1:2017/03/25(土)22:32:34 
彡(゚)(゚)「浅草に新しいビルができたらしいわ」

彡(゚)(゚)「見学もできるらしいからさっそく登ってみたろ」

彡(゚)(゚)「おお、たっかいビルやなあ、雲の上まで伸びてるで」

彡(゚)(゚)「えーと? 一兆ビル、シンプル名前やな」

彡(゚)(゚)「見学料80円か」



3:2017/03/25(土)22:33:34 0oR
彡(゚)(゚)「中は普通の雑居ビルって感じやな」

彡(゚)(゚)「ワンフロアの広さはバレーコートぐらい、テナントも全部のフロアに入ってんのか」

彡(゚)(゚)「お、解説のパネルがあるわ」

彡(゚)(゚)「ふむふむ、このビルは一兆階建て、高さは約3億キロメートル、入ってるテナントは約一兆」

彡(゚)(゚)「従業員は約4兆人、一日あたりの来客数は50人、総工費が約20垓円」

彡(゚)(゚)「垓円? 中国のお金か何かかいな」

彡(゚)(゚)「まあええわ登ったろ、階段とエレベーターがあるんか…」

↓どっちで登ろうか
4:2017/03/25(土)22:34:03 Des
エレベータ
10:2017/03/25(土)22:36:47 0oR
彡(゚)(゚)「エレベーターで登るで」

彡(゚)(゚)「狭いエレベーターやなあ」

彡(゚)(゚)「おお、なんや階数表示のボタンがびっしり並んでるで」

彡(゚)(゚)「まずは100階ぐらいにしたろか」

彡(゚)(゚)「……」ウイーン

彡(゚)(゚)「到着や、5分ぐらいかかったな」
12:2017/03/25(土)22:41:29 0oR
彡(^)(^)「おおー、ええ眺めや、東京が一望できるで」

彡(゚)(゚)「でもまだスカイツリーのほうがだいぶ高いな」

彡(゚)(゚)「このフロアのテナントは何やろ」

寿司屋「へいらっしゃい」

彡(゚)(゚)「寿司かいな、じゃあにぎりの梅ひとつ」

寿司屋「へいまいど」

彡(^)(^)「うん、新鮮なネタでうまい!」

寿司屋「一人前5800円になりやす」

彡(^)(^)「値段も高いけど満足できたわ」
13:2017/03/25(土)22:43:08 0oR
彡(゚)(゚)「さすがに100階にある寿司屋となると高級なんやな」

彡(゚)(゚)「さて次は何階に行ったろか」

↓101~1億の間で
14:2017/03/25(土)22:43:24 wGV
334
25:2017/03/25(土)22:52:55 0oR
彡(゚)(゚)「……」ウイーン

彡(゚)(゚)「到着や、けっこう長かったな」

彡(^)(^)「おお、素晴らしい眺めや、地平線の丸みまで分かるわ」

彡(゚)(゚)「ここのテナントは何やろ」

先生「ハーイ、ここはフリギア語講座のスクールデース」

彡(゚)(゚)「フリギア語? どこで使える言語なんや?」

先生「サテム語族に属し、トラキアやアルメニアと深い関わりのあるランゲージデース」

彡(゚)(゚)「全然分からんで、ほんまに役に立つんか?」

先生「同じフリギア語の話者とスピークできマース」

彡(゚)(゚)「まあええわ、習っていくわ」

先生「オーケー」

彡(゚)(゚)「めっちゃ英語話してる気がする…」
26:2017/03/25(土)22:53:28 0oR
彡(゚)(゚)「……」

彡(^)(^)「よっしゃ、習得できたで」

先生「免許皆伝デース」

彡(゚)(゚)「さて次はどの階に行ったろ」

↓335から1億2000万の間で
27:2017/03/25(土)22:54:02 rJJ
2121階で。
34:2017/03/25(土)23:07:25 0oR
彡(゚)(゚)「2121階に行くで」

彡(゚)(゚)「……」ウイーン

彡(゚)(゚)「時間かかるなあ、100階で5分やとすると、1800階ほど登るから90分てとこか」

彡(゚)(゚)「草加せんべいでも食うたろ」

彡(゚)(゚)「やっと到着や」

彡(゚)(゚)「もう地上は雲に隠れて見えへんな」
35:2017/03/25(土)23:08:11 0oR
彡(゚)(゚)「空気が薄いな、地上から6300メートルやから当然か」

