1: 2011/02/12(土) 20:04:04.10 ID:G+PMgZih0
ニーサンの日フライング
( ^U^)<申し訳ございません、このような文章で


“OOO”分をウェイィィト・アップ!させてみた+ガイアメモリ絡みなので“W”もそこそこ
⇒本来の動機に反して『そして何より“イカ娘”が(ry



前回の3つの出来事!イカ娘「(ガイアメモリ)挿さなイカ?」
1つ・・・・合成メモリOZ(オズ)の作用でイカ娘がライダーの世界にワープ!
2つ・・・・メモリをめぐり、カザリとヤミーが風都に現れる!!
3つ・・・・カザリとヤミーを撃退し、イカ娘たち(+刃野刑事)はイカ娘の世界へ・・・・

Count the Res! 前回までに>>1の使ったレスは156(マジカルハイドとは関係有りません)

2: 2011/02/12(土) 20:05:54.18 ID:G+PMgZih0
『イカとパンツと半熟卵』


イカ娘「おじゃまするでゲソ。」

フィリップ「おや?いらっしゃい、イカ娘ちゃん。」

イカ娘「久し振りでゲソ。」

フィリップ「まさか、また事故で瞬間移動してしまったのかい?」

イカ娘「今回は自分の意思だから『事故』ではなく・・・・『自己』でゲソ!!」

フィリップ「もしかして、刃野刑事を送ってくれたあの機械?」

イカ娘「その通りでゲソ。」

フィリップ「でもあれって、一方通行だったよね。帰りは?
       刃野刑事に設計図を持たせてくれたけど、まだ完成してないよ?」

3: 2011/02/12(土) 20:07:42.08 ID:G+PMgZih0
イカ娘「オズのメモリでワープするでゲソ。
     今回は通信機も持ってきたし、私が帰るまでは
     毎日特定の時間にオーシャンのメモリを起動してくれるよう頼んであるでゲソ。」

フィリップ「じゃあ安心だね。でも結構面倒そうなのによく引き受けてもらえたね。」

イカ娘「シンディに頼んでみたら・・・・

 シンディ『宇宙人との交信!?チャネリングってやつね!』

    ・・・・と予想外の大喜びだったのでゲソ。」

フィリップ「ほう、それは興味深い。」

イカ娘「フィリップも宇宙人認定されかねんから会わん方がいいでゲソ。」

亜樹子「あれえ、賑やかだと思ったらイカ娘ちゃん!?」

イカ娘「おお亜樹子、久し振りでゲソ。元気にしてたでゲソか?」

亜樹子「元気元気。イカ娘ちゃんは?」

イカ娘「うむ、私は元気にやっているでゲソ。お主らも元気そうで何よりじゃなイカ。」

亜樹子「そうだ、イカ娘ちゃんも私の手料理食べてみてよ!」

イカ娘「お?」

フィリップ「亜樹ちゃん、結婚生活で料理にハマってるんだよ。」

4: 2011/02/12(土) 20:09:58.59 ID:G+PMgZih0
イカ娘「ほう、いいことじゃなイカ。」

亜樹子「フィリップ君に聞くと、いろんなレシピが分かるからまた面白くて。
     揚げ物をカリッと仕上げるコツなんかも“検索”ですぐ分かっちゃうし!」

イカ娘「フィリップ・・・・流石に怒ってもいいのではなイカ?」

フィリップ「でも僕らもおすそ分けしてもらってるからね。
       せっかくなら、知ってるだけじゃなく実際に色々食べてみたいし。」

亜樹子「そう言えば、イカ娘ちゃんエビが大好きって刃野さんに聞いたよ。」

イカ娘「大好きでゲソ!!」

亜樹子「じゃあエビ料理がいいかな。何かリクエストはある?」

イカ娘「いやいや、ご馳走になるのだから何でもいいでゲソ。
     エビフライでも、エビチリでも、エビピラフでもどーんと来ればいいじゃなイカ!」

フィリップ「エビは譲らないんだね。」

亜樹子「じゃあさ、今夜はうちでみんなで食事しよ!
     イカ娘ちゃんの歓迎パーティーってことで5人でぱーっとやろうよ!」

さも良い事を思いついたというように亜樹子の顔が輝いた。

フィリップ「そうだね、異世界の話なんかも聞いてみたいし。」

イカ娘「だったらお言葉に甘えるでゲソ!」

5: 2011/02/12(土) 20:10:50.19 ID:G+PMgZih0
亜樹子「分かった。じゃあ色々準備するから、私いったん帰るね。
      また夜にゆっくりお話しようね。」

イカ娘「分かったでゲソ。期待して待っていようじゃなイカ!」

ご機嫌な様子で亜樹子が帰っていった。

フィリップ「ふふ、亜樹ちゃん嬉しそうだね。」

イカ娘「あ、そういえば翔太郎は?」

フィリップ「今ちょっと出かけてるよ。
      翔太郎もイカ娘ちゃんに会えたらきっと喜ぶよ、表面上はともかくね。」

イカ娘「相変わらずってことでゲソね?」

フィリップ「ああ、ハーフボイルドってことさ。」

笑いながら話していると、フィリップの腰にダブルドライバーが現れた。

フィリップ「イカ娘ちゃんごめん、ちょっと行ってくる。」

イカ娘「分かったでゲソ。お主の身体は私に任せろでゲソ。」

フィリップ「ありがとう。」

お礼を言いつつ、サイクロンのメモリを取り出す。

6: 2011/02/12(土) 20:12:02.87 ID:G+PMgZih0
ピルルルピルルル・・・・

フィリップ「翔太郎だ。・・・・変身だね、分かってるよ。」

翔太郎『待てフィリップ!変身するな!!』

フィリップ「・・・・なんだって!?」

翔太郎『いいか、何もするなよ!』

フィリップ「翔太郎、どういうことだ!?」

その答えの無いままに通話は切られた。

イカ娘「どうしたでゲソ?」

フィリップ「分からない・・・・ただ、翔太郎の身に何か起きている。」

しばらくして、ダブルドライバーに異変が起こった。
右側のスロットに、どす黒いエネルギーを帯びたメモリが現れたのだ。

フィリップ「なんだこれは!?」

次の瞬間、メモリのまとうエネルギーが膨らみ、爆ぜた。

フィリップ「うわっ!!」

7: 2011/02/12(土) 20:14:00.19 ID:G+PMgZih0
イカ娘「フィリップ!怪我はなイカ!?」

フィリップ「僕は大丈夫。ただ・・・・翔太郎との接続が断たれた。」

イカ娘「えっ!?」

見ると、フィリップの腰に装着されていたダブルドライバーも消えていた。

フィリップ「やはり何かが起きているんだ。僕は、それを確かめに行かねばならない。」

イカ娘「フィリップ、私もついて行っていイカ?
    ・・・・また足を引っ張ってしまうかもしれないけれど、なんだか気がかりでゲソ。」

フィリップ「いや、正直来てくれると言うのならありがたい。
      ダブルに変身できない可能性が高い今、
       もしかしたら君の力が必要になるかもしれない。」

イカ娘「わ、分かったでゲソ。」

フィリップの緊張をイカ娘も感じ取ったようだった。

フィリップ「では行こうか、さあこっちへ来てこれに乗って。」

二人を乗せ、リボルギャリーが発進した。

9: 2011/02/12(土) 20:17:13.28 ID:G+PMgZih0
フィリップ「スタッグフォンの反応だとこの辺だったんだが・・・・。」

二人が降りたのは山道だった。

イカ娘「あ!あそこにあるの翔太郎のバイクじゃなイカ!?」

イカ娘の指す方を見ると、確かに木立の間にハードボイルダーが横倒しになっていた。

フィリップ「本当だ・・・・しかし、何故あんなところに?」

近くの樹には何かが衝突したような跡もあった。

イカ娘「もしや事故でも起こしたんじゃなイカ!?」

フィリップ「・・・・いや、ぶつかったと思われる位置が高すぎる。
       走行していてここにぶつかるような事故だったら、
       周囲にももっと痕跡が残っているはずだ。」

イカ娘「そ、それじゃあ・・・・。」

フィリップ「何かしらの力を受けたということだ。それも並大抵じゃない。」

イカ娘「それでさっき変身しようとしたってことでゲソ?」

フィリップ「それが分からない。
       何故翔太郎は切迫していたであろう状況であんな行動を取ったのか・・・・。
       あの時、翔太郎はわざわざ僕に連絡して、変身するなと言ったんだ。」

イカ娘「え、逆じゃなイカ!?」

10: 2011/02/12(土) 20:19:10.78 ID:G+PMgZih0
フィリップ「普通に考えればその通りだ。
       だから、その不可解な状況の謎が解ければ・・・・。」

イカ娘「とりあえず、この辺りを探してみるしかなさそうでゲソ。」

フィリップ「うん、そうしよう。」

二人が道路を外れて山道に入る。
そして、背の高い木が立ち並び、あまり日の光も差さぬ方へと進んで行った。


二人が翔太郎の捜索を開始してからしばらく経った。

イカ娘「はぁ・・・・やっぱ山はしんどいでゲソ。」

フィリップ「この辺は結構険しいからね。急な崖も多いし。一休みする?」

イカ娘「心配ご無用でゲソ!私にはこんな時のための裏技があるのでゲソ。」

フィリップ「へえ、裏技。どんな?」

イカ娘「見てのお楽しみじゃなイカ!」

フィリップ「それは興味深い。」

薄暗がりの中で頭をもたげてきた不安と疲労をごまかすかのように、
二人とも努めて明るく振舞っていた。

11: 2011/02/12(土) 20:21:22.06 ID:G+PMgZih0
イカ娘「どうせなら・・・・翔太郎にも一緒に見せてやるでゲソ。」

フィリップ「・・・・うん。」

イカ娘「きっと翔太郎もその辺に居るでゲソ。
      もしかしたらうっかりして足でも滑らせたんじゃなイカ?」

わざとおどけた感じに下の方を覗き込む。

フィリップ「イカ娘ちゃんも気をつけて。足元もだけど、上の方にも・・・・。」

なんとなく見上げたところでフィリップの動きが止まる。

イカ娘「どうしたでゲソ?」

同じように見上げたイカ娘も、一瞬我が目を疑い固まってしまった。
そこには崖に向かい、こちらに背を向けている黒い“何か”が立っていた。
まるで限界まで膨れ上がった風船であるかのように、はち切れんばかりの筋肉だった。

