1:2018/11/05(月) 01:32:39.503 ID:oiz6yl/fD.net
喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    知念潔(56) スポーツライター

    【ロボットサーカス】

    ホーッホッホッホ……。」
2:2018/11/05(月) 01:34:49.096 ID:oiz6yl/fD.net
午後。東京、港区。帝国テレビ。ワイドショー「情報ワイド ミヤノ堂」の撮影が行われている。

今日、この番組で特集されているのは、とある横綱による後輩力士への暴行問題だ。

あれやこれやと批評を行う司会者や出演陣。コメンテーターには、スポーツライター・知念もいる。

知念「今回の横綱による暴行事件、相撲協会はしっかりした対応をしていますよ!」
   「問題なのは、独断専行で警察に被害届を出した尊鉄山親方の方です!」

テロップ「知念潔(56) スポーツライター」

知念の主張に対し、反論を行うある文化人。知念は文化人と言い合いになる。

文化人「しかしですね、知念さん……。横綱による暴力は、決して許せる行為ではありません!」
     「親方が被害届を出していなかったら、このまま事件が隠蔽されていたかもしれませんよ!」

知念「元はといえば、後輩の力士による不作法が招いた事件ですよ!あの温厚な横綱が怒るのは、よほどのことです」

文化人「知念さん!あなたは横綱の暴力をかばうのか!」

知念「私はそんなことは言っていない!人の主張を曲解するな!」
3:2018/11/05(月) 01:37:10.322 ID:oiz6yl/fD.net
夜。東京のとある下町。居酒屋「黄金豹」。酒を飲む年配の客たち。客の中には、知念と喪黒福造がいる。

関西弁を話す客たちの中に溶け込む知念。知念の言葉も関西弁混じりになる。一方、周囲から浮いた状態で酒を飲む喪黒。

客A「最近の知念さん、評判悪いでぇ。暴力をふるった横綱をひいきし過ぎやと……」

知念「あれは仕事で言うとるんです。私にもしがらみがありますさかい……。本心は別ですよ」

客B「ホンマか?そりゃあ、すごい爆弾発言やなーー。いっそのこと、テレビで言うてみたらどうや!」

知念「そんなこと、テレビで言えるわけありませんよ。この店やから、本音が言えるんです」

客C「そやったなーー。この居酒屋は、関鉄ファンが集まる店やからなーー」

知念「そうとも!関鉄パンサーズを応援する私の気持ちだけは、嘘偽りが一切ありませんよ!」
   「大阪で生まれ、筋金入りの『豹党』として育った私としては!」

喪黒「知念さんは、大阪市の大正区生まれですよねぇ?苗字が知念なのも、そういうことでしょう?」

知念「はい。私は大正区で生まれ育ちました。私の祖父は、戦前に沖縄から大阪へ移住してきたんです」

居酒屋「黄金豹」の店内には、プロ野球チーム「関鉄パンサーズ」のグッズがいたるところに置かれている。
4:2018/11/05(月) 01:39:17.966 ID:oiz6yl/fD.net
大型の液晶テレビを見る客たち。テレビには、関鉄の野球中継が映っている。

関鉄のバッター・糸谷が、相手チームのピッチャーから球を打つ。ホームベースへと帰還する2人の選手。

実況「糸谷のタイムリーで、2点が入りました!関鉄、逆転に成功です!」

一同「やったーーーーっ!!!」

客たちとともに、大喜びをする知念。それに対し、喪黒はずっと静かなままだ。


居酒屋「黄金豹」を出て、道を歩く知念。知念の側に喪黒が寄ってくる。

喪黒「ねぇ、知念さん……。あなた、さっきの店の常連なんですか?」

知念「ええ……、そうですよ。もしかして、あなたも関鉄ファンなんですか?」

喪黒「いえいえ……、私は違います。ただ……。関鉄ファンが集まる店とは、どんなものかと興味があったもので……」

知念「ああ、そうなんですか……。あなた、好奇心旺盛な方なんですね」

喪黒「それはそうと……。お店の中でのあなたは、いつもと違って楽しそうでしたね」
5:2018/11/05(月) 01:41:16.793 ID:oiz6yl/fD.net
知念「ええ、まあ……。あの店の中なら、本心を開けっ広げにできますから。でも、普段の私はそういうわけにはいきませんよ」

