1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 00:32:17.61 ID:J9ci8XI10

男(就活就活世間ではうるせえけどよ、俺なんて受けた7社全部内定出たし)

男(まあ内定出た中でもあまりに良すぎるところ行くと高学歴だらけだしな)

男(将来出世するためにも大手だけど比較的高学歴が少ないところを入社先に選んだんだが…)

男(つーかなんでみんなそんな就活苦戦してんだよw低学歴が苦戦してんのか?)

男(自分に甘えすぎな奴らだろ苦労してんのはよ。ちゃんと学生自体苦労しとけよな、と)

男(まあそんなことはどうでもいいか…)

男(入社まで後1ヶ月、後はだらだら過ごすだけだな。さーて何で暇つぶすか)

こんな男の物語

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 00:35:35.22 ID:J9ci8XI10
男(そもそも学歴フィルターかけるなとかうるせえんだよな)
男(本当に家が大変でいい大学行けなかった、とかならわかるけどよ)
男(そういう文句いう奴に限って大概努力しないで適当な大学行ったんだろ)
男(糞…そんなどうでもいいこと考える必要ないな)
男(やることねえし散歩でもするか。午前のこの時間は近くの山道が絶好の場所なんだよなーっと)

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 00:39:21.67 ID:J9ci8XI10
男(相変わらず静かな場所だなここは)
男(入社後にもこんな穏やかな気分でいられるだろうか…)
男(…いや、俺は入社後に必ず出世するんだろ?なら入社後はさらに努力しなくちゃな)
男(今のうちゆっくりした時間を満喫するしかない、か)

てくてく

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 00:41:43.48 ID:SOKrhtDK0
おれまだ説明会数社聞きに行っただけなんだけどヤバいかな?
まわりの奴は面接とかやったって言ってた

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 00:42:28.65 ID:J9ci8XI10
男(ふぅー、ここらでちょっと休むか)
男(……。ん、あれは)
男(内定先の社名が入った…車、か?)
男(何でこんなところに?…少しだけ近づいてみるか)

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 00:46:56.07 ID:J9ci8XI10
男(うーん…確かに入社予定の会社の車だ。でも何でこんなところに?)
男(いや、それよりも怪しいのは窓が黒ガラスなところだ)
男(黒ガラスなんてのはその筋の人以外普通いれないだろ…。もっと近づいてみるか)
男(うーん…運転席には誰もいないみたいだな)
男(後部座席は、と)

男「な?!」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 00:50:35.97 ID:J9ci8XI10
男「な、な…」
男(死体か?!ぐったりした血まみれの人がいるぞ?!)
男(生きていたとしても相当重体だ!)
男(なんだこれ?何で会社の車に?!)
男(い、いや、そんなことよりはやく警察、いや、救急車?どっちでもいいから電話だ!)

ざっざっざっ

男「?!」

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 00:54:06.77 ID:J9ci8XI10
男(だ、誰か来る!)
男(と、とにかく隠れるんだ)

ざっざっ

A「よし穴は掘ったしこいつをさっさと埋めるとするか」
B「ああ、早いところ済ませるぞ」
A「ったくこんな面倒なこといくら会社命令とはいえごめんだぜ」
B「そう愚痴るなよ。代わりに手当てがたっぷり貰えるだろ」
A「そうだったな。まあ早いとこ済ませちまうか」
B「そういうこった」

ざっざっ

男(ふぅ…、何とかばれずにすんだか)

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:01:16.58 ID:J9ci8XI10
ざっざっ

B「ちょっと待て!」
A「ん?どうした怖い顔して」
B「足跡だ」
A「足跡…。これ、か」
B「ああ、俺らがちょっとここを離れている間に誰かがここに来ている」
B「しかもこの車をぐるぐる周っているかのように足跡が残っている」

男(ま、まずいぞ…。何でそんなことに気づく!)
男(い、いやそれより早くここから離れなければ)

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:04:41.63 ID:J9ci8XI10
A「つまり、後ろの死体を見られたと」
B「ああ。そして俺らはここをどのくらい離れた?」
A「車に一人を残して交代で穴を堀り、車を離れたのは確認のため2人で穴を見に行ったときだけだから…」
B「そう、ほんの2、3分のはずだ」
A「つまりそいつはまだこの近くにいるわけだな」
B「そういうことだ。この会話が聞こえる近くに隠れている可能性もある」
A「既にここを立ち去っていたならどんどん離れていることになる」
A「急いで見つける必要があるな」
B「そういうことだ、早くそいつを探すぞ」
A「ああ」

男(ここから逃げるしかない…。けど、動いたら音が出てばれるし…)
男(そうすりゃいいんだよ!なんでこんなことになってるんだよ!)

