1:2018/06/25(月) 22:08:02.734
― 店 ―

男「あのー、店長」

店長「なんだい?」

男「今度の土曜、バイトを休ませて下さい!」

店長「ダメだ」

男「なんでです!?」

店長「人手が足りないからだ……代わりを見つけなきゃダメだ」

男「そんなぁ……」
3:2018/06/25(月) 22:09:55.333 ID:75BwnshsM.net
バイトに代わりを探させるのは違法
4:2018/06/25(月) 22:10:29.169 ID:q4O7OdTY0.net
じゃあ辞めますでいいよ
5:2018/06/25(月) 22:10:32.605 ID:VMZxxqTN0.net
自分が休んでも業務が滞らないようにするのは当然だろ
社会人の常識が無いのか
7:2018/06/25(月) 22:11:12.598
男「彼女とデートなんですよ! お願いします!」

店長「デートなんていつでもできるだろ」

男「いつでもって……」

店長「それともなにか? もしかして、代わりをやってくれるような知り合いがいないのか?」

男「ぐっ……!」

男「分かりました……そこまでいうんなら、絶対代わりを見つけてみせますよ!」

店長「ふん、やれるもんならやってみな!」
14:2018/06/25(月) 22:13:27.261
男「……というわけなんだよ」

女「代わりを見つけないと休めないなんて、ひどい店長ね!」

男「だろ!? たしか、法律に違反してるって聞いたことあるし!」

男「だけど何とかしなきゃいけない。当日無断で休むってのはさすがに後が怖いし」

女「そうね。かえって気が休まらなくなっちゃう」

男「そこで……」
19:2018/06/25(月) 22:15:11.071
男「今度の土曜、俺の代わりにバイト出てくれないか?」

女「なるほど!」

女「分かったわ! 私が代わりに出てあげる!」

男「ありがとう、これで休むことができるよ!」

男「よし……さっそく店長に報告だ!」
25:2018/06/25(月) 22:18:35.895
― 店 ―

男「店長! 俺の彼女を代わりに出勤させます!」

女「よろしくお願いします!」

男「これで休みをいただけますよね? そういう約束ですよね?」

店長「…………」

店長「甘いな」

男「え!?」
26:2018/06/25(月) 22:21:22.950
店長「彼女はここのバイトは未経験だろう?」

男「もちろん、そうですけど……」

店長「彼女一人で君一人の代わりは到底務まらんだろう」

男「くっ、たしかに……!」

女「じゃあ、どうすれば!?」

店長「未経験の人間を君の代わりにするとしたら……私の計算では七人は必要だ」

男(そんなにいるのか……ちょっと嬉しい)

店長「バイト七人……一人は君の彼女として、残り六人を集めてくるのだ!」

男「分かりました!」

男(≪七人の侍≫ならぬ≪七人のバイト≫ってわけか……!)
27:2018/06/25(月) 22:22:36.483 ID:NQCUKmehr.net
ドラゴンボールかよ
29:2018/06/25(月) 22:23:39.315
男「六人か……厳しいなぁ~」

女「まあまあ、あまり悩んでないで。ゲーセンでも寄らない?」

男「そうだな」

女「なにやる?」

男「よーし、久しぶりにUFOキャッチャーでも……」
30:2018/06/25(月) 22:26:27.251
― ゲームセンター ―

ウイーン… ボトッ

男「あああ~っ! あと数センチだったのに!」

女「今の惜しかったね~」

不良「おい、てめえら」

男「ん?」

不良「さっきからずいぶんUFOキャッチャー楽しんでるじゃねえかよ。全然取れてねえけど」

男「いやー、お恥ずかしい」

不良「そんだけ金があるなら、俺にも金貸してくれよ。貸さねえと殴っちゃうかもよ?」

男「……そんなに金が欲しいのか?」

不良「欲しいからこうしてカツアゲしてんだろが!」

男「だったらいい話がある!」
31:2018/06/25(月) 22:28:39.803
不良「お前の代わりにバイトを?」

男「ああ、悪い話じゃないと思うが……どうだ?」

男「カツアゲよりよっぽど効率的に金を稼げるし……なにより合法だ」ニヤッ

不良「いいねえ!」

不良「お前の代わり……引き受けたぜ!」

男「頼んだぞ、親友」

女「これで残り五人ね!」
34:2018/06/25(月) 22:31:15.174
― 町 ―

スタスタ…

男「ここらへんは高校生が多いな……」

女「予備校がいっぱいあるからねー」


「お前、また全国模試一位かよ!」 「すげー!」 「頭よすぎだろォ!」

秀才「日頃の勉強の成果を出せてよかったよ」


男「……あいつに決めた!」

女「え!?」
35:2018/06/25(月) 22:32:19.186 ID:OAxCJyJZp.net
これ実話?
36:2018/06/25(月) 22:34:10.220
男「全国模試一位、おめでとう」パチパチパチ

