1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 17:14:43 ID:Z0tgROXI
「利奈……好きだ!」
「か、勝也君」
狭い路地裏の壁に美男が美女に熱く迫る、見つめあう二人、あと十分もすれば下と下がドンする展開になるだろう、だが、この壁の裏には一人の男がいた。
「やれやれ、また、か」
黒ずくめの男は、これまた黒いグローブをはめると、壁を殴った。壁には傷の一つもつかない。
凄まじい衝撃が、利奈の背中を襲う、背骨は砕かれ各種内蔵は破裂、口と鼻から血を流して利奈は倒れた。
「……利奈? 利奈ぁぁぁぁぁ!!!!」
勝也の叫びに背を向けて、男は路地裏の闇に消えた。
「か、勝也君」
狭い路地裏の壁に美男が美女に熱く迫る、見つめあう二人、あと十分もすれば下と下がドンする展開になるだろう、だが、この壁の裏には一人の男がいた。
「やれやれ、また、か」
黒ずくめの男は、これまた黒いグローブをはめると、壁を殴った。壁には傷の一つもつかない。
凄まじい衝撃が、利奈の背中を襲う、背骨は砕かれ各種内蔵は破裂、口と鼻から血を流して利奈は倒れた。
「……利奈? 利奈ぁぁぁぁぁ!!!!」
勝也の叫びに背を向けて、男は路地裏の闇に消えた。
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 17:15:17 ID:Z0tgROXI
あとはご自由にどうぞ
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 21:01:19 ID:UexJN5TY
満月だった。
男は一度だけ振り換える。
月明かりの下ぼんやりと浮かぶ石畳は、雑草に覆われていた。
男「…………」
視線を戻せば、老朽化が原因だろう。放置され廃墟となった礼拝堂がある。
あの頃は想像しない、思い付きすらしない未来だ。
だが、これが現実。これが未来。
勝也(……利奈、)
勝也(これから、君の仇を取る)
扉を開け礼拝堂へと入る。
扉は酷く鳴いたが、その人影は動かない。
ステンドグラスの下、祈りを捧げるようひざまついていた。
黒ずくめ「…………」
勝也「殺人鬼が今更懺悔かよ」
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 21:02:51 ID:UexJN5TY
黒ずくめ「…………」
勝也「なぁ、」
黒ずくめ「…………」
勝也「なんとか言えよクソ野郎が!!」
苛立ちを吐き捨てるように地面を――床を踏みつける。
ズドン!
黒ずくめ「!!」
一直線に走る亀裂は黒ずくめがいたその場所で爆裂した。
黒ずくめ「……驚いたな」
弾けた床の欠片が当たったらしい、黒ずくめの顔からは血が滲んでいる。
黒ずくめ「床ドンか」
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 21:43:27 ID:UexJN5TY
勝也「ああ、そうだよ。お前を殺すために、何もかも捨てて修得した、俺の『ドン』だ」
勝也「三年、……利奈が死んで三年だ。短く聞こえるだろうが、俺には長かったよ」
勝也「なんせ、彼女がいない世界なんて俺にとっては地獄みたいなものだから……なっ!」
ズドン!
走る亀裂は、長椅子を弾き飛ばす。
ズドン!ズドン!