フィリップ「二本足で立っているのなら・・・・“怪人”と言うべきなのかな?」

イカ娘「と、とりあえずヤバい雰囲気でゲソ。気付かれる前に逃げなイカ?」

防衛本能なのか、イカ娘の頭の触手が活発に蠢いている。

フィリップ「・・・・いや、恐らく既に気付かれていた。」

フィリップの言葉が正しいのを示すかのように、耳をつんざく様な奇声を上げて“怪人”が動く。
自身の身体もたやすく岩に潜ってしまうほどの勢いで崖を殴りつけた。

12: 2011/02/12(土) 20:23:09.91 ID:G+PMgZih0
イカ娘「いっ!?」

破壊された無数の岩石が、下の二人に一気に襲い掛かる。
もうもうと舞い上がった土煙が静まった時、さっきまで二人の居た場所を落石が埋め尽くしていた。
しばらくして、崖の中から黒い“怪人”が何事も無かったかのように這い出てきた。
そして、動くものの気配が無いのを確認した上で、次の獲物を求めるように踵を返した。


フィリップ「・・・・どうやら、行ってしまったようだ。」

イカ娘「こ、こんな形で裏技を使うとは思わなかったでゲしょ・・・・。」

フィリップ「ありがとう、助かったよ。」

辺りへの警戒を保ちつつ、伸縮自在の触手を少しずつ伸ばして下へ降りる。
イカ娘がとっさに高枝とフィリップの身体に触手を巻きつけ、高所へと避難していたのだ。

フィリップ「すごいよイカ娘ちゃん、僕が作ったスパイダーショックより速かったかも。」

地面に到達し、ようやく人心地つく。

イカ娘「ふぅ・・・・なんとかやり過ごせたようだけど、あいつ一体何者でゲソ?
     ドーパントって奴ともヤミーって奴ともなんか雰囲気が違ってたでゲソ。」

フィリップ「分からない・・・・だが、ひとまず照井竜を待った方がいいのは確かだ。」

音を立てないようにゆっくりと、なるべく気配を頃してリボルギャリーの方へと戻る。

13: 2011/02/12(土) 20:25:12.18 ID:G+PMgZih0
ようやく車道が見えて来た時、どこかの茂みからがさりという音がした。
かすかではあるが、意思を感じさせる音が続く。

フィリップ「・・・・翔太郎、かい?」

返答は無く、藪を掻き分ける音だけが、次第に速く、大きくなっていく。

イカ娘「フィ、フィリップ・・・・。」

本能的にか、異様な雰囲気を感じ取ったイカ娘がフィリップに身を寄せる。

イカ娘「ま、まだ、翔太郎かもしれんでゲソよね?」

フィリップ「もちろんその可能性もある。・・・・すっごくやな予感がするけど。」

少しずつ後退りながら、周囲の様子にも注意を払う。
しばらくして、茂みから黒い手が突き出された。
どう見ても常人のサイズよりは大き過ぎた。

イカ娘「ま、また出たでゲソ!!」

二人が走り出すのと、そいつが茂みから飛び出すのはほぼ同時だった。
振り返る寸前の一瞬、燃える炎のように真っ赤な眼が見えた。

14: 2011/02/12(土) 20:26:49.58 ID:G+PMgZih0
フィリップ「あのガードレールに例の裏技を!」

フィリップがイカ娘の体に腕を回す。

イカ娘「わ、分かったでゲソ!」

頭部の触手を伸ばしてガードレールに巻き付ける。
そして、手繰り寄せる要領で触手を縮めると、
イカ娘とフィリップの体が瞬時にガードレールへ引き寄せられた。

フィリップ「なんとか距離を取れたか・・・・。」

イカ娘「・・・・って、もうすぐそこまで来てるじゃなイカ!」

振り向くと、既に“怪人”も道路へ走り出そうとしているところだった。
巨大な全身の殆どが黒ずくめであったが、
双眸と腰の中心だけはまるで血塗られたような紅だった。

イカ娘「も・・・・もしやここを逃げるのでゲソ?」

イカ娘が怯えた様子でガードレールの向こうを指差す。
そこは険しい崖になっていた。
そう言っている内にも、“怪人”は道路へ踏み出し飛び掛って来ていた。

イカ娘「ひいっ!!」

15: 2011/02/12(土) 20:30:42.14 ID:G+PMgZih0
瞬間、横手から突っ込んできたリボルギャリーが“怪人”を大きく吹っ飛ばす。

フィリップ「・・・・ビンゴだ。」

さしもの屈強な“怪人”も仰向けに大の字で倒れてしまう。

イカ娘「おおっ!?」

しかし、大したダメージには至らなかったのか、
“怪人”の手がピクリと動き、起き上がる素振りを見せていた。

フィリップ「遠隔操作で呼んだんだ。・・・・しかし、あれはまさか。」

スタッグフォンを操作してリボルギャリーのボディを展開させる。

フィリップ「さあ、早く乗って。」

イカ娘が大急ぎでリボルギャリーに身を滑り込ませた。
しかし、フィリップがそれに続く気配は無い。

イカ娘「・・・・フィリップ?早く乗らなイカ!」

ボディが再び閉じ始めた。

17: 2011/02/12(土) 20:32:21.52 ID:G+PMgZih0
フィリップ「君はこの中に隠れているんだ。」

イカ娘「な・・・・フィリップ!お主!!」

慌てて駆け寄るも、隙間は既に通れない程になっていた。
そんな僅かな隙間から、フィリップの笑顔が覗けた。
そして、遂にリボルギャリーのボディが完全に閉じる。
イカ娘の叫ぶような声と壁を叩く音が聞こえ続けていた。

フィリップ「すまない。だけど、これだけは僕が、僕一人でやらなくてはならないんだ・・・・。」

フィリップが既に起き上がった“怪人”と対峙する。
そうして真っ向から見ると、懐かしいとも言える姿の面影がかすかにあった。

フィリップ「そのダブルドライバー・・・・翔太郎・・・・なのかい?」

腰の中心にあったのは、変質していたが確かにダブルドライバーであった。
左側のスロットに挿さっているのは、辛うじてジョーカーメモリと見て取れる。

フィリップ「翔太郎、何があった!・・・・それはなんなんだい?」

ダブルドライバーは、角とも牙ともつかない硬質な何かと一体化していた。
よく見れば、その何かの一部は“怪人”の肉体に根差すかのごとく食い込んでいるようだった。
そして、ドライバーの形状に沿って発生したそれは人間の血の様な色で彩られ、
猛獣の口から突き出した牙にも、また、鬼の顔のようにも蝙蝠の姿のようにも見えた。

フィリップ「僕が分からないのか!」

なんのリアクションも無しに“怪人”が向かってきた。

18: 2011/02/12(土) 20:34:17.21 ID:G+PMgZih0
フィリップ「翔太郎!!」

言葉が聞こえていないがごとく、攻撃が繰り返された。

フィリップ「うわぁっ!」

かすめただけの筈の一撃で、フィリップの体が大きく吹っ飛ばされた。

カシャン・・・・カラ カラ

弾みでこぼれたメモリが“怪人”の目の前まで滑って行った。
それを拾い上げた“怪人”の動きが止まった。
手の中のサイクロンメモリを、記憶を手繰るかのようにじっと見つめる。

フィリップ「翔太郎、思い出してくれ。そのメモリは、僕の・・・・そして君との・・・・。」

だが、淡いな期待の込められたそんな言葉も非情な裏切りで返された。

カチッ

\サイクロン!/

フィリップ「!?」

ゆっくりと、右腰のマキシマムスロットにメモリが挿し込まれた。

\サイクロン!マキシマムドライブ!!/

吹き荒れる風の力で黒い巨躯が宙に浮き上がり、容赦なくフィリップに狙いを定める。

19: 2011/02/12(土) 20:35:56.19 ID:G+PMgZih0
フィリップ「翔太郎、僕が分からないのか・・・・。」

絶望感とダメージでフィリップが膝をつく。

フィリップ「とてもじゃないが・・・・かわせそうにない。」

\ヒート!/

フィリップ「だが・・・・君をそのままにして力尽きるわけにもいかない・・・・!」

\ヒート!マキシマムドライブ!!/

フィリップ「ドライバーのメモリを・・・・!」

炎をまとったスタッグフォンが放たれ、右腰の辺りにぶつかって行った。
はたしてサイクロンメモリが抜けたことで、“怪人”が失速すると共に空中で体勢を崩す。
改めて、ドライバー本体をめがけた突進が命中した。
メモリは抜けなかったが、その勢いで巨大な体がガードレールの向こうへと押し出された。
黒い“怪人”は、そのまま崖下へと転落して姿を消した。

フィリップ「・・・・翔・・・・太郎・・・・。」

緊張の糸が切れたのか、フィリップが前のめりに倒れ伏した。

20: 2011/02/12(土) 20:37:39.15 ID:G+PMgZih0
イカ娘「フィリップ!フィリップ!!目を開けるでゲソ・・・・起きなイカ!」

フィリップ「・・・・イカ娘ちゃん?どうして・・・・。」

照井「俺がリボルギャリーから出したんだ。・・・・大丈夫か?」

合流した照井がフィリップのスタッグフォンとガイアメモリを渡す。

フィリップ「そうか・・・・すまないイカ娘ちゃん、閉じ込めたまま倒れてしまって。」

イカ娘「そんなのはどうでもいいでゲソ!!なんで・・・・なんで一人で無茶したのでゲソ!!」

フィリップ「ごめん・・・・だけど、アレは翔太郎だった・・・・戦う訳にはいかないが、
       それでも僕が何かしなくてはいけない気がしたんだ・・・・相棒として。」

イカ娘「アレが!?・・・・何かの間違いじゃなイカ?」

照井「一体どうしたんだ?左の身に何が起きたかもとは聞いたが・・・・。」

フィリップ「正直僕にも分からない。だけど、見たことだけは話しておこう。」

22: 2011/02/12(土) 20:39:31.14 ID:G+PMgZih0
照井「そんなことがあったのか・・・・。」

フィリップ「不本意ではあるが、便宜上“ジョーカー”と呼ぼう。
      確実に分かっているのは、ジョーカーのメモリのパワーを得ていることだけだ。」

照井「しかし、その“ジョーカー”は本当に左だったのか?」

フィリップ「断定は出来ないがまず間違いない。
      ダブルドライバーを使っていたし、位置情報を見るとスタッグフォンも持っているようだ。
       何より、動きに翔太郎の癖のようなものがあった・・・・。
       そうでなければ、まがりなりにも生身で渡り合うなんて出来なかった。」

