1:2018/01/16(火) 03:03:12.470
― ラーメン屋 ―

男「注文お願いします」

店員「あいよっ」

男「チャーシューメン、大盛りで。あと半ライス」

店員「あいよー!」

店員「こちら、お通しの高菜盛り合わせとなりまーす!」サッ

男「……どうも」

男(正直、高菜ってあまり好きじゃないんだけどな……辛いし……)モグモグ



3:2018/01/16(火) 03:05:21.318
― 書店 ―

男(なにか一冊、小説でも買っていこうかな)

男「これください」

書店員「かしこまりました」

書店員「こちら、お通しの小説となっております。『騎士団長皆殺し』です」

男「あの、これもう何度も読んだんで結構です」

書店員「お通しですから。拒否できません」

男「……」
4:2018/01/16(火) 03:07:11.064 ID:/hidz5F2r.net
高菜食べてしまったんですかーーー!?
5:2018/01/16(火) 03:07:31.968
― 文具屋 ―

男「ボールペンください」

老人「あいよー」

老人「はい、お通しの消しゴム! これも買ってもらうぜ!」

男(……いらねえ)
7:2018/01/16(火) 03:09:11.709
― スーパーマーケット ―

男(これだけ買えば、当分買い出ししなくていいかな)

レジ店員「いらっしゃいませー!」

男「お願いします」ドサッ

レジ店員「お通しのトマトもカゴに入れさせていただきまーす!」ドサッ

男「トマトを調理する予定ないんだけど」

レジ店員「そこはほら、お通しッスから! ちゃんと買ってもらわないと!」

男「はぁ……」
11:2018/01/16(火) 03:17:12.393 ID:IBHMF0UI0.net
お通じ
13:2018/01/16(火) 03:19:05.139
男(……とまぁ、こんな具合に今の世はすっかりお通しだらけである)

男(元々居酒屋がやってた“お通し”を、どこの業界もいい手だっていうんで真似して)

男(あっという間にこんなお通しだらけの世界が出来上がってしまった)

男(もちろん、タダじゃなく、料金はしっかり取られる)

男(注文してないのに、欲しくもない品を押し付けられて金を取られるというのは)

男(正直納得いかないのだが、みんな受け入れてるのだからしょうがない)

男(俺には世の中を変えてやろうなんて志も、そんな力もないのだから……)
15:2018/01/16(火) 03:20:10.678
― 会社 ―

同僚「こないだ車買ったんすよ。ハイブリッド車」

年配「ほう」

同僚「そしたらお通しで三輪車がついてきましてね~」

年配「どうしてるんだね、それ」

同僚「うちのボウズに乗らせてますよ! まだ五歳ですから! ちょうどよかった!」

年配「私も家を買った時は、お通しで犬小屋がついてきたよ」

同僚「犬小屋? どうしたんすか、それ?」

年配「せっかくだから犬を飼ったよ。お通しとしてドッグフードがついてきたが」

同僚「ウケる~!」



男(会社でもこんな会話が年がら年じゅう行われてる)
16:2018/01/16(火) 03:21:16.465
女「男さん、喉渇いてない?」

男「ちょっと渇いてるかな」

女「だったらお通しで、お茶でもいかが?」

男「ありがとう」

女「もちろん私は料金なんて取らないから安心して。ふふっ」

男「なら今度、外回りの時、料金代わりになにかおやつでも買ってくるよ」

女「まぁ、ありがとう!」
17:2018/01/16(火) 03:23:00.959
男(この見積りは……前にやったやつを参考にしよう)カタカタカタ

男「……ううっ」クラッ…

課長「大丈夫かね?」

男「ちょっとめまいが……」

課長「会社の近くに病院があるし、診てもらってくるといい」

課長「場合によっては早退しなさい」

男「すみません……」
18:2018/01/16(火) 03:23:56.404
― 病院 ―

男「……」ボケー…

男(ヒマだ……)

男(病院の待ち時間は長いんだよなぁ~……)

ナース「男さん、どうぞー!」

男「はい」スクッ
19:2018/01/16(火) 03:25:09.984
医者「席におかけ下さい」

男「はい」

医者「まず、お通しの注射を」チクッ

チュー…

男「これ……中身はなんなんです?」

医者「……」ニコッ

男「いやいやいや! ちゃんと教えて下さいよ!」
20:2018/01/16(火) 03:26:32.068 ID:37FggxSAM.net
居酒屋のお通しが許されるなら、他の業界もあってもいいと思う。どんどんやってくれ
21:2018/01/16(火) 03:27:41.889
― 会社 ―