破壊された木製の長椅子は、次々と壁際へ積まれていく。
黒ずくめ「…………」
勝也「逃げてんじゃねぇよ!!」ズドン
一般的に、床ドンは直線にしか進まないと言われている。
だが、勝也の回し蹴りのように振り切った足での床ドンは――標的を追う。
黒ずくめ「……ここまでの使い手とは、」
勝也「くたばれぇえええ!!」
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 21:59:16 ID:UexJN5TY
執拗に追う床ドンをすんでの所で避け――黒ずくめの男は気付いた。
怒りに任せたかのような床ドンが、この状況を作り出したことに。
黒ずくめの視線に気付いたのだろう、勝也の口角が上がる。
勝也「利奈を殺した壁ドンを……俺が調べないとでも思ったかよ」
黒ずくめ(礼拝堂の長椅子を破壊し、弾き飛ばしていたのには理由があったか)
勝也「お前の壁ドンは壁を媒介にする」
黒ずくめ(壊れた長椅子を壁際に飛ばすことで、私の壁ドンを封じる…それが狙い)
勝也「もう、出来ねぇなぁ、壁ドンは」
黒ずくめ「……ああ、そうだな」
勝也「そして、お前が床を壁見立ててドンするより……俺が足でドンする方が早い」
勝也はその場から動いていない。
対して黒ずくめの男は、戻っていた。
それは、男がひざまついていた場所。今は勝也の床ドンによって抉られ、土くれが剥き出しになっている、その場所だ。
四方の壁は長椅子であった物で塞がれ、唯一残った扉は勝也の背にある。
黒ずくめ「…………」
勝也「終わりだ」
怒りに任せたかのような床ドンが、この状況を作り出したことに。
黒ずくめの視線に気付いたのだろう、勝也の口角が上がる。
勝也「利奈を殺した壁ドンを……俺が調べないとでも思ったかよ」
黒ずくめ(礼拝堂の長椅子を破壊し、弾き飛ばしていたのには理由があったか)
勝也「お前の壁ドンは壁を媒介にする」
黒ずくめ(壊れた長椅子を壁際に飛ばすことで、私の壁ドンを封じる…それが狙い)
勝也「もう、出来ねぇなぁ、壁ドンは」
黒ずくめ「……ああ、そうだな」
勝也「そして、お前が床を壁見立ててドンするより……俺が足でドンする方が早い」
勝也はその場から動いていない。
対して黒ずくめの男は、戻っていた。
それは、男がひざまついていた場所。今は勝也の床ドンによって抉られ、土くれが剥き出しになっている、その場所だ。
四方の壁は長椅子であった物で塞がれ、唯一残った扉は勝也の背にある。
黒ずくめ「…………」
勝也「終わりだ」
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 22:30:37 ID:UexJN5TY
勝也の足が振り上げられる。
諦めたのか、黒ずくめは動かず――目を閉じた。
ぎぃ、
扉が鳴く、風が吹き込んだ。
勝也は振り返らない。
ドン
黒ずくめ「!!」
その音は、黒ずくめの目を開かせた。
勝也「ぐ…………っ、」
力無く下ろされたのは勝也の足だ。
胸を抑え呻く勝也の口からは、血がこぼれる。
空気を震せたその音は勝也の床ドンではない。黒ずくめの壁ドンでもない。
女「………………」
そのドン主は、扉から入ってきた一人の女性。コツコツとヒールを鳴らし、二人に向かう。
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 22:34:20 ID:UexJN5TY
黒ずくめ「何故、君が……」
勝也「…………ろす、」
勝也「まだ、だ……殺して……」
勝也の目は死んでいなかった。直撃を受けたなんらかのドンは勝也の内臓を確かに破壊している。
だが、倒れ伏しているのが当然の彼はまだ立ち、足を振り上げている。
それほどまでの憎悪が、瀕死の彼を突き動かしていた。
勝也(殺す、殺す、必ず、利奈の……利奈の仇を)
女「もう、いいのよ」
黒ずくめ「やめっ……」
ドン
勝也「あ、」
背中から受けた、二度めの直撃。それは、完全に、勝也を破壊し尽くした。
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 22:56:23 ID:UexJN5TY
傾ぐ身体を抱き止める女性。血によって赤く淀んだ瞳が、女の顔を見る。
勝也「…………ん、で……」
女「もう、いいの。お休みなさい」
勝也「……………………」
女は、生き絶えた勝也を床に横たわらせた。開いたままの両目も撫でるように閉じさせる。
黒ずくめ「何故、殺したんだ」
女「……あなたを殺そうとしたから」
黒ずくめ「俺は人殺しだ」
女「…………」
勝也を悲しげに一瞥し、女は。
悲しげな顔を変えず、ごく自然に、黒ずくめの男へと、その手を向けた。
ドン
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 23:15:28 ID:UexJN5TY
響くそれは、空気を媒介にする。書物だけの存在とされているそのドンは、ドン界最強と言われていた。
名を、空気ドンという。
黒ずくめ「…………」
空気ドンを胸に受けた男は、呻きもせず、だが倒れず。
膝をつき、ドンした彼女を見上げた。
女「私の死んだ妹……殺された妹……利奈には、彼氏くんがいてね」
