1:2019/03/14(木) 00:21:23.348
スパイ「業界最大手、A社が業績を伸ばしている秘密を探ってきました」

社長「ご苦労、さっそく報告してもらおう」

スパイ「はい」

・よく働く

・誠実な商売をする

・休む時はしっかり休む

スパイ「以上です」

社長「三行じゃねーか!」


2:2019/03/14(木) 00:23:20.215 ID:E5KCtgSXd.net
スパイ「ライバル社で毎日20時まで働いてました!」

社長「残業じゃねーか!」
3:2019/03/14(木) 00:25:11.124
社長「期待した俺がバカだった……」

スパイ「まあまあ、お待ち下さい。早まってはいけません」

スパイ「A社を率いる女社長の秘密も探ってきました」

社長「ほう、あの女の弱みでも握ったのか!?」

・美人で優しい

・だけど仕事には厳しい

・胸にホクロが五つある

スパイ「いかがでしょう?」

社長「期待した俺が大バカだった」
4:2019/03/14(木) 00:28:27.568
社長「この役立たず! ゴミみたいな情報ばかり集めてきやがって!」

スパイ「仕方ないじゃないですか、裏表のない優良企業なんですから」

スパイ「スパイなんか雇ってるうちとは大違いですよ」

社長「うるさい!」

社長「お前なんかクビだ、クビ!」

スパイ「お、お待ち下さい! 早まってはいけません!」

社長「どうやって挽回するつもりだよ」

スパイ「次は業界第二位のB社に忍び込んで参ります!」

社長「我が社はB社ともだいぶ差があるからな……いいだろう、やってみろ!」

スパイ「はっ!」
7:2019/03/14(木) 00:30:54.101
<B社>

スパイ「……」

スパイ(このドアから入れそうだな)

スパイ(ピッキングを……)カチャカチャ

ガチャッ

スパイ「よし、開いた!」
8:2019/03/14(木) 00:33:26.036
警備員「何者だ!?」

スパイ「ちっ」

シュザッ

警備員「消えた!?」

スパイ「少し眠っててもらうよ」トンッ

警備員「ううっ……」ガクッ
9:2019/03/14(木) 00:35:27.057
スパイ(天井裏に忍び込んで……)ゴソゴソ

スパイ(よし、ここから社長室の会話が聞こえそうだ)

スパイ(なにか重大な秘密を喋ってくれればいいんだが……でないとクビにされちゃう)





B社社長「……」
10:2019/03/14(木) 00:38:33.978
B社社長「……では頼んだぞ、殺し屋君」

殺し屋「ああ、任せておけ」

B社社長「それで、いつやるのだ?」

殺し屋「すでにターゲットのスケジュールは掴んでいる。明日の夜、始末する」

B社社長「あの女の命も明日までということか。いい報告を期待しているよ」
11:2019/03/14(木) 00:41:22.523
B社社長「あの女社長さえ消してしまえば、A社はガタガタになる」

B社社長「そうなれば、我が社が業界ナンバーワンになることができる!」

殺し屋「B社は今業界ナンバーツーだったな」

B社社長「そうだ。長らくA社の後塵を拝してきた。しかし、その屈辱の日々もようやく終わりを告げる!」

殺し屋「業界三番手のC社の社長は消さなくていいのか?」

B社社長「あんな三流企業は実力で叩き潰せる。わざわざ消すまでもない」
14:2019/03/14(木) 00:45:18.135
<C社>

スパイ「B社の秘密を探ってきました」

社長「ふーん、どうだった?」

スパイ「報告します」

・B社社長は殺し屋を雇った

・ターゲットはA社の女社長で、決行は明日の夜

・雇った理由はB社が業界ナンバーワンになるため

スパイ「以上です」

社長「すごい秘密握ってきたなオイ!」
15:2019/03/14(木) 00:48:13.639
社長「B社の社長は汚いやり口で悪評があったが、まさかそこまでやるとは……」