イカ娘「でも、もしかしたらダブルドライバーやメモリを奪われたんじゃなイカ?
    それで慌てて変身するなって伝えた後でスタッグフォンも・・・・。」

フィリップ「・・・・なるほど。僕がメモリを使えば奪った奴を手助けすることになると考えたと。
      だけど、連絡があった際に僕の感覚は他でもない翔太郎とシンクロしていた。
       やはり翔太郎があの黒いメモリのせいでおかしくなっていると考えるべきだろう。」

照井「黒いメモリ?ジョーカーのメモリとは別物なのか?」

フィリップ「先程“ジョーカー”がソウルメモリとして使用していたメモリだ。
      色はジョーカーのメモリよりも濃い、闇のような黒だったが、素性は不明だ。」

23: 2011/02/12(土) 20:41:41.18 ID:G+PMgZih0
照井「メモリの頭文字もか?」

フィリップ「ああ。メモリから発生したと思われる暗闇に包まれていて、有るか無いかすら見えなかった。
      ただ、あのメモリが何か異常なものなのは間違いない。
       どうやら・・・・ダブルドライバーまで変質させていたみたいなんだ。
       そして、ドライバーや“ジョーカー”の肉体と一体化した“牙”のようなものが
       メモリを押さえ込み殆ど隠してしまっていた・・・・。
       まるで、手放すまいという強欲な意思を持っているかのようにね。」

照井「だとすると・・・・。」

フィリップ「ああ。そのままではメモリを抜くことで元に戻すのは不可能だ。
      ドライバーを操作して変身解除させるのも同様だろう。」

照井「一体何が・・・・。」

フィリップ「現状では情報が決定的に不足している・・・・。
      ハードボイルダーを発見した場所と、その近くにあったブレーキ痕を中心に、辺りを調べよう。」

24: 2011/02/12(土) 20:45:17.26 ID:G+PMgZih0
クスクシエの扉が開けられた。

比奈「いらっしゃいませ、3名様ですか?こちらのお席へどうぞ。メニューは・・」

フィリップ「オーズを。」

比奈「えっ?」

アンク「おい比奈、そいつらは客じゃない、接客しても無駄だ。」

比奈「ま、まさかグリード?」

緊張して身構える比奈をよそに、のんきな声がした。

映司「あれえ、フィリップさん?いらっしゃい、すっごい偶然ですねー。」

フィリップ「いや、偶然じゃない。すまないが“検索”で調べさせてもらった。
      火野映司、君のオーズとしての力を借りるためにね。」

映司「えっ、オーズの!?」

フィリップ「急ですまない。だが、話を聞いてもらえないだろうか。」

映司「あ、はい。大丈夫ですけど・・・・。」

26: 2011/02/12(土) 20:48:09.22 ID:G+PMgZih0
フィリップ「・・・・と、いう訳なんだ。」

アンク「厄介な相手だということはよーく分かった。だが、俺達がそんな奴と戦って何の得がある?」

映司「おいアンク。」

アンク「お前の言う『助け合い』もいいがな、で、こいつらは何をして助けてくれるんだ?」

一同が言葉に詰まる中、フィリップがやおら何かを取り出す。

フィリップ「翔太郎の手掛かりを探していてこれを見つけた。」

フィリップがつまむものを見て、アンクの目の色が変わった。

フィリップ「多分、他にもまだ手に入るだろうね。・・・・さて、手を組まないか?
      僕らにとって価値は無いが、君にとってはのどから手が出るほど貴重なものだ。」

アンク「ふん、フェアトレードと言いたい訳か。」

フィリップ「そういうことだ。戦いが発生したら僕らも手を貸そう・・・・それでどうだい?」

アンク「まあいいだろう。」

フィリップ「手付金だ、受け取りたまえ。」

フィリップが親指で弾いてトスしたものを、アンクがキャッチした。

アンク「さあて、一体何が待っているんだろうな。」

チーターのコアメダルを手中にしたアンクがそうつぶやいた。

27: 2011/02/12(土) 20:50:16.45 ID:G+PMgZih0
山の中、息も絶え絶えで移動する者が居た。

カザリ「くそう、あんな奴に・・・・僕のコアメダルが根こそぎ・・・・。」

先程までの出来事が繰り返し思い起こされ、怒りと悔しさを再燃させていた。


翔太郎がハードボイルダーを駆り山道を走っていると、道の真ん中に人影があった。

翔太郎「おい、危ねえだろ!」

慌てて急ブレーキをかけ、立ったままの人物を怒鳴りつける。
返って来た答えは、不自然なまでに落ち着いた声だった。

カザリ「お久し振り。」

翔太郎「・・・・はあ?誰だよお前、人違いじゃねえのか?」

カザリ「そうか、こっちの姿では初めてだったね、ダブル君。」

言うが早いか、グリードとしての姿を現す。

翔太郎「お前、カザリって奴か!」

翔太郎がダブルドライバーを構える。

28: 2011/02/12(土) 20:51:46.33 ID:G+PMgZih0
カザリ「ちょっと待った。変身するのは僕の話を聞いてからにしてよ。」

翔太郎「お前、それは・・・・!」

カザリが手にした端末の画面には鳴海探偵事務所の様子が映っていた。

カザリ「もっとよく見てみる?」

投げられた端末の画面を覗き込む。
やはり、現在の鳴海探偵事務所の様子のようだ。
画面では、フィリップ、亜樹子、そしてイカ娘が談笑していた。

翔太郎「お前、何をする気だ!」

カザリ「さあ?知りたいなら、僕の言うことを断ればすぐ分かるよ。」

翔太郎「・・・・くっ!」

カザリ「君も探偵なら、この辺りで起きた連続爆破事件くらいは知ってる?
     僕さあ、あれに関与した人間と、ちょっとした接点があったりするんだよね。」

カザリの手に、今度はリモコンらしきものがあった。

翔太郎「お前・・・・。」

カザリ「まあ、抵抗しない方がいいんじゃないかな?お仲間が大切ならね。」

29: 2011/02/12(土) 20:53:58.11 ID:G+PMgZih0
翔太郎「あの時のリベンジか・・・・。」

カザリ「まあね。じゃなきゃ、タダで何かしないし。
     でも安心しなよ、生身の君をいたぶろうという訳じゃない。」

翔太郎の方へ何かを放る。

翔太郎「・・・・これは!?」

投げられたものを受け取った翔太郎が、手にしたものに目を見張る。
そこには“W”と刻印された黒いガイアメモリがあった。

カザリ「それを使って変身してよ。」

翔太郎「なんだと!?」

カザリ「君の相棒って奴のメモリの代わりにね。」

翔太郎「どういうつもりだ!」

カザリ「僕の話を聞いたら変身してくれって言ったろ?それとも・・・・。」

カザリの指がリモコンのスイッチに向かって動く。

翔太郎「待て!・・・・分かった、変身する。」

30: 2011/02/12(土) 20:55:10.25 ID:G+PMgZih0
カザリ「出し抜いて普通に変身しようとか思わない方がいいよ?
     君の相棒、抜け殻になっちゃうんだからね。」

翔太郎が無言でダブルドライバーをセットした。
ほぼ同時に、かけたスタッグフォンもつながった。

翔太郎「おい、フィリップ!」

フィリップ『変身だね、分かってるよ。』

翔太郎「待てフィリップ!変身するな!!」

フィリップ『・・・・なんだって!?』

翔太郎「いいか、何もするなよ!」

フィリップ『翔太郎、どういうことだ!?』

スタッグフォンのボタンを押して通話を切る。

翔太郎「・・・・・・・・いくぜ!」

31: 2011/02/12(土) 20:56:08.09 ID:G+PMgZih0


カザリ「予想以上だ・・・・予想以上に大した力だったよ。」

這いつくばいながら、カザリの顔に笑みが浮かんだ。

カザリ「まさか、僕のコアメダルまで喰らって“進化”するとはね・・・・。」

肩で息をするようにしながらも移動を続ける。

カザリ「ふふ・・・・今じゃ残ったのも一枚か。メズールも大変だったみたいだね。」

その時、引き合う様に自分を追ってくる存在に気付いた。

カザリ「だが、僕も最後の一枚は渡さない。渡してなるもんか!」

憎悪の感情を燃え上がらせ、恐怖心を抑え付ける。
残された力で這い退るようにして逃走を続けた。

32: 2011/02/12(土) 20:58:49.71 ID:G+PMgZih0
アンク「で、この馬鹿に何をやらせる気だ?」

フィリップ「ダブルドライバーの破壊、それがおそらく一番やりやすい。
       普通に戦うのとさほど違わないし、狙いも体の中心部だからだ。」

映司「フィリップさん!・・・・引き受ける前に一つだけ確認させてください。」

フィリップ「なんだい?」

映司「万が一・・・・ダブルドライバーを破壊出来なかったり、
    破壊しても・・・・・・・・それでも翔太郎さんが元に戻らなかったら?」

フィリップ「最悪の場合には・・・・オーズ、君に“ジョーカー”を倒して欲しい。」

映司「・・・・でも、もしそれで翔太郎さんが・・・・。」

フィリップ「いずれにせよ、今のままではパワーの使い過ぎで衰弱して長くないだろう・・・・。
       元に戻せないのならば・・・・それしかないんだ・・・・。」

フィリップの言葉は自分に言い聞かせるようだった。

33: 2011/02/12(土) 21:00:14.87 ID:G+PMgZih0
映司「だけど、倒すだけじゃなくって、最悪・・・・・・・・。」

フィリップ「もしも本当に最悪の結末を迎えたとしても、
       無論僕らはオーズを恨んだりはしない。
       そうすべきと頭では分かっていても、
      僕達には・・・・翔太郎を止めてやる事は出来ないからだ・・・・。」

映司「フィリップさん・・・・分かりました、俺にしか出来ないのなら引き受けます!」

アンク「どうやら決まったようだな。それにしても人間というのは分からんなあ。
    イカれちまったお仲間の始末を赤の他人にさせるか。
     もし俺なら、むしろ自分の手でケリをつけたいとでも思いそうなもんだがなあ。」

