ける気?」


 私、アイドルになるのが夢だったんです。
 一緒に頑張ってきた子達が居なくなっていく中、頑張ってきて……。
 そして、あの日、プロデューサーさんがやって来て……魔法をかけてくれたんです!
 普通の女の子だった私を――キラキラした、アイドルにする魔法を!


「~♪」


 だからね、本当は、私の夢はもう叶ったんです。
 今は、夢の続き……プロデューサーさんの、魔法のおかげです♪
 そうじゃなかったら、多分……ううん、きっと――


 ――二人とは、一緒に居ないと思います。


「おっ、しまむー、なんだかご機嫌だね!」
「うん。卯月が笑ってると、なんだかこっちまで笑顔になっちゃう」
「えへへっ♪ 笑顔には、自信がありますからっ!」


 プロジェクトクローネに抜擢される位凄い、凛ちゃん。


 お芝居っていう新しい挑戦を見つけられる、未央ちゃん。


 それに比べて、私には、何にもない。


「はい。とても、素敵な笑顔だと思います」
「プロデューサーさん……えへへっ、ぶいっ♪」


 だけど、私も見つけたんです!
 二人には……ううん、誰にも負けたくない、譲れないものが!
 そのためだったら、協力してもらっても、良いですよね?


 ――相談なんか、絶対にしないですけど。


「こんな感じかな? 良い、笑顔です」
「……さっきは言いそびれたけど、似てないから」


 ねえ、未央ちゃん、凛ちゃん。
 二人が言う、友達、って、そういうものなんですよね?
 私、相談も無しに、どんどん話が進んでいって……ショックだったんですよ?
 だけど、私達は、友達なんですよね?


 ――友達だったら、何も言わなくても応援してくれますよね?

408: 2018/03/28(水) 23:58:01.62 ID:Q8yPIu9co

「~♪」


 楽しい時は一緒に笑って、苦しい時は一緒に頑張って。
 辛い時は一緒に乗り越えて、嬉しい時は一緒に喜んで。


 二人と一緒のグループになった時、そうなると良いな、って思ったんです。
 私が、今まで考えてた友達……そんな仲間になれた、と思ってたんです。


「~♪」


 ――でも、二人の考える友達は違いましたもんね。


 自分が輝くために、自分だけで考えて決める。
 他の二人なんか関係無い、他の二人に相談もしない。


 それが、悪いことだとは言いません。
 でもね、私、馬鹿みたいじゃないですか。


 ――友達なら、何か言ってくれると思ってたんですよ。


 私、あのまま皆がバラバラになっちゃう、置いてかれちゃう、って思ってました。
 だけど、あの日、あの時公園で。
 二人は……私に、友達だ、って言いましたよね。


 ――ああ、二人の考えてる友達と、私の考えてた友達、違ったんだ。


 ……って、わかって……えへへ、お姉ちゃん、ちょっぴり寂しかったです。
 おかしいですよね、ニュージェネレーションズなのに、少ししか違わないのに、
ジェネレーションギャップ、でしょうか?


「~♪」


 だから、二人には内緒です。
 二人がそう思ってるなら、一人の私がそれに合わせるのが普通ですもんね。


「~♪」


 前を歩く、大きな背中を見つめます。
 この人は、私がアイドルとして、頑張っているから、見続けてくれているんです。
 とっても真面目で、誠実で……私を二度もすくい上げてくれた、プロデューサーさん。


 二人と一緒に居れば、プロデューサーさんが見てくれる。
 二人が協力してくれれば、普通の女の子として意識して貰える。
 だから、これからも――友達で居てくださいね。


 きっと、この願いを叶えるのは、もの凄く大変です!
 でも、二人が一緒なら、時間がかかっても叶えられると思うんです!
 応援してくださいね、未央ちゃん、凛ちゃん!


 島村卯月、頑張ります!



おわり

409: 2018/03/29(木) 00:05:25.91 ID:/9LfLzJDO
いいSSです、すごく…
こんな感じでちゃんみおやしぶりんの独白も聞きたいなあ…

引用元: 武内P「クローネの皆さんに挨拶を」