にこ「……」

希「……」

にこ「……嫌な天気ね」

希「そうやね」

にこ「全く、雨の日は憂鬱よね」

希「そう？ウチはそんなことないけど」

にこ「は？」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」

にこ「何それ、どういうこと？」

希「言葉通りやん？」

にこ「……嫌な天気なんじゃないの？」

希「嫌な天気やね」

にこ「じゃあ……」

希「雨が嫌いー、なんて、ウチ一言もゆっとらんよ？」

にこ「……意味分かんない」

希「真姫ちゃんかな」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「何で雨の日は憂鬱なん？」

にこ「何でって……そんなの、濡れるからに決まってるじゃない」

希「にこっち、発情してるん？」

にこ「……」 


希「ごめん、さすがにまだ早すぎたね」

にこ「そこ！？」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

希「濡れるのがイヤなん？」

にこ「そーよ。折角の自慢の髪の毛が台無しになるじゃないの」

希「え、そのツインテール、雨の影響及ぼすん？」

にこ「大ありよ！雨が降ってると湿気でぺたっとなるし！こう、ふわっと感が……！」

希「気のせいやと思うけどなー」

にこ「いつものにこのツインテールとはひと味もふた味も違うのよ！比べてみなさい！」

希「そんなこと言われても……」

にこ「ん」

希「ん？」

にこ「特別に写メ撮らせてあげるから、明日確認してみなさい」

希「結構です」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「他にも……！」

希「まだ聞いてないんやけど」


にこ「……」

希「他には？」


にこ「お化粧も崩れるし、にこの美貌が台無しになるの！わかる！？」

希「まぁ、それは女の子やしね、確かに分からんわけやないけど」

にこ「でしょ！？今日のにこの美貌が80にこにーだとしたら、いつものにこは120にこにーね！」

希「よーわからん数値と単位やなー」

にこ「分かりやすいでしょ！ほら、にっこにこにー♡」

希「うーん」

にこ「いつものキレがないでしょ！？にっこにっ」

希「80にこにーでもにこっちは可愛いよ」

にこ「……」ﾋﾟｼ


希「……ごめん」

にこ「……///」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」

にこ「まぁ、そんなだから……」

希「憂鬱やんね」

にこ「分かってもらえたかしら」

希「うーん、少しだけ」

にこ「……結構具体的に説明したと思うんだけど」

希「勢いが強すぎたかなぁ」

にこ「……60ぐらいがちょうどいいのかしら」

希「40でもいいかも」

にこ「にこぉ……」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」

にこ「ところでさ」

希「なにー？」

にこ「さっきはなんであんなこと言ったのよ」

希「あんなこと？」

にこ「だから、雨は嫌いじゃないのに、嫌な天気だって言ったことよ」

希「ん？」

にこ「え？」

希「……ウチ、雨のことをさして嫌な天気なんて言った覚えないよ」

にこ「は？」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「え、だって、あんた……この空見て一緒に……」

希「んー……」

にこ「ちょっと待って」

希「え」

にこ「あ、あんた……何か見えてるんじゃ無いでしょーね」

希「いや、」

にこ「いい、言わないで！分かった、分かったから！」

希「まだ何も……」

にこ「あんたには雨以外の何かが見えてんでしょ！そういうことね！納得だわ！」

希「……耳塞がれちゃ反論できんやん」

にこ「……」ｶﾞｸｶﾞｸ


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」


にこ「……」ﾊﾟｯ

希「何も、」

にこ「……」ｷﾞｭｰ


希「……」 


にこ「……」ﾊﾟｯ 　 

希「見え、」

にこ「……」ｷﾞｭｰ 　 


希「……」 　   


にこ「……」ﾊﾟｯ 　   

希「とらんよー！」

にこ「……」ｷﾞｭｰ 　   



希「くっそー」 　   



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」ｷﾞｭｰ

希「……」





希「……しゃーないやん」ｶﾞﾀ

にこ「……」











ﾜｼﾜｼｽﾙﾖｰ!!

ｷﾞｬｰｯ!!



