1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 13:46:48.12 ID:TOb5eVWS0

少女「おはようございまーす、お手紙でーす!」

少女「ええ、一通だけですが?」

少女「それならポストに入れとけ呼び出すな?」

少女「……はーい、すみませんでしたー」

少女(でもそしたら君の顔が見れないじゃん、分かってないなあ)

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 14:54:04.42 ID:TOb5eVWS0

少女「おはようございまーす、新聞でーす!」

少女「いやあ、今朝も冷えますねえ。って余計なひと言はいらない? これは失礼」

少女「え? あ、このマフラー自分で編んだんですよ」

少女「……マフラー持ってないんですか?」

少女「ふーん」


     ・
     ・
     ・


少女「ちわーす、お届けものでーす!」

少女「なんか軽い包みですよ」

少女「差出人? んー、書いてありませんね」

少女「中身何ですか? 開けてみてくださいよ」

少女「わ! マフラーじゃないですか、ちょうど良かったですね!」

少女「え? わたしがなにか? え、いや、なんのことだか……」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 15:13:03.71 ID:TOb5eVWS0

少女「ちわーす、お届けものでーす!」

少女「小さい包みですが、なんですかこれ?」

少女「えー、いいじゃないですか見せてくださいよお」

少女「えー、なになに? ボッキンパラダイ……」

少女「……」

少女「あ、備考欄にドラマDVDと書いておいてくださいってありますね。業者さん、失敗しちゃったんだ」





少女「追い出されちゃった」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 15:25:45.07 ID:TOb5eVWS0

少女「ちわーす、お手紙でーす!」

少女「え? 自分とこには本来だれからも来るはずないって?」

少女「そんなことないですよ、わたしが毎日出してますから」

少女「余計なことしなくていい?」

少女「でもホントはうれしいんでしょ?」

少女「そんなこと言って、でも本当は~?」

少女「からの~?」

少女「と見せかけて~?」

少女「いったぁい! 女の子叩くなんて最低です!」

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 15:37:54.83 ID:TOb5eVWS0

少女「ちわーす、お届けものでーす」

少女「よっこらしょっと」

少女「ふー」

少女「あ、ハンコかサインお願いします」

少女「――はいどうも」

少女「ついでにこっちにもお願いします」ムチュー

少女「あ! 人の唇にハンコ押しつけるなんてどういう神経してるんですか!」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 15:50:29.42 ID:TOb5eVWS0

少女「ちわーす、お届けものでーす」

少女「はい、ピザ一丁!」

少女「え、なんでピザの配達もやってるのかって?」

少女「いまどき単一のバイトだけじゃ食っていけませんって」

少女「なんで黙るんですか?」

少女「……あー大丈夫大丈夫、わたしもう一人くらいは養えます。安心してください、プチ逆玉です」

少女「寝言は寝て言え? こりゃ失礼」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 16:02:28.31 ID:TOb5eVWS0

少女「ちわーす、お手紙で―す」

少女「そんなこと言われてもお仕事ですから」

少女「ほとんどお前の手紙だろって?」

少女「はは、まあそうですけど」

少女「あ、でも、今日は別のも混じってますよ?」

少女「あ……」

少女「あ、いえ、その、あなたのお母さんからです」

少女「駄目ですよ! そんなこと言わずに読んであげてください」

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 16:14:51.36 ID:TOb5eVWS0

少女「おはようございまーす、新聞でーす」

少女「受験勉強の調子はいかがですか?」

少女「あー、その顔は芳しくないって顔だ」

少女「そんなんで大丈夫ですか? また浪人ですよ?」

少女「二浪だと、名前とおんなじになっちゃいます」

少女「あ、いた、また叩きましたね!」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 16:29:03.83 ID:TOb5eVWS0

 ブロロ……


少女「風を感じて~旅にぃ出ようか♪ っと」

少女「うー、朝早くのバイクはしばれるのう」

「ニャー」

少女「ん?」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 16:29:57.23 ID:TOb5eVWS0