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:08:21.27 ID:J9ci8XI10
ざっざっ

男(来る、逃げるしかない!)

だっだっだっ

A「!」
A「おい、いたぞ!」
B「俺は車を移動させるからお前は追え!」
A「わかった!処理は頼んだぞ!」


だっだっだっ

男「はあ!はあ!」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:14:06.66 ID:J9ci8XI10
男「はあはあ!」
男「はあはあ!はあはあ!」

だっだっだっ

男(と、とにかく警察に!)
男(この山の地理には俺の方が詳しいはずだ、だからまずあいつをまくんだ!)

男「はあはあ!」

だっだっだっ

男(まいた…のか?やけにあっさりまけたような…)
男(しかもあまり必死に追ってきてなかったような?)
男(足跡に気づくようなできる奴なはずなんだが…)
男(まあいい、まけたのなら早く近くの警察に行くまでだ!)

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:18:32.87 ID:J9ci8XI10
男(あいつらは一体なんだったんだ?)
男(入社予定の会社の社員…だよな、あれ)
男(何で社員が死体の処理なんか…)
男(俺も入社後あんな仕事やるのか?!)
男(い、いや、そんなことより今はまず警察に事情を説明しなければ!)
男(最寄の警察署はここから近い、奴らに見つからないように急ごう)

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:23:13.53 ID:J9ci8XI10
男(ふぅ…。着いた、あそこだ)
男(とりあえず事情を説明するしかない)
男(でも、待て。事情なんて説明したらうちの会社はどうなるんだ?)
男(入社前にこんな大問題が世間に知れたら…)
男(倒産はないにしろイメージは確実に悪化する)
男(そしたら大規模リストラが起きて、さらに給料が減らされて…)
男(下手したら内定取り消しなんてことも…)
男(って俺は何を考えてるんだ!人が死んでたんだぞ!)
男(早く事情を説明するんだ!)

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:30:06.42 ID:7aArd3drO
ブラック乙

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:30:12.99 ID:J9ci8XI10
男(ん?何か入り口付近で警官が話してるな)
男(相手は……。な、なんであいつ(Bのこと)が警察に着てるんだよ!)
男(何か紙を見せてるが…。……お、俺の写真?!)
男(何だ?!何で俺の写真が?!)
男(何が起きてるんだ?!)
男(と、とりあえず警察はだめなのか?!)
男(わ、わけがわからない…。い、一旦離れよう…)

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:37:19.35 ID:J9ci8XI10
男(何で…警察にあいつがいて、それで俺の顔写真を…)
男(俺が何か悪いことしたんだっけか?)
男(ただいつもどおり山に散歩に行って、それで入社先の車がなぜかあって)
男(それで車の中に血だらけの人がいて…)
男(わけがわからない…。頭がどうにかなりそうだ…)
男(糞!何で俺がこんなのに巻き込まれてるんだよ!)
男(実力ない奴を心の中で馬鹿にしたりしたからか?!)
男(内定出てない奴を無能だなーなんて思ったりしてたからか?!)
男(糞!糞!今まで俺がどんなに努力してここまでたどりついたか!)
男(ちくしょう!ちくしょう…)
男(…………)
男(一旦…家に戻る、か…)

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:44:52.89 ID:J9ci8XI10
男(家で落ち着いて今の状況を整理しよう)

てくてく

男(?!な、何で会社の車が俺のアパートの前に止まってるんだ?!)