映司「アンク!」

あざけるように言ったアンクを映司が咎める。

34: 2011/02/12(土) 21:01:45.94 ID:G+PMgZih0
フィリップ「いや、そういう考え方もあると思う。
       大切な存在だからこそ、取り返せない過ちを犯す前に止める・・・・。
       自分でその結果も全て背負って相手を自分のものとして生きる・・・・。
       結果的にそちらが正しいこともあるだろう。
       ただ、僕達は・・・・ハーフボイルドなんだよ。」

アンク「ふん・・・・まあ好きにしろ。俺にとって大切なのはメダルが手に入るかだ。」

フィリップ「・・・・ところで、この付近に広場はあるかい?多少暴れても平気な。」

映司「え!?・・・・ありますけど。」

フィリップ「すまないが、オーズに変身する準備をして一緒に来てもらえるかい?」

映司「なんでですか?」

フィリップ「対“ジョーカー”の準備だ。」

映司「・・・・分かりました。」

36: 2011/02/12(土) 21:03:41.02 ID:G+PMgZih0
映司の案内で人気の無い広場に着いた。


フィリップ「すまない、本来なら僕らが戦うべきところを。
      だが、僕も翔太郎の相棒として出来ることをしよう・・・・。」

うつむいていたフィリップがメモリを取り出した。

\サイクロン!/

フィリップ「変身。」

ロストドライバーをセットし、メモリを装填する。

\サイクロン!/

風にマフラーをなびかせた、緑のライダーが姿を現した。

フィリップ「今の翔太郎、“ジョーカー”は手強い。
      とてもじゃないが一発勝負なんて無謀な手段は取れない。
       だから、予行練習を行う。僕が“ジョーカー”の代わりだ。」


フィリップの想いに応えるべく、映司もオーズに変身した。

37: 2011/02/12(土) 21:06:03.13 ID:G+PMgZih0
映司「この近くですか?」

フィリップ「ああ、その筈だ。
      理由は分からないが、前回の遭遇以降のスタッグフォンの位置をトレースした結果だと、
       “ジョーカー”はこの近辺を徘徊しているみたいなんだ。」

映司「もしかしたら、翔太郎さんの心が残っていて人々に危害を加えないよう頑張ってるとか!」

アンク「そんなお気楽な理由だったらいいがなあ。」

フィリップ「確かに楽観視は出来ない。
      うぬぼれる訳じゃないが、翔太郎は相棒の僕さえも分からない様子だった。
       今の“ジョーカー”はまるで戦闘マシーンだ。」

映司「フィリップさん、戦いに巻き込まれないようにここからは俺一人で・・・・。」

その提案にフィリップが首を横に振る。

フィリップ「いや・・・・翔太郎の相棒として、結果はそばで見届けなくてはならない。
      それに、一応戦うための準備もしてきている。いざという時のためにね。」

映司「いざという時、ですか・・・・。」

フィリップ「ああ。無いに超したことは無いけどね。
      ・・・・君も、可能な限り戦いの準備をしておいてくれ。」

映司「・・・・はい。」

その時、ほんのかすかにではあったが、茂みを揺する音が聞こえた。

39: 2011/02/12(土) 21:07:50.52 ID:G+PMgZih0
アンク「・・・・おい映司、変身しとけ。」

何かを感じ取ったのか、声を潜めたアンクがメダルを手渡す。

映司「分かった。」

映司も小声で答え、メダルをセットした

映司「・・・・変身。」

タカ!トラ!バッタ!

タ・ト・バ!タトバ、タ・ト・バ!!

アンク「・・・・・・・・。」

映司「・・・・・・・・。」

メダジャリバーを手に、緊張した雰囲気で待ち構えるが、先程の音以降何かが動く気配はしなかった。

アンク「・・・・・・・・歌を気にしたか?」

映司「変身してから来るべきだったかな・・・・。」

フィリップ「いや、無駄な消耗は避けるべきだ。
       それに、“ジョーカー”がそんな理由で退くとも思えない。」

その言葉を裏付けるかのごとく、さっきとは全く別の方向からガサガサという音が聞こえた。

40: 2011/02/12(土) 21:09:50.77 ID:G+PMgZih0
アンク「いよいよお出ましか。」

フィリップ「火野映司、出会い頭に大技をぶつけた方がいい。
       “ジョーカー”はちょっとやそっとでは倒れない。
       下手に手加減しようとすると、君の方が危ない。」

映司「分かりました。」

チャリン・・ チャリン・・ チャリン・・・・

動く気配がすぐそばまで接近した。

“トリプル!スキャニングチャージ!!”

ザッ!

映司「・・・・はっ!!」

飛び出したものが“ジョーカー”であると確認し、
オーズがメダジャリバーを一閃した。
狙いすました通り、腰のドライバーの辺りに攻撃が命中した。

映司「・・・・だめだ、あの“牙”に阻まれた!」

フィリップ「僕が見た時よりも成長している・・・・まるで鎧だ。」

映司「まずは“牙の鎧”をなんとかしなきゃ!」

オーズバッシュを連発するも、傷一つ付けられなかった。

43: 2011/02/12(土) 21:11:48.08 ID:G+PMgZih0
映司「これならどうだ!」

突き出したメダジャリバーがドライバーがある部分を直接捉えた。
ガキン、という音がして刃が止まってしまう。
“ジョーカー”が唸り、腕を振るった。

映司「あっ!?」

一瞬で拳から伸びた爪がメダジャリバーを弾き飛ばしてしまった。

アンク「聞いてはいたが、本当にまるで獣だな。」

フィリップ「いや・・・・最初見た時にはあんなものは無かった・・・・単に収納していただけか?」

少し見ない内に変貌を遂げていた“ジョーカー”の様子に、フィリップも動揺の色が濃くなった。。

映司「目には目を、爪には爪を!って、うわぁっ!!」

トラメダルの能力の爪をぶつけて対抗を図るも、パワー負けして吹き飛ばされた。

映司「くそっ、強い。しかも速い!」

吹っ飛ばされた勢いのままに地面をごろごろと転がり、なんとか追撃をかわした。
格闘戦での不利は傍目にも明らかだった。

フィリップ「対抗策は無いのかい?」

アンク「あっても、あのザマでメダルを替えられるか!」

そうしている間にも、打ち合いで及ばないオーズのダメージが徐々に蓄積していく。

44: 2011/02/12(土) 21:13:11.60 ID:G+PMgZih0
アンク「くっ・・・・映司、そいつと逆向きに走れ!」

映司「え、なんで!?」

アンク「いいから早くしろ!全力だ!!」

映司「・・・・分かった!」

映司が背を向け駆け出したのを、“ジョーカー”が獣の本能であるかのように追う。

アンク「・・・・・・・・今だ!」

アンクが泉刑事の腕を離脱し、“ジョーカー”の足に体(?)当たりを仕掛けた。
足がもつれ、勢いがついている分だけきれいにすっ転んだ。

映司「・・・・おっ?助かったぞ、アンク!」

“スキャニングチャージ!!”

映司「はぁっ!!」

すかさず、映司が起氏回生のタトバキックを繰り出す。

アンク「くそ・・・・やっぱりだ。もう二度とやらんぞ!これで決めちまえ!!」

反動で受けたダメージからようやく立ち直ったアンクが発破をかける。

映司「よし・・・・せいりゃぁぁああーー!!」

45: 2011/02/12(土) 21:14:33.12 ID:G+PMgZih0
まだ片膝をついた状態の“ジョーカー”にはかわせない・・・・筈だった。
オーズの方を見上げた“ジョーカー”が何か吼える。
なんとオーズの向かって来る方向へと光が放射され、オーズを撃墜した。

映司「あち、あちち!・・・・なんだよこれ!!」

フィリップ「バカな!こんな能力まで隠し持っていたのか!?」

アンク「今の・・・・まるでラトラーターの・・・・・・・・まさかな。
    それより問題なのは・・・・・・・・。」

映司「うぅっ・・・・・・・・しまった!」

のたうっていた隙に接近した“ジョーカー”は既に拳を振り上げていた。

フィリップ「やめろ翔太郎!」

\ボム!マキシマムドライブ!!/

まさに拳を振り下ろそうとした“ジョーカー”の顔面で攻撃が爆ぜた。
怒りを表すとも思える声を上げ、“ジョーカー”が振り向いた
視線の先では、フィリップが母の遺した銃、シュラウドマグナムを構えていた。

フィリップ「翔太郎、君に誰かを傷つけさせたくはない・・・・。
      だけど翔太郎、やはり僕は君とは戦いたくない。
       君と僕は・・・・戦うことでは分かり合えない・・・・。」

そんなフィリップの姿を目にした“ジョーカー”に動揺が走った。
思考能力を失ったはずの脳裏に、ある人物のイメージが浮かんだ。

46: 2011/02/12(土) 21:15:30.19 ID:G+PMgZih0
――お前、ハードボイルドになりたいのか?――

――うん!劇場で、蜘蛛男と対決しているのを見た時からずっと!――

――ボウズ、だったらいい事を教えてやる――

――うんっ!!――

――ハードボイルドってのはな、なろうとした時点で失格だ――

――なんだよそれ、最初からアウトって言いたいのかよ!!――

――そういうのはな、一々口に出すもんじゃないぜ――


――獣の牙を内に秘めて生きる、それがハードボイルドだ――


――翔太郎、帽子の似合う男になれ――


――フィリップを・・・・よろしく頼む――


「ウワァァアアアアアーーーー!!!!」


絶叫と共に“ジョーカー”の動きが止まる。

47: 2011/02/12(土) 21:17:08.39 ID:G+PMgZih0
映司「今だ・・・・!アンク、サゴーゾのコンボを!!」

アンク「ああ、受け取れ!」

“ジョーカー”から離れる方向へとジャンプし、そのままメダルをキャッチする。
即座にメダルを交換し、オースキャナーでパワーを読み込んだ。

サイ!ゴリラ!ゾウ!

サゴーゾ! サゴーゾゥ!!

映司「もうこの瞬間しかチャンスは無い!」

“スキャニングチャージ!!”