喪黒「なるほど。私の仕事柄、今のあなたを放っておくわけにはいきませんねぇ」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

知念「ココロのスキマ、お埋めします!?」

喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」

知念「か、変わったお仕事ですね……」

喪黒「見たところ、知念さんの心にもスキマがおありのようです。何なら、相談に乗りましょうか?」


BAR「魔の巣」。喪黒と知念が席に腰掛けている。

喪黒「それにしても、本当にびっくりしましたよ」
   「あの横綱の暴行事件での知念さんのご意見は、本心によるものではなかったのですよねぇ?」

知念「はい。あれは仕事のための発言ですから……。私も何かと相撲協会の世話になっていますし……」
6:2018/11/05(月) 01:43:21.785 ID:oiz6yl/fD.net
喪黒「でも、それはあなたの生活のためにやむを得ないでしょう?何しろ、評論家とは巧みに言葉を並べるのがお仕事……」
   「それに……。あんまりズバズバと過激な本音を口にしたら、業界から干されかねませんよ」

知念「ええ、まあ……。今の時代は、出版不況で本がろくに売れませんし……。雑誌も休刊が相次いでいます」
   「だから、もの書きとして生き残るのも必死なんですよ。カネや利権の話があれば飛びつかざるを得ません」

喪黒「ですがねぇ……。どんなに嘘の言葉を並べても、良心の呵責の気持ちは消せないでしょう?」

知念「そうですよ!そもそも、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのものですよ!」
   「その気持ちさえも偽って、しがらみや利権のためのポジショントークを行う……」
   「それじゃあ、スポーツへの冒涜そのもので……。お天道様に申し訳ない気持ちでいっぱいになりますよ!!」

喪黒「しかしながら、そんなあなたも心からスポーツを楽しめるのが関鉄の応援なのですよねぇ?」

知念「はい。私は小さいころから、筋金入りの関鉄ファンとして育ったのですから……」

喪黒「なるほど……。知念さんが関鉄を応援しているのは、小さいころからの純粋な気持ちの延長なのでしょう」
   「だから、嘘偽りを一切感じられませんでしたし……。あの居酒屋の中でのあなたは、本当に楽しそうでした」

知念「ええ。あの居酒屋の中なら、私はありのままの自分でいられますから……。とはいえ……」

喪黒「何やら、複雑な事情がありそうですなぁ」
7:2018/11/05(月) 01:45:21.177 ID:oiz6yl/fD.net
知念「妻が何かと口うるさいんですから……。外で一杯飲んで、帰りが遅いと妻がガミガミ叱るんです」
   「しかも、娘も私のことを毛嫌いしていて……」

喪黒「知念さんは奥様や娘さんと不仲なんですか?」

知念「はい。それだけでなく、最近は関鉄にも明るいニュースが少ないので憂鬱なんです」
   「2003年の優勝監督だった星田さんは今年亡くなりましたし……。おまけに、今年の関鉄は低迷しているんです」

喪黒「負けている試合を見ると、気が滅入るでしょう?」

知念「ええ。関鉄の負けを連日のように目にするのは、ファンにとっては本当に辛いですよ……」

喪黒「いやはや……。あなたの気苦労、察するに余りあります」
   「ですが……。私は、知念さんのストレス解消に役に立つものを知っているんですよ」

知念「何ですか?それは……」

喪黒「詳しいことは、明日話すことにしましょう」


住宅街、知念の自宅。玄関に入る知念。それに対し、妻・慶子が鬼のような形相で知念を出迎える。

知念「ただいま……」
8:2018/11/05(月) 01:47:28.016 ID:oiz6yl/fD.net
慶子「あなた……。こんな遅くまでどこに行ってたの!?」