C「おーい、家に居そうか?」
A「いないな。家はまだ着てないようだ」
C「そうか、じゃあどうする。俺がここに残るか?」
A「ああ、頼んだ。俺は引き続き男を探す」

男(なんだよおい!なんであいつが俺の家知ってるんだよ!)
男(夢なら覚めてくれよ!わけがわかんねえよ!)
男(糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!糞!)
男(もう…家にも近づけない…のか)

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:52:02.97 ID:J9ci8XI10
男(あいつ…俺の名前も知ってやがった)
男(入社予定の会社だからって、俺の顔一目見ただけですぐわかるか?!)
男(まだ入社したわけでもないのに…)
男(あんな奴らとは面接でも全く会った覚えがない)
男(しかも、あいつら警察とも繋がってるのか?)
男(ただ…車の中の死体を見ただけじゃないか!)
男(そんなにいけないことだったのかよ!何であんな無防備だったんだよ!)
男(糞!考えてもきりがない)
男(とりあえず現状を整理しよう。俺はいつ他の奴より頭の回転が速いって自分で思ってきたんだろ!)

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:54:40.78 ID:J9ci8XI10
男(まず俺は会社に追われている)
男(そして恐らく会社と警察も繋がっている)
男(つまり全国指名手配みたいになっているのか?)
男(まずテレビかラジオ、もしくはネットで情報を入手する必要があるな)
男(それらを使うのに一番手っ取り早くて安全な方法は…)
男(友の家だな!あいつに電話して連絡しよう)

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 01:59:47.32 ID:J9ci8XI10
男「もしもし」
友「おう、どうしたお前から電話なんて珍しいな!」
男「まあ、な。急用なんだよ」
友「で、どんな用なんだ?」
男「そうだな、電話では何だからお前んちで話したい」
友「おいおいなんだよ突然。女絡みかよ?え?」
男「いや…そんな冗談言ってる場合じゃ…」
男「い、いや、そうだな、まあそんなところだよ」
男「だから電話じゃ話しにくいんだ」
友「おーけい、おーけい。わかったぜ。じゃあ俺んち直接来るか?」
男「いや、ちょっと足が今なくてさ。できれば駅前に向かえに着てくれないかな?」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:04:19.91 ID:J9ci8XI10
友「何だよ事故ったのかよ?大丈夫かー?」
男「いや、ちょっとバイクの調子が悪いだけだ」
男「だから、さ。そうだな…夜7時に駅前でいいか?」
友「了解。遅れんなよ?待つの苦手なんだから」
男「ああ、そっちこそ時間厳守で頼むぞ」
友「ああ、まかせとけよ」
男「ほんとに頼むぞ!絶対時間通り来てくれよ!」
友「おいそんなに俺に会いたいのかよ?わかったって」
男「頼んだぞ…」
友「ああ、じゃあ7時に駅前でなー。じゃあな」
男「ああ」

男(今6時半だから…タクシーで行けば調度駅前に7時くらいだな)
男(とりあえずタクシーを探そう)

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:08:48.73 ID:J9ci8XI10
男(とりあえず大通りに行けばすぐタクシーが捕まるはず)
男(それまで慎重にあいつらに見つからないように移動だ…)
男(ただ…妙な歩き方をしていたら余計に目だってしまうか)
男(自分の運に賭けるしかない、な)

てくてく
てくてく…

D「いたぞー!男だー!」

男「な?!見つかったのか!」

B「車だ!車で追え!相手は足がない!」
D「わかった!」

男「や、やばい!」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:14:06.50 ID:J9ci8XI10
だっだっだっ

男(あっという間に見つかっちまったぞ!)
男(相手は何人いるんだよ!最初は2人だったのに!)
男(そ、それより早くタクシーを捕まえなければ!相手は車だすぐ捕まる!)

だっだっだ

男(糞、早く見つかってくれ!頼む!追いつかれる!)
男(やばい!来た!)

ぷー!ぷっぷー!

男(糞!と、とりあえず目の前の階段を登れば車では追えない!)
男(そこまでダッシュだ!)

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:16:43.14 ID:J9ci8XI10
ぷー!!

だっだっだっ

男「はあはあ!はあはあ!」

男(あ、危ないなんとか間に合いそうだ!)

だっだっだっ

男「はあ!はあ!はあ!