少女「おはようございまーす、朝刊でーす」

少女「はいどうぞ」

少女「何ですか? 私の胸がそんなに気になりますか? エッチ」

少女「いたた、叩かないでくださいよう。分かってますって、この猫ちゃんですね。ここに来る途中の空き地で見つけたんです。捨て猫でしょうかね」

少女「そうなんですよ。わたしのとこじゃ飼えなくて……」

少女「……」ジー

少女「え、本当ですか!? 君のところで飼ってくれるって!?」

少女「ありがとうございます! やっぱりわたしの上目づかいは効きますね!」

少女「いたた、叩かないでー」

36: ミサカ ◆MIsakanbtw 2011/01/06(木) 16:49:50.88 ID:IYV+ExSb0
一方通行ください

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 16:56:27.59 ID:TOb5eVWS0
>>36

少女「お届けものでーす」

少女「よっこい――しょっと」ガラン

少女「こちら一方通行です。ハンコかサインお願いしまーす」

少女「でも、道路標識なんか何に使うんですか? 重たかったですよー」

少女「は? 学園都市最強? アクセロリータ?」

少女「学園都市って……筑波とか? え、違う?」

少女(この人は一体何を言っているんだろう)

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 16:58:54.26 ID:7HdI4Oh7Q
スマイルください

39: なんだこの流れ 2011/01/06(木) 17:03:36.37 ID:TOb5eVWS0
>>38

少女「お届けものでーす」

少女「えーと、漫画のセットですね。ハンコかサインお願いします」

少女「わたしも漫画好きなんですよ。なんの漫画ですか?」

少女「卓球? 面白いんですか?」

少女「ペコ? って人が主人公なんですね。変な名前」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 17:23:56.07 ID:TOb5eVWS0

<一年前>


少女「ここが今日からわたしが住む町、わたしの担当区!」

少女「張り切って配達にいってみましょー!」


     ・
     ・
     ・


少女「迷った……」

43: >>42 なんかごめん 2011/01/06(木) 17:33:37.03 ID:TOb5eVWS0

少女「こまりましたね……」

少女「わ! ごめんなさい! 前見てなくて……」

少女「ああ、わたしの担当物ですからわたしが拾います、ごめんなさいごめんなさい」

少女「え、ああ、わたし今日からこの町で配達業をすることになったものです。よろしくお願いしますね!」

少女(あ。握手の手、無視された)

少女(それにしても背の高い人だなあ。髪も長めでちょっと怖いけど……でも見ようによればかっこいい、かな?)

少女「あ、えーと、○○って場所を探してるんですけどご存じありませんかね?」

少女「え、知ってる? ついてこいって……いや、ありがたいですけど場所さえ教えてもらえれば、ってちょっと待ってくださいよう!」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 17:44:45.74 ID:TOb5eVWS0

少女「ありがとうございました。これで最初の配達完了です!」

少女「まだ、沢山残ってる? あはは、そうですね……」

少女「困ったな、時間をロスしすぎて時間までに配達できるかどうか……」

少女「え、そんな、悪いですよ。わたしの仕事ですから」

少女「どうせ暇だから? で、でも……あ……行っちゃった」

少女「配達物半分持ってかれちゃいました。どうしよう……」


     ・
     ・
     ・


少女「あ、あなたはこの前の! あの時はありがとうございました!」

少女「おかげさまでなんとかこの町にもなじんできました。もう道に迷ったりはしませんよ!」エッヘン!

