1:2015/12/29(火) 11:13:49.851 ID:sw+k3doZ0.net
母「ダメでしょ!!アンタ病気が悪化したらどうする気!?」

俺「そっか…」シュン

母「シュンとしないで自室に戻って寝なさい!」

俺「分かった…と!見せかけて逃走を謀る!!」シュタタタタ

母「何してんのアンタ」ラリアット

俺「ぐぼぇっ!母強し!!」ドサッ

俺はいつになったら外の世界を楽しめるのだろうか


2:2015/12/29(火) 11:14:03.376 ID:sw+k3doZ0.net
俺「今日は母が出掛けにいってる!この家から脱出するぞ!!」ゴソゴソ

近所のおばさん「させないわよ」

俺「くそっ!近所のおばさんか!!」

近所のおばさん「逃げないように見張ってなさいって言われたけどこんな調子じゃこの仕事も大変そうね」

俺「少しくらいいいじゃないか!空気を吸ってみたいんだ!!」

近所のおばさん「ダメだよ、それで倒れたらおばさんの責任になっちゃうからね」

俺「そんなぁ…」シュン

近所のおばさん「シャキッとしんさいな」

俺はまた一人部屋に閉じ込められる
3:2015/12/29(火) 11:14:13.621 ID:sw+k3doZ0.net
俺「もういやだ!こんな暗いところに居たら頭が狂いそうだ!!」

母「外は危険よ、それに比べて家の中は安全。病気のあなたにもってこいなのよ」

俺「病気病気って…こんな陰湿な暮らしをしてたら病気が悪化しそうだよ!!」

母「そんなことはないよ、反抗しないで部屋に戻りなさい」

俺「なんで…一人は嫌だ…」

母「それじゃあ人を呼んであげるわ。これで満足でしょ」

ことごとく俺の想いは打ち砕かれる
4:2015/12/29(火) 11:14:24.176 ID:sw+k3doZ0.net
お喋り上手「――それで再びその道に行ったらナメクジ踏んじゃって思わず言ってやったね、この道はよくねばつきますねってね!」

俺「…」

俺(こんなんじゃない…俺が求めていたのは…俺は外の世界に行ってもっと沢山の事を知りたいんだ)

お喋り上手「ちょっとこのユーモアは分からなかったかな?じゃあこんな話もあるよ!僕がどんぶり屋さんに行った時ね」

俺「ちょっとトイレ行ってきます」スタスタ

お喋り上手「つれないなぁ…」
5:2015/12/29(火) 11:14:34.701 ID:sw+k3doZ0.net
俺(何か脱け出す方法は無いのか?俺の家の窓は鉄柵で囲られてるし…あっ!)

俺(ここだ!トイレの換気口から外に出れる…少し汚いけどやるしかない)ヨジヨジ

俺(くそっ!狭い!ほふく前進でギリギリだ)ズズズズズ

お喋り上手「ちょっとトイレ長くないですかぁ!便秘なのか!?便秘なのかぁ!?」

俺(早くでないとお喋り上手に家に引き戻される!そんなことされてたまるか!!)

スポン!!ドテッ!!

俺(いてっ!…出れた!外の世界だ!!)
6:2015/12/29(火) 11:14:52.589 ID:sw+k3doZ0.net
俺(早く逃げよう!こんな陰気臭い家からは)ダッダッダッ

お喋り上手「トイレ入りますよぉ!座薬持ってきたんでこれで安心ですよぉ!!わっはっはっはっ」ガチャッ

お喋り上手「…誰も居ない…流されたのかい?わっはっはっはっはっ」

俺「やりたかったこと、出来なかったこと、全部やりつくしてやる!!」
9:2015/12/29(火) 11:18:02.939 ID:sw+k3doZ0.net
俺(にしても見ない間に景色変わったな)ドンッ

俺「いてっ!すいません」

ヤンキー「すいませんじゃねーよボケこらぁ!!あん?おうおうおう?」

俺「申し訳ないです!し、失礼します」シュタタタタ

ヤンキー「待てやボケこらあん?おいおいおいおーーい!!」

俺(変なやつも増えたのかな…不安になってきた)
13:2015/12/29(火) 11:27:05.986 ID:sw+k3doZ0.net
俺(川原まで歩いて来たな…そういえば俺のやりたかったことって何だろう…)