男(よし!間に合った!)

キキィー!
バタン

D「糞!追うぞ!」
E「ああ!」

男「ち、ちくしょう!」

だっだっだっ

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:19:35.51 ID:J9ci8XI10
男「はあはあ!はあはあ!はあはあ!」

男(や、やばい運動不足で体力がそんなにない!)
男(こ、ここまでなのか…)

D[よし!これなら追いつけそうだぞ!」

だっだっだっ

男(ちく…しょう…)

だっだっだっ

男(ん、あ、あれはタクシーだ!タクシーが止まってる)
男(頼む!運転手いてくれ!)

だっだっだっ
バタン

男「え、はあはあ駅前まで!急いで!早く!」
爺「あいよ、そんな急かさんでくれ」
男「早く!来る!」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:28:52.61 ID:J9ci8XI10
ぶおん!

男「あ、危なかった…」
爺「おいおいあの追ってきてるのは借金取りかい?」
男「……」
爺「まあ事情があるんだろうな、深くは聞かないよ」
男「ああ、それより急いで駅前に頼むぞ」
爺「あいよ」

男(運が…よかったとしか思えない…)
男(捕まっていてもおかしくなかった)
男(何はともあれ、先のことを考えよう)

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:31:18.31 ID:J9ci8XI10
D「……中々運はいいみたいだな」
E「ええ」
D「ただ逃げ続けるには運だけじゃだめだな」
E「ええ、我々に見つかりにくい行動をとる必要がありますからね」
D「そのためには知力、判断力、体力など総合的な力が必要だ」
E「ええ」
D「その総合力が備わっている私たちから逃げ続けるのは常人では不可能だ」
E「ええ」
D「ふふ、すぐに捕まえてやるさ」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:36:15.14 ID:J9ci8XI10
男(あいつら何人いやがるんだよ)
男(あんなにすぐ見つかるってことは、警察+会社の何人かがこの辺り捜索してるのか?!)
男(となると俺は今かなりまずい状況にある)
男(早く友の家に匿ってもらう必要があるってわけだ)
男(今丁度7時か。後駅までは2,3分でつくな)
男(友に会ってあいつの家にいってからいろいろ考えるか)

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 02:40:39.99 ID:J9ci8XI10
爺「もうすぐで着くよ」
男「ああ」

男(ひとまず安心、か)


男(……いや、待て。何のんびりしてる?)
男(俺はアホか?追われてるんだぞ大勢に)
男(そして追われてる奴が遠くに行くために電車を使うなんてのは素人だって考えつくことじゃないか!)
男(まずい!駅は包囲されている可能性がある!)

男「ちょっと待ってくれ!止まってくれ!」
爺「ん?」
男「い、いや、とまらなくていい!そのまま駅にはいかないでくれ!」
爺「もうすぐ着くのに何いってるんだい?どこに行くっていうんだよ」
男「と、とりあえず駅に近寄らないで離れてくれ!」
爺「あいよ、わかったよ」

男(危ない…。俺は追われてるんだ。しっかり考えろよアホ!)

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 03:09:47.38 ID:J9ci8XI10
爺「駅前じゃなかったらどこいくんだい?」
男「ちょっと…待ってくれ」

男(どうする?今この町で安全な場所なんてあるか?)
男(とりあえず駅前を中心とした街中はまず避けるべきだ)
男(まず、今夜どこに泊まるかが重要だ…)
男(…………そうだな。俺が大学受験のとき利用したあのボロ宿に行ってみるか)
男(近くの川は汚水だらけでにおいがたまったもんじゃないが、しょうがない)

男「貧民宿に行ってくれ」
爺「貧民宿?駅前って言ってたのに次は宿かい」
男「ああ」
爺「全く、変わった客だよあんたは」
男「金は払う。言うとおりにしてくれ」
爺「あいよ」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 03:19:51.83 ID:J9ci8XI10
爺「着いたよ」
男「ああ、ありがとう。えーっと5280円か」
爺「金はいいよ」
男「は?」
爺「お前さん借金取りに追われるくらい金に困ってるんだろ」
男「い、いやあれは!」
爺「いいっていいって。ここは甘えときな」
男「で、でも金はしっかりと払わなきゃ」
爺「いいからいいから行った行った」
男「…ありがとな」
爺「この代金は出世払いで頼むよ」
男「はは…ああ!またな!」

バタン

ぶろろー!