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」ｹﾞｯｿﾘ

希「……」ﾂﾔﾂﾔ


にこ「……な、何するのよ……」

希「だってにこっち、話聞いてくれないんやもん」

にこ「聞きたくないのよ……！」

希「だからぁ、怖い話やないんよ」

にこ「あんたの話は大概怖いのよ……！」

希「もーそんなこと言ってー……」

希「……あ」

にこ「？」

希「……」ﾆｷﾞﾆｷﾞ

にこ「……な、なによ？」

希「にこっちの言うとおりかも」

にこ「は？」

希「雨の日のにこっちの胸、いつもより張りが……」

にこ「怖い話はやめてぇぇぇぇぇぇぇ！！！！」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」

希「さっきの話、続きしてもいい？」

にこ「怖くなければどうぞ」

希「怖ないよー、安心して♪」

にこ「一気に不安になったんだけど」

希「ウチ、別に雨が嫌いやないんよ。雨の日にこうやって暗くなる空が嫌いなんよ」

にこ「……まぁ、そりゃあ、雨だからね」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

希「暗くならない雨だってあるよー？」

にこ「そうかしら」

希「そうなんよ」

にこ「……希がそう言うんなら、そうなのかもね」

希「あれ？信頼してくれてるん？」

にこ「……まぁ、うん」

希「ありがとにこっち♪」

にこ「……///」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「で、暗い空の何が嫌なわけ？」

希「うん……」

にこ「……？」

希「えっとな」

希「……何か、この空の先にある亀裂から禍々しい闇が降り注がれて、この世界をつつ…」

にこ「まてい」

希「……どしたんにこっち？」

にこ「怖い話禁止」

希「えー」

にこ「えーじゃないわよえーじゃ」

希「だってー」

にこ「だってでもない。大体さっきあんた、怖くないって言ったわよね……？」

希「あー」


希「てへぺろ♪」


にこ（……可愛い）


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」






希「にこっち、可愛いなんて照れるやん♡」

にこ「怖い話はやめてぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ！！！！！」



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

希「本当の話を言うとね」

にこ「」ｷﾞｭｰ

希「……真面目な話やよ？」ﾊﾟｯ

にこ「……？」


希「……ウチ、暗い空が苦手なんよ」

にこ「苦手……？」

希「うん……というよりも、一人きりが苦手っていうのもあったんだけど」

希「ウチの家って、両親が働いてて全く帰ってこないって話は前にしたやん？」

にこ「そうだったわね」

希「だから、子供の頃から家に一人きりなのが多かったんよ」

希「夜も……結構遅くまで一人で過ごしてた」

にこ「……」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

希「だから、暗いのが怖いんよ」


希「と言っても、えりちみたいに幽霊が怖い～みたいなそういうんちゃうよ？」

希「空が暗いとな、なんだか心まで暗くなってくる気がして……」

にこ「……」


希「ひとりぼっちで過ごす中、あのどんよりした雲の下にいるとな……それだけ悲しくなってしまって」

希「……いっつも、家でメソメソ泣いてたんよ」

にこ「……そう、だったの」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

希「だから、この暗い空が嫌い」

希「……そんな私の一人の心の闇を、抉ってくるから」

希「雨は、むしろ好きな方なんよ？」

希「暗鬱な気持ちの中で、その激しい音が少しでも寂しさを忘れさせてくれたから」

希「……人によっては、それが寂しさを倍増させるらしいけどなー」

希「でもウチは逆、それが心地よかった♪」


にこ「……」



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」




にこ「……なんか、ごめん」

希「別にええよ♪」




ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」


にこ「そっか……にこの家は、両親が家にいなくても、チビ達がいたからね……寂しさはなかったかもしれない」

希「うん、そうやね。姉弟でわいわいしてたら、それだけで楽しいもんな♪」

にこ「あんた……見かけによらず苦労してるわよね」

希「それは褒め言葉なん……？」

にこ「褒めてんのよ……さすが希だわ」

希「なんかよーわからんけど、ありがとな♪」



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

希「あ、でもな、雨の日は近くのアパートで自頃した子の霊が……」

にこ「怖い話はやめてぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇっ！！！！」


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」


にこ「なんかさ、つまんないことで雨が嫌いって言って悪かったわ」

希「そう？」

にこ「いやだって、希の話聞いちゃうとさ……」

希「あはは、そんなの昔の話やもんー。寂しさに慣れてない子供の頃の思い出」

にこ「……」

希「別にええんよ。多分、にこっちくらいの感想が普通やと思うよ？」

にこ「そう……？」

希「多分穂乃果ちゃんと凛ちゃんあたりも、割とどうでもいい理由で嫌いって言いそう♪」

にこ「あれ？にこ達ディスられた？」



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」


希「でも、ウチ……雨の日のにこっちは好きやよ」

にこ「は？」

希「そーやって机に肘付いて、物憂げに空を見上げる仕草」

にこ「ん……」

希「割と様になってるやん♪」

にこ「それは……喜んで良いの……？」

希「ええんちゃう？ウチ的に付けていいんやったら、140にこにーくらいあるよ」

にこ「紅白出場待ったなしね……」

希（どんな基準なん……？）


ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

希「それにな」

にこ「？」

希「雨の日は練習もできひんし、こーやって二人で一緒に空見てられるやろ？」

にこ「あー……」

希「ウチ、割と好きなんよ、この時間」

にこ「えー……///」

希「えーってショックやわー」

にこ（恥ずかしいのよ……///）



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」



にこ「……私も」

希「ん？」


にこ「ずっと一人だったからね」

にこ「三年生まで……」

にこ「だから、希と一緒にいられる時間は……」


にこ「好きかも///」


希「……///」



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」











にこ（いつも見守ってくれて、ありがと……）



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」

希「……」

にこ「さて、いつまでも空見上げてる訳にもいかないし、そろそろ帰るわ」ｽｸ

希「あ、うん……」


にこ「……」

希「……」


にこ「……何してるの？」

希「え……」


にこ「一緒に帰りましょ」

希「あ……」



希「うん♪」



ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……

にこ「……」ﾄｺﾄｺ

希「……」ﾄｺﾄｺ


希「なぁなぁにこっち」

にこ「何よ？」


希「どういたしまして♪」

にこ「怖い話はやめてぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇっ！！！！」




ｻﾞｧｧｧｧｧｧ……







おわり。

乙
よかった