1: 2013/03/20(水) 20:50:16.19 ID:oBCmzoW+O
―深夜 海上―

バルクホルン「今のところ航行に問題はない。この分だと今夜中は大丈夫だろう」

『了解。くれぐれも気をつけて下さいね』

バルクホルン「ああ。通信を終了する」

バルクホルン「……」

ハルトマン「へへ」

バルクホルン「なんだ」

ハルトマン「トゥルーデと二人きりで夜間哨戒なんて、久しぶりだなって」

バルクホルン「そうか? いつもお前と一緒にいるから、久しぶりという感覚は無いな」

ハルトマン「そういうことじゃないよ」

バルクホルン「?」

4: 2013/03/20(水) 20:54:57.44 ID:oBCmzoW+O
ハルトマン「……」

バルクホルン「何をむくれてるんだ」

ハルトマン「もうトゥルーデなんて知らないよー」ブゥゥゥン

バルクホルン「おい、航路を外れるな! 全く……」

バルクホルン「……今夜は晴れて良かった。雲の中から奇襲されることがないからな」

ハルトマン「またお堅いこと言っちゃって。もっとあるでしょ、こんなにたくさん綺麗な星が瞬いてるんだから」

バルクホルン「私らしくもないな」

ハルトマン「うーん、確かにそうだね」

バルクホルン「なんだと? 待てぇ!」

ハルトマン「じ、自分で言ったんじゃん! うわぁっ!」

ハルトマン「……うん? なんだろ、あれ」

5: 2013/03/20(水) 20:59:36.68 ID:oBCmzoW+O
バルクホルン「捕まえたぞ。私が感受性に乏しいなどと……」

ハルトマン「トゥルーデ、あの星」

バルクホルン「ん?」

ハルトマン「……なんでかな、凄く気になるんだけど」

バルクホルン「どれだ? 私にはどれも区別が付かんな」

ハルトマン「……やっぱりトゥルーデ、もうちょっとロマンチックな心を養った方がいいよ」

バルクホルン「またお前は……!」

ハルトマン「へへーんだ」

ハルトマン「……」

7: 2013/03/20(水) 21:03:08.06 ID:oBCmzoW+O
―明け方 基地―

ハルトマン「ふああ……お疲れさま、トゥルーデ」

バルクホルン「ご苦労だったな」

ハルトマン「お休み……」

バルクホルン「おい、寝るな! まず汗を流してからだな」

ハルトマン「めんどくさいよ……部屋まで運んで」

バルクホルン「この……」

ハルトマン「くー」スヤスヤ

バルクホルン「……仕方ないやつだ」

8: 2013/03/20(水) 21:09:12.95 ID:oBCmzoW+O
―バルクホルンとハルトマンの部屋―

バルクホルン「これで良し。ジークフリート線を越えるわけにはいかんからな、しばらくしたら叩き起こして自分のベッドに戻してやる」

バルクホルン「さ、私は風呂に」

ハルトマン「トゥルーデ……」

バルクホルン「うん?」

ハルトマン「……」

バルクホルン「……ハルトマン? 寝言か?」

ハルトマン「……」

バルクホルン「何を泣いているんだ。具合でも悪いのか?」

ハルトマン「くー」

バルクホルン「……」

バルクホルン「私は風呂に行くぞ。いいな? 起きてるのか分からんが……」

ハルトマン「……」

ギィィ バタン

ハルトマン「…トゥルーデ……」

10: 2013/03/20(水) 21:17:27.27 ID:oBCmzoW+O
―深夜 海上―

バルクホルン「今夜も哨戒か……」

ハルトマン「明日は休めるらしいし、頑張ろうよ」

バルクホルン「無論だ」

バルクホルン「ん? 基地から通信だ」

ハルトマン「……!」ブゥゥゥン

ハルトマン「またあの星が……!」

バルクホルン「こちらバルクホルン。受信感度は良好だ」

バルクホルン「ああ、今夜もよく晴れている。何も問題は無い」

12: 2013/03/20(水) 21:20:52.97 ID:oBCmzoW+O
バルクホルン「……了解。通信を終了する」

バルクホルン「よし。ハルトマン……」

バルクホルン「うん? ハルトマン、どこに行った?」

ハルトマン「……」

バルクホルン「ハルトマン! 何度も言わせるな、我々は予定航路に沿って飛ばないと」

ハルトマン「はっ」

バルクホルン「聞いているのか!?」

ハルトマン「ご、ごめん。もうしないよ」ゴシゴシ

バルクホルン「……ちょっと待て。お前……泣いてるのか?」

ハルトマン「なんでもない、大丈夫だよ」

13: 2013/03/20(水) 21:21:54.00 ID:oBCmzoW+O
バルクホルン「大丈夫なわけあるか。そういえば今朝のお前は、涙を流しながら寝てたぞ。どうかしたのか?」