女「めまいがしたんだって? 大丈夫?」

男「ああ、熱もなかったし、今はへっちゃらだよ」

女「ホント?」

男「病院でお通しのビタミン剤打ってもらったら、元気になった」

男(もちろん、診療費に追加されたけど……)

女「だったら今日ちょっと二人で飲みに行かない?」

男「いいね、付き合うよ」
22:2018/01/16(火) 03:29:17.500
― バー ―

マスター「お通しのピーナッツです」

男「……どうも」

男(マスターは向こうに行ったようだな)

男「君はさ、こういうお通しのシステムってどう思う?」ポリポリ

女「んー、最初はわずらわしかったけど、今はすっかり慣れちゃったな」

女「うちの会社だって、お通しっていって余分な製品買わせてるわけだし」

女「もっと時が経てば、完全に定着しちゃうんじゃない?」ポリポリ

男「そっかー」

男(今の世の中、彼女みたいな人が大多数だよな)
24:2018/01/16(火) 03:30:38.269
男「それじゃまた!」

女「またね!」

男(終電近くまで飲んで、結局なんの進展もなしか)

男(彼女も俺に気があることはなんとなく分かるんだけど……あと一歩がなぁ)

男(できれば彼女の方からもっと分かりやすくアプローチして欲しいんだけど……)

男(俺って受け身だし……。ああ、情けない……)ハァ…
25:2018/01/16(火) 03:31:35.569 ID:EQwXPExt0.net
イケメンと結婚するとお通しで俺も付いてくる世界
26:2018/01/16(火) 03:32:26.381
― 駅 ―

男「……」ピッ

駅員「お通しのゲロ袋です。10円」サッ

男「はい」

男(さすがに通勤ラッシュの時間帯にお通しはないが、この時間帯だとこういうお通しがあるのだ)
27:2018/01/16(火) 03:34:22.848
― アパート ―

男「寝るかぁ~」

男(アパート借りる時には、お通しとして“家の模型”がついてきたっけ)

男(この布団を買った時のお通しは、布団叩き)モゾッ…

男(この枕を買った時は、たしか……)

男(あーもう、お通しのこと考えるのはやめだ! 寝よう!)

男「ぐぅ……ぐぅ……」
28:2018/01/16(火) 03:35:50.279
チュン… チュチュン…

ジリリリリリリ……!



男「!」ガバッ

男(この目覚まし時計を買った時のお通しは……砂時計だったっけ)

男(ダメだ、お通しのことが頭から離れない……)
29:2018/01/16(火) 03:37:20.801
― 会社 ―

課長「薬局に行ったら、お通しがサプリメントだったよ」

同僚「この腕時計もお通しなんすよ~」

アハハハハハ… ハハハハハ…



男(みんな、お通し社会を今や平然と受け入れてる……)

男(注文してない商品を買わされることに、なんの疑問を抱いてない)

男(お通しっていったいなんなんだろう……)
30:2018/01/16(火) 03:38:48.293
年配「男君」

男「なんでしょう?」

年配「今日、忙しいかい?」

男「いえ、そんなことないですけど」

年配「だったら、今夜ちょっと飲みに行かないか?」

男「いいですよ」

男「……?」

男(いつも目立たない人だけど、この人から俺を誘うなんて珍しいな)
32:2018/01/16(火) 03:41:07.197
― 居酒屋 ―

男「年配さんが僕を誘ってくれるなんて珍しいですね」

年配「うん……」

年配「君は……ひょっとして今のお通し社会に疑問を感じてるんじゃないか?」

男「!」ギクッ

男「ど、どうしてそれを?」

年配「そりゃあ、仕事面では順調な君が、なにに悩んでるんだろうと考えると」

年配「答えは絞られてくるからね」

年配「家族の問題か、女性関係か、それとも今の社会に対する不満か……ってね」

男「な、なるほど……」

男(俺、この人のことを見くびってたな……)
33:2018/01/16(火) 03:43:21.902
男「おっしゃる通りです」

男「僕はお通しを受け取るたび、なんで注文してないものに金払わなきゃならないんだって」

男「思っちゃうんですよね……」

男「家にもどんどん余計な物が増えていくし……」

男「年配さん、お通しって一体なんなんでしょう?」

年配「……」
35:2018/01/16(火) 03:45:23.189
年配「君も知ってるだろうが、元々お通しってのはこういう居酒屋の仕組みだったんだ」

男「ええ」

年配「なぜこんな仕組みが生まれたかというと」

年配「居酒屋が注文された品を用意するまで、客が手持無沙汰になっちゃうから」

年配「その“つなぎ”として簡単な料理を出すお通し文化が生まれた……ということらしいんだな」

男「へぇ~、余計に金を払わせるためのシステムじゃなかったんですね」

年配「今は性質がだいぶ変わって、そんな風になっちゃってるがね」

年配「元々はお店側のサービス精神のあらわれだったというわけだ」

男「サービス精神……か」

年配「“どうすればお客を退屈させないで済むか”と考えた結果、生まれたってことさ」
36:2018/01/16(火) 03:46:59.892
年配「私も今のお通し社会には時折疑問を感じるけど、なってしまったものを変えるのは難しい」