彡(゚)(゚)「6300メートルじゃ世界の高山ベスト100にも入らへんとはいえ、けっこうな高さやな」

彡(゚)(゚)「だいぶ寒なってきたわ、あったかい食べ物のテナントないかな」

店員「いらっせえ、ここはお好み焼きの店だよ」

彡(^)(^)「おお、ありがたいわ」

店員「うちのはエンパナーダ風、ホビロン入りシラチャソースがけのアレンジだよ」

彡(゚)(゚)「なんやそれ…普通のないんか?」

店員「下の階とカブる料理は出せないからね」
36:2017/03/25(土)23:08:48 0oR
店員「でもうちはかなりマトモだよ、これより上は食い物屋と家具屋の区別がなくなってくるから」

彡(゚)(゚)「まあええわ一つもらうわ」

店員「まいど、40万円です」

彡(゚)(゚)「高いなあ」

彡(゚)(゚)「うん、なんか辛くて、苦いような美味いような変な味やけど、まあ温かい分マシやわ」

彡(゚)(゚)「さて次はどの階に行こか」

↓2122から1億5千万の間で
37:2017/03/25(土)23:09:16 wGV
2222
42:2017/03/25(土)23:15:12 0oR
彡(゚)(゚)「2222階に行ったろ」

彡(゚)(゚)「今回はあっちゅう間やったな」

店員「まいど、ここはお好み山羊の店です」

彡(゚)(゚)「は?」

店員「うちのはエントロピー最大、ホグロフス印のラッチパネル風だよ」

彡(゚)(゚)「なんやそれ? 生き物か? 食い物か? 家具か?」

店員「お好み山羊だよ」

彡(゚)(゚)「……あかん、この辺の店はアイデンティティに悩んでるわ」

彡(゚)(゚)「一気に上に行ったろ」

↓3億から3000億の間で
43:2017/03/25(土)23:15:39 Des
810億
48:2017/03/25(土)23:21:49 0oR
彡(゚)(゚)「810億階に行くで」

彡(゚)(゚)「……」ウイーン

彡(゚)(゚)「えらく時間かかるなあ」

彡(゚)(゚)「えーと100階あたり5分かかるとすると、1万階で500分、1億階で500万分」

彡(゚)(゚)「810億階やと41億分、約7800年ってとこか」

彡(゚)(゚)「おや? 壁から酸素マスクみたいなもんが出てきたで」

彡(゚)(゚)「えーとなになに? 吸入型長時間睡眠マスクか、じゃあこれ使うか」

彡(-)(-)「おー、バニラみたいな匂い…が…zz」
49:2017/03/25(土)23:22:39 4nv
すごい世界やな
52:2017/03/25(土)23:23:45 U9N
老死しそう
54:2017/03/25(土)23:24:52 0oR
チーン

彡(゚)(゚)「ん」

彡(゚)(゚)「ああ着いたんか、えらく長いこと寝てた気がするで」

彡(゚)(゚)「身体中が白蝋化してるわ」

彡(゚)(゚)「おや、シャワーノズルみたいなもんが出てきた、これで体を洗えってことか」

彡(^)(^)「おー、めっちゃ気持ちええわ、筋肉もほぐれるし水分がみなぎってきたわ」

彡(゚)(゚)「さてこの階のテナントは何やろ」
65:2017/03/25(土)23:33:40 0oR
哲人「いらっしゃい」

彡(゚)(゚)「ここは何を売ってんのや?」

哲人「ここは哲学者から超人に至る階梯だよ」

彡(゚)(゚)「なんのこっちゃ」

哲人「この高さの時点速度は時速15万キロ、光速の約半分だよ」

哲人「ここより高く登ると光速に近づくことになるよ」

哲人「だから超人になって無限の時間に耐えられるようにするよ」

彡(゚)(゚)「そういえば空が真っ暗や、もう宇宙空間なんやなあ」
66:2017/03/25(土)23:34:23 0oR
彡(゚)(゚)「あれ? 地球が上にあるで」