少女「いやーほんとあの時は助かりました。届け間違いの苦情もありませんでしたし」

少女「……どうしました? なんか顔色悪いですよ?」

少女「え? 受験失敗した? あまり話しかけないでくれ? ご、ごめんなさい」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 17:53:40.40 ID:TOb5eVWS0

<現在>


少女「こんばんはー、お手紙でーす」

少女「ええ、まあ、わたしからの手紙ですけれども」

少女「本命は猫ちゃんです、中に入れてくださいよ」

少女「わーい、おじゃましまーす!」


     ・
     ・
     ・


少女「ほーら、おもちゃ飼ってきたぞーポチ」

少女「む、わたしのネーミングセンスにケチつけますか!」

少女「どうせ君だってろくな名前を考えてないでしょう」

少女「ポ、ポッチャレータム? えーと、いやそんなドヤ顔されても……」

50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 18:34:14.54 ID:TOb5eVWS0

少女「ポッチャ、眠いか―い?」

少女「ああ、寝ちゃった」

少女「じゃあ、わたしはこれで失礼します」

少女「わたしの座ってたとこ、嗅がないでくださいよー」

少女「違います、おならじゃありません! もっといい匂いですよう!」

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 18:49:44.46 ID:TOb5eVWS0

 ブロロ……


少女「ぼぉくぅら同じまいにぃちをー♪」

少女「あれ?」

少女「おーい!」

少女「へえ……あ、いや、部屋から出てる君は久しぶりに見たので」

少女「どこに行くんですか? ……ってあれ、ポッチャ」

少女「え、動物病院!? ポッチャ病気ですか!?」

少女「え、違う? 元野良だから一応? なーんだ、心配させないでくださいよ」

少女「ついでにお前も診てもらえ? それ、どういう意味ですかー!」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:05:36.89 ID:TOb5eVWS0

少女「ポッチャに会いに来ましたー」

少女「えー、いいじゃないですか入れてくださいよう、さむいですよう」

少女「――おっと、いつまでも叩かれるわたしじゃありませんよーだ」


     ・
     ・
     ・


少女「結局入れてくれるあたり、優しいというか優柔不断というか」

少女「おーポッチャ、こんばんはーうりうり」

少女「今日は夜暇なんですよー、もうちょっとここいていいですか?」

少女「ちょっと、変なこと考えないでくださいよ。え、気のせい? 声上ずってますよ」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:19:48.09 ID:TOb5eVWS0

少女「いまどきスーパーファミコンですか」

少女「いえ、別に」

少女「カセットは何を?」

少女「これはナイスチョイス!」

少女「では早速やりましょう。えー、いいじゃないですかー」

少女「がちっとな」


 スーパー・プヨプーヨ!

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:25:14.28 ID:TOb5eVWS0

少女「なんでそんなに強いんですかー」

少女「受験勉強の息抜き? もっと外に出ましょうよ」

少女「頭の体操? 確かにそうかもしれませんが」

少女「大体ぷよぷよ、なんて響きが卑猥です」

少女「――おっと、へっへーはずれでーす」

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:44:13.30 ID:TOb5eVWS0

少女「ちわーす、お手紙でーす」

少女「あ、いえ、今日はわたしのじゃなくて。そう、君のお母さんからです」

少女「そんな投げやりに扱わないでくださいよ」

少女「それと、それ、急ぎの手紙らしいですから、今すぐ見た方がいいですよ」

少女「もう! わたしが開けますよ!」ピリピリ

少女「えーと、――え?」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:51:28.62 ID:TOb5eVWS0

     ・
     ・
     ・


少女「あの手紙が来てから一週間が経ったよ」

少女「あの人は実家に帰ってる」

少女「あの人のお母さん、病気だったんだって。おっもいやつ」

少女「あの人の受験が近いから隠してたんだけど、ホントに危ないから帰って来いって」

少女「あんなにあわてた顔、初めて見たかも」

少女「そろそろ、戻ってくるかな? どう思う、ポッチャ?」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:52:29.42 ID:TOb5eVWS0

少女「おかえりなさい」

少女「……」

少女「え!?」

少女「な、なーんだ、お母さん持ち直したんですか! 暗い顔してるからてっきり……」

少女「よかったですね! 本当に良かったです!」

少女「え? どうしたんですか、そんなに思いつめた顔して」

少女「相談がある? はあ」

少女「いえ、かまいませんが」

61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:54:25.47 ID:TOb5eVWS0

     ・
     ・
     ・


少女「じゃあそっちお願いしまーす」

少女「え、多すぎる? そんなもんですって」

少女「さあさあとっとと出発出発」

少女「そうですよ、時間もあんまりないんですから」

少女「まあ、わたしみたいにベテランになれば余裕ですけど」エッヘン!