男(とりあえず周りに人影はないな)
男(この宿で今日の夜だけ泊まるとしよう)

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 03:24:30.22 ID:J9ci8XI10
男「ごめんくださいっと」
婆「いらっしゃい」
男「1泊頼む」
婆「1人かい?」
男「ああ」
婆「2回の松の部屋があいてるねえ」
男「そこで頼む」

とん、とん、とん

ガチャ
バタン

男「ふーーーーー」
男(ようやく、ゆっくりできそうだ)
男(今日はいろいろなことがありすぎた)
男(とりあえずもう寝たい…)

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 03:31:44.71 ID:J9ci8XI10
ちゅんちゅん

男「ん…。うーん」
男「もう、朝…か。7時…」
男(あのまま結局寝てしまったな)
男(とりあえず今日どうするか、そして今後どうするか考えよう)

どんどん

男(ん?なんだ?)

どんどんどん

男(…部屋にわざわざノックで来るか?)
男(話し声が…聞こえるな)

70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 03:35:29.36 ID:J9ci8XI10
ぼそぼそ

「ほ…とに、こ…へや…のか?」
「ま…がいない…ここ…」

男(?!ま、まさか追って…か?!)
男(ど、どうする?!ここは2階で窓の外は汚い川…)
男(……………)


ドボーン!

A「な?!」
B「おい、借りた合鍵使え!」

ガチャガチャ
バタン

A[ちっ」
B「川に飛び込みやがったか」


72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 03:41:39.62 ID:J9ci8XI10
A「追うぞ!」
B「ああ」

だっだっだっ


男(……)
男(…行った…か)
男(まんまとかかってくれたな)
男(何かの漫画で見たんだよな、こういう状況のときの対処法)
男(川に部屋に置いてある重たい時計や置物を投げ捨て飛び降りたように見せかける)
男(そして自分はベッドの下や押入れに隠れてやりすごす)
男(相手がアマチュアだからこそ通用したんだろうな)

74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 03:50:08.26 ID:J9ci8XI10
男(さっさとこの宿離れるか)
男(宿代はカウンターに置いとこう)

だっだっだっ

男(にしても何で俺が泊まってた宿がわれてたんだ?)
男(何か俺の行動が奴らに筒抜けな気がする…)
男(考えすぎか?奴らに触れられた覚えはないし、携帯だって電源を切っている)
男(宿の婆さんにすら情報が回ってるのか?)
男(糞!どうなってるのかわからない)
男(とりあえず今後は人との接触は極力避け、宿は利用しないべきだな)

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 10:45:14.71 ID:VV4NQd0y0
男(さて…どうしたものかな)
男(……………)
男(そういえば友との約束すっかり忘れてたわ)
男(あいつくらいしか今近場で頼れる奴はいないな)
男(電話するか)

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 10:52:09.60 ID:VV4NQd0y0
男「もしもし」
友「もしもし、じゃねえよ!何でお前昨日来なかった!」
男「わ、悪い悪い。急用ができてさ」
友「こっちは1時間近く待ったんだぞ!お前携帯も出ないし!」
男「悪かったって。今度飯おごるからさ」
友「…あー、わかったよ。じゃあ今度奢れよな」
男「ああ。ところで折り入ってまた頼みがあるんだ」
友「今度は何だよ」

108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 10:57:53.74 ID:VV4NQd0y0
男「また同じ頼みなんだけどさ、お前の家に行きたいんだけど」
友「またかよ!じゃあ何で昨日」
男「それは悪かったって!頼むよ、今からお願いできないか?」
友「あーもーわかった。どこ集合だ?」
男「そうだな…。VIPデパート付近で頼むよ」
友「何だよ付近って。もっと具体的な場所言えよ」
男「来るまでそこらへんぶらついてるからさ、デパートに着いたら電話してくれないか?」