男「そうですね……」

年配「だから、押し付けられてると考えず、あれはあれでサービスの一環なんだと考えれば」

年配「少しはラクになるんじゃないかな?」

男「……はい」

男「だいぶ歪んだ形になっちゃったけど、これも店側のサービス精神なんだと思えば」

男「自分の中でも今のお通し社会を多少受け入れられるような気がします」

男「年配さん、ご心配をおかけしました」ペコッ

年配「こんなしょぼくれた先輩のアドバイスでも、役立ったようでよかった」

年配「それじゃ改めて、カンパイ」

男「カンパイ!」

カチンッ
37:2018/01/16(火) 03:50:14.285
― 会社 ―

課長「えーと……これ、やっといてくれるかな」

男「分かりました」



男(お通しは、元々はお客のためを考えてできたもの……)

男(だったら俺もただ仕事をするんじゃなく、課長のことを考えて仕事してみるか!)
38:2018/01/16(火) 03:51:50.476
男「できました!」サッ

課長「ん……お? おお、ここまで分かりやすく整理してくれたのか」

課長「こりゃ助かるよ! どうもありがとう!」

男「いえいえ」ニコッ

課長「君もなかなかやるようになってきたじゃないか」

男(俺流の“お通し”……大成功!)
39:2018/01/16(火) 03:52:35.221
……

女「最近、ますます仕事に磨きがかかったみたいね。どうしたの?」

男「大したことじゃない。ちょっと意識改革しただけだよ」

女「ふう~ん、努力してるんだ」

男「まあね」

男(そうだ、今の俺ならこの子に対しても積極的になれる!)

男「……今晩レストランに行かないか?」
40:2018/01/16(火) 03:54:05.667
― レストラン ―

ウェイター「お通しのサラダです」

男「おいしいね」モグモグ

女「うん!」パリパリ

男(昔の俺は、お通しを押し付けとしか思ってなかったから、なに食ってもイマイチな味だったけど)

男(店側のサービスだと思うと、なんだかおいしく感じられてしまうな。不思議なもんだ)

男(そして俺も……今こそいうんだ! 自分の気持ちを!)
41:2018/01/16(火) 03:56:07.050
男「あの……」

女「?」

男「俺と……ちゃんと彼氏彼女として、交際してくれませんか?」

女「えっ……」ドキッ

女「……」

男(いきなりだったから、やっぱりちょっと戸惑ってるみたいだ。タイミングをミスったか!)

男(だからこそ俺は、場をつなぐためにお通しを披露しなきゃならない!)



男(彼女に見せてやる! 俺の“お通し”ッ!)
42:2018/01/16(火) 03:58:17.741
男(もし、彼女が俺に気があるとしたら、見せるべきは……これしかないッ!)

男「見てくれ!」ヌギッ

男「これが俺の……」ヌギヌギ…

男「お通しだぁぁぁぁぁっ!!!」スッポンポーン





女「キャーッ!!!」
43:2018/01/16(火) 03:59:19.602
……

― 取調室 ―

刑事「ったく……どうしてあんなことしたんだ?」

男「なんででしょうね……つい出来心で、という他ないですね」

刑事「まぁいい……腹減ったろ」

刑事「ほら、お通しのカツ丼だ。食え」

男「いただきます」モグモグ
44:2018/01/16(火) 04:00:36.715
刑事「それと……相手の彼女さんから差し入れのお通しとして伝言だ」

男「え」

刑事「待ってる……ってよ」

男「ありがとうございます……!」







― 完 ―
45:2018/01/16(火) 04:00:43.453 ID:8X5ZRu0ja.net
いい流れだったのに
47:2018/01/16(火) 04:03:14.397 ID:7iCT45xVr.net

お通し嫌いだけどここまで極まればありっちゃありかもなw
49:2018/01/16(火) 04:15:18.738 ID:9AY2z4tV0.net
製品の製造に遅れが出るにも関わらずお通し製品も作らなきゃならない悲しい世界
51:2018/01/16(火) 04:24:23.659 ID:X1Tvx5na0.net
世にも奇妙な物語でありそう