重力場が形成され、リングに囚われた“ジョーカー”の両足が地にめり込む。
“ジョーカー”が力任せに抵抗するも、次第に深く埋められつつオーズの方へと引き寄せられる。
遂には間合いにまで吸い込まれ、オーズの両腕が突き出された。

48: 2011/02/12(土) 21:18:26.29 ID:G+PMgZih0
オーズ「・・・・今です!」

“ジョーカー”の両腕ごと、さば折のように抱え込むと、ゴリラメダルのパワーでなんとか動きを封じる。

フィリップ「照井竜、頼む!!」

既に“ジョーカー”の脇にアクセルトライアルと、抱きかかえられたイカ娘の姿があった。
イカ娘が、手にしたメモリを“ジョーカー”のマキシマムスロットへと挿し込む。

\ゾーシャン!マキシマムドライブ!!/

同時に、フィリップが手にしていたメモリを起動した。

\オーシャン!/

辺りを、閃光が包んだ。

49: 2011/02/12(土) 21:19:44.69 ID:G+PMgZih0
フィリップ「まず、君にも作戦について簡単に話しておこう。」

映司「作戦・・・・ですか?」

フィリップ「メモリ単体を外せないのなら、ドライバーごと外すまでだ。」

映司「どうやってですか?聞いた話だと、なんか一体化してるとか・・・・。
   そんな状態で無理やり外そうとしたら・・・・。」

フィリップ「ああ、リスクが高すぎる。翔太郎の肉体にも、実行する上でも。
      だから、オズのメモリを使う。」

映司「オズのメモリ?」

フィリップ「君が風都を訪れた、直近の件において鍵となったメモリだ。
      簡単に言えば、オーシャンのメモリと同時起動することで瞬間移動を起こせる。
       起動時の状態が残るのか、他者のマキシマムスロットに挿しても有効なことは確認した。」

映司「じゃあそれを使えば!」

フィリップ「可能性はある。“ジョーカー”のマキシマムスロットは機能しているから使えはする筈だ。
      ただし、使えたとしてもうまくいくという保証は無い。
       もしかしたら、“ジョーカー”ごと移動して終わりかもしれない。
       抵抗する意思がある者は移動しない性質があるから、
       メモリとシステム的に接続された状態のドライバーは移動しても
       “敵意”がある“ジョーカー”本体は移動しないと読んだが・・・・正直賭けだ。」

映司「でも、可能性があるのならやりましょう!」

50: 2011/02/12(土) 21:20:56.97 ID:G+PMgZih0
フィリップ「・・・・それと、実行するためには制約がある。
      まずはオズのメモリを使うのはイカ娘ちゃんでなくてはならない。
       そして、“ジョーカー”のドライバーにメモリを挿すには、
       誰かが囮になって隙を作り、超高速移動で不意に接近するしかない。
       接近するのは戦闘能力や耐久性、動作の精密さを考慮すればアクセルトライアルが適任だ。」

映司「じゃあ、その囮というのが・・・・。」

フィリップ「そう、オーズだ。今の僕ではまともな戦力になれない。
       だから、成功率を高めるためには、オーシャンのメモリの起動役は僕しか居ない。」

そこまで言ったフィリップがうつむく。

フィリップ「すまない、本来なら僕らが戦うべきところを。
      だが、僕も翔太郎の相棒として出来ることをしよう・・・・。」

\サイクロン!/

フィリップ「変身。」

ロストドライバーにメモリを装填した。

\サイクロン!/

フィリップ「今の翔太郎、“ジョーカー”は手強い。
      とてもじゃないが一発勝負なんて無謀な手段は取れない。
       だから、予行練習を行う。僕が“ジョーカー”の代わりだ。」

映司「練習?」

51: 2011/02/12(土) 21:21:57.50 ID:G+PMgZih0
フィリップ「照井竜たちは既にスタンバイしている。
       君と僕の戦いの隙に、狙いである腰のマキシマムスロットに起動したメモリを挿し込むためにね。
       能力では“ジョーカー”にとても及ぶべくも無いが、僕は作戦を知っている。
       君は僕が気にする余裕も無いように、かつメモリを挿しやすいように立ち回ってくれ。」

映司「分かりました、早速やりましょう!」

フィリップ「すまない、他人である君に負担を強いてしまって。」

映司「俺の方こそすみません。」

フィリップ「オーズ、何故君が謝るんだい?」

映司「フィリップさんは、本当なら大切な相棒に自分で手を差し伸べたいと思っている。
   だけど『成功率を高める』ために、あえてそれを我慢して他人である俺に任せてくれている。
    ・・・・オーズには、封印を解いた俺しかなれないらしいから・・・・貸せれば良かったんですけど。
    すみません、俺に出来る限り精一杯頑張りますから!」

フィリップ「・・・・すまなかった。」

映司「だから気にしないでください。」

フィリップ「いや、正直今まで迷っていたんだ。これで本当にいいのか。
       オーズの力を借りるほか無いと思いつつ、それで失敗したら、うまくいかなかったら。
       他のやり方があったんじゃないかと、自分がやれば良かったと悔やむんじゃないかと・・・・。」

映司「フィリップさん・・・・。」

フィリップ「だけど、もう迷いは無い。火野映司、君になら安心して僕の相棒を託せる!」

52: 2011/02/12(土) 21:24:03.17 ID:G+PMgZih0
どさっ!

イカ娘と、ダブルドライバーが落下した。
同時に、メダルが音を立てて散らばった。

イカ娘「いたた・・・・どうなったでゲソ?」

フィリップ「翔太郎!!」

フィリップがシュラウドマグナムもロストドライバーも放って駆け出した。

イカ娘「どうやら・・・・うまく行ったようでゲソね。」

イカ娘がほっと胸を撫で下ろした。
ふと、黒いメモリが刺さったままのダブルドライバーが目に入った。

イカ娘「これが元凶の・・・・うへえ、おっかないでゲソ。」

恐る恐るつまみながら“W”の刻印のメモリを抜き取り、大慌てで放り捨てた。


フィリップ「翔太郎、翔太郎!」

翔太郎「・・・・・・・・ぅ。」

フィリップ「翔太郎、無事かい!?」

翔太郎「俺は・・・・よく分からねえけど、無事みたいだ。おかげさまでな。」

フィリップ「気にしないでくれ、お互い様だ。」

53: 2011/02/12(土) 21:24:56.50 ID:G+PMgZih0
照井「左、立てるか?」

翔太郎「平気だって・・・・あれ、立てない。・・・・って、なんじゃこりゃーー!?」

見ると足の大半が地面に埋まっていた。

照井「やはり無理か。」

映司「すみません、動きを封じる必要があって。」

翔太郎「お前、オーズの・・・・。」

フィリップ「火野映司だ。君を助けるのに協力してもらった。」

翔太郎「そうか・・・・ありがとよ、火野。」

映司「どういたしまして。」

照井「その状態で決めても様にならないな。」

翔太郎「だな。もう一つすまないんだが、引っ張り出してもらえるか?」

映司「ああっ、すいません。ちょっと待っててください!」

翔太郎の両脇の部分に触手が巻き付く。

翔太郎「おっ?」

そのままずるりと引き抜かれた。

54: 2011/02/12(土) 21:26:05.86 ID:G+PMgZih0
イカ娘「久し振りじゃなイカ、翔太郎。」

翔太郎「お前も来てたのか。ありがとな、イカ娘。」

イカ娘「これぐらい朝飯前でゲソ!」

翔太郎「それにしてもお前の触手、ほんとに便利だな。」

イカ娘「はっはっは、恐れ入ったかでゲソ!
     ・・・・フィリップ、これはお主から渡してやるでゲソ。」

フィリップ「イカ娘ちゃん・・・・。」

微笑むイカ娘にフィリップが頷いた。

フィリップ「翔太郎・・・・もう一度、悪魔と相乗りする気はあるかい?」

翔太郎「誰がいつ降りるっつったよ、相棒。」

差し出されたダブルドライバーとジョーカーメモリを受け取った。

アンク「・・・・ん?ほう、あいつがコアメダルを抱え込んでいたとはな。」

そんなやり取りには関せずという様子で、アンクがメダルの回収に向かう。

照井「ところで、一体何があったんだ?」

翔太郎「分からねえ、“W”の刻印の黒いメモリのせいだろうがよ。」

アンクの足が止まる。

55: 2011/02/12(土) 21:27:12.63 ID:G+PMgZih0
フィリップ「そう言えば、あの黒いメモリは?ブレイクしてたのかい?」

イカ娘「いや、怖かったので抜いて置いてきてしまったでゲソ。」

照井「回収して破壊するべきだな。」

フィリップ「そうだね。調べておいた方がいい気もするが、下手に残しておかない方がいい。」

翔太郎「なんかヤバい雰囲気を放ってたもんな。」

アンクが振り返る。

アンク「おい、ダブルにアクセル。約束通り一仕事してもらおうか。」

声の方に目をやると、カザリの姿があった。

アンク「なるほど、合点が行った。
     大切なコアメダルをほっぽってどこに行ったかと思ってたが、
     ほうほうの体で逃げ回っていた訳か。」

カザリ「はぁ・・・・・・・・まあそんなとこ。しかも僕の最後の一枚までつけ狙われるしでまいったよ。」

自分の身体と、力とを取り戻したカザリがようやく一息つく。

56: 2011/02/12(土) 21:29:40.52 ID:G+PMgZih0
カザリ「・・・・1枚、足りないね。」

アンク「その1枚ならここだ。」

チーターのメダルを見せびらかすようにしながらアンクが言った。

カザリ「そうか、君がね・・・・。
     まあ、君達が複数持ってたから、うまくあいつをけしかけられたのかもね。」

アンク「ではこいつは礼としてもらっておこうか。もう諦めて尻尾を巻いて帰ったらどうだ?」

カザリ「安っぽい挑発は必要ないよ、アンク。僕にもプライドはあるんでね。
    ただ、だからと言って不利な状況が分からない程バカでもない。」

カザリがロストドライバーを腰にセットした。

翔太郎「あいつ、何をする気だ!」

カザリ「どうやらこいつと僕は相性がいいみたいでね。
    さっきはこいつに取り込まれかけたけど、今度は僕が利用する番だ!」

カザリの手には、黒いメモリがあった。

フィリップ「“W”のメモリの力を取り込む気か!?」

57: 2011/02/12(土) 21:30:43.16 ID:G+PMgZih0
カチッ

\\ワイルド!!//

カザリ「・・・・行くよ。」

一瞬ためらい、覚悟を決めたようにスロットに挿し込んだ。

\\ワイルド!!//

カザリ「ぐ・・・・お・・・・おおっーーーー!!」

翔太郎「どうやら・・・・早速こいつの出番のようだな。」

ダブルドライバーを腰にセットする。

アンク「映司、お前も行け!」

アンクが3枚のメダルを放る。

映司「言われなくっても。」

受け取ったメダルをドライバーにセットした。

照井「振り切るぜ!」

\アクセル!/

58: 2011/02/12(土) 21:31:32.13 ID:G+PMgZih0
フィリップ「翔太郎、君の肉体はもう限界が近い。あいつで行こう。」

翔太郎「そうだな・・・・イカ娘、俺の身体のこと、任せたぜ。」

イカ娘「任せろで・・・・え、翔太郎の身体?」

翔太郎「ああ、俺の身体だ。」

\ジョーカー!/

フィリップの差し出した手にファングメモリが跳び乗った。

フィリップ「そしてこれが、翔太郎が僕を『野獣の力』から解放してくれたことで得た力だ。」

\ファング!/

「「「「変身!」」」身!」

\アクセル!/

タカ!トラ!バッタ!