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 11:03:55.38 ID:VV4NQd0y0
友「何でそんなめんどくさいこと」
男「い、いや、まあちょっとぶらつきたいなー、なんて。はは…」
友「ちっ、わかったよ、着いたら電話する」
男「ありがとう、恩に着るよ」

男(後は待つだけだな)

ぶぶぶぶぶ、ぶぶぶぶぶ

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 11:08:37.35 ID:VV4NQd0y0
男「もしもし」
友「着いたぞ」
男「わかった。悪いんだがデパートから離れたところに駄菓子屋があるの知ってるだろ?」
男「あそこまで頼むよ」
友「何でそんな所にいるんだよ…」
男「駄菓子が食べたくなってな」
友「…ちっ、わかったよ。今度飯じゃなくて飲み奢れよな」
男「ああ」

112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 11:15:45.53 ID:VV4NQd0y0
男(デパートは人が多すぎて怖いからこんな所まで着てしまったかが…)
男(追われてるときは人ごみにいた方がいいんだっけ?)
男(糞、追われるなんて体験すると思わなかったから知識がなさすぎる)
男(っとあれは友の車だな)

男「よお、悪いな」
友「ほんっとだよ。お前は悪い」
男「ああ、すまなかったって」
友「まあいい、行くぞ」

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 11:23:46.47 ID:VV4NQd0y0
男(これでしばらくは友の家にかくまってもらえる)
男(今後どうするべきか考えなければ)

友「なあ、ちょっとVIP喫茶でコーヒー買っていいか?」
男「ん?ああいいけど」
友「あそこだ」
男「ああ」

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 11:31:20.33 ID:VV4NQd0y0
男(コーヒーか…)
男(そういえば腹減ったな)
男(昨日の朝から何も食べてないんだっけ…)
男(飯をついでに買ってきてもらうか)

友「着いたぞ」
男「ああ、あのさ」
友「よし、行くか」
男「え?行くかって」
友「何だよせっかく来たんだからちょっとコーヒー飲んでいこうぜ」

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 11:39:36.93 ID:VV4NQd0y0
男「い、いや、俺はここで待ってるよ」
友「いいからいいから、さあ行こうぜ」
男「ちょ、お、おい引っ張るなって」

男(な、なんだ?友ってこんな強引な奴だったか?)
男(どちらかというと人の意見を尊重するタイプだったはずだが)

男「わ、わかったって。自分で歩けるよ」
友「ああ、じゃあ行こうぜ」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 11:45:50.11 ID:VV4NQd0y0
てくてく

男(何かおかしい)
男(あの店、何かあるのか?)

てくてく

男(どうする…?)

てくてく

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 11:55:15.35 ID:VV4NQd0y0
男(…ん?あの店の中にいるのは…)
男(あ、あいつらじゃないか!何でこんな所に?!)
男(い、いや、それより今わかったことは…)

男「友、お前」
友「ん?」
男「グル…だったのか?!」
友「は?」
男「何で都合よくあいつらが店にいるんだよ!」
友「お、おい何言って」
男「ちくしょう!」

だっだっだっ

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:01:29.34 ID:VV4NQd0y0
男(友も敵だったなんて!)
男(ちくしょう!頼る奴がいなくなっちまった!)
男(ちくしょう!ちくしょう!)

とぼとぼ

男(もう、どうしようもなくなっちまった)
男(親に頼るか?でもここから遠いし、もし友みたいに敵側だったら…)
男(とりあえず一人で逃げ続けるしかない、か)

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:09:03.14 ID:VV4NQd0y0
男(コンビニで買ったおにぎりでとりあえず飯は食った)
男(所持金は約2万と、クレジットカードか)
男(しばらくは大丈夫そうだが今後どうすればいいんだ…)
男(何でこんなことに…。俺は、今まで何のために努力して…)
男(やっと、やっとスタートラインに立ったっていうのに!)
男(ちくしょう…今まで何のためにがんばって…。ちくしょう!)

