ヤンキー「俺さあ、今ちょー痛かったんだけど」

キモオタ「 ぼ、ぼぼ僕じゃな、ないです」

ヤンキー「あ？てめえだろうがなに言ってんだ」ギロッ

キモオタ「ひぃ…」

ヤンキー「ねえ、どう落とし前つけてくれんの？」

キモオタ「そそそそんなこと言われましても…」

ヤンキー「あ？ふざけんじゃねえぞ殺すぞ」

キモオタ「えぇ…」

ほう

ヤンキー「3万」

キモオタ「…え？」

ヤンキー「3万今すぐ用意しろよ。そしたら見逃してやるわ」

キモオタ「さっ3万…！？そ、そんな大金…持ってないです」

ヤンキー「じゃああそこにATMあるから降ろしておいでよ。な？オラァッさっさと行けや！」

キモオタ「ひぃい！いやです持ってないです！」

ヤンキー「じゃあお前も俺と同じくらい痛い目にあうか？お？」

キモオタ「そ、そんな…ただぶつかっただけじゃないですかぁ…」

ヤンキー「てめえはただぶつかっただけだろうけど、俺はすげえ痛かったの。お前これ、治療費払えよ」

キモオタ「えぇ…こ、困ります…」

ヤンキー「あーもー埒あかねえわ」

ガシィ！

キモオタ「ひっ…！？」

ヤンキー「じゃあ歯ぁくいしばんなキモオタ野郎がぁっっ！！！」

ブォン！！

キモオタ「……チッ」

サッ
シュン

ヤンキー「っ、！？なに！」

ヤンキー「……消えた…だと！？」

！！？

フッ

スカッ
ヤンキー「うおっとっと！」コケッ

ヤンキー「……な、なに」

キモオタ「……おい、こっちだ」

ヤンキー「！？」グルッ

キモオタ「バカめ……それは残像だよ」ニッコリ

ヤンキー「……な、」

ヤンキー「バッ、バカにしやがってええええ！！」

ヤンキー「タダじゃおかねえぞおおおおお」グワッ

ヒュン
スッ

ガシィ！
ヤンキー「なっ！！」

キモオタ「……ちょっと、とろいよ」ニッコリ

ヤンキー「くっ…」

ギリギリ…
ヤンキー「コブシが…うごかねぇ…！！」

キモオタ「僕に絡んだことを後悔するんだな…」

シュッ
ブォォオオオオ

キモオタ「おらあああああ！」

ヤンキー「うわああああ！」

ヤンキー(やばい、このままじゃ殺られる…！)

キモオタ「死ねええええええ」

キモオタ「…べろべろ」

ヤンキー「！？」

キモオタ「べろべろべろべろ」

ヤンキー「…なっ」

キモオタ「べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ」

ヤンキー「こ、こいつ……！！」

ヤンキー(掴んだ右腕を高速でべろべろしだしたっ…)

キモオタ「べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ」

ヤンキー「やめろおおおおおおおおおおお！！！きたねええええええええ」

自慢の腕が、傷ついちゃうわぜ

キモオタ「べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ」

ヤンキー「臭えええええ！！！臭えよおおおお！！！」

キモオタ「べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ」

ヤンキー「やめろおおおおおお！！！やめてくれえええええええええ」

キモオタ「べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ」

キモオタ(………聞こえるか？)

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

ヤンキー「！？」

キモオタ(聞こえるか？俺の声が)

ヤンキー(こ、こいつ直接脳内にっ)

！！？

キモオタ(苦しいだろう、辛いだろう。歯磨きを二週間サボった舌に舐められるのは)

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

ヤンキー(くそっ……辛いよ…)

ヤンキー(つらいよぉっ…)ボロボロ…

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

キモオタ(そうだろう？……なあ、お前)

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

キモオタ(なにか、思い出さないか？)

ヤンキー(なにか…？なにをだよ…)

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

キモオタ(この音…そしてこの臭い…)

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

キモオタ(お前が初めて立った、あの日……)

ヤンキー(……)

ヤンキー(……ああ)

それは、ヤンキーが生まれて初めて自分の力で立ったあの日。

ヤンキーはなんでもかんでも口にするのが大好きな子どもだった。

ヤンキーはその日も、新たな物を口にしてみたいと思い部屋の中をさまよった。

そして、ローテーブルの上にあったおもちゃを見つけた時……

ヤンキーは自分の力で初めて立ち、それをべろべろと舐めたのだ……

べろべろべろべろべろべろべろべろ

ヤンキー「………うっ」

キモオタ「べろべろべろべろ」

ヤンキー「うっ……うぅう…」ぐすっぐすっ

べろべろべろべろべろべろべろべろ

キモオタ「……あの日」

キモオタ「お前がはじめて立ったことを、お前の両親はたいそう喜んでたよな」

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

ヤンキー「うっうう……ぐぅ…」ぐすんぐすん

キモオタ「……もう、こんなことはやめなさい」

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

キモオタ「正しいことをするんだよ」

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

キモオタ「そして……両親に胸を張って過ごしてますと言えるように生きなさい」

べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ

ヤンキー「うん………うん……！」

そしてその日から、ヤンキーはヤンキーをやめた。

正しい道を進み、順調に更生しているようです。

え？キモオタのその後ですって？

……さあ。どうでしょうねえ。

けれどひとつ、キモオタについて言えることといえば、

彼は今日も、歯磨きをサボっていますよ。


おしまい

ｲｲﾊﾅｼﾀﾞﾅｰ

これお前の実話かよ