テロップ「知念慶子(52) 知念潔の妻」

知念「そ、それは……」

慶子「また、どこかで一杯飲んできたのね!?あなたは、人付き合いだけは巧みなんだから……」

知念「で、でも……。人付き合いを大事にしたおかげで、俺は仕事や収入が保障されとるし……」
   「一家も飯を食っていけるんやろが……」

慶子「仕事?どうせ、立場の強い人に、おべっかやゴマすりをすることなんでしょ!」
   「ほら……。横綱の暴行事件では、徹頭徹尾、加害者や相撲協会の味方をして……」

知念「うう……」

妻の剣幕に対し、押され気味の知念。言い争いをする2人の前に、娘・美織が現れる。

美織「パパとママ、うるさい!受験勉強の邪魔!」

テロップ「知念美織(18) 高校生、知念潔の娘」

知念「す、すまない……」
9:2018/11/05(月) 01:49:22.268 ID:oiz6yl/fD.net
慶子「ねぇ、美織。こんな時間まで飲み歩くパパがいけないのよ」

美織「うん」

知念(慶子どころか、最近では美織まで俺のことを見下しおって……)


翌日。東京、赤坂。銀河テレビ。昼のワイドショーに出演する知念。この番組でも、知念は横綱の暴行問題で持論を述べる。

知念「尊鉄山親方は警察に被害届を出す前に、相撲協会に事前に連絡をすべきでしたね!」

知念の発言に対し、番組出演者のある弁護士が反論をする。

弁護士「相撲協会に連絡なんかして、まともな対応が行われたと思いますか?」

知念「思いますよ!現に、相撲協会は今回の事件で……」

弁護士「知念さん!過去に、力士が親方の暴行で死亡した事件で、相撲協会はどんな対応を取ったと思いますか!?」
     「そういう体質が続いてきた組織が、おいそれと変わるとは思えませんよ!!」

知念「それとこれとは別ですよ!」
10:2018/11/05(月) 01:51:13.504 ID:oiz6yl/fD.net
番組の収録を終え、控室に戻る知念。控室の中には、喪黒の姿がある。

喪黒「こんにちは、知念さん」

知念「ああ、喪黒さん……」

銀河テレビを出て、タクシーに乗る喪黒と知念。タクシーは高速道路の中を走り抜けていく。

喪黒「これから、とっておきの場所へ案内しますよ。あなたのストレス解消に役立つ、特別なところへ……」


とある山の中に入るタクシー。草木が生い茂る中、銀色のピラミッド型の建物が立っている。タクシーを降りる喪黒と知念。

喪黒「着きましたよ、ここはロボットサーカスです」

知念「ロボットサーカス?」

喪黒「そうです。さあ、中に入りましょう」

玄関の自動ドアが開き、建物の中に入る喪黒と知念。2人を、受付嬢の姿をしたロボットが出迎える。
11:2018/11/05(月) 01:53:13.607 ID:oiz6yl/fD.net
受付嬢ロボット「イラッシャイマセ……」

知念「ロボットの受付嬢ですか……。よくできてますね、これ……」

喪黒「驚くのはまだ早いですよ。知念さん」

案内ロボットに先導され、廊下を歩く喪黒と知念。彼らが行き着いた先で、さらに自動ドアが開く。

広めの観客席に入る喪黒と知念。観客席には、大勢の客がいる。室内に鳴り響く音楽。ステージ上で挨拶をするサーカス団。

サーカス団を構成しているのは、全てロボットたちばかりだ。サーカスのロボットは皆、全身が銀色の身体をしている。

知念「ロボットのサーカス団……。まるで、SFの世界みたいな光景ですよ……」

喪黒「この光景は、SFではなく現実のものですよ。何しろ、今は21世紀になって久しいですから……」

知念「うーーん……。科学の進歩は、予想以上にすさまじいようですね」

喪黒「さぁ、知念さん。ロボットサーカスを思う存分楽しみましょう!」
12:2018/11/05(月) 01:55:13.317 ID:oiz6yl/fD.net
サーカスを行うロボットたち。ロボットを見つめる喪黒と知念。

知念(おおっ……、ロボットが一輪車で綱渡りをしている)

人型のロボットが、アクロバットな動きを次々と行う。ロボットの動きを食い入るように見つめる知念。

知念(ああっ!!ロボットがブランコからネットに飛び移った!)