哲人「もうとっくに衛星軌道より高いよ」

哲人「遠心力も凄まじいことになるから、生身では耐えられないよ」

彡(゚)(゚)「ようわからんわ、具体的にどうしたらええんや?」

哲人「このアメ食べたら超人なれるよ、ひとつ三百兆円ね」

彡(゚)(゚)「高すぎるわ、このけものフレンズのBDと交換してくれ」

哲人「おー地上の映像媒体、7800年ぶりね、じゃあ交換するよ」

彡(゚)(゚)「さすがけもフレや」
70:2017/03/25(土)23:38:02 0oR
彡(゚)(゚)「(モグモグ、ペロペロ)」

彡(゚)(゚)「まっず! コタツの足みたいな味する!」

彡(゚)(゚)「…で、食べ終わったけど、なんも変わってへん気がするな」

哲人「もう無限に近い生命あるね」

哲人「無限の存在は傷つかないね、無限の時間も平静な感情の中で過ごせるね」

彡(゚)(゚)「まあ何でもええわ、次の階に行くで」

↓2000億から8000億の間で
71:2017/03/25(土)23:38:28 wGV
2000億1
79:2017/03/26(日)00:00:11 TBL
彡(゚)(゚)「2000億とんで1階までは1万5千年ほどか」

彡(゚)(゚)「もう地上文明も滅んでもうたかな」

彡(゚)(゚)「まあええわ、一人しりとりでもやってたら着くやろ」

チーン

彡(゚)(゚)「あのおっさんの言うた通りや、待ち時間も全然苦にならんで」

彡(゚)(゚)「おや、窓の外の景色がリング状に見える」

彡(゚)(゚)「というより光のトンネルの中にいるみたいや、なんやこれ」

権坤眼「いらっしゃいです」

彡(゚)(゚)「おや、かわいらしい女の子や、初めて女の店員さん見たで」
80:2017/03/26(日)00:00:58 TBL
権坤眼「外の景色はスターボウなのです。この階層の自転速度は約300万キロ、光速を超えているために相対遷移度が負の極性を帯びているのです」

彡(゚)(゚)「光速を超えてんのか、スーパーマンみたいに過去に戻るんか?」

権坤眼「エルトリウム耐性が時候スライドを座軸展開することによって回避されます」

彡(゚)(゚)「適当なこと言ってるやろ……」

権坤眼「ここはレンタルビデオ店です」

彡(゚)(゚)「ごまかした…」

権坤眼「知的文明の映像アーカイブスを収集しているです」

彡(゚)(゚)「じゃあ何か借りよか」
81:2017/03/26(日)00:02:05 TBL
権坤眼「70スキューズ数ほどありますが」

彡(゚)(゚)「なんやそれ」

権坤眼「10の「100兆の100兆乗」よりも遥かに大きい数です」

彡(゚)(゚)「いくらなんでも多すぎへんか?」

権坤眼「36世紀ごろに作られた無限創造ビジュナリィのせいです」

権坤眼「人類の想像力を遥かに超えて、粒子的、時間遷移的に物理限界のギリギリまで映像作品を生み出したのです」

彡(゚)(゚)「とりあえずオススメないんか?」

権坤眼「じゃあ絶対無敵ライジンオーのVHSテープを」

彡(゚)(゚)「ええ趣味してるわ…」
84:2017/03/26(日)00:07:39 TBL
彡(^)(^)「おもろかったわ、超人になっても感動はできるんやな」

彡(゚)(゚)「ラスト付近で星山が精神的に追い詰められるシーンはグッと来たで…」

権坤眼「レンタル料金は3円です」

彡(゚)(゚)「安っ! なんでそない安いんや」

権坤眼「時間がほとんど経過していないのです」

彡(゚)(゚)「まあ何でもええわ、じゃあ次の階に行こか」

権坤眼「ここからさらに上に行くのはオススメしないのです」

彡(゚)(゚)「なんでや?」

権坤眼「……」

彡(゚)(゚)「……」


↓5000億から一兆まで、もしくは地上に戻る
85:2017/03/26(日)00:08:08 aOW
1兆
95:2017/03/26(日)00:29:30 TBL
チーン