おじさん「ここ、景色いいよね」

俺「そ、そうですね、俺、初めてなんですよ。ここ来るの」

おじさん「珍しいね。ここの景色見てると悩みなんて川と一緒に流せちゃうだろ」

俺「そう…ですかね。おじさんは悩みとかあるんですか?」

おじさん「そりゃあ色々あるさ、仕事だって上手くいかねぇしやる気も出ねぇ。でもさ、ここ来るといつか報われる時が来るって思えるから続けてられるよ」

俺「川好きなんですね」

おじさん「好きじゃねーよ。ただ、思い出があってな」

それから俺はおじさんの話に聞き入った
おじさんは子供の頃父親とよくこの川原に遊びに来ていたらしい
おじさんが大きくなると父親と川原に行く機会が減って、寂しかったという
現在、おじさんの父親は他界しているようだ
急なリストラに負い目を感じ、川に飛び込んだらしい
14:2015/12/29(火) 11:32:39.749 ID:sw+k3doZ0.net
おじさん「変な話だけど、この川に来ると父さんが居るような気がして…怖い話だろ」

俺「怖くないですよ、好きだったんですね父親の事」

おじさん「無口な父さんだったけど、情を注いでくれたよ。ま、ガキの頃は反抗ばっかしてたな」

俺「なんかすいませんね、僕聞いてばっかで」

おじさん「いいんだよ、俺もこうして話すのは久しぶりだ。楽しかったよ。よかったらまた川見に来なよ。おじさん暇だから日が出てるうちはいつでもいるよ」

俺「分かりました。また今度」

俺は約束を交わした。見ず知らずのおじさんに不安も募るが、話を聞く限り悪い人では無さそうだ。
とりあえず川原をあとにしたけれど、家に帰るつもりは無かった。
15:2015/12/29(火) 11:36:32.797 ID:wwX2pTlfp.net
ええぞ
16:2015/12/29(火) 11:38:05.722 ID:sw+k3doZ0.net
俺「今日は野宿か…寒いな。近くの段ボールもらってこよ」ウィーン

俺(初めて来るスーパーだ。外の世界は初めての事だらけだ!)

ヤンキー「おっ!お前さっきの!!」

俺「わばっ!!すいませんしたぁ!」ダッダッダッ

ヤンキー「待てや!ちょいちょいちょい!」ガシッ

俺「ひぃ!!」ブルブル

ヤンキー「お前金持ってるか?」

俺はカツアゲされると思ったが、生憎金を持ってきていなかった

俺「ゼロです…」

ヤンキー「んだよ…実は俺家から出てきてさ、泊まるとこ無いんだわ。1日でいいから泊めてくんね?」

俺「実は僕も家出してまして…」

ヤンキー「マジかよ!気が合うな俺ら!一緒に野宿するか!ブハハハハ」

俺「は、はい…」
17:2015/12/29(火) 11:44:14.322 ID:sw+k3doZ0.net
初めての野宿だった。段ボールの上は居心地が悪いわけでも無い。
気がつくと夜になっていて、空には星が光る。

ヤンキー「キレイだな、夜空は」

俺「ロマンチックですよね」

ヤンキー「うるせーやい」ボコッ

俺(クソ痛ぇ)

ヤンキー「あの星のどこかに俺の父ちゃんがいるのかな…家出ていったきり帰って来ないんだ。そんで俺も家出てみて気づいたよ。自由なんてどこにも無いのかもな」

俺(クソ痛ぇ)

ヤンキー「でもさ、もがいてればいつか見つかる気がするんだ。どこかに自由な場所があるってそう思える。俺、まだ死にたくない」

俺「俺も死にたくない」

俺(俺…病気だからな…)

ヤンキー「おやすみ」

俺「おやすみ」
18:2015/12/29(火) 11:49:09.584 ID:sw+k3doZ0.net
朝日と共に目を覚ます。

俺「よく寝たな…ヤンキーはそっとしとくか」

ヤンキー「むにゃむにゃ」

俺(家出てから1日か…母ちゃん心配かしてるのかな)

俺(でもここで戻ったらまた狭い部屋で過ごすことになる。振り返ったらダメだ!)

俺の足は川原に向かう。
19:2015/12/29(火) 11:55:12.607 ID:sw+k3doZ0.net
俺「また来ちゃいましたよ」

おじさん「昨日と同じ服か…野宿したな?」

俺「はい…実は向こうの橋の下で」

おじさん「家出か…若い頃俺もやったよ」

俺「どうでしたか?家出は」

おじさん「どうって言われてもなぁ…楽しいもんじゃないよ。結局支え無しじゃ生きてけないってことを知らしめられた。なんだか現実が見えるんだよ家出は」

俺「そうですよね…」

おじさん「まあ気がすむまでやるこった。何か得るものもあるかもしれないぞ」

俺「だといいんですけどね」

おじさん「お前のマイホーム見せてもらおうかな」

俺「マイホーム?」

おじさん「寝床だよ。昨日野宿したんだろ」

俺「いいですけど何も無いですよ…」

おじさんは茶化す勢いで俺の段ボールの家に向かっていった
20:2015/12/29(火) 11:59:45.840 ID:sw+k3doZH.net
俺「ここですけど…」