いくつものワイングラスを頭に載せた人型ロボットが、ステージ上を歩く。

知念(こんなことまでできるのか!信じられない!!)

トランポリンの上で飛んだり跳ねたりする人型ロボット。さらに、フラフープを自在に操る人型ロボット。

知念(すごいな!!機械なのに、人間以上に身体が柔らかいぞ!)

サーカスは、人型ロボットだけでなく、動物型ロボットも登場する。

炎の輪をくぐり抜けるライオン型ロボット。自転車を乗り回す熊型ロボット。ボールの上に乗る象型ロボット……。

ステージ上のサーカス団に拍手をする観客たち。喪黒と知念も、ロボットたちに惜しみない拍手を送っている。
13:2018/11/05(月) 01:57:14.580 ID:oiz6yl/fD.net
ピラミッド型の建物の外へ出る喪黒と知念。知念は、感極まった表情をしている。

知念「喪黒さん!今の私は、猛烈な感動を覚えていますよ!!」
   「何しろ、ロボットたちのアクロバットな動きは、手に汗を握る場面の連続で……」
   「もう、アドレナリンが出まくりでしたよ!!こんなに面白いものが、この世にあったのかと……」

喪黒「あなたいわく、スポーツとは行う側と見る側の純粋な感動があってのもの……」
   「だから、見方によってはサーカスもスポーツの一種と言えるでしょう」

知念「ええ。そりゃあ、もう……。おかげさまで、日ごろのストレスを発散できました!喪黒さんには、本当に感謝しますよ!」

喪黒「どういたしまして……。ただし、知念さんには約束していただきたいことがあります」

知念「約束!?」

喪黒「そうです。あなたがロボットサーカスを見るのは、今回の1度きりにしておいてください」
   「たった1度しか味わえない感動を胸にしまうからこそ、この経験は貴重なものとして生き続けるのですよ」

知念「分かりました……。あのサーカスの感動のおかげで、私は、スポーツライターの魂が再び目覚めたような気がするんです!」

喪黒「そうですか。でも、現実の生活にそれが生かせるといいですけどねぇ……」

知念「もちろん、生かして見せますよ!!これからの私は、生まれ変わったつもりで仕事をしますから!!」
14:2018/11/05(月) 01:59:26.340 ID:oiz6yl/fD.net
昼。帝国テレビ。ワイドショー「情報ワイド ミヤノ堂」に出演する知念。彼の主張は、いつもと正反対になっている。

知念「今回の暴行事件、悪いのは横綱と相撲協会の方です!私は、尊鉄山親方の対応を心から支持します!」

司会者「どうしたんですか、知念さん……」

知念「私はこれまで、相撲協会と仕事で何かとしがらみがありました!でも、今の私は目覚めて、真人間になったんです!」

番組収録を終え、控室にいる知念。知念は、相撲協会関係者と会話をする。相撲協会関係者に脅され、息をのむ知念。

相撲協会関係者「知念さん。あなた余計なことを言ってくれましたね……。ただじゃ済みませんよ」


夜。居酒屋「黄金豹」。常連客たちとともに酒を飲む知念。いつも通り、テレビで関鉄パンサーズの野球中継を見る一同。

実況「試合終了!パンサーズ、力つきました!宿敵・巨神を前に、無念の逆転負けです!」

大型の液晶テレビを見ながら、落ち込む一同。

一同「あああ……」

知念(関鉄が負けた。ロボットサーカスは、負けや挫折がなくて気持ちいいままでいられるのに……。現実のスポーツチームはそうじゃない)
15:2018/11/05(月) 02:02:30.369 ID:oiz6yl/fD.net
知念家。居間で、妻・慶子と娘・美織になじられる知念。