ハルトマン「……ほんとに、変な話なんだけどさ」

ハルトマン「あの星が、私を呼ぶんだ」

ハルトマン「お前の故郷に帰ってこいって、私の心に呼びかけてくるんだよ」

バルクホルン「……」

ハルトマン「……そんな顔しないでよ。だから嫌だったんだ」

バルクホルン「……いや、待てよ。確か……うむ、方角的にはあっちがカールスラントだな」

ハルトマン「そうなの? じゃあ、どっかで見覚えがあったのかも――」

バルクホルン「! ハルトマン!」

ハルトマン「……うん、私も捉えた。ネウロイだ!」

15: 2013/03/20(水) 21:27:07.22 ID:oBCmzoW+O
ネウロイ「――」ドギュンドギュンドギュン

バルクホルン「くっ……ハルトマン、フォワードに付け! 援護する!」

ハルトマン「りょーかい! <シュトゥルム>で一気にケリを付ける!」

バルクホルン「うおおおああっ!」ババババババババババババ

ハルトマン「はぁぁーっ!」

ネウロイ「――」

ハルトマン「トゥルーデ、コアが」

ハルトマン「……あ」

ハルトマン「ああっ……!」

バルクホルン「任せろ! でああああーっ!」

ドグシャア

ネウロイ「――!?」

バキィン バラバラバラ

16: 2013/03/20(水) 21:29:11.07 ID:oBCmzoW+O
バルクホルン「……はぁ、はぁ…コアの破壊を確認……」

バルクホルン「ハルトマン、無事か?」

ギュッ

ハルトマン「……うっ、トゥルーデ…」

バルクホルン「ど、どうした!? 痛むとこでもあるのか?」

ハルトマン「ぐすっ……違う、違うよトゥルーデ。思い出したんだ、全部」

バルクホルン「なんだと?」

ハルトマン「あの星……私たちがまだカールスラントにいた頃、二人の目印にしてた星だよ」

バルクホルン「え……」

17: 2013/03/20(水) 21:32:10.30 ID:oBCmzoW+O
ハルトマン「どんなに遠くにいたって、あの輝きだけは世界中から見える。もしも私たちが道に迷っても、必ずあの星の下に帰るべき場所があるんだって」

バルクホルン「……ああ、そうか。懐かしいな」

バルクホルン「私の記憶を満たし、行く先を照らす、孤独な星……そんな話をしたな」

ハルトマン「……あの星の光を見てたら……今まで忘れてた思い出が、嬉しかったことも、悲しかったことも、全部湧き上がってきたんだ……」

ハルトマン「そしたら……ぅ」

バルクホルン「おいで、ハルトマン」

ハルトマン「っ……トゥルーデ! うあああん!」ポロポロ

ハルトマン「帰りたいよ、カールスラントに……あの星の下に行けば、帰れるのに……!」

バルクホルン「……私たちが取り戻さなきゃならないんだ。もう一度、誰もが誰かの帰りを待つ故郷を……く…ぅ……」

ハルトマン「うわあああん……」

バルクホルン「帰ろう……いつかきっと、愛する人の待つカールスラントへ……!」

18: 2013/03/20(水) 21:33:18.01 ID:oBCmzoW+O
―翌朝―

ハルトマン「……ん」

バルクホルン「やっと起きたか」

ハルトマン「あれ……夜間哨戒は?」

バルクホルン「泣きつかれて眠ってしまったお前を背負って帰ってきたんだ。まったく、子供じゃあるまいし」

ハルトマン「そっか、ありがとう」

バルクホルン「うむ……」

ハルトマン「……それにしても」

バルクホルン「ん?」

19: 2013/03/20(水) 21:34:12.65 ID:oBCmzoW+O
ハルトマン「『帰ろう……いつかきっと、愛する人の待つカールスラントへ……!』だっけ?」

バルクホルン「! あ、あれはだな、お前を慰めようとして……ええい、茶化すな!」

ハルトマン「茶化してなんかないよ。とっても嬉しかったし、心強かった」

バルクホルン「そ、そうか? ふむ……」
ハルトマン「……ね、トゥルーデ。今はまだ遠いけど、いつかきっと」

バルクホルン「……ああ、いつかきっと」

ハルトマン「私たちならきっと届くよ。だって――」

ハルトマン「何千マイル離れていても、あの孤独な星は輝いてるんだから!」

20: 2013/03/20(水) 21:37:35.22 ID:oBCmzoW+O
Lost Weekend Western Swing Bandの
『Lone Star』が元ネタでした
なんかくどくなってごめんね
支援サンクス

21: 2013/03/20(水) 21:45:23.91 ID:EtgBuRiK0
良かった

22: 2013/03/20(水) 21:47:53.17 ID:FkJ1zznkO
真面目なSS書ける人はすごく凄いです

引用: ハルトマン「何千マイル離れていても、あの孤独な星は輝いてるから」