64: 2013/04/25(木) 23:17:34.10 ID:eZVQcSJao
第六夜 見える人


茄子「さて、本日もやってきました、アイドル百物語」

ほたる「最近……なんだか、楽しみです」

小梅「色んな人の話……聞けるのは、楽しい、よね」

茄子「一口に怪談といっても、それぞれに特色がありますからね。地方や、その人の経歴や……」

ほたる「きっと、本当に色んなことがあるんでしょうね……」

小梅「人の数だけ、あるの……かも」

茄子「たとえ同じ経験でも受け取り方によってはまるで違うものに見えるかもしれませんしね」

小梅「う、うん」

ほたる「ところで、今日はどなたに……?」

小梅「き、今日は……片桐早苗さん」

茄子「前職が警察官ということで、その頃の話とも予想できますが?」

小梅「うん……。警察の時の……話。でも、事件の話……とかじゃない」

ほたる「ふむ……」

茄子「どんなお話なのでしょうか。聞いてみましょう。では、どうぞ」


白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

アイドルマスター シンデレラガールズ 白坂小梅 ハロウィンナイトメアVer. 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア
65: 2013/04/25(木) 23:17:59.77 ID:eZVQcSJao
片桐早苗(28)

○一言質問
小梅「一番ぞっとした時って……?」
早苗「すごいとんがってた知り合いが、テレビの中でひらひらの服で子供に笑顔をふりまいてたのを見た時かな」

66: 2013/04/25(木) 23:19:25.46 ID:eZVQcSJao
 はいはーい、小梅ちゃん。
 ラジオ聴いてるよー。怖いねー。

 え?

 うん、まあ、そりゃ、お姉さんも怖いこといろいろ見てるけどね。
 話として聞くのは違うって。

 うんうん。

 で、怪談だっけね。

 うーん。
 やっぱりさ、転職したとはいえ、事件とか事故に関わることを話すのはまずいわけ。
 被害者の人とか遺族にも悪いしね。

 だから、警察の先輩の話をすることにするわ。
 うん。先輩。

 その人は、私よりは一回りくらい上だったかなー。
 あ、男の人。

 それで、現場組の中ではかなり有名な人だった。
 なにしろ、警らの時の検挙実績がとんでもなくてね。

 街を回ったら、必ず一人は挙げてくる、なんて言われてたこともあったくらい。

 それで、その人は自動車警ら隊ってところに配属されてたんだけど……。
 知らないかな?
 たまに警察密着二十四時みたいな番組で出てくるやつ。

 あ、わかる?
 うん、そうそう。パトカーでパトロールするお仕事ね。

67: 2013/04/25(木) 23:20:23.22 ID:eZVQcSJao
 でさ、こういう仕事って、いくら、こいつあやしいなって思って声かけても、そうそうあたらないのよ。

 いや、テレビではうまくいったところをばんばん映すけどね。
 実際は、不審に思っても空ぶりとかってのはよくあるのよ。

 まあ、そもそも声をかけることそのものが目的ってこともあるけどね。
 なにか変だと思ったら、念のためって感じでね。

 でも、いずれにしても、その人みたいに百発百中みたいなことは、普通できないわけ。

 そりゃあね、現場の人間としてみれば、あこがれよ。

 勘なのか経験なのかはわからないけど、とにかくその人の技を盗んでやろうとみんな思ってたわよ。
 少なくともやる気のある奴はね。

 そして、お姉さんはその頃、無闇とやる気だったのだよ。
 ふふん。

 ま、若かったんだけどね。

 自分にも出来るはずだって思い込んで、うん……。
 自分で言うのもなんだけど、がんばったね。

 そもそも、女が自ら隊……これは自動車警ら隊の略称なんだけど……。
 女性が自ら隊に配属されるっていうのは、ほんと最近のことなのよ。

 つまり、普通は男が配属されるところなわけで、女はよっぽど優秀じゃないと配属はされないわけ。
 武道は当然段持ちじゃないとだめだし、運転ももちろん出来ないとだめだし、他の面でもいろいろと、ね。

 ね?
 そんなとこに配属されたお姉さん、どれだけがんばったかわかるでしょ?

68: 2013/04/25(木) 23:21:46.49 ID:eZVQcSJao
 ともあれ、なんとかその人に近づこうとして、まずお姉さんは部署から近づいていったわけね。

 それで、同じ部署に入ってみたら、そのすごさがまたよくわかるのよ。

 だって、他の同僚が見過ごしているところを、ずばっと見つけてくるからさ。
 あたし自身も何度も見ていたはずなのに。

 もうね、これはなんなんだろうと、あきれちゃうくらいだった。

 指名手配犯をほとんど顔も見ずにあの車って言って捕まえちゃったこともあったなあ。
 それに、運転してる当人も知らないのに積まれた覚醒剤を見つけたりもあったわね。

 あ、後半のは、運転してたやつもなにも知らずに運び屋に使われてたって後からの調べでわかったんだけど。
 
 もう、ほんと神業。

 だからさ、あたし、その人と組んでパトロールに出たときに、我慢しきれずに聞いちゃったのよね。

『どうして、そんなに検挙できるんですか』

 って。

69: 2013/04/25(木) 23:22:35.22 ID:eZVQcSJao
『知りたいか?』

 って言うから、もちろんうなずいた。

 そうしたら、

『これを持ってみろ』

 って、なにか渡してくるの。

 見てみたら、お守りみたいだった。
 なんの変哲もない、交通安全のお守り。

 わけわからないけど、とりあえず受け取ってみた。
 もし、からかわれているにしても、まずはのってみないとね。

 それで、パトロールを続けていたらね。


 見たのよ。

70: 2013/04/25(木) 23:23:42.26 ID:eZVQcSJao
 ん……。


 向こうから走ってきた車の助手席に血まみれの女が座って、運転席の男をにらみつけているのを、ね。

 もちろん、すぐにサイレン鳴らしてその車止めて、男を引きずり出したら……。


 女は消えてたわ。


 もちろん、シートに血の痕なんかも、無し。

 混乱するあたしに、先輩は言ったものよ。

『わかったろ?』

 って。

 結局、そいつは別の県で三日前に轢き逃げした後、逃げ回ってた男だったんだけどね。

 そりゃあ、教えられないわよね……。

 見えちゃうんじゃ。

 お守りはすぐ返したわよ。なんか残念そうだったけど。
 ま、詳しいことはあたしも知りたくなかったし、ね。

 ああいう人はそれはそれでいろいろと苦労しているんでしょうねえ……。

71: 2013/04/25(木) 23:24:13.11 ID:eZVQcSJao
ほたる「見えちゃうんですか……。あの、小梅さんも……」

小梅(ニコッ)

ほたる「う……。満面の笑みを浮かべられた……」

茄子「そこは触れないでおいたほうが、いいのかもしれませんよ?」

ほたる「……はい」

小梅「け、警察が相手にするような……無念の人は、見えやすい」

ほたる「そ、そうですか」

茄子「心残り……ですか。いろいろとありそうですね……。さて、次のコーナーではそういった霊の……」



 第六夜 終

72: 2013/04/25(木) 23:25:10.34 ID:eZVQcSJao
本日は以上です。
Paは早苗さんが初めてになりますね。

73: 2013/04/25(木) 23:45:50.50 ID:CneHcG3K0

霊が視えるお守りか~
怖くて絶対持てない

74: 2013/04/26(金) 01:38:44.88 ID:rqMrtuaqo
先輩は後継者でも探してたんかね…
便利だけど出世よりトラウマになる方が早そう

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」