彡(゚)(゚)「一兆階かあ、なんだかんだで5万年ほどかかったけど、来てみれば何てことないな」

(´・ω・`)「やあ、よく来たね」

彡(゚)(゚)「なんやお前かいな、バーボンハウスみたいな挨拶やめーや」

(´・ω・`)「私は全であり一である」

(´・ω・`)「君が親しい人物の姿に見えてるだけだよ」

彡(゚)(゚)「そうなんか、ほんでここのテナントは何なんや?」

(´・ω・`)「何もない、ここはただ過ごすだけ」

彡(゚)(゚)「過ごす?」
97:2017/03/26(日)00:30:16 TBL
(´・ω・`)「そう、何かを交換したり、獲得したり、喪失したり、経験したり、そんなことは下の階で全てやり尽くした」

(´・ω・`)「あとはただ過ごすだけ、ここは無限の速さで時間が流れている、ここでただじっと過ごすだけなんだよ」

(´・ω・`)「そして君は自覚してないだろうが、そのエレベーターは乗っているだけで、下層のあらゆるテナントの要素が身につくのだよ」

彡(゚)(゚)「ほーん」

(´・ω・`)「もうやりたいことも、手に入れたいものも、捨てたいものもないだろう?」

彡(゚)(゚)「……そういえばそうやな、もう、何か全部やりきった感があるわ」

(´・ω・`)「あとはただこの階にいるだけでいい、ほら、周りをご覧」

彡(゚)(゚)「なんや、白いカタマリが浮いてるで」
98:2017/03/26(日)00:31:00 TBL
(´・ω・`)「それは本質とか神とか呼ばれるもの、ここで君もその一つとなって、無限の時間を過ごせばいいんだよ」

彡(゚)(゚)「宇宙が終わるまでか?」

(´・ω・`)「宇宙に終わりはない、よって我々にも終わりはない」

(´・ω・`)「宇宙の片隅に生まれた知性が、このビルを生み、そして知性の進化を促して」

彡(゚)(゚)「(キミノゼンゼンゼンセカラー)あ、スマホが鳴ったわ、ちょっと待ってくれや」

彡(゚)(゚)「もしもし」

(´・ω・`)「電話…? バカな、無限の速さと絶対の停滞を兼ね備えるこの場所で…」

J( 'ー`)し「もしもし、あんた、いつまで出かけてんの」

彡(゚)(゚)「あ、カーチャン」

J( 'ー`)し「はやく帰ってこないとあんたのキン消し捨てるからね」

彡(゚)(゚)「わかったわ、いま帰るわ」

(´・ω・`)「え」

彡(゚)(゚)「ほな帰るわ、またな」

(´・ω・`)「えっ、ちょ、そんなバカな、ちょっと待って無限の」


100:2017/03/26(日)00:31:52 TBL
チーン

彡(゚)(゚)「着いたで、うわ、もう夜やないか」

彡(゚)(゚)「降りる方は一瞬やった気がするな、それとも時空のねじれっちゅうやつやろか」

彡(゚)(゚)「一兆ビル、か」

彡(゚)(゚)「冗談やないで、ワイはワイや」

彡(゚)(゚)「あんなモンスターエンジンのコントみたいな展開に付き合ってられるかいな」


彡(゚)(゚)「……おや、なんか浅草の町並みが違うような」

彡(゚)(゚)「なんか建物の感じも違うし、標識のデザインも違う」

彡(゚)(゚)「それに月が3つある」

彡(゚)(゚)「…………」

彡(゚)(゚)「あっ、阪神タイガースなくなってへんやろな!」

彡(゚)(゚)「急いで帰らんと!」


(おしまい)
102:2017/03/26(日)00:32:03 QGw
なにこれおもしろい
103:2017/03/26(日)00:32:23 5Kk
なかなか良かった
109:2017/03/26(日)00:33:22 TBL
読んでくれてありがとうございます
この作品は八木ナガハルの「無限登山」に影響を受けて書きました
ウルトラジャンプ2009年5月号に掲載されてますが単行本化はされてないようです
112:2017/03/26(日)00:34:34 LRL
これは宇宙が一巡してますね
彡(゚)(゚)「一兆階建てのビルに登るで」
引用元:http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1490448754