1:2015/01/23(金) 20:32:08.03 ID:O4h/mQel+.net
――魔族の村

勇者「ここが魔族の村か……魔族の村というだけあって何と禍々しい!」

賢者「ええ、さっさと魔物共を皆頃しにした挙げ句、村に火を放ちましょう!」

勇者「そうするか」

賢者「よーしではさっそく目に付いた魔物から手当たり次第にぶっ頃しますよー!」

魔族の少女「うう……」ヨロッ

賢者「あ! さっそく魔物の少女が家から出てきましたよお」

賢者「さあて、あの子はどんな断末魔をあげてくれるのかなあ?」

少女「……う」バタッ

勇者「!?」
2:2015/01/23(金) 20:33:16.46 ID:O4h/mQel+.net
賢者「おっと、既に半死半生? こいつぁ手間がかからなくて結構ですねえ」

勇者「待つんだ賢者ちゃん!」

賢者「はあ?」

勇者「彼女……弱り切っている!」

勇者「魔物とはいえ弱った少女を頃すなんて勇者のやることではない!」

勇者「ここは彼女を担いで家まで運んであげよう」

賢者「はあ、勇者様がそう仰るのなら」
3:2015/01/23(金) 20:33:46.84 ID:O4h/mQel+.net
――魔少女の家

少女「……ん」

少女「私……どうして、家に……」

勇者「気がついたかい?」

少女「……え!? だ、誰ですか!?」

賢者「安心してください、私たちは勇者パーティです」

少女「ゆ、勇者!? わ、私……」ガタガタ

勇者「怯えなくても良い。君に危害を加えるつもりはないよ」

少女「え?」

賢者「私たちは弱った相手に手を出すなんて卑劣な真似はしません」

勇者「その通り。どうやら随分困窮しているようだけど、良かったら事情を話してもらえないかな?」

少女「……は、はい」
4:2015/01/23(金) 20:38:57.09 ID:O4h/mQel+.net
少女「私たちの村は、人間を拉致して奴隷にしたり、売り払ったりすることで暮らしを立てていました」

賢者「ふむふむ」

少女「それなりに豊かで、穏やかに暮らしていたんです……でも、ある日」

少女「人間の王国から官憲が派遣されてきて、村の主要人物を全員逮捕してしまったんです……村長だった私の父も」

勇者「……なんてことだ」

少女「奴隷も全て奪われました。家事は全て奴隷にやらせていた為に、食事を作ることも出来ず……空腹のあまり道に倒れたみたいです」

賢者「そうだったの……」

少女「しかも、それだけでなく、村に残った私たちにも王国から出て行くように言われているんです」

勇者「なんだって!?」

少女「私たちは元々あった人間の村を乗っ取ってここに住んでいるんですけど、それは不法滞在だって……わ、私、もうどうしたら良いのか……」

賢者「なんて酷い……」
5:2015/01/23(金) 20:39:17.71 ID:7Cbv3sRv0.net
なるほどわからん
6:2015/01/23(金) 20:40:24.68 ID:jT1UB/cH0.net
この変な空気好き
7:2015/01/23(金) 20:41:24.42 ID:WrUSTg0ld.net
クズじゃねえか
8:2015/01/23(金) 20:41:29.44 ID:O4h/mQel+.net
勇者「許せない……相手が魔物だからといってどうしてこんな仕打ちが出来るんだ!」

勇者「それでも人間のやることか!」

賢者「勇者様……」

勇者「少女ちゃん、安心してほしい。君たちのことは俺が守る!」

少女「え……?」

勇者「君たちのことを追い出させやしないし、君のお父さんのことも取り戻してみせる!」

賢者「ええ、私たちに任せて頂戴!」

少女「勇者様……あ、ありがとうございます……!」

ウワアアアアアーッ

勇者「!? 悲鳴!?」

少女「あ、あの声は近所のスライム爺さんの声!?」

賢者「行きましょう勇者様!」

勇者「ああ!」
9:2015/01/23(金) 20:43:41.40 ID:O4h/mQel+.net
――スライム爺さん宅の前

スライム爺さん「ま、待ってくれ! その奴隷は連れていかんでくれ!」

スライム爺さん「そいつを連れていかれたら誰が家事をすれば良いんじゃ!」

官憲「ヒャッハー! 知らんねェなあそんなことは!!」

官憲「とにかく彼は我々が保護する!!