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:18:40.14 ID:VV4NQd0y0
とぼとぼ

男(あれは…俺が入社する予定だった会社のビル、だな)
男(あそこで内定式もやったんだっけ)
男(懐かしいなあ。君には期待してるぞ、なんて言われたっけ)
男(冗談かもしれないけど、嬉しかったなあ)
男(はあ…もう、疲れてきた)

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:23:12.25 ID:VV4NQd0y0
B「いたぞ!」

男「?!」
男「ちく、しょう!」

だっだっだっ

D「あそこだ!」

男(こっちにも?!)

だっだっだっ

E「こっちだ!」

男(か、囲まれてる?!)

141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:31:44.80 ID:VV4NQd0y0
だっだっだっ

男(やばいどうする!)
男(と、とりあえずまっすぐに逃げるぞ!)

だっだっだっ

男(敵は後ろからと左右方向から来てるのか)
男(あの真正面のビルに入るしか逃げ場はないぞ!)
男(もう、ここまでなのか?!)

だっだっだっ

ウィーン

147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:40:01.50 ID:VV4NQd0y0
男「はあはあ!はあはあ!」
男「糞!どこかに逃げ場は!」

「そんなものは、ないよ」

ガシャーン
ガシャーン

男「なんだ?!シャッターが下りて?!」

「閉じ込めさせてもらった」

男「誰だ?!」
「おいおい忘れたのかね」
男「?!」

コツコツコツ

153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:46:11.82 ID:VV4NQd0y0
男「お、お前は!」
A「そう、私だよ。君を追っていた、ね」
男「な、なんでお前が!」
A「おいおいここがどこか考えてみてくれたまえ」
男「?」
A「ここは、我が社の本社じゃないか」
男「な!」
A「つまり、君が今ここにいることの方が奇妙なことなんだよ」
男「何で俺を追ってきた!俺を捕まえてどうする!」
男「何で、車に死体なんか!なんで!なんで!」
男「ちくしょう!ちくしょう!」

159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:52:29.40 ID:VV4NQd0y0
パチパチパチ

A「おめでとう」

パチパチパチ

男「?」

パチパチパチ

A「改めて、おめでとう」
男「な、何がおめでとうだよ!この後俺をどうするんだよ!」

パチパチパチ
パチパチパチ

男「?!他にも何人かいるのか!」
A「ああ、彼らも私の仲間だ。君も見覚えがあるんじゃないかな?」

163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 12:57:47.25 ID:VV4NQd0y0
男「…!」
B「さっきぶり、かな」
C「中々足が速いね」
D「いやー久しぶりに昔を思い出したよ」
E「全く、Dさんはその歳でよくやりましたよ」
男「こ、こいつら!」
A「そう、君を追っていた方々だ」
A「そして、君は彼にも見覚えがあるんじゃないかな?」
男「え…?な、なんで?!死んでたんじゃ?!」
F「はは、人を勝手に殺さないでくれよ」
F「確かに今回私は死体役だったがね、運悪くじゃんけんに負けただけなんだよ」
男「じゃんけん?何を言って」
A「そして、この方が」

164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:01:18.92 ID:VV4NQd0y0
爺「やあ、昨日ぶりだね」
男「な、なんで?!タクシーの!」
爺「ほっほっ」
男「わけが…わからない」
A「これから全てを説明するよ」

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:07:09.05 ID:VV4NQd0y0
A「まず君は昨日、日課の散歩をしたね」
男「…ああ」
A「散歩してる途中で我が社の車を見つける」
A「そして君は不振がって車の中をのぞいてしまう」
A「そしたらなんとそこには死体があったというわけだ」
男「生きてたけどな」
A「はは、それから君はわけもわからず追われるはめになったというわけだ」
男「…」
A「君は警察を頼ろうとしたね」
A「でも残念、そこにはBさんがいた」
B「何回かこの行事はやってるんでね、警官の方に演技の協力をしてもらってた」
A「そう、つまり警察は別に君を追っちゃいなかったというわけだな、ははは」
男「わらえねえよ…」