少女「最初のころの話はなしですよー!」

63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:55:07.77 ID:TOb5eVWS0

少女「お疲れさまでーす」

少女「初めての配達はいかがでした?」

少女「どうってことない? じゃあその死んだ目は何ですか」

少女「大体浪人生という立場に甘えすぎて日々の鍛錬がですね」

少女「あ、聞いてますー!?」

65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:55:49.50 ID:TOb5eVWS0

少女「それにしても驚きました。まさか配達のお仕事をしたいとは」

少女「え、配達じゃなくてもよかった。そうですか」

少女「でも大きな転換ですよね。進学をやめて就職なんて」

少女「お母さんを安心させるためですね」

少女「気まぐれ? またまたー」

少女「……一緒に頑張りましょうね」

少女「そんな顔しないでください。私がついてますから大丈夫ですよ!」

少女「それじゃ今日はお疲れ様ー」

67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:56:32.62 ID:TOb5eVWS0

配達少女「お届けものでーす」



     ~了?~

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:57:28.90 ID:TOb5eVWS0
たまには即興もいいね。短いけど
読んでくれた人乙

69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 19:58:36.62 ID:kvvdFmHI0
乙良かった

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 22:05:16.33 ID:TOb5eVWS0

少女「こんにちはー!」

少女「お爺さん、お元気ですか?」

少女「ああ、いえ、別に配達ってわけじゃないんですけど、ちょっと顔を見に」

少女「あはは、ええ、頑張ってますよ」

少女「あ、今日もお手紙ですか。預かります」

少女「ええ、ちゃんと届けますよ」

少女「きっと、届くはずです……」

80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 22:18:54.33 ID:TOb5eVWS0

少女「ふう。さてと」

少女「あ、お疲れさまでーす」

少女「ずいぶん仕事の手際がよくなりましたね。いいことです」

少女「あ、このお手紙ですか? ある人から預かったものですよ」

少女「……あるお爺さんからお婆さんへの、お手紙なんです」

81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 22:24:22.90 ID:TOb5eVWS0

少女「こんにちはー」

少女「日向ぼっこですか? わたしも時間あるので混ぜてください」

少女「んー……」

少女「ん? 何考えてました?」

少女「あはは、お婆さんのことですか」

少女「大丈夫、今頃お爺さんの書いたお手紙を読んでるはずですよ」

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 22:43:09.91 ID:TOb5eVWS0

少女「こんにちはー」

少女「今日は猫、連れてきました」

少女「ポッチャレータムっていうんですよ」

少女「ええ? いい名前?」

少女「お爺さんもあの人とネーミングセンスが同じですか!」

85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 22:55:26.17 ID:TOb5eVWS0

少女「縁側で猫とまどろむ老人。絵になりますねえ」

少女「あ、カメラ持ってきたんです。撮ってもいいですか?」

少女「いや、一枚だけですから」

少女「恥ずかしい? そんな女子供じゃあるまいし」

少女「あ、ポッチャも逃げないでよう!」

86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 23:01:49.98 ID:TOb5eVWS0

少女「二人とも、っていうか一人と一匹さん、表情がかたーい」

少女「もうちょっと笑って笑って」

少女「こら、ポッチャ。逃げるとまんま、やらないよ」

少女「よーし、二人ともいい感じ」

少女「はいチーズ!」

少女「……え? チーズは嫌い? はあ」

少女「一足す一はー?」

少女「いや、馬鹿にはしてないですって」

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 23:13:08.49 ID:TOb5eVWS0

少女「デジタルカメラですから即確認できます」

少女「うん、いい感じですね」

少女「え、このボタンですか? スライドショーですけど」

少女「あ、勝手に押さないでくださいよう!」

少女「いや、これは、仕事の同僚と撮った写真です。決してやましいものでは」

少女「ていうかお爺さん、何怒ってるんですか」

少女「どこぞの馬の骨に……って、お爺さん、わたしのお父さんですか」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 23:21:07.91 ID:TOb5eVWS0