慶子「あなた、とんでもないことをしてくれたわね……!」

知念「とんでもないこと?昼のワイドショーでの発言のことか?」

慶子「そうよ!相撲関係の仕事がなくなったら、収入が大きく落ち込むでしょ!」

知念「でも、俺は正義感と自分の良心に従ったまでで……」

美織「あのねぇ。私は来年、大学に行かなきゃいけないんだよ!大学の学費、どうするの?」
   「私のことも考えてから、行動すればよかったのに……。バカじゃないの、パパ!!」

慶子「あなたはコネだけが取り柄の人だったのに……。全く、余計なことをしてくれて……」

美織「ホント……。お金を稼げないパパなんか、家から出ていけばいいのに!」

知念「分かった!!こんな家、出て行ってやる!!」


堪忍袋の緒が切れ、家を飛び出す知念。住宅街を歩く知念の前に、喪黒が姿を現す。

知念「も、喪黒さん……。もう1度、ロボットサーカスに連れて行ってください!」

喪黒「いいえ、なりません。ロボットサーカスを見るのは1回だけ……。それが私との約束でしたよねぇ」
16:2018/11/05(月) 02:04:41.275 ID:oiz6yl/fD.net
知念「でも、喪黒さん……!!これは私の一生の願いなんです!!実は今日、私は……」

喪黒「そうですか。そんなことがあったんですか……」

知念「喪黒さん!私は、ロボットサーカスをどうしても見たいんです!あの建物の中に、ずっといてもいいくらいです!」

喪黒「分かりました……。あなたの望みをかなえてあげましょう!!ですが……、どんなことになっても私は知りませんよ!!」

喪黒は知念に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

知念「ギャアアアアアアアアア!!!」

夜空に浮かび上がるピラミッド型の建物。建物を目にし、驚く知念。建物の入り口の自動ドアが開き、知念に光を発射する。

光とともに、建物の入口へと吸い込まれていく知念。


1か月後。高速道路を走るタクシー。助手席に乗る喪黒。後部座席には知念慶子と娘・美織が乗っている。

慶子「あなた、主人の知り合いですよね?主人は一体、どこに行ったんですか?」

喪黒「知念さんですか?彼は例の場所にいるはずですよ」
17:2018/11/05(月) 02:09:51.091 ID:oiz6yl/fD.net
とある山の中。ピラミッド型の建物。観客席に座る喪黒と、慶子・美織親子。この3人以外の観客は、皆、ロボットになっている。

信じがたい光景を目にし、驚く慶子と美織。

慶子・美織「あーーーーーっ!!」

サーカス団の中には、ロボット化した知念も加わっている。そう……。顔は人間風だが、首から下は銀色の機械となった状態で――。

慶子「あ、あなた……!!」

美織「パ、パパァーーッ!!」

悲壮な顔で悲鳴を上げる慶子と美織。ロボット特有のうつろな表情で、アクロバットな動きをこなす知念。


ピラミッド型の建物の前にいる喪黒。

喪黒「そもそも人間は……。長い歴史をかけてスポーツを文化として発展させ、一大産業として社会に根付かせてきました」
   「スポーツは、身体を動かす欲求を満たすものであり……。行う側と見る側に夢と感動を与えることが醍醐味と言えます」
   「しかしながら、プロスポーツの世界は商業主義が進みましたし……。興行と化したものは利権や問題が生まれるものです」
   「ただし……。感情を一切持たないロボットが関わった興行ならば、それらの問題はたちまち解決してしまうでしょう」
   「え?感情がなければ、感動は生まれない?なぁに、スポーツの感動もまた幻ですよ」
   「知念さんが追い求めていたものも、所詮は幻なのですから……。オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―
喪黒福造「着きましたよ、ここはロボットサーカスです」 スポーツライター「ロボットサーカス?」
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1541349159