官憲「飢え死にしねえようにさっさと料理の一つでも覚えるんだなあ? ヒャーッハッハッハッハッハ!」

奴隷「キーヒッヒッヒヒ! ざまぁねェなあクソ爺!」

爺さん「う、うう……酷すぎる……わしが、わしが一体何をしたというんじゃ」

官憲「ギャハハハハハハハ!」

奴隷「ゲハハハハハハハハハ!」

勇者「そこまでだ!」

官憲「む!?」

奴隷「何やつ!?」
12:2015/01/23(金) 20:47:10.83 ID:O4h/mQel+.net
勇者「俺の名は……勇者!」

賢者「私は賢者!」

勇者「罪もない老人を虐めるとは、それでも人間か!? 今すぐ奴隷を返すんだ!」

官憲「ふん! 勇者だとおおおお?」

官憲「勇者と言えば魔王討伐の為に我が国の通行を認められた北の国の人間か」

官憲「口を挟まないでもらおうか? これは我が国の問題なんでなあ!」

賢者「くっ、そのお爺さんをどうするつもりです!」

官憲「どうするだと? そうだなあ、こいつは全員解放しろと通告した奴隷を密かに隠し持っていたわけだからなあ」

官憲「当然、もはや魔界への強制送還じゃあ済まねえ!」

官憲「先に逮捕した連中と同じく、裁判を受けて服役することになるだろうさ! ギャハハハハハハハハ!!」

奴隷「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

爺さん「ひ、ひいいいいい」

少女「そんな……」

賢者「な、なんて卑劣なの!」

勇者「外道め」ギリッ
13:2015/01/23(金) 20:50:48.09 ID:WrUSTg0ld.net
正論を言っているのに何でモヒカンザコ口調なんだよwww
14:2015/01/23(金) 20:51:10.82 ID:O4h/mQel+.net
官憲「ふん、何だその目は? 何か文句でもあるのか?」

官憲「外国人が我が国の法務執行を妨害でもするつもりかあ? 完全な内政干渉だぞお?」

官憲「外交問題にしたくなければ、さっさと我が国を通って魔王を倒しに行くことだな! グィヒヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

官憲「ヒャーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」




勇者「知ったことかああああああ! 雷撃魔法!!」ヒュンッ


バリバリバリバリバリバリッ!!


官憲「ぎゃああああああああ!」

奴隷「ぐえええええええええ!!」

爺さん「ぐわあああああああああ!!」
15:2015/01/23(金) 20:55:03.68 ID:O4h/mQel+.net
勇者「どうだ!」

官憲「お、おのれえ! 外国人の分際で警察に手を挙げるとは! ただでは済まんぞ!」

官憲「ここは一旦退く! 行くぞ!」

奴隷「は、ハハッ!」ダッ


賢者「行ったようですね」

勇者「ああ、この場は切り抜けたが……」

勇者「少女ちゃんのお父さんを救うには王都の監獄へ行くしかない」

賢者「さっそく向かいましょう勇者様!」

勇者「ああ」

少女「待ってください!」
16:2015/01/23(金) 20:57:02.73 ID:O4h/mQel+.net
勇者「少女ちゃん……?」

少女「これを持って行ってください」ギュッ

勇者「このお守りは?」

少女「亡くなった母が殺した旅人から奪ったものです」

少女「どんな魔法も一度だけ跳ね返す力があるとか」

勇者「そうか、ありがとう。必ず君のお父さんは取り戻すよ」

少女「お願いします……亡くなった母や、スライム爺さんの為にも」
17:2015/01/23(金) 21:00:22.56 ID:WrUSTg0ld.net
スライムジジイ死んだのかよ
18:2015/01/23(金) 21:01:32.51 ID:O4h/mQel+.net
――王都の監獄前