おじさん「金髪の兄ちゃんが住み着いてるじゃんか」

俺「昨日色々ありまして」

おじさん「一発喝入れてやろうかこいつに」

俺「やめてください。悪い人じゃないんですよ」

おじさん「こんな顔してるのにか」グイッ

おじさんはヤンキーの顔を見ると、驚いた表情を浮かべた。

おじさん「わりぃ、ちょいと俺失礼するわ。じゃあなー」ソソクサ

俺「え?…さ、さいなら」

俺(そんな怖い顔してるかこのヤンキー)
21:2015/12/29(火) 12:03:24.127 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
ヤンキー「おはよ」

俺「おう」

ヤンキー「今日は強気か?」

俺「おう」

ヤンキー「まあいいや、俺の髪弄ったろ、触られたの気づいたぞ」

俺「そんな、滅相もない!」

ヤンキー「冗談だよ…てかさっき隣におっさんいたろ」

俺「おう」

ヤンキー「ホームレス仲間か?」

俺「いや、昨日知り合ったばっかで、よくここに来てるよ」

ヤンキー「そうか…暇なおっさんだな」

俺「悪く言うなよ…」

ヤンキー「おう?」
22:2015/12/29(火) 12:10:49.286 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
警察から身を隠しながらも1日を過ごした。この日もヤンキーと夜を過ごす事になる。

ヤンキー「家族心配してるのかな…俺が心配になってきた」

俺「確かにな…でもここで帰ったら暗い生活に逆戻りだよ」

ヤンキー「監禁されてたんだっけか?」

俺「うん、がっちりね」

ヤンキー「俺のところは自由だよ。全く自分の子供って思われて無いのかもな。ほったらかしで。父ちゃん居ないし母ちゃん仕事してるわでいつも一人だった」

俺「それで家出したのか?」

ヤンキー「嫌になったんだよ。自分が存在しないような扱いを受けるのが。居なくても変わらないって思ってな」

俺「お前…」

ヤンキー「おやすみ」

俺「おやすみ…」

中々寝付けなかった。問題を抱えているのは自分だけでは無い事を知った。
23:2015/12/29(火) 12:20:46.402 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
次の日、ヤンキーは早起きだった。母ちゃんのように俺を起こしてきた。

ヤンキー「散歩しようぜ!昨日お前の隣に居たおっさんとも話してみてーしな」

俺「むにゃむにゃ」

ヤンキー「寝るなや!行こうぜ」

俺「分かったよ…」

川原道を歩き出す。空腹だったせいか体が軽かった。

俺「いつもここにおじさん居るんだけどな…こんなに天気いいのに今日は来ないのかな」

ヤンキー「ま、そうだろうな。毎日来てたんじゃ本当に暇人だぜ。俺らみてーにな」

俺「そうだな…食料調達しに行こうか」

ヤンキー「試食だけでも腹膨れるもんなんだな」

恥ずかしい事に、こうしてヤンキーとの仲が深まっていった。共に落ちている金を探したり、ごみ捨て場から使えそうなものを運んできたり、色々やった。

俺「これで3日目か」

ヤンキー「服取り換えたいな…やりたいことづくしだ」

俺「そうだな…もっと色んな事しような、家も建てたいな」

ヤンキー「それは無理があるだろ」

初めて親密な友が出来た。外の世界は危険もあるが、危険の中に良いことがわんさかと転がっている。
24:2015/12/29(火) 12:31:09.488 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
次の日

ザワザワ

俺「ん?なんだ?どうしたんだ?川原に人が集まってるぞ」

ヤンキー「ホントだな…警察も来てる。なんか事件とかあったのかな?行ってみようぜ!」ダッ

俺「おいおい、ホームレスが行ったら事情聴衆どころじゃないだろ…ってもう行ってるし…」

警察「すいませーん、下がってくださーい、ダメでーす!見るの禁止ー!!」

ヤンキー「どうしたんだ?」

警察「どうしたんだ?じゃないよ!下がって下がって。人が流されたんだよ。話によると自分から川に飛び込んだとか言われてるらしいけど…さ、分かったなら下がりなさい」

ヤンキー「自殺かぁ…物騒な川だなぁ…」

警察「物騒だから下がりなさい」

俺「待って、あの死体川原に居たおじさんじゃないか!なんでこんなことしたんだ!!」

警察「知り合いかい?てか見るなよ!話は向こうで聞くから」

ヤンキー「この前の隣に居たおっさんか…色々悩んでたんだろうな」

警察「君も関わりがあるのかい?向こうに行こうか」

ヤンキー「…待てよ…父ちゃんなのか?父ちゃん…父ちゃん!」ダッ

警察「馬鹿!てめぇー勝手に入るな!!」

ヤンキーは死体に駆け寄った。
26:2015/12/29(火) 12:38:04.772 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
ヤンキー「やっぱり父ちゃんじゃないか!なんで家族を置いて家飛び出したんだよ!!」