少女「こんにちはー」

少女「何してるんですか?」

少女「これは将棋という奴ですね」

少女「わたしこういう頭を使うものが大の苦手で。いまだにあの人にぷよぷよで勝てませんし」

少女「でも将棋って二人でやるものじゃ?」

少女「詰め将棋?」

少女「ああぷよぷよでいう一人モードですか」

少女「ち、違いますって、ぷよぷよは卑猥なものじゃありません!」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 23:28:05.73 ID:TOb5eVWS0

少女「将棋……よくわかりせんねえ」

少女「あ、終わったんですか? 詰み? おめでとうございます!」

少女「……わたしも将棋強くなればあの人に勝てますかね?」

少女「あの」

少女「わたしにも将棋、教えてもらえませんか?」

92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 23:36:18.39 ID:TOb5eVWS0

少女「じゃあ、今日はこれで帰りますね」

少女「あ……お手紙ですか」

少女「ええ、ちゃんと預かりました」

少女「それではまた今度」

少女「ほら、ポッチャもばいばーいって」

少女「ばいばーい」

95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 23:50:46.12 ID:TOb5eVWS0

少女「おはようございまーす!」

少女「今日は将棋を教えてもらいに来ました!」

少女「前に約束したじゃないですか」

少女「そうそう、写真撮った時のことです」

少女「馬の骨? お爺さん、まだあの人のこと覚えてるんですか!」

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 00:05:27.56 ID:NpnOyQaL0

少女「将棋の基本は駒とその動かし方」

少女「なるほど、基本を知らなくてはどうしようもありませんからね」

少女「ところで駒って何ですか?」

少女「ああ、この五角形たちの名前ですか」

少女「小人用のホームベースみたいですね」

少女「でもずいぶん多いですし、段差も大きい」

少女「……」

少女「でや! これでどれが本物のホームベースか分かるまい! おまけに段差も凄いからつまずくこと必至であるぞ!」

少女「……一昔前のスポーツ漫画のノリですね」

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 00:42:07.18 ID:NpnOyQaL0

少女「まずは駒の名前」

少女「これはあゆむくんでしょうかあゆみちゃんでしょうか」

少女「え? 『ふ』?」

少女「なんで食べ物に……」

少女「あ、そうじゃない? これは失礼」

少女「で、これが総大将の王と玉。その隣をはさむ金銀に、桂馬、両翼を担う角と飛車」

少女「……」

少女「いえ、別に。金と玉が同時に目に入ったとかそんなんじゃありません」

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 00:52:53.27 ID:NpnOyQaL0

少女「次に動かし方ですが」

少女「歩は前に一歩ずつ。地道ですね。わたしにはまねできません」

少女「飛車と角はすごいですね。びゅんびゅんいどうします。チートです」

少女「あ、王様はけっこう鈍重なんですね」

少女「何ですかこれ!?」

少女「お馬さんがトリッキーすぎますよ!?」

107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 00:56:13.37 ID:NpnOyQaL0