女「彼氏くんの名前は、勝也。腹立つぐらいのバカップルで、ふふ……」
女「利奈は天国にいるけど、人を殺してしまったら、きっと、地獄に逝くから」
女「天国で会えないのは、可哀想でしょう?」
黒ずくめ「…………そう、だな……」
男に歩み寄った女は、膝をつき、男と視線を合わせる。
笑顔はなかった。復讐を達成した喜びはそこに無かった。
黒ずくめ「君が私に近付いたのは、復讐のためか?」
女「そうよ。でも、あなたがその仇だとは思わなかった。あなたを足掛かりに、仇を探そうとしたの」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 23:18:02 ID:UexJN5TY
女「でも、近付きすぎたのね」
女「仇があなたと知った時には……もう、手遅れだったの」
黒ずくめ「…………」
女「手遅れな程に、あなたを愛していた」
黒ずくめ「そうか……、はは、バカな人だ」
女「そうね……私は、大馬鹿よ」
女「勝也君がああなってしまったとわかるまで、余命の無いあなたと、一緒にいてあげようと思うぐらい」
黒ずくめ「…………バカだな」
女「……ふふ、わかってるわ。だから、ね?」
女は、左腕を、男の背中に回し。
右腕を、右手を、その手のひらを、礼拝堂の柱に向けた。
ドン
男「…………!」
女「…………、」
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 23:27:45 ID:UexJN5TY
次は、上。天井。
連続して放たれる空気ドン。
崩壊の音が、男の耳にも届く。
何をしようとしているのかはすぐに理解出来た。
霞む視界、女はついに表情を変え――淡く、微笑むのが、わかった。
黒ずくめ「……本当に、君は……」
女「いいの。私達は……地獄で、会いましょう」
数週間後
崩壊した礼拝堂跡
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 23:51:02 ID:UexJN5TY
黒ずくめ「…………」
美女「弟さんの、ここで死んじゃったのね」
黒ずくめ「ああ」
黒ずくめ「双子で、俺と同じくただの人殺しのくせに、妙に割り切ることが出来ないの不器用な男だった」
黒ずくめ「だからこんな所ででくたばる」
美女「復讐、だったんでしょ?直接的な死因は『ドン』による内臓破壊みたいだし」
黒ずくめ「ああ。こんな職業をしてるからな、仇討ちにやってくる身の程知らず共は沢山いる」
美女「因果応報ってやつね。二人揃ってごく普通の一般人にまでドンする依頼、受けちゃうんだから。まったく、悪い人達」
黒ずくめ「……ふっ、くくくっ」
美女「?」
黒ずくめ「ははは!はははははははは!!!」
美女「あら、何がおかしいの?」
黒ずくめ「なんか、神っていないんだなって思ってよ」
黒ずくめ「顔が同じだからな、何度かあいつに押し付けてやったが、本当は」
黒ずくめ「あいつは、絶対に民間人をドンする依頼を受けなかった。どんなに金を積まれてもな、ははっ、」
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 23:54:34 ID:UexJN5TY
美女「……えっ、じゃあ」
黒ずくめ「ああ。民間人をドンする依頼を受けていたのは俺だ。スリルは無いが金になる。おまけに、」
美女「…………」
黒ずくめ「バカップル共を殺すのは、悪くない」
美女「……そうか」
黒ずくめ「!!」
黒ずくめ(男の声!?……いったいどこから、)
美女「ようやく言質がとれた」ボロン
黒ずくめ「なっ、美女……お前……!」
美女「大変だったよ、貴様に近付くのも、この感情を隠すのも」
美女「やっと、本当の仇を見付けた」
黒ずくめ「……くそっ、」
美女「逃がさん」
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/05(日) 23:57:32 ID:UexJN5TY
黒ずくめ(なんて力だ!くそっ、腕を振りほどけない!)
美女「俺の使うドンは少々特殊でな」
ビキビキッ!
黒ずくめ(なんだと、尻に……この感触、まさか、)
美女「名は………」
黒ずくめ「やめ――」
美女「『穴(ケツ)ドン』という」
ズドンッ!!!
おしまいだドン!
もう乗っ取りは懲り懲りだドン!!
ほんと、ごめん。
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/06(月) 00:18:50 ID:AT.aO4k6
乙!
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/04/06(月) 17:38:29 ID:VRloM.46
壁殴り代行さん
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2015/05/10(日) 17:19:07 ID:sixgrKjQ
乙だドン
引用元: 壁ドン粉砕
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