\ファング!/\ジョーカー!/

タ・ト・バ!タトバ、タ・ト・バ!!

W「さあ、お前の罪を数えろ!!」

59: 2011/02/12(土) 21:33:19.95 ID:G+PMgZih0
“三人”のライダーがカザリが変わったモノに挑む。
カザリの体はどす黒く肥大化し、
全身がやはり牙とも角ともつかぬもので覆われていた。
ロストドライバーから伸びた太い“牙”をツルとすれば、
そこから生えたイバラのトゲの様でもあった。

ガシュン

“Arm Fang!”

何よりの違いとして、これまであった
“余裕”や“遊び心”といったものを全く感じさせない、
狩りをする獣の様な殺気を撒き散らしていた。

W「はっ!」

映司「せいっ!」

アームファングと、そしてほぼ同時に繰り出されたメダジャリバーが“牙”にあえなく弾かれる。

照井「ふんっ!!」

アクセルが続けざまにとび蹴りを繰り出したが、
微動だにしない“カザリ”にむしろ押し返されてしまった。

翔太郎「なんだこいつ!」

照井「これがワイルドのメモリのパワーか!」

60: 2011/02/12(土) 21:34:44.24 ID:G+PMgZih0
戦闘力も見た目通りかそれ以上に強化されており、
“三人”がかりで攻撃を仕掛けてもなんとか五分という有様だった。

フィリップ「それだけじゃない!
      あいつもさっき言ってたが、『過剰適合』レベルなんだ!」

“カザリ”が全員まとめてなぎ払わんとばかりに豪腕を力任せに振るった。
ファングジョーカーとアクセルはそれをかわし“カザリ”の背後に回ったが、
避け切れなかったオーズはメダジャリバーで受け止める羽目になった。

映司「くっ!!」

大きく吹っ飛ばされて危うく倒れそうになったが、メダジャリバーを地面に刺してなんとか凌いだ。
しかし、既にメダジャリバーを杖のようにしてなんとか立っているといった様子だった。

翔太郎「火野!大丈夫か!?」

フィリップ「やはり動きが精彩を欠いている・・・・。
       君を元に戻すための作戦で、火野映司ももう限界が近いんだ。」

翔太郎「なんだって!?」

力の均衡が崩れた結果、ファングジョーカーもアクセルも“カザリ”の攻撃を受けきれず吹っ飛ばされてしまう。

照井「がは・・・・火野は単独で囮を引き受けていたんだ。
    俺達が暴走したドライバーを外すチャンスを作るために!」

翔太郎「ぐっ・・・・くそ・・・・俺のせいじゃねえか・・・・。」

アクセルともどもうつ伏せに倒れた状態のまま、翔太郎がぼやいた。

61: 2011/02/12(土) 21:40:05.99 ID:bHhY1RUy0
映司「それは違います!」

翔太郎「なに?」

映司「元凶はあの黒いメモリです。それに、俺は自分の意思で後悔しないために行動したんです。
    あんなメモリのせいで、大切な人を失って悲しむ人を見たくなかったから!
    だから、今俺達がすべきことは、あんなメモリに負けずに全員無事に帰ることです!!」

翔太郎「へっ!火野、お前俺よかよっぽどハードボイルドじゃねーか!」

フィリップ「今度は僕達が・・・・君を失った誰かが悲しまないようにする番だね。」

照井「さっきは殆ど見学だったからな・・・・行くぞ!!」

ファングジョーカーとアクセルが起き上がり、“カザリ”へ向けて駆け出した。

62: 2011/02/12(土) 21:41:40.81 ID:bHhY1RUy0
映司「くっ・・・・俺もいつまでも休んでいる訳にはいかない!」

アンク「映司、スピードで翻弄してやれ!」

アンクがチーターのメダルを投げる。

映司「分かった、アン・・」

メダルを両手でキャッチした時、既に目の前に“カザリ”が居た。

映司「・・・・え?」

ガードしようという判断をする間さえなく、がら空きの腹部に一撃をまともに喰らう。

映司「うわぁぁっ!!」

軽々と体が吹っ飛び、岩壁の高いところにめり込んだ状態で磔にされる。

映司「なんてパワーだよ・・・・反則だろ・・・・・・・・。」

翔太郎「火野!!」

フィリップ「まさか、これほどの化け物になるとはね・・・・。」

照井「貴様!!」

63: 2011/02/12(土) 21:43:24.68 ID:bHhY1RUy0
アンク「デカブツのくせになんてスピードだ!・・・・誤算だった。」

零れ落ちたチーターのメダルはカザリの方へと転がっていた。

アンク「ちっ、最悪だ。あいつまたパワーアップしやがるぞ!」

だが、“カザリ”はメダルに背を向けるとダブルとアクセル目がけて突進を仕掛けた。

アンク「・・・・なに?」

翔太郎「この野郎!」

“カザリ”がファングジョーカーとアクセルに両腕を突き出した。

W「ぐっ!」

照井「しまった!」

圧倒的なパワーとスピードの前に、同時に喉笛を潰されかける。
どちらも両手で“カザリ”の片腕に対抗するのがやっとだった。
それでも力負けし、ファングジョーカーとアクセルの体がずるずると後退させられる。

64: 2011/02/12(土) 21:45:04.03 ID:bHhY1RUy0
翔太郎「おいやべえぞ!この後ろは確か・・・・。」

フィリップ「ああ、崖だ。それもかなり切り立った。」

照井「このままでは真っ逆さまだぞ!」

翔太郎「あきらめてたまるか!こいつは・・・・なんとしてもぶっ倒す!」

フィリップ「ああ、とにかく・・・・僕らに出来る事をやるんだ!」

照井「分かった!まずは・・・・この状況を何とかするぞ!!」

そんな風に一見静かな攻防が繰り広げられる脇を、
カザリのコアメダルがころころと転がって行った。
そして・・・・そのまま転がり続けると・・・・崖下へと姿を消した。

アンク「なんだと・・・・。」

間も無くメダルと同じ運命を迎えそうなライダー達も必氏の抵抗を続けていた。

照井「くっ・・・・何かマシンを呼べるか?」

フィリップ「あいにくだが、少しでも力を緩めれば一瞬でやられそうだ・・・・。
      有効な反撃となる手段も存在しない。」

翔太郎「照井、そっちはどうだ!?」

照井「こちらも同じだ。せめて・・・・一瞬でも隙があれば・・・・。」

65: 2011/02/12(土) 21:46:41.63 ID:bHhY1RUy0
フィリップ「やはり・・・・現状維持でさえやっとか・・・・。」

その言葉通り、先程から着実に崖へと向け追い詰められていた。

翔太郎「くそ!このまま・・・・ただやられてたまるかよ!!」

フィリップ(・・・・・・・・翔太郎・・・・一つ質問がある)

翔太郎(・・・・なんだ?)

フィリップ(地獄の底まで・・・・悪魔と相乗りする勇気はあるかい?)

翔太郎(どういう・・・・ことだ?)

フィリップ(今の僕らに出来るのは・・・・火野映司たちのために時間を稼ぐことだ)

翔太郎(・・・・かもな)

フィリップ(だから、崖っぷちまで粘れるだけ粘ったら・・・・こいつを道連れに飛び降りる!)

翔太郎(・・・・なるほど、下手したら地獄行きだな・・・・・・・・乗ったぜ、相棒!!)

フィリップ(・・・・いいんだね?僕らは分からないが、
       こいつは落下しただけでは倒れないだろう。そうなれば・・・・)

翔太郎(ああ、それでもいい!落ちた先で、お前と最期まであがいてやらぁ!)

66: 2011/02/12(土) 21:48:00.94 ID:bHhY1RUy0
照井「二人とも・・・・俺も仲間に入れてもらおうか・・・・。」

翔太郎「何?」

照井「お前達の考えている事くらい察しはつく・・・・そろそろ付き合いも長いからな・・・・。
    確実性を考えれば・・・・お前達だけでやるよりもいいだろう。」

翔太郎「何を言ってるんだ!お前には亜・・」

照井「左!」

その気迫に翔太郎も思わず口をつぐむ。

照井「・・・・その先は言わないでくれ・・・・ハードボイルドならな。
    あいつの事は・・・・俺も気がかりなんだ。」

翔太郎「・・・・すまねえ。」

フィリップ「本当に・・・・いいのかい?」

照井「ああ。俺達に出来ることは・・・・火野に希望を託すことだからな。」

翔太郎「火野が・・・・切り札って訳だな!」

フィリップ「そういうことになる・・・・こいつをどうにかするにはそれしかない。」

67: 2011/02/12(土) 21:50:15.37 ID:bHhY1RUy0
映司「う、うぅ・・・・。」

頬をはたく感覚に映司が目を覚ます。
泉刑事の身体から分離したアンクがそこに居た。

映司「アンク、来てくれたのか・・・・。
    くっ・・・・どうやら抜け出せないみたいだ、もう一度サゴーゾのコンボを。」

アンク「・・・・映司、これを使え。」

差し出された右手に、アンクが2枚のメダルを載せた。

映司「え?これって・・・・。」

アンク「今のあいつはグリードですらない。
     己のコアメダルも眼中に無い、ただのケダモノだ。」

68: 2011/02/12(土) 21:51:37.87 ID:bHhY1RUy0
映司「アンク、お前・・・・。」

アンク「手向けというやつだ。」

手だけの状態ではあったが、映司にはアンクの感情が伝わってきた気がした。

映司「・・・・分かった、アンク。」

ダメージのために、もたつきながらもメダルを交換し終えたオーズに、
アンクがオースキャナーを手渡そうとする。

映司「アンク、お前がやれよ。」

アンク「・・・・・・・・ああ。」

ピキ ピキ ピキーン

タカ!クジャク!コンドル!!