警察「何してるんだ君!入ってきちゃダメでしょ!」

ヤンキー「どんだけ寂しい思いをしたか分かってんのか!!例え仕事が出来なくても!金が少なくても!父ちゃんが居てくれれば俺はそれだけで良かったのに!なんで…なんで俺を残して出ていったんだよ!どうせなら俺も連れて出ていけば良かったのに…」

警察「いい加減にしなさい!まだ身元が確認できてないんだ!話は向こうで聞くから出ていきなさい」

俺は唖然とその光景を見ることしか出来なかった。死体を見て、自分の父の面影を感じ、川に飛び込んだおじさんに自分の父を重ね合わせたのだろうか。しかしどうもヤンキーの眼が悪いとも思えない。
その後警察と話をしたが、結局おじさんの身元は確定できずに終わった。
27:2015/12/29(火) 12:49:47.049 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
ヤンキー「俺、家に帰るわ」

俺「もう帰るのか?まだ3日目だろ…それに…お前の家の人冷たいらしいし…」

ヤンキー「いや、いいんだ。家族が恋しくなった。間近に家族が居ればそれでいいんだ」

俺「そうか…俺は…また一人になるのか」

ヤンキー「ごめん…短い間だったけど…楽しかったぞ。これ、電話番号教えとくから気が向いたら電話くれよ。悪用はすんなよ」

俺「分かってるよ…」

ヤンキー「じゃあな」

俺「うん」

しんみりと手を振った。俺はヤンキーと過ごしたつかの間の日々を思い浮かべた。
初めての友はガラが悪かったが、楽しかった。もっと一緒に居たいと思った。友と居る幸せを感じた。同時に一人で居ることの辛さを知った。
28:2015/12/29(火) 12:55:34.931 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
警察「あ、そうそう、君もしかして俺くん?」

俺「はい?」

警察「実はさ、君のお母さんから捜索願い出されててさ」

俺「はぁ」

警察「悪いけど連れて帰るね」

俺「え」

俺はパトカーに乗せられた。抵抗はしなかった。何処か家族の元へ帰りたくなっていたのだろう。

警察「君、病気持ってるんだって?ダメだよ無理したら…君が居なくなって一番悲しむのはお母さんなんだからな」

俺「はい」

俺は説教された。なぜか言葉が重く心に刺さる。
29:2015/12/29(火) 13:10:25.284 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
ブロロロロ、キキー

警察「はい、着いたよ。ちゃんと謝ってやりなよ」

俺「…はい」

パトカーから一歩足を踏み出す。すぐに母の姿が見えた。

母「お、お帰り…お帰りなさい」

俺「…ただいま」

母が警察に深々と礼を度に、俺は胸が締め付けられた。ヤンキーの家族と比べる事は気の毒だが、俺は母に愛されていた。警察が去ったあと、母は怒りを抑えながら俺に問う。

母「どうして家出なんてしたの?」

俺「ごめん」

母「不満があるなら言ってよ。こっちも俺の為を思って頑張ってるのよ!」

母も我慢の限界が来たのだろう。俺は返す言葉もなく目を潤わした。
30:2015/12/29(火) 13:19:11.737 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
それから俺は外の世界に行かなくなった。あれ以来母も極力俺の要望に答えるようになった。母には申し訳ないがそれでもどこか寂しかった。
家の中で過ごす日々、気づけば俺の病気は悪化していた。吐血が物語っている。母は急いで俺を病院に連れていった。脳腫瘍が大きくなっていた。生き残れる可能性は5分5分。摘出手術と投与した薬が上手く効けば治るらしい。

俺「母さん…色々ありがとね」

母「なに言ってるの!まだ死ぬわけじゃ無いんだしさ」

俺「最後に要望を聞いてくれるかな」

母「最後じゃないでしょ…なんでも言って」

俺「電話、使わせてもらえるかな?」

母「電話?いいわよ」

もちろん俺はヤンキーに電話をかけた。
31:2015/12/29(火) 13:27:41.470 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
俺「もしもし…あのホームレスだった俺だけどさ」