秀才「ありがとうございます」

男「毎日毎日、勉強してるんだろうね」

秀才「そりゃもう」

男「しかし、勉強のしすぎは体を壊すし、かえってテストに悪影響をもたらしかねない」

秀才「う……!」

男「ずっと椅子に座ってるのもよくないし」

秀才「そういえば、最近お尻が痛くて……」

男「やはりな……」

男「人間、たまには息抜きが必要だ」

男「息抜きに……バイトでもしてみたらどうだ?」

秀才「おおっ!」
38:2018/06/25(月) 22:35:18.659 ID:uf9wPNER0.net
こんなん実話であってたまるかよ!
39:2018/06/25(月) 22:36:04.696
秀才「分かりました、バイトをやります!」

秀才「やらせて下さい!」

男「そこまでいうのなら……いいだろう」

秀才「ありがとうございます! これでボクはもっと偏差値を高められる!」

男「よっしゃ、これで三人目だ!」

女「残るは四人ね!」
42:2018/06/25(月) 22:39:21.587
― 公園 ―

おっさん「……くそっ! 酒なんか飲んでも気が晴れねえ!」ポイッ

おっさん「あーあ、この年でリストラされちまった……」

おっさん「これからどうやって生きてきゃいいんだ……」

男「おっさん、おっさん」ボソッ

おっさん「?」

男「仕事したいのなら、いい仕事があるよ!」

おっさん「え、ホントかい!?」
43:2018/06/25(月) 22:42:16.149
おっさん「……お前さんの代わりに出勤すればいいんだな?」

男「その通り! そうすれば俺もおっさんもWin-Winだ!」

おっさん「俺みたいな奴に手を差し伸べてくれて……ありがとうよ」

男「困った時はお互い様ですよ」



男「ああいう年配の人がいると場が引き締まるからな。いい拾い物ができた」

女「あと三人ね!」
45:2018/06/25(月) 22:45:04.244
― 豪邸 ―

大富豪「私は日本一の大金持ち……」

大富豪「金の力であらゆる娯楽をたしなみ……どれもすっかり飽きてしまった」

大富豪「ああ……刺激が欲しい。新しいことをやってみたい」

大富豪「そうだ、人を集めてデスゲームを開いてみるか!」

男「デスゲームなんかよりもっと面白い娯楽がありますよ!」

大富豪「ほう? 申してみよ」
46:2018/06/25(月) 22:46:37.402
大富豪「ふむ……アルバイトか」

大富豪「そういえば、生まれてから一度もやったことがなかったな……」

大富豪「よかろう、バイトをさせてもらおう」

男「ありがとうございます!」

女「さぁ、あと二人ね!」
48:2018/06/25(月) 22:50:14.644
― 店 ―

男(あと二人……友人知人に声をかけてみたけど、なかなか決まらないなぁ……)

社長「お邪魔するよ」

男「いらっしゃいませ……あなたは?」

社長「全国チェーンであるこの店の社長だよ。今日はこの店に抜き打ち視察に来たのだ」

社長「君はバイトだと思うが、ここの店長はどうだね? ちゃんと休みたい時に休ませてくれるかね?」

社長「私にいえば、どんな悩みでも相談に乗るよ」

男「…………!」

男「ちょうどいいところに来て下さいました!」
49:2018/06/25(月) 22:51:43.415 ID:uf9wPNER0.net
馬鹿馬鹿しいけどちょっと気になる
50:2018/06/25(月) 22:53:07.198
社長「えっ、私が君の代わりに!?」