166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:16:35.12 ID:VV4NQd0y0
A「それでまあ何とか君は今まで逃げ延びてきたわけだ」
A「あそこで我が社が用意したタクシーを見つけられたのも実に運がいい」
A「後、宿で見せた君の気転には驚いたよ、本当にだまされた」
男「褒められてもうれしくねえよ…」
A「あ、君は一つ誤解しているようだが友君は敵じゃないよ」
男「え?」
A「彼にはね、「男君を飲みに誘おうと思うのだが連絡がつかない、」
A「だから君から彼に喫茶店までつれてきてもらえないか?」
A「ただ我々が言ったということは隠してそれとなくつれてきて欲しい」
A「彼を驚かせたいものでね。もちろん君にも飲み代を奢るから」」
A「って提案したわけさ。もちろん彼は快諾してくれたよ」
男「な…」
A「君のすばらしい洞察力で結局捕まえられなかったけどね」
男「…」
A「そして最終的にはここのビルに逃げ込むように追い込んで終わりってわけさ」

170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:25:03.71 ID:VV4NQd0y0
男「……。で、結局これはなんなんだ…」
男「概要はわかったよ。でも目的がわからない!何でこんなことをした!」
A「ああ、そういえば言い忘れていたね」
A「これは、将来の幹部候補を選定する試験だ」
男「?!」
A「君は、将来人の上に立つ上で何が必要だと思うね?」
男「…カリスマ性、とか…?」
A「もちろんそれも少しは必要なことだね」
A「でも、カリスマだカリスマだと世間でもてはやされてる人物の中には、」
A「本人が実力もないくせに勘違いしてる輩の方がほとんどだ」
A「周りが騒ぐから自分は特別だ、と勘違いしてしまう」
A「いや、そんなことはどうでもいい。人の上に立つ上で必要なことはだね」
A「総合力だよ」

171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:30:28.77 ID:VV4NQd0y0
男「総合力?」
A「ああ、総合力だ」
A「知力、体力、判断力、一人で困難に立ち向かう力、運」
A「他にも努力を怠らないことや、諦めないことなどいろいろある」
A「それを総合的に判断するための試験だったのさ、これは」
男「試験…だって?」
A「さっき言ったとおり幹部候補選定試験だ」
A「そして君は見事合格した。おめでとう」

174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:35:37.35 ID:VV4NQd0y0
男「い、いきなり言われても!」
男「だ、だって車を見つけたのは偶然で」
A「車を見つけさせたのは偶然じゃない、君の散歩コースに止めておいた」
男「で、でも車の中を覗かなかったら!」
A「そしたら君は知らないうちに試験に落ちていた」
A「そしてもちろん途中でつかまってもアウトだ」
A「心が折れて警察にあのまま逃げ込んだ場合なんて最悪だ」
A「一生君は出世が出来なかっただろうね」
男「…。内定者…全員にこんなことをして…いるんですか?」
A「もちろんそんなことはしない」
A「毎年内定者の中で見込みが最もありそうな者一人にのみ行っている」
A「この試験は我々が直接行うからね、一人が限界なんだ」

177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:45:11.37 ID:VV4NQd0y0
A「こんな厳しい試験だ。そうそう合格するものなどいない」
A「君は10年ぶりの合格者だよ」
男「じゃ、じゃあ俺はこれから」
A「ああ、君は幹部候補として他の内定者とは別の教育を受けてもらうことになる」
男「や、や…った!」
A「おっと我々の自己紹介がまだだったね」
A「まず、この方が我が社の会長だ」
爺「ほっほっほっ。お疲れ、よくがんばったね」
男「え?!あ、あの時は無礼な口ばかりきいて!」
爺「いいんだよいいんだよ」
A「そしてこの方は………で。この方は…で」

179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:48:04.84 ID:VV4NQd0y0
男「これからよろしくお願いします!」
A「ではみなさん。もう一度我々の仲間になる彼に拍手を送りましょう」

パチパチパチ
パチパチパチ

こうして彼は幹部候補として入社することができた。
今後も彼は苦労をしながら出世していくことだろう。
でもそれはまた別の話。

そして一番かわいそうだったのは友であったのは言うまでもない。

おしまい

180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:51:24.44 ID:wb4w8UVFO
おもしろかったよ

184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/03/14(土) 13:57:21.60 ID:voT6R1dF0
週刊ストーリーランド思い出した

引用元: 男「就職活動余裕すぎワロタ」