ヤンキー「ホームレス…あぁ、お前か!本当に電話くれるとは思わなかった」

俺「俺、もしかすると病気で死ぬかもしれない」

ヤンキー「は?本当に言ってんのか?不謹慎な冗談はよしてくれよ」

俺「いや、本当なんだ。今病院に居る。上手くいけば生き残れる。」

ヤンキー「どこの病院だ?」

俺「疑ってんのかよ」

ヤンキー「違ぇーよ」

俺は病院を教えた。数十分経つと汗をかき、息を切らしたヤンキーが病室に駆けつけてきた。

俺「ホントに来たのかよ」

ヤンキー「笑ってんじゃねーよ必死だったんだぞ!」ボコッ

俺(クソ痛ぇ)

ヤンキー「久し振りなのに随分弱ってるな…手術はいつだ?」

俺「明日」

ヤンキー「そうか…終わったらまた川原に行こうな」

俺「あぁ、そうだな…手術成功したら今度は母も許してくれるよ」

俺は涙ぐんでいた。ヤンキーも同じく涙を堪えていた。
母は病室の外から不思議そうに俺ら二人を見つめる。
32:2015/12/29(火) 13:41:06.937 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
次の日。手術が始まる。麻酔を撃たれ、不安が過る。もしかしたらこのまま目覚めないのかもしれない。考えている最中俺は意識を無くす――――――――

辺りが真っ白だ。

おじさん「やっぱり川はいいな。悩みだって流せるさ」

俺「おじさん?」

おじさん「ああ、悩みと一緒に身投げしたおじさんだよ」

俺「…おじさん?」

おじさん「だからそう言ってんだろ…ヤンキーとは仲良くしてるか?」

俺「まあ、ぼちぼち。失礼ですけどおじさんはヤンキーのお父さんなんですか?」

おじさん「…さあな、父なんてそんな大それたものじゃ無いよ俺は。ただ家族を置いて家を出たことはあるぞ。仕事クビになってな。家族を支えてやれなくなった。俺は家族に迷惑かけてばっかだよ」

俺「どうして折角息子さんの顔を見たのに話をしなかったんですか?」

おじさん「怒るなよ」

俺「怒ってませんよ」

おじさん「怖かったんだ。顔じゃなくてな。一度捨てたら息子と普通に話が出来るか?俺には無理だね」

俺「…おじさん…貴方はまだ死ぬべきじゃなかった…と、思いますよ」

おじさん「そりゃあお前だ。まだこっちに来るのは早いよ」

俺「?」

光が俺を包む。暖かな光だ。
33:2015/12/29(火) 13:46:02.021 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
かすかに声が聞こえる。誰かが俺を読んでいる。

ヤンキー「おい!起きろ!もう昼だぞ寝坊野郎!!」

母「誰だか知らないけど口悪いわよ貴方!でもホントにおきて!お願い!!」

俺「おはようございます」ムクリ

神の悪戯か、俺は無事に生き残る事が出来たらしい。

ヤンキー「よっしゃ!川原行こうぜ!!」

俺「約束したもんな…いいでしょ母さん」

母「そうね…無事腫瘍も取り除けたし、今回は許すよ。でもちゃんと帰ってきてね」

俺「分かってるよ」

ヤンキー「いい母ちゃんだな」

俺「…行ってきます」

母「いってらっしゃい」

母(ちっ、ヤンキーに息子とられちゃったわ)
34:2015/12/29(火) 13:54:03.073 ID:sw+k3doZ0NIKU.net
川原に着いた。

俺「なにがあるか分からねーな人生は」

ヤンキー「どうしたんだよ急に…手術ミスか?」

俺「いや、なんだかそんな気がしてさ」

ヤンキー「まあいいや、今日は見逃してやるよ」

俺「ヤンキーだな」

ヤンキー「もう違ぇーよ」

ヤンキーは隠し持っていた紙袋からスーツを取りだし着た。

ヤンキー「俺、就職したんだ」

俺「そっか、おめでとう」

ヤンキー「もっと祝えよ…まあ、今日はお前のお祝いがメインか」

人と関わる事で、気づかされる事が多くある。俺はそれを痛感した。欲しいもの、やりたいことはほんの些細なものだったのかもしれない。信じ合える仲間、それだけでよかったのかもしれない。
俺はこれから前向きに生きようと思う。悩んだ時はこの川原に来て、ちっぽけな悩みは川と共に流す。
俺は生きる。まだ、これからの人生を。

俺「天気いいし出掛けに行こう!!」
引用元:http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1451355229