勇者「ここが監獄か」

賢者「やはり大きいですね」

勇者「よし突入するぞ!」


「待て!!」


勇者「誰だ! 我らの道を阻む者は!?」

獄長「俺様は……獄長!」

獄長「この王都監獄の責任者だ!」

勇者「獄長だと!?」

賢者「貴方ね!? 罪もない魔物達を監禁している首謀者は!!」

獄長「グアーッハッハッハッハ! 何を言っておるのか解らんなあ」

獄長「わしはただ囚人達を監視しておるに過ぎん! 彼奴らに有罪を与えたのはあくまで裁判所よ!」

勇者「詭弁を……ッ」

賢者「どうやら話が通じる相手ではないようね……そこをどきなさい。私達は閉じこめられた人々を解放します!」
19:2015/01/23(金) 21:05:40.09 ID:O4h/mQel+.net
獄長「そうはいかなあああ。あんなゴミ共を世に放つわけにはいかんのよ」

勇者「ゴミだと……!? 貴様ッ!」

獄長「おっと、怒る前にまずこれを見てもらおうか!!」グイッ


少女「うっ……」

勇者「な!?」

賢者「少女ちゃん!?」

少女「勇者様……賢者さん……ごめんなさい」


獄長「ガーッハッハッハッハッハ! さあ、どうする!?」

獄長「貴様等が大人しく投降するというのならば、この子は国外送還ではなく王国の施設での矯正処分としよう!」

獄長「検事からも許可を貰っている、これは司法取引だ!! ガーッハッハッハッハッハ!!」

賢者「なんて奴……!」

勇者「卑怯な真似を!」

獄長「何とでも言え! 大人しく投降してさっさと国外退去となるが良い!」
20:2015/01/23(金) 21:09:54.40 ID:O4h/mQel+.net
勇者「……」

賢者「勇者様、ここは戦いましょう!」

勇者「……いや、投降しよう」

賢者「ええ!?」

勇者「そちらの要求を呑み、大人しく投降する! 剣も捨てよう!!」ガランッ

賢者「勇者様!! なぜです! 私に殺させてください!」

獄長「くっくっく、賢明な判断だ」

獄長「よーし、両手を挙げてゆっくりとこちらへ来い!」

勇者「分かった、まずは俺から行く」


勇者「……賢者ちゃん」ボソッ

賢者「!」

勇者「俺が合図したら……」ボソボソ

賢者「……!! 了解です」ボソッ
21:2015/01/23(金) 21:10:42.57 ID:O4h/mQel+.net
獄長「何をグズグズしている! 早くこちらへ来んか!!」