少女「これは……!」

少女「名前を覚える段で忘れていましたが、これ、香車」

少女「まっすぐ一直線。行ったら戻ってこない。実に潔い……」

少女「まるで私みたいですね!」

少女「おまけに香車と強者は読みが同じです!」

少女「猪突猛進?」

少女「まあそれもよし、です」

108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:05:17.85 ID:NpnOyQaL0

少女「今日はここまで、ですか」

少女「分かりました、ありがとうございました」

少女「次は実践編ですね、よろしくお願いします師匠!」

少女「あ、お手紙……」

少女「ええ、お預かりします」

少女「それではー」

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:13:23.43 ID:NpnOyQaL0

少女「あれから数日経ち、実践編も進んできたわけですが」

少女「硬い! 硬すぎます、お爺さんの穴熊囲い!」

少女「見た目通り堅実な防御と攻撃です!」

少女「初心者相手に容赦ない!」

少女「喰らえ香車ぁ!」

少女「え、王手飛車取り? そんなあ」

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:21:21.25 ID:NpnOyQaL0

少女「ふー。激戦の後のお茶は美味しいですね」

少女「一方的な蹂躙だった? これは失礼」

少女「じゃあ、そろそろ帰りますね。次は絶対勝ちますから!」

少女「あ、今日もお手紙ですか」

少女「任せてください」

少女「……いつもと違う封筒ですね」

少女「――え、何か言いました?」

少女「気のせい? ならいいんですが」

少女「それでは失礼します」

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:23:41.35 ID:NpnOyQaL0

 夜になってふと思い出した。
 あのときお爺さんは

 『これが最後だから』

 と言ったのだ。
 ……ひどく胸騒ぎがした。

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:27:00.75 ID:NpnOyQaL0

少女「はっ、はっ……」


 タッタッタッタ…… ガラガラ!