社長「プロの殺し屋にかかったら、ひとたまりもないだろうな……」

社長「あ、そうだ! うちは!? C社についてはなにかいってなかったか!?」

社長「A社の次は俺がターゲットにされるのでは……」

スパイ「申し上げます」

・C社のような三流企業は社長を消すまでもない

・あんな給料安くて、人使い荒くて、どうしようもない会社は放っておいても潰れる

・社長は水虫だし

スパイ「……と」

社長「本当にいってたんだろうな……?」
17:2019/03/14(木) 00:51:49.292
スパイ「しかし、よかったではありませんか」

社長「え?」

スパイ「放っておけば明日、A社の社長は死にます」

スパイ「これでA社はガタガタになり、うちも自動的に二位になります」

スパイ「さらに、B社が殺し屋を雇ったことを世間に公表すれば、B社も没落します」

スパイ「これで労せずして、うちが業界ナンバーワンになれるわけです」

社長「な、なるほど……」
18:2019/03/14(木) 00:54:35.137
社長「そうか、これで我が社は業界トップになれるわけだ」

スパイ「はい、おめでとうございます!」

社長「やったな、ハーッハッハッハッハ!」

スパイ「では私はこれで……」フッ

社長「……」
19:2019/03/14(木) 00:57:23.270
次の日――

<A社>

女社長「……」カタカタ

秘書「社長、お仕事中失礼します」

女社長「なんですか?」

秘書「C社の社長が……ぜひお会いしたいと」

女社長「……?」

女社長「分かりました、通しなさい」
21:2019/03/14(木) 01:00:43.216
社長「久しぶりだな」

女社長「同じ業界のライバル社の社長自らやってくるとは珍しいですね」

女社長「私になにかご用ですか?」

社長「え、えーと……」

女社長「早くおっしゃって下さい。私も忙しいのです」

社長「に、逃げてくれ!」

女社長「はい?」
22:2019/03/14(木) 01:02:55.722
女社長「逃げろとはどういうことですか?」

社長「実は……B社の社長が殺し屋を雇った! ターゲットは君だ!」

女社長「ハァ?」

社長「今夜にでも殺し屋が来るんだ……だから逃げてくれ!」

女社長「バカバカしい、突然なにをいってるのです」

社長「ほ、本当なんだ!」

女社長「たしかにB社の社長は色々とよくない噂を聞きますが、殺し屋を雇うだなんて……」

女社長「荒唐無稽にも程があります」

社長「だけど本当なんだってば!」
23:2019/03/14(木) 01:06:32.671
女社長「ではお聞きしましょう」

女社長「あなたはどうやって、その情報を手に入れたんです?」

社長「そ、それは……」

・産業スパイを雇った

・B社に忍び込ませた

・さっきの情報が手に入った

社長「こういうことだ」

女社長「なるほど、正直に三行で説明して下さってありがとう」
24:2019/03/14(木) 01:08:38.848
女社長「では、もう一つお聞きしましょう」

女社長「なぜ私を助けに? 産業スパイを雇っていたことまで明かして……」

社長「それは……」

・俺だって社長である前に人間だ

・良心ぐらいある

・たとえライバルだろうと、人が死ぬのを黙って見ていられない!

社長「こんなところだ」

女社長「……」
25:2019/03/14(木) 01:10:15.332 ID:q/5luCttr.net
感染してるぞww
26:2019/03/14(木) 01:12:45.363
女社長「分かりました、あなたの言葉信じましょう」

社長「本当か!」

社長「すぐに車で警察署かどこかへ――」





殺し屋「おっと、どこへ行くんだ」ザッ
27:2019/03/14(木) 01:15:14.538
社長「お前は……!」

女社長「あなたが殺し屋……!?」

殺し屋「嫌な予感がしたんで、早めに来てよかった。まさか、情報が漏れていたとはな」

殺し屋「この場で二人とも始末させてもらおう」チャッ

社長「う、ぐ……!」

女社長「銃……!」

社長(ここまでか……!)
28:2019/03/14(木) 01:18:30.493
バババッ

ゴロゴロゴロゴロ

スパイ「産業スパイ、雇い主のピンチに天井裏からただいま参上!」ジャン!

スパイ「フッ、登場に三行もかけてしまいました」

社長「スパイ!? なぜここに……!」

女社長「誰……!?」

殺し屋「な、なんだ!?」
29:2019/03/14(木) 01:21:17.132
スパイ「社長、さっきの三行の説明、お見事でした」

社長「!」

スパイ「黙っていれば業界一位になれたかもしれないのに、よくぞ茨の道を歩んで下さりました」

スパイ「あなたのような方に雇われたこと、つくづく光栄に思いますよ」

社長「スパイ……」

スパイ「後は私にお任せ下さい」

社長「無茶だ! 相手はプロの殺し屋だぞ! しかも拳銃を持ってるんだ!」

スパイ「予告します。三行で敵を倒してみせます」
30:2019/03/14(木) 01:24:34.001
殺し屋「ふざけるな、まずお前から死ねぇっ!」パァンッ!

スパイ「はっ!」ドゴォッ!

殺し屋「ぐはぁっ!」ドサッ

女社長「すごい、本当に三行で……」

スパイ「フッ、裏の世界には上には上がいるということです」

スパイ「ん、弾が肩をかすめてたか……」

スパイ「いでえええええええええええっ! 血が、血が出てるっ!」

社長「かっこよさも三行で終わったか」
31:2019/03/14(木) 01:28:20.998
女社長「ありがとうございました、二人とも」

社長「あの殺し屋が逮捕されれば、雇っていたB社社長も逮捕されるだろう」

女社長「ところで……」

社長「ん?」

女社長「もしよろしければ今度、A社とC社で共同して事業を行いませんか?」

社長「こっちとしては願ってもない話だが、いいのか?」

女社長「はい、私は前々からC社の底力に魅力を感じていましたので……」

社長「それはどうも」

スパイ「そんなものあるかなぁ」

社長「なんだと!?」
32:2019/03/14(木) 01:31:00.822
女社長「それと、さまざまなリスクを負っても私に真実を知らせてくれたあなたに、私……」

女社長「惚れてしまったのかもしれません」

女社長「今後は経営者同士としてだけでなく、男女同士として、お付き合いして下さいませんでしょうか」

社長「……!」

社長「俺なんかでよければ……」

女社長「嬉しい……!」

スパイ(これで会社も軌道に乗るだろう……よかったな、社長)
33:2019/03/14(木) 01:33:24.551
社長「ぜひ今度、胸にある五つのホクロを見せて欲しい」

女社長「えっ、なんでそんなこと知ってるの!? エッチーッ!」バチンッ!

社長「ぶべっ!」

スパイ「恋仲になってから三行で殴られる人はじめて見た」







おわり
34:2019/03/14(木) 01:35:19.826 ID:q/5luCttr.net