タージャードールーー!!

岩を押しのけ、天をも衝かん紅蓮の翼が現れた。

映司「使うぞ・・・・お前の力!」

69: 2011/02/12(土) 21:53:00.48 ID:bHhY1RUy0
照井「く・・・・すまない、そろそろ限界が近い・・・・。」

フィリップ「奇遇だね、僕らもだ。」

翔太郎「さっきの照井じゃねーが・・・・俺達もほんと息が合うようになってきたじゃねーか。」

照井「やな・・・・息の合い方だな。」

フィリップ「・・・・・・・・二人とも。」

ファングジョーカーとアクセルが顔を見合わせ頷いた。
次の瞬間だった。
ファングジョーカーとアクセルの体に何かが巻きつけられる。

フィリップ「これは・・・・。」

翔太郎「イカ娘!!」

巻きついたのはイカ娘の触手だった。
背後の樹にも触手を巻きつけて必氏に踏ん張りを利かせているが、
当の本人も徐々に崖の方へと引き摺られている。

70: 2011/02/12(土) 21:54:10.01 ID:bHhY1RUy0
フィリップ「イカ娘ちゃん、無理だ!」

照井「やめるんだ・・・・お前まで巻き込まれるぞ!」

翔太郎「出来ねえことすんじゃねえ!・・・・お前も引っ張られてるじゃねーか!」

イカ娘「いやでゲソ!!・・・・お主達が言ったんじゃなイカ!
     最後まであきらめない、やれることがあるのに何もしないで後悔したくないって!!
     だから・・・・たとえ出来ないことだとしたって、私は絶対にやめないでゲソ!!」

恐怖もあるのだろう、よく見ればイカ娘の足は小刻みに震えていた。

照井「イカ娘・・・・。」

翔太郎「まったくよお・・・・地上を侵略しようなんて奴の言うことは違うぜ!」

フィリップ「でも・・・・目が覚めたよ。」

ファングジョーカーとアクセルが再び顔を見合わせ頷く。

フィリップ「あきらめないというのは、今出来る事だけをすることじゃなかった・・・・。
      出来ないかもしれない事でも、とにかくやってみることだ!!」

照井「そうだな。希望を託す、か・・・・希望を手放してしまったら、後には絶望だけだ!!」

翔太郎「俺も火野に勝手に重いもんを押し付けようとしてたぜ。
      自分にとって、永遠の切り札は自分だけだ!!」

71: 2011/02/12(土) 22:03:08.87 ID:G+PMgZih0
フィリップ「やろう!僕らに出来る限りを。そうすれば、一人一人では無理でも、道は開けるかもしれない。
       翔太郎を・・・・元に戻せたように!!」

翔太郎「ああ、俺達はそうやって戦い抜いてきたんだ!!」

照井「そして、これからもだ!」

それまで押されっ放しだったのがなんとか止まった。
だが、止まったものの押し返すまでには至らない。

翔太郎「くっ・・・・持久戦じゃ不利だぜ?」

照井「だったら一気に行くまでだ!」

エクストリームメモリが飛来し、“カザリ”の頭部に体当たりを食らわせた。

フィリップ「それだけでは有効でなくても、それを積み重ねれば!」

繰り返しの攻撃に、ほんのわずかにだが“カザリ”がのけぞった。

ブォォオォォン!!!

一瞬の間隙にパワースロットルをひねったアクセルが、瞬時に膨大な熱量を撒き散らす。
あまりの高温に、“カザリ”の手が反射的に離れた。

「「「はっ!!」」」

“カザリ”の顎をファングジョーカーとアクセルの拳が同時に打ち上げ更に後退させる。
体勢を立て直した“カザリ”が再び前進しようとした時、背中で爆発が起きた。
怒りと共に振り向いた先の空には、オーズタジャドルコンボの姿があった。

72: 2011/02/12(土) 22:06:22.77 ID:G+PMgZih0
フィリップ「今だ!」

翔太郎「ああ!」

“カザリ”の両腕を、ファングジョーカーとアクセルがそれぞれ捉え拘束する。

照井「火野、頼む!」

アンク「行け・・・・映司!」

アンクの手により、再度メダルがスキャンされる。

“スキャニングチャージ!!!”

映司「ああ!」

“カザリ”に向かって、華麗に、そして静かに空を滑り降りる。
そして、くるりと身を翻すと、正面から両足での蹴り下ろしを喰らわせた。
猛禽の両肢が食い込んだ肩口から滑り降り、そのまま腰のドライバーを鷲掴む。

映司「このメモリだけは・・・・ほっとけない!」

しかし、既に融合したような状態なのか外れる気配は無かった。
痛みに暴れるように“カザリ”の両腕が振り回され、
力尽きつつあったファングジョーカーとアクセルも放り出される。

フィリップ「そのままでは危ない!いったん離れるんだ!!」

73: 2011/02/12(土) 22:07:49.68 ID:G+PMgZih0
映司「うおおぉぉぉぉっ!!」

至近距離からクジャクメダルの弾丸が雨あられと乱射された。
“カザリ”の巨体が勢いに押され、メリメリと何かを引きちぎるような感触があった。

照井「いや・・・・いける!火野に加勢するぞ!!」

\アクセル!マキシマムドライブ!!/

翔太郎「ああ、トリプルマキシマムだ!!」

\ファング!マキシマムドライブ!!/

フィリップ「これで終わりだ!」

ファングストライザーとアクセルグランツァー、二つの必殺キックが同時に放たれる。

「「「「ライダー・トリプルマキシマム!!」」」」

ドォ・・・・ン

一斉に炸裂した必殺技によりドライバーが強引に引き剥がされた。
カザリであった部分はそのまま吹っ飛び、崖下へと消えて行った。
そして、地に降り立ったオーズがドライバーを放すと同時に、
黒いメモリが風に溶けるように消えた。

74: 2011/02/12(土) 22:08:44.46 ID:G+PMgZih0
アンク「・・・・終わったか。」

再び泉刑事の身体に憑いたアンクが崖下へと視線を送る。
背後からその表情は窺えなかった。

映司「アンク、カザリは・・・・。」

アンク「さあな。くたばってなければ、また会いもするかもな。」

それだけ言うと崖に背を向ける。

映司「アンク・・・・お前・・・・。」

アンク「ふん、タダ働きになっちまったな。帰るぞ。」

淡々と言い、すたすたと歩き出した。
そんな一部始終を、物陰から観察していた男が居た。

「自我を侵略するメモリの実験、まずはこんなところでしょうか。
 ・・・・さて、実験が計画通りに済んだお礼に、彼のメダルでも回収して帰るとしましょうか。
 ガイアメモリを利用した擬似オーズの実験にも使えそうですしね・・・・。」

75: 2011/02/12(土) 22:10:18.35 ID:G+PMgZih0
戦いも終わり、映司の誘いを受けた翔太郎達はクスクシエでちょっとした打ち上げをしていた。