少女「お爺さん!」

少女「家の中が暗い。カーテンを開けてないんだ……」

少女「……」

少女「お爺さん!」

114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:31:05.56 ID:NpnOyQaL0

 結局、お爺さんの遺体は寝室で見つかった。
 眠るように、実際ベッドに寝たまま亡くなったようだ。

 わたしは立ち尽くした。
 涙は出てこない。
 ただただ呆然としたまま、立ち尽くしていた。

115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:34:18.71 ID:NpnOyQaL0

少女「……」

少女「……」

少女「……へ? あ、ああ……次郎さんですか」

少女「ええ、大丈夫ですよ。もうお爺さんのお葬式から十日ですし」

少女「大丈夫です」

少女「大丈夫ですってば」

少女「ああ、叩かれても反抗する気力が起きません。やっぱり駄目です」

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:38:02.24 ID:NpnOyQaL0

少女「……」

少女「いえ、違います。こう言うとあれですけど、お爺さんが亡くなったことはもう吹っ切れてるんです。勝ち逃げされたのは癪ですけど」

少女「ああ、こちらの話です」

少女「ああ、いえ、ともかくとして、お爺さんの死自体は乗り越えてるんです」

少女「ただ……」

少女「わたし、お爺さんに嘘をついたまま死なせてしまったんです」

117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:40:12.95 ID:NpnOyQaL0

少女「ちょっと待ってください、なんでナチュラルに警察に通報しようとするんですか。まずは話を聞いてください」

少女「えーとですね、わたしお爺さんにある小さな嘘をつきとおしてたんです」

少女「それがこれ」

少女「そう、お手紙です」

少女「これは、お爺さんからあるお婆さんに宛てられたお手紙なんですよ」

118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:42:17.96 ID:NpnOyQaL0

少女「正確には――よっこらしょ!」


 ドサ ザザザ……


少女「ここに積み上がったお手紙全てです」

少女「これは全てお爺さんが書き、わたしが預かっていたものです」

少女「なんで件のお婆さんに渡さないかって?」

少女「答えは簡単です。渡せないからです」

119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:48:08.93 ID:NpnOyQaL0

少女「そのお婆さんというのは、お爺さんの奥さんなんですよ」

少女「……だったんです、の方が正確でしょうか」

少女「市の中心の総合病院に、身体を悪くして入院してらっしゃいました」

少女「お爺さんはそのころ足を悪くしていて、面会には行けませんでしたが、毎日お手紙を書きました」

少女「そして、お爺さんの足が治るかどうか、という時にお婆さんは病で……」

少女「それから、お爺さんは少し、心を病んでしまいました」

少女「お爺さんは、お婆さんの死後も、お手紙を書き続けたんです」

少女「届くことのない、お手紙を」

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:51:00.33 ID:NpnOyQaL0

少女「もちろん、お爺さんに、お婆さんは死んだという現実を突きつけることはできました」

少女「でもわたしはそうしなかった。それがお爺さんのためだと思っていたから」

少女「……いえ、そう思いたかっただけかもしれませんね」

少女「ともかく、わたしはお手紙を預かり続けました。お婆さんに必ず届けると約束して」

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:54:24.72 ID:NpnOyQaL0

少女「わたしは……わたしはでも、やっぱりお爺さんにちゃんと言うべきだったでしょうか? お婆さんは死んだのだと」

少女「それとも嘘をつき続けたのは正解だった?」

少女「いえ、今となっては考えても仕方のないことですが」

少女「……」

少女「すみません、わたし、ちょっと自分と状況に酔ってるかもしれません」

少女「最低ですね……」

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 01:58:07.61 ID:NpnOyQaL0

少女「……」

少女「え? どうしましたか、次郎さん」

少女「――ちょっと、勝手にお手紙をあけちゃあ……」

少女「え、読むべき? わたしたちがお婆さんに代わって?」

少女「どういう理屈ですか……」

少女「お爺さんの生きた証を……お婆さんへの気持ちを、受け止める、ですか」

少女「……」

少女「よくわかりません。ですが、了解です、読んでみましょう」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:04:15.78 ID:NpnOyQaL0

 お爺さんの流れるような、でも力強い字で。
 それらは静かにつづられていた。

 お婆さんへのいたわり。
 お婆さんを喜ばせるための軽快な言葉。
 お婆さんへの思いやり。
 そして、お婆さんへの直ぐな想い。

 お爺さんの葬式では流れなかった涙が、何かを思い出したかのように視界をうずめた。

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:06:36.31 ID:NpnOyQaL0

少女「……」

少女「……いえ、泣いてはいませんよ、泣いては」

少女「本当です」

少女「最後の手紙ですね。開けてみましょう」


 コロン……


少女「なんでしょう、これは」

少女「将棋の駒?」

少女「……香車」

127: >>125 なんのこっちゃ 2011/01/07(金) 02:09:19.37 ID:NpnOyQaL0

 そして、封筒の中に入っていたのは一枚の紙だった。
 ほんの一行。

 『ありがとう、恨んでいません』

129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:12:34.06 ID:NpnOyQaL0

少女「………………」

少女「次郎さん」

少女「泣きます。ちょっと席はずしてもらえますか」

少女「……あ、いや」

少女「ちょっと胸借ります。すみません」

少女「……ぅ」

少女「……グス」

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:14:03.79 ID:NpnOyQaL0

 その夜は久しぶりに泣いた。

132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:19:15.56 ID:NpnOyQaL0

少女「う、げほ……」

少女「なかなか、強い火ですね。警察に見つかったらまずそうです」

少女「まあ、こんな山のてっぺんにはだれも来ませんが」

少女「……こういうの、お焚きあげっていうんでしたっけ。違ったかな」

少女「何にしろ、天国に届くといいですね。あ、この場合は極楽なのかな?」

少女「ともかく、そちらで二人で読んでください」

少女「じゃあ、次郎さん、いきますよ。――よっこいしょっと」


 ザザザ ボッ……


少女「……」

少女「さようなら」

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:21:46.75 ID:NpnOyQaL0

配達少女「お届けものでーす」第二部



       ~了~

134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:22:42.11 ID:NpnOyQaL0
最後の方、自分でも何書いてるか分からんかった。見逃してほしい
読んだ人乙

135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:22:43.16 ID:sWMBb/MU0

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:23:54.48 ID:ykmxsFOm0
>>1
面白かったよ

137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 02:25:13.68 ID:BlZlhAY40
これは良いssだった
激しく乙

引用元: 配達少女「お届けものでーす」