勇者「……」スタスタスタ

獄長「よしよし、それで良い」

少女「勇者様……私のせいで……」

勇者「大丈夫、少女ちゃん」ニコッ

少女「え?」


獄長「なあに、悪いようにはせん。貴様等は当初の目的通り魔界に行くことが出来るし」

獄長「この子は施設にてきちんとした教育が受けられるんだからなあああ!」

獄長「あんな父親に育てられるよりも数万倍良いだろうさ! グハッ! グアーッハッハッハッハ!!」

少女「……ッ」キッ
22:2015/01/23(金) 21:12:18.09 ID:O4h/mQel+.net
勇者「……その前に、獄長」

獄長「ん?」

勇者「さっき少女ちゃんから預かった彼女の母親の形見がポケットに入っている」

勇者「それを彼女に返しても良いか? ……もう会うこともないだろうからな」

少女「勇者様……」

獄長「……」

獄長「まあ良いだろう。わしが渡してやるから、そのまま動くなよ」

勇者「分かった」

獄長「……これか」ゴソゴソ


獄長「これで良いんだな」スッ

少女「あ……」ギュッ

勇者「ああ」



勇者「これで準備は整った」
23:2015/01/23(金) 21:13:57.64 ID:O4h/mQel+.net
獄長「なに……ッ!?」

勇者「やれ!! 賢者ちゃん!!!」

賢者「……はああああああああああああ!!」キイイイイイイン

獄長「魔法!? 何をするつもりだ!?」

勇者「賢者ちゃん最強の魔法、爆炎魔法さ」

勇者「この街の半分を吹き飛ばす程の威力を持ったな!!」

獄長「ば、馬鹿なああああ!? 貴様!! 死ぬ気か!?」

勇者「俺は死なない。ギリギリ耐えられる。以前宿屋で夜這いをかけようとした時に実験済みだ!!」

勇者「くだばれ!! 魔物達を閉じこめる、この邪悪なる監獄ごとなあああああ!!」

獄長「やめろおおおおおおおおおおおおお!!」

賢者「爆炎魔法ッ!!」ゴオッ


ドッゴオオオオオオオオオオン


獄長「熱いいいいいいいいいいいいい……」
24:2015/01/23(金) 21:15:26.05 ID:O4h/mQel+.net
――――――
――――
――

少女「勇者様、本当にありがとうございます!」

魔物の父「本当に、なんと御礼を言えば良いのか」

勇者「いえ、良いんですよ。当然のことをしたまでです」

少女「いいえ、普通の人が単身監獄に乗り込んで看守達を皆殺しにするなんて、中々出来ることじゃありません」

少女「勇者様だからこそ、お父さんを助けられたんです!」

勇者「少女ちゃん……」

魔物の父「ありがとうございました。お陰様で私も人生を犯り直せます」

勇者「そう言ってくれると、死んだ賢者も浮かばれますよ」

少女「賢者さん……」

勇者「まさか俺がお守りの効力を『跳ね返す』じゃなくて『防ぐ』だと記憶違いしてたせいで、自分の魔法で死んじゃうなんてな……」
25:2015/01/23(金) 21:18:29.69 ID:O4h/mQel+.net
少女「で、でも、そのお陰で監獄には掠り傷一つつかずに、中にいたお父さんも無事だったんですよ!」

少女「結果オーライです!」

少女「賢者さんがいた位置から向こう側の街はもう見る影もないですけど」

勇者「そっか……そうだな! そのお陰で俺も爆炎魔法を食らわずに済んだわけだし」

勇者「ま、結局そのせいで俺が獄長を直接頃して、監獄へ突入する羽目になっちゃったんだけど!」テヘッペロッ

少女「もー、勇者様ったら」

アッハッハッハッハッハッハ
26:2015/01/23(金) 21:19:43.84 ID:O4h/mQel+.net
勇者「魔物さんは、これからどうされるんですか?」

魔物の父「そうですね……稼業の奴隷売買をやり直して、村を復興させたいと思います」

魔物の父「王都が半壊して治安が最悪になっている今が人間狩りの絶好のチャンスですからね」

勇者「そうですか。それが良いでしょうね」


少女「……」

少女「……あ、あの! 勇者様!」

勇者「ん?」

少女「もし……もし良ければ、勇者様も私達と一緒に奴隷商人になりませんか!?」

少女「勇者様ならきっと、良いマン・ハンターになれると思うんです!」

勇者「少女ちゃん……」
28:2015/01/23(金) 21:20:32.71 ID:O4h/mQel+.net
勇者「……嬉しいお誘いだけど、俺にはまだやらなければならないことがあるから」

勇者「魔界へ行き、人々を苦しめる魔物達……そして魔王を退治する」

勇者「それが、俺の使命なんだ」

少女「……そう、ですよね」


勇者「でも」

少女「え?」

勇者「俺が使命を無事に果たしたその後に、きっとまた村を訪ねるから」

勇者「その時は、俺を奴隷商人の仲間に入れてくれないかな?」ニッ

少女「……!! はい! 待ってます……私、待ってますから!!」



こうして、勇者は再び旅立った。

暴虐の限りを尽くし、人間達に危機をもたらす魔王軍を討伐する為に……!

戦え勇者! 負けるな勇者! 世界に悪がある限り、君の旅は終わらない!!


~HAPPY END~
29:2015/01/23(金) 21:23:37.12 ID:jUuZqmvO0.net
おつんつん!

とんでもねーわ
30:2015/01/23(金) 21:29:10.59 ID:WrUSTg0ld.net
良い話風に締めんなwwwww
31:2015/01/23(金) 21:33:22.23 ID:H20YR1VEM.net
面白かった
勇者「人間の手から魔物達を守ろう」 賢者「はい」
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1422012728