翔太郎「・・・・で、イカ娘の奴なんでご機嫌ななめなんだ?」

フィリップ「どうやらアクセルの放熱に巻き込まれたらしい。」

イカ娘「恩を仇で返されたでゲソ・・・・(ぐす)。」

照井「緊急時とはいえ自慢の触手をすまなかった。お詫びに冷たいアイスでもどうだ?」

イカ娘「そんなもので釣られたりしないでゲソ!」

照井「珍しいエビのアイスだそうだ。」※本当にあったりします※

イカ娘「・・・・・・・・まあ、わざとじゃないのに大人気ないことは言わないでゲソ。」

照井「食べるか?」

イカ娘「・・・・ん。」

イカ娘がアイスの盛られた容器を受け取る。

イカ娘「うむ・・・・お主達も今回は大変だったじゃなイカ。ばんばん食べるがいいでゲソ。」

翔太郎「見事にエビでイカが釣れたな。」

フィリップ「でもイカ娘ちゃんらしくて安心したよ。」

76: 2011/02/12(土) 22:11:21.14 ID:G+PMgZih0
アンク「ちょっと待て。そのレアなアイスとやら、俺もいただこうか。」

映司「あれが最後の一個だってさ。」

アンク「なに!?・・・・おい、そいつを渡してもらおうか。」

イカ娘「何を言うのでゲソ!これは私の功績を讃えたアイスじゃなイカ!」

アンク「ふん、俺の手助けあっての勝利だろ?」

映司「そうだっけ?」

アンク「俺のコアじゃなきゃ間に合わなかったろうが!」

映司「ああそっちか。確かにそうかも。」

アンク「ほれ見ろ。」

映司「だけど、結局トリプルマキシマムじゃなきゃ勝てなかったっぽいし、
    どっちも必要だったんじゃない?やっぱ。」

アンク「だったら・・・・弱肉強食か。」

イカ娘「大自然を生きる物としてそう言われたら引き下がれんでゲソ!」

照井「俺のアイスが要らぬ騒動を・・・・。」

翔太郎「付き合いきれねえからあっちで飲み食いしてようぜ。」

77: 2011/02/12(土) 22:12:40.41 ID:G+PMgZih0
<<数分後>>

アンク「ふん・・・・この体ならこんなもんか。」

映司「お前、女の子相手に・・・・。」

イカ娘「いただきますでゲソー♪」

アンクは10本の触手でがんじがらめにされていた。

映司「びっくりするくらい口だけだったなー。」

アンク「うるさい!・・・・はん、だったら奥の手を見せてやる!!」

イカ娘「あっ!?」

アンクが泉刑事の身体を離れてアイスを奪取した。

アンク「どうだ見たか・・・・このアイスは俺のも・・」

腕だけのアンクががっしと掴まれた。

比奈「アンク・・・・何してるのかな?お兄ちゃんの体は大切にって・・・・言ったよね?」

アンク「こら、離せ!トラウマが蘇るだろうが!!」

比奈「毎日のアイス・・・・無しにするよ?」

アンク「ちっ・・・・おい、聞いたか?その体は借り物でな。そういう事情だから別の勝負だ。」

78: 2011/02/12(土) 22:13:42.54 ID:G+PMgZih0
イカ娘「別の勝負?」

アンク「じゃんけんだ。」

イカ娘「ほう、受けて立とうじゃなイカ!」

アンク「馬鹿め、俺は手のプロだぞ?」

映司「それ、関係あるのか?」

アンク「メダル投げる時のコントロールだって凄いだろうが!」

映司「・・・・なるほど。」

アンク「それにじゃんけんというのは、ある意味心理戦であり頭脳戦だ。
    あんな奴に俺が負ける訳・・・・・・・・ちょっと待て、やめだ。なんか嫌な予感がした。」

※イカ娘:じゃんけんゲームにて1枚から『メダルを稼ぐ才能がある』程度の能力※

映司「だから二人で分ければいいじゃん。」

79: 2011/02/12(土) 22:15:13.96 ID:G+PMgZih0
<<さらに数分後>>

アンク「80%!これ以上は譲れん!」

イカ娘「こっちが80%でゲソ!」

アンク「お断りだ!!」

イカ娘「こっちもでゲソ!!」

映司「さっきから二人とも取り分変えてないじゃん。」

アンク「うるさい、退いて損するのは時間が無い場合だけでいい!」

映司「何かあったのか?・・・・・・・・あ、でもやっぱ時間は大事だったかも。」

アンク「何?・・・・げ!」

映司が指差した方を見ると、アイスはすっかり解けていた。

80: 2011/02/12(土) 22:15:54.67 ID:G+PMgZih0
アンク「・・・・くそっ!」

映司「あーあ、欲張るから。もったいない。」

アンク「うるさい!・・・・ちっ、無駄な時間を過ごした。」

イカ娘「80%!」

アンク「お前もうるさい!あんなもの全部くれてやる!!」

イカ娘「え、いいのでゲソ?お主案外いい奴じゃなイカ!」

イカ娘が満面の笑みでアイスだったものを飲み干す。

映司「あー、エビ成分は変わらないもんね。」

イカ娘「うーむ・・・・・・・・あんまり美味しくなかったでゲソ。
    これなら普通のエビとアイスを食べた方がよっぽど良かったでゲソ。」

アンク「もう黙れ!」

81: 2011/02/12(土) 22:21:12.84 ID:bHhY1RUy0
比奈「うんしょ、うんしょ。」

飲み物が入った金属製の樽を運ぶ比奈に翔太郎が声を掛ける。

翔太郎「おいおいシンデレラ、君は舞踏会に参加しないのかい?」

比奈「んしょ、んしょ・・・・・・・・。」

翔太郎「・・・・・・・・ぉ-ぃ。」

比奈「・・・・・・・・・・・・え、もしかして私ですか?」

素通りしかけた比奈が振り向いた。

翔太郎「みんなで楽しくやろうぜ?」

比奈「はい、でもこれを運び終わってから。」

翔太郎「じゃあ俺に運ばせてくれ。今夜は俺が君の魔法使いさ。」

比奈「でもこれって結構重いですし、お客さんにそんな事・・・・。」

翔太郎「それを聞いちまった以上、ハードボイルドとしても
      レディにそんな重いものを運ばせる訳にはいかねえなあ。
      なーに、今回は火野にも手を焼かせちまったしな。その恩返しさ。
      それに・・・・パーティーの席には花が必要だろ・・・・(キリッ)」

比奈「すみません、じゃあお言葉に甘えて・・・・あそこのテーブルの横に置いてください。」

82: 2011/02/12(土) 22:22:15.10 ID:bHhY1RUy0
翔太郎「分かった、任せときな。」

ポーズも決めて比奈を送り出し、樽に手をかける。

翔太郎「さーてと。よっ、と・・・・・・・・?」

軽く持ち上げようとしたが動かなかった。

翔太郎「くっ・・・・ふん!!くそぉぉ!」

屈み込んで全力で持ち上げようとしても無理だった。

照井「何をやってるんだ、左?」

フィリップ「パントマイムの練習かい?」

翔太郎「ちげーよ、こいつが吸い付いたように動かねえんだ・・・・。」

既に息も切れ出していた。

照井「何?そんな大げさな・・・・・・・・!?」

やはり動かなかった。

照井「・・・・馬鹿な。」

83: 2011/02/12(土) 22:23:37.24 ID:bHhY1RUy0
フィリップ「諦めて正直に言ったら?」

翔太郎「バカ言うな、あんな風にカッコつけておいて『鍛えてませんから』とか言えるか!」

フィリップ「確かに。無様すぎる響きだね。」

照井「ちょっと手を貸してみてくれ。」

フィリップ「分かった。」

翔太郎「せーの・・・・ふんっ!!」

三人がかりで挑んだがビクともしなかった。

翔太郎「ちょっと待てよ、まがりなりにも大の男が三人だぞ?」

照井「比奈という子、普通に持ってたよな?」

フィリップ「流石に興味深すぎる。」

84: 2011/02/12(土) 22:24:54.50 ID:bHhY1RUy0
照井「・・・・こうなったら!」

翔太郎「お前何アクセルドライバー出してんだ!」

照井「俺にも男の意地がある。」

翔太郎「客観的に光景を考えろ!レストランで樽運ぶライダーが居るか!」

((白エプロンでお客に手を振るスマイル満開なアクセル))

フィリップ「・・・・滑稽だね。」

翔太郎「出前はマッハ全開で早そうだけどな。」

照井「しかし、逃げれば俺はまた自分を許せなくなる・・・・。」

翔太郎「う・・・・もうあの時みたいな暴走はすんなよ?」

三人が話している目の前で樽がひょいと持ち上がった。

85: 2011/02/12(土) 22:25:45.17 ID:bHhY1RUy0
翔太郎「おぉ!?・・・・おいイカ娘・・・・お前、それは!」

何本かの触手を絡めただけで軽々と持ち上げていた。

イカ娘「別に似たようなことやりなれてるから構わんでゲソ。」

照井「いや、そうじゃなくてだな・・・・。」

イカ娘「もしかして火傷の心配をしてくれてるのでゲソ?
    ふふっ、別に痛くないし、気にしなくてももう怒ってないでゲソよ。
     それより、どこへ運ぶのか教えてくれなイカ?」

翔太郎「・・・・あそこのテーブルの横。」

イカ娘「分かったでゲソ。」

涼しげな笑顔と軽い足取りで運び、言われた通りの場所に下ろした。

翔太郎「鍛えるか・・・・俺達。」

照井「・・・・そうだな。」

86: 2011/02/12(土) 22:27:42.63 ID:bHhY1RUy0
宴もたけなわといった感じで談笑していると、照井のビートルフォンに着信があった。

照井「亜樹子か。」

翔太郎「おーおー、お熱いねえ。気にせず出ろよ。怒らせると面倒だぞ。」

ピッ

亜樹子『あっ竜君、今大丈夫!?なんかまた大変だって・・・・。』

照井「ああ、もう一件落着した。左も無事だ。」

亜樹子『良かったー。』

87: 2011/02/12(土) 22:29:28.14 ID:bHhY1RUy0
照井「いつもいつも心配かけてすまないな。」

亜樹子『ううん、信じてるもん。・・・・だから、祝勝パーティーの準備して待ってたよ!』

照井「・・・・・・・・パーティー?」

亜樹子『そうだよ。イカ娘ちゃんの歓迎にってやつを祝勝も兼ねて豪華にしたんだ!』

照井「あ、ああ・・・・あれか。あれだな。」

亜樹子『遅くまで戦ったりでもうお腹ペコペコでしょ?追加で何か作っちゃおうか?』

照井「いや、いい!大丈夫だ!!」

亜樹子『そう?もう準備できてるから、なるべく早く帰って来てね。じゃあねー♪』

・・・・ピッ

88: 2011/02/12(土) 22:31:05.58 ID:bHhY1RUy0
翔太郎「どうしたんだよ照井、表情暗いぞ?」

照井「亜樹子が・・・・パーティーの準備をしていた。」

フィリップ「あ!昼に話してた!」

照井「それだ・・・・昼に連絡があった・・・・。」

翔太郎「ちょっと待てよ、俺聞いてねえぞ!」

フィリップ「もう結構お腹たまってるよね。」

照井「しかも、祝勝記念で料理を豪勢にしたらしい・・・・。」

翔太郎「おいおい、俺もう満腹に近いぞ!」

89: 2011/02/12(土) 22:31:51.93 ID:bHhY1RUy0
フィリップ「よそで食べたから食べられない、なんて言ったら亜樹ちゃん怒るね。」

照井「怒るなんてもんじゃない!三食イナゴの佃煮とかになるぞ!!」

フィリップ「三食で済めばいいけど。」

翔太郎「じゃあどうすんだよ!?」

照井「走って帰るとかしてなるべく腹を減らすんだ!」

翔太郎「バカ言うなよ!どれだけ時間かかると思うんだ。」

フィリップ「遅くなったら遅くなったで絶対怒るよね・・・・。」

翔太郎「美味そうに平らげなくてもな・・・・。」

照井「八方塞か・・・・。」

翔太郎「フィリップ、何かいい方法ないか?」

フィリップ「いい方法・・・・イナゴを美味しく食べる方法とかかい?」

翔太郎「あきらめんなフィリップ!」

照井「絶望が・・・・俺達のゴールだ!!」

                        -終-

※亜樹子の料理(エビ)はイカ娘が美味しくいただきました。

90: 2011/02/12(土) 22:32:46.58 ID:bHhY1RUy0
【空気を読んでやめたNG集(1個だけ)】

クスクシエの扉が開けられた。

比奈「いらっしゃいませ、3名様ですか?こちらのお席へどうぞ。メニューは・・」

フィリップ「オーズを。」

比奈「えっ?・・・・も、もしかして『お酢』ですか!?」

フィリップ「それはもう全て究めた。オーズを。」

アンク「おい比奈、そいつらは客じゃない、接客しても無駄だ。」


※理由:シリアスな空気にしたいのに出だしからコントやってる場合じゃなイカら※

91: 2011/02/12(土) 22:57:26.99 ID:QjEmPVtS0
おつ!

93: 2011/02/13(日) 00:22:58.70 ID:xlsesth20
イカ、この間の書き込みに触発されて考えてみたオーズ主体のお話。

“盗る”さんの設定が不明だったり、本編未完だったりで、
お蔵入りする可能性も○○ので体験版レベルだけれどちょいと先出し。
(全くの余談ですが、他にアニマル繋がりゲキレンジャーや
ホシイナーの出てくるプリキュア555とかも考えかけたり)

引用元: イカ娘「続(ガイアメモリ)挿さなイカ?」