男「お願いします! でないと、俺が休めないんです!」

社長「しかし……私、社長だよ?」

男「社長だからなんだってんだッ!!!」

男「社長だってたまにはバイトして、下っ端の苦労を知るべきでしょうよ!!!」

社長「そ、その通りだ! 分かりました、バイトします! させていただきます!」

男(やった……! 残るはあと一人!)
53:2018/06/25(月) 22:56:39.778
しかし――

男「くそっ!」ガンッ

男「あと一人……! あと一人がどうしても見つからない!」

女「まるで紙は穴だらけなのにビンゴにならない状態ね……」

男「ホントだよ! 飲み会のビンゴ大会では、俺はいつもこうなんだ!」

男「あと一人なのにぃぃぃ……!」





??「まったく、世話の焼ける奴だ……」
56:2018/06/25(月) 22:59:32.968 ID:e+ffCtkyp.net
未経験7人の現場とか地獄絵図だな
57:2018/06/25(月) 23:00:06.009
覆面「フハハハハハッ!」スタッ

男「誰だ!?」

女「見るからに怪しい奴だわ……」

覆面「わけあって正体は伏せるが、七人目のバイトはこの私が引き受けよう!」

男「ありがたい申し出だ。しかし、顔も見せない得体の知れない奴に任せるわけには……」

覆面「心配いらん!」
59:2018/06/25(月) 23:02:16.521
覆面「私は君が働いてる店に関して、君以上に詳しいからな……」

男「そ、そうなのか!」

男(なぜだろう……こいつとは初めて会ったような気がしない)

男(こいつは信頼できる!)

男「分かった……お前を七人目にしてやる!」

覆面「期待に応えられるよう、頑張るよ」

男「…………」

男「やった! これでやっと≪七人のバイト≫を集められたぞ!」

女「さっそく店長さんに報告しましょ!」
60:2018/06/25(月) 23:05:36.883
― 店 ―

店長「よくやった! よくぞ≪七人のバイト≫を集めた!」

男「ははーっ!」

店長「今だからいうが、正直いって集められるとは思わなかった……」

男「ひどいなぁ、店長」

店長「だが、七人ものバイトを集めた君のカリスマ性は本物だ!」

店長「君になら、店長というポジションを託せる!」

男「ええっ、俺が店長!?」

店長「この短期間で七人ものバイトを集めた君なら、きっと私以上の店長になれるはずだ!」

男「…………」ゴクッ

店長「引き受けてくれるか?」

男「分かりました、やってみせます!」
61:2018/06/25(月) 23:08:15.348
男「今日からは俺が店長だ! みんな、よろしく頼む!」

女「かっこいいわよ~!」

不良「へっ、不甲斐ない店長しやがったら、承知しねえぞ!」

秀才「ボクの偏差値で、あなたをサポートしてみせますよ」

おっさん「拾ってくれた恩に報いてみせる!」

大富豪「娯楽とはいえ、本気でやらせてもらうよ」

社長「最初は足手まといになると思いますが、よろしくお願いします!」

覆面(……頑張れ! ニュー店長!)
62:2018/06/25(月) 23:10:05.417 ID:sViAfmklr.net
カオスなメンバーだな
63:2018/06/25(月) 23:11:31.796
ワイワイ…

秀才「この商品は売れ筋ですから、こっちに置いて下さい。売上が伸びます」

大富豪「うむ、分かったよ。君はいいマーケティングをするねえ」


不良「おいっ! チンタラしてんじゃねえぞ! ちゃんと働きやがれ!」

社長「す、すみませんっ!」


おっさん「いらっしゃいませー!」ニコニコ



男「みんな、よく働いてくれてるな……」

女「ええ、おかげでお店の売上もぐんぐん伸びてるわ!」

男「特に……」
64:2018/06/25(月) 23:14:11.027
男「あの覆面の人の働きはすごい」


覆面「…………」サササッ

覆面「…………」バババッ

覆面「…………」ギュィィィィン


女「やることなすこと全部的確だものね。バイトにしとくのがもったいないくらい」

男(あの人、前店長と声や体格がそっくりなんだよな……。いったい何者なんだ……!?)
65:2018/06/25(月) 23:16:15.767
男「でも、本来の目的である、“バイト休んでデート”ってのができなくなっちゃったな」

女「ま、いいんじゃない? 毎日この店でデートしてるようなものだし!」

男「それもそうだな!」

イチャイチャ…


不良「おいお~い、店長、ちゃんと仕事してくれよ~」

社長「ホントですよ~、お客さんいっぱい来て大変なんですから……」


男「おっとすまん、今行くよ!」







~おわり~
66:2018/06/25(月) 23:18:46.081 ID:sViAfmklr.net

覆面の正体が気になりすぎる
67:2018/06/25(月) 23:18:47.957 ID:uf9wPNER0.net
70:2018/06/25(月) 23:42:58.918 ID:0u/GbjKc0.net

面白かった